添付図面を参照して、本発明による通信信頼度管理サーバ、通信信頼度管理システムおよび通信信頼度管理方法を実施するための形態を以下に説明する。
(第1の実施形態)
図1Aを参照して、一実施形態による通信信頼度管理システムの基本的な概念について説明する。本実施形態による通信信頼度管理システムでは、通信環境に応じて通信パラメータを最適化するために、予め生成された通信信頼度マップ情報を用いる。図1Aは、一実施形態による通信信頼度マップ情報の一例を示す図である。
図1Aの通信信頼度マップ情報は、基準車両1が他の車両1A〜1Eおよび2A〜2Cとの間で通信する際の通信信頼度が、丁字路型の道路10の領域11、12A〜12C、13Aおよび13Bによって異なることを例示している。ここでは、通信信頼度を、送信位置と、受信位置との組み合わせごとに、次のように定義する。すなわち、所定の送信位置から所定の受信位置までの通信信頼度とは、受信位置の車両のうち、送信位置の車両から送信された信号を受信し、かつ、送信信号の復調まで成功した車両の割合である。なお、実際の通信信頼度マップ情報は、送信位置および受信位置のあらゆる組み合わせのそれぞれに対応する通信信頼度を含んでいることが好ましい。
図1Aの各領域の通信信頼度が、例えば以下のように測定された場合について考える。すなわち、基準車両1が、領域11の範囲内に位置している車両1A〜1Eのいずれかと通信する場合の通信成功率は、90%以上である。同様に、基準車両1が、領域12A〜12Cの範囲内に位置している車両2A〜2Cのいずれかと通信する場合の通信成功率は、50%以上、かつ、90%未満である。さらに、基準車両1が、領域13Aまたは13Bの範囲内に位置する車両と通信する場合の通信成功率は、50%未満である。
上記のような通信信頼度の分布を、送信側の基準車両1が予め把握していれば、通信成功率に相応しい通信パラメータを選択することが可能となる。例えば、通信相手となる受信側車両が領域11の範囲内に位置しているなら、誤り訂正性能を犠牲にしてでも、データ伝送効率を優先することが考えられる。反対に、受信側車両が領域13Aの範囲内に位置しているなら、データ伝送効率を犠牲にしてでも、誤り訂正性能を強化するためにパケットを冗長化することが考えられる。
もし、図1Aに例示したような通信信頼度マップ情報を、基準車両1が把握していなければ、相手の車両が領域13Aの範囲内に位置していても、データ伝送効率を優先して、誤り訂正性能が比較的弱い、冗長度の低いパケットで信号を送信する可能性がある。この場合は、50%以上の確率で通信が失敗し、すなわち相手の車両は送信信号を受信出来ない。通信が失敗した場合、基準車両1は、相手の車両から返信の信号が届かないまま所定の時間が経過するのを待ってから、送信信号を再送する。再送する信号も50%の確率で通信が失敗すると、送信信号が再再送される。路上の車車間通信では、このような再送が繰り返される間にも基準車両と相手の車両とは走行を続けているので、通信が成功しないままに通信を必要としていた交通状況が変わってしまう恐れがある。交通の安全を最優先に実現するためには、場所によって異なる通信環境を各車両が事前に把握した上で、その通信環境に適応する通信パラメータを用いて通信を行うことが好ましい。
また、基準車両1が、上記のような通信信頼度の分布に加えて、別の送信位置に対応する通信信頼度の分布をさらに把握していれば、第3の車両を仲介する通信を行う選択肢が増える。すなわち、基準車両1から受信側車両への通信信頼度が低い場合でも、もし、基準車両1から第3の車両への通信信頼度が高く、かつ、第3の車両から受信側車両への通信信頼度が高いことを基準車両1が把握出来ていれば、第3の車両を経由する通信ルートを選択することが可能となる。このとき、基準車両1は、通信ルートを指示するデータをヘッダ情報に追加したパケットを生成して送信しても良い。
しかし、このような通信信頼度マップ情報を生成するためには、膨大な測定データが必要となることが予想される。そこで、発明者はなるべくコストをかけずに通信信頼度マップ情報を生成する方法を提案する。図1Bを参照して、各車両が自車位置情報を周囲に通知する通信を利用して通信信頼度マップ情報を生成する原理について説明する。図1Bは、一実施形態による交通システムの一例を示す図である。
まず、図1Bに示された車両3A〜3Cが位置情報信号21、22を送受信する。図1Bの例では、車両3Aが位置情報信号21および22を送信し、車両3Bが位置情報信号21を受信し、車両3Cが位置情報信号22を受信する。ここで、車両3Aは、通信相手を選ばないブロードキャスト送信を行っても良い。この場合は、位置情報信号21および22は同一の信号である。
車両3Aは、位置情報信号21および22を送信した結果を記録する。この送信記録は、送信時刻と、送信位置と、送信電力とを含むことが好ましい。車両3Bおよび3Cは、位置情報信号21および22を受信した結果を記録する。この受信記録は、受信時刻と、受信位置と、受信電力と、受信の成否とを含むことが好ましい。ここで、受信の成否とは、送信信号の内容を正しく復調できたか否かを示す情報である。
このような位置情報信号21、22の送受信は、車両3A〜3Cの間で、双方向に、繰り返し行われ、かつ、その結果がそれぞれの車両で記録されることが好ましい。また、実際には、位置情報信号21、22の送受信はさらに多くの車両の間で行われ、かつ、その結果がそれぞれの車両で記録されることが好ましい。
次に、位置情報信号21、22を送受信した記録は、通信ログ情報23として、車両3A〜3Cのそれぞれから、通信信頼度データベース150に向けてアップロードされる。通信信頼度データベース150は、車両3A〜3Cから取得した通信ログ情報23を解析して、送信位置および受信位置の組み合わせごとに、受信電力や、受信の成否などを含む通信信頼度情報32を生成する。なお、送信位置および受信位置の組み合わせごとに生成される通信信頼度情報32を、全ての組み合わせについて集合したものが、図1Aを参照して説明した通信信頼度マップ情報である。
次に、生成された通信信頼度情報32が、車両4Aおよび4Bが車車間通信を行う際に利用される。図1Bの例では、車両4Aおよび車両4Bの間で通信希望33が発生する。車両4Aは、車両4Bに向けて信号を送信する前に、送受信を行う位置を示す送受信位置情報31を通信信頼度データベース150に向けて送信する。その応答として、通信信頼度データベース150は、送受信位置情報31が示す位置に対応する通信信頼度情報32を車両4Aに向けて送信する。車両4Bも、通信信頼度データベース150との間で同様の通信を行っても良い。車両4Aおよび4Bは、通信信頼度情報32を参照し、送受信位置に適応した通信パラメータを用いることで、成功率がより高い車車間通信を行うことが出来る。
ここで、通信ログ情報23を路上で収集する車両3A〜3Cと、通信信頼度情報32を利用する車両4Aおよび4Bとには、共通する車両が含まれていても良い。路上を走行する全ての車両が、通信ログ情報23の収集と、通信信頼度情報32の利用との両方を行うことが好ましい。
また、通信ログ情報23を収集するために車両3A〜3Cが路上で行う位置情報信号21、22の送受信としては、自車両の現在位置を無線通信によって周囲に通知するシステムを利用しても良い。例えば、日本のASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)や、米国のIntelliDriveや、欧州のCar−2−Car Communication Consortiumなどで想定されている、100ミリ秒ごとに自車位置を送信するシステムを利用しても良い。こうすることで、通信信頼度情報32の生成に伴う追加コストの削減が期待される。
図2を参照して、一実施形態による通信信頼度管理システムの構成について説明する。図2は、一実施形態による通信信頼度管理システムの一構成例を示す図である。
図2の通信信頼度管理システムは、通信信頼度管理サーバ100と、通信信頼度データベース150と、アクセスポイント300と、車載端末200A〜200Eとを備えている。車載端末200A〜200Eは、車両5A〜5Eにそれぞれ搭載されている。なお、車載端末200A〜200Eおよび車両5A〜5Eの総数は、図2の例では5であるが、この例に限定されない。以降、車両5A〜5Eを総称して「車両5」と記す場合がある。同様に、車載端末200A〜200Eを総称して「通信端末200」と記す場合がある。通信端末200には、路側に固定された路側端末が含まれても良い。
通信信頼度管理サーバ100は、通信信頼度データベース150およびアクセスポイント300のそれぞれに、任意のネットワークを介して接続されている。通信信頼度管理サーバ100は、アクセスポイント300を介して、車載端末200Aなどの通信端末200から接続することが出来る。
図3Aを参照して、一実施形態による通信端末200の構成について説明する。図3Aは、一実施形態による通信端末200の一構成例を機能的に示すブロック回路図である。
図3Aの通信端末200の構成要素について説明する。図3Aの通信端末200は、受信部210と、位置検出部220と、送信部230と、記憶部240と、ネットワーク接続部250と、アンテナ252、254および260とを備えている。受信部210は、RF(Radio Frequency:高周波)部211と、復調部212と、復調データ解析部213とを備えている。位置検出部220は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)部221と、自車位置情報処理部222とを備えている。送信部230は、適応パラメータ制御部231と、パケット構成部232と、符号化部233と、変調部234と、RF部235とを備えている。ネットワーク接続部250は、無線LAN(Local Area Network:構内通信網)送受信部251と、LTE(Long Term Evolution)送受信部253とを備えている。ここで、無線LANおよびLTEはあくまでも一例であって、ネットワーク接続部250が備える送受信部はこれらに限定されない。ネットワーク接続部250は、その他の、例えば3G(3rd Generation:第3世代移動通信システム)や5G(5th Generation:第5世代移動通信システム)などの送受信部をさらに備えていても良いし、反対に、無線LANまたはLTEのいずれかまたは両方を備えていなくても良い。
図3Aの通信端末200の構成要素の接続関係について説明する。受信部210のRF部211の入力は、アンテナ260に接続されている。RF部211の出力は、復調部212の入力に接続されている。復調部212の出力は、復調データ解析部213の入力に接続されている。復調データ解析部213の出力は、記憶部240に接続されている。GPS部221の出力は、自車位置情報処理部222の入力に接続されている。自車位置情報処理部222の出力は、記憶部240に接続されている。適応パラメータ制御部231の入力は、記憶部240に接続されている。適応パラメータ制御部231の出力は、パケット構成部232と、符号化部233と、変調部234と、送信部230のRF部235とに接続されている。パケット構成部232の入力は、記憶部240に接続されている。パケット構成部232には、その他、送信データが供給される。パケット構成部232の出力は、符号化部233の入力に接続されている。符号化部233の出力は、変調部234の入力に接続されている。変調部234の出力は、送信部230のRF部235の入力に接続されている。送信部230のRF部235の出力は、アンテナ260に接続されている。ネットワーク接続部250の入力は、記憶部240に接続されている。無線LAN送受信部は、アンテナ252に接続されている。LTE送受信部は、アンテナ254に接続されている。ネットワーク接続部250がその他の送受信部を備える場合には、対応するアンテナも備えることが好ましい。
なお、アンテナ252、254および260の全てまたは一部は、同一のアンテナであっても良い。また、アンテナ252、254および260のそれぞれは、複数のアンテナであっても良い。
図3Aに示した通信端末200の一部または全体は、所定のプログラムを実行する計算機としても実現可能である。図3Bを参照して、一実施形態による通信端末200の別の構成例について説明する。図3Bは、一実施形態による通信端末200の一構成例を装置別に示すブロック回路図である。
図3Bの通信端末200は、バス201と、入出力インタフェース202と、演算装置203と、記憶装置204と、外部記憶装置205とを備えている。入出力インタフェース202と、演算装置203と、記憶装置204と、外部記憶装置205とは、それぞれ、バス201を介して相互に接続されている。入出力インタフェース202は、アンテナや、その他の装置などに接続可能である。外部記憶装置205は、外部の記憶媒体206に接続可能である。
演算装置203は、記憶装置204に格納されている所定のプログラムを実行する。このプログラムは、外部記憶装置205を介して記憶媒体206から読み出されたものであっても良い。演算装置203は、実行するプログラムに従い、入出力インタフェース202を介して外部から入力する情報や、記憶装置204に格納されているデータなどを用いて所定の処理を行う。行われた処理の結果は、記憶装置204に格納されても良いし、入出力インタフェース202を介して外部に出力されても良いし、外部記憶装置205を介して記憶媒体206に記録されても良い。演算装置203は、このようにして、図3Aの受信部210や、位置検出部220や、送信部230や、ネットワーク接続部250などの処理を実行することが出来る。
本実施形態による通信端末200の動作について説明する。通信端末200の動作には、データ収集機能と、アップロード機能と、ダウンロード機能と、データベース利用機能とが含まれる。ここで、データ収集機能とは、通信端末200が他の通信端末200から送信される位置情報信号21、22を受信し、その結果を記録する機能である。アップロード機能とは、データ収集機能で記録した受信結果を含む通信ログ情報23を、通信信頼度管理サーバ100に向けて送信する機能である。ダウンロード機能とは、通信端末200が通信信頼度管理サーバ100から通信信頼度マップ情報40を受信して通信信頼度ローカルデータベースとして記憶部240に格納する機能である。データベース利用機能とは、通信端末200が、記憶部240の通信信頼度ローカルデータベースにダウンロードした通信信頼度マップ情報40を利用して、他の通信端末200との間で通信を行う機能である。
図4Aを参照して、一実施形態による通信端末200の動作のうち、データ収集機能について説明する。図4Aは、一実施形態による通信端末200のデータ収集機能の一動作例を示すフローチャートである。なお、通信端末200が自身の位置情報信号21、22をブロードキャスト送信してその結果を記録する機能については、データベース利用機能と併せて説明する。
図4Aのフローチャートは、第0ステップS10〜第8ステップS18の合計9個のステップを含んでいる。まず、第0ステップS10において、通信端末200は観測を開始する。第0ステップS10の次には、第1ステップS11が実行される。
第1ステップS11において、受信部210のRF部211は、アンテナ260を介して受信する電波からRFデータを取得する。第1ステップS11の次には、第2ステップS12が実行される。
第2ステップS12において、復調部212は、取得されたRFデータの復調を試みる。第2ステップS12の次には、第3ステップS13が実行される。
第3ステップS13において、復調データ解析部213が、復調部212による復調が成功したか否かを判定する。判定の結果、復調が成功した場合(YES)には、その次に第4ステップS14が実行される。判定の結果、復調に成功していない場合(NO)には、その次に第5ステップS15が実行される。
第4ステップS14において、復調データ解析部213が、復調された送信者情報を、観測結果に付与する。第4ステップS14の次には、第5ステップS15が実行される。
第5ステップS15において、復調データ解析部213が、RFデータより受信電力を計算して観測結果に付与する。第5ステップS15の次には、第6ステップS16が実行される。
第6ステップS16において、復調データ解析部213が、観測位置および観測時刻を観測結果に付与する。ここで、観測位置は、位置検出部220を利用して得ることが可能である。また、観測時刻は、図示しないクロック装置から得ることが可能である。第6ステップS16の次には、第7ステップS17が実行される。
第7ステップS17において、復調データ解析部213が、観測結果を記憶部240のDB(データベース)に登録する。第7ステップS17の次には、第8ステップS18が実行される。
第8ステップS18において、通信端末200は観測を終了する。
通信端末200は、他の通信端末から送信される位置情報信号21、22を受信部210で受信する度に、第0ステップS10〜第8ステップS18を実行して、受信の記録である観測記録を生成して記憶部240に格納する。このようにして格納される観測記録は、位置情報信号21、22の受信電力と、通信端末200が位置情報信号21、22を受信した観測位置および観測時刻とを含む。復調に成功した場合には、観測記録はさらに送信者情報を含む。送信者情報は、この位置情報信号21、22を送信した通信端末200の位置情報を含む。
図4Bを参照して、通信端末200の動作のうち、アップロード機能について説明する。図4Bは、一実施形態による通信端末200のアップロード機能の一動作例を示すフローチャートである。
図4Bのフローチャートは、第0ステップS20〜第7ステップS27の合計8個のステップを含んでいる。第0ステップS20において、通信端末200が通信信頼度管理サーバ100に向けて通信ログ情報23のアップロードを開始する。通信端末200のアップロード機能と、後述するダウンロード機能は、比較的大量のデータを送受信する場合があり、すなわち比較的長時間にわたる通信が必要となる場合があるので、通信端末200を搭載する車両5が移動しない時間帯を選んで行われることが好ましい。例えば、通信端末200のアップロード機能は、搭載する車両5が利用者の自宅などに戻った際などに自動的に開始しても良いし、予め設定された時刻に自動的に開始しても良いし、利用者の操作によって開始しても良い。第0ステップS20の次には、第1ステップS21が実行される。
第1ステップS21において、ネットワーク接続部250が、利用可能なネットワークを確認する。第1ステップS21の次には、第2ステップS22が実行される。
第2ステップS22において、ネットワーク接続部250が、利用可能なネットワークの中から、優先度の高いネットワークを選択する。ここで、優先度の高さは、例えば、セルラに負荷をかけない順番や、高速に接続できる順番などで定義されても良い。ここでは、無線LANはLTEよりも優先度が高く、LTEはその他のネットワーク、例えば3Gや5Gなどよりも優先度が高い場合を想定する。第2ステップS22の次には、第3ステップS23が実行される。
第3ステップS23において、ネットワーク接続部250が、通信信頼度管理サーバ100および通信信頼度データベース150との接続確立を試みる。ここで、第2ステップS22で選択されたネットワークが用いられる。ただし、優先度が最も高いネットワーク(この例では無線LAN)による接続確立に成功しなかった場合は、優先度が次に高いネットワーク(この例ではLTE)による接続確立を試みても良い。第3ステップS23の次には、第4ステップS24が実行される。
第4ステップS24において、ネットワーク接続部250が、接続の確立に成功したか否かを判定する。判定の結果、確立に成功した場合(YES)は、次に第5ステップS25が実行される。反対に、確立に成功しなかった場合(NO)は、次に第7ステップS27が実行される。
第5ステップS25において、ネットワーク接続部250が、観測情報および送信情報、すなわち通信ログ情報23を、通信信頼度データベース150に、通信信頼度管理サーバ100を介してアップロードする。第5ステップS25の次には、第6ステップS26が実行される。
第6ステップS26において、ネットワーク接続部250が、通信信頼度管理サーバ100および通信信頼度データベース150との接続を終了する。第6ステップS26の次には、第7ステップS27が実行される。
第7ステップS27において、通信端末200のアップロード機能が終了する。
通信端末200は、第0ステップS20〜第7ステップS27を実行することで、それまでに記憶部240に記録し続けた通信ログ情報23、すなわち観測情報および送信情報を、通信信頼度管理サーバ100にアップロードする。アップロードし終わった通信ログ情報23は、記憶部240から削除しても良いし、記憶部240に残しても良い。ただし、アップロードし終わった通信ログ情報23を記憶部240に残す場合には、フラグを立てるなどしてアップロードし終わっていることを記録しておくことが好ましい。
図4Cを参照して、一実施形態による通信端末200の動作のうち、ダウンロード機能について説明する。図4Cは、一実施形態による通信端末200のダウンロード機能の一動作例を示すフローチャートである。
図4Cのフローチャートは、第0ステップS30〜第8ステップS38の合計9つのステップを含んでいる。まず、第0ステップS30において、通信端末200はダウンロードを開始する。通信端末200のダウンロード機能は、アップロード機能の終了後に自動的に開始しても良いし、予め設定された時刻に自動的に開始しても良いし、所定の場所に到達または接近した際に自動的に開始しても良いし、利用者の操作によって開始しても良い。第0ステップS30の次には、第1ステップS31が実行される。
第1ステップS31において、ネットワーク接続部250が、利用可能なネットワークを確認する。第1ステップS31の次には、第2ステップS32が実行される。
第2ステップS32において、ネットワーク接続部250が、利用可能なネットワークの中から、優先度の高いネットワークを選択する。第2ステップS32の内容は、図4Bの第2ステップS22と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。第2ステップS32の次には、第3ステップS33が実行される。
第3ステップS33において、ネットワーク接続部250が、通信信頼度管理サーバ100および通信信頼度データベース150との接続確立を試みる。第3ステップS33の内容は、図4Bの第3ステップS23と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。第3ステップS33の次には、第4ステップS34が実行される。
第4ステップS34において、ネットワーク接続部250が、接続の確立に成功したか否かを判定する。判定の結果、確立に成功した場合(YES)は、次に第5ステップS35が実行される。反対に、確立に成功しなかった場合(NO)は、次に第8ステップS38が実行される。
第5ステップS35において、ネットワーク接続部250が、通信信頼度管理サーバ100を介して、通信信頼度データベース150から所望の情報をダウンロードする。ここで、所望の情報とは、通信信頼度マップ情報40であるが、通信端末200はその一部だけを選択的にダウンロードしても良い。これは、通信信頼度マップ情報40が、その全体を一度にダウンロードするにはデータ量が大き過ぎたり、通信時間が長くなりすぎたりする場合への対策である。通信信頼度マップ情報40の一部だけをダウンロードする場合には、ダウンロードしたい部分が予め通信端末200に設定されていることが好ましい。このような設定は、利用者が今後走行したい地域を選択することで行なわれても良いし、通信端末200が記憶部240に記憶されている走行記録などに基づいて今後走行する可能性が高い地域を推測することで行われても良い。第5ステップS35の次には、第6ステップS36が実行される。
第6ステップS36において、通信端末200が、通信信頼度管理サーバ100からダウンロードして取得した情報を、記憶部240の通信信頼度ローカルデータベースに登録する。第6ステップS36の次には、第7ステップS37が実行される。
第7ステップS37において、ネットワーク接続部250が、通信信頼度管理サーバ100および通信信頼度データベース150との接続を終了する。第7ステップS37の次に、第8ステップS38が実行される。
第8ステップS38において、通信端末200のダウンロード機能が終了する。
通信端末200は、第0ステップS30〜第8ステップS38を実行することで、最新の通信信頼度マップ情報40の一部または全体を、記憶部240の通信信頼度ローカルデータベースに格納する。通信信頼度マップ情報40のうち、記憶部240に格納されていない部分については、走行中に対応する地域に接近した場合など、別の機会に改めてダウンロードしても良い。
図4Dを参照して、通信端末200の動作のうち、データベース利用機能について説明する。図4Dは、一実施形態による通信端末200のデータベース利用機能の一動作例を示すフローチャートである。
図4Dのフローチャートは、第0ステップS40〜第10ステップS50の合計11個のステップを含んでいる。まず、第0ステップS40において、通信端末200はデータベースの利用を開始する。データベースの利用は、通信端末200を搭載する車両5の走行中は常時行われることが好ましい。したがって、データベース利用機能は、ダウンロード機能が終了した際に自動的に開始しても良いし、利用者が車両5のシステムを起動する際に自動的に開始しても良い。第0ステップS40の次には、第1ステップS41が実行される。
第1ステップS41において、通信端末200が、GPS部221を用いて自身の位置情報を取得する。ここで、GPS部221は、GPS衛星からの無線信号を受信し、その結果を自車位置情報処理部222に送信する。自車位置情報処理部222は、GPS信号から位置情報を算出する。自車位置情報処理部222は、算出した位置情報を、その他の観測結果などに基づいて微調整しても良い。ここで用いられる観測結果には、LTEの基地局や、無線LANのアクセスポイントなどから受信する無線信号から算出される位置情報が含まれても良いし、車両5の加速度や速度などから算出される補正情報が含まれても良い。第1ステップS41の次には、第2ステップS42が実行される。
第2ステップS42において、通信端末200が、所望パケット到達率および受信位置を決定する。ここで決定する所望パケット到達率とは、通信が成功するために必要と推測される通信信頼度の範囲であり、より具体的には通信相手が受信する信号の受信電力の下限値や、通信が成功する確率の下限値などが決定される。また、決定する受信位置とは、通信相手となる別の車両5の位置である。ただし、記憶部240の通信信頼度ローカルデータベースにダウンロードされている通信信頼度マップ情報40では、データ量を節約するために、土地を複数のエリアに分割し、位置情報をエリア単位で管理することが好ましい。このような場合、実際の受信位置は、所定の面積を備える受信範囲として扱われる。第2ステップS42の次には、第3ステップS43が実行される。
第3ステップS43において、通信端末200が、記憶部240に格納されている通信信頼度ローカルデータベースより周辺環境情報を読み出す。ここで、周辺環境情報とは、通信信頼度マップ情報40のうち、第1ステップS41で取得した自身の位置情報を含むエリアと、その周辺のエリアとに対応する部分である。通信端末200の演算能力およびメモリ容量には限りがあるので、このような意味からも、現実的な範囲に限定して通信信頼度マップ情報40を利用することが好ましい。第3ステップS43の次には、第4ステップS44が実行される。
第4ステップS44において、通信端末200が、通信ルートを決定する。ここで、通信ルートの決定とは、通信端末200から、通信相手となる別の通信端末200までの通信ルートを、信号の伝搬を直接的に行うか、他の通信ノードを仲介して間接的に行うか、仲介する場合はどの通信ノードを利用するか、を決定することを意味する。通信端末200の現在位置を含む送信エリアと、通信相手の通信端末200の現在位置を含む受信エリアとの間で、通信信頼度が第2ステップS42で決定された所望パケット到達率の条件を満たしていれば、直接的な通信ルートが選択可能である。反対に、条件が満たされていなければ、通信ルートを仲介する第3の通信端末200を選択する。このとき、送信する通信端末200および仲介する通信端末200の間の通信信頼度と、仲介する通信端末200および受信する通信端末200の間の通信信頼度との両方が、所望パケット到達率の条件を満たす必要がある。なお、仲介する通信端末200は、さらに多くても良い。
ここで、通信ルートの決定には、送信するパケットを生成する際に用いる通信プロトコルの選択および決定が含まれても良い。通信プロトコルは、仲介する通信端末200に合わせて選択されることが好ましい。第4ステップS44の次には、第5ステップS45が実行される。
第5ステップS45において、通信端末200が、符号化率を決定する。ここで、符号化率の決定とは、送信する情報をバイナリ信号に符号化する際に用いられる規格の選択および決定が含まれることが好ましい。符号化の規格は、誤り訂正の性能や、パケットの長さや、通信速度などの各種トレードオフなどを適宜に勘案して選択されることが好ましい。第5ステップS45の次には、第6ステップS46が実行される。
第6ステップS46において、通信端末200が、変調方式を決定する。ここで、決定される変調方式は、送受信を行う通信端末200の間の距離や、送受信を行う通信端末200の周囲の環境におけるS/N(信号対雑音)比などを勘案して適宜に選択されることが好ましい。第6ステップS46の次には、第7ステップS47が実行される。
第7ステップS47において、通信端末200が、送信信号の周波数を決定する。ここで、決定される送信信号の周波数は、送受信位置が同じでも周波数によって異なる通信信頼度などを勘案して適宜に選択されることか好ましい。第7ステップS47の次には、第8ステップS48が実行される。
第8ステップS48において、通信端末200は、送信信号の送信電力を決定する。ここで、決定される送信電力は、受信する通信端末200の現在位置に対応する受信電力の値を通信信頼度マップ情報40から読み出し、読み出した値などに基づいて適宜に選択されることか好ましい。第8ステップS48の次には、第9ステップS49が実行される。
第9ステップS49において、通信端末200は、送信部230を用いてパケットを送信する。ここで、送信部230は、第4ステップS44〜第8ステップS48で決定された通信ルート、符号化率、変調方式、周波数および送信電力にしたがって、送信パケットを生成し、アンテナ260を介して外部に送信する。より具体的には、まず、適応パラメータ制御部231が通信ルート、符号化率、変調方式、周波数および送信電力を決定する。次に、パケット構成部232が、決定された通信ルートおよびプロトコルにしたがって、送信信号のパケットを生成する。次に、符号化部233が、決定された規格にしたがって、生成されたパケットをバイナリ信号に符号化する。次に、変調部234が、決定された変調方式にしたがって、符号化されたバイナリ信号をRF信号に変調する。次に、RF部235が、決定された周波数および電力にしたがって、変調されたRF信号をアンテナから無線送信する。通信端末200は、送信の結果を記憶部240に記録しておくことが好ましい。第9ステップS49の次には、第10ステップS50が実行される。
第10ステップS50において、通信端末200は、データベース利用機能を終了する。ただし、通信端末200が他の通信端末200との通信を継続する限りは、第9ステップS49の次に第1ステップS41に戻っても良い。
第4ステップS44〜第8ステップS48は、上記に説明したとおりの順番で実行されても良いし、他の順番で実行されても良いし、その一部または全てが並列に実行されても良い。また、第4ステップS44〜第8ステップS48で決定される通信パラメータの一部が固定されていて、すなわち予め所定の値に決定されていても良い。
ここで、通信端末200が自身の位置情報信号21、22をブロードキャスト送信してその結果を記録する機能について説明する。位置情報信号21、22のブロードキャスト送信も、基本的には図4Dを参照して説明した送信動作と同様に実行することが可能である。ただし、位置情報信号21、22のブロードキャスト送信には、通信信頼度マップ情報40を生成または更新するために、送信信号の通信パラメータが所定の基準を満たし、かつ、この基準は不変であることが好ましい。したがって、位置情報信号21、22のブロードキャスト信号を行う場合には、第2ステップS42〜第8ステップS48の一部またはすべてを省略することが可能である。
図5Aを参照して、一実施形態による通信信頼度管理サーバ100の一構成例について説明する。図5Aは、一実施形態による通信信頼度管理サーバの一構成例を機能的に示すブロック図である。
図5Aの通信信頼度管理サーバ100の構成要素について説明する。図5Aの通信信頼度管理サーバ100は、ログ情報取得部110と、信頼度情報生成部120と、マップ化処理部130と、信頼度情報提供部140とを備えている。なお、通信信頼度データベース150は、通信信頼度管理サーバ100の一部と考えても良いし、通信信頼度管理サーバ100と切り離して考えても良い。
図5Aの通信信頼度管理サーバ100の構成要素の接続関係について説明する。ログ情報取得部110の入力は、ネットワークに接続されている。ログ情報取得部110の出力は、信頼度情報生成部120の入力に接続されている。信頼度情報生成部120の出力は、通信信頼度データベース150と、マップ化処理部130の入力とに接続されている。マップ化処理部130の入力は、信頼度情報生成部120の出力と、通信信頼度データベース150とに接続されている。マップ化処理部130の出力は、通信信頼度データベース150に接続されている。信頼度情報提供部140の入力は、通信信頼度データベース150に接続されている。信頼度情報提供部140の出力は、ネットワークに接続されている。
なお、通信信頼度管理サーバ100は、このネットワークを介して通信端末200との通信を行う。さらに、通信信頼度管理サーバ100は、このネットワークを介して通信信頼度データベース150に接続されていても良い。その場合、通信信頼度管理サーバ100と、通信信頼度データベース150とは、その一部または全体が、ネットワーク上のどこにあっても良い。
図5Aに示した通信信頼度管理サーバ100の一部または全体は、所定のプログラムを実行する計算機としても実現可能である。図5Bを参照して、一実施形態による通信信頼度管理サーバ100の別の構成例について説明する。図5Bは、一実施形態による通信信頼度管理サーバ100の一構成例を装置別に示すブロック回路図である。
図5Bの通信信頼度管理サーバ100は、バス101と、入出力インタフェース102と、演算装置103と、記憶装置104と、外部記憶装置105とを備えている。入出力インタフェース102と、演算装置103と、記憶装置104と、外部記憶装置105とは、それぞれ、バス101を介して相互に接続されている。入出力インタフェース102は、ネットワークを介して、通信端末200などに接続可能である。外部記憶装置105は、外部の記憶媒体106に接続可能である。
図5Bの構成要素のそれぞれの動作は、図3Bの構成要素のそれぞれの場合と同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
図6を参照して、本実施形態による通信信頼度管理サーバ100が通信信頼度マップ情報40を生成する動作について説明する。図6は、一実施形態による通信信頼度管理サーバのマップ情報生成機能の一動作例を示すフローチャートである。
図6のフローチャートは、第0ステップS60〜第6ステップS66の、合計7個のステップを含んでいる。まず、第0ステップS60において、通信信頼度管理サーバ100が、ネットワークを介して通信端末200から接続の依頼を受ける。通信端末200によるこの接続依頼は、図4Bを参照して説明したアップロード機能の第3ステップS23に対応する。第0ステップS60の次には、第1ステップS61が実行される。
第1ステップS61において、ログ情報取得部110が、通信ログ情報23を、すなわち送受信位置ごとの受信電力値および受信結果を、ネットワークを介して通信端末200から取得する。ここで、通信ログ情報23には、通信端末200が位置情報信号21、22を送信した結果を記録した送信情報も含まれていることが好ましい。ログ情報取得部110は、取得した通信ログ情報を、信頼度情報生成部120に送信する。第1ステップS61の次には、第2ステップS62が実行される。
第2ステップS62において、信頼度情報生成部120が、取得した送受信位置における過去の統計情報を、通信信頼度データベース150から取得する。ここで、取得する過去の統計情報とは、後述するように、信頼度情報生成部120が過去に生成して通信信頼度データベース150に格納した統計情報である。また、過去の統計情報には、信頼度情報生成部120が過去にログ情報取得部110から受信した過去の通信ログ情報23が含まれることが好ましい。なお、取得する過去の統計情報は、所定の期間内に生成された統計情報に限定されても良い。この場合、所定の期間よりも過去に生成された統計情報は、通信信頼度データベース150から破棄されても良い。さらに、取得する過去の統計情報は、所定の条件を満たす時期に生成された統計情報に限定されても良い。この場合、所定の季節の統計情報や、所定の時間帯の統計情報などを選択的に取得することも可能である。
信頼度情報生成部120は、ログ情報取得部110から受信した通信ログ情報23と、通信信頼度データベース150から取得した過去の統計情報とを解析する。より具体的には、信頼度情報生成部120は、通信ログ情報23に含まれる送信情報を検出し、検出した送信情報に含まれる送信位置や、送信時刻などを検出しても良い。また、信頼度情報生成部120は、通信ログ情報23に含まれる受信記録を検出し、検出した受信記録から受信位置や、受信時刻や、受信電力などを検出しても良い。さらに、信頼度情報生成部120は、送信時刻、送信位置、受信時刻および受信位置から、所定の送信時刻に所定の位置に存在していた通信端末200の総数を算出しても良い。このような総数を、「存在端末数」と呼ぶ。信頼度情報生成部120は、このようにして、対応関係にある送信記録および受信記録の組み合わせを抽出する。すなわち、位置情報信号21、22の送信記録ごとに、同一の位置情報信号21、22を同時刻に受信したと推定される受信記録とのマッチング処理を行う。なお、このマッチング処理では、受信記録は必ずしも位置情報信号21、22そのものを含んでいなくても良い。特に、図4Aを参照して説明した通信端末200のデータ収集機能の第3ステップS13において、位置情報信号21、22の復調に成功しなかった場合には、送信者情報としての位置情報は受信記録に付与されていない。それでも、受信時刻が送信時刻に事実上一致しており、かつ、送信位置と受信位置の間の距離が現実的な通信範囲内であれば、送信記録および準記録の組み合わせは、通信が成功しなかった事例として記録される。反対に、受信記録に位置情報などの送信者情報が付与されていれば、送信記録および受信記録の組み合わせは通信の成功事例として記録される。第2ステップS62の次には、第3ステップS63が実行される。
第3ステップS63において、信頼度情報生成部120が、メッシュごとの平均受信電力値を周波数ごとに計算する。ここで、メッシュとは、土地をエリアごとに分割した最小単位である。メッシュの具体的な面積は、車両5の寸法や、車両5の移動速度や、車両5が位置情報信号21、22を送信する頻度などを勘案すると、一例として2メートル四方乃至10メートル四方の程度であることが好ましい。また、平均受信電力値の計算は、第1ステップS61でログ情報取得部110から取得した通信ログ情報23と、第2ステップS62で通信信頼度データベース150から取得した過去の統計情報とに基づいて行われることが好ましい。計算の結果は、通信信頼度データベース150に格納される。第3ステップS63の次には、第4ステップS64が実行される。
第4ステップS64において、信頼度情報生成部120が、メッシュごとの受信電力の分散を周波数ごとに計算する。通信信頼度の分散を計算することで、通信信頼度の最小値の目安が得られる。計算の結果は、通信信頼度データベース150に格納される。第4ステップS64の次には、第5ステップS65が実行される。
第5ステップS65において、信頼度情報生成部120が、メッシュごとの通信成功確率を周波数ごとに計算する。ここで、通信成功確率は、図1Aを参照した説明の繰り返しになるが、送信位置と、受信位置との組み合わせごとに定義される。すなわち、所定の送信位置から所定の受信位置までの通信成功確率とは、受信位置の車両5のうち、送信位置の車両5から送信された信号を受信し、かつ、送信信号の復調まで成功した車両5の割合である。計算の結果は、通信信頼度データベース150に格納される。第5ステップS65の次には、第6ステップS66が実行される。
第6ステップS66において、マップ化処理部130が、通信信頼度マップ情報40を生成する。ここで、マップ化処理部130は、第3ステップS63〜第5ステップS65で信頼度情報生成部120が計算した結果を、信頼度情報生成部120から受け取っても良いし、通信信頼度データベース150から読み出しても良い。生成された通信信頼度マップ情報40は、通信信頼度データベース150に格納される。第6ステップS66の次には、第7ステップS67が実行される。
第7ステップS67において、通信信頼度管理サーバ100は、通信信頼度マップ情報40の生成処理を終了する。通信信頼度マップ情報40はこのようにして、最新の通信ログ情報23によって更新される。通信信頼度データベース150に格納された通信信頼度マップ情報40は、図4Cを参照して説明した通信端末200のダウンロード機能によって要求される度に、信頼度情報提供部140およびネットワークを介して、通信端末200に向けて送信される。
なお、通信信頼度マップ情報40の通信信頼度として受信電力を用いない場合には、第3ステップS63および第4ステップS64は省略可能である。また、通信信頼度マップ情報40の通信信頼度として通信成功確率を用いない場合には、第5ステップS65は省略可能である。通信信頼度マップ情報40の通信信頼度として通信成功確率および受信電力の両方を用いる場合には、第3ステップS63〜第5ステップS65の一部または全てを、異なる順番で実行しても良いし、並列に実行しても良い。
図7A〜図7Cを参照して、一実施形態による通信信頼度マップ情報40の構成例について説明する。図7Aは、一実施形態による通信信頼度マップ情報40の一例を示す図である。
図7Aの例では、図1Aに例示した丁字路型の道路10およびその周辺の土地を、縦横のメッシュ状に分割している。図7Aの基準メッシュ41は、図1Aの基準車両1の位置を含んでいる。
図7Aの例では、基準メッシュ41から位置情報信号21、22を送信し、周辺の各メッシュにおいてこの位置情報信号21、22を受信した場合の、受信電力がデシベル(dBm)で表記されている。通信信頼度マップ情報40には、メッシュごとの受信電力が、図7Aに例示した2次元配列データとして、そのまま記載されていても良い。
図7Bは、一実施形態による通信信頼度マップ情報40の別の一例を示す図である。図7Bの例では、通信信頼度マップ情報40のデータ量を大幅に削減している。すなわち、図7Aの例では、同様の2次元配列データを、基準メッシュ41ごとに用意する必要があるので、通信信頼度マップ情報40のデータ量が膨大になってしまう可能性がある。そこで、図7Bの例では、受信電力が−90dBmを超えるメッシュを−90dBm超過エリア42として定義している。図7Bの例では、メッシュごとに、−90dBm超過エリア42に属するか否かだけの情報を残すことで、通信信頼度マップ情報4つのデータ量を大幅に削減することが可能となる。ここで、−90dBmはあくまでも一例にすぎず、実際には他の値を用いても良い。
図7Cは、一実施形態による通信信頼度マップ情報40のさらに別の一例を示す図である。図7Cの例では、図7Bとは異なる手法で、やはり通信信頼度マップ情報40のデータ量を大幅に削減している。すなわち、図7Cの例では、受信電力が−90dBmを超えるメッシュのうち、基準メッシュ41から最も近いメッシュまでの、基準メッシュ41からの距離を−90dBm最小距離43として定義している。図7Cの例では、基準メッシュごとに、−90dBm最小距離43だけの情報を残すことで、通信信頼度マップ情報4つのデータ量をさらに大幅に削減することが可能となる。ここでも、−90dBmはあくまでも一例にすぎず、実際には他の値を用いても良い。
(第2の実施形態)
第2の実施形態として、受信成功率算出アルゴリズムについて説明する。本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムを、上述した第1の実施形態による通信信頼度マップ情報の生成に適用することによって、本発明による通信信頼度管理サーバ100、通信信頼度管理システムおよび通信信頼度管理方法のさらなる効率化が可能となる。
上述した第1の実施形態では、通信信頼度マップ情報を生成するために、送信側としての車両から得られる情報と、受信側としての車両から得られる情報の、両方を用いた。その一方で、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムでは、送信側としての車両から得られる情報を用いずに、受信側としての車両から得られる情報だけを用いて、通信信頼度マップ情報を生成する。
より具体的には、本実施形態では、受信側の車両の位置情報と、受信側の車両が受信し、かつ、復調に成功した情報だけを用いる。すなわち、送信側の車両が送信し、受信側の車両が受信したものの、受信側の車両が復調に失敗した情報は、利用出来ない。しかし、受信側の車両は、受信したパケットの復調に成功しないと、このパケットを送信した車両の存在すら知り得ない。つまり、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムでは、パケットの受信失敗に係る情報を用いずに、周辺の受信車両による観測結果を組み合わせて、通信信頼度管理サーバ100が受信成功率を算出することによって、通信信頼度マップ情報を生成する。
本実施形態では、図4A〜図4Dに示した第1の実施形態による通信端末200の動作と、図6に示した第1の実施形態による通信信頼度管理サーバ100の動作とに、以下の3点の改良を加える。
まず、第1の改良点として、送信側としての車両が外部に向けて送信する送信情報に、送信パケットのシリアル番号と、送信車両の車両IDとを追加する。ここで、送信情報には、第1の実施形態で説明した送信位置情報も含まれている。
次に、第2の改良点として、車両が受信し、かつ、復号に成功した情報を集約する際に、通信信頼度管理サーバ100が、他の車両が受信して報告した情報に含まれるシリアル番号および車両IDを把握する。
より具体的には、図4Aに示したフローチャートの第6ステップS16において、受信側としての車両の復調データ解析部213が、観測位置および観測時刻を観測結果に付与する際に、送信者情報に含まれるシリアル番号および車両IDをも観測結果に付与する。
最後に、第3の改良点として、通信信頼度管理サーバ100が、送信側の車両から送信された情報を受信側の車両が受信または復号に成功しなかった際の車両位置情報を集約する。この集約は、通信信頼度管理サーバ100が、第2の改良点で把握したシリアル番号および車両IDと、車両の位置情報とを組み合わせることで行われる。なお、車両は、自身の位置情報を通信信頼度管理サーバ100に向けて定期的に報告することが好ましい。
より具体的には、まず、図4Bに示したフローチャートの第5ステップS25において、車両のネットワーク接続部250が通信信頼度データベース150に向けてアップロードする通信ログ情報23に含まれる観測情報には、受信側の車両自身の位置情報が含まれている。ただし、本実施形態において、アップロードされる通信ログ情報23に、送信情報は含まれない。したがって、図6に示したフローチャートの第1ステップS61において、本実施形態では、送信位置情報は利用せずに、受信位置ごとの受信結果を取得する。その上で、図6に示したフローチャートの第5ステップS65において、送信側としての車両が送信した情報を受信側としての車両が受信に失敗した際の、受信車両の位置を、通信信頼度管理サーバ100がカウントする。言い換えれば、パケットシリアル番号、車両IDおよび受信位置の組み合わせごとに、受信および復号の成功及び失敗を、信頼度情報生成部が統計データとして集約しても良い。この統計データを、受信復号可否カウントと呼んでも良い。
本実施形態では、第1の実施形態に上記の改良を施すことで、送信側としての車両から得られる情報を用いずに、受信側としての車両から得られる情報だけを用いて、通信信頼度マップ情報を生成することが可能となる。なお、本実施形態においても、第1の実施形態で送信車両が通信信頼度管理サーバ100に向けて送信する送信記録情報と実質的に同じ内容を含む情報が、受信および復号が成功した場合に限り、受信車両を介して通信信頼度管理サーバ100に向けて送信される。
以下、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムの精度を確認するために行った計算機シミュレーションおよび第1実施形態の有効性を確認するために行った路上実験の結果について説明する。
まず、シミュレーションの諸条件について説明する。シミュレーション環境として、一辺が400mの正方形の範囲を想定し、この範囲を一辺20mの正方形のメッシュに区切った。この範囲の中に、送信側としての車両を1台固定し、受信側としての車両を5台または20台配置した。シミュレーションを試行する度に、5台または20台の受信車両の配置は、ランダムに変更した。
シミュレーション範囲の電波伝搬環境としては、距離減衰と、i.i.d.(independent and identically distributed:独立同一分布)レイリーフェージングを考慮して、距離減数係数を3.5とした。また、送信電力を10dBmに固定し、受信成功とみなす閾値を−73dBmとした。言い換えれば、受信電力値がこの閾値電力を上回れば受信成功とカウントする。反対に、受信電力値がこの閾値電力を下回った場合には、上述した受信成功率算出アルゴリズムを適用する。受信成功率算出アルゴリズムの結果として、受信失敗が把握できれば誤りとカウントする。
受信判定は、一辺20mのメッシュごとに行い、それぞれのメッシュにおける平均受信成功率を算出する。シミュレーション試行回数は、1000回とした。
また、シミュレーション結果との比較対象として、送信車両に関する情報が既知であると仮定した場合の、メッシュごとの受信成功率の理想値を算出した。ここでは、受信電力値が閾値電力を上回った場合には受信成功とカウントし、下回った場合には受信失敗とカウントした。
上記の条件によるシミュレーションで得られた結果について説明する。
図8Aは、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムを用い、かつ、受信車両の台数が5である場合のシミュレーション結果の一例を示す図である。図8Bは、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムを用いずに、かつ、受信車両の台数が5である場合のシミュレーション結果の一例を示す図である。図8Cは、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムを用い、かつ、受信車両の台数が5である場合の理想値を示す図である。図8Dは、図8Aのシミュレーション結果と、図8Cの理想値との差分を示す図である。
図9Aは、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムを用い、かつ、受信車両の台数が20である場合のシミュレーション結果の一例を示す図である。図9Bは、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムを用いずに、かつ、受信車両の台数が20である場合のシミュレーション結果の一例を示す図である。図9Cは、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムを用い、かつ、受信車両の台数が20である場合の理想値を示す図である。図9Dは、図9Aのシミュレーション結果と、図9Cの理想値との差分を示す図である。
図10Aは、図8A〜図8Cおよび図9A〜図9Cに示した、メッシュごとの表示色および平均受信成功率の、対応関係を示す図である。図10Bは、図8Dおよび図9Dに示した、メッシュごとの表示色および平均受信成功率の、対応関係を示す図である。なお、図8A〜図8Dおよび図9A〜図9Dに示した黒色のメッシュは、送信車両の位置を示している。
図8Bおよび図9Bに示した、本実施形態による受信成功率算出アルゴリズムを用いない場合のシミュレーション結果では、受信成功のみをカウントしている。その結果、シミュレーション範囲のうち、送信車両が位置するメッシュ以外の全域において、受信成功率が100%となっている。言い換えれば、受信失敗をカウントできないことにより、このような、理想値からかけ離れた結果が得られた。
図8Dおよび図9Dに示した差分値について説明する。図8Dに示した、受信車両が5台に設定された場合は、シミュレーション結果および理想値の差分値が、最大で8%まで開いており、比較的大きい。その一方で、図9Dに示した、受信車両が20台に設定された場合は、シミュレーション結果および理想値の差分値が、ほぼゼロに収束されている。これらの結果は、車両密度が低い場合に、全ての受信車両が受信に失敗して誤りのカウントが出来なかったことを示している。
次に、路上実験の諸条件について説明する。図11は、路上実験を行った地域の地図である。図11の地図に示した地域において、それぞれが車載器を搭載した3台の車両が、相互に通信を行い、電界強度を測定し、統計化を行った。図11に示すスタート地点Sは、車両が移動を開始した場所を示す。図11に示す複数の矢印は車両が走行した順路を示し、走行された順路の順番は、それぞれの矢印と同じ色の数字で示されている。
車両間の通信の規格は、ARIB STD−T109(700MHz帯高度道路交通システム)に準拠し、送信電力を83mWとし、中心周波数を760MHzとした。
図12Aおよび図12Bは、路上実験で得られた電界強度マップである。図12Aおよび図12Bが示す範囲は、図11に示した地図の領域Rに対応しており、一辺10mの正方形メッシュに区切られている。
図12Aおよび図12Bにおいて、青い線としてそれぞれ示される領域T1およびT2は、路上実験において送信側としての車両が送信時に走行した送信位置範囲を示している。図12Aおよび図12Bでは、送信位置範囲が異なるが、その他の実験条件は同一である。
図12Aおよび図12Bを比較すると、送信位置範囲の違い以上に、実際に得られる電界強度マップの違いが大きいことが分かる。このことは、送受信車両がダイナミックに移動し、その場所に応じて電界強度が大きく変化することを示している。
このように、車車間通信においては、通信環境が常に変化するので、図12Aおよび図12Bのような電界強度マップを参照し、現在位置の電界強度に応じた通信方法を選択することで、信頼性がより高い通信を行うことが可能となる。例えば、電界強度の低いエリアでは通信パラメータを変えても良いし、中継車両を介した協調通信を行っても良い。
さらに、通信信頼度データベース150の精度を評価するために、上記の路上実験で行った車車間通信において、正方形メッシュの一辺が10m、5mおよび2mであった場合のそれぞれについて統計処理し、メッシュごとの平均電界強度を算出した。そして、実観測した電界強度を真値として、統計処理で得た電界強度との差分からRMSE(Root Mean Squared Error:平均二乗誤差)を算出し、統計データの精度評価を行った。
また、比較対象として、上記の路上実験で得られた観測データから回帰直線を取得し、この回帰直線を距離減衰モデルとし、その精度を評価した。このようにして得られた距離減衰特性から電界強度を推定し、実観測した電界強度との差分からRMSEを算出した。
図13は、実測値および距離減衰に係るRMSEと、メッシュサイズとの関係の一例を示すグラフである。図13のグラフにおいて、横軸はメッシュサイズを示し、縦軸はRMSEを示す。また、図13のグラフのうち、第1のグラフG1は距離減衰特性から推定した電界強度から算出したRMSEを示し、第2のグラフG2は実測値をメッシュごとに平均化した場合のRMSEを示す。
図13の第1のグラフG1として示したように、距離減衰特性に係るRMSEは、一辺10mのメッシュでは10.100dB、一辺5mのメッシュでは9.364dB、一辺2mのメッシュでは6.840dBである。また、図13の第2のグラフG2として示したように、実測値に係るRMSEは、一辺10mのメッシュでは8.624dB、一辺5mのメッシュでは6.754dB、一辺2mのメッシュでは4.907dBである。
このように、距離減衰特性に係るRMSEよりも、実測値に係るRMSEの方が低い。このことは、距離減衰特性から電界強度を推定するよりも、通信信頼度データベース150を用いて統計処理を行った方が、より正確に電界強度を予測することが出来ることを意味している。
本実施形態による通信信頼度管理サーバ、通信信頼度管理システムおよび通信信頼度管理方法の、その他の詳細については、第1の実施形態の場合と同様であるので、さらなる説明を省略する。
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、前記実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。