以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本実施形態の記録材綴じ装置10を備えた画像形成システム11の概略構成を示す模式図である。画像形成システム11は、例えば電子写真方式による印刷機能や複写機能などを備えた画像形成装置12と、画像形成装置12にて画像形成された後の記録材に対して例えば穴あけや綴じなどの後処理を行う記録材後処理装置13を備えている。本実施形態の記録材綴じ装置10は、記録材後処理装置13に搭載され得るものである。
画像形成装置12は、取得した原稿情報に基づきトナー像を形成する画像形成部14を有する。原稿情報は、画像形成装置12が備えた原稿読取り部15により原稿を読み取って取得してもよく、また外部装置から取得してもよい。画像形成装置12は、更に記録材送り機構16を含む。送られる記録材は、定められた形状、例えば長方形にカットされたシート状の記録材であり、材質は例えば紙である。記録材送り機構16は、積層された記録材を保持する供給トレイ17と、供給トレイ17から排出口18へと記録材を送る搬送路19を備える。搬送路19を送られる過程で記録材は画像形成部14で形成されたトナー像を受け取り、トナー像が定着される。排出口18から送り出された記録材は、記録材後処理装置13に受け取られる。
記録材後処理装置13において、受け取った記録材は、必要に応じて集積トレイ20上に積層され記録材束が形成される。集積が必要でない場合、記録材は排出トレイ21に送出される。記録材が集積トレイ20上に予め定められた枚数集積されると、この記録材の束に対し、穴あけ、綴じなどの後処理が実行される。記録材綴じ装置10は、記録材束を綴じる後処理を行う。記録材綴じ装置10は、それぞれ複数の歯が並んだ対をなす2個の歯型22,24を有する。2個の歯型を区別するために、便宜上、図1において上側に位置する歯型を上歯型22、下側に位置する歯型を下歯型24と記す。2個の歯型22,24は、綴じ対象となる記録材を挟んで対向するよう配置されればよく、例えば左右に配置されてもよい。
上歯型22と下歯型24は、一方または双方が駆動機構により相手側の歯型に向けて進退し、進出したときには歯型同士が噛み合う。歯型が噛み合うことにより、挟まれた記録材は波形に変形し、記録材同士が結合して、綴じられる。綴じられた後、記録材束は、排出トレイ21に送り出される。
さらに、画像形成システム11は、画像形成装置12および記録材後処理装置13の各部、各機構の動作を制御する制御部25を有する。制御部25は、使用者からの要求を取得し、要求に応じて画像形成システム11の各部の動作を制御する。
図2は、記録材綴じ装置10の外観を示す斜視図である。記録材綴じ装置10の外形は、概略直方体である。説明を簡略にするために、この直方体の辺の延びる方向に従って、互いに直交する前後、上下、左右の方向を定める。上下方向は、上歯型22と下歯型24が対向する方向に概ね一致しており、前後方向は、上歯型22と下歯型24が装着される上アーム26および下アーム28(図3参照)が延びる方向に概ね一致している。記録材綴じ装置10の外形である直方体の、上フレーム30の上面板30aが規定する装置上面32と、前フレーム34の前面板34aが規定する装置前面36とが交差する角近傍の前上隅領域38に上歯型22と下歯型24が配置される。この前上隅領域38において、上下の歯型22,24により記録材が挟持され綴じられる。記録材綴じ装置10の左右は、2枚のサイドフレーム、つまり左サイドフレーム40L、右サイドフレーム40Rによって概ね覆われている。
図3は、右サイドフレーム40Rを取り除き、内部が見えるようにした記録材綴じ装置10の斜視図である。上フレーム30は、開口30bが設けられた背面板30cと、背面板30cの下縁から前方に延びる支持板30dを含む。背面板30cは、開口30bが設けられた部分で湾曲しており、これにより記録材綴じ装置10の外形は、後上隅領域において丸面取された形状となっている。支持板30dには、ホーム位置センサ42が配置されている。ホーム位置センサ42は、後述する綴じ作動部のホーム位置を検出するセンサである。ホーム位置の検出に関しては、綴じ作動部の動作と合わせて説明する。
前上隅領域38の対角の位置、つまり後下隅領域44にモータ46が配置される。モータ46は、出力軸にモータピニオン46a(図5参照)を備え、モータピニオン46aが左サイドフレーム40Lの外側に配置されたギア列48の一つのギアに噛み合っている。ギア列48は、減速ギア列を構成し、モータ46は、ギア列48を介してカム軸50を回転駆動する。
図4は、図3の状態から更にモータ46を取り除いた記録材綴じ装置10の斜視図である。左サイドフレーム40Lには、エンコーダブラケット52が固定され、エンコーダブラケット52上にモータ46の回転角度を検出するエンコーダ54が配置されている。エンコーダ54は、エンコーダブラケット52に回転可能に支持された回転子54aと、エンコーダブラケット52に固定されたフォトセンサ54bを含む。回転子54aは、回転軸を有する羽根車形状を有し、回転軸の端にはエンコーダピニオン54cが設けられている。エンコーダピニオン54cは、ギア列48の一つのギア48a(図5参照)に噛み合っており、モータ46が回転すると、回転子54aが回転する。エンコーダピニオン54cが噛み合うギア48aは、ギア列48の初段のギアであってよい。フォトセンサ54bは、対向する二つの部分を有し、この間を回転子54aの羽根が通過することを検出する。羽根の通過回数を計数することでモータ46の出力軸の回転角度が検出される。フォトセンサ54bは、回転子54aの羽根の通過を検出できる他の形式のセンサに代替してもよい。
図5は記録材綴じ装置10の分解図であり、図6,7は綴じ作動部の要部を示す図である。綴じ作動部は、すでに述べた上アーム26、下アーム28および後述するレバーリンク56、支持レバー72、さらにこれらを結合する連接ピン58、アームピン64、ガイドピン70などから構成される。
上アーム26は、略前方に延び先端部に上歯型22が装着されるアーム部26aと、アーム部26aから分岐して下方に延び、レバーリンク56に連結される連接部26bを有する。連接部26bとレバーリンク56は、連接ピン58によって、このピン周りに相互に回動可能に連結されている。上アーム26の先端部には、上歯型22の近傍に位置するように上ガイド板60が装着されている。上ガイド板60の上歯型22の左右に位置する部分は、ばね鋼板等の鋼板を屈曲して形成された前方に開いたV字形の部分60aを有する。V字形の部分60aは、記録材を綴じるときこのV字が閉じ、弾性によってV字が開く力によって、綴じられた後の記録材が上歯型22から引き離される。連接ピン58は、円柱形状の軸部分58aと、軸部分58aの両端から突出するガイド突起58bを有する。
下アーム28は、間を空けて前方に延びる2枚のアーム板28a,28bと、アーム板28a,28bの先端にこれらを結合するように配置された先端台28cを有する。下アーム28は一体に構成されてもよく、2枚のアーム板28a,28bと先端台28cを別部品としてこれらを組み合わせて構成されてもよい。先端台28c上に下歯型24が装着される。下歯型24の周囲を囲むように下ガイド板62が配置されている。下ガイド板62は、ばね鋼板等の鋼板を屈曲して前方が開いたV字形に形成されている。記録材を閉じるとき下ガイド板62のV字が閉じ、弾性によってV字が開く力によって、閉じられた後の記録材が下歯型24から引き離される。
上アーム26と下アーム28は、これらの後端でアームピン64により互いに独立して回動可能な態様で連結されている。連結されたとき、上アーム26は、下アーム28の2枚のアーム板28a,28bの間に位置する。また、上アームの連接部26bは、下アームのアーム板28a,28bの間を通って、上アームのアーム部26aとは反対の側へ延びている。上アーム26および下アーム28のアームピン64周りの回動によって、上歯型22と下歯型24が近づき、また遠ざかる。アームピン64は、円柱形状の軸部分64aと、軸部分64aの両端から突出するガイド突起64bを有する。
下アーム28の2枚のアーム板28a,28bには、カム軸50が通る開口28dが形成されている。カム軸50には、組み上げられたとき上アーム26および下アーム28の左右に位置する2個の駆動カム、すなわち左駆動カム66Lおよび右駆動カム66Rが固定されている。カム軸50には、円形断面以外、例えば中心部分が除かれた扇形断面を有する異形断面軸部50aが2箇所に設けられ、これらの断面形状に適合した異形断面穴66aを左右の駆動カム66L,66Rは有する。カム軸の異形断面軸部50aには、軸線に交差する方向に固定ピン68が立設され、または貫通しており、この固定ピン68を受け入れるピン受入溝66bが左右の駆動カム66L,66Rに設けられている(図7参照)。左右の駆動カム66L,66Rは、カム軸の異形断面軸部50aと固定ピン68に係合することにより、カム軸50に対して、回転方向に関して固定される。左右の駆動カム66L,66Rは、異形断面軸部50aとの係合に加え、固定ピン68とも係合することによって、より強固に回転方向に関して固定される。
カム軸50の左端には、並行する2平面を有する嵌合部50bが設けられている。この嵌合部50bが、ギア列48の一つのギア、例えばギア列48の最終段のギア48bに設けられた嵌合穴48cに嵌合する。この結合により、カム軸50は、ギア列48を介してモータ46により回転駆動される。
レバーリンク56は、更にガイドピン70により支持レバー72に連結されている。ガイドピン70は、軸部分70aと軸部分の両端から延びるガイド突起70bを有している。軸部分70aの断面形状は非円形であり、例えば、図7に示されるように、円の一つの弦と、この弦により分けられた円弧の大きい方の円弧とからなる非円形の断面形状を有する。レバーリンク56の、ガイドピン70を受け入れる穴は、レバーリンクの軸部分70aに適合する形状を有している。これにより、ガイドピン70は、レバーリンク56に対して回転方向において固定される。
支持レバー72は、記録材を綴じるとき、下アームの先端台28cを下から支え、綴じ動作による反力を受ける。支持レバー72は、記録材を綴じるときに下アームの先端台28cの下方に位置する支持台72aと、支持台72aから下アーム28の外側を後方に延びる2本のレバー部72bを有する。支持レバー72は一体に構成されてよく、また支持台72aと2本のレバー部72bを別部品としてこれらを結合させて構成されてもよい。支持台72a上には、支持バー74が固定されている。支持バー74は、円柱形状の軸部分74aと、軸部分74aの両端から突出するガイド突起74bを有する。2本のレバー部72bの後端には、それぞれ左右の駆動カム66L,66Rに接触可能なカムフォロワ72cが設けられている。
左サイドフレーム40Lは、左サイドパネル76Lと左ガイドプレート78Lを有する。組み立てられたとき、左サイドパネル76Lと左ガイドプレート78Lは、重ね合わせられ一体となっている。右サイドフレーム40Rは、右サイドパネル76Rと右ガイドプレート78Rを有する。組み立てられたとき、右サイドパネル76Rと右ガイドプレート78Rは、重ね合わせられ一体となっている。
カム軸50は、左サイドフレーム40Lに装着された軸受ブッシュ80と、右ガイドプレート78Rに設けられ軸受穴78Raを通すことによって、左右のサイドフレーム40L,40Rに回転可能に支持されている。
左右のガイドプレート78L,78Rのそれぞれには、連接ピン58、アームピン64、ガイドピン70および支持バー74の動きを案内するガイド溝82,84,88およびガイド穴86が設けられている。
連接ピン58の両端に設けられたガイド突起58bが、それぞれ左右の連接ピンガイド溝82に嵌まっている。ガイド突起58bは、段付きの円柱形状を有し、これに合わせて連接ピンガイド溝82も溝の中央が深く、溝の縁近くが浅い段付の溝形状となっている。連接ピンガイド溝82は底を有し、左右のガイドプレート78L,78Rの外側の面には開口していない。連接ピンガイド溝82は、屈曲しているが、概ね上下方向に延びている。
アームピン64の両端に設けられたガイド突起64bが、それぞれアームピンガイド溝84内に嵌まっている。アームピンガイド溝84は、概ね前後方向に延びており、上アーム26および下アーム28の前後方向の動きを案内する。アームピンガイド溝84は、左右のガイドプレート78L,78Rの厚さを貫通して設けられている。
ガイドピン70の両端に設けられたガイド突起70bが、それぞれガイド穴86に進入している。ガイド突起70bは、およそ長円形の異形断面形状を有する。ガイド穴86の断面形状は概ね台形状であり、ガイド突起70bより全体的に大きい。このため、ガイド突起70bは、ガイド穴86の範囲内において、上下、前後の動きが許容されている。ガイド穴86は、左右のガイドプレート78L,78Rの外側面上に立設された延長壁86aにより、左右方向の寸法が延ばされている。
支持レバー72と一体の支持バー74の両端には、円柱形状のガイド突起74bが設けられ、これが支持レバーガイド溝88に嵌まっている。支持レバーガイド溝88は、概ね上下方向に延びており、支持レバー72、特に支持台72aの上下方向の動きを案内する。支持レバーガイド溝88は、左右のガイドプレート78L,78Rの厚さを貫通して設けられている。
左右の駆動カム66L,66Rは、アームピン64に接触する第1カム面66cと、支持レバー72に設けられたカムフォロワ72cに接触する第2カム面66dを有する(図6,7参照)。第1カム面66cと第2カム面66dは、カム軸50の軸線と共通の軸線を有する円筒面の一部であるカム基底面66eから突出している。また、第1カム面66cが第2カム面66dよりも突出している。
図7に示されるように、アームピン64の左端部には、ホーム位置検出子90がアームピン64周りに回動可能に装着されている。ホーム位置検出子90は、ホーム位置センサ42の検出対象部となる検出片90aと、左駆動カム66Lの第2カム面66dに当接するカムフォロワ90bとを有している。左駆動カム66Lの回動に伴ってホーム位置検出子90が揺動し、検出片90aが、ホーム位置センサ42に対して進退する。ホーム位置センサ42は、フォトセンサを用いることができ、二つの部分の間に検出片90aが進入することで綴じ作動部のホーム位置が検出される。
図8には、送出ばね92が示されている。送出ばね92は、上アーム26に当接して、綴じ作動部全体を前方下方に向けて付勢する。送出ばね92は、上アーム26の上部やや後方に設けられたばね受け面26c(図5参照)に当接する動作部92aを有する。動作部92aは、概ねコの字形状を有し、両端のコイル部92bを介して固定部92cが接続されている。固定部92cが上フレームの上面板30aの内側の面に固定され、動作部92aがコイル部92bを中心に回動可能である。送出ばね92は、綴じ作動部全体を前方下方に向けて送り出すように綴じ作動部を付勢している。
図9には、支えばね94が示されている。支えばね94は、支持レバー72が駆動カム66L,66Rから離れているとき、支持レバーのカムフォロワ72cの位置が下がり過ぎないように、支持レバー72を支える。支持レバー72を支えることで、駆動カム66L,66Rが回転したとき、第2カム面66dがカムフォロワ72cに接触する。支えばね94は、その円筒形状のコイル部94aが、右ガイドプレート78Rのボス78Rb(図6参照)に装着される。コイル部94aから延びる固定アーム94bの屈曲した先端が、右ガイドプレート78Rの外側面に設けられた係合穴78Rcに係合して、支えばね94が回転方向に関して固定される。支えばね94の支持アーム94cは、コイル部94aから右ガイドプレート78Rの内側の面に沿って延びている。支持アーム94cの先端が、支持レバーの一方のレバー部72bの下面を支える。支持アーム94cは、駆動カム66L,66Rが支持レバー72に接しているときには、支持レバー72から離れていてもよい。
図10〜13は、この記録材綴じ装置10の綴じ作動部の動作説明図である。綴じ作動部は、駆動カム66によって記録紙を綴じるよう動作する。なお、動作説明において、左右の駆動カム66L,66Rの区別をする必要がない場合には、簡略化のために単に駆動カム66と記す。また、連接ピンガイド溝82に関しては、簡略化のために段付き溝の深い部分のみ示す。
図10は、綴じ作動部がホーム位置にある状態を示す図である。ホーム位置において、駆動カムの第1カム面66cがアームピンの軸部分64aに当接している。これにより、第1カム面66cがアームピン64を最も後退させ、綴じ作動部全体が後退した位置にある。上歯型22および下歯型24も後退した位置にあり、かつ互いに最も離れた位置にある。上アームの連接部26bは、連接ピンのガイド突起58bが連接ピンガイド溝82の上端近傍に位置するまで引き上げられている。この連接ピン58の位置に対応して、ガイドピンのガイド突起70bがガイド穴86の上辺中央に位置し、また支持バーのガイド突起74bが支持レバーガイド溝88の上端近傍に位置する。このとき、ホーム位置検出子90は、図7に記載されるように、カムフォロワ90bが第2カム面66dに当接し、検出片90aがホーム位置センサ42に検出対象位置に位置する。ホーム位置センサ42の、検出片90aの検知に基づき制御部25は、綴じ作動部がホーム位置にあることを認識する。
駆動カム66が、ホーム位置から図中において反時計回りFに回動すると、ある位置で、アームピンの軸部分64aが第1カム面66cから外れ、カム基底面66eの接触状態へと移行する。
図11は、アームピンの軸部分64aが第1カム面66cから外れた直後の状態を示す図である。軸部分64aと第1カム面66cの係合が解かれたために、綴じ作動部は、送出ばね92の付勢力Uによって、全体的に前方下方(図中の右下方)に送り出される。アームピン64は、アームピンガイド溝84に沿って前方に移動し、これに伴い上アーム26も前方に移動する。同時に、上アーム26は、連接部26bの下端の連接ピンのガイド突起58bが連接ピンガイド溝82に沿って下方に案内されることに伴い、下方にも移動する。このため、上歯型22は、前方に進出しつつ、下方にも向かう。下アーム28は、アームピン64の前方移動に伴って前方に移動する。また、下アーム28は、開口28dを貫通するカム軸50に案内され、回動を伴わずほぼ前方に移動する。このため、下歯型24も前方に進出する。上歯型22が前方下方に進出し、下歯型24が前方に進出することで、上下の歯型22,24は、前方に進出しつつ、互いに接近する。
連接ピンガイド溝82の上部は、下方前方に斜めに延びているため、連接ピン58の連接ピンガイド溝82に沿う移動に伴い、レバーリンク56も下方前方に移動する。しかし、ガイドピンのガイド突起70bがガイド穴86の前縁に当たると、レバーリンク56はそれ以上は前方に移動できないので、その後は、ガイドピン70を軸に反時計回りに回動する。ガイドピン70の下方前方の移動に伴って、支持レバー72も移動する。支持レバー72と一体の支持バー74は、ほぼ上下に延びる支持レバーガイド溝88に沿って移動するため、ガイドピン70が前方に移動しても、前方には移動しない。図示するように支持レバーガイド溝88は、下方に行くに従い後方にも延びており、このため、支持レバー72は反時計回りに回動させられる。これにより、支持レバー72後端のカムフォロワ72cは、下方に移動する。このとき、カムフォロワ72cが移動しすぎないように、支えばね94が支持レバー72の後方部分を下から支える。
ホーム位置検出子90はアームピン64と共に前方に移動し、検出片90aはホーム位置センサ42の検出対象位置から外れる。
図12は、更に駆動カム66が反時計回りFに回転し、第2カム面66dが支持レバーのカムフォロワ72cに当接している状態を示す図である。アームピン64は、駆動カムのカム基底面66eに当接し、図11に示す位置よりも更に前方に位置する。これにより、上アーム26も図11の状態から更に前方下方に移動し、下アーム28も更に前方に移動する。上アームの連接部26bの下方移動に伴って、連接ピンのガイド突起58bは、連接ピンガイド溝82に沿って案内される。連接ピンガイド溝82は屈曲しており、屈曲点から下側部分は、下方に行くにつれて後方に延びている。連接ピンガイド溝82の下側部分が後方に延びていることにより、上アーム26は時計回りに回動する。またレバーリンク56は、連接ピン58により下方に引かれる一方、ガイドピンのガイド突起70bの下方への動きがガイド穴86に規制されるため、反時計回りに回動する。連接ピン58の下方後方への移動とレバーリンク56の反時計回りの回動により、ガイドピンのガイド突起70bは、ガイド穴86の中央部分に移動する。同時に、支持バーのガイド突起74bは支持レバーガイド溝88に沿って上方に移動し、支持レバー72は上方に移動する。また、支持バーのガイド突起74bは支持レバーガイド溝88により後方への動きを規制されるため、ガイドピン70が後方に移動することにより、支持バー74周りに時計回りに回動する。この支持レバー72の時計回りの回動に伴いカムフォロワ72cが、駆動カムの第2カム面66dが当接可能な位置に上昇する。このカムフォロワ72cの上昇を支えばね94が補助する。駆動カムの第2カム面66dが支持レバーのカムフォロワ72cに当接すると、駆動カム66の更なる回動により、支持レバー72は時計回りに回動する。また、支持バー74が下アーム28の下面に当接する。
図13は、更に駆動カム66が反時計回りに回転し、上歯型22と下歯型24により記録材を挟持している状態を示す図である。支持レバーのカムフォロワ72cは、図12の状態から第2カム面66dにより更に上方に押し上げられる。一方、支持バーのガイド突起74bは、支持レバーガイド溝88の上端に達し、支持レバー72は、支持バー74を軸に時計回りに回動する。支持レバー72の回動に伴い、ガイドピンのガイド突起70bは、ガイド穴86の後端に移動し、レバーリンク56は更に反時計回りに回動する。これらの動作によって、連接ピン58、ガイドピン70および支持バー74はほぼ一直線上に整列する。また、支持バー74は下アーム28を押し上げ、上歯型22と下歯型24が噛み合った状態になる。
上歯型22と下歯型24が噛み合うことにより、これらに挟持された記録材の束が波形に変形して記録材同士が結合し綴じられる。駆動カムの第2カム面66dは、回動するに従って徐々にカムフォロワ72cを押し上げる形状となっている。記録材の束が薄いときは、厚いときに比べ上下の歯型22,24をより深く噛み合わせる必要があるので、駆動カム66をより大きく回動させる。記録材の束の厚さに関する情報は、画像形成システム11の使用者の入力等により制御部25に入力され、この情報に基づき駆動カム66の回動角、すなわちモータ46の回転角が定められる。ホーム位置からのモータ46の回転角がエンコーダ54に検出され、そのときの記録材束の厚さに応じた回転角に達すると、モータ46の回転が停止される。
その後、モータ46は逆転し、駆動カム66は、時計回りRに逆回転する。駆動カム66が逆回転して、例えば図12の位置に達すると、上歯型22と下歯型24が離れる。上下の歯型22,24の周囲に配置された上ガイド板60と下ガイド板62の作用により、記録材の束は、上歯型22または下歯型24から引き離される。駆動カム66が更に逆転し、第1カム面66cがアームピンの軸部分64aに接するようになると、アームピン64がアームピンガイド溝842沿って後方に動かされる。これに伴い、綴じ作動部全体が上方後方に移動させられる。図10の位置に復帰し、ホーム位置センサ42によりホーム位置が検出されたら、モータ46の回転が停止される。
図14は、集積トレイ20と記録材閉じ装置10の位置関係を示す図である。図15は、図14中のA−A線による端面図である。集積トレイ20は、記録材Pが載る底板20aと、底板20aに立設され記録材Pの両側の側縁の位置を規制する側壁20bを有する。さらに、送られてくる記録材Pの先端が当接する先端壁20cが底板20aに立設されている。先端壁20cは、図15に示すように上端が屈曲し、倒立したL字形状となっており、記録材Pの先端がこのL字形の内側部分に収まって、位置決めされる。
底板20aの先端壁20cが設けられた辺(以下、先端辺と記す。)には、2箇所に切り欠き20dが設けられている。切り欠き20dは、先端辺から、先端辺に直交する方向に延びている。また、底板20aの先端辺の一方の角部に、切り欠き20eが設けられている。切り欠き20eは、先端辺に対して斜めの方向に延びている。この方向は、先端辺に対して例えば45°とする。また、先端壁20cは、切り欠き20d,20eと干渉しない位置に設けられている。
記録材綴じ装置10は、不図示の駆動機構によりレール96に沿って移動する。レール96は、底板20aの先端辺に沿う辺部分96aと、辺部分96aの一端から屈曲して底板20aの角部分に対応する角部分96bを有する。記録材Pをその角部分で綴じる場合には、記録材綴じ装置10を、図14中の符号10-1で示す位置、すなわち切り欠き20eに対応する位置に移動させる。切り欠き20eの位置で記録材Pを綴じることで、底板20aが記録材綴じ装置10の綴じ動作の障害になることがない。記録材Pの辺に沿った2箇所で記録材Pを綴じる場合には、記録材綴じ装置10を、切り欠き20dの一方に対応する図14中の符号10-2で示す位置に移動させ、ここで記録材Pを綴じる。次に、記録材綴じ装置10を、もう一方の切り欠き20dに対応した符号10-3で示す位置に移動させ、ここで記録材Pを綴じる。
切り欠き20eが設けられた角の反対側の角に切り欠きを設け、レール96を延ばして、こちらの角でも記録材Pを綴じられようにしてもよい。また、切り欠きを辺に沿って3箇所以上に配置し、これらの3箇所以上の位置で記録材を綴じられるようにしてもよい。
図16は、上アーム26から上歯型22を、下アーム28から下歯型24を取り外した状態を示す斜視図である。上歯型22は、上アーム26に取り付けられたとき、記録材綴じ装置10の左右方向に配列された複数の歯100を有する。同様に、下歯型24は、下アーム28に取り付けられたとき、記録材綴じ装置10の左右方向に配列された複数の歯102を有する。歯の配列方向を「歯並び方向」と記す。また、個々の歯の歯幅に沿う方向を「歯幅方向」、高さに沿う方向を「歯丈方向」と記す。さらに、上歯型の歯100を「上歯100」、下歯型の歯102を「下歯102」と記す。
上歯型22は、上アームの台座26dにくさび形状の上シム104を介して装着される。上歯型22は、上方に開いたコの字形であり、コの字の横画部分が上アーム26の先端に形成された台座26dの左右の側面に係合して上歯型22の左右方向の位置決めがなされる。コの字の縦画部分に相当する上歯型22の底面22aが上シム104に密着している。上歯型22は、上シム104の上歯型22に対向する面に対して装着される。下歯型24は、下アームの台座28eにくさび形状の下シム106を介して装着される。下歯型24は、下方に開いたコの字形であり、コの字の横画部分が下アームの先端台28cに形成された台座28eの左右の側面に係合して下歯型24の左右方向の位置決めがなされる。コの字の縦画部分に相当する下歯型24の底面24aが下シム106に密着している。下歯型24は、下シム106の下歯型24に対向する面に対して装着される。上歯型22および下歯型24の歯並び方向は、アームピン64の軸線方向に一致してよい。
図17は、上歯型22と下歯型24が噛み合った状態を歯幅方向から見た図である。特に、上歯型22と下歯型24が歯並び方向にずれた状態を示している。図示するように、上歯100の歯列の歯底100bと下歯102の歯先102aが寸法dだけずれている。このように上歯100と下歯102にずれがあると、1つの歯の一方の歯面が相手の歯に強く当たり、他方の歯面の当たりが弱くなる。このような片当たりのある状態で記録材の束を挟むと、強く当たる側の歯面で記録材が損傷し、一方当たりが弱い側では、記録材同士の結合が弱くなる場合がある。記録材綴じ装置10においては、上歯型22と下歯型24を、歯並び方向から見たときに相対的に傾けて配置することで、片当たりを抑制している。上シム104と下シム106により、上歯型22と下歯型24が装着される面が斜面となり、これにより上歯型22と下歯型24が傾けられている。
図18は、噛み合う直前の上歯100と下歯102を歯並び方向から見た状態を示す図である。上歯100は、その歯先100aと歯底100bが平行で、歯先100aの幅の範囲で歯丈が一定である。また、上歯の歯先100aは、上歯型の底面22aにも平行である。下歯102も、その歯先102aと歯底102bが平行で、歯先102aの幅の範囲で歯丈が一定である。また、下歯の歯先102aは、下歯型の底面24aにも平行である。図示するように、上歯の歯先100aと下歯の歯先102aは傾いており、歯先の一方の端、図18においては左端から噛み合いが始まる。つまり、上歯の歯先100aの左端が、下歯の歯先102aの規定する平面に達する。このときが噛み合い開始時である。上歯100と下歯102が歯並び方向にずれている場合、噛み合いが始まると、先に噛み合い始めた端において、上歯100と下歯102がずれを解消するように動く。つまり、図17において、上歯100が左に、下歯102が右に動く。この動きによって、これ以降に噛み合い始める部分もずれが解消されていく。
図19は、上歯100と下歯102が最も深く噛み合った状態、つまり噛み合いが完了した状態を示す図である。図示するように、噛み合い完了時においても、上歯型22と下歯型24が傾いた状態にある。この傾き角θは例えば1.5°を超える角度である。このように、この記録材綴じ装置10においては、上歯型22と下歯型24は、噛み合い開始から完了まで常に傾いた状態にある。
上歯型22と下歯型24を傾けるために、この記録材綴じ装置10においては、上歯型22と下歯型24が装着される面が傾けられている。特に、上シム104と下シム106のくさび形状を利用して、この上シム104の上歯型の底面22aに対向する面と、下シム106の下歯型の底面24aに対向する面とが傾けられている。上シム104と下シム106の一方または両方を、他のくさび角のシムと交換することで、上歯型22と下歯型24の傾きが調節される。また、上シム104と下シム106のいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。また、シムを設けずに、上アームの台座26dと下アームの台座28eの一方または両方を傾けるようにしてもよい。
この記録材綴じ装置10は、集積トレイ20上の記録材Pに対し、上歯型22と下歯型24が、記録材Pの縁に近い側から噛み合いを開始するように配置されている。歯型が傾いているため、噛み合い過程で記録材Pの材料が記録材Pの縁側から内側に向けて寄せられる。このため記録材Pが変形して互いに結合している部分の、記録材Pの中央寄りの部分でより強い結合力が得られる。綴じられた記録材Pをめくるときには、中央寄りの部分に力が掛かるから、この部分の結合力を高めることにより、綴じられた記録材Pが外れにくくなる。