JP6853435B2 - パワーモジュールの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュールの製造方法に関する。
大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュールでは、大電流容量への対応、配線抵抗の低減を可能とするため、例えば特許文献1に示されるように、半導体素子に接続される配線が、銅からなるリードフレームによって形成され、また、エポキシ樹脂等によって半導体素子及びリードフレームの接合部分を樹脂封止する構造が採用されている。
また、この種のパワーモジュールには、例えば特許文献2に示されるように、窒化アルミニウムを始めとするセラミックス基板の一方の面に、アルミニウム板等からなる回路層が接合されるとともに、他方の面にアルミニウム板等からなる放熱層が接合されたパワーモジュール用基板が用いられる。また、このパワーモジュール用基板の放熱層に、銅等からなるヒートシンクが接合されることにより、ヒートシンク付きパワーモジュール用基板が製造される。
このパワーモジュール用基板に半導体素子及びリードフレームを接合してパワーモジュールを製造する方法としては、例えば、セラミックス基板の両面に回路層及び放熱層を接合したパワーモジュール用基板の回路層上に、半導体素子を銀焼結接合あるいははんだ付けなどの方法により接合した後、その半導体素子の上に銅からなるリードフレームをはんだ付けなどによって接合している。
特開2001‐291823号公報 特開2005‐328087号公報
上述した製造方法において、半導体素子を搭載した後には、パワーモジュール用基板の片面に線膨張係数の小さい半導体素子が接合されているため、反りが発生することがある。この反りが発生することにより、例えば特許文献1に示すような銅からなるリードフレームを半導体素子上に接合する工程において、接合不良や半導体素子自体の損傷等が生じるおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、反りの発生を抑制し、接合不良や半導体素子の損傷等を生じることなく半導体素子及びリードフレームを接合して、簡単にパワーモジュールを製造することを目的とする。
本発明のパワーモジュールの製造方法は、セラミックス基板の一方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層が接合されたパワーモジュール用基板における前記回路層に半導体素子が接合されるとともに、該半導体素子に銅又は銅合金からなるリードフレームが接合されてなるパワーモジュールの製造方法であって、
前記パワーモジュール用基板の前記回路層の接合予定面にガラス含有銀ペーストを塗布して焼成することにより下地金属層を形成した後、前記回路層の前記下地金属層と前記半導体素子との間、及び前記半導体素子と前記リードフレームとの間にそれぞれ銀ペースト層を介在させた状態で、前記パワーモジュール用基板、前記半導体素子、前記リードフレームを積層し、これらを積層方向に1MPa以上20MPa以下の加圧力を作用させた状態で180℃以上350℃以下の温度に加熱することにより前記銀ペースト層を焼結させて、前記回路層と前記半導体素子との間、及び該半導体素子と前記リードフレームとの間をそれぞれ接合する。
この製造方法では、パワーモジュール用基板の回路層に半導体素子を実装する際に、リードフレームも一括して接合するものである。このため、半導体素子は、比較的剛性が高くて変形しにくいパワーモジュール用基板とリードフレームとの間に挟まれた状態で接合され、かつ加圧されることから、反りの発生が抑制される。
この場合、接合材がはんだの場合であると、加熱によって液相が生じるので、加圧すると各部材の間から溶融はんだが流出してしまうおそれがあり、このため、加圧しないで接合することになり、均一に接合することは難しい。銀ペースト層を用いた接合の場合、液相が生成せず、焼結することによって接合されるので、十分な加圧力を作用させることができ、また、接合温度も低いので、反り発生防止に有効である。
加圧力は1MPa未満であると接合が十分でなく、20MPaを超えると半導体素子等を破損するおそれがある。加熱温度は180℃未満では銀ペースト層を十分に焼結させることができず、350℃を超えると半導体素子を破壊するおそれがある。なお、回路層がアルミニウム又はアルミニウム合金からなるので、加圧力に対して緩衝作用を有しており、半導体素子を破損することなく20MPaまでの比較的大きい加圧力を作用させることができる。
本発明のパワーモジュールの製造方法において、前記パワーモジュール用基板には、前記回路層とは反対側にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる放熱層を介して銅又は銅合金からなるヒートシンクが接合されているものとしてもよい。
このパワーモジュール用基板には、接合される半導体素子やリードフレームとは反対側に剛性の高いヒートシンクが設けられているので、より反りの発生を抑制することができる。
本発明のパワーモジュールの製造方法において、銅又は銅合金からなるスペーサを前記回路層の前記下地金属層と前記半導体素子との間又は前記半導体素子と前記リードフレームとの間の少なくともいずれかに銀ペースト層を介して介在させ、前記回路層、前記半導体素子、前記リードフレームとともに前記スペーサを同時に接合するとよい。
スペーサによってリードフレームの高さ位置(積層方向の位置)を調整することができ、適切な位置でリードフレームを引き出すことができる。また、このスペーサは半導体素子に接合されるので、半導体素子の熱を速やかに放散する効果もある。
本発明によれば、回路層、半導体素子、リードフレームを一括して接合するので、反りの問題が解消され、接合不良や半導体素子の損傷等を生じることなく接合することができ、しかも、これらを積層して一度に接合できるので、製造も容易になる。
本発明の第1実施形態に係るパワーモジュールの製造方法を示すフローチャートである。 第1実施形態の製造方法により製造される経緯を工程順に示す断面図である。 第1実施形態の製造方法で製造されるパワーモジュールの断面図である。 下地金属層を説明する拡大断面図である。 本発明の第2実施形態の製造方法により製造されるパワーモジュールの断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
1.第1実施形態
<全体構造>
第1実施形態で用いられるパワーモジュール用基板10は、図2(b)に示すように、絶縁層であるセラミックス基板11と、その一方の面に形成された回路層12と、他方の面に形成された放熱層13とを備える。そして、図3に示すように、このパワーモジュール用基板10の回路層12の表面にスペーサ20を介して半導体素子30が搭載され、半導体素子30にはリードフレーム40が接合され、さらに半導体素子30とパワーモジュール用基板10とリードフレーム40とをエポキシ樹脂等からなるモールド樹脂50により封止することで、パワーモジュール100が構成される。
パワーモジュール用基板10を構成するセラミックス基板11は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl(アルミナ)等の酸化物系セラミックスを用いることができ、厚さは0.2mm〜1.5mmの範囲内に設定される。
回路層12及び放熱層13は、純度99.00質量%以上の純アルミニウム((いわゆる2Nアルミニウム))や純度99.99質量%以上の純アルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)又はアルミニウム合金により形成され、例えば0.1mm〜5.0mmの厚みとされ、通常はセラミックス基板11よりも小さい平面形状の矩形状に形成されている。そして、回路層12と放熱層13とは、セラミックス基板11にAl‐Si系、Al‐Ge系、Al‐Cu系、Al‐Mg系、又はAl‐Mn系等の合金のろう材により接合されている。なお、回路層12と放熱層13は、それぞれプレス加工により所望の外形に打ち抜いたものをセラミックス基板11に接合するか、あるいは平板状のものをセラミックス基板11に接合した後に、エッチング加工により所望の外形に形成するか、いずれかの方法により、所望の形状に形成されている。
スペーサ20は、導電性を有する銅又は銅合金からなるブロックにより形成されており、回路層12と半導体素子30との間の間隔を調整するために、これらの間に介在され、これらを電気的に接続している。
半導体素子30は半導体を備えた電子部品であり、必要とされる機能に応じて、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、FWD(Free Wheeling Diode)等の種々の半導体素子が選択される。
このような半導体素子30には、上面及び下面に電極が設けられており、回路層12とリードフレーム40との間で電気的接続状態とされる。
リードフレーム40は、無酸素銅やタフピッチ銅当の純銅、又は、りん青銅等の銅合金からなる帯板状に形成されており、厚みが0.05mm以上3.0mm以下とされる。
そして、パワーモジュール用基板10の回路層12の上に、スペーサ20、半導体素子30、リードフレーム40がそれぞれ銀焼結接合層71を介して接合されている。この銀焼結接合層71により接合するために、回路層12の接合面には、金、銀、ニッケル等からなる下地金属層60が形成される。なお、スペーサ20、半導体素子30、リードフレーム40のそれぞれの接合予定面にも、金、銀、ニッケル等からなる下地金属層をめっきやスパッタリング等によって形成してもよい。 モールド樹脂50は、エポキシ系樹脂等からなり、パワーモジュール用基板10の放熱層13の裏面を除き、その側面、セラミックス基板11、回路層12、スペーサ20、半導体素子30及びリードフレーム40の半導体素子30への接続部分の周辺を一体に封止している。リードフレーム40の端部は、モールド樹脂50から外部に引き出されている。
<第1実施形態の製造方法>
次に、このように構成されたパワーモジュール100を製造する方法について説明する。このパワーモジュール製造方法は、図1に示すように、パワーモジュール用基板10を形成し[パワーモジュール用基板形成工程]、そのパワーモジュール用基板10の回路層12の接合予定面に下地金属層60を形成[下地金属層形成工程]した後、回路層12にスペーサ20、半導体素子30、リードフレーム40を順に積層し、これらを一括して接合[一括接合工程]した後、モールド樹脂50によって樹脂封止する[樹脂封止工程]ことにより形成される。以下、工程順に説明する。
[パワーモジュール用基板形成工程]
図2(a)に示すように、セラミックス基板11の各面にろう材15を介して回路層12となるアルミニウム板12´と放熱層13となるアルミニウム板13´とを積層し、これらの積層構造体を積層方向に加圧した状態で加熱し、ろう材15を溶融させることによってそれぞれのアルミニウム板12´,13´とセラミックス基板11とを接合し、回路層12と放熱層13とを有するパワーモジュール用基板10を形成する(図2(b)参照)。具体的には、積層構造体を加圧したまま炉に入れて、真空雰囲気中で610℃以上650℃以下の温度で1分〜60分加熱する。
[下地金属層形成工程]
一括接合の前に、回路層12の接合予定面に金、銀、ニッケル等からなる下地金属層60を形成する。
この下地金属層15は、金、銀、ニッケル等をめっきやスパッタリングによって薄膜状に形成することにより得ることができる。また、回路層12の表面の下地金属層60は、ガラス含有銀ペーストを塗布して焼成することによっても形成することができる。
(ガラス含有銀ペーストによる下地金属層形成方法)
回路層12の表面にガラス含有銀ペーストによって下地金属層60を形成する方法を説明しておくと、ガラス含有銀ペーストは、銀粉末と、ガラス(無鉛ガラス)粉末と、樹脂と、溶剤と、分散剤とを含有しており、銀粉末とガラス粉末とからなる粉末成分の含有量が、ガラス含有銀ペースト全体の60質量%以上90質量%以下とされ、残部が樹脂、溶剤、分散剤とされている。銀粉末は、その粒径が0.05μm以上1.0μm以下とされており、例えば平均粒径0.8μmのものが好適である。ガラス粉末は、主成分として酸化ビスマス(Bi)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ホウ素(B)、酸化鉛(PbO)、酸化リン(P)のいずれか1種または2種以上を含むものとされており、そのガラス転移温度が300℃以上450℃以下、軟化温度が600℃以下、結晶化温度が450℃以上とされている。例えば、酸化鉛と酸化亜鉛と酸化ホウ素とを含有し、平均粒径0.5μmのガラス粉末が好適である。
また、銀粉末の重量Aと、ガラス粉末の重量Gとの重量比A/Gは、80/20から99/1の範囲内、例えばA/G=80/5に調整される。
溶剤は、沸点が200℃以上のものが適しており、例えば、ジエチレングリコールジブチルエーテルが用いられる。
樹脂は、ガラス含有銀ペーストの粘度を調整するものであり、350℃以上で分解されるものが適している。例えば、エチルセルロースが用いられる。
また、ジカルボン酸系の分散剤が適宜添加される。分散剤を添加することなくガラス含有銀ペーストを構成してもよい。
このガラス含有銀ペーストは、銀粉末とガラス粉末とを混合した混合粉末と、溶剤と樹脂とを混合した有機混合物とを、分散剤とともにミキサーによって予備混合し、得られた予備混合物をロールミル機によって練り込みながら混合した後、得られた混練物をぺ-ストろ過機によってろ過することによって製出される。このガラス含有銀ペーストは、その粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以上300Pa・s以下に調整される。
このガラス含有銀ペーストをスクリーン印刷法等によって回路層12の接合予定面に塗布し、乾燥後に350℃以上645℃以下の温度で1分以上60分以下の時間をかけて焼成すると、図4に示すように、接合予定面側に形成されたガラス層61と、このガラス層61上に形成された銀層62との二層構造の下地金属層60が形成される。このとき、ガラス層61が形成される際に、回路層12の表面に自然発生していたアルミニウム酸化被膜12aが溶融除去されることになり、回路層12に直接ガラス層61が形成され、このガラス層61の上に銀層62が形成される。このガラス層61が回路層12に強固に固着されることにより、回路層12の上に銀層62が確実に保持固定される。
ガラス層61には銀又はアルミニウムの少なくとも一方を含有する導電性粒子(結晶性粒子)63が分散されるが、焼成の際にガラス層61内部に析出したものと推測されている。また、銀層62の内部にも微細なガラス粒子64が分散される。このガラス粒子64は、銀粒子の焼成が進行していく過程で、残存したガラス成分が凝集したものと推測される。
このようにして形成される下地金属層60における銀層62の平均結晶粒径が0.5μm以上3.0μm以下の範囲内に調整される。
ここで、加熱温度が350℃未満及び加熱温度での保持時間が1分未満の場合には、焼成が不十分となり、下地金属層60を十分に形成することができないおそれがある。一方、加熱温度が645℃を超える場合及び加熱温度での保持時間が60分を超える場合には、焼成が進行し過ぎて、熱処理後に形成される下地金属層60における銀層62の平均結晶粒径が0.5μm以上3.0μm以下の範囲内とならないおそれがある。
なお、下地金属層60を確実に形成するためには、熱処理時の加熱温度の下限を400℃以上とすることが好ましく、450℃以上とすることがより好ましい。また、加熱温度での保持時間は5分以上とすることが好ましく、10分以上とすることがより好ましい。
一方、焼成の進行を確実に抑制するためには、熱処理時の加熱温度を600℃以下とすることが好ましく、575℃以下とすることがより好ましい。また、加熱温度での保持時間を45分以下とすることが好ましく、30分以下とすることがより好ましい。
(銀ペースト層)
下地金属層60を形成した回路層12、スペーサ20、半導体素子30、リードフレーム40の間に銀ペースト層70を介在させた状態で、これらを積層する。
銀ペースト層70は、粒径0.05μm〜100μmの銀粉末と、樹脂と、溶剤と、を含有してなるペーストを塗布して形成した層である。
銀ペーストに用いられる樹脂としては、エチルセルロース等を用いることができる。銀ペーストに用いられる溶剤としては、α―テルピネオール等を用いることができる。
銀ペーストの組成としては、銀粉末の含有量が銀ペースト全体の60質量%以上92質量%以下とし、樹脂の含有量が銀ペースト全体の1質量%以上10質量%以下とし、残部が溶剤とするとよい。
また、銀ペーストに、蟻酸銀、酢酸銀、プロピオン酸銀、安息香酸銀、シュウ酸銀などのカルボン酸系金属塩等の有機金属化合物粉末を銀ペースト全体の0質量%以上10質量%以下含有させることもできる。また、必要に応じて、アルコールや有機酸等の還元剤を銀ペースト全体に対して、0質量%以上10質量%以下含有させることもできる。
なお、この銀ペーストは、その粘度が10Pa・s以上100Pa・s以下、より好ましくは30Pa・s以上80Pa・s以下に調整されている。
この銀ペーストを回路層12の下地金属層60の上、スペーサ20の表面、リードフレーム40の表面にそれぞれ、例えばスクリーン印刷法等によって塗布して、乾燥することにより、銀ペースト層70となる。この銀ペースト層70は、接合時に対向する接合予定面のいずれかの表面に形成されていればよい。図2(c)に示す例では、回路層12の表面、スペーサ20の半導体素子30に対向する側の表面、リードフレーム40の半導体素子30に対向する側の表面にそれぞれ銀ペースト層70が形成されている。
なお、銀ペースト層70として、銀粉末を酸化銀粉末に代えた酸化銀ペーストを用いることもできる。酸化銀ペーストは、酸化銀粉末と、還元剤と、樹脂と、溶剤と、を含有しており、これらに加えて有機金属化合物粉末を含有している。酸化銀粉末の含有量が酸化銀ペースト全体の60質量%以上92質量%以下とされ、還元剤の含有量が酸化銀ペースト全体の5質量%以上15質量%以下とされ、有機金属化合物粉末の含有量が酸化銀ペースト全体の0質量%以上10質量%以下とされており、残部が溶剤とされている。
[一括接合工程]
図2(c)に示すように、回路層12の銀ペースト層70の上にスペーサ20を重ね、そのスペーサ20の銀ペースト層70の上に半導体素子30を重ね、その半導体素子30の上にリードフレーム40の銀ペースト層70を重ねるようにして、これらを積層状態とする。
そして、積層方向に1MPa以上20MPa以下の加圧力を作用させた状態で、180℃以上350℃以下の温度に加熱する。その温度の保持時間は1分以上60分以下の範囲内であればよい。この熱処理によって、銀ペースト層70が焼結して、回路層12、スペーサ20、半導体素子30、リードフレーム40の相互間で銀接合層71を形成し、この銀接合層71によって回路層12、スペーサ20、半導体素子30、リードフレーム40が一体に接合される。
なお、酸化銀と還元剤とを含む酸化銀ペーストからなる銀ペースト層70を用いた場合、接合(焼成)時に、酸化銀が還元することにより析出する還元銀粒子が、例えば粒径10nm〜1μmと非常に微細であることから、緻密な銀接合層71を形成して、より強固に接合することができる。
[樹脂封止工程]
以上のようにして、パワーモジュール用基板10にスペーサ20、半導体素子30及びリードフレーム40を接合した後、パワーモジュール基板10の放熱層13の下面を除き、パワーモジュール用基板10、スペーサ20、半導体素子30及びリードフレーム40の接続部付近を一体にモールド樹脂50によって封止する。
具体的には、例えばエポキシ樹脂等からなる封止材を用いてトランスファーモールディング方法によってモールド樹脂50を形成し封止する。リードフレーム40の外側端部はモールド樹脂50から露出させておく。
このようにして製造されるパワーモジュール100は、半導体素子30が、剛性の高いパワーモジュール用基板10とリードフレーム40との間に挟まれた状態で接合され、かつ加圧されることから、反りの発生が抑制され、このため、半導体素子30等を破損させることなく良好な接合状態を得ることができる。また、パワーモジュール用基板10にスペーサ20、半導体素子30、リードフレーム40を一度に接合することができ、製造も容易になる。
2.第2実施形態
図5は、パワーモジュール用基板10にヒートシンク80を備えた第2実施形態を示している。
このヒートシンク80を備えたパワーモジュール用基板10は、第1実施形態と同様のパワーモジュール用基板10の放熱層13に、無酸素銅やタフピッチ銅等の純銅、又は、Cu−Zr合金等の銅合金からなるヒートシンク80が接合されたものである。
このヒートシンク80は、平板状の天板部81と、その天板部81の一方の面に一体に突出形成された多数のピン状フィン82とを有している。天板部81の厚さは0.6mm以上6.0mm以下とされる。
そして、このヒートシンク80の天板部81のピン状フィン82とは反対側の表面と放熱層13とが接合される。これらヒートシンク80と放熱層13とは拡散接合によって接合される。この拡散接合では、積層方向に0.3MPa以上10MPa以下の加圧力を作用させて400℃以上550℃以下の温度に加熱することにより行われる。
このヒートシンク80を備えるパワーモジュール用基板10の場合も、第1実施形態と同様に、回路層12、スペーサ20、半導体素子30、リードフレーム40の間に銀ペースト層70を介在させた状態でこれらを積層し、積層方向に1MPa以上20MPa以下の加圧力を作用させた状態で、180℃以上350℃以下の温度に1分以上60分以下の保持時間で加熱することにより、これらを一括して接合する。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層12には一括接合の前に金、銀、ニッケル等からなる下地金属層60が形成される。スペーサ20、半導体素子30、リードフレーム40は下地金属層60を設ける必要はないが、それぞれの接合予定面に金、銀、ニッケル等からなる下地金属層を形成しておいてもよい。
そして、一括接合後に、ヒートシンク80の天板部81の上面までをモールド樹脂50によって一体に封止することにより、パワーモジュール101が製造される。
このヒートシンク80を備えるパワーモジュール101の場合、ヒートシンク80の剛性が高いので、反りを防止する効果がより高くなる。
図5に示す例では、ヒートシンク80は天板部81にピン状フィン82を有する構造としたが、ピン状フィン82に代えて板状フィンを有するもの、冷却流路を仕切り壁を介して複数設けた多穴管状のもの、一つの扁平な流路内に波板状のフィンを設けたもの、あるいは、フィンを有しない平板状の天板部81のみからなるもの等としてもよい。
その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、いずれの実施形態においても、スペーサを設けたが、リードフレームの位置調整が不要な場合等にはスペーサを設けなくてもよい。
スペーサを設けずに、パワーモジュール用基板の回路層の上に半導体素子、リードフレームを一括で接合したもの(実施形態1)、パワーモジュール用基板の回路層の上にスペーサを介して半導体素子、リードフレームを一括して接合したもの(実施形態2)、ヒートシンクを備えるパワーモジュール用基板の回路層の上にスペーサを介して半導体素子、リードフレームを一括して接合したもの(実施形態3)の三種類を作製した。
いずれも、パワーモジュール用基板は、セラミックス基板として厚さ0.635mmの窒化アルミニウム、回路層として厚さ0.4mmの純度99.99%のアルミニウム、スペーサとして厚さ2.0mmの無酸素銅、半導体素子として厚さ0.15mmのシリコンチップ、リードフレームとして厚さ1.0mmの無酸素銅を用いた。回路層表面の下地金属層は、上述したガラス含有銀ペーストを用いて形成し、図2(c)に示すように銀ペーストを塗布した後、積層して一括接合した。接合時の温度と接合時の荷重を変えて複数の試料を作製し、接合性、部材の破損、半導体素子の破損(素子の破損)の有無を確認した。
接合性は、インサイト株式会社製超音波画像測定機を用い、接合界面の超音波探傷像を取得し、接合率が90%以上であった場合を○、90%未満であった場合を×とした。
部材の破損の有無は、回路層の変形度合を観察し、正常の場合を○、端部に潰れが認められる場合を×とした。
半導体素子の破損の有無は、インサイト株式会社製超音波画像測定機を用い、半導体素子にクラックが認められる確率が10%以下の場合を○、半導体素子にクラックが認められる確率が10%を超える場合を×とした。
これらの結果を表1に示す。
Figure 0006853435
この表1からわかるように、1MPa以上20MPa以下の加圧力を作用させた状態で180℃以上350℃以下の温度で一括接合することにより、接合性が良好で、部材の破損や半導体素子の破損は確認できなかった。
10 パワーモジュール用基板
11 セラミックス基板
12 回路層
13 放熱層
15 ろう材
20 スペーサ
30 半導体素子
40 リードフレーム
50 モールド樹脂
60 下地金属層
61 ガラス層
62 銀層
70 銀ペースト層
71 銀接合層
80 ヒートシンク
100,101 パワーモジュール

Claims (3)

  1. セラミックス基板の一方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる回路層が接合されたパワーモジュール用基板における前記回路層に半導体素子が接合されるとともに、該半導体素子に銅又は銅合金からなるリードフレームが接合されてなるパワーモジュールの製造方法であって、
    前記パワーモジュール用基板の前記回路層の接合予定面にガラス含有銀ペーストを塗布して焼成することにより下地金属層を形成した後、前記回路層の前記下地金属層と前記半導体素子との間、及び前記半導体素子と前記リードフレームとの間にそれぞれ銀ペースト層を介在させた状態で、前記パワーモジュール用基板、前記半導体素子、前記リードフレームを積層し、これらを積層方向に1MPa以上20MPa以下の加圧力を作用させた状態で180℃以上350℃以下の温度に加熱することにより前記銀ペースト層を焼結させて、前記回路層と前記半導体素子との間、及び該半導体素子と前記リードフレームとの間をそれぞれ接合することを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
  2. 前記パワーモジュール用基板には、前記回路層とは反対側にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる放熱層を介して銅又は銅合金からなるヒートシンクが接合されていることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュールの製造方法。
  3. 銅又は銅合金からなるスペーサを前記回路層の前記下地金属層と前記半導体素子との間又は前記半導体素子と前記リードフレームとの間の少なくともいずれかに銀ペースト層を介して介在させ、前記回路層、前記半導体素子、前記リードフレームとともに前記スペーサを同時に接合することを特徴とする請求項1又は2記載のパワーモジュールの製造方法。
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