JP6849969B2 - 水処理用膜 - Google Patents

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Description

本発明は、水処理用膜に関する。より詳しくは、不純物を含む水の処理に好適に用いることができる水処理用膜に関する。
水処理用膜は、不純物を含む水を処理するために用いられる膜であり、世界各国で排水基準、水質基準が強化されるに伴い、使用が広がっている。水処理用膜が使用される用途には、浄水処理、プロセス水製造、下水処理、工業排水処理、海水の淡水化等があり、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜等の種々の水処理用膜が用途に応じて使い分けられている。
これら水処理用膜では、使用に伴って膜に目詰まりが発生することが大きな課題であり、目詰まりを抑制するための方法が検討されている。そのような方法の1つとして、膜の表面をポリ(2−メトキシエチルアクリレート)で変性する技術が開示されている(非特許文献1参照)。
カズキ アカマツ(Kazuki Akamatsu)外3名、「セパレーション アンド ピュリフィケーション テクノロジー(Separation and Purification Technology)」、2013年、102巻、157−162頁
水処理用膜の目詰まりの原因には様々なものがあるが、水中に存在する微生物の膜への付着も原因の1つである。水処理用膜は、微生物を含む水を処理する用途に用いられることも多いため、微生物を原因とする水処理用膜の目詰まりを抑制して膜の水処理機能を維持することができれば水処理の効率を向上させることが可能となる。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、微生物を原因とする膜の目詰まりが抑制された水処理用膜を提供することを目的とする。
本発明者は、微生物を原因とする膜の目詰まりを抑制する方法について種々検討したところ、水処理機能を有する多孔質の膜を1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーで修飾すると、水処理用膜表面への微生物の付着が抑制され、微生物を原因とする膜の目詰まりを抑制することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、不純物を含む水の処理に用いられる水処理用膜であって、上記水処理用膜は、多孔質の膜がポリマーで修飾された構造を有し、上記ポリマーは、1g当たり0.1g以上の中間水を有することを特徴とする水処理用膜である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の水処理用膜は、多孔質の膜を修飾するポリマーが1g当たり0.1g以上の中間水を有することを特徴とする。これにより、微生物の水処理用膜への吸着が抑制される理由は以下のように考えられる。
ポリマーに水が水和した場合、ポリマーの表面には、ポリマーと強い相互作用を有して凍結しない水(不凍水)と、不凍水よりもポリマーの表面から離れて存在し、ポリマーとの相互作用が弱い自由水とが存在するが、ポリマーの中には、不凍水と自由水との間に、ポリマー又は不凍水と中間的な相互作用をする水(中間水)を有するものがある。微生物等の生体成分は、タンパク質の周囲に水和殻を形成して安定しており、この水和殻が異物表面や不凍水に接触して攪乱又は破壊されると生体成分が高分子材料表面に吸着すると考えられる。これに対し、ポリマーが中間水を有するものであると、中間水がクッションの役割を果たして微生物がポリマーの不凍水に接触することを妨げる結果、微生物のポリマーへの吸着が抑制されると考えられる。本発明の水処理用膜では、1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーのこのような機能により、微生物の水処理用膜への吸着が抑制されると考えられる。
上記多孔質の膜を修飾するポリマーは、1g当たり0.1g以上の中間水を有するものであればよいが、1g当たり0.2g以上の中間水を有するものであることが好ましい。より好ましくは、1g当たり0.3g以上の中間水を有するものであり、更に好ましくは、1g当たり0.4g以上の中間水を有するものである。ポリマー1g当たりの中間水の量に特に上限はないが、通常2.0g以下である。
また、上記多孔質の膜を修飾するポリマーは、ポリマー1g当たりの中間水と不凍水との質量比(中間水量/不凍水量)が0.5以上であることが好ましい。
不凍水質量に対する中間水質量の割合がこのような範囲であると、水処理用膜への微生物の付着を抑制する効果をより充分に発揮することができる。当該質量比は、より好ましくは、1.0以上であり、更に好ましくは、1.5以上であり、特に好ましくは、2.0以上である。この質量比には、特に上限はないが、ポリマー1g当たりの中間水と不凍水との質量比は通常10以下である。
ポリマーが有する中間水や不凍水の量は、以下のようにして測定することができる。
所定量の水を含水したポリマーを一旦充分に冷却した後、ゆっくりした速度で昇温させながら吸熱、発熱量を観察してゆくと、0℃以下の特定の温度域で発熱が観察され、0℃付近の温度で吸熱が観察される。0℃以下の特定の温度域で発熱は、過冷却により準安定な状態で凝固していた中間水が加熱により規則化(コールドクリスタリゼーション)を生じたことによるものと考えられる。また、0℃付近の温度での吸熱のうち、0℃以下の温度域での吸熱は中間水の低温融解によるものであり、0℃での吸熱は自由水の融解によるものである。したがって、0℃以下の特定の温度域で発熱量、0℃付近の温度で吸熱量、及び、全含水量から中間水、自由水、不凍水の量を求めることができる。
ポリマーが有する中間水や不凍水の量は、示差走査熱量計(DSC)測定を用いて実施例に記載の方法で確認することができる。
上記多孔質の膜を修飾するポリマーとしては、1g当たり0.1g以上の中間水を有するものである限り、その構造は特に制限されないが、下記式(1);
Figure 0006849969
(式(1)中、Rは、同一又は異なって、水素原子、−CH、又は−(CHCOORを表す。Rは、同一又は異なって、水素原子、−(CHROR、又は、下記式(2)で表される構造を表す。Rは、同一又は異なって、水素原子又は水酸基を表す。R、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。Xは、同一又は異なって、O又はNHを表す。m、nは、同一又は異なって、1〜20の数を表す。pは、同一又は異なって、0又は1を表す。)で表される構造単位を有するものであることが好ましい。
Figure 0006849969
(式(2)中、qは、同一又は異なって、0〜5の数を表す。rは、同一又は異なって、1〜3の数を表す。)
このような構造を有するポリマーは、水系重合を用いた重合プロセスでの製造がしやすく、多孔質の膜への修飾もしやすいことから、本発明の水処理用膜を構成するポリマーとして好適である。このような構造のポリマーを用いて構成される水処理用膜、すなわち、不純物を含む水の処理に用いられる水処理用膜であって、該水処理用膜は、多孔質の膜がポリマーで修飾された構造を有し、該ポリマーは、上記式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする水処理用膜もまた、本発明の1つである。
上記式(1)におけるRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表すが、炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基である。
上記式(1)におけるRが炭素数1〜20のアルキル基である場合、炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜10のアルキル基である。
上記式(1)におけるXは、好ましくは、O(酸素原子)である。
上記式(1)におけるm、nは、同一又は異なって、1〜20の数を表すが、mは、1〜10の数であることが好ましく、より好ましくは、1〜3の数である。また、nは、1〜10の数であることが好ましく、より好ましくは、1〜3の数である。
上記式(2)におけるqは、同一又は異なって、0〜5の数を表すが、0〜3の数であることが好ましく、より好ましくは、0〜2の数である。
上記式(2)におけるrは、同一又は異なって、1〜3の数を表すが、1〜2であることが好ましく、より好ましくは、1である。
上記式(1)で表される構造単位を形成する単量体の具体例としては、例えば、下記(1−1)〜(1−4)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006849969
上記式(1)で表される構造単位を有するポリマーは、上記式(1)で表される構造単位のみからなるものであってもよく、その他の構造単位を有するものであってもよい。また、上記式(1)で表される構造単位を1種有するものであってもよく、2種以上有するものであってもよい。
上記式(1)で表される構造単位を有するポリマーが共重合体である場合、ランダム重合、ブロック重合、交互重合のいずれの形態のものであってもよい。
上記その他の構造単位を形成する単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖状アルキルアルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル等の(メタ)アクリル酸と炭素数3〜20の環状構造含有アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20の2価アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸と炭素数7〜15のフェノキシ基含有アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル等の(メタ)アクリル酸と炭素数3〜20のエポキシ基含有アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアミノ基含有アルコールとのエステル;α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の炭素数4〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのα−ヒドロキシアルキル誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,5−ジクロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどのN置換マレイミド類が挙げられる。これらの共重合可能な他の単量体は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖状アルキルアルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル等の(メタ)アクリル酸と炭素数3〜20の環状構造含有アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20の2価アルコールとのエステル が好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルであり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチルである。
上記式(1)で表される構造単位を有するポリマーは、全構造単位100質量%に対して、上記式(1)で表される構造単位を30〜100質量%有することが好ましい。このような割合で含むことで、得られるポリマーが水処理用膜への微生物の付着を抑制する効果をより充分に発揮することができる。より好ましくは、上記式(1)で表される構造単位を50〜100質量%有することであり、更に好ましくは、80〜100質量%有することである。
本発明において、上記多孔質の膜を修飾するポリマーは、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることが好ましい。重量平均分子量がこのような範囲であると、耐久性や機械強度に優れた材料となり好ましい。重量平均分子量は、より好ましくは、5,000〜500,000であり、更に好ましくは、10,000〜300,000である。
ポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリエチレングリコール換算により測定することができる。
本発明における上記多孔質の膜を修飾するポリマーの製造方法は特に制限されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等のいずれの方法を用いてもよい。
重合開始剤を用いて重合を行う場合、重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;後述する2−ブロモイソブチリルブロミド(BIBB)等のハロゲン化合物の開始剤等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記重合反応は、溶媒を使用せずに行っても良く、溶媒を使用してもよい。溶媒を使用する場合、溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級エステル類;トルエン、キシレン等の芳香族類等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記重合反応の反応温度は特に制限されないが、通常、0〜150℃の範囲で使用する単量体等の種類に応じて適宜選択することができる。
上記重合反応は、空気下で行ってもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、重合反応がラジカル重合である場合は、酸素による重合反応の失活を防ぐため、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
上記重合反応の製造工程は、重合反応工程以外の他の工程を含んでいてもよい。例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤や連鎖移動剤の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。
本発明の水処理用膜は、多孔質の膜がポリマーで修飾された構造を有する。ここで、多孔質の膜がポリマーで修飾されるとは、多孔質膜の表面にポリマーが固定されていることを意味する。本発明の水処理用膜では、多孔質膜の表面にポリマーが固定されることになる限り、多孔質膜の表面とポリマーとが、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合等により化学的に結合していてもよく、化学的に結合していなくてもよいが、化学的に結合していることが膜自身の寿命延長の目的で好ましい。化学的に結合していない例としては、物理的な吸着が挙げられ、疎水相互作用による吸着やノニオン性親水基同士の相互作用などが挙げられ、添加剤的に追加で膜修飾が可能な場合に好ましい。また、水処理用膜のポリマーでの修飾方法については、特に制限はなく、例えば、膜表面へのポリマーのグラフト重合、膜表面へのポリマーコーティング、膜繊維への湿式紡糸などを行うことで、膜表面の修飾を行うことが出来る。
本発明の水処理用膜において、多孔質の膜をポリマーで修飾する方法は、多孔質の膜にポリマーが固定されることが好ましく、その固定方法は特に制限はされないが、多孔質の膜の表面上で重合反応を行って1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーを製造する方法が好ましい。より好ましくは、多孔質の膜と1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーとが化学的に結合されたものとなるようにポリマーを製造することである。
上記多孔質の膜と1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーとが化学的に結合されたものとなるようにポリマーを製造する方法としては、(a)1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーとして、多孔質の膜を形成するポリマーが有する反応性官能基と反応することができる反応性官能基を有するポリマーを製造し、当該反応性官能基同士を反応させる方法や、(b)多孔質の膜を形成するポリマーに重合開始剤を固定し、当該重合開始剤を起点として1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーを製造する方法が挙げられる。
なお、ここで多孔質の膜を形成するポリマーは、多孔質の膜全体を形成するものであってもよく、多孔質膜の一部を形成するものであってもよい。すなわち、多孔質の膜が、多孔質の支持膜と該支持膜を形成する材料とは異なる材料により形成される多孔質の膜とを含む複合膜であって、上記多孔質の膜を形成するポリマーは、この複合膜のうちの一部の膜のみを形成するものであってもよい。
上記(a)の方法により1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーを製造する場合、多孔質の膜を形成するポリマーが有する反応性官能基と1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーが有する反応性官能基とが反応して結合を形成できるものであることが必要となるが、そのような結合を形成することができる反応性官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシル基と水酸基、エポキシ基と水酸基、ハロゲン化カルボキシル基と水酸基、カルボキシル基とアミノ基、ハロゲン化カルボキシル基とアミノ基等が挙げられる。
上記(b)の方法により1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーを製造する場合、多孔質の膜を形成するポリマーが有する反応性官能基に直接又は間接的に重合開始剤を結合させ、そのうえで、当該重合開始剤を起点として1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーの重合反応を進行させることで、1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーが多孔質の膜を形成するポリマーにグラフト重合した構造のポリマーを多孔質の膜上に形成することができる。
多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤とが直接結合する場合には、多孔質の膜を形成するポリマーが有する反応性官能基と重合開始剤が有する反応性官能基とが結合することになり、多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤とが間接的に結合する場合は、多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤とが、間に反応性官能基を複数有する化合物を介して結合することになる。
これらの結合を形成することができる反応性官能基の組み合わせとしては、上述したものと同様の組み合わせが挙げられる。
上記多孔質の膜を形成するポリマーの反応性の官能基に直接又は間接的に結合する重合開始剤は、多孔質の膜を形成するポリマーの反応性の官能基に直接又は間接的に結合することができる反応性の官能基と重合開始剤として機能する部位とを有していればよい。
反応性の官能基と重合開始剤として機能する部位とを有する重合開始剤としては、2−ブロモイソブチリルブロミド(BIBB)等のハロゲン化合物や、デナコール類等のジエポキシ化合物;トルイレンジイソシアナート系化合物等のジイソシアネート基含有化合物等が挙げられる。
上記重合開始剤としては、上述したものの中でも、反応性の官能基と重合開始剤として機能する部位とを有するハロゲン化合物であることが好ましい。重合開始剤がハロゲン化合物である場合、1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーの原料単量体として上述した式(1)で表される構造単位を形成する単量体を用いることで、原子移動ラジカル重合(ATRP)を行うことができ、1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーとして、高分子量かつ分子量分布の狭いポリマーを得ることができる。
上記多孔質の膜を形成する、反応性官能基を有するポリマーとしては、m−フェニレンジアミンとトリメソイルクロライドとの重縮合体等が挙げられる。
上記多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤とが間接的に結合する場合、多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤との結合を介する、反応性官能基を複数有する化合物としては、例えば、(オルト、メタ、パラ)フェニレンジアミン等のジアミン類;フタル酸等のジカルボン酸類;エチレングリコール等のジオール等が挙げられる。
上記多孔質の膜を形成するポリマーの反応性の官能基に間接的に重合開始剤を結合させたものの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミンとトリメソイルクロライドとの重縮合により多孔質の膜(重縮合体)を形成し、当該重縮合体が有するカルボン酸クロライド基にメタフェニレンジアミンを反応させ、そこに重合開始剤である2−ブロモイソブチリルブロミドを反応させたものが挙げられる。
上記多孔質の膜を形成するポリマーを製造する方法は特に制限されず、ポリマーの種類に応じて適宜重合方法を選択することができる。
例えば、メタフェニレンジアミンとトリメソイルクロライドとの重縮合体を製造する場合には、メタフェニレンジアミンの水溶液とトリメソイルクロライドの有機溶媒溶液とを多孔質の膜上に順に注いで界面重縮合反応によりポリマーを製造することができる。
上記界面重縮合反応は、反応を促進させるためにアミン化合物等の塩基を反応系中に添加して行ってもよい。
上記多孔質の膜をポリマーで修飾するための工程において有機溶媒を使用する場合、有機溶媒としては特に制限されず、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の1種又は2種以上を用いることができる。有機溶媒としては、多孔質膜を溶解しないものを選択することが好ましい。
上記多孔質の膜を形成するポリマーを製造する重合反応、及び、該多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤とが直接結合する場合における該多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤とを結合させる反応、並びに、多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤とが間接的に結合する場合における多孔質の膜を形成するポリマーと反応性官能基を複数有する化合物との反応や該反応性官能基を複数有する化合物と重合開始剤との反応は、いずれも0〜150℃の温度範囲内で、反応の種類に応じて適宜反応温度を調整して行うことができる。
上記多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤とを直接又は間接的に結合させる場合、当該反応に使用する重合開始剤の量は、他のポリマーの原料単量体の合計100質量%に対して、0.1〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜5質量%である。
また該多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤とを間接的に結合させる場合、多孔質の膜を形成するポリマーと重合開始剤との結合を介する、反応性官能基を複数有する化合物の使用量は、多孔質の膜を形成するポリマーの原料単量体の合計100質量%に対して、0.1〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜5質量%である。
上記多孔質の膜を形成するポリマーを製造し、当該他のポリマーの存在下で1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーの原料となる単量体成分を重合させる場合の重合反応は、上述した多孔質の膜を修飾するポリマーを製造する方法により行うことができる。
本発明の水処理用膜を構成する多孔質の膜は特に制限されず、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜等のいずれのものであってもよく、透水性の維持、洗浄回数の低減に効果が発揮できる。多孔質の膜に逆浸透膜を使用した場合、本発明の水処理用膜も逆浸透膜となるため、本発明の水処理用膜が逆浸透膜であることは本発明の好適な形態の1つである。特にポリアミド系RO膜の場合、薬品洗浄による処理がポリアミドの分解で困難となるため、本願の修飾された水処理膜の効能がより有効に発揮される。水処理用膜の孔径は、各種用途に適応させる目的で、選択が可能であり、好ましくは、0.1nm〜10μmであり、0.1nm〜1μmがより好ましく、RO膜用としては、0.1nm〜1nmが最も好ましい。水処理膜の材料としては、セルロース系、ポリスルホン系、ポリアミド系が好適に用いられ目的に応じて適した材料が選択できる。
本発明の水処理膜を使用する形態は特に制限されず、例えば、水処理装置を構成する材料等として好適に用いることができる。このような、本発明の水処理用膜を用いてなることを特徴とする水処理装置もまた、本発明の1つである。
本発明の水処理用膜は、上述の構成よりなり、微生物の付着による膜の目詰まりが効果的に抑制されたものであることから、微生物を含む水の処理に使用される膜として好適に用いることができる。
バイオファウリング加速膜透過流量試験の試験装置を示した図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
合成例1
(GLMA(グリセリンモノアクリレート)モノマーの合成)
<(1)イソピリデングリセリルアクリレート(iPGLMA)の合成>
撹拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管、及び、留出液受器に繋げたトの字管を付し、アクリル酸メチル230g、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(DOM)70gを仕込み、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7vol%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、オイルバス(バス温110℃)で加熱を開始した。留出液に水が出てこなくなってから、チタンテトライソプロポキシド4.5gを反応容器に添加し、エステル交換反応を開始させた。生成してくるメタノールをアクリル酸メチルで共沸留去しながら、ガスクロマトグラフィ(GC)分析によりiPGLMA/DOMの面積比を追跡した。反応開始から7時間後のGC分析で、iPGLMA/DOMの面積比が9/1を超えたのを確認し、反応を終了し、室温まで冷却した。反応液に精製水150gと抽出溶媒として酢酸エチル300gを加え10分撹拌した。触媒の加水分解により生じた酸化チタンの沈殿を、吸引濾過で除いた濾液を分液漏斗に移し、有機層と水層を分離した。有機層を精製水で2回洗浄したのち、ロータリーエバポレーターに移し、残存アクリル酸メチル及び軽沸成分を留去し、iPGLMA(下記反応式の化合物1)96gを得た。
<(2)グリセリンモノアクリレート(GLMA)の脱保護>
撹拌子を入れたナスフラスコにガス導入管を設け、精製水160mlとiPGLMA80gを加えて溶解させた後に、予め水に浸漬後に風乾した固体酸触媒アンバーリスト15Jwetを35g加え、ガス導入管を通して酸素/窒素混合ガス(酸素濃度7vol%)を吹き込みながら反応溶液を攪拌し、室温下で脱保護反応を開始させた。GC分析によりGLMA/iPGLMAの面積比を追跡し、面積比が99/1を超えたのを確認し、4時間で反応を終了した。固体酸触媒を濾別して得られた濾液をn−ヘキサンで洗浄し、未反応MG−2iPGLを除いた。水層を減圧濃縮し、目的とするGLMA(下記反応式の化合物2)53gを得た。
この2段階の合成反応は、下記式の反応である。
Figure 0006849969
合成例2
(PEA(ピロリドニルエチルアクリレート)モノマーの合成)
合成例1で、始めに反応器に仕込む70gのDOMを、70gのヒドロキシエチルピロリドン(HEPA)とする以外は同様にして、PEA89gを得た。
合成例3
(GLMAホモポリマーの合成)
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、冷却管を付し、単量体として合成例1で合成したGLMA2.0g溶媒としてメタノール8.0g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.01g(和光純薬社製、商品名:V−65)を仕込み、均一に溶解した。窒素ガスを流しながら攪拌し、60℃まで昇温した。その後、反応容器を60℃に保ち、5時間反応を行った。得られた反応液をアセトンで希釈し、大量の酢酸エチル中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、80℃で1時間減圧乾燥し、固体の重合体(PGLMA)を得た。
合成例4
(PEAホモポリマーの合成)
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管を付し、単量体として合成例2で合成したPEA5.0g溶媒としてメチルエチルケトン5.0g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.025g(和光純薬社製、商品名:V−601)を仕込み、均一に溶解した。窒素ガスを流しながら攪拌し、80℃まで昇温した。その後、反応容器を80℃に保ち、4時間反応を行った。得られた反応液をアセトンで希釈し、大量の酢酸エチル中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、80℃で3時間減圧乾燥し、固体の重合体(PPEA)を得た。
合成例5
(HEAホモポリマーの合成)
攪拌子を入れた反応容器にガス導入管、温度計、冷却管を付し、単量体として市販試薬のヒドロキシエチルアクリレート(HEA)2.0g、溶媒としてメタノール8.0g、アゾ系ラジカル重合開始剤0.01g(和光純薬社製、商品名:V−65)を仕込み、均一に溶解した。窒素ガスを流しながら攪拌し、60℃まで昇温した。その後、反応容器を60℃に保ち、4時間反応を行った。得られた反応液をアセトンで希釈し、大量の酢酸エチル中に撹拌しながら投入することで再沈した。沈殿物を真空乾燥機によって、減圧下、80℃で3時間減圧乾燥し、固体の重合体(PHEA)を得た。
合成例6
(ポリアミド膜(多孔質膜)の製造)
ポリスルホン製限外ろ過膜(ADVANTEC製、Q2000、分画分子量20万)を支持体(支持膜)として用い、支持膜へのポリアミド修飾と開始剤の固定化を以下の方法で実施した。
1)(メタ)フェニレンジアミン、(±)−10−カンファースルホン酸、ドデシル硫酸ナトリウム、トリエチルアミン、及び、ヘキサメチルホスホリックトリアミンをそれぞれ2.0、2.3、0.15、1.1、及び、3.0質量%の濃度となるようにイオン交換水に溶解し、アルミを巻いて遮光し20分間撹拌することで、アミン水溶液を得た。また、トリメソイルクロリドを0.15質量%の濃度となるようにヘキサンに溶解し、20分撹拌して酸クロリド溶液を得た。2−ブロモイソブチルブロミドを2.0質量%の濃度となるようにヘキサンに溶解し、20分間撹拌し、開始剤溶液を得た。
2)ポリテトラフルオロエチレン製の枠にクリップではさみ固定した支持膜上に上記アミン溶液を注ぎ、1分間水平な状態で静置した。その後、枠を垂直に立てることで支持膜に保持されたもの以外のアミン溶液を除去した。続いて、上記の酸クロリド溶液を注ぎ、1分間水平な状態で静置することで、界面縮重合を行った。その後、枠を垂直に立てることで酸クロリド溶液を除去し、枠を立てた状態で、1分間静置した。再び、アミン溶液を流し込み、1分間水平な状態で静置した。その後、枠を垂直に立てることでアミン溶液を除去した。さらに、90℃に加熱しておいたオーブンで10分間アニーリングを行い、イオン交換水で表面を洗浄した。
3)開始剤溶液を枠内に流し込み、1分間水平な状態で静置し開始剤を反応させた。その後、枠を垂直に立てることで開始剤溶液を除去した。イオン交換水で表面を洗浄し、新たなイオン交換水中で膜を保存した。
実施例1〜3
(ポリマー修飾多孔質膜の製造)
合成例3〜5で使用したモノマーを用いて、合成例6で製造した、開始剤が固定化されたポリアミド修飾膜表面上に、ATRP法により、中間水を持つポリマーをグラフト重合し、ポリマー修飾多孔質膜を製造した。具体的方法を下記に記載した。
1)トリス(2―ピリジルメチル)アミン(174.22mg、0.6mmol)、CuCl(40.335mg、0.3mmol)を50mlのナスフラスコにそれぞれ加え、イオン交換水/メタノール=1/1(V/V)の混合液20mlで溶解した。この溶液を窒素にて10分間バブリングによる窒素置換を行い、その後、合成例3〜5で使用したモノマーを10mmol加え、さらに窒素バブリングを15分間行った。
2)この溶液中に、合成例6で合成した、開始剤が固定化されたポリアミド修飾膜をベルトポンチで、直径36mmの円形にくりぬいた状態にして投入した。窒素バブリングを10分間行い、その後密閉して、イオン交換水/メタノール=1/1(V/V)の混合液1mlで溶解したアスコルビン酸(105.67mg、0.6mmol)を注入し、25℃にて30分間反応を行った。膜を取り出しイオン交換水で、振とう器を用いて、12時間洗浄した。
比較例1
(未修飾多孔質膜の製造)
合成例6において、2)の「上記の酸クロリド溶液を注ぎ、1分間水平な状態で静置することで、界面縮重合を行った」後、90℃に加熱しておいたオーブンで10分間アニーリングを行い、イオン交換水で表面を洗浄することで、ポリマーの修飾されていない未修飾多孔質膜を製造した。
(ポリマー、及び、ポリマー修飾多孔質膜の特性評価)
合成例3〜5で合成した各ポリマーの中間水と不凍水の量、及び、合成例3〜5で合成した各ポリマーで修飾した多孔質膜の微生物表面占有率と接触角をそれぞれ以下の方法により測定した。比較例1のポリマー未修飾多孔質膜についても、微生物表面占有率と接触角を測定した。結果を表1に示す。
<ポリマーの中間水量、不凍水量の測定方法>
1.試料の調製
試料(重合体)を固形分換算で20質量%となるようメタノールに溶解させ、予め重量を測定したアルミパンに14mgずつ仕込んだ。80℃(PPEAの場合は120℃)に加熱したオーブンで1時間真空乾燥後、乾燥前後の重量変化から試料の乾燥重量を求めた。試料の含水率が50質量%となるようにイオン交換水を加えた。アルミパンをシールし、重量変化から試料の含水重量を求めた。次に、50℃(PPEAの場合は80℃)に加熱したオーブンで1時間放置した。
2.含水率(WC)の算出
以下の式(I)で求めた。
含水率(WC)=(W1−W0)/W1×100 (I)
(W0:試料の乾燥重量(g)、W1:試料の含水重量(g))
次に、各含水率におけるコールドクリスタリゼーションに伴う発熱量と0℃付近の吸熱量の関係から、不凍水と中間水の最大量を求めてW0で除することにより、それぞれの試料における不凍水量と中間水量とした。
<微生物表面占有率>
1)トリプチックソイブロス(TSB、日本べクトン・ディッキンソン製)を30g/lとなるようイオン交換水に溶解させて作製したTSB培地溶液に、寒天培地にて培養を行ったSphingomonas paucimobilis(NBRC13935)を取り、30℃、120rpmで振とうしながら12時間前培養した。
2)前培養した菌懸濁液400μlを19.6mlのTSB液体培地に取り、30℃、120rpmで4時間本培養した菌懸濁液を吸光度計でAbs=0.5になるようにTSB培地で希釈し、試験用菌懸濁液とした。
3)ベルトポンチで直径1.0cmの円形にくりぬいたポリマー修飾多孔質膜を1mlの試験用菌懸濁液を分注した24穴のマイクロプレートに、膜が下向きになるように浸透させ、120rpm、30℃で24時間振とうさせて培養した。
4)24時間後、NaCl水溶液ですすぎ、SYTO9水溶液(5.51μmol/l、Thermo Fisher製)に浸漬させることで膜上に付着した菌を蛍光染色した。その後、共焦点レーザー顕微鏡(FV1000、オリンパス製)にて膜上に付着した菌の蛍光観察画像を取得し、得られた画像から、ImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)ソフトウェアを用いて菌の付着面積を算出し、微生物表面占有率(%)を得た。
<接触角>
ポリマー修飾多孔質膜の裏面に両面テープを張り付け、試料台に固定した。接触角計(DropMaster300、協和界面科学製)を用いて、空気中で0.5μlの水滴を膜表面に接触させ、接触角を測定した。
Figure 0006849969
<表1の結果の説明>
表1記載の結果から、1g当たり0.1g以上の中間水を有するポリマーにて修飾した多孔質膜は、中間水を持たないポリアミド膜である比較例との比較において微生物の表面占有率(%)が、低いことが見出された。
実施例4
(ポリマー修飾多孔質膜の製造)
実施例1において、モノマーとしてグリセリンモノメタクリレート(GLMMA)を使用した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリマー修飾多孔質膜を製造した。
(ポリマー修飾多孔質膜によるバイオファウリング加速膜透過流量試験)
実施例4で製造したポリマー修飾多孔質膜、実施例1で製造したポリマー修飾多孔質膜および比較例1の未修飾多孔質膜について、以下の方法によりバイオファウリング加速膜透過流量試験を行った。結果を表2に示す。
<バイオファウリング加速膜透過流量試験(膜透過流量試験)>
(1)Tryptic soy broth(TSB)培地で4時間本培養したSphingomonas paucimobilis NBRC13935(S.Pauci)を吸光度がAbs=0.05になるように希釈し、微生物(菌)懸濁液を調整した。図1に示した透水試験セルにセットした膜(実施例1、実施例4、比較例1の膜をそれぞれ使用)に、この懸濁液を2ml滴下し、膜表面を菌懸濁液で浸した。30℃で、1時間静置培養することで菌を付着させた後、懸濁液を流し出した。
(2)膜を図1の装置に示したセルにセットして、20倍に希釈したTSB培地の菌懸濁液を供給液としてバイオファウリングの加速試験を30時間行った。透過液の重量を5時間ごとに測定し、流量の経時変化を評価した。供給液の流量は2.0mL/minとし、セル下のTSB培地を攪拌速度200rpmで攪拌した。
(3)加速試験終了後、膜をセルから取り出し、膜面に付着した菌を共焦点レーザー顕微鏡にて観測した。
(4)印加圧力はそれぞれの系列で膜透過流量が揃うように調整した。
Figure 0006849969
表2記載の結果から、実施例1、4のポリマー修飾多孔質膜は、比較例1の未修飾多孔質膜と比較して30時間後の膜透過流量の低下が小さいことが確認された。

Claims (4)

  1. 不純物を含む水の処理に用いられる水処理用膜であって、
    該水処理用膜は、多孔質の膜がポリマーで修飾された構造を有し、
    該ポリマーは、下記式(1);
    Figure 0006849969
    (式(1)中、R は、同一又は異なって、水素原子、−CH 、又は−(CH COOR を表す。R は、同一又は異なって、−(CHR OR 、又は、下記式(2)で表される構造を表す。R は、同一又は異なって、水素原子又は水酸基を表し、少なくとも1つは水酸基である。R 、R は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。Xは、同一又は異なって、O又はNHを表す。m、nは、同一又は異なって、1〜20の数を表す。pは、同一又は異なって、0又は1を表す。)で表される構造単位を有し、1g当たり0.1g以上の中間水を有することを特徴とする水処理用膜。
    Figure 0006849969
    (式(2)中、qは、同一又は異なって、0〜5の数を表す。rは、同一又は異なって、1〜3の数を表す。)
  2. 前記ポリマー1g当たりの中間水と不凍水との質量比(中間水量/不凍水量)が0.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の水処理用膜。
  3. 前記水処理用膜は、逆浸透膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水処理用膜。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の水処理用膜を用いてなることを特徴とする水処理装置。
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