以下、本発明に係る不揮発性メモリおよび記憶装置を実現するための形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)10は、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)であり、図1に示すように、記憶装置90に搭載され、メモリセル6を2次元(図1における縦横)配列して備える。記憶装置90の構成の詳細は後記にて説明する。磁気メモリ10は、図1においては、一部のメモリセル6を省略して示し、後記変形例および第2実施形態以降も同様とする。なお、図1およびその他の等価回路を示す後記図面においては、磁気メモリの「行(ロウ)方向」を縦にして、「列(カラム)方向」を横にして表す。以下、本実施形態に係る磁気メモリの各要素について詳細に説明する。
〔第1実施形態:磁気メモリ〕
図1に示すように、磁気メモリ10のメモリセル6は、第1入力選択トランジスタ(第1の入力選択トランジスタ)41と第1出力選択トランジスタ(第1の出力選択トランジスタ)42を直列に接続してなる第1回路と、第2入力選択トランジスタ(第2の入力選択トランジスタ)43と第2出力選択トランジスタ(第2の出力選択トランジスタ)44を直列に接続してなる第2回路と、を並列に接続して一重の環状の回路を形成する。メモリセル6はさらに、1個の磁気抵抗効果素子(不揮発性記憶素子)1が、第1回路と第2回路を架橋するように、端子の一方を選択トランジスタ41−42間に、他方を選択トランジスタ43−44間に、それぞれ接続する。言い換えると、メモリセル6は、磁気抵抗効果素子1を中心とした8の字型の回路を形成する。そして、メモリセル6は、第1回路と第2回路とを並列に接続した両端の2箇所を、それぞれ入力端子と出力端子として、列方向(図1における横方向)に隣り合うメモリセル6,6同士で接続する。この直列に接続して列方向に配列されたメモリセル6の一群を適宜「メモリセル列」60(図4〜6参照)と称する。
メモリセル列60の両端にはビット線BLP,BLNが接続され、読出しおよび書込みにおいて、記憶装置90の書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源94または定電流源95に接続される。詳しくは、ビット線BLPが定電流源94,95の正(+)の出力に、ビット線BLNが負(−)の出力と共通の電位であるGND(0V)に、それぞれ接続される(図4〜6参照)。したがって、メモリセル列60は、ビット線BLP側からビット線BLN側へ、図1における右方向に電流を供給される。なお、各メモリセル6の入力端子がビット線BLP側、出力端子がビット線BLN側とする。そして、磁気メモリ10は、メモリセル6の直列方向に直交する方向である行方向(図1における縦方向)に配列するメモリセル6,6,…,6の選択トランジスタ41,42,43,44の各ゲートに入力するワード線WL0i,WL1o,WL1i,WL0oを備える。このような磁気メモリ10は、図2に示すように、表層に選択トランジスタ41,42,43,44を形成された基板40上に、磁気抵抗効果素子1、およびこれらの素子同士を接続する配線51,52,54、ならびにワード線WL0i,WL1o,WL1i,WL0o(図2においては省略)を形成してなる。図2に示すメモリセル6の構造については、後記にて詳細に説明する。
磁気メモリ10は、メモリセル6の数を特に限定されないが、列方向に配列した、すなわちメモリセル列60のメモリセル6の数が多いと、書込みにおける負荷が増大し、また、読出しの精度が低下する。これは、メモリセル6の電流の経路が、選択トランジスタ41,42,43,44の2個および磁気抵抗効果素子1を直列に接続した回路であり、さらにこのメモリセル6がメモリセル列60において直列に接続されたものであることによる。通常、磁気抵抗効果素子1の2値の抵抗値RP,RAPや選択トランジスタ41,42,43,44の各ON抵抗RONは、金属電極材料で形成される配線の抵抗よりも高い。そのため、メモリセル列60は、配列されたメモリセル6の数が多くなるにしたがい、抵抗値(ビット線BLP−BLN間抵抗値)が高くなって、書込みにおける負荷が増大し、また、読出しの精度が低下する。したがって、磁気メモリ10は、メモリセル列60に配列されるメモリセル6の数を、磁気抵抗効果素子1の抵抗値RP,RAP、および磁気抵抗効果素子1の磁化反転電流密度に基づく書込み用の電流Iw、ならびに選択トランジスタ41,42,43,44のON抵抗RON等に応じて設計することが好ましい。そして、記憶装置90は、記憶容量に応じて磁気メモリ10を1または2以上搭載すればよく、2以上搭載する場合は、各磁気メモリ10が並列に書込/読出電流回路9に接続する回路を設ける(図示せず)。
(磁気抵抗効果素子)
磁気抵抗効果素子1は、メモリセル6における記憶素子であり、2値のデータ‘1’、‘0’を抵抗値の高低として記憶し、所定の大きさの電流を向きを変えて供給されることで抵抗値が変化する。本実施形態においては、磁気抵抗効果素子1は、CPP−GMR(Current Perpendicular to the Plane Giant MagnetoResistance:垂直通電型巨大磁気抵抗)素子やTMR(Tunnel MagnetoResistance:トンネル磁気抵抗)素子等のスピン注入磁化反転素子であり、例えば図3(a)、(b)に示すように、磁化固定層11、磁化自由層3の2つの磁性膜で中間層2を挟んだ積層構造を有し、上下に一対の端子p1,p2を有する。ここでは、メモリセル6において、磁気抵抗効果素子1は、端子p1(磁化自由層3の側)を第1回路(選択トランジスタ41−42間)に、端子p2(磁化固定層11の側)を第2回路(選択トランジスタ43−44間)に、それぞれ接続する。なお、図3に示す磁気抵抗効果素子1においては、磁化自由層3を上に積層して備えるが、磁化固定層11を上に備えてもよい。さらに磁気抵抗効果素子1は、最下層に配線52への密着性を得るための下地膜を、最上層に製造工程で磁性膜を保護するための保護膜を、それぞれRu等の非磁性の金属膜で備えてもよい(図示省略)。磁気抵抗効果素子1を構成するこれらの各層は、例えばスパッタリング法や分子線エピタキシー(MBE)法等の公知の方法で連続的に成膜されて積層される。
ここで、磁気抵抗効果素子1には、TMR素子、CPP−GMR素子のいずれのスピン注入磁化反転素子も適用することができる。TMR素子は、中間層(障壁層)として絶縁膜を備えるため、抵抗値がCPP−GMR素子の10〜数百倍程度と高い。本実施形態に係る磁気メモリ10は、書込みで、メモリセル列60において、メモリセル6毎に磁気抵抗効果素子1が2個の選択トランジスタと交互に直列に接続された回路を形成して、電流を供給される。したがって、メモリセル列60に多数のメモリセル6を配列して同時に書込みをするためには、抵抗の低いCPP−GMR素子を磁気抵抗効果素子1に適用することが好ましい。一方で、TMR素子は高抵抗かつ磁気抵抗比(MR比)が高いので抵抗値の変化量が大きい。したがって、磁気メモリ10は、TMR素子が適用されると、読出しの精度が高くなり、微細化され易く、読出し用の電流Irを小さくすることができる。詳しくは後記の磁気メモリの書込/読出方法にて説明するように、磁気メモリ10について、記憶容量密度(メモリセル6の面積)や磁気メモリ10全体の書込所要時間、書込/読出の消費電流等、要求される特性に応じて磁気抵抗効果素子1の態様が選択される。
磁気抵抗効果素子1は、平面視において、一般的なスピン注入磁化反転素子と同様に、300nm×400nm相当の面積以下であることが好ましく、特に50〜100nm×100〜300nm程度に相当する面積であることが好ましい。また、磁気抵抗効果素子1は、平面視形状が、図2ではY方向に長い長方形で表されるが、特に限定されない。
磁化固定層11および磁化自由層3は、CPP−GMR素子やTMR素子に用いられる公知の磁性材料にて構成することができ、特に磁気抵抗効果素子1が微細化され易いことから、垂直磁気異方性材料を適用することが好ましい。具体的には、Fe,Co,Ni等の遷移金属とPd,Ptのような貴金属とを繰り返し積層したCo/Pd多層膜のような多層膜、Tb−Fe−Co,Gd−Fe等の希土類金属と遷移金属との合金(RE−TM合金)のようなフェリ磁性体、L10系の規則合金としたFePt,FePd等が挙げられる。また、書込み用の電流Iwが供給されても磁化方向が固定されているように、磁化固定層11は、その保磁力Hcpが磁化自由層3の保磁力Hcfよりも十分に大きく設計され、そのために、それぞれの材料を選択したり、磁化自由層3よりも厚く形成される。具体的には、磁化固定層11の厚さは3〜50nmの範囲において、磁化自由層3の厚さは1〜20nmの範囲において、それぞれ設計されることが好ましい。
中間層2は、磁気抵抗効果素子1がTMR素子であれば、MgO,Al2O3,HfO2のような絶縁体や、Mg/MgO/Mgのような絶縁体を含む積層膜からなり、その厚さは0.1〜2nmとすることが好ましい。また、磁気抵抗効果素子1がCPP−GMR素子であれば、中間層2は、Cu,Ag,Alのような非磁性金属からなり、その厚さは1〜10nmとすることが好ましい。
磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化とその動作を、図3を参照して説明する。磁気抵抗効果素子1は、磁化方向が固定された磁化固定層11と、磁化方向が回転可能な磁化自由層3を備え、磁化自由層3の磁化方向が磁化固定層11と同じ方向(平行)か逆(180°異なる)方向(反平行)かで、その積層方向における抵抗値、すなわち上下に接続した電極(配線)51,52(図2の抵抗接続層51b,52a)間の抵抗値が変化する。詳しくは、磁気抵抗効果素子1は、図3(a)に示す磁化方向が平行な状態における抵抗値RPよりも、図3(b)に示す磁化方向が反平行な状態における抵抗値RAPの方が高い(RP<RAP)。
そして、スピン注入磁化反転素子である磁気抵抗効果素子1は、膜面垂直方向における双方向のいずれかに一定以上の電流密度の電流Iwを供給されることで、その電流の向きによって磁化自由層3の磁化方向が変化する。具体的には、図3(c)に示すように、定電流源95の「+」を磁気抵抗効果素子1の上に、「−」を下に接続して、磁化自由層3側(端子p1)から磁化固定層11へ電流Iwを供給して、磁化固定層11側から電子を注入する。すると、磁化方向を上向きに固定された磁化固定層11により当該磁化固定層11の磁化方向と向きの異なる下向きのスピンを持つ電子dDが弁別されて、磁化自由層3は上向きのスピンを持つ電子dUが偏って注入される。磁化自由層3は、その内部電子のスピンが注入された電子dUのスピンにより回転し、これに伴い磁化方向が回転する。すなわち磁化自由層3の磁化方向が下向きの状態(図3(b)参照)で前記の通り電流Iwが供給されると、磁化方向が磁化固定層11と同じ上向きに反転(スピン注入磁化反転、以下、適宜磁化反転という)する。反対に、図3(d)に示すように、磁気抵抗効果素子1の上に定電流源95の「−」を、下に「+」を接続して、磁化固定層11側(端子p2)から磁化自由層3へ電流Iwを供給して、磁化自由層3側から電子を注入する。すると、下向きのスピンを持つ電子dDが磁化固定層11により弁別されて磁化自由層3に留まるため、磁化自由層3の磁化方向は下向きになる。
このように、磁気抵抗効果素子1は、膜面垂直方向に電流を供給されることで、磁化自由層3の磁化方向が磁化固定層11と同じ方向(平行)または180°異なる方向(反平行)になる。したがって、磁気抵抗効果素子1は、例えばデータ‘1’を磁化自由層3の磁化方向が下向きに、データ‘0’を上向きに設定した場合、‘1’を記録するときには磁化固定層11側から、‘0’を記録するときには磁化自由層3側から、電流Iwを供給する。そして、磁気抵抗効果素子1は、磁化自由層3の磁化方向により抵抗値が変化し、‘1’が記録されると抵抗値RAPに、‘0’が記録されると抵抗値RPになる。なお、磁気抵抗効果素子1は、上下に接続した電極51,52から電流を供給されるので、磁化自由層3と磁化固定層11に一対の端子を有する可変抵抗器であるといえ、この端子を介して電流源(定電流源95)から電流を供給される。また、磁気抵抗効果素子1において、磁化自由層3の磁化方向が平行、反平行のいずれかを示していれば、その磁化方向を反転させる大きさ以上の電流(Iw)が供給されるまでは、当該磁化自由層3の保磁力Hcfにより磁化方向が保持される。したがって、磁気抵抗効果素子1は、不揮発性の記憶素子になる。また、書込み用の電流、すなわち磁化反転電流として、パルス電流のように、磁化方向を反転させる電流値(Iw)をピーク電流として一時的に到達する電流(直流パルス電流)を用いることができる。
一方、データ‘1’、‘0’の読出し、すなわち磁気抵抗効果素子1の抵抗値の高低の判定は、図3(a)、(b)に示すように、磁化反転しない大きさの定電流Irを定電流源94から供給して、定電流源94の出力に接続した電圧比較器93で電圧の高低を判定することで行うことができる。なお、図3(a)、(b)においては、電流Irは、磁気抵抗効果素子1の磁化自由層3側から磁化固定層11へ供給されているが、この向きが逆でもよい。
(選択トランジスタ)
4個の選択トランジスタ41,42,43,44は、メモリセル列60に供給した電流を、メモリセル6毎に、磁気抵抗効果素子1に所望の向きに流し、あるいは磁気抵抗効果素子1に流さないことを可能にするために設けられる。このような選択トランジスタ41,42,43,44のそれぞれの動作(ON/OFF)は、後記の書込方法および読出方法にて説明する(ON:ドレイン−ソース間に電流が流れる状態)。メモリセル6の入力端子(ビット線BLP側)に接続された選択トランジスタ41,43を、第1入力選択トランジスタ41および第2入力選択トランジスタ43、出力端子(ビット線BLN側)に接続された選択トランジスタ42,44を、第1出力選択トランジスタ42および第2出力選択トランジスタ44と称する。選択トランジスタ41,42,43,44はそれぞれ、磁気抵抗効果素子1に供給する書込み用、読出し用の電流Iw,Irが流れるため、特に書込み用の電流Iwに対応した構造(寸法等)に設計される。さらに、前記したように、本実施形態に係る磁気メモリ10は、書込みで、メモリセル列60において、メモリセル6毎に選択トランジスタ41,42,43,44のうちの2個が磁気抵抗効果素子1と交互に直列に接続された回路を形成して、電流を供給される。したがって、選択トランジスタ41,42,43,44(適宜まとめて、選択トランジスタ4と称する)は、磁気メモリ10の書込みにおける負荷を抑えるために、ON抵抗RONが十分に低くなるように設計されることが好ましい。また、選択トランジスタ4は、磁気メモリ10の書込みにおいて、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化に伴う電位の変動に対して一定のゲート電圧Vgで動作させるために、しきい値電圧Vthに対して最大定格(破壊電圧)V(BR)gsが十分に大きく設計されることが好ましい。
選択トランジスタ41,42,43,44は、例えば、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)で形成され、シリコン(Si)基板の表層に形成されたり、ガラス等のその他の公知の基板上に結晶Si膜を成膜して形成される。また、選択トランジスタ41,42,43,44は、前記した通り同じ大きさの電流が流れるので、同一構造とすることができる。磁気メモリ10における選択トランジスタ41,42,43,44の構造については、後記にて説明する。
(配線)
配線51は、磁気抵抗効果素子1の端子p1(磁化自由層3)を第1回路(選択トランジスタ41−42間)に接続する配線であり、図2を参照して後記するように、抵抗接続層51b、接続部51c、中継層51a、および層間部51dからなる。配線52は、磁気抵抗効果素子1の端子p2(磁化固定層11)を第2回路(選択トランジスタ43−44間)に接続する配線であり、抵抗接続層52aおよび接続部52cからなる。配線54は、第1回路と第2回路を並列に接続する配線であり、接続部54c1,54c2および中継層54aからなる。ワード線WL0i,WL1i,WL0o,WL1oは、選択トランジスタ41,43,44,42のゲート4g1,4g3,4g4,4g2(図2参照)にそれぞれ接続して行方向(図2におけるY方向)に延設する配線であり、磁気メモリ10の1行あたり4本のこれらの配線は、配線ピッチ等によっては2層以上に分けて設けられる(図2では図示省略)。
配線51,52,54およびワード線WL0i,WL1i,WL0o,WL1oは、例えば、Cu,Al,Au,Ag,Ta,Cr等の金属やその合金のような一般的な金属電極材料で形成される。そして、スパッタリング法やメッキ法等の公知の方法により成膜され、フォトリソグラフィ、およびエッチング、リフトオフ法、またはCMP法等によりストライプ状等の所望の形状に加工される。配線51,52,54は、磁気抵抗効果素子1の書込み用、読出し用の電流を供給するために、寸法等を特に書込み用の電流Iwに対応した配線に設計される。ワード線WL0i,WL1i,WL0o,WL1o(適宜まとめて、ワード線WLと称する)は、選択トランジスタ41,43,44,42を駆動する(ON状態にする)ための電圧(ゲート電圧Vg)をゲートに印加するために適した配線に設計される。
(基板)
基板40は、メモリセル6を2次元配列するための土台であり、特に本実施形態に係る磁気メモリ10は、表層に選択トランジスタ41,42,43,44がMOSFETで形成される。そのために、基板40は、シリコン(Si)基板を材料とすることが好ましい。あるいは、基板40は、その他の公知の基板材料、具体的にはSiO2(酸化ケイ素、ガラス)等の基板上に結晶Si膜を成膜したものを材料とすることができる。
(絶縁層)
絶縁層は、2次元配列されたメモリセル6における基板40上の磁気抵抗効果素子1,1間や、配線51,52,54間、ワード線WL0i,WL1i,WL0o,WL1o(図示省略)間等を、互いに絶縁するために、図2の空白部分に設けられる。絶縁層は、例えばSiO2やAl2O3等の酸化膜やSi窒化物(Si3N4)等の公知の絶縁材料を適用することができる。特に、磁気抵抗効果素子1がTMR素子である場合に、磁気抵抗効果素子1,1間に設けられる絶縁層は、磁化固定層11、磁化自由層3の各端部間での電流のリークを防止するために、MgO等の障壁層と同じ絶縁材料、または特に絶縁性の高いSiO2で形成されていることが好ましい。一方、磁気抵抗効果素子1が、磁化固定層11および磁化自由層3に極めて酸化し易いRE−TM合金からなる層を含む場合は、磁気抵抗効果素子1に接触する部分(磁気抵抗効果素子1,1間)に設けられる絶縁層は、Oを浸入させ易いSiO2等の酸化物よりも、Si窒化物やMgF2等のO(酸素)を含有しない非酸化物、あるいはOを放出し難いMgO等を適用することが好ましい。また、磁気抵抗効果素子1の下方に設けられる部分(基板40上から中継層51a、抵抗接続層52a、中継層54a間まで)の絶縁層は、半導体装置の層間絶縁膜に適用されるBPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)やPSG(Phosphorus Silicon Glass)を適用してもよい。
本実施形態に係る磁気メモリ10の構造の一例について、図2を参照して説明する。図2では、右から順に、メモリセル列60におけるビット線BLNから1、2行目のメモリセル6,6を、簡略化した外観図で示し、また、選択トランジスタ41,42,43,44のゲート4g1,4g2,4g3,4g4に接続するワード線WL0i,WL1o,WL1i,WL0oを省略する。図2において、磁気メモリ10は、配線51,52,54の形状を単純化して表し、中継層51a、抵抗接続層52a、中継層54aを同じ高さ位置に示すが、例えば、配線54の中継層54aを下方に設けて、抵抗接続層52aと共に磁気抵抗効果素子1の平面視サイズを拡張することもできる。また、ここでは、選択トランジスタ41,42,43,44は、n型MOS(NMOS)からなるものとする。
メモリセル列60においては、第1回路同士、第2回路同士がそれぞれ直列に接続され、すなわち、第1入力選択トランジスタ41と第1出力選択トランジスタ42が交互に、第2入力選択トランジスタ43と第2出力選択トランジスタ44が交互に、それぞれ直列に接続されている。そのため、第1入力選択トランジスタ41のソース4s1と第1出力選択トランジスタ42のドレイン4d2がn+拡散層(図中、符号4d2を付す)を共有し、第1出力選択トランジスタ42のソース4s2が隣(ビット線BLN側)のメモリセル6の第1入力選択トランジスタ41のドレイン4d1とn+拡散層(図中、符号4d1を付す)を共有することができる。すなわち、第1回路を構成する選択トランジスタ41,42は、n+拡散層4d1,4d2が交互に並んで列方向(X方向)に連続したMOSFETで形成されている。同様に、第2回路を構成する選択トランジスタ43,44は、n+拡散層4d3,4d4が交互に並んで列方向に連続したMOSFETで形成されている。したがって、メモリセル列60において、選択トランジスタ41,42,43,44は、基板40の表層に、列方向に連続したMOSFETが2本、非アクティブ領域のSiO2を隔てて行方向(Y方向)に離間して設けられた構造になる。磁気メモリ10は、選択トランジスタ41,42,43,44がこのように形成されることで、メモリセル列60のサイズを列方向(X方向)に縮小することができる。
メモリセル6において、磁気抵抗効果素子1が磁化自由層3を上側にして設けられているため、磁気抵抗効果素子1の上面に配線51の抵抗接続層51bが、下面に配線52の抵抗接続層52aが、それぞれ接続する。そして、選択トランジスタ41−42間、すなわち基板40のドレイン4d2に接続部51cが接続して、中継層51a、層間部51dを経由して、抵抗接続層51bに接続する。同様に、選択トランジスタ43−44間、すなわち基板40のドレイン4d4に接続部52cが接続して、この接続部52cが抵抗接続層52aに接続する。隣り合うメモリセル6,6同士を接続する配線54は、一方の出力トランジスタ42,44のソース同士、他方の入力トランジスタ41,43のドレイン同士も接続するために、接続部54c1が一方のメモリセル6におけるドレイン4d1に、接続部54c2が他方のメモリセル6におけるドレイン4d3に、それぞれ接続し、さらにこれら接続部54c1,54c2同士が中継層54aで接続される。
磁気メモリ10は、書込みおよび読出しにおいて、選択したメモリセル列60、すなわちソース−ドレイン間に電流が流れるメモリセル列60における選択トランジスタ41,42,43,44(MOSFET)のみがベース(サブストレート)電源を接続される。そのため、磁気メモリ10は、選択トランジスタ41,42、選択トランジスタ43,44をそれぞれ交互に直列に接続した、X方向に連続した2列のMOSFETについて、そのベースがメモリセル列60毎に設けられるように、基板40にn型Si基板(n−sub)を適用して、その表層にp−wellがメモリセル列60毎に分離して形成される。そして、p−wellのそれぞれの表層(基板40の表層)に、ドレイン4d1,4d2,4d3,4d4およびソース4s2,4s4を構成するn+拡散層と共に、1以上のp+拡散層が形成される。p+拡散層は、p−wellを、当該p−wellに設けられたn+拡散層のうちの電位の最も低いものと電気的に接続するために設けられ、図2においては、ビット線BLNから1行目のメモリセル6の出力選択トランジスタ42,44のソース4s2,4s4と共に、配線54(接続部54c0)でビット線BLNに接続される。あるいは、p型Si基板(p−sub)を適用してもよく、この場合は、表層にn−wellが形成されて、さらにn−wellの表層にp−wellが形成される(図示せず)。
また、メモリセル列60は、配列するメモリセル6の数にかかわらず、書込みにおいて供給する電流の大きさが一定であるので、メモリセル6の数が多くなるにしたがい、電位の最も高い、ビット線BLPに接続する1行目のメモリセル6の入力選択トランジスタ41,43のドレイン4d1,4d3の電位の絶対値が高くなる。そのため、n+拡散層とp−wellとの電位差がMOSFETの降伏電圧に到達することのないように、必要に応じて、p−wellが列方向(X方向)にも2以上に分割して設けられる。具体的には、MOSFETの構造(降伏電圧、選択トランジスタ41,42,43,44のON抵抗RON)や磁気抵抗効果素子1の構造(抵抗値RAP、反転電流)に応じて、p−wellを共有することのできる連続したMOSFETの数、すなわち磁気メモリ10の列方向におけるp−wellの数が設計される。このp−wellの分割に合わせて、出力選択トランジスタ42,44のソース4s2,4s4と、その隣のメモリセル6の入力選択トランジスタ41,43のドレイン4d1,4d3とを異なるn+拡散層で、分離したp−well,p−wellのそれぞれに形成する。そして、前記のソース4s2,4s4およびドレイン4d1,4d3の4つのn+拡散層を配線54で接続し、さらに前記ソース4s2,4s4を設けた方のp−wellのp+拡散層にも接続する(図示せず)。したがって、GND(0V)には、ビット線BLNに接続した、メモリセル列60において電位の最も低いp−wellが接続される。
〔磁気メモリの製造方法〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリは、公知の選択トランジスタ型のMRAM(図37参照)と同様に製造することができる。すなわち、Si基板の表層にMOSFETで選択トランジスタ41,42,43,44を形成して基板40を製造する工程、ワード線WL0i,WL0o,WL1i,WL1o、配線52,54、および配線51の接続部51cと中継層51a、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程、磁気抵抗効果素子1、および配線51の層間部51dと抵抗接続層51b、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程を行う。以下、磁気メモリ10の製造方法の一例を説明する。
(トランジスタの形成)
まず、n型Si基板(n−sub)に、選択トランジスタ41,42,43,44を形成する領域(アクティブ領域)外のSiO2の埋込みを行い、次に、p型不純物イオンを注入して、p−wellをメモリセル列60毎に形成する。表面全体に薄い酸化膜(SiO2膜)を形成し、その上にpoly−Si膜を成膜してゲート4g1,4g2,4g3,4g4を形成する。p−wellに、n型不純物イオンを注入してn+拡散層(ドレイン4d1,4d2,4d3,4d4、ソース4s2,4s4)を形成し、p型不純物イオンを注入してp+拡散層を形成する。
(配線の形成)
次に、磁気抵抗効果素子1の下方に設けられる配線とこれらの間を埋める絶縁層を形成する。基板40(選択トランジスタ41,42,43,44)上に層間絶縁膜を成膜して、この層間絶縁膜の、n+拡散層、p+拡散層、およびゲート4g1,4g2,4g3,4g4のそれぞれの上にホール(ビア)を形成する。層間絶縁膜のホールに金属電極材料を埋め込んで、接続部51c,52c,54c1,54c2、およびワード線WLi1,WLo1,WLi2,WLo2を形成し、さらに中継層51a、抵抗接続層52a、および中継層54aを形成する。必要に応じて表面を平坦化処理して、中継層51aおよび抵抗接続層52a、ならびにこれらの間を埋める絶縁層が表面に形成された状態にする。
(磁気抵抗効果素子の形成)
中継層51a、抵抗接続層52a、および絶縁層の上に、磁気抵抗効果素子1の各層を構成する下地膜、磁化固定層11、中間層2、磁化自由層3、保護膜を連続して成膜、積層する。この積層膜を、電子線リソグラフィおよびイオンビームミリング法等で、磁気抵抗効果素子1の形状に加工する。具体的には、保護膜上に磁気抵抗効果素子1の形状のレジストパターンを形成し、保護膜から下地膜までをエッチングして、抵抗接続層52aの上に磁気抵抗効果素子1を形成する。その上から磁気抵抗効果素子1の全体の厚さに合わせた絶縁膜を成膜し、レジストパターンをその上の絶縁膜ごと除去する(リフトオフ)。次に、絶縁膜の中継層51aの上にホール(ビア)を形成し、このホールに金属電極材料を埋め込んで、配線51の層間部51dを形成する。層間部51dおよび磁気抵抗効果素子1の上に、配線51の抵抗接続層51bを形成して、磁気メモリ10が得られる。
磁気抵抗効果素子1は、配線51の層間部51dと同様に、絶縁層に孔を形成して、埋め込んで形成してもよく、さらに層間部51dの後に形成してもよい。すなわち、表面に中継層51a、抵抗接続層52a、および絶縁層が形成された後に、磁気抵抗効果素子1の全体の厚さに合わせた絶縁膜を成膜し、前記と同様に層間部51dを形成し、次に磁気抵抗効果素子1を形成する。特に磁気抵抗効果素子1が耐熱性の劣るRE−TM合金からなる層を含む場合は、このような手順で製造することで、製造時における磁気抵抗効果素子1へのダメージが抑えられるので好ましい。
(磁気メモリの初期設定)
磁気メモリ10は、使用(書込)前に、すべてのメモリセル6の磁気抵抗効果素子1の磁化固定層11の磁化方向を所定の向き(図3では上向き)に揃える初期設定を行う。詳しくは、磁気メモリ10の全体に磁化固定層11の保磁力Hcpよりも大きな磁界を印加する。この磁界印加は、完成した(製造後の)磁気メモリ10に限られず、磁気メモリ10の製造工程途中において磁化固定層11用の磁性膜材料を成膜した後以降であれば、どの段階であっても実施することができる。
〔第1実施形態:記憶装置〕
本実施形態に係る磁気メモリ10を搭載する記憶装置90は、さらに以下の磁気メモリ10の駆動回路を備える。すなわち記憶装置90は、磁気メモリ10の行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72,73,74と、磁気メモリ10の列毎に設けられたビット線選択トランジスタ77,78および電圧比較器93と、定電流源94,95(図4〜6参照)を内蔵した書込/読出電流回路9と、行デコーダ91と、列デコーダ92と、ゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80と、を備える。本実施形態および後記変形例ならびに第2実施形態以降においては、簡潔に説明するために、記憶装置は磁気メモリを1つ備えるものとして説明する。
記憶装置90は、磁気メモリ10の構造、およびそれに伴う各行のワード線に接続するワード線選択トランジスタの個数、ならびにゲート電圧生成回路80を除いて、図36(b)に示す従来の磁気メモリ110Aを備えた記憶装置190Aと同様の構成であり、磁気メモリ10およびゲート電圧生成回路80以外の各部品は公知のものを適用することができる。具体的には、書込/読出電流回路9は、定電流源94,95(図4〜6参照)を内蔵し、図示しない制御回路からの命令により、読出し時には定電流源94から、書込み時には定電流源95から、それぞれ所定の定電流を供給させる。電圧比較器93は、センスアンプやコンパレータ、参照電位発生回路等を内蔵し、磁気メモリ10の各列のビット線BLPに接続され、読出し時に、ビット線BLPの出力を参照電位(閾値)Vrefと比較して、結果を制御回路へ出力する。
行デコーダ91は、行アドレスデータを受けて、行毎に、書込みにおいてはワード線選択トランジスタ71,74またはワード線選択トランジスタ72,73の2個をON状態にし、読出しにおいてはワード線選択トランジスタ71,74の2個または4個すべてをON状態にする信号を出力する。ワード線選択トランジスタ71,73は、ON状態で、それぞれ入力ワード線WL0i,WL1iをゲート電圧生成回路80に接続する。ワード線選択トランジスタ72,74は、ON状態で、それぞれ出力ワード線WL1o,WL0oをゲート電圧生成回路80に接続する。ゲート電圧生成回路80は、分圧器を内蔵して、行毎に2段階ずつ変位させた電圧を、磁気メモリ10の各メモリセル6の入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44に印加するゲート電圧Vg1i,Vg1o,Vg2i,Vg2o,…,VgNi,VgNoとして出力し(図4、図5、図6参照)、その構成の詳細は、後記の磁気メモリの書込方法にて説明する。なお、記憶装置90は、列方向に2以上の磁気メモリ10が搭載される場合は、書込みや読出しをする1つの磁気メモリ10を選択して、その各行のワード線WL0i,WL1i,WL1o,WL0oを前記の通りゲート電圧生成回路80に接続する。列デコーダ92は、書込みおよび読出しにおいて列アドレスデータを受けて磁気メモリ10の1列以上を選択し、選択した列のビット線選択トランジスタ77,78を共にON状態にする信号を出力する。ビット線選択トランジスタ77は、ON状態で、書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源94,95の正の出力にビット線BLPを接続し、ビット線選択トランジスタ78は、ON状態で、負の出力(GND)にビット線BLNを接続する。なお、図1等の等価回路図において、トランジスタ71〜78は、磁気メモリ10の選択トランジスタ41,42,43,44と同じ図記号で表記されるが、MOSFETに限られず、前記動作の可能なスイッチング素子であればよい。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図4〜6を参照して説明する。図4〜6では、簡潔に説明するために、磁気メモリ10における1列のメモリセル6(1つのメモリセル列60)を示し、さらにこのメモリセル列60に4つのメモリセル6が配列されているとし、適宜、図中左からメモリセル61,62,63,64と称する。この図4〜6に示すメモリセル列60が列デコーダ92(図1参照)により選択されて(ビット線選択トランジスタ77,78:ON状態)、書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源95または定電流源94の正の出力がビット線BLPに接続し、負の出力と同じ電位のGND(0V)がビット線BLNに接続している。また、書込みについて説明する図4では、書込みに使用されない電圧比較器93や定電流源94等を、読出しについて説明する図5および図6では、読出しに使用されない定電流源95等を、それぞれ省略し、後記変形例および第2実施形態以降も同様とする。ここでは、メモリセル61,62,63,64にそれぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータを書込みし、また、これらのデータを読出しするものとして説明する。
(磁気メモリの書込方法)
図4を参照して、データの書込みについて説明する。行デコーダ91が、1、4行目において、ワード線WL0i,WL0oに接続するワード線選択トランジスタ71,74をON状態に、ワード線WL1i,WL1oに接続するワード線選択トランジスタ72,73をOFF状態にする。一方、2、3行目において、ワード線選択トランジスタ71,74をOFF状態に、ワード線選択トランジスタ72,73をON状態にする。なお、図4および後記の図5、図6において、ワード線選択トランジスタ71,72,73,74は、ON状態のとき、白抜き矢印を付して表す。これにより、メモリセル61,64は、選択トランジスタ41,44がON状態、選択トランジスタ42,43がOFF状態である。そして、メモリセル62,63は、選択トランジスタ41,44がOFF状態、選択トランジスタ42,43がON状態である。以下、明細書において、トランジスタのOFF状態については記載しない場合がある。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60にビット線BLP側からビット線BLN側へ右方向に電流Iwを供給すると、電流Iwが、メモリセル61において、ON状態の選択トランジスタ41,44に流れ、その際、選択トランジスタ41,44間に接続された磁気抵抗効果素子1を経由する。すなわち、電流Iwは、メモリセル61において、第1入力選択トランジスタ41−磁気抵抗効果素子1−第2出力選択トランジスタ44の経路で流れ、さらにメモリセル62へ流れる。したがって、メモリセル61の磁気抵抗効果素子1は、第1回路(選択トランジスタ41−42間)に接続した端子p1から第2回路(選択トランジスタ43−44間)に接続した端子p2へ流れて供給され、磁化自由層3の磁化方向が磁化固定層11と平行な上向きになる(図3(c)参照)。その結果、メモリセル61にデータ‘0’が書込みされる。
一方、メモリセル61から流れてきた電流Iwは、その隣のメモリセル62において、ON状態の選択トランジスタ43,42に流れ、同じく間に接続された磁気抵抗効果素子1を経由する。すなわち、電流Iwは、メモリセル62において、第2入力選択トランジスタ43−磁気抵抗効果素子1−第1出力選択トランジスタ42の経路で流れる。したがって、メモリセル62の磁気抵抗効果素子1は、第2回路(選択トランジスタ43−44間)に接続した端子p2から第1回路(選択トランジスタ41−42間)に接続した端子p1へ流れて供給され、磁化自由層3の磁化方向が磁化固定層11と反平行な下向きになる(図3(d)参照)。その結果、メモリセル62にデータ‘1’が書込みされる。
電流Iwは、メモリセル62からメモリセル63に、さらにメモリセル64に流れ、これにより、メモリセル63はメモリセル62と同様にデータ‘1’が、メモリセル64はメモリセル61と同様にデータ‘0’が、それぞれ書込みされる。したがって、メモリセル列60に電流Iwを1回供給することにより、4つすべてのメモリセル6に、左から‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータが書込みされる。
このように、メモリセル6が4個の選択トランジスタ41,42,43,44を備えることにより、入力端子から供給された電流が磁気抵抗効果素子1を双方向に流れる2通りの経路を形成することができる。その結果、共通の電流が流れるメモリセル列60において、電流を、メモリセル6毎に所望の向きに磁気抵抗効果素子1に供給することができる。したがって、1つのメモリセル列60について、メモリセル6の数、および書込みをしようとする‘0’、‘1’のデータのそれぞれの数にかかわらず、すべてのメモリセル6に1回の電流供給により書込みをすることができ、さらに供給する電流が、1個の磁気抵抗効果素子1を磁化反転させる大きさでよいので、配線51,52,54等が太く形成されなくてよい。
磁気メモリ10の書込みにおいて、定電流源95は、定電流I
wを供給し、その出力電圧V
wが、下式(1)に表されるようにBLP−BLN間の抵抗値、すなわちメモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkに依存する。このメモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkは、下式(2)で表される。前記したように、メモリセル6は、電流I
wの経路が、‘0’を書き込みするときは、第1入力選択トランジスタ41−磁気抵抗効果素子1−第2出力選択トランジスタ44、‘1’を書き込みするときは、第2入力選択トランジスタ43−磁気抵抗効果素子1−第1出力選択トランジスタ42、であり、いずれも、選択トランジスタ41,42,43,44のうちの2個と磁気抵抗効果素子1とを流れる。なお、本明細書において、例えばメモリセル6について、k行目(1≦k≦N)のメモリセル6
kの抵抗値R
CELLkのメモリセル列60に配列されたN個すべての和(総和)を、「Σ」の上下の添字「N」、「k=1」を省略して、適宜「ΣR
CELLk」と表す。また、「N」はメモリセル列60に配列されたメモリセル6の数であり、第2実施形態以降も同様に表す。「R
P/AP」は、各メモリセル6に記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。また、選択トランジスタ41,42,43,44のON抵抗R
ONは、後記するようにゲート−ソース間電圧Vgsに依存する変数であり、メモリセル6毎に、さらに入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とで異なり得るが、ここではメモリセル6毎に同値の定数R
ONi,R
ONo(適宜まとめて、R
ON)として表す。このように、書込み時のメモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkは、書込み前および書込みにより変化したメモリセル6の磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APと共に変化し、これに伴い、定電流源95は出力電圧V
wが変化する。
ここで、メモリセル列60はメモリセル6が直列に接続されてなるので、両端(ビット線BLP,BLN)に接続した定電流源95から電流Iwが供給されているとき、メモリセル6毎に、当該メモリセル6の抵抗(抵抗値RCELL)によって、定電流源95の出力電圧Vwから0V(負の出力)まで電位が段階的に降下する。さらに、各メモリセル6においては、電流Iwが、入力選択トランジスタ41,43のいずれか1個、磁気抵抗効果素子1、出力選択トランジスタ44,42のいずれか1個、が順に直列に接続された経路を流れる。したがって、メモリセル列60においては、メモリセル6毎に、そして各メモリセル6の入力選択トランジスタ41,43のON状態の方と出力選択トランジスタ42,44のON状態の方とで、ソース電位Vsおよびドレイン電位Vd(適宜、まとめて電位)が段階的に異なる。具体的には、図4に示すメモリセル列60においては、メモリセル61の入力選択トランジスタ41,43のドレイン電位Vd1iから、メモリセル64の出力選択トランジスタ42,44のソース電位Vs4oまで、図7(a)に表されるように、定電流源95の出力電圧Vw(図中、「VwMAX」または「VwMIN」)から0Vに電位が段階的に降下する。さらに詳しくは、例えばメモリセル61の第2出力選択トランジスタ44のソース電位Vs1oからメモリセル62の第2入力選択トランジスタ43のソース電位Vs2iへは、この第2入力選択トランジスタ43によって(Iw×RONi)降下する。これに対し、メモリセル61における第1入力選択トランジスタ41のソース電位Vs1iから第2出力選択トランジスタ44のソース電位Vs1oへは、第2出力選択トランジスタ44、さらに磁気抵抗効果素子1によって(Iw×RP/AP+Iw×RONo)降下する。したがって、メモリセル列60においては、電位が、入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とで交互に異なる電位差で降下する。なお、図7の縦軸は、電位の変化量や電位差について実際の大きさを表すものではない。
一方、磁気メモリ10のすべてのメモリセル6が同じ構造で、それぞれのメモリセル6に設けられた選択トランジスタ41,42,43,44も同じ構造のMOSFETであるから、そのしきい値電圧Vth等も同じ値である。したがって、各メモリセル6の選択トランジスタ41,42,43,44に印加するゲート電圧Vgは、当該メモリセル6毎に、さらに入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とで個別に設定されることが好ましい。詳しくは、選択トランジスタ4は、電流I
wが流れるように、ゲート電圧Vgのソース電位Vsに対する電位差(ゲート−ソース間電圧Vgs)が(Vth+Vds)以上(Vgs≧Vth+Vds、線形領域)である必要がある。さらに、選択トランジスタ4は、ゲート−ソース間電圧Vgsが大きくなるにしたがいON抵抗R
ONが低くなり、このようなゲート−ソース間電圧Vgsになるゲート電圧Vgを各メモリセル6の入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44に印加することにより、メモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkが低減され、書込みにおける負荷が抑制される。一方、MOSFET(選択トランジスタ4)において、ゲート−ソース間電圧Vgsは、過大になるとゲート酸化膜が破壊されるので、その最大定格(破壊電圧)V
(BR)gsに到達することのないようにゲート電圧Vgが設定される必要がある。書込みにおいては、Vds=I
w×R
ONであるから、すべてのメモリセル6の入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44のゲート−ソース間電圧Vgsが、下式(3)で表される範囲になるように、選択トランジスタ4毎にゲート電圧Vgが設定される。そのために、記憶装置90は、磁気メモリ10の行(k)毎に2段階ずつ変位させたゲート電圧Vg
ki,Vg
koを出力するゲート電圧生成回路80を備える。以下、ゲート電圧生成回路80について、図4を参照して説明する。
(ゲート電圧生成回路)
ゲート電圧生成回路80は、電位の高い側(図における左)から、パルス電源96、保護抵抗87、行毎に交互に設けられた分圧抵抗器81と分圧抵抗器82、ダイオード88、およびゲート基電圧電源98を、順に直列に接続して備え、さらに、分圧抵抗器82のそれぞれに並列に接続した抵抗切替スイッチング素子83、ならびに、抵抗切替スイッチング素子83毎にこれをON(閉)にする信号を出力する抵抗切替回路84を備える。ゲート電圧生成回路80はさらに、保護抵抗87を挟んだパルス電源96の出力と定電流源95の正の出力との間に順に接続する、ツェナーダイオード86およびダイオード85を備える。分圧抵抗器81,82は固定抵抗器であり、後記するように、互いの抵抗値が所定の比になるように設計される。抵抗切替スイッチング素子83は、例えばON抵抗が分圧抵抗器82の抵抗値よりも十分に低いMOSFETであり、ON状態で、並列に接続する分圧抵抗器82の両端子間を短絡して、抵抗を理論上0Ωにする。抵抗切替スイッチング素子83は、書込みにおいては、すべてOFF(開)状態であり、詳しくは抵抗切替回路84と共に読出方法にて説明する。
パルス電源96は、直流(DC)電源であり、メモリセル列60において最も電位の高い、ビット線BLP側から1行目のメモリセル6(以下、適宜メモリセル61)の第1入力選択トランジスタ41または第2入力選択トランジスタ43に印加するゲート電圧を得るために、それよりも高い電圧VgHをパルス出力する。これにより、ゲート電圧生成回路80から出力するすべてのゲート電圧がパルス出力するため、各メモリセル6の選択トランジスタ41,42,43,44は、それぞれに接続するワード線選択トランジスタ71,72,73,74がON状態においてON/OFFを繰り返す。したがって、定電流源95からメモリセル列60に流れる電流は、パルス電源96の出力に同期した、ピーク電流Iwの直流パルス電流である。保護抵抗87は固定抵抗器であり、パルス電源96を保護するために設けられる。
ゲート基電圧電源98は、メモリセル列60において最も電位の低い、ビット線BLN側から1行目のメモリセル6(以下、適宜メモリセル6N、図4ではメモリセル64)の第1出力選択トランジスタ42または第2出力選択トランジスタ44に印加するゲート電圧を確保するために設けられる。ダイオード88は、パルス電源96の停止時(ベース期間)に、ゲート基電圧電源98から選択トランジスタ41,42,43,44のゲート電圧Vgとして出力させないために、カソードがゲート基電圧電源98に接続される。ツェナーダイオード86は、メモリセル列60の書込みや読出しにおいて最も電位の高いメモリセル61の入力選択トランジスタ41,43の保護素子であり、パルス電源96の出力電圧VgHが定電流源95の出力電圧Vwに対して一定以上高い場合に電流を流して差を抑えて、ゲート−ソース間電圧Vgsが過大にならないようにする。ダイオード85は、主にパルス電源96の停止時に、定電流源95からゲート電圧生成回路80へ電流を流出させないために、ツェナーダイオード86とは極性を逆向きに、カソードが定電流源95の正の出力、すなわちビット線BLPに接続される。
書込みにおける、ゲート電圧生成回路80による行(k)毎のゲート電圧Vgki,Vgkoの出力について、図4および図7(a)を参照して説明する。前記したように、書込みにおいては、すべての行の抵抗切替スイッチング素子83がOFF状態である。したがって、パルス電源96から保護抵抗87を経由して出力した電圧VgHは、破線矢印で表すように、分圧抵抗器81と分圧抵抗器82を交互に経由して段階的に電圧降下しながら、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg0に到達する。そして、直列に接続された分圧抵抗器81,82のそれぞれの間から、白抜き矢印で表すように、各行のON状態のワード線選択トランジスタ71,74またはワード線選択トランジスタ73,72を経由して、ゲート電圧Vgki,Vgkoを出力する。
ゲート電圧生成回路80は、分圧器の各行の分圧抵抗器81および分圧抵抗器82がそれぞれ同じ抵抗値Rdiv1,Rdiv2であるので、図7(a)に示すように、電圧VgHからVg0まで、抵抗値Rdiv1,Rdiv2の比に比例する大小2通りの段差で交互に降下した(2N+1)通りの電圧を出力する。一方、メモリセル列60においては、前記したように、電位が、入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とで交互に異なる電位差で降下する。したがって、この2通りの電位差に、ゲート電圧生成回路80の分圧抵抗器81,82による電圧の降下量を一致させることによって、すべてのメモリセル6の入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44においてゲート−ソース間電圧Vgsが同一の値となるゲート電圧Vgki,Vgkoが出力されることになる。ここでは、図7(a)で実線で表されたVwMAX(=Vd1i)から0V(=Vs4o)まで電位が降下するときに、すべてのゲート−ソース間電圧Vgski,Vgsko(実線の両矢印で表される電位差)が、同一の値(Vgstyp)になるように設定する。そのために、分圧抵抗器81,82の抵抗値Rdiv1,Rdiv2、ならびにパルス電源96およびゲート基電圧電源98が出力する電圧VgH、Vg0をそれぞれ適切な値に設計、設定する。なお、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力VgH,Vg0について、それぞれ保護抵抗87およびダイオード88の抵抗はここでは無視する。
まず、メモリセル列60のすべてのメモリセル6の入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44において共通のゲート−ソース間電圧Vgs(適宜、Vgs
typと称する)を式(3)の範囲に設定する。ゲート−ソース間電圧Vgs
typは、ここでは、上限の最大定格V
(BR)gsに対してある程度マージンを設けることが好ましい。また、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおける、選択トランジスタ4のON抵抗R
ON(適宜、R
ONtypと称する。R
ONi=R
ONo=R
ONtyp)を、R
ON=1/β(Vgs−Vth)より算出する(β:選択トランジスタ4の利得係数)。図4に示すように、ソース電位が0Vであるメモリセル6
4(6
N)の第2出力選択トランジスタ44に印加されるゲート電圧Vg
4oは、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0と同電位である(Vg
0=Vg
No)。したがって、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(4)で表されるように設定される。
ゲート電圧生成回路80が、パルス電源96の出力電圧Vg
Hからメモリセル列60における電位降下に合わせて降下したゲート電圧Vg
1i,Vg
1o,Vg
2i,Vg
2o,・・・,Vg
Noを出力するために、分圧抵抗器81,82は、抵抗値R
div1,R
div2の比がR
div1:R
div2≒R
ON:(R
ON+R
P/AP)に設計されることが好ましい。具体的には下式(5)を満足するように設計されることが好ましい。ここでは、後記するように、メモリセル列60の選択トランジスタ4の共通のゲート−ソース間電圧Vgs
typを、定電流源95の最大出力電圧V
wMAXに基づいて、すなわちすべての磁気抵抗効果素子1の抵抗値がR
APであると仮定して設定しているので、R
div2/R
div1=1+R
AP/R
ONtypとする。
一方、メモリセル6
1の第1入力選択トランジスタ41は、ドレイン電位が式(1)に表した定電流源95の出力電圧(正の電位)V
wであるから、ソース電位Vs
1iは(V
w−I
w×R
ONi)である。そして、式(1)、(2)に表したように、定電流源95の出力電圧V
wは、メモリセル列60のN個のメモリセル6のそれぞれの磁気抵抗効果素子1の抵抗値によって変動する。書込み前における抵抗値がR
P,R
APのいずれかであるかは不明であるので、メモリセル6
1の第1入力選択トランジスタ41を確実に線形領域で動作させるために、ソース電位Vs
1iが最大となる、定電流源95の出力電圧V
wを想定される範囲において最大値V
wMAXになる場合を仮定する。これはメモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkが最大になる場合であるから、すべてのメモリセル6は、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が高い方のR
APである、すなわちデータが‘1’であると仮定する。したがって、定電流源95の最大出力電圧V
wMAXは下式(6)で表される。
ゲート電圧生成回路80において、パルス電源96の出力電圧Vg
Hからゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0までは、N組の分圧抵抗器81,82により、メモリセル列60における電位の降下に対応させているので、パルス電源96とゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H,Vg
0の電位差は、メモリセル列60の全体による電位差すなわち定電流源95の最大出力電圧V
wMAXに一致すればよい。すなわち、パルス電源96の出力電圧Vg
Hを下式(7)で表されるように設定することにより、設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typとなるゲート電圧Vg
ki,Vg
koが出力される。
磁気メモリ10の書込みにおいては、メモリセル列60の1〜N個の任意のメモリセル6が、データが書込み前において‘0’であったり‘0’に書込みされた場合に、磁気抵抗効果素子1の抵抗値がRPである、またはRPに低下する。これに伴いメモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkが低くなって、定電流源95の出力電圧Vwが最大出力電圧VwMAXよりも低い電圧になり、N個すべてのメモリセル6がデータ‘0’のときに最小値VwMINになる。このとき、各メモリセル6kの入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44は、図7(a)で「VwMIN」から0Vまで段階的に降下する破線で表されるように、ソース電位Vski,Vskoがそれぞれ低下する。一方、各行のゲート電位Vgki,Vgkoは変化しないので、その分、ゲート−ソース間電圧Vgsが、図7(a)で破線部を含めた両矢印で表される電位差に増大し、それに伴いON抵抗が低下している。したがって、メモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkはさらに低いものであり、電流Iwとの積が定電流源95の最小出力電圧VwMINとなる。
このような電位の低下は、メモリセル列60において電位の低い側の選択トランジスタ41,42,43,44のON抵抗R
ONki´,R
ONko´の低下に伴う電位の低下分が累積される。その結果、メモリセル6
k毎に、さらに入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とで異なるゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´になり(Vgs
ki´≧Vgs
ko´>Vgs
typ)、これに伴い、ON抵抗R
ONki´,R
ONko´も異なる(R
ONki´≦R
ONko´<R
ONtyp)。したがって、定電流源95の最小出力電圧V
wMINは、下式(8)で表される。そして、電位の最も高いメモリセル6
1の第1入力選択トランジスタ41(または第2入力選択トランジスタ43)において、電位が最も大幅に低下し、すなわちゲート−ソース間電圧Vgs
11´が最大である。また、電位の最も低いメモリセル6
Nの出力選択トランジスタ42,44は、ソース電位Vs
Noが0V(GND)で変化しないので、ゲート−ソース間電圧Vgs
typおよびON抵抗R
ONtypが変化しない(R
ONNo´=R
ONtyp、Vgs
No´=Vgs
typ)。メモリセル6
k毎の入力選択トランジスタ41,43、出力選択トランジスタ42,44のそれぞれのゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´およびON抵抗R
ONki´,R
ONko´は、シミュレーションによって算出される。
各メモリセル6
kの入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44のゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´が最大定格V
(BR)gsに到達することのないように、すべてのメモリセル6のデータが‘1’と仮定したときのゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。そのためには、下式(9)で表されるように、すべてのメモリセル6のデータが‘0’のときのメモリセル6
1の入力選択トランジスタ41,43のゲート−ソース間電圧Vgs
1i´(=Vgs
MAX)が最大定格V
(BR)gsに到達しなければよい。下式(9)より、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(10)を満足するように設定される。なお、「ΔR
P」は、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量(ΔR
P=R
AP−R
P)を表す。
式(10)を満足するゲート−ソース間電圧Vgs
typが存在するためには、磁気メモリ10は下式(11)を満足する必要がある。そのために、メモリセル列60は、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量ΔR
Pや選択トランジスタ4のON抵抗R
ON等に基づいて配列するメモリセル6の数Nが設計される。特に、選択トランジスタ4は、しきい値電圧Vthに対して最大定格(破壊電圧)V
(BR)gsが大きいことが好ましい。
さらに、各メモリセル6の選択トランジスタ4のゲート−ソース間電圧Vgsが最大定格V
(BR)gsに到達することのないように、パルス電源96の出力電圧Vg
Hは、常に下式(12)を満足する必要がある。そのため、ゲート電圧生成回路80は、ツェナーダイオード86により、パルス電源96と定電流源95の出力電圧の電位差(Vg
H−V
w)が下式(13)で表されるツェナー電圧Vzを超えたら、パルス電源96からメモリセル列60(ビット線BLP)へ電流を流して、電圧Vg
Hが常に下式(12)を満足するように構成される。このような構成により、メモリセル列60の各メモリセル6のデータにかかわらず、すべてのメモリセル6の入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44が破壊されることなく線形領域で動作する。なお、ツェナー電圧Vzに電流が流れてパルス電源96とビット線BLPが導通すると、メモリセル列60に供給される電流I
wが増大して定電流源95で設定した電流I
w0を超える(I
w>I
w0)ため、導通することのないことが好ましい。そのため、ツェナー電圧Vzはゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0以上に、さらにマージンを含んで設定されることが好ましい。
このように、ゲート電圧生成回路80は、式(4)、(5)、(7)、(10)に表されるように、メモリセル6の選択トランジスタ4のON抵抗RONおよび磁気抵抗効果素子1の抵抗値RP/APに対応して設計された抵抗値の分圧抵抗器81,82を交互に磁気メモリ10の行の数(N)と同数ずつ直列に接続してなる分圧器を内蔵し、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0を設定される。このようなゲート電圧生成回路80により、すべてのメモリセル6の入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44に適正なゲート電圧Vgが出力される。その結果、すべてのメモリセル6において、選択トランジスタ41,42,43,44をゲート破壊することなく低いON抵抗RONで動作させて負荷が抑えられる。また、パルス電源96の出力がツェナーダイオード86およびダイオード85を経由してメモリセル列60(ビット線BLP)に接続されているので、各メモリセル6の選択トランジスタ41,42,43,44がゲート破壊される虞がない。
すべてのメモリセル6の入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44において共通とするゲート−ソース間電圧Vgstypは、すべてのメモリセル6のデータが‘0’(磁気抵抗効果素子1の抵抗値RP)であると仮定して設定されてもよい。この場合は、少なくとも1つのメモリセル6のデータが‘1’のときに、選択トランジスタ4のソース電位Vsが上昇して、ゲート−ソース間電圧Vgsが減少してON抵抗RONが増大する。したがって、電位の上昇幅が最大になる、N個すべてのメモリセル6のデータが‘1’のときに、電位の最も高いメモリセル61の入力選択トランジスタ41,43において、ゲート−ソース間電圧Vgs1i´(=VgsMIN)が線形領域である(VgsMIN≧Vth+Iw×RON1i´)ように、ゲート−ソース間電圧Vgstypが設定される。また、すべてのメモリセル6の、さらにそれぞれの選択トランジスタ41,42,43,44において、ゲート−ソース間電圧Vgsが常に式(3)の範囲であれば、共通の値Vgstypでなくてもよい。
磁気メモリ10の書込みにおいては、メモリセル列60の1〜(N−1)個の任意のメモリセル6に書込みをすることもできる。後記の読出方法にて説明するように、例えばメモリセル6の4個の選択トランジスタ41,42,43,44のすべてを同時にON状態にすることにより、電流が、選択トランジスタ41,42および選択トランジスタ43,44に迂回してこのメモリセル6の磁気抵抗効果素子1には供給されない。ただし、この場合は、メモリセル列60における各メモリセル6の選択トランジスタ41,42,43,44の電位が変化するため、書込みをする行に対応してゲート電圧Vgki,Vgkoを設定する。磁気メモリ10において、このような行毎の設定は、読出方法にて説明するように、ゲート電圧生成回路80の抵抗切替回路84によってなされ、ただし、書込みをするメモリセル6の数に対応してパルス電源96の出力電圧VgHを設定する。
(磁気メモリの読出方法)
図5および図6に示すメモリセル列60のメモリセル61,62,63,64は、それぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’が記憶されているので、それぞれの磁気抵抗効果素子1の抵抗値は、RP,RAP,RAP,RPである。図5において、行デコーダ91が1行目を選択すると、この行においては書込みと同様に、ワード線選択トランジスタ71,74をON状態に、ワード線選択トランジスタ72,73をOFF状態にする。一方、他の2〜4行目においては、ワード線選択トランジスタ71,72,73,74のすべてをON状態にする。これにより、1行目のメモリセル61においては選択トランジスタ41,44がON状態、選択トランジスタ42,43がOFF状態になり、それ以外のメモリセル62,63,64は4個の選択トランジスタ41,42,43,44のすべてがON状態になる。この状態で、定電流源94からメモリセル列60に磁気抵抗効果素子1が磁化反転しない大きさの電流(定電流)Irを供給すると、メモリセル61においては、電流Irが第1入力選択トランジスタ41−磁気抵抗効果素子1−第2出力選択トランジスタ44の経路で流れる。一方、他のメモリセル62,63,64においては、選択トランジスタ41,42(第1回路)および選択トランジスタ43,44(第2回路)に流れる。ここで、入力選択トランジスタ41,43同士、出力選択トランジスタ42,44同士は、それぞれ同一の抵抗値(ON抵抗RONi,RONo)であるため、これらのメモリセル62,63,64において、電流が磁気抵抗効果素子1には流れず、第1回路と第2回路に二分されてIr/2ずつ流れる。
また、図6において、行デコーダ91が2行目を選択すると、左から2行目のメモリセル62の選択トランジスタ41,44がON状態、選択トランジスタ42,43がOFF状態になり、それ以外のメモリセル61,63,64の選択トランジスタ41,42,43,44がON状態になる。この状態でメモリセル列60に供給された電流Irは、左端のメモリセル61においては第1回路と第2回路に二分されて流れ、メモリセル62においては第1入力選択トランジスタ41−磁気抵抗効果素子1−第2出力選択トランジスタ44の経路で流れ、残りのメモリセル63,64においては、再び第1回路と第2回路に流れる。
このように、磁気メモリ10の読出しにおいては、選択したメモリセル6においては書込みと同じ経路で、非選択のメモリセル6においては第1回路と第2回路に二分されて、電流Irがメモリセル列60に流れる。なお、ここでは、選択したメモリセル6に、データ‘0’の書込みと同じ経路で電流Irを流しているが、磁気抵抗効果素子1に逆向きに電流Irを供給してもよく、この場合はデータ‘1’の書込みと同様に、行デコーダ91によりワード線選択トランジスタ73,72をON状態にする。
磁気メモリ10の読出しにおいて、定電流源94は、一定の電流I
rを供給するために、その出力電圧V
rが、書込みと同様に、下式(14)に表されるようにメモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkに依存する。前記した通り、読出しにおいて、非選択のメモリセル6は、選択トランジスタ41,42,43,44を2個ずつ直列に接続した第1回路と第2回路とに並列に電流が流れるので、抵抗値R
CELLnsが、選択トランジスタ4の1個分のON抵抗R
ONに相当する。ただし、後記するように、本実施形態に係る読出方法においては、非選択のメモリセル6
k(k≠j)において、入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とでON抵抗が異なる。したがって、それぞれのON抵抗を定数として、非選択のメモリセル6
kの入力選択トランジスタ41,43がR
ONi、出力選択トランジスタ42,44がR
Onoと表され、選択したメモリセル6
j(1≦j≦N)の選択トランジスタ41,44がR
ONji,R
ONjoと表されると、メモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkは下式(15)で表される。「R
P/AP」は、選択したメモリセル6
jに記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APのいずれかを指し、例えば、図5に示すようにメモリセル6
1を選択したときは抵抗値R
P、図6に示すようにメモリセル6
2を選択したときは抵抗値R
APである。
したがって、磁気メモリ10は、メモリセル列60において、各メモリセル6の選択トランジスタ41,42,43,44のON抵抗を制御して定電流Irを供給されることにより、書込みと共通の配線を用いて、選択した1つのメモリセル6に記憶されたデータの読出しをすることができる。詳しくは、メモリセル列60に連続電流で定電流Irを供給して、定電流源94の出力電圧Vrを、ビット線BLPに接続した電圧比較器93により参照電位(閾値)Vrefと比較して低いか高いかで、選択したメモリセル6の磁気抵抗効果素子1の抵抗値がRP,RAP、すなわちデータが‘0’、‘1’のいずれであるかが判定される。そして、メモリセル列60において選択するメモリセル6を1つずつ切り替えることにより、各メモリセル6に記憶されたデータを読出しすることができる。そのために、メモリセル列60におけるすべてのメモリセル6の選択トランジスタ41,42,43,44を設定したON抵抗RONi,RONo,RONji,RONjoで動作させるように、書込みと同様に、メモリセル6毎にゲート電圧Vgが設定されてゲート電圧生成回路80から出力される。なお、図5および図6に示すように、ゲート電圧生成回路80は、読出しにおいて、パルス電源96に代えて定電源97が電圧VgHを出力する。
ここで、非選択のメモリセル6kの抵抗値RCELLnsは、選択したメモリセル6jの抵抗値RCELLよりも低い。したがって、メモリセル列60における隣り合うメモリセル6,6間の選択トランジスタ4の電位の降下量は、図7(b)で「Vr(1)」から0Vまで段階的に降下する実線で表されるように、選択したメモリセル6j(62)において相対的に大きい。そのため、ゲート電圧生成回路80は、非選択の各行において、分圧抵抗器82に並列に接続した抵抗切替スイッチング素子83をON(閉)にして、分圧器の行あたりの抵抗値を分圧抵抗器81のみのRdiv1に低下させる。すなわち、ゲート電圧生成回路80の分圧器は、分圧抵抗器81,82および抵抗切替スイッチング素子83からなる可変抵抗器8を、直列にN個接続した構成といえる。このような構成により、また、式(5)に表される分圧抵抗器81,82の各抵抗値Rdiv1,Rdiv2の比から、分圧器の選択した行と非選択の行とにおける抵抗値の比が、選択、非選択のメモリセル6j,6kの抵抗値RCELL,RCELLnsの比に略一致する。さらに、抵抗切替スイッチング素子83をONにするために、抵抗切替回路84は、行デコーダ91からの、ワード線選択トランジスタ71,74およびワード線選択トランジスタ72,73のそれぞれと共通の信号を2本共入力されたときに、抵抗切替スイッチング素子83へ信号を出力する。このような構成により、非選択とした行で、連動して抵抗切替スイッチング素子83がONになって可変抵抗器8の抵抗値が低下する。図4〜6において、抵抗切替スイッチング素子83と抵抗切替回路84は、トランジスタ(MOSFET)と2AND論理回路で表されるが、例えば2個のトランジスタを直列に接続した構成に置き換えられてもよい。
ゲート電圧生成回路80のこのような構成により、非選択のメモリセル6kにおいては、入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44に共通のゲート電圧Vgkiが印加される。しかし、出力選択トランジスタ42,44は、入力選択トランジスタ41,43に直列に接続されているので、例えば図7(b)に示すように、非選択のメモリセル63において、ソース電位Vs3oが入力選択トランジスタ41,43のソース電位Vs3iよりも(Ir×RONo)低く、その分、ゲート−ソース間電圧Vgs3o(実線の両矢印で表される電位差)が大きく、それに伴い、ON抵抗RONoが低い(RONo<RONi)。そこで、本実施形態に係る磁気メモリ10の読出しにおけるゲート電圧Vgは、例えば以下のように設定される。
ここでは、非選択のメモリセル6
kにおいては、出力選択トランジスタ42,44の電位を基準に設定する。まず、すべての非選択のメモリセル6
kの出力選択トランジスタ42,44について、ゲート−ソース間電圧Vgs(適宜、Vgs
typと称する)を(Vth+Vds)よりも大きく(Vds=I
r/2×R
ON)、かつ最大定格V
(BR)gs未満の範囲に設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONo(適宜、R
ONtypと称する)を算出する。さらに、入力選択トランジスタ41,43について、ゲート−ソース間電圧(Vgs
typ−I
r/2×R
ONtyp)におけるON抵抗R
ONiを算出し、このゲート−ソース間電圧(Vgs
typ−I
r/2×R
ONtyp)が(Vth+Vds)以上であるようにVgs
typを設定する。すなわち下式(16)が成立するように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。また、書込みと同様、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(4)で表されるように設定される。
選択したメモリセル6
jのデータが‘1’であると仮定したとき、選択したメモリセル6
jの選択トランジスタ41,44は、j行目の分圧抵抗器81,82により、共にゲート−ソース間電圧がVgs
typであり、ON抵抗がR
ONtypになる(R
ONji=R
ONjo=R
ONtyp)。すなわち、定電流源94の出力電圧の最大値V
rMAXは、下式(17)で表される。したがって、定電源97の出力電圧Vg
Hを、下式(18)で表されるように設定することにより、設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typとなるゲート電圧Vg
ki,Vg
ji,Vg
joが出力される。なお、選択したメモリセル6
jの選択トランジスタ41,44は、Vds=I
r×R
ONtypであるが、I
r×R
ONtyp<0.5I
r×(R
ONtyp+R
ONi)であるから、式(16)を満足するゲート−ソース間電圧Vgs
typであれば、線形領域で動作する。
また、書込みと同様に、選択したメモリセル6
jのデータが‘1’と仮定して設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typは、それに基づいて出力されたゲート電圧Vg
kiが、データが‘0’であった場合に最大定格V
(BR)gsに到達しないように、定電流源94の出力電圧V
rの最小値V
rMINに基づいて設定される。読出しにおいては、例えば図7(b)に示すように、選択した1個のメモリセル6
2の磁気抵抗効果素子1に対して、電位の高い側に配列された選択トランジスタ4、すなわちメモリセル6
2の第1入力選択トランジスタおよびメモリセル6
1の選択トランジスタ41,42,43,44のソース電位Vs
2i,Vs
1i,Vs
1oが低下する。そして、これらの選択トランジスタ4において、ゲート−ソース間電圧Vgs
2i,Vgs
1i,Vgs
1oが、図7(b)に破線部を含めた両矢印で表されるようにVgs
typよりも大きくなる。したがって、定電流源94の最小出力電圧V
rMINは、メモリセル列60において電位の最も低い側のメモリセル6
Nを選択し、かつそのデータが‘0’であった場合の出力電圧であり、下式(19)で表される。このような場合を仮定して、メモリセル6
Nの第1入力選択トランジスタ41のゲート−ソース間電圧(Vgs
typ+I
r×(R
ONtyp+ΔR
P))におけるON抵抗R
ONNi´、ならびに非選択のメモリセル6
k(1≦k≦N−1)毎の入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44のゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´およびON抵抗R
ONki´,R
ONko´が、シミュレーションによって算出される。このときの、電位の最も高い側のメモリセル6
1の入力選択トランジスタ41,43のゲート−ソース間電圧Vgs
1i´(=Vgs
MAX)が最大定格V
(BR)gsに到達しないように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typは、下式(20)を満足するように設定される。
また、ツェナーダイオード86は、書込みと同様、ツェナー電圧Vzが式(13)を満足すればよいので、書込み時と同じツェナーダイオード86を適用することができる。読出しにおいては、定電源97の出力電圧VgHは、定電流源94の出力電圧Vrとの差がツェナーダイオード86のツェナー電圧Vzを超えると、メモリセル列60に供給される電流Irが増大して判定が困難になるので、特に最大定格V(BR)gsに対して十分なマージンを有して設定されることが好ましい。
磁気メモリ10の読出しにおいては、メモリセル列60に配列されたメモリセル6の数Nが多くなると、メモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkが増大するために、変化量(ΔRP)に対して、抵抗値ΣRCELLkの変化率(ΔRP/ΣRCELLk)が低下する。その結果、読出しの精度が低下し、あるいは読出しを可能にするために電流Irを大きくする必要が生じる。前記したように、磁気メモリ10においては、選択したメモリセル6のデータが‘0’の場合に、‘1’の場合と比較して、このメモリセル6の磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPだけでなく、一部のメモリセル6の選択トランジスタ4についてもON抵抗が低下する。そのため、選択したメモリセル6のデータによるメモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkの変化量は、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量ΔRPよりも大きい。ただし、ここではON抵抗RONで一定であると仮定して、以下の通り、メモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkの変化率について検証する。
例えば、CPP−GMR素子はMR比が高いもので数%程度であり、これを磁気抵抗効果素子1に適用した場合、メモリセル列60の抵抗変化率は次のように算出される。磁気抵抗効果素子1について、MR比5%(ΔRP/RP=0.05)と仮定し、さらに抵抗値RPが選択トランジスタ4のON抵抗RONの1/2(0.5RON=RP)であると仮定すると、メモリセル列60の抵抗変化率は、N=16で0.14%、N=32で0.075%になる。これに対して、選択トランジスタ4のON抵抗RONを半減させて、すなわち磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPと同値(RON=RP)にすると、メモリセル列60の抵抗変化率は、N=16で0.28%、N=32で0.15%、N=64で0.076%と、ほぼ2倍になる。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10において、読出し用の電流Irを大きくすることなく高精度に読出しをするためには、MR比の高い磁気抵抗効果素子1を適用したり、メモリセル列60に配列されるメモリセル6の数Nを低減すること以外に、選択トランジスタ41,42,43,44を、面積を大きく設計する等してON抵抗RONを低減すればよい。これらの設計は、書込みのための式(11)を満足する磁気メモリ10の設計と併せて行われる。
本実施形態に係る磁気メモリ10においては、MR比が高く、かつON抵抗RONの5倍程度またはそれよりも抵抗の高いTMR素子を磁気抵抗効果素子1に適用することによって、読出しの精度を高くすることもできる。一方で、TMR素子は抵抗値RP,RAPが高いので、反転電流の大きさにもよるが、磁気抵抗効果素子1に適用されると、書込みにおいて、メモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkが高くなって負荷が増大し(式(2)参照)、さらに抵抗値の変化量ΔRPが大きいので、式(11)を満足するために、メモリセル列60に配列するメモリセル6の数Nが抑制される場合がある。
記憶装置90では、磁気メモリ10の読出しにおいて、ゲート電圧生成回路80が、非選択のメモリセル6の入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とに共通のゲート電圧を出力したが、選択したメモリセル6と同様、電位差に対応した異なるゲート電圧を出力する構成としてもよい。そのためには、抵抗切替スイッチング素子83を設ける代わりに、分圧抵抗器81,82を、それぞれ抵抗切替回路84からの信号により、抵抗値が(Rdiv1/2)に低下する可変抵抗器とする。また、磁気メモリ10の読出しで、読出しの精度が許容範囲であれば、非選択のメモリセル6において、選択トランジスタ41,42(第1回路)のみ、または選択トランジスタ43,44(第2回路)のみをON状態にしてもよい。この場合には、非選択のメモリセル6の抵抗値RCELLnsが(RONi+RONo)になるので、ゲート電圧生成回路80の分圧抵抗器82を、抵抗切替回路84からの信号により分圧抵抗器81と同じ抵抗値Rdiv1に低下する可変抵抗器とする。
また、磁気メモリ10の書込みおよび読出しにおいて、メモリセル6kの出力選択トランジスタ42,44とその隣のメモリセル6k+1の入力選択トランジスタ41,43とに、同じゲート電圧Vgkを印加してもよい(Vgko=Vg(k+1)i=Vgk)。そのために、ゲート電圧生成回路80は、分圧抵抗器81を削除して、N個の分圧抵抗器82のみで分圧器を構成する。この場合、出力選択トランジスタ42,44のゲート−ソース間電圧Vgso(=Vgstyp)に対して、入力選択トランジスタ41,43のゲート−ソース間電圧Vgsiが(Vgstyp+Iw×RONi)に大きくなって(書込みの場合)ON抵抗が低減する(RONi<RONo)ので、それに対応してゲート−ソース間電圧Vgstypを設定する(後記第3実施形態参照)。あるいは、後記変形例に係る空間光変調器(図12参照)にて説明するように、磁気抵抗効果素子1が十分に低抵抗であれば、メモリセル6kの入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とに、同じゲート電圧Vgkを印加することができる(Vgki=Vgko=Vgk)。すなわち、ゲート電圧生成回路80は、分圧抵抗器82を削除して、N個の分圧抵抗器81のみで分圧器を構成する。このように、ゲート電圧生成回路80の分圧器が行毎に1個の分圧抵抗器81または分圧抵抗器82からなる場合、読出しのために、前記分圧抵抗器81,82を、抵抗切替回路84からの信号によりRCELL:RCELLns(=(RONi+RONo+RP/AP):0.5(RONi+RONo))の比で低抵抗に切り替えられる可変抵抗器とする。
図5および図6では、1つのメモリセル列60を示して、メモリセル6を1つずつ読出しする方法を説明したが、記憶装置90は、磁気メモリ10から選択した1行における2以上のメモリセル6を並行して読出しすることもできる。詳しくは、記憶装置90は、書込/読出電流回路9が2以上の定電流源94を内蔵し(図示せず)、列デコーダ92により磁気メモリ10の2以上の列を選択して、これらの列毎にビット線BLP,BLNを定電流源94に接続し、それぞれのメモリセル列60に電流Irを供給しながら、選択した1行の各メモリセル6を、各列のビット線BLPに接続した電圧比較器93(図1参照)により読出しすることができる。このとき、ゲート電圧生成回路80は、保護抵抗87を挟んだ定電源97の出力から分岐して、同時に選択したメモリセル列60のそれぞれのビット線BLP(定電流源94の正の出力)に接続するツェナーダイオード86およびダイオード85を備えることが好ましい。また、記憶装置90が、列方向に2以上の磁気メモリ10を搭載して書込/読出電流回路9に並列に接続している場合は、磁気メモリ10毎にゲート電圧生成回路80をさらに備えることにより、これら2以上の磁気メモリ10の、同じ行のメモリセル列60のそれぞれに電流を供給して、同時に書込みをすることができる。
磁気メモリ10の書込みおよび読出しにおいては、ゲート電圧生成回路80の分圧器によらずに、各行のゲート電圧Vgを個別にシミュレーションで算出して出力してもよい。具体的には、メモリセル6毎に、入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44の想定されるソース電位Vsの最小値およびドレイン電位Vdの最大値を、当該メモリセル6の行アドレス、およびメモリセル列60においてビット線BLNの側に配列されたメモリセル6の内の選択された数に基づいて算出し、最大定格V(BR)gsに到達せずに線形領域で動作させるゲート電圧Vgを設定する。
本発明の第1実施形態に係る不揮発性メモリは、不揮発性記憶素子として磁気抵抗効果素子を備えた磁気メモリ(MRAM)として説明したが、抵抗変化型メモリ(ReRAM)とすることもできる(図示せず)。
〔空間光変調器〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリは、磁気抵抗効果素子の磁化自由層に磁気光学材料を適用することにより、磁気抵抗効果素子を光変調素子とする反射型の空間光変調器に適用することができる(特許文献3,4参照)。空間光変調器とする磁気メモリ10は、図2において、磁気抵抗効果素子1の上面に接続する配線51の抵抗接続層51bをITO,IZO等の透明電極材料で形成する。そして、磁気抵抗効果素子1について、上側に磁化自由層3を配置し、平面視形状における一辺の長さを入射光の回折限界(波長の1/2程度)以上とする。ただし、スピン注入磁化反転素子である磁気抵抗効果素子1は、平面視サイズが大きくなると磁化反転し難くなるため、画素を大きくする場合には、2個以上が一対の配線51,52に並列に接続されて設けられてもよい(図示せず)。磁気メモリ10を空間光変調器として動作させる、すなわち所定の光変調素子の明暗(磁気抵抗効果素子の‘1’、‘0’)を設定するための構成は、図1に示す記憶装置90と同様である。ただし、読出しによる書込みエラーの検出をしないのであれば、電圧比較器93、、書込/読出電流回路9の定電流源94、ならびにゲート電圧生成回路80の定電源97、抵抗切替スイッチング素子83および抵抗切替回路84は不要である(図12参照)。また、読出しをしない場合には、磁気抵抗効果素子1に抵抗の低いCPP−GMR素子を適用して、メモリセル列60のメモリセル6の数を多くすることができる。さらにこの場合には、磁気抵抗効果素子1の中間層2に反射率の高いAgを適用することが好ましく、これにより光の取出し効率の高い空間光変調器が得られる。
(光変調素子の動作)
本実施形態に係る磁気メモリにおける磁気抵抗効果素子の、光変調素子としての動作を、図3(a)、(b)を参照して説明する。上方から配線51(抵抗接続層51b)を透過して磁気抵抗効果素子1に入射した光は、中間層2または配線52(抵抗接続層52a)により反射し、再び配線51を透過して上方へ出射する。その際、磁性体である磁化自由層3の磁気光学効果(カー効果)により、光はその偏光面が回転(旋光)して出射する。さらに、磁性体の磁化方向が180°異なると、当該磁性体の磁気光学効果による旋光の向きは反転する。したがって、図3(a)、(b)にそれぞれ示す、磁化自由層3の磁化方向が互いに180°異なる磁気抵抗効果素子1における旋光角は+θk,−θkで、互いに逆方向に偏光面が回転する。なお、旋光角+θk,−θkは、磁化自由層3での1回の反射による旋光(カー回転)に限られず、例えば磁気抵抗効果素子1における多重反射により累積された角度も含める。
さらに、光変調素子に、平面視形状を大きく形成することの容易な並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子を適用することもできる(特許文献5参照)。並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子からなる光変調素子1Aは、図8(a)、(b)に示すように、膜面方向に離間して並んだ2つの磁化固定層11,12を備え、その上に中間層21,22を挟んで1つの磁化自由層3を積層して備え、断面形状が上下反転した凹字型である。磁化固定層11,12は磁気抵抗効果素子1の磁化固定層11と、中間層21,22は磁気抵抗効果素子1の中間層2と、それぞれ同様の構造である。ただし、磁化固定層11と磁化固定層12は、互いに逆向きの磁化方向に固定されるために、保磁力が磁化自由層3の保磁力Hcfよりも十分に大きくかつ互いに異なるような材料で形成されている。また、光変調素子1Aは、2つのスピン注入磁化反転素子が、厚さ数十nm以下の磁化自由層3のみで直列に接続された構成であるので、全体の抵抗値が磁気抵抗効果素子1の2倍以上になる。したがって、空間光変調器とする磁気メモリ(以下、空間光変調器10´)において書込みエラーの検出をしない場合は特に、光変調素子1Aは、中間層21,22が共に非磁性金属で形成されることが好ましい。
光変調素子1Aは、磁化固定層11/中間層21/磁化自由層3、磁化固定層12/中間層22/磁化自由層3の各3層からなる2つのスピン注入磁化反転素子を磁化自由層3で接続した構成である。すなわち、光変調素子1Aは、これら3層が積層された各領域がスピン注入磁化反転素子として機能するので、これらの平面視形状がスピン注入磁化反転素子として好適なものであればよい。一方、光変調素子1Aは、磁化固定層11/中間層21/磁化自由層3、磁化固定層12/中間層22/磁化自由層3の2つのスピン注入磁化反転素子同士の間隔、すなわち磁化自由層3単層のみで構成される領域の長さ(図8における横方向長)は特に規定されない。したがって、光変調素子1Aは、この間隔を長く形成して、図8における横方向に大きくすることができる。例えば、光変調素子1Aは、磁化固定層11/中間層21、磁化固定層12/中間層22を磁化反転に好適なサイズの各100nm×400nmに形成し、全体すなわち磁化自由層3の平面視サイズを400nm×400nmに形成して、光変調素子に好適なサイズにすることができる。
図8(c)、(d)に示すように、光変調素子1Aは、磁化固定層11,12に接続した配線51,52(一対の端子p1,p2)を介して、定電流源95から向きを変えて電流Iwを供給されることにより、磁化自由層3の磁化方向が反転する。したがって、光変調素子1Aは、図3に示す磁気抵抗効果素子1と同じく、一対の端子を介して電流を供給される不揮発性記憶素子であるといえる。さらに、光変調素子1Aは、電流経路上における磁化自由層3の両側に、磁化方向が異なる2つの磁化固定層11,12を備えることにより、磁化自由層3に、一方の磁化固定層から注入されるスピンの偏った電子が他方の磁化固定層に弁別されて留まり、安定した磁化反転動作をする。また、光変調素子1Aは、磁化固定層11,12が積層された領域同士の間を含めた磁化自由層3の全体が磁化反転するため、前記した通り、磁化固定層11,12等をスピン注入磁化反転に好適な平面視サイズに抑えつつ、磁化自由層3を大きく形成して、画素の開口率の高い空間光変調器を得ることができる。さらにメモリセル6をいっそう大きな画素にするために、2個以上の光変調素子1Aを、一対の配線51,52に並列に接続して設けてもよい(図示せず)。
光変調素子1Aは、磁化固定層11,12の設けられた下側に一対の端子p1,p2の両方を有するので、これを備える空間光変調器10´は、図13に示す後記変形例に係る空間光変調器10Bのように、配線51,52が、同じ高さに設けられた抵抗接続層51a,52aで光変調素子1Aの下面(磁化固定層11,12)に接続することができる。例えば磁気メモリ10と同様に、端子p1(磁化固定層11の側)を第1回路(選択トランジスタ41−42間)に、端子p2(磁化固定層12の側)を第2回路(選択トランジスタ43−44間)に、それぞれ接続する。また、光変調素子1Aの上面すなわち磁化自由層3の上に配線を接続する必要がなく、透明電極材料が不要である。
空間光変調器10´は、磁気メモリ10と同様に、選択トランジスタ41,42,43,44を表層に形成した基板40上に、ワード線WL0i,WL0o,WL1i,WL1o、および配線51,52,54、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成した後に、例えば、特許文献5、特開2013−257437号公報、特開2015−55798号公報に記載されている光変調素子の製造方法により、光変調素子1Aを形成することにより製造することができる。これらの製造方法により、光変調素子1Aが、磁化自由層3の下面全体に微小な段差や面荒れのないように形成されることが、好適な磁化反転動作のために好ましい。あるいは、透明基板(図示せず)上に磁化自由層3を下にして光変調素子1Aを形成して、選択トランジスタ4や配線を形成した基板40に、電気的に接続されるように貼り合わせてもよい。
空間光変調器10´は、初期設定により、外部磁界を印加して、すべての光変調素子1Aの磁化固定層11,12の磁化方向をそれぞれ所定の向きに揃える。前記した通り、磁化固定層11と磁化固定層12は互いに異なる磁化方向に固定されるために、次の手順で初期設定を行う。まず、磁化固定層11,12の保磁力の大きい方(磁化固定層11とする)よりもさらに大きな磁界を印加して、磁化固定層11,12を共に同じ磁化方向に揃える。次に、磁化固定層11の保磁力よりも小さくかつ磁化固定層12の保磁力よりも大きな磁界を逆向きに印加して、磁化固定層12のみの磁化方向を磁化固定層11と逆向きに揃える。
光変調素子1Aは、2つのスピン注入磁化反転素子が磁化自由層3で接続して共有する構成であるため、図8(a)、(b)に示すように、常に、前記2つのスピン注入磁化反転素子の一方の磁化方向が平行で他方が反平行であるので、これらの和である一対の端子p1,p2(配線51,52)間の抵抗値は磁化自由層3の磁化反転では実質的に変化しないことになる。したがって、正確には、光変調素子1Aは、図1の等価回路図に示す磁気抵抗効果素子1のような可変抵抗器にはならない。そのため、空間光変調器10´の書込みで、選択トランジスタ4に印加するゲート電圧Vgを、光変調素子1Aの抵抗値の変化に伴うゲート−ソース間電圧Vgsの変化の幅に対応して設定しなくてよい(後記変形例参照)。一方で、このような抵抗値の変化しない光変調素子1Aを搭載した空間光変調器10´は、書込みエラーの検出をすることができない。書込みエラーの検出をするためには、光変調素子1Aの2つのスピン注入磁化反転素子の抵抗値が互いに大きく異なるように、一方をCPP−GMR素子に、他方をTMR素子にする、すなわち、例えば中間層21を非磁性金属膜で、中間層22を絶縁膜で形成すればよい(特許文献5参照)。また、書込みエラーの検出をしない場合には、光変調素子に、後記変形例の磁壁移動素子を適用することができる。
〔第1実施形態の変形例〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリは、書込みと共通の配線を用いて読出しをすることができるが、読出し用の配線を設けてもよい。以下、本発明の第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)について、図9、図10、および図11を参照して説明する。第1実施形態(図1〜8参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)10Aは、図9に示すように、記憶装置90Aに搭載され、メモリセル6Aを2次元配列して備える。磁気メモリ10Aは、第1実施形態に係る磁気メモリ10(図1参照)に、行毎の読出ビット線RBLを追加し、さらに各行において、行方向に配列する各メモリセル6に、磁気抵抗効果素子(不揮発性記憶素子)1と読出ビット線RBLとの間に接続するダイオード49を追加した構成である。すなわちメモリセル6Aは、第1実施形態に係る磁気メモリ10のメモリセル6にダイオード49を追加した構成であり、磁気抵抗効果素子1および選択トランジスタ41,42,43,44の各構成は第1実施形態にて説明した通りである。詳しくは、ダイオード49のカソードが磁気抵抗効果素子1の端子p1(磁化自由層3)に、アノードが読出ビット線RBLに接続されている。以下、本変形例に係る磁気メモリの各要素について、特に第1実施形態と異なるものを詳細に説明する。
ダイオード49は、書込み時および読出し時に、磁気抵抗効果素子1や選択トランジスタ41,42に流れる電流が、読出ビット線RBLを経由して他のメモリセル列60A、すなわち非選択のメモリセル列60Aのメモリセル6Aの磁気抵抗効果素子1に回り込まないようにするために設けられる。ダイオード49は、例えばシリコン(Si)ダイオード等の一般的なものが適用され、基板40(図2参照)の表層に選択トランジスタ4と共に、または選択トランジスタ4の上に絶縁層を挟んでSi膜を成膜して形成される(図示省略)。あるいはダイオード49は、磁気抵抗効果素子1の上面に接続された配線51の抵抗接続層51b(図2参照)の上にSi膜を成膜して形成されてもよく、この場合は、先に形成された磁気抵抗効果素子1の各層の材料にもよるが、150℃程度の低温で成膜可能な多結晶シリコン(poly−Si)で形成される。
読出ビット線RBLは、配線51,52,54およびワード線WLと同様に金属電極材料で形成され、読出し用の電流Irに対応した配線とする。読出ビット線RBLは、磁気メモリ10Aにおける配置(高さ位置)が特に規定されず、例えばダイオード49が磁気抵抗効果素子1の上の配線51の抵抗接続層51b上に形成される場合は、さらにその上、すなわち最上層に形成される。また、配線51が、磁気抵抗効果素子1と第1回路(選択トランジスタ41−42間)を接続すると共に、ダイオード49のカソードにも接続されるように構成される(図示省略)。
磁気メモリ10Aは、磁気メモリ10と同様の製造方法で製造することができ、ダイオード49を選択トランジスタ41,42,43,44と共に基板40の表層に形成し、読出ビット線RBLをワード線WL等と共に形成する。あるいは、磁気メモリ10Aは、磁気メモリ10を製造した後に、配線51の抵抗接続層51b上にダイオード49を形成し、さらにその上に読出ビット線RBLを形成して製造することもできる。
(記憶装置)
磁気メモリ10Aを搭載する記憶装置90Aは、さらに磁気メモリ10Aの駆動回路として、図9に示すように、磁気メモリ10Aの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72,73,74、読出ビット線選択トランジスタ79、および電圧比較器93と、磁気メモリ10Aの列毎に設けられたビット線選択トランジスタ77,78と、定電流源94,95を内蔵した書込/読出電流回路9Aと、行デコーダ91Aと、列デコーダ92Aと、ゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80Aと、を備える。このように、記憶装置90Aは、磁気メモリ10Aの行毎に設けられた読出ビット線RBLを選択的に定電流源94に接続する読出ビット線選択トランジスタ79を備え、さらに、電圧比較器93をビット線BLPに代えて読出ビット線RBLに接続して行毎に備える。また、ビット線BLPには、書込/読出電流回路9Aの定電流源95のみが選択的に接続する。ゲート電圧生成回路80Aは、ゲート電圧生成回路80から抵抗切替スイッチング素子83および抵抗切替回路84を除いた構成である(図10、図11参照)。
(磁気メモリの書込方法)
本変形例に係る磁気メモリ10Aは、第1実施形態に係る書込方法(図4参照)により書込みをすることができる。すなわち、列デコーダ92Aが、選択したメモリセル列60Aのビット線BLP,BLNをビット線選択トランジスタ77,78で、書込/読出電流回路9Aに内蔵された定電流源95の正と負(GND)の出力に接続する。また、書込みにおいては、行デコーダ91Aが、すべての読出ビット線選択トランジスタ79をOFF状態にして、読出ビット線RBLをopen(開放)状態にすることにより、メモリセル6Aの磁気抵抗効果素子1から読出ビット線RBLへ電流が流れないようにする。あるいは、読出ビット線RBLをGND(定電流源95の負の電位)等の電位の低い側に接地して、すべてのメモリセル6Aのダイオード49に電流が流れないようにしてもよい。この場合は、特にメモリセル列60Aにおいて電位の高いメモリセル6A1で、ダイオード49のカソード電位が降伏電圧に到達することのないようにする。
(磁気メモリの読出方法)
本発明の第1実施形態の変形例に係る磁気メモリの読出方法を、図10および図11を参照して説明する。図10および図11では、簡潔に説明するために、磁気メモリ10Aにおける1列のメモリセル6A(1つのメモリセル列60A)を示し、さらにこのメモリセル列60Aに4つのメモリセル6Aが配列されているとし、適宜、図中左からメモリセル6A1,6A2,6A3,6A4と称する。本変形例に係る磁気メモリ10Aは、メモリセル列60Aにおいてメモリセル6A毎(行毎)に、読出ビット線RBLが磁気抵抗効果素子1にダイオード49を経由して接続されている。したがって、本変形例に係る磁気メモリの読出方法は、選択したメモリセル6Aに限定してその磁気抵抗効果素子1に電流が流れるように、読出ビット線RBLを選択した行毎に切り替えて定電流源94の正の出力に接続し、負の出力はビット線BLNに接続して行う。一方、ビット線BLPはopen(開放)状態(メモリセル列選択トランジスタ77:OFF)であり、そのため、列デコーダ92Aが、選択した列のメモリセル列選択トランジスタ78のみをON状態にする。このメモリセル列60Aのメモリセル6A1,6A2,6A3,6A4は、第1実施形態と同様、それぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’が記憶されているものとし、したがって、それぞれの磁気抵抗効果素子1の抵抗値は、RP,RAP,RAP,RPである。
図10において、行デコーダ91Aが1行目を選択すると、この選択された行においては読出ビット線選択トランジスタ79をON状態にし、さらに第1実施形態と同様に、ワード線選択トランジスタ71,74をON状態に、ワード線選択トランジスタ72,73をOFF状態にする。一方、非選択の2〜4行目においては、ワード線選択トランジスタ71,72,73,74のすべてをON状態にする。この状態で、定電流源94から定電流Irを供給すると、定電流源94に接続した1行目の読出ビット線RBLから、電流Irが、メモリセル6A1の磁気抵抗効果素子1にダイオード49を経由して流れ、さらに定電流源94の負の側へ、すなわち右隣のメモリセル6A2へ流れるために、第2出力選択トランジスタ44に流れる。そして、メモリセル6A2、さらにメモリセル6A3,6A4においては、第1実施形態と同様に、第1回路(選択トランジスタ41,42)と第2回路(選択トランジスタ43,44)に二分されてIr/2ずつ流れる。
また、図11において、行デコーダ91Aが2行目が選択すると、選択された行においては、1行目を選択したとき(図10参照)と同様に、読出ビット線選択トランジスタ79およびワード線選択トランジスタ71,74をON状態にする。一方、非選択の行のうち、選択された2行目よりも定電流源94の負の側に接続された3,4行目においては、ワード線選択トランジスタ71,72,73,74をON状態にするが、反対側の1行目においては、ワード線選択トランジスタ71,72,73,74のすべてをOFF状態にする。この状態で、定電流源94から電流Irを供給すると、定電流源94に接続した2行目の読出ビット線RBLから、電流Irが、メモリセル6A2の磁気抵抗効果素子1にダイオード49を経由して流れ、さらに右隣のメモリセル6A3へ流れるために、第2出力選択トランジスタ44に流れる。そして、メモリセル6A3、さらにメモリセル6A4においては、前記と同様に、電流Irが第1回路と第2回路に二分されて流れる。
このように、本変形例に係る磁気メモリ10Aの読出しにおいて、行デコーダ91Aは、選択された行の読出ビット線選択トランジスタ79およびワード線選択トランジスタ71,74をON状態にし、選択された行に対して定電流源94の負の側に接続された非選択の行のワード線選択トランジスタ71,72,73,74をON状態にし、それ以外の非選択の行のワード線選択トランジスタ71,72,73,74のすべてをOFF状態にする。そして、電流I
rは、メモリセル列60Aにおいて、選択したメモリセル6Aから、その定電流源94の負の出力を接続される側に配列された非選択のメモリセル6Aに流れ、定電流源94を接続されていない側(open状態にした側)に配列された非選択のメモリセル6Aには流れない。したがって、定電流源94の正負の出力間、すなわちビット線BLNと選択したj行目(1≦j≦N)の読出ビット線RBLとの間(RBL−BLN間)の抵抗値R
readjは、下式(21)で表される。なお、ダイオード49の抵抗値を「R
DI」と表す。下式(21)に表されるように、RBL−BLN間の抵抗値R
readjは、選択したj行目のメモリセル6A
jの抵抗値R
CELLrslに(N−j)個の非選択のメモリセル6A
k(j+1≦k≦N)の抵抗値R
CELLnsが加算されるので、選択したメモリセル6A
jに記憶されたデータだけでなく、その行アドレス(j)によっても変化する。
したがって、記憶装置90Aは、磁気メモリ10Aの読出しにおいては、精度を高くするために、選択した行アドレスによるRBL−BLN間の抵抗値R
readjの差を加味して判定することが好ましい。具体的には、記憶装置90Aは、k行目の読出ビット線RBLに接続された電圧比較器93の参照電位Vref
kを、下式(22)に表されるように左から1行毎に(I
r×R
CELLns)降下させた値に設定する。すなわち、定電流源94の負(GND)に接続された側から1行目となる左からN行目の参照電位Vref
Nが、最も低い電位である。なお、Vref
0は、メモリセル6Aの磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量ΔR
P(=R
AP−R
P)における参照電位を含む定数である。あるいは、記憶装置90Aは、1つの電圧比較器93を定電流源94の正の出力に接続して備え、定電流源94と共に選択した行の読出ビット線RBLとの接続に切り替えながら、選択した行(j)に対応した参照電位Vref
jに変位させてもよい。
また、本変形例に係る磁気メモリ10Aの読出しにおいても、メモリセル列60Aにおいて電流Irの流れるメモリセル6Aの選択トランジスタ41,42,43,44を設定したON抵抗RONi,RONoで動作させるために、第1実施形態と同様に、これらのメモリセル6A毎にゲート電圧Vgが設定されてゲート電圧生成回路80Aから出力される。本変形例においては、書込み時と同様に、ゲート電圧生成回路80Aが、分圧器の分圧抵抗器82,81により、行毎にそれぞれの抵抗値Rdiv2,Rdiv1の比( (RON+RP/AP):RON)で2段階に交互に降下したゲート電圧Vg1o,Vg2i,Vg2o,・・・,VgNoを出力する。一方、電流の流れる非選択のメモリセル6Aのそれぞれにおいては、入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とで電位がRONi:RONoの比で降下する。そのため、第1実施形態とは反対に、入力選択トランジスタ41,43の方が出力選択トランジスタ42,44よりもON抵抗RONoが低い(RONi<RONo)。そこで、本変形例に係る磁気メモリ10Aの読出しにおけるゲート電圧Vgは、例えば以下のように設定される。
第1実施形態と同様、メモリセル6A
kの出力選択トランジスタ42,44の電位を基準に設定する。まず、ドレイン−ソース間電圧Vdsの大きい、選択したメモリセル6A
jの出力選択トランジスタ44を基準に、下式(23)で表される範囲になるように、ゲート−ソース間電圧Vgs(適宜、Vgs
typと称する)を設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONo(適宜、R
ONtypと称する)を算出する。一方、非選択のメモリセル6A
kにおいて、入力選択トランジスタ41,43は、ソース電位が出力選択トランジスタ42,44よりも(I
r×0.5R
ONo)高い。そして、ゲート電圧Vg
ki,Vg
koは、非選択のメモリセル6Aの1行あたりで(I
r/2×(R
Oni+R
ONo))降下するように設定されるが、分圧抵抗器82,81の抵抗値R
div2,R
div1の比により、同じ行において互いの差が下式(24)で表される。したがって、入力選択トランジスタ41,43のゲート−ソース間電圧Vgs
iは、下式(25)で表され、このゲート−ソース間電圧Vgs
iにおけるON抵抗R
ONiを算出する。さらに、このゲート−ソース間電圧Vgs
iが最大定格V
(BR)gsに到達しないようにゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。なお、選択したメモリセル6A
jの第1入力選択トランジスタ41については、電流が流れないのでゲート電圧Vg
jiを印加しなくてもよいが、ゲート電圧Vg
jiがソース電位(I
r×(R
readj−R
DI))に対して最大定格V
(BR)gsに到達しないので、ここでは第1実施形態と同様に、第2出力選択トランジスタ44と共にON状態にする。
第1実施形態と同様、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(4)で表されるように設定される。また、前記したように、ゲート電圧生成回路80Aの分圧器が1行あたり(I
r/2×(R
Oni+R
ONo))降下したゲート電圧Vg
ki,Vg
koを出力するので、定電源97の出力電圧Vg
Hを、下式(26)で表されるように設定する。本変形例に係る磁気メモリ10Aの読出しにおいては、メモリセル列60Aに、選択したメモリセル6A
jの磁気抵抗効果素子に対して電位の高い選択トランジスタ4が存在しないので、選択トランジスタ4のゲート−ソース間電圧Vgsのデータによる変動がない。
磁気メモリ10Aの読出しは、例えば1〜N/2行目の読出しにおいては、ビット線BLNをopenにしてビット線BLPをGND(0V)に接続し、(N/2)+1〜N行目の読出しにおいては、ビット線BLNをGNDに接続するように切り替えてもよい。このような方法によれば、RBL−BLP間、RBL−BLN間の各抵抗値Rreadjにおける非選択のメモリセル6Aの抵抗値の合計の最大値が半減するので、読出しの精度が向上する。この場合、1〜N/2行目の読出しにおいては、連続したMOSFETに正負逆向きに電流が流れる。そのため、磁気メモリ10Aは、各メモリセル列60Aのビット線BLNとp−wellとの電気的接続を解除可能に構成する。また、ゲート電圧生成回路80Aは、定電源97とゲート基電圧電源98の接続を入替え可能に構成する。
本変形例に係る磁気メモリ10Aは、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に、空間光変調器とすることもできる。この場合は、ダイオード49および読出ビット線RBLを磁気抵抗効果素子1の下方に設ける。また、本変形例に係る磁気メモリ10Aは、メモリセル6Aがダイオード49に代えてトランジスタ(読出選択トランジスタ)を備えてもよく、この場合は、読出ビット線RBLは行方向、列方向のどちらでもよい(図示せず)。ただし、この読出選択トランジスタには、選択トランジスタ4と同様に、行毎に(Ir/2×(ROni+RONo))ずつ降下させ、かつデータによる電位差(Ir×ΔRP)を考慮して設定したゲート電圧を印加する。
〔第1実施形態の変形例:空間光変調器〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリは、行あたり4本のワード線を備え、書込みおよび読出しにおいて、常に同じ2本ずつの組み合わせで、ゲート電圧を出力させる。このような組み合わせの2本のワード線は、同じメモリセルで電位の異なる入力選択トランジスタと出力選択トランジスタに、それぞれの電位に合わせて異なるゲート電圧を印加するためのものである。しかし、例えば磁気抵抗効果素子が低抵抗で、入力選択トランジスタと出力選択トランジスタとの電位差が小さい等により、同じゲート電圧による異なるゲート−ソース間電圧が共に許容範囲(式(3)参照)に設定されるのであれば、このゲート電圧を印加するワード線を共有することができる。以下、空間光変調器に適用される、本発明の第1実施形態の別の変形例に係る不揮発性メモリ(空間光変調器)について、図12、図13、および図14を参照して説明する。第1実施形態(図1〜8参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第1実施形態の変形例に係る空間光変調器(不揮発性メモリ)10Bは、図12に示すように、記憶装置90Bに搭載され、画素(メモリセル)6Bを2次元配列して備える。画素6Bは、第1実施形態に係る磁気メモリ10のメモリセル6の、磁気抵抗効果素子1に代えて光変調素子(不揮発性記憶素子)1Bを備えた構成であり、さらに、空間光変調器10Bにおいて、第1入力選択トランジスタ41と第2出力選択トランジスタ44の各ゲートが共にワード線WL0に、第2入力選択トランジスタ43と第1出力選択トランジスタ42の各ゲートが共にワード線WL1に、それぞれ接続する。すなわち、画素6B自体は、光変調素子1Bを除いて、第1実施形態に係る磁気メモリ10のメモリセル6と同じ回路構成である。そして、空間光変調器10Bは、2本のワード線WL0i,WL0oをワード線WL0に、ワード線WL1i,WL1oをワード線WL1に、それぞれ集約して、行あたり2本のワード線WL0,WL1を備える以外は、磁気メモリ10と同じ回路構成である。以下、本変形例に係る空間光変調器の各要素について、特に第1実施形態と異なるものを詳細に説明する。
(光変調素子)
光変調素子1Bは磁壁移動素子であり、図13および図14(a)、(b)に示すように、細線状の磁性細線3Aが、細線方向に離間した2つの磁化固定層11,12上に積層されてなる。光変調素子1Bにおいては、後記するように、磁性細線3Aを細線方向に区切る磁壁が細線方向に移動することにより、磁性細線3Aが、下側に磁化固定層11,12が設けられていない細線方向中央部(磁化反転領域3SW)に限定して磁化反転する。磁性細線3Aは、磁気光学材料からなり、第1実施形態の磁気抵抗効果素子1の磁化自由層3と同様、保磁力の比較的小さな材料を適用することができる。また、磁性細線3Aは、細線方向にのみ磁区が分割され易いように、厚さ70nm以下、幅(細線幅、図14における紙面垂直方向長)300nm以下であることが好ましく、厚さおよび幅に対して十分に長い細線状に形成され、特に、磁化反転する磁化反転領域3SWの細線方向長が長く、入射光の回折限界以上であることが好ましい。また、磁性細線3Aは、幅が入射光の回折限界以上であることが好ましく、また、厚い程カー回転角が大きく、コントラストのよい空間光変調器10Bを構成することができ、さらに光変調素子1Bが低抵抗になる。一方で、磁性細線3Aの厚さと幅の積に比例して書込みに必要な電流Iwが大きくなる。また、前記よりも厚さや幅の大きい磁性細線では、幅方向等にも磁区が分割され易くなるが、外部磁界を印加することで、細線方向にのみ磁区が分割された状態にすることができる。
光変調素子1Bにおいて、磁化固定層11,12は、磁性細線3Aの両端近傍の領域における磁化方向を固定するために下面に接続される。そのために、磁化固定層11,12は第1実施形態における磁気抵抗効果素子1の磁化固定層11と同様の磁性材料を適用される。ただし、磁化固定層11と磁化固定層12は、互いに逆向きの磁化方向に固定されるために、保磁力が磁性細線3Aの保磁力Hcfよりも十分に大きくかつ互いに異なるような材料で形成されている。そして、磁化固定層11,12は、それぞれ磁化方向が保持される形状(平面視サイズおよび厚さ)、かつその直上の領域において、磁性細線3Aを当該磁化固定層11,12と一体に同じ磁化方向に固定する厚さに形成される。さらに、光変調素子1Bは、磁化固定層11,12上の磁性細線3Aとの間に、磁化固定層11,12とその直上の領域の磁性細線3Aとを磁気的に結合させるRu,Ta等の非磁性金属膜を備えていてもよい。
光変調素子1Bの磁化反転動作を、図14を参照して説明する。磁壁移動素子である光変調素子1Bは、磁性細線3Aに一定以上の電流密度(細線方向に垂直な断面における電流密度)の電流Iwを細線方向に供給されることで、磁性細線3A中を磁壁が電流Iwと逆向きに移動して、磁性細線3Aの磁壁が移動した領域における磁化方向が反転する。ただし、磁性細線3Aにおいて、磁化固定層11,12の直上の領域は、それぞれ磁化固定層11,12と磁気的に結合しているために、磁化固定層11,12と同じ磁化方向に固定される。図14に示すように、光変調素子1Bにおいて、磁化固定層11,12が互いに逆向きの磁化方向に固定されているので、磁性細線3Aは、磁化固定層11,12の直上の2つの領域における磁化方向が互いに逆向きになる。したがって、磁性細線3Aは、前記2つの領域に挟まれた磁化反転領域3SWに、常に磁壁を有する。
図14(a)に示す、磁性細線3Aが、磁化反転領域3SWにおいて磁化方向が上向きで、磁化固定層11の直上の領域との境界に磁壁が生成している状態で、図14(c)に示すように、定電流源95の「−」を電極51に、「+」を電極52に接続して、磁化固定層12側から電流Iwを供給する。すると、磁性細線3Aにおいて、磁化固定層11側から磁化固定層12側へ(図14(c)において右向きに)流れる電子dDにより、磁壁が細線方向に沿って右へ移動して、それに伴い磁壁の左側の下向きの磁化方向の磁区が右へ伸長し、すなわち磁化反転領域3SWにおいて左側から、磁化方向が下向きに磁化反転する。ただし、磁化固定層12の直上の領域においては、磁化固定層12により磁化方向が上向きに固定されているために磁化反転せず、電流Iwの供給中であっても磁化反転領域3SWの右端で磁化反転が終了し、磁化固定層12の直上の領域との境界で磁壁が静止する(図14(b)参照)。反対に、図14(b)に示す、磁性細線3Aが磁化反転領域3SWにおいて磁化方向が下向きの状態で、図14(d)に示すように、定電流源95の「+」を電極51に、電極52に「−」を接続して、磁化固定層11側から電流Iwを供給する。すると、磁性細線3A中を、左向きに流れる電子dUにより、磁壁が、磁化反転領域3SWの右端(磁化固定層12の直上の領域との境界)から左端まで移動して、磁化反転領域3SWにおける磁化方向が上向きに磁化反転する(図14(a)参照)。
このように、光変調素子1Bは、磁性細線3Aの両端近傍が磁化固定層11,12により磁化方向を固定されているために、電流Iwの電流密度や供給時間にかかわらず、磁壁が端まで到達して消失することがなく、安定して磁化反転領域3SWにおける磁化方向を反転させることができる。したがって、光変調素子1Bは、磁気抵抗効果素子1と同様に、磁気光学材料を磁性細線3Aに適用して、空間光変調器の光変調素子とすることができる。なお、電流Iwは、スピン注入磁化反転素子である磁気抵抗効果素子1や光変調素子1Aと同様に、直流パルス電流として供給することが好ましく、磁壁の移動距離すなわち磁化反転領域3SWの細線方向長さに応じて、供給時間(パルス電流のピーク期間およびパルス数)を設定すればよい。
(選択トランジスタ)
選択トランジスタ41,42,43,44(適宜まとめて、選択トランジスタ4と称する)の構成は第1実施形態にて説明した通りである。ただし、本変形例においては、選択トランジスタ4は、空間光変調器10Bの書込みにおいて光変調素子1Bの抵抗値が変化しないので、電位が変動せず、したがって、しきい値電圧Vthに対して最大定格(破壊電圧)V(BR)gsをそれほど大きく設計されなくてよい。
本変形例に係る空間光変調器10Bの構造の一例について、図13を参照して説明する。図13では、右から順に、ビット線BLNから1、2行目の直列に接続された画素6B,6Bを、簡略化した外観図で示し、また、選択トランジスタ41,44,43,42のゲート4g1,4g4,4g3,4g2に接続するワード線WL0,WL1を省略する。空間光変調器10Bは、図2に示す第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に、選択トランジスタ41,42、選択トランジスタ43,44がそれぞれ交互に直列に接続したX方向に連続した2列のMOSFETで基板40Aの表層に形成されている。ただし、図13においては、共通のワード線WL1に接続する画素6Bの第1入力選択トランジスタ41と第2出力選択トランジスタ44のゲート4g1,4g4がY方向に連続して形成されるように(図中、符号4g1,4を付す)、前記連続した2列のMOSFETがX方向にずらして形成されている。そのため、入力選択トランジスタ41,43のドレイン4d1,4d3(出力選択トランジスタ42,44のソース4s2,4s4)間を接続する配線54の中継層54aが、平面視L字型に形成されている。
また、光変調素子1A(図8参照)と同様に、光変調素子1Bが磁化固定層11,12の設けられた下側に一対の端子p1,p2の両方を有するので、配線51,52が、同じ高さに設けられた抵抗接続層51a,52aで光変調素子1B(磁化固定層11,12)の下面に接続する。なお、図13において、光変調素子1Bは、磁化固定層11を奥側に、磁化固定層12を手前側にして配置されている。図13において、空間光変調器10Bは、配線51,52,54の形状を単純化して表し、抵抗接続層51a,52aと中継層54aを同じ高さ位置に示す。ただし、例えば配線54の中継層54aを下方に設ける等により、光変調素子1B(磁性細線3Aの磁化反転領域3SW)の平面視サイズを拡張して、画素6Bの開口率を高くすることが好ましい。また、空間光変調器10Bは、画素6Bの開口率をさらに高くするために、1つの画素6Bに2個以上の光変調素子1Bを設けてもよく、これら2個以上の光変調素子1Bは、例えば磁性細線3Aの細線幅方向に並べられて、並列にまたは直列に一対の配線51,52に接続される(図示せず)。
(空間光変調器の製造方法および初期設定)
本変形例に係る空間光変調器10Bは、前記の並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子からなる光変調素子1A(図8参照)を搭載した空間光変調器10´と同様の方法で製造することができる。ただし、光変調素子1Bは、磁壁移動におけるトラップのないように、磁性細線3Aが、磁化反転領域3SWにおいて段差等がなく平滑に形成されればよい。また、空間光変調器10Bは、初期設定にて、空間光変調器10´と同様、2段階の磁界印加により、すべての画素6Bの光変調素子1Bの磁化固定層11,12の磁化方向をそれぞれ所定の向きに揃える。
(記憶装置)
空間光変調器10Bを搭載する記憶装置90Bは、図示しない光源やスクリーン等の画像表示手段と組み合わせて、表示装置やホログラフィック装置に適用される光メモリ装置である。記憶装置90Bは、さらに空間光変調器10Bの駆動回路として、図12に示すように、空間光変調器10Bの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72と、定電流源95と、行デコーダ91Bと、列デコーダ92と、ゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80Bと、を備える。本変形例に係る空間光変調器10Bは、行毎に2本のワード線WL0,WL1を備えるので、それぞれをゲート電圧生成回路80Bに接続する2個のワード線選択トランジスタ71,72を行毎に備える。また、空間光変調器10Bの読出しによる書込みエラーの検出をしないので、第1実施形態の記憶装置90の電圧比較器93および定電流源94を備えず、行デコーダ91Bが書込みのための信号のみを出力する。
ゲート電圧生成回路80Bは、行毎に1段階ずつ変位させた電圧を、画素6Bにおける選択トランジスタ41,42,43,44の共通のゲート電圧Vg1,Vg2,…,VgNとして出力する。このようなゲート電圧生成回路80Bは、電位の高い側(図における左)から、パルス電源96、保護抵抗87、N個の分圧抵抗器81、ダイオード88、およびゲート基電圧電源98を、順に直列に接続して備え、さらに、保護抵抗87を挟んだパルス電源96の出力と定電流源95の正の出力との間に順に接続する、ツェナーダイオード86およびダイオード85を備える。すなわち、ゲート電圧生成回路80Bは、第1実施形態の記憶装置90のゲート電圧生成回路80の、分圧抵抗器81,82および抵抗切替スイッチング素子83からなる可変抵抗器8に代えて、固定抵抗器である分圧抵抗器81のみを分圧器に備える。また、空間光変調器10Bの読出しをしないので、ゲート電圧生成回路80Bは、定電源97および抵抗切替回路84を備えない。
(空間光変調器の書込方法)
本発明の第1実施形態の変形例に係る空間光変調器の書込方法を、図12および図4を参照して説明する。本変形例に係る空間光変調器10Bは、前記したように、画素6Bが、第1入力選択トランジスタ41と第2出力選択トランジスタ44、第2入力選択トランジスタ43と第1出力選択トランジスタ42で、それぞれ共通のワード線WL0,WL1にゲートを接続しているので、これら2個の組み合わせの選択トランジスタ4が常に同時にON/OFFになる。一方、第1実施形態に係る磁気メモリ10においても、図4に示すように、同じ組み合わせの2個の選択トランジスタ41,44または選択トランジスタ43,42をONにすることにより、データ‘0’、‘1’を書込みする。すなわち、本変形例に係る空間光変調器10Bは、行デコーダ91Bにより、データ‘0’を書込みする行でワード線選択トランジスタ71を、データ‘1’を書込みする行でワード線選択トランジスタ72を、それぞれON状態にすることにより、第1実施形態に係る磁気メモリの書込方法と同様に、1回の電流供給により、直列に接続して列方向に配列された複数の画素6B(画素列60B)の画素6B毎に、所望のデータを書込みすることができる。
本変形例に係る空間光変調器10Bの書込みにおいては、画素6Bk毎に、第1入力選択トランジスタ41と第2出力選択トランジスタ44、または第2入力選択トランジスタ43と第1出力選択トランジスタ42で、同一のゲート電圧Vgkが印加される。これに対して、1つの画素6Bkにおいて、選択トランジスタ41,44間、選択トランジスタ43,42間では、出力選択トランジスタ44,42の方が電位が低い。詳しくは、出力選択トランジスタ44,42は、ソース電位Vskoが、そのON抵抗RONoおよび光変調素子1Bの抵抗値RMRwにより、入力選択トランジスタ41,43のソース電位Vskiよりも(Iw×(RONo+RMRw))低く、そのため、ゲート−ソース間電圧Vgskoが大きく、それに伴い、ON抵抗RONoが低い。したがって、本変形例に係る空間光変調器10Bの書込みにおけるゲート電圧Vgkは、例えば第1実施形態に係る磁気メモリ10の読出しに倣って、以下のように設定される。
まず、すべての画素6B
kの出力選択トランジスタ42,44について、ゲート−ソース間電圧Vgs(適宜、Vgs
typと称する)を(Vth+Vds)よりも大きく(Vds=I
w×R
ONo)、かつ最大定格V
(BR)gs未満の範囲に設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONo(適宜、R
ONtypと称する)を算出する。さらに、入力選択トランジスタ41,43について、ゲート−ソース間電圧(Vgs
typ−I
w×(R
ONo+R
MRw))におけるON抵抗R
ONiを算出し、このゲート−ソース間電圧(Vgs
typ−I
w×(R
ONo+R
MRw))が(Vth+Vds)以上であるようにVgs
typを設定する。すなわち下式(27)が成立するように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。そして、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(4)で表されるように設定される。
一方、本変形例に係る空間光変調器10Bは、書込みで光変調素子1Bの抵抗値R
MRwが変化しないので、定電流源95の出力電圧V
wが一定であり、出力選択トランジスタ42,44のゲート−ソース間電圧が設定したVgs
typになるゲート電圧Vg
kが印加されるとき、下式(28)で表される。また、パルス電源96の出力電圧Vg
Hとゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0との電位差はN個の分圧抵抗器81によるものであるから、この電位差が画素列60Bの全体の電位差すなわち定電流源95の出力電圧V
wに一致するように、パルス電源96の出力電圧Vg
Hは下式(29)で表されるように設定される。
このように、画素6B内での電位差を含めて入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44が共に線形領域で動作するゲート−ソース間電圧Vgstypを設定することにより、N個の分圧抵抗器81からなる分圧器を内蔵したゲート電圧生成回路80Bで、すべての画素6Bの選択トランジスタ4に適正なゲート電圧Vgkが行毎に出力される。なお、本変形例に係る空間光変調器10Bの書込みは、前記したように、定電流源95の出力電圧Vwが一定であるので、ゲート−ソース間電圧Vgstypは、式(27)を満足するように設定するだけでよい。また、各画素6Bの選択トランジスタ4は電位の変動がないが、ゲート−ソース間電圧Vgsが最大定格V(BR)gsに到達することのないように、ゲート電圧生成回路80Bは、第1実施形態と同様に、ツェナーダイオード86を式(13)で表されるツェナー電圧Vzに設計されることが好ましい。
前記第1実施形態にて説明したように、磁気メモリ10が低抵抗の磁気抵抗効果素子1を搭載して、書込みおよび読出しにおいて、本変形例に係る空間光変調器10Bのように入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とに同じゲート電圧Vgkを印加することができる。その場合は、書込みにおけるゲート電圧Vgkの設定において、式(27)〜(29)の「RMRw」を磁気抵抗効果素子1の抵抗値「RAP」に置き換え、さらにメモリセル列60のすべてのデータが‘0’であるときの電位の低下を考慮して、ゲート−ソース間電圧Vgstypを設定する。
以上のように、本発明の第1実施形態およびその変形例に係る磁気メモリまたは空間光変調器によれば、一列に配列されたメモリセルのすべてに同時に、かつそれぞれに所望のデータを書込みをすることができるため、書込みが高速化され、さらに1回の書込みにおける電流を大きくする必要がないので、配線を太く形成する必要がない。また、書込みにおいて、データにかかわらず、常に一列に配列されたメモリセルのすべてに定電流を供給することにより、定電流源の電圧が、配列されたメモリセルの数に依拠して、振れ幅が抑えられる。
〔第2実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリは、メモリセルに4個のトランジスタを備えるために、従来の選択トランジスタ型の磁気メモリの1T1R型のメモリセル(図36、図37参照)の8/3倍の面積を要する。以下、メモリセルの大型化を抑制しつつ、第1実施形態と同様にメモリセルを直列に接続してなる本発明の第2実施形態に係る磁気メモリについて、図15、図16、および図17を参照して説明する。第1実施形態(図1〜8参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第2実施形態に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)10Cは、第1実施形態(図1参照)と同様に、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)であり、図15に示すように、記憶装置90Cに搭載され、メモリセル6Cを2次元配列して備える。記憶装置90Cの構成の詳細は後記にて説明する。
〔第2実施形態:磁気メモリ〕
図15に示すように、磁気メモリ10Cのメモリセル6Cは、1個の磁気抵抗効果素子(不揮発性記憶素子)1と、その一方の端子に接続した第1入力選択トランジスタ(第1の入力選択トランジスタ)41と、他方の端子に接続した第2入力選択トランジスタ(第2の入力選択トランジスタ)43と、を備える。そして、磁気メモリ10Cは、列方向(X方向)に隣り合う2つのメモリセル(メモリセルの群)6C,6Cの第1入力選択トランジスタ41,41同士、第2入力選択トランジスタ43,43同士をそれぞれ直列に接続し、さらにそれぞれの端に、第1出力選択トランジスタ(第1の出力選択トランジスタ)42、第2出力選択トランジスタ(第2の出力選択トランジスタ)44を、直列に接続して備える。これらの直列に接続された、3個の選択トランジスタ41,41,42を第1回路、選択トランジスタ43,43,44を第2回路と称し、第1回路と第2回路を並列に接続して環状の回路を形成する。すなわち、隣り合う2つのメモリセル6C,6Cの一組において、2個の磁気抵抗効果素子1がそれぞれ第1回路と第2回路を架橋するように、一方が両端子を選択トランジスタ41−41間および選択トランジスタ43−43間に、他方が選択トランジスタ41−42間および選択トランジスタ43−44間に、それぞれ接続する。本実施形態において、この第1回路と第2回路を共有する2つのメモリセル6C,6Cを1つの「組」と称する。そして、一組のメモリセル6C,6Cは、第1回路と第2回路とを並列に接続した両端の2箇所を、隣り合う組同士で列方向に接続する。この直列に接続して列方向に配列されたメモリセル6Cを適宜「メモリセル列」60Cと称する。
第1実施形態と同様、メモリセル列60Cの両端にはビット線BLP,BLNが接続され、読出しおよび書込みにおいて定電流源94,95に接続される。そして、磁気メモリ10Cは、行方向に配列するメモリセル6C,6C,…,6Cについて、入力選択トランジスタ41,43のゲートに入力する入力ワード線WL0i,WL1i、偶数行の出力選択トランジスタ42,44のゲートに入力する出力ワード線WL1o,WL0oを備える。したがって、磁気メモリ10Cは、2行毎に6本のワード線WL0i,WL1i,WL0i,WL1i,WL0o,WL1oを備える。本実施形態に係る磁気メモリ10Cは、言い換えると、第1実施形態に係る磁気メモリ10の列方向に隣り合う2つのメモリセル6,6の一方の選択トランジスタ43,44を他方の選択トランジスタ41,42と共有させた構成であり、磁気抵抗効果素子1および選択トランジスタ41,42,43,44の各構成は第1実施形態にて説明した通りである。
本実施形態に係る磁気メモリ10Cは、図2に示す第1実施形態に係る磁気メモリ10から、1行おきに、基板40の表層のゲート4g2,4g4およびドレイン4d1,4d3(ソース4s2,4s4)、ならびにこれに接続する配線54を間引いた構造とすることができる(図示せず)。したがって、磁気メモリ10Cは、第1実施形態に係る磁気メモリ10と比較して、X方向に3/4の面積に縮小される。
〔第2実施形態:記憶装置〕
本実施形態に係る磁気メモリ10Cを搭載する記憶装置90Cは、さらに磁気メモリ10Cの駆動回路として、図15に示すように、磁気メモリ10Cの奇数行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,73と、偶数行毎に設けられたワード線選択トランジスタ75,76,72,74と、磁気メモリ10Cの列毎に設けられたビット線選択トランジスタ77,78および電圧比較器93と、書込/読出電流回路9と、行デコーダ91Cと、列デコーダ92と、ゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80Cと、を備える。ワード線選択トランジスタ71,73は奇数行の入力ワード線WL0i,WL1iを、ワード線選択トランジスタ75,76は偶数行の入力ワード線WL0i,WL1iを、ワード線選択トランジスタ72,74は出力ワード線WL1o,WL0oを、それぞれゲート電圧生成回路80Cに接続する。行デコーダ91Cは、行アドレスデータを受けて、後記の磁気メモリの書込/読出方法にて説明するように、2行毎に、書込みにおいてはワード線選択トランジスタ71〜76のうちの3個をON状態にし、読出しにおいては3個または6個すべてをON状態にする。
図16および図17に示すように、ゲート電圧生成回路80Cは、電位の高い側(図における左)から、パルス電源96、保護抵抗87、組(図16および図17では2組)毎、すなわち2行毎に3個の分圧抵抗器81,82C,82C、ダイオード88、およびゲート基電圧電源98を、順に直列に接続して備え、さらに、保護抵抗87を挟んだパルス電源96の出力と定電流源95の正の出力との間に順に接続する、ツェナーダイオード86およびダイオード85を備える。分圧抵抗器81は固定抵抗器である。一方、分圧抵抗器82Cは、抵抗値がRdiv2L,Rdiv2Hの2段階に切り替えられる可変抵抗器であり、後記の磁気メモリの書込/読出方法にて説明するように、抵抗値Rdiv2L,Rdiv2Hが分圧抵抗器81の抵抗値Rdiv1に対して所定の比になるように設計される。そして、2行あたり2個の連続した分圧抵抗器(以下、適宜、可変抵抗器)82C,82Cは、行デコーダ91Cまたは図示しない制御回路からの信号により、1個のみまたは2個共に低抵抗に切り替えられる。このような分圧抵抗器82Cは、例えば、直列に接続された1個の固定抵抗器とスイッチング素子に、別の固定抵抗器を並列に接続した構成とすることができる。スイッチング素子は、第1実施形態のゲート電圧生成回路80の抵抗切替スイッチング素子83と同様の構成で、前記信号でON状態になる。ゲート電圧生成回路80Cは、分圧器(2行毎の分圧抵抗器81,82C,82C)以外は、第1実施形態のゲート電圧生成回路80と同様の構成である。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第2実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図16および図17を参照して説明する。図16および図17では、簡潔に説明するために、磁気メモリ10Cにおける1列のメモリセル6C(1つのメモリセル列60C)を示し、さらにこのメモリセル列60Cに4つのメモリセル6Cが配列されているとし、適宜、図中左からメモリセル6C1,6C2,6C3,6C4と称する。この図16および図17に示すメモリセル列60Cが、第1実施形態と同様に、列デコーダ92(図15参照)により選択されて(ビット線選択トランジスタ77,78:ON状態)、書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源95または定電流源94の正の出力がビット線BLPに接続し、負の出力と同じ電位のGND(0V)がビット線BLNに接続している。ここでは、メモリセル6C1,6C2,6C3,6C4にそれぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータを書込みし、また、これらのデータを読出しするものとして説明する。
(磁気メモリの書込方法)
本実施形態においては、メモリセル6C,6Cの組から1個ずつを選択して書込みをする。すなわち、奇数行アドレスと偶数行アドレスとに分けて書込みをする。まず、図16(a)を参照して、奇数行アドレスのメモリセル6C1,6C3のデータの書込みについて説明する。行デコーダ91Cが、1行目のワード線選択トランジスタ71および2行目のワード線選択トランジスタ74、さらにワード線選択トランジスタ76をON状態にする。また、3行目のワード線選択トランジスタ73および4行目のワード線選択トランジスタ72、さらにワード線選択トランジスタ75をON状態にする。これにより、メモリセル6C1の第1入力選択トランジスタ41、メモリセル6C2の第2入力選択トランジスタ43および第2出力選択トランジスタ44がON状態である。また、メモリセル6C3の第2入力選択トランジスタ43、メモリセル6C4の第1入力選択トランジスタ41および第1出力選択トランジスタ42がON状態である。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Cにビット線BLP側から右方向に電流Iwを供給すると、電流Iwが、メモリセル6C1,6C2において、メモリセル6C1の第1入力選択トランジスタ41、磁気抵抗効果素子1、メモリセル6C2の第2入力選択トランジスタ43、第2出力選択トランジスタ44の順に流れる。したがって、メモリセル6C1の磁気抵抗効果素子1には電流Iwが端子p1から端子p2へ供給され、一方、メモリセル6C2の磁気抵抗効果素子1には電流が流れない。また、メモリセル6C3,6C4において、電流Iwが、メモリセル6C3の第2入力選択トランジスタ43、磁気抵抗効果素子1、メモリセル6C4の第1入力選択トランジスタ41、第1出力選択トランジスタ42の順に流れる。したがって、メモリセル6C3の磁気抵抗効果素子1には電流Iwが端子p2から端子p1へ供給され、一方、メモリセル6C3の磁気抵抗効果素子1には電流が流れない。その結果、メモリセル6C1にデータ‘0’が、メモリセル6C3にデータ‘1’が、それぞれ書込みされる。
次に、図16(b)を参照して、偶数行アドレスのメモリセル6C2,6C4のデータの書込みについて説明する。行デコーダ91Cが、1行目のワード線選択トランジスタ73および2行目のワード線選択トランジスタ72、さらにワード線選択トランジスタ76をON状態にする。また、3行目のワード線選択トランジスタ71および4行目のワード線選択トランジスタ74、さらにワード線選択トランジスタ75をON状態にする。これにより、メモリセル6C1の第2入力選択トランジスタ43、メモリセル6C2の第2入力選択トランジスタ43および第1出力選択トランジスタ42がON状態である。また、メモリセル6C3の第1入力選択トランジスタ41、メモリセル6C4の第1入力選択トランジスタ41および第2出力選択トランジスタ44がON状態である。この状態で、メモリセル列60Cに電流Iwを供給すると、電流Iwが、メモリセル6C1,6C2において、メモリセル6C1の第2入力選択トランジスタ43、メモリセル6C2の第2入力選択トランジスタ43、磁気抵抗効果素子1、第1出力選択トランジスタ42の順に流れる。したがって、メモリセル6C1の磁気抵抗効果素子1には電流が流れず、一方、メモリセル6C2の磁気抵抗効果素子1には電流Iwが端子p2から端子p1へ供給される。また、メモリセル6C3,6C4において、電流Iwが、メモリセル6C3の第1入力選択トランジスタ41、メモリセル6C4の第1入力選択トランジスタ41、磁気抵抗効果素子1、第2出力選択トランジスタ44の順に流れる。したがって、メモリセル6C3の磁気抵抗効果素子1には電流が流れず、一方、メモリセル6C4の磁気抵抗効果素子1には電流Iwが端子p1から端子p2へ供給される。その結果、メモリセル6C2にデータ‘1’が、メモリセル6C4にデータ‘0’が、それぞれ書込みされる。
したがって、メモリセル列60Cに電流Iwを2回供給することにより、4つすべてのメモリセル6Cに、左から‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータが書込みされる。このように、一組の隣り合う2個のメモリセル6C,6Cで、計6個の選択トランジスタ4を備えることにより、各組の1個の磁気抵抗効果素子1を双方向に流れる2通りの経路を形成することができる。したがって、1つのメモリセル列60Cについて、メモリセル6Cの数N(Nは偶数)、および書込みをしようとする‘1’、‘0’のデータのそれぞれの数にかかわらず、奇数行アドレスと偶数行アドレスとのN/2個ずつに分けて、2回の電流供給によりすべてのメモリセル6Cに書込みすることができる。また、行デコーダ91Cは、2行毎に、データ‘0’を書込みするときはワード線選択トランジスタ71,74を、データ‘1’を書込みするときはワード線選択トランジスタ73,72を、それぞれON状態にし、さらに書込みをするのが奇数行アドレスか偶数行アドレスかと、前記データとに応じて、ワード線選択トランジスタ75またはワード線選択トランジスタ76をON状態にする。
本実施形態においても、定電流源95の出力電圧V
wが、下式(1)に表されるようにメモリセル列60Cの抵抗値ΣR
CELLkに依存する。選択トランジスタ4のON抵抗をそれぞれ定数として、奇数行アドレスのメモリセル6Cの入力選択トランジスタ41,43を「R
ON(odd)i」、偶数行アドレスの入力選択トランジスタ41,43を「R
ONi」、出力選択トランジスタ42,44を「R
ONo」と表すと、隣り合う2個のメモリセル6C,6Cの組の抵抗値2R
CELLが(R
ON(odd)i+R
ONi+R
ONo+R
P/AP)であるから、メモリセル列60Cの抵抗値ΣR
CELLkは下式(30)で表される。「R
P/AP」は、奇数行アドレスまたは偶数行アドレスの各N/2個のメモリセル6Cに記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。
本実施形態に係る磁気メモリの書込方法においては、第1実施形態と同様に、メモリセル6Ck毎に選択トランジスタ4の電位に対応したゲート電圧Vgki,Vgkoが設定されることが好ましい。ここで、一組のメモリセル6C,6Cにおいて、偶数行アドレスの入力選択トランジスタ41,43は、奇数行アドレスの入力選択トランジスタ41,43との電位差が、奇数行アドレスの書込みにおいては(Iw×(RON+RP/AP))、偶数行アドレスの書込みにおいては(Iw×RON)と、書込みをするメモリセル6Cの行アドレスによって多くて(Iw×RAP)の差がある。そのため、ゲート電圧生成回路80Cは、分圧器の2行毎の2個の可変抵抗器(分圧抵抗器)82C,82Cについて、奇数行アドレスの書込み(図16(a)参照)においては電位の高い側の可変抵抗器82Cを高抵抗Rdiv2Hに、低い側の可変抵抗器82Cを低抵抗Rdiv2Lにそれぞれ設定し、偶数行アドレスの書込み(図16(b)参照)においては可変抵抗器82C,82Cの各抵抗値の高低を逆にする。すなわち、選択したメモリセル6Cに対応する側の可変抵抗器82Cを高抵抗Rdiv2Hに設定する。
分圧抵抗器81の抵抗値Rdiv1、および可変抵抗器82Cの高低2段階の抵抗値Rdiv2H,Rdiv2Lは、互いの比がRdiv1:Rdiv2L:Rdiv2H=RON:RON:(RON+RP/AP)により近いことが好ましい。一方で、後記の読出しにおける選択、非選択によるメモリセル6C,6Cの組の抵抗値2RCELL,2RCELLnsの差に対応するために、ここでは、Rdiv1:Rdiv2L:Rdiv2H=RON:0.25RON:(1.75RON+RAP)に設計されているものとする。
このように、ゲート電圧生成回路80Cの分圧器に2行毎に2個の可変抵抗器82C,82Cを設けて、それぞれの抵抗値の高低を入れ替えることにより、偶数行アドレスのメモリセル6Cの入力選択トランジスタ41,43に、その電位に対応したゲート電圧を印加することができる。可変抵抗器82C,82Cの抵抗値の切替えは、例えば行デコーダ91Cからの信号により行われる。また、ゲート電圧生成回路80Cは、2個の可変抵抗器82C,82Cに代えて、抵抗値の比が0.25RON:(1.5RON+RAP):0.25RONの3個の固定抵抗器を直列に接続して設けてもよく、ワード線選択トランジスタ75,76が、前記入力選択トランジスタ41,43のゲートに入力する入力ワード線WL0i,WL1iを、3個の固定抵抗器の1、2個目の間か2、3個目の間かに切り替えて接続する構成とする。
ゲート電圧生成回路80Cの分圧器の前記構成により、例えば図16(a)の1、2行目のゲート電圧Vg
1i,Vg
2i,Vg
2oは、互いの電位差がメモリセル6C
1,6C
2の選択トランジスタ41,43,44の電位差に一致しない。ただし、R
div1:(R
div2L+R
div2H)=R
ON:(R
ON+R
P/AP)であるので、ゲート電圧Vg
1i,Vg
2o間については一致させることができる。そこで、まず、メモリセル列60Cのすべてのメモリセル6C,6Cの組の出力選択トランジスタ42,44において共通のゲート−ソース間電圧Vgs(適宜、Vgs
typと称する)を下式(3)の範囲に設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおける選択トランジスタ4のON抵抗R
ONo(適宜、R
ONtypと称する)を算出する。このとき、奇数行アドレスのメモリセル6Cの入力選択トランジスタ41,43についても、ゲート−ソース間電圧Vgs
typ、ON抵抗R
ONtypとなる。
一方、偶数行アドレスのメモリセル6Cの入力選択トランジスタ41,43は、ゲート−ソース間電圧が、奇数行アドレスの書込みにおいては(Vgs
typ−I
w×0.75R
ONtyp)、偶数行アドレスの書込みにおいては(Vgs
typ+I
w×0.75R
ONi)となるので、これらのゲート−ソース間電圧も式(3)を満足するようにゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。すなわち下式(31)が成立するように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。そして、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(4)で表されるように設定される。なお、下式(31)の上限値「V(
BR)gs−I
w×0.75R
ONtyp」の「R
ONtyp」は、偶数行アドレスのメモリセル6Cを選択したときの、同メモリセル6Cの第1入力選択トランジスタ41,43のON抵抗R
Oniを、これよりも高いON抵抗R
ONtypに置き換えたものである。また、奇数行アドレスのメモリセル6Cを選択したときの、偶数行アドレスのメモリセル6Cの入力選択トランジスタ41,43のON抵抗R
ONiを、算出する。
そして、第1実施形態と同様に、メモリセル6C
1の第1入力選択トランジスタ41のドレイン電位Vd
1iである定電流源95の出力電圧V
wを、想定される範囲において最大値V
wMAXになる場合を仮定する。そのため、偶数行アドレスのメモリセル6Cの入力選択トランジスタ41,43のON抵抗R
Oniが高い、奇数行アドレスのメモリセル6Cへの書込みで、これらN/2個のメモリセル6Cの磁気抵抗効果素子1の抵抗値が高い方のR
APであると仮定するので、定電流源95の最大出力電圧V
wMAXは下式(32)で表される。定電流源95の最大出力電圧V
wMAXより、パルス電源96の出力電圧Vg
Hは、下式(33)で表されるように設定される。
次に、第1実施形態と同様に、定電流源95の出力電圧V
wが最小値V
wMINとなる場合を仮定する。磁気メモリ10Cの書込みにおいて最小出力電圧V
wMINとなるのは、電位の低い側であり、かつ偶数行アドレスのメモリセル6Cの入力選択トランジスタ41,43のON抵抗R
ON(odd)iが低い、偶数行アドレスの書込みにおいて、N/2個のメモリセル6Cの磁気抵抗効果素子1がすべて抵抗値R
Pである場合であり、定電流源95の最小出力電圧V
wMINは下式(34)で表される。このときのメモリセル6C
k毎の選択トランジスタ4のそれぞれのゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´およびON抵抗R
ONki´,R
ONko´は、シミュレーションによって算出される。
そして、下式(35)で表されるように、N/2個のメモリセル6Cのすべてのデータが‘0’のときのメモリセル6C
1の入力選択トランジスタ41,43のゲート−ソース間電圧Vgs
1i´(=Vgs
MAX)が最大定格V
(BR)gsに到達しなければよい。下式(35)より、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(36)を満足するように設定される。また、下式(36)を満足するゲート−ソース間電圧Vgs
typが存在するためには、磁気メモリ10Cは下式(37)を満足する必要がある。
さらに、各メモリセル6Cの選択トランジスタ4のゲート−ソース間電圧Vgsが最大定格V
(BR)gsに到達することのないように、ゲート電圧生成回路80Cは、第1実施形態と同様に、ツェナーダイオード86を下式(13)で表されるツェナー電圧Vzに設計される。
このように、分圧抵抗器81と可変抵抗器82C,82Cの計3個を2行毎に直列に接続した分圧器を内蔵し、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0を設定したゲート電圧生成回路80Cにより、第1実施形態と同様にすべてのメモリセル6Cの選択トランジスタ4に適正なゲート電圧Vgが出力される。
第1実施形態に係る磁気メモリの書込方法にて説明したように、磁気メモリ10Cの書込みにおいては、N/2個の磁気抵抗効果素子1が抵抗値RPであると仮定してゲート−ソース間電圧Vgstypが設定されてもよい。また、同じく第1実施形態にて説明したように、磁気メモリ10Cは、メモリセル列60Cの1〜(N/2−1)個の任意のメモリセル6Cに書込みをすることもできる。
(磁気メモリの読出方法)
図17に示すメモリセル列60Cのメモリセル6C1,6C2,6C3,6C4は、それぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’が記憶されているので、それぞれの磁気抵抗効果素子1の抵抗値は、RP,RAP,RAP,RPである。図17(a)において、行デコーダ91Cが1行目を選択すると、図16(a)に示す1行目の‘0’の書込みと同様に、1行目のワード線選択トランジスタ71および2行目のワード線選択トランジスタ74、さらにワード線選択トランジスタ76をON状態にする。すなわち、メモリセル6C1の第1入力選択トランジスタ41、メモリセル6C2の第2入力選択トランジスタ43および第2出力選択トランジスタ44がON状態である。一方、他の3、4行目においては、ワード線選択トランジスタ71,73,75,76,72,74のすべてをON状態にし、これにより、メモリセル6C3,6C4の組における6個の選択トランジスタ4のすべてがON状態である。この状態で、定電流源94から電流Irを供給すると、電流Irが、メモリセル6C1,6C2においてはメモリセル6C1への書込みと同様に、メモリセル6C1の第1入力選択トランジスタ41、磁気抵抗効果素子1、メモリセル6C2の第2入力選択トランジスタ43、第2出力選択トランジスタ44の順に流れる。一方、メモリセル6C3,6C3においては、電流Irが、選択トランジスタ41,41,42(第1回路)および選択トランジスタ43,43,44(第2回路)に二分されてIr/2ずつ流れる。
また、図17(b)において、行デコーダ91Cが2行目を選択すると、1、2行目のワード線選択トランジスタ71,74はON状態のままで、2行目のワード線選択トランジスタ76をOFF状態に、ワード線選択トランジスタ75をON状態に切り替えられる。したがって、メモリセル6C2の第2入力選択トランジスタ43がOFF状態に、第1入力選択トランジスタ41がON状態になる。一方、他の3、4行目においては、図17(a)に示す1行目の選択時と同じ状態である。この状態で、定電流源94から電流Irを供給すると、電流Irが、メモリセル6C1,6C2においては、メモリセル6C1の第1入力選択トランジスタ41、メモリセル6C2の第1入力選択トランジスタ41、磁気抵抗効果素子1、第2出力選択トランジスタ44の順に流れる。一方、メモリセル6C3,6C3においては、電流Irが第1回路と第2回路に二分されて流れる。
このように、磁気メモリ10Cの読出しは、選択した行および同じ一組の隣の行の2つのメモリセル6C,6Cにおいては、書込みと同じ経路で、それ以外の非選択のメモリセル6Cにおいては、組毎に第1回路と第2回路に二分されて、電流Irがメモリセル列60に流れる。なお、選択したメモリセル6Cの磁気抵抗効果素子1に、データ‘1’の書込みと同様に逆向きに電流Irを供給してもよい。
磁気メモリ10Cの読出しにおいては、第1実施形態と同様に、定電流源94の出力電圧V
rが、下式(14)に表されるようにメモリセル列60Cの抵抗値ΣR
CELLkに依存する。前記した通り、読出しにおいて、非選択のメモリセル6C
k(k≠j)は、2個一組で、選択トランジスタ4を3個ずつ直列に接続した第1回路と第2回路とに並列に電流が流れる。したがって、これら非選択のメモリセル6C
k-1,6C
kの組において、選択トランジスタ4のON抵抗をそれぞれ定数として、奇数行アドレスのメモリセル6C
k-1の入力選択トランジスタ41,43を「R
ON(odd)i」、偶数行アドレスのメモリセル6C
kの入力選択トランジスタ41,43を「R
ONi」、出力選択トランジスタ42,44を「R
ONo」と表すと、抵抗値2R
CELLnsが0.5×(R
ON(odd)i+R
ONi+R
ONo)である。さらに、選択したメモリセル6C
jとその同じ組のメモリセル6C
j-1において、奇数行アドレスのメモリセル6C
j-1の入力選択トランジスタ41,43を「R
ON(j-1)i」、偶数行アドレスのメモリセル6C
jの入力選択トランジスタ41,43を「R
ONji」、出力選択トランジスタ42,44を「R
ONjo」と表すと、メモリセル列60Cの抵抗値ΣR
CELLkは下式(38)で表される。「R
P/AP」は、選択したメモリセル6C
jに記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。
したがって、磁気メモリ10Cは、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に、各メモリセル6Cの選択トランジスタ4のON抵抗を制御して定電流Irを供給されることにより、書込みと共通の配線を用いて、選択した1つのメモリセル6Cに記憶されたデータの読出しをすることができる。そのために、ゲート電圧生成回路80Cは、組毎に、選択したメモリセル6Cjを含む組か、非選択のメモリセル6Ck-1,6Ckの組かで、電位の降下量を切り替えてゲート電圧Vgki,Vgkoを出力するように、次のように構成される。
ゲート電圧生成回路80Cは、書込みと同様に、分圧器の2行毎の2個の可変抵抗器(分圧抵抗器)82C,82Cについて、選択したメモリセル6Cに対応する側の可変抵抗器82Cを高抵抗Rdiv2Hに設定する。すなわち、非選択のメモリセル6Ck-1,6Ckの組に対応する2行における可変抵抗器82C,82Cは、2個共に低抵抗Rdiv2Lに設定する。したがって、2行毎の3個の分圧抵抗器81,82C,82Cの選択、非選択の抵抗値の比は、(Rdiv1+Rdiv2L+Rdiv2H):(Rdiv1+2Rdiv2L)=(3RON+RAP):1.5RONに設定され、選択したメモリセル6Cjを含む組と非選択のメモリセル6Ck-1,6Ckの組との抵抗値の比に略一致する。ゲート電圧生成回路80Cの分圧器のこのような構成により、2行毎のゲート電圧Vgk-1i,Vgki,Vgkoの降下量は、メモリセル列60Cにおけるメモリセル6C,6Cの組毎の電位の降下量に対応させることができる。
ここで、非選択のメモリセル6Ck-1,6Ckの組においては、6個の選択トランジスタ4が(Ir×0.5RON)ずつ3段階で電位が降下するのに対し、ゲート電圧生成回路80Cからは、1:0.25:0.25の比で降下させたゲート電圧Vg(k-1)i,Vgki,Vgkoが印加される。したがって、偶数行アドレスのメモリセル6Ckの出力選択トランジスタ42,44のゲート−ソース間電圧を基準(Vgstyp)にすると、メモリセル6Ck-1,6Ckのそれぞれの入力選択トランジスタ41,43のゲート−ソース間電圧は、(Vgstyp−Ir×0.5RON)、(Vgstyp−Ir×0.25RON)に小さくなり、ON抵抗RON(odd)i,RONjiが高くなる(RON(odd)i>RONi>RONo=RONtyp)。なお、選択したメモリセル6Cjを含む組については、書込みと同様である
したがって、本実施形態に係る磁気メモリ10Cの読出しにおいては、書込みと同様、出力選択トランジスタ42,44の電位を基準にゲート電圧Vg
kが設定される。ここでは、流れる電流の大きい、選択したメモリセル6C
jを含む組を基準にして、書込みにおける式(31)の「I
w」を「I
r」に置き換えて、ゲート−ソース間電圧Vgs
typを下式(39)が成立するように設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおける出力選択トランジスタ42,44のON抵抗R
ONo(適宜、R
ONtypと称する)を算出する。このとき、選択したメモリセル6C
jと同じ組の入力選択トランジスタのON抵抗R
ON(j-1)iも同値になる(R
ON(j-1)i=R
ONjo=R
ONtyp)。また、その他の入力選択トランジスタ41,43のON抵抗R
ONj,R
ON(odd)i,R
ONiも算出する。
第1実施形態と同様、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(4)で表されるように設定される。また、定電流源94の出力電圧V
rが最大値V
rMAXとなるのは、奇数行アドレスのメモリセル6Cを選択し、かつそのデータが‘1’であるときであり、下式(40)で表される。したがって、定電源97の出力電圧Vg
Hは、下式(41)で表されるように設定される。
そして、第1実施形態と同様に、定電流源94の出力電圧V
rが下式(42)で表される最小値V
rMINになる場合に最大定格V
(BR)gsに到達しないように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typが下式(43)を満足するように設定される。定電流源94が最小出力電圧V
rMINを出力するのは、メモリセル6C
Nを選択してそのデータが‘0’であった場合である。このときのメモリセル6C
k毎の選択トランジスタ4のそれぞれのゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´およびON抵抗R
ONki´,R
ONko´は、シミュレーションによって算出される。
本実施形態に係る磁気メモリ10Cは、メモリセル列60Cに配列したメモリセル6Cの数Nに対する選択トランジスタ4の数が、第1実施形態に係る磁気メモリ10と比較して少ないので、読出しにおけるメモリセル列60Cの抵抗値ΣRCELLkが低く、より精度が高い。言い換えると、磁気抵抗効果素子1のMR比や選択トランジスタ4のON抵抗RONが同じであるとき、磁気メモリ10Cは、磁気メモリ10と同等と読出しの精度を得るのに、Nを磁気メモリ10の4/3倍に増大させることができる。一方で、磁気メモリ10Cは、メモリセル列60Cへの書込みに2回の電流供給が必要であるので、Nが同数であると省電力の点で磁気メモリ10に劣る。しかし、メモリセル列60Cのメモリセル6Cの数Nを磁気メモリ10の4/3倍(4/3×N)に増大させることで、全メモリセル6Cへの書込みに要する電流供給の回数を磁気メモリ10の1.5倍に低減して、磁気メモリ10Cの記憶容量あたりの書込みにおける消費電力の増大を抑制することができる。なお、磁気メモリ10Cは、メモリセル列60Cに(4/3×N)個のメモリセル6Cを配列しても、書込みにおける1回の電流供給での負荷は、磁気メモリ10よりも(Iw×N×RP/AP/3)小さくて済む。さらに、前記したように、磁気メモリ10Cは、面積が磁気メモリ10の3/4に縮小される。
ゲート電圧生成回路80Cは、可変抵抗器82Cを、(RON+RP/AP):RON:0.25RONの3段階の比で抵抗値が変化する構成としてもよい。書込みにおいては、(RON+RP/AP):RONで抵抗値を変化させることにより、一組のメモリセル6C,6Cにおける選択トランジスタ4の電位の降下に対応したゲート電圧Vgki,Vgkoを出力することができる。あるいは、磁気メモリ10Cの書込みおよび読出しにおいて、第1実施形態にて説明したように、ゲート電圧生成回路80Cの分圧器によらずに、ゲート電圧Vgki,Vgkoを個別にシミュレーションで算出して出力してもよい。
磁気メモリ10Cは、メモリセル6C,6Cの組のそれぞれの一方(例えば偶数行アドレス)が、磁気抵抗効果素子1を逆向きに接続していてもよい。このような構成であれば、1回の電流供給により、その電流の大きさを変えずに、データ‘0’ または‘1’をメモリセル列60Cに配列したN個すべてのメモリセル6Cに書込みをすることができる。例えば、‘0’を書込みする場合は、行デコーダ91Cが、2行毎に、ワード線選択トランジスタ71,76,72をON状態にする。これにより、例えばメモリセル6C1,6C2の組において、メモリセル6C1の第1入力選択トランジスタ41、磁気抵抗効果素子1、メモリセル6C2の第2入力選択トランジスタ43、磁気抵抗効果素子1、第1出力選択トランジスタ42、の順に電流Iwが流れ、メモリセル6C1,6C2のそれぞれの磁気抵抗効果素子1,1に電流Iwが供給される。ただし、メモリセル列60Cの抵抗値ΣRCELLkが(N×(1.5RON+RP/AP))に増大し、各メモリセル6Cの選択トランジスタ41,43,42の電位が上昇するので、これに対応可能にゲート電圧生成回路80Cの分圧器を構成し、パルス電源96の出力電圧VgHを設定する。
(空間光変調器、変形例)
磁気メモリ10Cは、第1実施形態およびその変形例と同様に、磁気抵抗効果素子1の上面に接続した配線(図2に示す配線51の抵抗接続層51b)を透明電極材料で形成し、あるいはさらに磁気抵抗効果素子1に光変調素子1A,1B(図8、図14参照)を適用して、空間光変調器とすることができる。また、磁気抵抗効果素子1(1A,1B)の抵抗値RP,RAPが低い場合、偶数行アドレスのメモリセル6Ckの入力選択トランジスタ41,43に印加するゲート電圧Vgkiの出力を、奇数行アドレス、偶数行アドレスの選択によって変化させなくてもよい。この場合、前記入力選択トランジスタ41,43は、奇数行アドレスを選択したときの方がゲート−ソース間電圧Vgsが大きいときで(Iw×RAP)大きく、ON抵抗が低くなる。
磁気メモリ10Cは、さらに磁気抵抗効果素子1が低抵抗である場合は、メモリセル6C,6Cの組の6個の選択トランジスタ4に共通のゲート電圧Vgを印加してもよい。このとき、メモリセル6C,6Cの組において、電位の高い奇数行アドレスの入力選択トランジスタ41,43と電位の低い偶数行アドレスの出力選択トランジスタ42,44とで、(Iw×(2RON+RAP))の電位差があり、ゲート−ソース間電圧Vgsも同様に差があるので、すべての選択トランジスタ4が好適に動作するように、ゲート−ソース間電圧Vgstyp等を設定する。また、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10B(図12参照)のように、第2出力選択トランジスタ44と奇数行アドレスの第1入力選択トランジスタ41、第1出力選択トランジスタ42と偶数行アドレスの第2入力選択トランジスタ43とで、ゲートを接続して、ワード線の本数を2行あたり4本に低減することもできる(図示せず)。
磁気メモリ10Cは、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10A(図9参照)と同様に、メモリセル6Cの磁気抵抗効果素子1にダイオード49を経由して読出ビット線RBLを接続した構成としてもよい。また、ダイオード49に代えてトランジスタ(読出選択トランジスタ)を備えてもよい(図示せず)。この場合、ゲート電圧生成回路80Cは、磁気メモリ10Cの書込みにおける電位降下にのみ対応すればよいので、分圧抵抗器81の抵抗値Rdiv1、および可変抵抗器82Cの高低2段階の抵抗値Rdiv2H,Rdiv2Lの互いの比が、Rdiv1:Rdiv2L:Rdiv2H=RON:RON:(RON+RP/AP)に設計されることが好ましい。
本実施形態に係る磁気メモリ10Cは、2つのメモリセル6C,6Cを一組としているが、3つ以上を一組として接続した構成としてもよく、一組あたりのメモリセル6Cの数が多いほど面積を縮小することができる。ただし、書込みのための電流供給の回数が増大する。
以上のように、本発明の第2実施形態およびその変形例に係る磁気メモリまたは空間光変調器によれば、一列に配列されたメモリセルの所定の数のそれぞれに、所望のデータを書込みをすることができるため、書込みが高速化され、さらに1回の書込みにおける電流を大きくする必要がないので、配線を太く形成する必要がない。また、書込みにおいて、データにかかわらず、常に一列に配列されたメモリセルの所定の数に定電流を供給することにより、定電流源の電圧が、このメモリセルの数に依拠して、振れ幅が抑えられる。
〔第3実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る磁気メモリは、従来の選択トランジスタ型の磁気メモリの1T1R型のメモリセル(図36、図37参照)の2倍の面積に縮小されるが、メモリセルを直列に接続したメモリセル列への書込みに、2回の電流供給が必要である。以下、メモリセルの大型化を抑制しつつ、第1実施形態と同様にメモリセル列への1回の電流供給で書込みをすることのできる、本発明の第3実施形態に係る磁気メモリについて、図18〜24を参照して説明する。第1実施形態および第2実施形態(図1〜17参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第3実施形態に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)10Dは、第1実施形態(図1参照)と同様に磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)であり、図18に示すように、記憶装置90Dに搭載され、メモリセル6Dを2次元配列して備える。記憶装置90Dの構成の詳細は後記にて説明する。
〔第3実施形態:磁気メモリ〕
図18に示すように、磁気メモリ10Dは、行方向(図18における縦方向)に隣り合う2つのメモリセル6D,6Dで一部を重複させている。詳しくは、磁気抵抗効果素子(不揮発性記憶素子)1および選択トランジスタ41,42,43,44からなるメモリセル6Dと、磁気抵抗効果素子1および選択トランジスタ43,44,45,46からなるメモリセル6Dと、が第2入力選択トランジスタ43および第2出力選択トランジスタ44を共有する。選択トランジスタ43,44,45,46を備えるメモリセル6Dにおいては、第3入力選択トランジスタ45および第3出力選択トランジスタ46が第2回路を構成し、すなわち第2入力選択トランジスタ43および第2出力選択トランジスタ44が第1回路を構成する。したがって、メモリセル6Dのそれぞれは、第1実施形態に係る磁気メモリ10(図1参照)のメモリセル6と同一の等価回路である。本実施形態において、第1回路または第2回路を共有する2つのメモリセル6D,6Dを1つの「組」と称する。メモリセル6D,6Dの組は、入力端子および出力端子も共有し、列方向(図18における横方向)に隣り合うメモリセル6D,6Dの組同士で接続する。この直列に接続して列方向に配列されたメモリセル6Dの一列を、第1実施形態と同様、適宜「メモリセル列」60Dと称し、磁気メモリ10Dは、行方向に隣り合って第2回路を共有する2列のメモリセル列60D,60Dが、両端に接続したビット線BLP,BLNを共有する。
一方で、メモリセル6D,6Dの組は、第1回路の選択トランジスタ41,45および選択トランジスタ42,46で、それぞれ異なるワード線WL0i,WL2i,WL1o,WL2oにゲートが接続する。したがって、磁気メモリ10Dは、1行あたり6本のワード線WL0i,WL1i,WL2i,WL0o,WL1o,WL2o(適宜まとめて、ワード線WLと称する)を備える。本実施形態に係る磁気メモリ10Dは、第1実施形態に係る磁気メモリ10の行方向に隣り合う2つのメモリセル6,6の一部の回路(選択トランジスタ43,44)を共有させて、それぞれの固有の回路である選択トランジスタ41,45および選択トランジスタ42,46の各ゲートに入力するワード線WLを独立させた構成である。磁気抵抗効果素子1および選択トランジスタ41,42,43,44,45,46の各構成は第1実施形態にて説明した通りである。
本実施形態に係る磁気メモリ10Dの構造の一例について、図19を参照して説明する。図19では、メモリセル6D,6Dの組の1つを簡略化した外観図で示し、また、選択トランジスタ41〜46のゲート4g1,4g2,4g3,4g4,4g5,4g6のそれぞれに接続する6本のワード線WLを省略する。図19に示すように、磁気メモリ10Dのメモリセル6D,6Dの組は、選択トランジスタ4を表層に形成した基板40B上に、配線51,52,53,54およびワード線WL(図示省略)、磁気抵抗効果素子1,1が形成されてなる。基板40Bは、図2に示す第1実施形態の基板40と同様に、選択トランジスタ41,42(ゲート4g1,4g2、n+拡散層4d1,4d2)、選択トランジスタ43,44(ゲート4g3,4g4、n+拡散層4d3,4d4)、および選択トランジスタ45,46(ゲート4g5,4g6、n+拡散層4d5,4d6)をそれぞれ交互に直列に接続した、X方向に連続した3列のMOSFETを表層に形成して備える。これら3列のMOSFETは、磁気メモリ10Dの2列(メモリセル列60D,60D)毎に設けられ、p−wellが前記2列(MOSFETの3列)毎に分離して形成される。配線52は、メモリセル6D,6Dの組で共有する第2出力選択トランジスタ44のドレイン4d4(第2入力選択トランジスタ43のソース4s3)に接続部52cで接続し、さらに、一方の磁気抵抗効果素子1の磁化固定層11(下面)と他方の磁気抵抗効果素子1の磁化自由層3(上面)とに、抵抗接続層52a,52bでそれぞれ接続し、抵抗接続層52a,52b間を層間部52dで接続する。また、磁気メモリ10Dにおいては、配線54が、出力選択トランジスタ42,44,46のソース同士(入力選択トランジスタ41,43,45のドレイン同士)を接続するために、ドレイン4d1,4d3,4d5に接続部54c1,54c2,54c3でそれぞれ接続し、さらにこれら接続部54c1,54c2,54c3が1つの中継層54aで接続される。配線51(抵抗接続層51b、接続部51c、中継層51a、層間部51d)、配線53(抵抗接続層53a、接続部53c)は、それぞれ第1実施形態に係る磁気メモリ10(図2参照)の配線51,52と同様の構造である。磁気メモリ10Dは、2列あたりで3列の連続したMOSFETを備えるので、第1実施形態に係る磁気メモリ10(図2参照)と比較して、Y方向に3/4の面積に縮小される。
〔第3実施形態:記憶装置〕
本実施形態に係る磁気メモリ10Dを備える記憶装置90Dは、さらに磁気メモリ10Dの駆動回路として、図18に示すように、磁気メモリ10Dの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72,73,74,75,76と、磁気メモリ10Dの2列毎に設けられたビット線選択トランジスタ77,78および電圧比較器93と、書込/読出電流回路9と、行デコーダ91Dと、列デコーダ92Dと、ゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80Dと、を備える。
ワード線選択トランジスタ71,73,75はそれぞれ入力ワード線WL0i,WL1i,WL2iを、ワード線選択トランジスタ72,74,76はそれぞれ出力ワード線WL1o,WL0o,WL2oを、ゲート電圧生成回路80Dに接続する。行デコーダ91Dは、行アドレスデータを受けて、行毎に、書込みにおいてはワード線選択トランジスタ71,72,73,74,75,76の2個をON状態にし、読出しにおいては2個または6個すべてをON状態にする。行デコーダ91Dの構成については、後記の書込方法にて説明する。列デコーダ92Dは、書込みおよび読出しにおいて列アドレスデータを受けて、前記列アドレスを含む磁気メモリ10Dの2列(メモリセル列60D,60D)の組を1以上選択し、選択した組のビット線選択トランジスタ77,78を共にON状態にする信号を出力する。ゲート電圧生成回路80Dは、第1実施形態のゲート電圧生成回路80(図4〜6参照)について、分圧器を、可変抵抗器である分圧抵抗器82DをN個直列に接続した構成にしたものであり、さらに、抵抗切替回路84が分圧抵抗器82Dを低抵抗に切り替える信号を出力する。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第3実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図20〜23を参照して説明する。図20〜23では、簡潔に説明するために、磁気メモリ10Dにおける隣り合う2列のメモリセル6D(2つのメモリセル列60D1,60D2)を示し、さらにこのメモリセル列60Dのそれぞれに4つのメモリセル6Dが配列されているとし、適宜、図中左から、上側のメモリセル列60D1についてメモリセル6D1,6D2,6D3,6D4、下側のメモリセル列60D2についてメモリセル6D5,6D6,6D7,6D8と称する。この図20〜23に示すメモリセル列60D1,60D2が、列デコーダ92D(図18参照)により選択されて(ビット線選択トランジスタ77,78:ON状態)、書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源95または定電流源94の正の出力がビット線BLPに接続し、負の出力と同じ電位のGND(0V)がビット線BLNに接続している。ここでは、メモリセル6D1,6D2,6D3,6D4にそれぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータを、メモリセル6D5,6D6,6D7,6D8にそれぞれ‘1’、‘1’、‘0’、‘0’のデータを書込みし、また、これらのデータを読出しするものとして説明する。
(磁気メモリの書込方法)
本実施形態に係る磁気メモリの書込方法は、第1実施形態に係る書込方法(図4参照)と同様である。ただし、ビット線BLP,BLNを共有する2つのメモリセル列60D1,60D2を分けて書込みをするために、行デコーダ91Dは、行毎にワード線選択回路89を内蔵し、次のように、メモリセル6D,6Dの組毎、すなわち行毎に2個の選択トランジスタ4をON状態にする。まず、図20に示すメモリセル列60D1への書込みは、第1実施形態と同様に、行デコーダ91Dが、1、4行目においてワード線選択トランジスタ71,74をON状態にし、2、3行目においてワード線選択トランジスタ72,73をON状態にする。これにより、第1実施形態と同様に、メモリセル6D1,6D4は選択トランジスタ41,44がON状態で、メモリセル6D2,6D3は選択トランジスタ43,42がON状態であり、電流Iwを供給することにより、メモリセル6D1,6D2,6D3,6D4にそれぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータが書込みされる。
次に、図21を参照して、メモリセル列60D2へのデータの書込みについて説明する。行デコーダ91Dが、1、2行目においてワード線選択トランジスタ75,74をON状態にし、3、4行目においてワード線選択トランジスタ73,76をON状態にする。これにより、メモリセル6D5,6D6は選択トランジスタ45,44がON状態で、メモリセル6D7,6D8は選択トランジスタ43,46がON状態である。この状態で、電流Iwを供給すると、電流Iwが、メモリセル6D5,6D6において、第3入力選択トランジスタ45−磁気抵抗効果素子1−第2出力選択トランジスタ44の経路で流れ、メモリセル6D7,6D8において、第2入力選択トランジスタ43−磁気抵抗効果素子1−第3出力選択トランジスタ46の経路で流れる。その結果、メモリセル6D5,6D6,6D7,6D8にそれぞれ‘1’、‘1’、‘0’、‘0’のデータが書込みされる。
磁気メモリ10Dの各行において、6本のワード線WLに接続するワード線選択トランジスタ71,72,73,74,75,76から2個をON状態にするために、行デコーダ91Dは、一例として次のように構成される。メモリセル6D,6Dの組で共有される第2入力選択トランジスタ43および第2出力選択トランジスタ44は、いずれのメモリセル6Dへの書込みにおいても、一方がON状態に、他方がOFF状態にされる。そのため、これらの選択トランジスタ43,44に接続するワード線選択トランジスタ73,74は、行デコーダ91Dの信号出力部91dから直接にデータ‘1’か‘0’かの信号を入力される。そして、第2入力選択トランジスタ43がON状態のとき、メモリセル列60D1へのデータ‘1’の書込みにおいては第1出力選択トランジスタ42が、メモリセル列60D2へのデータ‘0’の書込みにおいては第2出力選択トランジスタ46が、それぞれON状態にされる。一方、第2出力選択トランジスタ44がON状態のとき、メモリセル列60D1へのデータ‘0’の書込みにおいては第1入力選択トランジスタ41が、メモリセル列60D2へのデータ‘1’の書込みにおいては第3入力選択トランジスタ45が、それぞれON状態にされる。そこで、これらの選択トランジスタ41,42,45,46に接続するワード線選択トランジスタ71,72,75,76は、ワード線選択回路89を構成する4つの2AND論理回路の各出力を入力される。そして、ワード線選択回路89は、信号出力部91dから出力される、前記データ‘0’か‘1’かの信号と、列デコーダ92Dまたは図示しない制御回路による、メモリセル列60D1,60D2のどちらか、すなわち奇数列アドレスと偶数列アドレスのどちらに書込みをするかの信号と、の2つの信号の組合せにより、ワード線選択トランジスタ71,72,75,76の1つをON状態にする。
このように、2列で各列のメモリセル6D,6Dが選択トランジスタ43,44を共有する磁気メモリ10Dにおいても、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に、1つのメモリセル列60Dについて、1回の電流供給によりそのすべてのメモリセル6Dに書込みをすることができる。
本実施形態に係る磁気メモリ10Dの書込みにおいては、電流I
wの経路が、隣り合うメモリセル列60D
1,60D
2の一部で共有されている以外は、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様である。したがって、BLP−BLN間の抵抗値、すなわちメモリセル列60D
1,60D
2の各抵抗値ΣR
CELLkは、下式(2)で表される。
そして、本実施形態に係る磁気メモリの書込方法においても、メモリセル6Dk毎に選択トランジスタ4の電位に対応したゲート電圧Vgkが設定されることが好ましく、例えば、第1実施形態に係る磁気メモリの書込方法と同様に、行毎に2段階のゲート電圧Vgki,Vgkoを設定することができる(式(1)〜(13)参照)。なお、第3入力選択トランジスタ45は入力選択トランジスタ41,43と、第3出力選択トランジスタ46は出力選択トランジスタ42,44と、それぞれ共通のゲート電圧Vgki,Vgkoを印加される。ただし、ここでは、メモリセル6Dkの出力選択トランジスタ42,44,46とその隣のメモリセル6Dk+1の入力選択トランジスタ41,43,45とに、同じゲート電圧Vgkを印加する(Vgko=Vg(k+1)i=Vgk)。そのために、記憶装置90Dは、磁気メモリ10Dの行(k)毎に変位させたゲート電圧Vgkを出力するゲート電圧生成回路80Dを備え、ゲート電圧Vgkを、磁気メモリ10Dのk行目の出力ワード線WL0o,WL1o,WL2oと(k+1)行目の入力ワード線WL0i,WL1i,WL2iとを経由して出力するように構成される。そして、本実施形態に係る磁気メモリ10Dの書込みにおけるゲート電圧Vgkは、例えば以下のように設定される。
まず、すべてのメモリセル6D
kの出力選択トランジスタ42,44,46について、ゲート−ソース間電圧Vgs(適宜、Vgs
typと称する)を、下式(3)で表される範囲になるように設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONo(適宜、R
ONtypと称する)を算出する。さらに、入力選択トランジスタ41,43,45について、ゲート−ソース間電圧(Vgs
typ+I
w×R
ONi)よりON抵抗R
ONiを算出する。このゲート−ソース間電圧(Vgs
typ+I
w×R
ONi)が最大定格V
(BR)gs未満であればよい。R
ONi<R
ONo(=R
ONtyp)であるから近似して下式(44)が成立するように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定することができる。
ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(4)で表されるように設定される。また、第1実施形態と同様に、メモリセル6D
1(6D
5)の第1入力選択トランジスタ41(45)のドレイン電位Vd
1iである定電流源95の出力電圧V
wを、想定される範囲において最大値V
wMAXになる場合を仮定する。定電流源95の最大出力電圧V
wMAXは下式(45)で表されるので、パルス電源96の出力電圧Vg
Hは、下式(46)で表されるように設定される。
次に、第1実施形態と同様に、定電流源95の出力電圧V
wが最小値V
wMINとなる、メモリセル列60D
1(60D
2)のN個すべてのメモリセル6Dがデータ‘0’である場合を仮定する。定電流源95の最小出力電圧V
wMINは下式(8)で表される。メモリセル6D
k毎の選択トランジスタ4のそれぞれのゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´およびON抵抗R
ONki´,R
ONko´は、シミュレーションによって算出される。
このときのメモリセル6D
1(6D
5)の第1入力選択トランジスタ41(45)のゲート−ソース間電圧Vgs
1i´(=Vgs
MAX)が、下式(47)に表されるように、最大定格V
(BR)gsに到達しなければよい。下式(47)より、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(48)を満足するように設定される。また、下式(48)を満足するゲート−ソース間電圧Vgs
typが存在するためには、磁気メモリ10Dは下式(49)を満足する必要がある。
ゲート電圧生成回路80Dは、パルス電源96の出力電圧Vg
Hがメモリセル6D
1(6D
5)の第1入力選択トランジスタ41(45)のゲート電圧Vgになるので、ツェナーダイオード86を下式(50)で表されるツェナー電圧Vzに設計される。また、磁気メモリ10Dの書込みにおいて、ゲート電圧生成回路80Dは、N個すべての分圧抵抗器82Dを、高低のいずれでもよいが同じ抵抗値にする。
このように、本実施形態に係る磁気メモリの書込方法では、同じメモリセル列60Dの隣り合うメモリセル6D,6Dの出力選択トランジスタ42,44,46と入力選択トランジスタ41,43,45が、共に線形領域で動作するように互いの間の電位差を含めてゲート−ソース間電圧Vgstypを設定する。これにより、行毎のゲート電圧Vgkであっても、すべてのメモリセル6Dの選択トランジスタ4において適正なゲート−ソース間電圧Vgsになる。また、これらの出力選択トランジスタ42,44,46と入力選択トランジスタ41,43,45との電位差は、入力選択トランジスタ41,43,45の1個分のドレイン−ソース間電圧Vds(=Iw×RONi)であって磁気抵抗効果素子1を含まないので、共通のゲート電圧Vgkを設定し易い。
また、磁気メモリ10Dは、1回の電流供給により、その電流の大きさを変えずに、データ‘0’ または‘1’をメモリセル列60D,60Dの2N個すべてのメモリセル6Dに書込みをすることができる。例えば、‘0’を書込みする場合は、行デコーダ91Dが、各行のワード線選択トランジスタ71,76をON状態にする。これにより、メモリセル6D,6Dの組において、第1入力選択トランジスタ41、磁気抵抗効果素子1、磁気抵抗効果素子1、第3出力選択トランジスタ46の順に電流Iwが流れ、メモリセル6D,6Dのそれぞれの磁気抵抗効果素子1,1に電流Iwが端子p1から端子p2へ供給される。ただし、ビット線BLP−BLN間の抵抗値が(N×(RONi+RONo+2RP/AP))に増大し、各メモリセル6Dの選択トランジスタ41,46の電位が上昇するので、これに合わせてパルス電源96の出力電圧VgHを設定する。
(磁気メモリの読出方法)
まず、図22を参照して、メモリセル列60D1のデータの読出しについて説明する。図22および図23に示すメモリセル列60D1のメモリセル6D1,6D2,6D3,6D4は、それぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’が記憶されているので、それぞれの磁気抵抗効果素子1の抵抗値は、RP,RAP,RAP,RPである。行デコーダ91Dが、列デコーダ92Dまたは図示しない制御回路から奇数列アドレス(メモリセル列60D1)を選択する信号を受け、さらに1行目を選択すると、図20に示すメモリセル列60D1の1行目の‘0’の書込みと同様に、1行目のワード線選択トランジスタ71,74をON状態にする。一方、他の2〜4行目においては、ワード線選択トランジスタ71,72,73,74,75,76のすべてをON状態にする。これにより1行目のメモリセル6D1,6D5の組においては選択トランジスタ41,44がON状態、選択トランジスタ42,43,45,46がOFF状態になり、それ以外の3組のメモリセル6D,6Dは6個の選択トランジスタ41,42,43,44,45,46のすべてがON状態になる。この状態で、定電流源94から電流Irを供給すると、電流Irが、メモリセル6D1,6D5の組においてはメモリセル6D1への書込みと同様に、メモリセル6D1の第1入力選択トランジスタ41、磁気抵抗効果素子1、第2出力選択トランジスタ44の順に流れる。一方、2〜4行目の3組のメモリセル6D,6Dにおいては、電流Irが、選択トランジスタ41,42(第1回路)、選択トランジスタ43,44(第2回路)、および選択トランジスタ45,46(第1回路)に三分されてIr/3ずつ流れる。したがって、第1実施形態に係る磁気メモリの読出方法と同様に、選択した1個のメモリセル6D1においてのみ、磁気抵抗効果素子1に電流Irが流れ、データを読出しすることができる。そして、メモリセル6D2,6D3,6D4も同様にデータを読出しする。
次に、図23を参照して、メモリセル列60D2のデータの読出しについて説明する。図22および図23に示すメモリセル列60D2のメモリセル6D5,6D6,6D7,6D8は、それぞれ‘1’、‘1’、‘0’、‘0’が記憶されているので、それぞれの磁気抵抗効果素子1の抵抗値は、RAP,RAP,RP,RPである。行デコーダ91Dが、偶数列アドレス(メモリセル列60D2)を選択する信号を受け、1行目を選択すると、メモリセル6D5のデータを読出しする。図23には、メモリセル6D6のデータの読出しを示す。行デコーダ91Dが2行目を選択すると、1、3、4行目においては、ワード線選択トランジスタ71,72,73,74,75,76のすべてをON状態にし、2行目のワード線選択トランジスタ75,74をON状態にする。これにより2行目のメモリセル6D2,6D6の組においては選択トランジスタ45,44がON状態、選択トランジスタ41,42,43,46がOFF状態になり、それ以外の3組のメモリセル6D,6Dは6個の選択トランジスタ41,42,43,44,45,46のすべてがON状態になる。この状態で、定電流源94から電流Irを供給すると、電流Irが、1、3、4行目の3組のメモリセル6D,6Dにおいては、選択トランジスタ41,42、選択トランジスタ43,44、および選択トランジスタ45,46に三分されて流れ、メモリセル6D2,6D6の組においては、メモリセル6D6の第3入力選択トランジスタ45、磁気抵抗効果素子1、第2出力選択トランジスタ44の順に流れる。したがって、メモリセル列60D1の読出しと同様に、選択した1個のメモリセル6D6においてのみ、磁気抵抗効果素子1に電流Irが流れ、データを読出しすることができる。なお、磁気メモリ10Dのデータの読出しは、メモリセル列60D1のすべてのメモリセル6D、メモリセル列60D2のすべてのメモリセル6D、の順でなくともよく、例えば、メモリセル6D1,6D5,6D2,6D6,・・・の順のように、同じ組のメモリセル6D,6Dを連続して読出ししてもよい。
このように、磁気メモリ10Dは、2列(メモリセル列60D,60D)毎に一部で電流の経路を共有しているので、その読出しは、この2列の選択した行の2つのメモリセル6D,6Dの組においては、書込みと同じ経路で、それ以外の非選択のメモリセル6Dにおいては、組毎に第1回路および共有の第2回路の計3経路に三分されて、電流I
rがメモリセル列60D,60Dに流れる。したがって、それぞれのON抵抗を定数として、非選択のメモリセル6D
kの入力選択トランジスタ41,43,45がR
ONi、出力選択トランジスタ42,44,46がR
Onoと表され、選択したメモリセル6D
jの選択トランジスタ41(45),44がR
ONji,R
ONjoと表されると、BLP−BLN間の抵抗値ΣR
CELLkは下式(51)に表される。「R
P/AP」は、選択したメモリセル6D
jに記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。すなわち、磁気メモリ10Dは、第1実施形態に係る磁気メモリ10と比較して、メモリセル列60Dのメモリセル6Dの数Nに対して抵抗値ΣR
CELLkが低く、読出しの精度がより高い。なお、選択したメモリセル6Dの磁気抵抗効果素子1に、データ‘1’の書込みと同様に逆向きに電流I
rを供給してもよい。
ゲート電圧生成回路80Dは、磁気メモリ10Dの読出しで、出力するゲート電圧Vg
kをメモリセル列60Dにおけるメモリセル6D毎の電位の降下量に合わせるために、分圧抵抗器82Dの2段階の抵抗値R
div2H,R
div2Lの比がR
div2H:R
div2L≒R
CELL:R
CELLnsに設計されることが好ましい。具体的には下式(52)を満足するように設計されることが好ましく、ここでは、R
div2H/R
div2L=3+R
AP/(R
ONtyp+R
ONi)とする。そして、ゲート電圧生成回路80Dは、非選択の行において分圧抵抗器82Dを低抵抗R
div2Lにするように、抵抗切替回路84を備える。抵抗切替回路84は、行デコーダ91Dから、ワード線選択トランジスタ73,74のそれぞれと共通の信号を2本共入力されたときに、分圧抵抗器82Dを低抵抗R
div2Lに切り替える信号を出力し、図20〜23では2AND論理回路で表される。分圧抵抗器82Dは、第2実施形態の分圧抵抗器82Cと同様の構成とすることができる。
そして、書込みと同様に、ゲート電圧Vg
kが設定される。ここでは、流れる電流の大きい、選択したメモリセル6D
jを基準にして、書込みにおける式(44)の「I
w」を「I
r」に置き換えて、すべてのメモリセル6Dの出力選択トランジスタ42,44,46のゲート−ソース間電圧Vgs(適宜、Vgs
typと称する)を、下式(53)で表される範囲になるように設定する。そして、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONo(適宜、R
ONtypと称する)を算出する。さらに、入力選択トランジスタ41,43,45について、選択したメモリセル6D
jにおけるゲート−ソース間電圧(Vgs
typ+I
r×R
ONji)よりON抵抗R
ONjiを算出する。また、非選択のメモリセル6D
kにおけるゲート−ソース間電圧(Vgs
typ+I
r×R
ONi/3)よりON抵抗R
ONiを算出する。
ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(4)で表されるように設定される。また、選択したメモリセル6D
jのデータが‘1’と仮定して、このときの定電流源94の最大出力電圧V
rMAXは下式(54)で表されるので、定電源97の出力電圧Vg
Hは、下式(55)で表されるように設定される。
そして、第1実施形態と同様に、定電流源94の出力電圧V
rが下式(56)で表される最小値V
rMINとなる、電位の最も低いメモリセル6D
Nを選択してそのデータが‘0’であった場合において、最大定格V
(BR)gsに到達しないように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typが下式(57)を満足するように設定される。このときのメモリセル6D
k毎の選択トランジスタ4のそれぞれのゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´およびON抵抗R
ONki´,R
ONko´は、シミュレーションによって算出される。
ゲート電圧生成回路80Dのツェナーダイオード86は、ツェナー電圧Vzが下式(58)を満足すればよく、書込み時と同じツェナーダイオード86(式(50)参照)を適用してもよい。
このように、本実施形態に係る磁気メモリの読出方法では、行毎のゲート電圧Vgkを出力するため、選択、非選択のメモリセル6Dj,6Dkの各抵抗値RCELL:RCELLnsの比に合わせて降下させたゲート電圧Vgkを、ゲート電圧生成回路80Dの簡易な構造の分圧器で出力することができる。
磁気メモリ10Dの読出しにおいては、非選択のメモリセル6D,6Dの組において、電流を選択トランジスタ41,42、選択トランジスタ43,44、および選択トランジスタ45,46のいずれか2つに二分して流してもよく、さらには1つのみに流してもよい。この場合も、選択、非選択のメモリセル6Dj,6Dkの各抵抗値RCELL,RCELLnsの比に合わせて、ゲート電圧生成回路80Dの分圧抵抗器82Dを設計する。また、磁気メモリ10Dの書込みおよび読出しにおいて、第1実施形態にて説明したように、ゲート電圧生成回路80Dの分圧器によらずに、各行のゲート電圧Vgki,Vgkoを個別にシミュレーションで算出して出力してもよい。
(空間光変調器、変形例)
磁気メモリ10Dは、第1実施形態およびその変形例と同様に、上面に接続した配線51の抵抗接続層51bを透明電極材料で形成し、あるいはさらに磁気抵抗効果素子1に光変調素子1A,1B(図8、図14参照)を適用して、空間光変調器とすることができる。また、磁気メモリ10Dは、メモリセル6D,6Dの組のそれぞれの一方(例えば偶数列アドレス)において、磁気抵抗効果素子1が向きを入れ替えて接続されていてもよく、すなわち磁気抵抗効果素子1,1の磁化自由層3同士または磁化固定層11同士が接続される(図24参照)。
本実施形態に係る磁気メモリ10Dは、隣り合う2列(メモリセル列60D,60D)で、2つのメモリセル6D,6Dの組を行方向に揃えて配列しているが、列方向に選択トランジスタ4の1個分ずらして配列してもよい(図31に示す後記第4実施形態の変形例参照)。このような磁気メモリの構造は、一例として、図19に示す基板40Bの表層に形成された選択トランジスタ45,46(ゲート4g5,4g6、n+拡散層4d5,4d6)が、X方向にn+拡散層およびゲートの1つ分ずらしたものとなる。そして、配線54を備えず、選択トランジスタ44のドレイン4d4に接続する配線52がさらに選択トランジスタ45のドレイン4d5に接続し、選択トランジスタ43のドレイン4d3に接続する配線53がさらに選択トランジスタ41のドレイン4d1に接続する(図示せず)。したがって、磁気メモリの面積は同じである。また、本実施形態に係る磁気メモリ10Dは、2列を一組としているが、3列以上を一組とした構成としてもよく、一組あたりの列の数が多いほど面積を縮小することができる。ただし、行あたりのワード線WLの本数が増大する。
〔第3実施形態の変形例〕
本実施形態に係る磁気メモリは、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10A(図9参照)と同様に、メモリセルの磁気抵抗効果素子1にダイオード49を経由して読出ビット線RBLを接続した構成としてもよい。この場合、行方向に隣り合って第1回路または第2回路を共有する2つのメモリセルの磁気抵抗効果素子1,1に1個のダイオード49を接続すればよい。以下、本発明の第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)について、図24を参照して説明する。第1、第2実施形態およびその変形例、ならびに第3実施形態(図1〜23参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)10Eは、図24に示すように、記憶装置90Eに搭載され、メモリセル6Eを2次元配列して備える。磁気メモリ10Eは、第3実施形態に係る磁気メモリ10D(図18参照)に、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10A(図9参照)と同様に、行毎の読出ビット線RBLを追加し、ダイオード49を選択トランジスタ43,44を共有するメモリセル6D,6Dの組毎に1個追加した構成である。メモリセル6E,6Eの組において、ダイオード49は、磁気抵抗効果素子(不揮発性記憶素子)1,1のそれぞれの端子の一方に接続するように、選択トランジスタ43−44間に接続される。したがって、磁気抵抗効果素子1、ダイオード49、および選択トランジスタ41,42,43,44からなるメモリセル6Eと、磁気抵抗効果素子1、ダイオード49、および選択トランジスタ43,44,45,46からなるメモリセル6Eと、が選択トランジスタ43,44およびダイオード49を共有する。さらに磁気メモリ10Eは、磁気メモリ10Dに対して、偶数列アドレス(ビット線BLP,BLNを共有する2列の図における下側)のメモリセル6Eの磁気抵抗効果素子1が向きを入れ替えて接続されている。したがって、磁気メモリ10Eの選択トランジスタ43,44,45,46を備えるメモリセル6Eは、選択トランジスタ43,44が第2回路、選択トランジスタ45,46が第1回路を構成する。また、メモリセル6Eのそれぞれは、磁気メモリ10Aのメモリセル6Aと同一の等価回路であり、ただし、ダイオード49が磁気抵抗効果素子1の端子p2に接続する。そして、磁気抵抗効果素子1、選択トランジスタ41,42,43,44,45,46、およびダイオード49の各構成は第1実施形態およびその変形例にて説明した通りである。また、メモリセル6Eは、ダイオード49に代えてトランジスタ(読出選択トランジスタ)を備えてもよい。なお、図24において、選択トランジスタ45−46間に磁気抵抗効果素子1が端子p1を接続していることを示すために、この磁気抵抗効果素子1を180°回転させて表す。
本変形例に係る磁気メモリ10Eの構造は、一例として、図19に示す第3実施形態に係る磁気メモリ10Dの基板40B上に、ダイオード49、磁気抵抗効果素子1、配線51,52,53,54、ワード線WL、および読出ビット線RBLを形成してなる。磁気メモリ10Eにおいては、配線51,53が、基板40Bの表層に形成された選択トランジスタ42,46のドレイン4d2,4d6のそれぞれに接続部51c,53cで接続し、それぞれの抵抗接続層51a,53a上に、磁気抵抗効果素子1,1が、磁化自由層3を下にして設けられる。そして、配線52が、磁気抵抗効果素子1,1の両方の上面に抵抗接続層52bで接続し、層間部52dおよび中継層52aを経由して接続部52cで選択トランジスタ44のドレイン4d4に接続する。さらに、配線52の抵抗接続層52b上に、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Aと同様に、ダイオード49および読出ビット線RBLが形成される。
(記憶装置)
磁気メモリ10Eを搭載する記憶装置90Eは、さらに磁気メモリ10Eの駆動回路として、図24に示すように、磁気メモリ10Eの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72,73,74,75,76、ならびに読出ビット線選択トランジスタ79および電圧比較器93と、磁気メモリ10Eの2列毎に設けられたビット線選択トランジスタ77,78と、書込/読出電流回路9Aと、行デコーダ91Eと、列デコーダ92Eと、ゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80Aと、を備える。このように、記憶装置90Eは、記憶装置90D(図18参照)に対して、磁気メモリ10Aを搭載する記憶装置90A(図9参照)と同様に、磁気メモリ10Eの行毎に設けられた読出ビット線RBLを選択的に定電流源94に接続する読出ビット線選択トランジスタ79を備え、さらに、電圧比較器93をビット線BLPに代えて読出ビット線RBLに接続して行毎に備える。また、ビット線BLPには、書込/読出電流回路9Aの定電流源95のみが選択的に接続する。行デコーダ91Eは、行毎に、ワード線選択トランジスタ71,72,75,76を選択するワード線選択回路89(図20〜23参照)を内蔵する。ゲート電圧生成回路80Aの構成は、第1実施形態の変形例にて説明した通りである(図10、図11参照)。あるいは、ゲート電圧生成回路80Aの分圧抵抗器81を削除して、ゲート電圧生成回路80Dの分圧抵抗器82Dを固定抵抗器82に置き換えた構成としてもよい。
(磁気メモリの書込方法)
本変形例に係る磁気メモリ10Eは、第3実施形態に係る書込方法(図20、図21参照)により書込みをすることができる。このとき、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Aの書込みと同様に、行デコーダ91Eが、すべての読出ビット線選択トランジスタ79をOFF状態にして、読出ビット線RBLをopen(開放)状態にする。あるいは、読出ビット線RBLをGND(定電流源95の負の電位)等の電位の低い側に接地して、すべてのメモリセル6Eのダイオード49に電流が流れないようにしてもよい。
(磁気メモリの読出方法)
本変形例に係る磁気メモリ10Eは、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリの読出方法(図10、図11参照)により読出しをすることができる。本変形例においては、行デコーダ91Eが、選択した行において、奇数列アドレスを選択しているときはワード線選択トランジスタ72を、偶数列アドレスを選択しているときはワード線選択トランジスタ46を、それぞれ読出ビット線選択トランジスタ79と共に選択してON状態にする。
以上のように、本発明の第3実施形態およびその変形例に係る磁気メモリまたは空間光変調器によれば、第1実施形態と同様に、一列に配列されたメモリセルのすべてに同時に、かつそれぞれに所望のデータを書込みをすることができる。
〔第4実施形態〕
磁気メモリにおいては、読出しの精度を高くするためには、メモリセルの磁気抵抗効果素子として高抵抗かつMR比の高いTMR素子が好適である。一方で、本発明の第1〜第3実施形態に係る磁気メモリにおいては、高抵抗の磁気抵抗効果素子を適用すると、書込みにおいて負荷が大きく、さらにMR比が高いと、選択トランジスタの電位の変動が大きく、一定のゲート電圧で好適に動作させることが困難になる。そこで、TMR素子と低抵抗の磁壁移動素子との両方を備える磁気抵抗効果素子を適用することで、書込み時の負荷を低減しつつ精度よく読出しをすることのできる磁気メモリが得られる。以下、本発明の第4実施形態に係る磁気メモリについて、図25〜30を参照して説明する。第1、第2、第3実施形態(図1〜24参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第4実施形態に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)10Fは、第1実施形態(図1参照)と同様に磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)であり、図25に示すように、記憶装置90Fに搭載され、メモリセル6Fを2次元配列して備える。記憶装置90Fの構成の詳細は後記にて説明する。
図25に示すように、磁気メモリ10Fは、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10A(図9参照)と同様に、メモリセル6Fが1個の磁気抵抗効果素子1C、4個の選択トランジスタ41,42,43,44、および1個のダイオード49からなり、行毎に、メモリセル6Fのダイオード49に接続する読出ビット線RBLを備える。そして、磁気メモリ10Fは、第1実施形態等と同様に、列方向に隣り合うメモリセル6F同士で直列に接続し、この列方向に配列されたメモリセル6F(メモリセル列60F)の両端にビット線BLP,BLNが接続されている。また、磁気メモリ10Fは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10B(図12参照)と同様に、メモリセル6Fの第1入力選択トランジスタ41と第2出力選択トランジスタ44の各ゲートが共にワード線WL0に、第2入力選択トランジスタ43と第1出力選択トランジスタ42の各ゲートが共にワード線WL1に、それぞれ接続する。したがって、磁気メモリ10Fは、行毎に2本のワード線WL0,WL1を備える。
ここで、図25に示すように、磁気抵抗効果素子1Cは、3本に枝分かれするように接続された抵抗器MRw1,MRw2,MRrからなり、それぞれの末端に端子p1,p2,p3(図26、図27参照)を有し、これら3つの端子のうち、直列に接続した抵抗器MRw1と抵抗器MRw2(以下、合わせて抵抗器MRw)の両端の端子p1,p2(図26参照)で第1回路(選択トランジスタ41−42間)と第2回路(選択トランジスタ43−44間)に接続される。すなわち、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwの部分が、第1実施形態の変形例におけるメモリセル6A,6Bの磁気抵抗効果素子1に相当する。一方、メモリセル6Fにおいて、磁気抵抗効果素子1Cは、抵抗器MRrの側の端子p3に直列にダイオード49を接続されている。以下に、メモリセル6Fに設けられる磁気抵抗効果素子1Cの構造について説明する。
(磁気抵抗効果素子)
図26に示すように、磁気抵抗効果素子1Cは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器の光変調素子1B(図14参照)に、磁化固定層13および障壁層23を追加し、これらに光変調素子1Bの磁性細線3Aが積層された3層構造を有する。詳しくは、磁化固定層11,12間に磁性細線3Aの細線方向に離間して磁化固定層13を設け、その上に障壁層23を挟んで、磁性細線3Aにおける磁化反転領域3SW(下側に磁化固定層11,12が設けられていない細線方向中央部、図14参照)が積層される。磁気抵抗効果素子1Cは、磁化反転領域3SWを磁化自由層として、磁化固定層13および障壁層23を積層したTMR素子構造を備えるものであり、このTMR素子構造部分が図25の抵抗器MRrに該当する。すなわち、抵抗器MRrは可変抵抗器である(以下、可変抵抗器MRr)。一方、磁性細線3Aおよび磁化固定層11,12からなる部分が抵抗器MRwに該当し、さらに、磁化固定層11と磁性細線3Aの部分が抵抗器MRw1に、磁化固定層12と磁性細線3Aの部分が抵抗器MRw2に、それぞれ該当するものとする。
磁気抵抗効果素子1Cにおいて、抵抗器MRw、すなわち光変調素子1Bと共通する部分は、磁気メモリ10Fの書込み時に電流Iwを供給されて磁化反転領域3SWを磁化反転させる。すなわち磁気抵抗効果素子1Cは、磁気抵抗効果素子1や光変調素子1A,1Bと同様に、磁化固定層11,12に一対の端子p1,p2を有して、この端子p1,p2から向きを変えて電流を供給されることにより一部の磁化方向が反転する(図14参照)。したがって、磁気抵抗効果素子1Cは、光変調素子1Bと同様、磁化反転領域3SWが磁化反転しても、端子p1−p2間の抵抗値(抵抗器MRwの抵抗値RMRw)が実質的に変化しない。一方で、磁気抵抗効果素子1Cは、磁化反転領域3SWを磁化自由層として、TMR素子である可変抵抗器MRrを備えるので、可変抵抗器MRrに接続した端子p3と端子p1,p2の少なくとも一方との間の抵抗値、すなわち可変抵抗器MRrと抵抗器MRw1,MRw2の抵抗値の和は、磁化反転領域3SWの磁化反転により変化する。このように、磁気抵抗効果素子1Cは、低抵抗でかつ比較的低い電流密度で磁化反転させ易い磁壁移動素子により書込みをし、MR比が高く小さな電流でも高精度で抵抗値を検知し易いTMR素子により読出しをすることができる。
磁化固定層11,12および磁性細線3Aは、光変調素子1Bにおける磁化固定層11,12、磁性細線3Aと同様の構成とすることができる。一方、磁化固定層13および障壁層23は、それぞれTMR素子の磁化固定層および障壁層として公知の構造とすることができる。ただし、磁気抵抗効果素子1Cにおいて、可変抵抗器MRrはスピン注入磁化反転させる必要がないので、端子p1,p2−p3間で定電流Irを供給して抵抗値の変化(磁化方向が平行:RP、磁化方向が反平行:RAP)を検知することのできる構成であればよい。なお、定電流Irは、磁性細線3Aにおいて磁壁が移動しない程度の電流密度とする。特に、障壁層23は、TMR素子の障壁層として特に高いMR比が得られるMgOが好ましい。また、障壁層23および磁化固定層13は、定電流Irに対応した構造であればよいが、例えば書込み時に誤って電流Iwが流れても破壊されない程度の抵抗であることがより好ましい。また、磁化固定層13が磁化固定層11,12と短絡せず、障壁層23が磁化固定層13と磁性細線3Aの間に積層されていれば、平面視形状は特に限定されない。また、磁化固定層13は、磁化方向を所定の一方向に固定され、図26においては磁化固定層12と同じ上向きを示す。
あるいは、図27に示すように、障壁層23および磁化固定層13が、磁性細線3Aの上側に積層されてもよい。このような構造の磁気抵抗効果素子1C´は、磁化固定層13が、磁性細線3A上において磁化反転領域3SW内に限定して設けられていればよく、また、端子p3が端子p1,p2と反対側の上側に設けられるので、メモリセル6Fの平面視サイズを小さく形成し易い。
選択トランジスタ41,42,43,44(適宜まとめて、選択トランジスタ4と称する)、およびダイオード49の各構成は、第1実施形態およびその変形例にて説明した通りである。特に、選択トランジスタ4は、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10Bと同様に、磁気メモリ10Fの書込みにおいては磁気抵抗効果素子1Cの磁化反転による電位の変動がないので、しきい値電圧Vthに対して最大定格(破壊電圧)V(BR)gsをそれほど大きく設計されなくてよい。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fの構造は、一例として、図13に示す第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10Bについて、光変調素子1Bを磁気抵抗効果素子1Cに置き換え、ダイオード49および読出ビット線RBLが追加されたものである。ダイオード49は、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Aと同様、選択トランジスタ4と共に基板40Aの表層に形成される。そして、ダイオード49のカソードに磁気抵抗効果素子1Cの磁化固定層13に接続する電極(端子p3)が、アノードに読出ビット線RBLが接続される。あるいは、磁気メモリ10Fは、磁気抵抗効果素子1C´を備える場合は、磁気抵抗効果素子1C´における上側の磁化固定層13の上面に接続する電極(端子p3)を形成され、その上に低温poly−Si膜等でダイオード49が形成され、さらにその上に読出ビット線RBLを形成される。
(磁気メモリの製造方法および初期設定)
このような構造の磁気メモリ10Fは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10Bと同様の製造方法で製造することができ、さらにダイオード49および読出ビット線RBLを、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Aと同様に形成すればよい。また、磁気メモリ10Fは、初期設定にて、第1実施形態およびその変形例に係る空間光変調器10´,10Bと同様、2段階の磁界印加により、すべてのメモリセル6Fの磁気抵抗効果素子1C(1C´)の磁化固定層11,12,13の磁化方向をそれぞれ所定の向きに揃える。
(記憶装置)
磁気メモリ10Fを搭載する記憶装置90Fは、さらに磁気メモリ10Fの駆動回路として、図25に示すように、磁気メモリ10Fの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72、読出ビット線選択トランジスタ79、および電圧比較器93と、磁気メモリ10Fの列毎に設けられたビット線選択トランジスタ77,78と、書込/読出電流回路9Aと、行デコーダ91Fと、列デコーダ92Aと、ゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80Bと、を備える。記憶装置90Fは、磁気メモリ10Fが行毎に2本のワード線WL0,WL1を備えるので、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Aを搭載する記憶装置90A(図9参照)から、ワード線選択トランジスタ73,74を削除した構成となり、さらに、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10Bと同じゲート電圧生成回路80Bを備える。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第4実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図28〜30を参照して説明する。図28〜30では、簡潔に説明するために、磁気メモリ10Fにおける1列のメモリセル6F(1つのメモリセル列60F)を示し、さらにこのメモリセル列60Fに4つのメモリセル6Fが配列されているとし、適宜、図中左からメモリセル6F1,6F2,6F3,6F4と称する。この図28〜30に示すメモリセル列60Fが、第1実施形態と同様に、列デコーダ92A(図25参照)により選択される。ここでは、メモリセル6F1,6F2,6F3,6F4にそれぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータを書込みし、また、これらのデータを読出しするものとして説明する。
(磁気メモリの書込方法)
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10B(図12参照)への書込みと同様に書込みをすることができる。すなわち、列デコーダ92Aが、図28に示すように、選択したメモリセル列60Fのビット線BLP,BLNをビット線選択トランジスタ77,78で、書込/読出電流回路9Aに内蔵された定電流源95の正と負(GND)の出力に接続する。また、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Aへの書込みと同様に、行デコーダ91Fが、すべての読出ビット線選択トランジスタ79をOFF状態にして、読出ビット線RBLをopen(開放)状態にする。
行デコーダ91Fが、1、4行目において、ワード線WL0に接続するワード線選択トランジスタ71をON状態にし、2、3行目において、ワード線WL1に接続するワード線選択トランジスタ72をON状態にする。これにより、メモリセル6F1,6F4は選択トランジスタ41,44がON状態、メモリセル6F2,6F3は選択トランジスタ42,43がON状態である。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Fに電流Iwを供給すると、電流Iwが、メモリセル6F1,6F4において、ON状態の選択トランジスタ41,44に流れ、その際、選択トランジスタ41,44間に接続された磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1,MRw2(抵抗器MRw)を経由する。これにより、電流Iwが、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwに、端子p1から端子p2へ流れて供給され、磁性細線3Aの磁化反転領域3SWにおける磁化方向が磁化固定層13と平行な上向きになる(図14(d)、図26(a)参照)。その結果、メモリセル6F1,6F4にデータ‘0’が書込みされる。
一方、メモリセル6F2,6F3においては、電流Iwが、ON状態の選択トランジスタ43,42に流れ、その際、選択トランジスタ43,42間に接続された磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw2,MRw1(抵抗器MRw)を経由する。これにより、電流Iwが、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwに、端子p2から端子p1へ流れて供給され、磁性細線3Aの磁化反転領域3SWにおける磁化方向が磁化固定層13と反平行な下向きになる(図14(c)、図26(b)参照)。その結果、メモリセル6F2,6F3にデータ‘1’が書込みされる。すなわち、磁気メモリ10Fは、メモリセル6に磁気抵抗効果素子1を備えた第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に、メモリセル列60Fへの電流Iwの1回の供給により、配列されたすべてのメモリセル6Fのそれぞれに所望のデータを書込みすることができる。
磁気メモリ10Fにおいて、書込み時には、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrには電流が流れない。これは、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrが、ダイオード49に接続されているために、同じ行の他の列(メモリセル列60F)のメモリセル6Fとはダイオード49のアノード同士で読出ビット線RBLに接続していることによる。さらに、すべての読出ビット線RBLをGND(定電流源95の負の電位)等の電位の低い側に接地して、すべてのメモリセル6Fのダイオード49に電流が流れないようにしてもよい。この場合は、特にメモリセル列60Fにおける電位の高いメモリセル6F1で、ダイオード49のカソード電位が降伏電圧に到達することのないようにする。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、書込みにおける電流Iwの経路が、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10Bの光変調素子1Bを磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwに置き換えられたものである。また、磁気メモリ10Fは、空間光変調器10Bと同様に、各メモリセル6F毎に、第1入力選択トランジスタ41と第2出力選択トランジスタ44、または第2入力選択トランジスタ43と第1出力選択トランジスタ42で、同一のゲート電圧Vgkが印加される。したがって、磁気メモリ10Fは、第1実施形態の変形例と同じゲート電圧生成回路80Aから行毎に降下させたゲート電圧Vgkを出力され、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0も同様に設定される(式(4)、(27)〜(29)参照)。なお、式中の「RMRw」は、本実施形態においては磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwの抵抗値を表す。
(磁気メモリの読出方法)
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリの読出方法(図10、図11参照)により読出しをすることができる。すなわち、列デコーダ92Aが、図29および図30に示すように、ビット線BLPはopen状態(メモリセル列選択トランジスタ77:OFF)で、選択したメモリセル列60Fのビット線BLNをビット線選択トランジスタ78で、定電流源94の負(GND)の出力に接続する。
図29において、行デコーダ91Fが1行目を選択すると、この選択された行においては読出ビット線選択トランジスタ79をON状態にし、さらにすべての行において、ワード線選択トランジスタ71,72を共にON状態にする。この状態で、磁性細線3Aにおいて磁壁が移動しない大きさの定電流Irを定電流源94から供給すると、電流Irが、メモリセル6F1において、定電流源94に接続した1行目の読出ビット線RBLから、ダイオード49を経由して磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrに流れ、さらに定電流源94の負の側へ、すなわち右隣のメモリセル6F2へ流れるために、抵抗器MRw1,MRw2へに分岐し、さらにそれぞれが出力選択トランジスタ42,44を経由して合流する。そして、メモリセル6F2、さらにメモリセル6F3,6F4においては、第1実施形態およびその変形例と同様に、第1回路(選択トランジスタ41,42)と第2回路(選択トランジスタ43,44)に二分されてIr/2ずつ流れる。
また、図30において、行デコーダ91Fが2行目を選択すると、選択された行においては、前記(図29参照)と同様に、読出ビット線選択トランジスタ79をON状態にする。さらにこの選択された2行目、およびこの行よりも定電流源94の負の側に接続された3,4行目においては、ワード線選択トランジスタ71,72をON状態にするが、反対側の1行目においては、ワード線選択トランジスタ71,72をOFF状態にする。この状態で、定電流源94から電流Irを供給すると、電流Irが、メモリセル6F2において、定電流源94に接続した2行目の読出ビット線RBLから、ダイオード49を経由して磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrに流れ、抵抗器MRw1,MRw2へに分岐し、さらにそれぞれが出力選択トランジスタ42,44を経由して合流して、メモリセル6F3へ流れる。そして、メモリセル6F3、さらにメモリセル6F4においては、前記と同様に、電流Irが第1回路と第2回路に二分されて流れる。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Fの読出しにおいて、行デコーダ91Fは、選択された行の読出ビット線選択トランジスタ79、ならびに選択された行およびこの行に対して定電流源94の負の側に接続された非選択の行のワード線選択トランジスタ71,72をON状態にし、それ以外の非選択の行のワード線選択トランジスタ71,72を共にOFF状態にする。そして、電流Irは、メモリセル列60Fにおいて、選択したメモリセル6Fから、その定電流源94の負の出力を接続される側に配列された非選択のメモリセル6Fに流れ、定電流源94を接続されていない側(open状態にした側)に配列された非選択のメモリセル6Fには流れない。さらに、読出しにおいて選択したメモリセル6Fのみに、その磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrに電流Irが流れる。
したがって、定電流源94の正負の出力間、すなわちビット線BLNと選択したj行目(1≦j≦N)の読出ビット線RBLとの間(RBL−BLN間)の抵抗値R
readjは、入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44のON抵抗R
Oni,R
Onoを定数として、下式(59)で表される。「R
P/AP」は、選択したメモリセル6F
jに記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。また、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MR
wの抵抗値を「R
MRw」と表し、抵抗器MR
w1,MR
w2はそれぞれ抵抗値が(0.5R
MRw)とする。ダイオード49の抵抗値を「R
DI」と表す。下式(59)に表されるように、RBL−BLN間の抵抗値R
readjは、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Aの読出しと同様に、選択したj行目のメモリセル6F
jの抵抗値R
CELLrslに(N−j)個の非選択のメモリセル6F
k(j+1≦k≦N)の抵抗値R
CELLnsが加算されるので、選択したメモリセル6F
jに記憶されたデータだけでなく、その行アドレス(j)によっても変化する。そのため、記憶装置90Fは、k行目の読出ビット線RBLに接続された電圧比較器93の参照電位Vref
kを、下式(22)に表されるように左から1行毎に(I
r×R
CELLns)降下させた値に設定する。あるいは、記憶装置90Fは、1つの電圧比較器93を定電流源94の正の出力に接続して備え、定電流源94と共に選択した行の読出ビット線RBLとの接続に切り替えながら、選択した行(j)に対応した参照電位Vref
jに変位させてもよい。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fの読出しにおいては、書込みや第1実施形態に係る磁気メモリ10の読出しと同様に、ゲート電圧Vgが設定されてゲート電圧生成回路80Bから出力される。具体的には、電流の流れるメモリセル6Fの出力選択トランジスタ42,44について、その電位を基準にゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定し、ON抵抗R
ONo(=R
ONtyp)を算出する。さらに、入力選択トランジスタ41,43について、ゲート−ソース間電圧(Vgs
typ−I
r/2×R
ONtyp)におけるON抵抗R
ONiを算出し、下式(16)が成立するように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。そして、このゲート−ソース間電圧Vgs
typに基づき、ゲート基電圧電源98および定電源97の出力電圧Vg
0,Vg
Hを下式(4)、下式(26)で表されるように設定する。
(空間光変調器)
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、メモリセル6Fに磁気抵抗効果素子1Cを備え、ダイオード49および読出ビット線RBLを磁気抵抗効果素子1Cの下方に設けて、第1実施形態に係る空間光変調器10´と同様に、空間光変調器とすることができ、さらに画素の書込みエラーの検出をすることができる。
(変形例)
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第1実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Aの磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1C(1C´)に置き換え、ダイオード49のカソードを磁気抵抗効果素子1Cの端子p3に接続した構成である。したがって、前記変形例にて説明したように、メモリセル6Fがダイオード49に代えてトランジスタ(読出選択トランジスタ)を備えてもよい。また、第2実施形態に係る磁気メモリ10C(図15参照)の磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwに置き換えた構成として、列方向に隣り合う2つのメモリセル6F,6Fの一方の選択トランジスタ43,44を他方の選択トランジスタ41,42と共有させて、列方向に縮小することもできる(図示せず)。このような構成の磁気メモリは、第2実施形態に係る磁気メモリの書込方法(図16参照)にて書込みをすることができる。また、第3実施形態に係る磁気メモリ10D(図18参照)の磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwに置き換えた構成として、行方向に縮小することもできる。ただし、第1回路または第2回路を共有する2つのメモリセルのそれぞれで異なる読出ビット線RBLに接続され、すなわち行毎に2本の読出ビット線RBLが設けられる。以下、本発明の第4実施形態の変形例に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)について、図31を参照して説明する。第1〜第3実施形態およびその変形例、ならびに第4実施形態(図1〜30参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第4実施形態の変形例に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)10Gは、図31に示すように、記憶装置90Gに搭載され、メモリセル6Gを2次元配列して備える。磁気メモリ10Gは、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10E(図24参照)について、磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子(不揮発性記憶素子)1Cの抵抗器MRwに置き換え、さらに、回路の一部(選択トランジスタ43,44)およびビット線BLP,BLNを共有する2列を、互いに列方向(図31における横方向)に選択トランジスタ43,44の1個分ずらした構成である。さらに磁気メモリ10Gは、メモリセル6Gのそれぞれがダイオード49を磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrに接続して備え、行毎に2本の読出ビット線RBLが設けられて、それぞれが一組のメモリセル6G,6Gの各ダイオード49に接続する構成である。すなわち、メモリセル6Gのそれぞれは、第4実施形態に係る磁気メモリ10F(図25参照)のメモリセル6Fと同一の等価回路であり、磁気抵抗効果素子1C、選択トランジスタ41,42,43,44,45,46、およびダイオード49の各構成は第1実施形態およびその変形例、ならびに第4実施形態にて説明した通りである。選択トランジスタ43,44を共有する2つのメモリセル6G,6G(1つの「組」と称する)は、それぞれ磁気抵抗効果素子1Cおよびダイオード49を備え、さらに一方は選択トランジスタ41,42,43,44を、他方は選択トランジスタ44,43,45,46を備える。本変形例では、後者のメモリセル6Gにおいて、第2入力選択トランジスタ44および第2出力選択トランジスタ43に入れ替わる。また、メモリセル6Gは、ダイオード49に代えてトランジスタ(読出選択トランジスタ)を備えてもよい。
(記憶装置)
磁気メモリ10Gを搭載する記憶装置90Gは、さらに磁気メモリ10Gの駆動回路として、磁気メモリ10Gの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72,73,74,75,76、2個ずつの読出ビット線選択トランジスタ79および電圧比較器93と、磁気メモリ10Gの2列毎に設けられたビット線選択トランジスタ77,78と、書込/読出電流回路9Aと、行デコーダ91Gと、列デコーダ92Gと、ゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80Aと、を備える。このように、記憶装置90Gは、磁気メモリ10Gの行毎に2本設けられた読出ビット線RBLを選択的に定電流源94に接続する読出ビット線選択トランジスタ79を備え、さらに、電圧比較器93を読出ビット線RBLに接続して行毎に2個備える。行デコーダ91Gは、第3実施形態の行デコーダ91Dと同様に、ワード線選択トランジスタ75,76を選択するワード線選択回路89(図20〜23参照)を行毎に内蔵して備え、また、読出しにおいては選択した行の読出ビット線選択トランジスタ79の1個をON状態にする。列デコーダ92Gは、第3実施形態の列デコーダ92Dと同様に磁気メモリ10Gの2列の組を1以上選択し、書込みにおいては選択した組のビット線選択トランジスタ77,78を共にON状態にし、読出しにおいては選択した組のビット線選択トランジスタ78をON状態にする。ゲート電圧生成回路80Aは、第1実施形態の変形例(図10、図11参照)にて説明した構成であり、ただし、分圧抵抗器81,82は同じ抵抗値とすることができる。本変形例に係る磁気メモリ10Gは、各行において、選択トランジスタ41,43,46の3個、選択トランジスタ42,44,45の3個でそれぞれ共通のゲート電圧Vgを印加されるように、ワード線選択トランジスタ71,73,76、ワード線選択トランジスタ72,74,75でそれぞれゲート電圧生成回路80Aの分圧回路の同じ部位に接続される。
以上のように、本発明の第4実施形態およびその変形例に係る磁気メモリまたは空間光変調器によれば、第1実施形態と同様に、一列に配列されたメモリセルのすべてに同時に、かつそれぞれに所望のデータを書込みをすることができ、さらに、書込みにおける負荷を抑制しつつ、読出しの精度を向上させることができる。
〔第5実施形態〕
本発明の第4実施形態に係る磁気メモリは、メモリセルに可変抵抗器(TMR素子)を備えた3端子型の磁気抵抗効果素子を備え、この可変抵抗器に読出ビット線を接続しているので、非選択の列への電流の回り込みを防止するために、磁気抵抗効果素子の可変抵抗器にダイオードまたはトランジスタを接続する必要がある。そこで、3端子型の磁気抵抗効果素子を備えつつダイオード等を不要とした、本発明の第5実施形態に係る磁気メモリについて、図32〜35を参照して説明する。第1〜第4実施形態(図1〜31参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第5実施形態に係る磁気メモリ10Hは、第1実施形態(図1参照)と同様に、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)であり、図32に示すように、記憶装置90Hに搭載され、メモリセル6Hを2次元配列して備える。記憶装置90Hの構成の詳細は後記にて説明する。
図32に示すように、磁気メモリ10Hは、メモリセル6Hが1個の磁気抵抗効果素子1Cおよび4個の選択トランジスタ41,42,43,44からなり、第1実施形態に係る磁気メモリ10(図1参照)のメモリセル6の磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Cに置き換えた構成である。そして、第4実施形態に係る磁気メモリ10F(図25参照)のメモリセル6Fと同様に、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1と抵抗器MRw2(以下、合わせて抵抗器MRw)の両端の端子p1,p2(図26参照)で第1回路(選択トランジスタ41−42間)と第2回路(選択トランジスタ43−44間)に接続される。さらに、メモリセル6Hは、第1回路と第2回路との接続箇所(入力選択トランジスタ41−43間)に、磁気抵抗効果素子1Cが可変抵抗器MRrの側の端子p3で接続される。そして、磁気メモリ10Hは、第1実施形態等と同様に、列方向に隣り合うメモリセル6H同士で直列に接続し、この列方向に配列されたメモリセル6H(メモリセル列60H)の両端にビット線BLP,BLNが接続されている。さらに、磁気メモリ10Hは、磁気メモリ10と同様に、選択トランジスタ41,42,43,44の各ゲートに入力するワード線WL0i,WL1o,WL1i,WL0oを備える。
磁気メモリ10Hは、書込みにおいては第1実施形態と同様に、メモリセル6H毎に、選択トランジスタ41,44または選択トランジスタ43,42の組み合わせで同時にON状態にされる。一方、読出しにおいては後記読出方法にて説明するように、選択したメモリセル6Hにおいて、入力選択トランジスタ41,43は共にOFF状態に、出力選択トランジスタ42,44は少なくとも一方をON状態にされる。そのため、磁気メモリ10Hは、選択トランジスタ41,42,43,44のそれぞれのゲートに入力する4本のワード線WL0i,WL1o,WL1i,WL0oを行毎に備える。
メモリセル6Hの磁気抵抗効果素子1Cおよび選択トランジスタ41,42,43,44の各構成は、第1実施形態および第4実施形態にて説明した通りである。さらに本実施形態において、磁気抵抗効果素子1Cは、可変抵抗器MRrの抵抗値RP,RAPが、抵抗器MRwの抵抗値RMRwに対して十分に高いことが好ましい(RP>>RMRw)。また、選択トランジスタ4は、ON抵抗RONが磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値RP,RAPに対して十分に低いことが好ましい(RON<<RP)。一方で、選択トランジスタ4は、磁気メモリ10Hの読出しにおいて一定のゲート電圧Vgで動作させるために、しきい値電圧Vthに対する最大定格(破壊電圧)V(BR)gsが、可変抵抗器MRrの抵抗値の変化量ΔRPに対応可能な程度に大きく設計される。
本実施形態に係る磁気メモリ10Hの構造は、一例として、図2に示す第1実施形態に係る磁気メモリ10について、磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Cに置き換え、磁気抵抗効果素子1Cの磁化固定層13(端子p3)を配線53の中継層53a上に接続したものとすることができる。
(磁気メモリの製造方法および初期設定)
このような構造の磁気メモリ10Hは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10Bと同様の製造方法で製造することができる。また、磁気メモリ10Fは、初期設定にて、第4実施形態に係る磁気メモリ10Fと同様、2段階の磁界印加により、すべてのメモリセル6Hの磁気抵抗効果素子1Cの磁化固定層11,12,13の磁化方向をそれぞれ所定の向きに揃える。
(記憶装置)
本実施形態に係る磁気メモリ10Hを備える記憶装置90Hは、さらに磁気メモリ10Hの駆動回路として、図32に示すように、磁気メモリ10Hの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72,73,74と、磁気メモリ10Hの列毎に設けられたビット線選択トランジスタ77,78および電圧比較器93と、書込/読出電流回路9と、行デコーダ91Hと、列デコーダ92と、ゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80Dと、を備える。ゲート電圧生成回路80Dは、第3実施形態(図20〜23参照)にて説明した構成であり、ただし、分圧抵抗器82Dの2段階の抵抗値Rdiv2L,Rdiv2Hの比が異なる。さらに、抵抗切替回路84が、行デコーダ91Hから、ワード線選択トランジスタ71,73のそれぞれと共通の信号を2本共入力されたときに、分圧抵抗器82Dを低抵抗Rdiv2Lに切り替える信号を出力する。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第5実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図33〜35を参照して説明する。図33〜35では、簡潔に説明するために、磁気メモリ10Hにおける1列のメモリセル6H(1つのメモリセル列60H)を示し、さらにこのメモリセル列60Hに4つのメモリセル6Hが配列されているとし、適宜、図中左からメモリセル6H1,6H2,6H3,6H4と称する。この図33〜35に示すメモリセル列60Hが、第1実施形態と同様に、列デコーダ92(図32参照)により選択されて(ビット線選択トランジスタ77,78:ON状態)、書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源95または定電流源94の正の出力がビット線BLPに接続し、負の出力と同じ電位のGND(0V)がビット線BLNに接続している。ここでは、メモリセル6H1,6H2,6H3,6H4にそれぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータを書込みし、また、これらのデータを読出しするものとして説明する。
(磁気メモリの書込方法)
図33を参照して、本実施形態に係る磁気メモリの書込方法について説明する。本実施形態に係る磁気メモリ10Hは、第1、第4実施形態に係る書込方法(図4、図28参照)により書込みをすることができる。すなわち、行デコーダ91Hが、行毎に、ワード線選択トランジスタ71,74またはワード線選択トランジスタ73,72の組み合わせでON状態にする。これにより、データ‘0’の書込みをするメモリセル6H1,6H4は選択トランジスタ41,44がON状態に、データ‘1’の書込みをするメモリセル6H2,6H3は選択トランジスタ43,42がON状態になる。
この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Hに電流Iwを供給すると、電流Iwが、第4実施形態に係る磁気メモリ10Fと同様に、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwにメモリセル6H毎にデータに応じた向きで供給される。ここで、メモリセル6Hは、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrが入力選択トランジスタ41−43間に接続されている。そのため、例えばデータ‘0’の書込みをするメモリセル6H1,6H4においては、電流Iwが、第1入力選択トランジスタ41と磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrとに分岐して流れ、さらに第1入力選択トランジスタ41に流れた電流Iw1は抵抗器MRw1を経由して、可変抵抗器MRrに流れた電流と抵抗器MRw2で合流する。すなわち、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1または抵抗器MRw2には、電流Iwの一部の電流Iw1が流れる。
磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MR
w1または抵抗器MR
w2に供給される電流I
w1は下式(60)で表され、メモリセル6Hにおいて、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rが抵抗器MR
wおよび入力選択トランジスタ41,43に対して十分に高抵抗に設計されていることにより(R
P>>R
ONi、R
P>>R
MRw)、電流I
wの多くがI
w1として抵抗器MR
w1に供給される。なお、式中の「||」は、その左右の抵抗が並列に接続された合成抵抗を表す。また、「R
P/AP」は、このメモリセル6Hの磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APのいずれかを指し、R
APの場合はR
Pよりも高抵抗(R
P<R
AP)なので、電流I
w1はより大きくなる。
例えば、メモリセル6Hにおいて、磁気抵抗効果素子1Cは、抵抗器MRwの抵抗値RMRwが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/10とする(RMRw=RP/10)。また、入力選択トランジスタ41,43は、ON抵抗RONiが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/5とする(RONi=RP/5)。メモリセル6Hにおいて、電流Iwは、分岐した一方が、抵抗値RPの可変抵抗器MRrに流れ、他方(電流Iw1)が、直列に接続された抵抗値0.5RMRw(=RP/20)の抵抗器MRw1または抵抗器MRw2とON抵抗RON(=RP/5)の第1入力選択トランジスタ41または第2入力選択トランジスタ43とに流れる。したがって、抵抗器MRw1,MRw2の一方に供給される電流Iw1は、他方に供給される電流Iwの4/5(80%)の大きさになり、抵抗器MRw1,MRw2のそれぞれにおいて十分な電流密度の電流が一方向に流れて、磁性細線3Aの磁化反転領域3SWの磁化方向がデータに対応した所望の向きになる(図14(c)、(d)参照)。言い換えると、電流Iw1が磁性細線3Aにおいて磁壁移動させる電流密度になるように、磁気抵抗効果素子1Cおよび入力選択トランジスタ41,43の各抵抗値RP,RMRw,RONiに基づいて、電流Iwの大きさを設定する。また、可変抵抗器MRrの抵抗値RPに対して抵抗器MRwの抵抗値RMRw等が十分に低くないと、電流Iwを大きく設定する必要があるので効率が低下し、また、後記するように読出しの精度が低下する。このように、メモリセル6Hの構成に対応した大きさの電流Iwを供給することにより、メモリセル6H1,6H2,6H3,6H4にそれぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータが書込みされる。
本実施形態に係る磁気メモリ10Hの書込みにおいては、前記したように、電流I
wが各メモリセル6Hにおいて、入力選択トランジスタ41,43の一方と磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rとに分岐して流れる。したがって、メモリセル6Hの抵抗値R
CELLが可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APを含み、入力選択トランジスタ41,43および出力選択トランジスタ42,44の各ON抵抗R
ONi,R
Onoを定数とすると、メモリセル列60Hの抵抗値ΣR
CELLkは、下式(61)で表される。「R
P/AP」は、各メモリセル6Hに記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。そのため、第1実施形態と同様、各メモリセル6Hのデータによって、一定のゲート電圧Vgに対するゲート−ソース間電圧Vgsが変化する。一方で、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値R
Pに対して、抵抗器MR
wおよび選択トランジスタ4が低抵抗であるほど、メモリセル6Hの抵抗値R
CELLが、可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APの変化の影響が低減し、(R
ONi+R
ONo+R
MRw)に収束する。すなわち、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10B(図12参照)や第4実施形態に係る磁気メモリ10F(図28参照)の書込みと同一になる。
磁気メモリ10Hの書込みにおいては、特に入力選択トランジスタ41,43のON抵抗RONiを抑制するために、メモリセル6Hk毎にゲート電圧Vgkが設定されることが好ましい。そのために、ゲート電圧生成回路80Dにより、第3実施形態と同様に、メモリセル6Hkの出力選択トランジスタ42,44とその隣のメモリセル6Hk+1の入力選択トランジスタ41,43とに、同じゲート電圧Vgkを印加する(Vgko=Vg(k+1)i=Vgk)。また、ここでは一例として、メモリセル列60Hの出力選択トランジスタ42,44の共通のゲート−ソース間電圧Vgstypを、定電流源95の出力電圧が最小値VwMINとなる場合、すなわち、メモリセル列60HのN個のメモリセル6Hの磁気抵抗効果素子1Cがすべて可変抵抗器MRrの抵抗値RPである場合において設定する。
まず、すべてのメモリセル6H
kの出力選択トランジスタ42,44について、ゲート−ソース間電圧Vgs(適宜、Vgs
typと称する)を、下式(62)で表される範囲になるように設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONo(適宜、R
ONtypと称する)を算出する。なお、下式(62)は、第3実施形態の式(44)に基づく。さらに、入力選択トランジスタ41,43について、電流I
w1(式(60))およびゲート−ソース間電圧(Vgs
typ+I
w1×R
ONi))より、ON抵抗R
ONiを算出する。また、定電流源95の最小出力電圧V
wMINは下式(63)で表される。そして、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H,Vg
0を下式(4)、(64)に表されるように設定される。
次に、定電流源95の出力電圧V
wが最大値V
wMAXとなる場合、すなわち、メモリセル列60HのN個すべてのメモリセル6Hの磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rが抵抗値R
APである場合を仮定する。前記したように、可変抵抗器MR
rの抵抗値が相対的に高いほど、メモリセル6Hの抵抗値R
CELLが(R
ONi+R
ONo+R
MRw)に収束する。したがって、定電流源95の最大出力電圧V
wMAXは、近似的に下式(65)で表される。このときのメモリセル6H
k毎の選択トランジスタ4のそれぞれのゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´およびON抵抗R
ONki´,R
ONko´は、シミュレーションによって算出される。
そして、下式(66)で表されるように、定電流源95の出力電圧V
wが最大値V
wMAXとなる場合のメモリセル6H
1の出力選択トランジスタ42,44のゲート−ソース間電圧Vgs
1o´(=Vgs
MIN)が線形領域であればよい。下式(66)より、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(67)を満足するように設定される。
さらに、各メモリセル6Hの選択トランジスタ4のゲート−ソース間電圧Vgsが最大定格V
(BR)gsに到達することのないように、ゲート電圧生成回路80Dは、ツェナーダイオード86を下式(68)で表されるツェナー電圧Vzに設計される。下式(68)の上限値における「I
w」は、定電流源95の出力電圧V
wが最大値V
wMAXとなる場合の、電位の最も高いメモリセル6H
1の入力選択トランジスタ41,43に流れる電流(<I
w)を近似したものである。また、磁気メモリ10Hの書込みにおいて、ゲート電圧生成回路80Dは、N個すべての分圧抵抗器82Dを、高低のいずれでもよいが同じ抵抗値にする。
このように、本実施形態に係る磁気メモリの書込方法では、メモリセル6Hの抵抗値RCELLに磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値RP,RAPを含むため、第1実施形態と同様に、定電流源95の出力電圧Vwが最大、最小のいずれにおいても、選択トランジスタ4が線形領域で動作するようにゲート−ソース間電圧Vgstypを設定する。一方で、本実施形態に係る磁気メモリ10Hは、可変抵抗器MRrが選択トランジスタ4等に対して高抵抗に設計されることにより、書込みにおいて、抵抗値RP,RAPの変化によるメモリセル6Hの抵抗値RCELLへの影響が少ないので、ゲート電圧Vgkを設定し易い。
(磁気メモリの読出方法)
図34および図35に示すメモリセル列60Hのメモリセル6H1,6H2,6H3,6H4は、それぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’が記憶されているので、それぞれの磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値は、RP,RAP,RAP,RPである。図34において、行デコーダ91Hが1行目を選択すると、1行目においては、ワード線選択トランジスタ71,72,73をOFF状態に、ワード線選択トランジスタ74をON状態にする。一方、他の非選択の行においては、ワード線選択トランジスタ71,72,73,74のすべてをON状態にする。これにより、選択した1行目のメモリセル6H1においては第2出力選択トランジスタ44のみがON状態に、非選択のメモリセル6H2,6H3,6H4においては、選択トランジスタ41,42,43,44の4個すべてがON状態になる。この状態で、定電流源94から電流Irをメモリセル列60Hに供給すると、電流Irが、ビット線BLPから、メモリセル6H1の入力選択トランジスタ41−43間に接続された磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrに流れ、可変抵抗器MRrから抵抗器MRw2を経由してON状態の第2出力選択トランジスタ44へ流れる。一方、非選択のメモリセル6H2,6H3,6H4においては、電流Irが、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRr、第1入力選択トランジスタ41、第2入力選択トランジスタ43に三分されて流れ、さらに可変抵抗器MRrから抵抗器MRw1,MRw2に分岐して、入力選択トランジスタ41,43に流れた電流と合流して、Ir/2ずつ出力選択トランジスタ42,44に流れる。
また、図35において、行デコーダ91Hが2行目を選択すると、2行目においては、ワード線選択トランジスタ74をON状態に、他の行においては、ワード線選択トランジスタ71,72,73,74のすべてをON状態にする。したがって、メモリセル6H2においては第2出力選択トランジスタ44がON状態に、非選択のメモリセル6H1,6H3,6H4においては、選択トランジスタ41,42,43,44がON状態になり、電流Irが、メモリセル6H2においては磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRr、抵抗器MRw2、第2出力選択トランジスタ44の順に流れ、非選択のメモリセル6H1,6H3,6H4においては、前記と同様に分岐して選択トランジスタ41,42,43,44および磁気抵抗効果素子1Cのすべてに流れる。
したがって、選択、非選択のメモリセル6Hの抵抗値をR
CELLrsl,R
CELLrnsで表すと、読出しにおけるメモリセル列60Hの抵抗値ΣR
CELLkは、下式(69)で表される。また、入力選択トランジスタ41,43のON抵抗R
ONiが磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rに対して低く設計されることにより、非選択のメモリセル6Hの抵抗値R
CELLrnsが0.5(R
ONi+R
ONo)に収束し、非選択のメモリセル6Hに記憶されたデータによる読出しの精度の低下が抑制される。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Hの読出しにおいては、メモリセル列60Hの抵抗値ΣR
CELLkが、選択したメモリセル6H
jに記憶されたデータだけでなく、非選択のメモリセル6H
k(k≠j)に記憶されたデータによっても変化する。したがって、メモリセル列60Hに接続したビット線BLT,BLB間の電圧測定による読出しを可能にするために、磁気メモリ10Hは、非選択のメモリセル6H
kのそれぞれのデータにかかわらず、選択したメモリセル6H
jが‘1’のときの方が‘0’のときよりもメモリセル列60Hの抵抗値ΣR
CELLkが高くなるように設計される。すなわち、選択したメモリセル6H
jが‘1’かつ非選択のすべてのメモリセル6H
kが‘0’のときのメモリセル列60Hの抵抗値ΣR
CELLk(1)MIN(下式(70))が、選択したメモリセル6H
jが‘0’かつ非選択のすべてのメモリセル6H
kが‘1’のときのメモリセル列60Hの抵抗値ΣR
CELLk(0)MAX(下式(71))よりも高い、すなわちΣR
CELLk(1)MIN>ΣR
CELLk(0)MAXが成立するものとする。さらに、その差(ΣR
CELLk(1)MIN−ΣR
CELLk(0)MAX)がメモリセル列60Hの抵抗値ΣR
CELLkに対して大きいことが好ましい。
例えば、メモリセル6Hにおいて、前記と同様、磁気抵抗効果素子1Cは、抵抗器MRwの抵抗値RMRwが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/10とし、また、選択トランジスタ41,42,43,44のON抵抗RONi,RONoが共に可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/5とする。また、TMR素子(可変抵抗器)MRrのMR比が50%とする。このようなメモリセル6Hを配列したメモリセル列60Hは、メモリセル6Hの数Nが110超になるとΣRCELLk(1)MIN,ΣRCELLk(0)MAXの高低が逆転する。また、このときのメモリセル列60Hの抵抗最小変化率は、N=16で約11%、N=32で約5%、N=64で約1.6%である。また、前記と同じ磁気抵抗効果素子1Cに、選択トランジスタ41,42,43,44のON抵抗RONi,ROnoが前記の2倍、すなわち可変抵抗器MRrの抵抗値RPの2/5とすると、メモリセル6Hの数Nが36超になるとΣRCELLk(1)MIN,ΣRCELLk(0)MAXの高低が逆転し、メモリセル列60Hの抵抗最小変化率が、N=16で約4.2%である。
したがって、磁気メモリ10Hは、書込みと同様に各メモリセル6Hの選択トランジスタ41,42,43,44のON抵抗を低く制御することにより、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に、書込みと共通の配線を用いて、選択した1つのメモリセル6Hに記憶されたデータの読出しをすることができる。そのために、ゲート電圧生成回路80Dは、磁気メモリ10Hの読出しで、出力するゲート電圧Vg
kをメモリセル列60Hにおけるメモリセル6H毎の電位の降下量に合わせるために、分圧抵抗器82Dの2段階の抵抗値R
div2H,R
div2Lの比がR
div2H:R
div2L≒R
CELLsl:R
CELLnsに設計されることが好ましい。具体的には下式(72)を満足するように設計されることが好ましく、ここでは、R
div2H/R
div2L=R
CELLsl(0)/R
CELLns(0)とする。
そして、書込みと同様に、ゲート電圧Vg
kが設定される。まず、すべてのメモリセル6Hの出力選択トランジスタ42,44のゲート−ソース間電圧Vgs(適宜、Vgs
typと称する)を、近似的に下式(73)で表される範囲になるように設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONo(適宜、R
ONtypと称する)を算出する。さらに、非選択のメモリセル6H
kの入力選択トランジスタ41,43について、ゲート−ソース間電圧(Vgs
typ+0.5I
r×(R
ONi||(0.5R
MRw+R
P)))よりON抵抗R
ONiを算出する。
ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(4)で表されるように設定される。また、書込みと同様に、定電流源94の出力電圧V
rが最小値V
rMINになる場合、すなわち、すべてのメモリセル6Hの磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rが抵抗値R
Pである場合を仮定する。定電流源94の最小出力電圧V
rMINは下式(74)で表されるので、定電源94の出力電圧Vg
Hは、下式(75)で表されるように設定される。
次に、書込みと同様に、定電流源94の出力電圧V
rが最大値V
rMAXとなる場合、すなわち、メモリセル列60HのN個すべてのメモリセル6Hの磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rが抵抗値R
APであり、かつ電位の最も低いN行目のメモリセル6H
Nを選択した場合を仮定する。前記したように、入力選択トランジスタ41,43のON抵抗R
ONiが相対的に低いほど、言い換えれば可変抵抗器MR
rの抵抗値が相対的に高いほど、非選択のメモリセル6Hの抵抗値R
CELLnsが0.5(R
ONi+R
ONo)に収束する。したがって、定電流源94の最大出力電圧V
rMAXは、近似的に下式(76)で表される。このときのメモリセル6H
k毎の選択トランジスタ4のそれぞれのゲート−ソース間電圧Vgs
ki´,Vgs
ko´およびON抵抗R
ONki´,R
ONko´は、シミュレーションによって算出される。
そして、下式(77)で表されるように、定電流源94の出力電圧V
wが最大値V
wMINとなる場合のメモリセル6H
1の出力選択トランジスタ42,44のゲート−ソース間電圧Vgs
1o´(=Vgs
MIN)が線形領域であればよい。下式(77)より、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(78)を満足するように設定される。
式(78)を満足するゲート−ソース間電圧Vgs
typが存在するためには、磁気メモリ10Hは下式(79)を満足する必要がある。そのために、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値の変化量ΔR
Pおよび電流I
rが、読出しの精度を許容範囲としつつ大き過ぎないことが好ましい。また、選択トランジスタ4は、読出しにおいて電位が少なくとも(I
r×ΔR
P)変動するので、この変動に対応可能な程度に最大定格(破壊電圧)V
(BR)gsがしきい値電圧Vthに対して大きく設計される。
(空間光変調器)
本発明の第5実施形態に係る磁気メモリ10Hは、メモリセル6Fに磁気抵抗効果素子1Cを備えた第4実施形態に係る磁気メモリ10Fと同様に、画素の書込みエラーの検出をする空間光変調器とすることができる。
(変形例)
本発明の第5実施形態に係る磁気メモリ10Hは、第4実施形態に係る磁気メモリ10F(図28〜30参照)と同様、メモリセル6Hkの入力選択トランジスタ41,43と出力選択トランジスタ42,44とに、同じゲート電圧Vgkを印加してもよい(Vgki=Vgko=Vgk)。この場合は、出力選択トランジスタ42,44の方がON抵抗が低くなるので(RONi>RONO)、メモリセル6Hは、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの側の端子p3を出力選択トランジスタ42−44間に接続することが好ましい。このような構成の磁気メモリの読出しは、選択したメモリセル6Hにおいて、入力選択トランジスタ41,43の少なくとも一方をON状態にする。
本実施形態に係る磁気メモリ10Hは、第3実施形態に係る磁気メモリ10C(図15参照)の磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwに置き換えた構成として、列方向に隣り合う2つのメモリセル6H,6Hの一方の選択トランジスタ43,44を他方の選択トランジスタ41,42と共有させて、列方向に縮小することもできる。このような磁気メモリにおいて、奇数行アドレスのメモリセルは、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの側の端子p3を入力選択トランジスタ41−43間に接続し、偶数行アドレスのメモリセルは、出力選択トランジスタ42−44間に接続すればよい。また、第3実施形態に係る磁気メモリ10D(図18参照)の磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwに置き換えた構成として、行方向に縮小することもできる。このような磁気メモリにおいては、読出しで、第1回路または第2回路を共有する2個(一組)のメモリセルの任意の1個について、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrに電流が流れるように、次のように構成される。すなわち、一組における一方(奇数列アドレス)のメモリセルは、磁気抵抗効果素子1Cの端子p3を入力選択トランジスタ41−43間に接続し、他方(偶数列アドレス)のメモリセルは、出力選択トランジスタ44−46間に接続する(図示せず)。あるいは、第4実施形態の変形例に係る磁気メモリ10G(図31参照)のように、共有する選択トランジスタ43,44の1個分、列方向にずらしてもよい。
以上のように、本発明の第5実施形態に係る磁気メモリまたは空間光変調器によれば、第1実施形態と同様に、一列に配列されたメモリセルのすべてに同時に、かつそれぞれに所望のデータを書込みをすることができ、さらに、書込みにおける負荷を抑制しつつ、読出しの精度を向上させることができる。
以上、本発明に係る不揮発性メモリを実施するための各実施形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。