JP6853717B2 - 感染症診察スペースを設けた自走式立体駐車場 - Google Patents

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本発明は、感染症外来患者から一般患者を隔離する感染症対応型施設に関し、特に、パンデミック発生時に簡易に感染症診察スペースを設置可能な自走式立体駐車場に関する。
国内において、新型インフルエンザ等の感染症患者やそれらの擬似患者は、感染症法により指定医療機関に搬送して隔離する必要がある。このような感染症対応型施設の例として、例えば、特許文献1においては、感染症患者又は擬似患者を隔離するための複数の病室に対して、各病室の内部の様子を外部から観察可能な観察が設けられており、感染症対応型施設の外部から風除室を介して病室に続く廊下に出入する感染症対応型施設が開示されている。
パンデミック発生時に簡易に感染症対応型施設を仮設する例として、例えば、特許文献2においては、支柱部材と梁部材とを継手部材を介して連結して組み立てられるフレームと、フレームの外周部および/または内部に装着されてフレーム内に隔離空間を区画形成する隔離シートとにより構成された各種施設内に設置可能な隔離ユニットが開示されている。
特許第5320902号公報 特開2012−95858号公報
年に一度程度発生するパンデミックを想定して予め特許文献1の様な感染症対応型施設を備えている医療機関は多くはない。院内に常設される設置される感染症診察スペースには限りが有り、患者が多数発生するパンデミック時には受け入れできないことが生じる。
感染症対応型施設を有しない病院においては、感染症外来患者に対して院内の一画に小規模な感染症診察スペースを仮設して、診察を行う。特許文献2によれば、プレバブのような建物を仮設しなくても、病院あるいは各種の公共施設もしくはオフィス等の一般施設の室内に、支柱部材と梁部材とを継手部材によりフレームを組立て、隔離シートを貼って隔離空間を区画することができるため、一定の広さの感染症診察スペースを確保することができる。しかしながら、感染症診察スペースを同じ院内で設営すると、トイレや手洗い場など共通に立ち入る可能性があり、単に出入り口を分けた程度では一般患者との接触(二次感染)する可能性がある。
また感染症診察スペースだけではなく、実際のパンデミック発生時には、多数の感染症外来患者が診察前に待機する待合スペースや、待合スペースから感染症診察スペースへの経路を含めて一般患者から区分けされた区画に設定する必要があり、特許文献2の技術においてはこれについては解決する示唆はない。
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、感染症対応のための特別なスペースを平常時に用意することなく、一方で、パンデミック発生時には感染症外来患者の待合スペースや診察スペースに変更される自走式立体駐車場を提供することを目的とする。
上記のような課題を解決するために、本発明は、各層には車路と上下層を連結するスロープが設けられ、車路の側面に列状に多数の駐車スペースが設けられている複数の階層からなる自走式立体駐車場において、
前記複数の階層の内の一つの層の車路に沿って、正面の開閉門と左右後方の壁によって閉鎖された閉鎖空間を持つ車庫が設けられており、
前記車庫の閉鎖空間は、仕切によって分割され、前記正面側から後方に向かって順に車両を保管する車両格納区画と、水まわり区画とが設けられ、
前記車両格納区画の天井には、可動式のパーテーションを案内し、当該パーテーションを設置するレールが設けられており、前記パーテーションを前記レールに設置することにより、前記車両格納区画を複数の診療室と各診療室を結ぶ廊下に分割可能であることを特徴とする。
以上、説明したように、本発明の感染症対応型施設によれば、車庫は、平常時、緊急車輛の保管庫として利用し、新型インフルエンザまん延期には、病院の診療施設外における診察スペースとして利用できるため、スペースの有効活用が可能である。また、自走式立体駐車場内に駐車した、感染症外来患者自身が乗車してきた車を診察までの待機エリアとして利用するので、待合時間における感染の一般患者への恐れがない。
自走式立体駐車場の一階平面図である。 緊急車両の車庫の平面図である。 緊急車両の車庫の側面図である 可動式のパーテーションを示す図である。
本発明は、病院に併設される平常時には自走式立体駐車場が、パンデミック発生時の診察スペースとして利用した場合に、本来自走式立体駐車場として有する機能と診察スペースとして利用される際の機能とが極めて親和性良く融合できることに着目して、これを発展させたものである。
自走式立体駐車場においては、柱と梁等の骨組みのみのオープンな箇所とするのが一般的である。また、緊急車両の車庫を、病院に設けるケースが増えてきている。これは、本来消防署などで待機する救急車(緊急車両)を病院に常駐させ、救急救命士や医師を乗せて出動する「救急ワークステーション」が広がる傾向にあるからである。本発明においては、自走式立体駐車場の一画に緊急車両の駐車スペースを設け、その駐車スペースについては三方を壁で囲われ、正面をシャッターなどの開閉門として、開閉門を閉鎖した状態では、外界から遮蔽された閉鎖的な車庫とした。そして、この閉鎖的な車庫を隔離空間として、感染症患者や擬似患者の診察スペースに変更できるようにしたのである。
一方、感染症外来患者は自家用車にて外界と隔離した状態で訪れることが殆どであるから、感染症外来患者の待機場所として自走式立体駐車場をそのまま用いることにより、感染症外来患者は自身が乗ってきた車の中で隔離された状態で隔離を保つことができる。自走式立体駐車場の駐車スペースの有る限り、患者の受け入れが可能である。大きな待合スペースを用意する必要がない。駐車スペースから診察スペースへの誘導は携帯電話等を用いて行う。緊急車両の車庫の最寄りの駐車スペースに誘導しても良い。感染症外来患者は、待機する間は自家用車の中のスペースで隔離された状態であるので、他の患者と接触することはなく感染を防止できる。
また、自走式立体駐車場には付帯設備として、トイレなどの水まわり設備が設けられているが、水まわり設備を緊急車両の車庫の閉鎖空間に設けることにより、一般患者との接触の可能性を排除できる。
以下、実施例による自走式立体駐車場を説明する。
図1には自走式駐車場1の第一層の平面図を示す。自走式駐車場1は少なくとも2層以上の複数の階層を有しており、その各層には周回式の一連の車路2と2箇所のスロープ3が設けられ、車路2の両側に列状に多数の駐車スペース4が設けられている。スロープ3は、上下の層を車が周回可能に連結するものである。そして、第1層には場外の道路に連通する進入用車路5が設けられている。図中、7は備蓄スペースである。第2層以上の層においては、周回式の一連の車路2と2箇所のスロープ3及び車路2の両側に列状の駐車スペース4が設けられた構成となっている。
緊急車両の車庫10は、自走式駐車場1の複数の階層の内の一つの層(第1層)の車路2に沿って、駐車スペース4の列の並びに配置されている。緊急車両の車庫10は、正面が開閉門12で開閉自在にされ、左右後方が壁10a(正面左)、10b(後方)、10c(正面右)により囲われており、壁10aは自走式駐車場1の外壁を兼ねている。壁10aには、3箇所の開閉扉11a、11b、11cが設けられている。また、開閉門12は、進入用車路5とは独立した進入路を車庫10に提供する。緊急車両の車庫10と隣接する駐車スペース4の間には、自走式駐車場1の外側に出ることができる歩行通路8が設けられている。
図2は、緊急車両の車庫10の平面図である。図2Aは平時における状態を示し、図2Bはパンデミック発生時における状態を示している。
車庫10は、壁10a、10b、10c及び開閉門12により四方を囲われた閉鎖空間を有している。開閉門12は、屋外の道路に連なっている。この閉鎖空間の中に、正面の開閉門12側から、後方に向かって順に車両格納区画P、水まわり区画Q、保管区画Rとが設けられており、開閉扉11a、11b、11cは夫々の区画に対して開閉するようになっている。車両格納区画Pと水まわり区画Qとの間は、壁10a、10cの夫々の側に開閉扉14a、14bとが備えられた仕切13aにより常設的に仕切られている。仕切13aより後方に常設された仕切13dは、水まわり区画Qと保管区画Rを区画している。仕切13dは、壁10a側に開閉扉14cを備え、対面の壁10c側が開放して通路とされている。仕切13aと仕切13dとの間は、仕切13b、13cが水まわり区画Qを壁10a側と壁10c側の3つに分割している。仕切13a、13b、13c、13dで囲われた空間はトイレTが設営されており、仕切13cと壁10aの間の空間は、開閉扉11b、14a、14cで三方が囲まれ、仕切13cに開口したトイレTへの出入り口19に他の一方が面した連絡通路Eになっている。また、仕切13dと壁10cの間は、手洗いWが設営されている。車庫10には、換気や酸素、吸引、電気、水道等の診察に必要な設備が事前に備えられている。尚、出入り口19は、仕切13cに設けられた、横スライドのドアである。開閉扉14cは、施錠可能である。
車両格納区画Pにおいては、その天井に可動式のパーテーション16のレール15a、15b、15c、15dが敷設されている。2条のレール15a、15bは、仕切13aから開閉門12に向けて延びている。レール15c、15dは、レール15a、15bの間を結んで可動式のパーテーション16を敷設する。レール15cは、壁10a、10cにまで延びている。パーテーション16は、仕切13a又は壁10cの面に接するように保管されている。パーテーション16の中には、単なる壁を構成するパーテーション16aと開閉扉を内在するパーテーション16bが含まれている。
図2Bは、感染症対応時における車庫10の形態を示す。この対応においては、車庫10を診察スペースとして利用する。車両格納区画Pには、レール15a、15b、15c、15dに沿って、パーテーション16を設置する。仕切13aから開閉門12に向けて延びたレール15aにより設置されたパーテーション16a及びパーテーション16bにより、壁10aに沿った廊下H1が、レール15bにより設置されたパーテーション16a及びパーテーション16bにより壁10cに沿った廊下H2が形成される。また、レール15c、15dに設置されるパーテーション16a及びパーテーション16bにより、車両格納区画Pがさらに分割され、3つの診療室Sが形成される。開閉扉を内在するパーテーション16bは、夫々の診療室Sから廊下H1、H2に開閉するように配置する。廊下H1は感染症外来患者の動線として利用し、廊下H2は医師のための裏動線として利用することができる。
図3は、緊急車両の車庫10の側面図であり、図3Aは緊急車両の保管庫として利用している状態を示し、図3B感染症対応時における車庫10の側面図を示す。図中、Gは第1層の床面、20は自走式駐車場1の第2層の床面であり、17は車両格納区画Pの釣り天井、21は水まわり区画Qと保管区画Rの天井である。また、18は床面20から釣り天井17を吊り下げる吊り下げ具である。床面Gと床面20により上下を、開閉門12と壁10a、10b、10cにより四方を囲まれて、車庫10は閉鎖的な隔離空間としている。
図4は、可動式のパーテーション16とレール15a(他のレールを代表して)の断面図である。レール15aは吊り下げ具18により床面20に対して直接吊り下げられている。パーテーション16の摺動子16Xは、断面下向きのC字状のレール15内を摺動する。パーテーション16を所定位置に到達させると、脚16Yを伸ばして床面Gに固定する。
次に、自走式駐車場1の使用方法について説明する。
平常時においては、車両格納区画Pおよび保管区画Rの立入は病院関係者のみとし、水回り区画QのトイレTに対しては一般者が使用可能となるように、開閉扉11a、11c及び開閉扉14a、14cを施錠管理され、開閉扉11bのみ解錠されている。
車両格納区画Pには、救急車などの緊急車両の他に、病院の送迎バス、検診車等を格納しておいても良い。保管区画Rには、パンデミック発生時(例えば新型インフルエンザまん延期)に利用する椅子、ベッドなどの什器等を保管する。
感染症対応時には、車庫10は診察スペースとなる。レール15a、15b、15c、15dに沿って、図2B、図3Bに示すように可動式のパーテーション16を設置して、診療室S、廊下H1、H2を設定する。診療Sに保管区画Rに備蓄された什器等を設置し、什器等が搬出された保管区画Rは医師休憩スペースとして利用される。3つの診察室Sと手洗いWと保管区画R(医師休憩スペース)は、廊下H2による裏動線で結ばれる。また、3つの診察室SとトイレTとは廊下H1による患者用の動線で結ばれる(開閉扉14cは保管区画R側からの一方通行に施錠される。)。
車庫10は、新型インフルエンザまん延期における患者の外来集中に対応することに加え、入院治療の必要性を判断するため、軽症者と重症者の振り分け(トリアージ)を行うスペースとして利用される。
新型インフルエンザまん延期には、来院者用駐車場入口もしくは病棟入口にて感染可能性の有無をチェックし、感染の疑いのある患者は自走式立体駐車場1に誘導される。車で来院された患者は、自走式立体駐車場1に車を駐車し、そのまま車の中で待機する。車庫10の診察室Sへの誘導は携帯電話等が用いられる。例えば、車庫10の直近の駐車スペース4を診療の順番となった感染症外来患者の車が駐車するスペースとしておけば、待合の順に並んでいる他の感染症外来患者は、自走式立体駐車場1の他の階層において駐車していても良い。
また、車では無くその他の手段で感染症外来患者は3室ある診察室Sのうち1室を待合スペースとして利用しても良い。自走式立体駐車場1の車や、診察室Sが、個室化された待合室となり、真の感染者と非感染者が混在しない。また、駐車場を利用することで新型インフルエンザまん延期には多数の患者の受入れが可能となる。自走式立体駐車場1内に駐車した、感染症外来患者自身が乗車してきた車を診察までの待機エリアとして利用するので、待合時間における感染の一般患者への感染の恐れがない。
来院者用の駐車場と、職員用駐車場とをそれぞれ別に保有する病院の場合には、自走式立体駐車場1を職員用駐車場として平常は利用して、来院者用駐車場入口もしくは病棟入口にて感染可能性の有無をチェックし、感染の疑いのある患者は職員用駐車場の入口に誘導することにより、患者を振り分けることができる。
また、車庫10を診察スペースとして利用するために、換気や酸素、吸引、電気、水道等の診察に必要な設備とトイレが事前に敷設されており、什器類やパーテーション類は保管区画Rに保管されているので、パンデミック発生時への対応を早急に実施することができる。
本実施例によれば、車庫10は、平常時、緊急車輛の保管庫として利用し、新型インフルエンザまん延期には、病院の診療施設外における診察スペースとして利用できるため、スペースの有効活用が可能である。
本実施例においては、診療室Sを3つの形態を示したが、診療室Sが2つでも或いは、廊下H1、H2の間をさらに多数に分割して複数の診療室Sを設けても良い。また、上記実施例においては、車庫10の外界からの閉鎖において、床面Gと床面20により上下を閉鎖するものとしたが、床面20の代わりに床面20から吊り下げた天井17により閉鎖するものとしても良い。この場合は、四方を囲む開閉門12と壁10a、10b、10cの高さは、少なくとも天井17の高さまであれば良い。また、本実施例においては、車両格納区画P、水まわり区画Q、保管区画Rに分割されたが、その内、保管区画Rについては自走式立体駐車場1の敷地に制限があれば、省略してもよい。この場合、廊下H2の裏動線は、手洗いWのみへの動線となる。
1 自走式立体駐車場
2 車路
3 スロープ
4 駐車スペース
5 進入用車路
7 備蓄スペース
8 歩行通路
10 車庫
10a、10b、10c 壁
11a、11b、11c 開閉扉
12 開閉門
13a、13b、13c、13d 仕切
14a、14b、14c 開閉扉
15a、15b、15c、15d レール
16、16a、16b パーテーション
17 天井
18 吊り下げ具
20 床

Claims (4)

  1. 各層には車路と上下層を連結するスロープが設けられ、車路の側面に列状に多数の駐車スペースが設けられている複数の階層からなる自走式立体駐車場において、
    前記複数の階層の内の一つの層の車路に沿って、正面の開閉門と左右後方の壁によって閉鎖された閉鎖空間を持つ車庫が設けられており、
    前記車庫の閉鎖空間は、仕切によって分割され、前記正面側から後方に向かって順に車両を保管する車両格納区画と、水まわり区画とが設けられ、
    前記車両格納区画の天井には、可動式のパーテーションを案内し、当該パーテーションを設置するレールが設けられており、前記パーテーションを前記レールに設置することにより、前記車両格納区画を複数の診療室と各診療室を結ぶ廊下に分割可能であることを特徴とする自走式立体駐車場。
  2. 請求項1において、前記水まわり区画には手洗いとトイレが設けられ、手洗いとトイレの間が仕切により分割され、かつ前記レールは、前記廊下として前記左右の壁に沿った2つの廊下が形成され、一方の廊下は前記各診療室と手洗いとを結び、他方の廊下は前記各診療室とトイレを結ぶように形成するよう天井に配置されていることを特徴とする自走式立体駐車場。
  3. 請求項2の自走式立体駐車場において、前記車庫の閉鎖空間は、前記水まわり区画の後方を保管区画に区画する仕切を有し、前記一方及び他方の廊下は、前記保管区画に夫々結ばれており、かつ前記他方の廊下と前記保管区画との間には施錠のできる開閉扉が設けられていることを特徴とする自走式立体駐車場。
  4. 各層には車路と上下層を連結するスロープが設けられ、車路の側面に列状に多数の駐車スペースが設けられている複数の階層からなる自走式立体駐車場において、
    前記複数の階層の内の一つの層の車路に沿って、正面の開閉門と左右後方の壁によって閉鎖された閉鎖空間を持つ車庫が設けられており、
    前記車庫の閉鎖空間は、仕切によって分割され、前記正面側から後方に向かって順に車両を保管する車両格納区画と、水まわり区画とが設けられ、
    前記車両格納区画の天井には、可動式のパーテーションを案内し、当該パーテーションを設置するレールが設けられており、当該レールは、前記仕切から正面に向かって2条に延びるように敷設されたレールと、当該2条のレールの間を結ぶように敷設されたレールであることを特徴とする自走式立体駐車場。
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