JP6845884B2 - 金型摩耗性に優れたCu−Ni−Si系銅合金条 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばコネクタ、端子、リレ−、スイッチ等の導電性ばね材に好適なCu−Ni−Si系銅合金条に関する。
従来から、端子やコネクタの材料として、固溶強化型合金である黄銅やりん青銅が用いられてきた。ところで、電子機器の高性能化に伴い、使用される銅合金には高電流化が求められている。そこで、従来の固溶強化型の銅合金に比べ、強度、電気伝導性および熱伝導性に優れた析出強化型の銅合金が使用されてきている。析出強化型の銅合金は、溶体化処理された過飽和固溶体を時効処理することにより、微細な析出物が均一に分散して、合金の強度が高くなると共に、銅中の固溶元素量が減少して電気伝導性が向上する。このため、強度、ばね性などの機械的性質に優れ、しかも電気伝導性、熱伝導性が良好となる。
析出強化型銅合金として、Cu−Ni−Si系銅合金が開発されている(特許文献1)。しかし、一般にCu−Ni−Si系銅合金は、連続プレス加工におけるプレス打抜き面のせん断面が大きく、金型中のパンチ等の工具が材料と接触する面積が増加するため、摩耗が促進される。このため、金型のメンテナンス頻度が高くなって生産性が低下する問題があり、その抑制が望まれている。
そこで、近年、コルソン合金の金型摩耗性を改善する技術として、析出物の個数と分布を制御する方策が提唱されている。例えば、特許文献2の発明では(1)熱間圧延(2)冷間圧延(3)溶体化処理(4)時効処理(5)最終冷間圧延(6)歪取焼鈍をこの順番で含む工程で、熱間圧延最終パス終了後の冷却を開始温度300〜450℃で実施し、溶体化処理前の冷間圧延を1パス当たりの平均圧延率を15〜30%にて総圧延率を70%以上で実施し、溶体化処理を800〜900℃で60〜120秒間で実施し、時効処理を400〜500℃で7〜14時間で実施する。
これにより、表面の粒径20〜80nmのNi−Si析出物粒子の個数を1.5×10〜5.0×10個/mm、表面の粒径100nmを超えるNi−Si析出物粒子の個数が0.5×10〜4.0×10個/mmに制御し、表面からの厚みが全板厚みの20%である表面層における粒径20〜80nmのNi−Si析出物粒子の個数をa個/mm2、前記表面層より内方部分における粒径20〜80nmのNi−Si析出物粒子の個数をb個/mmとした場合に、a/bが0.5〜1.5になるように制御し、耐金型磨耗性を改善している。
特許文献3の発明では、(1)鋳造(10〜30℃/秒の冷却速度で鋳造)(2)再熱処理(850〜950℃で2〜8時間)(3)熱間圧延(終了温度680〜780℃、圧延時間180〜450秒、冷却時間40〜180℃/秒)(4)面削(5)冷間圧延(6)溶体化処理(950℃で20秒、その後直ちに水焼入れ)(7)時効熱処理(温度425〜500℃、時間1〜6時間で実施)(8)冷間圧延(圧延率10%)をこの順番で含む工程で実施する。
これにより、(a)(NiとSiを合計で50mass%以上含む3種類の金属間化合物A(直径:0.3μm以上2μm以下)、B(直径:0.05μm以上0.3μm未満)、C(直径:0.001μmを越え0.05μm未満))、(b)(銅合金板材の圧延方向に垂直な断面における結晶粒径の横長さx(μm)と縦長さy(μm)が、関係式[x/y≧2]を満たす)および、(c)(化合物Aの分散密度a、前記金属間化合物Bの分散密度bおよび前記金属間化合物Cの分散密度cが、関係式[a/(b+c)≦0.010]および[0.001≦(b/c)≦0.10]を満足する)、を満足するよう制御し、耐金型磨耗性を改善している。
国際公開第WO2011/068134号 国際公開第WO2013/094061号 特開2008−95185号公報
しかしながら、従来のCu−Ni−Si系銅合金は耐金型磨耗性を改善するが、より強度が高い領域での検討が十分になされていなかった。
これらの事情を鑑みて、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、金型摩耗性に優れるCu−Ni−Si系銅合金条の提供を目的とする。
析出強化型のCu−Ni−Si系銅合金条は、時効処理によってnmレベルの粒径のNi−Si粒子を析出物として大量に析出させるが、強度の向上に寄与しない微細なμmレベルの粒径のNi−Si粒子も多く存在する。
本発明者は、Niの含有量が2.0%以上かつNi/Si比が1.3以上6.7以下であり、0.2%耐力YSが700MPa以上の高強度である場合、Cu−Ni−Si系銅合金の材料を半抜きプレス加工(試料を打ち抜かずにパンチでプレスし、絞り加工後のような形状にする)した際に、図2に示すパンチとダイ間で塑性変形する領域Rの圧延平行方向の最大幅Wが狭いほど、領域Rにせん断荷重が応力集中して材料が早期に破断するので、パンチと材料との接触距離が短くなり、金型摩耗性を向上できることを見出した。
更に、製品の引張強度TS(MPa)と0.2%耐力YS(MPa)の比である降伏比YS/TSが0.9以上であり、加工硬化指数n値(以下、n値)が0.05以下である場合に、さらに耐金型磨耗性が向上することを見出した。
なお、Niの含有量が2.0%未満であり、0.2%耐力YSが700MPa未満の場合は、塑性変形する領域Rの幅Wが金型摩耗性に影響を与える現象は顕著にみられなかった。
ここで、プレス時のせん断荷重の応力は、合金中に析出したNi−Si粒子に集中するため、塑性変形する領域Rの幅Wを狭くするには、μmレベルのNi−Si粒子の大きさと個数を制御すればよいことが判明した。つまり、Ni−Si粒子が大きいか、又は個数が多いほど、半抜きプレス時の幅Wは狭くなる。これは、Ni−Si粒子の個数が多いほど応力集中部分が多く、変形の初期段階でクラックが進展するためである。
nmレベルの粒径のNi−Si粒子であれば、溶体化および時効処理の条件を制御して調整できるが、μmレベルのNi−Si粒子を制御しようとすると、過時効等を行わなければならず、強度等の特性を損ねてしまう。そこで、熱間圧延条件を制御して熱間圧延直後のNi−Si粒子の直径と個数を規制することを見出した。
上記の目的を達成するために、本発明のCu−Ni−Si系銅合金条は、質量%で、Ni:2.0〜5.0%、Si:0.3〜1.5%含有し、Ni/Si比が1.3以上6.7以下であり、残部がCu及び不可避不純物からなり、0.2%耐力YSが700MPa以上のCu−Ni−Si系銅合金条であって、圧延平行方向を長手方向として5×15mmに切り出した試料の中央部を、板厚×0.2の深さまで、5mm角のパンチにより、該パンチの外側で前記試料を挟んで該パンチに対向するダイに向かって板厚方向にプレスし、前記長手方向に沿う断面をEBSDで結晶方位解析したとき、CI値が0.2未満の領域のうち、圧延平行方向の最大幅Wが10μm以下である。
降伏比YS/TSが0.9以上、加工硬化係数n値が0.05以下であることが好ましい。
本発明のCu−Ni−Si系銅合金は、更にMg、Mn、Sn、Zn、P、B、Zr及びCrの群から選ばれる少なくとも1種以上を総量で0.005〜1.0質量%含有することが好ましい。
本発明によれば、金型摩耗性に優れるCu−Ni−Si系銅合金条が得られる。
半抜きプレス加工を説明する図である。 半抜きプレス加工後の試料の断面のEBSD像を説明する図である。 半抜きプレス加工後の試料の断面のEBSDによるCI像を説明する図である。 金型摩耗を定量化するためのパンチの摩耗面積を説明する図である。
以下、本発明の実施形態に係るCu−Ni−Si系銅合金条について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、質量%を示すものとする。
(組成)
[Ni、Co及びSi]
銅合金条中にNi:2.0〜5.0%、Si:0.3〜1.5%含有しNi/Si比が1.3以上6.7以下である。Ni及びSiは、適当な熱処理を施すことにより金属間化合物を形成し,導電率を劣化させずに強度を向上させる。
Ni及びSiの含有量が上記範囲未満であると、強度の向上効果が得られず、上記範囲を超えると導電性が低下すると共に熱間加工性が低下する。
Ni/Si比が1.3未満の場合、及びNi/Si比が6.7を超える場合は、いずれも導電率が著しく低下する。
[他の添加元素]
合金中に、更にMg、Mn、Sn、Zn、P、B、Zr及びCrの群から選ばれる少なくとも1種以上を総量で0.005〜1.0質量%含有してもよい。
Mgは強度と耐応力緩和特性を向上させる。Mnは強度と熱間加工性を向上させる。Snは強度を向上させる。Znは半田接合部の耐熱性を向上させる。Crは、Niと同様にSiと化合物を形成するため、析出硬化により導電率を劣化させずに強度を向上させる。
なお、上記した各元素の総量が上記範囲未満であると上記した効果が得られず、上記範囲を超えると導電率の低下を招く場合がある。
[塑性変形する領域Rの圧延平行方向の幅W]
図1に示すように、圧延平行方向を長手方向Lとして5×15mmに切り出した試料2の中央部を、板厚×0.2の深さまで、5mm角のパンチ4により、パンチ4の外側でパンチ4に試料2を挟んで対向するダイ6に向かって板厚方向にプレスする。試料2は打ち抜かれずに絞り加工後のような形状になる(半抜きプレス加工)。
そして、図2に示すように、半抜きプレス加工後の試料2の長手方向Lに沿う断面をFE-SEMを用いたEBSD(電子線後方散乱回析法)で結晶方位解析する。図3はEBSDによるCI(Confidence Index)像である。
CI値とは、信頼性指数(Confidence Index)であり、EBSD装置の解析ソフトOIM Analysis(Ver.5.3)を用いて解析したときに、方位決定の確からしさを示す指数である。CI値は0〜1の値を示し、その値が低いほど信頼性が低いことを表す。CI値は、測定点ごとに測定可能であり、一定面積の範囲にわたって多数のCI値を測定することで、その分布を測定することも可能である。CI値は、せん断帯や転位、双晶などの欠陥や歪みの影響を受けて低くなる傾向にある。
そして、半抜きプレスによって塑性変形した領域は、結晶構造が崩れるため、CI値が低くなる。
図2のEBSD像では、この塑性変形領域R(図2の白囲みの内側の部位)は、菊池線が検出できていないため黒色で表示される。又、図3では、CI値が0.2未満の部位を黒色で表示している。
そして、本発明では、CI値が0.2未満となった部位を塑性変形領域Rとみなし、CI値が0.2以上の部位を非塑性変形領域とみなす。上述のように、塑性変形領域Rの圧延平行方向の最大幅Wが狭いほど、領域Rにせん断荷重が応力集中して材料が早期に破断し、金型摩耗性を向上できる。
このようなことから、最大幅Wを10μm以下に規定する。
なお、塑性変形領域Rは、図2の白囲みの内側、つまり、パンチ4とダイ6が対向する部分近傍に位置する。つまり、例えばパンチ4の中央部のように、パンチ4とダイ6の間で試料2を変形させる力が生じない部分で、仮にCI値が0.2未満となった部位が存在しても、その部位は無視する。白囲みの部分は、例えばパンチ4の外縁と、対向するダイ6のパンチ4の縁とを頂点とする矩形を長手方向Lに広げ、白囲みの内部にCI値が0.2未満となった部位Rが繋がった部位がすべて含まれるような矩形とすることができる。
本発明においては、測定結果の安定性のために、一視野当たり200μm×200μmにおけるCI値の分布を5視野測定し、それぞれの視野においてCI値が0.2以下の面積率の割合を求め、5視野の平均値を算出して測定値とする。
本発明においては、EBSD測定における測定条件として以下を採用する。
(a)SEM条件
・ビーム条件:加速電圧15kV、照射電流量5×10-8
・ワークディスタンス:25mm
・観察視野:200μm×200μm
・観察面:圧延面
・観察面の事前処理:リン酸67%+硫酸10%+水の溶液中で15V×60秒の条件で電解研磨して組織を現出
(b)EBSD条件
・測定プログラム:OIM Data Collection
・データ解析プログラム:OIM Analysis(Ver.5.3)
・ステップ幅:0.5μm
[Ni−Si粒子]
Cu−Ni−Si系銅合金に含まれる直径0.6〜0.7μmの第1のNi−Si粒子(析出物)が0.5×10〜1.7×10個/mmであると好ましい。
上述のように、第1のNi−Si粒子の個数が多いほど、塑性変形領域Rの最大幅Wが狭くなる。従って、第1のNi−Si粒子の個数が多い方が良いが、1.7×10個/mmを超える場合、ひっかき摩耗が促進される場合がある。
一方、第1のNi−Si粒子が0.5×10個/mm以下となると、塑性変形領域Rの最大幅Wが広くなり、金型摩耗性が悪化する場合がある。
第1のNi−Si粒子の粒径及び個数は、Cu−Ni−Si系銅合金の圧延平行断面を研磨し,エッチング後に、FE−SEM(電解放射型走査電子顕微鏡)を用いて1500〜5000倍程度の倍率の像をもとに測定する。粒子解析ソフト及びEDS(エネルギー分散型X線分析)を用いて上記画像中の成分を測定し、母材成分と異なる成分で構成される粒子を第1のNi−Si粒子とみなす。各粒子のそれぞれの粒径を測定し、画像処理ソフト(例えば、アメリカ国立衛生研究所が公開しているImageJ)を使用して個数を数える。ここで、析出物に外接する円の直径を各Ni−Si粒子の粒径とする。
後述する第1のNi−Si粒子の粒径及び個数の測定方法も同様である。
Cu−Ni−Si系銅合金の降伏比YS/TSが0.9以上であり、加工硬化係数(n値)が0.05以下であると好ましい。
降伏比YS/TSの値が0.9以上であると、TSとYSの差が小さいため、伸び始めるとすぐに破断する。すなわち、降伏比が高いと材料がプレス中にすぐ破断することで、金型と材料の接触時間が短くなり、耐金型磨耗性が向上する。
また、加工硬化係数(n値)は材料の均一伸びと相関のある値である。この値が小さいほど材料をプレスした際に、打ち抜きまでに必要な塑性変形領域が小さくなる。すなわち、n値が0.05以下であると、金型と材料の接触時間が短くなるため、耐金型磨耗性が向上する。
なお、加工硬化係数(n値)は次のようにして求める。
引張試験において試験片を引張り、荷重を負荷すると、弾性限度を越えて最高荷重点に達するまでの塑性変形域では試験片各部は一様に伸びる(均一伸び)。この均一伸びが発生する塑性変形域では真応力σtと真ひずみεtの間には式1
σt=Kεt n
の関係が成立し、これをn乗硬化則という。「n」を加工硬化係数とする(須藤一:材料試験法、内田老鶴圃社、(1976)、p.34)。nは0≦n≦1の値をとり、nが大きいほど加工硬化の程度が大きく、局所的な変形を受けた部分が加工硬化した際に他の部分に変形が移り、くびれが生じにくくなる。このため、n値が大きい材料は一様な伸びを示す。
降伏比とn値はそれぞれ仕上げ圧延加工度と相関があり、後述する仕上げ圧延の圧延加工度を制御することで、降伏比とn値を調整できる。
仕上げ圧延の圧延加工度が10%未満である場合、降伏比は0.9より小さくなり、n値は0.05より大きくなる。仕上げ圧延の圧延加工度が10%以上15%未満である場合は、加工硬化によりYSの値が増加することで降伏比が0.9以上となるので好ましい。一方でn値は、0.05より大きいままである。
仕上げ圧延の圧延加工度が15%以上30%以下である場合、降伏比は0.9以上となり、均一伸びが低下することでn値は0.05以下となり、最も好適な条件となる。
仕上げ圧延の圧延加工度が30%を超えて40%以下の範囲では、TSと比較してYSの強度が早期に飽和することから降伏比が0.9未満となり、n値は0.05以下となる。圧延加工度が40%を超えても同様の傾向であるが、降伏比がより小さくなることで金型摩耗性は悪化する。
[0.2%耐力]
Cu−Ni−Si系銅合金の圧延平行方向の0.2%耐力は、例えば700MPa以上である。0.2%耐力を700MPa以上とすると、強度が向上する。
なお、引張強さは、JIS−Z2241に従い引張試験して求める。引張試験の条件は、試験片幅12.7mm、室温(15〜35℃)、引張速度5mm/mm、ゲージ長さ50mmとした。
[伸び]
Cu−Ni−Si系銅合金の圧延平行方向の伸びは、例えば13%以下である。伸びの下限は特に制限されないが、例えば1%である。
又、伸びは、破断伸びであり、引張試験機により、JIS−Z2241に従い、上述の引張強さを測定するのと同時に測定した。そして、試験片が破断したときの標点間の長さL(ゲージ長さ)と、試験前の標点距離L0との差を%で求めた。
引張試験の条件は、試験片幅12.7mm、室温(15〜35℃)、引張速度5mm/min、ゲージ長さL=50mmで、銅箔の圧延方向に引張試験する。
[導電率]
Cu−Ni−Si系銅合金の導電率(%IACS)は、例えば30以上である。
<製造方法>
本発明のCu−Ni−Si系銅合金は、通常、インゴットを熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理、時効処理、仕上げ圧延、歪取焼鈍の順で行って製造することができる。溶体化処理前の冷間圧延や再結晶焼鈍は必須ではなく、必要に応じて実施してもよい。
<熱間圧延>
ここで、熱間圧延後で冷間圧延前の材料中の直径1.0μm以上3.5μm以下の第2のNi−Si粒子が1.0×10〜3.5×10個/mmの範囲内となるよう、熱間圧延を設定するとよい。これは、溶体化および時効処理の条件を調整してμmレベルのNi−Si粒子を制御しようとすると、過時効等を行わなければならず、強度等の特性を損ねてしまうからである。
直径1.0μm以上3.5μm以下の第2のNi−Si粒子の個数を制御することは、最終製品の第1のNi−Si粒子の個数を制御することに対応する。
第2のNi−Si粒子が1.0×10個/mm未満であると、第1のNi−Si粒子が0.5×10個/mm未満となり、塑性変形領域Rの最大幅Wが広くなる場合がある。第2のNi−Si粒子が3.5×10個/mmを超えると、第1のNi−Si粒子が1.7×10個/mm以上となり、ひっかき摩耗が促進される。
第2のNi−Si粒子の直径及び個数を規制するための熱間圧延の条件としては、例えば熱間圧延温度800〜1000℃、保持時間1〜5hの範囲で調整することができる。
大気溶解炉中にて電気銅を溶解し、必要に応じて表1に示す添加元素を所定量投入し、溶湯を攪拌した。その後、鋳込み温度1200℃にて鋳型に出湯し、表1に示す組成の銅合金インゴットを得た。インゴットを熱間圧延し、板厚を10mmとした。その後、面削、冷間圧延、溶体化処理、時効処理、低温熱処理、仕上げ圧延の順に行い、板厚0.05〜0.4mmの試料を得た。仕上げ冷間圧延の後に200℃〜500℃の温度範囲で1秒〜1000秒間歪取焼鈍を行った。
なお、熱間圧延は1000℃で3時間行い、溶体化処理を700〜900℃で行った。時効処理は400℃〜550℃で1〜15時間の範囲で、仕上げ圧延後の引張強さが最大となる温度及び時間で行い、仕上げ圧延は加工率10〜40%の範囲で実施した。
<評価>
得られた試料について以下の項目を評価した。
[導電率]
歪取焼鈍後の圧延平行方向の試料について、JISH0505に準拠し、ダブルブリッジ装置を用いた四端子法により求めた体積抵抗率から導電率(%IACS)を算出した。
[引張強さ]
歪取焼鈍後の試料につき、引張方向が圧延方向と平行になるように、プレス機を用いてJIS13B号試験片を作製した。JIS−Z2241に従ってこの試験片の引張試験を行ない、引張強さTSを測定した。引張試験の条件は、試験片幅12.7mm、室温(15〜35℃)、引張速度5mm/min、ゲージ長さL=50mmで、銅箔の圧延方向に引張試験した。
[伸び]
上記引張試験により、破断伸びを求めた。試験片が破断したときの標点間の長さLと、試験前の標点距離L0との差を%で求めて伸びとした。
[ひっかき摩耗評価]
パンチキズ数:5mm角のパンチを使用し、各試料の圧延平行方向を長手方向として5×15mmに切り出した試料10枚に対し、それぞれ1ショット(計10ショット)打ち抜いた後のパンチ側面についたキズの数を目視で計数した。パンチキズ数が20個以下であれば、金型のひっかき摩耗が少なく、金型摩耗性に優れる。
[塑性変形領域Rの最大幅]
上述のようにして測定した。
[金型摩耗性の評価]
金型磨耗性は、材料の機械的特性にも影響を受ける。これらの影響を総合的に判断するため、タレットパンチプレス機を使用し、200×300mm切り出した試料5枚に対して、各試料を20万ショット打ち抜いた後のパンチ刃の摩耗量を測定することで金型摩耗性を評価した。パンチ刃の摩耗量は、プレス前を基準として測定した。
円筒形のパンチを使用し、クリアランスは板厚の5%、プレス速度は290shot/minとし、パンチの押し込み深さは板厚の50%に設定した。また、パンチとダイはそれぞれ硬度の異なるものを使用し、パンチの硬度がダイの硬度の60〜80%の値となるよう設定した。
パンチ刃の摩耗量は、レーザー顕微鏡を使用し、図4に示すように、プレス前のパンチ刃の断面プロファイルP1と、プレス後のパンチ刃の断面プロファイルP2の間で高低差が生じた面積S1を摩耗した面積とみなし、その面積を算出した。図4の符号Dはプレス方向を示す。以下の基準で金型摩耗性を評価した。評価が○であれば、金型摩耗性が優れており、◎であればさらに優れていることを示す。
◎:摩耗面積が500μm以下
○:摩耗面積が500μmを超え800μm未満
×:摩耗面積が800μm以上
得られた結果を表1、表2に示す。
Figure 0006845884
Figure 0006845884
表1、表2から明らかなように、最大幅Wが10μm以下である各実施例の場合、金型摩耗性に優れていた。また、仕上げ圧延の加工度が15〜30%のものはさらに金型摩耗性に優れ、降伏比YS/TSが0.9以上、加工硬化係数n値が0.05以下となった。これは、金型と材料の接触時間が減少したためと考えられる。
なお、仕上げ圧延の加工度が10%以上15%未満の実施例5、7、9の場合、降伏比が0.9以上となったものの、n値は、0.05より大きかった。又、仕上げ圧延の加工度が30%を超えて40%以下の実施例2、3、10、11の場合、n値が0.05以下となったものの、降伏比が0.9より小さかった。但し、これらの実施例も実用上、問題はない。
一方、最大幅Wが10μmを超えた比較例1〜3の場合、金型摩耗性が劣った。

Claims (3)

  1. 質量%で、Ni:2.0〜5.0%、Si:0.3〜1.5%含有し、Ni/Si比が1.3以上6.7以下であり、残部がCu及び不可避不純物からなり、0.2%耐力YSが700MPa以上のCu−Ni−Si系銅合金条であって、
    圧延平行方向を長手方向として5×15mmに切り出した試料の中央部を、板厚×0.2の深さまで、5mm角のパンチにより、該パンチの外側で前記試料を挟んで該パンチに対向するダイに向かって板厚方向にプレスし、
    前記長手方向に沿う断面をEBSDで結晶方位解析したとき、
    CI値が0.2未満の領域のうち、圧延平行方向の最大幅Wが10μm以下であるCu−Ni−Si系銅合金条。
  2. 降伏比YS/TSが0.9以上、加工硬化係数n値が0.05以下である、請求項1に記載のCu−Ni−Si系銅合金条。
  3. 更にMg、Mn、Sn、Zn及びCrの群から選ばれる少なくとも1種以上を総量で0.005〜1.0質量%含有する請求項1に記載のCu−Ni−Si系銅合金条。
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