JP6855458B2 - 椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物 - Google Patents

椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物 Download PDF

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Description

本発明は、腰痛、慢性腰痛、頸痛、慢性頚痛および尾骨痛等の椎間板性疼痛、ならびに椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物に関する。
腰痛、例えば慢性腰痛は、一生の間に成人人口の約80%に影響を与える一般的な状態である。腰痛は、病態生理が知られている特定の病気ではなく、多くの原因を伴う症状である。腫瘍、骨折または感染等の直接的な原因は、患者の約5〜10%にしか見られないと推定されている。症例の残りの90〜95%において、腰痛は特発性であり、すなわち既知の起源がない。
腰痛の発生の主な原因と思われる背中の構造は、椎間板である。椎間板は、2つの隣接する椎骨の間に配置される。椎間板は、通常は可撓性であり、隣接する椎骨間の動きを可能にする。椎間板は、主にコラーゲンを含む結合組織の輪と、例えばコラーゲンおよびプロテオグリカンを含む半液体の中心とによって形成される。この輪は線維輪と呼ばれ、中心は髄核と呼ばれる。
すでに20〜30歳で、ヒトの椎間板は老化、しばしば椎間板変性と呼ばれるプロセスを受け始める。老化プロセスの間、椎間板は漏出し、またはヘルニア状態になり、腰痛や坐骨神経痛のような症状を引き起こす。椎間板の老化は、通常、60〜80歳で終了する。この段階で、椎間板は、固体で密な結合組織に変換されている。これが起こると、椎間板はほとんど漏出またはヘルニア化しないので、椎間板はもはや症状を生じなくなる。椎間板の老化は、さらに、椎間板の高さの減少および背骨の運動性の低下を意味する。
椎間板変性は、椎間板の中心と線維輪の外側表面との間の連絡を可能にする環状裂傷を誘発することが知られている。従って、椎間板の中心からの炎症性物質等の物質が、線維輪の外側表面上に漏出する可能性がある。通常はサイレント(silent)であり、線維輪の外側表面上に配置された受容体は、椎間板変性の間に椎間板の中心に通常存在する炎症因子によって活性化され得る。このメカニズムは、腰痛を引き起こす1つのメカニズムとして示唆されている。
腰痛を引き起こすことが示唆されている別のメカニズムは、線維輪断裂(annular tears)を介して線維輪の外側表面から椎間板の中心に成長する、新たに形成された血管および神経が存在する可能性があることである。これらの神経は、椎間板が動いて神経に圧力を加えるときに痛みを引き起こすと考えられている。このような進行を抑制および中断する1つの方法は、US2007253930に開示されている。
腰痛を治療するための1つの一般的な方法は、痛みを生じさせることが推測される、椎間板を含む脊椎分節の外科的安定化によるものである。その原理は、内側に延びる神経(ingrowing nerves)が圧迫されて痛みを生じるのを避けるために、痛みを生じる椎間板の動きを減らすことである。しかしながら、この外科的治療は侵襲的であり、完全に満足できるものではない。
腰痛、またはさらに言えば坐骨神経痛を治療するための別の提案された方法は、いわゆる化学的髄核融解術と呼ばれるものであり、髄核を溶解させるために椎間板に酵素を注入し、それにより、椎間板の髄核によって、例えば神経に対して及ぼされる圧力が低減される。
さらに、腰痛を治療するための別の提案された方法は、例えば培養された椎間板の細胞および幹細胞を導入することによる椎間板の活性化または再生によるものである。しかしながら、椎間板の中心における栄養失調環境により、新しく導入された細胞の生存がうまく確保されるとは考えにくい。
例えば、線維化剤によって促進される再生は、WO2005/046746に開示されている。WO2005/046746は、例えば、治療上有効量の線維化剤または線維化剤を含む組成物を、それを必要とする患者の椎間板腔に導入することを含む方法に関する。線維化剤は、患者の椎間板腔における線維化反応を誘導し、それにより患者に有益な結果をもたらす。WO2005/046746はまた、線維化剤および充填剤を含む注射用組成物に関する。
しかしながら、当該技術分野においては、腰痛をより効果的に治療するための安全かつ十分な方法を提供する必要性が依然として存在する。
本発明の目的は、腰痛、慢性腰痛、頚痛、慢性頸痛および尾骨痛等の椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物を提供することである。
椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物は、椎間板への局所注射によって治療上有効量で投与されるように処方することができる。
本発明のコンセプトは、椎間板の老化を加速することによって椎間板性疼痛を軽減し、例えば椎間板を固体の密性結合組織に変換することによって、椎間板をより固くすることである。椎間板を固体の密性結合組織に変換することによって、椎間板がより安定し、その結果、椎間板の可動域が狭くなる。固体の密性結合組織に変換された椎間板は、液体成分が椎間板腔から、例えば線維輪の外側表面に漏れることを阻害し、神経が椎間板内に成長することも阻害する。
すでに1959年には、Carl Hirschは、「変性した椎間板を密性結合組織に変換することができる物質が、いつかは発見かもしれない。」(“Sooner or later a substance may be found by which a degenerated disc could be transformed to dense connective tissue.”)とThe Journal of Bone and Joint Surgery, Vol. 41B, No. 2, p. 237-243, May 1959において発表された記事“Studies on the Pathology of Low Back Pain”において述べている。それにもかかわらず、今日まで誰もそのような物質を示していないと思われる。
驚くべきことに、本発明者は、その物質が4未満のpHを有する乳酸であることを首尾よく確認した。この知見は、従来技術において、どちらかというと痛みを引き起こす椎間板の内部の乳酸または乳酸塩の量を減らすことに焦点を置いたという観点から、特に驚くべきものである。例えば、US2012/0022425A1は、乳酸阻害剤を椎間板に注入して乳酸の産生を阻害することによって椎間板内の乳酸を減少させ、それによって乳酸の燃焼による背痛を緩和する方法を開示している。さらに、WO2013/092753A1は、例えば慢性背痛の治療において乳酸塩産生を阻害するためのインドール誘導体化合物を明らかにしている。
乳酸は、化学式CHCH(OH)COOHを有するカルボン酸である。以下の式(I)に示すように、水溶液中の乳酸は、そのカルボキシル基からプロトンを失い、乳酸イオンCHCH(OH)COOを生成する。乳酸と乳酸イオンとのモル比率は1:1である。
Figure 0006855458
乳酸および乳酸塩は人体に天然に存在する。
背痛を有する患者の腰部椎間板の組織水中の乳酸イオンの濃度は、1mmol/L〜ほぼ12mmol/Lの範囲内であり、通常は2mmol/L〜6mmol/Lの範囲内であると測定されている。これらの測定値は、Spine 23(1): pp. 1-8, 1998において発表された、Bartels et al.による記事“Oxygene and lactate concentrations measured in vivo in the intervertebral discs of patients with scoliosis and back pain”の5ページおよび図6において示されている。
表1に示すように、乳酸イオンの分子量は89.07g/molである。従って、腰部椎間板内の組織水1L当たり1mmolの乳酸イオンのモル濃度は、89.07mg/Lの質量濃度に相当する。同様に、椎間板内の組織水1L当たりの乳酸イオン12mmolのモル濃度は、1067mg/Lの質量濃度に相当する。
ヒトにおいて、腰部椎間板の椎間腔は、約1.5mL〜3.0mLと推定される体積を有する。
当業者であれば、上記を考慮して、モルまたはグラムで表される椎間板内の乳酸塩の量を容易に計算することができる。例を表1に示す。
Figure 0006855458
乳酸は、椎間板の細胞、特に老化を防ぐのに必要なプロテオグリカンを産生する細胞の機能に悪影響を及ぼし得る。
椎間板の老化は、隣接する椎骨内の血管および周囲の構造からの拡散を介した栄養分および酸素の供給が減少することによって開始される。これは、椎間板内、例えば髄核内において、徐々に代謝老廃物の蓄積を誘発する。存在し得る代謝廃棄物の一種は乳酸である。
乳酸は、細胞内脂肪蓄積、ミトコンドリア膨潤、クロマチン凝集および興奮毒性グルタミン酸の遊離等の、椎間板における細胞死をもたらすいくつかのメカニズムに寄与し得る。
乳酸は、炎症および結合組織の産生を引き起こすPGEを遊離させ得る。さらに、乳酸は、TGF−βの遊離を刺激することがあり、これは次に線維芽細胞を刺激してコラーゲンを産生する。
乳酸は、播種性血管内凝固症候群および消費性凝固障害の原因にもなり得、赤血球の凝集傾向を増大させ、「血泥」を形成し、赤血球をより硬化させ、次いで、血液の粘性を高め、小血管における循環を損なう。
従って、椎間板の椎間腔に乳酸を含む組成物を投与することによる椎間板における乳酸の濃度の増加は、椎間板の老化を加速させ、髄核の結合組織への変換を誘導する。
髄核の結合組織への変換を含む椎間板の老化は、椎間板をより固くし、乳酸を含む組成物を投与することによって、老化を制御可能な方法で促進することができる。典型的には、乳酸の濃度は、老化を促進するために、椎間板、より具体的には椎間腔において増加させることができる。
本発明者は、乳酸を含み、4未満のpHを有する組成物が、椎間板の顕著な変換を誘導し、その結果、椎間板がより固くなることを見出した。顕著な変換は、髄核が結合組織に変換することによる椎間板の老化の加速であると解釈されている。そのため、本発明者は、乳酸を含み、4未満のpHを有する組成物が椎間板の髄核に投与され、その結果、椎間腔内の乳酸の濃度が増加する場合、患者における椎間板性疼痛の改善を予想している。
本発明者は、4未満のpHを有する乳酸、または乳酸を含み4未満のpHを有する組成物を、少なくとも部分的に椎間板性疼痛の原因となる椎間板の椎間腔に投与することにより、患者における頸痛、腰痛または尾骨痛等の椎間板性疼痛が改善されることを予想している。
本発明の第1の態様によれば、椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物が提供される。組成物は、乳酸を含み、4未満のpHを有する。組成物は、椎間板の髄核を含む椎間腔に投与される。
本発明の椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物の利点は、椎間板性疼痛のより安全でより効果的な治療であり、さらに、当該技術分野においていされている外科的治療等の治療よりも安価で低侵襲である。さらに、乳酸は生体適合性である。ヒト等の脊椎動物の身体は、脊椎動物の体内に存在する老廃物等の天然化合物であるため、分解等の乳酸の取り扱いが可能である。
本発明者は、本発明の椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物を髄核に投与した場合、椎間板の椎間腔における髄核が、線維輪の結合組織と同様に、固体の密性結合組織に変換され得ることを示唆する。例えば、髄核の結合組織への変換中に血液凝固が起こり、椎間板がより固く稠密になる。固さが増大することにより、痛みの減少がもたらされると予想される。
一つの実施形態によれば、使用のための組成物は、椎間腔の乳酸の濃度を12mmol/Lを上回るように増加させるのに有効な量で投与される。
使用のための組成物は、椎間腔における乳酸の濃度を、自然老化中に生じる濃度よりも高い濃度まで増加させるのに有効な量で投与することができる。
一つの実施形態によれば、使用のための組成物は、少なくとも12mmol/L、例えば12〜12000mmol/Lの範囲内の濃度、例えば100〜10000mmol/L、例えば500〜5000mmol/L、例えば800〜2000mmol/Lの乳酸を含む。
一つの実施形態によれば、使用のための組成物は、3.5未満、例えば3.0未満、例えば2.5未満、例えば2未満、および1.5未満等のpHを有する。
一つの実施形態によれば、使用のための組成物は、椎間板性疼痛に寄与する椎間板の椎間腔に投与される。
一つの例では、使用のための組成物は、椎間板性疼痛に寄与していると疑われる椎間板のいずれかまたはすべてに投与され得る。
一つの実施形態によれば、4未満のpHを有する乳酸は、髄核を含む椎間腔に局所注入によって投与される。
局所注入は、典型的にはシリンジによって行われ得る。
一つの実施形態によれば、乳酸は、2mg〜200mgの範囲内、例えば5mg〜200mg、例えば10〜100mg、例えば10〜50mg、例えば15〜30mgの単回用量で投与される。単回用量は、椎間腔あたりの投与される乳酸の量に対応する。
一つの実施形態によれば、乳酸を含み、4未満のpHを有する、使用のための組成物は、単回用量で1回の機会に投与される。
一つの実施形態によれば、組成物は、乳酸を含む水溶液の形態である。
典型的には、椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物は、局所注入に適した液体状態で提供される。
一つの実施形態によれば、椎間板性疼痛は、頸痛、慢性頚痛、腰痛、慢性腰痛および尾骨痛から選択される。
いくつかの例では、組成物は、可溶化剤、安定化剤、緩衝剤、浸透圧調節剤、充填剤、増粘剤、粘度低下剤、界面活性剤、キレート剤、防腐剤およびアジュバントから選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含み得る。
ヒトにおいて、投与される組成物の量は、0.05mL〜5mLの範囲内、例えば0.1mL〜3mL、例えば0.2mL〜2mLであり得る。これらの量は、ヒトの髄核の体積に大体一致する。腰部椎間板の場合、投与される組成物の量は、約1.5mL〜3.0mLであり得る。頚部椎間板の場合、投与される組成物の量は、約0.5mLであり得る。尾骨椎間板の場合、投与される組成物の量は、約0.2mLであり得る。
本明細書において、「1回の機会」という用語は、医師への訪問期間中等の、医療機関、例えば病院への1回の訪問を意味する。訪問は、0.5〜5時間等、24時間を超えないものであり得る。典型的には、必ずしもそうではないが、この用語は、単回用量が1回の機会における単回の注射によって投与されることを意味する。しかしながら、この用語には、単回用量が1回の機会であるが、1回の機会に2〜10回等の複数回の注射、例えば1回の機会に2〜5回の注射によって投与される場合も包含される。
本明細書において、「反復される機会」という用語は、医師への2回以上の訪問中等の、医療機関、例えば病院への2回以上の訪問、すなわち複数回の訪問を意味する。各訪問は、0.5〜5時間等、24時間を超えないものであり得る。典型的には、必ずしもそうではないが、この用語は、単回用量が単回の注射によってのみではなく、反復して投与されることを意味する。しかしながら、この用語は、単回用量が反復される機会であるが、反復される機会のそれぞれに2〜10回等の複数の複数回の注射、例えば反復される機会のそれぞれに2〜5回の注射によって投与される場合も包含される。
「椎間板」という用語は、脊椎の2つの隣接する椎骨の間に位置する要素を意味する。各椎間板は、軟骨性関節を形成して椎骨のわずかな動きを可能にし、椎骨を共に保持する靱帯として機能する。椎間板は、内側の髄核を取り囲む外側の線維輪からなる。ヒトの脊柱は23個の椎間板からなる:頚部(頸部領域)に6個、中部背部(胸部領域)に12個、および腰部(腰部領域)に5個。さらに、椎間板も尾骨の間に配置される。椎間板(intervertebral disc)は、椎間板(disc)と呼ばれることもある。
「髄核」という用語は、椎間板の中心のゼリー様物質を意味する。髄核は、軟骨細胞様細胞、コラーゲン線維、およびヒアルロン酸鎖を介して凝集するプロテオグリカンアグリカンを含む。各アグリカン分子には、コンドロイチン硫酸およびケラタン硫酸のグリコサミノグリカン(GAG)鎖が結合している。髄核は衝撃吸収材として作用し、2つの隣接する椎骨を分離した状態に保つ。
「線維輪」という用語は、髄核の周囲に形成された線維組織および線維軟骨の薄層を意味する。線維輪は、椎間板全体に均一に圧力を分配するように機能する。
「椎間腔」という用語は、髄核によって満たされ、線維輪によって規定される外縁を有する椎間板の空間を意味する。
「頭側終板(cranial endplate)」という用語は、頭蓋に面した椎間板の表面を意味する。頭側終板は、尾部終板に対して、椎間板の反対側に位置する。
「尾側終板」という用語は、頭蓋の反対側に面した椎間板の表面を意味する。尾側終板は、頭側終板に対して、椎間板の反対側に位置する。
「椎間関節」という用語は、典型的には関節軟骨で覆われた関節表面を有する一対の関節構造を意味する。椎間関節は、通常、鞘(capsule)によって取り囲まれている。椎間関節は、椎骨の下関節突起と椎骨の上関節突起との間の関節接合を形成する。椎間関節は、典型的には、運動を可能にし、脊柱に機械的支持を提供するように構成される。
「横突起」という用語は、両側の椎弓から横方向に延びる骨形成を意味する。それはまた、プロセサス・コスタリウス(processus costarius)とも呼ばれる。
本明細書において、「椎間板性疼痛」という用語は、疼痛を生じさせる椎間板に関連する疼痛を意味する。椎間板性疼痛は、頚椎(C)、腰椎(L)、仙骨(S)および尾骨(Co)の少なくとも1つに関連する疼痛であり得る。椎間板性疼痛の例は、腰痛、慢性腰痛、頚痛、慢性頚痛および尾骨痛であり得る。
「慢性腰痛」という用語は、症状が12週間を超えて発生する腰痛を意味する。
「慢性頸痛」という用語は、症状が12週間を超えて発生する頸痛を意味する。
「尾骨痛」という用語は、尾骨(coccyx)または尾骨領域(tailbone area)における疼痛を意味する。
本明細書において、「屈曲剛性(flexion stiffness)」という用語は、脊柱の分節に位置する椎間板の剛性を特徴づける特性を意味する。屈曲剛性は、完全な横屈曲状態に達するまで脊柱の分節に力を加え、その後、それぞれ椎間板の反対の2つの側に位置する脊柱の横突起間の距離を測定することによって決定される。完全な横屈曲状態は、脊柱の分節の椎間板が、脊柱の分節を破壊することなく、さらに力を加えられない状態として定義される。この特性は、ミリメートル単位で測定される。屈曲剛性は、脊柱の分節の曲げ剛性、より具体的には、椎間板の曲げ剛性を特徴づける方法である。
曲げ剛性は、一般に、非剛性構造を単位曲率に曲げるのに必要な偶力(force couple)として定義される。これは、構造部材の剛性の尺度であり;弾性係数と、部材の長さで割った慣性モーメントとの積である。言い換えれば、弾性材料を曲げているときの、弾性材料の歪みに対する応力の割合である。
第2の態様によれば、椎間板性疼痛を治療する方法であって、それを必要とする患者の椎間板の髄核に、4未満のpHを有する治療上有効量の乳酸を投与することによる方法が提供される。本発明のこの第2の態様の効果および特徴は、本発明の第1の態様に関して上述したものと類似している。
第3の態様によれば、椎間板性疼痛の治療のための医薬の製造における、4未満のpHを有する乳酸の使用が提供される。本発明のこの第3の態様の効果および特徴は、本発明の前述の態様に関して上述したものと類似している。
第4の態様によれば、椎間板性疼痛の治療における使用のための、4未満のpHを有する乳酸が提供される。本発明のこの第4の態様の効果および特徴は、本発明の前述の態様に関して上述したものと類似している。
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の特許請求の範囲および以下の説明を検討することにより明らかになるであろう。当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて以下に説明する実施形態以外の実施形態を作り出すことができることを理解するであろう。
本発明のこれらおよび他の態様を、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
図1は、ヒトの脊柱の概略的な横断面図を示す。
図2は、ヒトの脊柱の2つの隣接する椎骨の概略的な側面図を示す。
図3は、ヒトの脊柱の下部の概略的な側面図を示す。
図4は、脊椎分節の概略的な後面図を示す。
図5は、椎間板の横断面の前後方向の長さ測定する方法を概略的に示す。
図6は、椎間板の横断面の左右方向の幅を測定する方法を概略的に示す。
図7は、3つの椎間板の横断面図を示し、本発明の一つの実施形態による組成物を投与された椎間板内における髄核の結合組織への変換を示す。
図8は、乳酸で処理した線維芽細胞におけるコラーゲン産生に関する試験の実験結果を示す。
図9は、乳酸で処理した髄核細胞におけるコラーゲン産生に関する試験の実験結果を示す。
図10は、異なるpH値の乳酸で処理したヒト繊維芽細胞におけるコラーゲン産生に関する試験の実験結果を示す。
図11〜15は、以下の実施例2の実験結果を示す。
図面に示されるように、層および領域の大きさは、説明のために誇張されており、従って、本発明の実施形態の一般的な構造を示すために提供される。同様の参照符号は、全体を通して同様の要素を指す。
脊椎動物の加齢に伴い、その椎間板は変換を受ける。変換の影響は、髄核が脱水し始め、マトリックス中のプロテオグリカンの濃度が低下し、その結果、椎間板の大きさが減少することである。もう一つの効果は、線維輪が弱くなり、断裂するリスクが増大することである。椎間板の変換の影響は、椎間板が十分に固くかつ稠密になる前の状態において、椎間板性疼痛、例えば頸痛、腰痛または尾骨痛を引き起こし得る。
脊椎動物の脊柱は、脊髄を取り囲んで保護する脊椎を含む。ヒトにおいては、脊柱は胴の背側に位置する。2つの隣接する椎骨の間に中間椎間板が位置し、すなわち、椎骨が、脊柱を形成する椎間板によって交互に配置される。脊柱の特定の構造およびさらなる部分は、当業者に公知である。
図1は、ヒトの脊柱100の横断面図を概略的に示す。椎骨の椎体15に隣接して、線維輪10および髄核11を含む椎間板が位置する。髄核11は、椎間板のいわゆる椎間腔を満たす。線維輪10は髄核11を取り囲み、髄核と椎間腔との境界を規定する。
脊髄17は脊柱の中心にあり、椎間板に隣接している。脊髄神経16、16’は脊髄17から出て、椎間板の近接する反対側に伸びている。
椎間関節14、14’は、下関節突起13、13’と上関節突起12、12’との間に位置する。脊髄17の反対側には、2つの椎間関節14、14’がそれぞれ位置する。椎間関節14、14’は、ほぼ同じ断面および平面に位置する。
図2は、2つの隣接する椎骨20、22を含む脊柱分節200を概略的に示す。第1の椎骨22および第2の椎骨20は、椎間板21の両側に位置する。第1の椎骨22は胸部に比較的近接して位置し、第2の椎骨20は仙骨に比較的近接して位置する。第1の椎骨22の尾側終板23および第2の椎骨20の頭側終板25が図2に示されている。頭側終板25および尾側終板23は、椎間板21の反対側に面している。
図2はまた、椎間関節24が、第1の椎骨22の下関節突起と第2の椎骨20の上関節突起との間にどのように位置するかを概略的に示す。横突起26は、椎弓から横方向に延びる。
図3は、脊柱300の下部を概略的に示す。脊柱の尾椎36は、脊柱300の下部の端部に位置する。脊柱の仙骨39は、尾椎36に隣接して位置し、尾椎36よりも胸部(thorax)に近接している。本明細書においてL5と称される第5の腰椎30は、仙骨39に隣接して位置し、仙骨39よりも胸部に近接している。仙骨39から胸部の方に、いくつかの椎骨30がL5から始まって一列に位置し、下記の椎骨が順に位置する:第4の腰椎32、すなわちL4、第3の腰椎、すなわちL3、第2の腰椎、すなわちL2、および第1の腰椎38、すなわちL1。それぞれの2つの隣接する椎骨の間に中間椎間板31が位置する。椎間板(図示せず)はまた、尾椎36を突出させている(imposing)。
痛みを測定するための信頼できる動物モデルを入手することはできず、代わりに終点屈曲(例えば曲げ剛性)および核空間の視覚的減少が用いられている。上記の議論(神経の内側への延伸および漏出)のために、屈曲を低減させ、核空間を減少させる固形椎間板は、患者が経験するように、疼痛の減少に関連する可能性がある。
実施例1:
椎間板性疼痛の治療における使用のための、乳酸を含み、4未満のpHを有する組成物の投与による、ブタの椎間板内における髄核の結合組織への変換促進を誘導および評価するための方法が、より詳細に説明される。
本実施例では、椎間板性疼痛の治療における使用のための、乳酸を含み、4未満のpHを有する組成物を、第3の腰椎L3と第4の腰椎L4との間に位置する椎間板の髄核に投与した。当業者は、同じ方法が脊柱の任意の椎間板に適用され得ることを容易に理解することができる。
従って、方法の工程は以下の通りである:
100.4未満のpHを有する乳酸を含む組成物を調製し;
101.組成物が投与されるべき髄核を含む椎間板を含む脊柱を有するブタを麻酔し;
102.ブタの下肋骨と腸骨稜との間を側方切開して椎間板へのアクセスを可能にし;
103.椎間板を切開し;
104.注射針を用いた局所注射により組成物を髄核に投与し;
105.麻酔から回復後7日間、ブタを自由に動けるようにし;
106.腰椎を一括して、すなわち椎体、および後部要素(椎弓および椎間関節)を有さないが、注射を受けた髄核を含む椎間板を含む摘出された分節を摘出し;
107.外力を加えることなく、椎間板のL2−3、L3−4、L4−5のレベルで横突起間の距離を測定し;
108.腰椎試料に対して完全な横屈曲状態が達成されるまで、脊柱分節に外力を加え;
109.完全な横屈曲状態で、椎間板のL2−3、L3−4、L4−5のレベルで横突起間の距離の測定し;
110.椎間板を輪切り(performing a cross-section)にし、椎間腔の長さ(前後方向)および幅(左右方向)を測定する。
乳酸を含む組成物の調製
純粋な乳酸溶液(製品番号:69775 Fluka;CAS番号:50-21-5、ストックホルム、スウェーデン)をSigma Aldrich社から購入した。表2に示すように、乳酸の分子量は90.08g/molであり、Sigma Aldrich社製の純粋な溶液の密度は1.209g/mLであった。
従って、Sigma Aldrich社製の純粋な溶液中の乳酸の濃度は0.0134mol/mL、すなわち13.4mol/Lに等しいと計算された。
その後、純粋な乳酸溶液を室温で蒸留水を用いて10倍に希釈した。より具体的には、Sigma Aldrich社製の純粋な乳酸溶液1mLを、9mLの蒸留水で希釈した。その結果、得られた組成物中の乳酸の濃度は1.34mol/Lであり、pHは約1.8であった。
Figure 0006855458
局所注射によるブタの椎間板の髄核への乳酸を含む組成物の投与
2匹のブタを麻酔し、右側を下にして静置した。L4−5椎間板へのアクセスを、各ブタの左側の下肋骨と腸骨稜との間を側方切開することにより得た。その後、L3−4椎間板を外科用メスで切開した。
乳酸を含む組成物を、注射器によりL3−4椎間板の髄核に注射した。表3に示すように、合計濃度1.34mol/Lの乳酸を含み、1.8のpHを有する組成物を、約0.2mLの量で髄核に注射した。組成物を、1回の機会で1回の工程で注射した。
両方のブタは工程を問題なく許容しているようであり、摘出までの7日間に移動性の低下または発声等の副作用は観察されなかった。摘出時にブタを屠殺した。
Figure 0006855458
乳酸を含む組成物が投与された椎間板における髄核の結合組織への変換の評価
注射部位を肉眼で観察した。出血、炎症または壊死等の注射部位における副作用は、いずれのブタにおいても観察されなかった。腰椎L2から仙椎S1まで延びる脊柱の部分を除去した。椎間関節を除去し、他の構造からの拘束を伴わない椎間板の完全な柔軟性を可能にした。
a−組成物の投与前後の椎間板の屈曲剛性
図4には、椎間板21、すなわち椎間板L2−3、L3−4およびL4−5を含む脊柱分節が示されている。
屈曲剛性の評価の間、脊柱、ひいては腰椎L2から仙椎S1まで延びる脊柱分節のそれぞれの隣接する横突起26のそれぞれの間の距離を、外部荷重が脊柱分節に加えられていない状態でノギスを用いて測定した。
その後、脊柱、ひいては腰椎L2から仙椎S1まで延びる脊柱分節に、臨界値に達するまで、すなわち完全な屈曲状態が達成されるまで脊柱の部分の2つの端部のそれぞれに外力を加えることによって、手動で完全な横屈曲状態にした。加えられた力に対する横突起の動きを、点線の矢印によって図4に概略的に示す。
臨界値は、脊柱分節の破断点の直前の点として定義された。従って、外力は、脊柱分節のいかなる部分も破壊することなく最大の横屈曲が得られるように適用された。
力は、両方のブタのそれぞれの脊柱分節について同様であると想定された。完全な横屈曲の位置において、椎間板L2−3、L3−4、L4−5についての隣接する横突起の間の距離を、ノギスを用いて測定した。
外部荷重が加えられていない状態のある特定の椎間板の隣接する横突起の間の距離を、完全な横屈曲状態を達成するために加えられた外部荷重を伴う状態の同じ横突起の間の距離から差し引き、完全な横屈曲により得られる平衡距離(balanced distance)の値を得た。注射を受けた椎間板の平衡値は、注射を受けていない椎間板と比較して、椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物で治療された椎間板の屈曲剛性を反映するものであった。
屈曲剛性は、平衡値が小さいほど椎間板の剛性が高いことから、髄核の結合組織への変換の間接的な尺度である。椎間板が固いほど固形および稠密な結合組織の含有量は高くなる。従って、屈曲剛性は、髄核が結合組織に変換されたか否か、すなわち加速老化であるか否かを示す。
測定結果から、注射を受けた椎間板(L3−4)は、注射を受けていない椎間板(L2−3;L4−5)と比較して非常に小さい平衡値を示し、注射を受けた椎間板の方が高い屈曲剛性を有することが示された。このように、注射を受けた椎間板の椎間腔の内部では、注射を受けていない椎間板の椎間腔の内部と比較して、髄核の結合組織への変換の加速が生じた(表4参照)。
Figure 0006855458
b−組成物の投与前後の椎間腔の寸法
椎間板(L2−3、L3−4、L4−5)を輪切りにし、椎間腔の長さ(前後方向)および椎間腔の幅(左右方向)を、ノギスを用いて測定した。
図5および6には、椎間板の横断面が概略的に示されている。椎間板は、線維輪10、および線維輪によって規定され、髄核11を含む椎間腔を含む。
図5において、矢印は、椎間板の椎間腔の前後方向の長さを測定する方法を概略的に示している。図6において、矢印は、椎間板の椎間腔の左右方向の幅を測定する方法を概略的に示している。
測定結果から分かるように、椎間腔の前後方向の長さの平均値は、注射を受けた椎間板(L3−4)において、隣接する注射を受けていない椎間板(L2−3、L4−5)よりも有意に小さかった(表5参照)。
Figure 0006855458
測定結果から分かるように、椎間腔の左右方向の幅の平均値は、注射を受けた椎間板(L3−4)において、隣接する注射を受けていない椎間板(L2−3、L4−5)よりも有意に小さかった(表6参照)。
Figure 0006855458
図7には、上記実験における1匹のブタからの椎間板L2−3、L−3−4およびL4−5がそれぞれ示されている。椎間腔の幅および深さは、図5−6の概略図に対応する太い直線で示されている。
図7には、注射を受けたL3−4椎間板の椎間腔が、注射を受けていないL2−3およびL4−5椎間板のそれぞれと比較して非常に小さな断面積を有する方法がさらに示されている。従って、注射を受けた椎間板内に髄核を含む前者の椎間腔に新たに形成された結合組織が存在することを肉眼で確認することができる。
実施例1の結論
注射を受けていない2つの椎間板(L2−3)および(L4−5)の椎間腔は、乳酸を含み、1.8のpHを有する組成物を投与した椎間板(L3−4)と比較して、非常に深くかつ幅が広いことが明らかである。前者の椎間腔は、新たに形成された結合組織(図7において、フェーディング(fading)および円弧状に位置する追加の線によって強調されている)と交換され、線維輪(主にコラーゲンを含む結合組織の輪によって形成される)は、サイズが減少した髄核を消費して消費された。
従って、注射を受けた椎間板の屈曲剛性が達成され、剛性は、椎間板性疼痛を有する患者が経験する痛みを抑制することができる。椎間板性疼痛のこの治療方法の利点は、例えば関節固定の現在の治療方法と比較して、現在の治療方法よりも侵襲性が低いことである。
上記実施例では、椎間板は腰椎に位置していた。しかしながら、頸椎または尾椎に位置する椎間板においても同様のプロセスが観察されると予想される。
実施例2:
本実施例では、第3の腰椎L3と第4の腰椎L4との間に位置する椎間板の髄核への、乳酸を含み、4未満のpHを有する組成物の使用(以下、活性注射という)と、4未満のpHを有するプラセボ注射との間の比較がなされた。
方法および処方:
8匹のブタを麻酔し、右側を下にして置いた。側方切開することによりL3−4椎間板を露出させた。活性注射またはプラセボ注射を合計量0.2mlで椎間板に注射した。
・活性注射:生理食塩水(0.9%NaCl)中の120mg/ml乳酸(PURAC PF 90 バッチ番号:1406001940)+180mgI/mlイオヘキソール(Histodenz CAS番号66108−95−0 ロット番号WXBB5310V)、pHを1.5に測定した。
・プラセボ注射:生理食塩水(0.9%NaCl)中の180mgI/mlのイオヘキソール、HCl(塩酸、Titrisol)でpHを1.5に調整した。
4週間後、ブタを屠殺し、腰椎を摘出した。L2−3、L3−4およびL4−5の椎骨の間のすべての筋肉組織ならびに椎間関節および黄色靭帯を除去した。これは、屈曲の評価を可能にするために行われた。以下の評価項目を測定した:
A.横突起の距離を、完全に反対側および同側への屈曲時にノギスを用いて測定した。
B.椎間腔の前後方向および左右方向を、ノギスを用いて測定した
C.注射の日および摘出の日にX線写真を撮影して、注射が正しく位置していること、および4週間後に椎間板が放射線不透過性であるかどうかを評価した。
結果:
A)横屈曲の低下:
活性治療された椎間板とプラセボ治療された椎間板とでは、屈曲の有意差が観察された(図11)。これは、イオヘキソール、pHまたは注射それ自体ではなく、乳酸が、この屈曲の低下を誘導することを明確に示している。この試験の結果は統計的に有意である。
B)核空間の減少:
図12a〜cにおいて、椎間腔のサイズは、非治療の椎間板、図12aと、プラセボ注射を受けた椎間板、図12bとの間で類似しているのに対して、治療された椎間板、図12cは有意に小さいサイズであった。絶対数は図13および14に示されている。試験の結果は統計的に有意である。
C)注射後の視覚的な椎間板高の低下はない。
椎間板の自然な老化に関連する既知の問題は、椎間板の変性による椎間板高の低下である。治療によって引き起こされた椎間板の急速な変換プロセスのために、椎間板の幾何学的形状が固定され、椎間板の高さが全くまたはほとんど失われないであろうことが推定される。この仮説は、治療の4週間後に注射を受けた椎間板(L3−L4)のX線写真の視覚的分析によって確認された。図15に示すように、治療された椎間板と非治療の椎間板との間の椎間板高の差異は見られなかった。
実施例2の結論:
実施例2のin vivo試験の結論は、治療によって、椎間板高の減少が観察されることなく、髄核が効果的に結合組織に変換され、屈曲の低下および椎間腔の劇的な減少が引き起こされることである。この効果は、プラセボと比較して統計的に有意である。また、pH調整そのものは影響を及ぼさないことも結論づけ得る。
従って、この試験の結果は、製品が椎間腔を結合組織に効果的に変換するという概念を証明するものである。
乳酸の細胞レベルでの影響を観察するために、線維輪等の結合組織に一般的に存在する線維芽細胞、および髄核に一般的に存在する髄核細胞のそれぞれについて試験を行った。乳酸処理に応答して細胞がどのように変換するかの尺度として、細胞におけるコラーゲン産生を試験した。
実施例3:
乳酸処理による線維芽細胞のコラーゲン産生に関する試験
ヒト成人皮膚線維芽細胞(HDFa)の培養
成体皮膚から単離されたヒト皮膚線維芽細胞、いわゆるHDFa(Life Technologies Frederick社製、米国)を培養し、試験した。成熟ヒト椎間板細胞は、線維輪外輪において線維細胞(または線維芽細胞様)であると記載されている。線維芽細胞は、結合組織中に見出される最も一般的なタイプの細胞である。線維芽細胞は、生来、多くの組織の構造的枠組みを維持するために使用されるコラーゲンタンパク質を分泌し、創傷治癒においても重要な役割を果たす。
まず、凍結保存された線維芽細胞を37℃の水浴中で解凍した。解凍された線維芽細胞を1mLのピペットを用いて分散させ、解凍した線維芽細胞の懸濁液をバイアル内で上下に移動させた。次いで、分散した線維芽細胞をトリパンブルー溶液(カタログ番号15250−061、ロット番号1311086、Gibco Life Technologies社製)で希釈し、生存線維芽細胞の濃度を血球計で測定した。
次いで、分散した線維芽細胞を、この時は、添加培地106中で、ミリリットル当たり2.5×10個の生存線維芽細胞の濃度に希釈した。次いで、5mlの線維芽細胞の懸濁液を25cmの容量を有するT25細胞培養フラスコに添加して、添加培地106を用いたさらなる希釈により、T25フラスコ中でミリリットル当たり5.0×10個の生存線維芽細胞の初期密度を達成した。
添加培地106は、低血清増殖添加物、LSGS(Life Technologies社製、ペイズリー、英国)をウシ胎仔血清の濃度である2体積%で添加した培地106(カタログ番号M−106−500、Life Technologies社製、ペイズリー、英国)からなる。
調製した線維芽細胞を含むT25フラスコを回転させて、線維芽細胞を培地中に分布させた。その後、細胞培養物を37℃、5%CO/95%空気の加湿細胞培養インキュベーター中で72時間インキュベートした。
コンフルエントになった時点で、線維芽細胞を添加培地で希釈して、細胞表現型の変化を避けた。
乳酸の調製
乳酸(Fluka 69775、Sigma-Aldrich社製、ストックホルム、スウェーデン)を、滅菌した10mLチューブまたは50mLチューブに秤量した。Milli−Q水(>18.2Ω)を添加して乳酸原液を調製した。原液を混合し、保存した後に、様々な濃度の乳酸の最終溶液を調製した。保存期間は周囲温度で1時間未満、あるいは4℃の温度で24時間未満であった。
ヒト成人皮膚線維芽細胞(HDFa)におけるコラーゲン産生に及ぼす乳酸の影響
上記のように培養した線維芽細胞を細胞培養フラスコから剥離し、6ウェルプレートに1ウェル当たり6.0×10個の初期密度で生存細胞を播種した。繊維芽細胞を添加培地106中で増殖させた。いくつかのウェル中の線維芽細胞を、0、0.5、2、5、10、20および50mg/mLの種々の濃度の乳酸(Fluka 69775、Sigma-Aldrich社製、ストックホルム、スウェーデン)でそれぞれ処理した。線維芽細胞を、37℃、5%CO/95%空気の加湿細胞培養インキュベーター中で48時間インキュベートした。
線維芽細胞におけるコラーゲン産生に対する乳酸の影響を試験するために、シリウスレッド色素のコラーゲンへの結合に基づく可溶性コラーゲンアッセイ(QuickZyme Biiosciences、ライデン、オランダ)と呼ばれる分光光度法を適用した。試験は2回行われた。
各ウェルから細胞培地を回収し、140μLを96ウェルプレートにピペットで入れた。試料を2回採取した。培地試料を、少なくとも5回上下にピペッティングすることにより、60μLのシリウスレッド色素溶液と完全に混合した。96ウェルプレートを3000×gで1時間遠心分離した。これらの工程はすべて25℃以下の温度で行われ、例えば遠心分離は4℃で行われた。
遠心分離した試料を洗浄し、上清を除去した。細胞ペレットを150μLの検出溶液中に、少なくとも10回上下にピペッティングして完全に混合することによって再懸濁させた。その後、各試料100μLを新しい96ウェルプレートに移し、コラーゲン含有量を540nmの光学密度で分光光度的に測定した。
2つの試験をそれぞれ2回行った結果、表7および図8に示すように、線維芽細胞への乳酸の添加は、線維芽細胞におけるコラーゲンの平均産生を増加させることが明確に示された。平均産生は、乳酸処理の2日後に測定された。
図8では、第1セットの試験の結果は菱形で示され、第2セットの試験の結果は四角で示されている。各セットのコラーゲン産生の傾向を模式的に示すために、2期間の変動平均傾向線が含まれている。第1セットの傾向線は点線で示され、第2セットのトレンドラインは破線でそれぞれ示されている。x軸は、線維芽細胞を含むウェルに添加された乳酸の濃度を示し、y軸は、乳酸をウェルに添加してから2日後の測定における、これらのウェルにおけるコラーゲンの平均産生量を示す。
より具体的には、コラーゲンの産生の増加は、乳酸をウェル中に少なくとも2mg/mLの濃度、例えば少なくとも5mg/mLで添加した場合に有意であった。さらに、図8にも示されているように、乳酸の濃度を少なくとも20mg/mLまたは少なくとも50mg/mLまで増加させることにより、コラーゲン産生が増加することが示された。
Figure 0006855458
コラーゲンの平均産生量がコラーゲンを産生することができる細胞の数と相関することから、第1セットの試験と第2セットの試験との間のコラーゲンの平均産生量のわずかな差は、試験されたウェル中の細胞の数の自然な変動によるものであり得る。
実施例4:
乳酸処理による髄核細胞のコラーゲン産生に関する試験
ヒト髄核細胞の培養
ヒトから単離された髄核(NP)細胞(4800、ScienCell社製、米国)を培養し、試験した。NP細胞は、髄核における椎間板細胞である。
まず、凍結保存されたNP細胞を37℃の水浴中で解凍した。解凍されたNP細胞を添加Nucleus Pulposus細胞培地に懸濁し、その後75cmの容量を有し、内部がポリ−L−リジンでコーティングされたT75細胞培養フラスコ(0413、ScienCell社製、米国)に播種した。初期播種密度は、ミリリットル当たり5.0×10個の生存NP細胞であった。
添加Nucleus Pulposus細胞培地は、2体積%のウシ胎仔血清(0010、ScienCell社製、米国)、1×Nucleus Pulposus細胞増殖添加物(4852、ScienCell社製、米国)および1×ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(0503、ScienCell社製、米国)を添加したNucleus Pulposus細胞培地(4801、ScienCell社製、米国)からなる。
調製したNP細胞を含むT75フラスコを回転させて、NP細胞を培地中に分布させた。その後、細胞培養物を37℃、5%CO/95%空気の加湿細胞培養インキュベーター中で一晩インキュベートした。
コンフルエントになった時点で、線維芽細胞を添加培地で希釈して、細胞表現型、細胞増殖および/または細胞分化の変化を避けた。
乳酸の調製
乳酸(PURAC PF 90、バッチ番号1406001940、Corbion Purac社製、オランダ)を、滅菌した10mLチューブまたは50mLチューブに秤量した。Milli−Q水(>18.2Ω)を添加して乳酸原液を調製した。原液を混合し、保存した後に、様々な濃度の乳酸の最終溶液を調製した。保存期間は周囲温度で1時間未満、あるいは4℃の温度で24時間未満であった。
ヒト髄核におけるコラーゲン産生に及ぼす乳酸の影響
上記のように培養したNP細胞を細胞培養フラスコから剥離し、6ウェルプレートに1ウェル当たり4.5×10個の初期密度で生存細胞を播種した。NP細胞を添加Nucleus Pulposus細胞培地中で増殖させた。いくつかのウェル中のNP細胞を、0、0.5、5、10、20および50mg/mLの種々の濃度の乳酸(PURAC PF 90、バッチ番号1406001940、Corbion Purac社製、オランダ)でそれぞれ処理した(それぞれのpHについては、表7を参照のこと)。NP細胞を、37℃、5%CO/95%空気の加湿細胞培養インキュベーター中で48時間インキュベートした。
NP細胞におけるコラーゲン産生に対する乳酸の影響を試験するために、シリウスレッド色素のコラーゲンへの結合に基づく可溶性コラーゲンアッセイ(QuickZyme Biiosciences社製、ライデン、オランダ)と呼ばれる分光光度法を適用した。
各ウェルから細胞培地を回収し、140μLを96ウェルプレートにピペットで入れた。試料を3回採取した。培地試料を、少なくとも5回上下にピペッティングすることにより、60μLのシリウスレッド色素溶液と完全に混合した。96ウェルプレートを1500×gで2時間遠心分離した。これらの工程はすべて25℃以下の温度で行われ、例えば遠心分離は4℃で行われた。
遠心分離した試料を洗浄し、上清を除去した。細胞ペレットを150μLの検出溶液中に、少なくとも10回上下にピペッティングして完全に混合することによって再懸濁させた。その後、各試料100μLを新しい96ウェルプレートに移し、コラーゲン含有量を540nmの光学密度で分光光度的に測定した。
測定装置に適合させるために、細胞をリン酸緩衝液(PBS)に1:1の割合で希釈した。
試験を3回行った結果、表8および図9に示すように、NP細胞への乳酸の添加は、NP細胞におけるコラーゲンの平均産生を増加させることが明確に示された。平均産生は、乳酸処理の2日後に測定された。
図9では、試験の結果が菱形で示されている。コラーゲン産生の傾向を模式的に示すために、2期間変動平均傾向線が含まれている。x軸は、NP細胞を含むウェルに添加された乳酸の濃度を示し、y軸は、乳酸をウェルに添加してから2日後の測定における、これらのウェルにおけるコラーゲンの平均産生量を示す。
より具体的には、コラーゲンの産生の増加は、乳酸をウェル中に少なくとも5mg/mLの濃度で添加した場合に有意であった。さらに、図9にも示されているように、コラーゲン産生は、約10〜20mg/mLまでの乳酸の濃度の上昇とともに増加し、プラトーに達したことが示された。50mg/mLでのコラーゲン産生の減少は、そのような高濃度での乳酸による処理が、細胞死を引き起こす細胞傷害性効果を有し得ると解釈される。
Figure 0006855458
実施例5:
異なるpH値を有する乳酸処理によるヒト繊維芽細胞におけるコラーゲン産生試験
ヒト線維芽細胞の培養
ヒト成体線維芽細胞(デトロイト551、ATCC、CCL−110)を培養し、試験した。
まず、凍結保存されたデトロイト細胞を37℃の水浴中で解凍した。解凍された細胞を、非必須アミノ酸(Thermo Scientific HyClone社製)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Thermo Scientific HyClone社製)、2mMのL−グルタミン(Lonza社製)および10%(v/v)のウシ胎仔血清(GE Healthcare/PAA社製)を添加した9mlのイーグル最小必須培地1×(Gibco Life Technologies社製)を含む遠心分離チューブに移した。次いで、細胞懸濁液を125×gで5分間遠心分離した。細胞ペレットを1mlの完全培地に再懸濁させ、15mlの完全培地を含むT75フラスコに播種した。細胞を、加湿した5%COのインキュベーター中、37℃でコンフルエントになるまで増殖させた。コンフルエントになった時点で、デトロイト細胞をトリプシン/ベルセン(Thermo Scientific HyClone社製、SV30037.01、Gibco Life Technologies社製、15040033)で剥離して継代した。細胞を完全培地で希釈し、1:2〜1:5の継代培養比で新しい培養容器に播種した。
製剤の調製
コンタミネーションのリスクを最小限に抑えるために、不可能であったイオヘキソールの秤量以外は、すべての配合物を層状の空気ベンチで調製した。
イオヘキソール溶液(Histodenz社製 CAS番号66108−95−0 ロット番号WXBB5310V)の配合物を、滅菌した50mlチューブ中で秤量した。イオヘキソールを、提供された処方箋に従って、mg/mlとして表される溶液1mlあたりのヨウ素の重量によって計算した。乳酸溶液(Purac PF 90 バッチ番号1406001940)および培地を添加し、試料を、転倒回転装置を用いて30分間混合し、次いで、pHを調整する前に72時間冷蔵した。
pHの調整:pHを1M NaOH(水酸化ナトリウム、Titrisol)または1M HCl(塩酸、Titrisol)を用いて調整した。
化合物の処方は以下の表9に従う。
Figure 0006855458
製剤による処理
デトロイト細胞をその培養容器から剥離し、80,000細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種した。細胞を、添加デトロイト551培地で増殖させた。すべての製剤を添加デトロイト551培地で希釈した。1日目に、すべてのウェルの細胞培養培地を、表1に記載の乳酸(Sigma-Aldrich社製、ストックホルム、スウェーデン)をベースとする配合物で置き換えた。細胞を3組にして培養した。細胞を、加湿した5%COのインキュベーター中で、37℃で2日間インキュベートした。細胞を、80%細胞コンフルエンスの時点で製剤で処理した。
コラーゲン産生の分析
細胞培地中のコラーゲン含有量を、シリウスレッド色素結合コラーゲン(Soluble Collagen Assay、QuickZyme Biosciences社製、ライデン、オランダ)を分析する分光光度法を用いて測定した。簡潔には、細胞培地を各ウェルから回収し、140μlを96ウェルプレートにピペットで入れた。試料を2回採取した。培地試料を60μLのシリウスレッド色素溶液と混合し、96ウェルプレートを1500×gで4℃で2時間遠心分離した。ペレットを150μlの検出溶液に再懸濁させた。次いで、各試料100μlを新しい96ウェルプレートに移し、コラーゲン含有量を540nmの光学密度で分光光度的に測定した。
pH測定
pHは、処理前、処理の10分後、および乳酸または製剤による処理の2日後に測定した(表10)。
Figure 0006855458
結果
対応する対照#5〜8と比較して、製剤#1〜4による処理後の視診では、細胞形態または細胞密度の差は観察されなかった。細胞生存率も処理の2日後に顕微鏡で視診し、この時点で細胞培地を回収し、コラーゲン産生について分析した。
デトロイト細胞を80,000細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種した。細胞を、80%細胞コンフルエンスの時点で製剤で処理した。コラーゲン産生を、製剤の添加の2日後に分析した(1:4、1:1の試料を希釈した後に測定し、その後1:1にして、装置の直線範囲における試料の吸光度レベルを可能にした)。データ点を図10において平均値±SDとして示す。
製剤#1および#2は、有意なコラーゲン産生をもたらした。異なる希釈物の結果から、pH調整をしない20mg/mlの乳酸を含む製剤#1は、コラーゲン産生に関して最も効果的であり、その次にpHを3.0〜3.5調製した20mg/mlの乳酸を含有する#2であり、これは製剤#1と比較して約35%少ないコラーゲンをもたらした。他の製剤による処理は有意なコラーゲン産生をもたらさなかった。
結論
本発明者らは、本発明の実施形態による使用が、ヒトにおける椎間板性疼痛をも治療すると考えている。
乳酸等の物質の注射を受けた椎間板における、予想される結合組織への変換は、in vivoで観察され得る。典型的には、この方法は、麻酔下または軽度の鎮静剤の使用下で、放射性物質による誘導を用いて行われる。従って、治療方法は、造影剤が放射性物質による誘導下で椎間板に注射される場合、椎間板の放射線学的評価、いわゆる椎間板造影法と同様である。
組成物は、乳酸を含み、4未満のpH値を有するべきである。図10の結果に見られるように、4以上のpHを有する乳酸溶液は、おそらくコラーゲン産生をもたらさず、従って、乳酸を含み、4以上のpHを有する物質の注射を受けた椎間板においては結合組織への変換は予測されない。
本発明によれば、本発明者らは、いわば、椎間板性疼痛の緩和に関して従来検討され、存在しているものとは異なるものをされているものに反対している。従来技術は、椎間板をどのようにして「若く」保つかに焦点を当てているが、本発明は、椎間板を「老化」させる迅速な変換を提供する。
様々な研究により、通常、高齢者では椎間板が結合組織に変換されており、そのためもはや疼痛を生じさせない可能性があることが示されている。重要なことに、文献もまた、椎間板性疼痛の有病率が年齢の増加によって大幅に減少することを示している。高齢者における老化性腰痛は、より典型的には、椎間板によってではなく、変形性関節症および/または骨粗鬆症によって引き起こされる。例えば、DePalma et al.の論文、“What is the source of chronic low back pain and does age play a role?”, Pain Medicine 2011; 12:224-233およびLaplante et al., Multivariable Analysis of the Relationship Between Pain Referral Patterns and the Source of Chronic Low Back Pain, Pain Physician 2012; 15:171-178は、いずれも椎間板性の腰痛が高齢患者よりも若年患者においてより起こりやすいことを開示している。
本願の実施例は、乳酸の投与が、椎間板の組織組成の変化と、注射を受けた椎間板の屈曲剛性の変化とをもたらすことを示している。これは痛みの緩和の直接的な証拠ではないかもしれない。しかしながら、これは、髄核の結合組織への変換の指標として使用することができ、この変換は、(a)椎間板の内部容積を安定化させ;(b)椎間板からの拡散を減少させ;(c)椎間板の微小運動を減少させ、これらはすべて椎間板性疼痛の軽減に寄与する。
椎間板における乳酸のレベルの増加は、椎間板の変性を引き起こし、このような変性は背痛を引き起こすことが知られている。椎間板の自然変性において、髄核はまず、疼痛を引き起こす状態から結合組織にゆっくりと変化し、疼痛が緩和された状態へと変化する。例えば、Kirkaldy-Willis et al., Instability of the Lumbar Spine, Clinical Orthopaedics and Related Research, No. 165, May 1982, pages 110-123、特に123ページ右上欄を参照されたい。このような変換は、何の治療をしない場合には約20〜40年かかるであろう。変性の初期段階で見出される乳酸よりもかなり高い濃度の乳酸を注入することにより、髄核が結合組織に変換するのに要する時間は、20〜40年(治療なし)から約4週間に減少する。
椎間板の変性の加速を誘導することができる他の物質もまた、乳酸の代用品および/または代替物とみなされ得る。

Claims (10)

  1. 椎間板性疼痛の治療における使用のための組成物であって、少なくとも100mmol/Lの乳酸を含み、pHが4未満であり、椎間板の髄核を含む椎間腔に投与されて椎間板の老化を加速させる、前記組成物。
  2. 前記組成物中の乳酸の濃度が100〜10000mmol/L500〜5000mmol/L、または800〜2000mmol/Lである、請求項1に記載の使用のための組成物。
  3. 3.5未満のpHを有する、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
  4. 3.0未満のpHを有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  5. 椎間板性疼痛に寄与する椎間板の椎間腔に投与される、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  6. 前記組成物が、髄核を含む椎間腔への局所注射によって投与される、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  7. 前記乳酸が前記単回用量で1回の機会に投与される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 前記乳酸を含む水溶液の形態である、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  9. 前記椎間板性疼痛が、頸痛、慢性頚痛、腰痛および慢性腰痛から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
  10. 前記椎間板性疼痛が尾骨痛である、請求項1〜のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
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