JP6848593B2 - トランスミッション用高強度機械部品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のトランスミッションに用いられる高強度機械部品及びその製造方法に関する。
自動車のトランスミッションに用いられる機械部品には、静的強度及び疲労強度が高いことが要求されるため、浸炭焼入れ又は窒化処理のような表面硬化処理が一般に行われている。この機械部品の素材には、低〜中炭素鋼が用いられており、表面硬化処理を行っても機械部品の内部は硬化せずに軟質である。そのため、この機械部品は、優れた靭性も兼ね備えている。
近年、自動車の燃費向上を目的として、機械部品への軽量化に対する要求が増大している。機械部品を軽量化するためには、機械部品の更なる高強度化が必要とされる。機械部品を高強度化する方法としては、高炭素鋼を素材に用い、表面だけでなく内部まで一様に硬化させる焼入れ焼戻し処理を行う方法が考えられるけれども、この場合、靱性を確保することが極めて困難である。
一方、高強度と高靱性とを両立させる技術として、特許文献1には、50%〜90%のベイナイトを含み、残部が残留オーステナイトであるベイナイト鋼が提案されている。しかしながら、この技術は、軟質である残留オーステナイトを多く含むため、疲労強度を確保することが難しい。また、このベイナイト鋼を製造するには、熱処理に長時間を要するため、製造性の面においても不利である。
また、特許文献2には、ベイナイトと残留オーステナイトとを含む金属組織を有する鋼の表面をショットピーニング処理して表層部の残留オーステナイト相を歪誘起変態させた高強度高靱性鋼が提案されている。しかしながら、この技術は、ショットピーニング処理を行う必要があるため、コスト面において不利である。
特許第5562952号公報 特開平6−271930号公報
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、静的強度、疲労強度及び靱性の全てに優れ、且つ低コストで製造することが可能なトランスミッション用高強度機械部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
機械部品を高強度化するためには、高炭素鋼を素材として用い、表面から内部まで一様に硬化させる熱処理を行なえばよい。このようにすることで、機械部品の静的強度及び疲労強度が向上するため、機械部品の小型化、薄型化及び軽量化などが可能となる。
通常、炭素量が0.6質量%を超えるような高炭素鋼を用いて熱処理を行う場合、オーステナイト化の段階で金属組織をオーステナイト及びセメンタイトの2相の状態となるよう加熱した後、焼入れすることが行われる。すなわち、オーステナイト化の段階でオーステナイト単相となるようにはせずに、セメンタイト(炭化物)を未溶解の状態で一部残存させる。これは、セメンタイトの溶解に伴う固溶C量の増加によるレンズマルテンサイト及び残留オーステナイト生成の抑制、並びに耐摩耗性の向上などを目的とした未溶解セメンタイトの活用のためとされている。残留オーステナイトは軟質であり、レンズマルテンサイトは靭性に乏しいことが知られており、これらは疲労強度及び靭性などの特性劣化をもたらす場合がある。したがって、通常、高炭素鋼は、オーステナイト化の段階でオーステナイト単相となる温度域まで加熱することは行われていない。
上記のように、高炭素鋼の熱処理においては、靭性の確保が非常に困難であるところ、本発明者らは、靭性について詳細な検討を行った結果、高炭素鋼のC量が増加すると衝撃値(靭性)が単調に低下し、また、固溶C量が同程度であれば、未溶解セメンタイトが多いほど衝撃値が低くなるという知見を得た。すなわち、靭性を確保するためには、未溶解セメンタイトを極力含まない金属組織にする必要があることを見出した。
一方、特許文献1のように、靭性向上の手段として残留オーステナイトが利用される場合もあるけれども、疲労試験を詳細に行った結果、残留オーステナイトは軟質であるため疲労強度に悪影響を及ぼすとの結論を得た。ただし、残留オーステナイトの量が少量であれば、疲労強度に与える影響は少ないため、残留オーステナイトの量を制限することが重要であることも見出した。
上記のような背景の下、本発明者らは、鋼組成及び熱処理について詳細な検討を行った結果、所定の組成を有する高炭素鋼を素材として用い、所定の熱処理を行うことによって90体積%以上のベイナイト組織を有する金属組織を生成させることにより、静的強度、疲労強度及び靱性の全てを向上させ得ることを見出した。
すなわち、本発明は、0.72〜1.05質量%のCと、0.50質量%以下のSiと、1.20質量%以下のMnと、0.03質量%以下のPと、0.02質量%以下のSとを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、式(1)で表されるDI値:
DI=6×C1/2×(1+0.64Si)×(1+4.1Mn)×(1+2.83P)×(1−0.62S) (1)
(式中、CはCの質量%、SiはSiの質量%、MnはMnの質量%、PはPの質量%、SはSの質量%を表す)が15以上である高炭素鋼を成形加工し、オーステナイト単相となる温度域に加熱した後、Ms点〜300℃の温度域に冷却し且つこの温度域でベイナイト終了点まで等温保持し、90体積%以上のベイナイト組織を有する金属組織を生成させるトランスミッション用高強度機械部品の製造方法である。
また、本発明は、0.72〜1.05質量%のCと、0.50質量%以下のSiと、1.20質量%以下のMnと、0.03質量%以下のPと、0.02質量%以下のSと、0.10〜2.00質量%のNi、0.10〜2.00質量%のCr及び0.10〜2.00質量%のMoからなる群から選択される少なくとも1種とを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、式(2)で表されるDI値:
DI=6×C1/2×(1+0.64Si)×(1+4.1Mn)×(1+2.83P)×(1−0.62S)×(1+2.33Cr)×(1+0.52Ni)×(1+3.14Mo) (2)
(式中、CはCの質量%、SiはSiの質量%、MnはMnの質量%、PはPの質量%、SはSの質量%、CrはCrの質量%、NiはNiの質量%、MoはMoの質量%を表す)が15以上である高炭素鋼を成形加工し、オーステナイト単相となる温度域に加熱してオーステナイト化した後、Ms点〜300℃の温度域に冷却し且つこの温度域でベイナイト終了点まで等温保持し、90体積%以上のベイナイト組織を有する金属組織を生成させるトランスミッション用高強度機械部品の製造方法である。
また、本発明は、0.72〜1.05質量%のCと、0.50質量%以下のSiと、1.20質量%以下のMnと、0.03質量%以下のPと、0.02質量%以下のSとを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、90体積%以上のベイナイト組織を有するトランスミッション用高強度機械部品である。
さらに、本発明は、0.72〜1.05質量%のCと、0.50質量%以下のSiと、1.20質量%以下のMnと、0.03質量%以下のPと、0.02質量%以下のSと、0.10〜2.00質量%のNi、0.10〜2.00質量%のCr及び0.10〜2.00質量%のMoからなる群から選択される少なくとも1種とを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、90体積%以上のベイナイト組織を有するトランスミッション用高強度機械部品である。
本発明によれば、静的強度、疲労強度及び靱性の全てに優れ、且つ低コストで製造することが可能なトランスミッション用高強度機械部品及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明のトランスミッション用高強度機械部品(以下、「機械部品」と略すことがある)及びその製造方法について詳細に説明する。
本発明の機械部品の製造方法は、所定の組成を有する高炭素鋼を成形加工した後、所定の熱処理を行うことにより、90体積%以上のベイナイト組織を有する金属組織を生成させる。
高炭素鋼は、C、Si、Mn、P及びSを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる。また、高炭素鋼は、必要に応じて、Ni、Cr及びMoからなる群から選択される少なくとも1種、並びに/又はV、Nb及びTiからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有することができる。
<C:0.72質量%〜1.05質量%>
Cは、調質硬さ及び強度を確保するために必要な成分である。これらの特性を確保するためには0.72質量%以上のCが必要である。一方、C含有量が1.05質量%を超えても、これらの特性は向上せず、逆に靱性及び疲労特性が低下する。したがって、C含有量は、0.72質量%〜1.05質量%、好ましくは0.73質量%〜1.04質量%、より好ましくは0.74質量%〜1.03質量%、最も好ましくは0.72質量%〜0.85質量%とする。また、C含有量を0.90質量%以下とすることにより、ベイナイト終了点までの時間(ベイナイト変態が終了するまでの時間)を短縮することができる。
<Si:0.50質量%以下>
Siは、強度を確保するのに有効な成分である。しかしながら、Si含有量が多くなると、加工性が低下する上、ベイナイト変態が遅くなって生産性も低下する。したがって、Si含有量は、0.50質量%以下、より好ましくは0.49質量%以下、より好ましくは0.48質量%とする。なお、Si含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは0質量%超過、より好ましくは0.01質量%以上である。
<Mn:1.20質量%以下>
Mnは、焼入性を向上させるのに有効な成分である。しかしながら、Mn含有量が多くなると、加工性が低下する上、ベイナイト変態が遅くなって生産性も低下する。したがって、Mn含有量は、1.20質量%以下、好ましくは1.18質量%以下、より好ましくは1.16質量%以下とする。なお、Mn含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは0質量%超過、より好ましくは0.1質量%以上である。
<P:0.03質量%以下>
Pは、焼入れ時にオーステナイト粒界に偏析し、粒界強度を低下させ、靱性及び疲労強度を低下させる原因となる成分である。そのため、P含有量は、可能な限り低減する必要がある。したがって、P含有量は、0.03質量%以下、好ましくは0.029質量%以下、より好ましくは0.028質量%以下、最も好ましくは0.01質量%以下とする。なお、P含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは0質量%超過、より好ましくは0.001質量%以上である。
<S:0.02質量%以下>
Sは、鋼中で衝撃破壊又は疲労破壊の起点となるMnSを形成し、靱性を低下させる原因となる成分である。そのため、S含有量は、可能な限り低減する必要がある。したがって、S含有量は、0.02質量%以下、好ましくは0.019質量%以下とする。なお、S含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは0質量%超過、より好ましくは0.001質量%以上である。
<Ni:0.10質量%〜2.00質量%>
Niは、焼入性を向上させる成分である。この成分による効果を得るためには0.10質量%以上のNiが必要である。一方、Ni含有量が2.00質量%を超えると、ベイナイト変態が遅くなって生産性が低下する。したがって、Ni含有量は、0.10質量%〜2.00質量%、好ましくは0.2質量%〜1.95質量%、より好ましくは0.3質量%〜1.90質量%とする。
<Cr:0.10質量%〜2.00質量%>
Crは、焼入性を向上させる成分である。この成分による効果を得るためには0.10質量%以上のCrが必要である。一方、Cr含有量が2.00質量%を超えると、ベイナイト変態が遅くなって生産性が低下する上、オーステナイト化時にセメンタイトが溶解し難くなり、靱性の低下が起こる。したがって、Cr含有量は、0.10質量%〜2.00質量%、好ましくは0.11質量%〜1.90質量%、より好ましくは0.12質量%〜1.80質量%とする。
<Mo:0.10質量%〜2.00質量%>
Moは、靱性の向上に有効な成分である。この成分による効果を得るためには0.10質量%以上のMoが必要である。一方、Mo含有量が2.00質量%を超えると、Moによる効果が飽和する上、Moは高価であることからコスト面で不利になる。したがって、Mo含有量は、0.10質量%〜2.00質量%、好ましくは0.11質量%〜1.90質量%、より好ましくは0.12質量%〜1.80質量%とする。
<V:0.10質量%〜0.50質量%>
Vは、焼入れ時の結晶粒微細化に寄与し、靱性を向上させる成分である。この成分による効果を得るためには0.10質量%以上のVが必要である。一方、V含有量が0.50質量%を超えると、Vによる効果が飽和する。したがって、V含有量は、0.10質量%〜0.50質量%、好ましくは0.12質量%〜0.45質量%、より好ましくは0.14質量%〜0.40質量%とする。
<Nb:0.03質量%〜0.15質量%>
Nbは、焼入れ時の結晶粒微細化に寄与し、靱性を向上させる成分である。この成分による効果を得るためには0.03質量%以上のNbが必要である。一方、Nb含有量が0.15質量%を超えると、粗大な炭化物が生成して靱性が低下する。したがって、Nb含有量は、0.03質量%〜0.15質量%、好ましくは0.04質量%〜0.13質量%、より好ましくは0.05質量%〜0.10質量%とする。
<Ti:0.02質量%〜0.10質量%>
Tiは、焼入れ時の結晶粒微細化に寄与し、靱性を向上させる成分である。この成分による効果を得るためには0.02質量%以上のTiが必要である。一方、Ti含有量が0.10質量%を超えると、粗大な炭化物が生成して靱性が低下する。したがって、Ti含有量は、0.02質量%〜0.10質量%、好ましくは0.03質量%〜0.09質量%、より好ましくは0.04質量%〜0.08質量%とする。
<残部:Fe及び不可避的不純物>
上記の成分以外の残部は、Fe及び不可避的不純物である。ここで、不可避的不純物とは、O、Nなどの除去することが難しい成分のことを意味する。これらの成分は、高炭素鋼を溶製する段階で不可避的に混入する。
<DI値:15以上>
DI値は焼入性指数であり、無限大の冷却速度で焼入れを行ったと仮定したときに完全に焼きが入る棒の直径(mm)を示す指標である。DI値は、大きいほど焼入性が良好であることを表す。本発明で用いられる高炭素鋼のDI値は、所定の熱処理によって完全な焼入れ組織を得る観点から、15以上とする。高炭素鋼のDI値が15未満であると、不完全な焼入れ組織が生じ易い。不完全な焼入れ組織は、炭化物が過剰に存在する場合と同様に、割れ発生の起点及び亀裂伝播経路となる。
C、Si、Mn、P及びSを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる高炭素鋼のDI値は、式(1)で表される。
DI=6×C1/2×(1+0.64Si)×(1+4.1Mn)×(1+2.83P)×(1−0.62S) (1)
式(1)中、CはCの質量%、SiはSiの質量%、MnはMnの質量%、PはPの質量%、SはSの質量%を表す。
また、Ni、Cr及びMoからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する高炭素鋼のDI値は、式(2)で表される。
DI=6×C1/2×(1+0.64Si)×(1+4.1Mn)×(1+2.83P)×(1−0.62S)×(1+2.33Cr)×(1+0.52Ni)×(1+3.14Mo) (2)
式(2)中、CはCの質量%、SiはSiの質量%、MnはMnの質量%、PはPの質量%、SはSの質量%、CrはCrの質量%、NiはNiの質量%、MoはMoの質量%を表す。
上記のような組成及びDI値を有する高炭素鋼は、熱処理の前に所定の部品形状に成形加工される。成形加工方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。成形加工方法の例としては、曲げ加工、絞り加工などが挙げられる。
次に、成形加工された高炭素鋼は、オーステンパー熱処理される。本発明で行われるオーステンパー熱処理は、高炭素鋼をオーステナイト単相となる温度域に加熱した後、Ms点〜300℃の温度域に冷却し且つこの温度域でベイナイト終了点まで等温保持する。
通常のオーステナイトテンパー熱処理では、オーステナイト化の段階でオーステナイト及びセメンタイトの2相状態となる温度域に加熱されるのに対し、本発明におけるオーステナイトテンパー熱処理では、オーステナイト化の段階でオーステナイト単相となる温度域に加熱する。すなわち、本発明では、オーステナイト化の段階でセメンタイトが全て固溶したオーステナイト状態となる温度域に加熱する。
オーステナイト単相となる温度域は、高炭素鋼の組成によって異なるため、一義的に定義することはできないが、一般的に900℃以上、好ましくは900℃〜1200℃である。
また、本発明におけるオーステナイトテンパー熱処理では、Ms点〜300℃の温度域に冷却し且つこの温度域でベイナイト終了点まで等温保持することにより、ベイナイト変態させ、90体積%以上のベイナイト組織を有する金属組織を生成させる。このときの温度域がMs点(マルテンサイト変態温度)未満では、ベイナイトの生成に先立ってマルテンサイトが生成してしまい、生成するベイナイト組織の量が少なくなってしまう。一方、温度域が300℃を超えると、ベイナイト組織が十分に生成しない。
Ms点〜300℃の温度域でベイナイト終了点まで等温保持する時間は、高炭素鋼の組成によって異なるため、一義的に定義することはできないが、一般的に1時間以上、好ましくは1時間〜15時間である。
上記のような条件下でオーステンパー熱処理を行うことにより、金属組織中のベイナイト組織の量が著しく増大する一方、レンズマルテンサイト及び残留オーステナイトの生成を抑制することができる。また、このオーステンパー熱処理によって得られる金属組織は、未溶解セメンタイトを含まない。したがって、静的強度及び疲労強と共に靱性が向上した機械部品を製造することが可能になる。
上記のようにして製造される本発明の機械部品は、使用した高炭素鋼と同じ組成を有し、且つ90体積%以上のベイナイト組織を有する。
本発明の機械部品は、静的強度、疲労強度及び靱性の全てに優れているため、自動車のトランスミッション用機械部品、特に、トルクコンバータのダンパプレート、外周面にスプラインが形成されたクラッチドラムなどに用いるのに最適である。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
表1に示す鋼組成を有する高炭素鋼板(厚さ1.5mm)を供試材として準備した。なお、表1では、各高炭素鋼板のDI値及びMs点も示す。表1に示していない成分(残部)はFe及び不可避的不純物である。また、表1に示す高炭素鋼板のうち、No.A〜Fは、本発明の範囲外の鋼組成又はDI値を有する高炭素鋼板であり、No.G〜Yは、本発明の範囲内の鋼組成及びDI値を有する高炭素鋼板である。ただし、No.M、N、O、S及びYは、参考例とする。
Figure 0006848593
各高炭素鋼の供試材に対してオーステンパー熱処理又は焼入焼戻処理のいずれかの熱処理を行った。オーステンパー熱処理では、所定の温度に加熱してオーステナイト化した後、所定の温度域に冷却して、所定の時間等温保持した。また、焼入焼戻処理では、所定の温度で焼入れした後、所定の温度で焼戻しした。これらの熱処理における条件を表2及び3に示す。
上記の条件で熱処理を行った各高炭素鋼の供試材について、金属組織中のベイナイト組織の割合(体積%)、硬さ、疲労特性及び衝撃値を求めた。
金属組織中のベイナイト組織の割合は、各高炭素鋼について、フォーマスター装置(富士電波工業株式会社製)を用いて等温保持時間の経過に伴う膨張量の変化を予め測定しておき、膨張が終了した段階をベイナイト変態終了(変態量100%)とみなした。そして、所定の等温保持時間における高炭素鋼の膨張量を測定し、ベイナイト変態終了時の高炭素鋼の膨張量に対する、所定の等温保持時間における高炭素鋼の膨張量の割合を、金属組織中のベイナイト組織の割合として算出した。
硬さは、ビッカース硬度計を用いて測定した。硬さは、トランスミッション用高強度機械部品としての用途を考慮すると、650Hv以上であることが必要である。
疲労特性は、JIS Z2275に準拠し、1号試験片(b=5、R=22.25)に加工して疲労試験を行った。具体的には、PWOG型平面曲げ疲労試験機を用い、応力比を−1、繰返し速度を1250rpm、最大付与応力を800N/mmとして疲労試験を行った。また、疲労試験は、各高炭素鋼の供試材について試験数を5とし、繰返し数10回までに4つ以上の供試材で破壊が生じなかったものを○、それ以外のものを×と評価した。
衝撃値は、JIS Z2242に準拠し、2mmUノッチ試験片に加工し、シャルピー衝撃試験機を用いて室温で衝撃試験を行うことによって測定した。また、衝撃値は、各高炭素鋼の供試材について試験数を5とし、それらの平均をとった。衝撃値は、トランスミッション用高強度機械部品としての用途を考慮すると、15J/cm以上であることが必要である。
硬さ、疲労特性及び衝撃値の総合評価として、各特性の評価基準の全てを合格したものを○、各特性の評価基準のいずれかが不合格であったものを×とした。
上記の各評価結果を表2及び3に示す。
Figure 0006848593
Figure 0006848593
表2及び3に示されているように、適切な高組成を有する高炭素鋼を素材として用い、適切な熱処理を行うことによって90体積%以上のベイナイト組織を有する金属組織を生成させた試験No.7、10、12、15〜17、21、25〜30及び32〜38の供試材は、硬さ、疲労特性及び衝撃値の全てが良好であった。これらの中でも、試験No.34〜38の供試体は、衝撃値が著しく高かった。
これに対して、試験No.1及び2の供試材は、高炭素鋼板のC含有量が少なすぎたため、十分な硬さが得られなかった。
試験No.3の供試材は、高炭素鋼板のC含有量が多すぎたため、疲労特性及び衝撃値が十分でなかった。
試験No.4の供試材は、高炭素鋼板のP含有量が多すぎたため、疲労特性及び衝撃値が十分でなかった。
試験No.5の供試材は、高炭素鋼板のS含有量が多すぎたため、衝撃値が十分でなかった。
試験No.6の供試材は、高炭素鋼板のDI値が低すぎたため、パーライトの生成によって疲労特性の低下が生じた。
試験No.8〜9、11、13〜14、19〜20及び23〜24の供試材は、熱処理として焼入焼戻処理を行ったため、衝撃値が低くなった。また、試験No.9、14、20及び24では、未溶解セメンタイトを少なくするために高温でオーステナイト化したけれども、疲労特性及び衝撃値が十分でなかった。これは、残留オーステナイト又はレンズマルテンサイトが生成したことに起因していると考えられる。
試験No.18、22及び31の供試材は、金属組織中のベイナイト組織の割合が少なく、残留オーステナイトが多く存在していたため、疲労特性又は衝撃値が十分でなかった。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、静的強度、疲労強度及び靱性の全てに優れ、且つ低コストで製造することが可能なトランスミッション用高強度機械部品及びその製造方法を提供することができる。

Claims (13)

  1. 0.72〜1.05質量%のCと、0.50質量%以下のSiと、1.20質量%以下のMnと、0.03質量%以下のPと、0.02質量%以下のSとを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、式(1)で表されるDI値:
    DI=6×C1/2×(1+0.64Si)×(1+4.1Mn)×(1+2.83P)×(1−0.62S) (1)
    (式中、CはCの質量%、SiはSiの質量%、MnはMnの質量%、PはPの質量%、SはSの質量%を表す)が15以上である高炭素鋼を成形加工し、オーステナイト単相となる温度域に加熱した後、Ms点〜300℃の温度域に冷却し且つこの温度域でベイナイト終了点まで等温保持し、90体積%以上のベイナイト組織を有する金属組織を生成させるトランスミッション用高強度機械部品の製造方法。
  2. 0.72〜1.05質量%のCと、0.50質量%以下のSiと、1.20質量%以下のMnと、0.03質量%以下のPと、0.02質量%以下のSと、0.10〜2.00質量%のNi及び0.10〜0.39質量%のCrからなる群から選択される少なくとも1種とを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、式(2)で表されるDI値:
    DI=6×C1/2×(1+0.64Si)×(1+4.1Mn)×(1+2.83P)×(1−0.62S)×(1+2.33Cr)×(1+0.52Ni (2)
    (式中、CはCの質量%、SiはSiの質量%、MnはMnの質量%、PはPの質量%、SはSの質量%、CrはCrの質量%、NiはNiの質量%を表す)が15以上である高炭素鋼を成形加工し、オーステナイト単相となる温度域に加熱してオーステナイト化した後、Ms点〜300℃の温度域に冷却し且つこの温度域でベイナイト終了点まで等温保持し、90体積%以上のベイナイト組織を有する金属組織を生成させるトランスミッション用高強度機械部品の製造方法。
  3. 前記高炭素鋼は、0.10〜0.50質量%のV、0.03〜0.15質量%のNb及び0.02〜0.10質量%のTiからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する請求項1又は2に記載のトランスミッション用高強度機械部品の製造方法。
  4. Cが0.72〜0.90質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のトランスミッション用高強度機械部品の製造方法。
  5. Cが0.72〜0.85質量%、Pが0.01質量%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のトランスミッション用高強度機械部品の製造方法。
  6. 前記オーステナイト単相となる温度域が900℃以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載のトランスミッション用高強度機械部品の製造方法。
  7. 前記トランスミッション用高強度機械部品が、トルクコンバータのダンパプレート、又は外周面にスプラインが形成されたクラッチドラムである請求項1〜6のいずれか一項に記載のトランスミッション用高強度機械部品の製造方法。
  8. 0.72〜1.05質量%のCと、0.50質量%以下のSiと、1.20質量%以下のMnと、0.03質量%以下のPと、0.02質量%以下のSとを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、式(1)で表されるDI値:
    DI=6×C 1/2 ×(1+0.64Si)×(1+4.1Mn)×(1+2.83P)×(1−0.62S) (1)
    (式中、CはCの質量%、SiはSiの質量%、MnはMnの質量%、PはPの質量%、SはSの質量%を表す)が15以上であり、90体積%以上のベイナイト組織を有するトランスミッション用高強度機械部品。
  9. 0.72〜1.05質量%のCと、0.50質量%以下のSiと、1.20質量%以下のMnと、0.03質量%以下のPと、0.02質量%以下のSと、0.10〜2.00質量%のNi及び0.10〜0.39質量%のCrからなる群から選択される少なくとも1種とを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、式(2)で表されるDI値:
    DI=6×C 1/2 ×(1+0.64Si)×(1+4.1Mn)×(1+2.83P)×(1−0.62S)×(1+2.33Cr)×(1+0.52Ni) (2)
    (式中、CはCの質量%、SiはSiの質量%、MnはMnの質量%、PはPの質量%、SはSの質量%、CrはCrの質量%、NiはNiの質量%を表す)が15以上であり、90体積%以上のベイナイト組織を有するトランスミッション用高強度機械部品。
  10. 0.10〜0.50質量%のV、0.03〜0.15質量%のNb及び0.02〜0.10質量%のTiからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含有する請求項8又は9に記載のトランスミッション用高強度機械部品。
  11. Cが0.72〜0.90質量%である請求項8〜10のいずれか一項に記載のトランスミッション用高強度機械部品。
  12. Cが0.72〜0.85質量%、Pが0.01質量%以下である請求項8〜11のいずれか一項に記載のトランスミッション用高強度機械部品。
  13. 前記トランスミッション用高強度機械部品が、トルクコンバータのダンパプレート、又は外周面にスプラインが形成されたクラッチドラムである請求項8〜12のいずれか一項に記載のトランスミッション用高強度機械部品。
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