しかし、特許文献1のものは、狭隘部であるボイラパネルのチューブ突き合わせ溶接部の間隙においても隣接するチューブと干渉することなく溶接を行えるようにしたものであり、1周の全姿勢溶接が行えるものであるが、切断された伝熱管の管開先部を閉止するものではない。従って、狭隘部において伝熱管の管開先部に閉止プラグを自動で配置できるものではなく、作業員が進入できない狭隘部で伝熱管の管開先部を自動的に閉止できるものではない。
また、健全な伝熱管を切断して穴のあいた伝熱管を切断するための作業スペースを確保するので健全な伝熱管が犠牲管となる。さらには、穴のあいた伝熱管だけでなく作業スペースを確保するために切断した犠牲管(健全な伝熱管)の閉止処理が必要となるので作業量が多くなり時間や費用がかかる。また、閉止処理した伝熱管は使用できなくなるので、全体としての伝熱面積が減るために熱効率が低下する。
そこで、より早く穴のあいた伝熱管を閉止処理して発電設備の運転再開し、計画外の停止時間を短くしたい要請がある。また、犠牲管の数を極力抑制し熱効率の低下を抑制したいという要請がある。
本発明の目的は、管寄と伝熱管との狭隘部で伝熱管の閉止処理を行うことができ、健全な伝熱管の切断を極力抑制できる管閉止用溶接装置及び方法を提供することである。
請求項1の発明に係る管閉止用溶接装置は、複数の伝熱管が設置された複数の管寄の間の狭隘部に挿入され前記伝熱管のうち切断された伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接する溶接ヘッドと、操作部からの操作により移動旋回機構部を介して前記溶接ヘッドを移動旋回し前記管開先部に前記閉止プラグを配置するとともにTIG溶接の際にワイヤ供給先端保持部からワイヤが供給される状態でトーチを前記閉止プラグの溶接位置に設定する溶接ヘッド設定機構部と、前記ワイヤ供給先端保持部にワイヤを供給するワイヤ供給装置と、前記溶接ヘッドのトーチに溶接用の電力を給電する電源装置と、TIG溶接の際に前記管開先部及び前記閉止プラグを大気から遮断して保護する不活性ガスを前記管開先部及び前記閉止プラグに供給する不活性ガス供給装置と、リモコンからの指令により前記ワイヤ供給装置から供給されるワイヤや前記電源装置から供給される溶接用電力及び前記不活性ガス供給装置から供給される不活性ガスの流量を制御するとともに前記トーチを駆動するトーチ回転用モータを制御し前記トーチを前記閉止プラグの溶接位置に位置決めする制御装置とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明に係る管閉止用溶接装置は、請求項1の発明において、前記トーチと前記ワイヤ供給先端保持部の位置関係は、前記管寄と前記管寄との間の狭隘部に前記溶接ヘッドを挿入する際には、前記ワイヤ供給先端保持部を前記トーチの後端に位置させ前記狭隘部を通過可能とし、TIG溶接の際には、トーチとワイヤ供給先端保持部から供給されるワイヤの先端との位置が前記閉止プラグの溶接位置になるように設定することを特徴とする。
請求項3の発明に係る管閉止用溶接装置は、請求項1または請求項2の発明において、前記管開先部は、ソケット形状の開先加工部であることを特徴とする。
請求項4の発明に係る管閉止用溶接装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかの発明において、前記溶接ヘッド設定機構部の前記移動旋回機構部は、前記溶接ヘッドを垂直方向に移動させる垂直方向移動機構部と、前記溶接ヘッドを水平方向に移動させる水平方向移動機構部と、前記溶接ヘッドを水平面で旋回させる水平旋回機構部とを有し、
前記管寄の中央列の伝熱管の管開先部に閉止プラグを前記TIG溶接する際には、前記TIG溶接の対象の前記管開先部が存在する前記管寄の間の狭隘部に前記溶接ヘッドを挿入し、前記垂直方向移動機構部及び前記水平方向移動機構部にて、前記TIG溶接の対象の前記管開先部の近傍まで前記溶接ヘッドを移動させ、その後に、前記水平旋回機構部及び前記水平方向移動機構部にて前記溶接ヘッドを前記TIG溶接の対象の前記管開先部まで移動させることを特徴とする。
請求項5の発明に係る管閉止用溶接装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかの発明において、前記溶接ヘッド設定機構部の移動旋回機構部は、前記溶接ヘッドを垂直方向に移動させる垂直方向移動機構部と、前記溶接ヘッドを水平方向に移動させる水平方向移動機構部と、前記管開先部への前記閉止プラグの挿入方向に前記溶接ヘッドを旋回させる挿入角旋回機構部と、前記管開先部への前記閉止プラグの挿入方向に前記溶接ヘッドを移動させる挿入方向移動機構部とを有し、前記管寄の端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグを前記TIG溶接する際には、前記TIG溶接の対象の前記管開先部が存在する前記管寄の間の狭隘部に前記溶接ヘッドを挿入し、前記垂直方向移動機構部及び前記水平方向移動機構部にて、前記TIG溶接の対象の前記管開先部の近傍まで前記溶接ヘッドを移動させ、その後に、前記挿入角旋回機構部及び前記挿入方向移動機構部にて前記溶接ヘッドを前記TIG溶接の対象の前記管開先部まで移動させることを特徴とする。
請求項6の発明に係る管閉止用溶接装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかの発明において、前記溶接ヘッド設定機構部の移動旋回機構部は、前記溶接ヘッドを垂直方向に移動させる垂直方向移動機構部と、前記溶接ヘッドを水平方向に移動させる水平方向移動機構部と、前記溶接ヘッドを水平面で旋回させる水平旋回機構部と、前記管開先部への前記閉止プラグの挿入方向に前記溶接ヘッドを旋回させる挿入角旋回機構部と、前記管開先部への前記閉止プラグの挿入方向に前記溶接ヘッドを移動させる挿入方向移動機構部とを有し、前記管寄の中央列の伝熱管の管開先部に閉止プラグを前記TIG溶接する際には、前記TIG溶接の対象の前記管開先部が存在する前記管寄の間の狭隘部に前記溶接ヘッドを挿入し、前記垂直方向移動機構部及び前記水平方向移動機構部にて、前記TIG溶接の対象の前記管開先部の近傍まで前記溶接ヘッドを移動させ、その後に、前記水平旋回機構部及び前記水平方向移動機構部にて前記溶接ヘッドを前記TIG溶接の対象の前記管開先部まで移動させ、前記管寄の端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグを前記TIG溶接する際には、前記TIG溶接の対象の前記管開先部が存在する前記管寄の間の狭隘部に前記溶接ヘッドを挿入し、前記垂直方向移動機構部及び前記水平方向移動機構部にて、前記TIG溶接の対象の前記管開先部の近傍まで前記溶接ヘッドを移動させ、その後に、前記挿入角旋回機構部及び前記挿入方向移動機構部にて前記溶接ヘッドを前記TIG溶接の対象の前記管開先部まで移動させることを特徴とする。
請求項7の発明に係る管閉止用溶接装置は、請求項1乃至請求項6のいずれかの発明において、前記不活性ガス供給装置から前記管開先部及び前記閉止プラグに供給する不活性ガスのガス供給管、前記電源装置から前記トーチに溶接用の電力を給電する電線、前記ワイヤ供給装置から前記ワイヤ供給先端保持部に供給されるワイヤを、前記溶接ヘッドの手前まで一つの鞘管に収納したことを特徴とする。
請求項8の発明に係る管閉止用溶接方法は、管寄に設置された複数の伝熱管のうち前記管寄の中央列の伝熱管が漏洩管であるときは、前記中央列の伝熱管の手前に位置する端列の伝熱管の上部管寄側において上下2箇所を切断するとともに下部管寄側においても上下2箇所を切断し、前記端列の伝熱管の前記上部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち前記上部管寄側の切断箇所に管開先部を形成するとともに前記端列の伝熱管の前記下部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち前記下部管寄側の切断箇所に管開先部を形成し、前記中央列の伝熱管の上部管寄側において上下2箇所を切断するとともに下部管寄側においても上下2箇所を切断し、前記中央列の伝熱管の前記上部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち前記上部管寄側の切断箇所に管開先部を形成するとともに前記中央列の伝熱管の前記下部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち前記下部管寄側の切断箇所に管開先部を形成し、請求項1乃至請求項7のいずれかの管閉止用溶接装置を用いて前記中央列の伝熱管の上部管寄側及び下部管寄側の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接し、請求項1乃至請求項7のいずれかの管閉止用溶接装置を用いて前記端列の伝熱管の上部管寄側及び下部管寄側の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接し、一方、管寄に設置された複数の伝熱管のうち前記管寄の端列の伝熱管が漏洩管であるときは、前記端列の伝熱管の伝熱管の上部管寄側において上下2箇所を切断するとともに下部管寄側においても上下2箇所を切断し、前記端列の伝熱管の前記上部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち前記上部管寄側の切断箇所に管開先部を形成するとともに前記端列の伝熱管の前記下部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち前記下部管寄側の切断箇所に管開先部を形成し、請求項1乃至請求項7のいずれかの管閉止用溶接装置を用いて前記端列の伝熱管の上部管寄側及び下部管寄側の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接することを特徴とする。
請求項1の発明よれば、複数の伝熱管が設置された複数の管寄の間の狭隘部に溶接ヘッドを挿入し、溶接ヘッドにより伝熱管のうち切断された伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接し、溶接ヘッド設定機構部は操作部からの操作により溶接ヘッドを移動旋回し管開先部に閉止プラグを配置するとともにTIG溶接の際にワイヤ供給先端保持部からワイヤが供給される状態でトーチを閉止プラグの溶接位置に設定するので、作業員が進入できない狭隘部であっても、伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接できる。また、溶接ヘッドが通過できる空間を確保すればよいので、作業員の作業スペースを確保するために健全な伝熱管の切断をする必要がなくなる。従って、伝熱管を閉止処理した後の発電設備の運転再開において熱効率の低下を抑制できる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、トーチとワイヤ供給先端保持部の位置関係について、管寄と管寄との間の狭隘部に溶接ヘッドを挿入する際には、ワイヤ供給先端保持部をトーチの後端に位置させて狭隘部を通過可能とし、TIG溶接の際には、トーチとワイヤ供給先端保持部から供給されるワイヤの先端との位置が閉止プラグの溶接位置になるように設定するので、溶接ヘッドは管寄と管寄との間の狭隘部を通過でき、TIG溶接の際にはトーチとワイヤとの位置関係を閉止プラグの溶接位置に保持できる。
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、管開先部はソケット形状の開先加工部であるので、閉止プラグをソケット形状の管開先部に嵌め込むことができる。従って、通常の溶接で必要となる仮止め工程を省略でき、また、狭隘部における溶接ヘッドの位置設定及びトーチ先端の位置設定が容易になる。
請求項4の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかの発明の効果に加え、溶接ヘッド設定機構部の移動旋回機構部として、垂直方向移動機構部、水平方向移動機構部、水平旋回機構部を有した移動旋回機構部を用いることで、管寄の中央列の伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接する場合に適用できる。
請求項5の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかの発明の効果に加え、溶接ヘッド設定機構部の移動旋回機構部として、垂直方向移動機構部、水平方向移動機構部、挿入角旋回機構部、挿入方向移動機構部を有した移動旋回機構部を用いることで、管寄の端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接する場合に適用できる。
請求項6の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれかの発明の効果に加え、
溶接ヘッド設定機構部の移動旋回機構部として、垂直方向移動機構部、水平方向移動機構部、水平旋回機構部、挿入角旋回機構部、挿入方向移動機構部を有した移動旋回機構部を用いることで、管寄の中央列の伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接する場合、及び管寄の端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接する場合の双方に適用できる。
請求項7の発明によれば、請求項1乃至請求項6のいずれかの発明の効果に加え、不活性ガスのガス供給管、電力を給電する電線、ワイヤ供給先端保持部に供給されるワイヤを溶接ヘッドの手前まで一つの鞘管に収納したので、狭隘部でもスムーズな送給を可能とし、トーチの回転を安定させ溶接品質の悪化を防ぐことができる。
請求項8の発明によれば、管寄に設置された複数の伝熱管のうち管寄の中央列の伝熱管が漏洩管であるときは、中央列の伝熱管の手前に位置する端列の伝熱管を切断して管開先部を形成し、その後に、漏洩管である中央列の伝熱管を切断して管開先部を形成し、請求項1乃至請求項7のいずれかの管閉止用溶接装置を用いて中央列及び端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接し、一方、管寄に設置された複数の伝熱管のうち管寄の端列の伝熱管が漏洩管であるときは、漏洩管である端列の伝熱管を切断して管開先部を形成し、請求項1乃至請求項7のいずれかの管閉止用溶接装置を用いて端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接するので、管寄と伝熱管との狭隘部で伝熱管の閉止処理を行うことができ、健全な伝熱管の切断を極力抑制できる。漏洩管が管寄の端列なら犠牲管は0本、中央列なら犠牲管は1本での補修が可能となる。
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る管閉止用溶接装置の構成図である。図1では図12に示したコンバインドサイクル発電設備の排熱回収ボイラの下部の管寄12の伝熱管11の管開先部14を閉止する場合を示している。この場合、溶接ヘッド17は下部の管寄12の上面の狭隘部に挿入され、伝熱管11の管開先部14を上側から閉止する場合を示している。
図1において、溶接ヘッド17は、切断された伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接するものであり、先端部には閉止プラグ保持部18を備えている。溶接ヘッド17は複数の伝熱管が設置された複数の管寄の間の狭隘部に挿入されて閉止プラグ15をTIG溶接する際には、閉止プラグ保持部18で閉止プラグ15を保持する。また、溶接ヘッド17の先端部にはトーチ19が設けられ、TIG溶接の際に供給されるワイヤ20の先端部を保持するワイヤ供給先端保持部21が設けられている。溶接ヘッド17のトーチ回転用モータ22はトーチ19及びワイヤ供給先端保持部21を伝熱管11の管開先部14の周囲を回転駆動させるモータであり、トーチ19はワイヤ供給先端保持部21から供給されるワイヤ20を溶接材として管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する。
溶接ヘッド17は、溶接ヘッド設定機構部23からの操作により、管開先部14までの移動や管開先部14への閉止プラグ15の配置などの設定が行われる。溶接ヘッド設定機構部23は移動旋回機構部24と操作部25とからなる。移動旋回機構部24は溶接ヘッド17側に設けられ操作部25は溶接ヘッド17とは別置きで設けられる。これは、溶接ヘッド17は複数の伝熱管が設置された複数の管寄の間の狭隘部に挿入されるので小型化を図るためである。
溶接ヘッド設定機構部23の操作部25からの操作により移動旋回機構部24を介して溶接ヘッド17を移動旋回し、管開先部14に閉止プラグ15を配置する。また、トーチを閉止プラグの溶接位置に設定する。この場合、トーチ19にワイヤ供給先端保持部21からワイヤ20が供給される状態としておく。トーチ19とワイヤ供給先端保持部21との位置関係や移動旋回機構部24の動作については後述する。
ワイヤ供給装置26はワイヤ供給先端保持部21にワイヤ20を供給するものであり、制御装置27により制御される。制御装置27には、例えば無線でリモコン28が接続されており、制御装置27はリモコン28からの指令により、ワイヤ供給装置26、電源装置29、不活性ガス供給装置30を制御するとともにトーチ回転用モータ22を制御する。リモコン28は携帯が可能であることから作業員は制御装置27から離れたい位置でも操作指令を出力できる。
ワイヤ供給装置26は、制御装置27によりTIG溶接の際にワイヤ20の供給量を調整制御する。トーチ回転用モータ22は、制御装置27によりトーチ19及びワイヤ供給先端保持部21の回転位置を管開先部14への閉止プラグ15の溶接位置に位置決めするように制御され、例えば、TIG溶接の際に管開先部14の周囲を1周または複数周回するように制御される。
電源装置29は溶接ヘッド17のトーチ19に溶接用の電力を給電する電源装置であり、制御装置27により電源装置29から供給される溶接用電力が制御される。不活性ガス供給装置30は、TIG溶接の際に管開先部14及び閉止プラグ15に不活性ガスを供給するものであり、制御装置27により不活性ガス供給装置30から供給される不活性ガスの流量が制御される。不活性ガス供給装置30から管開先部14及び閉止プラグ15に不活性ガスを供給することによって、溶接時に管開先部14及び閉止プラグ15の溶融金属部分を大気から遮断して保護する。不活性ガスは、例えば、アルゴンやヘリウムなどである。
不活性ガス供給装置30からのガス供給管31、電源装置29からの電線32、ワイヤ供給装置26からのワイヤ20を一つの鞘管に収納するようにしてもよい。例えば、図1の矢印X1で示す範囲、すなわち、不活性ガス供給装置30、電源装置29、ワイヤ供給装置26の出口からのガス供給管31、電線32、ワイヤ20を纏めた箇所から溶接ヘッド17の手前までの範囲を一つの鞘管に収納する。なお、ガス供給管31は不活性ガス供給装置30から制御装置27を経由して引き出された場合を示している。これにより、溶接ヘッド17が動いたとしても、狭隘部でのスムーズな送給を可能とし、トーチ19の回転を安定させることができ溶接品質の悪化を防ぐことができる。
次に、トーチ19とワイヤ供給先端保持部21との位置関係について説明する。狭隘部の隙間に溶接ヘッド17を挿入するときと、溶接ヘッド17でTIG溶接を行うときとの2つの位置がある。管寄12と管寄12との間の狭隘部に溶接ヘッド17を挿入する際には、ワイヤ供給先端保持部21をトーチ19の後端に位置させる。これにより、トーチ19の幅内にワイヤ供給先端保持部21が位置することになるので狭隘部を通過可能となる。一方、TIG溶接の際には、トーチ19とワイヤ供給先端保持部21から供給されるワイヤ20の先端との位置が閉止プラグ15の溶接位置になるように設定する。これにより、閉止プラグ15の溶接に必要なワイヤ20をワイヤ供給先端保持部21から適正に供給できる。このように、溶接ヘッド17を管寄12と管寄12の隙間(例えば45mm)に挿入させるため、ワイヤ供給先端保持部21の溶接ヘッド17に対する角度をTIG溶接時と隙間通過時とで異なる2つの位置をとるようにしている。
図2は本発明の第1実施形態における管開先部及び閉止プラグの説明図である。図2(a)に示すように、伝熱管11の管開先部14はソケット形状の開先加工部である。また、閉止プラグ15もソケット形状の管開先部14に対応した閉止プラグとした。ソケット形状の管開先部14としたのは、管開先部14に閉止プラグ15を配置し易くしTIG溶接に適した形状とたことに加え、穴があいた伝熱管11は内面に減肉が残っている箇所で溶接すると溶接品質が悪化する懸念があるため減肉部分は削り取った方がよいことも配慮したことによる。
図2(b)に示すように、ソケット形状の管開先部14に閉止プラグ15を嵌め込むことによって溶接ヘッド17のトーチ19の位置を固定できる。すなわち、溶接ヘッド17の閉止プラグ保持部18に閉止プラグ15を保持してから伝熱管11のソケット形状の管開先部14に閉止プラグ15に設定する。そして、溶接ヘッド17のトーチ19で管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接によるすみ肉溶接するので、通常の溶接で必要となる仮止め工程を省略できる。また、狭隘部における溶接ヘッド17の位置設定及びトーチ19の先端の位置設定が容易になり、トーチ19の自動高さ調整機構がなくても高品質な溶接が可能となり溶接ヘッド17の小型化が可能となる。
ここで、図1では図12に示したコンバインドサイクル発電設備の排熱回収ボイラの下部の管寄12の伝熱管11の管開先部14を閉止する場合を示している。この場合、溶接ヘッド17は下部の管寄12の上面の狭隘部に挿入されることになる。そして、溶接ヘッド設定機構部23の操作部25、ワイヤ供給装置26、制御装置27、電源装置29、不活性ガス供給装置30は、下部の管寄12の上面の狭隘部の外部である図示省略の作業員が進入できる空間に配置される。
一方、上部の管寄12の伝熱管11の管開先部14を閉止する場合は、伝熱管11の管開先部14を下側から閉止することになる。なお、第1実施形態に係る管閉止用溶接装置は全姿勢溶接に対応しているので、上向き姿勢での閉止溶接が可能である。すなわち、図3に示すように、溶接ヘッド17は伝熱管11の管開先部14を下側から閉止することになるので、上部の管寄12のさらに上部の図示省略の作業員が進入できる空間から溶接ヘッド17を吊り下げて溶接ヘッド17を上部の管寄12の下面の狭隘部に挿入することになる。そして、溶接ヘッド設定機構部23の操作部25、ワイヤ供給装置26、制御装置27、電源装置29、不活性ガス供給装置30は、上部の管寄12のさらに上部の図示省略の作業員が進入できる空間に配置される。
次に、溶接ヘッド設定機構部23の移動旋回機構部24の動作について説明する。図4は、溶接ヘッド設定機構部23の移動旋回機構部24の実施例1の構成図である。この実施例1は、溶接ヘッド設定機構部23の移動旋回機構部24として、垂直方向移動機構部33、水平方向移動機構部34、水平旋回機構部35を有した移動旋回機構部24を用いることで、管寄12の中央列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合に適用できるものである。
図4において、移動旋回機構部24は、垂直方向移動機構部33と、水平方向移動機構部34と、水平旋回機構部35とから構成されている。垂直方向移動機構部33は溶接ヘッド17を垂直方向に移動させる機構部であり、水平方向移動機構部34は溶接ヘッド17を水平方向に移動させる機構部である。また、水平旋回機構部35は溶接ヘッド17を水平面で旋回させる機構部である。垂直方向移動機構部33により溶接ヘッド17を高さ方向に移動でき、水平方向移動機構部34により溶接ヘッド17を水平方向に移動できる。また、水平旋回機構部35は溶接ヘッド17を水平面で旋回させることによって溶接ヘッド17の向きを変える。
TIG溶接の対象の管開先部14が存在する管寄12の間の狭隘部に溶接ヘッド17を挿入し、垂直方向移動機構部33及び水平方向移動機構部34にて、TIG溶接の対象の管開先部14の近傍まで溶接ヘッド17を移動させ、その後に、水平旋回機構部35及び水平方向移動機構部34にて溶接ヘッド17をTIG溶接の対象の管開先部14まで移動させる。管寄12の中央列の伝熱管11は管寄12に対して垂直方向に垂設して設けられているので、その管開先部14は管寄12の表面に対して垂直方向に垂設している。従って、垂直方向移動機構部33と、水平方向移動機構部34と、水平旋回機構部35との3つの機構部により、中央列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15を配置できTIG溶接できる。
図5は、溶接ヘッド設定機構部23の移動旋回機構部24の実施例2の構成図である。この実施例2は、溶接ヘッド設定機構部23の移動旋回機構部24として、垂直方向移動機構部33、水平方向移動機構部34、挿入角旋回機構部36、挿入方向移動機構部37を有した移動旋回機構部24を用いることで、管寄12の端列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合に適用できるものである。
図5において、移動旋回機構部24は、垂直方向移動機構部33と、水平方向移動機構部34と、挿入角旋回機構部36、挿入方向移動機構部37とから構成されている。垂直方向移動機構部33は溶接ヘッド17を垂直方向に移動させる機構部であり、水平方向移動機構部34は溶接ヘッド17を水平方向に移動させる機構部である。また、挿入角旋回機構部36は管開先部14への閉止プラグ15の挿入方向に溶接ヘッド17を旋回させる機構部であり、挿入方向移動機構部37は管開先部14への閉止プラグ15の挿入方向に溶接ヘッド17を移動させる機構部である。
TIG溶接の対象の管開先部14が存在する管寄12の間の狭隘部に溶接ヘッド17を挿入し、垂直方向移動機構部33及び水平方向移動機構部34にて、TIG溶接の対象の管開先部14の近傍まで溶接ヘッド17を移動させる。その後に、挿入角旋回機構部36及び挿入方向移動機構部37にて溶接ヘッド17をTIG溶接の対象の管開先部14まで移動させる。管寄12の端列の伝熱管11は管寄12に対して垂直方向から所定の角度を持って斜設して設けられているので、その管開先部14は管寄12の表面に対して垂直方向に対し斜設している。従って、挿入角旋回機構部36により管開先部14の斜設の角度に溶接ヘッド17を旋回し、その後に、挿入方向移動機構部37により管開先部14の斜設の角度方向に溶接ヘッド17を移動させる。このように、垂直方向移動機構部33と、水平方向移動機構部34と、挿入角旋回機構部36と、挿入方向移動機構部37の4つの機構部により、端列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15を配置できTIG溶接できる。
図6は、溶接ヘッド設定機構部23の移動旋回機構部24の実施例3の構成図である。この実施例3は、溶接ヘッド設定機構部23の移動旋回機構部24として、垂直方向移動機構部33、水平方向移動機構部34、水平旋回機構部35、挿入角旋回機構部36、挿入方向移動機構部37を有した移動旋回機構部24を用いることで、管寄12の中央列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合、及び管寄12の端列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合の双方に適用できるものである。
図6において、移動旋回機構部24は、垂直方向移動機構部33と、水平方向移動機構部34と、水平旋回機構部35と、挿入角旋回機構部36、挿入方向移動機構部37とから構成されている。垂直方向移動機構部33は溶接ヘッド17を垂直方向に移動させる機構部であり、水平方向移動機構部34は溶接ヘッド17を水平方向に移動させる機構部である。また、水平旋回機構部35は溶接ヘッド17を水平面で旋回させる機構部である。
垂直方向移動機構部33により溶接ヘッド17を高さ方向に移動でき、水平方向移動機構部34により溶接ヘッド17を水平方向に移動できる。また、水平旋回機構部35は溶接ヘッド17を水平面で旋回させることによって溶接ヘッド17の向きを変える。一方、挿入角旋回機構部36は管開先部14への閉止プラグ15の挿入方向に溶接ヘッド17を旋回させる機構部であり、挿入方向移動機構部37は管開先部14への閉止プラグ15の挿入方向に溶接ヘッド17を移動させる機構部である。
管寄12の中央列の伝熱管11は管寄12に対して垂直方向に垂設して設けられているので、その管開先部14は管寄12の表面に対して垂直方向に垂設している。従って、垂直方向移動機構部33と、水平方向移動機構部34と、水平旋回機構部35との3つの機構部により、中央列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15を配置できTIG溶接できる。
一方、管寄12の端列の伝熱管11は管寄12に対して垂直方向から所定の角度を持って斜設して設けられているので、その管開先部14は管寄12の表面に対して垂直方向に対し斜設している。従って、垂直方向移動機構部33と水平方向移動機構部34とに加えて、挿入角旋回機構部36により管開先部14の斜設の角度に溶接ヘッド17を旋回し、その後に、挿入方向移動機構部37により管開先部14の斜設の角度方向に溶接ヘッド17を移動させる。このように、垂直方向移動機構部33と、水平方向移動機構部34と、挿入角旋回機構部36と、挿入方向移動機構部37の4つの機構部により、端列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15を配置できTIG溶接できる。
このように、管寄12の中央列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合には実施例1の移動旋回機構部24を用いる。管寄12の端列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合には実施例2の移動旋回機構部24を用いる。実施例1、2の移動旋回機構部24は中央列の伝熱管11の場合と端列の伝熱管11の場合とで取り替えて使用する。一方、実施例3の移動旋回機構部24は中央列の伝熱管11の場合と端列の伝熱管11の場合の双方で使用できるので取り替える必要はない。
次に、管寄12の中央列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合の手順について説明する。図7は管寄の中央列の伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接する場合に切断する伝熱管の説明図である。図7において、いま、漏洩管が管寄12B1、12B2を連結する中央列の伝熱管11b1であったとすると、伝熱管11b1は4箇所の切断箇所Y1〜Y4で切断され、また、伝熱管11b1の手前の健全な伝熱管11b1も4箇所の切断箇所Z1〜Z4で切断される。この場合、漏洩管である伝熱管11b1の管寄12B1、12B2側の2箇所の切断箇所Y1、Y4、及び犠牲管である伝熱管11b2の管寄12B1、12B2側の2箇所の切断箇所Z1、Z4がTIG溶接の対象となる管開先部14となる。このように、漏洩管が中央列の伝熱管11b1である場合には、その手前の健全な伝熱管11b2も切断され犠牲管となる。これは、溶接ヘッド17を挿入させて漏洩管である伝熱管11b1のTIG溶接の対象となる管開先部14を溶接できるようにするためである。そして、管寄12B1(12B2)と管寄12C1(12C2)との間の隙間(例えば45mm)である狭隘部38から溶接ヘッド17を挿入させて管開先部14に閉止プラグをTIG溶接することになる。
図8は管寄の中央列の伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接する場合の手順の説明図である。まず、図8(a)に示すように、図7における管寄12B1(B2)の漏洩管である中央列の伝熱管11b1を切断した後の管開先部14(Y1、Y4)、及び犠牲管である端列の伝熱管11b2を切断した後の管開先部14(Z1、Z4)に閉止プラグをTIG溶接するにあたり、管寄12B1(12B2)と管寄12C1(12C2)との間の狭隘部38に溶接ヘッド17を挿入する。
いま、下部の管寄12B2を対象とし、漏洩管である中央列の伝熱管11b1の管開先部14(Y4)をTIG溶接する場合について説明する。漏洩管である中央列の伝熱管11b1の管開先部14(Y4)の近傍まで、移動旋回機構部24の垂直方向移動機構部33及び水平方向移動機構部34にて溶接ヘッド17を移動させる。
次に、図8(b)に示すように、犠牲管に隣接する一方の伝熱管11bxに接触するまで手前まで移動旋回機構部24の水平旋回機構部35にて溶接ヘッド17を左旋回させる。次に、図8(c)に示すように、犠牲管に隣接する他方の伝熱管11byに接触する手前まで移動旋回機構部24の水平方向移動機構部34にて水平方向に移動させる。そして、図8(d)に示すように、旋回と水平方向移動の繰り返しで管開先部14(Y4)の上部に溶接プラグ17を位置合わせし、移動旋回機構部24の垂直方向移動機構部33にて溶接プラグ17を下降し、閉止プラグを管開先部14(Y4)に配置する。
中央列の伝熱管11b1の管開先部14(Y1)をTIG溶接する場合も同様に行われるが、この場合は、上部の管寄12B1を対象とすることから、管開先部14(Y1)の下部に溶接プラグ17を位置合わせし、移動旋回機構部24の垂直方向移動機構部33にて溶接プラグ17を上昇させ、閉止プラグを管開先部14(Y1)に配置することになる。犠牲管である端列の伝熱管11b2の管開先部14(Z1、Z4)のTIG溶接も同様に行われる。
次に、管寄12の端列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合の手順について説明する。図9は管寄の端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接する場合に切断する伝熱管の説明図である。図9において、いま、漏洩管が管寄12B1、12B2を連結する端列の伝熱管11b2であったとすると、伝熱管11b2は4箇所の切断箇所Z1〜Z4で切断される。この場合、漏洩管である伝熱管11b2の管寄12B1、12B2側の2箇所の切断箇所Z1、Z4がTIG溶接の対象となる管開先部14となる。このように、漏洩管が端列の伝熱管11b2である場合には、健全な伝熱管11を犠牲管として切断することはない。この状態で、管寄12B1(12B2)と管寄12C1(12C2)との間の狭隘部38から溶接ヘッド17を挿入させて管開先部14に閉止プラグをTIG溶接することになる。
図10は管寄の端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグをTIG溶接する場合の手順の説明図である。いま、下部の管寄12B2を対象とし、漏洩管である端列の伝熱管11b2の管開先部14(Z4)をTIG溶接する場合について説明する。まず、図10(a)に示すように、図9における管寄12B2の漏洩管である端列の伝熱管11b2を切断した後の管開先部14(Z4)に閉止プラグをTIG溶接するにあたり、管寄12B2と管寄12C2との間の狭隘部38に溶接ヘッド17を挿入する。漏洩管である端列の伝熱管11b2の管開先部14(Z4)の近傍まで、移動旋回機構部24の垂直方向移動機構部33及び水平方向移動機構部34にて溶接ヘッド17を移動させる。
管寄12の端列の伝熱管11は管寄12に対して垂直方向から所定の角度を持って斜設して設けられているので、その管開先部14は管寄12の表面に対して垂直方向に対し斜設している。従って、図10(b)に示すように、移動旋回機構部24の挿入角旋回機構部36により管開先部14の斜設の角度に溶接ヘッド17を旋回し、その後に、移動旋回機構部24の挿入方向移動機構部37により管開先部14(Z4)の斜設の角度方向に溶接ヘッド17を下降させ閉止プラグ15を管開先部14(Z4)に配置する。そして、端列の伝熱管11の管開先部14(Z4)に閉止プラグ15をTIG溶接する。
端列の伝熱管11b2の管開先部14(Z1)をTIG溶接する場合も同様に行われるが、この場合は、上部の管寄12B1を対象とすることから、管開先部14(Z1)の下部に溶接プラグ17を位置合わせし、移動旋回機構部24の垂直方向移動機構部33にて溶接プラグ17を上昇させ、閉止プラグ15を管開先部14(Z1)に配置し、管開先部14(Z1)に閉止プラグ15をTIG溶接する。
以上述べた本発明の第1実施形態によれば、溶接ヘッド17の全体の構成を管寄12と管寄12との間の狭隘部38を通過できるように縦型の外観形状となるようにトーチ回転用モータ22を配置したので管寄12と管寄12との間の狭隘部38を通過できる。溶接ヘッド17は閉止プラグ保持部18で閉止プラグ15を保持し、切断された伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15を配置できるので、作業員が進入できない狭隘部であっても、伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接できる。また、溶接ヘッド17が通過できる空間を確保すればよいので、作業員の作業スペースを確保するために健全な伝熱管11の切断をする必要がなくなる。従って、伝熱管11を閉止処理した後の発電設備の運転再開において熱効率の低下を抑制できる。
また、管寄12と管寄12との間の狭隘部に溶接ヘッド17を挿入する際には、ワイヤ供給先端保持部21をトーチ19の後端に位置させて狭隘部を通過可能とし、TIG溶接の際には、トーチ19とワイヤ供給先端保持部21から供給されるワイヤ20の先端との位置が閉止プラグの溶接位置になるように設定するので、溶接ヘッド17は管寄12と管寄12との間の狭隘部38を通過でき、TIG溶接の際にはトーチ19とワイヤ20との位置関係を閉止プラグ15の溶接位置に保持できる。管開先部14の形状をソケット形状とした場合には、閉止プラグ15をソケット形状の管開先部14に容易に嵌め込むことができ、通常の溶接で必要となる仮止め工程を省略できる。さらには、狭隘部38における溶接ヘッド17の位置設定及びトーチ先端の位置設定が容易になる。
溶接ヘッド設定機構部23の移動旋回機構部24は、垂直方向移動機構部33、水平方向移動機構部34、水平旋回機構部35、挿入角旋回機構部36、挿入方向移動機構部37を有するように構成すると、管寄12の中央列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合、及び管寄12の端列の伝熱管11の管開先部14に閉止プラグ15をTIG溶接する場合の双方に適用できる。また、不活性ガスのガス供給管31、電力を給電する電線32、ワイヤ供給先端保持部21に供給されるワイヤ20を溶接ヘッド17の手前まで一つの鞘管に収納するようにした場合には、狭隘部でもスムーズな送給を可能とし、トーチ19の回転を安定させ溶接品質の悪化を防ぐことができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。図11は本発明の第2実施形態に係る管閉止用溶接方法の手順を示すフローチャートである。まず、漏洩管は管寄の中央列の伝熱管であるか否かを判定する(S1)。漏洩管が管寄の中央列の伝熱管である場合には、中央列の伝熱管の手前に位置する端列の伝熱管の上部管寄側において上下2箇所を切断するとともに下部管寄側においても上下2箇所を切断する(S2)。そして、切断した端列の伝熱管の上部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち上部管寄側の切断箇所に管開先部を形成する(S3)。さらに、切断した端列の伝熱管の下部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち下部管寄側の切断箇所に管開先部を形成する(S4)。
次に、中央列の伝熱管の上部管寄側において上下2箇所を切断するとともに下部管寄側においても上下2箇所を切断する(S5)。そして、中央列の伝熱管の上部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち上部管寄側の切断箇所に管開先部を形成する(S6)。さらに、中央列の伝熱管の下部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち下部管寄側の切断箇所に管開先部を形成する(S7)。
そして、第1実施形態の管閉止用溶接装置を用いて中央列の伝熱管の上部管寄側及び下部管寄側の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接する(S8)。同様に、第1実施形態の管閉止用溶接装置を用いて端列の伝熱管の上部管寄側及び下部管寄側の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接(S9)。
ステップS1の判定で、管寄の端列の伝熱管が漏洩管であると判定されたときは、端列の伝熱管の伝熱管の上部管寄側において上下2箇所を切断するとともに下部管寄側においても上下2箇所を切断する(S10)。そして、端列の伝熱管の上部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち上部管寄側の切断箇所に管開先部を形成する(S11)。さらに、端列の伝熱管の下部管寄側の上下2箇所の切断箇所のうち下部管寄側の切断箇所に管開先部を形成する(S12)。そして、第1実施形態の管閉止用溶接装置を用いて端列の伝熱管の上部管寄側及び下部管寄側の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接する(S13)。
第2実施形態によれば、管寄に設置された複数の伝熱管のうち管寄の中央列の伝熱管が漏洩管であるときは、中央列の伝熱管の手前に位置する端列の伝熱管及び漏洩管である中央列の伝熱管を切断して管開先部を形成し、第1実施形態の管閉止用溶接装置を用いて中央列及び端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接するので、中央列の伝熱管が漏洩管であるときは犠牲管は1本での補修が可能となる。
また、管寄に設置された複数の伝熱管のうち管寄の端列の伝熱管が漏洩管であるときは、
漏洩管である端列の伝熱管を切断して管開先部を形成し、第1実施形態の管閉止用溶接装置を用いて端列の伝熱管の管開先部に閉止プラグを配置しTIG溶接するので、犠牲管は0本となる。これにより、健全な伝熱管の切断を極力抑制しつつ管寄と伝熱管との狭隘部で伝熱管の閉止処理を行うことができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。