本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態においては、医療用診療装置(以下、診療装置とも称する)の1つの例示的形態として、歯科および口腔外科などの口腔に関する診療分野で用いることが可能な診療装置1について説明する。なお、診療には、診断および治療が含まれる。
[診療装置の構成]
図1は、診療装置1の概略を示す図である。図2は、診療装置1の側面および平面を示す図である。なお、図2(A)は、図1に示す診療装置1の水平方向における側面図である。図2(B)は、図1に示す診療装置1の垂直方向における平面図である。
図1および図2に示されるように、診療装置1は、患者500(以下、単に患者と称す)の口腔を診療するための各種機器が接続された装置台80と、患者を支持する診療台20とを備える。なお、患者は生身の人間であってもよいし、人体模型であってもよいし、頭部模型であってもよい。
装置台80からは、垂直方向にアーム69が延びている。アーム69には、水平方向に延びるアーム68と、垂直方向に延びるアーム70とがそれぞれ接続されている。アーム70には、さらにアームが水平方向に分岐するようにアーム71およびアーム72がそれぞれ接続されている。アーム68には、関節部67を介してアーム66が接続されている。
アーム72は、先端部にマイクロフォン(以下、マイクとも称す)4を保持する。マイク4は、たとえば、患者の主訴を音声で取得する。マイク4によって取得された音声データは、制御装置100に入力される。
アーム71は、先端部に俯瞰カメラ9を保持する。俯瞰カメラ9は、治療中の患者の表情および体の動きを撮影する。俯瞰カメラ9によって取得された俯瞰画像データは、制御装置100に入力される。
アーム66は、先端部に無影灯7を保持する。無影灯7は、治療中の患者の口腔内を照射する。アーム66は、アーム68に対して関節部67を軸として水平方向または垂直方向に可動する。このようにアーム66が動くことによって、無影灯7は、患者の口腔内を適切に照射する。
装置台80の上面には、図示しないスピットンが設けられている。スピットンには、口を濯ぐコップ給水部や排唾鉢が設けられている。操作パネル5は、診療台20または診療器具30などを駆動するための図示しない複数のスイッチを含み、歯科医師などの術者または歯科衛生士などの補助者といったユーザによって押圧操作される。ユーザによって操作パネル5が操作されると、その操作信号が制御装置100に入力される。なお、操作パネル5は、診療テーブル10に設けられてもよいし、診療台20に設けられてもよい。また、操作パネル5は、ユーザが押圧操作できるタッチパネルを含んでいてもよい。
装置台80には、スピーカ6が設けられている。スピーカ6は、制御装置100によって出力された診断情報を音声で出力する。診断情報とは、たとえば、口腔の診断結果、治療方針、治療内容、またはこれらを導き出すための補助的な情報である。
装置台80には、モニタ8が設けられている。モニタ8は、制御装置100によって出力された診断情報を画像で表示し、患者への説明用としたり、術者への診断情報や診断結果の表示用として使用する。
装置台80には、可動式の診療テーブル10が設けられている。具体的には、装置台80の上面に設けられた回転部65には、水平方向に移動調整可能であるアーム64が接続されている。アーム64には、関節部63を介して垂直方向に移動調整可能であるアーム62が接続されている。アーム62の先端部には接続部61によって診療テーブル10が接続されている。診療テーブル10の上面は、水平に保たれている。アーム64は、回転部65によって水平方向に回転可能である。アーム62は、関節部63を軸として水平方向または垂直方向に位置調整可能に可動する。このようにアーム64およびアーム62が動くことによって、診療テーブル10は、患者に近づいたり遠ざかったり、また、上下方向の調整も可能である。
診療テーブル10は、内部に複数の診療器具30を収容する。各診療器具30は、制御装置100の制御に基づいて駆動する。
診療台20は、背もたれ22に対して傾動調整可能である患者の頭を支えるヘッドレスト21と、座面シート23に対して患者の背中を支える背もたれ22と、患者の臀部を支える座面シート23と、患者の足を支える足置き台24とを含む。ヘッドレスト21、背もたれ22、座面シート23、および足置き台24のそれぞれは、制御装置100の制御に基づいて駆動する。制御装置100によって、ヘッドレスト21、背もたれ22、座面シート23、または足置き台24が駆動すると、診療台20の位置および姿勢が変更される。
診療台20には、フートコントローラ2が接続されている。フートコントローラ2は、診療台20または診療器具30などを駆動するためのユーザの操作を受け付ける。フートコントローラ2によってユーザの操作が受け付けられると、受付信号が制御装置100に入力される。制御装置100は、フートコントローラ2からの受付信号に基づいて診療台20または診療器具30などを駆動する。ユーザは、フートコントローラ2を足踏みで操作することができる。
[腕部本体の動作]
図3は、診療テーブル10に収納された腕部本体40の動作を示す図である。診療テーブル10には、図3に示すような腕部本体40が複数並存して収納されており、複数の腕部本体40のそれぞれは、先端部に診療器具30を保持する。各腕部本体40には、各種の診療器具30を駆動するための媒体(電気、空気、水、光、レーザーなど)の供給通路が設けられている。なお、この供給通路は、腕部本体40の内部に設けられるものに限らず、腕部本体40の外部に沿って設けられてもよい。診療器具30ごとに、媒体の種類と供給条件とに応じた個別の供給通路が腕部本体40に設けられてもよい。また、腕部本体40の後方は、筐体を構成する診療テーブル10の内部に固定支持されており、前述したような各種の媒体がアーム62やアーム64の内部に配置された供給通路を通して各診療器具に供給される。診療テーブル10の前方開口は、診療器具30が使用されない場合、診療器具30が外部から見えないように開閉扉で閉鎖されてもよい。
図3に示されるように、腕部本体40は、3個の筒状アーム45,46,47を含む伸縮アーム401を備える。3個の筒状アーム45,46,47は、水平方向に伸縮可動するようにかつ相互に回転しないように順次嵌め合わせられることで、伸縮アーム401を構成している。
図4を参照しながら、伸縮アーム401について詳細に説明する。図4は、伸縮アーム401の内部構造を示す図である。
図4(A)に示されるように、1段目の筒状アーム45には、水平方向にガイド溝403が形成されている。2段目の筒状アーム46には、水平方向にガイド溝404が形成されている。2段目の筒状アーム46の外壁には、1段目の筒状アーム47に形成されたガイド溝403に摺動自在に係合するガイド片405が設けられている。3段目の筒状アーム47の外壁には、2段目の筒状アーム46に形成されたガイド溝404に摺動自在に係合するガイド片406が設けられている。これにより、各筒状アーム45,46,47は、ガイド溝403,404にそれぞれ係合するガイド片405,406により回転が阻止され、水平方向にのみ移動(伸縮)できる。
伸縮アーム401の内部の中央には、2本のねじ軸408,418を含む伸縮ねじ軸407が設けられている。伸縮ねじ軸407は、ねじ軸408の外周にねじ軸418が水平方向に移動自在に且つ相互に回転しないように嵌合するように構成されている。2本のねじ軸408,418は、たとえば、いずれもボールねじである。ねじ軸408の先端部には、水平方向にキー409が設けられている。ねじ軸418の内周には、キー409が係合するキー溝410が形成されている。ねじ軸408,418は、キー溝410に係合するキー409により回転が阻止され、水平方向にのみ移動(伸縮)する。
図4(B)に示されるように、ねじ軸418の内周には、水平方向にキー溝410用の切欠部を形成した筒状体411が形成されている。伸縮ねじ軸407は、伸縮アーム401内に、伸縮アーム401の軸と同じ水平方向に配置されている。ねじ軸408の基部は、筒状アーム45の基部に設けられた軸支持部412により回転自在に支持されている。軸支持部412の内周には、ねじ軸408を回転自在に支持する軸受413が設けられている。
筒状アーム46の基部には、ねじ軸408に螺合するナット414と、ねじ軸408に嵌合したねじ軸418の基部を回転自在に支持する軸支持部415とが設けられている。軸支持部415の内周には、ねじ軸418を回転自在に支持する軸受416が設けられている。
筒状アーム47の基部には、ねじ軸418に螺合するナット417が設けられている。ねじ軸408,418にそれぞれ螺合するナット414,417は、たとえば、ボールナットである。
2段目の筒状アーム46に軸支持部415を介して支持されたナット414は、1段目の回転軸部材としてのねじ軸408の回転力を直線運動に変えて2段目の筒状アーム46を前進または後退させる。同様に、3段目の筒状アーム47に支持されたナット417は、2段目の回転軸部材としてのねじ軸418の回転力を直線運動に変えて3段目の筒状アーム47を前進または後退させる。
伸縮アーム401の後端には、ねじ軸408を回転させる駆動部428が設けられている。駆動部428は、モータ419と、プーリ420,421と、タイミングベルト422とを含む。
このような伸縮アーム401によれば、駆動部418の駆動によって伸縮ねじ軸407の基端のねじ軸408が一方向に回転すると、ねじ軸408に螺合されたナット414の回転により2段目の筒状アーム46が前進する。2段目の筒状アーム46が前進すると、筒状アーム46に設けられた軸支持部415にその基部が支持されているねじ軸418も筒状アーム46と一体となって前進する。同時に、このねじ軸418は、内周に形成されたキー溝410に係合するねじ軸408のキー409によりねじ軸408の回転が伝達される。このため、ねじ軸418は、2段目の筒状アーム46と一体となって前進しながら、ねじ軸408と一体となって回転する。ねじ軸418が回転すると、ねじ軸418に螺合されたナット417の回転により、3段目の筒状アーム47が前進する。一方、ねじ軸408を上記と反対方向に回転させると、2段目の筒状アーム46およびと3段目の筒状アーム47が同時に後退する。
このように、伸縮ねじ軸407の基端のねじ軸408を一方向に回転させると、伸縮アーム401の2段目の筒状アーム46およびと3段目の筒状アーム47が同期して同じ距離だけ前進する。その結果、伸縮アーム401が伸張し、腕部本体40が診療テーブル10から突出する。一方、ねじ軸408を反対方向に回転させると、2段目の筒状アーム46およびと3段目の筒状アーム47が同期して同じ距離だけ後退する。その結果、伸縮アーム401が縮小し、腕部本体40が診療テーブル10にコンパクトに収納する。
なお、本実施の形態においては、伸縮アーム401を構成する筒状アーム45,46,47が同軸状に形成された円筒状であるが、角筒状であってもよい。伸縮アーム401は、3個の筒状ア−ム45,46,47で構成されているものに限らず、2個または4個以上の筒状ア−ムで構成されてもよい。
再び図3を参照して、腕部本体40を説明する。筒状アーム46は、図4で説明した伸縮動作によって、伸縮部37を基準にして、筒状ア−ム45に収納されたり、筒状ア−ム45から突出したりする。同様に、筒状アーム47は、伸縮部36を基準にして、筒状ア−ム46に収納されたり、筒状ア−ム46から突出したりする。このような筒状アーム46,47による伸縮によって伸縮アーム401が水平方向に伸縮する。たとえば、図3(A)に示されるように、伸縮アーム401が完全に縮んだ場合、腕部本体40が診療テーブル10に完全に収納される。一方、図3(B)〜(D)に示されるように、伸縮アーム401が伸びた場合、腕部本体40が診療テーブル10から突出する。
筒状ア−ム47には、駆動部35を介して筒状ア−ム44が接続されている。駆動部35は、たとえばモータであり、図3(B)に示されるように、その回転軸35aが回転すると、筒状ア−ム47に対して周方向に筒状ア−ム44が回転する。
筒状ア−ム44には、駆動部34を介して筒状ア−ム43が接続されている。図3(C)に示されるように、駆動部34は、モータであり、その回転軸34aが回転すると、筒状ア−ム44に対して垂直方向にア−ム43が回転する。
筒状ア−ム43には、伸縮部33を介してア−ム42が接続されている。図3(B)に示されるように、ア−ム42は、伸縮部33を基準にして、筒状ア−ム43に収納されたり、筒状ア−ム43から突出したりする。
ア−ム42には、駆動部32を介してア−ム41が接続されている。駆動部32は、たとえばモータであり、図3(C)に示されるように、その回転軸32aが回転すると、ア−ム42に対して垂直方向にア−ム41が回転する。
ア−ム41には、接続部31に診療器具30が接続されている。接続部31は、図示しないモータを含み、図3(D)に示されるように、その回転軸31aが回転すると、ア−ム41に対して周方向に診療器具30が回転する。回転軸34aと回転軸32aとは、90度異なる角度に配置されているので、片方のアームが水平方向に屈曲する場合、他方のアームは垂直方向に屈曲するように構成されている。
このように、診療テーブル10には、接続部31で診療器具30を保持する複数の腕部本体40が収納されており、各腕部本体40は、長手方向への伸縮、長手方向に対する屈曲、および長手方向に対する周方向への回転が可能である。診療装置1は、このように複数の腕部本体40を駆動することで、患者の口腔内に診療器具30を近づけたり遠ざけたりすることができ、治療内容に従って適切な位置に診療器具30を配置することができる。なお、腕部本体40は、後述する口腔カメラ55も接続部31で保持することができる。診療装置1は、腕部本体40を駆動することで、患者の口腔内に口腔カメラ55を近づけたり遠ざけたりすることができ、治療内容に従って適切な位置に口腔カメラ55を配置することができる。
なお、腕部本体40は、接続部31において診療器具30または口腔カメラ55を保持するものに限らず、診療器具30または口腔カメラ55を先端部に内蔵するものであってもよい。また、腕部本体40が保持する診療器具30に撮像素子(口腔カメラ55に対応)を内蔵するものであってもよい。
各腕部本体40は、長手方向への伸縮、長手方向に対する屈曲、および長手方向に対する周方向への回転の少なくともいずれかが可能であってもよく、これら以外の動作が可能であってもよい。
各腕部本体40の動作は、モータに限らず、油圧ピストンまたは空圧ピストンの駆動力によって行われてもよい。
[診療装置の内部構成]
図5は、診療装置1の内部構成の概略を示すブロック図である。図5に示されるように、診療装置1においては、制御装置100に複数種類の機器が接続されている。
制御装置100には、診療台20と、フートコントローラ2と、スピーカ6と、モニタ8と、俯瞰カメラ9と、無影灯7と、マイク4と、診療テーブル10と、通信インターフェース50と、操作パネル5とが接続されている。なお、制御装置100には、これら以外の機器が接続されてもよく、たとえば、患者がうがいをするためのベースンユニットが接続されてもよい。ベースンユニットは、装置台80と一体型であってもよい。
診療テーブル10は、診療器具30が接続された複数の腕部本体40を備える。たとえば、腕部本体40aには、エアタ−ビンハンドピースである診療器具30aが接続されている。腕部本体40bには、診療器具30aとは異なるエアタ−ビンハンドピースである診療器具30bが接続されている。腕部本体40cには、マイクロモータハンドピースである診療器具30cが接続されている。腕部本体40dには、スケーラである診療器具30dが接続されている。腕部本体40eには、スリーウェイシリンジである診療器具30eが接続されている。
なお、診療器具30は、デンタルミラー、またはバキュームシリンジ、スリーウェイシリンジなどの非侵襲性の診療器具であってもよい。また、診療器具30は、エアタ−ビンハンドピース、マイクロモータハンドピース、またはレーザーハンドピースなどの侵襲性の診療器具であってもよい。具体的には、診療器具30は、歯牙を切削するエアタービンハンドピースまたはマイクロモータハンドピース、歯石除去を行うスケーラハンドピースの他、レーザーハンドピース、根管治療用モータ、またはエアモータハンドピースであってもよい。この他、診療器具30は、口腔内の唾液や血液を排出するバキュームハンドピース、光重合照射器、充填器、歯面清掃器、粉体噴射器、またはデンタルミラーなどであってもよい。
複数の腕部本体40のうち、腕部本体40fには、口腔カメラ55が接続されている。口腔カメラ55は、患者の口腔内を撮影する。口腔カメラ55によって取得された口腔画像に基づくデータ(口腔画像データとも称する)は、制御装置100に入力される。なお、本実施の形態に係る口腔カメラ55は、3次元で口腔内を撮影する3次元口腔スキャナであるが、2次元で口腔内を撮影する光学カメラであってもよい。口腔カメラ55により口腔内の3次元形状を取得する構成としては、合焦法、共焦点法、三角測量法、白色干渉法、ステレオ法、フォトグラメトリ法、SLAM法(Simultaneous Localization and Mapping)、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography: OCT)などが挙げられる。また、歯石、歯垢、う蝕部、レジン充填物などの異変部に、ある特定の波長を有する励起光を照射すると、蛍光を発することが知られている。このことから、口腔カメラ55は、特定の波長の光を発する光源をフィルターを介して受光する蛍光カメラであってもよい。さらに、本実施の形態に係る口腔カメラ55のような光学系のカメラに限らず、X線装置によって撮影された口腔画像が制御装置100に入力されてもよい。すなわち、制御装置100によって取得される口腔画像は、光学画像およびX線画像のいずれであってもよい。また、X線画像としては、単純透過X線画像のみならず、X線パノラマ断層画像やX線平面断層画像、X線CT画像、X線ボリューム画像などであってもよい。
通信インターフェース50は、有線通信または無線通信によって、外部サーバ1000と通信する。図示は省略するが、外部サーバ1000は、診療装置1に限らず、他の診療装置とも通信する。つまり、複数の診療装置1がネットワークを介して外部サーバ1000に接続されている。ネットワークで接続される診療装置1は、同じ院内に配置されてもよいし、異なる院内に配置されてもよい。また、外部サーバ1000は、院内に配置されてもよいし、院外に配置されてもよい。たとえば、いわゆるクラウドサービスのような形態で複数の診療装置1のそれぞれが外部サーバ1000とネットワークで接続されており、外部サーバ1000は、いずれの診療装置1が配置された院内とは異なる遠隔地に存在するクラウドコンピュータであってもよい。
外部サーバ1000は、ネットワークで接続された各診療装置1を利用する患者の口腔画像データを、疾患画像データとして蓄積して記憶する。また、外部サーバ1000は、各診療装置1を利用する患者の診断情報を疾患情報として蓄積して記憶する。この他、外部サーバ1000は、学会などに発表された疾患画像、歯科、口腔外科領域の学術誌や教科書に記載されている疾患画像を記憶してもよい。外部サーバ1000は、疾患画像データおよび疾患情報を、患者を識別するためのIDおよび患者に関する情報(患者情報とも称する)に紐付けて記憶する。外部サーバ1000に記憶される患者ごとの疾患画像データおよび疾患情報は、ネットワークで接続された各診療装置1から出力される新たな疾患画像データおよび疾患情報が蓄積されることで、いわゆるビッグデータとなる。
通信インターフェース50は、有線通信または無線通信によって、CAD/CAM2000と通信する。CAD/CAM2000は、制御装置100から通信インターフェース50を介して受信した口腔画像データに基づいて、口腔内に装着される修復物や補綴物を設計および加工する。
[制御装置の内部構成]
図6および図7は、制御装置100の内部構成の概略を示すブロック図である。図6および図7に示されるように、制御装置100は、記憶部160に記憶された複数種類のデータに基づいた制御を行う複数種類の機能部を有する。制御装置100が有する各機能部は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)によって実現される。記憶部160は、たとえば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリによって実現される。
制御装置100は、テーブル制御部110を有する。テーブル制御部110は、記憶部160に記憶されたテーブル制御データに基づいて、診療テーブル10を駆動する。テーブル制御データは、診断部170によって作成され、記憶部160に記憶された診断情報に基づいて診療テーブル10を駆動するためのデータを含む。
制御装置100は、腕部制御部111を有する。腕部制御部111は、記憶部160に記憶された腕部制御データに基づいて、各腕部本体40を駆動する。腕部制御データは、診断部170によって作成され、記憶部160に記憶された診断情報に基づいて各腕部本体40を駆動するためのデータを含む。たとえば、腕部制御データには、治療内容に沿って使用される腕部本体40の種類、治療内容に沿って使用される腕部本体40の順序、および治療内容に沿って駆動する腕部本体40の駆動データなどが含まれる。
たとえば、腕部制御部111は、腕部制御データに基づいて、治療内容に沿うように各腕部本体40の使用順序を決定する。腕部制御部111は、決定した順序に従って各腕部本体40の位置および姿勢の少なくともいずれかを変更する。
制御装置100は、診療器具制御部131を有する。診療器具制御部131は、記憶部160に記憶された診療器具制御データに基づいて、各診療器具30を駆動する。診療器具制御データは、診断部170によって作成され、記憶部160に記憶された診断情報に基づいて各診療器具30を駆動するためのデータを含む。診療器具制御データは、制御装置100に接続された診療器具30の種類ごとに準備される。たとえば、診療器具制御データには、治療内容に沿って使用される診療器具30の種類、治療内容に沿って使用される診療器具30の順序、および治療内容に沿って駆動する診療器具30の駆動データ(診療器具30の種類に応じた駆動制御データ、切削工具の種類、回転数、回転速度、回転方向、回転パターンといった各種設定値など)、などが含まれる。
たとえば、診療器具制御部131は、診療器具制御データに基づいて、治療内容に沿うように各診療器具30の使用順序を決定する。診療器具制御部131は、決定した順序に従って各診療器具30を適切な状態で駆動する。
診療器具制御部131は、接続された各診療器具30の種類、位置、姿勢、または駆動状態などのデータを診療器具状態データとして取得する。取得された診療器具状態データは、診療器具30の種類ごとに記憶部160に記憶される。制御装置100は、記憶部160に記憶された診療器具状態データに基づいて、各診療器具30の種類、位置、姿勢、および駆動状態を把握することができる。なお、診療器具制御データには、後述する異常情報に基づく駆動データも含まれる。
制御装置100は、診療台制御部120を有する。診療台制御部120は、記憶部160に記憶された診療台制御データに基づいて、診療台20を駆動する。診療台制御データは、診断部170によって作成され、記憶部160に記憶された診断情報に基づいて診療台を駆動するためのデータを含む。診療台制御データは、制御装置100に接続された診療台20の種類ごとに準備される。
たとえば、診療台制御部120は、口腔内の治療部位に応じた最適姿勢を患者が取れるように、治療部位や診療台制御データに基づいて、治療内容に沿うように診療台20の位置または姿勢を変更する。
診療台制御部120は、診療台20の種類、位置、または姿勢などのデータを診療台状態データとして取得し、記憶部160に記憶させる。制御装置100は、記憶部160に記憶された診療台状態データに基づいて、診療台20の種類、位置、および姿勢を把握することができる。なお、診療台制御データには、後述する異常情報に基づく駆動データも含まれる。
制御装置100は、口腔画像取得部140を有する。口腔画像取得部140は、口腔カメラ55によって取得された患者の口腔画像を取得する。口腔画像取得部140は、取得した口腔画像に基づいて、歯牙の特徴量および歯周組織の特徴量を算出し、それらのデータを口腔画像データとして記憶部160に記憶させる。なお、口腔画像取得部140は、腕部本体40が保持する口腔カメラ55から口腔画像を取得するものに限らず、口腔カメラ55以外のカメラから口腔画像を取得してもよい。たとえば、口腔画像取得部140は、X線装置によって撮影された口腔のX線画像を口腔画像として取得してもよい。もしくは、口腔画像取得部140は、CT撮影装置によって撮影された口腔の断層面画像を口腔画像として取得してもよい。
制御装置100は、CAD/CAM通信部153を有する。CAD/CAM通信部153は、記憶部160に記憶された口腔画像データを、通信インターフェース50を介してCAD/CAM2000に出力する。
制御装置100は、疾患画像取得部151を有する。疾患画像取得部151は、通信インターフェース50を介して外部サーバ1000から取得された疾患画像データを取得し、記憶部160に記憶させる。
制御装置100は、疾患情報取得部152を有する。疾患情報取得部152は、通信インターフェース50を介して外部サーバ1000から取得された疾患情報を取得し、記憶部160に記憶させる。
制御装置100は、更新部180を有する。更新部180は、機械学習部とも称され、記憶部160に記憶された疾患画像データと、記憶部160に記憶された疾患情報とに基づいて、機械学習によって診断基準データを更新する。診断基準データは、診断部170によって患者の口腔を診断する際に用いられるデータであり、記憶部160内の診断基準テーブル(後述する図12のテーブル)に格納されている。
診断部170は、記憶部160に記憶された口腔画像データと、記憶部160に記憶された診断基準データとに基づいて、患者の口腔を診断し、その診断情報を出力する。診断部170によって出力された診断情報は、記憶部160に記憶される。
制御装置100は、俯瞰画像取得部109を有する。俯瞰画像取得部109は、俯瞰カメラ9によって取得された俯瞰画像データを取得し、記憶部160に記憶させる。
制御装置100は、音声取得部104を有する。音声取得部104は、マイク4によって取得された音声データを取得し、記憶部160に記憶させる。
制御装置100は、スピーカ6を制御する音声出力部106を有する。音声出力部106は、記憶部160に記憶された診断情報をスピーカ6に音声で出力させる。
制御装置100は、モニタ8を制御する表示部108を有する。表示部108は、記憶部160に記憶された診断情報をモニタ8に画像で表示させる。
制御装置100は、異常検知部119を有する。異常検知部119は、記憶部160に記憶された俯瞰画像データおよび音声データに基づいて、患者の異常を検知する。異常検知部119は、患者の異常を検知すると、患者の異常を特定可能な異常情報を記憶部160に記憶させる。
たとえば、異常検知部119は、俯瞰画像データに基づいて、診療台20に着席している患者の姿勢を解析する。記憶部160には、患者の正常姿勢を示す複数のデータが予め記憶されている。たとえば、記憶部160には、診療台20に正常姿勢で着席している患者の四肢(両手および両足)の位置に関するデータが記憶されている。異常検知部119は、診療台20に着席している患者の姿勢を解析することで、患者の四肢(両手および両足)の位置を検出する。異常検知部119は、検出した患者の四肢の位置と、記憶部160に予め記憶されている診療台20に正常姿勢で着席している患者の四肢の位置とを比較することで、診療台20に着席している患者の姿勢が異常であるか否かを判定する。このようにして、異常検知部119は、患者の異常姿勢を検知する。
また、たとえば、異常検知部119は、俯瞰画像データに基づいて、治療中の患者の表情および体の動きを認識することで、患者が過度の痛みを感じているなどの異常を検知する。さらに、異常検知部119は、音声データに基づいて治療中の患者の音声を認識することで、患者が治療の中止を求めるなどの異常を検知する。
このようにして異常検知部119によって出力された異常情報は、テーブル制御部110、腕部制御部111、診療台制御部120、診療器具制御部131、音声出力部106、および表示部108のそれぞれによって参照される。
テーブル制御部110は、記憶部160に記憶された異常情報に基づいて、診療器具30を患者の口腔から遠ざけるように診療テーブル10を移動させる。腕部制御部111は、記憶部160に記憶された異常情報に基づいて、診療器具30を患者の口腔から遠ざけるように腕部本体40を移動させる。診療台制御部120は、記憶部160に記憶された異常情報に基づいて、診療台20の位置および姿勢を変更することで、患者を正常姿勢に戻す。診療器具制御部131は、記憶部160に記憶された異常情報に基づいて、診療器具30の駆動を停止させるなどして患者の異常を取り除く。音声出力部106は、記憶部160に記憶された異常情報をスピーカ6に音声で出力させる。表示部108は、記憶部160に記憶された異常情報をモニタ8に画像で表示させる。
制御装置100は、パネル制御部105を有する。パネル制御部105は、ユーザによる操作パネル5に対する操作に基づいて操作パネル5の点灯および表示などを制御する。
制御装置100は、無影灯制御部107を有する。無影灯制御部107は、無影灯7の点灯などを制御する。
[診断および機械学習]
図8〜図14を参照しながら、診療装置1が実行する診断および機械学習について説明する。
図5に示すように、本実施の形態においては、複数の医院に配置された各診療装置1がネットワークを介して外部サーバ1000に接続されている。外部サーバ1000は、各診療装置1から、過去の診断時に取得した口腔画像を取得し、これを疾患画像として記憶するとともに、そのときの診断情報を疾患情報として記憶する。このようにして外部サーバ1000に記憶された疾患画像データおよび疾患情報は、日々蓄積されていわゆるビッグデータとなる。
各診療装置1は、患者を診断する際に、外部サーバ1000から取得した疾患画像データに基づき診断基準データを更新し、それを用いて患者の口腔画像データに基づき診断情報を出力する。出力された診断情報は、口腔画像データとともに外部サーバ1000に記憶される。なお、出力された診断情報は、術者によって訂正されてもよく、この場合、訂正後の診断情報が、口腔画像データとともに外部サーバ1000に出力される。
このようにして外部サーバ1000に蓄積された疾患情報は、ときには各診療装置1の図6に示す診断部170が出力した診断情報であり、ときには術者によって訂正された診断情報である。各診療装置1は、日々蓄積されるビッグデータを用いて診断を繰り返すごとに診断基準データを更新することで、診断を行えば行うほど、より正確な診断情報を出力することができる。このように、診療装置1が備える制御装置100は、人工知能またはそれに相当する知能を担うコンピュータを有する。
(外部サーバ1000:疾患画像関連テーブル)
図8は、外部サーバ1000が記憶する疾患画像関連テーブルを説明するための図である。図8に示されるように、外部サーバ1000が記憶する疾患画像関連テーブルには、医院A、医院B、および医院Cといった複数の医院のそれぞれの患者ごとに、患者を識別するためのIDおよび患者情報に紐付けられて、疾患画像データと疾患情報とが格納されている。
患者情報には、医院名と、年齢と、性別と、喫煙の有無とが含まれる。なお患者情報には、たとえば通院歴など、これら以外の情報が含まれてもよい。
疾患画像データには、歯牙の特徴量と歯周組織の特徴量とが含まれる。歯牙の特徴量および歯周組織の特徴量について、図9を参照しながら説明する。図9は、3次元口腔スキャナなどの3Dスキャナによって取得された口腔の3次元画像およびX線画像を示す図である。図9(A)は、3次元画像で表された口腔画像を示す。図9(B)は、X線画像で表された口腔画像を示す。なお、図9に示す口腔内には、歯牙にう蝕610が発生し、かつ歯周組織に歯周病620が発生している。
本実施の形態においては、う蝕610が発生していると疑われる歯牙のみが抽出されて、その歯牙の特徴量が算出される。う蝕610が発生している歯牙は、欠損し、かつ表面の色が近傍よりも濃くなる傾向にある。そこで、う蝕610が発生している可能性のある歯牙を特定する方法としては、先ず3次元画像またはX線画像に基づいて歯牙の色が変色している部分が特定され、その部分の形状および色の特徴量が算出される。
なお、すでに同じ患者について過去に3次元画像またはX線画像が取得されている場合、過去の画像データと今回の画像データとの比較によって、欠損している可能性のある歯牙やう蝕の進行度が特定されてもよい。
図9(A),(B)に示されるように、本実施の形態においては、歯牙の特徴量として、歯牙の欠損部分の深さ(Vと表す)と、歯牙の表面の明度および彩度(Wと表す)とが算出される。
また、本実施の形態においては、歯周病620が発生していると疑われる歯周組織のみが抽出されて、その歯周組織の特徴量が算出される。歯周病620が発生している歯周組織は、腫れ上がり、かつ表面の色が近傍の歯周組織の色よりも赤みがかる傾向にある。そこで、歯周病620が発生している可能性のある歯周組織を特定する方法としては、先ず3次元画像またはX線画像に基づいて歯周組織の色が変色している部分が特定され、その部分の形状および色の特徴量が算出される。
なお、すでに同じ患者について過去に3次元画像またはX線画像が取得されている場合、過去の画像データと今回の画像データとの比較によって、腫れている可能性のある歯周組織が特定されてもよい。
図9(A),(B)に示されるように、本実施の形態においては、歯周組織の特徴量として、歯周組織の腫れ度合(Xと表す)と、歯周組織の表面の明度および彩度(Yと表す)とが算出される。
う蝕が発生している歯牙または歯周病が発生している歯周組織は、口腔カメラ55によって取得された3次元画像のみから特定されてもよいし、X線装置によって取得されたX線画像のみから特定されてもよい。もしくは、う蝕が発生している歯牙または歯周病が発生している歯周組織は、口腔カメラ55によって取得された3次元画像およびX線装置によって取得されたX線画像の両方から特定されてもよい。また、う蝕が発生している歯牙がX線装置によって取得されたX線画像のみから特定され、歯周病が発生している歯周組織が口腔カメラ55によって取得された3次元画像のみから特定されてもよいし、その反対でもよい。
再び図8を参照して、疾患画像関連テーブルには、疾患画像データとして、前述したような、歯牙の特徴量(V,W)と歯周組織の特徴量(X,Y)とが患者ごとに格納される。
疾患画像関連テーブルに格納された疾患情報には、う蝕関連の疾患情報と、歯周病関連の疾患情報とが含まれる。う蝕関連の疾患情報には、う蝕の有無と、う蝕の進行度と、う蝕の治療法とが含まれる。歯周病関連の疾患情報には、歯周病の有無と、歯周病の種類と、歯周病の治療法とが含まれる。
う蝕関連および歯周病関連のそれぞれの疾患情報について、図10を参照しながら説明する。図10は、疾患情報を説明するための図である。
図10(A)には、う蝕関連の疾患情報をまとめた一覧表が示されている。図10(A)に示されるように、う蝕関連の疾患情報について、診断1〜診断6の6段階の診断区分が設けられている。診断1では、う蝕が無しに設定され、進行度および治療法は設定されていない。診断2では、う蝕が有りに設定され、進行度は症状が最も軽いC0に設定され、治療法は治療0に設定されている。診断3では、う蝕が有りに設定され、進行度はC1に設定され、治療法は治療1に設定されている。診断4では、う蝕が有りに設定され、進行度はC2に設定され、治療法は治療2に設定されている。診断5では、う蝕が有りに設定され、進行度はC3に設定され、治療法は治療3に設定されている。診断6では、う蝕が有りに設定され、進行度は症状が最も重いC4に設定され、治療法は治療4に設定されている。
図10(B)には、歯周病関連の疾患情報をまとめた一覧表が示されている。図10(B)に示されるように、歯周病関連の疾患情報について、診断a〜診断fの6段階の診断区分が設けられている。診断aでは、歯周病が無しに設定され、種類および治療法は設定されていない。診断bでは、歯周病が有りに設定され、種類は症状が最も軽い歯肉炎aに設定され、治療法は治療aに設定されている。診断cでは、歯周病が有りに設定され、種類は歯肉炎bに設定され、治療法は治療bに設定されている。診断dでは、歯周病が有りに設定され、種類は歯周炎Aに設定され、治療法は治療Aに設定されている。診断eでは、歯周病が有りに設定され、種類は歯周炎Bに設定され、治療法は治療Bに設定されている。診断fでは、歯周病が有りに設定され、種類は症状が最も重い歯周炎Cに設定され、治療法は治療Cに設定されている。
(診療装置1:疾患画像関連テーブル,口腔画像関連テーブル)
図11は、診療装置1が記憶する疾患画像関連テーブルおよび口腔画像関連テーブルを説明するための図である。
図11(A)は、医院Aの診療装置1が記憶する疾患画像関連テーブルを説明するための図である。図11(A)に示されるように、診療装置1が記憶する疾患画像関連テーブルには、医院A、医院B、および医院Cといった複数の医院のそれぞれの患者ごとに、患者情報に紐付けられて、疾患画像データと疾患情報とが格納されている。診療装置1の制御装置100は、この疾患画像関連テーブルを、外部サーバ1000から取得して記憶する。
疾患画像関連テーブルに格納されたデータのうち、医院Aの患者に対応する疾患情報は、診療装置1が設置された医院Aにおける過去の診断情報である。また、疾患画像関連テーブルに格納されたデータのうち、医院Bおよび医院Cのそれぞれの患者に対応する疾患情報は、医院Bおよび医院Cのそれぞれにおける過去の診断情報である。すなわち、医院Aの診療装置1は、外部サーバ1000から取得した疾患画像関連テーブルを参照することで、医院Aを含む他の医院における患者の患者情報、疾患画像データ、および疾患情報を特定することができる。
図11(B)は、医院Aの診療装置1が記憶する口腔画像関連テーブルを説明するための図である。図11(B)に示されるように、診療装置1が記憶する口腔画像関連テーブルには、診療装置1を利用している患者の患者情報に紐付けられて、口腔画像データと診断情報とが格納されている。
患者情報には、医院名と、年齢と、性別と、喫煙の有無とが含まれる。口腔画像データには、歯牙の特徴量と歯周組織の特徴量とが含まれる。診断情報には、う蝕関連の情報と、歯周病関連の情報とが含まれる。う蝕関連の情報には、う蝕の有無と、う蝕の進行度と、う蝕の治療法とが含まれる。歯周病関連の情報には、歯周病の有無と、歯周病の種類と、歯周病の治療法とが含まれる。なお、図11(B)に示す患者の例では、う蝕関連の診断情報は疾患情報における診断2に分類され、歯周病関連の診断情報は疾患情報における診断bに分類される。
口腔画像関連テーブルには、一の患者に関する最新の患者情報、口腔関連データ、および診断情報が常に格納されており、新たにこれらの情報が制御装置100によって取得されると、口腔画像関連テーブルが更新される。新たに患者情報、口腔関連データ、および診断情報が取得されると、その時点で、制御装置100から外部サーバ1000にこれらの情報が出力され、外部サーバ1000の疾患画像関連テーブルに蓄積される。すなわち、医院Aの診療装置1で診断された患者の診断情報などは、診療装置1の口腔画像関連テーブルに格納される一方で、外部サーバ1000の疾患画像関連テーブルに格納される。
医院Aにおける他の診療装置1、および他の医院B,Cにおける他の診療装置1においても同様に、口腔画像関連テーブルには常に最新の患者のデータが格納されるとともに、過去のデータは外部サーバ1000に送信されて外部サーバ1000の疾患画像関連テーブルに格納される。そして、各医院の各診療装置1は、外部サーバ1000から疾患画像関連テーブルを取得することで、ネットワークで接続された全ての診療装置1における患者情報、口腔関連データ、および診断情報を取得することができる。
(診療装置1:診断基準テーブル)
図12は、診療装置1が記憶する診断基準テーブルを説明するための図である。診断基準テーブルには、患者の口腔画像に基づいて口腔を診断するための診断基準データが格納されている。
図12(A)は、う蝕を診断するための診断基準テーブルを示す。この診断基準テーブルは、図11(A)に示す疾患画像関連テーブルに含まれる疾患画像データ(歯牙の特徴量)と疾患情報(う蝕関連)とに基づいて、制御装置100によって作成される。
図12(A)に示されるように、診断基準テーブルには、歯牙の形状の特徴量(V)と、歯牙の色の特徴量(W)との対応関係を表したマップにおいて、診断1〜診断6のいずれかの診断区分が割り当てられている。たとえば、歯牙の形状の特徴量(V)が大きければ大きいほど、症状の重い診断区分が割り当てられ、歯牙の色の特徴量(W)が大きければ大きいほど、症状の重い診断区分が割り当てられている。このようなマッピングによって表わされたデータが、診断基準データに対応する。つまり、診断基準データは、疾患画像における歯牙の特徴量と歯牙に関する疾患情報との対応関係を示すデータを含む。
前述したように、う蝕が発生している歯牙は、その色が他の健康な歯牙の色よりも濃くなる傾向にあるが、健康な歯牙を有する患者であっても、喫煙者の場合、非喫煙者に比べて、歯牙の色が濃くなる傾向にある。そこで、う蝕を診断するための診断基準テーブルとしては、患者情報に含まれる喫煙の有無に応じて2つのテーブルが設けられている。
具体的には、制御装置100は、疾患画像関連テーブルに含まれる疾患画像データおよび疾患情報のうち、非喫煙者の疾患画像データおよび疾患情報に基づいて図12(A)の(a)に示す診断基準テーブルを作成する。一方、制御装置100は、疾患画像関連テーブルに含まれる疾患画像データおよび疾患情報のうち、喫煙者の疾患画像データおよび疾患情報に基づいて図12(A)の(b)に示す診断基準テーブルを作成する。
図12(A)の(a),(b)に示されるように、喫煙者用の診断基準データにおいては、非喫煙者用の診断基準データよりも、歯牙の色の特徴量(W)の閾値が緩くなっている。たとえば、歯牙の形状の特徴量(V)がV2≦V<V3であり、かつ歯牙の色の特徴量(W)がW2≦W<W3となる患者の場合、非喫煙者の場合は診断3が割り当てられているのに対して、喫煙者の場合は診断2が割り当てられている。これは、喫煙の有無による歯牙の変色度合いに起因する。
図12(B)は、歯周病を診断するための診断基準テーブルを示す。この診断基準テーブルは、図11(A)に示す疾患画像関連テーブルに含まれる疾患画像データ(歯周組織の特徴量)と疾患情報(歯周病関連)とに基づいて、制御装置100によって作成される。
図12(B)に示されるように、診断基準テーブルには、歯周組織の形状の特徴量(X)と、歯周組織の色の特徴量(Y)との対応関係を表したマップにおいて、診断a〜診断fのいずれかの診断区分が割り当てられている。たとえば、歯周組織の形状の特徴量(X)が大きければ大きいほど、症状の重い診断区分が割り当てられ、歯周組織の色の特徴量(Y)が大きければ大きいほど、症状の重い診断区分が割り当てられている。このようなマッピングによって表わされたデータが、診断基準データに対応する。つまり、診断基準データは、疾患画像における歯周組織の特徴量と歯周組織に関する疾患情報との対応関係を示すデータを含む。
制御装置100は、外部サーバ1000から最新の疾患画像関連テーブルを取得する度に、図12に示す診断基準データを更新する。本実施の形態においては、このような診断基準データの更新が、制御装置100の機械学習に含まれる。
(う蝕の診断)
図13は、う蝕の診断を説明するための図である。図13(A)は、非喫煙者の場合におけるう蝕の診断を表したグラフを示す。図13(B)は、喫煙者の場合におけるう蝕の診断を表したグラフを示す。
図13(A),(B)に示すグラフでは、図12(A)の(a),(b)に示す診断基準テーブルに従って、横軸が歯牙の形状の特徴量(V)に対応し、縦軸が歯牙の色の特徴量(W)に対応している。グラフ上の破線は、割り当てられた診断1〜診断6を区分けする境界である。このグラフでは、図11(A)に示す疾患画像関連テーブルに格納された各患者の歯牙の特徴量およびう蝕関連の疾患情報に基づいて、各患者が割り当てられた診断区分に学習データが配置される。
制御装置100の機械学習によって図12(A)の(a),(b)に示す診断基準データが更新されると、グラフ上の破線が移動する。これにより、グラフ上に配置された学習データが割り当てられる診断区分が変化することがある。すなわち、図11(A)に示す制御装置100の疾患画像関連テーブルに含まれる疾患画像データ(歯牙の特徴量)および疾患情報(う蝕関連)が蓄積されることによって、診断基準データの更新に用いられる母集団が増えるため、その分正確に、制御装置100はう蝕を診断することができる。さらに、術者によって診断情報が訂正されるごとに診断基準データが更新されるため、制御装置100はより正確にう蝕を診断することができる。
う蝕の診断の具体例を説明する。図11(B)に示すIDが「A00n」の患者の場合、喫煙者であるため、図12(B)の(b)に示す診断基準テーブルが参照される。この患者の場合、歯牙の形状の特徴量(V)がV2≦Va<V3であり、かつ歯牙の色の特徴量(W)がW2≦Wa<W3となる。したがって、図13(B)に示されるように、診断対象データは、グラフ上の診断2の領域に配置される。これにより、制御装置100は、IDが「A00n」の患者のう蝕について、診断2に含まれる診断情報を出力する。
(歯周病の診断)
図14は、歯周病の診断を説明するための図である。図14には、歯周病の診断を表したグラフが示されている。
図14に示すグラフでは、図12(B)に示す診断基準テーブルに従って、横軸が歯周組織の形状の特徴量(X)に対応し、縦軸が歯周組織の色の特徴量(Y)に対応している。グラフ上の破線は、割り当てられた診断a〜診断fを区分けする境界である。このグラフでは、図11(A)に示す疾患画像関連テーブルに格納された各患者の歯周組織の特徴量および歯周病関連の疾患情報に基づいて、各患者が割り当てられた診断区分に学習データが配置される。
制御装置100の機械学習によって図12(B)に示す診断基準データが更新されると、グラフ上の破線が移動する。これにより、グラフ上に配置された学習データが割り当てられる診断区分が変化することがある。すなわち、図11(A)に示す制御装置100の疾患画像関連テーブルに含まれる疾患画像データ(歯周組織の特徴量)および疾患情報(歯周病関連)が蓄積されることによって、診断基準データの更新に用いられる母集団が増えるため、その分正確に、制御装置100は歯周病を診断することができる。さらに、術者によって診断情報が訂正されるごとに診断基準データが更新されるため、制御装置100はより正確に歯周病を診断することができる。
歯周病の診断の具体例を説明する。図11(B)に示すIDが「A00n」の患者の場合、歯周組織の形状の特徴量(X)がX2≦Xa<X3であり、かつ歯周組織の色の特徴量(Y)がY1≦Ya<Y2となる。したがって、図14に示されるように、診断対象データは、グラフ上の診断bの領域に配置される。これにより、制御装置100は、IDが「A00n」の患者の歯周病について、診断bに含まれる診断情報を出力する。
[診療装置の処理]
診療装置1は、患者を直接的に治療することはないが、診断情報を出力し、またその診断情報に基づいて各種機器を制御することで、術者または補助者といったユーザを支援する装置に適用することができる。もしくは、診療装置1は、生身の患者、または人体模型のような疑似患者を直接的に治療する装置に適用することができる。
(診療装置がユーザを支援する場合の処理)
図15を参照しながら、診療装置1がユーザを支援する場合の処理の一例について説明する。図15は、診療支援処理を説明するための図である。なお、以下では、処理中の各ステップを単に「S」と略す。
図15に示されるように、診療装置1は、患者の主訴を取得する(S1)。具体的には、診療装置1の制御装置100は、音声取得部104によって、マイク4から患者の主訴を音声で取得する。患者の主訴としては、たとえば、歯の痛み度合、または痛みを感じる箇所などが想定される。また、患者の主訴としては、たとえば、年齢、性別、および喫煙の有無などの患者情報が想定される。
診療装置1は、患者の口腔画像を取得する(S2)。具体的には、制御装置100は、口腔画像取得部140によって、口腔カメラ55から口腔画像を取得する。このとき、制御装置100は、腕部制御部111によって腕部本体40fを駆動することで、口腔カメラ55を患者の口元に移動させる。術者または補助者は、患者の口元付近に移動した腕部本体40fを把持してスムーズに口腔内に口腔カメラ55を挿入することができる。もしくは、制御装置100は、口腔画像取得部140によって、X線装置から口腔画像を取得する。口腔画像データは、図12(B)に示す口腔画像関連テーブルに格納される。
診療装置1は、ネットワークで接続された全ての診療装置1における患者の疾患画像を取得する(S3)。具体的には、制御装置100は、疾患画像取得部151によって、通信インターフェース50を介して外部サーバ1000から疾患画像データを取得する。疾患画像データは、図8に示す外部サーバ1000の疾患画像関連テーブルに格納されている。なお、前述したように、疾患画像データは、疾患状態そのものを表す画像データではなく、複数の患者について、過去にう蝕の疑いのあった歯牙の特徴量、および過去に歯周病の疑いのあった歯周組織の特徴量の集合体である。このため、画像データそのものを取得するよりもデータ通信の遅延を抑えることができ、データ容量の増大も抑えることができる。なお、本実施の形態においては、喫煙の有無に応じて診断基準データを設けているため、S1の処理で患者から喫煙の有無が知らされている場合、喫煙者および非喫煙者のいずれかのみの疾患画像データを取得すればよい。これによっても、データ通信の遅延を抑えることができ、データ容量の増大も抑えることができる。
診療装置1は、ネットワークで接続された全ての診療装置1における患者の疾患情報を取得する(S4)。具体的には、制御装置100は、疾患情報取得部152によって、通信インターフェース50を介して外部サーバ1000から疾患情報を取得する。疾患情報は、図8に示す外部サーバ1000の疾患画像関連テーブルに格納されている。なお、診療装置1は、S3で取得した疾患画像データに対応する疾患情報のみを取得すればよい。
診療装置1は、機械学習によって診断基準データを更新する(S5)。具体的には、制御装置100は、更新部180によって、記憶部160に記憶された診断基準データを更新する。更新部180は、S3で取得された疾患画像データと、S4で取得された疾患情報とに基づいて、図12に示す診断基準テーブルに格納された診断基準データを更新する。
診療装置1は、口腔画像と診断基準データとに基づいて、診断情報を出力する(S6)。具体的には、制御装置100は、診断部170によって、S2で取得された更新画像データと、S5で更新された診断基準データとに基づいて、患者の診断情報を出力する。診断の一例は、図13および図14で説明した通りである。
診療装置1は、診断情報をモニタ8に表示する(S7)。具体的には、制御装置100は、表示部108によって、診断部170から出力された診断情報をモニタ8に画像で表示させる。これにより、ユーザまたは患者は、モニタ8に表示された診断結果、治療方針、または治療内容などを確認することができる。
診療装置1は、診断情報に含まれる情報として、治療の進行度合いが段階的に分かる画像をモニタ8に表示してもよい。さらに、診療装置1は、段階的に進行する治療のステップごとの時間が分かる画像をモニタ8に表示してもよい。これにより、ユーザは、治療の進行度合いおよび治療時間を段階的に把握することができる。
診療装置1は、診断情報をスピーカ6から音声で出力する(S8)。具体的には、制御装置100は、音声出力部106によって、診断部170から出力された診断情報をスピーカ6に音声で出力させる。これにより、ユーザまたは患者は、スピーカ6から出力された診断結果、治療方針、または治療内容などを確認することができる。
診療装置1は、診断情報に含まれる情報として、治療の進行度合いが段階的に分かる音声をスピーカ6から出力してもよい。さらに、診療装置1は、段階的に進行する治療のステップごとの時間が分かる音声をスピーカ6から出力してもよい。これにより、ユーザは、治療の進行度合いおよび治療時間を段階的に把握することができる。
ユーザは、モニタ8に表示された診断結果またはスピーカ6から出力された診断結果などが、自身の知識および経験から生まれる診断結果などと同じであれば、安心することができる。一方、ユーザは、モニタ8に表示された診断結果またはスピーカ6から出力された診断結果などが、自身の知識および経験から生まれる診断結果などと異なっていれば、操作パネル5などを用いて診断情報を訂正することもできる。
なお、診療装置1は、診断情報に含まれる情報として、複数の診断結果およびその治療内容が分かる画像をモニタ8に表示してもよい。この場合、診療装置1は、治療の優先度に応じてランキング形式で治療内容が分かる画像をモニタ8に表示してもよい。これに対してユーザは、自身の知識および経験から生まれる診断結果に基づいて、いずれかの診断結果を選択できるものであってもよい。
次に、術者の行為としてインフォームド・コンセントが行われる(S9)。このとき、術者は、モニタ8に表示された診断情報またはスピーカ6から出力された診断情報を患者と確認しながら、診断結果および治療内容などについて患者から合意を得る。術者が患者から合意を得られた場合、次のステップが行われる。なお、術者は、モニタ8に表示された診断情報およびスピーカ6から出力された診断情報の少なくともいずれかを確認できればインフォームド・コンセントを行える。このため、診療装置1は、S7の処理およびS8の処理のいずれかを省略してもよい。
診療装置1は、診断情報に基づいて診療台20を制御する(S10)。具体的には、制御装置100は、診療台制御部120によって、記憶部160に記憶された診療台制御データに基づいて診療台20を駆動する。診療台制御データは、診断部170から出力された診断情報に基づいて診療台20の位置および姿勢を制御するためのデータを含む。
たとえば、診療装置1は、診断情報に基づいて診療台20を駆動することで、診療台20の高さ、診療台に対して保持された背板の角度、ヘッドレスト21の角度などを制御する。さらに、診療装置1は、治療の進行に応じて、治療に沿った位置および姿勢になるように、診療台20を微調整する。これにより、診療台20の位置および姿勢は、治療内容に従った位置および姿勢になる。なお、診療装置1は、診断情報に含まれる患者の体格データ、または診療台20に設けられた身長および体重を検知する検知器によって取得された体格データに基づいて、診療台20を駆動してもよい。これにより、患者は、最も安定し、かつ無理の無い姿勢を考慮した治療を受けることができる。
診療装置1は、診断情報に基づいて各腕部本体40を制御する(S11)。具体的には、制御装置100は、腕部制御部111によって、記憶部160に記憶された腕部制御データに基づいて各腕部本体40を駆動する。腕部制御データは、診断部170から出力された診断情報に基づいて各腕部本体40を駆動するためのデータを含む。これにより、各腕部本体40は、治療内容に沿うように制御される。
たとえば、歯牙を切削する工程において、診療装置1は、エアタ−ビンハンドピースが接続された腕部本体40を患者の口元付近に移動させる。術者は、患者の口元付近に移動した腕部本体40を把持してスムーズに歯牙の切削を開始することができる。また、診療装置1は、バキュームシリンジが接続された腕部本体40を患者の口元付近に移動させる。補助者は、患者の口元付近に移動した腕部本体40を把持してスムーズに口腔内の唾液または血液を吸引することができる。
治療内容によっては、エアタ−ビンハンドピースおよびバキュームシリンジのように、術者によって使用される診療器具30と、補助者によって使用される診療器具30とが同時に必要となることがある。このような場合、診療装置1は、複数の腕部本体40を同時に駆動する。但し、診療装置1は、複数の腕部本体40を同時に動かす場合、それぞれに接続された診療器具30を互いに衝突させることなく、腕部本体40および診療器具30を駆動する。
たとえば、制御装置100は、俯瞰カメラ9によって取得された俯瞰画像に基づき、各腕部本体40の位置を検出し、検出位置に基づき各腕部本体40の位置を制御する。各腕部本体40に赤外線反射マークを付与するものであれば、制御装置100は、俯瞰カメラ9とは異なる赤外線カメラによって、各腕部本体40の位置を検出してもよい。各腕部本体40に電磁気源を設けるものであれば、制御装置100は、検出器によって電磁気を検知することで各腕部本体40の位置を検出してもよい。制御装置100は、各腕部本体40の関節に設けられたエンコーダからの検出値に基づいて、各腕部本体40の位置を検出してもよい。
診療装置1は、診断情報に基づいて各診療器具30を制御する(S12)。具体的には、制御装置100は、診療器具制御部131によって、記憶部160に記憶された診療器具制御データに基づいて各診療器具30を駆動する。診療器具制御データは、診断部170から出力された診断情報に基づいて各診療器具30を駆動するためのデータを含む。これにより、各診療器具30は、治療内容に沿うように制御される。
たとえば、診療装置1は、治療内容に沿うように診療器具30を選定し、その使用順序を決定する。診療装置1は、使用する診療器具30が接続された腕部本体40が口元付近に移動すると、その腕部本体40に接続された診療器具30の駆動準備ができたことをランプの点灯などによって術者に報知する。駆動準備ができたことの報知は、腕部本体40が口元付近に移動して確実に停止したときに行われる方が好ましい。術者は、駆動準備ができたことを確認した上で、安全に診療器具30を駆動させることができる。
また、診療装置1は、治療内容に沿うように診療器具30の各種設定値を変更する。診療器具30の設定値には、たとえば、エアタ−ビンハンドピースなどの診療器具の回転数、回転速度、回転方向、および回転パターンなどを決定するための設定値が含まれる。
具体的な例として、根管治療においては、根管のX線画像に基づいて、根管拡大、洗浄、および充填といった治療が行われる。このとき、根管拡大にあたっては、リーマまたはファイルといった切削工具を装着したマイクロモータハンドピースを使用して歯牙の根管の切削が行われる。臼歯などでは根管が湾曲しているために切削工具に掛かるトルクが大きくなりすぎると、切削工具が破切してしまう虞がある。切削工具の細さは複数種類存在するため、たとえば、細いものから太いものへと順番に使い分ける必要がある。さらに、最短時間でより正確に根管の形状に沿って根管を拡大する必要もある。診療装置1は、口腔画像として予め取得して記憶部160に記憶したX線CT画像に基づいて、根管の深さや形状の湾曲度に応じて最適な切削工具を選択し、各切削工具に応じた設定値を設定したり、報知に従って術者がマニュアルで調整できるように報知したりすることができる。
これにより、術者は、設定値を自分自身で変更することなくスムーズに最適な治療を行うことができる。
術者による治療中においては、診療台20の位置および姿勢によって患者が異常姿勢になった場合、診療台20の位置および姿勢が変更される。また、患者が過度の痛みを感じるしぐさをした場合、診療器具30の駆動の停止、切削工具の回転速度の低下または回転方向の変更などが行われる。
術者による治療が完了した後、術者の行為として治療結果などが患者に説明され(S13)、一連の診療支援処理が終了する。
なお、前述した一連の診療支援処理において、S3、S4、およびS5の処理については省略してもよい。疾患画像データおよび疾患情報を取得するタイミング、および診断基準データを更新するタイミングは、必ずしも患者を診断するときに限らず、S6に示す診断情報を出力する処理の前に行われていればよい。たとえば、診療装置1は、電源が入れられたタイミングで疾患画像データおよび疾患情報を取得して診断基準データを更新してもよいし、定期的に行われる割込処理によって疾患画像データおよび疾患情報を取得して診断基準データを更新してもよい。
(診療装置が人体模型を直接的に治療する場合の処理)
図16を参照しながら、診療装置1が人体模型を直接的に治療する場合の処理の一例について説明する。たとえば、歯科大学での教育実習として、人体模型が患者としてみなされ、診療装置1が人体模型を直接的に治療することで治療の見本を学生に披露することを想定する。
人体模型は、治療中に与えられた刺激の有無およびその度合などを検知して、その検知結果に基づいて、顔の表情を変えたり、音声を出力したり、体を動かしたりする。たとえば、人体模型は、異常がなければ、音声を発することなく、また体を動かさずに、リラックスした表情を再現し、異常があれば、嘔吐、痛み、不安、または不快などの表情を再現しつつ、音声を発したり手を挙げたりする。
図16は、診療処理を説明するための図である。図16に示されるように、診療装置1は、患者の主訴を取得する(S21)。具体的には、診療装置1の制御装置100は、音声取得部104によって、マイク4から患者の主訴を音声で取得する。この例の場合、患者は人体模型であるため、生身の患者を模倣して人体模型から機械音声が出力される。音声取得部104は、この機械音声を取得する。
診療装置1は、患者の口腔画像を取得する(S22)。具体的には、制御装置100は、口腔画像取得部140によって、口腔カメラ55から口腔画像を取得する。このとき、制御装置100は、腕部制御部111によって腕部本体40fを駆動することで、口腔カメラ55を患者の口腔内に挿入する。制御装置100は、口腔カメラ55が患者の口腔内に確実に挿入された後で、口腔カメラ55で口腔内を撮影する。もしくは、制御装置100は、口腔画像取得部140によって、X線装置から口腔画像を取得する。口腔画像データは、図12(B)に示す口腔画像関連テーブルに格納される。
診療装置1は、ネットワークで接続された全ての診療装置1における患者の疾患画像を取得する(S23)。具体的には、制御装置100は、疾患画像取得部151によって、通信インターフェース50を介して外部サーバ1000から疾患画像データを取得する。疾患画像データは、図8に示す外部サーバ1000の疾患画像関連テーブルに格納されている。なお、図15のS3と同様に、診療装置1は、疾患状態そのものを表す画像データではなく、複数の患者について、過去にう蝕の疑いのあった歯牙の特徴量、および過去に歯周病の疑いのあった歯周組織の特徴量の集合体を疾患画像データとして取得する。また、診療装置1は、喫煙者および非喫煙者のいずれかのみの疾患画像データを取得すればよい。
診療装置1は、ネットワークで接続された全ての診療装置1における患者の疾患情報を取得する(S24)。具体的には、制御装置100は、疾患情報取得部152によって、通信インターフェース50を介して外部サーバ1000から疾患情報を取得する。疾患情報は、図8に示す外部サーバ1000の疾患画像関連テーブルに格納されている。なお、診療装置1は、S23で取得した疾患画像データに対応する疾患情報のみを取得すればよい。
診療装置1は、機械学習によって診断基準データを更新する(S25)。具体的には、制御装置100は、更新部180によって、記憶部160に記憶された診断基準データを更新する。更新部180は、S23で取得された疾患画像データと、S24で取得された疾患情報とに基づいて、図12に示す診断基準テーブルに格納された診断基準データを更新する。
診療装置1は、口腔画像と診断基準データとに基づいて、診断情報を出力する(S26)。具体的には、制御装置100は、診断部170によって、S22で取得された更新画像データと、S25で更新された診断基準データとに基づいて、患者の診断情報を出力する。診断の一例は、図13および図14で説明した通りである。
診療装置1は、診断情報をモニタ8に表示する(S27)。具体的には、制御装置100は、表示部108によって、診断部170から出力された診断情報をモニタ8に画像で表示させる。これにより、実習中の学生は、モニタ8に表示された診断結果、治療方針、または治療内容などを確認することができる。
診療装置1は、診断情報に含まれる情報として、治療の進行度合いが段階的に分かる画像をモニタ8に表示してもよい。さらに、診療装置1は、段階的に進行する治療のステップごとの時間が分かる画像をモニタ8に表示してもよい。これにより、学生は、治療の進行度合いおよび治療時間を段階的に把握することができる。
診療装置1は、診断情報をスピーカ6から音声で出力する(S28)。具体的には、制御装置100は、音声出力部106によって、診断部170から出力された診断情報をスピーカ6に音声で出力させる。これにより、実習中の学生は、スピーカ6から出力された診断結果、治療方針、または治療内容などを確認することができる。
診療装置1は、診断情報に含まれる情報として、治療の進行度合いが段階的に分かる音声をスピーカ6から出力してもよい。さらに、診療装置1は、段階的に進行する治療のステップごとの時間が分かる音声をスピーカ6から出力してもよい。これにより、学生は、治療の進行度合いおよび治療時間を段階的に把握することができる。
診療装置1は、インフォームド・コンセントを行う(S29)。この例の場合、患者は人体模型であるため、診療装置1と人体模型との間で、擬似的にインフォームド・コンセントが行われる。たとえば、診療装置1は、治療内容の同意を得るための音声をスピーカ6から出力する。診療装置1は、患者から発せられた音声を認識したり、俯瞰カメラ9によって撮影された患者の表情を認識したりすることで、インフォームド・コンセントで患者の同意が得られたと判断する。これは、患者が生身の人間であっても同じことが言える。なお、診療装置1は、患者から発せられた音声、または俯瞰カメラ9によって撮影された患者の表情が認識できなかった場合、スピーカ6から治療内容の同意を得るための音声を再度出力してもよい。
診療装置1は、インフォームド・コンセントで患者の同意が得られた場合、診断情報に基づいて診療台20を制御する(S30)。具体的には、制御装置100は、診療台制御部120によって、記憶部160に記憶された診療台制御データに基づいて診療台20を駆動する。診療台制御データは、診断部170から出力された診断情報に基づいて診療台20の位置および姿勢を制御するためのデータを含む。診療装置1による診療台20の駆動の一例は、図15のS10と同様であるので説明を省略する。
診療装置1は、診断情報に基づいて各腕部本体40を制御する(S31)。具体的には、制御装置100は、腕部制御部111によって、記憶部160に記憶された腕部制御データに基づいて各腕部本体40を駆動する。腕部制御データは、診断部170から出力された診断情報に基づいて各腕部本体40を駆動するためのデータを含む。これにより、各腕部本体40は、治療内容に沿うように制御される。
たとえば、歯牙を切削する工程が行われる場合、診療装置1は、エアタ−ビンハンドピースが接続された腕部本体40を患者の口元付近に移動させる。患者が口を開けた後、診療装置1は、腕部本体40に接続されたエアタ−ビンハンドピースを口腔内に挿入する。診療装置1は、口腔内において、たとえば、既存の形状認識技術を用いて口腔の形状を認識しながら口腔を傷つけることなく診療器具30を駆動させる。なお、制御装置100は、腕部本体40の関節に設けられたエンコーダからの検出値に基づいて、腕部本体40の位置を把握しながら診療器具30を駆動させてもよい。制御装置100は、俯瞰カメラ9によって取得された俯瞰画像に基づき、腕部本体40の位置を把握しながら診療器具30を駆動させてもよい。腕部本体40に赤外線反射マークを付与するものであれば、制御装置100は、俯瞰カメラ9とは異なる赤外線カメラによって、腕部本体40の位置を把握しながら診療器具30を駆動させてもよい。腕部本体40に電磁気源を設けるものであれば、制御装置100は、検出器によって電磁気を検知することで腕部本体40の位置を把握しながら診療器具30を駆動させてもよい。
治療内容によっては、エアタ−ビンハンドピースおよびバキュームシリンジのように、複数の診療器具30が同時に必要となることがある。このような場合、診療装置1は、複数の腕部本体40を同時に駆動する。但し、診療装置1は、複数の腕部本体40を同時に動かす場合、それぞれに接続された診療器具30を互いに衝突させることなく、腕部本体40および診療器具30を駆動する。診療装置1による診療器具30の衝突回避の一例は、図15のS11と同様であるので説明を省略する。
診療装置1は、エアタ−ビンハンドピースおよびバキュームシリンジのように、複数の診療器具30を同時に駆動することで、術者と補助者とが同時に治療に関わることと同様に、効率よく治療を行うことができる。
診療装置1は、診断情報に基づいて各診療器具30を制御する(S32)。具体的には、制御装置100は、診療器具制御部131によって、記憶部160に記憶された診療器具制御データに基づいて各診療器具30を駆動する。診療器具制御データは、診断部170から出力された診断情報に基づいて各診療器具30を駆動するためのデータを含む。これにより、各診療器具30は、治療内容に沿うように制御される。
たとえば、診療装置1は、治療内容に沿うように診療器具30を選定し、その使用順序を決定する。診療装置1は、使用する診療器具30が患者の口腔内に挿入されて腕部本体40が停止した後、診療器具30を駆動して治療を開始する。診療装置1は、図3で示したように、長手方向への伸縮、長手方向に対する屈曲、および長手方向に対する周方向への回転の少なくともいずれかを腕部本体40に行わせながら、治療する。このとき、診療装置1は、患者の口腔内を傷つけることなく診療器具30によって口腔内を治療する。
さらに、診療装置1は、図15のS12でも説明したように、治療内容に沿うように診療器具30の各種設定値を変更する。これにより、診療装置1は、設定値を自ら変更しながらスムーズに最適な治療を行うことができる。
診療装置1による治療中においては、診療台20の位置および姿勢によって患者が異常姿勢になった場合、診療台20の位置および姿勢が変更される。また、患者が過度の痛みを感じるしぐさをした場合、診療器具30の駆動の停止、切削工具の回転速度の低下または回転方向の変更などが行われる。
前述したような診療装置1による腕部本体40および診療器具30の駆動は、マイク4から取得した患者の主訴に基づいて行われてもよい。
診療装置1は、治療が完了した後、治療結果をモニタ8に表示させ(S33)、一連の診療処理を終了する。
なお、前述した一連の診療処理において、S23、S24、およびS25の処理については省略してもよい。疾患画像および疾患情報を取得するタイミング、および診断基準データを更新するタイミングは、必ずしも患者を診断するときに限らず、S26に示す診断情報を出力する処理の前に行われていればよい。たとえば、診療装置1は、電源が入れられたタイミングで疾患画像および疾患情報を取得して診断基準データを更新してもよいし、定期的に行われる割込処理によって疾患画像および疾患情報を取得して診断基準データを更新してもよい。
なお、前述した例は、診療装置1が人体模型を直接的に治療することで治療の見本を学生に披露することを想定しているが、診療装置1の性能を確認するために、診療装置1が人体模型を直接的に治療してもよい。
具体的には、診療装置1が、診断情報に基づいて治療を行った結果、人体模型に異常があった場合、その出力された診断情報は誤った情報であることが分かる。そこで、術者が誤った情報を訂正した上で、診療装置1に再度治療させることで、訂正後の診断情報が正しいものであるか否かを確認することができる。
[診療装置1の主な構成]
以上のように、本実施の形態に係る診療装置1は、患者の口腔画像と、図12に示す診断基準テーブルに格納された診断基準データとに基づいて、口腔の診断情報を出力する。さらに、診療装置1は、ネットワークで接続された全ての診療装置1における患者の疾患画像を取得し、取得した疾患画像に基づいて、機械学習によって診断基準データを更新する。
これにより、診療装置1は、ネットワークを介して収集した様々な疾患画像に基づき診断情報を出力するため、1人の術者の知識および経験などに大きく依存することなくより正確な診断情報が出力される。
本実施の形態に係る診療装置1は、生身の患者、または人体模型のような疑似患者を直接的に治療する装置であって、患者の主訴を音声で取得するとともに、可動式の腕部本体40に保持された口腔カメラ55によって口腔画像を取得する。診療装置1は、口腔画像と、図12に示す診断基準テーブルに格納された診断基準データとに基づいて、口腔の診断情報を出力する。診療装置1は、ネットワークで接続された全ての診療装置1における患者の疾患画像を取得し、取得した疾患画像に基づいて、機械学習によって診断基準データを更新する。診療装置1は、診断情報をスピーカ6から音声で出力することで、インフォームド・コンセントを行い、同意を得られた場合、診断情報に基づいて診療器具30を駆動することで患者を直接的に治療する。
これにより、診療装置1は、人工知能を駆使して、術者または補助者の助けを借りずに、ある場面では術者または補助者の助けを借りながら、ある場面では術者または補助者の助けを借りることなく、患者を直接的に治療することができる。
図12に示されるように、診断基準データは、口腔画像の特徴量と疾患情報との対応関係を示すデータであり、疾患画像の特徴量と、当該疾患画像に対応する疾患情報とに基づいて更新される。これにより、疾患画像の特徴量と、当該疾患画像に対応する疾患情報とが更新される度に、診断基準データが最新のものに更新される。
また、診断基準データは、診断部170によって出力された診断情報に基づいて更新されるため、今回の診断結果が診断基準データに反映される。
[変形例]
本発明は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な変形例について説明する。
(診療テーブルについて)
本実施の形態に係る診療装置1は、図1に示されるように、診療台20とは別の装置台80から延びるアームによって上空から覆い被さるように診療テーブル10が設けられていた。しかしながら、診療装置は、図17に示されるように構成されてもよい。図17は、変形例に係る診療装置200,300の概略を示す図である。
診療装置は、図17(A)に示す診療装置200のように、診療台220から延びるアーム264の先端部262に複数の診療器具230を有する診療テーブル210が設けられるように構成されてもよい。なお、アーム264は、診療台220に含まれる、ヘッドレスト21、背もたれ22、座面シート23、および足置き台24のいずれから延びてもよい。
診療装置は、図17(B)に示す診療装置300のように、洗口装置であるスピットンを有する収納部350から伸縮可能なアーム364が設けられ、そのアーム364に診療テーブル310が設けられるように構成されてもよい。このように構成すれば、診療テーブル310が必要でない場合は収納部350に診療テーブル310を収納できる一方で、診療テーブル310が必要な場合は収納部350から診療テーブル310を取り出すことができる。なお、収納部350は、スピットンを有するものに限らず、単に診療テーブル310を収納する筐体であってもよく、必要に応じて院内を移動可能であってもよい。
その他、診療装置は、診療台近くの院内の床から直接的にアームが設けられ、そのアームに診療テーブル310が設けられるように構成されてもよい。
(特徴量について)
本実施の形態においては、歯牙の形状の特徴量として歯牙の欠損部分の深さ(V)を適用し、歯牙の色の特徴量として歯牙の表面の明度および彩度(W)を適用したが、これに限らない。たとえば、歯牙の特徴量は、歯牙の大きさまたは形そのもの、歯牙の生え方または歯並びなどから算出されてもよい。年齢の有無、性別、または喫煙の有無に応じて、歯牙の特徴量に重み付けをしてもよい。また、歯牙の診断にあたっては、喫煙者の場合における歯のヤニの付着状況などが行われてもよい。また、口腔カメラ55で患部を撮影する際に、紫外線などの特定の波長の励起光を患部に照射することでう蝕部から蛍光を発するようにすれば、う蝕診断を行うこともできる。
本実施の形態においては、歯周組織の形状の特徴量として腫れ度合(X)を適用し、歯周組織の色の特徴量として表面の明度および彩度(Y)を適用したが、これに限らない。たとえば、歯周組織の特徴量は、歯石の量、または歯周ポケットの深さなどから算出されてもよい。年齢の有無、性別、または喫煙の有無に応じて、歯周組織の特徴量に重み付けをしてもよい。また、歯牙の動揺度を動揺度測定のインスツルメントを利用して測定して特徴量の一つとしてもよい。
(診断について)
本実施の形態においては、診療装置1は、患者の口腔画像と、疾患情報に紐付けられた疾患画像との比較において、歯牙および歯周組織の特徴量を算出しているが、これに限らない。たとえば、診療装置1は、患者の口腔画像に似た疾患画像を、診断基準データに基づき探し出し、抽出した疾患画像に紐付けられた疾患情報を診断情報として出力してもよい。この場合、診断基準データは、たとえば、口腔画像と疾患画像とのパターンマッチングに用いられる閾値を含んでいてもよい。そして、診療装置1は、診断基準データに含まれる閾値を、日々蓄積される疾患画像に基づいて更新してもよい。また、診断情報として、歯科用インプラント手術に関する診断情報、歯科矯正に関する診断情報、小児歯科に関する診断情報、口腔外科に関する診断情報、歯科の審美に関する診断情報などを使用してもよい。これらの各種の診断情報に対しても項目に応じて複数種類の診断基準データを定めておけばよい。
診療装置1は、患者の口腔画像と診断基準データとに基づいて診断情報を出力するにあたって、さらに患者の体質データおよび投薬データの少なくともいずれかに基づいて、診断情報を出力してもよい。たとえば、診療装置1は、患者の体質、身長、体重、年齢、血液型、アレルギーの有無、既往歴、服用中の薬剤、過去に受けたX線検査データ、または過去に受けた健康診断の情報などに基づいて、診断情報を出力してもよい。この場合、診療装置1は、一旦、患者の口腔画像と診断基準データとに基づいて出力した診断情報を、これら体質データまたは投薬データに基づいて変更してもよい。もしくは、診療装置1は、患者の口腔画像と診断基準データとに基づいて診断情報を出力する際にこれら体質データまたは投薬データに従った重み付けによって診断情報を特定してもよい。
診療装置1は、患者の口腔画像と診断基準データとに基づいて診断情報を出力するにあたって、さらに既存の論文および学会データの少なくともいずれかに基づいて、診断情報を出力してもよい。さらに、診療装置1は、既存の論文および学会データの少なくともいずれかに基づいて、診断基準データを更新してもよい。このように蓄積された既存の論文または学会データに基づいて診断基準データが更新されれば、診療装置1は、既存の論文または学会データが更新されるごとに、より正確な診断情報を出力することができる。
診療装置1は、診断基準データを更新する際に参照する疾患画像および疾患情報を設定によって取捨選択できるように構成されてもよい。たとえば、医院Aに配置された診療装置1は、ネットワークに接続された診療装置1のうち、医院Bに配置された診療装置1における疾患画像および疾患情報を取得する一方で、医院Cに配置された診療装置1における疾患画像および疾患情報を取得しないように、ユーザが設定できるように構成されてもよい。このようにすれば、たとえば、医院Aに配置された診療装置1は、有名な術者が所属する医院に限り疾患画像および疾患情報を取得して、その疾患画像および疾患情報に基づき診断基準データを更新することができる。これにより、診療装置1は、より正確な診断情報を出力することができる。なお、医院Aに配置された診療装置1は、同じ医院Aに配置された診療装置1のうちから取得する診療装置1を、設定によって取捨選択できるように構成されてもよい。
診療装置1は、う蝕の診断において喫煙の有無に応じて診断基準データを設けていたが、患者の年齢または性別に応じて、診断基準データを設けてもよい。また、診療装置1は、う蝕が疑われる歯牙の特徴(前歯、奥歯、乳歯、永久歯など)に応じて、診断基準データを設けてもよい。そして、診療装置1は、外部サーバ1000から疾患画像データおよび疾患情報を取得する際、患者の年齢、性別、またはう蝕が疑われる歯牙の特徴(前歯、奥歯、乳歯、永久歯など)に応じて、取得する疾患画像データおよび疾患情報を制限してもよい。このようにすれば、データ通信の遅延を抑えることができ、データ容量の増大も抑えることができる。
(診断基準データの記憶について)
本実施の形態においては、各医院に配置された診療装置1が、それぞれ診断基準データを記憶していた。そして、各診療装置1がネットワーク接続によって共有する外部サーバ1000から取得した疾患画像および疾患情報に基づいて、診断基準データを更新するものであった。しかしながら、各診療装置1が診断基準データを記憶するのではなく、各医院に配置された管理サーバが診断基準データを記憶してもよい。そして、各診療装置1または管理サーバが、外部サーバ1000から取得した疾患画像および疾患情報に基づいて診断基準データを更新してもよい。
もしくは、各診療装置1が診断基準データを記憶するのではなく、外部サーバ1000のみが診断基準データを記憶してもよい。そして、外部サーバ1000が各診療装置1から収集した疾患画像および疾患情報に基づいて診断基準データを更新してもよい。この場合、各診療装置1は、診断を行う際に外部サーバ1000から最新の診断基準データを取得すればよい。
診療装置1は、必ずしも、ネットワーク接続によって外部サーバ1000および他の診療装置と接続される必要はない。診療装置1は、自分自身が取得した過去の口腔画像および診断情報のみに基づいて、診断基準データを更新するものであってもよい。さらに、診療装置1は、一旦、診断情報を出力した後、術者によって診断情報が訂正された場合、その訂正後の診断情報に基づいて、診断基準データを更新してもよい。このようにすれば、診療装置1は、術者好みの診断情報を出力するものになる。
(遠隔操作について)
診療装置1の近くには、必ずしも術者または補助者などのユーザが存在しなくてもよい。僻地医療の場合など、ユーザが存在する場所とは異なる遠隔地に診療装置1が設置されてもよい。この場合、診療装置1は、遠隔地からのユーザによる遠隔操作に基づき、図15および図16に示す一連の処理を実行するものであってもよい。たとえば、診療装置1は、遠隔地からのユーザによる遠隔操作に基づき、診療支援として使用してもよいし、診療器具30を駆動させて患者を治療してもよい。
制御装置100が有する、口腔画像取得部140、疾患画像取得部151、疾患情報取得部152、記憶部160、診断部170、および更新部180のうち、少なくともいずれか、もしくは全ての機能部を、診療装置1とは異なる他の装置が有するものであってもよい。たとえば、人工知能によって口腔を診断するための機能部は、実際に治療するための診療装置1とは別の場所(術者がいる医院内、またはクラウドサービスを利用した外部サーバ)に存在してもよい。
また、本発明は、歯科や口腔外科のみならず、皮膚科、頭頚部外科、耳鼻咽喉科、形成外科、整形外科などにも適用される。
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。