以下、本発明の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本発明に係る無線通信システム100の概略的な構成の一例を示す図である。無線通信システム100は、広域無線通信規格としてのLTEに準拠した無線通信網を提供するシステムである。
無線通信システム100は、図1に示すように、ユーザ側の無線通信装置としてのユーザ装置(以降、UE)10と、基地局装置20とを備える。基地局装置20は、無線基地局(例えばeNodeB)として機能する設備である。基地局装置20は、セルエリア30として設定される地理的な区画毎に配置されている。基地局装置20は、当該基地局装置20が担当するセルエリア30内に存在するUE10と通信を実施して、送信機会の割り当て(つまりスケジューリング)等を実施する。或る基地局装置20にとってのセルエリア30とは、換言すれば、当該基地局装置20が無線通信可能な範囲に相当する。なお、図1においては便宜上、UE10を1つしか図示していないが、実際には複数のUE10が存在しうる。UE10が請求項に記載の通信装置に相当する。
UE10は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯型の通信端末であってもよいし、車両に搭載された通信端末であっても良い。さらに、UE10は、工作機器や、重機、飲料缶等の自動販売機などに備えられていても良い。ここでは一例として、UE10は車両で用いられる通信装置とし、当該UE10が用いられている車両を自車両とも記載する。
以下の説明では、UE10と基地局装置20との通信のうち、UE10が基地局装置20にデータを送信するための送信機会を割り当てる方法を説明する。なお、UE10から基地局装置20への通信は上り通信とも称される一方、基地局装置20からUE10へ向かう通信回線を下り通信とも称される。下り通信のための送信機会の割当方法等、実施形態で説明を省略している部分はLTEの規格で定められた方法で行われるものとする。
<無線通信システム100の概要>
ここでは、基地局装置20がUE10に対して上り通信のための送信機会を割り当てる際の一般的な手順について、図2を用いて概略的に述べる。まず、UE10は、自分自身が備えるバッファに、基地局装置20に送信すべきデータが到着した場合、図2に示すように、送信機会の割り当てを要求する信号であるスケジューリングリクエスト(以下、SR:Scheduling Request)を、基地局装置20に送信する。図2中の時刻Taは、UE10がSRを送信するタイミングを表している。ここでの送信機会とは、データを送信する際に利用する周波数や時間、変調方式等を指す。
なお、バッファに到着するデータの提供元としては、UE10自分自身、又は、UE10と相互通信可能に接続されているコンピュータにインストールされているアプリケーションソフトウェア(以降、アプリ)である。便宜上、ここでは一例として、UE10自分自身にアプリがインストールされているものとする。また、バッファに到着するデータには、通信の接続制御用のデータも含まれる。
基地局装置20は、UE10からのSRを受信すると、少なくともバッファ状態報告(以降、BSR:Buffer Status Report)を送信可能な送信機会を当該UE10に対して割り当て、通知する。BSRは、送信待ち状態のデータとしてUE10のバッファに蓄積されているデータ量(以降、送信待ちデータ量)を示す信号である。以降では便宜上、基地局装置20が送信する、上り通信のために割り当てた送信機会を示す信号を、送信機会通知とも記載する。図2中の時刻Tbは、基地局装置20が送信機会通知を送信するタイミングを表している。
UE10は、基地局装置20から送信された送信機会通知を受信すると、基地局装置20から指定された送信機会を使用してBSRを送信する。図2中の時刻Tcは、UE10がBSRを送信するタイミングを表している。なお、BSR送信用に割り当てられた送信機会が、BSRの送信に必要な送信機会に対して余裕がある場合、UE10は、当該余剰分の送信機会を用いてバッファに格納されているデータの一部又は全部を送信することができる。
基地局装置20は、UE10からのBSRを受信すると、当該BSRに示されている送信待ちデータ量に応じた送信機会を再度割り当てて、当該割り当てた送信機会を通知する送信機会通知データを送信する。図中の時刻Tdは、BSRに対する応答としての送信機会通知を送信するタイミングを表している。そして、UE10は、時刻Te以降において、指示された送信機会を用いてバッファに滞留しているデータを順次送信していく。
なお、LTEでは上り通信に複数の論理チャネルが用いられる。複数の論理チャネルは、複数の論理チャネルグループ(以降、LCG:Logical Channel Group)に分類されている。ここでは一例として、論理チャネルは、LCG1、LCG2、LCG3、LCG4の4つのLCGに分類されているものとする。どの論理チャネルがどの論理チャネルグループに属するかに関しては適宜設計さればよい。
各LCGにはLCG番号が割り当てられており、当該LCG番号によって種々のLCGは互いに区別される。各論理チャネルには、固有の論理チャネル識別子(以降、LCID:Logical Channel ID)が割り当てられており、当該LCIDによって当該論理チャネルが何れのLCGに属するかも識別される。つまり、各LCIDは4つのLCG番号の何れかと対応付けられている。
また、データのヘッダには、データ送信に用いる論理チャネルのLCIDが記述されている。データが何れの論理チャネルを用いるかは、当該データを生成したアプリに応じて決定される。どのアプリのデータ送信にどの論理チャネルを使用するかに関しても適宜設計さればよい。種々のアプリのそれぞれに対して、そのアプリが使用すべき論理チャネルのLCIDが割り当てられている。
ところで、UE10は、時刻TcでのBSRの送信をトリガとして、再送BSRタイマ(いわゆるretx-BSRタイマ)を起動する。この再送BSRタイマは、UE10がBSRが欠損したと見なして、BSRを再度送信する必要があると判定するためのタイマである。UE10は、再送BSRタイマが満了となるまでに送信機会通知を受信できなかった場合、データを送信するための送信機会を取得するための一連の処理を、SRの送信からやり直す。再送BSRタイマが計測する時間は、基地局により予め設定されており、320ミリ秒以上の値を取る。
[UE10の構成]
次に、図3を用いてUE10の構成を説明する。UE10は、図3に示すようにUE送受信部11と、UE制御部12とを備える。UE送受信部11は、LTEの無線通信プロトコルにおける物理レイヤを担当する通信モジュールである。UE送受信部11は、LTEで用いられる周波数帯の電波を送受信可能なアンテナと、LTEの通信規格に従って符号化や変調などの送信処理と、復調や復号などの受信処理とを行うトランシーバとを用いて構成されている。なお、アンテナは受信ダイバーシティ等のために複数設けられていても良い。
UE送受信部11は、アンテナにて受信した受信信号に対して、アナログデジタル変換処理や復調処理といった所定の処理を施すことでデジタル値によって表現された情報系列(つまりデジタルデータ)に変換する。そして、その受信信号に対応するデータを、UE制御部12に提供する。また、UE送受信部11は、UE制御部12から入力されたデータに対して、符号化や、変調、デジタルアナログ変換等の処理を施すことで、入力されたデータに対応する搬送波信号を生成する。そして、生成した搬送波信号をアンテナに出力することで電波として放射させる。UE送受信部11が請求項に記載のユーザ側通信部に相当する。
UE制御部12は、コンピュータとして構成されている。すなわち、UE制御部12は、種々の演算処理を実行するCPU、不揮発性のメモリであるフラッシュメモリ、揮発性のメモリであるRAM、I/O、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備える。CPUは例えばマイクロプロセッサ等を用いて実現されればよい。I/Oは、UE制御部12が例えばUE送受信部11等の、外部装置とデータの入出力をするためのインターフェースである。I/Oは、ICやデジタル回路素子、アナログ回路素子などを用いて実現されればよい。
フラッシュメモリには、通常のコンピュータをUE制御部12として機能させるためのプログラム等が格納されている。なお、上述のプログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよく、その具体的な格納媒体は、フラッシュメモリに限らない。CPUが上記プログラムを実行することは、上記プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。
UE制御部12は、CPUが上記プログラムを実行することで発揮される機能ブロックとして、アプリケーション部121と、通信制御部122と、を備える。なお、以降では、フラッシュメモリに格納されているプログラムのうち、UE制御部12を通信制御部122として機能させるプログラムモジュールのことを通信制御プログラムとも称する。
アプリケーション部121は、フラッシュメモリに格納されている種々のアプリが実行されることにより発揮される種々の機能の総称である。アプリケーション部121は、ユーザ装置10にインストールされているアプリを実行して、基地局装置20に送信するためのデータであって、主として他の通信装置を宛先とするデータ(いわゆるユーザデータ)を生成する。そして、生成したユーザデータを通信制御部122に提供する。アプリケーション部121にインストールされているアプリの内容は適宜設計されれば良い。
本実施形態では一例としてフラッシュメモリには、ドライバの運転操作を支援するアプリ(以降、運転支援アプリ)として、車両外部に設けられたサーバと逐次無線通信することで、ドライバの運転操作の手助けとなるリアルタイムな情報(以降、運転支援情報)を取得するアプリがインストールされているものとする。運転支援情報は、例えば、自車両周辺に存在する他車両の現在位置や車速、進行方向などを示す情報などとすればよい。なお、運転支援情報は、例えば通行規制や渋滞、道路上の落下物などとった道路状況を示す情報を含んでもよい。
アプリケーション部121は、上記運転支援アプリを実行することによってユーザデータとして、サーバに対して運転支援情報の送信を要求するデータを周期的に生成する。また、アプリケーション部121は、ユーザデータとして、自車両の現在位置や、走行速度、進行方向等の車両情報を示すデータ(以降、自車両データ)を所定の周期で(例えば100ミリ秒毎に)生成する。これらのユーザデータは、宛先を示す情報を格納したヘッダを含む。
アプリケーション部121が生成したユーザデータは、例えば1つ又は複数の通信パケットに加工された状態で基地局装置20に送信され、当該ユーザデータを生成した機能が定める送信先であるサーバにインターネットなどの公衆回線網を介して送信される。なお、前述の自車両データは、サーバを介して自車両周辺を走行する他車両(以降、周辺車両)に配信されることで、周辺車両にとっての運転支援情報として機能する。また、サーバに対して運転支援情報の送信を要求するデータを送信することで、基地局装置20を介して所定のサーバと通信することで運転支援情報を逐次取得する。なお、自車両データが、サーバに対して運転支援情報の送信を要求するデータとしての役割を兼ねるように構成されていても良い。
通信制御部122は、UE送受信部11の動作を制御する機能ブロックである。通信制御部122は、UE送受信部11の動作を制御するためのより細かい構成(換言すればサブ機能)として、バッファB1、BSR送信部F1、送信機会認識部F2、データ送信部F3、認識残量受信部F4、及び整合性判定部F5を備える。
BSR送信部F1、送信機会認識部F2、データ送信部F3、認識残量受信部F4、及び整合性判定部F5は、CPUが通信制御プログラムを実行することによって(換言すればソフトウェアとして)実現されればよい。なお、他の態様として、BSR送信部F1、送信機会認識部F2、データ送信部F3、認識残量受信部F4、及び整合性判定部F5の一部又は全部は、ハードウェア、ファームウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ等のいずれかによって実現されてもよい。ハードウェアによる実現には、1つ又は複数のICを用いて実現される態様も含む。
バッファB1は、アプリケーション部121が生成したユーザデータが入力されて、ユーザデータが基地局装置20に送信されるまで一時的に保持する記憶領域である。バッファB1は、RAM等の書き換え可能な記憶媒体を用いて実現されればよい。バッファB1は、保持されているユーザデータの量やそれらのユーザデータのヘッダに格納された情報を監視する機能も備える。
BSR送信部F1は、UE送受信部11と協働(換言すれば連携)して、BSRを基地局装置20に対して送信する処理を実施するための構成である。BSR送信部F1が請求項に記載のバッファ状態報告部に相当する。BSR送信部F1は、より細かい機能として、SR送信部F11を備える。なお、他の態様として、SR送信部F11はBSR送信部F1とは分離して備えられていても良い。通信制御部122がSR送信部F11を備えていれば良い。
SR送信部F11は、無線LTEの規格が定める条件が充足された場合に、UE送受信部11と協働(換言すれば連携)して、基地局装置20に対してSRを送信することで、基地局装置20に対して送信機会の割り当てを要求する構成である。SR送信部F11が請求項に記載のスケジューリングリクエスト部に相当する。
例えばSR送信部F11は、バッファB1にユーザデータが格納された時点において基地局装置20から送信機会を割り当てられていない場合や、割り当てられた送信機会が示す時間が終了している場合等に、SRを送信する。また、例えばバッファB1が空となっている状況においてユーザデータが格納された場合や、割り当てを要求したにも関わらず、送信機会が割り当てられることなく所定の時間が経過した場合にもSRを送信する。さらに、後述する整合性判定部F5からの要求に基づいてもSRを送信する。
BSR送信部F1は、SR送信部F11が送信したSRに対する応答として基地局装置20によって割り当てられた送信機会を用いて、BSRを生成して送信する。BSR自体は、バッファB1を参照し、バッファB1に保持されているユーザデータの量を特定することで生成される。なお、BSR送信部F1がBSRを送信する場合とは、SRに対する応答としての送信機会通知を受信した場合に限らない。BSR送信部F1は無線LTEの規格が定める条件が充足された場合にBSRを送信する。
ところで、通信制御部122は、SRに対する応答として、BSRに加えてユーザデータも送信可能な送信機会が割り当てられた場合には、BSRだけでなく、余った送信機会を用いてユーザデータも送信するように構成されている。すなわち、SRに対する応答として割り当てられた送信機会(換言すれば通信リソース)が、BSRの送信に必要な送信機会に対して余裕がある場合、UE10は、当該余剰分の送信機会を用いてバッファに格納されているデータの一部又は全部を送信することができる。
そのようにSRに対する応答として、BSRに加えてユーザデータも送信可能な送信機会が割り当てられた場合には、BSR送信部F1は、SRに対する応答として今回割り当てられた送信機会を以てしても送信されずバッファB1に保持されたままとなるユーザデータの量を示すBSRを送信する。具体的には、BSR送信部F1は、今回割り当てられた送信機会を用いて送信可能なユーザデータの量(以降、送信可能量)を算出し、現時点において実際にバッファB1に保持されているデータ量(以降、実残量)から送信可能量を減算した値を示すBSRを送信する。なお、SRに対する応答として送信機会で送信可能なデータの量は、送信機会通知に示される周波数帯及び時間に基づいて算出することが可能である。
送信機会認識部F2は、基地局装置20がUE10に対して割り当てた送信機会を特定(換言すれば認識)する構成である。送信機会認識部F2は、UE送受信部11と協働して基地局装置20から送信される送信機会通知を受信し、その受信した送信機会通知を参照することで、基地局装置20がUE10に対して割り当てた送信機会を特定する。
データ送信部F3は、送信機会認識部F2によって特定されている送信機会に従って、バッファB1に保持されたユーザデータを基地局装置20に送信する処理を実施する構成である。データ送信部F3によるユーザデータの送信は、UE送受信部11との協働によって実現される。なお、BSRの送信条件が充足されている場合には、データ送信部F3によるユーザデータの送信よりも、BSR送信部F1によるBSRの送信を優先して実行させる。
認識残量受信部F4は、UE送受信部11と協働して、基地局装置20から送信される後述の認識残量報告を受信する。認識残量受信部F4が請求項に記載の残量報告受信部に相当する。基地局装置20が送信する認識残量報告は、UE10のバッファB1に滞留しているユーザデータの量(以降、残量)として基地局装置20が認識している量を直接的又は間接的に表す信号である。認識残量報告は、基地局装置20が認識している残量と、実残量とが整合しているかを、基地局装置20が確認するための信号としての役割を担う。
ここでは一例として認識残量報告は、基地局装置20が認識している残量を複数ビットを用いて直接的に(換言すれば具体的に)表す信号とする。例えば、基地局装置20が認識している残量が200byteである場合には、認識残量報告は、残量は200Byteであると認識していることを示す信号である。
なお、変形例1として後述するように、認識残量報告は、基地局装置20が認識している残量を0と1の2値(換言すれば1ビット)で表す信号としても良い。そのような態様によれば認識残量報告自体のデータサイズを低減でき、基地局装置20に認識残量報告を送信する構成を導入することによって通信リソースが逼迫してしまう恐れを低減できる。
整合性判定部F5は、認識残量受信部F4が受信した認識残量報告に基づき、UE10のバッファB1に滞留している(換言すれば送信待ちとなっている)ユーザデータの量として基地局装置20が認識している量(以降、認識残量)を特定する。そして、基地局装置20での認識残量と実残量とを比較して、認識残量が実残量と整合しているか否かを判定する。
具体的には、実残量から認識残量を減算した乖離量Ngapを算出し、乖離量Ngapが所定の閾値(以降、整合性閾値)Nsrを超過している場合に、認識残量が実残量と整合していないと判定する。一方、乖離量Ngapが整合性閾値Nsr以下である場合には、認識残量が実残量と整合していると判定する。
整合性閾値Nsrの具体的な値は適宜設計されれば良い。ここでは一例として整合性閾値Nsrは0Byteに設定されているものとする。そのような構成によれば、認識残量が実残量よりも少ない場合には、認識残量が実残量と整合していないと判定することができる。もちろん、他の態様として整合性閾値Nsrは50byteや100byteなど、0よりも大きい値に設定されていてもよい。また、整合性閾値Nsrは、BSRのデータサイズに応じた値に設定されていても良い。
整合性判定部F5は、上記の判定の結果、認識残量が実残量と整合していないと判定した場合には、SR送信部F11にSRの送信を実施するように要求する。つまり、整合性閾値Nsrは、SR送信部F11にSRを送信させるための閾値として機能する。SR送信部F11がSRを送信した場合には、後続の処理としてBSR送信部F1がBSRを送信するため、整合性判定部F5が認識残量と実残量とが整合していないと判定した場合には、BSR送信部F1によってBSRが送信されることとなる。故に、整合性閾値NsrはBSR送信部F1がBSRを送信するための閾値としての役割を担う。
なお、本実施形態では一例として、整合性判定部F5は上記の判定の結果、認識残量が実残量と整合していると判定した場合には、基地局装置20には何も信号を返送しないように構成されているものとする。また、本実施形態の整合性判定部F5は、認識残量が実残量よりも少ない場合にのみ、両者が整合していないと判定する構成とするが、これに限らない。他の態様として、認識残量が実残量よりも所定の閾値以上多い場合にも、両者が整合していないと判定しても良い。そのような他の態様によれば、実残量を示すBSRが改めて基地局装置20に送信されるようになるため、基地局装置20が過剰に送信機会を割り当てる恐れを低減できる。その結果、通信リソースをより一層効率的に運用できるようになる。
[基地局装置20の構成]
次に、図4を用いて基地局装置20の構成を説明する。基地局装置20は、基地局送受信部21と、基地局制御部22とを備える。基地局送受信部21は、UE送受信部11と同様に、LTEの無線通信プロトコルにおける物理レイヤを担当する通信モジュールである。基地局送受信部21は、LTEで用いられる周波数帯の電波を送受信可能なアンテナと、LTEの通信規格に従って符号化や変調などの送信処理と、復調や復号などの受信処理とを行うトランシーバとを用いて構成されている。
基地局送受信部21は、アンテナにて受信した受信信号に対して、アナログデジタル変換処理や復調処理といった所定の処理を施すことでデジタル値によって表現された情報系列(つまりデジタルデータ)に変換する。そして、その受信信号に対応するデータを基地局制御部22に提供する。また、基地局送受信部21は、基地局制御部22から入力されたデータに対して、符号化や、変調、デジタルアナログ変換等の処理を施すことで、入力されたデータに対応する搬送波信号を生成する。そして、生成した搬送波信号をアンテナに出力し、電波として放射させる。基地局送受信部21が請求項に記載の基地局側通信部に相当する。
基地局制御部22は、コンピュータとして構成されている。すなわち、基地局制御部22は、種々の演算処理を実行するCPU、不揮発性のメモリであるフラッシュメモリ、揮発性のメモリであるRAM、I/O、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備える。CPUはマイクロプロセッサ等を用いて実現されればよい。I/Oは、基地局制御部22が例えば基地局送受信部21等の、外部装置とデータの入出力をするためのインターフェースである。
フラッシュメモリには、通常のコンピュータを基地局制御部22として機能させるためのプログラム等が格納されている。なお、上述のプログラムは、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。CPUが上記プログラムを実行することは、上記プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。
基地局制御部22は、CPUが上記プログラムを実行することで発揮される機能ブロックとして、SR受信部G1、BSR受信部G2、転送処理部G3、割当部G4、端末残量管理部G5、及び認識残量報告部G6を備える。なお、これらの種々の機能ブロックの一部又は全部は、ハードウェアとして実現されてもよい。
SR受信部G1は、基地局送受信部21と協働して、UE10から送信されるSRを受信する構成である。SR受信部G1は、或るUE10から送信されたSRを受信した場合、割当部G4に対して、少なくともBSRが送信可能な送信機会を当該UE10に割り当てるように要求する。
BSR受信部G2は、基地局送受信部21と協働して、UE10から送信されるBSRを受信する構成である。BSR受信部G2が請求項に記載のバッファ状態報告受信部に相当する。BSR受信部G2は、或るUE10から送信されたBSRを受信した場合、割当部G4に対して、当該BSRが示す送信待ちデータ量に応じた送信機会を当該UE10に割り当てるように要求する。また、BSR受信部G2は、BSRが示す送信待ちデータ量を、当該BSRの送信元を示す情報とともに端末残量管理部G5に提供する。
転送処理部G3は、基地局送受信部21がユーザデータを受信した場合に、当該ユーザデータを、図示しない公衆回線網を通じてユーザデータのヘッダに格納された送信先に送信する構成である。
割当部G4は、SR受信部G1及びBSR受信部G2の要求に従って、UE10に送信機会を割り当てるとともに、基地局送受信部21と協働して、割り当てた送信機会を示す送信機会通知を、送信機会の要求元であるUE10に対して送信する。例えば、割当部G4は、SR受信部G1からの要求に基づき、SRの送信元であるUE10に対して、少なくともBSRを送信可能な送信機会を割り当てる。また、BSR受信部G2からの割り当て要求に基づき、BSRの送信元であるUE10に対して、BSRに示される送信待ちデータ量に応じた送信機会を割り当てる。例えば割当部G4は、BSRに示される送信待ちデータ量を送信するために十分な(より好ましくは必要十分な)送信機会を割り当てる。
なお、BSR受信部G2からの要求に対して割り当てる送信機会は、必ずしもBSRに示されるデータ量を1度に全て送信可能な送信機会となっているとは限らない。或るUE10に対して実施する1回の割り当てによって送信可能なデータ量は、UE10との基地局装置20間の電波伝搬環境や他のUE10からの要求の発生状況を勘案して決定される。換言すればBSRに示されるデータ量を送信するための送信機会は、複数回に分割して割り当てる場合もある。
割当部G4は、或るUE10に対する送信機会の割り当てを実施すると、割り当てた送信機会を、当該UE10を他のUE10と識別するための情報(以降、端末識別情報)と対応づけて端末残量管理部G5に通知する。便宜上、割り当てた送信機会と端末識別情報とを含むデータを割当結果とも称する。端末識別情報は例えばMACアドレスなどである。なお、割当部G4が割当結果として端末残量管理部G5に通知する情報は、割り当てた送信機会から送信可能なデータ量を示す情報であってもよい。
端末残量管理部G5は、セルエリア30内に存在するUE10毎の送信待ちデータ量(換言すれば認識残量)を管理する構成である。端末残量管理部G5は、BSR受信部G2から通知される送信待ちデータ量と、割当部G4から通知される割当結果とから、UE毎の送信待ちデータ量を管理する。UE10毎の送信待ちデータ量は、BSRに示される送信待ちデータ量から、割り当てた送信機会で送信可能なデータ量を減算した値とすればよい。或るUE10についての送信待ちデータ量は、当該UE10からのBSRを受信する度、及び、当該UE10に対して送信機会を割り当てる度に更新される。端末残量管理部G5が請求項に記載の残量管理部に相当する。
認識残量報告部G6は、基地局送受信部21と協働して、認識残量報告を送信するための所定の条件(以降、報告条件)を充足しているUE10に対して認識残量報告を送信する構成である。ここでは報告条件として、端末残量管理部G5によって管理されている認識残量が所定の閾値(以降、報告閾値)Nrp以下となっていることが設定されているものとする。
このような設定によれば、認識残量報告部G6は、認識残量が所定の報告閾値Nrp以下となっているUE10に対して認識残量報告を送信することとなる。つまり、各UE10に対しては、認識残量が報告閾値Nrpよりも大きい場合には認識残量報告を送信せず、認識残量が報告閾値Nrp以下となったタイミングで認識残量報告を送信するように作動する。このような態様によれば、残量が報告閾値Nrpよりも大きい場合には認識残量報告を送信しないため、通信リソースを不要に消費するおそれを抑制することができる。また、認識残量が報告閾値Nrpよりも大きい値となっている限りは、割当部G4によって認識残量に応じた送信機会が割り当てられるため、UE10が送信待ちデータを保有しているにも関わらず、データを一切送信できない状態が発生する恐れを低減することができる。報告閾値NrpはUE10に認識残量報告を送信するタイミングを制御するパラメータとして機能する。
報告閾値Nrpの具体的な値は適宜設計されれば良い。ここでは一例として報告閾値Nrpは0Byteに設定されているものとする。そのような構成によれば認識残量が0byteとなっているUE10に対して認識残量報告を送信することとなる。もちろん、他の態様として報告閾値Nrpは50byteや100byteなど、0よりも大きい値に設定されていてもよい。
認識残量報告自体は、その送信先とするUE10に対して端末残量管理部G5が管理している認識残量に基づいて生成される。本実施形態では前述の通り、認識残量報告は、基地局装置20が認識している送信待ちデータ量を、複数のビットを用いて具体的に表す信号である。
なお、本実施形態では一例として、UE10の区別なく、認識残量報告を送信するものとするが、これに限らない。変形例として後述するように、特定のアプリがインストールされているUE10のみに認識残量報告を送信するように構成しても良い。つまり、報告条件として、UE10が特定のアプリがインストールされているUE10であることを組み入れても良い。
認識残量報告部G6は、報告条件を充足しているUE10を抽出するためのサブ機能として、条件判定部G61を備える。本実施形態の条件判定部G61は、端末残量管理部G5によって管理されている各UE10の残量を逐次監視し、残量が報告閾値Nrp以下となっているUE10を、認識残量報告を送信するべきUE10として抽出する。換言すれば、条件判定部G61は、UE10が報告条件を充足したか否かを逐次判定する構成である。認識残量報告部G6は、条件判定部G61によって抽出されたUE10に対して認識残量報告を送信する。
<UE10の通常時の作動について>
次に、図5に示すフローチャートを用いて、認識残量報告を受信していない場合の(つまり通常時の)UE10の作動について説明する。UE制御部12は、アプリケーション部121としての機能を発揮するとともに、図5に示す処理をステップS101から逐次実行することで、通信制御部122としての機能を発揮する。図5に示す処理は逐次開始されれば良い。図5に示す処理の実施間隔は適宜設計されればよく、例えば数ミリ秒から数十ミリ秒程度に設定されればよい。なお、認識残量報告を受信した場合のUE10の作動については別途後述する。
まず、ステップS101ではSR送信部F11が、アプリケーション部121が生成したユーザデータがバッファB1に格納されているか否かを判定する。つまり、送信待ちデータが存在しているか否かを判定する。送信待ちデータが存在している場合はステップS101を肯定してステップS102に進む。一方、送信待ちデータが存在していない場合は本フローを終了する。
ステップS102では送信機会認識部F2が、これから利用可能な送信機会が存在するか否かを判定する。利用可能な送信機会が存在しない場合にはステップS102を否定判定してステップS103に移る。利用可能な送信機会が存在している(換言すれば残っている)場合にはステップS102を肯定判定してステップS105に移る。
ステップS103ではSR送信部F11が、LTEの規格が定めるSRを送信する条件を満たしているか否かを判定する。条件を満たしている場合はステップS104に進む一方、条件を満たしていない場合は本フローを終了する。ステップS104ではSR送信部F11が、UE送受信部11と協働してSRを送信し、本フローを終了する。
ステップS105ではBSR送信部F1が、現在割り当てられている送信機会を用いて、BSRに加えてユーザデータも送信できるか否かを判定する。BSRに加えてユーザデータも送信できる場合にはステップS106に進む。一方、BSRしか送信できない場合にはステップS107に進む。
ステップS106ではBSR送信部F1が、割り当てられている送信機会を用いて送信可能なユーザデータの量(つまり送信可能量)を算出し、実残量から送信可能量を減算した値を示すBSRを送信する。また、データ送信部F3が、送信可能な分だけバッファB1に格納されているユーザデータを送信して本フローを終了する。ステップS107ではBSR送信部F1が割り当てられている送信機会を用いてBSRを送信して本フローを終了する。
<基地局装置20の送信機会の割当に関する作動>
次に、図6に示すフローチャートを用いて、送信機会の割り当てに関する基地局装置20(具体的には基地局制御部22)の作動を説明する。基地局制御部22は、UE10との通信が開始されると、図6に示す処理をステップS201から逐次実行する。図6に示す処理の実施間隔は適宜設計されるべきパラメータである。図6に示す処理は、少なくとも通信の最小時間単位(例えば1ミリ秒)毎に実施される。なお、UE10との通信が開始される場合とは、UE10がセルエリア30内に進入した場合や、セルエリア30内でUE10の電源が投入された場合などである。
以降では、任意の1つのUE10を対象として、基地局装置20の作動を説明する。便宜上、説明の対象とするUE10のことを対象UE10とも記載する。図6に示すフローチャートは、基地局装置20のセルエリア30内に存在するUE10のそれぞれに対して実施される。
ステップS201ではSR受信部G1が、対象UE10から送信されたSRを受信したか否かを判定する。対象UE10からのSRを受信している場合にはステップS201を肯定判定してステップS202に移る。一方、対象UE10からのSRを受信していない場合にはステップS201を否定判定してステップS204に移る。
ステップS202では割当部G4が、対象UE10に対して、少なくともBSRは送信可能な送信機会を割り当ててステップS203に移る。ステップS203では割当部G4が、基地局送受信部21と協働して、ステップS202で決定した送信機会を示す送信機会通知を対象UE10に対して送信して本フローを終了する。
ステップS204ではBSR受信部G2が、対象UE10から送信されたBSRを受信したか否かを判定する。BSRを受信している場合にはステップS204を肯定判定してステップS205に移る。一方、対象UE10からのBSRを受信していない場合にはステップS204を否定判定して本フローを終了する。
ステップS205では割当部G4が、対象UE10に対して、受信したBSRに示されている送信待ちデータ量に応じた送信機会を割り当ててステップS206に移る。ステップS206では割当部G4が、基地局送受信部21と協働して、ステップS205で決定した送信機会を示す送信機会通知を対象UE10に対して送信してステップS207に移る。ステップS207では端末残量管理部G5が、対象UE10が備える送信待ちデータ量の値を更新して本フローを終了する。
なお、端末残量管理部G5は、BSRを受信した時以外にも、割当部G4が対象UE10に送信機会を割り当てる度に対象UE10の送信待ちデータ量の値を更新していく。また、図6に示すフローチャートとは独立して、転送処理部G3によるユーザデータの転送処理が実施される。
<基地局装置20の認識残量報告の送信に係る作動>
次に、図7に示すフローチャートを用いて、認識残量報告の送信に係る基地局装置20の作動を説明する。基地局制御部22は、対象UE10に認識残量報告を送信するための処理(以降、認識残量報告処理)として、図7に示す処理をステップS301から逐次実行する。図7に示す処理の実施間隔は適宜設計されるべきパラメータである。例えば数ミリ秒〜100ミリ秒程度に設定されればよい。
まずステップS301では認識残量報告部G6は、端末残量管理部G5によって管理されている対象UE10の送信待ちデータ量Nを読み出してステップS302に移る。ステップS302では条件判定部G61が、対象UE10の送信待ちデータ量Nが報告閾値Nrpを超過しているか否かを判定する。
対象UE10の送信待ちデータ量Nが報告閾値Nrpを超過している場合にはステップS302を肯定判定して本フローを終了する。一方、対象UE10の送信待ちデータ量Nが報告閾値Nrp以下である場合にはステップS302を否定判定してステップS304に移る。ステップS304では認識残量報告部G6が、対象UE10に対して、対象UE10の送信待ちデータ量として基地局装置20が認識している量を示す認識残量報告を送信して本フローを終了する。
なお、本実施形態では報告閾値Nrpを0byteに設定しているため、対象UE10の送信待ちデータ量Nは0byteであると認識している場合にのみ、認識残量報告を送信する。故に、認識残量報告が示す認識残量は0byteである。つまり、本実施形態の認識残量報告部G6は、対象UE10についての認識残量が0byteとなった場合に、認識残量が0byteであることを示す認識残量報告を送信する。
<UE10の認識残量報告の受信に係る作動>
次に、図8に示すフローチャートを用いて、認識残量報告を受信した場合のUE10の作動を説明する。対象UE10は認識残量受信部F4が基地局装置20から送信された認識残量報告を受信したことをトリガとして図8に示す処理をステップS401から実行する。
ステップS401では整合性判定部F5が、認識残量受信部F4が受信した認識残量報告に基づき、UE10での送信待ちデータ量として基地局装置20が認識している量(すなわち認識残量)Nを特定してステップS402に移る。ステップS402では、認識残量Nが0であるか否かを判定する。認識残量Nが0である場合にはステップS402を肯定判定してステップS406に移る。一方、認識残量Nが0ではない場合にはステップS402を否定判定してステップS403に移る。なお、本実施形態では報告閾値Nrpを0に設定し、認識残量Nが0の場合に認識残量報告を送信するように基地局装置20の認識残量報告部G6を構成しているため、ステップS402が否定判定されてステップS403に移ることはない。ステップS403〜S403は、他の態様として、認識残量報告部G6を、報告閾値Nrpを0よりも大きい値に設定した場合に実行されうる処理である。
ステップS403では整合性判定部F5が、実残量から認識残量Nを減算することで、乖離量Ngapを算出してステップS404に移る。ステップS404では整合性判定部F5が、乖離量Ngapが所定の整合性閾値Nsrを超過しているか否かを判定する。乖離量Ngapが所定の整合性閾値Nsrを超過している場合にはステップS404を肯定判定してステップS405に移る。なお、ステップS404を肯定判定することは、整合性判定部F5は、認識残量Nが実残量と整合していないとも判定することに相当する。
一方、乖離量Ngapが整合性閾値Nsr以下である場合には、ステップS404を否定判定して本フローを終了する。なお、ステップS404を否定判定することは、認識残量Nが実残量と整合していると判定することに相当する。認識残量Nが実残量と整合していると判定する場合とは、完全に一致している場合に限らず、その差が所定の整合性閾値Nsr以下となっている場合も含まれる。
ステップS405では整合性判定部F5がSR送信部F11にSRの送信を実施するように要求する。そして、SR送信部F11が整合性判定部F5からの要求に基づき、UE送受信部11と協働してSRを送信して本フローを終了する。なお、SRを送信した以降においては、基地局装置20から割り当てられた送信機会を用いてBSRを送信するなど、通常の上り通信のための処理と同様である。
ステップS406では整合性判定部F5が、バッファB1を参照し、実残量が0byteであるか否かを判定する。実残量が0byteである場合にはステップS406を肯定判定して本フローを終了する。一方、実残量が0byteではなく、送信待ち状態となっているデータが存在する場合にはステップS406を否定判定してステップS405の処理を実施する。すなわち、SR送信部F11にSRを送信させる。なお、実残量が0byteである状態とは、バッファB1が空である状態に相当する。
<実施形態の効果>
以上の構成によれば基地局装置20が、対象UE10のバッファB1に滞留しているユーザデータの量として基地局装置20が認識している量を示す認識残量報告を対象UE10に対して随時送信する。UE10は、基地局装置20から送信されてくる認識残量報告に基づき、基地局装置20での認識残量と、実残量とが整合しているか否かを判定する。そして、対象UE10は、基地局装置20での認識残量が実残量よりも少ない場合、具体的には実残量が0よりも大きいにも関わらず、認識残量が0となっている場合には、SRを送信(換言すれば発呼)し、送信機会を取得する。
LTEの規格に準拠した一般的な基地局装置では、UEから送信されたBSRを受信できなかった場合、UEから再度送信されるBSRを受信するまでは、当該UEに送信待ち状態となっているユーザデータが存在することを認識できない。そのため、BSRの再送タイマの設定時間に応じて、ユーザデータの送信待ち時間(換言すれば送信遅延)が増大してしまう。なお、一般的に再送BSRタイマの設定時間は320ミリ秒以上に設定されるため、BSRの受信失敗に由来する送信遅延は320ミリ秒以上となる。
対して、上記の実施形態によれば、UE10が基地局装置20から送信される認識残量報告を受けてSRを送信可能に構成されているため、BSR再送タイマの満了を待たずにBSRを送信可能となる。つまり、BSRの送受信失敗に起因して、UE10のバッファB1にユーザデータが存在するにも関わらず基地局装置20がそのことを認識できていない状況が継続する時間を短縮することができる。その結果、ユーザデータの送信遅延を抑制することができる。
ところで、想定構成として、バッファB1に新規のユーザデータが到着する度にSRを発呼するようにUEを設定した構成も想定される。しかしながら、そのような想定構成では、バッファB1に新規のユーザデータが到着しない限りはSRを発呼しない。そのため、BSRの受信が失敗した場合には、新たなユーザデータが発生するまでは既に保存済みのユーザデータが送信待ちである状態が継続しうる。つまり、想定構成ではBSRの送受信失敗に由来する送信遅延の増大を安定して抑制することは難しい。対して、本実施形態の構成によれば、新規ユーザデータの有無に依らずに送信機会を獲得するための処理を実行する事ができる。すなわち、本実施形態によれば想定構成と比べて安定して送信遅延を抑制できる。
また、上述した実施形態では、基地局装置20は、認識残量報告として、複数ビットを用いて認識残量を具体的に(換言すれば直接的に)表した信号を送信する。このような構成によればUE10は、基地局装置20での認識残量を具体的に把握することができ、認識残量が実残量とどれくらい乖離しているかも具体的に算出できる。その結果、UE10自身が、基地局装置20によって十分な送信機会が割り当てられそうか否かを判定できる。また、乖離量に基づいたSRの送信条件等、認識状態報告の受信に伴うUE10の作動を細かく設定でき、通信リソースをより効率的に運用することが可能となる。
なお、上記の実施形態では、UE10の構成として、整合性判定部F5が基地局装置20での認識残量と実残量とが整合していないと判定した場合にはSRを送信するように構成されているものとしたが、これに限らない。整合性判定部F5が基地局装置20での認識残量と実残量とが整合していないと判定した時点においてBSRを送信可能な送信機会が残っている場合には、その残っている送信機会を用いてBSRを送信しても良い。つまりSRの送信を省略してもよい。上記構成を実現する上では、報告閾値Nrpや整合性閾値Nsrを、BSRを送信するために必要十分なデータ量に設定することが好ましい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[変形例1]
以上では、認識残量報告を、認識残量をそのまま表す信号とする態様を開示したが、これに限らない。認識残量報告は、基地局装置20が認識している残量を0と1の2値(換言すれば1ビット)で表す信号としても良い。そのような態様によれば認識残量報告自体のデータサイズを低減でき、認識残量報告を送受信する仕組みを導入することによって通信リソースが逼迫してしまう恐れを低減できる。ここでは基地局装置20が認識している残量を0と1の2値(換言すれば1ビット)で表した信号を認識残量報告として送信する態様の一例を変形例1として開示する。
変形例1における認識残量報告部G6は、対象UE10の認識残量が、認識残量を0/1で表すための所定の閾値(以降、2値化閾値)よりも高い場合に、認識残量を表すビット(以降、残量提示ビット)に1を設定した信号を認識残量報告として送信する。また、対象UE10の認識残量が2値化閾値以下である場合に、残量提示ビットに0を設定した信号を認識残量報告として送信する。なお、本変形例1の認識残量報告は、残量提示ビットを備えていればよく、データ全体としての長さは1ビットに限らない。残量提示ビットに加えて宛先等を示すヘッダなどを備えているものとする。
また、変形例1における整合性判定部F5は、残量提示ビットに0が設定された認識残量報告を受信した場合において、実残量が2値化閾値以下である場合には、基地局装置20が認識している残量は実残量と整合していると判定する。一方、残量提示ビットに0が設定された認識残量報告を受信した場合において、実残量が2値化閾値よりも多い場合には、基地局装置20での認識残量は実残量と整合していないと判定する。整合していないと判定した場合の作動は前述の実施形態と同様とすればよい。
なお、他の態様として、残量提示ビットに1が設定された認識残量報告を受信した場合において、実残量が2値化閾値以下である場合には、基地局装置20での認識残量が実残量と整合していないと判定してもよい。残量提示ビットに1が設定された認識残量報告を受信した場合において、実残量が2値化閾値よりも多い場合には、基地局装置20での認識残量は実残量と整合していると判定すればよい。
2値化閾値の具体的な値は、通信の遅延を抑制する必要性が大きいユーザデータ(以降、低遅延データ)のデータサイズを鑑みて適宜設計されればよい。例えば低遅延データのデータサイズが少なくとも100byte以上であることが想定される場合には、2値化閾値は、100byteよりも小さい値に設定されることが好ましい。
仮に2値化閾値を低遅延データの想定サイズよりも大きい値に設定してしまうと、低遅延データが送信待ちとなっているにも関わらず、整合性判定部F5が基地局装置20での認識残量は実残量と整合していると判定してしまい、結果として、低遅延データの送信待ち時間が増大してしまう恐れがある。対して、2値化閾値を低遅延データの想定サイズよりも小さい値に設定する構成によれば、上記のような事象に由来して、低遅延データの遅延時間(換言すれば送信待ち時間)が拡大してしまう恐れを低減できる。
また、2値化閾値を0byteに設定した態様によれば、低遅延データのデータサイズが様々な値を取りうる場合であっても、低遅延データの遅延時間が拡大してしまう恐れを低減できる。故に、2値化閾値は0byteに設定することが好ましい。
なお、低遅延データとは、例えば、最大遅延時間が100ミリ秒以下となることが要求されるユーザデータである。具体的には、運転支援アプリが生成する自車両データや、運転支援情報の送信を要求するデータが、低遅延データに該当する。交通状況は刻一刻と変化するため、交通状況に応じて定まる運転支援情報は、道路の接続関係を示す地図データと比較して時間の経過に従う変化が大きく、遅延が生じることによって情報の信頼性が低下しやすい。そのため、運転支援アプリが生成するユーザデータは、通信の遅延を抑制する必要性が大きいデータ、すなわち低遅延データに該当する。また、運転支援アプリが、通信の低遅延性(換言すれば高いリアルタイム性)を要求するアプリケーションに相当する。
なお、データ送信部F3は、送信機会が割り当てられている場合には、低遅延データを、通常データよりも優先して送信するものとする。ここでの通常データとは、通信の遅延を抑制する必要性が相対的に低い所定の種別のユーザデータである。バッファB1に保存されているユーザデータが低遅延データであるか通常データであるかは、ヘッダ内に低遅延データであるか通常データであるか示すデータ種別を格納することで区別可能である。具体的には、LCIDやLCG番号を参照することで識別可能である。
[変形例2]
上述した実施形態では、報告条件として、認識残量Nが所定の報告閾値Nrp以下であることを設定した態様、換言すれば、基地局装置20を、対象UE10に対する認識残量Nが所定の報告閾値Nrp以下となった場合に対象UE10に向けて認識残量報告を送信するように構成した態様を開示したが、これに限らない。
基地局装置20は、各UE10に対して所定の確認周期で定期的に認識残量報告を送信するように構成しても良い。その場合、認識残量報告を前回送信してからの経過時間が確認周期に相当する時間以上であることを、各UE10に対する報告条件として設定すればよい。
[変形例3]
以上では、整合性判定部F5によって、基地局装置20の認識残量が実残量と整合している場合には、UE10から基地局装置20に対して、認識残量報告への応答としての信号を返送しない態様としたがこれに限らない。基地局装置20の認識残量が実残量と整合している場合にも、認識残量報告への応答としての信号を返送するように構成しても良い。そのような態様の一例について、変形例3として以下に開示する。
変形例3の通信制御部122は、図9に示すように、整合性判定部F5によって基地局装置20での認識残量と実残量とが整合していると判定された場合に、UE送受信部11と協働して基地局装置20に対して整合確認信号を送信する応答送信部F6を備える。整合確認信号は、基地局装置20が認識している送信待ちデータ量が、実残量と合致していることを示す信号である。応答送信部F6は、CPUによるソフトウェア(ここでは通信制御プログラム)の実行によって実現されても良いし、ハードウェアとして実現されていてもよい。
整合性判定部F5は、基地局装置20での認識残量と実残量とが整合していると判定した場合に応答送信部F6に対して整合確認信号の送信を要求し、応答送信部F6は、整合性判定部F5からの要求に基づいて整合確認信号を送信する。なお、整合確認信号は、例えば整合しているか否かを1ビット(つまり0/1)で表す信号とすればよい。
このような態様によれば、基地局装置20は、整合確認信号を受信することで、整合信号の送信元であるUE10に対して端末残量管理部G5が管理している送信待ちデータ量が実残量と整合していることを確認でき、通信リソースをより一層効率的に運用できる。
また、応答送信部F6は、基地局装置20での認識残量と実残量とが整合しているか否かに関わらず、認識残量報告を受信した時点においてバッファB1が空である場合には、バッファB1が空であることを示す残量ゼロ通知を送信するように構成されていてもよい。UE10から送信される残量ゼロ通知を受信することにより、基地局装置20は、残量ゼロ通知の送信元であるUE10に対して送信機会を割り当てる必要がないことを認識である。その結果、不要な送信機会の割り当てが実施される恐れを低減できる。なお、残量ゼロ通知も、認識残量報告に対する応答信号の一例に相当する。
[変形例4]
以上では基地局装置20が、認識残量報告処理として、認識残量報告を送信する条件が充足された場合、認識残量報告部G6は認識残量報告を一回だけ送信するように構成されている態様を開示したがこれに限らない。認識残量報告部G6は、認識残量報告を送信する条件(つまり報告条件)が充足されて認識残量報告を送信することを決定した場合、認識残量報告を所定の回数連続して送信するように構成されていても良い。そのような構成を変形例4として以下述べる。
なお、ここではより好ましい態様として、UE10は変形例3で述べたように認識残量報告を受信した時点においてバッファB1が空である場合には、残量ゼロ通知を送信するように構成されているものとする。
認識残量報告を連続して送信する最大回数(以降、最大送信回数)kmaxは、1より大きい範囲において適宜設計されればよい。ここでは最大送信回数kmaxは4に設定されている。なお、認識残量報告を連続して送信する態様とは、厳密には、所定の送信間隔Tint毎に認識残量報告を順次送信する態様である。
送信間隔Tintは、認識残量報告処理を実行する間隔に比べて十分に短く、かつ、認識残量報告を送信してから当該認識残量報告に対する応答としてUE10から送信されるSRや残量ゼロ通知を受信するまでに要する時間(以降、信号往復時間)よりも長い値に設定されているものとする。
次に、基地局装置20が認識残量報告を複数回連続して送信する処理(以降、連続送信処理)について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。図10は、前述の認識残量報告処理に相当する処理であって、所定の間隔で逐次実行される。まずステップS501では認識残量報告部G6が、対象UE10が報告条件を充足しているか否かを判定する。なお、対象UE10が報告条件を充足している場合とは、例えば、対象UE10に対する認識残量が所定の報告閾値Nrp以下となっている場合である。つまり、ステップS501は、対象UE10に対する認識残量が所定の報告閾値Nrp以下となっているか否かを判定する処理に相当する。報告条件が充足されている場合にはステップS501を肯定判定してステップS502に移る。一方、報告条件が充足されていない場合には、ステップS501を否定判定して本フローを終了する。
ステップS502では認識残量報告部G6が、本フロー開始後において認識残量報告を送信した回数を示す送信回数kを0に設定してステップS503に移る。なお、送信回数kは、本フローを実施する上で用いられる変数パラメータであって、0以上の整数が設定される。
ステップS503では認識残量報告部G6が、基地局送受信部21と協働して認識残量報告を対象UE10に送信してステップS504に移る。ステップS504では認識残量報告部G6が、基地局送受信部21で対象UE10から送信された残量ゼロ通知を受信したか否かを判定する。対象UE10から送信された残量ゼロ通知を受信した場合には、ステップS504を肯定判定して本フローを終了する。認識残量報告を送信してから所定の受信待機時間経過しても、SRや残量ゼロ通知といった対象UE10からの応答信号を受信しなかった場合にはステップS504を否定判定してステップS505に移る。なお、受信待機時間は、信号往復時間に所定の裕度を加えた値に設定されればよい。ここでは受信待機時間は送信間隔Tintと同じ値に設定されているものとするが、送信間隔Tintは受信待機時間よりも長い値に設定されていてもよい。
ステップS505では、送信回数kをインクリメント(つまり1を加算)してステップS506に移る。ステップS506では送信回数kが最大送信回数kmaxに到達したか否かを判定する。送信回数kが最大送信回数kmaxに到達している場合には、ステップS506を肯定判定して本フローを終了する。送信回数kが最大送信回数kmaxに到達しているということは、既に認識残量報告を最大送信回数kmax回送信していることを意味するためである。一方、送信回数kが最大送信回数kmaxに到達していない場合には、ステップS506を否定判定してステップS503に戻る。
以上で述べたステップS502〜S506の処理が認識残量報告を所定の規定回数連続して送信する処理(つまり連続送信処理)に相当する。このように報告条件が充足されたUE10に対して認識残量報告を複数回連続して送信することで、認識残量報告がUE10で受信されない恐れを低減することができる。つまり、無線区間で生じる伝送誤り等に対するロバスト性を高めることができる。
また、連続送信処理を実行している途中で対象UE10からの信号(例えばSRや残量ゼロ通知)を受信した場合には、連続送信処理を終了(換言すれば停止)する。例えば、最大送信回数が4に設定されている構成において認識残量報告を2回送信した時点で対象UE10から残量ゼロ通知を受信した場合には、本来送信するはずだった3回目、4回目の認識残量報告は送信しない。このような構成によれば、過剰に認識残量報告を送信することを抑制できる。すなわち、通信リソースの過剰消費を抑制することができる。
なお、以上では一例として、UE10は認識残量報告を受信した時点においてバッファB1が空である場合には、残量ゼロ通知を送信するものとしたが、これに限らない。残量ゼロ通知の代わりに整合確認信号を送信するように構成されていても良い。また、UE10は実施形態と同様に、整合性判定部F5によって基地局装置20での認識残量と実残量とが整合していないと判定された場合を除いては、認識残量報告に対する応答を基地局装置20に送信しないように構成されていても良い。
[変形例5]
上述した実施形態では、全てのUE10を区別すること無く、認識残量報告を送信する態様を例示したが、これに限らない。基地局装置20は、低遅延要求の高いベアラが必要となる特定のアプリ(つまり低遅延要求アプリ)がインストールされているUE10のみに認識残量報告を送信するように構成しても良い。換言すれば、報告条件として、UE10が予め低遅延要求アプリとして登録されている種類のアプリがインストールされている端末(以降、低遅延要求端末)であることを組み入れても良い。ここではそのような態様の一例を変形例5として説明する。なお、低遅延要求端末としてのUE10が請求項に記載の低遅延装置に相当する。
本変形例5におけるUE10は、基地局装置20との通信を開始した際に、自発的に、又は、基地局装置20からの問い合わせに応答する形で、低遅延要求端末であるか否かを示す信号(以降、端末情報)を送信するように構成されているものとする。また、変形例5の基地局制御部22は図11に示すように、端末情報を受信することにより、UE10が低遅延要求端末であるか否かを判定する端末判定部G7を備える。端末判定部G7が請求項に記載の装置種別判定部に相当する。
なお、端末情報は通信を開始したときだけでなく、定期的に送信されるように設定されていても良い。また、SRが端末情報として機能するように構成されていてもよい。さらに、端末判定部G7はUE10が送信してくるユーザデータのヘッダを参照することで、当該UE10が低遅延要求端末であるか否かを識別しても良い。具体的には、UE10が所定の低遅延要求アプリによって生成されたユーザデータを送信してきた場合に、当該UE10は、低遅延要求端末であると判定しても良い。端末判定部G7はUE10から送信されてくるデータに基づいて、低遅延要求端末であるか否かの判定を実施すればよい。
また、変形例5では、報告条件として、対象UE10が低遅延要求端末であること(より好ましくは低遅延要求アプリが実行中であること)が設定されているものとする。そして、低遅延要求アプリがインストールされているUE10にのみ、認識残量報告処理を実施する。すなわち、認識残量報告部G6は、UE10に対する動作モードとして、認識残量報告処理を実施する動作モードである確認実施モードと、認識残量報告処理を実施しない動作モードである通常モードと、を備える。低遅延要求アプリがインストールされているUE10にのみ、確認実施モードを適用(換言すれば起動)し、認識残量報告を随時送信する。
図12は本変形例5の認識残量報告部G6の作動の一例を示すフローチャートである。基地局制御部22は、UE10との通信を開始すると、図12に示す処理をステップS601から実行する。まずステップS601では基地局送受信部21が端末情報を受信し、認識残量報告部G6に提供してステップS602に移る。ステップS602では認識残量報告部G6が、受信した端末情報に基づき、通信を開始したUE10が低遅延要求アプリを備えているか否かを判定する。UE10が低遅延要求アプリを備えている場合にはステップS602を肯定判定してステップS603に移る。一方、UE10が低遅延要求アプリを備えていない場合にはステップS602を否定判定してステップS605に移る。
ステップS603では、ステップS601で受信した端末情報の送信元であるUE10に対して既に確認実施モードを適用しているか否かを判定する。既に確認実施モードを適用している場合にはステップS603が肯定判定されて本フローを終了する。一方、まだ確認実施モードを適用していない場合にはステップS603を否定判定してステップS604に移る。ステップS604では端末情報の送信元であるUE10に対して確認実施モードを適用して本フローを終了する。以降、当該UE10に対しては前述の認識残量報告処理を逐次実行する。ステップS605では端末情報の送信元であるUE10に対して通常モードを適用して本フローを終了する。この場合、当該UE10に対しては認識残量報告処理を実行しない。
このような構成によれば、まず、認識残量報告の送信先となりうるUE10の数を抑制することができるため、認識残量報告の送信頻度自体を低減できる。その結果、基地局装置20とUE10とが認識残量報告を送受信する構成を導入することによって通信リソースが逼迫する恐れを低減できる。また、認識残量報告を受信しうるUE10の数も抑制できるため、基地局装置20へSRが送信される頻度を低減することができる。これにより、通信リソースが逼迫する恐れをより一層低減できる。
なお、以上では低遅延要求アプリがインストールされている場合に、確認実施モードを適用する態様を開示したが、これに限らない。低遅延要求アプリがインストールされてあってかつ、その低遅延要求アプリが実行中(換言すればアクティブである)場合に、確認実施モードを適用するほうが好ましい。また、UE10が低遅延要求アプリを備えているか否かは、UE10が自分自身にインストールされてあって且つアクティブな状態のアプリのリストを基地局装置20に送信することによって、基地局装置20が判定してもよい。
また、以上では低遅延要求アプリがインストールされているかによって、確認実施モードを適用するか否かを切り分ける態様を開示したが、これに限らない。例えば、通信制御プログラムが旧バージョンであって、基地局装置20が送信する認識残量報告を受信できない(認識できない)端末に対しては、認識残量報告を送信しても意味がない。故に、基地局装置20は、UE10との通信によって認識残量報告を認識できる端末であるか否かを判定し、認識残量報告を認識できる端末のみに、確認実施モードを適用するように構成されていても良い。
[変形例6]
上述した変形例5ではUE10に低遅延要求アプリがインストールされているか否か(より好ましくは当該アプリを実行しているか否か)によって確認実施モードの適用/不適用を切り替える態様を開示した。換言すれば基地局装置20が主体となって、認識残量報告の送信に由来するSRの発呼頻度を抑制する態様を開示したが、これに限らない。変形例6として、UE10と基地局装置20に下記の構成を導入することによって、認識残量報告の送信に由来するSRの発呼頻度を抑制してもよい。
変形例6における基地局装置20は、基地局装置20との通信を開始したUE10に対して、認識残量報告の受信に対する作動の規則を示す信号である応答設定を送信する。応答設定は、例えば、低遅延要求アプリが生成したユーザデータ(つまり低遅延データ)がバッファB1に保存されてあって、かつ、基地局装置20の認識残量と実残量とが整合していない場合にのみ、SRの送信を許可する旨を示す信号とする。
また、変形例6のUE10は、基地局装置20からの応答設定を受信すると、当該応答設定に示されている規則を保存するとともに、整合性判定部F5の作動規則として適用する。整合性判定部F5は、上記の応答設定が適用されている場合、図8に示すステップS404で肯定判定されたり、ステップS406で肯定判定されたりした場合であっても、バッファB1に低遅延データが存在していない場合には、ステップS405を実行せずに終了する。すなわち、SR送信部F11にSRを送信させない。一方、図8に示すステップS404で肯定判定されたり、ステップS406で肯定判定されたりした場合において、バッファB1に低遅延データが格納されている場合にはステップS405を実行し、SRを送信させる。
このような態様によっても、上述した変形例5と同様の効果を奏する。なお、基地局装置20が応答設定を送信するタイミングは適宜設計されれば良い。例えばセルエリア30に存在する全てのUE10に対して定期的にブロードキャスト(換言すればアドバイズ)するように設定されていても良い。
[変形例7]
一般的にLTEの規格に準拠したUE10において、アプリケーション部121が生成した種々のユーザデータは、そのデータに対応するLCGによって区別されてバッファB1に保存される。なお、或るユーザデータに対応するLCGとは、当該データに割り当てられているLCIDの論理チャネルが属するLCGである。換言すれば、バッファB1は、仮想的にLCGで分割されて運用される。
図13は、LCG毎のバッファを概念的に表した図である。LCGとしてLCG1〜4が用意されている場合、バッファB1は、図13に示すようにLCG1用のバッファB11、LCG2用のバッファB12、LCG3用のバッファB13、及びLCG4用のバッファB14を備える。各LCG用のバッファを個別バッファとも記載する。
バッファB1は、仮想的にLCGで分割されて運用されるため、BSRもまたLCG毎の送信待ちデータ量を表すデータフォーマットで送信される場合がある。そのような構成においては、基地局装置20は、個別バッファ毎に認識残量報告を実施しても良い。また、認識残量報告部G6は、特定の個別バッファのみを対象として認識残量報告を実施しても良い。その場合に対象とする個別バッファは低遅延データが保存されうる個別バッファである。
また、前述の通り、各LCIDとLCGとの対応関係は予め設定されている。したがって、アプリ等によって生成されたデータが、どの個別バッファに収容されるかは定まっている。故に、低遅延要求アプリとしての運転支援アプリが生成したユーザデータが保存される個別バッファも一意に定まる。仮に運転支援アプリが生成したユーザデータの保存先がLCG4用のバッファB14に保存されるように設定されている場合、LCG4用のバッファB14にユーザデータが存在することは、低遅延データがバッファB1に保存されていることを意味する。
よって、低遅延データがバッファB1に保存されているか否かを判定することは、低遅延要求アプリと対応付けられている個別バッファ(換言すれば低遅延データが保存される個別バッファ)にユーザデータが存在しているか否かを判定することに相当する。
[変形例8]
以上では、無線通信システム100を、LTEに準拠した無線通信を提供するシステムとする態様を例示したがこれに限らない。無線通信システム100は、HSPA(High Speed Packet Access)などといった、LTE以外の通信規格に準拠した無線通信を提供するシステムであってもよい。
また、低遅延要求アプリとして運転支援アプリを例示したが、低遅延要求アプリは、これに限らない。リアルタイムな交通状況を示す情報を取り扱うアプリは、低遅延要求アプリに該当する。リアルタイムな交通状況を示す情報を取り扱うアプリとは、例えば、自動運転のためのアプリや、車両を遠隔操作するためのアプリなどである。すなわち、車両制御に供されるアプリ(以降、車両用アプリ)は低遅延要求アプリに該当する。また、歩行者が携帯する携帯端末にインストールされて、当該歩行者と衝突の危険がある車両についての情報を提示するアプリなども低遅延要求アプリに相当する。