以下、本発明の一実施の形態に関して、詳細に説明する。尚、本出願において、「A〜B」とは、「A以上、B以下」であることを示している。
<式(1)で表される化合物>
本発明の式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」と記すことがある)の二つのアゾ基は、トランスのアゾ基であることが好ましい。
式(1)中のR1は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、または−N(R10)(R11)を表し、好ましくは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、または炭素数1〜20のアシルオキシ基である。
炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の、置換基を有していない直鎖状または分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
かかる炭素数1〜20のアルキル基を構成する一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の、一つまたは二つの炭素数1〜20のアルキル基で置換されているアミノ基)で置換されていてもよい。一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されているアルキル基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基等の炭素数1〜20のハロアルキル基;ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基等の炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基;アミノメチル基、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル基等の、置換基を有していてもよいアミノ基を有する炭素数1〜20のアルキル基;が挙げられる。
上記アルキル基を構成する炭素原子間には、−O−または−NR20−が挿入されていてもよく、R20は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、炭素数1〜20のアルキル基としては、上記と同様の基が挙げられる。炭素原子間に−O−または−NR20−が挿入されたアルキル基としては、メトキシメチル基、2−エトキシエチル基、2−(2−エトキシエトキシ)エチル基、2−[2−(エチルアミノ)エチルアミノ]エチル基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等の、置換基を有していない直鎖状または分枝鎖状のアルコキシ基が挙げられる。
かかる炭素数1〜20のアルコキシ基を構成する一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の、一つまたは二つの炭素数1〜20のアルキル基で置換されているアミノ基)で置換されていてもよい。一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されているアルコキシ基としては、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ノナフルオロブトキシ基等の炭素数1〜20のハロアルコキシ基;ヒドロキシメトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基等の炭素数1〜20のヒドロキシアルコキシ基;アミノメトキシ基、2−(N,N−ジメチルアミノ)エトキシ基等の、置換基を有していてもよいアミノ基を有する炭素数1〜20のアルコキシ基;が挙げられる。
上記アルコキシ基を構成する炭素原子間には、−O−または−NR20−が挿入されていてもよい。炭素原子間に−O−または−NR20−が挿入されたアルコキシ基としては、メトキシメトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ基、2−[2−(エチルアミノ)エチルアミノ]エトキシ基等が挙げられる。
炭素数1〜20のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、イソブチルカルボニル基、tert−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、イソペンチルカルボニル基、ネオペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、n−ノニルカルボニル基、n−デシルカルボニル基等の、置換基を有していないアシル基が挙げられる。
かかるアシル基を構成する一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の、一つまたは二つの炭素数1〜20のアルキル基で置換されているアミノ基)で置換されていてもよい。一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されているアシル基としては、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロエチルカルボニル基、ノナフルオロブチルカルボニル基等の炭素数1〜20のハロアシル基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基等の、置換基を有していないアルコキシカルボニル基が挙げられる。
かかるアルコキシカルボニル基を構成する一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の、一つまたは二つの炭素数1〜20のアルキル基で置換されているアミノ基)で置換されていてもよい。一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されているアルコキシカルボニル基としては、フルオロメトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、ノナフルオロブトキシカルボニル基等の炭素数2〜20のハロアルコキシカルボニル基が挙げられる。
炭素数1〜20のアシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、イソペンチルカルボニルオキシ基、ネオペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基、n−ノニルカルボニルオキシ基、n−デシルカルボニルオキシ基等の、置換基を有していないアシルオキシ基が挙げられる。
かかるアシルオキシ基を構成する一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の、一つまたは二つの炭素数1〜20のアルキル基で置換されているアミノ基)で置換されていてもよい。一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されているアシルオキシ基としては、フルオロアセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロエチルカルボニルオキシ基、ノナフルオロブチルカルボニルオキシ基等の炭素数1〜20のハロアシルオキシ基が挙げられる。
−N(R10)(R11)におけるR10は、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基または炭素数6〜20のアリールスルホニル基を表し、R11は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、R10とR11とは互いに結合して、それらが結合する窒素原子と共に、−N−CO−または−N−SO2−を含む環を形成してもよい。R10におけるアシル基、アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基を構成する一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基(例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の、一つまたは二つの炭素数1〜20のアルキル基で置換されているアミノ基)で置換されていてもよい。R11におけるアルキル基を構成する炭素原子間には、−O−または−NR20−が挿入されていてもよい。R10における炭素数1〜20のアシル基としては、上記のR1における炭素数1〜20のアシル基と同様のアシル基が挙げられ、当該アシル基を構成する一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されているアシル基としては、上記R1における基と同様の基が挙げられる。
炭素数1〜20のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基等の、置換基を有していないアルキルスルホニル基が挙げられる。かかるアルキルスルホニル基を構成する一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されている基としては、トリフルオロメチルスルホニル基、ペンタフルオロエチルスルホニル基、ヘプタフルオロ−n−プロピルスルホニル基等の炭素数1〜20のハロアルキルスルホニル基が挙げられる。
炭素数6〜20のアリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等が挙げられる。かかるアリールスルホニル基を構成する一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されている基としては、p−トリフルオロメチルベンゼンスルホニル基等が挙げられる。
R11における炭素数1〜20のアルキル基としては、上記のR1における炭素数1〜20のアルキル基と同様のアルキル基が挙げられ、当該アルキル基を構成する一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されているアルキル基としては、上記R1における基と同様の基が挙げられる。
−N(R10)(R11)の具体例としては、アシルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基、n−ブチルカルボニルアミノ基、イソブチルカルボニルアミノ基、tert−ブチルカルボニルアミノ基、n−ペンチルカルボニルアミノ基、イソペンチルカルボニルアミノ基、ネオペンチルカルボニルアミノ基、n−ヘキシルカルボニルアミノ基、n−ヘプチルカルボニルアミノ基、n−オクチルカルボニルアミノ基、n−ノニルカルボニルアミノ基、n−デシルカルボニルアミノ基、トリフルオロアシルアミノ基が挙げられる。
R10とR11とが互いに結合して、それらが結合する窒素原子と共に形成する−N−CO−または−N−SO2−を含む環としては、2−ピロリドン−1−イル基等が挙げられる。
R1は、好ましくはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、構成する炭素原子間に−O−が挿入された炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有していてもよい炭素数1〜10のアルコキシ基、構成する炭素原子間に−O−が挿入された炭素数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有していてもよい炭素数1〜10のアシル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有していてもよい炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有していてもよい炭素数1〜10のアシルオキシ基、または−N(R10)(R11)であり、R10は、好ましくはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有していてもよい炭素数1〜20のアシル基であり、R11は、好ましくは水素原子である。
R1は、より好ましくはフッ素原子を有していてもよい直鎖状の炭素数1〜10のアルキル基または−N(R10)(R11)であり、R10は、より好ましくはフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜10のアシル基であり、R11は、好ましくは水素原子である。
R1は、特に好ましくはフッ素原子を有していてもよい直鎖状の炭素数1〜10のアルキル基である。
式(1)中のR2〜R4は、水素原子以外の置換基であって、各々独立して、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子、またはシアノ基を表す。R2〜R4は、フェニレン基のどの位置に置換していてもよい。
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の、置換基を有していない直鎖状または分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
かかる炭素数1〜4のアルキル基を構成する一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)またはヒドロキシ基で置換されていてもよい。一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されているアルキル基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ノナフルオロブチル基等の炭素数1〜4のハロアルキル基;ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基;が挙げられる。
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等の、置換基を有していない直鎖状または分枝鎖状のアルコキシ基が挙げられる。
かかる炭素数1〜4のアルコキシ基を構成する一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)またはヒドロキシ基で置換されていてもよい。一つ以上の水素原子がハロゲン原子等で置換されているアルコキシ基としては、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、ノナフルオロブトキシ基等の炭素数1〜4のハロアルコキシ基;ヒドロキシメトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基等の炭素数1〜4のヒドロキシアルコキシ基が挙げられる。
式(1)中のn、p、qは、各々独立して0〜2の整数であり、より好ましくは0である。
式(1)中のR5は、Ar1、NHR5a、N(R5b)2およびN(R5a)(R5b)からなる群から選択される。
ここで、Ar1は、Nがフェニレン基に結合している含窒素飽和ヘテロ環基であって、当該含窒素飽和ヘテロ環基のγ位が酸素原子または硫黄原子である6員環を表す。
上記含窒素飽和ヘテロ環基としては、モルホリノ基、およびチオモルホリノ基等が挙げられる。
かかる含窒素飽和ヘテロ環基における環に結合する水素原子のうちの一つ〜六つは、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい。上記含窒素飽和ヘテロ環基としては、3,5−ジメチルモルホリノ基、3−エチルモルホリノ基、3,5−ジメチルチオモルホリノ基、および3−エチルチオモルホリノ基等が挙げられる。
ここで、R5aは、炭素数1〜10のアルキル基、またはアルキル基を構成する炭素原子間に、少なくとも一つの−O−が挿入された炭素数1〜10のアルキル基である。上記アルキル基の炭素数としては、1〜5が好ましく、2〜4がより好ましく、2〜3がさらに好ましい。
また、R5bは、少なくとも一つのヒドロキシ基にて置換された炭素数1〜10のアルキル基、または、アルキル基を構成する炭素原子間に、少なくとも一つの−O−が挿入された炭素数1〜10のアルキル基である。上記アルキル基の炭素数としては、1〜5が好ましく、2〜4がより好ましく、2〜3がさらに好ましい。
さらに、上記N(R5b)2において、R5bは、それぞれ独立であり、互いに同一または異なる基である。
従って、化合物(1)は、特に好ましくは本発明の式(1’)で表される化合物(以下、「化合物(1’)」と記すことがある)である。式(1’)中のR1は、上記と同一の意味を表し、R5は、以下に記載の基から選択される基である。
(Aは酸素原子または硫黄原子を表わす。mは0〜10の整数であり、同一の基中にmが二つある場合、この二つのmは同一または異なる値である。)
また、化合物(1)の好ましい例として、上述の式(10)で表される化合物(以下、「化合物(10)」と記すことがある)、上述の式(11)で表される化合物(以下、「化合物(11)」と記すことがある)、上述の式(12)で表される化合物(以下、「化合物(12)」と記すことがある)、上述の式(13)で表される化合物(以下、「化合物(13)」と記すことがある)が挙げられる。化合物(10)は、化合物(1)におけるR1が、R40、かつ、R5が、Ar1の化合物である。化合物(11)は、化合物(1)におけるR1が、R41、かつ、R5が、NHR5aの化合物である。化合物(12)は、化合物(1)におけるR1が、R42、かつ、R5が、N(R5b)2の化合物である。化合物(13)は、化合物(1)におけるR5が、NR5aR5bの化合物である。
化合物(10)において、R2〜R4、n、p、qおよびAr1は、上述の化合物(1)におけるものと同様のものである。一方、R40は、上述のR1のうち、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、または−N(R10)(R11)にて表されるものであり、ここで、上述のアルキル基がハロゲンに置換されていないこと、および、R10、R11は、R11が、アルキル基である場合、上記アルキル基を構成する一つ以上の水素原子が、ハロゲン原子で置換されていないこと以外は、上述の化合物(1)におけるアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、R10、R11と同様のものである。
化合物(11)において、R2〜R4、n、p、qおよびR5aは、上述の化合物(1)におけるものと同様のものである。一方、R41は、上述のR1のうち、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、または−N(R10)(R11)にて表されるものであり、ここで、上述のR41で表されるアルキル基、および上述のアルコキシ基を構成する一つ以上の水素原子が、少なくとも一つのハロゲン原子、ヒドロキシ基、または置換基を有していてもよいアミノ基で置換されていること以外は、上述の化合物(1)におけるアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、R10、R11と同様のものである。
化合物(12)において、R2〜R4、n、p、qおよびR5bは、上述の化合物(1)におけるものと同様のものである。一方、R42は、上述のR1のうち、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアシルオキシ基、または−N(R10)(R11)にて表されるものであり、ここで、上述のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、R10およびR11は、上述の化合物(1)におけるR10、R11と同様のものである。
化合物(13)において、R1〜R4、n、p、q、R5aおよびR5bは、上述の化合物(1)におけるものと同様のものである。
化合物(1)または化合物(1’)の具体例としては、下記式(1−1)〜式(1−71)で表される化合物が挙げられる。
中でも、式(1−1)、式(1−2)、式(1−5)、式(1−16)、式(1−17)、および式(1−20)、式(1−31)および式(1−46)で表される化合物が好ましく、式(1−1)、式(1−16)および式(1−46)で表される化合物がより好ましい。
化合物(1)は、例えば、式(2a):
(式中、R1、R2、R3、n、pは、上記と同一の意味を表す。)
で表される化合物(以下、「化合物(2a)」と記すことがある)と、式(2b):
(式中、R4、qは、上記と同一の意味を表す。)
で表される化合物(以下、「化合物(2b)」と記すことがある)とを反応させて、式(3a):
(式中、R1、R2〜R4、n、p、qは、上記と同一の意味を表す。)
で表される化合物(以下、「化合物(3a)」と記すことがある)を得た後、化合物(3a)から式(3b):
(式中、R1、R2〜R4、n、p、qは、上記と同一の意味を表す。)
で表される化合物(以下、「化合物(3b)」と記すことがある)を得、さらに、例えば、化合物(3b)のアミノ基を、置換基を有していてもよいアルキレンハロヒドリン(例えば、2−ヨードエタノール)と反応させて、化合物(3b)のアミノ基に置換している一方の水素原子を、置換基を有していてもよいヒドロキシアルキル基とした後、ホルムアルデヒドと環化反応させてAr1である含窒素飽和ヘテロ環基を形成する方法、化合物(3b)を、アルキレンハロヒドリン(例えば、2−ヨードエタノール)と反応させて、化合物(3b)のアミノ基に置換している一方の水素原子をアミノヒドロキシアルキル基とし、もう一方の水素原子を、Sandmeyer反応によってアルキル化する方法、または化合物(3b)を、アルキレンハロヒドリン(例えば、2−ヨードエタノール)と反応させて、化合物(3b)のアミノ基に置換している水素原子を二つともアミノヒドロキシアルキル基とする方法などによって得ることができる。また、得られる化合物(1)の種類によっては、化合物(2a)と、ベンゼン環における一つの水素原子に化合物(1)におけるR5基が置換した化合物とを、直接的に反応させる方法によっても、化合物(1)を得ることができる。かかる方法は、例えば、Chem Bio Chem, 2011, 12, 1712、Journalof Chemical society, Perkin Trans. 1998, 685等に記載の方法に準じて行うことがで
きる。
化合物(1)は、反応終了後、再結晶、再沈殿、抽出、各種クロマトグラフィー等の通常の取り出し手段によって取り出すことができる。
化合物(1)は、波長350nm〜510nmの範囲、好ましくは波長400nm〜500nmの範囲、より好ましくは波長410nm〜490nmの範囲、さらに好ましくは波長420nm〜480nmの範囲に極大吸収を有する、二色性色素として機能する化合物であり、特に、重合性液晶化合物と共に配向することによって得られる偏光膜はより高い二色性を示す。また、化合物(1)、好ましくは化合物(1’)は、耐光性を備えており、従って、本発明の、化合物を含む偏光膜は、耐光性を備える。
続いて、重合性液晶化合物と化合物(1)とを含む本発明の組成物に関して説明する。本発明の組成物は、二種類以上の化合物(1)を含んでいてもよい。
<重合性液晶化合物>
重合性液晶化合物とは、分子内に重合性基を有し、配向することによって液晶相を示すことができる化合物であり、好ましくは単独で配向することによって液晶相を示すことができる化合物である。
重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、重合性基とは、後述する重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
重合性液晶化合物は、サーモトロピック液晶型であってもよいし、リオトロピック液晶型であってもよい。
本発明における重合性液晶化合物は、スメクチック液晶相を示す、スメクチック液晶性化合物であり、好ましくは高次スメクチック液晶相を示す化合物である。スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物を含む本発明の組成物は、偏光性能により優れる偏光膜を与えることができる。本発明の組成物は、二種類以上の重合性液晶化合物を含んでいてもよい。
化合物(1)は、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物から形成された、密な分子鎖間に分散した状態であっても、高い二色性を示すことができ、従って、化合物(1)を含む組成物は、二色比の高い偏光膜を与えることができる。
高次スメクチック液晶相としては、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相、およびスメクチックL相が挙げられる。中でも、スメクチックB相、スメクチックF相、およびスメクチックI相が好ましく、スメクチックB相がより好ましい。重合性液晶化合物が示すスメクチック液晶相がこれら高次スメクチック相であると、配向秩序度のより高い偏光膜が得られる。配向秩序度の高い高次スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物を含む組成物から得られる偏光膜は、X線回折測定においてヘキサチック相またはクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークを示す。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークである。本発明の組成物から得られる偏光膜が有する周期間隔(秩序周期)は、好ましくは0.30〜0.50nmである。
重合性液晶化合物が示す液晶相の種類は、例えば、以下に示す方法で確認することができる。即ち、適当な基材を準備し、当該基材に重合性液晶化合物と溶剤とを含む溶液を塗布して塗布膜を形成した後、加熱処理または減圧処理することで当該塗布膜に含有される溶剤を除去する。続いて、基材上に形成された塗布膜を等方相温度まで加熱した後、徐々に冷却することで発現する液晶相を、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察、X線回折測定または示差走査熱量測定により検査する。この検査において、例えば、第一温度まで冷却することでネマチック液晶相を示し、さらに第二温度まで除々に冷却することで、スメクチック液晶相を示すことを確認することができる。
重合性液晶組成物は、好ましくは式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」と記すことがある)である。
U1−V1−W1−X1−Y1−X2−Y2−X3−W2−V2−U2 (4)
(式中、X1、X2およびX3は、各々独立して、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、または置換基を有していてもよいシクロヘキサン−1,4−ジイル基を表す。但し、X1、X2およびX3のうちの少なくとも一つは、置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基である。シクロへキサン−1,4−ジイル基を構成する−CH2−は、−O−、−S−または−NR−に置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基を表す。
Y1およびY2は、各々独立して、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−COO−、−OCOO−、−N=N−、−CRa=CRb−、−C≡C−、または−CRa=N−を表す。RaおよびRbは、各々独立して、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
U1は、水素原子または重合性基を表す。
U2は、重合性基を表す。
W1およびW2は、各々独立して、単結合、−O−、−S−、−COO−、または−OCOO−を表す。
V1およびV2は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルカンジイル基を表し、当該アルカンジイル基を構成する−CH2−は、−O−、−S−または−NH−に置換されていてもよい。)
化合物(4)において、X1、X2およびX3のうちの少なくとも一つは、好ましくは置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基である。
置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基は、好ましくは置換基を有していない1,4−フェニレン基である。置換基を有していてもよいシクロへキサン−1,4−ジイル基は、好ましくは置換基を有していてもよいトランス−シクロへキサン−1,4−ジイル基である。置換基を有していてもよいトランス−シクロへキサン−1,4−ジイル基は、好ましくは置換基を有していないトランス−シクロへキサン−1,4−ジイル基である。
置換基を有していてもよい1,4−フェニレン基、または置換基を有していてもよいシクロへキサン−1,4−ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、およびハロゲン原子が挙げられる。
Y1は、好ましくは単結合、−CH2CH2−、または−COO−であり、Y2は、好ましくは−CH2CH2−または−CH2O−である。
U1は、水素原子または重合性基であり、好ましくは重合性基である。U2は、重合性基である。U1およびU2は、ともに重合性基であることが好ましく、ともに光重合性基であることがより好ましい。光重合性基を有する重合性液晶化合物は、より低温条件下で重合できる点で有利である。
U1およびU2で表される重合性基は、互いに異なっていてもよいが、好ましくは同一である。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基が挙げられる。中でも、ビニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
V1およびV2で表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、およびイコサン−1,20−ジイル基が挙げられる。V1およびV2は、好ましくは炭素数2〜12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6〜12のアルカンジイル基である。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子が挙げられる。当該アルカンジイル基は、好ましくは置換基を有していないアルカンジイル基であり、より好ましくは置換基を有しておらず、かつ直鎖状のアルカンジイル基である。
W1およびW2は、各々独立して、単結合または−O−であることが好ましい。
化合物(4)の具体例としては、下記式(4−1)〜式(4−43)で表される化合物が挙げられる。化合物(4)がシクロヘキサン−1,4−ジイル基を有する場合には、そのシクロヘキサン−1,4−ジイル基は、トランス型であることが好ましい。
中でも、式(4−5)、式(4−6)、式(4−7)、式(4−8)、式(4−9)、式(4−10)、式(4−11)、式(4−12)、式(4−13)、式(4−14)、式(4−15)、式(4−22)、式(4−24)、式(4−25)、式(4−26)、式(4−27)、式(4−28)、および式(4−29)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種類の化合物(4)が好ましい。
本発明の組成物は、二種類以上の化合物(4)を含んでいてもよい。二種類以上の重合性液晶化合物を組み合わせる場合には、そのうちの少なくとも一種類が化合物(4)であることが好ましく、そのうちの二種類以上が化合物(4)であることがより好ましい。二種類以上の重合性液晶化合物を組み合わせることにより、液晶−結晶相転移温度以下の温度であっても液晶相を一時的に保持することができる場合がある。二種類の重合性液晶化合物を組み合わせる場合の混合比としては、通常、1:99〜50:50であり、好ましくは5:95〜50:50であり、より好ましくは10:90〜50:50である。
化合物(4)は、例えば、Lub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328 (1996)、特許第4719156号等の公知文献に記載の方法により製造することができる。
本発明の組成物における重合性液晶化合物の含有割合は、重合性液晶化合物の配向性を高くするという観点から、本発明の組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは70〜99.5質量部であり、より好ましくは80〜99質量部であり、さらに好ましくは80〜94質量部であり、特に好ましくは80〜90質量部である。ここで、固形分とは、本発明の組成物中の、溶剤以外の成分の合計量をいう。
本発明の組成物は、好ましくは重合開始剤および溶剤を含み、さらに、光増感剤、重合禁止剤およびレベリング剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物における化合物(1)の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常、50質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上、10質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上、5質量部以下である。重合性液晶化合物100質量部に対する化合物(1)の含有量が50質量部以下であると、重合性液晶化合物および化合物(1)の配向の乱れが少ない偏光膜を得ることができる傾向がある。
<溶剤>
溶剤は、重合性液晶化合物および化合物(1)を完全に溶解し得る溶剤であることが好ましい。また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素含有溶剤;が挙げられる。これら溶剤は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物が溶剤を含む場合において、溶剤の含有割合は、本発明の組成物の総量に対して50〜98質量%が好ましい。換言すると、本発明の組成物における固形分は、2〜50質量%が好ましい。当該固形分が50質量%以下であると、本発明の組成物の粘度が低くなり、本発明の組成物から得られる偏光膜の厚みが略均一になり、当該偏光膜にムラが生じ難くなる傾向がある。かかる固形分は、製造しようとする偏光膜の厚さを考慮して定めることができる。
<重合開始剤>
重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、およびスルホニウム塩が挙げられる。
ベンゾイン化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルが挙げられる。
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および2,4,6−トリメチルベンゾフェノンが挙げられる。
アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニル−2,2−ジメトキシエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オンのオリゴマーが挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、およびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
トリアジン化合物としては、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(フラン−2−イル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジン、および2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
ヨードニウム塩およびスルホニウム塩としては、例えば、下記式で表される塩が挙げられる。
重合開始剤は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤として、市販品を用いることもできる。市販の重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907、184、651、819、250、および369(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);セイクオール(登録商標)BZ、Z、およびBEE(精工化学株式会社製);カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100、およびUVI−6992(ダウ・ケミカル株式会社製);アデカオプトマーSP−152、およびSP−170(株式会社ADEKA製);TAZ−A、およびTAZ−PP(日本シイベルヘグナー株式会社製);並びに、TAZ−104(株式会社三和ケミカル製);が挙げられる。
本発明の組成物が重合開始剤を含む場合において、本発明の組成物における重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の配向を乱し難いという観点から、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常、0.1〜30質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜8質量部である。
<光増感剤>
本発明の組成物が光重合開始剤を含有する場合において、本発明の組成物は、好ましくは光増感剤を含有する。本発明の組成物が光重合開始剤および光増感剤を含有することにより、重合性液晶化合物の重合反応がより促進される傾向がある。当該光増感剤としては、キサントンおよびチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン);アントラセンおよびアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン)等のアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン;が挙げられる。
本発明の組成物が光増感剤を含む場合において、本発明の組成物における光増感剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部であり、さらに好ましくは0.5〜8質量部である。
<重合禁止剤>
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えばブチルカテコール)、ピロガロール、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル捕捉剤;チオフェノール類;β−ナフチルアミン類およびβ−ナフトール類;が挙げられる。
本発明の組成物が重合禁止剤を含むことにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを制御することができる。
本発明の組成物が重合禁止剤を含む場合において、本発明の組成物における重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部であり、さらに好ましくは0.5〜8質量部である。
<レベリング剤>
レベリング剤とは、本発明の組成物の流動性を調整し、本発明の組成物を塗布して得られる塗布膜をより平坦にする機能を有する剤であり、例えば、界面活性剤が挙げられる。好ましいレベリング剤は、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤、およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤である。
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、BYK−350、BYK−352、BYK−353、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−380、BYK−381、およびBYK−392(BYK−Chemie GmbH製)が挙げられる。
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、メガファック(登録商標)R−08、R−30、R−90、F−410、F−411、F−443、F−445、F−470、F−471、F−477、F−479、F−482、F−483(DIC株式会社製);サーフロン(登録商標)S−381、S−382、S−383、S−393、SC−101、SC−105、KH−40、およびSA−100(AGCセイミケミカル株式会社製);E1830、およびE5844(株式会社ダイキンファインケミカル研究所製);エフトップEF301、EF303、EF351、およびEF352(三菱マテリアル電子化成株式会社製);が挙げられる。
本発明の組成物がレベリング剤を含む場合において、レベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上、3質量部以下である。
レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ、得られる偏光膜がより平滑となる傾向がある。重合性液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる偏光膜にムラが生じ易い傾向がある。本発明の組成物は、二種類以上のレベリング剤を含んでいてもよい。
<偏光膜の製造方法>
化合物(1)を含む本発明の偏光膜は、例えば、本発明の組成物を塗布することにより得ることができ、好ましくは下記工程(A)〜(C)を含む製造方法によって製造することができる。
工程(A):基材、または配向膜が形成された基材の表面に、本発明の組成物を塗布する工程、
工程(B):形成された塗布膜に含まれる重合性液晶化合物および化合物(1)を配向させる工程、
工程(C):配向した重合性液晶化合物に活性エネルギー線を照射することにより重合性液晶化合物を重合する工程。
<工程(A)>
<基材>
基材は、ガラス基材でも樹脂基材でもよいが、好ましくは樹脂基材である。また、樹脂からなるフィルム基材を用いることで、薄い偏光膜を得ることができる。
樹脂基材は、好ましくは透明樹脂基材である。透明樹脂基材とは、光、特に可視光を透過し得る透光性を有する基材を意味し、透光性とは、波長380nm〜780nmの範囲にわたる光線に対しての視感度補正透過率が80%以上となる特性をいう。
基材は、好ましくは1/4波長板機能を有する位相差フィルム(以下、「1/4波長板」と記すことがある)である。基材に1/4波長板を用いることによって、円偏光板を得ることができる。
このとき、偏光膜の透過軸と、1/4波長板の遅相軸(光軸)とが実質的に45°となるようにして積層することが好ましい。「実質的に45°」とは、通常、45±5°の範囲である。また、偏光膜と1/4波長板の光軸を一致、または直交させることで光学補償フィルム(偏光フィルム)として機能する円偏光板を得ることができる。
1/4波長板は、通常、式(40)で表される光学特性を有し、好ましくは式(41)で表される光学特性を有する。
100nm<Re(550)<160nm (40)
130nm<Re(550)<150nm (41)
Re(550)は、波長550nmの光に対する面内位相差値を表す。
さらに、1/4波長板は、好ましくは逆波長分散特性を有する。逆波長分散特性とは、短波長での面内位相差値の方が長波長での面内位相差値よりも大きいことであり、好ましくは式(50)および式(51)で表される光学特性を満たす。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (50)
1.00≦Re(630)/Re(550) (51)
Re(λ)は、波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。式(50)および式(51)で表される光学特性を有する1/4波長板を備えた円偏光板は、可視光域における各波長の光に対して、一様な偏光変換の特性が得られるため、反射防止特性に優れる傾向がある。
基材は、1/2波長板機能を有する位相差フィルムであってもよい。
基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、およびセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンオキシド;等が挙げられる。好ましくはセルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリメタクリル酸エステルである。
セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部が、エステル化された化合物であり、市販品として入手することができる。また、セルロースエステルを含む基材も市販品として入手することができる。市販のセルロースエステルを含む基材としては、フジタック(登録商標)フィルム(富士フィルム株式会社製);KC8UX2M、KC8UY、およびKC4UY(コニカミノルタオプト株式会社製)等が挙げられる。
環状オレフィン系樹脂とは、ノルボルネンまたは多環ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィンの重合体、若しくはそれらの共重合体を含む樹脂である。当該環状オレフィン系樹脂は、開環構造を含んでいてもよく、また、開環構造を含む環状オレフィン系樹脂を水素添加した樹脂であってもよい。また、当該環状オレフィン系樹脂は、透明性を著しく損なわず、著しく吸湿性を増大させない範囲で、鎖状オレフィンおよびビニル化芳香族化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。また、当該環状オレフィン系樹脂は、その分子内に極性基が導入されていてもよい。
鎖状オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレン等が挙げられ、ビニル化芳香族化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、およびアルキル基を有していてもよいスチレン等が挙げられる。
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンまたはビニル化芳香族化合物との共重合体である場合において、環状オレフィンに由来する構造単位の含有量は、共重合体の全構造単位に対して、通常、50モル%以下であり、好ましくは15〜50モル%である。
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル化芳香族化合物との三元共重合体である場合において、鎖状オレフィンに由来する構造単位の含有量は、共重合体の全構造単位に対して、通常、5〜80モル%であり、ビニル化芳香族化合物に由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常、5〜80モル%である。このような三元共重合体は、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
環状オレフィン系樹脂は、市販品として入手することができる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、Topas(登録商標)(Ticona社(独)製);アートン(登録商標)(JSR株式会社製);ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン株式会社製);およびアペル(登録商標)(三井化学株式会社製)等が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して、基材とすることができる。市販の環状オレフィン系樹脂を含む基材としては、エスシーナ(登録商標)、SCA40(登録商標)(積水化学工業株式会社製);および、ゼオノアフィルム(登録商標)(オプテス株式会社製)等が挙げられる。
基材には、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、例えば、真空から大気圧の雰囲気下で、コロナまたはプラズマで基材の表面を処理する方法、基材表面をレーザー処理する方法、基材表面をオゾン処理する方法、基材表面をケン化処理する方法、基材表面を火炎処理する方法、基材表面にカップリング剤を塗布する方法、基材表面をプライマー処理する方法、および、反応性モノマーや反応性を有するポリマーを基材表面に付着させた後に、放射線、プラズマまたは紫外線を照射して反応させるグラフト重合法等が挙げられる。中でも、真空から大気圧の雰囲気下で、基材表面をコロナまたはプラズマ処理する方法が好ましい。
コロナまたはプラズマで基材の表面処理を行う方法としては、大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、コロナまたはプラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法;対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法;および、低圧条件下で、グロー放電プラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法;が挙げられる。
中でも、大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、コロナまたはプラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法;または、対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法;が好ましい。かかるコロナまたはプラズマによる表面処理は、通常、市販の表面処理装置により行われる。
基材は、本発明の組成物を塗布する面とは反対の面に保護フィルムを有していてもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびポリオレフィン等からなるフィルム、並びに、当該フィルムにさらに粘着層を有するフィルム等が挙げられる。中でも、乾燥時における熱変形が小さいため、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが好ましい。保護フィルムを、本組成物を塗布する面とは反対の面に有することで、基材搬送時のフィルムのゆれや塗布面のわずかな振動を抑えることができ、塗膜の均一性を向上させることができる。
基材の厚さは、実用的な取り扱いができる程度の質量である点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。基材の厚さは、通常、5〜300μmであり、好ましくは20〜200μmである。
基材の長手方向の長さは、通常、10〜3000mであり、好ましくは100〜2000mである。基材の短手方向の長さは、通常、0.1〜5mであり、好ましくは0.2〜2mである。
<配向膜>
本発明における配向膜とは、重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる、配向規制力を有する膜である。
配向膜としては、本発明の組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有する膜が好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を形成し配向させるグルブ配向膜等が挙げられる。
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。二種類以上の配向性ポリマーを組み合わせて用いてもよい。
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」と記すことがある)を基材に塗布し、溶剤を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで基材の表面に形成される。
上記溶剤としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;が挙げられる。これら溶剤は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1〜20%が好ましく、0.1から10%程度がさらに好ましい。
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標)(日産化学工業株式会社製)、オプトマー(登録商標)(JSR株式会社製)等が挙げられる。
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法等の塗布法、フレキソ法等の印刷法等の公知の方法が挙げられる。本発明の偏光膜を、後述するRoll to Roll形式の連続的製造方法により製造する場合には、当該塗布方法には、通常、グラビアコーティング法、ダイコーティング法またはフレキソ法等の印刷法が採用される。
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じて配向膜にラビングを行う(ラビング法)。ラビングする方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御することができる。
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」と記すことがある)を基材に塗布し、光(好ましくは偏光UV)を照射することで基材の表面に形成される。光配向膜は、照射する光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素−炭素二重結合(C=C結合)、炭素−窒素二重結合(C=N結合)、窒素−窒素二重結合(N=N結合)、および炭素−酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基、およびシンナモイル基が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、およびアゾキシベンゼン構造を有する基が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基、およびマレイミド基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られ易いという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するポリマーが特に好ましい。
光配向膜形成用組成物に含まれる溶剤としては、上述の配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤と同様の溶剤が挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚さによって適宜調節できるが、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3〜10質量%がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミド等の高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては、例えば、配向性ポリマー組成物から溶剤を除去する方法と同じ方法が挙げられる。
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去した組成物に直接、偏光UVを照射する形式でもよく、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が光エネルギーを吸収し得る波長領域であればよい。具体的には、波長250〜400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光の照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レーザー等が挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。上記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラー等の偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
尚、ラビングまたは偏光の照射を行うときに、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
グルブ配向膜は、膜表面の凹凸パターンまたは複数の溝によって液晶配向が得られる膜である。H.V.ケネルらによって、複数の等間隔に並んだ直線状のグルブ(溝)を有する基材に液晶分子を置いた場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向するという事実が報告されている(Physical Review A24(5)、2713ページ、1981年)。
グルブ配向膜を基材の表面に形成する具体的な方法としては、感光性ポリイミド表面に周期的なパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って不要なポリイミド膜を除去して凹凸パターンを形成する方法;表面に溝を有する板状の原盤にUV硬化樹脂層を形成し、樹脂層を基材フィルムへ移してから硬化する方法;UV硬化樹脂層を形成した基材フィルムを搬送し、複数の溝を有するロール状の原盤をUV硬化樹脂層表面に押し当てて凹凸を形成後、硬化する方法;等が挙げられ、例えば、特開平6−34976号公報や特開2011−242743号公報に記載の方法等を用いることができる。
上記方法の中でも、複数の溝を有するロール状の原盤をUV硬化樹脂層表面に押し当てて凹凸を形成後、硬化する方法が好ましい。ロール状原盤としては、耐久性の観点からステンレス(SUS)鋼を用いることができる。
UV硬化樹脂としては、単官能アクリレートの重合体、多官能アクリレートの重合体またはこれらの混合物の重合体を用いることができる。
単官能アクリレートとは、アクリロイルオキシ基(CH2=CH−COO−)およびメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)−COO−)からなる群より選ばれる基(以下、「(メタ)アクリロイルオキシ基」と記すことがある)を分子内に一つ有する化合物である。
(メタ)アクリロイルオキシ基を一つ有する単官能アクリレートとしては、炭素数4から16のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2から14のβカルボキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2から14のアルキル化フェニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびイソボニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能アクリレートとは、通常、(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に二つ〜六つ有する化合物である。
(メタ)アクリロイルオキシ基を二つ有する2官能アクリレートとしては、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイロキシエチル)エーテル、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、および3−メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリロイルオキシ基を三つ〜六つ有する多官能アクリレートとしては、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;
カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート;
カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物、およびカプロラクトン変性トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートと酸無水物との反応物;
等が挙げられる。尚、ここに示した多官能アクリレートの具体例において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。また、カプロラクトン変性とは、(メタ)アクリレート化合物のアルコール由来部位と(メタ)アクリロイルオキシ基との間に、カプロラクトンの開環体、または、開環重合体が導入されていることを意味する。
かかる多官能アクリレートには市販品を用いることもできる。かかる市販品としては、A−DOD−N、A−HD−N、A−NOD−N、APG−100、APG−200、APG−400、A−GLY−9E、A−GLY−20E、A−TMM−3、A−TMPT、AD−TMP、ATM−35E、A−TMMT、A−9550、A−DPH、HD−N、NOD−N、NPG、TMPT(新中村化学工業株式会社製);“ARONIX M−220”、同“M−325”、同“M−240”、同“M−270”、同“M−309”、同“M−310”、同“M−321”、同“M−350”、同“M−360”、同“M−305”、同“M−306”、同“M−450”、同“M−451”、同“M−408”、同“M−400”、同“M−402”、同“M−403”、同“M−404”、同“M−405”、同“M−406”(東亞合成株式会社製);“EBECRYL11”、同“145”、同“150”、同“40”、同“140”、同“180”、DPGDA、HDDA、TPGDA、HPNDA、PETIA、PETRA、TMPTA、TMPEOTA、DPHA、EBECRYLシリーズ(ダイセル・サイテック株式会社製);等が挙げられる。
グルブ配向膜の凹凸としては、凸部の幅は0.05〜5μmであることが好ましく、凹部の幅は0.1〜5μmであることが好ましく、凹凸の段差の深さは2μm以下であることが好ましく、0.01〜1μmであることがより好ましい。この範囲であれば、配向乱れの小さな液晶配向を得ることができる。
配向膜の厚さは、通常、10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmであり、より好ましくは10nm〜500nmである。
本発明の組成物を塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法として例示した方法と同じ方法が挙げられる。
<工程(B)>
本発明の組成物が溶剤を含む場合には、通常、形成された塗布膜から溶剤を除去する。溶剤の除去方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
形成された塗布膜に含まれる重合性液晶化合物は、通常、溶液状態に転移する温度以上に加熱し、次いで液晶配向する温度まで冷却することによって配向して液晶相を形成する。
形成された塗布膜に含まれる重合性液晶化合物が配向する温度は、予め、当該重合性液晶化合物を含む組成物を用いたテクスチャー観察等により求めればよい。また、溶剤の除去と液晶配向とを同時に行ってもよい。このときの温度としては、除去する溶媒や重合性液晶化合物の種類にもよるが、50〜200℃の範囲が好ましく、基材が樹脂基材の場合には、80〜130℃の範囲がより好ましい。
1/4波長板である基材を用いて、本発明の偏光膜と当該1/4波長板とを有する円偏光板を得る場合には、重合性液晶化合物の配向方向は、得られる偏光膜の透過軸と、当該基材の遅相軸(光軸)とが実質的に45°となるようにすればよい。
<工程(C)>
配向した重合性液晶化合物に活性エネルギー線を照射することにより、重合性液晶化合物を重合する。
配向した重合性液晶化合物が重合することによって、配向した状態で重合した重合性液晶化合物と、当該重合性液晶化合物と共に配向した化合物(1)とを含む偏光膜が得られる。
スメクチック液晶相を保持したまま重合した重合性液晶化合物を含む偏光膜は、従来のホストゲスト型偏光膜、即ち、ネマチック液晶相を保持したままで重合性液晶化合物等を重合して得られる偏光膜と比較して偏光性能が高く、また、二色性色素またはリオトロピック液晶型の液晶化合物のみを塗布した偏光膜と比較して、偏光性能および強度に優れる。
活性エネルギー線の光源としては、紫外線、電子線、X線等を発生する光源であればよい。好ましくは低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等の、波長400nm以下に発光分布を有する光源である。
活性エネルギー線の照射エネルギーは、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が10〜5000mJ/cm2となるように設定することが好ましく、100〜2000mJ/cm2となるように設定することがより好ましい。照射エネルギーが10mJ/cm2よりも低いと重合性液晶化合物の硬化が不十分となる傾向がある。
かくして形成された本発明の偏光膜の厚さは、0.5μm以上、10μm以下の範囲が好ましく、1μm以上、5μm以下の範囲がさらに好ましい。本発明の偏光膜の厚さは、干渉膜厚計やレーザー顕微鏡あるいは触針式膜厚計の測定で求めることができる。
本発明の偏光膜は、X線回折測定においてブラッグピークが得られる偏光膜であることが特に好ましい。このようなブラッグピークが得られる本発明の偏光膜としては、例えば、ヘキサチック相またはクリスタル相に由来する回折ピークを示す偏光膜が挙げられる。
本発明の偏光膜の極大吸収(λmax1)は、好ましくは350〜550nmの範囲に存在し、より好ましくは410〜540nmの範囲に存在し、さらに好ましくは430〜530nmの範囲に存在する。また、本発明の偏光膜に含まれる化合物(1)を適用な溶媒に溶解して測定した極大吸収(λmax2)に比して、λmax1は長波長シフトしていることが好ましい。かかる長波長シフトは、重合した重合性液晶化合物によって形成された分子鎖間に化合物(1)が分散したときに発現するシフトであり、化合物(1)が当該分子鎖に強く相互作用していることを示している。長波長シフトとは、吸収極大の差分(λmax1−λmax2)が正の値となることを意味し、その差は、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。
本発明の偏光膜が示す二色比は、30以上であり、好ましくは40以上であり、より好ましくは50以上である。
使用した基材が1/4波長板でない場合は、得られた本発明の偏光膜と、1/4波長板とを積層することで円偏光板を得ることができる。このとき、本発明の偏光膜の透過軸と、1/4波長板の遅相軸(光軸)とが実質的に45°となるようにして積層することが好ましい。また、本発明の偏光膜の透過軸と、1/4波長板等の位相差フィルムの光軸とを一致、または直交させることで光学補償フィルムとして機能する円偏光板を得ることもできる。
本発明の偏光膜と1/4波長板との積層は、本発明の偏光膜が形成された基材、または配向膜が形成された基材と共に行ってもよいし、基材、または基材および配向膜を取り除いて行ってもよい。基材、または配向膜が形成された基材の表面に形成された本発明の偏光膜と、1/4波長板との積層は、例えば、本発明の偏光膜が形成された面と、1/4波長板とを接着剤を用いて貼合した後、当該基材、または配向膜が形成された基材を取り除くことで行うことができる。この場合において、接着剤は、本発明の偏光膜に塗布されてもよいし、1/4波長板に塗布されてもよい。
<本発明の偏光膜の連続的な製造方法>
本発明の偏光膜は、好ましくはRoll to Roll形式により連続的に製造される。図1を参照しながら、Roll to Roll形式により、本発明の偏光膜を連続的に製造する方法の一例の要部を説明する。
基材が第一の巻芯210Aに巻き取られている第一ロール210は、例えば、市場から容易に入手することができる。このようなロールの形態で市場から入手できる基材としては、既に例示した基材の中でも、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、またはポリメタクリル酸エステルからなるフィルム等が挙げられる。
続いて、上記第一ロール210から基材Pを巻き出す。基材Pを巻き出す方法は、当該第一ロール210の巻芯210Aに適当な回転手段を設置し、当該回転手段により第一ロール210を回転させることにより行われる。また、第一ロール210から基材Pを搬送する方向に、適当な補助ロール300を少なくとも一つ設置し、当該補助ロール300の回転手段で基材Pを巻き出す形式でもよい。さらに、第一の巻芯210Aおよび補助ロール300の両方に回転手段を設置することで、基材Pに適度な張力を付与しながら、基材Pを巻き出す形式でもよい。
上記第一ロール210から巻き出された基材Pは、塗布装置211Aを通過するときに、その表面上に当該塗布装置211Aによって光配向膜形成用組成物が塗布される。このように連続的に光配向膜形成用組成物を塗布するための塗布装置211Aの塗布方法としては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法および、フレキソ法が好ましい。
塗布装置211Aを通過した基材Pは乾燥炉212Aへと搬送され、乾燥炉212Aによって光配向膜形成用組成物が乾燥されることにより、基材表面に第一の塗布膜が連続的に形成される。乾燥炉212Aとしては、例えば、通風乾燥法と加熱乾燥法とを組み合わせた熱風式乾燥炉が用いられる。乾燥炉212Aの設定温度は、上記光配向膜形成用組成物に含まれる溶剤の種類等に応じて定められる。乾燥炉212Aは、互いに異なる設定温度の、複数のゾーンからなる構成であってもよいし、互いに異なる設定温度の、複数の乾燥炉を直列に設置した構成であってもよい。
そして、得られた第一の塗布膜に、偏光UV照射装置213Aによって偏光UVを照射することにより、光配向膜が得られる。
続いて、光配向膜が形成された基材Pは、塗布装置211Bを通過する。塗布装置211Bによって溶剤を含む本発明の組成物が光配向膜上に塗布された後、乾燥炉212Bを基材Pが通過することにより、本発明の組成物に含まれる重合性液晶化合物が配向した第二の塗布膜が得られる。乾燥炉212Bは、光配向膜上に塗布された溶剤を含む本発明の組成物から溶剤を除去する役割と共に、当該組成物に含まれる重合性液晶化合物が配向するように熱エネルギーを与える役割を担う。乾燥炉212Bは、乾燥炉212Aと同様に、互いに異なる設定温度の、複数のゾーンからなる構成であってもよいし、互いに異なる設定温度の、複数の乾燥炉を直列に設置した構成であってもよい。
第二の塗布膜に含まれる重合性液晶化合物が配向した状態で、基材Pは活性エネルギー線照射装置213Bへと搬送される。活性エネルギー線照射装置213Bにおいて、活性エネルギー線が第二の塗布膜に照射される。活性エネルギー線照射装置213Bによる活性エネルギー線の照射によって、重合性液晶化合物が配向した状態で重合して偏光膜が得られる。
かくして連続的に製造された本発明の偏光膜は、第二の巻芯220Aに巻き取られ、第二ロール220の形態として得られる。尚、巻き取るときには、適当なスペーサを用いた供巻きを行ってもよい。
このように、基材Pが、第一ロール210から、塗布装置211A、乾燥炉212A、偏光UV照射装置213A、塗布装置211B、乾燥炉212B、および活性エネルギー線照射装置213Bをこの順で通過することで、Roll to Roll形式により連続的に本発明の偏光膜を製造することができる。
また、図1に示す製造装置においては、本発明の偏光膜を連続的に製造する方法の一例を示したが、例えば、基材Pを、第一ロール210から、塗布装置211A、乾燥炉212A、および偏光UV照射装置213Aの順で通過させた後、一旦、巻芯に巻き取ることで基材と光配向膜とからなるロール状の積層体を製造し、次いで、当該ロール状の積層体を巻き出し、塗布装置211B、乾燥炉212B、および活性エネルギー線照射装置213Bの順で通過させることで、本発明の偏光膜を連続的に製造することもできる。
第二ロール220の形態で本発明の偏光膜を製造した場合には、第二ロール220から長尺の本発明の偏光膜を巻き出し、所定の寸法に裁断してから、裁断された偏光膜に1/4波長板を貼合することにより円偏光板を製造することができる。また、長尺の1/4波長板が巻芯に巻き取られている第三ロール(図示しない)を準備することで、長尺の円偏光板を連続的に製造することもできる。
長尺の円偏光板を連続的に製造する方法の一例を、図2に示す製造装置を参照しながら説明する。かかる製造方法は、第二の巻芯220Aに巻き取られた第二ロール220から連続的に本発明の偏光膜Qを巻き出すと共に、第三の巻芯230Aに長尺の1/4波長板が巻き取られてなる第三ロール230から連続的に長尺の1/4波長板Sを巻き出す工程と、本発明の偏光膜Qと長尺の1/4波長板Sとを連続的に貼合して長尺の円偏光板QSを得る工程と、得られた長尺の円偏光板QSを第四の巻芯240Aに巻き取り、第四ロール240を得る工程と、からなる。
偏光膜Qおよび1/4波長板Sを巻き出す方法は、第二ロール220の巻芯220Aおよび第三ロール230の巻芯230Aに適当な回転手段を設置し、当該回転手段により第二ロール220および第三ロール230を回転させることにより行われる。また、偏光膜Qおよび1/4波長板Sを搬送する方向に、適当な補助ロール300を少なくとも一つ設置し、当該補助ロール300の回転手段で偏光膜Qおよび1/4波長板Sを巻き出す形式でもよい。さらに、巻芯220A、巻芯230Aおよび補助ロール300の両方に回転手段を設置することで、偏光膜Qおよび1/4波長板Sに適度な張力を付与しながら、偏光膜Qおよび1/4波長板Sを巻き出す形式でもよい。この方法はいわゆるRoll to Roll貼合である。尚、貼合には接着剤を用いてもよい。
<本発明の偏光膜の用途>
本発明の偏光膜、および、本発明の偏光膜と1/4波長板とを有する円偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む装置である。本発明の偏光膜を備える表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)、および圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置、および投写型液晶表示装置等のいずれも包含する。これらの表示装置は、二次元画像を表示する表示装置であってもよいし、三次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。
本発明の偏光膜は、特に、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、および無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に有効に用いることができる。上記有機EL表示装置は、本発明の偏光膜および有機EL素子を少なくとも備えて構成されている。有機EL素子は、公知の構成の素子を用いることができる。
本発明の偏光膜と1/4波長板とを有する円偏光板は、特に、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置および無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に有効に用いることができる。上記有機EL表示装置は、本発明の円偏光板および有機EL素子を少なくとも備えて構成されている。
本発明の偏光膜を液晶表示装置に用いる場合には、当該偏光膜は液晶セルの外部に備えられていてもよく、液晶セルの内部に備えられていてもよい。液晶セルは、本発明の偏光膜、液晶層および基体を少なくとも備えて構成されている。
特に透過型のアクティブマトリックスのカラー液晶表示装置における液晶セルの内部に、本発明の偏光膜が備えられている場合の当該表示装置の第一の構成を、図3を用いて以下に説明する。当該表示装置30は、第一の基体31、第一の本発明の偏光膜32、カラーフィルタ層(カラーフィルタ)33、平坦化層34、ITO電極層35、第一の配向膜36、液晶層37、第二の配向膜38、第二の本発明の偏光膜39、薄膜トランジスタ回路およびピクセル電極を含むTFT層40、並びに、第二の基体41がこの順に積層されて構成されている。これら各層の積層は、公知の手段により行うことができる。
第一の本発明の偏光膜32は、第一の基体31と液晶層37との間に配置されている。
カラーフィルタ層33は、第一の基体31と液晶層37との間に配置され、第一の基体31側からの入射光から所望の波長の光を取り出す層であり、例えば白色光から所望の波長以外の波長の光を吸収することによって所望の波長の光のみを透過させる層であってもよいし、入射光の波長を波長変換することによって所望の波長の光を出射する層であってもよい。
上記第一の本発明の偏光膜32および第二の本発明の偏光膜39は、配向膜を第一の基体31側および第二の基体41側にそれぞれ包含していてもよい。第一の配向膜36および第二の配向膜38は、ラビング配向膜であってもよいし、光配向膜であってもよい。また、第一の本発明の偏光膜32は、位相差層を包含していてもよい。
次に、上記表示装置の第二の構成を、図4を用いて以下に説明する。当該表示装置60は、第一の基体61、第一の本発明の偏光膜62、カラーフィルタ層(カラーフィルタ)63、平坦化層64、ITO電極層65、第一の配向膜66、液晶層67、第二の配向膜68、薄膜トランジスタ回路およびピクセル電極を含むTFT層70、第二の基体71、並びに、第二の偏光膜72がこの順に積層されて構成されている。これら各層の積層は、公知の手段により行うことができる。
第二の基体71を介してTFT層70と反対側に位置する第二の偏光膜72は、本発明の偏光膜であってもよいし、ポリビニルアルコールをヨウ素で染色した後、延伸して作製される偏光膜であってもよい。
次に、上記表示装置の第三の構成を、図5を用いて以下に説明する。当該表示装置80は、第一の基体81、カラーフィルタ層(カラーフィルタ)82、第一の本発明の偏光膜83、平坦化層84、ITO電極層85、第一の配向膜86、液晶層87、第二の配向膜88、薄膜トランジスタ回路およびピクセル電極を含むTFT層90、第二の基体91、並びに、第二の偏光膜92がこの順に積層されて構成されている。これら各層の積層は、公知の手段により行うことができる。
当該第三の構成において、第二の偏光膜92は、本発明の偏光膜であってもよいし、ポリビニルアルコールをヨウ素で染色した後、延伸して作製される偏光膜であってもよい。第二の偏光膜92が本発明の偏光膜である場合には、当該第二の偏光膜92は上記第一の構成のときと同様に、第二の基体91とTFT層90との間に位置していてもよい。
また、第三の構成において、カラーフィルタ層82は、第一の基体81を介して液晶層87と反対側に配置してもよい。
尚、カラーフィルタ層に包含される粒子によって偏光が散乱して偏光解消が起こり得る。そのため、上記第一〜第三の構成のうち、第一の本発明の偏光膜がカラーフィルタ層よりも液晶層側に位置している第三の構成、即ち、第三の構成を備えた表示装置がより好ましい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態に関しても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるべきではない。実施例に記載の「%」および「部」は、特に断りの無い限り、「質量%」および「質量部」である。
〔製造例1〕
式(2A)で表される化合物0.50g、酢酸5.0g、水0.50g及び35%塩酸0.65gを混合した。得られた混合物を、0℃に冷却した後、33%亜硝酸ナトリウム水溶液0.45gを滴下した。得られた混合物を、30分間撹拌した後、アミド硫酸0.02gを加えた。得られた混合物を、式(3A)で表される化合物0.48gとメタノール4.8gとからなる混合物に、0℃で滴下した。析出物を濾過し、水で3回洗浄した。
得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム)で精製した。濃縮後に得られた固体をアセトニトリルで洗浄後、乾燥させることにより、橙色固体である式(1−2)で表される化合物(以下、化合物(1−2)という)0.40gを得た。
収率:(式(2A)で表される化合物基準):48%。
M/Z=428(EI−MS)
極大吸収波長(λmax2)=422nm(クロロホルム溶液)
化合物(1A)の1H−NMR(CDCl3):δ(ppm) 0.95(t、3H)、1.35(m、2H)、1.65(m、2H)、2.70(t、2H)、3.46(t、4H)、3.90(t、4H)、6.98(d、2H)、7.34(d、2H)、7.85−8.15(c、8H)。
〔製造例2〕
式(2A)で表される化合物の代わりに式(2B)で表される化合物を用いたこと以外は製造例1と同じ手順で橙色固体である式(1−1)で表される化合物(以下、化合物(1−1)という)0.25gを得た。
収率:(式(2B)で表される化合物基準):30%。
M/Z=440(EI−MS)
極大吸収波長(λmax2)=438nm(クロロホルム溶液)
化合物(1B)の1H−NMR(CDCl3):δ(ppm) 3.35(t、4H)、3.89(t、4H)、6.97(d、2H)、7.80(d、2H)、7.90−8.20(c、8H)。
〔製造例3〕
式(2B)で表される化合物5.0g、酢酸50g、水5.0g及び35%塩酸6.50gを混合した。得られた混合物を、0℃に冷却した後、33%亜硝酸ナトリウム水溶液4.5gを滴下した。得られた混合物を、30分間撹拌した後、アミド硫酸0.03gを加えた。得られた混合物を、式(3B)で表される化合物4.5gと酢酸ナトリウム6.5gと水68gとからなる混合物に、0℃で滴下した。析出物を濾過し、水で3回洗浄した。
得られた析出物に、水酸化ナトリウム7.0gと水80gとを加えた。得られた混合物を85℃で2時間撹拌した後、10℃に冷却した。析出物を濾過し、水で洗浄した。得られた固体を乾燥させることにより、橙色固体5.78gを得た。
得られた橙色固体のうち0.50gとN,N−ジイソプロピルエチルアミン0.88gとN,N−ジメチルアセトアミド5.0gとを混合し、1−ヨードブタン1.2gを滴下した。得られた混合物を、90℃で3時間撹拌した。得られた反応混合物をメタノールに滴下し、析出物を濾過した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム)で精製した。得られた固体をメタノールで洗浄後、乾燥させることにより、橙色固体である式(1−61)で表される化合物(以下、化合物(1−61)という)0.10gを得た。
収率:(式(2B)で表される化合物基準):17%。
M/Z=426(EI−MS)
極大吸収波長(λmax2)=460nm(クロロホルム溶液)
〔製造例4〕
式(3A)で表される化合物の代わりに式(3C)で表される化合物を用いたこと以外は製造例2と同じ手順で橙色固体である式(1−46)で表される化合物(以下、化合物(1−46)という)0.38gを得た。
収率:(式(2B)で表される化合物基準):48%。
M/Z=428(EI−MS)
極大吸収波長(λmax2)=480nm(クロロホルム溶液)
化合物(1D)の1H−NMR(THF−d8):δ(ppm) 3.57(s、3H)、4.02(t、2H)、4.14(m、2H)、4.32(t、1H)、7.26(d、2H)、8.25−8.50(c、10H)。
〔製造例5〕
式(3C)で表される化合物の代わりに式(3D)で表される化合物を用いたこと以外は製造例4と同じ手順で橙色固体である式(1−31)で表される化合物(以下、化合物(1−31)という)0.44gを得た。
収率:(式(2B)で表される化合物基準):51%。
M/Z=458(EI−MS)
極大吸収波長(λmax2)=472nm(クロロホルム溶液)
化合物(1E)の1H−NMR(THF−d8):δ(ppm) 3.57(t、4H)、3.69(m、4H)、4.08(t、2H)、6.78(d、2H)、7.78(m、4H)、7.91(m、2H)、7.98(m、4H)。
〔製造例6〕
1−ヨードブタンの代わりにヨードエタンを用いたこと以外は製造例3と同じ手順で橙色固体である式(1−23)で表される化合物(以下、化合物(1−23)という)0.088gを得た。
収率:(式(2B)で表される化合物基準):16%。
極大吸収波長(λmax2)=472nm(クロロホルム溶液)
化合物(1F)の1H−NMR(CDCl3):δ(ppm) 1.32(t、3H)、3.29(m、2H)、6.66(d、2H)、7.80(d、2H)、7.89(m、2H)、7.95―8.15(c、6H)。
〔製造例7〕
式(2A)で表される化合物の代わりに式(2C)で表される化合物を用いたこと以外は製造例2と同じ手順で橙色固体である式(1−5)で表される化合物(以下、化合物(1−5)という)0.33gを得た。
収率:(式(2C)で表される化合物基準):51%。
M/Z=456(EI−MS)
極大吸収波長(λmax2)=432nm(クロロホルム溶液)
化合物(1B)の1H−NMR(CDCl3):δ(ppm) 3.35(t、4H)、3.89(t、4H)、6.98(d、2H)、7.33(d、2H)、7.80−8.20(c、8H)。
〔製造例8〕
1−ヨードブタンの代わりに1−ヨードプロパンを用いたこと以外は製造例3と同じ手順で橙色固体である式(1−62)で表される化合物(以下、化合物(1−62)という)0.21gを得た。
収率:(式(2B)で表される化合物基準):37%。
M/Z=412(EI−MS)
極大吸収波長(λmax2)=460nm(クロロホルム溶液)
化合物(1H)の1H−NMR(CDCl3):δ(ppm) 1.04(t、3H)、1.72(m、2H)、3.21(t、2H)、6.66(d、2H)、7.78(d、2H)、7.85―8.20(c、8H)。
〔製造例9〕
1−ヨードブタンの代わりにヨウ化メチルを用いたこと以外は製造例3と同じ手順で橙色固体である式(1−63)で表される化合物(以下、化合物(1−63)という)0.075gを得た。
収率:(式(2B)で表される化合物基準):14%。
M/Z=384(EI−MS)
極大吸収波長(λmax2)=452nm(クロロホルム溶液)
〔製造例10〕
式(2B)で表される化合物の代わりに式(2C)で表される化合物を用いたこと以外は製造例6と同じ手順で橙色固体である式(1−20)で表される化合物(以下、化合物(1−20)という)0.115gを得た。
収率:(式(2C)で表される化合物基準):21%。
M/Z=414(EI−MS)
極大吸収波長(λmax2)=452nm(クロロホルム溶液)
化合物(1J)の1H−NMR(CDCl3):δ(ppm) 1.32(t、3H)、3.28(m、2H)、4.17(t、1H)、6.66(d、2H)、7.36(d、2H)、7.85―8.10(c、8H)。
〔製造例11〕
式(2B)で表される化合物の代わりに式(2A)で表される化合物を用いたこと以外は製造例6と同じ手順で橙色固体である式(1−17)で表される化合物(以下、化合物(1−17)という)0.038gを得た。
収率:(式(2A)で表される化合物基準):7%。
極大吸収波長(λmax2)=440nm(クロロホルム溶液)
化合物(1K)の1H−NMR(CDCl3):δ(ppm) 0.95(t、3H)、1.25(t、3H)、1.40(m、2H)、1.62(m、2H)、2.70(t、2H)、3.29(m、2H)、4.15(t、1H)、6.67(d、2H)、7.33(d、2H)、7.80―8.15(c、8H)。
〔製造例12〕
式(2B)で表される化合物の代わりに式(2D)で表される化合物を用いたこと以外は製造例3と同じ手順で橙色固体である式(1−64)で表される化合物(以下、化合物(1−64)という)0.065gを得た。
収率:(式(2D)で表される化合物基準):13%。
極大吸収波長(λmax2)=468nm(クロロホルム溶液)
化合物(1L)の1H−NMR(CDCl3):δ(ppm) 0.99(t、3H)、1.45(m、2H)、1.66(m、2H)、2.67(s、3H)、3.23(m、2H)、4.23(t、1H)、6.65(d、2H)、7.86(d、2H)、7.95―8.20(c、8H)。
[重合性液晶化合物]
下記式(4−6)で表される化合物[以下、化合物(4−6)という]、下記式(4−8)で表される化合物[以下、化合物(4−8)という]、下記式(4−22)で表される化合物[以下、化合物(4−22)という]及び下記式(4−25)で表される化合物[以下、化合物(4−25)という]を用いた。
なお、化合物(4−6)は、Lub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328 (1996)に記載の方法で合成した。また、この方法に準拠して、化合物(4−8)を製造した。
化合物(4−22)及び化合物(4−25)は、特許第4719156号記載の方法に準拠して製造した。
[相転移温度の測定]
上述した各重合性液晶化合物の相転移温度を、それぞれの重合性液晶化合物からなる膜の相転移温度を求めることによって測定した。その操作は以下の通りである。
化合物(4−6)の相転移温度は、化合物(4−6)からなる膜の相転移温度を求めることで確認した。その操作は以下のとおりである。
配向膜を形成したガラス基板上に、化合物(4−6)からなる膜を形成し、加熱しながら、偏光顕微鏡(BX−51、オリンパス株式会社製)によるテクスチャー観察によって相転移温度を確認した。化合物(4−6)は、120℃まで昇温後、降温時において、112℃でネマチック相に相転移し、110℃でスメクチックA相に相転移し、94℃でスメクチックB相へ相転移した。
化合物(4−6)の相転移温度測定と同様にして、化合物(4−8)の相転移温度を確認した。化合物(4−8)は、140℃まで昇温後、降温時において、131℃でネマチック相に相転移し80℃でスメクチックA相に相転移し、68℃でスメクチックB相へ相転移した。
化合物(4−6)の相転移温度測定と同様にして、化合物(4−22)の相転移温度を確認した。化合物(4−22)は、140℃まで昇温後、降温時において、106℃でネマチック相に相転移し103℃でスメクチックA相に相転移し、86℃でスメクチックB相へ相転移した。
化合物(4−6)の相転移温度測定と同様にして、化合物(4−25)の相転移温度を確認した。化合物(4−25)は、140℃まで昇温後、降温時において、119℃でネマチック相に相転移し100℃でスメクチックA相に相転移し、77℃でスメクチックB相へ相転移した。
〔実施例1〕
[組成物の調製]
下記成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、組成物(1)を得た。
化合物(1); 化合物(1−2) 2.5部
重合性液晶化合物; 化合物(4−6) 75部
化合物(4−8) 25部
重合開始剤; 2−ジメチルアミノ−2−ベンジル−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(イルガキュア369;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製) 6部
レベリング剤; ポリアクリレート化合物(BYK−361N;BYK−Chemie社製) 1.5部
溶剤; クロロホルム 250部
[相転移温度の測定]
化合物(4−6)と同様に、組成物(1)に含まれる成分の相転移温度を求めた。かかる成分は、140℃まで昇温後、降温時において、115℃でネマチック相に相転移し105℃でスメクチックA相に相転移し、75℃でスメクチックB相へ相転移した。
〔偏光膜の製造及びその評価〕
1.配向膜の形成
ガラス基板上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ−008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA−20−RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。かかるラビング処理により、ガラス基板上に配向膜が形成された積層体1を得た。
2.偏光膜の形成
積層体1の配向膜上に、組成物(1)をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で1分間加熱乾燥した後、速やかに室温まで冷却して、前記配向膜上に配向した重合性液晶化合物を含む乾燥被膜を形成した。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP−7;ウシオ電機株式会社製)を用い、紫外線を、露光量2000mJ/cm2(365nm基準)で乾燥被膜に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、配向状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜(1)を形成し積層体2を得た。この際の偏光膜の厚みをレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社社製 OLS3000)により測定したところ、1.7μmであった。
3.X線回折測定
偏光膜(1)に対して、X線回折装置X’Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)を用いてX線回折測定を行った。ターゲットとしてCuを用いてX線管電流40mA、X線管電圧45kVの条件で発生したX線を固定発散スリット1/2°を介してラビング方向(予め、偏光膜下にある配向膜のラビング方向を求めておく。)から入射させ、走査範囲2θ=4.0〜40.0°の範囲で2θ=0.01671°ステップで走査して測定を行った結果、2θ=20.1°付近にピーク半価幅(FWHM)=約0.31°のシャープな回折ピーク(ブラッグピーク)が得られた。また、ラビング垂直方向からの入射でも同等な結果を得た。ピーク位置から求めた秩序周期(d)は約4.4Åであり、高次スメクチック相を反映した構造を形成していることが分かった。
4.二色比の測定
極大吸収波長における透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV−3150)に、積層体2を備えたフォルダーを、セットした装置を用いてダブルビーム法で測定した。該フォルダーは、リファレンス側は光量を50%カットするメッシュを設置した。測定された透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)の値から、比(A2/A1)を算出し、二色比とした。極大吸収波長(λmax1)は464nmであり、この波長での二色比は42と高い値を示した。二色比が高いほど、偏光膜として有用であるといえる。化合物(1−2)の極大吸収波長(λmax2)は422nmであることから、長波長シフトしていることが判明した。この長波長シフトの結果は、本発明の偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−2)が分散しているとき、該化合物(1−2)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
また、形成された偏光膜(1)表面に保護フィルム(40μmTAC(コニカミノルタ株式会社製「KC4UY」))を配置し、その上から下記条件で光を照射することによって耐光性を評価した。偏光膜(1)の極大吸収波長464nmにおける、耐光性試験後の偏光膜(1)の吸光度は、試験前の94%となった。一方、特開2013−101328号公報に記載の式(1−10)で示される二色性色素を用いて、上記方法と同様の方法で偏光膜を形成して耐光性試験を行ったところ、該偏光膜の極大吸収波長548nmにおける、耐光性試験後の該偏光膜の吸光度は、試験前の47%となった。つまり、本発明の、化合物を含む組成物は耐光性に優れることが分かった。
耐光性試験における光の照射条件は以下の通りである。
使用機器:ATLAS社製 サンテストXLS+
使用光源:キセノンアークランプ
露光条件:250mW/m2
試験時間:120時間
暴露量:108000KJ/m2
温度:60℃。
〔実施例2〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は483nmであり、二色比は51と高い値を示した。また、製造例2に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は438nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−1)が分散しているとき、該化合物(1−1)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例3〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−61)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は502nmであり、二色比は39と高い値を示した。また、製造例3に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は460nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−61)が分散しているとき、該化合物(1−61)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例4〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−46)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は538nmであり、二色比は36と高い値を示した。また、製造例4に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は480nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−46)が分散しているとき、該化合物(1−46)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例5〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−31)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は528nmであり、二色比は32と高い値を示した。また、製造例5に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は472nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−31)が分散しているとき、該化合物(1−31)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例6〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−23)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は511nmであり、二色比は57と高い値を示した。また、製造例6に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は472nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−23)が分散しているとき、該化合物(1−23)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例7〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は478nmであり、二色比は48と高い値を示した。また、製造例7に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は432nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−5)が分散しているとき、該化合物(1−5)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例8〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−62)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は505nmであり、二色比は35と高い値を示した。また、製造例8に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は460nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−62)が分散しているとき、該化合物(1−62)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例9〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−63)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は512nmであり、二色比は41と高い値を示した。また、製造例9に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は452nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−63)が分散しているとき、該化合物(1−63)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例10〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−20)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は506nmであり、二色比は57と高い値を示した。また、製造例10に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は452nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−20)が分散しているとき、該化合物(1−20)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例11〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−17)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は493nmであり、二色比は43と高い値を示した。また、製造例11に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は440nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−17)が分散しているとき、該化合物(1−17)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。
〔実施例12〕
化合物(1−2)の代わりに化合物(1−64)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、本偏光膜を作製した。同様に極大吸収波長ならびに二色比を測定したところ、極大吸収波長(λmax1)は504nmであり、二色比は48と高い値を示した。また、製造例12に記載したとおり極大吸収波長(λmax2)は468nmであるため、長波長シフトしていることが判明した。この結果は、本偏光膜中において、重合性液晶化合物が重合してなる密な分子鎖間に、化合物(1−64)が分散しているとき、該化合物(1−6)がその分子鎖と強く相互作用していることを示すものである。