JP6850297B2 - ナチュラルキラー細胞の生体内プライミング - Google Patents

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Description

本発明は、癌治療のための方法に関し、より具体的には、癌および他の疾患治療のためのナチュラルキラー細胞の生体内プライミングに関する。
ナチュラルキラー(NK)細胞は、抗原の刺激なしに特定の腫瘍細胞およびウイルス感染細胞に結合し、パーフォリンを含む顆粒の挿入によってそれらを殺傷させることができるリンパ球である。
NK細胞は癌を認識すること、および係り合って溶解することができないので、多くの癌が体内で発生し増殖する。前者は免疫監視の失敗である。後者は、NK細胞による殺傷を回避することができる腫瘍の変化によるものである。
2012年9月4日に発行された米国特許第8,257,970号は、生体外での腫瘍細胞調製によってナチュラルキラー細胞を活性化する方法を記載している。この内容を参照により本明細書に組み込むものとする。この970特許の実施形態は有望に見えるが、とりわけスケーラビリティ、および特有な患者および疾患への広範な適用など、商業用プラットフォームにこの技術を適用するには多くの問題がある。
事実、癌を治療するための効果的な方法を見出すという問題は、長い間手探りで進められているが殆ど解決されていない。このため、米国政府は、「Cancer Moonshot」なるプログラムを立ち上げ、内実には治療法へ向けて進歩率を2倍にする、すなわち5年間で10年分の進展を目指している。
癌および他の疾患を治療する目的で、免疫応答を刺激する新規な方法が引き続き必要とされている。
多くの癌に対する問題は、癌細胞が、その膜表面にある特定のシグナルをダウンレギュレートして、NK細胞による殺傷を効果的に回避してしまうことである。従って、癌はNK細胞による殺傷を回避し、その癌に冒された患者内で増殖することができる。
ヒトおよび動物の患者の様々な癌を治療するための方法を開示する。本明細書内に開示するのは、腫瘍細胞でしばしばダウンレギュレートされるシグナルにNK細胞を暴露し、このプライミングに続いてNK細胞を腫瘍細胞に接触させると、そのNK細胞が腫瘍細胞表面でダウンレギュレーションされていない残りのシグナルと接触することによって活性化することができ、それによって腫瘍細胞の溶解を促進するように、NK細胞を生体内で「プライミング」する戦略および方法である。要するに、この方法は、生体内でのナチュラルキラー(NK)細胞の「プライミング」を達成するものであり、休止NK(rNK)細胞がプライミング腫瘍細胞調製物(PTCP)と接触して、プライミングされたNK(pNK)細胞になる。このプライミングされたNK細胞が腫瘍細胞および残りのシグナルと接触すると、その完全な活性化および腫瘍細胞の溶解ができる。
発明の有利な効果
プライミング腫瘍細胞調製物は、休止NK細胞に第1のシグナルを効果的に提供するタンパク質および/またはリガンドの生物学的製物である。第1のシグナルは、各癌変異体に特異ではないため、このようにPTCPに曝させることによってNK細胞にまず「プライミング」をすると、NK細胞は、複数の癌細胞変異体の位置を突き止め、その溶解を実行する。したがって、この提案の方法は、多くの癌のタイプを治療するための戦略を提供し、単一の変異体に限定されるものではない。
さらに、本明細書に記載の方法は自己由来ではないため、それ故に、大きな商業規模での利用が可能である。1種のPTCPを調整して生産すれば、これを用いて様々な癌の変異体および他の感染症に患う多くの患者を治療することができる。
この他の利点は、本明細書および図面の完全に見直せば当業者には明らかになるであろう。
図示の一実施形態によるNK細胞の生体内プライミングの方法を示す。 シグナル1を発現し、NK細胞をプライミングすることができる腫瘍細胞株であるCTV1細胞の添加のみが、ヒトPBMC培養物中のRAJI細胞(NK耐性細胞株)の増殖を減少させることができることを示す。 NK耐性腫瘍株であるRAJI細胞がヒトPBMCの集団に添加された場合、CTV1細胞をこの培養物に添加すると、RAJI細胞の増殖が大幅に減少することを示す。 混合培養物中のRAJI細胞増殖の減少が、CTV1によってプライミングされたNK細胞による特定RAJIの溶解に関連することを示す。
ナチュラルキラー(NK)細胞を用いて腫瘍を死滅させることは、プライミングおよびトリガーを含む2段階のプロセスである。すなわち、NK細胞は、腫瘍細胞を殺傷するためにプライミングされトリガーされなければならない。プライミングおよびトリガーはそれぞれ、NK細胞および腫瘍細胞の異なるセットのリガンドによって制御される。自然に発生するヒト癌の大部分は、細胞表面にプライミングリガンド(priming ligands)がないため、NK殺傷に対して抵抗性がある。すなわち、トリガーリガンドは腫瘍細胞表面に残るが、NK細胞はプライミングされていない(すなわち、腫瘍細胞表面にプライミングリガンドは存在しない)ため、腫瘍細胞致死を引き起こさない。ヒト癌の大半で、腫瘍細胞表面にプライミングリガンド(シグナル1)が欠如しているため、NK細胞は患者の癌増殖の制御に関与しないし、関与することができない。そこで、NK細胞を人為的に「プライミング」して、腫瘍細胞の表面にあるトリガーシグナル(シグナル2)に接触させると腫瘍細胞を死滅させる(溶解する)ことができるようにする戦略をここに開示する。本明細書中に開示する技術は、NK細胞がヒト癌の制御において果たす役割、予防と治療との両方の役割を拡大させるものとなる。
癌の制御におけるNK細胞の役割は、NK細胞をプライミングするサイトカインを用いて最初に説明された。1980年代にインターロイキン−2(IL−2)およびNK細胞活性化におけるその役割が発見されたことにより、腫瘍免疫療法でのリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の使用に関心が高まった。しかし、これらの試験結果は殆どが期待はずれのものであった。IL−2と共に患者に自己LAK細胞を投与する効果を調べた研究では、20%未満の患者しか反応しなかった(Rosenburg他)。その後の研究によれば、IL−2は、生体内で循環NK細胞の数を大きく増大させるが、この細胞は最大限の傷害性を有するものではない(Miller他)。
もっと最近では、プライミングリガンドを保持するがトリガーリガンドを欠く腫瘍細胞を注意深く選択して使用するサイトカインフリープライミング技術が開発されている(North他)。休止NK細胞(rNK細胞はCD69−)がプライミング腫瘍細胞(PTC)、例えばCTV−1細胞と共に置かれた場合、NK細胞は、活性化された表現型(pNK細胞はCD69+)およびシェディングCD16よって規定されるようにプライミングされる。pNK細胞は、トリガーリガンドを表面に有する腫瘍細胞を死滅させる。これは、骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、リンパ腫、乳房、卵巣、肺、腎臓、前立腺および他のGI並びにGYN悪性腫瘍を含み、これに限定されない多くのヒト腫瘍タイプにおいて事実であると信じられており、いくつかの例においては確認もされている。すなわち、大多数の患者において、彼らの腫瘍は、その細胞表面からプライミングリガンドを排除することによってNK細胞の死滅を回避するが、細胞表面にトリガーリガンドを保持しているため、プライミングされたNK細胞による殺傷を依然として受けやすい状態である。
腫瘍は、NK細胞の殺傷に対して抵抗性(NK耐性)がある、またはNK細胞によって死滅する(NK感受性)。大多数の腫瘍および腫瘍細胞株はNK耐性である。ほとんどのNK耐性腫瘍および細胞系は、その細胞表面にプライミングリガンドを有さない。これは、NK細胞が腫瘍細胞を殺傷するのに必要な2つのシグナルのうちの1つを得られないことを意味する。プライミングシグナルを提供するIL−2によってプライミングされたNK細胞に対するNK耐性株の感受性によって証明されるように、NK耐性腫瘍は依然としてそれらの細胞表面にトリガーリガンドを有するので、プライミングシグナルを受けたNK細胞によって殺傷される。IL−2は、全身性NK細胞プライミングを誘発するには高用量が必要であるが、これが制御不能な副作用を引き起こすため、臨床的に使用することが困難であることが判明した非常に強力なサイトカインである。したがって、生体内でプライミングシグナルを人為的に提供して、サイトカインの毒性レベルの投与をせずとも腫瘍細胞と相互作用して死滅させることができるであろうpNK細胞にNK細胞を変換することが見いだされ、これこそが本明細書に開示する戦略である。
治療の一部としてプライミングシグナル(SI)を受けた休止NK細胞は、腫瘍活性化NK細胞(TaNK)と呼ばれる。TaNK感受性腫瘍は、血液腫瘍および固形腫瘍の大部分である。TaNK耐性癌があり、例えばCLL(慢性リンパ球性白血病)である。TaNK耐性腫瘍は、この治療戦略による治療には適格ではないであろう。
プライミングリガンド(SI)を細胞表面に保持する稀な癌および癌細胞株は、NKプライミング腫瘍細胞(PTC)と呼ばれる。PTCは、その細胞表面からトリガーリガンド(S2)をダウンレギュレートすることにより、NK細胞による死滅を回避する。これらは、細胞表面のプライミングリガンド(SI)を除去することによってNK細胞による死滅を回避する大多数の癌の鏡像である。PTCは小さいが、細胞表面に発現する少なくとも3つのプライミングリガンドCD15、LFA−1、NKp46、2B4およびDNAMの何らかの組み合わせを有する、腫瘍細胞の同定可能なサブセットである。CD15、NKp46、LFA−1をその細胞表面に発現する、急性リンパ芽球性白血病患者由来の細胞株であるCTV−1細胞およびその溶解物は、ヒト休止NK細胞をプライミングする。NKp46、2B4およびDNAMをその細胞表面に発現する腫瘍細胞が、休止中のヒトNK細胞をプライミングするために使用可能であることはすでにわかっている。CD15、LFA−1、NKp46、2B4およびDNAMの他の組み合わせを用いて、ヒトNK細胞をプライミングすることができるとさらに考えられる。
休止NK細胞のプライミングは、生体外および/または生体内で起こり得る。生体内プライミングは効果的ではあるが、記号論理学的(logistically)に複雑で、費用がかかり、癌の治療法としての制限がある。この文書では、NK細胞の生体内プライミングが開示されており、ここでは患者の休止NK細胞が、循環(circulation)を離れずにプライミングされる。
トリガーリガンド(S2)を細胞表面からダウンレギュレートしている癌には、TaNKに対して耐性を持つものがある。TaNKがTaNK耐性腫瘍(TRT)と接触すると、プライミングシグナル(SI)のみが提供され、シグナル(S2)がトリガーされないため、TaNK細胞がトリガーされず、この腫瘍は死滅しない(溶解しない)。TRTに対しては異なる治療戦略を必要である。
NK細胞の生体内プライミングのためのPTCP
プライミング腫瘍細胞調製物(PTCP)を患者に導入し、ここでPTCPはNK細胞を休止状態のrNK細胞(CD69−)から生体内でプライミングされた状態のpNK細胞に変化させるように構成される。プライミングされたNK(pNK)細胞は、一般に、CD69+、CD16−、またはCD69+およびCD16−の組み合わせとして特徴付けられる。PTCPは、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、くも膜下腔内注入によって、または鼻腔内、経気管支もしくは結膜点滴として投与することができる。PTCPは、溶解物、溶解物の一部、エキソソームまたは微小胞を含む細胞またはその一部とすることができる。この細胞またはその一部は、プライミングリガンドCD15、LFA−1、NKp46、2B4およびDNAMの少なくとも3つを含む細胞株由来とすることができる。この細胞またはその一部は、生きている状態、放射線照射された状態、凍結された状態、凍結乾燥された状態、固定された状態、化学的改変された状態または遺伝子改変された状態、または他の状態で提供することができる。一実施形態は、上記のプライミングリガンドの3つ以上を含む照射腫瘍細胞株の直接注入を含む。別の実施形態は、rNK細胞をpNK細胞に変換するための腫瘍細胞溶解物またはその一部の注入である。PTCPは、rNK細胞にプライミングリガンドを提示し、それらをpNK細胞に変換する抗体(モノクローナル、二重特異性および三特異性抗体およびミニボディ)、タンパク質、アプタマー、小分子またはこの組み合わせを含む人工生産物とすることができる。一実施形態は、プライミングリガンドの標的を結合する2種の二重特異性抗体の注入である。別の実施形態は、プライミングリガンドの標的を結合する三重特異的抗体を注入することである。PTCPは、細胞と人工生産物との組み合わせ産生物とすることができる。例えば、人工の球体を腫瘍細胞株の溶解物でコーティングしてPTCPを産生することができる。このPTCPを、人工的な産生物の組み合わせとすることができる。一実施形態では、脂質、金属、ポリマーまたはこの組み合わせのナノスフェアが、プライミングリガンドの標的を結合する抗体でコーティングされる。別の実施形態では、脂質、シラン、ポリマーまたはこの組み合わせのナノスフェアが、プライミングリガンドの標的を結合する合成プライミングリガンド、アプタマーまたはタンパク質でコーティングされる。
プライミング腫瘍細胞調製物(PTCP)は、単剤療法、連続療法または単剤および連続療法の組み合わせとして投与することができる。PTCPは、1日1回または毎日投与し得る。PTCPは1回または複数回使用することができる。PTCPは、他の薬物、放射線および外科療法との併用療法の一部として投与することができる。
PTCPが全細胞であるいくつかの実施形態では、とりわけジンクフィンガー、CRISPRまたはTALENを始めとする遺伝子編集DNAヌクレアーゼに基づく技術、rAAVまたは他のウイルスベクターを伴うウイルスベクターを基礎にした遺伝子編集、及び他の遺伝子工学方法など、これに限定されない遺伝子工学技術を使用して、個々の独特な特性をPTCPに入れ込むことができる。全細胞PTCPは患者の免疫応答を刺激するので、同種異系細胞に対する患者の免疫応答を低下させるために全細胞ベースでPTCPの遺伝子改変を行うことができる。一実施形態では、細胞表面からのHLAクラスI抗原の発現が排除される。別の実施形態では、HLAクラスIおよびHLAクラスII抗原がその細胞の表面から排除される。別の実施形態では、HLA−E発現の増加および/またはHLA−G発現の増加などの免疫攻撃から細胞を保護する表面タンパク質発現の増加がある。PTCPに対してこのように遺伝子改変すると、患者に同時免疫抑制を使用する必要性を低減および/または排除することにより、全細胞ベースのPTCPの有用性が増加し、細胞ベースのPTCPを使用して患者に複数の治療を施すことが容易になる。
PTCPが全生細胞(live whole cell)である実施形態では、細胞が増殖または生着する(患者に半永久的または永続的に滞留)可能性がある。増殖または生着が望ましくない場合、生細胞増殖を防ぐための技術を治療プロトコールまたは細胞内に設計することができる。一実施形態では、全生細胞PTCPは、患者に注入される前に放射線照射されるので、この細胞は増殖しない。放射線照射はまた、生存する全生細胞PTCPの生着を妨げる。別の実施形態において、この細胞を、患者への注入または患者の被爆前に、細胞傷害剤で処置する。別の実施形態では、この細胞を、患者に注入する前に凍結乾燥する。凍結乾燥することで、さらなる細胞分裂を防止する。別の実施形態では、チミジンキナーゼなどの、これに限定されないが自殺遺伝子を含むようにこの細胞を遺伝子改変する。自殺遺伝子を含むように遺伝子操作された全生細胞PTCPにおいて、患者の体中で全生細胞PTCPのNK細胞プライミング効果を排除したい場合、全生細胞PTCPを殺傷するために自殺遺伝子をトリガーする薬剤が患者に投与される。例えば、チミジンキナーゼ自殺遺伝子の場合、遺伝子操作された全生細胞PTCPの自殺をトリガーする薬物はガンシクロビルである。この自殺誘導剤は、所望の治療効果、疾患の負担、患者の健康状態および他の要因に依存して、数時間、数週間、数ヶ月の投与が可能、または投与が不可能な場合がある。例えば、最小限の残存疾患を有する患者においては、全生細胞PTCPが、短期間の治療、例えば月に1回の投与を1ヶ月、2ヶ月または3ヶ月間の治療に求められる場合がある。肺または脳への転移などより大きな疾患負荷を有する患者については、より長期のNKプライミング療法が、例えば、6,12または18ヶ月などの長期間に亘って、毎週、隔週または毎月の治療でその疾患を制御することが望ましい場合がある。制御されているが根絶されていない病気の患者では、病気をコントロールし延命させるために、毎週、2週間に1回、毎月、2ヶ月に1回、年4回、半年に1回、または毎年などの長期治療が必要となる可能性がある。前述のシナリオのいずれにおいても、PTCPの投与量(あるいは「プライミング腫瘍細胞調製剤(PTCP)」)およびその治療間隔は、腫瘍のタイプ、疾患の重症度または応答のタイプに基づいて異なり得る。例えば、治療において3ヶ月間は毎月1回投与し、次いで維持療法として患者が生きている限り2ヶ月ごとに半量を投与することができる。
PTCPはpNK細胞を産生するが、この細胞は非天然型であってヒトまたは動物には見られない。NK細胞は、SIまたはS2の結紮なしに癌細胞またはウイルス感染細胞を死滅させることができない休止NK細胞、またはSIおよびS2の双方が結紮した後に癌またはウイルス感染細胞を死滅させることができる活性化NK細胞のいずれかにのみ存在する。本発明は、SIのみに結紮を有する非天然型のプライミングされたpNK細胞を産生する。SIの結紮により、pNKは、ゲノム、プロテオーム、リピドーム、メタボロミクス、セクレミズム、表現型および機能アッセイを含み、これに限定されない1つまたはそれ以上の複雑なアッセイの組み合わせで測定することができる休止NK細胞および活性化NK細胞とは異なるバイオロジーを有する。
したがって、一般的な一実施形態では、NK細胞をプライミングする方法は、NK細胞を生体内でプライミング腫瘍細胞調製物(PTCP)と接触させるステップを含む。
一実施形態では、PTCPは、放射線照射後の無傷な腫瘍細胞を含む。この無傷な腫瘍細胞は、その表面に、CD15、LFA−1、NKp46、2B4およびDNAMからなる群からの少なくとも1つのプライミングリガンドを含むことができる。
別の実施形態では、PTCPは、放射線照射後の細胞膜調製物を含む。細胞膜調製物の膜は、CD15、LFA−1、NKp46,2B4およびDNAMからなる群からの少なくとも1つのリガンドを含むことができる。
いくつかの実施形態では、PTCPは、放射線照射後のCTV−1骨髄性白血病細胞またはその膜調製物を含む。
いくつかの実施形態では、プライミング中に、CD69の発現がNK細胞上でアップレギュレートされる。他の実施形態では、プライミングされるNK細胞がCD16−となるように、CD16をNK細胞表面でシェディング(shedding)する。
別の実施形態では、生体内でNK細胞をプライミングする方法は、
(i)1つ以上のプライミングリガンドを膜表面に付着して有する放射線照射後の腫瘍細胞またはその膜調製物を含むPTCPを患者に導入することであって、その1つ以上のプライミングリガンドのそれぞれが、CD15、LFA−1、NKp46、2B4およびDNAMからなる群からそれぞれ独立して選択される、導入と(ii)生体内におけるNK細胞のPTCPとの接触とを含む。この方法はさらに、放射線照射前に、腫瘍細胞または膜調製物を非晶質炭水化物−ガラスマトリックス中に固定化し、腫瘍細胞または膜調製物をその中に固定化した炭水化物ガラスマトリックスに放射線を照射するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、例えば水などの溶媒を用いて、腫瘍細胞または膜調製物をその中に固定化した炭水化物ガラスマトリックスを溶解することをさらに含む。他の実施形態では、この方法は、放射線照射前に、腫瘍細胞または膜調製物を凍結乾燥し、続いてこの凍結乾燥した腫瘍細胞または膜調製物に放射線を照射するステップをさらに含む。
放射線照射により、プライミング腫瘍細胞調製物を十分に不活性化して人体内でのその増殖を防止することができるが、このような増殖の防止には、本明細書に記載のおよび/または当該技術分野で一般に周知の他の手段を実行することができる。
NK細胞を生体内でプライミングするための、放射線照射後のCTV−1細胞
ここで、第1の好ましい実施形態では、CTV−1細胞に放射線を照射して、NK細胞の生体内プライミングのためのプライミング腫瘍細胞調製物(PTCP)を形成する。必要に応じて、上記のように遺伝子改変を実行してPTCPを得ることができる。
放射線の照射は、体内の増殖防止を目的として腫瘍細胞を一般に不活性化するが、同じ照射は、特に腫瘍細胞が水溶液中に懸濁している間に照射された場合、腫瘍細胞に関連するタンパク質および他の生体分子に害を及ぼしかねない。細胞副成分を保護するためには、当該技術分野で知られている方法を用いて腫瘍細胞調製物を非晶質炭水化物−ガラス状態で最初に固定化してから、その固定化調製物を照射することが好ましい。その後、水を用いて炭水化物を溶解させて、放射線を照射した腫瘍細胞またはその一部を分離することができる。
あるいは、腫瘍細胞調製物を凍結乾燥し、続いて放射線の照射をすることができる。
いくつかの実施形態では、放射線照射は必要ではない。すなわち、PTCPを導入した患者の体内でPTCPを増殖させることができないように他の手段を実行する。
CTV−1細胞は、その表面にCD15、NKp46、LFA−1リガンドを発現する。これらは、NK細胞の特定シグナルをプライミングするのに有用である。したがって、適切に不活性化したCTV−1細胞であれば、ヒト患者内に導入しても安全であり、その体内でNK細胞をプライミングするように機能する。
実施例1:共培養におけるRAJ1溶解
RAJI細胞は、NK細胞耐性腫瘍細胞株であることが知られている。
第1の実験では、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を正常な志願者から単離し、RAJI細胞と共に培養した。PBMCとRAJI細胞との共培養にNK細胞プライミング用のPTCPを添加して、生体内でのヒト血液の自然発生状態を模倣する系においてRAJI細胞に対するPBMC中のNK細胞の応答を修正する。共インキュベーションの間、RAJI細胞数が増加すれば、培養中のRAJI細胞が正常な増殖特性を示していることになる。RAJI細胞のみに対するNK細胞の存在下でRAJI細胞が減少すれば、PBMC培養においてNK細胞によりRAJI細胞が死滅(溶解)していることになる。プライミング組成物の存在は、PBMC集団内のNK細胞によるRAJI細胞死滅の程度を増加させると予測される。
第1の単離において、PBMCの量を既知の量のRAJI細胞でスパイクした。第2の単離では、同量のPBMCを同じ量のRAJI細胞およびSEM15++でスパイクした。第3の単離では、同量のPBMCを同じ量のRAJI細胞およびCTV−1でスパイクした。第4の単離では、同量のPBMCをRAJI細胞およびSEM15++およびCTV−1でスパイクした。図2Aのチャートおよび図2Bのプロットに示すように、24時間および48時間の時間間隔で、体積あたりの死滅RAJIの数を判定した。この結果によれば、SEM15++がRAJIの増殖を減少させず、CTV−1単独およびSEM15++と組み合わせて、RAJI細胞の増殖を減少させた。この実験を異なるPBMCドナーで繰り返し、結果を確認した。この実験から、我々は、CTV−1がRAJI細胞の増殖を減少させるように機能することを示す。我々の仮説は、CTV−1細胞表面機能に発現したリガンドが、末梢血からNK細胞をプライミングするシグナル1を提供して、これによってNK細胞はプライミングされた状態となるため、RAJI細胞を死滅させることができるというものである。このプライミングは、他の単核細胞の存在下および存在する全ての腫瘍細胞の存在下で発生する。
図2Aは、シグナル1を発現し、NK細胞をプライミングすることができる(rNKをpNKに変換する)腫瘍細胞株であるCTV1細胞のみの添加で、ヒト(PBMC)にいてRAJI細胞、NK耐性細胞株の増殖を減少させることが可能であることを示す。CD15陽性SEM細胞をPBMC培養物(負の対照として)に添加すると、RAJI細胞の増殖は変化せず、培地単独と比較して増加する可能性がある。CTV1およびCD15陽性SEM細胞の双方を培養物に添加すると、その応答はCTV1細胞の単独の添加と同等である。
これと比較して、図2Bに示すように、CD15陽性SEM細胞を培養物に添加すると、RAJI細胞の増殖が高まる。CTV1もSEM細胞も癌細胞株である。CTV1細胞とSEM細胞とは、CTV1細胞はシグナル1(プライミングシグナル)を発現するNK耐性細胞株であるが、信号2(トリガーシグナル)を有していない点で異なる。SEM細胞は、シグナル1およびシグナル2の両方を発現するNK感受性細胞である。CTV1細胞をPBMCに添加すると、NK細胞はプライミングされ、RAJI細胞が接触するとそれらを殺傷する。RAJI細胞の死滅は、RAJI細胞数の減少(増殖の低下)によって論証される。SEMを培養系に添加すると、そのNK細胞はSEM細胞を死滅させる。この系にはプライミングされたNK細胞がないので、RAJI細胞の死滅はない。RAJI細胞の増殖の高まりは、「低温標的阻害」現象によるものと思われる。この現象ではRAJI細胞を自発的に溶解することができるPBMC混合物内のNK細胞のうち僅かな割合の細胞がSEM細胞を優先的に標的とし、RAJI細胞を標的とすることができる細胞の数を減少させている。
実施例2:共培養部分IIにおけるRAJI溶解
第2の実験において、我々は、RAJI細胞の増殖に対する効果を、(i)PMBC単独、(ii)PBMCおよびCTV−1、(ii)IL−2およびIL−15を含むPBMC、並びに(iv)CTV−1、IL−2およびIL−15の組み合わせを含むPBMCのそれぞれについて調査した。結果を図3に示す。ここでは、上記の組み合わせに加えて、RAJI細胞に対するNK細胞比率を変えて調べた。我々は、48時間後、RAJI細胞に対する約12:1のPBMCの比にて、PMBCとCTV−1との組み合わせの方がPBMC単独よりもRAJI殺傷にはるかに有効であることを発見した。RAJI細胞に対するPBMCの比が2:1であっても、PBMC+CTV−1の組み合わせは、PBMC単独よりも明らかに良好であった。さらに、CTV−1を有するPBMCは、低用量のIL−2およびIL−15を組み合わせたPBMCよりも高い溶解を示した。ただしこのデータは、PBMCとCTV−1の組み合わせと低用量のIL−2及びIL−15とであれば、RAJI細胞致死を最大にしたことを示している。この実験は生体外で行ったが、我々は、IL−2およびIL−15の有無にかかわらず、CTV−1がNK細胞の生体内プライミングに有効であると考えている。
さらに、NK細胞の機能/健康(IL2およびIL15)を促進する微量の炎症性サイトカインの添加により、RAJI細胞の死滅は、CTV1細胞単独またはサイトカイン単独よりも著しく多くなる。
本開示の全体に亘ってCTV−1腫瘍細胞が使用してきたが、本発明はCTV−1細胞に限定されることを意図するものではない。この方法は、いかなる腫瘍細胞またはその一部で実施してもNK細胞のプライミングを得ることができる。したがって、第1の腫瘍細胞を照射し、NK細胞を生体内プライミングするために患者に導入し、このプライミングされたNK細胞を第2の腫瘍細胞に接触させることにより、これを溶解させることができる。本発明の上記および他の態様は、当業者には理解されるであろう。
本開示は、癌および他の感染症の治療方法に関する。

Claims (4)

  1. 生体内で患者のNK細胞をプライミングするための不活性化プライミング腫瘍細胞調製物(PTCP)を患者に導入することを含む癌の治療に用いられる不活性化腫瘍細胞調製物であって、
    腫瘍細胞が人体内でその増殖を防止するように不活性化され、CTV−1骨髄性白血病細胞株由来の細胞または膜部分を含む、不活性化プライミング腫瘍細胞調製物。
  2. 前記PTCPが、不活性化を達成するために放射線照射されてなる請求項1に記載の不活性化プライミング腫瘍細胞調製物。
  3. 前記不活性化されたPTCPが、放射線照射された細胞またはその膜部分を含む請求項1に記載の不活性化プライミング腫瘍細胞調製物。
  4. 前記PTCPが、非晶質炭水化物−ガラスマトリックスに固定され、放射線照射されることにより不活性化されてなる請求項3に記載の不活性化プライミング腫瘍細胞調製物。
JP2018534524A 2015-12-07 2016-11-14 ナチュラルキラー細胞の生体内プライミング Active JP6850297B2 (ja)

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