以下、本発明に係る不揮発性メモリおよび記憶装置を実現するための形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリ(不揮発性メモリ)10は、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)であり、図1に示すように、記憶装置90のサブブロックメモリとして2つ搭載されている。磁気メモリ10は、メモリセル6を2次元(図1における縦横)配列して備える。2つの磁気メモリ10,10は同一の構造であり、図1においては省略して、それぞれ一部のメモリセル6を示す。
記憶装置90は、磁気メモリ10,10を備え、さらに以下の磁気メモリ10の駆動回路を備える。すなわち記憶装置90は、磁気メモリ10,10の行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72と、磁気メモリ10,10のメモリセル6の第1選択トランジスタ41および第2選択トランジスタ42に印加するゲート電圧を出力するゲート電圧生成回路(ゲート電圧生成装置)80,80と、磁気メモリ10,10全体の列毎に設けられたビット線選択トランジスタ73,74および電圧比較器93と、列アドレスデータを受けて磁気メモリ10の1列以上を選択する列デコーダ92と、行アドレスデータを受けて磁気メモリ10の1行以上を選択する行デコーダ91と、列デコーダ92が選択したメモリセル6の列に電流を供給する書込/読出電流回路9と、を備える。
記憶装置90は、磁気メモリ10の構造、各行のワード線の本数、およびゲート電圧生成回路80を除いて、図43(b)に示す従来の磁気メモリ110Aを備えた記憶装置190Aと同様の構成であり、磁気メモリ10およびゲート電圧生成回路80以外の各部品は公知のものを適用することができる。具体的には、書込/読出電流回路9は、定電流源94,95(図4、図5参照)を内蔵し、磁気メモリ10の選択された列のメモリセル6に、図示しない制御回路からの命令により、これらの定電流源94,95から読出しや書込みのための定電流を指定された向きで供給する。電圧比較器93は、センスアンプやコンパレータ、参照電位発生回路等を内蔵し、磁気メモリ10の各列のビット線BLTに接続され、読出し時に、ビット線BLTの出力を参照電位(閾値)Vrefと比較して、結果を制御回路へ出力する。
行デコーダ91は、書込みおよび読出しにおいて、選択した行のワード線WLTに接続する第1ワード線選択トランジスタ71、および非選択の行のワード線WLBに接続する第2ワード線選択トランジスタ72を、共にON状態(ドレイン−ソース間に電流が流れる状態)にする。これにより、選択されたメモリセル6の第1選択トランジスタ41、非選択のメモリセル6の第2選択トランジスタ42が、それぞれワード線WLT,WLBを経由してゲート電圧Vgを印加されることによりON状態になる。ゲート電圧生成回路80は、分圧回路を内蔵して、行毎に段階的に変位させた電圧をゲート電圧Vg1,Vg2,…,VgNとして出力する(図4、図5参照)。ゲート電圧生成回路80の構成の詳細は、後記の磁気メモリの書込方法にて説明する。列デコーダ92は、選択した列のビット線選択トランジスタ73,74を共にON状態にして、磁気メモリ10のビット線BLT,BLBを書込/読出電流回路9の定電流源94または定電流源95に接続させる。なお、図1等の等価回路図において、トランジスタ71,72,73,74は、磁気メモリ10の第1選択トランジスタ41および第2選択トランジスタ42(適宜、選択トランジスタ41,42)と同じ図記号で表記されるが、MOSFETに限られず、後記書込方法および読出方法にて説明する動作の可能なスイッチング素子であればよい。以下、本実施形態に係る磁気メモリについて詳細に説明する。
図1に示すように、磁気メモリ10のメモリセル6は、一重の環状の回路を形成して、1個の磁気抵抗効果素子(不揮発性記憶素子)1、ならびに第1選択トランジスタ(副選択トランジスタ)41および第2選択トランジスタ(選択トランジスタ)42の2個のトランジスタをこの回路上に備える。そして、メモリセル6は、第1選択トランジスタ41と第2選択トランジスタ42の間と、第2選択トランジスタ42と磁気抵抗効果素子1の間の2箇所に、それぞれ入出力端子を有して、列方向(図1においては横方向)に隣り合うメモリセル6,6同士で接続する。言い換えると、メモリセル6は、磁気抵抗効果素子1とこれに直列に接続した第1選択トランジスタ41が、第2選択トランジスタ42に並列に接続してなる。なお、この直列に接続して列方向に配列されたメモリセル6の一群を適宜「メモリセル列」60と称する。メモリセル列60の両端には、ビット線BLT,BLBが接続される。そして、磁気メモリ10は、メモリセル6の直列方向に直交する方向(図1における縦方向、以下、行方向)に配列するメモリセル6,6,…,6の選択トランジスタ41,42の各ゲート4g1,4g2(図2参照)に入力するワード線WLT,WLBを備える。
磁気メモリ10は、メモリセル6の数を特に限定されず、特に、後記の磁気メモリの書込方法にて説明するように、1つのメモリセル列60に配列されたメモリセル6には、理論上は電流を大きくすることなく、同時に‘1’、‘0’の一方のデータを書込みすることができる。一方で、図1に示すように、メモリセル列60においては、各メモリセル6の磁気抵抗効果素子1と第1選択トランジスタ41、または第2選択トランジスタ42のいずれか一方を経由して直列に接続されている。通常、磁気抵抗効果素子1の2値の抵抗値RP,RAPや選択トランジスタ41,42のON抵抗RONは、金属電極材料で形成される通常の配線よりも抵抗が高い。したがって、メモリセル列60は、メモリセル6の数が多くなると、これらの抵抗値が加算されて全体の抵抗値(ビット線BLT−BLB間抵抗値)が高くなるため、書込みにおける負荷が増大し、また、読出しの精度が低下する。メモリセル6の数が多くなるとさらに、書込みにおいて選択トランジスタ41,42に印加するゲート電圧の調整が困難になる。したがって、磁気メモリ10は、メモリセル列60にすなわち列方向に配列されるメモリセル6の数を、磁気抵抗効果素子1の抵抗値RP,RAP、および磁気抵抗効果素子1の磁化反転電流密度に基づく書込み用の電流Iw、ならびに選択トランジスタ41,42のON抵抗RON等に応じて設計することが好ましい。そして、記憶装置90は、記憶容量に応じて磁気メモリ10を1つまたは複数搭載すればよく、図1では、2つの磁気メモリ10,10に並列に書込/読出電流回路9が接続する回路を有する。
本実施形態に係る磁気メモリ10は、一例として、表層に選択トランジスタ41,42を形成された基板40上に、磁気抵抗効果素子1、ならびにこれらの素子同士および隣り合うメモリセル6を互いに接続する配線51,52を形成してなる。詳しくは図2に示すように、選択トランジスタ41,42のソース4s、ドレイン4d1,4d2、ゲート4g1,4g2が基板40の表層に形成されている。そして、第1選択トランジスタ41のドレイン4d1は、配線51(接続部51c、中継層51a、層間部51d、抵抗接続層51b)で、磁気抵抗効果素子1の上面に接続される。一方、第2選択トランジスタ42のドレイン4d2は、配線52(接続部52c1、抵抗接続層52a、接続部52c2)で、磁気抵抗効果素子1の下面と、隣(図1、図2において右側)のメモリセル6の選択トランジスタ41,42の共有のソース4sに接続される。なお、図2では、左から順に、メモリセル列60におけるビット線BLTから1、2行目のメモリセル6,6を、簡略化した外観図で示し、特に配線51,52の形状を単純化して表す。さらに、メモリセル6は、行方向(図2のY方向)に延伸した配線(図1のワード線WLT,WLB)が選択トランジスタ41,42のゲート4g1,4g2に接続しているが、図2では省略する。また、図2の空白部分には絶縁層が設けられている。
(磁気抵抗効果素子)
磁気抵抗効果素子1は、メモリセル6における記憶素子であり、2値のデータ‘1’、‘0’を抵抗値の高低として記憶し、所定の大きさの電流を供給されることで抵抗値が変化する。本実施形態においては、磁気抵抗効果素子1は、CPP−GMR(Current Perpendicular to the Plane Giant MagnetoResistance:垂直通電型巨大磁気抵抗)素子やTMR(Tunnel MagnetoResistance:トンネル磁気抵抗)素子等のスピン注入磁化反転素子であり、例えば図3(a)、(b)に示すように、磁化固定層11、磁化自由層3の2つの磁性膜で中間層2を挟んだ積層構造を有し、上下に一対の端子p1,p2を有する。なお、図3に示す磁気抵抗効果素子1においては、磁化自由層3を上に積層して備えるが、磁化固定層11を上に備えてもよい。さらに磁気抵抗効果素子1は、最下層に配線52への密着性を得るための下地膜を、最上層に製造工程で磁性膜を保護するための保護膜を、それぞれRu等の非磁性の金属膜で備えてもよい(図示省略)。磁気抵抗効果素子1を構成するこれらの各層は、例えばスパッタリング法や分子線エピタキシー(MBE)法等の公知の方法で連続的に成膜されて積層される。
ここで、磁気抵抗効果素子1には、TMR素子、CPP−GMR素子のいずれのスピン注入磁化反転素子も適用することができる。TMR素子は、中間層(障壁層)として絶縁膜を備えるため、抵抗値がCPP−GMR素子の10〜数百倍程度と高い。本実施形態に係る磁気メモリ10においては、各メモリセル6の磁気抵抗効果素子1が第1選択トランジスタ41と交互に直列に接続されて電流を供給されるため、メモリセル列60として多数のメモリセル6を配列して同時に書込みをするためには、抵抗が低いCPP−GMR素子を磁気抵抗効果素子1に適用することが好ましい。一方で、TMR素子は高抵抗かつ磁気抵抗比(MR比)が高いので抵抗値の変化量が大きい。したがって、磁気メモリ10は、TMR素子が適用されると、読出しの精度が高くなり、微細化され易く、読出し用の電流Irを小さくすることができる。詳しくは後記の磁気メモリの書込/読出方法にて説明するように、磁気メモリ10について、記憶容量密度(メモリセル6の面積)や磁気メモリ10全体の書込所要時間、書込/読出の消費電流等、要求される特性に応じて磁気抵抗効果素子1の態様が選択される。
磁気抵抗効果素子1は、平面視において、一般的なスピン注入磁化反転素子と同様に、300nm×400nm相当の面積以下であることが好ましく、特に50〜100nm×100〜300nm程度に相当する面積であることが好ましい。また、磁気抵抗効果素子1は、平面視形状が、図2では略正方形で表されるが、後記第2実施形態(図11参照)のように長方形であってもよく、さらには矩形に限られない。
磁化固定層11および磁化自由層3は、CPP−GMR素子やTMR素子に用いられる公知の磁性材料にて構成することができ、特に磁気抵抗効果素子1が微細化され易いことから、垂直磁気異方性材料を適用することが好ましい。具体的には、Fe,Co,Ni等の遷移金属とPd,Ptのような貴金属とを繰り返し積層したCo/Pd多層膜のような多層膜、Tb−Fe−Co,Gd−Fe等の希土類金属と遷移金属との合金(RE−TM合金)のようなフェリ磁性体、L10系の規則合金としたFePt,FePd等が挙げられる。
また、書込み用の電流Iwが供給されても磁化方向が固定されているように、磁化固定層11は、その保磁力Hcpが磁化自由層3の保磁力Hcfよりも十分に大きく設計され、そのために、それぞれの材料を選択したり、磁化自由層3よりも厚く形成される。具体的には、磁化固定層11の厚さは3〜50nmの範囲において、磁化自由層3の厚さは1〜20nmの範囲において、それぞれ設計されることが好ましい。
中間層2は、磁気抵抗効果素子1がTMR素子であれば、MgO,Al2O3,HfO2のような絶縁体や、Mg/MgO/Mgのような絶縁体を含む積層膜からなり、その厚さは0.1〜2nmとすることが好ましい。また、磁気抵抗効果素子1がCPP−GMR素子であれば、中間層2は、Cu,Ag,Alのような非磁性金属からなり、その厚さは1〜10nmとすることが好ましい。
磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化とその動作を、図3を参照して説明する。磁気抵抗効果素子1は、磁化方向が固定された磁化固定層11と、磁化方向が回転可能な磁化自由層3を備え、磁化自由層3の磁化方向が磁化固定層11と同じ方向(平行)か逆(180°異なる)方向(反平行)かで、その積層方向における抵抗値、すなわち上下に接続した電極(配線)51,52(図2の抵抗接続層51b,52a)間の抵抗値が変化する。詳しくは、磁気抵抗効果素子1は、図3(a)に示す磁化方向が平行な状態における抵抗値RPよりも、図3(b)に示す磁化方向が反平行な状態における抵抗値RAPの方が高い(RP<RAP)。
そして、スピン注入磁化反転素子である磁気抵抗効果素子1は、膜面垂直方向における双方向のいずれかに一定以上の電流密度の電流Iwを供給されることで、その電流の向きによって磁化自由層3の磁化方向が変化する。具体的には、図3(c)に示すように、定電流源95の「+」を磁気抵抗効果素子1の上に、「−」を下に接続して、磁化自由層3側(端子p1)から磁化固定層11へ電流Iwを供給して、磁化固定層11側から電子を注入する。すると、磁化方向を上向きに固定された磁化固定層11により当該磁化固定層11の磁化方向と向きの異なる下向きのスピンを持つ電子dDが弁別されて、磁化自由層3は上向きのスピンを持つ電子dUが偏って注入される。磁化自由層3は、その内部電子のスピンが注入された電子dUのスピンにより回転し、これに伴い磁化方向が回転する。すなわち磁化自由層3の磁化方向が下向きの状態(図3(b)参照)で前記の通り電流Iwが供給されると、磁化方向が磁化固定層11と同じ上向きに反転(スピン注入磁化反転、以下、適宜磁化反転という)する。反対に、図3(d)に示すように、磁気抵抗効果素子1の上に定電流源95の「−」を、下に「+」を接続して、磁化固定層11側(端子p2)から磁化自由層3へ電流Iwを供給して、磁化自由層3側から電子を注入する。すると、下向きのスピンを持つ電子dDが磁化固定層11により弁別されて磁化自由層3に留まるため、磁化自由層3の磁化方向は下向きになる。
このように、磁気抵抗効果素子1は、膜面垂直方向に電流を供給されることで、磁化自由層3の磁化方向が磁化固定層11と同じ方向(平行)または180°異なる方向(反平行)になる。したがって、磁気抵抗効果素子1は、例えばデータ‘1’を磁化自由層3の磁化方向が下向きに、データ‘0’を上向きに設定した場合、‘1’を記録するときには磁化固定層11側から、‘0’を記録するときには磁化自由層3側から、電流Iwを供給する。そして、磁気抵抗効果素子1は、磁化自由層3の磁化方向により抵抗値が変化し、‘1’が記録されると抵抗値RAPに、‘0’が記録されると抵抗値RPになる。なお、磁気抵抗効果素子1は、上下に接続した電極51,52から電流を供給されるので、磁化自由層3と磁化固定層11に一対の端子を有する可変抵抗器であるといえ、この端子に電流源(定電流源95)が接続される。また、磁気抵抗効果素子1において、磁化自由層3の磁化方向が平行、反平行のいずれかを示していれば、その磁化方向を反転させる大きさ以上の電流(Iw)が供給されるまでは、当該磁化自由層3の保磁力Hcfにより磁化方向が保持される。したがって、磁気抵抗効果素子1は、不揮発性の記憶素子になる。また、書込み用の電流、すなわち磁化反転電流として、パルス電流のように、磁化方向を反転させる電流値(Iw)をピーク電流として一時的に到達する電流(直流パルス電流)を用いることができる。
一方、データ‘1’、‘0’の読出し、すなわち磁気抵抗効果素子1の抵抗値の高低の判定は、図3(a)、(b)に示すように、磁化反転しない大きさの定電流Irを定電流源94から供給して、定電流源94の出力に接続した電圧比較器93で電圧の高低を判定することで行うことができる。なお、図3(a)、(b)においては、電流Irは、磁気抵抗効果素子1の磁化自由層3側から磁化固定層11へ供給されているが、この向きが逆でもよい。
(第1選択トランジスタ、第2選択トランジスタ)
メモリセル6において、第1選択トランジスタ41は磁気抵抗効果素子1に直列に接続され、第2選択トランジスタ42は、磁気抵抗効果素子1とこれに接続した第1選択トランジスタ41に並列に接続される。メモリセル6が選択されたとき、第1選択トランジスタ41をON状態に、第2選択トランジスタ42をOFF状態にすることで、第1選択トランジスタ41を経由して磁気抵抗効果素子1に電流が供給される。一方、メモリセル6が非選択のとき、第1選択トランジスタ41をOFF状態に、第2選択トランジスタ42をON状態にすることで、第2選択トランジスタ42の方へ電流を迂回させて磁気抵抗効果素子1に電流が流れないようにする。したがって、選択トランジスタ41,42はそれぞれ、磁気抵抗効果素子1に供給する書込み用、読出し用の電流Iw,Irが流れるため、特に書込み用の電流Iwに対応した構造とする。さらに、本実施形態に係る磁気メモリ10において、メモリセル列60は、メモリセル6毎の、第1選択トランジスタ41と磁気抵抗効果素子1、または第2選択トランジスタ42が直列に接続された経路に電流が流れるので、負荷を抑えるために、ON抵抗RONが十分に低くなるように設計されることが好ましい。
第1選択トランジスタ41および第2選択トランジスタ42は、例えばMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)で形成され、また、前記した通り同じ大きさの電流が流れるので、同一構造とすることができる。さらに選択トランジスタ41,42は、メモリセル6の2つの入出力端子の一方でソース同士が接続しているので、n型MOS(NMOS)の場合は、図2に示すようにソース4sを1つのn+拡散層で共有した構造とすることができる。なお、本発明に係る磁気メモリにおいて、選択トランジスタ41,42は、電流を供給する向きによって「ソース」と「ドレイン」が入れ替わるが、本明細書では便宜上、ビット線BLT側をソース、ビット線BLB側をドレインと称する。このような選択トランジスタ41,42として、MOSFETは、シリコン(Si)基板(基板40)の表層に形成されたり、ガラス等のその他の公知の基板上に結晶Si膜を成膜して形成される。
ここで、本実施形態に係る磁気メモリ10においては、選択したメモリセル列60、すなわちソース−ドレイン間に電流が流れるメモリセル列60における選択トランジスタ41,42(MOSFET)のみがベース(サブストレート)電源を接続される。そのため、磁気メモリ10は、選択トランジスタ41,42を構成するMOSFETのベースがメモリセル列60毎に設けられるように、基板40にn型Si基板(n−sub)を適用して、その表層にp−wellがメモリセル列60毎に分離して形成される。そして、p−wellのそれぞれの表層(基板40の表層)に、ソース4sおよびドレイン4d1,4d2を構成するn+拡散層と共に、p−wellをGND(0V)に電気的に接続するためのp+拡散層が形成され、配線50を接続される。あるいは、p型Si基板(p−sub)を適用してもよく、この場合は、表層にn−wellが形成されて、さらにn−wellの表層にp−wellが形成される(図示せず)。
後記するように、メモリセル列60は、配列するメモリセル6の数が多くなるにしたがい、電位の最も高い端のメモリセル6の選択トランジスタ41,42のドレイン4d1,4d2またはソース4sの電位が高くなる。この最高電位となるn+拡散層の電位とp−wellの電位(0V)との電位差(後記する定電流源95の最大出力電圧VwMAX)がMOSFETの降伏電圧に到達することのないように、磁気メモリ10が設計される。具体的には、MOSFETの構造(降伏電圧、選択トランジスタ41,42のON抵抗RON)や磁気抵抗効果素子1の構造(抵抗値RAP、反転電流)に応じて、メモリセル列60に配列するメモリセル6の数が設計される。
あるいは、1つのメモリセル列60において、p−wellが2以上に分割して設けられてもよく、1つのp−wellあたりのメモリセル6(選択トランジスタ41,42)の数を少なくすることにより、n+拡散層とp−wellとの最大電位差を抑制することができる。このとき、p−wellは、メモリセル列60において電位の最も低い側の端の1つのみが、電位をGND(0V)に固定される。また、メモリセル列60における電位の高低順は、電流を供給する向きによって入れ替わる。そこで、電流の向きによらず、各p−wellが当該p−wellにおいて電位の最も低いn+拡散層と同じ電位になるように、基板40を構成する。詳しくは、1つのp−wellにおいて、ビット線BLT側の端のメモリセル6の選択トランジスタ41,42のソース4sと、ビット線BLB側の端のメモリセル6の第2選択トランジスタ42のドレイン4d2にまたは磁気抵抗効果素子1を経由して第1選択トランジスタ41のドレイン4d1に接続する配線52の抵抗接続層52aと、のいずれか一方が電流の向きにより切り替えられてp+拡散層に接続するように構成する(図示せず)。
(配線)
配線51,52,50およびワード線WLT,WLBは、例えば、Cu,Al,Au,Ag,Ta,Cr等の金属やその合金のような一般的な金属電極材料で形成される。そして、スパッタリング法等の公知の方法により成膜、フォトリソグラフィ、およびエッチングまたはリフトオフ法等によりストライプ状等の所望の形状に加工される。配線51,52は、磁気抵抗効果素子1の書込み用、読出し用の電流を供給するために、特に書込み用の電流Iwに対応した配線とする。ワード線WLT,WLBは、選択トランジスタ41,42を駆動する(ON状態にする)ための電圧(ゲート電圧Vg)をゲートに印加するために適した配線とする。
(基板)
基板40は、メモリセル6を2次元配列するための土台であり、特に本実施形態に係る磁気メモリ10は、表層に選択トランジスタ41,42がMOSFETで形成される。そのために、基板40は、シリコン(Si)基板を材料とすることが好ましい。あるいは、基板40は、その他の公知の基板材料、具体的にはSiO2(酸化ケイ素、ガラス)等の基板上に結晶Si膜を成膜したものを材料とすることができる。
(絶縁層)
絶縁層は、2次元配列されたメモリセル6における基板40上の磁気抵抗効果素子1,1間や、配線51,52間等を、互いに絶縁するために設けられる。絶縁層は、例えばSiO2やAl2O3等の酸化膜やSi窒化物(Si3N4)等の公知の絶縁材料を適用することができる。特に、磁気抵抗効果素子1がTMR素子である場合に、磁気抵抗効果素子1,1間に設けられる絶縁層は、磁化固定層11、磁化自由層3の各端部間での電流のリークを防止するために、MgO等の障壁層と同じ絶縁材料、または特に絶縁性の高いSiO2で形成されていることが好ましい。一方、磁気抵抗効果素子1が、磁化固定層11および磁化自由層3に極めて酸化し易いRE−TM合金からなる層を含む場合は、磁気抵抗効果素子1に接触する部分(磁気抵抗効果素子1,1間)に設けられる絶縁層は、Oを浸入させ易いSiO2等の酸化物よりも、Si窒化物やMgF2等のO(酸素)を含有しない非酸化物、あるいはOを放出し難いMgO等を適用することが好ましい。また、磁気抵抗効果素子1の下方に設けられる部分(基板40上から中継層51a、抵抗接続層52a間まで)の絶縁層は、半導体装置の層間絶縁膜に適用されるBPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)やPSG(Phosphorus Silicon Glass)を適用してもよい。
〔磁気メモリの製造方法〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリは、公知の選択トランジスタ型のMRAM(図44参照)と同様に製造することができる。すなわち、Si基板の表層にMOSFETで選択トランジスタ41,42を形成して基板40を製造する工程、ワード線WLT,WLB、配線50,52、および配線51の接続部51cと中継層51a、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程、磁気抵抗効果素子1、および配線51の層間部51dと抵抗接続層51b、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程を行う。以下、磁気メモリ10の製造方法の一例を説明する。
(トランジスタの形成)
まず、n型Si基板(n−sub)に、選択トランジスタ41,42を形成する領域(アクティブ領域)外のSiO2の埋込みを行い、次に、p型不純物イオンを注入して、p−wellをメモリセル列60毎に形成する。表面全体に薄い酸化膜(SiO2膜)を形成し、その上にpoly−Si膜を成膜してゲート4g1,4g2を形成する。p−wellに、n型不純物イオンを注入してn+拡散層(ソース4sおよびドレイン4d1,4d2)を形成し、p型不純物イオンを注入してp+拡散層を形成する。
(配線の形成)
次に、磁気抵抗効果素子1の下方に設けられる配線とこれらの間を埋める絶縁層を形成する。基板40(選択トランジスタ41,42)上に層間絶縁膜を成膜して、この層間絶縁膜の、選択トランジスタ41,42のソース4s、ドレイン4d1,4d2、ゲート4g1,4g2、およびp+拡散層のそれぞれの上にホール(ビア)を形成する。層間絶縁膜のホールに金属電極材料を埋め込んで、接続部51c、接続部52c1,52c2、配線50およびワード線WLT,WLBを形成し、さらに中継層51aおよび抵抗接続層52aを形成する。必要に応じて表面を平坦化処理して、中継層51aおよび抵抗接続層52a、ならびにこれらの間を埋める絶縁層が表面に形成された状態にする。
(磁気抵抗効果素子の形成)
中継層51a、抵抗接続層52a、および絶縁層の上に、磁気抵抗効果素子1の各層を構成する下地膜、磁化固定層11、中間層2、磁化自由層3、保護膜を連続して成膜、積層する。この積層膜を、電子線リソグラフィおよびイオンビームミリング法等で、磁気抵抗効果素子1の形状に加工する。具体的には、保護膜上に磁気抵抗効果素子1の形状のレジストパターンを形成し、保護膜から下地膜までをエッチングして、抵抗接続層52aの上に磁気抵抗効果素子1を形成する。その上から磁気抵抗効果素子1の全体の厚さに合わせた絶縁膜を成膜し、レジストパターンをその上の絶縁膜ごと除去する(リフトオフ)。次に、絶縁膜の中継層51aの上にホール(ビア)を形成し、このホールに金属電極材料を埋め込んで、配線51の層間部51dを形成する。層間部51dおよび磁気抵抗効果素子1の上に、配線51の抵抗接続層51bを形成して、磁気メモリ10が得られる。
磁気抵抗効果素子1は、配線51の層間部51dと同様に、絶縁層に孔を形成して、埋め込んで形成してもよく、さらに層間部51dの後に形成してもよい。すなわち、表面に中継層51a、抵抗接続層52a、および絶縁層が形成された後に、磁気抵抗効果素子1の全体の厚さに合わせた絶縁膜を成膜し、前記と同様に層間部51dを形成し、次に磁気抵抗効果素子1を形成する。特に磁気抵抗効果素子1が耐熱性の劣るRE−TM合金からなる層を含む場合は、このような手順で製造することで、製造時における磁気抵抗効果素子1へのダメージが抑えられるので好ましい。
(磁気メモリの初期設定)
磁気メモリ10は、使用(書込)前に、すべてのメモリセル6の磁気抵抗効果素子1の磁化固定層11の磁化方向を所定の向き(図3では上向き)に揃える初期設定を行う。詳しくは、磁気メモリ10の全体に磁化固定層11の保磁力Hcpよりも大きな磁界を印加する。この磁界印加は、完成した(製造後の)磁気メモリ10に限られず、磁気メモリ10の製造工程途中において磁化固定層11用の磁性膜材料を成膜した後以降であれば、どの段階であっても実施することができる。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図4および図5を参照して説明する。図4、図5では、簡潔に説明するために、磁気メモリ10における1列のメモリセル6(1つのメモリセル列60)を示し、さらにこのメモリセル列60に4つのメモリセル6が配列されているとし、適宜、図中左からメモリセル61,62,63,64と称する。この図4、図5に示すメモリセル列60が列デコーダ92(図1参照)により選択されて(ビット線選択トランジスタ73,74:ON状態)、書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源95または定電流源94にビット線BLT,BLBが接続している。ここでは、メモリセル61,62,63,64にそれぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータを書込みし、また、このデータを読出しするものとして説明する。
なお、記憶装置90においては、図1に示すように2つの磁気メモリ10が並列に書込/読出電流回路9に接続されている。そこで、行デコーダ91により、非選択の(書込/読出をしない)方の磁気メモリ10について、1以上の同じ行の第1、第2ワード線選択トランジスタ71,72の両方をOFF状態にして、この磁気メモリ10の各メモリセル列60の回路を切断して電流が供給されないようにする。
(磁気メモリの書込方法)
まず、図4(a)を参照して、データ‘0’の書込みについて説明する。行デコーダ91によりすべての行が選択され、ワード線WLTの第1ワード線選択トランジスタ71がON状態、ワード線WLBの第2ワード線選択トランジスタ72がOFF状態である。これにより、4つすべてのメモリセル6において、第1選択トランジスタ41がON状態、第2選択トランジスタ42がOFF状態である。なお、図4および後記の図5において、第1ワード線選択トランジスタ71および第2ワード線選択トランジスタ72は、ON状態のとき、白抜き矢印を付して表す。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60にビット線BLT側からビット線BLB側へ右方向に電流Iwを供給すると、各メモリセル6において、電流Iwが第1選択トランジスタ41を経由して磁気抵抗効果素子1に供給される。図2に示すように、第1選択トランジスタ41のドレイン4d1は配線51により磁気抵抗効果素子1の上面すなわち磁化自由層3に接続しているため、磁化自由層3の磁化方向は磁化固定層11と平行な上向きになる(図3(c)参照)。したがって、4つすべてのメモリセル6にデータ‘0’が書込みされる。
次に、図4(b)を参照して、データ‘1’の書込みについて説明する。行デコーダ91により中央の2行(2行目と3行目)が選択され、図4(b)に示すように、両端の2行(1行目と4行目)が非選択状態に切り替えられて、ワード線WLTの第1ワード線選択トランジスタ71がOFF状態に、ワード線WLBの第2ワード線選択トランジスタ72がON状態になる。これにより、両端の2つのメモリセル61,64において、第1選択トランジスタ41がOFF状態、第2選択トランジスタ42がON状態である。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60に、今度はビット線BLB側から左方向へ電流Iwを供給する。すると、中央の2つのメモリセル62,63においては、図4(a)とは逆方向に電流Iwが磁気抵抗効果素子1に供給されるため、磁化自由層3の磁化方向が磁化固定層11と反平行な下向きに反転する(図3(d)参照)。一方、メモリセル61,64においては、電流Iwが第2選択トランジスタ42を経由して磁気抵抗効果素子1を迂回して流れるため、これらの磁気抵抗効果素子1には電流Iwが供給されず、磁化自由層3の磁化方向は変化せず、上向きを維持する。その結果、メモリセル62,63が‘1’に書き替えられて、メモリセル列60に左から‘0’、‘1’、‘1’、‘0’のデータが書込みされる。
このように、メモリセル6が第2選択トランジスタ42による開閉自在な迂回路を設けられていることにより、直列に接続されてメモリセル列60を構成していても、その中の任意のメモリセル6に限定して磁気抵抗効果素子1に電流を供給することができる。そして、1つのメモリセル列60について、メモリセル6の数にかかわらずそれらすべてに‘1’、‘0’のデータを、最少2回の電流供給により書込みすることができる。また、理論上(磁気抵抗効果素子1および選択トランジスタ41,42の各抵抗による負荷を無視した場合に)、1つのメモリセル列60に供給する電流が、1個の磁気抵抗効果素子1を磁化反転させる大きさで足りる。
磁気メモリ10の書込みにおいて、定電流源95は、一定の電流I
wを供給し、その出力電圧V
wが、下式(1)に表されるようにBLT−BLB間の抵抗値、すなわちメモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkに依存する。このメモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkは、下式(2)で表される。図4に示すように、メモリセル6は、電流I
wの経路が、選択されたときには第1選択トランジスタ41と磁気抵抗効果素子1、非選択のときには第2選択トランジスタ42のみであるから、各抵抗値R
CELLsl,R
CELLnsを合算して抵抗値ΣR
CELLkが得られる。なお、本明細書において、例えばメモリセル6について、k行目(1≦k≦N)のメモリセル6
kの抵抗値R
CELLkのメモリセル列60に配列されたN個すべての和(総和)を、「Σ」の上下の添字「N」、「k=1」を省略して、適宜「ΣR
CELLk」と表す。また、「N」はメモリセル列60に配列されたメモリセル6の数であり、第2実施形態以降も同様に表す。「R
P/AP」は、選択したメモリセル6に記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。また、第1選択トランジスタ41および第2選択トランジスタ42のON抵抗R
ONは、後記するようにゲート−ソース間電圧Vgsに依存する変数であり、メモリセル6毎に異なり得るが、ここでは定数として表す。このように、メモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkは、メモリセル列60における選択したメモリセル6の数mによって異なり、さらに、書込みされた選択したメモリセル6の磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APと共に変化し、これに伴い、定電流源95は出力電圧V
wが変化する。
ここで、メモリセル列60はメモリセル6が直列に接続されてなるので、両端(ビット線BLT,BLB)に接続した定電流源95から電流Iwが供給されているとき、メモリセル6毎に、当該メモリセル6の抵抗(抵抗値RCELLsl,RCELLns)によって、定電流源95の出力電圧Vwから0V(負の出力)まで電位が段階的に降下する。したがって、メモリセル列60においては、メモリセル6毎に、それぞれの選択トランジスタ41,42のソース電位Vsおよびドレイン電位Vd(適宜、まとめて電位)が段階的に異なる。例えば、図4(a)に示すようにビット線BLTの側から電流Iwが供給されているとき、各メモリセル6の第1選択トランジスタ41の電位Vsk,Vdk(k=1〜4)は、図6(a)に表される。一方、磁気メモリ10のすべてのメモリセル6が同じ構造で、それぞれのメモリセル6に設けられた選択トランジスタ41,42も同じ構造のMOSFETであるから、そのしきい値電圧Vth等も同じ値である。したがって、各メモリセル6の選択トランジスタ41,42に印加するゲート電圧Vgは、当該メモリセル6毎に設定されることが好ましい。
詳しくは、選択トランジスタ41,42は、電流I
wが流れるように、ゲート電圧Vgのソース電位Vsに対する電位差(ゲート−ソース間電圧Vgs)が(Vth+Vds)以上(Vgs≧Vth+Vds、線形領域)である必要がある。さらに、選択トランジスタ41,42は、ゲート−ソース間電圧Vgsが大きくなるにしたがいON抵抗R
ONが低くなり、このようなゲート−ソース間電圧Vgsになるゲート電圧Vgを各メモリセル6の選択トランジスタ41,42に印加することにより、メモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkが低減され、書込みにおける負荷が抑制される。一方、MOSFET(選択トランジスタ41,42)において、ゲート−ソース間電圧Vgsは、過大になるとゲート酸化膜が破壊されるので、その最大定格(破壊電圧)V
(BR)gsに到達することのないようにゲート電圧Vgが設定される必要がある。書込みにおいては、Vds=I
w×R
ONであるから、すべてのメモリセル6の第1選択トランジスタ41または第2選択トランジスタ42のゲート−ソース間電圧Vgsが、下式(3)で表される範囲になるように、メモリセル6毎にゲート電圧Vgが設定される。そのために、記憶装置90は、磁気メモリ10の行(k)毎に変位させたゲート電圧Vg
kを出力するゲート電圧生成回路80を備える。以下、ゲート電圧生成回路80について、図4を参照して説明する。
(ゲート電圧生成回路)
ゲート電圧生成回路80は、電位の高い側から、パルス電源96、保護抵抗85、N個(図4では4個)の分圧抵抗器81、ダイオード83、およびゲート基電圧電源98を、順に直列に接続して備え、さらに、分圧抵抗器81のそれぞれに並列に接続した抵抗切替トランジスタ78を備える。ゲート電圧生成回路80はさらに、保護抵抗85を挟んだパルス電源96の出力と定電流源95の正の出力(図4(a)ではビット線BLT、図4(b)ではビット線BLB)との間に順に接続する、ツェナーダイオード86およびダイオード87を備える。分圧抵抗器81は固定抵抗器であり、並列に接続された抵抗切替トランジスタ78と共に可変抵抗器8を構成する。抵抗切替トランジスタ78は、行デコーダ91からの第2ワード線選択トランジスタ72と共通の信号によりON状態になって、可変抵抗器8を低抵抗に切り替える。
パルス電源96は、電圧可変型の直流(DC)電源であり、メモリセル列60において最も電位の高いメモリセル6(図4(a)ではメモリセル61)の第1選択トランジスタ41または第2選択トランジスタ42に印加するゲート電圧以上の電圧VgH,VgH´をパルス出力する。これにより、ゲート電圧生成回路80から出力するすべてのゲート電圧がパルス出力するため、各メモリセル6の第1選択トランジスタ41または第2選択トランジスタ42は、第1ワード線選択トランジスタ71または第2ワード線選択トランジスタ72がON状態においてON/OFFを繰り返す。したがって、定電流源95からメモリセル列60に供給される電流は、パルス電源96の出力に同期した、ピーク電流Iwの直流パルス電流である。保護抵抗85は固定抵抗器であり、パルス電源96を保護するために設けられる。
ゲート基電圧電源98は、メモリセル列60において最も電位の低いメモリセル6(図4(a)ではメモリセル64)の第1選択トランジスタ41または第2選択トランジスタ42に印加するゲート電圧を確保するために設けられる。ダイオード83は、パルス電源96の停止時(ベース期間)に、ゲート基電圧電源98から選択トランジスタ41,42のゲート電圧Vgとして出力させないために、カソードがゲート基電圧電源98に接続される。ツェナーダイオード86は、メモリセル列60の書込みや読出しにおいて最も電位の高いメモリセル6の選択トランジスタ41,42の保護素子であり、パルス電源96の出力電圧VgH,VgH´が定電流源95の出力電圧Vwに対して一定以上高い場合に電流を流して差を抑えて、ゲート−ソース間電圧Vgsが過大にならないようにする。ダイオード87は、主にパルス電源96の停止時に、定電流源95からゲート電圧生成回路80へ電流を流出させないために、ツェナーダイオード86とは極性を逆向きに、カソードが定電流源95に接続される。なお、図4(a)と図4(b)に示すように、可変抵抗器8(分圧抵抗器81、抵抗切替トランジスタ78)以外のゲート電圧生成回路80の構成要素は、電流Iwの供給の向きによって位置が入れ替わる。したがって、これらの要素は2ずつ設けられていてもよい。
ビット線BLT側から右方向へ電流Iwを供給するとき(‘0’の書込み時)の、ゲート電圧生成回路80による行(k)毎のゲート電圧Vgkの出力について、図4(a)および図6(a)を参照して説明する。まず、メモリセル列60のすべてのメモリセル6の第1選択トランジスタ41(または第2選択トランジスタ42)において共通のゲート−ソース間電圧Vgs(Vgstypと称する)を式(3)の範囲に設定する。ゲート−ソース間電圧Vgstypは、ここでは、上限の最大定格V(BR)gsに対してある程度マージンを設けることが好ましい。また、このゲート−ソース間電圧Vgstypにおける第1選択トランジスタ41のON抵抗RONを、RON=1/β(Vgs−Vth)より算出する(β:選択トランジスタ41,42の利得係数)。そして、設定したゲート−ソース間電圧Vgstypとなる、行(k)毎のゲート電圧Vgkを出力するように、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0´を設定する。
前記したように、図4(a)においては、すべてのメモリセル6が選択されている。したがって、行デコーダ91によりすべての行の第2ワード線選択トランジスタ72がOFF状態であり、これに伴い、抵抗切替トランジスタ78もOFF状態である。パルス電源96から保護抵抗85を経由して出力した電圧VgHは、ワード線選択トランジスタ71を経由して、メモリセル61の第1選択トランジスタ41にゲート電圧Vg1として印加される(Vg1=VgH)。パルス電源96の出力電圧VgHは一方で、破線矢印で表すように1行目の分圧抵抗器81を経由して電圧降下して、メモリセル62の第1選択トランジスタ41にゲート電圧Vg2として印加される。以下、同様に分圧抵抗器81を1個ずつ経由して、ゲート電圧Vg3,Vg4として、それぞれメモリセル63,64の各第1選択トランジスタ41に印加される。
各行の分圧抵抗器81は同じ抵抗値Rdivであるので、各ゲート電圧Vgkについて、Vg1−Vg2=Vg2−Vg3=Vg3−Vg4=Vg4−Vg0´=ΔVgである。すなわち、ゲート電圧生成回路80は、図6(a)に表されるように、VgHからVg0´(ダイオード83の抵抗は無視する)までΔVgずつ均等に降下した(N+1)通りの電圧を出力する。そして、パルス電源96およびゲート基電圧電源98が出力する電圧VgH、Vg0´をそれぞれ適切な値に設定することにより、すべてのメモリセル6の第1選択トランジスタ41においてゲート−ソース間電圧Vgskが設定したVgstypに一致するゲート電圧Vgkが出力されることになる。図6(a)に両矢印の実線部分で表されるゲート−ソース間電圧Vgs1,Vgs2,Vgs3,Vgs4が、Vgstypである。なお、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力について、それぞれ保護抵抗85およびダイオード83の抵抗はここでは無視する。
‘0’の書込みにおいて、パルス電源96の出力電圧Vg
Hはメモリセル6
1の第1選択トランジスタ41のゲート電圧Vg
1であり(Vg
H=Vg
1)、この第1選択トランジスタ41のドレイン電位Vd
1は、式(1)に表した定電流源95の出力電圧(正の電位)V
wである(Vd
1=V
w)。そして、式(2)に表したように、メモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkは、選択したm個のメモリセル6のそれぞれの磁気抵抗効果素子1の抵抗値によって変動する。書込み前における抵抗値がR
P,R
APのいずれかであるかは不明であるので、第1選択トランジスタ41を確実に線形領域で動作させるために、定電流源95の出力電圧V
w(=ドレイン電位Vd
1)を想定される範囲において最大値V
wMAXである、すなわちメモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkが最大になる場合を仮定する。そのために、すべての選択したメモリセル6は、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が高い方のR
APであるとき、すなわちデータが‘1’のときの抵抗値R
CELLsl(1)と仮定する。したがって、定電流源95の最大出力電圧V
wMAXは下式(4)で表される。なお、図4(a)のようにすべてのメモリセル6を選択する場合には、下式(4)、および後記の式(5)、式(8)において、m=Nである。
メモリセル6
1の第1選択トランジスタ41は、ソース電位Vs
1が(Vd
1−I
w×R
ON)であるから、ゲート電圧Vg
1すなわちパルス電源96の出力電圧Vg
Hを下式(5)で表されるように設定することにより、設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typとなる。
一方、メモリセル列60において最も電位の低いメモリセル6
N(図4(a)ではメモリセル6
4)の第1選択トランジスタ41は、ソース電位Vs
Nが(I
w×R
AP)であるから、下式(6)で表されるゲート電圧Vg
Nであればよい。このようなゲート電圧Vg
Nが出力されるためには、隣り合うメモリセル6
k,6
k+1の各第1選択トランジスタ41のソース電位の差(I
w×R
CELLsl)にΔVgを一致させる。したがって、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0´は下式(7)で表されるように設定される。このようなパルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H,Vg
0´を設定することにより、すべてのメモリセル6の第1選択トランジスタ41に、式(3)を満足する同一のゲート−ソース間電圧Vgs
typになるゲート電圧Vg
kが出力される。
‘0’の書込みにおいては、選択したメモリセル6がデータ‘0’に書込みされて、磁気抵抗効果素子1の抵抗値がRAPからRPに低下するため、抵抗値がRCELLsl(1)からRCELLsl(0)に低下する。これに伴いメモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkが低下し、定電流源95の出力電圧Vwが降下する。そのため、各メモリセル6の第1選択トランジスタ41は、図6(a)に破線で表されるようにソース電位Vsが降下し、その分、ゲート−ソース間電圧Vgsが増大し、その結果、ON抵抗が低下して、メモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkがさらに低下する。ゲート−ソース間電圧Vgsの増大およびそれによるON抵抗の低下は、すべてのメモリセル6を選択するのではない場合(1≦m≦N−1)の非選択のメモリセル6の第2選択トランジスタ42についても同様である。このように、各メモリセル6の抵抗値RCELLsl(0),RCELLnsは低下するが、各行のゲート電位Vgkは変化しないので、メモリセル6毎に第1選択トランジスタ41または第2選択トランジスタ42のゲート−ソース間電圧Vgsk(適宜区別して、Vgsk´と表す)が設定した値Vgstypと異なり(Vgstyp<Vgsk´)、したがって、ON抵抗RONk´(RONk´<RON)も異なる。
さらに、すべてのメモリセル6を選択するのではない場合には、メモリセル列60において何行目のメモリセル6を選択するかによって、各メモリセル6
kの選択トランジスタ41,42のゲート−ソース間電圧Vgs
k´およびON抵抗R
ONk´が異なる。詳しくは、k行目のメモリセル6
kにおいて、その電位の低い側に接続された(N−k)個のメモリセル6のうちの選択された数が多いほど、選択トランジスタ41,42のソース電位Vs
kの低下が大きく、ON抵抗R
ONk´が低くなる。すなわち、選択されたm個のメモリセル6が、メモリセル列60において電位の最も低い端のメモリセル6から順にm個である場合に、メモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkの変化が最も大きい。このときの定電流源95の出力電圧V
wを最小出力電圧V
wMINとして、下式(8)で表す。さらに、下式(8)のΣR
ONk´は、選択したメモリセル6の数mが多いほど小さく(N×R
ONとの差が大きく)、m=Nのときに最小になる。メモリセル6
k毎の第1選択トランジスタ41または第2選択トランジスタ42のゲート−ソース間電圧Vgs
k´およびON抵抗R
ONk´は、シミュレーションによって算出される。
各メモリセル6
kの第1選択トランジスタ41のゲート−ソース間電圧Vgs
k´が最大定格V
(BR)gsに到達しないように、‘0’の書込み前の(選択したすべてのメモリセル6のデータが‘1’と仮定したときの)ゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。メモリセル列60においてゲート−ソース間電圧Vgs
k´が最大、すなわちソース電位Vs
kの降下量が最大になるのは、電位の最も高いメモリセル6
1の第1選択トランジスタ41であり、さらにすべてのメモリセル6を選択したとき(m=N)である(図6(a)参照)。したがって、下式(9)で表されるように、この第1選択トランジスタ41のゲート−ソース間電圧Vgs
1´が最大定格V
(BR)gsに到達しなければよい。下式(9)より、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(10)を満足するように設定される。なお、「ΔR
P」は、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量(ΔR
P=R
AP−R
P)を表す。
式(10)を満足するゲート−ソース間電圧Vgsが存在するためには、磁気メモリ10は下式(11)を満足する必要がある。そのために、メモリセル列60は、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量ΔR
Pや選択トランジスタ41,42のON抵抗R
ON等に基づいて配列するメモリセル6の数Nが設計される。特に、選択トランジスタ41,42は、しきい値電圧Vthに対して最大定格(破壊電圧)V
(BR)gsが大きいことが好ましい。
さらに、各メモリセル6の選択トランジスタ41,42のゲート−ソース間電圧Vgsが最大定格V
(BR)gsに到達することのないように、パルス電源96の出力電圧Vg
Hは、常に下式(12)を満足する必要がある。そのため、ゲート電圧生成回路80は、ツェナーダイオード86により、電位差(Vg
H−V
w)が下式(13)で表されるツェナー電圧Vzを超えたら、パルス電源96からメモリセル列60(ビット線BLT)へ電流を流して、電圧Vg
Hが常に式(12)を満足するように構成される。このような構成により、メモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkにかかわらず、すべてのメモリセル6の選択トランジスタ41,42が破壊されることなく線形領域で動作する。なお、ツェナー電圧Vzに電流が流れてパルス電源96とビット線BLTが導通すると、メモリセル列60に供給される電流I
wが増大して定電流源95で設定した電流I
w0を超える(I
w>I
w0)ため、導通することのないことが好ましい。そのため、ツェナー電圧Vzはゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0´以上に設定される。
ビット線BLB側から左方向へ電流Iwを供給するとき(‘1’の書込み時)の、ゲート電圧生成回路80による行(k)毎のゲート電圧Vgkの出力について、図4(b)を参照して説明する。電流Iwの向きに合わせてメモリセル列60における電位の高低が逆転し、これに伴い各行のゲート電圧Vgkの電位の高低の順序が入れ替わる以外は、‘0’の書込み時(図4(a)参照)と概ね同様であり、式(3)の範囲で設定した同じゲート−ソース間電圧Vgstypが適用される。ただし、ここでは、選択しないメモリセル6がある場合(1≦m≦N−1)があり、式(1)および式(2)に表されるように、その分、定電流源95の出力電圧Vwが低減される。そのため、ゲート電圧生成回路80は、非選択の行におけるゲート電圧Vgkの降下量が、この行のメモリセル6kでの電位の降下に対応して小さくなるように構成される。以下に、非選択のメモリセル6がある場合のゲート電圧Vgkの降下について説明する。
前記した通り、ゲート電圧生成回路80において、並列に接続された分圧抵抗器81と抵抗切替トランジスタ78は、可変抵抗器8を構成する。図4(b)に破線矢印で表すように、非選択の行においては、第2ワード線選択トランジスタ72と共通の行デコーダ91からの信号により抵抗切替トランジスタ78がON状態になり、可変抵抗器8の抵抗値は、抵抗切替トランジスタ78のON抵抗R
dvONと分圧抵抗器81の抵抗値R
divの合成抵抗(R
div||R
dvON)となる。一方、選択時の可変抵抗器8の抵抗値は、分圧抵抗器81の抵抗値R
divである。したがって、下式(14)に表されるように、R
divと(R
div||R
dvON)の比が、メモリセル6の選択、非選択時の各抵抗値R
CELLsl,R
CELLnsの比に略一致すればよい。そのため、分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ78は、各抵抗値R
div,R
dvONが下式(15)を満足するように設計されることが好ましい。ここでは、メモリセル列60の共通のゲート−ソース間電圧Vgs
typを、定電流源95の最大出力電圧V
wMAXに基づいて、すなわちすべての磁気抵抗効果素子1の抵抗値がR
APであると仮定して設定しているので、R
div/R
dvON=R
AP/R
ONとする。
なお、式(15)を満足する抵抗切替トランジスタ78のON抵抗の調整が困難な場合は、抵抗切替トランジスタ78に固定抵抗器を直列に接続すればよい(図示せず)。ゲート電圧生成回路80の可変抵抗器8は、分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ78に限られず、行デコーダ91からの第2ワード線選択トランジスタ72への信号に連動して、下式(14)の比で2段階に抵抗値が変化する構造であればよい。ゲート電圧生成回路80は、このような構成により、選択か非選択かに応じて、各ゲート電圧Vgkの変化量を2段階に切り替えて出力する(後記の読出しにおける図6(b)参照)。
‘1’の書込みにおいて、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0はメモリセル6
1の第1選択トランジスタ41のゲート電圧Vg
1であり(Vg
0=Vg
1)、この第1選択トランジスタ41のソース電位Vs
1は定電流源95の負の出力(0V)である(Vs
1=0V)。したがって、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(16)に表されるようにゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)と同じ電圧に設定される。また、パルス電源96とゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H´、Vg
0間の電位差は、‘0’の書込みにおけるパルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H、Vg
0´間の電位差と同じであればよい。すなわち、パルス電源96の出力電圧Vg
H´は下式(17)に表される。
‘0’の書込み時と同様に、各メモリセル6の選択トランジスタ41,42のゲート−ソース間電圧Vgsが最大定格V
(BR)gsに到達することのないように、パルス電源96の出力電圧Vg
H´は、常に下式(18)を満足する必要がある。そのために、ゲート電圧生成回路80は、ツェナーダイオード86により、(Vg
H´−V
w)が下式(19)で表されるツェナー電圧Vzを超えたら、パルス電源96からメモリセル列60(ビット線BLB)へ電流を流すように構成される。
このように、‘1’の書込みは、‘0’の書込みに対して、ゲート電圧生成回路80の出力とメモリセル列60との電位差が(Iw×RON)すなわち選択トランジスタ41,42のドレイン−ソース間電圧Vds分ずれており、ゲート−ソース間電圧Vgsの式(10)の範囲等、それ以外については‘0’の書込みと同様である。なお、‘0’の書込みにおいても、選択しないメモリセル6があってもよい(1≦m≦N−1)。図4(a)に示すように、‘0’の書込み、すなわちビット線BLT側から電流Iwを供給すると、同じメモリセル6kの第1選択トランジスタ41と第2選択トランジスタ42とでソース電位Vskが(Iw×RP/AP)異なるが、同じk行目の可変抵抗器8によって異なるゲート電圧Vgkが出力されるため、ゲート−ソース間電圧Vgsはほぼ一定になる。
磁気メモリ10の行の数(N)と同数の可変抵抗器8を直列に接続してなる分圧回路を内蔵したゲート電圧生成回路80により、書込みをするメモリセル6の数mに応じて最も高い電位(パルス電源96の出力電圧VgH,VgH´)と最も低い電位(ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg0,Vg0´)を式(5)、式(7)、式(16)、式(17)に表されるように管理することで、選択、非選択にかかわらずすべてのメモリセル6の選択トランジスタ41,42に適正なゲート電圧Vgが出力される。その結果、すべてのメモリセル6において、選択トランジスタ41,42をゲート破壊することなく低いON抵抗RONで動作させて負荷が抑えられる。また、パルス電源96の出力がツェナーダイオード86およびダイオード87を経由してメモリセル列60の電位の最も高い側に接続されているので、各メモリセル6の選択トランジスタ41,42がゲート破壊される虞がない。
すべてのメモリセル6の選択トランジスタ41,42において共通とするゲート−ソース間電圧Vgstypは、選択したすべてのメモリセル6のデータが‘0’(磁気抵抗効果素子1の抵抗値RP)であると仮定して設定されてもよい。この場合は、メモリセル6のデータが‘1’のときに、選択トランジスタ41,42のソース電位Vsが上昇して、ゲート−ソース間電圧Vgsが減少してON抵抗RONが増大する。したがって、電位の上昇幅が最大である電位の最も高いメモリセル6において、選択トランジスタ41,42のゲート−ソース間電圧Vgs´(<Vgstyp)が線形領域である(Vgs´≧Vth+Iw×RON´)ように、ゲート−ソース間電圧Vgstypが設定される。また、すべてのメモリセル6において、選択トランジスタ41,42のゲート−ソース間電圧Vgsは、式(3)の範囲であれば共通の値でなくてもよい。
磁気メモリ10の書込みにおいては、メモリセル列60のすべてのメモリセル6に‘1’を書込みした後に、‘0’を書込みしてもよい。また、1回目の書込みにおいてすべての行を選択せずに‘1’または‘0’を書込みする行のみを選択してもよい。また、‘0’、‘1’を、それぞれ1回で書込みしなくてもよく、例えば2n-1ずつに分けて書込みをしてもよく(n:自然数)、磁気抵抗効果素子1の抵抗値RP,RAPが特に高い場合に負荷を抑制することができる。また、図1に示すように、行方向に2つ以上(図1では2つ)の磁気メモリ10が並列に設けられている記憶装置90においては、磁気メモリ10,10のそれぞれから1列ずつメモリセル列60を選択して、同時に‘1’や‘0’をメモリセル6に書込みすることもできる。また、1回目の書込みにおいて、磁気メモリ10の2列以上(2以上のメモリセル列60)を選択して、これらのメモリセル列60に並列に電流Iwを供給して、選択したメモリセル列60のすべてのメモリセル6に同時に同じデータを書込みしてもよい。この場合、ゲート電圧生成回路80は、保護抵抗85を挟んだパルス電源96の出力から分岐して、同時に選択したメモリセル列60のそれぞれのビット線BLT(またはビット線BLB)に接続するツェナーダイオード86およびダイオード87を備えることが好ましい。
(磁気メモリの読出方法)
図5に示すメモリセル列60のメモリセル61,62,63,64は、それぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’が記憶されているので、それぞれの磁気抵抗効果素子1の抵抗値は、RP,RAP,RAP,RPである。図5(a)において、行デコーダ91により1行目が選択されると、左端のメモリセル61の第1選択トランジスタ41がON状態、第2選択トランジスタ42がOFF状態になり、それ以外の3つのメモリセル62,63,64の第1選択トランジスタ41がOFF状態、第2選択トランジスタ42がON状態になる。この状態で定電流源94からメモリセル列60に磁気抵抗効果素子1が磁化反転しない大きさの電流(定電流)Irを供給すると、左端のメモリセル61においては、電流Irが第1選択トランジスタ41と磁気抵抗効果素子1に流れ、他のメモリセル62,63,64においては、第2選択トランジスタ42に流れる。
また、図5(b)において、行デコーダ91により2行目が選択されると、左から2行目のメモリセル62の第1選択トランジスタ41がON状態、第2選択トランジスタ42がOFF状態になり、それ以外のメモリセル61,63,64の第1選択トランジスタ41がOFF状態、第2選択トランジスタ42がON状態になる。この状態でメモリセル列60に供給された電流Irは、左端のメモリセル61においては第2選択トランジスタ42に流れ、メモリセル62においては第1選択トランジスタ41と磁気抵抗効果素子1に流れ、残りのメモリセル63,64においては、再び第2選択トランジスタ42に流れる。このように、磁気メモリ10の読出しにおいては、書込みにおいて1つのメモリセル6を選択した場合と同じ経路で、メモリセル列60に電流Irが流れる。
磁気メモリ10の読出しにおいて、定電流源94は、一定の電流I
rを供給するために、その出力電圧V
rが、書込みにおける定電流源95と同様に、下式(20)に表されるようにメモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkに依存する。前記した通り、読出しにおいては、1つのメモリセル6を選択した書込みと同様に電流が流れるので、メモリセル列60の抵抗値ΣR
CELLkは、式(2)に示す書込みにおける抵抗値ΣR
CELLkについてm=1としたもので、下式(21)で表される。「R
P/AP」は、選択したメモリセル6
j(1≦j≦N)に記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APのいずれかを指し、例えば、図5(a)に示すようにメモリセル6
1を選択したときは抵抗値R
P、図5(b)に示すようにメモリセル6
2を選択したときは抵抗値R
APである。また、第1選択トランジスタ41および第2選択トランジスタ42のON抵抗R
ONは、書込み時と同様、定数として表す。
したがって、磁気メモリ10は、メモリセル列60において、1つのメモリセル6を選択し、各メモリセル6の選択トランジスタ41,42のON抵抗を制御して定電流Irを供給されることにより、書込みと共通の配線を用いて、選択したメモリセル6に記憶されたデータの読出しをすることができる。詳しくは、メモリセル列60に定電流Irを供給したときの定電流源94の出力電圧Vrを、ビット線BLTに接続した電圧比較器93により参照電位(閾値)Vrefと比較して低いか高いかで、選択したメモリセル6の磁気抵抗効果素子1の抵抗値がRP,RAP、すなわちデータが‘0’、‘1’のいずれであるかが判定される。そして、メモリセル列60において選択する行を1行ずつ切り替えることにより、各メモリセル6に記憶されたデータを読出しすることができる。
また、書込みと同様に、メモリセル列60におけるすべてのメモリセル6の第1選択トランジスタ41または第2選択トランジスタ42を、設定したON抵抗R
ONで動作させるために、メモリセル6毎にゲート電圧Vgが設定されてゲート電圧生成回路80から出力される。すなわち、本実施形態に係る磁気メモリ10の読出しは、‘0’の書込み(図4(a)参照)と同様の方法で、ただし、メモリセル列60に電流I
rを供給して行う。また、読出しにおいては、選択するメモリセル6の数mを1に固定し(m=1)、また、メモリセル列60に連続電流で電流I
rを供給する。そのため、図5に示すように、ゲート電圧生成回路80は、パルス電源96に代えて定電源97が電圧Vg
Hを出力する。ゲート電圧生成回路80のその他の構成は書込方法にて説明した通りであり、可変抵抗器8が行デコーダ91からの第2ワード線選択トランジスタ72への信号に連動して抵抗値が変化する。したがって、磁気メモリ10の読出しにおいても、まず、すべてのメモリセル6の選択トランジスタ41,42について、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)を(Vth+Vds)以上最大定格V
(BR)gs未満に、すなわちVds=I
r×R
ONより下式(22)の範囲に設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONを算出する。
そして、定電流源94の出力電圧V
rが下式(23)の最大値V
rMAXになるように、選択したメモリセル6のデータが‘1’であると仮定し、定電源97の出力電圧Vg
Hが下式(24)で表される。また、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0´は下式(25)で表される。これらは、‘0’の書込みにおける式(4)、式(5)および式(7)について、電流I
wを電流I
rに、mを1に、それぞれ置き換えたものである。なお、ゲート基電圧電源98については、下式(25)および式(7)を同時に満足する出力電圧Vg
0´に設定して、書込み、読出しを問わず、一定の電圧Vg
0´を出力してもよい。
また、書込みと同様に、選択したメモリセル6のデータが‘1’と仮定して設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typに基づいて出力されたゲート電圧Vg
kが、データが‘0’であった場合に最大定格V
(BR)gsに到達しないように、定電流源94の出力電圧V
rの最小値V
rMINに基づいて設定される。読出しにおいては、選択するメモリセル6が常に1つであり(m=1)、図5(b)に示すメモリセル6
2を選択した場合を表した図6(b)に示すように、その電位の低い側に接続されたすべての非選択のメモリセル6
3,6
4の第2選択トランジスタ42については、データによってソース電位Vs
3,Vs
4が変化しない。したがって、定電流源94の最小出力電圧V
rMINは、メモリセル列60において電位の最も低い側のメモリセル6
Nを選択し、かつそのデータが‘0’であった場合の出力電圧であり、下式(26)で表される。このような場合を想定して、メモリセル6毎の選択トランジスタ41,42のゲート−ソース間電圧Vgs´およびON抵抗R
ON´が、シミュレーションによって算出される。このときの、電位の最も高い側のメモリセル6
1の第2選択トランジスタ42のゲート電圧Vg
1(=Vg
H)について、ソース電位Vs
1(=V
rMIN−I
r×R
ON´)との電位差が最大定格V
(BR)gsに到達しないように、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(27)を満足するように設定される。
また、ツェナーダイオード86のツェナー電圧Vzは、式(13)に基づいて、下式(28)を満足するように設定され、式(13)も同時に満足する場合は、書込み時と同じツェナーダイオード86を適用することができる。読出しにおいては、定電源97の出力電圧Vg
Hは、定電流源94の出力電圧V
rとの差がツェナーダイオード86のツェナー電圧Vzを超えると、メモリセル列60に供給される電流I
rが増大して判定が困難になるので、特に最大定格V
(BR)gsに対して十分なマージンを有して設定されることが好ましい。
磁気メモリ10の読出しにおいては、メモリセル列60に配列されたメモリセル6の数Nが多くなると、メモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkが増大するために、変化量(ΔRP)に対して、抵抗値ΣRCELLkの変化率(ΔRP/ΣRCELLk)が低下する。その結果、読出しの精度が低下し、あるいは読出しを可能にするために電流Irを大きくする必要が生じる。なお、磁気メモリ10においては、選択したメモリセル6のデータが‘0’の場合に、‘1’の場合と比較して、このメモリセル6の磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPだけでなく、一部のメモリセル6の選択トランジスタ41,42についても低いON抵抗RON´になる。そのため、選択したメモリセル6のデータによるメモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkの変化量は、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量ΔRPよりも大きい。ただし、ここではON抵抗RONで一定であると仮定して、以下の通り、メモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkの変化率について検証する。
例えば、CPP−GMR素子はMR比が高いもので数%程度であり、これを磁気抵抗効果素子1に適用した場合、メモリセル列60の抵抗変化率は次のように算出される。磁気抵抗効果素子1について、MR比5%(ΔRP/RP=0.05)と仮定し、さらに抵抗値RPが選択トランジスタ41,42のON抵抗RONの1/2(0.5RON=RP)であると仮定すると、メモリセル列60の抵抗変化率は、N=16で0.15%、N=32で0.077%になる。これに対して、選択トランジスタ41,42のON抵抗RONを半減させて、すなわち磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPと同値(RON=RP)にすると、メモリセル列60の抵抗変化率は、N=16で0.29%、N=32で0.15%、N=64で0.077%と、ほぼ2倍になる。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10において、読出し用の電流Irを大きくすることなく高精度に読出しをするためには、MR比の高い磁気抵抗効果素子1を適用したり、メモリセル列60に配列されるメモリセル6の数Nを低減すること以外に、選択トランジスタ41,42を、面積を大きく設計する等してON抵抗RONを低減すればよい。これらの設計は、書込みのための式(11)を満足する磁気メモリ10の設計と併せて行われる。
本実施形態に係る磁気メモリ10においては、MR比が高く、かつON抵抗RONの5倍程度またはそれよりも抵抗の高いTMR素子を磁気抵抗効果素子1に適用することによって、読出しの精度を高くすることもできる。一方で、TMR素子は抵抗値RP,RAPが高いので、磁気抵抗効果素子1に適用されると、書込みにおいて、メモリセル列60の抵抗値ΣRCELLkが高くなって負荷が増大し(式(2)参照)、さらに抵抗値の変化量ΔRPが大きいので、式(11)を満足するために、メモリセル列60に配列するメモリセル6の数Nが少なく制限される場合がある。一方で、TMR素子は反転電流密度が小さく電流Iwを低減することができるため、負荷等がある程度は相殺される。
図5においては、電流Irがビット線BLTの側からメモリセル列60に供給されているが、電流Irの向きは逆でもよい。この場合は、図4(b)に示す‘1’の書込みと同様に、ゲート電圧生成回路80の定電源97やツェナーダイオード86等の接続箇所を入れ替える。また、定電源97の出力電圧VgHが最大定格V(BR)gsに対して十分なマージンを有して設定することができ、選択トランジスタ41,42が破壊される虞のない場合は、ゲート電圧生成回路80は、ツェナーダイオード86およびダイオード87を経由して定電流源94の正(+)に接続しなくてもよい。具体的には、電流Irが十分に小さいことにより定電流源94の出力差(VrMAX−VrMIN)が小さい、選択トランジスタ41,42の最大定格V(BR)gsが大きい、等の場合が挙げられる。
また、図5では、1つのメモリセル列60を示して、メモリセル6を1つずつ読出しする方法を説明したが、記憶装置90は、磁気メモリ10から選択した1行における2以上のメモリセル6を並行して読出しすることもできる。詳しくは、記憶装置90は、書込/読出電流回路9が2以上の定電流源94を内蔵し(図示せず)、列デコーダ92により磁気メモリ10の2以上の列を選択して、これらの列毎にビット線BLT,BLBを定電流源94に接続し、それぞれのメモリセル列60に電流Irを供給しながら、選択した1行の各メモリセル6を、各列のビット線BLTに接続した電圧比較器93(図1参照)により読出しすることができる。このとき、ゲート電圧生成回路80は、ツェナーダイオード86およびダイオード87を接続する場合には、書込方法にて説明したように、同時に選択したメモリセル列60毎(定電流源94毎)に備えることが好ましい。
磁気メモリ10の書込みおよび読出しにおいては、ゲート電圧生成回路80の分圧回路によらずに、各行のゲート電圧Vgを個別にシミュレーションで算出して出力してもよい。具体的には、メモリセル6毎に、選択トランジスタ41,42の想定されるソース電位Vsの最小値およびドレイン電位Vdの最大値を、当該メモリセル6の行アドレス、およびメモリセル列60において負の側に配列されたメモリセル6の内の選択された数に基づいて算出し、最大定格V(BR)gsに到達せずに線形領域で動作させるゲート電圧Vgを設定する。
〔空間光変調器〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリは、磁気抵抗効果素子の磁化自由層に磁気光学材料を適用することにより、磁気抵抗効果素子を光変調素子とする反射型の空間光変調器に適用することができる(特許文献3,4参照)。空間光変調器とする磁気メモリ10は、図2において、磁気抵抗効果素子1の上面に接続する配線51の抵抗接続層51bをITO,IZO等の透明電極材料で形成する。そして、磁気抵抗効果素子1について、上側に磁化自由層3を配置し、平面視形状における一辺の長さを入射光の回折限界(波長の1/2程度)以上とする。ただし、スピン注入磁化反転素子である磁気抵抗効果素子1は、平面視サイズが大きくなると磁化反転し難くなるため、画素を大きくする場合には、2個以上が一対の配線51,52に並列に接続されて設けられてもよい(図示せず)。磁気メモリ10を空間光変調器として動作させる、すなわち所定の光変調素子の明暗(磁気抵抗効果素子の‘1’、‘0’)を設定するための構成は、図1に示す記憶装置90と同様である。ただし、読出しによる書込みエラーの検出をしないのであれば、書込/読出電流回路9の定電流源94および電圧比較器93、ならびにゲート電圧生成回路80の定電源97は不要である。また、読出しをしない場合には、磁気抵抗効果素子1に抵抗の低いCPP−GMR素子を適用して、メモリセル列60のメモリセル6の数を多くすることができる。さらにこの場合には、磁気抵抗効果素子1の中間層2に反射率の高いAgを適用することが好ましく、これにより光の取出し効率の高い空間光変調器が得られる。
(光変調素子の動作)
本実施形態に係る磁気メモリにおける磁気抵抗効果素子の、光変調素子としての動作を、図3(a)、(b)を参照して説明する。上方から配線51(抵抗接続層51b)を透過して磁気抵抗効果素子1に入射した光は、中間層2または配線52(抵抗接続層52a)により反射し、再び配線51を透過して上方へ出射する。その際、磁性体である磁化自由層3の磁気光学効果(カー効果)により、光はその偏光面が回転(旋光)して出射する。さらに、磁性体の磁化方向が180°異なると、当該磁性体の磁気光学効果による旋光の向きは反転する。したがって、図3(a)、(b)にそれぞれ示す、磁化自由層3の磁化方向が互いに180°異なる磁気抵抗効果素子1における旋光角は+θk,−θkで、互いに逆方向に偏光面が回転する。なお、旋光角+θk,−θkは、磁化自由層3での1回の反射による旋光(カー回転)に限られず、例えば磁気抵抗効果素子1における多重反射により累積された角度も含める。
本発明の第1実施形態に係る不揮発性メモリは、不揮発性記憶素子として磁気抵抗効果素子を備えた磁気メモリ(MRAM)として説明したが、抵抗変化型メモリ(ReRAM)とすることもできる(図示せず)。また、本実施形態に係る不揮発性メモリは、ユニポーラ(単極性)駆動型のような電流の大小によって磁化方向や抵抗値を変化させる不揮発性記憶素子を適用することもできる。このような不揮発性メモリは、書込みにおいて、電流の向きに代えて、電流の大きさを2段階に切り替えて供給することにより、‘1’、‘0’のデータが書込みされる。
〔第1実施形態の変形例〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリは、特に空間光変調器に適用される場合に、磁気抵抗効果素子(光変調素子)に並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子を適用してもよい(特許文献5参照)。以下、空間光変調器に適用される、本発明の第1実施形態の変形例に係る磁気メモリについて、図7、図8、および図9を参照して説明する。第1実施形態(図1〜5参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第1実施形態の変形例に係る空間光変調器(不揮発性メモリ)10は、画素(メモリセル)6の光変調素子(不揮発性記憶素子)1A以外が、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様の構成で、第1実施形態と同一の等価回路(図1参照)で表される。したがって、空間光変調器10、画素6等の符号は、第1実施形態に係る磁気メモリ10、メモリセル6等と同じ符号を付す。そして、本変形例に係る空間光変調器10は、図7に示すように、第1実施形態(図2参照)と同様に、画素6が、基板40Aの表層に形成された選択トランジスタ41,42に配線51,52で光変調素子1Aを接続してなる。図7では、図2と同様に、左から順に、画素列60におけるビット線BLTから1、2行目の画素6,6を簡略化して示し、ワード線WLT,WLBを省略し、また、空白部分に絶縁層を設けている。また、基板40Aは、隣り合う画素6,6のビット線BLT側の画素6の第2選択トランジスタ42のドレイン4d2とビット線BLB側の画素6の第1選択トランジスタ41のソース4s1とを1つのn+拡散層(図中、符号4d2/s1を付す)で共有した構造であり、第1実施形態に係る磁気メモリ10の基板40(図2参照)と同一の等価回路で表される。以下、光変調素子1Aの構造について説明する。
(光変調素子)
光変調素子1Aは並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子であり、図8(a)、(b)に示すように、膜面方向に離間して並んだ2つの磁化固定層11,12を備え、その上に中間層21,22を挟んで1つの磁化自由層3を積層して備え、断面形状が上下反転した凹字型である。磁化固定層11,12は第1実施形態における磁気抵抗効果素子1の磁化固定層11と、中間層21,22は磁気抵抗効果素子1の中間層2と、それぞれ同様の構造である。ただし、磁化固定層11と磁化固定層12は、互いに逆向きの磁化方向に固定されるために、保磁力が磁化自由層3の保磁力Hcfよりも十分に大きくかつ互いに異なるような材料で形成されている、または、一方がRu等の交換結合膜を挟まれた積層構造からなる。また、光変調素子1Aは、2つのスピン注入磁化反転素子が、厚さ数十nm以下の磁化自由層3のみで直列に接続された構成であるので、全体の抵抗値が第1実施形態における磁気抵抗効果素子1の2倍以上になる。したがって、空間光変調器10において後記するように書込みエラーの検出をしない場合は特に、光変調素子1Aは、中間層21,22が共に非磁性金属で形成されることが好ましい。
光変調素子1Aは、磁化固定層11/中間層21/磁化自由層3、磁化固定層12/中間層22/磁化自由層3の各3層からなる2つのスピン注入磁化反転素子を磁化自由層3で接続した構成である。すなわち、光変調素子1Aは、これら3層が積層された各領域がスピン注入磁化反転素子として機能するので、これらの平面視形状がスピン注入磁化反転素子として好適なものであればよい。一方、光変調素子1Aは、磁化固定層11/中間層21/磁化自由層3、磁化固定層12/中間層22/磁化自由層3の2つのスピン注入磁化反転素子同士の間隔、すなわち磁化自由層3単層のみで構成される領域の長さ(図8における横方向長)は特に規定されない。したがって、光変調素子1Aは、この間隔を長く形成して、図8における横方向に大きくすることができる。例えば、光変調素子1Aは、磁化固定層11/中間層21、磁化固定層12/中間層22を磁化反転に好適なサイズの各100nm×400nmに形成し、全体すなわち磁化自由層3の平面視サイズを400nm×400nmに形成して、光変調素子に好適なサイズにすることができる。空間光変調器10は、さらに画素6を大きくするために、2個以上の光変調素子1Aを図8における紙面垂直方向に並べて、一対の配線51,52に並列に接続して設けてもよい(図示せず)。
図8(c)、(d)に示すように、光変調素子1Aは、磁化固定層11,12に接続した配線51,52(一対の端子p1,p2)を介して、定電流源95から向きを変えて電流Iwを供給されることにより、磁化自由層3の磁化方向が反転する。したがって、光変調素子1Aは、図3に示す磁気抵抗効果素子1と同じく、一対の端子を介して電流を供給される不揮発性記憶素子であるといえる。さらに、光変調素子1Aは、電流経路上における磁化自由層3の両側に、磁化方向が異なる2つの磁化固定層11,12を備えることにより、磁化自由層3に、一方の磁化固定層から注入されるスピンの偏った電子が他方の磁化固定層に弁別されて留まり、安定した磁化反転動作をする。また、光変調素子1Aは、磁化固定層11,12が積層された領域同士の間を含めた磁化自由層3の全体が磁化反転するため、前記した通り、磁化固定層11,12等をスピン注入磁化反転に好適な平面視サイズに抑えつつ、磁化自由層3を大きく形成して、画素6の開口率の高い空間光変調器を得ることができる。
光変調素子1Aは、下側(磁化固定層11,12)に一対の端子の両方を有するので、これを備える本変形例に係る空間光変調器10の画素6は、図7に示すように、配線51,52が、同じ高さに設けられた抵抗接続層51a,52aで光変調素子1A(磁化固定層11,12)の下面に接続する。したがって、画素6は、光変調素子1Aの上面すなわち磁化自由層3の上に配線を接続する必要がなく、透明電極材料が不要である。なお、図7において、光変調素子1Aは、磁化固定層11を左側に、磁化固定層12を右側にして配置されている。また、図7において、画素6、特に配線51,52は図2と同様に簡略化して表されるが、画素6のレイアウト設計上、例えば抵抗接続層51a,52aを中継層として、図2の層間部51dおよびその上の抵抗接続層51bのように層を増やしてもよい。
(空間光変調器の製造方法)
本変形例に係る空間光変調器10は、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に、Si基板の表層にMOSFETで選択トランジスタ41,42を形成して基板40Aを製造する工程、ワード線WLT,WLBおよび配線51,52、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程を行い、その後に、光変調素子1Aおよび光変調素子1A,1A間を埋める絶縁層を形成する工程を行って製造することができる。以下、光変調素子1Aを形成する方法の一例を説明する。
表面、すなわち配線51,52の抵抗接続層51a,52a、およびこれらの間を埋める絶縁層を平坦化処理し、その上に、光変調素子1Aの下地膜、磁化固定層11,12、および中間層21,22までの合計の厚さに合わせた絶縁膜を成膜する。絶縁膜上に磁化固定層11の形状を空けたレジストパターンを形成し、絶縁膜をエッチングして抵抗接続層51aを露出させる。このとき、反応性イオンエッチング(RIE)のような比較的加工ダメージの少ない方法を適用し、金属電極材料からなる抵抗接続層51aに対して絶縁膜(例えばSiO2、Si窒化物)のエッチング選択性の高い条件でエッチングすることが好ましい。このような方法により、エッチングで形成される絶縁層の側壁の立ち上がりに丸みが残らないようにオーバーエッチングを施しても、抵抗接続層51aまでエッチングされることがなく、エッチング面が抵抗接続層51a上の絶縁膜の成膜前の表面に揃えられる。この上から、下地膜、磁化固定層11、中間層21を連続して成膜、積層し、レジストパターンを除去する(リフトオフ)。これにより、抵抗接続層51a上に磁化固定層11/中間層21が形成され、その周囲を絶縁膜で埋められた状態になる。
次に、前記と同様に、磁化固定層12の形状を空けたレジストパターンを形成し、絶縁膜をエッチングして抵抗接続層52aを露出させ、下地膜、磁化固定層12、中間層22を連続して成膜、積層し、レジストパターンを除去する(リフトオフ)。これにより、抵抗接続層51a上に磁化固定層11/中間層21が、抵抗接続層52a上に磁化固定層12/中間層22が、それぞれ形成され、その周囲を絶縁膜(絶縁層)で埋められ、かつ表面の中間層21,22および絶縁層が平坦な状態になる。
中間層21,22および絶縁層の上に、磁化自由層3、保護膜を連続して成膜する。このとき、中間層21,22と磁化自由層3との密着性を得るために、スパッタ装置にて、磁化自由層3を成膜する前に、Ar,Kr等のプロセスガスのイオンやプラズマによるクリーニングを中間層21,22等の表面に行うことが好ましい。保護膜上に光変調素子1Aの形状のレジストパターンを形成し、保護膜および磁化自由層3をエッチングして、光変調素子1Aを形成する。その上から絶縁膜を成膜し、レジストマスクをその上の絶縁膜ごと除去して(リフトオフ)、空間光変調器10が得られる。
このように、光変調素子1Aは、平面視形状の異なる磁化固定層11,12および中間層21,22と、磁化自由層3とを分けて形成することにより得られる。また、磁化固定層11と磁化固定層12を、その上の中間層21,22と共に分けて成膜することにより、保磁力の異なる磁性材料あるいは一方に交換結合膜を備えた構造とすることができ、さらに中間層21,22を磁化固定層11,12の製造時における保護膜にする。なお、磁化固定層11,12を構成する磁性材料を同時に(一体に)成膜して、一方の領域にのみイオンを照射することにより保磁力を低減することもできる(特開2013−257437号公報参照)。
また、前記と同様に選択トランジスタ41,42、配線、および絶縁層を形成して表面を平坦化処理した基板に、別の基板(図示せず)上に形成した光変調素子1Aを貼り合わせてもよい。この場合、光変調素子1Aは、透明基板上に、磁化自由層3を下にして形成され、さらに抵抗接続層51a,52aに接合するために、これらの形状に合わせた金属膜を磁化固定層11,12上に形成する。
(空間光変調器の初期設定)
本変形例に係る空間光変調器10は、第1実施形態と同様に外部磁界を印加して、すべての画素6の光変調素子1Aの磁化固定層11,12の磁化方向をそれぞれ所定の向きに揃える。前記した通り、磁化固定層11と磁化固定層12は互いに異なる磁化方向に固定されるために、次の手順で初期設定を行う。まず、磁化固定層11,12の保磁力の大きい方(磁化固定層11とする)よりもさらに大きな磁界を印加して、磁化固定層11,12を共に同じ磁化方向に揃える。次に、磁化固定層11の保磁力よりも小さくかつ磁化固定層12の保磁力よりも大きな磁界を逆向きに印加して、磁化固定層12のみの磁化方向を磁化固定層11と逆向きに揃える。あるいは、磁化固定層11,12の一方が交換結合膜を備えた異なる積層構造である場合は、磁化固定層11,12の両方の保磁力よりも大きな磁界を印加しながら、真空中で200℃程度の熱処理をすることにより、前記磁界印加の1回(1段階)で初期設定を行うことができる。
光変調素子1Aは、前記した通り、2つのスピン注入磁化反転素子を磁化自由層3で接続した構成であり、磁化自由層3の磁化反転により、それぞれのスピン注入磁化反転素子の抵抗値が変化する。しかしながら、図8(a)、(b)に示すように、光変調素子1Aにおいては、常に、前記2つのスピン注入磁化反転素子の一方の磁化方向が平行で他方が反平行であるので、これらの和である一対の端子p1,p2(配線51,52)間の抵抗値は実質的に変化しないことになる。したがって、正確には、光変調素子1Aは、図1の等価回路図に示す磁気抵抗効果素子1のような可変抵抗器にはならない。そこで、光変調素子1Aを搭載した本変形例に係る空間光変調器10について、書込みエラーの検出をしたり、第1実施形態のように記憶装置に適用するためには、光変調素子1Aの2つのスピン注入磁化反転素子の抵抗値が互いに大きく異なるように、一方をCPP−GMR素子に、他方をTMR素子にする、すなわち、例えば中間層21を非磁性金属膜で、中間層22を絶縁膜で形成すればよい(特許文献5参照)。
図7に示す第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10において、書込みエラーの検出をしない場合には、光変調素子に、磁性体を細線状に形成した磁性細線を備えた磁壁移動素子を適用することができる(特許文献2参照)。磁性細線は、その細線方向に区切る磁壁が生成している状態において、細線方向に電流が供給されると、電流と逆向きに磁壁が移動するため、磁壁が移動した領域で磁化方向が変化する。
図9に示すように、光変調素子1A2は、細線状の磁性細線3Aが、細線方向に離間した2つの磁化固定層11,12上に積層されてなる。したがって、光変調素子1A2は、光変調素子1A(図8参照)から、中間層21,22を除いた構造であるといえ、断面形状が光変調素子1Aと同様に上下反転した凹字型である。あるいは、光変調素子1A2は、光変調素子1Aの中間層21,22に代えて、磁化固定層11,12とその直上の領域の磁性細線3Aとを磁気的に結合させるRu,Ta等の非磁性金属膜を備えていてもよい。そして、光変調素子1A2は、光変調素子1Aと同様に、磁化固定層11,12の下面に接続した配線51,52(一対の端子p1,p2)から向きを変えて電流を供給されることにより、磁性細線3Aの磁化方向が反転する。したがって、光変調素子1A2を備えた空間光変調器の画素は、図7に示す第1実施形態の変形例と同じ構造になる。また、光変調素子1A2を備えた空間光変調器は、中間層の成膜を除いて、前記変形例に係る空間光変調器10と同様の方法で製造することができる。ただし、後記するように、光変調素子1A2においては、磁性細線3Aの一部の領域のみが磁化反転する。以下、光変調素子1A2の構造について説明する。
(光変調素子)
磁性細線3Aは、光変調素子1Aの磁化自由層3と同様の磁性材料を適用することができる。また、光変調素子1A2においては、スピン注入磁化反転ではなく、磁性細線3A中の磁壁移動により磁化方向が反転するため、磁性細線3Aが、図9における横方向を細線方向とする細線状に形成される。詳しくは、磁性細線3Aは、細線方向にのみ磁区が分割され易いように、厚さ70nm以下、幅(細線幅、図9における紙面垂直方向長)300nm以下であることが好ましく、厚さおよび幅に対して十分に長い細線状に形成される。なお、前記よりも厚さや幅の大きい磁性細線は、幅方向等にも磁区が分割されて複数形成され易いが、外部磁界を印加することで、細線方向にのみ磁区が分割された状態にすることができる。磁性細線3Aは、下側に磁化固定層11,12が設けられていない細線方向中央部(磁化反転領域3SW)に限定して磁化反転するため、この領域の長さが入射光の回折限界以上であることが好ましい。また、磁性細線3Aは、幅が入射光の回折限界以上であることが好ましく、また、厚い程カー回転角が大きいが、前記した通り、磁区が幅方向等にも磁区が分割され易くなる。また、磁性細線3Aの厚さと幅の積に比例して書込みに必要な電流Iwが大きくなる。したがって、空間光変調器10は、画素6をより大きくするために、2個以上の光変調素子1A2を磁性細線3Aの細線幅方向に並べて、一対の配線51,52に並列に接続して設けてもよい(図示せず)。
磁化固定層11,12は、光変調素子1Aの磁化固定層11,12と同様の磁性材料を適用することができる。光変調素子1A2において、磁化固定層11,12は、磁性細線3Aの両端近傍の領域における磁化方向を固定するために下面に接続される。したがって、磁化固定層11,12は、それぞれ磁化方向が保持される形状(平面視サイズおよび厚さ)、かつその直上の領域において、磁性細線3Aを当該磁化固定層11,12と一体に同じ磁化方向に固定する厚さとし、平面視で磁性細線3Aの外側へ、細線方向や幅方向に張り出して大きく形成されていてもよい。
光変調素子1A2は、磁性細線3Aに一定以上の電流密度(細線方向に垂直な断面における電流密度)の電流Iwを細線方向に供給されることで、磁性細線3A中を磁壁が電流Iwと逆向きに移動して、磁性細線3Aの磁壁が移動した領域における磁化方向が反転する。ただし、磁性細線3Aにおいて、磁化固定層11,12の直上の領域は、それぞれ磁化固定層11,12と磁気的に結合しているために、磁化固定層11,12と同じ磁化方向に固定される。図9に示すように、光変調素子1A2において、磁化固定層11,12が互いに逆向きの磁化方向に固定されているため、磁性細線3Aは、磁化固定層11,12の直上の2つの領域における磁化方向が互いに逆向きになる。したがって、磁性細線3Aは、前記2つの領域に挟まれた磁化反転領域3SWに、常に磁壁を有する。
図9(a)に示す、磁性細線3Aが、磁化反転領域3SWにおいて磁化方向が上向きで、磁化固定層11の直上の領域との境界に磁壁が生成している状態で、図9(c)に示すように、定電流源95の「−」を電極51に、「+」を電極52に接続して、磁化固定層12側から電流Iwを供給する。すると、磁性細線3Aにおいて、磁化固定層11側から磁化固定層12側へ(図9(c)において右向きに)流れる電子dDにより、磁壁が細線方向に沿って右へ移動して、それに伴い磁壁の左側の下向きの磁化方向の磁区が右へ伸長し、すなわち磁化反転領域3SWにおいて左側から、磁化方向が下向きに磁化反転する。ただし、磁化固定層12の直上の領域においては、磁化固定層12により磁化方向が上向きに固定されているために磁化反転せず、電流Iwの供給中であっても磁化反転領域3SWの右端で磁化反転が終了し、磁化固定層12の直上の領域との境界で磁壁が静止する(図9(b)参照)。反対に、図9(b)に示す、磁性細線3Aが磁化反転領域3SWにおいて磁化方向が下向きの状態で、図9(d)に示すように、定電流源95の「+」を電極51に、電極52に「−」を接続して、磁化固定層11側から電流Iwを供給する。すると、磁性細線3A中を、左向きに流れる電子dUにより、磁壁が、磁化反転領域3SWの右端(磁化固定層12の直上の領域との境界)から左端まで移動して、磁化反転領域3SWにおける磁化方向が上向きに磁化反転する(図9(a)参照)。
このように、光変調素子1A2は、磁性細線3Aの両端近傍が磁化固定層11,12により磁化方向を固定されているために、電流Iwの電流密度や供給時間にかかわらず、磁壁が端まで到達して消失することがなく、安定して磁化反転領域3SWにおける磁化方向を反転させることができる。したがって、光変調素子1A2は、磁気抵抗効果素子1や光変調素子1Aと同様に、磁性細線3Aに磁気光学材料を適用して、空間光変調器の光変調素子とすることができる。なお、電流Iwは、スピン注入磁化反転素子である磁気抵抗効果素子1等と同様に、直流パルス電流として供給することが好ましく、磁壁の移動距離すなわち磁化反転領域3SWの細線方向長さに応じて、供給時間(パルス電流のピーク期間およびパルス数)を設定すればよい。
光変調素子1A2において、磁壁移動により磁化反転する磁性細線3Aは、スピン注入磁化反転素子である磁気抵抗効果素子1や光変調素子1Aの磁化自由層3よりも厚く形成することができるので、カー回転角を大きくして、コントラストのよい空間光変調器を構成することができる。さらに、光変調素子1A2は、磁性細線3Aを厚く形成することで、電極51,52(端子p1,p2)間の抵抗値RPを光変調素子1Aよりも低くすることができる。また、スピン注入磁化反転が膜面垂直方向に供給される電流の、すなわち平面視における電流密度に依存するのに対して、磁壁移動は、移動方向である細線方向に供給される電流の電流密度に依存するため、光変調素子1A2は、書込み用の電流Iwがスピン注入磁化反転よりも小さい傾向になる。
なお、光変調素子1A2や、光変調素子1A(図8参照)の配線51,52間の抵抗値が磁化反転により変化しないもの(ΔRP=0Ω)を搭載した空間光変調器は、書込み(図4参照)において定電流源95の出力電圧Vwが変化しない。すなわち、すべての画素6において、選択トランジスタ41,42のソース電位が変化しないので、一定のゲート電圧Vgに対するゲート−ソース間電圧Vgsも変化しない。そのため、ゲート電圧生成回路80の可変抵抗器8の構成が式(14)を満足し、各画素6の選択トランジスタ41,42の共通のゲート−ソース間電圧Vgs(Vgstyp)が式(3)を満足すればよい。そして、式(5)、式(7)、式(16)、式(17)に表されるように、このゲート−ソース間電圧Vgstypに基づいて、パルス電源96の出力電圧VgH,VgH´およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg0´,Vg0を設定することができる。したがって、式(11)に表されるように選択トランジスタ41,42の最大定格V(BR)gsを大きく設計する等の必要がなく、また、読出しのための抵抗値の変化率(ΔRP/ΣRCELLk)を確保する必要がない。このような空間光変調器は、書込みにおける負荷の許容範囲内であれば、画素列60に画素6の数Nを多く配列することができる。
以上のように、本発明の第1実施形態に係る磁気メモリ、およびその変形例に係る空間光変調器によれば、電流を大きくせずに複数のメモリセルに並行して書込みをすることができるため、書込みが高速化され、かつ1回の書込みにおける電流を大きくする必要がないので、消費電流を低減することができる。
〔第2実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る磁気メモリは、メモリセルに2個のトランジスタを備えるために、従来の選択トランジスタ型の磁気メモリの1T1R型のメモリセル(図43、図44参照)の2倍の面積を要する。以下、メモリセルを大きくすることなく、第1実施形態と同様にメモリセルを直列に接続してなる本発明の第2実施形態に係る磁気メモリについて、図10〜13を参照して説明する。第1実施形態およびその変形例(図1〜9参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
図10に示すように、本発明の第2実施形態に係る磁気メモリ10Aは、第1実施形態(図1参照)と同様に、記憶装置90Aのサブブロックメモリとして2つ搭載され、メモリセル6Aを2次元配列して備える。
磁気メモリ10Aのメモリセル6Aは、第1実施形態と同様に、環状の回路を形成してその2箇所に入出力端子を有し、列方向に隣り合うメモリセル6A同士で接続する。そして、メモリセル6Aは、この回路上に、1個の磁気抵抗効果素子1と1個の選択トランジスタ42を並列に接続されるように備える。すなわちメモリセル6Aは、第1実施形態のメモリセル6から第1選択トランジスタ41を削除した構成を有する。したがって、磁気メモリ10Aは、行方向に配列するメモリセル6A,6A,…,6Aの選択トランジスタ42のゲート4g2に入力するワード線WLBを1本のみ備える。また、第1実施形態と同様に、直列に接続して列方向に配列されたメモリセル6Aの一群をメモリセル列60Aと称する。
記憶装置90Aは、本実施形態に係る磁気メモリ10A,10Aを備え、さらに磁気メモリ10Aの駆動回路として、磁気メモリ10A,10Aの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ72と、磁気メモリ10A,10A全体の列毎に設けられたビット線選択トランジスタ73,74および電圧比較器93と、磁気メモリ10A,10Aのそれぞれの列(メモリセル列60A)毎に設けられたメモリセル列駆動トランジスタ43と、行デコーダ91Aと、列デコーダ92と、書込/読出電流回路9と、ゲート電圧生成回路80Aと、を備える。すなわち、記憶装置90Aは、第1実施形態に係る磁気メモリ10,10を備える記憶装置90(図1参照)から、第1ワード線選択トランジスタ71を削除し、メモリセル列駆動トランジスタ43を追加した構成を有する。メモリセル列駆動トランジスタ43は、メモリセル6Aが、少なくとも磁気抵抗効果素子1を経由して常に電流が流れる回路を形成していることから、選択した(駆動させる)メモリセル列60Aに限定的に電流を供給するために設けられる。メモリセル列駆動トランジスタ43は、メモリセル列60Aの一端、ここではビット線BLT側に接続され、選択トランジスタ42と同様の構成とすることができる。そして、行デコーダ91Aは、磁気メモリ10Aの1列以上を選択すると共に、この行を含む磁気メモリ10Aを選択して、選択した行のワード線選択トランジスタ72と、選択した磁気メモリ10Aのメモリセル列駆動トランジスタ43とを駆動する。
本実施形態に係る磁気メモリ10Aは、メモリセル列60Aにおいて、メモリセル6Aのそれぞれの選択トランジスタ42が直列に接続されている。そのため、一例として図11に示すように、磁気メモリ10Aのメモリセル列60Aにおいては、選択トランジスタ42のドレイン4d2が隣のメモリセル6Aの選択トランジスタ42のソース4sと一体のn+拡散層(図中、符号4s/dを付す)に形成され、基板40Bの表層に、連続したMOSFETで形成されている。さらに、メモリセル列60Aのビット線BLTの側の端(図11における左端)の選択トランジスタ42に、ゲート4g3とその両側のn+拡散層(4d3,4s/d)で形成された、メモリセル列駆動トランジスタ43が接続されている。磁気メモリ10Aは、選択トランジスタ42がこのように形成されることで、メモリセル6Aのサイズを列方向(X方向)に縮小することができる。また、基板40Bにおいては、第1実施形態の基板40(図2参照)と同様に、メモリセル列60A毎にp−wellが分離してn型Si基板(n−sub)上に形成され、さらにn+拡散層と共にp+拡散層が形成されて、配線50でGNDに接続される。そして、選択トランジスタ42のn+拡散層(4s/d)は、配線5(接続部5c、下部抵抗接続層5a、層間部5d、上部抵抗接続層5b)で、磁気抵抗効果素子1の上面と接続し、かつ隣のメモリセル6Aの磁気抵抗効果素子1の下面と接続する。また、メモリセル列駆動トランジスタ43のn+拡散層(4d3)が、配線55でビット線BLTに接続される。
また、図11では、左から順に、メモリセル列60Aにおけるビット線BLTから1〜4行目の4個のメモリセル6Aが簡略化して示され、それぞれの磁気抵抗効果素子1が列(図11のX方向)方向に短い長方形の平面視形状に形成されて、1個ずつ互い違いに行方向(図11のY方向)にずらして配列(千鳥配列)されている。磁気抵抗効果素子1のこのような配列により、磁気メモリ10Aは、MOSFET(選択トランジスタ42)に合わせて、列方向に狭ピッチに形成されている。さらに、メモリセル6Aは、行方向に延伸した配線(図9のワード線WLB)が選択トランジスタ42のゲート4g2に接続しているが、図11では省略する。また、図11の空白部分には絶縁層が設けられている。あるいは、磁気メモリ10Aは、隣り合う選択トランジスタ42,42のドレイン4d2とソース4sを分離した2つのn+拡散層で形成して、金属電極材料で形成された配線で互いを接続してもよい(図示せず)。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、最高電位となるn+拡散層(4d3または4s/d)の電位とp−wellの電位(0V)との電位差(定電流源95の最大出力電圧VwMAX)がMOSFETの降伏電圧に到達することのないように、メモリセル列60Aに配列するメモリセル6Aの数が設計される。
(磁気抵抗効果素子)
磁気抵抗効果素子1は、平面視形状以外は、第1実施形態におけるメモリセル6の磁気抵抗効果素子1と同様の構成である(図3参照)。ただし、本実施形態においては、磁気メモリ10Aの読出しのために、磁気抵抗効果素子1は、抵抗値RPが選択トランジスタ42のON抵抗RONよりも十分に高く、かつMR比が高いものとし(RON<<RP<RAP)、このようなスピン注入磁化反転素子としてTMR素子を適用することが好ましい。ただし、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の差ΔRPが大きいほど、読出しにおいて判定の精度が高くなるものの、一方で、後記するように、書込みにおいてデータの書換えに伴う非選択のメモリセル6Aの選択トランジスタ42の電位の変化が大きくなり、メモリセル列60Aに配列されたメモリセル6Aの数Nが多いと、選択トランジスタ42に印加するゲート電圧Vgを適切に設定することが困難になる場合がある。
(選択トランジスタ)
メモリセル6Aにおいて、選択トランジスタ42は、第1実施形態におけるメモリセル6の第2選択トランジスタ42と同様に、磁気抵抗効果素子1に並列に接続され、メモリセル6Aが選択されたときにOFF状態にすることで、磁気抵抗効果素子1に電流が供給されるようにする。一方、メモリセル6Aが非選択のとき、選択トランジスタ42をON状態にすることで、メモリセル6Aに供給された電流の一部を選択トランジスタ42の方へ迂回させて、磁気抵抗効果素子1に電流のすべてが流れないようにする。したがって、選択トランジスタ42は、後記の読出方法にて説明するように、読出しの精度を低下させないために、ON抵抗RONが磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPよりも十分に低くなるように設計されることが好ましい。また、選択トランジスタ42は、ON抵抗RONと磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPとの比にもよるが、書込み用の電流Iwに対応した構造とすることが好ましい。また、メモリセル6Aにおいては、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量ΔRPが大きいことが好ましく、そのために、特にメモリセル列60Aにおいて電位の高い側のメモリセル6Aの選択トランジスタ42は、電位が大きく変動する。したがって、書込方法にて説明するように、設定したゲート電圧Vgにより線形範囲で動作させるために、特に本実施形態においては、選択トランジスタ42は、しきい値電圧Vthに対して最大定格(破壊電圧)V(BR)gsが大きいことが好ましい。
(配線)
配線5,50,55およびワード線WLBは、それぞれ第1実施形態に係る磁気メモリ10の配線51,52,50およびワード線WLBと同様の構成にすることができ、一般的な金属電極材料で形成される。
(磁気メモリの製造方法、初期設定)
本実施形態に係る磁気メモリ10Aは、前記第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様の方法で製造することができる。具体的には、Si基板の表層に選択トランジスタ42をMOSFETで形成して基板40Bを製造する工程、ワード線WLB、配線50,55、および配線5の接続部5cと下部抵抗接続層5a、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程、磁気抵抗効果素子1、および配線5の層間部5dと上部抵抗接続層5b、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程を行う。また、磁気メモリ10Aは、磁気メモリ10と同様に外部磁界を印加して、磁気抵抗効果素子1の磁化固定層11の磁化方向を揃える初期設定を行うことができる。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第2実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図12および図13を参照して説明する。図12、図13では、第1実施形態(図4、図5)と同様に、磁気メモリ10Aにおける、4つのメモリセル6A(適宜、図中左からメモリセル6A1,6A2,6A3,6A4と称する)を配列した1つのメモリセル列60Aを示す。この図12、図13に示すメモリセル列60Aが列デコーダ92(図10参照)により選択され(ビット線選択トランジスタ73,74:ON状態)、書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源95または定電流源94にビット線BLT,BLBが接続している。また、行デコーダ91Aにより、選択された磁気メモリ10Aのメモリセル列駆動トランジスタ43に、ゲート電圧生成回路80Aに内蔵されたパルス電源96または定電源97の出力が印加される。ここでは、メモリセル6A1,6A2,6A3,6A4にそれぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’を書込みし、また、このデータを読出しするものとして説明する。なお、記憶装置90Aにおいて書込/読出電流回路9に並列に接続された2つの磁気メモリ10A,10A(図10参照)の、非選択の(書込/読出をしていない)方は、メモリセル列駆動トランジスタ43をOFF状態にして、電流が供給されないようにする。
(磁気メモリの書込方法)
図12(a)を参照して、‘1’の書込みについて説明する。本実施形態においては、まず、メモリセル列60に配列されたすべてのメモリセル6Aに‘1’を書込みする。行デコーダ91Aによりすべての行が選択され、ワード線WLBのワード線選択トランジスタ72がOFF状態である。これにより、4つすべてのメモリセル6Aにおいて、選択トランジスタ42がOFF状態である。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Aにビット線BLB側からビット線BLT側へ左方向に電流Iwを供給すると、各メモリセル6Aにおいて、電流Iwが磁気抵抗効果素子1に供給される。図11に示すように、ビット線BLT側へ供給された電流Iwは、下部抵抗接続層5aから磁気抵抗効果素子1の下面すなわち磁化固定層11に供給されるため、磁化自由層3の磁化方向は磁化固定層11と反平行な下向きになる(図3(d)参照)。したがって、4つすべてのメモリセル6Aに‘1’が書込みされる。
次に、図12(b)を参照して、‘0’の書込みについて説明する。行デコーダ91Aにより中央の2行(2行目と3行目)が選択される。すなわち両端の2行(1行目と4行目)が非選択状態で、ワード線WLBのワード線選択トランジスタ72がON状態に切り替えられる。これにより、両端の2つのメモリセル6A1,6A4において、選択トランジスタ42がON状態である。なお、図12および後記の図13において、ワード線選択トランジスタ72は、ON状態のとき、白抜き矢印を付して表す。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Aに、今度はビット線BLT側から右方向へ電流Iwを供給する。すると、中央の2つのメモリセル6A2,6A3においては、図12(a)とは逆方向に電流Iwが磁気抵抗効果素子1に供給されるため、磁化自由層3の磁化方向が磁化固定層11と平行な上向きに反転する(図3(c)参照)。一方、メモリセル6A1,6A4においては、電流Iwが磁気抵抗効果素子1と選択トランジスタ42の両方に分岐して流れる。前記した通り、磁気抵抗効果素子1は、選択トランジスタ42よりも高抵抗なので、電流Iwの1/2に満たない電流しか流れず、磁化自由層3の磁化方向が変化せずに下向きを維持する。その結果、メモリセル6A2,6A3が‘0’に書き替えられて、メモリセル列60Aに左から‘1’、‘0’、‘0’、‘1’が書込みされる。
このように、迂回路(非選択時の電流経路)にのみ選択トランジスタ42を備えるメモリセル6Aであっても、第1実施形態と同様に、1つのメモリセル列60Aのすべてのメモリセル6Aに‘1’、‘0’を、最少2回の電流供給により書込みすることができ、また、理論上、1つのメモリセル列60Aに供給する電流が、1個の磁気抵抗効果素子1を磁化反転させる大きさで足りる。なお、本実施形態に係る磁気メモリ10Aにおいては、非選択のメモリセル6Aの磁気抵抗効果素子1にも電流が流れるので、この磁気抵抗効果素子1が磁化反転、すなわち誤書込み(ディスターブ)されないように、電流Iwを磁化反転電流に対して過剰に大きくない値に設定する。さらに、先にすべてのメモリセル6Aに‘1’を書込みした(図12(a)参照)ことにより、次の‘0’の書込みにおいて、非選択のメモリセル6A2,6A3は磁気抵抗効果素子1がより高抵抗(RAP)であるので、電流Iwの特に多くが選択トランジスタ42に流れ、いっそう誤書込みし難い。
本実施形態に係る磁気メモリ10Aは、メモリセル列60Aにおける電流I
wの経路が、選択したメモリセル6Aでは磁気抵抗効果素子1のみであり、非選択のメモリセル6Aでは選択トランジスタ42と磁気抵抗効果素子1とに並列に形成される。したがって、選択したメモリセル6Aの抵抗値R
CELLslだけでなく、非選択のメモリセル6Aの抵抗値R
CELLnsも磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APを含み、m個のメモリセル6Aを選択したときのメモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkは下式(29)で表される。第1実施形態と同様、「R
P/AP」はメモリセル6A毎の磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APのいずれかを表す。また、選択トランジスタ42のON抵抗R
ONは、ゲート−ソース間電圧Vgsに依存する変数であり、メモリセル6A毎に異なり得るが、ここでは定数として表す。
非選択のメモリセル6Aにおいては、選択トランジスタ42が磁気抵抗効果素子1に対して低抵抗なほど誤書込みし難いので、第1実施形態と同様、選択トランジスタ42を線形領域で動作させることが好ましい。そのために、ゲート電圧生成回路80Aが行毎に変位させたゲート電圧Vgを出力し、さらに本実施形態においては、メモリセル列駆動トランジスタ43にもゲート電圧Vg0,VgHを出力する。したがって、定電流源95からメモリセル列60Aに供給される電流は、第1実施形態と同様、ゲート電圧生成回路80Aのパルス電源96の出力に同期した、ピーク電流Iwの直流パルス電流である。ここで、図12(a)、図12(b)に示す手順で書込みをしたとき、最初の‘1’の書込みにおいては、選択トランジスタ42はすべてOFF状態であり、メモリセル列駆動トランジスタ43のみがON状態である。一方、その次の‘0’の書込みにおいては、メモリセル列駆動トランジスタ43、および非選択のメモリセル6Aの各選択トランジスタをON状態にする。そのために、ゲート電圧生成回路80Aは以下の構成とすることができる。
図12(b)に示すように、ゲート電圧生成回路80Aは、‘0’の書込みにおいて電位の高い側(同図における左側)から、パルス電源96、保護抵抗85、初段抵抗84、N個(図12では4個)の分圧抵抗器81、ダイオード83、およびゲート基電圧電源98を、順に直列に接続して備え、さらに、分圧抵抗器81のそれぞれに並列に接続した抵抗切替トランジスタ78を備える。ゲート電圧生成回路80Aはさらに、保護抵抗85を挟んだパルス電源96の出力と定電流源95の出力(ビット線BLT)との間に順に接続する、ツェナーダイオード86およびダイオード87を備える。すなわち、ゲート電圧生成回路80Aは、第1実施形態におけるゲート電圧生成回路80(図4(a)参照)に、固定抵抗器である初段抵抗84を追加した構成である。また、ゲート電圧生成回路80Aは、分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ78からなる可変抵抗器8が、磁気メモリ10Aの各行のワード線WLBに対して、第1実施形態(図4、図5参照)とは反対のビット線BLTの側(図12における左側)に配置されている。そして、保護抵抗85を挟んだパルス電源96の出力(図12(b)に示す電圧VgH)は、メモリセル列駆動トランジスタ43に印加され、さらに初段抵抗84および1行目の可変抵抗器8を挟んだ出力(図12(b)に示す電圧Vg1)が、1行目のメモリセル6A1の選択トランジスタ42に印加される。さらにその先は、第1実施形態と同様に、可変抵抗器8を1つずつ挟んで、各行のメモリセル6Aに出力する。
ゲート電圧生成回路80Aの可変抵抗器8は、第1実施形態と同様、抵抗値が、分圧抵抗器81の抵抗値R
divと、分圧抵抗器81と抵抗切替トランジスタ78の合成抵抗(R
div||R
dvON)との2段階に変化し、その比が、下式(14)に表されるように、メモリセル6Aの選択、非選択時の各抵抗値R
CELLsl,R
CELLnsの比に略一致すればよい。そのため、分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ78は、各抵抗値R
div,R
dvONが下式(15)を満足するように設計されることが好ましい。ここでは、R
div/R
dvON=R
AP/R
ONとする。また、可変抵抗器8は、第1実施形態と同様に、必要に応じて、抵抗切替トランジスタ78に固定抵抗器を直列に接続したり、あるいは分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ78に限られず、行デコーダ91Aからのワード線選択トランジスタ72への信号に連動して2段階に変化すればよい。
また、ビット線BLT側から右方向へ電流I
wを供給するとき(‘0’の書込み時)、パルス電源96の出力電圧Vg
Hに対して、1行目(電位の最も高い側)の非選択としたメモリセル6A
1の選択トランジスタ42に印加する電圧Vg
1が、初段抵抗84および1行目の可変抵抗器8によって降下する。そのため、初段抵抗84の抵抗値R
auxは、可変抵抗器8の抵抗値(R
dvON||R
div)との和で、メモリセル列駆動トランジスタ43による降下分(I
w×R
ON)に相当する抵抗値に設計され、理想的には下式(30)が成立する。さらに前記の通りR
div/R
dvON=R
AP/R
ONであれば、初段抵抗84の抵抗値R
auxは下式(31)で表される。また、選択トランジスタ42(およびメモリセル列駆動トランジスタ43)のON抵抗R
ONが磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
Pに対して十分に低い(R
ON<<R
P)場合は、非選択のメモリセル6Aの抵抗値R
CELLns(=R
ON||R
P)がR
ONに収束するので、ゲート電圧生成回路80Aが初段抵抗84を備えていなくてよい。
ビット線BLT側から右方向へ電流I
wを供給するとき(‘0’の書込み時)の、ゲート電圧生成回路80Aによる行(k)毎のゲート電圧Vg
kの出力について、図12(b)を参照して説明する。第1実施形態と同様、まず、メモリセル列60Aのすべてのメモリセル6Aの選択トランジスタ42、およびメモリセル列駆動トランジスタ43において共通のゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typと称する)を下式(3)の範囲に設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおける選択トランジスタ42およびメモリセル列駆動トランジスタ43のON抵抗R
ONを算出する。そして、設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typとなる、行(k)毎のゲート電圧Vg
kを出力するように、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H,Vg
0を設定する。
本実施形態においては、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、メモリセル列60Aにおいて電位の最も低いメモリセル6A
Nが非選択であるときに、ソース電位Vs
Nが0Vであるその選択トランジスタ42に出力されるゲート電圧Vg
Nである。したがって、下式(16)に表されるようにゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)と同じ電圧に設定される。一方、定電流源95は、一定の電流I
wを供給するために、下式(32)に表されるように、BLT−BLB間の抵抗値、すなわちメモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkとメモリセル列駆動トランジスタ43のON抵抗R
ONとの和によって、出力電圧V
wが決定される。そして、‘0’の書込み前において、すべてのメモリセル6Aは、図12(a)に示すように ‘1’の書込みをされているので、選択、非選択にかかわらずデータが‘1’のときの抵抗値R
CELLsl(1),R
CELLns(1)(R
P/AP=R
AP)である。したがって、‘0’の書込み前における定電流源95の出力電圧V
wは、下式(33)に表される最大値V
wMAXである。本実施形態においては、定電流源95の出力電圧V
wはメモリセル列駆動トランジスタ43のドレイン電位であり、すなわちメモリセル列駆動トランジスタ43のソース電位が(V
w−I
w×R
ON)である。したがって、パルス電源96の出力電圧Vg
Hを下式(34)で表されるように設定する。
このように、‘1’の書込みにおいてはパルス電源96の出力電圧Vg0、‘0’の書込みにおいては選択するメモリセル6Aの数mに応じたパルス電源96の出力電圧VgH、およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg0を、それぞれ設定する。これにより、メモリセル列駆動トランジスタ43およびすべての非選択のメモリセル6Aの選択トランジスタ42に、式(3)を満足する同一のゲート−ソース間電圧Vgstypになるゲート電圧Vgkが出力される。
第1実施形態にて説明したように、‘0’の書込みにおいては、選択したm個のメモリセル6Aがデータ‘0’に書込みされて、磁気抵抗効果素子1の抵抗値がR
APからR
Pに低下する。これに伴いメモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkが低下し、定電流源95の出力電圧V
wが降下する。そのため、メモリセル列駆動トランジスタ43および非選択の(N−m)個のメモリセル6A
kの選択トランジスタ42は、ソース電位Vs
kが降下し、その分、ゲート−ソース間電圧Vgsが増大し、その結果、ON抵抗がR
ONからR
ONk´に低下して(R
ON>R
ONk´)、メモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkがさらに低下する。特に、第1実施形態と同様、選択されたm個のメモリセル6Aが、メモリセル列60Aにおいて電位の最も低いメモリセル6A
Nから順にm個である場合に、メモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkの変化が最も大きく、このときの定電流源95の出力電圧(最小出力電圧)V
wMINは下式(35)で表される。なお、メモリセル列駆動トランジスタ43の低下したON抵抗をR
ON0´で表す。メモリセル列駆動トランジスタ43および非選択のメモリセル6A
kの各選択トランジスタ42の、ゲート−ソース間電圧Vgs
k´およびON抵抗R
ONk´は、シミュレーションによって算出される。
第1実施形態と同様、メモリセル列駆動トランジスタ43および非選択のメモリセル6A
kの選択トランジスタ42のゲート−ソース間電圧Vgs
k´が最大定格V
(BR)gsに到達しないように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。メモリセル列60Aにおいてゲート−ソース間電圧Vgs
k´が最大になるのはメモリセル列駆動トランジスタ43であり、そのゲート−ソース間電圧Vgs
0´が、下式(36)で表されるように最大定格V
(BR)gsに到達しなければよい。下式(36)より、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は下式(37)を満足するように設定される。さらに、すべてのメモリセル6Aを選択したときに(m=N)メモリセル列駆動トランジスタ43のゲート−ソース間電圧Vgs
0´が最大になるので、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(38)を満足するように設定されればよい。
式(38)を満足するゲート−ソース間電圧Vgsが存在するためには、磁気メモリ10Aは下式(39)を満足する必要がある。そのために、第1実施形態と同様、メモリセル列60Aは、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量ΔR
Pや選択トランジスタ42のON抵抗R
ON等に基づいて配列するメモリセル6Aの数Nが設計される。特に、本実施形態においては、磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量ΔR
Pが大きいことが好ましいことから、選択トランジスタ42およびメモリセル列駆動トランジスタ43は、しきい値電圧Vthに対して最大定格(破壊電圧)V
(BR)gsが特に大きいことが好ましい。
さらに、メモリセル列駆動トランジスタ43や非選択のメモリセル6Aの選択トランジスタ42においてゲート−ソース間電圧Vgsが最大定格V
(BR)gsに到達することのないように、パルス電源96の出力電圧Vg
Hは、常に下式(12)を満足する必要がある。そのため、第1実施形態と同様に、ゲート電圧生成回路80Aは、ツェナーダイオード86により、電位差(Vg
H−V
w)が下式(13)で表されるツェナー電圧Vzを超えたら、パルス電源96からメモリセル列60A(ビット線BLT)へ電流を流して、電圧Vg
Hが常に下式(12)を満足するように構成される。このような構成により、メモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkにかかわらず、すべての非選択のメモリセル6Aの選択トランジスタ42、およびメモリセル列駆動トランジスタ43が破壊されることなく線形領域で動作する。
ただし、パルス電源96とビット線BLTが導通すると、メモリセル列60Aに供給される電流Iwが増大して定電流源95で設定した電流Iw0を超えて(Iw>Iw0)、非選択のメモリセル6Aで誤書込みを生じる虞がある。そのため、磁気メモリ10Aにおいては、導通することのないように構成されることが好ましい。
なお、図12(a)に示す‘1’の書込みにおいては、前記したようにメモリセル列駆動トランジスタ43のみをON状態にする。このとき、メモリセル列駆動トランジスタ43はソース電位が0V(定電流源95の負の出力)であるので、パルス電源96の出力電圧Vg
0は、‘0’の書込みにおけるゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0と同じゲート−ソース間電圧Vgsであり(Vg
0=Vgs)、‘0’の書込みにおいて設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typを適用することができる。また、ツェナーダイオード86は、ツェナー電圧Vzが下式(19)を満足するように設定されることが好ましく、さらに、前記の‘0’の書込みにおける式(13)を併せて、下式(40)を満足するように設定されてもよい。
このように、第1実施形態のゲート電圧生成回路80と同様の分圧回路を内蔵したゲート電圧生成回路80Aにより、‘0’の書込みをするメモリセル6Aの数mに応じて最も高い電位(パルス電源96の出力電圧VgH)を式(34)に表されるように管理することで、すべての非選択のメモリセル6Aの選択トランジスタ42、およびメモリセル列駆動トランジスタ43に適正なゲート電圧Vgが出力される。その結果、これらの選択トランジスタ42等を破壊する虞のなく線形領域で動作させて、誤書込みを防止することができる。
メモリセル列駆動トランジスタ43およびすべての非選択のメモリセル6Aの選択トランジスタ42において共通とするゲート−ソース間電圧Vgstypは、第1実施形態と同様、すべてのメモリセル6Aのデータが‘0’(磁気抵抗効果素子1の抵抗値RP)であると仮定して設定されてもよい。さらに、これらのトランジスタ42,43のゲート−ソース間電圧Vgsは、式(3)の範囲であれば共通の値でなくてもよい。また、非選択のメモリセル6Aのデータが不明である場合は、式(35)に表される定電流源95の最小出力電圧VwMINを、これらすべてのデータが‘0’(磁気抵抗効果素子1の抵抗値RP)であると仮定して算出し、パルス電源96の出力電圧VgH等を設定することが好ましい。特に本実施形態においては、選択したメモリセル6Aよりは小さいが、非選択のメモリセル6Aのデータの違いによる抵抗値RCELLnsの差が、電位の高い側に配列されたメモリセル6Aの選択トランジスタ42の電位の差へ累積する。また、‘1’をメモリセル列60Aの一部のメモリセル6Aに書込みする場合は、ゲート電圧生成回路80Aは、パルス電源96やゲート基電圧電源98等の接続を第1実施形態と同様に入れ替え、パルス電源96を接続した側をツェナーダイオード86およびダイオード87を経由して定電流源95の正に接続する(図4(b)参照)。
磁気メモリ10Aの書込みにおいては、‘0’の書込みを1回でしなくてもよく、例えば2n-1ずつに分けて書込みをしてもよい(n:自然数)。特に、磁気メモリ10Aがメモリセル列60Aに配列されたメモリセル6Aの数Nや磁気抵抗効果素子1の抵抗値の変化量ΔRP等により式(39)を満足しない場合は、選択するメモリセル6Aの数mの上限を、式(37)が成立するように設定すればよい。さらに、図10に示すように、行方向に2つ以上(図1では2つ)の磁気メモリ10Aが並列に設けられている記憶装置90Aにおいては、磁気メモリ10A,10Aのそれぞれから1列ずつメモリセル列60Aを選択して、同時に‘0’をメモリセル6Aに書込みすることもできる。また、1回目の書込み(‘1’の書込み)において、磁気メモリ10Aの2列以上(2以上のメモリセル列60A)を選択して、これらのメモリセル列60Aに並列に電流Iwを供給して、選択したメモリセル列60Aのすべてのメモリセル6Aに同時に‘1’を書込みしてもよい(図12(a)参照)。なお、これらの2回以上に分割した‘0’の書込みや2列以上同時の‘1’の書込み等は、後記の第3実施形態以降に係る磁気メモリ等においても同様にすることができる。
(磁気メモリの読出方法)
図13に示すメモリセル列60Aのメモリセル6A1,6A2,6A3,6A4は、それぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’が記憶されているので、それぞれの磁気抵抗効果素子1の抵抗値は、RAP,RP,RP,RAPである。図13(a)において、行デコーダ91Aにより1行目が選択されると、左端のメモリセル6A1の選択トランジスタ42がOFF状態になり、それ以外の3つのメモリセル6A2,6A3,6A4の選択トランジスタ42がON状態になる。この状態でメモリセル列60Aに定電流源94により電流Irを供給すると、選択したメモリセル6A1においては、電流Irが磁気抵抗効果素子1のみに流れ、他のメモリセル6A2,6A3,6A4においては、磁気抵抗効果素子1と選択トランジスタ42の両方に分岐して流れる。
また、図13(b)において、行デコーダ91Aにより2行目が選択されると、左から2行目のメモリセル6A2の選択トランジスタ42がOFF状態になり、それ以外のメモリセル6A1,6A3,6A4の選択トランジスタ42がON状態になる。この状態でメモリセル列60Aに供給された電流Irは、左端のメモリセル6A1においては磁気抵抗効果素子1と選択トランジスタ42の両方に分岐して流れ、メモリセル6A2においては磁気抵抗効果素子1のみに流れ、残りのメモリセル6A3,6A4においては、再び磁気抵抗効果素子1と選択トランジスタ42とに分岐して流れる。このように、磁気メモリ10Aの読出しにおいては、書込みにおいて1つのメモリセル6Aを選択した場合と同じ経路で、メモリセル列60Aに電流Irが流れる。
したがって、磁気メモリ10Aは、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に、書込みと共通の配線を用いて、選択したメモリセル6Aに記憶されたデータの読出しをすることができ得る。磁気メモリ10Aの読出しにおいて、定電流源94は、一定の電流I
rを供給するために、その出力電圧V
rが、書込みにおける定電流源95と同様に、下式(41)に表されるように、メモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkおよびメモリセル列駆動トランジスタ43のON抵抗R
ONに依存する。前記した通り、読出しにおいては、1つのメモリセル6Aを選択した書込みと同様に電流が流れるので、メモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkは、式(29)に示す書込みにおける抵抗値ΣR
CELLkについてm=1としたもので、下式(42)で表される。「R
P/AP」は、すべてのメモリセル6Aのそれぞれに記憶されているデータによって、磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。また、選択トランジスタ42およびメモリセル列駆動トランジスタ43のON抵抗R
ONは、書込み時と同様、定数として表す。
式(42)に示すように、本実施形態に係る磁気メモリ10Aの読出しにおいては、メモリセル列60Aの抵抗値ΣRCELLkが、選択したメモリセル6Ajに記憶されたデータによる抵抗値RP,RAPだけでなく、非選択のメモリセル6Ak(k≠j)に記憶されたデータによっても変化する。メモリセル列60Aは、配列されたメモリセル6Aの数Nが増大すると、読出しにおいて、抵抗値ΣRCELLkの多くを、(N−1)個の非選択のメモリセル6Akの抵抗値RCELLnsの合計が占めることになる。そのため、非選択のメモリセル6Akに記憶されたデータによる抵抗値の差の累積により、選択したメモリセル6Ajの判定が困難になる場合が生じ得る。
そこで、本実施形態に係る磁気メモリ10Aは、非選択のメモリセル6A
kのそれぞれのデータにかかわらず、選択したメモリセル6A
jが‘1’のときの方が‘0’のときよりもメモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkが高くなるように設計される。すなわち、選択したメモリセル6A
jが‘1’かつ非選択のすべてのメモリセル6A
kが‘0’のときのメモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLk(1)MIN(下式(43))が、選択したメモリセル6A
jが‘0’かつ非選択のすべてのメモリセル6A
kが‘1’のときのメモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLk(0)MAX(下式(44))よりも高い、すなわち下式(45)が成立するものとする。さらに、その差(ΣR
CELLk(1)MIN−ΣR
CELLk(0)MAX)がメモリセル列60Aの抵抗値ΣR
CELLkに対して大きいことが好ましい。そして、メモリセル列60Aの抵抗変化率の最小値である(ΣR
CELLk(1)MIN−ΣR
CELLk(0)MAX)/ΣR
CELLk(0)MAX(抵抗最小変化率)について、磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
Pを基準に選択トランジスタ42のON抵抗R
ONを変化させたときの、メモリセル列60Aに配列されたメモリセル6Aの数Nの依存性のグラフを図14に示す。
図14に示すように、メモリセル列60Aは、メモリセル6Aの数Nが多くなるにしたがい、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に抵抗最小変化率が低下し、さらには抵抗値ΣRCELLk(1)MIN,ΣRCELLk(0)MAXの高低が逆転する。特に、選択トランジスタ42のON抵抗RONが磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPに対して十分に低くない場合、メモリセル6Aの数Nが多いと読出しが困難になる。例えば、磁気抵抗効果素子1のMR比50%で、RON=1/2RPの場合は、N=8で最小変化率が約6%に低下し、N=12を超えるとΣRCELLk(1)MIN,ΣRCELLk(0)MAXの高低が逆転する。これに対して、同じMR比50%で、RON=1/5RPの場合はN=32で最小変化率が約3%、RON=1/10RPの場合はN=64で最小変化率が約5%である。このように、選択トランジスタ42のON抵抗RONが磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPに対して低い程、メモリセル列60Aにメモリセル6Aを多数配列しても読出しが可能になる。また、磁気抵抗効果素子1のMR比が高い程、メモリセル列60Aの抵抗最小変化率も高くなるので、メモリセル6Aの数Nをある程度多くしても読出しの精度が高い。なお、例えばMR比5%のCPP−GMR素子を磁気抵抗効果素子1に適用すると、RON=RPの場合で、N=4で最小変化率が0.53%に低下し、N=5を超えるとΣRCELLk(1)MIN,ΣRCELLk(0)MAXの高低が逆転して読出しが困難になる。
また、前記した通り、選択トランジスタ42はON抵抗R
ONが低いこと、特に磁気抵抗効果素子1の抵抗値R
Pに対して相対的に十分に低いこと(R
ON<<R
P)が好ましい。したがって、書込みと同様に、メモリセル列60Aにおけるすべての非選択のメモリセル6A
k(k≠j)の選択トランジスタ42を低抵抗で動作させるために、ゲート電圧生成回路80Aが行毎に変位させたゲート電圧Vg
kを出力する。すなわち、本実施形態に係る磁気メモリ10Aの読出しは、第1実施形態と同様、メモリセル列60Aに電流I
rを供給し、選択する行(メモリセル6A)の数mを1に固定した(m=1)‘0’の書込み(図12(b)参照)と同様の方法ですることができる。そして、磁気メモリ10Aの読出しにおいても、すべてのメモリセル6Aの選択トランジスタ42およびメモリセル列駆動トランジスタ43について、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)を(Vth+Vds)以上最大定格V
(BR)gs未満に、すなわち下式(22)の範囲に設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONを算出する。
‘0’の書込み時と同様、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(16)に表されるようにゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)と同じ電圧に設定される。一方、定電源97の出力電圧Vg
Hは、‘0’の書込み時と同様に、定電流源94の出力電圧V
rについてメモリセル列60Aのすべてのメモリセル6Aのデータが‘1’であると仮定した下式(46)で表される最大値V
rMAXより、下式(47)で表される。
そして、このように仮定して設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typに基づいて出力されたゲート電圧Vg
kが、すべてのメモリセル6Aのデータが‘0’である場合に最大定格V
(BR)gsに到達しないように設定される。さらに読出しにおいては、第1実施形態と同様、電位の最も低い側のメモリセル6A
Nを選択したときを想定して、メモリセル6A毎の選択トランジスタ42、メモリセル列駆動トランジスタ43のゲート−ソース間電圧Vgs´およびON抵抗R
ON´がシミュレーションによって算出され、下式(48)で表される定電流源94の最小出力電圧V
rMINが算出される。このときの、電位の最も高い側であるメモリセル列駆動トランジスタ43について、そのゲート電圧である定電源97の出力電圧Vg
Hのソース電位Vs(=V
rMIN−I
r×R
ON0´)との電位差Vgs
0´が下式(49)に表されるように最大定格V
(BR)gsに到達しないように設定される。そのために、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(50)を満足するように設定される。
また、ツェナーダイオード86のツェナー電圧Vzは、式(13)に基づいて、下式(28)を満足するように設定され、式(40)も同時に満足する場合は、書込み時と同じツェナーダイオード86を適用することができる。第1実施形態と同様に、読出しにおいては、定電源97の出力電圧Vg
Hは、定電流源94の出力電圧V
rとの差がツェナーダイオード86のツェナー電圧Vzを超えると、メモリセル列60Aに供給される電流I
rが増大して判定が困難になるので、特に最大定格V
(BR)gsに対して十分なマージンを有して設定されることが好ましい。一方で、本実施形態においては特に、非選択のメモリセル6Aの抵抗値R
CELLnsのデータによる差を小さく、好ましくは近似的に0にするために、選択トランジスタ42のON抵抗R
ONを低くするようにゲート−ソース間電圧Vgsを大きく設定することが好ましい。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Aは、ゲート電圧生成回路80Aから非選択のメモリセル6A毎に適切なゲート電圧Vgを選択トランジスタ42に印加することで、非選択のメモリセル6Aのデータにかかわらず選択したメモリセル6Aのデータによって定電流源94の出力電圧Vrの高低が決定され得る。その結果、磁気メモリ10Aは、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に書込みと共通の配線を用いて各メモリセル6Aに記憶されたデータを読出しすることができる。このような磁気メモリ10Aは、例えば、メモリセル6Aの所望のサイズ(面積)、選択トランジスタ42のON抵抗RON等の特性、および磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPとMR比に基づき、書込み時の負荷や読出しの精度(抵抗最小変化率)を満足するように、メモリセル列60Aに配列するメモリセル6Aの数Nを設定して得ることができる。
なお、ゲート電圧生成回路80Aは、磁気メモリ10Aの各行のワード線WLBに対して、分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ78が、第1実施形態(図4および図5参照)と同様に、図12および図13における右側に配置されてもよい。この場合は、パルス電源96または定電源97の出力電圧Vg
Hに対して、1行目(電位の最も高い側)のメモリセル6A
1の選択トランジスタ42に印加する電圧Vg
1が、初段抵抗84のみによって降下する。したがって、初段抵抗84は、抵抗切替トランジスタ78のON抵抗R
dvONと同じ抵抗値に設計されればよい。また、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、ソース電位0VのN行目のメモリセル6A
Nの選択トランジスタ42のゲート電圧Vg
Nに対して、Vg
N=Vg
0+Ids×R
CELLns(Ids=I
w,I
r)であるから、下式(51)に表されるように設定される。
また、記憶装置90Aは、第1実施形態(図1参照)にて説明したように、列デコーダ92により磁気メモリ10Aから2以上の列を選択して、これらのメモリセル列60Aのそれぞれに定電流源94を接続して電流Irを供給しながら、選択した1行の各メモリセル6Aを並行して読出しすることができる。また、磁気メモリ10Aの書込みおよび読出しにおいては、ゲート電圧生成回路80Aの分圧回路によらずに、非選択の各行のゲート電圧Vgを、第1実施形態にて説明したように個別にシミュレーションで算出して出力してもよい。
〔空間光変調器〕
本発明の第2実施形態に係る磁気メモリ10Aは、第1実施形態に係る磁気メモリ10と同様に空間光変調器に適用することができる。特に読出しによる書込みエラーの検出をしない場合には、磁気抵抗効果素子1に抵抗の低いCPP−GMR素子を適用して、メモリセル列60Aのメモリセル6Aの数を多くすることができる。ただし、磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPが低いと、非選択のメモリセル6Aにおいて、磁気抵抗効果素子1に電流Iwの多くが流れて誤書込み(ディスターブ)し易くなる。したがって、特に選択トランジスタ42について、ON抵抗RONが磁気抵抗効果素子1の抵抗値RPよりも高くならないように(RON≦RP)設計されることが好ましい。
本発明の第2実施形態に係る不揮発性メモリは、不揮発性記憶素子として磁気抵抗効果素子を備えた磁気メモリ(MRAM)として説明したが、第1実施形態に係る不揮発性メモリと同様に、抵抗変化型メモリ(ReRAM)とすることもできる(図示せず)。
また、本発明の第2実施形態に係る不揮発性メモリにおいては、供給した電流の一部が非選択のメモリセルの不揮発性記憶素子に流れることから、ユニポーラ(単極性)駆動型のような電流の大小によって磁化方向や抵抗値を変化させる不揮発性記憶素子を適用して、直列に接続された(メモリセル列の)すべてのメモリセルに、1回の電流供給により書込みすることができる。例えば、特開2013−175680号公報に開示されたスピン注入磁化反転素子は、磁化自由層の側から電流を供給したとき、一般的な大きさの反転電流IwPで磁化方向が平行になり(図3(c)参照)、それよりも大きい電流IwAP(IwPの約2倍)で磁化方向が反平行を示す。このようなスピン注入磁化反転素子を磁気抵抗効果素子1に適用した磁気メモリ10Aの書込みにおいては、磁気抵抗効果素子1の磁化方向を反平行(データ‘1’)にする大きさの電流IwAPを、図12(b)に示すようにビット線BLT側から供給する。そして、選択トランジスタ42をON状態にした(非選択の)メモリセル6A1,6A4において、磁気抵抗効果素子1に電流IwP(<IwAP)が流れる、選択トランジスタ42のON抵抗RONになるように、ゲート電圧Vg1,Vg4を設定する。このような構成により、電流IwAPの1回の供給で、図12(b)においては、メモリセル6A1,6A2,6A3,6A4にそれぞれ‘0’、‘1’、‘1’、‘0’を書込みされる。なお、読出しにおいては、書込み時とは別にゲート電圧Vgを設定して、選択トランジスタ42のON抵抗RONを十分に小さくすることが好ましい。
〔第2実施形態の変形例〕
本発明の第2実施形態に係る磁気メモリは、第1実施形態の変形例と同様に、特に空間光変調器に適用される場合に、並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子である光変調素子1Aや磁壁移動素子である光変調素子1A2を適用してもよい(図7、図8、図9参照)。第1実施形態の変形例において説明した通り、光変調素子1Aは、書込みエラーの検出をしたり、記憶装置に適用する場合には、中間層21,22の一方を絶縁膜で形成し、読出しによる書込みエラーの検出をしない場合には、中間層21,22が共に非磁性金属で形成されることが好ましい。また、光変調素子1Aの配線51,52間の抵抗値が変化しないものや光変調素子1A2を搭載した空間光変調器は、書込み(図12参照)において、各画素6Aの光変調素子1A,1A2の抵抗値による選択トランジスタ42の電位の差がない(後記第3実施形態に係る磁気メモリの書込方法参照)。したがって、書込みにおける負荷の許容範囲内であれば、画素列60Aに画素6Aの数Nを多く配列することができる。
以上のように、本発明の第2実施形態およびその変形例に係る磁気メモリ、空間光変調器によれば、第1実施形態と同様に書込みが高速化され、かつ消費電流を低減することができ、さらにメモリセルのサイズを縮小することができる。
〔第3実施形態〕
本発明の第1、第2実施形態に係る磁気メモリおよび空間光変調器においては、メモリセルの磁気抵抗効果素子として、書込み時の負荷を抑制するためには低抵抗のCPP−GMR素子や磁壁移動素子が、読出しの精度を高くするためには高抵抗かつMR比の高いTMR素子が、それぞれ好適である。そこで、CPP−GMR素子または磁壁移動素子とTMR素子との両方を備える磁気抵抗効果素子を適用することで、書込み時の負荷を低減しつつ精度よく読出しをすることのできる磁気メモリが得られる。以下、本発明の第3実施形態に係る磁気メモリについて、図15〜20を参照して説明する。第1、第2実施形態(図1〜13参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第3実施形態に係る磁気メモリ10Bは、第1、第2実施形態(図1、図10参照)と同様に記憶装置90Bに搭載され、メモリセル6Bを2次元配列して備える。図15では、簡潔に説明するために、記憶装置90Bは磁気メモリ10Bを1つ備える。記憶装置90Bの構成の詳細は後記にて説明する。
図15に示すように、磁気メモリ10Bのメモリセル6Bは、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aのメモリセル6Aと同様に、1個の磁気抵抗効果素子1Bと1個の選択トランジスタ42を並列に接続されるように備え、列方向に隣り合うメモリセル6B同士で直列に接続する。この列方向に配列されたメモリセル6Bの一群を、第1、第2実施形態と同様にメモリセル列60Bと称する。
ここで、図15に示すように、磁気抵抗効果素子1Bは、3本に枝分かれするように接続された抵抗器MRw1,MRw2,MRrからなり、それぞれの末端に端子p1,p2,p3(図17参照)を有し、これら3つの端子のうち、直列に接続した抵抗器MRw1と抵抗器MRw2(以下、合わせて抵抗器MRw)の両端の端子p1,p2で選択トランジスタ42と並列に接続される。すなわち、磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRwの部分が、第2実施形態におけるメモリセル6Aの磁気抵抗効果素子1に相当する。一方、メモリセル6Bにおいて、磁気抵抗効果素子1Bには、抵抗器MRrの側の端子p3に直列に接続されたダイオード44を経由して、読出ビット線RBLが接続されている。この読出ビット線RBLは、磁気メモリ10Bにおいて、行方向に配列するメモリセル6B,6B,…,6Bに接続される。メモリセル6Bの構造については後記し、以下に、メモリセル6Bの各要素の構造について説明する。
(磁気抵抗効果素子)
図17に示すように、磁気抵抗効果素子1Bは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器の光変調素子1A2(図8参照)の磁性細線3Aの上に、さらに障壁層23、磁化固定層13を順に積層した構造を有する。詳しくは、磁性細線3Aにおける磁化反転領域3SW(下側に磁化固定層11,12が設けられていない細線方向中央部、図8参照)内に限定して、障壁層23、磁化固定層13が積層されている。磁気抵抗効果素子1Bは、磁化反転領域3SWを磁化自由層として、障壁層23および磁化固定層13を積層したTMR素子構造を備えるものであり、このTMR素子構造部分が図15の抵抗器MRrに該当する。すなわち、抵抗器MRrは可変抵抗器である(以下、可変抵抗器MRr、または適宜、TMR素子MRr)。一方、磁性細線3Aおよび磁化固定層11,12からなる部分が、抵抗器MRwに該当し、さらに、磁化固定層11と磁性細線3Aの部分が抵抗器MRw1に、磁化固定層12と磁性細線3Aの部分が抵抗器MRw2に、それぞれ該当するものとする。
磁気抵抗効果素子1Bにおいて、抵抗器MRw、すなわち光変調素子1A2と共通する部分は、磁気メモリ10Bの書込み時に電流Iwを供給されて磁化反転領域3SWを磁化反転させる。すなわち磁気抵抗効果素子1Bは、磁気抵抗効果素子1や光変調素子1A,1A2と同様に、磁化固定層11,12に一対の端子p1,p2を有して、この端子p1,p2から向きを変えて電流を供給されることにより一部の磁化方向が反転する(図8参照)。したがって、磁気抵抗効果素子1Bは、光変調素子1A2と同様、磁化反転領域3SWが磁化反転しても、端子p1−p2間の抵抗値(抵抗器MRwの抵抗値RMRw)が実質的に変化しない。一方で、磁気抵抗効果素子1Bは、磁化反転領域3SWを磁化自由層として、TMR素子である可変抵抗器MRrを備えるので、可変抵抗器MRrに接続した端子p3と端子p1,p2の一方(本実施形態では端子p2)との間の抵抗値、すなわち可変抵抗器MRrと抵抗器MRw2の抵抗値の和は、磁化反転領域3SWの磁化反転により変化する。このように、磁気抵抗効果素子1Bは、低抵抗でかつ比較的低い電流密度で磁化反転させ易い磁壁移動素子により書込みをし、MR比が高く小さな電流でも高精度で抵抗値を検知し易いTMR素子により読出しをすることができる。
磁化固定層11,12および磁性細線3Aは、光変調素子1A2における磁化固定層11,12、磁性細線3Aと同様の構成とすることができる。一方、障壁層23および磁化固定層13は、それぞれTMR素子の障壁層および磁化固定層として公知の構造とすることができる。ただし、磁気抵抗効果素子1Bにおいて、可変抵抗器MRrはスピン注入磁化反転させる必要がないので、端子p2−p3間で定電流Irを供給して抵抗値の変化(磁化方向が平行:RP、磁化方向が反平行:RAP)を検知することのできる構成であればよい。なお、定電流Irは、磁性細線3Aにおいて磁壁が移動しない程度の電流密度とする。特に、障壁層23は、TMR素子の障壁層として特に高いMR比が得られるMgOが好ましい。また、障壁層23および磁化固定層13は、定電流Irに対応した構造であればよいが、例えば書込み時に誤って電流Iwが流れても破壊されない程度の抵抗であることがより好ましい。また、磁化固定層13および障壁層23は、磁性細線3Aの磁化反転領域3SW内に積層されていれば、平面視形状は特に限定されない。
(ダイオード)
ダイオード44は、メモリセル6Bにおいて、書込み、読出し時に、電流が読出ビット線RBLを経由して他のメモリセル列60Bの磁気抵抗効果素子1Bに回り込まないように設けられる。詳しくは、図15に示すように、メモリセル6Bにおいて、ダイオード44は、カソードが磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrに接続され、アノードが読出ビット線RBLに接続されている。
ダイオード44は、例えばシリコン(Si)ダイオード等の一般的なものが適用される。特にメモリセル6Bにおいては、ダイオード44は、磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrの側の端子、すなわち磁化固定層13に電極53を介して接続されるので、図16に示すように、磁気抵抗効果素子1Bの上側に設けられる。そのため、後記の磁気メモリの製造方法にて説明するように、ダイオード44は、磁気抵抗効果素子1Bの各層の材料にもよるが、150℃程度の低温で成膜可能な多結晶シリコン(poly−Si)で形成される。あるいは、ダイオード44は、選択トランジスタ42と同様にSi基板等の表層に形成されてもよく、この場合は、選択トランジスタ42が形成された基板40Bとは別の基板に形成されることが好ましい。また、図16において、ダイオード44は、磁気抵抗効果素子1Bの障壁層23および磁化固定層13(可変抵抗器MRr)とほぼ同じ平面視形状としているが、これに限られず、磁気メモリ10Bの読出し用の電流Irに対応した構成であればよい。ダイオード44は、下(磁気抵抗効果素子1Bの側)にn層、上にp層の順に積層されて(図示省略)、電流が読出ビット線RBLから磁化固定層13(可変抵抗器MRr)への向きにのみ流れる。
(選択トランジスタ)
メモリセル6Bにおいて、選択トランジスタ42は、第2実施形態におけるメモリセル6Aの選択トランジスタ42と同様の構成であり、磁気抵抗効果素子1B(抵抗器MRw)に並列に接続され、かつメモリセル列60Bにおいて直列に接続されている。したがって、前記した通り、選択トランジスタ42は、図16に示すように、第2実施形態と同様に、メモリセル列60Bにおいて連続したMOSFETで基板40Bの表層に形成されている。また、本実施形態においては、誤書込み(ディスターブ)を防ぐために、選択トランジスタ42は、ON抵抗RONが、磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRwの抵抗値RMRw以下(RON≦RMRw)であることが好ましく、抵抗値RMRwに対してより低いことがさらに好ましい。
前記の構造の磁気抵抗効果素子1Bを備えた本実施形態に係る磁気メモリ10Bのメモリセル6Bは、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aのメモリセル6A(図11参照)の第1実施形態の変形例の光変調素子1A2を設けた構成に、光変調素子1A2を磁気抵抗効果素子1Bに置き換え、ダイオード44を挟んで読出ビット線RBLを接続したものになる。
詳しくは、磁気メモリ10Bにおいて、メモリセル6Bは、一例として図16に示すように、基板40Bの表層に形成された選択トランジスタ42(4s/d)が、配線5(接続部5c、抵抗接続層5a)で、磁気抵抗効果素子1Bの磁化固定層12の下面(端子p2)と接続し、かつ隣のメモリセル6Bの磁気抵抗効果素子1Bの磁化固定層11の下面(端子p1)と接続する。そして、磁気抵抗効果素子1Bの磁化固定層13の上面(端子p3)に接続した電極53のさらに上に、ダイオード44を挟んで、行方向(図16のY方向)に延設された配線54が読出ビット線RBLとして接続される。なお、図16では、第2実施形態(図11参照)と同様に、左から順に、メモリセル列60Bにおけるビット線BLTから1〜4行目の4個のメモリセル6Bが簡略化して示され、磁気抵抗効果素子1Bが1個ずつ互い違いに行方向にずらして配列(千鳥配列)されている。そして、隣り合うメモリセル6B,6Bの一方の磁気抵抗効果素子1Bの磁化固定層12と他方の磁化固定層11とが、1つの抵抗接続層5a上で行方向に並んで配置されて接続している。また、磁気抵抗効果素子1Bは、磁化固定層11を左側に、磁化固定層12を右側にして配置されている。MOSFET(選択トランジスタ42)および磁気抵抗効果素子1Bの各平面視サイズ、ならびに配線5の配線幅等にもよるが、磁気抵抗効果素子1Bのこのような配列により、磁気メモリ10Bは、MOSFETに合わせて、列方向(図16のX方向)に狭ピッチに形成されている。また、図16においては、図11と同様に、ワード線WLB(図15参照)が省略され、空白部分に絶縁層が設けられている。また、基板40Bの表層には、第2実施形態にて説明したように、ビット線BLTの側の端(図16における左端)の選択トランジスタ42に、ゲート4g3とその両側のn+拡散層(4s3,4s/d)で形成されたメモリセル列駆動トランジスタ43(図15参照)が接続されている。
(配線)
配線5、電極53、配線54(読出ビット線RBL)、およびワード線WLBは、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aの配線5およびワード線WLBと同様に、一般的な金属電極材料で形成される。電極53および配線54は、磁気メモリ10Bの読出しのみにおいて電流が流れるので、電流Irに対応した構造であればよく、例えば書込み時に誤って電流Iwが流れても破壊されない程度の構造であることがより好ましい。
(記憶装置)
本実施形態に係る磁気メモリ10Bを備える記憶装置90Bは、図15に示すように、さらに磁気メモリ10Bの駆動回路として、磁気メモリ10Bの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ72、読出ビット線選択トランジスタ76、および電圧比較器93と、ゲート電圧生成回路80Bと、磁気メモリ10Bの列(メモリセル列60B)毎に設けられたビット線選択トランジスタ73,74およびメモリセル列駆動トランジスタ43と、メモリセル列選択トランジスタ75と、行デコーダ91Bと、列デコーダ92Bと、選択されたメモリセル列60Bに電流を供給する書込/読出電流回路9Bと、を備える。すなわち、記憶装置90Bは、第2実施形態に係る磁気メモリ10A,10Aを備える記憶装置90A(図10参照)に、メモリセル列選択トランジスタ75および読出ビット線選択トランジスタ76を追加した構成を有する。本実施形態においては、メモリセル6Bが、少なくとも磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRwを経由して常に電流が流れる回路を形成しているために、第2実施形態と同様、選択したメモリセル列60Bに限定的に電流を供給するように、メモリセル列駆動トランジスタ43が設けられる。メモリセル列選択トランジスタ75はワード線選択トランジスタ72と、読出ビット線選択トランジスタ76はビット線選択トランジスタ73,74と、それぞれ同様のスイッチング素子を適用することができる。また、記憶装置90Bは、電圧比較器93を、磁気メモリ10Bの行毎に、読出ビット線RBLに接続して備える。そして、行デコーダ91Bは、ワード線選択トランジスタ72に加え、読出ビット線選択トランジスタ76を駆動する。
このような構成の記憶装置90Bは、磁気メモリ10B、書込/読出電流回路9B、ゲート電圧生成回路80B、および読出ビット線RBL以外は、図43(a)に示す従来の磁気メモリ110を備えた記憶装置190と概ね同様の構成であるといえる。さらに、記憶装置90Bは、後記するように、磁気メモリ10Bにおいて、ビット線BLTまたはビット線BLBと読出ビット線RBLとの直交する2本の配線間の抵抗値で読出しをするため、読出しにおいてはこれら2本の配線を書込/読出電流回路9Bに内蔵された定電流源94に接続する(図19、図20参照)。
記憶装置90Bは、磁気メモリ10Bをサブブロックメモリとして2つ以上搭載してもよく、例えば、第2実施形態に係る磁気メモリ10A,10Aを備える記憶装置90A(図10参照)と同様に、搭載された2つ以上の磁気メモリ10Bが互いに並列に書込/読出電流回路9Bに接続されるように、ビット線BLT,BLBおよび読出ビット線RBLを結線する(図示省略)。
(磁気メモリの製造方法)
本実施形態に係る磁気メモリ10Bは、前記第2実施形態に係る磁気メモリ10Aと同様に、Si基板の表層に選択トランジスタ42およびメモリセル列駆動トランジスタ43をMOSFETで形成して基板40Bを製造する工程、ワード線WLBおよび配線5等、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程を行い、その後に、磁気抵抗効果素子1Bおよびその上の電極53とダイオード44とを形成する工程、配線54を形成する工程、を行って製造することができる。
磁気抵抗効果素子1Bは、第1実施形態の変形例の光変調素子1A,1A2と同様の方法で形成することができる。詳しくは、磁化固定層11,12およびその間を埋める絶縁層を形成した後、磁性細線3A、障壁層23、磁化固定層13、および保護膜(図示省略)を連続して成膜、積層して、保護膜から磁性細線3Aまでと、保護膜から障壁層23まで(または磁化固定層13まで)と、に分けてエッチングして、磁気抵抗効果素子1Bの形状に加工すればよい。さらに磁気抵抗効果素子1Bの上面に接続する電極53を形成し、その上に、poly−Si膜を成膜してダイオード44を形成し、行方向に延設したストライプ状の配線54、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成して、磁気メモリ10Bが得られる。あるいは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器のように、選択トランジスタ42、ワード線WLBおよび配線5を形成した基板に、配線54、ダイオード44、電極53、および磁気抵抗効果素子1Bを形成した別の基板(図示せず)を貼り合わせてもよい。
(磁気メモリの初期設定)
本実施形態に係る磁気メモリ10Bは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10と同様に、磁界を印加して、すべてのメモリセル6Bの磁気抵抗効果素子1Bの磁化固定層11と磁化固定層12,13のそれぞれの磁化方向を逆向きに揃える(図17参照)。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第3実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図18〜20を参照して説明する。磁気メモリ10Bにおける、4つのメモリセル6Bを配列したメモリセル列60Bを、図18では1つ、図19および図20では2つ示す。この図18〜20に示すメモリセル列60Bの1つが列デコーダ92B(図15参照)により選択され、この選択されたメモリセル列60Bに配列されたメモリセル6Bを、適宜、図中左からメモリセル6B1,6B2,6B3,6B4と称する。ここでは、メモリセル6B1,6B2,6B3,6B4にそれぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’を書込みし、また、このデータを読出しするものとして説明する。
(磁気メモリの書込方法)
前記した通り、第3実施形態に係る磁気メモリ10Bのメモリセル6Bは、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aのメモリセル6Aについて、磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRwに置き換えた構成であり、磁気抵抗効果素子1Bは、抵抗器MRw(端子p1,p2間)に電流を供給されることにより、磁性細線3Aの磁化反転領域3SWが磁化反転し、すなわち書込みされる(図17参照)。したがって、第3実施形態に係る磁気メモリの書込方法は、第1、第2実施形態に係る磁気メモリの書込方法(図4、図12参照)と同様に、ビット線を経由して、選択した列のメモリセル列のすべてのメモリセルに電流が流れるように電流を供給する。さらに磁気メモリ10Bは、このとき、後記するように磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrには電流が流れないように構成されているので、メモリセル列60Bでの電流の経路を、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aのメモリセル列60Aでの経路と同一にすることができる。
そのために、列デコーダ92B(図15参照)により、図18に示すように、選択したメモリセル列60Bのビット線BLT,BLBが、書込/読出電流回路9Bに内蔵された定電流源95に接続されている。また、行デコーダ91Bにより、メモリセル列選択トランジスタ75がON状態になり、ゲート電圧生成回路80Bに内蔵されたパルス電源96の出力電圧がメモリセル列駆動トランジスタ43に印加される。また、行デコーダ91Bにより、すべての読出ビット線選択トランジスタ76(図15参照)をOFF状態になる。本実施形態の書込みでは、行デコーダ91Bは、第2実施形態における行デコーダ91Aと同様に、非選択の行のワード線選択トランジスタ72をON状態にする。
図18(a)においては、行デコーダ91Bによりすべての行が選択され、第2実施形態(図12(a)参照)と同様に、4つすべてのメモリセル6Bにおいて、選択トランジスタ42がOFF状態である。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Bにビット線BLB側からビット線BLT側へ左方向へ電流Iwを供給すると、各メモリセル6Bにおいて、電流Iwが磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRw1,MRw2(抵抗器MRw)に供給される。これにより、第1実施形態の変形例の光変調素子1A2と同様に磁性細線3Aの磁化反転領域3SWが下向きの磁化方向になり、磁化固定層13と反平行になる(図8(c)、図17(b)参照)。したがって、4つすべてのメモリセル6Bに‘1’が書込みされる。
次に、図18(b)において、行デコーダ91Bにより中央の2行(2行目と3行目)が選択される。すなわち第2実施形態(図12(b)参照)と同様に、両端の2行(1行目と4行目)が非選択状態になり、ワード線選択トランジスタ72がON状態に切り替えられ、両端の2つのメモリセル6B1,6B4において、選択トランジスタ42がON状態である。なお、図18、ならびに後記の図19および図20において、ワード線選択トランジスタ72は、ON状態で、かつこれにより出力先の選択トランジスタ42に電流が流れるとき、白抜き矢印を付して表す。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Bに、今度はビット線BLB側から左方向へ電流Iwを供給する。すると、中央の2つのメモリセル6B2,6B3において、図18(a)とは逆方向に電流Iwが磁気抵抗効果素子1の抵抗器MRwに供給されるため、磁性細線3Aの磁化反転領域3SWの磁化方向が磁化固定層13と平行な上向きになる(図8(d)、図17(a)参照)。一方、メモリセル6B1,6B4においては、電流Iwが磁気抵抗効果素子1の抵抗器MRwと選択トランジスタ42とに分岐して流れるため、抵抗器MRwには磁壁移動させる十分な電流密度の電流が供給されず、磁性細線3Aの磁化反転領域3SWの磁化方向は下向きを維持する。その結果、メモリセル6B2,6B3が‘0’に書き替えられて、メモリセル列60Bに左から‘1’、‘0’、‘0’、‘1’が書込みされる。
このように、選択したメモリセル6Bにおいて磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRwに電流Iwが供給されるため、第1実施形態の変形例の光変調素子1A2と同様に磁性細線3Aの磁化反転領域3SWが磁化反転する(図8(c)、(d)参照)。そして、第2実施形態と同様に、1つのメモリセル列60Bのすべてのメモリセル6Bに‘1’、‘0’を、最少2回の電流供給により書込みすることができる。なお、ビット線BLTに接続されたメモリセル列駆動トランジスタ43にパルス電源96の出力電圧Vg0,VgHが印加されるため、定電流源95からメモリセル列60Bに供給される電流は、パルス電源96の出力に同期した、ピーク電流Iwの直流パルス電流である。
書込み時には、メモリセル6Bが選択、非選択にかかわらず、磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrには電流が流れない。これは、詳しくは後記の読出方法にて説明するように、磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrが、ダイオード44に接続されているために、同じ行の他の列(メモリセル列60B)のメモリセル6Bとはダイオード44のアノード同士で読出ビット線RBLに接続していることによる。さらに、すべての読出ビット線RBLをGND(定電流源95の負の電位)等の電位の低い側に接地して、すべてのメモリセル6Bのダイオード44に電流が流れないようにしてもよい。この場合は、メモリセル列60Bにおける電位の高い側のメモリセル6Bで、ダイオード44のカソード電位が降伏電圧に到達することのないようにする。
本実施形態に係る磁気メモリ10Bの書込みにおいては、前記したように、メモリセル列60Bにおける電流の経路が、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aのメモリセル列60A(図12参照)の磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MR
wに置き換えた以外は同じである。すなわち、式(15)、式(29)〜(34)の「R
P/AP」、「R
P」、「R
AP」がすべて抵抗器MR
wの一定の抵抗値「R
MRw」に置き換えられる。したがって、m個のメモリセル6Bを選択したときのメモリセル列60Bの抵抗値ΣR
CELLkは下式(52)で表される。
また、磁気メモリ10Bの書込みにおいては、第2実施形態と同様にゲート電圧生成回路80Bが行毎に変位させたゲート電圧Vgを出力して、非選択のメモリセル6Bの選択トランジスタ42に印加する。特に本実施形態においては、磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRwの抵抗値RMRwが、例えば第2実施形態におけるTMR素子からなる磁気抵抗効果素子1のように高くないので、誤書込みを防止するために、選択トランジスタ42を十分に低いON抵抗RONで動作させることが好ましい。
ゲート電圧生成回路80Bの構成は、可変抵抗器8の抵抗値および後記の読出しにおける抵抗の切替を除いて、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aを搭載した記憶装置90Aのゲート電圧生成回路80A(図12、図13参照)と同様である。前記した通り、式(15)、式(30)の「R
P」、「R
AP」が共に抵抗器MR
wの一定の抵抗値「R
MRw」に置き換えられる。したがって、可変抵抗器8は、図18(b)に破線矢印で表すように、行デコーダ91Bからのワード線選択トランジスタ72への信号に連動して、R
MRw:R
ON||R
MRwの比で2段階に変化する。そのために、可変抵抗器8を構成する分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ78の各抵抗値R
div,R
dvONの比が下式(53)に、初段抵抗84の抵抗値R
auxが下式(31)に、それぞれ設計されることが好ましい。
さらに、本実施形態に係る磁気メモリ10Bの書込みにおいては、選択、非選択のメモリセル6Bの抵抗値R
CELLsl,R
CELLnsが、データ‘1’、‘0’の違いや書換えによって変化せず、したがって、下式(32)に表される定電流源95の出力電圧V
wも変化しない。その結果、メモリセル列駆動トランジスタ43および非選択のメモリセル6Bの選択トランジスタ42について、一定のゲート電圧Vgに対して、ゲート−ソース間電圧VgsおよびON抵抗R
ONが一定に保持される。したがって、第1、第2実施形態と同様に、これらすべてのトランジスタ42,43に共通のゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typと称する)を下式(3)の範囲に設定し、ON抵抗R
ONを算出するが、メモリセル6Bのデータの変化に伴うゲート−ソース間電圧Vgsの増大または減少を考慮する必要がない。そして、この、設定したゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)およびON抵抗R
ONに基づき、‘1’の書込みにおけるパルス電源96の出力電圧Vg
0、ならびに‘0’の書込みにおけるパルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H,Vg
0は、下式(16)、下式(54)で表されるように設定される。これにより、メモリセル列駆動トランジスタ43およびすべての非選択のメモリセル6Bの選択トランジスタ42に、式(3)を満足する同一のゲート−ソース間電圧Vgs
typになるゲート電圧Vg
kが出力される。
また、ツェナーダイオード86は、第2実施形態と同様に、ツェナー電圧Vzが‘1’の書込みにおいて下式(19)を、‘0’の書込みにおいて下式(13)を、それぞれ満足するように設定されることが好ましく、併せて下式(40)を満足するように設定されてもよい。なお、本実施形態に係る書込方法では、データの書換え等で定電流源95の出力電圧V
wが変化しないので、ノイズ等を除いてツェナー電圧Vzに電流が流れることはない。
本実施形態に係る磁気メモリ10Bの書込みにおいては、非選択のメモリセル6Bがデータにより抵抗値RCELLnsが変化しないので、第1実施形態(図4参照)のように、メモリセル列60Bのすべてのメモリセル6Bに‘0’を書込みした後に、‘1’を書込みしてもよく、誤書込みのし難さについては変わらない。‘1’をメモリセル列60Bの一部のメモリセル6Bに書込みする場合は、ゲート電圧生成回路80Bは、パルス電源96やゲート基電圧電源98等の接続を第1実施形態と同様に入れ替え、パルス電源96を接続した側をツェナーダイオード86およびダイオード87を経由して定電流源95の正に接続する(図4(b)参照)。
本実施形態に係る磁気メモリ10Bの書込みにおいては、第2実施形態と同様に、ゲート電圧生成回路80Bにより、書込みをするメモリセル6Bの数mに応じて最も高い電位(パルス電源96の出力電圧VgH)を管理することで、すべての非選択のメモリセル6Bの選択トランジスタ42に適正なゲート電圧Vgが出力される。さらに本実施形態においては、メモリセル6Bのデータによってその選択トランジスタ42の電位が変化しないので、第1、第2実施形態と異なり、一定のゲート電圧Vgに対してゲート−ソース間電圧Vgsが一定、すなわち常に式(3)の範囲となる。したがって、読出しの判定の精度を満足する範囲で、メモリセル列60Bに配列されたメモリセル6Bの数N、選択するメモリセル6Bの数mの数を多く設計することができる。また、選択トランジスタ42のゲート−ソース間電圧Vgsが一定であるので、最大定格V(BR)gsを大きな値に設計する必要がなく、あるいはゲート−ソース間電圧Vgsを最大定格V(BR)gsに対するマージンを抑えて十分に大きな値に設定してON抵抗RONを低減することができる。その結果、磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRwの抵抗値RMRwが低くても、誤書込みし難く、さらに、書込み時の負荷が低減される。なお、磁気メモリ10Bの書込みにおいては、ゲート電圧生成回路80Bの分圧回路によらずに、非選択の各行のゲート電圧Vgを、第1実施形態にて説明したように個別にシミュレーションで算出して出力してもよい。
(磁気メモリの読出方法)
第3実施形態に係る磁気メモリ10Bは、メモリセル列60Bにおいてメモリセル6B毎(行毎)に、読出ビット線RBLが磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrにダイオード44を経由して接続されている。したがって、第3実施形態に係る磁気メモリの読出方法は、選択したメモリセル6Bに限定してその可変抵抗器MRrに電流が流れるように、読出ビット線RBLを選択した行毎に切り替えて定電流源94の一方の極に接続し、他方の極はビット線BLT,BLBの一方に接続して行う。ここでは、読出ビット線RBLは、ダイオード44のアノードに接続されているために、定電流源94の正に接続される。そして、列デコーダ92B(図15参照)により、選択したメモリセル列60B(図19、図20における上のメモリセル列60B)のビット線BLBが定電流源94の負に接続される。一方、ビット線BLTはopen(開放)状態であり、そのため、行デコーダ91Bによりメモリセル列選択トランジスタ75をOFF状態にして、メモリセル列駆動トランジスタ43がOFF状態になる。このメモリセル列60Bのメモリセル6B1,6B2,6B3,6B4は、それぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’が記憶されているので、それぞれの磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrの抵抗値は、RAP,RP,RP,RAPである。
本実施形態に係る磁気メモリの読出方法においては、行デコーダ91Bにより、選択した行の読出ビット線選択トランジスタ76をON状態にして、その行の読出ビット線RBLを経由して、メモリセル列60Bにおいて選択したメモリセル6Bに直接に電流を流す。さらに、選択したメモリセル6Bから電流の流れる側(電位の低い側)に配列された非選択のメモリセル6Bについて選択トランジスタ42をON状態にして抵抗を低くするために、これらの行のワード線選択トランジスタ72をON状態にする。
図19において、行デコーダ91Bにより左から1行目が選択されると、1行目の読出ビット線RBLに、読出ビット線選択トランジスタ76によって定電流源94の正が接続して電流Irが供給される。すると、選択された左端のメモリセル6B1において、読出ビット線RBLから、電流Irが、ダイオード44を経由して磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrに流れ、さらに定電流源94の負の側へ、すなわち右隣のメモリセル6B2へ流れるために、可変抵抗器MRrから抵抗器MRw2へ流れる。メモリセル6B2においては、書込みにおける非選択のメモリセル6B(図18(b)のメモリセル6B1,6B4)と同様に、磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRwとON状態の選択トランジスタ42とに分岐して流れ、さらにその右側の残りの非選択のメモリセル6B3,6B4を同様に順次経由して、ビット線BLBへ流れる。
磁気抵抗効果素子1Bについて、抵抗器MRw1,MRw2が同一構造であるとして、それぞれの抵抗値は0.5RMRwになる。また、ダイオード44の抵抗値をRDIで表す。図19における読出ビット線RBLとビット線BLBとの間で測定される(RBL−BLB間の)抵抗値Rread1は、下式(55)で表される。
Rread1=RDI+RAP+0.5RMRw+3(RON||RMRw) ・・・(55)
また、図20において、行デコーダ91Bにより左から2行目が選択されると、選択された2行目の読出ビット線RBLに定電流源94の正が接続して電流Irが供給される。すると、選択されたメモリセル6B2において、1行目が選択されたときのメモリセル6B1(図19参照)と同様に、電流Irが、ダイオード44を経由して磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrに流れ、可変抵抗器MRrから抵抗器MRw2を経由して右隣のメモリセル6B3へ流れ、さらにメモリセル6B4を経由して、ビット線BLBへ流れる。
すなわち、2行目のメモリセル6B2が選択されたとき、電流Irは、この選択したメモリセル6B2と、その定電流源94を接続される側に配列されたメモリセル6B3,6B4と、に流れ、定電流源94を接続されていない側(open状態にした側)に配列されたメモリセル6B1には流れない。したがって、このときのRBL−BLB間の抵抗値Rread2は、下式(56)で表される。
Rread2=RDI+RP+0.5RMRw+2(RON||RMRw) ・・・(56)
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Bの読出しでは、電流が、選択したメモリセル6Bと、このメモリセル6Bの一方の側(ここではビット線BLB側)に配列された非選択のメモリセル6Bとに流れる。そのため、メモリセル列60Bにおいて、左からj行目(1≦j≦N)のメモリセル6B
jが選択されたときのRBL−BLB間の抵抗値R
readjは、下式(57)で表される。「R
P/AP」は、選択したメモリセル6B
jに記憶されているデータ(磁気抵抗効果素子1Bの磁性細線3Aの磁化方向)によって、可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。下式(57)に表されるように、RBL−BLB間の抵抗値R
readjは、選択したj行目のメモリセル6B
jの抵抗値に(N−j)個の非選択のメモリセル6B
k(j+1≦k≦N)の抵抗値R
CELLns(=R
ON||R
MRw)が加算されるので、選択したメモリセル6B
jに記憶されたデータだけでなく、その行アドレス(j)によっても変化する。
したがって、記憶装置90Bは、磁気メモリ10Bの読出しにおいては、精度を高くするために、選択した行アドレスによるRBL−BLB間の抵抗値R
readjの差を加味して判定することが好ましい。具体的には、記憶装置90Bは、k行目の読出ビット線RBLに接続された電圧比較器93の参照電位Vref
kを、下式(58)に表されるように左から1行毎に(I
r×(R
ON||R
MRw))降下させた値に設定する。すなわち、定電流源94の負に接続された側から1行目となる左からN行目の参照電位Vref
Nが、最も低い電位である。なお、Vref
0は、メモリセル6Bの磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MR
rの抵抗値の差ΔR
P(=R
AP−R
P)における参照電位である。あるいは、記憶装置90Bは、1つの電圧比較器93を定電流源94の正の出力に接続して備え、定電流源94と共に選択した行の読出ビット線RBLとの接続に切り替えながら、選択した行(j)に対応した参照電位Vref
jに変位させてもよい。
RBL−BLB間の抵抗値Rreadjは、選択したメモリセル6Bjのデータによる差ΔRP(=RAP−RP)を除くと、1行目を選択したとき(j=1)に最大となるので、抵抗変化率ΔRP/Rreadjが最小になる。したがって、このときの抵抗変化率ΔRP/Rread1に基づいて、読出しが可能となるように、メモリセル6Bおよびその配列される数Nを設計することが好ましい。例えば、メモリセル6Bにおいて、磁気抵抗効果素子1Bは、抵抗器MRwの抵抗値RMRwが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/10とし(RMRw=RP/10)、可変抵抗器(TMR素子)MRrのMR比が50%とする。また、選択トランジスタ42のON抵抗RONが、抵抗器MRwの抵抗値RMRwと同じ(RON=RMRw)とし、ダイオード43の抵抗値RDIが、抵抗器MRwの抵抗値RMRwの2倍(RDI=2RMRw)とする。このようなメモリセル6Bを配列したメモリセル列60Bは、1行目を選択したときの抵抗変化率ΔRP/Rread1が、N=32で18%、N=64で11%、N=128で6.6%である。すなわち、本実施形態に係る磁気メモリ10Bは、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aと比較して、メモリセル列60Bにメモリセル6Bが多く配列されても、読出しが容易で、また、それぞれのメモリセル6Bに記憶されたデータに影響されない。
また、RBL−BLB間の抵抗値R
readjが、選択した行(j)によらず、選択したメモリセル6B
jが‘1’のときの方が‘0’のときよりも常に高ければ、一定の参照電位Vrefによる読出し(判定)が可能である。具体的には、RBL−BLB間の抵抗値R
readjの1行目とN行目とを選択した行による差((R
read1−R
P/AP)−(R
readN−R
P/AP))が、磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MR
rの抵抗値の差ΔR
Pよりも小さく、下式(59)が成立すればよい。
本実施形態に係る読出方法では、メモリセル列60Bにおいて電流の流れる非選択のメモリセル6B、すなわち選択したメモリセル6Bjに対して定電流源94を接続した側に配列された(N−j)個のメモリセル6Bk(j+1≦k≦N、図20においてはメモリセル6B3,6B4)においては、それぞれの選択トランジスタ42に、書込み(図18(b)参照)と同様に段階的に変位させたゲート電圧Vgkを印加する。ただし、本実施形態に係る読出方法では、非選択であって電流の流れないメモリセル6B(図20においてはメモリセル6B1)の選択トランジスタ42がOFF状態であるため、ゲート電圧生成回路80Bは次のように構成される。
ゲート電圧生成回路80Bは、読出しにおいては、書込み(図18(b)参照)と異なり、可変抵抗器8の抵抗が、行デコーダ91Bからのワード線選択トランジスタ72への信号によって変化しないように構成される。ここでは、可変抵抗器8の抵抗切替トランジスタ78が読出し時には常にOFF状態であるように構成され、可変抵抗器8の抵抗値は、分圧抵抗器81の抵抗値Rdivで一定である。したがって、ゲート電圧生成回路80Bは、選択、非選択にかかわらず、Vg1からVgNまでΔVgずつ均等に降下した電圧を出力する。読出しにおいては、電流の流れる非選択のメモリセル6B毎に(Ir×(RON||RMRw))変位するので、この(Ir×(RON||RMRw))にΔVgが一致するように、定電源97およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0を設定すればよい。
まず、書込みと同様に、メモリセル列60Bのすべての非選択のメモリセル6Bの選択トランジスタ42に共通のゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typと称する)を設定し、ON抵抗R
ONを算出する。本実施形態に係る読出し方法においては、メモリセル列駆動トランジスタ43にはゲート電圧Vgを印加しないので、ゲート−ソース間電圧Vgsは下式(60)の範囲に設定される。ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(16)に表されるようにゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)と同じ電圧に設定される。また、定電源97の出力電圧Vg
Hとゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0との電位差が、直列に接続された初段抵抗84とN個の分圧抵抗器81の合計の抵抗値に比例する(下式(61))。そして、前記より、ΔVgについて下式(62)を成立させるために、定電源97の出力電圧Vg
Hは下式(63)で表される。このようなゲート電圧生成回路80Bにより、定電源97の出力電圧Vg
Hを一定にして、選択する行を切り換えて読出しをすることができる。
本実施形態に係る磁気メモリ10Bは、すべてのメモリセル列60B、すなわち複数のメモリセル列60Bの同じ行のメモリセル6Bに接続する読出ビット線RBLを各行に備える。しかしながら、メモリセル6Bがダイオード44を備え、このダイオード44に読出ビット線RBLが接続されているので、図20に破線で表すように、読出ビット線RBLを経由して、非選択のメモリセル列60B(同図における下のメモリセル列60B)に漏れ電流が流れることはない。すなわち、選択した読出ビット線RBLとビット線BLBとの間に流れる電流Irの経路に、非選択のメモリセル列60Bが含まれることがないので、読出しの精度が低下しない。
磁気メモリ10Bの読出しにおいては、ビット線BLTを定電流源94の負に接続して、ビット線BLBをopenにしてもよい。この場合、ゲート電圧生成回路80Bは、定電源97とゲート基電圧電源98の接続を入れ替え、メモリセル列駆動トランジスタ43に式(16)に表されるゲート電圧Vg0を印加してON状態にする。また、各行の電圧比較器93の参照電位Vrefkの高低も入れ替えて、左から1行目の参照電位Vref1が最も低い電位になる。さらに、例えば、1〜N/2行目の読出しにおいてはビット線BLTを定電流源94に接続し、(N/2)+1〜N行目の読出しにおいてはビット線BLBを接続するように切り替えてもよい。この場合、RBL−BLT間、RBL−BLB間の各抵抗値Rreadjにおける非選択のメモリセル6Bの抵抗値の合計が半減するので、読出しの精度が向上する。また、磁気メモリ10Bの読出しにおいては、選択したメモリセル6Bjに対して電位の低い側に配列されたメモリセル6Bkの選択トランジスタ42が、前記したように電位が行アドレス(k)によって固定されているので、各行のゲート電圧Vgkは、ゲート電圧生成回路80Bの分圧回路によらずに、予め個別に設定されていてもよい。
(磁気メモリの読出方法の変形例)
本実施形態に係る磁気メモリ10Bは、電流の流れる非選択のメモリセル6Bも選択トランジスタ42をOFF状態にして、すなわちすべてのメモリセル6Bの選択トランジスタ42をOFF状態にして読出しをすることもできる。このとき、電流の流れる非選択のメモリセル6Bは、該電流が磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MR
wにのみ流れて抵抗値がR
MRwである。ただし、非選択のメモリセル6Bの抵抗値が選択トランジスタ42をON状態にしたときよりも高く、下式(64)に表されるRBL−BLB間の抵抗値R
readjが特に1行目を選択したときに高い。そのため、読出しの精度が十分に得られるように、磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MR
wの抵抗値R
MRwや可変抵抗器MR
rの抵抗値の変化量ΔR
Pに応じて、メモリセル列60Bに配列されたメモリセル6Bの数Nを設計する。また、各行の電圧比較器93の参照電位Vref
kは、1行毎に(I
r×R
MRw)変位させた値に設定される。
このような読出しをするために、記憶装置90Bは、読出しにおいては選択した行の読出ビット線選択トランジスタ76のみをON状態にする行デコーダ91C、およびゲート電圧生成回路80Cを備える(図21、図22参照)。ゲート電圧生成回路80Cは、読出しにおいては、いずれのメモリセル6Bの選択トランジスタ42にもゲート電圧Vgを印加しないので、可変抵抗器8が行デコーダ91Cからのワード線選択トランジスタ72への信号に連動しないように切り替える構成としなくてよい。一方、ゲート電圧生成回路80C(定電源97)は、書込み(図18(a)参照)と同様に、メモリセル列駆動トランジスタ43にゲート電圧Vg0を印加する。したがって、記憶装置90Bは、第2実施形態(図10、図13参照)と同様に、メモリセル列選択トランジスタ75を備えずに、ゲート電圧生成回路80Cから直接にメモリセル列駆動トランジスタ43に接続する構成とすることができる。
すべてのメモリセル6Bの選択トランジスタ42をOFF状態にする場合も、ビット線BLTを定電流源94の負に接続し、ビット線BLBをopenにすることができる。この場合は、定電源97から下式(22)の範囲に設定されたゲート−ソース間電圧Vgsと同じ電圧のゲート電圧Vg
0をメモリセル列駆動トランジスタ43に印加し、また、各行の電圧比較器93の参照電位Vref
kの高低を入れ替える。さらに、読出しの精度が向上するように、1〜N/2行目の読出しにおいてはビット線BLTを定電流源94に接続し、(N/2)+1〜N行目の読出しにおいてはビット線BLBを接続するように切り替えてもよい。
あるいはさらに、メモリセル列60Bの両端のビット線BLT,BLBを短絡させて、共に定電流源94の負に接続してもよい。そして、非選択のメモリセル6Bの選択トランジスタ42をON状態にした場合(図19、図20参照)と同様に、読出ビット線RBLを選択した行毎に切り替えて定電流源94の正に接続する。このような読出しについて、図21および図22を参照して説明する。
図21において、行デコーダ91Cにより左から1行目が選択されると、1行目の読出ビット線RBLに、読出ビット線選択トランジスタ76によって定電流源94の正が接続して電流Irが供給される。すると、選択された左端のメモリセル6B1において、読出ビット線RBLから、電流Irが、ダイオード44を経由して磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrに流れ、さらに定電流源94の負の側へ、すなわちビット線BLT,BLBの両方へ流れる。そのために、電流Irが、可変抵抗器MRrから抵抗器MRw1と抵抗器MRw2とに分岐して流れ、抵抗器MRw1へ流れた電流はメモリセル列駆動トランジスタ43を経由してビット線BLTへ、抵抗器MRw2へ流れた電流は右隣のメモリセル6B2の抵抗器MRw(MRw1,MRw2)へ流れ、さらにその右側の残りの非選択のメモリセル6B3,6B4を同様に順次経由して、ビット線BLBへ流れる。
図21における読出ビット線RBLとビット線BLT,BLBとの間で測定される(RBL−BLT,BLB間の)抵抗値Rread1は、分岐した2つの経路における抵抗同士が並列に接続されていることから下式(65)で表される。
Rread1=RDI+RAP+(0.5RMRw+RON)||(0.5RMRw+RMRw+RMRw+RMRw) ・・・(65)
また、図22において、行デコーダ91Cにより左から2行目が選択されると、選択された2行目の読出ビット線RBLに定電流源94の正が接続して電流Irが供給される。すると、選択したメモリセル6B2において、1行目が選択されたときのメモリセル6B1(図21参照)と同様に、電流Irが、ダイオード44を経由して磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MRrに流れ、可変抵抗器MRrから抵抗器MRw1と抵抗器MRw2とに分岐して流れ、一方は左隣のメモリセル6B1およびメモリセル列駆動トランジスタ43を経由してビット線BLTへ流れ、他方は右隣のメモリセル6B3、さらにメモリセル6B4を経由して、ビット線BLBへ流れる。
すなわち、2行目のメモリセル6B2が選択されたとき、電流Irは、この選択したメモリセル6B2から、ビット線BLT側に配列されたメモリセル6B1と、ビット線BLB側に配列されたメモリセル6B3,6B4と、に分岐して流れ、定電流源94の負で合流する。したがって、このときのRBL−BLT,BLB間の抵抗値Rread2は、下式(66)で表される。
Rread2=RDI+RP+(0.5RMRw+RMRw+RON)||(0.5RMRw+RMRw+RMRw) ・・・(66)
このように、磁気メモリ10Bの本変形例に係る読出しにおいては、ビット線BLT,BLBの両方が定電流源94の負に接続されていることにより、非選択のメモリセル6B
kにおける電流の経路が短くかつ2重となり、選択トランジスタ42がOFF状態であっても、RBL−BLT,BLB間の抵抗値R
readjが低減される。その際、電流I
rの流れるメモリセル6Bの数Nは一定であるが、2本の経路のそれぞれにおけるメモリセル6Bの数は変化する。したがって、メモリセル列60Bにおいて、j行目のメモリセル6B
jが選択されたとき(1≦j≦N)のRBL−BLT,BLB間の抵抗値R
readjは、下式(67)で表される。このように本変形例においても、RBL−BLT,BLB間の抵抗値R
readjは、選択したメモリセル6B
jに記憶されたデータだけでなく、選択した行(j)によっても変化する。なお、メモリセル列駆動トランジスタ43に電流I
rのすべてが流れることはないが、1行目が選択されたとき(j=1)に最も多く流れて電流I
rに近付くので、定電源97の出力電圧Vg
0は、下式(16)に表されるように、下式(22)の範囲のゲート−ソース間電圧Vgsと同じ電圧に設定される。
したがって、記憶装置90Bは、磁気メモリ10Bの本変形例に係る読出しにおいても、選択した行アドレスによる差を加味することが好ましい。具体的には、記憶装置90Bは、k行目の読出ビット線RBLに接続された電圧比較器93の参照電位Vref
kを、下式(68)で表されるように、選択した行(j=k)に対応した参照電位Vref
jに設定する。あるいは、記憶装置90Bは、1つの電圧比較器93を定電流源94の正の出力に接続して備え、定電流源94と共に選択した行の読出ビット線RBLとの接続に切り替えながら、選択した行(j)に対応した参照電位Vref
jに変位させてもよい(後記変形例(図26)参照)。
RBL−BLT,BLB間の抵抗値R
readjは、選択したメモリセル6B
jのデータによる差ΔR
Pを除くと、(N/2)行目が選択されたとき(j=N/2,Nは偶数)に最大になる(下式(69)参照)ので、抵抗変化率ΔR
P/R
readjが最小になる。したがって、このときの抵抗変化率ΔR
P/R
readN/2に基づいて、読出しが可能となるように、メモリセル6Bおよびその配列される数Nを設計することが好ましい。例えば第3実施形態に係る読出方法(図19、図20参照)と同様、メモリセル6Bにおいて、磁気抵抗効果素子1Bは、抵抗器MR
wの抵抗値R
MRwが可変抵抗器MR
rの抵抗値R
Pの1/10(R
MRw=R
P/10)で、可変抵抗器MR
rのMR比が50%(ΔR
P/R
P=0.5)とする。また、ダイオード44の抵抗値R
DIが、抵抗器MR
wの抵抗値R
MRwの2倍(R
DI=2R
MRw)とする。また、メモリセル列駆動トランジスタ43のON抵抗R
ONが、磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MR
wの抵抗値R
MRwと同じ(R
ON=R
MRw)とする。このようなメモリセル6Bを配列したメモリセル列60Bは、(N/2)行目が選択されたときの抵抗変化率ΔR
P/R
readN/2が、N=32で25%、N=64で18%、N=128で11%である。すなわち、選択トランジスタ42をON状態にする第3実施形態に係る読出方法よりも精度が高い。具体的には、メモリセル6Bにおいて、選択トランジスタ42のON抵抗R
ONが、磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MR
wの抵抗値R
MRwの1/3以上であれば、本変形例に係る読出方法の方が精度が高い。
また、RBL−BLT,BLB間の抵抗値R
readjが、選択した行(j)によらず、選択したメモリセル6B
jが‘1’のときの方が‘0’のときよりも常に高ければ、一定の参照電位Vrefによる読出し(判定)が可能である。具体的には、RBL−BLT,BLB間の抵抗値R
readjの最小になるN行目(下式(70)参照)とN/2行目とを選択した行による差((R
readN/2−R
P/AP)−(R
readN−R
P/AP))が、磁気抵抗効果素子1Bの可変抵抗器MR
rの抵抗値の差ΔR
Pよりも小さく、下式(71)が成立すればよい。
〔第3実施形態の変形例〕
本実施形態に係る磁気メモリ10Bは、メモリセル6Bが、磁壁移動に代えてスピン注入磁化反転により磁化方向を反転させる磁気抵抗効果素子を搭載してもよい。具体的には、磁気抵抗効果素子1Bの磁性細線3Aおよび磁化固定層11,12(図8に示す光変調素子1A2)を、図7に示す並設デュアルピン構造のスピン注入磁化反転素子である光変調素子1Aに置き換えればよい。このような構造の磁気抵抗効果素子1B2は、磁化自由層3の全体が磁化反転するので(図7参照)、図23に示すように、障壁層23および磁化固定層13は、磁化自由層3と同一の平面視形状とすることができ、あるいは磁化自由層3上の任意の部分に積層することができる。したがって、磁気抵抗効果素子1B2は、磁気抵抗効果素子1Bよりも小さな平面視形状に設計し易い。磁気抵抗効果素子1B2においては、中間層21,22を共に、CPP−GMR素子の中間層として非磁性金属で形成することが好ましく、このような構成により、磁気抵抗効果素子1Bと同様に、抵抗器MRwの抵抗値を低く抑えられる。
なお、磁気抵抗効果素子1B2において、抵抗器MRwの抵抗値、すなわち抵抗器MRw1と抵抗器MRw2の各抵抗値の和は、光変調素子1Aと同様に、磁化自由層3の磁化反転では実質的に変化しないが、抵抗器MRw1、抵抗器MRw2のそれぞれの抵抗値は変化する。しかしながら、その変化量は、可変抵抗器MRrの抵抗値の変化量ΔRPに対して十分に小さく、さらに抵抗器MRw1,MRw2の一方のみに電流が流れるのは、読出しにおける選択したメモリセル6Bのみである(図19、図20参照)ので、読出しの精度等への影響は実質的にないといえる。
磁気抵抗効果素子1B,1B2は、磁性細線3Aや磁化自由層3の下側に磁化固定層11,12を、上側に障壁層23および磁化固定層13を積層した構造である。そのため、メモリセル6Bにおいて、ダイオード44および配線54(読出ビット線RBL)が磁気抵抗効果素子1B,1B2の上に設けられる。しかし、磁化固定層13および障壁層23も磁化固定層11,12と同じ下側に設けた構造の磁気抵抗効果素子にすることもできる。この場合は、磁化固定層13を磁化固定層11,12間に設ける。すなわち、図24に示すように、磁気抵抗効果素子1Cは、1つの磁性細線3Aの下側に、細線方向に離間して並んだ3つの磁化固定層11,13,12を備え、さらに磁化固定層13と磁性細線3Aとの間に障壁層23を備える。あるいは、磁気抵抗効果素子1Cは、磁化固定層11,13,12の上に、中間層21、障壁層23、中間層22を挟んで1つの磁化自由層3を積層して備えてもよい(図示せず)。このような磁気抵抗効果素子1Cは、選択トランジスタ42およびダイオード44の両方が表層に形成された基板(図示せず)上に、図7、図8に示す光変調素子1A,1A2と同様の方法で形成される。磁気抵抗効果素子1Cは、磁化固定層13および障壁層23の配置と平面視形状以外は、磁気抵抗効果素子1Bと同様の構造であり、等価回路も同じであるので、各要素ならびに磁化反転および抵抗値の変化については説明を省略する。
メモリセル6Bは、磁気抵抗効果素子1Cを備える場合には、ダイオード44が磁気抵抗効果素子1Cの下側で接続されるように、選択トランジスタ42と共に基板42A上に形成される(図示せず)。また、配線54(読出ビット線RBL)も、ワード線WLBと共に磁気抵抗効果素子1Cの下方に設けられる。このようなメモリセル6Bを配列した磁気メモリ10Bは、磁気抵抗効果素子1Cの最上層が磁性細線3Aまたは磁化自由層3(その上の保護膜)であり、さらにその上に配線等が設けられていないので、光が遮られず、空間光変調器に好適である。
磁気メモリ10Bは、メモリセル6Bにおいて、ダイオード44を、n層とp層の積層順を入れ替えてアノード側で磁気抵抗効果素子1B(1C)に接続してもよい。このような構造の磁気メモリ10Bの読出しは、電流Irの向きが逆になるので、選択する行の読出ビット線RBLを定電流源94の負に接続する。また、ビット線BLTを定電流源94に接続する場合には、メモリセル列駆動トランジスタ43は、ドレイン電位が定電流源94の出力電圧Vrであるので、これに合わせて設定した出力電圧VgHを定電源97から印加される。また、すべての選択トランジスタ42をOFF状態にすることが好ましい(図21および図22参照)。あるいは、選択したメモリセル6Bjの行アドレス(j)を基準にして、電位の高い側に配列されたメモリセル6Bkの各行のゲート電圧Vgkを、シミュレーションで算出して出力して、これらの選択トランジスタ42をOFF状態にしてもよい。
第3実施形態に係る磁気メモリは、メモリセルが、ダイオードに代えてトランジスタ(読出用選択トランジスタ)を磁気抵抗効果素子の可変抵抗器に接続して備えて、この読出用選択トランジスタのゲートに入力する読出ワード線を行毎に備える構成とすることもできる。以下、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリについて、図25および図26を参照して説明する。
本発明の第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Cは、第3実施形態に係る磁気メモリ10B(図15参照)と同様に記憶装置90Cに搭載され、メモリセル6Cを2次元配列して備える。図25では、簡潔に説明するために、記憶装置90Cは磁気メモリ10Cを1つ備える。
図25に示すように、磁気メモリ10Cのメモリセル6Cは、第3実施形態に係る磁気メモリ10Bのメモリセル6Bと同様に、磁気抵抗効果素子1C(磁気抵抗効果素子1Bと等価回路が同一)と1個の選択トランジスタ42を並列に接続されるように備え、列方向に隣り合うメモリセル6C同士で直列に接続する。この列方向に配列されたメモリセル6Cの一群を、第1〜第3実施形態と同様にメモリセル列60Cと称する。メモリセル6Cにおいては、さらに、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの側の端子p3に直列に接続された読出選択トランジスタ(読出用選択トランジスタ)45を経由して、グラウンド(GND)に接地されている。また、磁気メモリ10Cは、行方向に配列するメモリセル6C,6C,…,6Cの読出選択トランジスタ45のゲートに入力する読出ワード線RWLを備える。すなわち、磁気メモリ10Cは、第3実施形態に係る磁気メモリ10Bについて、メモリセル6Bのダイオード44を読出選択トランジスタ45に置き換えて、読出ビット線RBLを読出ワード線RWLに置き換えた構造である。
したがって、このような磁気メモリ10Cを備える記憶装置90Cは、図25に示すように、第3実施形態の記憶装置90Bの読出ビット線選択トランジスタ76を読出ワード線選択トランジスタ76Aに置き換えた構造であり、読出選択トランジスタ45のための読出ゲート電源99をさらに備える。また、記憶装置90Cは、電圧比較器93を、ビット線BLTに接続して列毎に備える。また、第3実施形態と同様に、記憶装置90Cは、磁気メモリ10Cをサブブロックメモリとして2つ以上搭載してもよい(図示省略)。
本変形例に係る磁気メモリ10Cのメモリセル6Cは、端子p3(磁化固定層13)が下側に設けられた磁気抵抗効果素子1C(図24参照)を備えるので、読出選択トランジスタ45が選択トランジスタ42と同じ基板の表層に形成される(図示省略)。磁気抵抗効果素子1Cは、図24を参照して前記にて説明した構成であり、等価回路上は磁気抵抗効果素子1Bと同一の構成であるので、説明を省略する。また、選択トランジスタ42は、第3実施形態におけるメモリセル6Bの選択トランジスタ42と同様の構成であるので、説明を省略する。
(読出選択トランジスタ)
メモリセル6Cにおいて、読出選択トランジスタ45は、ドレインが電極53(図24参照)を介して磁気抵抗効果素子1Cの端子p3(磁化固定層13)に接続される。読出選択トランジスタ45は、磁気メモリ10Cの読出しにおいて、図43(b)に示す従来の磁気メモリ110Aのメモリセル106の選択トランジスタ41と同様に、選択したメモリセル6CにおいてON状態になる。一方、書込みにおいては、読出選択トランジスタ45は、すべてのメモリセル6CにおいてOFF状態になる。したがって、読出選択トランジスタ45は、読出し用の電流Irに対応した構造であればよいが、例えば書込み時に誤って電流Iwが流れても破壊されない構造であることがより好ましい。このような読出選択トランジスタ45は、選択トランジスタ42と共に、基板(図示省略)の表層にMOSFETで形成され、同じメモリセル6Cの選択トランジスタ42と共通のp−wellまたは同電位のp−wellに形成される。また、読出選択トランジスタ45は、読出し時にソースがメモリセル列60C共通のグラウンド(GND、定電流源94の負)に接続(接地)されるので、図44に示すメモリセル106のように、メモリセル列60Cにおいて隣り合う2つのメモリセル6C,6C同士でソースを共有して形成することができる。
(磁気メモリの製造方法、初期設定)
本変形例に係る磁気メモリ10Cは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器(図6参照)と同様に製造することができる。すなわち、Si基板にトランジスタ42,45を形成する工程、ワード線WLB等の各配線、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程を行い、その後に、磁気抵抗効果素子1Cおよび磁気抵抗効果素子1C,1C間を埋める絶縁層を形成する工程、を行う。また、磁気メモリ10Cは、第3実施形態に係る磁気メモリ10Bと同様に、外部磁界を2回印加して初期設定を行うことができる。
(磁気メモリの書込方法)
本変形例に係る磁気メモリ10Cは、第3実施形態に係る書込方法(図18参照)により書込みをすることができる。書込みにおいては、行デコーダ91Cが、すべての読出ワード線選択トランジスタ76AをOFF状態にする。磁気メモリ10Cにおけるすべてのメモリセル6Cの読出選択トランジスタ45がOFF状態であるので、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrには電流が流れない。
(磁気メモリの読出方法)
本変形例に係る磁気メモリ10Cの読出しにおいては、選択したメモリセル6C(例えば、図26ではメモリセル6C1)の読出選択トランジスタ45をON状態にして、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrをGNDに接続する。定電流源94の負がGND(0V)であるため、選択したメモリセル6Cの磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrが定電流源94に接続される。一方、ビット線BLTまたはビット線BLBが定電流源94の正に接続され、ここでは読出しの精度を高くするために、ビット線BLT,BLBが共に定電流源94に接続される。また、磁気メモリ10Bの第3実施形態の変形例に係る読出方法(図21、図22参照)と同様に、すべてのメモリセル6Cの選択トランジスタ42がOFF状態である。したがって、行デコーダ91Cは、選択した行の読出ワード線選択トランジスタ76AをON状態にし、すべての行のワード線選択トランジスタ72をOFF状態にする。本変形例では、メモリセル列60Cにおける電流の経路が、図21および図22に示す第3実施形態の変形例に係る読出方法と同じで、ただし、向き(正負)が逆である。
したがって、このような記憶装置90Cにおいて、j行目のメモリセル6C
jが選択されたとき(1≦j≦N)、BLT,BLB−GND間の抵抗値R
readjは、第3実施形態の変形例に係る読出方法(図21、図22参照)における式(67)で表されるRBL−BLT,BLB間の抵抗値R
readjのダイオード44の抵抗値R
DIを読出選択トランジスタ45のON抵抗R
rONに置き換えて、下式(72)で表される。すなわち、電圧比較器93の参照電位Vref
jは、前記変形例における式(68)より下式(73)で表される。さらに、前記変形例にて説明したように、下式(71)が成立する場合は、電圧比較器93の参照電位Vrefを一定の値として読出し(判定)が可能である。
また、メモリセル列駆動トランジスタ43に印加するゲート電圧生成回路80Bの定電源97の出力電圧Vg
Hは、下式(74)に表されるように、選択した行(j)によって変化する定電流源94の出力電圧V
r(=I
r×R
readj)に対応して設定される。さらに、メモリセル列駆動トランジスタ43は、電位の低い側に磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rが設けられているので、ゲート−ソース間電圧Vgs
0を、可変抵抗器MR
rの抵抗値の変化量ΔR
Pによるソース電位の降下に対応して下式(75)の範囲に設定する。なお、メモリセル列駆動トランジスタ43のON抵抗R
ONは、メモリセル列駆動トランジスタ43のゲート−ソース間電圧Vgs
0における値であり、ゲート−ソース間電圧(Vgs
0+I
r×ΔR
P)に対するON抵抗はR
ON0´で表される。
なお、メモリセル列60Cに配列されたメモリセル6Cのそれぞれの読出選択トランジスタ45は、いずれもソース電位が0V(定電流源94の負の電位)である。したがって、読出ゲート電源99は、選択した行(j)によらず、読出選択トランジスタ45のしきい値電圧Vthrおよび最大定格(破壊電圧)V(BR)gsrに応じた一定の大きさのゲート電圧Vgrを出力すればよい。
本変形例に係る磁気メモリ10Cの読出しにおいては、第3実施形態にて説明したように、ビット線BLT,BLBの一方をopenにしてもよく、さらに、1〜(N/2)行目の読出しにおいてはビット線BLTを、(N/2+1)〜N行目の読出しにおいてはビット線BLBを、それぞれ定電流源94に接続してもよい。
第3実施形態およびその変形例に係る磁気メモリ10B,10Cは、メモリセル6B,6Cが、第1実施形態に係る磁気メモリ10のメモリセル6(図1参照)と同様に、2個の選択トランジスタ(第1選択トランジスタ41、第2選択トランジスタ42)を備えてもよい(図示せず)。このような構成により、非選択のメモリセル6B(6C)の磁気抵抗効果素子1B(1B2,1C)の抵抗器MRwに電流が流れないので(図4(b)参照)、誤書込みの虞がない。したがって、選択トランジスタ41,42を、磁気抵抗効果素子1Bの抵抗器MRwの抵抗値RMRw以下のON抵抗RONに設計しなくてもよい。このような磁気メモリへの書込みは、第1実施形態(図4参照)と同様に、選択したメモリセルの第1選択トランジスタ41をON状態に、第2選択トランジスタ42をOFF状態にし、非選択のメモリセルの第1選択トランジスタ41をOFF状態に、第2選択トランジスタ42をON状態にする。一方、読出しにおいては、それぞれのメモリセルについて、選択トランジスタ41,42の少なくとも一方をON状態にすればよく、選択トランジスタ41,42の両方をON状態にすることにより、メモリセル毎に2本の並列な電流経路を形成して、抵抗値を低くすることができる。
以上のように、本発明の第3実施形態およびその変形例に係る磁気メモリによれば、書込みがいっそう高速化され、かつ消費電流を低減することができ、さらに読出しの消費電流を低減することができる。
〔第4実施形態〕
本発明の第3実施形態およびその変形例に係る磁気メモリは、読出しにおいて、選択する行毎に参照電位を設定する必要がある。そこで、第1、第2実施形態に係る磁気メモリと同様に、一定の参照電位による判定の可能な本発明の第4実施形態に係る磁気メモリについて、図27〜30を参照して説明する。第1〜3実施形態(図1〜26参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第4実施形態に係る磁気メモリ10Dは、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10C(図25参照)と同様に記憶装置90Dに搭載され、メモリセル6Dを2次元配列して備える。図27では、簡潔に説明するために、記憶装置90Dは磁気メモリ10Dを1つ備える。
図27に示すように、磁気メモリ10Dのメモリセル6Dは、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10C(図25参照)のメモリセル6Cと同一の構成である。すなわち、メモリセル6Dは、磁気抵抗効果素子1Cと1個の選択トランジスタ42を並列に接続されるように備え、列方向に隣り合うメモリセル6D同士で直列に接続し、さらに磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの側の端子p3にトランジスタ(読出選択トランジスタ)45を接続して備える。なお、列方向に配列されたメモリセル6Dの一群を、第1〜第3実施形態と同様にメモリセル列60Dと称する。磁気メモリ10Dにおいては、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrが、読出選択トランジスタ45を経由して、メモリセル列60Dに沿って設けられた読出ソース線RSLに接続されている。この読出ソース線RSLにおいては、メモリセル6D毎に設けられた読出調整抵抗46が直列に接続されている。また、磁気メモリ10Dは、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Cと同様に、メモリセル6Dの読出選択トランジスタ45のゲートに入力する読出ワード線RWLを備える。
本実施形態に係る磁気メモリ10Dを備える記憶装置90Dは、図27に示すように、さらに磁気メモリ10Dの駆動回路として、磁気メモリ10Dの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ72および読出ワード線選択トランジスタ76Aと、ゲート電圧生成回路80Dと、磁気メモリ10Dの列(メモリセル列60D)毎に設けられたビット線選択トランジスタ73,74、メモリセル列駆動トランジスタ43、読出ソース線選択トランジスタ77、および電圧比較器93と、行デコーダ91Bと、列デコーダ92Dと、選択されたメモリセル列6Dの列に電流を供給する書込/読出電流回路9Dと、を備える。このように、記憶装置90Dは、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Cを備える記憶装置90C(図25参照)に、読出ソース線RSLのための読出ソース線選択トランジスタ77を追加して、電圧比較器93を読出ソース線RSLに接続して列毎に備える構成を有する。そして、列デコーダ92Dは、ビット線選択トランジスタ73,74に加え、読出ソース線選択トランジスタ77を駆動する。また、ゲート電圧生成回路80Dは、第3実施形態におけるゲート電圧生成回路80Bに、行毎の分圧抵抗器88、および2個のダイオード89,89を追加した構成である(図28〜30参照)。
本実施形態に係る磁気メモリ10Dのメモリセル6Dは、前記した通り、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Cのメモリセル6C(図25参照)と同一の構成である。ただし、読出選択トランジスタ45は、後記するように、読出し時に、ソース側に磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrが配置されるため、抵抗値の変化(選択したメモリセル6Dに記憶されたデータによる変化)に伴うソース電位の誤差(Ir×ΔRP)に対応することができる耐圧に設計される。
(読出ソース線RSL、読出調整抵抗)
読出ソース線RSLは、一般的な金属電極材料で形成された配線と、この配線で直列に接続された読出調整抵抗46とを備える。読出ソース線RSLは、第3実施形態に係る磁気メモリ10B(図15参照)の読出ビット線RBLと同様に、読出しのみにおいて電流が流れるので、電流Irに対応した構造であればよく、例えば書込み時に誤って電流Iwが流れても対応することのできる構造であることがより好ましい。読出調整抵抗46は、所定の高さの抵抗値に設計された固定抵抗器であり、詳しくは後記するように、磁気メモリ10Dの読出しにおいて、選択した行によるメモリセル列60Dの抵抗値Rreadjの差を補正するためにメモリセル6D毎に設けられる。読出調整抵抗46は、一般的な抵抗器と同様に、基板(図示省略)上に、トランジスタ42,45のソース、ドレインまたはゲートと同様にn+拡散層やpoly−Si膜で形成され、配線で接続される。あるいは、読出ソース線RSLが、読出調整抵抗46として、メモリセル6D毎に一定の抵抗値を有するように、材料や太さ(厚さ、幅)等を調整して形成されてもよい。なお、読出選択トランジスタ45が、第3実施形態の変形例にて説明したように、隣り合う2つのメモリセル6D,6Dにおいてソースを共有する場合は、読出調整抵抗46は、抵抗値を2倍にして、メモリセル6Dの1つ置きに設けられればよい。後記するように、メモリセル6Dの抵抗値の変化量ΔRPが十分に大きいので、このようにメモリセル6Dの2つ毎に設けられても判定への影響はないといえる。
記憶装置90Dは、磁気メモリ10Dをサブブロックメモリとして2つ以上搭載してもよい。この場合、記憶装置90Dにおいては、第2実施形態に係る磁気メモリ10A,10Aを備える記憶装置90A(図10参照)と同様に、搭載された2つ以上の磁気メモリ10Dが互いに並列に書込/読出電流回路9Dに接続されるように、ビット線BLT,BLBおよび読出ソース線RSLを結線する(図示省略)。
(磁気メモリの製造方法、初期設定)
本実施形態に係る磁気メモリ10Dは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器(図6参照)と同様に製造することができる。すなわち、Si基板にトランジスタ42,45および読出調整抵抗46を形成する工程、読出ソース線RSLの配線部やワード線WLB等の各配線、ならびにこれらの間を埋める絶縁層を形成する工程を行い、その後に、磁気抵抗効果素子1Cおよび磁気抵抗効果素子1C,1C間を埋める絶縁層を形成する工程、を行う。また、磁気メモリ10Dは、第3実施形態およびその変形例に係る磁気メモリ10B,10Cと同様に、外部磁界を2回印加して初期設定を行うことができる。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第4実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図28〜30を参照して説明する。図28〜30では、第2実施形態(図12、図13)と同様に、磁気メモリ10Dにおける、4つのメモリセル6D(適宜、図中左からメモリセル6D1,6D2,6D3,6D4と称する)を配列した1つのメモリセル列60Dを示す。この図28〜30に示すメモリセル列60Dが列デコーダ92D(図27参照)により選択され、メモリセル6D1,6D2,6D3,6D4にそれぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’を書込みし、また、このデータを読出しするものとして説明する。
(磁気メモリの書込方法)
本実施形態に係る磁気メモリの書込方法は第3実施形態(図18参照)と同様であり、列デコーダ92D(図27参照)により、図28に示すように、選択したメモリセル列60Dのビット線BLT,BLBが、書込/読出電流回路9Dに内蔵された定電流源95に接続されている(ビット線選択トランジスタ73,74:ON状態)。また、読出ソース線RSLは、open状態(読出ソース線選択トランジスタ77:OFF状態)にしていても任意の電位に接続されていてもよい。また、行デコーダ91Bにより、メモリセル列選択トランジスタ75がON状態になり、ゲート電圧生成回路80Dに内蔵されたパルス電源96の出力電圧がメモリセル列駆動トランジスタ43に印加される。さらに、行デコーダ91Bにより、すべての読出ワード線選択トランジスタ76AがOFF状態になる。
図28は、2つのメモリセル6D
2,6D
3を選択して‘0’ を書込みする状態を示し、第3実施形態の図18(b)に相当し、すなわち4つすべてのメモリセル6Dに‘1’ を書込みした(図18(a)参照)後である。書込みにおいて、ゲート電圧生成回路80Dは、分圧抵抗器88およびダイオード89が使用されないので、実質的に第3実施形態のゲート電圧生成回路80Bと同じ構造である。したがって、ゲート電圧生成回路80Dの、‘1’の書込みにおけるパルス電源96の出力電圧Vg
0、ならびに‘0’の書込みにおけるパルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H,Vg
0は、第3実施形態と同様に、下式(3)の範囲に設定したゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)により、下式(16)、下式(54)で表されるように設定する。
(磁気メモリの読出方法)
本実施形態に係る磁気メモリの読出方法は、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリの読出方法(図26参照)と同様に、選択したメモリセルの読出選択トランジスタをON状態にする。本実施形態においては、この読出選択トランジスタで、選択したメモリセルの磁気抵抗効果素子をメモリセル列毎に設けられた読出ソース線に接続して、読出ソース線とビット線の一端との間に電流を流す。また、第3実施形態に係る磁気メモリの読出方法(図19、図20参照)と同様に、読出し精度を高くするために、電流の流れる非選択のメモリセルの選択トランジスタをON状態にする。
書込みにおいては、列デコーダ92D(図27参照)により、図29、図30に示すメモリセル列60Dが選択されて、読出ソース線RSLが書込/読出電流回路9Dに内蔵された定電流源94の正に、ビット線BLBが負に、それぞれ接続され、ビット線BLTがopen(開放)状態である(ビット線選択トランジスタ73:OFF状態、ビット線選択トランジスタ74:ON状態、読出ソース線選択トランジスタ77:ON状態)。そのため、行デコーダ91Bによりメモリセル列選択トランジスタ75をOFF状態にして、メモリセル列駆動トランジスタ43がOFF状態になる。したがって、磁気メモリ10Dの読出しにおける電流の経路は、第3実施形態における行毎の読出ビット線RBLを、メモリセル列60Dで共通の読出ソース線RSLに置き換え、また、メモリセル60Dにおいては、選択したメモリセル6D(6B)のダイオード44を読出選択トランジスタ45に置き換えたもので、電流の向きも同じである。図29、図30に示すメモリセル列60Dのメモリセル6D1,6D2,6D3,6D4は、それぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’が記憶されているので、それぞれの磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値は、RAP,RP,RP,RAPである。
図29において、行デコーダ91Bにより左から1行目が選択されると、1行目の読出ワード線RWLの読出ワード線選択トランジスタ76AがON状態になり、選択された左端のメモリセル6D1において、読出選択トランジスタ45がON状態になって、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrが読出ソース線RSLに接続される。また、2行目から4行目までのワード線選択トランジスタ72をON状態にして、メモリセル6D2,6D3,6D4の選択トランジスタ42がON状態になる。この状態で定電流源94により電流Irを供給すると、選択したメモリセル6D1において、読出ソース線RSLから、電流Irが、読出選択トランジスタ45を経由して磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrに流れ、さらに定電流源94の負の側へ、すなわち右隣のメモリセル6D2へ流れるために、可変抵抗器MRrから抵抗器MRw2へ流れる。メモリセル6D2においては、電流Irが、書込み時の非選択のメモリセル6D(図28に示すメモリセル6D1,6D4)と同様に、並列に接続された選択トランジスタ42と磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwとに分岐して流れ、再び合流して、さらにその右側の残りの非選択のメモリセル6D3,6D4を同様に順次経由して、ビット線BLBへ流れる。
また、電流Irが定電流源94からメモリセル6D1へ流れる際に、読出ソース線RSL上の1個の読出調整抵抗46を経由している。したがって、読出調整抵抗46の抵抗値をRCOMPで表すと、図29における読出ソース線RSLとビット線BLBとの間で測定される(RSL−BLB間の)抵抗値Rread1は、下式(76)で表される。
Rread1=RCOMP+RrON+RAP+0.5RMRw+3(RON||RMRw) ・・・(76)
次に、図30において、行デコーダ91Bにより左から2行目が選択されると、1行目が非選択状態に切り替えられてメモリセル6D1の読出選択トランジスタ45がOFF状態になり、今度は2行目の読出ワード線選択トランジスタ76AがON状態になり、メモリセル6D2において、読出選択トランジスタ45がON状態になって、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrが読出ソース線RSLに接続される。すると、電流Irが、1行目が選択されたとき(図29参照)と同じ読出調整抵抗46を経由し、さらにその隣の読出調整抵抗46を経由して、選択したメモリセル6D2の読出選択トランジスタ45を経由して磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrに流れ、可変抵抗器MRrから右隣のメモリセル6D3へ向けて流れる。そして、電流Irが、非選択のメモリセル6D3,6D4を順次経由して、ビット線BLBへ流れる。
すなわち、2行目のメモリセル6D2が選択されたとき、電流Irは、この選択したメモリセル6D2と、その定電流源94を接続された側に配列されたメモリセル6D3,6D4と、に流れ、定電流源94を接続されていない側(open状態にした側)に配列されたメモリセル6D1には流れない。また、電流Irは、読出ソース線RSL上の2個の読出調整抵抗46を経由している。したがって、このときのRSL−BLB間の抵抗値Rread2は、下式(77)で表される。
Rread2=2RCOMP+RrON+RP+0.5RMRw+2(RON||RMRw) ・・・(77)
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Dの読出しでは、電流が、第3実施形態に係る磁気メモリの読出方法(図19、図20参照)と同様に、選択したメモリセル6Dと、このメモリセル6Dの定電流源94を接続された側(ここではビット線BLB側)に配列された非選択のメモリセル6Dとに流れる。さらに本実施形態においては、電流が、読出ソース線RSL上の、電流の流れないメモリセル6Dに対応する読出調整抵抗46を経由して流れる。そのため、メモリセル列60Dにおいて、左からj行目(1≦j≦N)のメモリセル6D
jが選択されたときのRSL−BLB間の抵抗値R
readjは、下式(78)で表される。「R
P/AP」は、選択したメモリセル6D
jに記憶されているデータによって、可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APのいずれかを指す。このように、磁気メモリ10Dの読出しにおいては、選択する行を切り替えると、電流の経路上の非選択のメモリセル6D
k(j+1≦k≦N)の数が減少する分、読出調整抵抗46の数が増加する。
したがって、記憶装置90Dは、メモリセル列60Dの読出調整抵抗46を、抵抗値R
COMPが非選択のメモリセル6Dの抵抗値R
CELLns(=R
ON||R
MRw)に合わせて設計することにより、RSL−BLB間の抵抗値R
readjが選択したメモリセル6D(行アドレス)に依存せず、一定の参照電位Vrefにより判定することができる。理想的には下式(79)が成立し、あるいは下式(80)に表される範囲であればよい。したがって、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値の変化量ΔR
Pが十分に大きければ、読出調整抵抗46が設けられていなくてもよい(R
COMP=0Ω)。
本実施形態に係る読出方法では、第3実施形態と同様に、メモリセル列60Dにおいて電流の流れる非選択のメモリセル6Dk(j+1≦k≦N)の選択トランジスタ42に段階的に変位させたゲート電圧Vgkを印加してON状態にする。本実施形態ではさらに、選択したメモリセル6Djの読出選択トランジスタ45をON状態にするために、その行アドレス(j)に応じて変位させたゲート電圧Vgrjを印加する。読出選択トランジスタ45のメモリセル6D毎の電位差は、非選択のメモリセル6D毎の選択トランジスタ42の電位差すなわち非選択のメモリセル6Dの抵抗値RCELLns(=RON||RMRw)と同じである。また、読出しにおいて、読出選択トランジスタ45の電位は、同じメモリセル6Dの選択トランジスタ42の電位よりも高い。そのため、ゲート電圧生成回路80Dは次のように構成される。
ゲート電圧生成回路80Dは、第3実施形態におけるゲート電圧生成回路80Bと同様、読出しにおいては、可変抵抗器8の抵抗が行デコーダ91Bからのワード線選択トランジスタ72への信号によって変化しないように、抵抗切替トランジスタ78が読出し時には常にOFF状態であるように構成される。また、ゲート電圧生成回路80Dは、可変抵抗器8(分圧抵抗器81)を直列に接続してなる、選択トランジスタ42のゲート電圧Vgk出力用の分圧回路と共に、読出選択トランジスタ45のゲート電圧Vgrj出力用の分圧回路を備える。この分圧回路は、N個の可変抵抗器8からなる分圧回路と同様、N個の分圧抵抗器88を直列に接続してなり、その電位の最も高い側(図29、図30における左端)に定電源97Aが接続される。そして、前記した通り、読出選択トランジスタ45のメモリセル6D毎の電位差は選択トランジスタ42の電位差(Ir×(RON||RMRw))と同じであるので、分圧抵抗器88は、分圧抵抗器81と同じ抵抗値Rdivの固定抵抗器とする。ゲート電圧生成回路80Dは、これら2つの分圧回路が、両端でダイオード89,89を経由して接続されて、分圧抵抗器88からなるゲート電圧Vgrj出力用の分圧回路の方を高い電位にするように構成される。したがって、可変抵抗器8からなる分圧回路の電位の高い側に、ダイオード89を経由して定電源97Aが接続されている。
非選択のメモリセル6D
kの選択トランジスタ42に印加するゲート電圧Vg
kは、第3実施形態に係る磁気メモリの読出方法(図19、図20参照)と同様に、1行毎に(I
r×(R
ON||R
MRw))降下するように構成される(下式(62))。また、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、下式(60)の範囲に設定したゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)により、下式(16)に表されるように同じ電圧に設定される。一方、本実施形態においては、定電源97Aの出力電圧Vg
rHからゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0まで、ダイオード89とN個の分圧抵抗器81が直列に接続されているので、ダイオード89の抵抗値をR
dvDIで表すと、下式(81)が成立する。したがって、定電源97Aの出力電圧Vg
rHは下式(82)で表される。
一方、選択したメモリセル6D
jの読出選択トランジスタ45のソース電位は、その電位の低い側の隣の非選択のメモリセル6D
j+1の選択トランジスタ42のソース電位Vs
j+1に対して、(I
r×(R
ON||R
MRw+0.5R
MRw+R
P/AP))高い。すなわち、同じメモリセル6Dにおける差は、(I
r×(0.5R
MRw+R
P/AP))である。さらに、読出選択トランジスタ45のしきい値電圧をVth
rと表すと、ダイオード89の抵抗値R
dvDIは、分圧抵抗器81,88の抵抗値R
divとの比が下式(83)で表される範囲に設計されることが好ましい。ここでは、選択したメモリセル6D
jのデータが‘1’であると仮定して、R
dvDI/R
div=(0.5R
MRw+R
AP+ΔRth)/(R
ON||R
MRw)とする。
読出選択トランジスタ45は、メモリセル6Djのデータが‘1’であると仮定して、設計、設定されたダイオード89の抵抗値RdvDIおよび定電源97Aの出力電圧VgrHによって決定されたゲート電圧Vgrjを印加される。したがって、読出選択トランジスタ45は、第1、第2実施形態に係る磁気メモリ10,10Aの書込みおよび読出しにおける選択トランジスタ41,42等と同様、データが‘0’である場合に、ソース電位が(Ir×ΔRP)降下する。それにより読出選択トランジスタ45のゲート−ソース間電圧が最大定格V(BR)gsrに到達しないように、例えば読出選択トランジスタ45の最大定格V(BR)gsrやダイオード89の抵抗値RdvDIを設計する。
あるいは、メモリセル6Djのデータが‘1’である場合には、読出選択トランジスタ45は線形領域で動作しなくてもよい。すなわち、読出選択トランジスタ45は、飽和領域で動作してその抵抗が高くなるが、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値も高抵抗なRAPであるので、判定には影響しない。
また、ゲート電圧生成回路80Dが、読出選択トランジスタ45のゲート電圧Vgrjを、選択トランジスタ42のゲート電圧Vgkとは独立した分圧回路にて生成する構成としてもよい。また、磁気メモリ10Dの読出しにおいては、選択したメモリセル6Djの読出選択トランジスタ45、および電位の低い側に配列されたメモリセル6Dkの選択トランジスタ42が、第3実施形態に係る磁気メモリ10Bと同様に電位が行アドレス(j,k)によって固定されているので、各ゲート電圧Vgrj,Vgkは、ゲート電圧生成回路80Dの分圧回路によらずに、予め個別に設定されていてもよい。
本実施形態に係る磁気メモリ10Dの読出しにおいては、ビット線BLBに代えてビット線BLTを定電流源94の負に接続してもよく、読出ソース線RSLをビット線BLBの側の端で定電流源94の正に接続して、ビット線BLBをopenにする。この場合は、メモリセル列60Dの非選択のメモリセル6Dにおける電流Irの向きが逆になって、図29、図30において右から左へ流れる。
本実施形態に係る磁気メモリ10Dの読出しでは、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Cの読出し(図26参照)と同様に、すべてのメモリセル6Dの選択トランジスタ42をOFF状態にして、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwのみに電流を流してもよい。ただし、RSL−BLB間の抵抗値Rreadjが高くなるので、抵抗変化率ΔRP/Rreadjが読出し可能な範囲になるように設計する。また、この場合は、非選択のメモリセル6Dの1つあたりの抵抗値が磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwの抵抗値RMRwであるので、これに合わせて読出調整抵抗46の抵抗値RCOMPを設定し(RCOMP=RMRw)、また、読出選択トランジスタ45のゲート電圧Vgrjを設定する。さらにこの場合には、電流Irの向きを逆にして、ビット線BLTまたはビット線BLBを定電流源94の正に、読出ソース線RSLを定電流源94の負に接続することが好ましい。第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Cの読出し(図26参照)と同様、読出選択トランジスタ45は、ソース電位がデータにかかわらず0V(定電流源94の負の電位)であるので、一定のゲート電圧Vgrを印加される。したがって、ゲート電圧生成回路80Dに代えて、記憶装置90C(図25参照)と同様に、ゲート電圧生成回路80Cおよび読出ゲート電源99を備えればよい。
また、記憶装置90Dは、第1、第2実施形態(図1、図10参照)と同様に、列デコーダ92Dにより磁気メモリ10Dから2以上の列を選択して、これらのメモリセル列60Dのそれぞれに電流Irを供給しながら、選択した1行の各メモリセル6Dを電圧比較器93により並行して読出しすることができる。
本実施形態に係る磁気メモリ10Dは、第3実施形態およびその変形例に係る磁気メモリ10B,10Cと同様に、メモリセル6Dの磁気抵抗効果素子1Cが、当該メモリセル6Dが読出しにおいて選択されたときにのみ電流が流れるように可変抵抗器MRrを接続された構成である。そのため、可変抵抗器MRrに高抵抗かつMR比の高いTMR素子を適用しても、書込み時にメモリセル列60Dの抵抗値ΣRCELLkが高くならず、また、読出しにおいて、非選択のメモリセル6Dに記憶されたデータに影響されない。したがって、メモリセル列60Dのメモリセル6Dの数Nを多くしても負荷が増大せず、また、読出し用の電流Irを抑えても精度の高い読出しをすることができ、読出しにおける消費電流を低減することができる。
〔空間光変調器〕
本発明の第4実施形態に係る磁気メモリ10Dは、第3実施形態の変形例に係る磁気メモリ10Cと同様に、磁気抵抗効果素子1Cの最上層が磁性細線3Aまたは磁化自由層3であり、さらにその上に配線等が設けられていないので、空間光変調器に好適である。特に磁気メモリ10Dは、定電流源94を2以上備えることにより並列に読出しをすることができるので、すべてのメモリセル6Dの書込みエラーの検出を高速に行うことができる。
〔第4実施形態の変形例〕
本実施形態に係る磁気メモリ10Dは、磁気抵抗効果素子1Cに代えて、第3実施形態に係る磁気メモリ10Bの磁気抵抗効果素子1B,1B2(図17、図23参照)を適用してもよい。メモリセル6Dは、磁気抵抗効果素子1B等を備える場合には、読出選択トランジスタ45が、磁気抵抗効果素子1Bの上側で接続されるように、読出調整抵抗46および読出ソース線RSLと共に、磁気抵抗効果素子1Bの上方に設けられる。したがって、読出選択トランジスタ45および読出調整抵抗46は、低温で成膜可能なpoly−Siで形成されることが好ましい。具体的には、第3実施形態に係る磁気メモリ10Bと同様に、選択トランジスタ42を形成した基板40B上に、ワード線WLB等の配線、磁気抵抗効果素子1Bおよび磁気抵抗効果素子1B,1B間の絶縁層を形成し、その後、さらに絶縁膜を介してpoly−Si膜を成膜し、読出選択トランジスタ45および読出調整抵抗46を形成して、磁気抵抗効果素子1Bの磁化固定層13に接続する配線や読出ソース線RSL等を形成する。
あるいは、磁気メモリ10Dは、上下を入れ替えて、Si基板等の表層に読出選択トランジスタ45および読出調整抵抗46を形成して、読出ソース線RSL等を形成した上に、磁化固定層13を下にして磁気抵抗効果素子1Bを形成し、その後にpoly−Si膜を成膜して選択トランジスタ42を形成し、ワード線WLB等を形成して製造することもできる。また、2枚の基板の一方に、選択トランジスタ42およびワード線WLB等の配線を形成し(基板40B)、他方に、読出選択トランジスタ45、読出調整抵抗46、および読出ソース線RSLを形成してもよい。そして、いずれかの基板に磁気抵抗効果素子1Bを形成し、これら2枚の基板を貼り合わせて製造することができる。
このように、磁気メモリ10Dは、磁気抵抗効果素子1Bを備える場合は、その上下にトランジスタ等が分けて設けられるので、メモリセル6Dの平面視サイズを縮小することができる。また、同一面(下面)側に3つの磁化固定層11,12,13を互いに離間して備える磁気抵抗効果素子1Cよりも、磁気抵抗効果素子1B、さらには磁気抵抗効果素子1B2の方が平面視サイズを小さく形成し易い。また、このように、読出選択トランジスタ45が選択トランジスタ42とは異なる層で形成される場合、読出選択トランジスタ45においては、メモリセル列60D毎にp−wellを分割せず、例えばp型Si基板(p−sub)を適用して、直接にn+拡散層を形成してもよい。このような磁気メモリ10Dの読出しにおいては、メモリセル列60Dを1つずつ選択する。
第4実施形態に係る磁気メモリ10Dは、第3実施形態およびその変形例と同様に、メモリセル6Dが、第1実施形態に係る磁気メモリ10のメモリセル6(図1参照)のように、2個の選択トランジスタ(第1選択トランジスタ41、第2選択トランジスタ42)を備えてもよい(図示せず)。このような構成により、非選択のメモリセル6Dの磁気抵抗効果素子1C(1B,1B2)の抵抗器MRwに電流が流れないので、誤書込みの虞がない。このような磁気メモリは、読出しにおける非選択のメモリセルの抵抗値に合わせて、読出調整抵抗46を設計する。
以上のように、本発明の第4実施形態に係る磁気メモリによれば、書込みがいっそう高速化され、かつ消費電流を低減することができ、さらに読出しの消費電流を低減することができる。
〔第5実施形態〕
本発明の第3、第4実施形態に係る磁気メモリは、メモリセルが読出しにおいてのみ電流が流れる可変抵抗器(TMR素子)を備えた3端子型の磁気抵抗効果素子を備えるため、多数のメモリセルを直列に接続しても負荷が抑えられ、かつ読出しの精度が維持される。一方で、これらの磁気メモリは、書込みと読出しとで異なる電流経路が形成されるために、回路が複雑になる。そこで、3端子型の磁気抵抗効果素子の優位性を活かしつつ、簡易な回路からなる、本発明の第5実施形態に係る磁気メモリについて、図31〜36を参照して説明する。第1〜4実施形態(図1〜30参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第5実施形態に係る磁気メモリ10Eは、第3、第4実施形態に係る磁気メモリ10B,10C,10D(図15、図25、図27参照)と同様に、簡潔に説明するために記憶装置90Eに1つ搭載され、メモリセル6Eを2次元配列して備える。
図31に示すように、磁気メモリ10Eのメモリセル6Eは、第1実施形態に係る磁気メモリ10(図1参照)のメモリセル6と同様に、磁気抵抗効果素子1Cとこれに直列に接続した第1選択トランジスタ41が、第2選択トランジスタ42に並列に接続し、また、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRr(端子p3)が、メモリセル6Eの入出力端子の一方である選択トランジスタ41,42間に接続されている。さらに、磁気メモリ10Eにおいて、列方向に隣り合うメモリセル6E同士が直列に接続し、この列方向に配列されたメモリセル6Eの一群を、第1〜第4実施形態と同様にメモリセル列60Eと称する。したがって、磁気メモリ10Eは、メモリセル6Eが、第1実施形態に係る磁気メモリ10のメモリセル6の磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw(MRw1,MRw2)に置き換えられて、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrが選択トランジスタ41,42間に接続された構成である。
(記憶装置)
このような構成の磁気メモリ10Eを備える記憶装置90Eは、図31に示すように、さらに磁気メモリ10Eの駆動回路として、磁気メモリ10Eの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72と、磁気メモリ10Eの列(メモリセル列60E)毎に設けられたビット線選択トランジスタ73,74、メモリセル列駆動トランジスタ43、および電圧比較器93と、行デコーダ91Eと、列デコーダ92と、書込/読出電流回路9と、ゲート電圧生成回路80Eと、を備える。すなわち、記憶装置90Eは、第1実施形態に係る磁気メモリ10,10を備える記憶装置90(図1参照)に対して、磁気メモリ10Eの数、行デコーダ91Eおよびゲート電圧生成回路80Eが異なり、メモリセル列駆動トランジスタ43を追加した構成を有する。本実施形態においては、メモリセル6Eが、少なくとも磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrと抵抗器MRw2を経由して常に電流が流れる回路を形成しているために、第2実施形態と同様、選択したメモリセル列60Eに限定的に電流を供給するようにメモリセル列駆動トランジスタ43が設けられ、メモリセル列60Eの一端、ここではビット線BLB側に接続される。
磁気抵抗効果素子1Cの構成は第3実施形態で、第1選択トランジスタ41および第2選択トランジスタ42の構成は第1実施形態で、それぞれ説明した通りである。ただし、本実施形態に係る磁気メモリ10Eのメモリセル6Eにおいて、磁気抵抗効果素子1Cは、抵抗器MRw(抵抗器MRw1,MRw2)の抵抗値RMRwが、可変抵抗器MRrの抵抗値RPよりも低いことが好ましい。そして、第1選択トランジスタ41のON抵抗RONは、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1の抵抗値0.5RMRwとの和が可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/2以下であることが特に好ましい。これらは、後記するように、磁気メモリ10Eへの書込みにおいて、抵抗器MRw1と抵抗器MRw2とで供給される電流の大きさの不均衡を抑制するためである。一方、第2選択トランジスタ42のON抵抗RONは、可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/2未満であることが好ましい。これは、磁気メモリ10Eへの書込みにおける誤書込みを防止するためである。したがって、同一構造の選択トランジスタ41,42は、共通のON抵抗RONがこれら両方の条件を満足する、すなわちRON≦RP/2−0.5RMRwを満足するように設計されることが好ましい。また、メモリセル6Eにおいて、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwの抵抗値RMRw、選択トランジスタ41,42のON抵抗RONは、それぞれ磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値RPに対して低い程好ましいが、互いの高低の関係は特に規定されない。
また、磁気抵抗効果素子1Cは、可変抵抗器MRrの抵抗値の差ΔRPが大きいほど、読出しにおいて、判定の精度を高くするものの、一方で、本実施形態では後記するように、読み出したデータが‘1’か‘0’かで非選択のメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42の電位が大きく異なる。その結果、選択トランジスタ41,42に印加するゲート電圧Vgを適切に設定することが困難になる場合がある。
第5実施形態に係る磁気メモリ10Eは、一例として、表層に選択トランジスタ41,42を形成された基板40C上に、磁気抵抗効果素子1Cおよび配線51,52を形成してなる。図32に示すように、基板40Cは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器10の基板40A(図7参照)に、メモリセル列60Eのビット線BLBの側(図32における右側)の端の第2選択トランジスタ42に接続されたメモリセル列駆動トランジスタ43(ゲート4g3とn+拡散層(4d3))を追加した構造である。また、図32においては、右から順に、メモリセル列60Eにおけるビット線BLBから1、2行目のメモリセル6E,6Eを簡略化して示し、磁気抵抗効果素子1Cが、図7に示す前記変形例に係る空間光変調器10の光変調素子1Aと同様に、磁化固定層11を左側に、磁化固定層12を右側にして配置されている。詳しくは図32に示すように、磁気メモリ10Eは、前記変形例に係る空間光変調器10の画素6(図7参照)について、光変調素子1Aを磁気抵抗効果素子1Cに置き換えられ、追加された端子p3(磁化固定層13)が、第2選択トランジスタ42のソース4s2に配線52(接続部52c2、抵抗接続層52a)で接続した構成になる。そのため、隣り合うメモリセル6E,6Eのビット線BLT側(図32における左側)の磁気抵抗効果素子1Cの磁化固定層12(端子p2)とビット線BLB側の磁気抵抗効果素子1Cの磁化固定層13とが、平面視でコの字型に形成された抵抗接続層52aで接続される。また、図32においては、図7と同様に、ワード線WLT,WLB(図31参照)が省略され、空白部分に絶縁層が設けられている。
記憶装置90Eは、磁気メモリ10Eをサブブロックメモリとして2つ以上搭載してもよく、第1実施形態に係る磁気メモリ10,10を備える記憶装置90(図1参照)と同様に、搭載された2つ以上の磁気メモリ10Eが互いに並列に書込/読出電流回路9に接続されるように、ビット線BLT,BLBを結線する(図示省略)。
(磁気メモリの製造方法、初期設定)
本実施形態に係る磁気メモリ10Eは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器(図7参照)と同様に製造することができる。また、磁気メモリ10Eは、第3、第4実施形態に係る磁気メモリ10B,10C,10Dと同様に、外部磁界を向きと大きさを変えて2回印加して、初期設定を行うことができる。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第5実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図33〜36を参照して説明する。図33〜36では、第1実施形態(図4、図5)と同様に、磁気メモリ10Eにおける、4つのメモリセル6E(適宜、図中左からメモリセル6E1,6E2,6E3,6E4と称する)を配列した1つのメモリセル列60Eを示す。このメモリセル列60Eが列デコーダ92(図31参照)により選択されて(ビット線選択トランジスタ73,74:ON状態)、書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源95または定電流源94にビット線BLT,BLBが接続している。ここでは、メモリセル6E1,6E2,6E3,6E4にそれぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’を書込みし、また、このデータを読出しするものとして説明する。
(磁気メモリの書込方法)
本実施形態に係る磁気メモリの書込方法は、第1実施形態に係る磁気メモリの書込方法(図4参照)と同様である。図33においては、行デコーダ91Eによりすべての行が選択され、ワード線WLTの第1ワード線選択トランジスタ71がON状態、ワード線WLBの第2ワード線選択トランジスタ72がOFF状態である。これにより、4つすべてのメモリセル6Eにおいて、第1選択トランジスタ41がON状態、第2選択トランジスタ42がOFF状態である。なお、図33、図34および後記の図35、図36において、第1ワード線選択トランジスタ71および第2ワード線選択トランジスタ72は、ON状態のとき、白抜き矢印を付して表す。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Eにビット線BLB側から左方向へ電流Iwを供給すると、各メモリセル6Eにおいて、電流Iwが磁気抵抗効果素子1Cに供給される。このとき、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrがメモリセル6Eの入出力端子の一方(ビット線BLT側)に接続しているために、電流Iwは、抵抗器MRw2に流れてから、可変抵抗器MRrと、第1選択トランジスタ41を経由した抵抗器MRw1とに分岐して流れ、合流して左隣のメモリセル6Eへ流れる。したがって、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw2には電流Iwのすべてが供給されるが、抵抗器MRw1には並列に接続された可変抵抗器MRrにより電流Iwの一部(電流Iw1)のみが供給される。
抵抗器MR
w1に供給される電流I
w1は下式(84)で表され、メモリセル6Eにおいて、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MR
wおよび第1選択トランジスタ41が、それぞれ可変抵抗器MR
rに対して十分に低抵抗に設計されていることにより(R
MRw<<R
P、R
ON<<R
P)、電流I
wの多くがI
w1として抵抗器MR
w1に供給される。なお、「R
P/AP」は、このメモリセル6Eに記憶されている書込み前のデータによって、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APのいずれかを指し、R
APの場合はR
Pよりも高抵抗(R
P<R
AP)なので、電流I
w1はより大きくなる。
例えば、メモリセル6Eにおいて、磁気抵抗効果素子1Cは、抵抗器MRwの抵抗値RMRwが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/10とする(RMRw=RP/10)。また、第1選択トランジスタ41は、ON抵抗RONが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/5とする(RON=RP/5)。選択したメモリセル6Eにおいて、電流Iwは、分岐した一方が、抵抗値RPの可変抵抗器MRrに流れ、他方(電流Iw1)が、直列に接続された抵抗値0.5RMRwの抵抗器MRw1(=RP/20)とON抵抗RON(=RP/5)の第1トランジスタ41とに流れる。したがって、抵抗器MRw1に供給される電流Iw1は、抵抗器MRw2に供給される電流Iwの4/5(80%)の大きさになり、抵抗器MRw1,MRw2のそれぞれにおいて十分な電流密度の電流が一方向に流れて、磁性細線3Aの磁化反転領域3SWの磁化方向が磁化固定層13と反平行な下向きになる(図9(c)、図24(b)参照)。その結果、4つすべてのメモリセル6Eに‘1’が書込みされる。言い換えると、電流Iw1が磁性細線3Aにおいて磁壁移動させる電流密度になるように、磁気抵抗効果素子1Cおよび第1トランジスタ41の各抵抗値RP,RMRw,RONに基づいて、電流Iwの大きさを設定する。また、可変抵抗器MRrの抵抗値RPに対して抵抗器MRwの抵抗値RMRw等が十分に低くないと、電流Iwを大きく設定する必要があるので効率が低下し、また、後記するように非選択のメモリセル6Eに誤書込みが生じる虞がある。
次に、図34において、行デコーダ91Eにより中央の2行(2行目と3行目)が選択される。すなわち両端の2行(1行目と4行目)が非選択状態に切り替えられ、ワード線WLTの第1ワード線選択トランジスタ71がOFF状態に、ワード線WLBの第2ワード線選択トランジスタ72がON状態になる。これにより、両端の2つの非選択のメモリセル6E1,6E4において、第1選択トランジスタ41がOFF状態、第2選択トランジスタ42がON状態である。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Eに、今度はビット線BLT側から右方向へ電流Iwを供給する。すると、中央の2つの選択されたメモリセル6E2,6E3においては、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1,MRw2に図33とは逆方向に電流Iw1,Iwが供給されるため、磁性細線3Aの磁化反転領域3SWの磁化方向が磁化固定層13と平行な上向きに反転する(図9(d)、図24(a)参照)。
一方、非選択のメモリセル6E
1,6E
4においては、電流I
wが、第2選択トランジスタ42と、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rおよび抵抗器MR
w2とに分岐して流れる。また、OFF状態の第1選択トランジスタ41に直列に接続した抵抗器MR
w1には、電流が供給されない。抵抗器MR
w2に供給される電流I
w2は下式(85)で表され、例えば、磁気抵抗効果素子1Cが前記と同じ抵抗値で、第2選択トランジスタ42が前記の第1選択トランジスタ41と同じON抵抗R
ONである場合、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MR
w2には、電流I
wの4/25(16%)の大きさの電流のみが流れることになる。ただし、非選択のメモリセル6E
1,6E
4においては‘1’を書込みされているので、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値はR
APであり、電流I
w2はさらに小さく、MR比が50%である場合は電流I
wの11%の大きさになる。これは、選択したメモリセル6Eにおける磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MR
w1に供給される電流I
w1の1/7の大きさである。
第1選択トランジスタ41と同様、第2選択トランジスタ42のON抵抗RONが可変抵抗器MRrの抵抗値RPに対して十分に低く設計されていることにより、非選択のメモリセル6E1,6E4においては、電流Iwの多くが第2選択トランジスタ42に流れ、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw2には磁壁が移動する程の大きさの電流が供給されない。したがって、これらの磁気抵抗効果素子1Cの磁性細線3Aにおいて磁壁が移動せず、磁化反転領域3SWの磁化方向が下向きを維持する。その結果、選択されたメモリセル6E2,6E3が‘0’に書き替えられて、メモリセル列60Eに左から‘1’、‘0’、‘0’、‘1’が書込みされる。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Eは、第1実施形態と同様に、1つのメモリセル列60Eのすべてのメモリセル6Eに‘1’、‘0’を、最少2回の電流供給により書込みすることができる。また、非選択のメモリセル6Eにおいて、磁気抵抗効果素子1Cに電流の一部が流れても、その電流経路上に相対的に高抵抗な可変抵抗器MRrが配置されているので、電流の多くが第2選択トランジスタ42による迂回路(非選択時の電流経路)に流れることにより、誤書込みが防止される。ただし、第2実施形態に係る磁気メモリ10A(図12参照)と同様に、電流Iwを過剰に大きくない値に設定することが好ましい。なお、ビット線BLBに接続されたメモリセル列駆動トランジスタ43にゲート電圧生成回路80Eに内蔵されたパルス電源96の出力電圧VgH,Vg0が印加されるため、定電流源95からメモリセル列60Eに供給される電流は、パルス電源96の出力に同期した、ピーク電流Iwの直流パルス電流である。
本実施形態に係る磁気メモリ10Eの書込みでは、前記したように、選択したメモリセル6Eにおいては、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1と抵抗器MRw2とで供給される電流の大きさの不均衡を抑制するために、第1選択トランジスタ41の抵抗値が磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値RPに対して低いことが好ましい。一方、非選択のメモリセル6Eにおいては、誤書込みを防止するために、第2選択トランジスタ42の抵抗値が磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値RPに対して低いことが好ましい。したがって、磁気メモリ10Eは、第1実施形態と同様、選択トランジスタ41,42のON抵抗RONが低いことが好ましく、メモリセル6E毎に変位させたゲート電圧Vgを印加する。
さらに、本実施形態に係る磁気メモリ10Eは、前記したように、メモリセル6Eが常に磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rを経由して電流が流れる回路を形成しているために、下式(86)、下式(87)に表されるように、選択、非選択にかかわらず、メモリセル6Eの抵抗値R
CELLsl,R
CELLnsが可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APを含む。そのため、第2実施形態と同様、データの書換えや非選択のメモリセル6Eのデータによって、一定のゲート電圧Vgに対するゲート−ソース間電圧Vgsが変化する。ただし、選択したメモリセル6Eは、第1選択トランジスタ41および磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MR
wが磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rに対して相対的に低抵抗になるにしたがい、抵抗値R
CELLslが(R
ON+R
MRw)に収束する。また、非選択のメモリセル6Eは、第2選択トランジスタ42が可変抵抗器MR
rに対して相対的に低抵抗になるにしたがい、抵抗値R
CELLnsがR
ONに収束する。すなわち、磁気メモリ10Eの書込みにおけるメモリセル6Eの抵抗値R
CELLsl,R
CELLnsのデータによる差が0Ωに近付き、選択トランジスタ41,42が一定のゲート電圧Vgを印加されたときのゲート−ソース間電圧Vgsおよびそれに伴うON抵抗R
ONが安定する。そこで、各メモリセル6Eの第1選択トランジスタ41または第2選択トランジスタ42にON抵抗R
ONを低くする適切なゲート電圧Vgを出力するために、ゲート電圧生成回路80Eは以下の構成とすることができる。
図33、図34に示すように、ゲート電圧生成回路80Eは、電位の高い側(図33における右側、図34における左側)から、パルス電源96、保護抵抗85、N個(図では4個)の分圧抵抗器81、ダイオード83、およびゲート基電圧電源98を、順に直列に接続して備え、さらに、分圧抵抗器81のそれぞれに並列に接続した抵抗切替トランジスタ78,79を備える。ゲート電圧生成回路80Eはさらに、保護抵抗85を挟んだパルス電源96の出力と定電流源95の出力(ビット線BLT,BLB)との間に順に接続する、ツェナーダイオード86およびダイオード87を備える。すなわち、ゲート電圧生成回路80Eは、第1実施形態におけるゲート電圧生成回路80(図4(a)参照)に、抵抗切替トランジスタ79を追加して可変抵抗器8に接続した構成であり、分圧抵抗器81および2個の抵抗切替トランジスタ78,79で三重に並列に接続された可変抵抗器8Aを構成する。抵抗切替トランジスタ78は行デコーダ91Eからの第2ワード線選択トランジスタ72と共通の信号により、抵抗切替トランジスタ79は行デコーダ91Eからの第1ワード線選択トランジスタ71と共通の信号により、それぞれON状態になって、可変抵抗器8Aを2段階の抵抗に切り替える。可変抵抗器8Aのこのような構成は、後記の読出しのためである。また、ゲート電圧生成回路80Eは、第1実施形態と同様、可変抵抗器8Aの1個毎にメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42へのゲート電圧Vgを出力し、さらにN個目(図33、図34における右端)から、メモリセル列駆動トランジスタ43にゲート電圧VgHまたはVg0を印加する。
ゲート電圧生成回路80Eの構成および動作は、可変抵抗器8A以外は第1実施形態のゲート電圧生成回路80と同様である。分圧抵抗器81の抵抗値をR
div、抵抗切替トランジスタ78,79のON抵抗をそれぞれR
dvON2,R
dvON1と表す。そして、メモリセル6Eが選択されているときは、第1選択トランジスタ41と共に抵抗切替トランジスタ79がON状態であるから、可変抵抗器8Aの抵抗値は(R
dvON1||R
div)である。一方、メモリセル6Eが非選択のときは、第2選択トランジスタ42と共に抵抗切替トランジスタ78が共にON状態であるから、可変抵抗器8Aの抵抗値は(R
dvON2||R
div)である。したがって、下式(88)に表されるように、互いの比が、メモリセル6Eの選択、非選択時の各抵抗値R
CELLsl,R
CELLnsの比に略一致すればよい。そこで、式(86)、式(87)より、メモリセル6Eのそれぞれのデータが‘1’または‘0’であると仮定して、また、後記の読出しと併せて、分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ78,79を設計する。ここでは、可変抵抗器8Aは、各メモリセル6Eのデータが‘1’のときの抵抗値R
CELLsl(1),R
CELLns(1)の比に合わせる。
ビット線BLB側から左方向へ電流I
wを供給するとき(‘1’の書込み時)の、ゲート電圧生成回路80Eによる行(k)毎のゲート電圧Vg
kの出力について、図33を参照して説明する。第1実施形態と同様、まず、メモリセル列60Eのすべてのメモリセル6Eの第1選択トランジスタ41、およびメモリセル列駆動トランジスタ43において共通のゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typと称する)を下式(3)の範囲に設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおける第1選択トランジスタ41およびメモリセル列駆動トランジスタ43のON抵抗R
ONを算出する。そして、設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typとなる、行(k)毎のゲート電圧Vg
kを出力するように、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H,Vg
0を設定する。
‘1’の書込みにおいては、定電流源95の出力電圧V
wはメモリセル列駆動トランジスタ43のドレイン電位であり、すなわちメモリセル列駆動トランジスタ43のソース電位が(V
w−I
w×R
ON)である。定電流源95は、一定の電流I
wを供給するために、第2実施形態と同様、下式(32)に表されるように、BLT−BLB間の抵抗値、すなわち下式(89)に表されるメモリセル列60Eの抵抗値ΣR
CELLkとメモリセル列駆動トランジスタ43のON抵抗R
ONとの和によって、出力電圧V
wが決定される。そして、すべてのメモリセル6Eは、‘1’の書込みをされるので、データが‘1’のときの抵抗値R
CELLsl(1)、すなわち磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値がR
APになる(R
P/AP=R
AP)。あるいは、すべてのメモリセル6Eを選択するのではない場合(1≦m≦N−1)の非選択のメモリセル6Eについても、選択トランジスタ41,42を確実に線形領域で動作させるために、定電流源95の出力電圧V
wを想定される範囲において最大値V
wMAXになる場合を仮定して、これらのデータが‘1’のときの抵抗値R
CELLns(1)(R
P/AP=R
AP)とする。したがって、定電流源95の最大出力電圧V
wMAXは下式(90)で表され、パルス電源96の出力電圧Vg
Hを下式(91)で表されるように設定する。
一方、ゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
0は、ソース電位Vs
1が0Vであるメモリセル6E
1の第2選択トランジスタ42に出力されるゲート電圧Vg
1であるから、下式(16)に表されるようにゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)と同じ電圧に設定される。なお、メモリセル6E
1の第2選択トランジスタ42のドレイン電位は(I
w2×R
ON)であるが、第1選択トランジスタ41やメモリセル列駆動トランジスタ43と共通として簡潔にするため、ここでは式(3)に基づいて設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typを適用する。
‘1’の書込みにおいては、非選択のメモリセル6Eの少なくとも一部、そして‘1’の書込み前において、選択したメモリセル6Eの少なくとも一部のデータが‘0’であれば、そのメモリセル6Eの抵抗値R
CELLns,R
CELLslが低く、定電流源95の出力電圧V
wは最大値V
wMAXよりも小さいので、ゲート電圧Vg
kに対してゲート−ソース間電圧Vgsが設定したVgs
typよりも大きくなる。その結果、第1実施形態と同様、選択、非選択のメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42のON抵抗が低いためにメモリセル6E毎に異なる値になり、定電流源95の出力電圧V
wがさらに低下する。さらに、すべてのメモリセル6Eを選択するのではない場合には、選択されたm個のメモリセル6Eが、メモリセル列60Eにおいて電位の最も低い端のメモリセル6Eから順にm個である場合に、メモリセル列60Eの抵抗値ΣR
CELLkの変化が最も大きい。すべてのメモリセル6Eのデータが‘0’と仮定し、このときの定電流源95の出力電圧V
wを最小出力電圧V
wMINとして、下式(92)で表す。また、このときのメモリセル6E
kの選択トランジスタ41,42のON抵抗をR
ONk´、メモリセル列駆動トランジスタ43のON抵抗をR
ON0´と表す。メモリセル列駆動トランジスタ43、およびメモリセル6E
k毎の第1選択トランジスタ41または第2選択トランジスタ42のゲート−ソース間電圧Vgs
k´およびON抵抗R
ONk´はシミュレーションによって算出される。
第1、第2実施形態と同様、メモリセル列駆動トランジスタ43およびメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42のゲート−ソース間電圧Vgs
k´が最大定格V
(BR)gsに到達しないように、ゲート−ソース間電圧Vgs
typを設定する。‘1’の書込みにおいてゲート−ソース間電圧Vgs
k´が最大になるのはメモリセル列駆動トランジスタ43であり、そのゲート−ソース間電圧Vgs
0´が、下式(93)で表されるように最大定格V
(BR)gsに到達しなければよい。さらに、すべてのメモリセル6Eを選択したときに(m=N)メモリセル列駆動トランジスタ43のゲート−ソース間電圧Vgs
0´が最大になり、下式(93)より、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は下式(94)を満足するように設定される。下式(94)を満足するゲート−ソース間電圧Vgsが存在するために、磁気メモリ10Eは、下式(95)を満足するように設計される。
さらに、メモリセル列駆動トランジスタ43および各メモリセル6Eの選択トランジスタ41,42のゲート−ソース間電圧Vgsが最大定格V
(BR)gsに到達することのないように、パルス電源96の出力電圧Vg
Hは、常に下式(12)を満足する必要がある。そのため、第1実施形態と同様に、ゲート電圧生成回路80Eは、ツェナーダイオード86により、電位差(Vg
H−V
w)が下式(13)で表されるツェナー電圧Vzを超えたら、パルス電源96からメモリセル列60E(ビット線BLB)へ電流を流して、電圧Vg
Hが常に下式(12)を満足するように構成される。
‘0’の書込み(図34参照)においては、ゲート電圧生成回路80Eは、パルス電源96やゲート基電圧電源98等の接続を第1実施形態と同様に入れ替え、パルス電源96を接続した側をツェナーダイオード86およびダイオード87を経由して定電流源95の正に接続する。それ以外の、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0等は‘1’の書込みと同様に設定することができる。
本実施形態に係る磁気メモリ10Eは、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwおよび選択トランジスタ41,42をそれぞれ低抵抗に設計することで、メモリセル6Eの抵抗値RCELLsl,RCELLnsのデータの違いによる差が抑えられ、その結果、定電流源95の出力電圧Vwの変化量(VwMAX−VwMIN)を小さくすることができる。したがって、第1、第2実施形態と比較して、メモリセル列60Eのメモリセル6Eの数Nを多く配列したり、第3、第4実施形態に係る磁気メモリ10B,10C,10Dと同様に、可変抵抗器MRrをMR比が高く、読出しの精度の高いTMR素子で形成することができる。
(磁気メモリの読出方法)
前記したように、本実施形態に係る磁気メモリ10Eは、メモリセル列60Eにおいて、読出しのための磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrを経由して常に電流が流れる回路を形成している。したがって、本実施形態に係る磁気メモリの読出方法は、第2実施形態に係る磁気メモリの読出方法(図13参照)に準ずる。図35および図36に示すメモリセル列60Eのメモリセル6E1,6E2,6E3,6E4は、図33および図34の書込みにより、それぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’が記憶されているものとし、すなわちそれぞれの磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値は、RAP,RP,RP,RAPである。
図35において、行デコーダ91Eにより1行目が選択されると、左端の1行目のメモリセル6E1の選択トランジスタ41,42の両方がOFF状態になり、それ以外の3つのメモリセル6E2,6E3,6E4の選択トランジスタ41,42の両方がON状態になる。この状態で定電流源96により電流Irを供給すると、選択されたメモリセル6E1においては、電流Irが、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrおよび抵抗器MRw2に直列に流れる。一方、非選択のメモリセル6E2,6E3,6E4においては、電流Irが、第2選択トランジスタ42と、第1選択トランジスタ41および磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1と、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrと、の3つに分岐して流れ、さらに前記の磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1と可変抵抗器MRrとから合流して抵抗器MRw2に流れる。
また、図36において、行デコーダ91Eにより2行目が選択されると、左から2行目のメモリセル6E2の選択トランジスタ41,42がOFF状態になって、電流Irが、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrおよび抵抗器MRw2に直列に流れる。そして、それ以外の3つのメモリセル6E1,6E3,6E4の選択トランジスタ41,42がON状態になるので、1行目を選択したときと同様に電流Irが3つに分岐して流れる。
したがって、選択、非選択のメモリセル6Eの抵抗値をR
CELLrsl,R
CELLrnsで表すと、読出しにおけるメモリセル列60Eの抵抗値ΣR
CELLkは、下式(96)で表される。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Eの読出しにおいては、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aと同様に、メモリセル列60Eの抵抗値ΣR
CELLkが、選択したメモリセル6E
jに記憶されたデータだけでなく、非選択のメモリセル6E
k(k≠j)に記憶されたデータによっても変化する。したがって、メモリセル列60Eの両端に接続したビット線BLT,BLB間の電圧測定による読出しを可能にするために、磁気メモリ10Eは、第2実施形態と同様に、非選択のメモリセル6E
kのそれぞれのデータにかかわらず、選択したメモリセル6E
jが‘1’のときの方が‘0’のときよりもメモリセル列60Eの抵抗値ΣR
CELLkが高くなるように設計される。すなわち、選択したメモリセル6E
jが‘1’かつ非選択のすべてのメモリセル6E
kが‘0’のときのメモリセル列60Eの抵抗値ΣR
CELLk(1)MIN(下式(97))が、選択したメモリセル6E
jが‘0’かつ非選択のすべてのメモリセル6E
kが‘1’のときのメモリセル列60Eの抵抗値ΣR
CELLk(0)MAX(下式(98))よりも高い、すなわちΣR
CELLk(1)MIN>ΣR
CELLk(0)MAXが成立するものとする。さらに、その差(ΣR
CELLk(1)MIN−ΣR
CELLk(0)MAX)がメモリセル列60Eの抵抗値ΣR
CELLkに対して大きいことが好ましい。
例えば、メモリセル6Eにおいて、前記と同様、磁気抵抗効果素子1Cは、抵抗器MRwの抵抗値RMRwが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/10とし、また、選択トランジスタ41,42はON抵抗RONが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/5とする。また、TMR素子(可変抵抗器)MRrのMR比が50%とする。このようなメモリセル6Eを配列したメモリセル列60Eは、メモリセル6Eの数Nが2000近くになるとΣRCELLk(1)MIN,ΣRCELLk(0)MAXの高低が逆転する。また、メモリセル列60Eの抵抗最小変化率は、N=32で約14%、N=64で約9%、N=128で5%である。
また、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwおよび選択トランジスタ41,42の抵抗値RMRw,RONを、誤書込みし難い範囲で高くして、抵抗器MRwの抵抗値RMRwが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/4とし、選択トランジスタ41,42のON抵抗RONが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/4とする。このようなメモリセル6Eを配列したメモリセル列60Eであっても、メモリセル6Eの数Nが約600を超えるまでΣRCELLk(1)MIN,ΣRCELLk(0)MAXの高低が逆転しない。また、メモリセル列60Eの抵抗最小変化率は、N=32で約9%、N=64で約5%、N=128で3%である。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Eは、非選択のメモリセル6Eにおいて、第2選択トランジスタ42だけでなく、第1選択トランジスタ41および磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwにより、相対的に低抵抗な迂回路が並列に2本形成される。したがって、磁気メモリ10Eは、第2実施形態に係る磁気メモリ10A(図14参照)よりも、非選択のメモリセル6Eに記憶されたデータ(磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値RP,RAP)の影響が少ない上、この非選択のメモリセル6Eの抵抗値RCELLrnsが低い。特に、選択トランジスタ41,42および磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwが可変抵抗器MRrに対して相対的に低抵抗になるにしたがい、非選択のメモリセル6Eの抵抗値RCELLrnsが(RON||(RON+RMRw))に収束してデータによる差が0Ωに近付く。その結果、メモリセル列60Eがメモリセル6Eの数Nを多くしても、非選択のメモリセル6Eに記憶されたデータにより判定不能となり難く、また、抵抗の変化率も十分に高く、読出しの精度が維持される。したがって、本実施形態において、メモリセル列60Eに配列するメモリセル6Eの数Nは、主にその抵抗値ΣRCELLkによる負荷や読出しの精度により設計されることが好ましい。
本実施形態に係る磁気メモリ10Eの読出しにおいては、第2実施形態と同様に、メモリセル列60Eにおけるすべての非選択のメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42を低抵抗で動作させるために、ゲート電圧生成回路80Eが行毎に変位させたゲート電圧Vgkを出力する。さらに本実施形態においては、メモリセル6Eの選択、非選択における抵抗値RCELLrsl,RCELLrnsが、書込みとは異なる比になる。そのため、ゲート電圧生成回路80Eは次のように構成される。
読出しにおいて、選択した行では、メモリセル6Eの選択トランジスタ41,42と共に抵抗切替トランジスタ79,78がOFF状態であるから、可変抵抗器8Aの抵抗値は分圧抵抗器81の抵抗値R
divである。一方、非選択の行では、メモリセル6Eの選択トランジスタ41,42と共に抵抗切替トランジスタ79,78がON状態であるから、可変抵抗器8Aの抵抗値は(1/ (1/R
div+1/R
dvON1+1/R
dvON2))である。したがって、下式(99)に表されるように、互いの比が、メモリセル6Eの選択、非選択時の各抵抗値R
CELLrsl,R
CELLrnsの比に略一致すればよく、それぞれのデータが‘1’または‘0’であると仮定して、さらに、前記式(88)に表される書込みにおける比と併せて、分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ79,78が設計される。ここでは、可変抵抗器8Aは、各メモリセル6Eのデータが‘0’のときの抵抗値R
CELLrsl(0),R
CELLrns(0)の比に合わせる。
第1、第2実施形態と同様、まず、メモリセル列60Eのすべてのメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42、およびメモリセル列駆動トランジスタ43において共通のゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typと称する)を下式(22)の範囲に設定し、このゲート−ソース間電圧Vgs
typにおけるON抵抗R
ONを算出する。本実施形態においては、ゲート−ソース間電圧Vgs
typを上限(最大定格V
(BR)gs)近傍に設定することが好ましい。そして、ここではすべてのメモリセル6Eのデータが‘0’であると仮定して定電流源94の最小出力電圧V
rMINを算出し(下式(100))、設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typとなる、行(k)毎のゲート電圧Vg
kを出力するように、定電源97およびゲート基電圧電源98の出力電圧Vg
H,Vg
0を設定する(下式(101)、下式(16))。
そして、このように仮定して設定したゲート−ソース間電圧Vgs
typに基づいて出力されたゲート電圧Vg
kが、すべてのメモリセル6Eのデータが‘1’である場合に、非選択のメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42が線形領域外(飽和領域)にならないように設定される。さらに読出しにおいては、第1、第2実施形態と同様、電位の最も低い側のメモリセル6E
Nを選択したときを想定して、メモリセル6E毎の選択トランジスタ41,42のゲート−ソース間電圧Vgs´およびON抵抗R
ON´がシミュレーションによって算出され、下式(102)で表される定電流源94の最大出力電圧V
rMAXが算出される。なお、磁気メモリ10Eの読出しにおいて、メモリセル列駆動トランジスタ43は、すべてのメモリセル6Eに対して電位の低い側に接続されているので、ON抵抗R
ONは変化しない。このときの、電位の最も高い側であるメモリセル6E
1の選択トランジスタ41,42について、そのゲート電圧である定電源97の出力電圧Vg
Hとドレイン電位である定電流源94の最大出力電圧V
rMAXとの電位差が、下式(103)に表されるようにしきい値Vth未満にならなければよい。そのために、ゲート−ソース間電圧Vgs(Vgs
typ)は、下式(104)を満足するように設定される。
式(104)を満足するゲート−ソース間電圧Vgsが存在するためには、磁気メモリ10Eは下式(105)を満足する必要がある。そのために、磁気メモリ10Eは、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値の変化量ΔR
Pに応じて、読出し用の電流I
rを小さく設定したり、選択トランジスタ41,42について、最大定格(破壊電圧)V
(BR)gsをしきい値電圧Vthに対して大きく設計することが好ましい。また、磁気メモリ10Eは、メモリセル列60Eに配列するメモリセル6Eの数Nを制限して、非選択のメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42について、選択したメモリセル6Eのデータの違いによる電位差に伴うON抵抗の変化量の累積(図6参照)を低減させることにより、下式(105)を満足することができる。また、ツェナーダイオード86のツェナー電圧Vzは、第2実施形態と同様に、式(13)に基づいて、下式(28)を満足するように設定される。
あるいは、磁気メモリ10Eが式(105)を満足することが困難な場合は、選択したメモリセル6Eのデータが‘1’である場合に、非選択のメモリセル6Eのすべてまたは一部の選択トランジスタ41,42が線形領域外(飽和領域)で動作するように設定されてもよい。このような選択トランジスタ41,42はON抵抗が高く、したがって、メモリセル列60Eの抵抗値ΣRCELLkも高くなるが、判定への影響はない。また、第1、第2実施形態と同様に、すべてのメモリセル6Eのデータが‘1’であると仮定して、選択トランジスタ41,42の共通のゲート−ソース間電圧VgstypおよびON抵抗RONによる定電流源94の最大出力電圧VrMAXに基づいて、定電源97およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0を設定してもよい。
図35および図36においては、第1、第2実施形態(図5、図13参照)と同様、電流Irがビット線BLTの側からメモリセル列60Eに供給されているが、電流Irの向きを逆にしてビット線BLBを定電流源94の正に接続してもよい。さらに、1〜N/2行目のメモリセル6Eを選択するときはビット線BLTを定電流源94の正に、(N/2+1)〜N行目のメモリセル6Eを選択するときはビット線BLBを定電流源94の正に、それぞれ電流Irの向きを切り替えて供給してもよい。このように向きを切り替えて電流Irを供給することにより、選択したメモリセル6Eに対して電位の高い側に配列された非選択のメモリセル6Eの数を減少させ、これらのメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42について、選択したメモリセル6Eのデータの違いによる電位差に伴うON抵抗の変化量の累積を低減させることができる。その結果、メモリセル列60Eにおいて電位の最も高いメモリセル6E1またはメモリセル6ENの選択トランジスタ41,42における電位差が抑えられ、ゲート−ソース間電圧Vgsを適切な範囲とすることが容易になる。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Eは、第1、第2実施形態に係る磁気メモリ10,10Aと同様に、書込みと共通の配線を用いて各メモリセル6Eに記憶されたデータを読出しすることができる。また、ゲート電圧生成回路80Eが、書込みと読出しとで異なる比に抵抗が切り替わる可変抵抗器8Aを備えることにより、書込み、読出しのそれぞれにおいて、適切なゲート電圧Vgを出力することができる。なお、可変抵抗器8Aの構成は、分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ79,78からなる三重の回路に限られず、前記のように、書込みと読出しとで異なる比に抵抗が切り替わればよい。
また、記憶装置90Eは、第1、第2実施形態(図1、図10参照)と同様に、列デコーダ92により磁気メモリ10Eから2以上の列を選択して、これらのメモリセル列60Eのそれぞれに電流Irを供給しながら、選択した1行の各メモリセル6Eを電圧比較器93により並行して読出しすることができる。
本実施形態に係る磁気メモリ10Eは、メモリセル6Eの磁気抵抗効果素子1Cが、非磁性金属からなる中間層21,22を備えて、スピン注入磁化反転により抵抗値が変化する構造であってもよい(図示せず)。このような磁気抵抗効果素子1Cを備える場合には、可変抵抗器MRrの抵抗値RPに応じて、磁化固定層11および中間層21を、磁化固定層12および中間層22よりも平面視サイズを小さく形成して、書込みにおける電流Iw1,Iwの電流密度を揃えてもよい。
〔空間光変調器〕
本発明の第5実施形態に係る磁気メモリ10Eは、磁気抵抗効果素子1Cの最上層が磁性細線3Aまたは磁化自由層3であり、さらにその上に配線等が設けられていないので、画素の書込みエラーの検出をする空間光変調器に好適である。特に磁気メモリ10Eは、多数のメモリセル6Eを直列に配列することができるので、書込みを高速に行うことができる。
以上のように、本発明の第5実施形態に係る磁気メモリによれば、書込みがいっそう高速化され、かつ消費電流を低減することができ、さらに読出しの消費電流を低減することができる。
〔第6実施形態〕
本発明の第5実施形態に係る磁気メモリのメモリセルは、第1実施形態と同様に、メモリセルに2個のトランジスタを備える。2個のトランジスタを備えつつメモリセルのサイズの拡張を抑制可能な本発明の第6実施形態に係る磁気メモリについて、図37〜42を参照して説明する。第1〜5実施形態(図1〜32参照)と同一の要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第6実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第5実施形態に係る磁気メモリ10E(図31参照)と同様に、簡潔に説明するために記憶装置90Fに1つ搭載され、メモリセル6Fを2次元配列して備える。
図37に示すように、磁気メモリ10Fのメモリセル6Fは、直列に接続された2個の選択トランジスタ41,42と、その一方の第2選択トランジスタ42と並列に接続された磁気抵抗効果素子1Cとを備え、さらに、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRr(端子p3)が、メモリセル6Fの入出力端子の一方である第1選択トランジスタ41に接続されている。言い換えると、磁気メモリ10Fは、メモリセル6Fが、第2実施形態に係る磁気メモリ10A(図10参照)のメモリセル6Aに第1選択トランジスタ41を直列に接続して入出力端子の一方とし、磁気抵抗効果素子1を磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw(MRw1,MRw2)に置き換えられて、可変抵抗器MRrが前記入出力端子の一方に接続された構成である。
(記憶装置)
このような構成の磁気メモリ10Fを備える記憶装置90Fは、図37に示すように、さらに磁気メモリ10Fの駆動回路として、磁気メモリ10Fの行毎に設けられたワード線選択トランジスタ71,72と、磁気メモリ10Fの列(メモリセル列60F)毎に設けられたビット線選択トランジスタ73,74、メモリセル列駆動トランジスタ43、および電圧比較器93と、行デコーダ91Fと、列デコーダ92と、書込/読出電流回路9と、ゲート電圧生成回路80Fと、を備える。すなわち、記憶装置90Fは、第5実施形態に係る磁気メモリ10Eを備える記憶装置90E(図31参照)に対して、行デコーダ91Fおよびゲート電圧生成回路80Fが異なる。本実施形態においても、第5実施形態と同様に、メモリセル6Fが少なくとも磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrと抵抗器MRw2を経由して常に電流が流れる回路を形成しているために、選択したメモリセル列60Fに限定的に電流を供給するためにメモリセル列駆動トランジスタ43が設けられ、メモリセル列60Fの一端、ここではビット線BLB側に接続される。
磁気抵抗効果素子1Cの構成は、第3、第5実施形態で、第1選択トランジスタ41および第2選択トランジスタ42の構成は、第1、第5実施形態で、それぞれ説明した通りである。特に、本実施形態に係る磁気メモリ10Fのメモリセル6Fにおいては、磁気抵抗効果素子1Cは、抵抗器MRw(抵抗器MRw1,MRw2)の抵抗値RMRwが、可変抵抗器MRrの抵抗値RPよりも低いことが好ましく、第1選択トランジスタ41のON抵抗RONは、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1の抵抗値0.5RMRwとの和が可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/2以下であることが好ましい。これらは、第5実施形態と同様に、磁気メモリ10Fへの書込みにおいて、抵抗器MRw1と抵抗器MRw2とで供給される電流の大きさの不均衡を抑制するためである。一方、第3実施形態と同様に、誤書込みを防止するために、第2選択トランジスタ42のON抵抗RONは、抵抗器MRwの抵抗値RMRwよりも高くならないように設計されることが好ましく、抵抗値RMRwに対して低いほど好ましい。特に、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwの抵抗値RMRw、選択トランジスタ41,42のON抵抗RONは、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値RPに対して低いほど好ましい。
したがって、第5実施形態と同様、同一構造の選択トランジスタ41,42は、ON抵抗RONがこれら両方の条件を満足するように設計されることが好ましい。なお、第1選択トランジスタ41と第2選択トランジスタ42は、メモリセル6Fにおいて直列に接続されているので、同一構造であってもソース電位Vsが異なるため、印加されるゲート電圧VgによってはON抵抗RONが必ずしも同一ではない。
なお、磁気抵抗効果素子1Cは、可変抵抗器MRrの抵抗値の差ΔRPが大きいほど、読出しにおいて、判定の精度を高くするものの、一方で、第5実施形態と同様に、読み出したデータが‘1’か‘0’かで非選択のメモリセル6Fの選択トランジスタ41,42の電位が大きく異なる。その結果、選択トランジスタ41,42に印加するゲート電圧Vgを適切に設定することが困難になる場合がある。
第6実施形態に係る磁気メモリ10Fは、メモリセル列60Fにおいて、メモリセル6Fの2個の選択トランジスタ41,42が交互に直列に(選択トランジスタ41,42,41,42,…)接続されている。したがって、選択トランジスタ41,42は、第2、第3実施形態に係る磁気メモリ10A,10B(図11、図16参照)と同様に、Si基板等の表層に連続したMOSFETで形成することができる。詳しくは、図38に示すように、第1選択トランジスタ41のドレイン4d1が同じメモリセル6Fの第2選択トランジスタ42のソースと一体のn+拡散層に形成され、第2選択トランジスタ42のドレイン4d2が隣のメモリセル6Fのソースと一体のn+拡散層に形成され、基板40Dの表層に、連続したMOSFETで形成されている。基板40Dは、第2、第3実施形態に係る磁気メモリ10A,10Bの基板40Bと同様の構成で2倍の数のMOSFETが形成され、また、同数のMOSFETを備える第1、第5実施形態に係る磁気メモリ10,10Eの基板40,40A,40C(図2、図7、図32参照)よりも列方向(X方向)に縮小される。なお、図38においては、図32と同様に、右から順に、メモリセル列60Fにおけるビット線BLBから1、2行目のメモリセル6F,6Fを簡略化して示す。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第5実施形態に係る磁気メモリ10E(図31参照)と同様に、隣り合うメモリセル6F,6Fのビット線BLT側の磁気抵抗効果素子1Cの端子p2(磁化固定層12)からビット線BLB側の磁気抵抗効果素子1Cの端子p3(磁化固定層13)へ接続している。ただし、磁気メモリ10Fは、前記したように、メモリセル列60Fにおいて、選択トランジスタ41,42が列方向に縮小して形成されている。そこで、一例として図38に示すように、磁気メモリ10Fは、磁気抵抗効果素子1Cが、行方向(図38のY方向)に磁化固定層11,13,12の順に配置されるように設けられている。そして、メモリセル6Fは、磁気抵抗効果素子1Cの磁化固定層11が第1選択トランジスタ41のドレイン4d1に配線51(接続部51c、抵抗接続層51a)で接続され、磁化固定層12が第2選択トランジスタ42のドレイン4d2に配線52(接続部52c、抵抗接続層52a)で接続される。さらに磁化固定層12から、そのビット線BLB側の隣(図38において右隣)のメモリセル6Fの磁気抵抗効果素子1Cの磁化固定層13へ、平面視でZ字型に形成された抵抗接続層52aで接続される。このような配列により、磁気メモリ10Fは、MOSFET(選択トランジスタ41,42)に合わせて、列方向(X方向)に狭ピッチに形成されされている。なお、図38においては、図32と同様に、ワード線WLT,WLB(図37参照)が省略され、空白部分に絶縁層が設けられている。なお、図38に示すメモリセル6Fにおいては、簡略化された配線51,52の抵抗接続層51a,52aの平面視形状に合わせて、磁気抵抗効果素子1Cが列方向に小さく(細く)形成されているが、配線51,52を多層化する等して、大きく形成されてもよい(図示せず)。
記憶装置90Fは、磁気メモリ10Fをサブブロックメモリとして2つ以上搭載してもよく、第1実施形態に係る磁気メモリ10,10を備える記憶装置90(図1参照)と同様に、搭載された2つ以上の磁気メモリ10Fが互いに並列に書込/読出電流回路9に接続されるように、ビット線BLT,BLBを結線する(図示省略)。
(磁気メモリの製造方法、初期設定)
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第1実施形態の変形例に係る空間光変調器(図6参照)と同様に製造することができる。また、磁気メモリ10Fは、第3、第4、第5実施形態に係る磁気メモリ10B,10C,10D,10Eと同様に、外部磁界を向きと大きさを変えて2回印加して、初期設定を行うことができる。
〔磁気メモリの書込/読出方法〕
本発明の第6実施形態に係る磁気メモリの書込/読出方法を、図39〜42を参照して説明する。図39〜42では、第1実施形態(図4、図5)と同様に、磁気メモリ10Fにおける、4つのメモリセル6F(適宜、図中左からメモリセル6F1,6F2,6F3,6F4と称する)を配列した1つのメモリセル列60Fを示す。このメモリセル列60Fが列デコーダ92(図37参照)により選択されて(ビット線選択トランジスタ73,74:ON状態)、書込/読出電流回路9に内蔵された定電流源95または定電流源94にビット線BLT,BLBが接続している。ここでは、メモリセル6F1,6F2,6F3,6F4にそれぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’を書込みし、また、このデータを読出しするものとして説明する。
(磁気メモリの書込方法)
本実施形態に係る磁気メモリの書込方法は、第2実施形態に係る磁気メモリの書込方法(図12参照)に準じ、また、選択したメモリセルにおいては第5実施形態に係る磁気メモリの書込方法(図33、図34参照)と同様である。図39においては、行デコーダ91Fによりすべての行が選択され、ワード線WLTの第1ワード線選択トランジスタ71がON状態、ワード線WLBの第2ワード線選択トランジスタ72がOFF状態である。これにより、4つすべてのメモリセル6Fにおいて、第1選択トランジスタ41がON状態、第2選択トランジスタ42がOFF状態である。なお、図39、図40、および後記の図41、図42において、第1ワード線選択トランジスタ71および第2ワード線選択トランジスタ72は、ON状態のとき、白抜き矢印を付して表す。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Eにビット線BLB側から左方向へ電流Iwを供給すると、各メモリセル6Fにおいて、電流Iwが磁気抵抗効果素子1Cに供給される。このとき、第5実施形態(図33参照)と同様、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrがメモリセル6Fの入出力端子の一方(ビット線BLT側)に接続しているために、電流Iwは、抵抗器MRw2に流れてから、可変抵抗器MRrと、第1選択トランジスタ41を経由した抵抗器MRw1とに分岐して流れ、合流して左隣のメモリセル6Fへ流れる。したがって、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw2には電流Iwのすべてが供給されるが、抵抗器MRw1には並列に接続された可変抵抗器MRrにより電流Iwの一部(電流Iw1)のみが供給される。
第5実施形態と同様に、抵抗器MR
w1に供給される電流I
w1は下式(84)で表される。すなわち、メモリセル6Fにおいて、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MR
wおよび第1選択トランジスタ41が、それぞれ可変抵抗器MR
rに対して十分に低抵抗に設計されていることにより(R
MRw<<R
P、R
ON<<R
P)、電流I
wの多くが十分な電流密度の電流I
w1として抵抗器MR
w1に供給される。その結果、4つすべてのメモリセル6Fに‘1’が書込みされる。
次に、図40において、行デコーダ91Fにより中央の2行(2行目と3行目)が選択される。すなわち両端の2行(1行目と4行目)が非選択状態に切り替えられ、ワード線WLTの第1ワード線選択トランジスタ71がON状態のままで、ワード線WLBの第2ワード線選択トランジスタ72がON状態になる。これにより、両端の2つの非選択のメモリセル6F1,6F4において、第1選択トランジスタ41および第2選択トランジスタ42が共にON状態である。この状態で、定電流源95によりメモリセル列60Fに、今度はビット線BLT側から右方向へ電流Iwを供給する。すると、中央の2つの選択されたメモリセル6F2,6F3においては、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw2,MRw1に図39とは逆方向に電流Iw,Iw1が供給されるため、‘0’に書き替えられる。
一方、非選択のメモリセル6F1,6F4においては、電流Iwが、可変抵抗器MRrと第1選択トランジスタ41とに分岐し、第1選択トランジスタ41からさらに第2選択トランジスタ42と磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwとに分岐して流れる。第2選択トランジスタ42のON抵抗RONが磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwの抵抗値RMRw以下に設計され、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値RPが抵抗器MRwの抵抗値RMRwに対して十分に高い値に設計されている(RON≦RMRw<<RP)と、これらのメモリセル6F1,6F4においては、電流Iwの1/2(50%)程度かそれ以上が第2選択トランジスタ42に流れ、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw2には磁壁を移動させる程の大きさの電流が供給されず、抵抗器MRw1にはさらに小さい電流しか供給されない。したがって、これらの磁気抵抗効果素子1Cの磁性細線3Aにおいて磁壁が移動せず、磁化反転領域3SWの磁化方向が上向きを維持する(図24、図9参照)。その結果、メモリセル列60Fに左から‘1’、‘0’、‘0’、‘1’が書込みされる。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第1実施形態と同様に、1つのメモリセル列60Fのすべてのメモリセル6Fに‘1’、‘0’を、最少2回の電流供給により書込みすることができる。なお、磁気メモリ10Fの書込みにおいては、選択、非選択にかかわらず、すべてのメモリセル6Fの第1選択トランジスタ41がON状態に、すなわちすべてのワード線選択トランジスタ71がON状態に固定される。また、非選択のメモリセル6Fにおいて、磁気抵抗効果素子1Cに電流Iwの一部が流れても、第2実施形態に係る磁気メモリ10A(図12参照)と同様に、同等以下の抵抗の第2選択トランジスタ42による迂回路にも並列に流れることにより、誤書込みが防止される。ただし、第2実施形態に係る磁気メモリ10Aと同様に、電流Iwを過剰に大きくない値に設定することが好ましい。なお、ビット線BLBに接続されたメモリセル列駆動トランジスタ43にゲート電圧生成回路80Fに内蔵されたパルス電源96の出力電圧VgH,Vg0が印加されるため、定電流源95からメモリセル列60Fに供給される電流は、パルス電源96の出力に同期した、ピーク電流Iwの直流パルス電流である。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、書込みにおいて、第5実施形態に係る磁気メモリ10Eと同様、選択、非選択にかかわらず、メモリセル6Fの抵抗値R
CELLsl,R
CELLnsが可変抵抗器MR
rの抵抗値R
P,R
APを含む。詳しくは、メモリセル6Fの選択時の抵抗値R
CELLslは、下式(86)に表されるように、第5実施形態に係る磁気メモリ10Eのメモリセル6Eと同じである。したがって、選択したメモリセル6Fは、第1選択トランジスタ41および磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MR
wが磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rに対して相対的に低抵抗になるにしたがい、抵抗値R
CELLslが(R
ON+R
MRw)に収束する。一方、非選択のメモリセル6Fはブリッジ回路が形成されているので、Δ−Y変換法により、抵抗値R
CELLnsが下式(106)で表される。この非選択のメモリセル6Fは、第2選択トランジスタ42および磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MR
wが磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rに対して相対的に低抵抗になるにしたがい、抵抗値R
CELLnsが(R
ON+R
ON||R
MRw)に収束する。
したがって、データの違いによるゲート−ソース間電圧Vgsの変化を抑制するために、そして前記したように、選択したメモリセル6Fにおける磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRw1,MRw2間の電流の大きさの不均衡を抑制し、非選択のメモリセル6Fの誤書込みを防止するために、選択トランジスタ41,42のON抵抗RONが低いことが好ましい。そのために、磁気メモリ10Fは、第1実施形態等と同様、選択トランジスタ41,42のON抵抗RONが低くなるように、メモリセル6F毎に変位させたゲート電圧Vgを印加する。さらに、本実施形態に係る磁気メモリ10Fのメモリセル6Fにおいては、第1選択トランジスタ41と第2選択トランジスタ42とが直列に接続されている。そのために、ゲート電圧生成回路80Fは以下の構成とすることができる。
図39、図40に示すように、ゲート電圧生成回路80Fは、電位の高い側(図39における右側、図40における左側)から、パルス電源96、保護抵抗85、N個(図では4個)の交互に設けられた分圧抵抗器81と副分圧抵抗器82、ダイオード83、およびゲート基電圧電源98を、順に直列に接続して備え、さらに、分圧抵抗器81のそれぞれに並列に接続した抵抗切替トランジスタ78,79を備える。ゲート電圧生成回路80Fはさらに、保護抵抗85を挟んだパルス電源96の出力と定電流源95の出力(ビット線BLT,BLB)との間に順に接続する、ツェナーダイオード86およびダイオード87を備える。すなわち、ゲート電圧生成回路80Fは、第5実施形態におけるゲート電圧生成回路80E(図33、図34参照)と同様に、分圧抵抗器81および2個の抵抗切替トランジスタ78,79で三重に並列に接続された可変抵抗器8Aを備え、この可変抵抗器8Aと直列に交互に接続された副分圧抵抗器82を追加した構成である。抵抗切替トランジスタ78は行デコーダ91Fからの第2ワード線選択トランジスタ72と共通の信号により、抵抗切替トランジスタ79は行デコーダ91Fからの第1ワード線選択トランジスタ71と共通の信号により、それぞれON状態になって、可変抵抗器8Aを2段階の抵抗に切り替える。また、ゲート電圧生成回路80Fは、可変抵抗器8Aと副分圧抵抗器82の1組毎にメモリセル6Fの選択トランジスタ41,42へのゲート電圧Vgを出力し、さらにN個目(図33、図34における右端)から、メモリセル列駆動トランジスタ43にゲート電圧VgHまたはVg0を印加する。詳しくは、副分圧抵抗器82を挟んで、メモリセル6Fの第1選択トランジスタ41と第2選択トランジスタ42に印加する各ゲート電圧が出力される。
ゲート電圧生成回路80Fの構成および動作は、副分圧抵抗器82以外は第5実施形態のゲート電圧生成回路80Eと同様である。分圧抵抗器81の抵抗値をR
div1、副分圧抵抗器82の抵抗値をR
div2、抵抗切替トランジスタ78,79のON抵抗をそれぞれR
dvON2,R
dvON1と表す。そして、メモリセル6Fが選択されているときは、第1選択トランジスタ41と共に抵抗切替トランジスタ79がON状態であるから、可変抵抗器8Aの抵抗値は(R
dvON1||R
div1)である。一方、メモリセル6Fが非選択のときは、選択トランジスタ41,42と共に抵抗切替トランジスタ78,79が共にON状態であるから、可変抵抗器8Aの抵抗値は(1/ (1/R
div+1/R
dvON1+1/R
dvON2))である。さらに可変抵抗器8Aに副分圧抵抗器82が直列に接続されているので、下式(107)に表されるように、副分圧抵抗器82との和について互いの比が、メモリセル6Fの選択、非選択時の各抵抗値R
CELLsl,R
CELLnsの比に略一致すればよい。さらに、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MR
rの抵抗値R
Pが第1選択トランジスタのON抵抗R
ONに対して十分に高い場合は、下式(108)に表されるように、副分圧抵抗器82の抵抗値R
div2が、当該抵抗値R
div2とメモリセル6Fが非選択のときの可変抵抗器8Aの抵抗との和で、非選択のメモリセル6Fの抵抗値R
CELLnsと第1選択トランジスタのON抵抗R
ONの比に略一致すればよい。そこで、式(86)、式(106)より、メモリセル6Fのそれぞれのデータが‘1’または‘0’であると仮定して、また、後記の読出しと併せて、分圧抵抗器81、副分圧抵抗器82、および抵抗切替トランジスタ78,79を設計する。ここでは、各メモリセル6Fのデータが‘1’のときの抵抗値R
CELLsl(1),R
CELLns(1)の比に合わせる。
このように構成されたゲート電圧生成回路80Fにより、本実施形態に係る磁気メモリ10Fの書込みは、第5実施形態と同様に、選択トランジスタ41,42およびメモリセル列駆動トランジスタ43に、適切なゲート電圧Vgを印加することができる。すなわち、まず共通のゲート−ソース間電圧Vgs(Vgstypと称する)を設定し(式(3))、すべてのメモリセル6Fのデータが‘1’であると仮定して定電流源95の最大出力電圧VwMAXを算出し、パルス電源96およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0を設定する(式(90)、式(91)、式(16))。そして、すべてのメモリセル6Fのデータが‘0’である場合に、最大定格V(BR)gsに到達しないことを確認する(式(92)〜式(95))。さらに、ツェナーダイオード86のツェナー電圧Vzも同様に設計することができる(式(13))。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第5実施形態と同様、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwおよび選択トランジスタ41,42をそれぞれ低抵抗に設計することで、メモリセル6Eの抵抗値RCELLsl,RCELLnsのデータの違いによる差が抑えられ、その結果、定電流源95の出力電圧Vwの変化量(VwMAX−VwMIN)を小さくすることができる。
(磁気メモリの読出方法)
前記したように、本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、メモリセル列60Fにおいて、読出しのための磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrを経由して常に電流が流れる回路を形成している。したがって、本実施形態に係る磁気メモリの読出方法は、第2実施形態に係る磁気メモリの読出方法(図13参照)に準ずる。図41、図42に示すメモリセル列60Fのメモリセル6F1,6F2,6F3,6F4は、図39、図40の書込みにより、それぞれ‘1’、‘0’、‘0’、‘1’が記憶されているものとし、すなわちそれぞれの磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrの抵抗値は、RAP,RP,RP,RAPである。
図41において、行デコーダ91Fにより1行目が選択されると、左端の1行目のメモリセル6F1の選択トランジスタ41,42の両方がOFF状態になり、それ以外の3つのメモリセル6F2,6F3,6F4の選択トランジスタ41,42の両方がON状態になる。すなわち、読出しにおける選択トランジスタ41,42の動作は、第5実施形態(図35、図36参照)と同様である。この状態で定電流源96により電流Irを供給すると、選択されたメモリセル6F1においては、電流Irが、磁気抵抗効果素子1Cの可変抵抗器MRrおよび抵抗器MRw2に直列に流れる。一方、非選択のメモリセル6F2,6F3,6F4においては、書込み時の非選択のメモリセル6F(図40のメモリセル6F1,6F4)と同様に、選択トランジスタ41,42の両方がON状態であるので、電流の経路も同様である。次に、図42において、行デコーダ91Fにより2行目が選択されると、左から2行目のメモリセル6F2の選択トランジスタ41,42がOFF状態になり、それ以外のメモリセル6F1,6F3,6F4の選択トランジスタ41,42がON状態になる。
したがって、選択、非選択のメモリセル6Fの抵抗値をR
CELLrsl,R
CELLnsで表すと、読出しにおけるメモリセル列60Fの抵抗値ΣR
CELLkは、下式(109)で表される。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Fの読出しにおいては、第2、第5実施形態に係る磁気メモリ10A,10Eと同様に、メモリセル列60Fの抵抗値ΣRCELLkが、選択したメモリセル6Fjに記憶されたデータだけでなく、非選択のメモリセル6Fk(k≠j)に記憶されたデータによっても変化する。したがって、第2、第5実施形態と同様に、メモリセル列60Fの両端に接続したビット線BLT,BLB間の電圧測定による読出しを可能にするために、磁気メモリ10Fは、非選択のメモリセル6Fkのそれぞれのデータにかかわらず、選択したメモリセル6Fjが‘1’のときの方が‘0’のときよりもメモリセル列60Fの抵抗値ΣRCELLkが高くなるように設計される。すなわち、選択したメモリセル6Fjが‘1’かつ非選択のすべてのメモリセル6Fkが‘0’のときのメモリセル列60Fの抵抗値ΣRCELLk(1)MINが、選択したメモリセル6Fjが‘0’かつ非選択のすべてのメモリセル6Fkが‘1’のときのメモリセル列60Fの抵抗値ΣRCELLk(0)MAXよりも高い、すなわちΣRCELLk(1)MIN>ΣRCELLk(0)MAXが成立するものとする。さらに、その差(ΣRCELLk(1)MIN−ΣRCELLk(0)MAX)がメモリセル列60Fの抵抗値ΣRCELLkに対して大きいことが好ましい。
例えば、メモリセル6Fにおいて、磁気抵抗効果素子1Cは、抵抗器MRwの抵抗値RMRwが可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/10とし、また、選択トランジスタ41,42はON抵抗RONが抵抗器MRwの抵抗値RMRwの1/2(可変抵抗器MRrの抵抗値RPの1/20)とする。また、TMR素子(可変抵抗器)MRrのMR比が50%とする。このようなメモリセル6Fを配列したメモリセル列60Fは、メモリセル6Fの数Nが400近くになるとΣRCELLk(1)MIN,ΣRCELLk(0)MAXの高低が逆転する。また、メモリセル列60Fの抵抗最小変化率は、N=16で約27%、N=32で約13%、N=64で約7%である。
また、磁気抵抗効果素子1Cの抵抗値RMRw,RPおよびMR比は前記と同様として、選択トランジスタ41,42のON抵抗RONを誤書込みし難い範囲で高くして、RON=RMRwとする。このようなメモリセル6Fを配列したメモリセル列60Fは、メモリセル6Fの数Nが120でΣRCELLk(1)MIN,ΣRCELLk(0)MAXの高低が逆転する。また、メモリセル列60Fの抵抗最小変化率は、N=16で約14%、N=32で約7%、N=64で2.4%である。
このように、本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第2、第5実施形態に係る磁気メモリ10Aと同様に、メモリセル列60FがΣRCELLk(1)MIN>ΣRCELLk(0)MAXとなるように設計されることにより、書込みと共通の配線を用いて各メモリセル6Fに記憶されたデータを読出しすることができる。このような磁気メモリ10Fは、例えば、主に磁気抵抗効果素子1Cの抵抗器MRwの抵抗値RMRwに応じて、誤書込みのないように選択トランジスタ41,42のON抵抗RONを設計し、これらの抵抗値、ならびに可変抵抗器MRrの抵抗値RPおよびMR比に応じて、読出しの可能なメモリセル列60Fに配列するメモリセル6Fの数Nを設定して得ることができる。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fの読出しにおいては、第5実施形態と同様に、メモリセル列60Eにおけるすべての非選択のメモリセル6Eの選択トランジスタ41,42を低抵抗で動作させるために、ゲート電圧生成回路80Fが行毎に変位させたゲート電圧Vgkを出力する。さらに、メモリセル6Fの選択、非選択における抵抗値RCELLrsl,RCELLnsが、書込みとは異なる比になる。そのため、ゲート電圧生成回路80Fは次のように構成される。
読出しにおいて、選択した行では、メモリセル6Fの選択トランジスタ41,42と共に抵抗切替トランジスタ79,78がOFF状態であるから、可変抵抗器8Aの抵抗値は分圧抵抗器81の抵抗値R
divである。一方、非選択の行では、メモリセル6Fの選択トランジスタ41,42と共に抵抗切替トランジスタ79,78がON状態であるから、可変抵抗器8Aの抵抗値は(1/ (1/R
div+1/R
dvON1+1/R
dvON2))である。したがって、下式(110)に表されるように、副分圧抵抗器82との和について互いの比が、メモリセル6Fの選択、非選択時の各抵抗値R
CELLrsl,R
CELLnsの比に略一致すればよく、それぞれのデータが‘1’または‘0’であると仮定して、さらに、前記式(107)、式(108)に表される書込みにおける比と併せて、分圧抵抗器81および抵抗切替トランジスタ79,78が設計される。ここでは、可変抵抗器8Aは、各メモリセル6Fのデータが‘0’のときの抵抗値R
CELLrsl(0),R
CELLns(0)の比に合わせる。
このように構成されたゲート電圧生成回路80Fにより、本実施形態に係る磁気メモリ10Fの読出しは、第5実施形態と同様に、選択トランジスタ41,42およびメモリセル列駆動トランジスタ43に、適切なゲート電圧Vgを印加することができる。すなわち、まず共通のゲート−ソース間電圧Vgs(Vgstypと称する)を設定し(式(22))、すべてのメモリセル6Fのデータが‘0’であると仮定して定電流源94の最小出力電圧VwMINを算出し、定電源97およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0を設定する(式(100)、式(101)、式(16))。そして、すべてのメモリセル6Fのデータが‘1’である場合に、線形領域外(飽和領域)にならないことを確認する(式(102)〜式(105))。さらに、ツェナーダイオード86のツェナー電圧Vzも同様に設計することができる(式(28))。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fの読出しは、第5実施形態に係る磁気メモリ10Eと同様に、選択したメモリセル6Fのデータが‘1’である場合に、非選択のメモリセル6Fのすべてまたは一部の選択トランジスタ41,42が線形領域外(飽和領域)で動作するように設定されてもよい。また、第1、第2実施形態と同様に、すべてのメモリセル6Fのデータが‘1’であると仮定して、選択トランジスタ41,42の共通のゲート−ソース間電圧VgstypおよびON抵抗RONによる定電流源94の最大出力電圧VrMAXに基づいて、定電源97およびゲート基電圧電源98の出力電圧VgH,Vg0を設定してもよい。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、選択トランジスタ41,42がメモリセル列60F全体で直列に接続されているため、ON抵抗の変化量の累積が第5実施形態に係る磁気メモリ10Eよりも大きく、すべてのメモリセル6Fのに適切なゲート電圧Vgを出力するのが困難な場合がある(式(105))。したがって、読出し用の電流Irを小さく設定したり、選択トランジスタ41,42の最大定格V(BR)gsを大きく設計したり、メモリセル列60Fに配列するメモリセル6Fの数Nを抑制することが好ましい。
図40および図41においては、第1、第2実施形態(図5、図13参照)と同様、電流Irがビット線BLTの側からメモリセル列60Fに供給されているが、電流Irの向きを逆にしてビット線BLBを定電流源94の正に接続してもよい。さらに、1〜N/2行目のメモリセル6Fを選択するときはビット線BLTを定電流源94の正に、(N/2+1)〜N行目のメモリセル6Fを選択するときはビット線BLBを定電流源94の正に、それぞれ電流Irの向きを切り替えて供給してもよい。第5実施形態にて説明したように、このように向きを切り替えて電流Irを供給することにより、選択したメモリセル6Fに対して電位の高い側に配列された非選択のメモリセル6Fの数を減少させ、これらのメモリセル6Fの選択トランジスタ41,42について、選択したメモリセル6Fのデータの違いによる電位差に伴うON抵抗の変化量の累積を低減させることができる。
また、選択したメモリセル6Fについて、第2選択トランジスタ42をON状態にしてもよい。すなわち、磁気メモリ10Fの読出しにおいて、選択、非選択にかかわらず、すべてのメモリセル6Fの選択トランジスタ42をON状態に、すなわちすべてのワード線選択トランジスタ72をON状態に固定していてもよい。
また、記憶装置90Fは、第1、第2実施形態(図1、図10参照)と同様に、列デコーダ92により磁気メモリ10Fから2以上の列を選択して、これらのメモリセル列60Fのそれぞれに電流Irを供給しながら、選択した1行の各メモリセル6Fを電圧比較器93により並行して読出しすることができる。
本実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第5実施形態に係る磁気メモリ10Eと同様、メモリセル6Fの磁気抵抗効果素子1Cが、非磁性金属からなる中間層21,22を備えて、スピン注入磁化反転により抵抗値が変化する構造であってもよい(図示せず)。このような磁気抵抗効果素子1Cを備える場合には、可変抵抗器MRrの抵抗値RPに応じて、磁化固定層11および中間層21を、磁化固定層12および中間層22よりも平面視サイズを小さく形成して、書込みにおける電流Iw1,Iwの電流密度を揃えてもよい。
〔空間光変調器〕
本発明の第6実施形態に係る磁気メモリ10Fは、第5実施形態に係る磁気メモリ10Eと同様に、磁気抵抗効果素子1Cの最上層が磁性細線3Aまたは磁化自由層3であり、さらにその上に配線等が設けられていないので、空間光変調器に好適である。特に磁気メモリ10Fは、多数のメモリセル6Fを直列に配列することができるので、書込みを高速に行うことができる。
以上のように、本発明の第6実施形態に係る磁気メモリによれば、書込みがいっそう高速化され、かつ消費電流を低減することができ、さらに読出しの消費電流を低減することができる。
以上、本発明に係る不揮発性メモリを実施するための各実施形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。