JP6845387B2 - 高圧噴射処理装置のノズル、高圧噴射処理装置の評価方法、高圧噴射処理装置および高圧噴射処理方法 - Google Patents
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Description
高圧噴射処理装置は、原料の粒子が混合された原料混合液をノズルから高圧噴射することで粒子自体を微細化する装置であり、それら粒子を分散・微細化するために、広く実用化されている。
特許文献1には、液中噴射によるウォータジェットのキャビテーション発生状態を検出する方法に関する実施例として、テスト用タンク内でのワークに対する異なるノズルでのウォータジェット噴射による壊食試験を行い、ジェット発生音をマイクロホンで検出し、その波形データをFFT処理してノズルごとのキャビテーション評価を行ったこと、得られた信号について、周波数0〜12.5kHzの範囲内の波形データをFFT処理した、との記述がある(その段落0026−0029)。
特許文献2には、高圧粉砕機を用いて材料の微粒子を作る方法に関し、粉砕機の各段に温度センサ、圧力センサ、音響センサを配置して、粉砕過程でのデータを収集して製品管理に利用する、との記述がある(その抄録文を参照)。
非特許文献1は、超音波分光法に関する論文であり、TiO2懸濁液の粒径とそこを伝搬する超音波減衰に関する事例が報告されている。
AEセンサは、アコースティック エミッション(Acoustic Emission)信号を検出するセンサである。アコースティック エミッションとは、一般に、固体が変形あるいは破壊する時に発生する音を弾性波として放出する現象のことであり、この弾性波はAE波とも呼ばれる超音波である。AEセンサによって、この超音波信号を検出する。
キャビテーションは、液体の流れの乱れによって局部的に低圧となる部分が生じ、その低圧部分が液体の蒸気圧を下回った時に気泡として発生し、その気泡が収縮し崩壊するときに、大きな衝撃力が生まれる現象である。当然雰囲気が高圧の方が、崩壊エネルギーは大きい。高圧領域で発生する破壊力の大きいキャビテーション利用しているのが、高圧噴射による微細化処理である。そのためこの装置の効率を高めるには、ノズルで高速な流れを実現し、なるべく高い圧力でキャビテーションを起こすことである。
まず本願発明者は、実際にAEセンサを高圧噴射処理装置に取り付けて、ノズルで発生する高周波のキャビテーションによる信号の検出を試みた。その結果、検出された前記高周波の信号と処理液の粒径や粘度との関係を把握することができた。そして、高圧噴射処理装置で処理中の原料混合液を、その場で評価する方法を見出し、これを特許出願した(特願2014−201744)。この中で、計測されるAE信号は、懸濁液中の流れによるものと、その中の粒子による2種類あることを明らかにしてきた。この流れによって発生するAE信号は、高速な流れとノズル側面などとの速度差の大きい場所で、キャビテーションが起き、それを基点としたジェット流が形成される領域で発生している。その境界では大きなせん断力が働く領域が形成される。この部分がノズルの微細化性能に強く関連する。つまり、流れに関するAE信号を大きくすることで、装置を含めたノズルの微細化特性が評価できることを示している。このことは、この値を大きくすることで装置の微粒化特性が上昇することと、また、懸濁液が粒子を含んだ液でなく、溶液だけの評価でノズルの定量的な評価が可能になることを意味している。なお、本発明ではノズル内の流れは速度の順に、層流、乱流、境界に気層を含むジェット流に変化するとする。
複数回の処理が必要になるため、装置には更なる微細化(破壊力の強化)と、更なる効率化(これまでより少ない回数で処理が完了できること)が求められている。そのため、様々な種類の装置や方法が提案されてきた。一つは、高速噴射後の低圧チャンバーでの改善、もう一つは、高圧ホモジナイザーやナノマイザーなど高圧部分のノズル部分での改良を行ったものである。
低圧チャンバーでの流体の衝突現象が微細化に有効であるとしたものとして、衝突型チャンバー(衝突タイプとしては特許文献3)、対向チャンバー(対向タイプとしては特許文献3と4)など様々なチャンバーが開発されてきた。
一方、ノズル部分の改良として、ゴーリン型の高圧ホモジナイザー(噴射圧34〜55MPa、ノズル計0.4〜6ミリメートル、流速208m/s)やナノマイザー(噴射圧:最大200MPa、スリット幅0.16〜0.2ミリメートル、最大流速290m/sec)などノズル部分の改良を考案したものもあったが、それら装置でのノズル内の平均速度は300m/s以下と遅いものであった。さらに、従来の特許文献3では、同径のノズルを多段にしているが、微細化は主にビーズを使用するものであり、ノズル構成は、あまり効果の得られない単なる多段構成になっている。
本願発明者らの研究・開発によれば、高圧噴射処理(高圧ジェットミル処理)の微細化に関わる大きな力は、衝突タイプや対向タイプの低圧チャンバー内の現象ではなく、主にノズル周辺で、高圧に加圧されたシリンダーによる圧力のエネルギーが運動エネルギーに換わり、その高速な流れにより発生するキャビテーションを基点としたジェット流の生成に伴う境界部分でのせん断力と、そのジェット流内部でのキャビテーションで起きていることをつきとめた。そのため、高圧シリンダーで加圧した圧力エネルギーを、速度を落とすことなく運動エネルギーに変換し、そこで発生するジェット流の高圧領域を増大させることができれば、高圧噴射処理における微細化限界や処理回数といった微細化特性を向上させることができる。つまり、効果的な微細化処理用ノズルには、流体抵抗を小さくし、かつ、その高圧領域が増大できる構成が必要になってくる。
それは、単にノズルの孔径を小さくしたというようなものでも、単に多段にしたものでもなく(特許文献4の請求項6と7を参照)、キャビテーション発生のメカニズムの客観的なデータに基づいて開発されたものである。
しかしながら、上記スリットのような形状では、対向する平面のダイヤモンドの作製と、それらダイヤモンドなど硬い材料を0.2mm以下に精度良く加工する技術が必要になり、ノズル径を0.1mmと小さくすることは難しく高価なものになっている。そのため、実効的スリット幅は大きくなり、微細化処理に必要な速い流速を得ることが難しく、効率的な微細化処理を行うことはできなかった。また、ダイヤモンドを貼り合わせた構造のためにノズルの分解が難しく、ノズル詰まりが起きた場合のメンテナンスに関しても問題があった。
しかし前記乳化・分散システムは、気泡を発生させないために多段の吸収セルを使用したものであり、本願の高速流と高圧キャビテーション、高圧領域の拡大を利用した微細化処理に応用したものではなく、使用されるセル径のサイズは、0.5mm−1.0mmと大きすぎるため、300m/sの高速な流れを得ることは難しく、また、十分に高圧領域を拡大させた効果を得ることができないと考えられる。
ここで「キャビテーション」とは、高速で流れる液体中において、速度の増大に伴って圧力が低下する箇所が発生し、その箇所において液体が気体へ相変化し、非常に短い時間に蒸気のポケットが生まれ、このポケットが短時間でつぶれて消滅する現象と定義する。その短時間でつぶれて消滅するエネルギー(キャビテーションの崩壊に基づく衝撃)を使用して、原料混合液の粒子の微細化や解繊を行うことができる。
キャビテーションは圧力に比例した衝撃エネルギーをもつ現象である。そして「高圧キャビテーション」とは、高圧の雰囲気条件(大気圧は約0.1MPaであり、大気圧の10倍以上である数MPaを高圧とする)で発生するキャビテーションのことで、このキャビテーションは収縮時に圧力に比例した衝撃エネルギーをもつ。シリンダーで高圧に加圧されたノズルでは、この圧力により大気圧に近い低圧のキャビテーションよりはるかに大きな衝撃エネルギーが得られる。原料混合液の微細化は、主にこの高圧キャビレーションを使用して行っている。この現象は、ノズル内部とその周辺で発生している。実施例から、このような高圧での流れの状態は、層流や乱流だけでなく、非常に高速なジェット流を含んだ状態である。さらに、ノズル径が大きい場合にはノズル内部でジェット流と層流の境界がある状態に、ノズルが小さい場合にはジェット流とノズル側面がその境界になる状態の2種類があることが分かった。これらジェット流の境界は、キャビテーションによる気泡により、気層部分を含む乱流より不連続な状態になっている。この現象は実施例で示すように、実験的にある条件でノズル厚みを長くしても流速は変わらなかったこと、またセルロースなどファイバー形態の材料解繊では処理がすすむにしたがって、それらを含む懸濁液の粘度が100倍以上増加するにもかかわらず、懸濁液の流速が変わらなかったことから、この境界部分は、液をあまり含まない流体抵抗が非常に少ない状態である。この境界部分では強いせん断力が働き、その速度に比例した高いエネルギーのAE信号も発生する。また、その領域の広さはAE信号の大きさにも関連してくる。そのためこの周辺の状態は、強い微細化に重要な領域である。
一般的に、キャビテーションが起こる条件は、次式のキャビテーション数σの大きさで定義される。この式では、σが1以下でキャビテーションが発生し、0.6以下で流れのほとんど気泡状態になるスーパーキャビテーションになるとしている。この式で重要な点は、圧力が高くなるとキャビテーションは発生し難くなることである。そのため、高速な流れが必要になることとである。つまり、ノズル付近で、溶液は圧力エネルギーが運動エネルギーに変化することで加速され、溶液の圧力減少とともにキャビテーション数が1以下になったときに気泡が発生し、それを起点として高速なジェット流が発生することになる。
一般に、キャビテーション数σは(数2)で示すことができる。
ノズル周辺では、エネルギー保存則(ベルヌーイの定理)より、噴射圧のエネルギーは運動エネルギーに変換され、流れの速度に応じて減圧する。そのとき、ある程度の圧力が下がったところで、キャビテーションが起こる。すなわち、σが1の場所がキャビテーション発生点で、それ以降下流側でσが1以下になり、キャビテーションが多く発生することになる。
次に、その発生条件について考察する。
ノズル内の溶液の圧力は、距離xが進むに従って初期の噴射圧PNIから、最終的に大気圧のPNOに変化する。圧力の速度変換分をxの関数としてPNv(x)とし、噴射圧は百MPaと非常に大きいので溶液の蒸気圧Pvを無視すると、(数3)と(数4)が導ける。(数3)では、σが1以下の条件を付加してある。
このことは、高圧キャビテーションや強いせん断力を利用した微粒化処理を行うためには、ジェット流発生以降の高圧領域をなるべく拡大し、スーパーキャビテーションの状態を作らないことが重要になることを示している。
次に、ノズル付近の詳細な流れを考える。前記モデルからノズル入り口付近の加速領域で噴射圧が2分の1の場所で、高速な流れによるキャビテーションが発生し、それらの気層を境界としたジェット流が形成される。ここでは、流体抵抗が小さい状態である。ノズル付近で、層流とジェット流の2層構造による流れが発生していることになる。このジェット流の径がノズル径より大きい場合には、その境界はノズル側壁になり、この境界領域の液中の粒子には強いせん断力が働き、強い微細化作用が発生する。一方、ジェット流の径がノズル径より小さい場合には、ノズル側面との界面には、溶液の層流を挟むことになるので、ジェット流との界面には前述の場合より大きなせん断力は働かないことになる。つまり、前述の状態より微細化の力は弱くなり、その径を境界として、微粒化特性が大きく変化することになる。
ノズル出口では、圧力が下がりキャビテーション数が減少することから、気泡が多くなるスーパーキャビテーションの状態に変化する。この領域では微細化作用よりも、攪拌作用が強くなる。このことは、ノズルそのものを厚くすることや、ジェット流を発生させるノズルの下流側で、キャビテーション数が0.6から1の領域を長くすることで、微細化効率を増加させることが可能になることを示している。本発明の高圧噴射処理装置のノズルにおいては、ノズルチップを厚くすることと、ノズル構成を工夫することでこの領域の拡大を実現し、微粒化特性を向上させた。
高圧領域を維持拡大するには、小さい通孔のノズルチップだけでなく、ノズルを構成するノズルホルダーの径などの構成も重要になってくる。圧力を下げないためには、そのノズルホルダーの径はなるべく小さい方が良いが、現実的には0.8mm程度になる。ノズル構成に関しては、ノズルを多段にすることで、その構成を自由度高く設計することができる。具体的にはノズルチップ径とノズルホルダー径それらの厚みの組合せを変えることで、ジェット流の高圧領域を広くでき、微粒化特性を向上させることができる。このとき、溶液の速度は非常に重要なパラメータなので、高い速度が維持できるようなノズル構造が非常に大切になる。
その中で処理回数を増やすと、懸濁液の粘度が大きく変化したが、その処理時間、つまり、ノズル内の平均速度はほとんど変化しなかった。また、ノズルの厚みを変えても、処理時間が大きく変化することはなかった。これらの実験事実は、ノズル内は、通常の層流や乱流の状態ではなく、気層を境界とした流体抵抗の小さなジェット流の状態になっているのではないかと考えられた。
これらの観点から、ノズル内の現象と改善方法を考察すると以下のようになる。
キャビテーションは、噴射の圧力エネルギーが運動エネルギーに変化する過程で、その速度変化に伴う圧力の低下による場所で発生する。そのためノズル内はノズル内の中央に発生する流れの速いジェット流領域とジェット流領域よりも流れの遅い層流部やノズルの側面周辺領域に分けられ、それらの速度差が大きい境界部分で最も強い微細化効果が発生している。
この有効な微細化の領域を拡大させるためには、(A)キャビテーションが発生しているノズルの通孔の厚みを大きくすること、(B)ノズル内の流速を速くすること(例えば、ノズルの通孔の径を小さくすることや、圧力を高めるなど)が考えられる。特に(A)は微細化処理の領域を増大させることにつながり、処理回数の減少につながる。(B)のノズル径の大きさは、ジェット流と層流の比率を変えることにつながり、後述のモード切り替えに重要な因子となる。しかし、エネルギー保存則(ベルヌーイの定理)から速度の理論的な最大値が決まることから(B)の改善には限界があるので、なるべく流体抵抗の少ないノズルが適していることになる。
上記(A)、(B)を考慮した高圧噴射処理装置及びそのノズルを使用することで、従来の衝突型や対向型の低圧チャンバーの構成でも微細化の破壊力が増し、ノズルの厚みに比例した効果的な微細化処理が実現でき、処理回数の大幅な減少と更に細かな粒子化処理ができる。
まず、溶液が通るノズル部分を厚くすることが重要である。この部分のノズル材質は、高速な流体や硬いセラミックスを含む懸濁液を高速で流すために、硬い材料が必要になる。そのため、長い寿命を得るためにダイヤモンドで作製される。しかし、硬い材料に径が0.1mm程度のノズル穴を数十mm開けることは非常に困難で、現実には数mmが限界
である。さらに、大きなせん断力を得るためには、流れを高速にする必要があり、ノズルの流体抵抗は小さくしなければならない。したがって、流れの連続性から発生したジェット流の抵抗にならないようなノズルチップ径とノズルホルダー径とそれらノズル構成の最適化が必要になる。例えば、高圧部分の複数のノズル径の中心を同一線状に配置するなどである。従来の高圧部分での衝突や対向では、衝突部が抵抗になるため高速な流れは見込めないと考えられる。
また、ノズルでの現象を限定した周波数のAE信号で実験解明した結果、数100MPaと高い圧力で噴射される流体の流れは、層流やさらに乱流ではなく、ノズル中央部では境界に気泡を含むジェット流に、ノズル周辺では層流になっていることが示された。このAE信号は、高圧キャビテーションによるもので、主にジェット流の境界で発生していると考えられた。
また、そのジェット流の径の大きさは圧力が100から200MPaの範囲で0.17mmより大きくなることはなかった。そのため、高速なジェット流による大きなせん断力を活かすためには、ノズル径をそれ以下にしなければ効果的な微細化ができないことが分かった。一方、高圧領域を拡大するために、ノズルの厚みを必要以上に厚くすると、今度はノズル内の平均流速が減少し、高い微細化効果を得ることができなかった。つまり、ノズルには最適な形状が存在することが実験的に分かった。
両者の条件を満たすノズルとして、単独のノズルではノズル径Dnとその厚みのWnの比率(Wn/Dn)が非常に重要であった。ここで「ノズル径Dn」とは、ノズルチップのノズルの通孔(貫通穴)の直径のことであり、「ノズルの厚みWn」とは、ノズルチップの通孔の厚み(長さ)のことである(図3)。
一方、単独のノズルでは、ダイヤモンドチップなどの加工に限界があるので、Wn/Dnの大きなノズルを実現するためには、ノズルチップを積層することや、ノズルを分割することで、実効的なノズル厚みを伸ばすことが重要になる。この方法として単独のノズルを多段にした構成が考えられるが、前記ノズル内で流れの速度を落とさない構成が必要になる。単純に、同じ径のノズルを複数並べただけでは平均速度が減少し、AE信号も減少し、微粒化特性も劣化した。このとき、実験で得られたジェット流の最大径の大きさがその境界となっていた。この径の大きさを境界に、ジェット流との境界の大きなせん断力を積極的に応用した微細化ノズルと、層流を使用した解繊ノズルの2種類に分類できた。例えば、高圧側にジェット流の径の0.16mmより小さくし、それより後の低圧側にそのジェット流径よりも大きな径のノズルを使用することで、ジェット流に対するノズルの抵抗を増加することなく、つまり速度減少は起こらなかった。また、AE信号も大きくなったことから、高圧領域が拡大した状態をつくることができた。その結果、微細化の効果が高まった。後段のノズルでは、ジェット流と層流部分ができるため溶液の攪拌作用も高く、さらに、微細化の効果が高まった。
一方、逆の構成にすることで、高圧での高速な層流を利用した解繊に適した構成とすることができた。
また、本発明の高圧噴射処理装置のノズルは、原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化する高圧噴射処理装置のノズルにおいて、ダイヤモンドで作製されるノズルチップの厚みを分割するために前記ノズルは通孔をもつノズルチップとノズルホルダーで構成され、前記ノズルチップの通孔の径Dnと厚みWnの比(Wn/Dn)を10以上45未満とするものであり、前記ノズルチップの通孔の直径を下流側に配置されるノズルチップの通孔の直径がその上流側に配置されるノズルチップの通孔の直径よりも小さく形成した複数で構成され、前記ノズルチップのうち、最も下流側に位置する前記ノズルチップの通孔の直径Dn m を0.16mm以下とし、その他のノズルチップの直径Dn 1 ,Dn 2 ,・・・,Dn m−1 は0.16mm以上0.8mm以下とすることを特徴とする。
ここで「上流側」とは、高圧噴射処理装置内での原料混合液の流れに着目して上流位置にあるものを「上流側」という。
ここで「下流側」とは、高圧噴射処理装置内での原料混合液の流れに着目して下流位置にあるものを「下流側」という。
本発明者の実験によれば、微細化処理において一番単純なノズルの構造は、ノズルチップの通孔の厚みを大きくすることである。よって、前記ノズルチップの通孔の直径Dnに対する前記ノズルチップの前記通孔の厚みWnの比(Wn/Dn)を10以上45未満とし、ノズル内の平均流速が300m/s以上にすることで、効率的な微細化処理を可能とする。
当然高圧でキャビテーションを起こすためには速度を速くすることが重要であるため、シリンダーの能力にもよるがノズル径を小さくすることも有効である。一方、実際の処理の関係で、ノズル径を小さくするとその部分で詰まり易くなり、処理作業の効率性からノズル径は最小でも0.1mm以上必要あった方が望ましかった。実施例から、0.2mmなどの大きなノズル径とした場合には、ノズル内部には層流領域とジェット流領域の2種類が存在し、その平均速度は減少した。実用的な200MPaの噴射圧では、ジェット流の径には最大値があり、その大きさ以上にノズル径を大きくしても、層流領域が増加するだけで、平均速度は減少する傾向があった。ノズル径が0.2mmの場合、発生したジェット流径は0.16〜0.17mmと計算されたので、微細化にはそれ以下のノズル径が有効であることが導かれた。実施例でも、径が0.2mmのノズルは、高い微細化効果を示さなかった。
ノズルチップをダイヤモンドチップ等の硬い材料で作製する場合、径が0.16mm以下でその厚みを大きくすることは、非常に困難で現実的ではない。しかし、本発明の高圧噴射処理装置用ノズルのように、通孔をもつ平坦なノズルチップとそのホルダーという単純なノズル構成、あるいはノズルチップを積層した単独ノズルと、それらの多段構成とすると、その製造が容易になる。
本発明によれば、(E)ノズルチップを複数組み合わせることや、(F)通孔の直径が小さいノズルを一番上流側に配置し、その他のノズルは通孔の直径をある程度大きくする、(G)通孔の直径が小さいノズルを一番下流側に配置しその他のノズルは通孔の直径をある程度大きくする。上記(E)、(F)(G)を実現することによって、効率的な微細化処理が可能となり、実質的に長い通孔をもつノズルチップを使用した場合と同様の効果を得ることが可能になる。また、通孔の直径が大きいノズルを上流側に配置しその他のノズルは通孔の直径を小さくすることで、上流の高圧側でキャビテーションを起き難くし、速度勾配の大きな層流状態を形成し、減圧された下流側のノズルで発生する低いエネルギーのキャビテーションが利用できる。この構成ではファイバーを切ることなく解繊することが可能となる。
このように、径の異なるノズルチップを種々組み合わせることによって、ノズル付近の流れをコントロールすることが可能となり、微細化処理用に適したノズルや、解繊処理用に適したノズル等、用途によって使い分けることが可能となる。
本発明によれば、この構成では、ノズルチップの材料となる単結晶ダイヤモンドや、多結晶ダイヤモンド等の強硬質な材料に小さな孔を長く開ける必要がないため、製造が簡単となる。ダイヤモンドを貼り合わせるなど複雑な構造ではないため、安価に作製できるとともに、構造が単純なだけに流れに対する抵抗が少なく、流速を高速にすることもできる。効率的な微細化のためには、流れを高速にすることが非常に重要で、直線上に積層や多段とした配置は非常に有効である。
本発明によれば、直径が小さくかつ厚みが大きい通孔をもつノズルチップを形成できない場合には、(E)ノズルチップを複数組み合わせること、(F)通孔の直径が小さいノズルを一番上流側に配置し、その他のノズルは通孔の直径をある程度大きくする、上記(E)、(F)を実現することによって、高圧キャビテーション領域を長くすることができ、効率的な微細化処理が可能となり、厚い通孔をもつノズルチップを使用した場合と同様の効果を得ることが可能となる。
本発明によれば、上流側に径の大きなノズルチップを配置することで、層流領域の多い状態を形成でき、下流側のノズルで減圧された低エネルギーのキャビテーションやせん断力を利用した解繊処理が可能となる。
このように、径の異なるノズルチップを種々組み合わせることによって、ノズル内のエネルギーをコントロールすることが可能となり、微細化処理用に適したノズルや、解繊処理用に適したノズル等、用途によって使い分けることが可能となる。
本発明によれば、通孔の直径が小さいノズルホルダーを使用した場合の方が、微細化効果が大きくなることを発見した。それは、通孔の直径が小さいノズルホルダー(0.8mm)を使用した場合、原料混合液10がノズルチップ領域からノズルホルダー領域へ移動する際の圧力低下が少ないため、そのホルダー内でも高圧領域が維持でき、高圧領域の拡大によって、微細化処理部分が増加したためである。
反対に通孔の直径が大きいノズルホルダー(10mm−30mm)を使用した場合は、原料混合液10がノズルチップ領域から、ノズルホルダー領域へ移動する際に急激な圧力変化が生じ、流れはジェット流ではなく、すぐに気泡を多く含むスーパーキャビテーション状態に移り、せん断力が減少したためと考えられる。
本発明によれば、キャビテーション等の状態はAE信号で評価できるため、前記高圧噴射処理装置にAEセンサを取り付けて、キャビテーションによるAE信号を検出し、ノズルや高圧シリンダー等の高圧噴射処理装置の評価を簡単に行うことが可能となる。
また本発明の高圧噴射処理装置は、原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化または解繊する請求項1から6のいずれか一項記載のノズルを備えた高圧噴射処理装置において、前記原料混合液を加圧する高圧ポンプと、前記高圧ポンプを駆動及び制御することで前記原料混合液を100MPa以上に加圧する駆動制御部と、高圧シリンダーを備え、100MPa以上に加圧された前記原料混合液を前記高圧シリンダーと連結された前記ノズルに噴射させることで、微細化または解繊することを特徴とする。
そして本発明の高圧噴射処理方法は、原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化または解繊する請求項1から6のいずれか一項記載のノズルを使用した高圧噴射処理方法において、前記原料混合液を加圧する高圧ポンプと、前記高圧ポンプを駆動及び制御することで前記原料混合液を100MPa以上に加圧する駆動制御部と、高圧シリンダーを備え、前記駆動制御部および前記高圧ポンプは原料混合液を100MPa以上に加圧し、前記高圧シリンダーと連結された前記ノズルに噴射することで、前記原料混合液を微細化または解繊することを特徴とする。
本発明者の実験によれば、前記ノズルチップの通孔の直径Dnに対する前記ノズルチップの前記通孔の厚みWnの比(Wn/Dn)を10以上45未満とし、ノズル内の平均流速が300m/s以上にすることで、効率的な微細化処理を可能とすることを発見した。ノズル内の平均流速を300m/s以上にするためには、高圧ポンプにおいて原料混合液を100MPa以上に加圧し、ノズルチップの通孔の直径Dnに対するノズルチップの通孔の厚みWnの比(Wn/Dn)を10以上45未満としたノズルを使用することで実現できた。よって、前記原料混合液を100MPa以上に加圧する高圧ポンプを使用し、その平均速度を300m/s以上にすることで、効率的な微細化処理を可能とする。
水などの溶液のみの処理で、このAE信号を計測することで、高圧キャビテーションやせん断力等の状態が評価できるため、高圧噴射処理装置にAEセンサを取り付けて信号を検出し、その大きさを比較することで、高圧シリンダーなどの装置の高圧発生部の性能を含めた前記ノズルの微細化性能の定量的評価を簡単に行うことができる。
本発明によれば、上流側に径の大きなノズルチップを配置することで、高圧でキャビテーションを起きにくくすることで、速度勾配の大きな層流状態をつくり、下流側のノズルで発生している低いエネルギーのキャビテーションやせん断力を利用して、ファイバーを切断することなく解繊することが可能となる。
このように、径の異なるノズルチップを種々組み合わせることによって、ノズル付近の流れをコントロールすることが可能となり、微細化処理用に適したノズルや、解繊処理用
に適したノズル等、用途によって使い分けることが可能となった。
本願発明者らは、高圧噴射処理装置にAEセンサを取り付けて、高圧噴射の際にノズルから生じる周波数が0.2MHz以上のAE信号を検出し、ノズルの孔径や厚みの相違によるAE信号の違いを検討した。単独ノズルを使用した場合、溶液として水のみを噴射させた場合のAE信号強度と、各種材料を2〜20%の濃度の懸濁液にした場合の微細化実験を行い。それらの関連性を調べた。
前述したように、高圧噴射処理における微細化現象は、主に高圧部分で発生するキャビテーションやせん断力にあることが分かった。高圧噴射処理装置内において発生するキャビテーションは、(C)低圧側で発生している低エネルギーのキャビテーション、(D)ノズル内で発生している高エネルギーのキャビテーションの(C)、(D)に分類される。原料混合液の粒子の微細化においては、本質的な強い作用は上述の(D)のキャビテーションの崩壊に基づく衝撃であるから、(D)のキャビテーションによるAE信号、すなわち高周波信号(0.2MHz以上)を、AEセンサを使用して計測することで、粒子の微細化の度合いや流れによる粉砕力などを評価することができる。
図1は、本発明の高圧噴射処理装置の高圧シリンダー500、低圧チャンバー40およびノズル400周辺の概略構成を示すブロック図である。
本発明において、高圧噴射処理装置とは、高圧ポンプを駆動及び制御することで原料混合液を100MPa以上に加圧するための駆動制御部と、原料混合液10を100MPa以上に加圧する高圧ポンプと、原料混合液10を投入する原料タンクと高圧シリンダーが備わっている装置である。投入され100MPa以上に加圧された原料混合液(及び10内の粒子1a)はノズル400周辺で加速され、ノズル付近を通過するときに、高速な流れになりキャビテーションが発生する。そのとき、流れは、層流、乱流、さらに、初期噴射圧が半分の場所でキャビテーションが発生し、ジェット流が生成される。ジェット流内部では、高圧キャビテーションにより粒子1aは粉砕され粒子1cになる。その後、低圧チャンバー40にて、気泡の多いスーパーキャビテーション状態になり、撹拌され分散された粒子1cを有する懸濁液20が生成される。ここで、噴射の圧力エネルギーは運動エネルギーに変換され、最終的に熱になるので、懸濁液を冷却する熱交換器などが挿入される。この高圧噴射処理装置としては既知の装置が適用できる。符号600で示す矢印はAE信号の主な伝搬経路を示している。
次に、前記原料タンクに前記原料混合液10を投入し、前記高圧ポンプにて前記原料混合液10を100MPa以上に加圧して、前記ノズル400から前記原料混合液10を噴射させることで、粒子1aはさらに微細化され微粒子1bになり、懸濁液20とし、出口402から懸濁液20が排出される。この処理を図25(c)の1cになるまで、あるいは、その微細化の限界まで繰り返すことになる。これを噴射回数NPとする。処理効果が高いとは、同じ径の微粒子を得るためのNPが小さいことを言っている。
前記チャンバー40には、シングルノズルチャンバー、斜向衝突チャンバー、ボール衝突チャンバー等の種類がある。
また、高圧噴射処理装置のモニタリング機器1を前記高圧噴射処理装置に取り付けて、ノズルや高圧シリンダー等の装置の性能評価を行うことが可能である。その場合、前記高
圧噴射処理装置に取り付けるAEセンサ9と当該AEセンサ9から検出されたAE信号を処理して、装置の性能評価を判定する信号処理判定手段8を備える。
ノズルN1は単独のノズルであり、1つのノズルチップNnと1つのノズルホルダーNhから構成されたノズル(図2(a))と、複数積層されたノズルチップNnと1つのノズルホルダーNhで構成されたノズル(図2(d))がある。
ノズルN2,N3(図2(b),(c))は、複数(多段)のノズルチップNnm(m=1,2,・・・,M)と複数(多段)のノズルホルダーNhm(m=1,2,・・・,M)を組み合わせてノズルN2,N3を形成したものである。
前記ノズルN2は、一番上流側に位置するノズルチップNn1の通孔の直径Dn1を一番小さくし、その他のノズルチップNn2,Nn3,・・・,NnMの通孔の直径Dn2,Dn3,・・・,DnMは、前記ノズルチップNn1の通孔の直径Dn1よりも大きい値とすることで、効率的な微細化処理が可能なノズルとしたものである。
前記ノズルN3は、一番下流側に位置するノズルチップNnMの通孔の直径DnMを小さくし、その他のノズルチップNn1,Nn2,・・・,NnM−1の通孔の直径Dn1,Dn2,・・・,DnM−1は直径DnMよりも大きな値とすることで、解繊処理に最適なノズルとしたものである。
高圧噴射装置として、スギノマシン社のスターバーストミニHJP−25001を使用し、低圧キャンバーはすべてボール衝突チャンバーを使用した。
ノズル
図3は、本発明の第1の実施形態である単独のノズルN1を示す概略図であり、(a)はノズルN1を示す断面図で、(b)は、ノズルチップの通孔の直径Dnに対する厚みWnの比(Wn/Dn)を10とする例である。
前記ノズルN1は、厚みがWnで通孔の直径がDnのノズルチップNnと、通孔の厚みがWhで通孔の直径がDhのノズルホルダーNhから構成された単独のノズルである。
前記ノズルチップNnは上流側は前記原料タンク103と、下流側はノズルホルダーNhと接続され、前記ノズルチップNnの中心箇所には円柱状の通孔が設けられている。前記ノズルチップNnの材質は単結晶ダイヤモンドや、多結晶ダイヤモンド、焼結ダイヤモンド等の硬い材料である。
前記ノズルホルダーNhは、前記ノズルチップNnを固定するためのホルダーであり、上流側は高圧シリンダー部分に取り付けられ、下流側は低圧チャンバー4と接続されている。前記ノズルホルダーNhの中心箇所にも前記ノズルチップNnと同様に円柱状の通孔が設けられている。前記ノズルチップNhの材質はSUS630等のSUS系の金属である。
単独のノズルは、1つのノズルチップNnと1つのノズルホルダーNhから構成された
ものや(図2(a))、複数積層されたノズルチップNnと1つのノズルホルダーNhで構成されたノズル(図2(d))がある。
ここで、ノズルホルダーのDhは、ノズルチップNnを固定していない箇所の通孔の直径のことであり、ノズルホルダーのWhは、ノズルチップNnを固定していない箇所の通孔の厚みのことである。
前記ノズルチップのDnはノズルN1内の流速を高速とするため0.2mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1mm〜0.16mm(0.16mm以下)がよい。そして前記ノズルチップのWnは、前記ノズルチップのDnとWnの比(Wn/Dn)が10以上(図3(b))となるように決定する。実際には、通孔は均一な径にはならないので、その最小径をDnと標記する。
また前記ノズルチップのDnと、前記ノズルホルダーのDhが、前記ノズルチップの通孔の直径Dn≦前記ノズルホルダーの通孔の直径Dhとなるように形成する。本発明の実施例では、前記ノズルチップのDnは0.1mmであり、前記ノズルホルダーのDhは0.8mmである。また、前記ノズルチップのWnは0.9〜4.5mmであり、前記ノズルホルダーのWhは5mmである。
単独のノズルN1の実験例1
実験例1では、従来品であるノズルaと本発明の高圧噴射処理装置のノズルである(表1)のノズルb,c,dを使用し、AEセンサを前記高圧噴射処理装置のノズルa〜dで発生する超音波が検出できる場所に取り付け、前記高圧噴射処理装置のノズルa〜dから噴射圧PN[MPa](PN:50,100,150,200,240)(噴射圧PN:ノズルの入口からノズル内へ液体を噴射する際の初期圧力)を変化させながら原料混合液を高圧噴射処理した。そして、前記高圧噴射処理を行う時に前記ノズルの孔内で生じる周波数が0.2MHz以上の超音波を前記AEセンサによって検出し、前記AEセンサからの信号レベルを検出し、時間経過による各噴射圧PNのAE信号電圧の変化を計測した。
ノズルaにおいては、ノズルチップのWnが短いことと、ノズルホルダーのDhがノズルチップのDnよりも急激に大きくなっているため、噴射圧PNが変化しても、AE信号Vrmsは約80mVで大きく変化しなかった。ノズルbを使用し、ノズルホルダーのDhを0.8mmと小さくした場合には、噴射圧PNが150MPaの場合に少しVrmsの減少が見られるが、200MPaにすると、Vrmsは120から150mVへと大きくなった。そして、ノズルcにおいてノズルチップのWnを1.5mmと厚くすると、PNが50MPaのような低圧の場合には変化は見られないが、PNが100MPa以上にすると、Vrmsは130mVと急激に大きくなった。さらに、240MPaにすると190mVまで、大きくなった。ノズルdにおいては、ノズルチップのDnを0.2mmと大きくすると、PNが50MPaと小さい場合には、Vrmsは100mVと大きいが、PNを上げても140mV以上になることはなかった。また、PNが100MPa以上で、Dnが0.1mmのノズルのVrmsより、大きくなることはなかった。これらの結果
から、Vrmsは、ノズルチップのDnが0.2mmの場合よりも、0.1mmの場合のほうが大きく、ノズルチップのWnが厚い方が大きい傾向があることが示された。また、ノズルホルダーのDhも0.8mmと、小さい方がVrmsの値が大きくなることが分かった。
単独のノズルN1の実験例2(積層ノズル)
(表1)に示すノズルcにおいて使用したノズルチップを三枚積層した以下(表2)に示すノズルhとi(図2(d))および(表1)に示すa〜dを高圧噴射処理装置に取り付け、噴射圧PN[MPa](PN:50,100,150,200,240)(噴射圧PN:ノズルの入口からノズル内へ液体を噴射する際の初期圧力)を変化させながら原料混合液を高圧噴射処理した。PNの変化による平均速度vNとAE信号電圧Vrms(AE信号電圧の実効値)を計測した。
図13は、ノズルa〜d,hとiにおける各種噴射圧PNによる平均速度vN[m/sec]変化を表すグラフであり、図14は、ノズルa〜dを使用した場合の、PNによるVrms[mV]の変化を表すグラフである。
Dnが0.1mmのノズルにおいては、Wnを0.9mmから1.5mm(Wn/Dnは9から15)に大きくしても、vNは同じ値を示した。ノズルチップを3つ積層し、Wnを4.5mmとしたノズルhの場合(Wn/Dnは45)には、vNは小さくなった。一方、Dnが0.2mmの場合、Wn/Dnは7.5であるが、vNは急激に小さくなった。
積層ノズルh(Wn/Dnは45)においては、ノズルチップのWnを大きくしたことにより、vNが遅くなっており、300m/sを超えるのは、PNが150MPa以上からであった。Dnが0.15mmのノズルi(Wn/Dnは30)においては、ノズルチップを3つ積層しWnを大きくしても、PNが150MPa以下で、vNはさほど小さくなられなかった。vNの値を大きくするには、Dnは0.15mm以下であり、Wnも重要なパラメータであり、そのWnには最適な範囲があることが分かった。
Dnが0.1mmの場合、Wnを0.9から1.5mmの大きくすると急激にVrmsが大きくなった。このDnでDhを小さくした場合、PNが50〜150MPaの範囲ではVrmsは減少し、200MPa以上の高いPNで、Vrmsは増加した。一方、Dnを0.2mmと大きくすると、Vrmsは小さくなる傾向を示した。Vrmsの値は、Wnの値と関連していることが分かった。図13の結果も考慮するとDnが0.2mmでは、vNの値が急激に小さくなることから、Vrmsの値にはvNの大きさも重要になることが分かった。
以上のことは、高圧噴射処理装置においてノズルチップのDnは重要なパラメータであり、高圧キャビテーションを利用した微細化処理にはDnが小さく、Wnがなるべくく、Wn/Dnが10以上であるノズルが有効であることが示された。
実際の通孔は正確には厚み依存性を持っているが、ここではノズルチップ内の径の最小径をDnとしている。
多段のノズル(微細化処理用のノズル)
図4は、本発明の第2の実施形態である多段のノズルN2を示す断面図である。
第1の実施形態であるノズルN1は、1つのノズルホルダーとノズルチップから構成された単独ノズルであった。実施例1、実施例2の結果から高圧キャビテーションを利用した微細化処理には、前記ノズルチップのDnが小さく、Wnがなるべく厚く、Wn/Dnが10以上のノズルが有効であることが分かったが、ノズルチップの材質である単結晶ダイヤモンドや、焼結ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド等にWnを厚い状態でDnを小さく形成するのは非常に困難である。
したがって、本発明のノズルN2は、複数(多段)のノズルチップNnm(m=1,2,・・・,M)と複数(多段)のノズルホルダーNhm(m=1,2,・・・,M)を組み合わせてノズルN2を形成する。これは、第1の実施形態のノズルN1と同様の効果を可能としたものであり、その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、同様の構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。
ノズルチップNnm(m=1,2,・・・,M)とノズルホルダーNhm(m=1,2,・・・,M)の数Mは、2個以上であることが好ましく、3個であることがより好ましい。
前記ノズルチップNnm(m=1,2,・・・,M)の中心箇所には円柱状の通孔が設けられている。前記ノズルチップNnmの材質は単結晶ダイヤモンドや、焼結ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド等である。
前記ノズルホルダーNhmは、前記ノズルチップNnmを固定するためのホルダーであり、上流側は高圧シリンダー部500に取り付けられ、下流側は前記チャンバー400と接続されている。前記ノズルホルダーNhmの中心箇所にも前記ノズルチップNnm(m=1,2,・・・,M)と同様に円柱状の通孔が設けられている。前記ノズルチップNhmの材質はSUS630等のSUS系の金属である。
一番上流側に位置するノズルチップNn1は加圧された前記原料混合液10を前記チャンバー40に流入するための入口であり、上流側は前記原料タンク103からの管と接続され、下流側はノズルホルダーNh1に取り付けられている。
前記ノズルチップNnmの通孔の直径Dnm(m=1,2,・・・,M)はノズルN2内の流速を高速とするため0.2mm以下であることが好ましい。また、一番上流側に位置するノズルチップNn1の通孔の直径Dn1を一番小さくし、その他のノズルチップNn2,Nn3,・・・,NnMの通孔の直径Dn2,Dn3,・・・,DnMは、(数5)のように直径Dn1よりも大きい値とする。
=2,・・・,M)を0.16mm以上0.8mm以下とするのが好ましく、0.2mmがより好ましい。
また、前記ノズルチップNnmの通孔の厚みWnm(m=1,2,・・・,M)は、(数4)のように、前記ノズルチップNn1の通孔の直径Dn1に比べて前記ノズルチップNnmの通孔の厚みWnm(m=1,2,・・・,M)の合計を充分に大きくする(前記ノズルチップNn1の通孔の直径Dn1と前記ノズルチップNnmの通孔の厚みWnm(m=1,2,・・・,M)の合計の比を10以上とする)(数6)。
多段のノズル(解繊処理用のノズル)
図5は、本発明の第3の実施形態である多段のノズルN3を示す断面図である。
第2の実施形態であるノズルN2は、上流側に径の小さいノズルチップを配置した多段のノズルであり、効率的な微細化処理を可能にするものであったが、本発明の多段のノズルN3は、上流側に径の大きなノズルチップを配置することで、解繊処理用のノズルを形成したものである。その他の構成は第2の実施形態と同様であるため、同様の構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。
ノズルチップNnm(m=1,2,・・・,M)とノズルホルダーNhm(m=1,2,・・・,M)の数Mは、2個以上であることが好ましく、3個であることがより好ましい。
一番上流側に位置するノズルチップNn1は加圧された前記原料混合液10を前記チャンバー40内に噴射するための入口であり、最も上流側に位置するノズルチップNn1の通孔の直径Dn1を大きくし、上流側から下流側へ配置されるノズルチップNn2,・・・,NnM−1の通孔の直径Dn2,・・・,Dnm−1をノズルチップNn1の通孔の直径Dn1と同様の大きさか、もしくは小さな値とする。そして、最も下流側に位置するノズルチップNnMの通孔の直径DnMは、その他のノズルチップの通孔の直径Dn1,Dn2,・・・,Dnm−1よりも小さな値とする(数7)。
多段のノズルN2の実験例3
実験例3において使用したノズルN2は、3段(M=3)のノズルであり、使用したノズルチップNnmは次の表3の通りである。
ノズルfは、ノズルチップNn1,Nn2,Nn3すべての通孔の直径Dn1,Dn2,Dn3を0.1mmのものを使用した。
ノズルgは、一番上流側のノズルチップNn1とその隣に位置するノズルチップNn2の通孔の直径Dn1,Dn2を0.2mmのものを使用し、ノズルチップNn3の通孔の直径Dn3を直径Dn1,Dn2よりも小さい0.1mmのものを使用した。
ノズルe〜gすべてにおいて、ノズルチップNn1,Nn2,Nn3の通孔の厚みDn1,Dn2,Dn3の合計を4.5mmとした。
小さい0.1mmの直径Dn1,Dn2,Dn3をもつノズルチップNn1,Nn2,Nn3を多段構成にしたノズルfを使用した場合のVrms(図16)は、0.1mmのDnをもつノズルチップNnを単独構成にしたノズルcを使用した場合のVrms(図11)よりも、小さなVrmsしか得られなかった。また、上流側に0.2mmの直径Dn1,Dn2をもつノズルチップNn1,Nn2を配置した多段構成のノズルgを使用した場合のVrms(図17)は、0.2mmの直径DnをもつノズルチップNnを単独構成にしたノズルdを使用した場合のVrms(図12)に近い値となった。そして、上流側に0.1mmの直径Dn1をもつノズルチップNn1を配置した多段構成のノズルeを使用した場合のVrms(図15)は、0.1mmのDnをもつノズルチップNnを単独構成にしたノズルcを使用した場合(図11)に比較して、大きい値を得ることができ、噴射圧PNが50MPaという低い圧力値であっても、Vrmsが約220mVの大きな信号を得ることが可能であった。
このように上流側に径の小さなノズルチップを配置し、下流側に上流側よりも径の大きなノズルチップをおくことによって、Vrmsが上がった。
多段のノズルN2の実験例4
実験例1、実験例3で使用したノズルd〜gを用いて、PN(PN:50,100,150,200,240)の変化による平均速度vN、とAE信号電圧Vrms(AE信号電圧の実効値)を計測した。その結果を図18、図19に示す。
上流側に0.2mmのDn1,Dn2をもつノズルチップNn1,Nn2を配置した多段構成のノズルgを使用した場合や上流側に0.1mmのDn1をもつノズルチップNn1を配置した多段構成のノズルeのvN(図18)は、0.1mmのDnをもつノズルチップNnを単独構成にしたノズルa,b,cを使用した場合のvNと同じであった。しかし、0.1mmのDn1,Dn2,Dn3をもつノズルチップNn1,Nn2,Nn3を多段構成にしたノズルfを使用した場合のvNは、理論値のvNJの80%まで減少した。
Vrmsが大きくなったのは、ノズルチップが厚みくなった場合(単独構成の場合)と、上流側に径の小さなノズルチップを配置し、それ以降の下流側には大きな径のノズルチップを配置した場合(多段構成の場合)であった。また、vNに関しては、単独構成の場合はノズルチップの径に依存し、径が小さいほどvNが大きくなった。多段構成の場合は、同一径のノズルチップを多段に配置した場合のみvNは遅くなった。この場合、実験時よく詰まる現象が発生し、この構成は実用性に劣ることが分かった。
径が異なるノズルチップを多段に配置した場合のvNは、配置したノズルチップのうち最小径をもつノズルチップを単独で使用した場合のvNと同じであった。
ここでPNとノズル内の溶液の速度を考察するために(表1)のノズルc(S01L15),d(S02L15)を使用した場合のPNに対するvNJ(噴射圧PNの1/2でキャビテーションが起こり、その速度でノズル内を通過すると過程した場合の速度:理論値)の計算を行い、実測値(Measured)との比較を行った。図41に、上述した
噴射圧の半分でジェット流が形成され、その速度でノズル内を通過すると仮定した理論値をvNJとして破線で、実測値のvNを実線で示す。
また、ノズルを多段構成にした場合には、Dnが最小径のノズルチップと同じvNになっていることから、ジェット流が発生した後の場所では、流体抵抗が小さいこととが示され、このモデルに問題がないことが確かめられた。効率の高い微細化を行うには、ノズル内のvNがvNJに近くなるノズル構成にする必要があることが示された。
ノズルの通孔径を変化させた場合のノズル内の流体の状態に関する考察
次に、(実験例1)で使用した単独のノズルc,dを利用し、ノズルc(Dn:0.1mm、Wn:1.5mm),ノズルd(Dn:0.2mm、Wn:1.5mm)のノズル内の流速を、処理時間から計算した。その結果を、表4に示す。
表4は、ノズルc(Dn:0.1mm、Wn:1.5mm)、ノズルd(Dn:0.2mm、Wn:1.5mm)を使用した場合の、ノズル内の流体の状態を示してある。
ここで、ノズル内の層流領域の速度は、ジェット流領域の速度に比べてはるかに小さいと仮定し、PNを50,100,150,200,240で変化させた場合のノズル内の平均速度vNから、ノズル内のジェット流の径の概算を行った。このとき、ジェット流の速度は噴射圧の1/2の圧力として計算した。vNはシリンダー容量、つまり、1回の処理容量をノズル径と処理時間の積で割ることで、容易に求めることができる。
0.1mmのノズルでは、当然ジェット流の径はPNが50から240MPaの範囲で0.099mmとほとんど同じであるが、0.2mmのノズルでは、PNが50から200MPaの範囲で0.167〜0.170mmと計算された。
これらの結果から、ノズル内の流れの状態を考察した結果を図6と7に示す。ここではノズルのノズルチップNn_sample内に発生する流体の流れの状態を示す概略図を示し、図6は通孔の軸に平行な平面で切断した断面図であり、図7は通孔の軸に垂直な平面で切断した断面図である。
ノズルのノズルチップNn_sample内には主に以下(G),(H)二つの流体の
流れが発生している。
(G)ジェット流:「ジェット流」とは、原料混合液において流れ方向を軸とした場合に軸中心箇所に発生する流れの速い領域のことであり、軸中心箇所の流れの速い領域と流れの遅い側面周辺領域(層流)の境界部分にキャビテーションによる気泡を含むものを「ジェット流」と定義する。高圧に噴射される原料混合液の流れは、層流から乱流、ジェット流へ変化する。発生したジェット流内部での速度変化(むら)は少ないが、ジェット流の境界での速度差は大きく、ここで大きなせん断力が働きこの周辺部分で微細化現象が起こる。AE信号も発生する。この部分では境界に気体を介するため流体抵抗は低い。
(H)層流:「層流」とは、ノズル径が大きな場合、ノズルの通孔の側面周辺領域で発生し、ジェット流領域の周りに発生する流れの遅い定常的な連続流で、流体抵抗が高い。
ノズルのノズルチップNn_sampleの原料混合液の入口付近において、高圧に加圧された溶液の圧力が運動エネルギーに変換される(エネルギー保存の法則)、その過程で溶液は減圧されてくる。前記溶液がある一定の速度を超えると、キャビテーションが発生し、ノズルチップNn_sample付近では、ジェット流領域と層流領域が発生するようになる(図6)。
このジェット流領域と層流領域の境界で、大きな速度差があり強い微細化作用が起こると考えられる。微細化効率を上げるためには、スーパーキャビテーションによる気泡状態を起こすことなく、このジェット流領域を広げること、つまり、速度が速く、通孔の厚いノズルチップを使用することが微粒化特性の向上に有効になる。
一方、高圧での早い層流部分は、層流内の大きな速度勾配からソフトな解繊処理に使用することができる。
上述の内容をまとめると、ノズルの通孔の直径を大きくすると層流部分が大きくなることがわかり、以下(I),(J)のように考えられる。
(I)Dnが小さい0.1mmのノズルcは、通孔全体にほぼジェット流が発生するため、ジェット流領域と層流領域の境界に発生する高圧キャビテーション領域を利用した微細化処理用として使用する(図8(b))。
(J)Dnが大きい0.2mmのノズルdは、中央部のみにジェット流が発生するため、その周辺の速度が遅い層流の流れを利用して解繊処理用に利用する(図8(a))。
このように、通孔の直径を変更することで、微細化処理用と解繊処理用を切り替えて使用することが可能となる。
図20は、多段のノズルf(同一径のノズルチップを複数組み合わせたもの)内に発生する溶液の流れを示す概略図であり、通孔の軸に平行な平面で切断した断面図である。図21は、多段のノズルe(上流側に径の小さいノズルチップを配置したもの)内に発生する溶液の流れを示す概略図であり、通孔の軸に平行な平面で切断した断面図である。図22は、多段のノズルg(上流側に径の大きなノズルチップを配置したもの)内に発生する溶液の流れを示す概略図であり、通孔の軸に平行な平面で切断した断面図である。
多段のノズルを使用した場合のノズル内の流体の状態に関してであるが、ノズルfのように、ノズルチップNn1,Nn2,Nn3すべての通孔の直径Dn1,Dn2,Dn3を同一のものを使用した場合、上流で発生したジェット流と下流のノズルとの流れの衝突損出によって(図20)、流速が減少し(図18)、微細化の効果が減少(図16)したと考えられる。具体的には、最初のノズルチップで発生したジェット流が次のノズルチップに到達するまでに、周りの層流を巻き込んで高速な流れの径が大きくなり、ノズルチップで、衝突した部分が発生したためであると考えられる。また、ノズルチップの軸のずれによっても同様の現象が発生する。したがって、効率的な微細化処理を行う場合は、ジェット流径の膨張も考慮し、下流側のノズルチップの径を大きくすることが重要であることがわかる。
例えば、多段ノズルeのように一番上流側のノズルチップNn1において、その通孔の直径Dn1を小さいものを使用し、その他の下流側のノズルチップNn2,Nn3は、直径Dn1よりも大きい径Dn2,Dn3のものを使用した場合、ジェット流との衝突による速度低下が起きなかったため(図21)、微細化効率が上がった(図15)ものと思われる。
また、多段ノズルgのように一番上流側のノズルチップNn1とその隣に位置するノズルチップNn2の通孔の直径Dn1,Dn2を大きいものを使用し、最も下流側のノズルチップNn3の通孔の直径Dn3を、直径Dn1,Dn2よりも小さいものを使用した場合、上流側の径の大きいノズルチップNn1,Nn2内では、流量は小さい径のノズルで制限され、ノズルチップNn1,Nn2内ではジェット流は少なくほとんどが層流領域となっている。このときノズルチップNn3においてジェット流は発生するが、エネルギーの一部がノズルチップNn1,Nn2内で速度に変換され、かつ層流領域は抵抗が大きく圧力損失があるので、径の小さいノズルチップNn3では、高圧部分のノズルの圧力損出により減圧されるので。AE信号の大きさは減少する(図17)。
本発明の高圧噴射処理装置はAEモニタリング装置を用いて、キャビテーションによるAE信号から、ノズルや高圧シリンダー等の装置の性能評価を行なうことができる。
図23は、本発明を適用した実施形態の高圧噴射処理装置のモニタリング方法の作業手順を示すフロー図である。本実施形態では、先ず、AEセンサを高圧噴射処理装置のノズルで発生する超音波を検出できる場所に取り付ける(ステップS1)。ノズルで発生した高い周波数の超音波が懸濁液中を通過し、それが高圧シリンダー、ノズル、チャンバー部材で伝搬できる構造になっている場合は、それらのどこに取り付けてもかまわない。次に、前記高圧噴射処理装置のノズルから所定圧力で原料混合液を高圧噴射処理する(ステップS2)。そして、前記高圧噴射処理を行う時に前記ノズル内で生じる周波数が0.2MHz以上の超音波を前記AEセンサによって検出し、前記AEセンサからの信号レベルの評価を行う(ステップS3)。そして、前記高圧噴射処理を繰り返すか否かを判定する(ステップS4)。
計測されるAEセンサからの信号レベルは、高速な溶液から発生する流体キャビテーション信号AEsと、ノズル内の粒子から発生する粒子キャビテーション信号AEpとの合計に、超音波の伝搬特性(減衰率)Attuを反映したものになる。したがって、計測される信号強度AEmは、次式のとおり、AEm=(AEs+AEp)×Attu、で示される。
この式では、懸濁液中の材料濃度が高い場合は、AEpが大きくなり、粒径変化を正確に捉えることができる。一方、懸濁液濃度が低い場合はAEsが大きくなるため、粒径の情報をもつAEpは埋もれてしまう。そのため粒子の正確な評価はできなくなるが、このAEsはノズル周辺の現象を示しており、それ大きくすることで装置の効率が上がると考えられる。つまり、ノズルの評価にAE信号の大きさを利用することができる。この測定は、溶液のみで1回で評価できる。
図24は、本発明を適用した実施形態の高圧噴射処理装置のモニタリング機器によって検出されるキャビテーションにより発生する信号を示す概念図である。信号には液から発生するキャビテーション信号AEsと、粒子から発生するキャビテーション信号AEp、さらに、それら超音波の伝搬特性(減衰率)Attuが記載されている。本実施形態は、ノズル400から所定圧力で原料混合液10を高圧噴射し粒子を微粒化する高圧噴射処理
装置のモニタリング機器1であって、前記高圧噴射処理装置に取り付けるAEセンサ9と当該AEセンサ9から検出されたAE信号を処理して判定する信号処理判定手段8を備える。前記AEセンサ9は、共振周波数が0.5MHzの共振型AEセンサである。前記信号処理判定手段8は、例えば、AEテスタ、FFTアナライザ、スペクトラム・アナライザ、デジタルオシロスコープ、その他の実効値計算記録表示装置などが挙げられ、AE信号を処理してノズルや高圧シリンダー等の性能を判定するプログラムも含まれる。
図24において、符号500は高圧シリンダー部、符号400はノズルである。
ここで、信号の発生と伝搬経路について述べる。図24に示すように、キャビテーション数の変化から、キャビテーションはノズルの途中から発生し、その後スーパーキャビテーションになる。ノズル後半では、チャンバー40方向には多くのキャビテーションがあることに加えて、さらにスーパーキャビテーション状態であることから、溶液とこの部分には大きな音響インピーダンスの違いが起きている。その結果、チャンバー40の方向へは、反射が大きく発生した超音波は伝搬し難い。よって、超音波はノズル400の進行方向とは反対方向の、キャビテーションを起こしていない液中を伝搬してくると考えられる。超音波の溶液中の伝搬速度を計算してみると、超音波の伝搬速度は1500m/sと、流速の400m/sより大きいので、この方向の伝搬は可能である。
この式では、懸濁液の材料濃度が高い場合は、AEpが大きくなり、粒径変化を正確に捉えることができる。一方、懸濁液の材料濃度が低い場合はAEsが大きくなるため、粒径の情報をもつAEpは埋もれてしまうが、AEsはノズル周辺の現象を示しており、それ大きくすることで装置の効率が上がると考えられ、この情報を高圧シリンダーなどのそれを駆動させる高圧発生部を含めたノズルの微粒化特性の評価として使用することができる。
粒子の溶液中の流れを考えた場合には、キャビテーションのでき方は粒子形態にも大きく依存する。例えば、図25(a)に示すように、原料混合液10内の粒子1aが凝集体などの歪(いびつ)な形態の場合、曲率が急に小さくなる部分で負圧になり易く、その箇所を起点としたキャビテーション700が発生し、その崩壊が起こる。この収縮過程では、接触している粒子を引き込む圧力と、崩壊による衝撃がその部分にかかる。つまり、ネッキングなどの粒子形態が歪な粒子ではより効果的な微粒化処理ができることになる。
一方、図25(b)に示すように、粒子1bが焼結体などの球状形態では、負圧になり易い部分が減少する。つまり、キャビテーション700の大きさも減少し、その崩壊エネルギーも小さくなる。図25(c)に示すように、粒子1cが微小な球状になった状態では、キャビテーション大きさは小さくなり、その崩壊エネルギーも減少して行く。その結果、その崩壊による衝撃が粒子1cを破壊するに必要な応力を上回らなくなると考えられ、微粒化が進まなくなる。この状態が微粒化処理の終了を意味する。この効果によって、高圧噴射処理は粒子径の揃った単分散の懸濁液を作製することができる。
ノズルチップの通孔の直径の違いによるセルロースの微細化状態の変化
本発明の高圧噴射処理装置のノズルとして単独のノズルN1である(表1)のノズルc(S01L15),d(S02L15)を使用して、水に対して濃度が2%のセルロース粉を含む原料混合液10を、PNが200MPaの条件で繰り返し高圧噴射処理した。粒度分布の測定には、動的光散乱方式のマルバーン社のゼータサイザーナノZSを用いて測定した。代表的なNPが5の場合とNPが20の場合の懸濁液20中に存在するセルロースファイバーの粒度分布を図27に示す。このファイバーの粒度分布に関しては、個数基準で記載してある。
ノズルチップのDnが0.1mmのノズルc(S01L15)とノズルチップのDnが0.2mmのノズルd(S02L15)を比較すると、NPが5の場合とNPが20の場合のどちらの場合でも、ノズルc(S01L15)を使用して高圧噴射処理を行った懸濁液20が、液中にファイバー径の小さいセルロースが存在する割合が高くなった。このことは、Dnが小さいノズルチップを使用したほうが微細化効果が高くなることを示している。
ノズルチップの厚みの違いによるセルロースの微細化状態の変化
本発明の高圧噴射処理装置のノズルとして単独ノズルN1である(表1)のノズルb(S01L09),c(S01L15)と、(表2)のノズルh(S010101L45)を使用して、セルロースを含む原料混合液10を、PNが200MPaの条件で繰り返し高圧噴射処理した。代表的なNPが5の場合とNPが20の場合の懸濁液20中に存在するセルロースファイバーの粒度分布を測定した。その結果を図28と図29に示す。
ここでノズルhは、通孔の直径Dn1,Dn2,Dn3であるノズルチップを連続して間隔を空けずにつなぎ合わせることで形成したものである。
ノズルチップのWnが0.9mmのノズルb(S01L09)、ノズルチップのWnが1.5mmのノズルc(S01L15)およびノズルチップの通孔の厚みの合計が4.5mmのノズルh(S010101L45)を比較すると、NPが5の場合とNPが20の場合のどちらの場合でも、ノズルh(S010101L45)、ノズルc(S01L15)、ノズルb(S01L09)の順に高圧噴射処理を行った懸濁液中に、ファイバー径の小さいセルロースが存在する割合が高くなることが示された。Wnが大きいノズルチップを使用した方が、微細化の効果は高くなった。
ノズルホルダーの通孔の直径の違いによるセルロースの微細化状態の変化
本発明の高圧噴射処理装置のノズルとして単独ノズルN1である(表1)のノズルa(S01L09D10−30)(ノズルホルダーの通孔の直径Dhが10mm〜30mm)とノズルc(S01L15D08)(Dhが0.8mm)を使用して、セルロースを含む原料混合液10を、PNが200MPaの条件で繰り返し高圧噴射処理した。NPが20の場合のそれぞれの懸濁液20中に存在するセルロースファイバーの粒度分布を図30に示す。
ノズルホルダーのDhが0.8mmのノズルc(S01L15D08)、Dhが10mm−30mmのノズルi(S01L09D10−30)を比較すると、ノズルc(S01L15D08)を使用して高圧噴射処理を行った懸濁液20が、液中にファイバー径の小さいセルロースが存在する割合が高くなった。したがって、通孔の直径が小さいノズルホルダーを使用した場合のほうが、微細化効果が大きくなった。これは、Dhが小さいノズルホルダーを使用した方が、原料混合液10がノズルチップ領域からノズルホルダー領域へ流れる際に圧力低下が少ないため、高圧領域が拡大していることを示している。ノズルチップ内と同様の効果が、ノズルホルダー内でも発生すると考えられる。一方、Dhが大きいノズルホルダーを使用した場合には、原料混合液10がノズルチップ領域からノズルホルダー領域へ流れる際に急激な圧力減少が生じ、すぐにスーパーキャビテーション状態に移行し、攪拌作用のみになってしまうと考えられる。
多段のノズルN2,N3の違いによるセルロースの解繊変化
本発明の高圧噴射処理装置のノズルとして多段のノズルN2,N3である(表3)のノズルe(M010202),f(M010101),g(M020201)と、比較例として単独のノズルN1である(表1)のノズルc(S01L15)を使用して、セルロースを含む原料混合液10を、PNが200MPaの条件で繰り返し高圧噴射処理した。代表的なNPが5の場合と、NPが20の場合の懸濁液20中に存在するセルロースファイバーの粒度分布を図32と図33に示す。
NPが5の場合とNPが20の場合のどちらの場合でも、ノズルe(M010202)を使用して高圧噴射処理を行った懸濁液20が、液中にファイバー径の小さいセルロースが存在する割合が高くなった。一方、全てのノズルチップのDnが同じサイズ(0.1mm)であるノズルf(M010101)は、NPが5の場合と20の場合のどちらの場合でも、その他のノズルの中で、液中に一番径の大きいセルロースが存在する割合が高くなった。したがって、一番上流側に位置するノズルチップNn1の通孔の直径Dn1を一番小さくし(0.1mm)、その他のノズルチップNn2,Nnの通孔の直径Dn2,Dn3を前記ノズルチップNn1の通孔の直径Dn1よりも大きい値(0.2mm)としたノズルN2が微細化処理に一番適していることがわかる。全てのノズルチップの通孔の径が同じサイズ(0.1mm)であるノズルは、流速の低下により微細化特性は劣化した。
各種のノズルN1,N2,N3の違いによるセルロースの粘度変化
本発明の高圧噴射処理装置の単独のノズルN1である(表1)のノズルb(S01L09),c(S01L15),d(S02L15)の3種類のノズルを使用して、PNを200MPaで、セルロース粉を2%濃度含む原料混合液10を、PNが200MPaの条
件で繰り返し高圧噴射処理した。
また、本発明の高圧噴射処理装置の多段のノズルN2である(表3)のノズルe(M010202),f(M010101),g(M020201)と、比較例として単独のノズルN1である(表1)のノズルc(S01L15)に対して、単独ノズルN1と同様のPN、原料混合液10を、PNが200MPaの条件で繰り返し高圧噴射処理した。この場合のNPを変化させた場合の懸濁液20中のセルロースの粘度ηを図34に示す。
図34は、各種ノズルN1,N2,N3における懸濁液20中のセルロースのηのNP依存性を示すグラフであり、(a)は単独のノズルN1を使用した場合であり、(b)は多段のノズルを使用した場合である。
単独ノズルN1の場合、ノズルチップのWnが大きいほど少ないNPでηが上昇した。このことは、ノズルチップのWnの大きさによって高圧キャビテーション領域が拡大することを意味している。結果として、ノズルc(S01L15)はノズルb(S01L09)の2倍の処理能力を示している。
一方、ノズルh(S010101L45)は、NPが少ない場合はηが上昇しないが、NPの増大に伴って徐々にηが上がることが確認できた。これは、速度が遅いためにせん断力が小さくなるが、微細化の効果がある高圧領域がある程度維持されるためと考えられる。
セルロースのηの変化を見ると、ηは最初は水とほぼ同じ1mPa・secであるが、NPが10になると、270mPa・secと非常に大きくなった。このことは、ηの変化が大きくても、処理時間は変わらなかった。つまり、ノズル内のジェット流の速度はほとんど変わらないことを示している。この結果は、ノズル内は層流ではなく、粘性に依存しないジェット流の状態になっていることを示している。
流れが遅く層流を一部に含むと考えられるノズルd(S02L15)は、ηの上昇が最も少なかった。つまり、ノズルに求められる性能としては、流体抵抗が少なくノズル全体がジェット流になる構造で、ノズルチップ側壁と接する側面を大きくした構造がその効率に優れると考えられる。
多段構成にした場合には、ノズルホルダーの通孔の径はなるべく小さい方が、ノズルチップ以降の圧力が下がりにくく、微粒化に有効な高圧キャビテーション領域が上昇し、効率が上がると考えられる。
ノズルチップのDnが0.2mmのノズルを使用し、噴射圧PNを200MPaで高圧処理した場合のジェット流の径が約0.16mmであることを考えると、最適なノズルチップのDnは0.16mm以下で、その厚みをWnとすると、Wn/Dnが15から45以下のノズルが、最も微粒化効率が高いと考えられる。計測されたAE信号電圧Vrmsの大きさもηの上昇の傾向と一致し、このVrmsの値をノズルの微細化性能の定量的な指針とすることができる。
ノズルe(M010202)のみノズルc(S01L15)の特性を上まわった。これは、ノズル下流の高圧領域の拡大とともに、ジェット流周辺部の溶液の攪拌の効果により、数μmのセルロースの塊が完全に解繊し、ファイバー状の粒子密度が増大したことによる。そのため、ノズルe(M010202)で、処理した懸濁液の透明度が最も高くなった。
一方、ノズルg(M020201)のようなノズルの下流側にノズルチップのDnが小さいものを配置した構成では、ノズルの上流側において層流部の圧力が損失した後にジェット流が発生するために、微粒化効率は減少した。
ノズルN1,N2,N3を使用して高圧噴射処理を行った懸濁液20中のセルロースの構
造変化に関して
本発明の高圧噴射処理装置のノズルN1,N2,N3である(表1)のノズルc(S01L15)と、(表3)のノズルe(M010202),g(M020201)を使用して、PNを200MPaの条件で高圧噴射処理を20回行い、乾燥させたセルロース膜を作製した。その膜のX線回折パターン分析と、乾燥試料の電子顕微鏡観察を行った。観察倍率は300倍および5000倍にし、微細構造を観察した。その結果を図35、図36、図37に示す。
解繊タイプのノズルg(M020201)で高圧噴射処理を行ったセルロースが最も(200)のピークが高く、構造を破壊せずに解繊できたことを示してる。
また解繊タイプのノズルg(M020201)とノズルe(M010202)で高圧噴射処理したセルロースの電子顕微鏡像を比較すると、解繊タイプのノズルg(M020201)には繊維が絡まった状態が観察された。高倍率で拡大した像では、ファイバー径はより細くなっていた。よって、解繊タイプのノズルg(M020201)は、セルロースをソフトに解繊し、繊維状の構造に損傷を与えていないことが分かった。
以上の結果から、こちらの構成の方が結晶への損傷も少なく、ファイバー長が長い傾向を示していた。したがって長いファイバー作製する場合には、このノズル構成にし、高圧での高速な層流を利用した損傷の少ない微細化処理が適していた。単に噴射圧PNを下げるのでなく、ノズル構成によって調整し、噴射圧力をその役割に応じて使用することで、処理プロセス全体の効率を構造させることができる。
単独ノズルN1によるPZT粉体の粒度分布
PZT粉体の約30wt%の懸濁液を原料混合液10として、(表1)のノズルb(S01L09),c(S01L15)を使用して、PNを200MPaの条件で2回処理(NPが2)を行った。処理後の懸濁液20中に存在するPZT粉体の粒度分布を図38に示す。この微粒子の粒度分布に関しては、体積基準で記載してある。
ノズルチップの通孔の厚みWnが大きいほど、高い微粒化性能を示した。
単独ノズルN1によるナノサイズアルミナ微粒子の径の変化
ナノサイズアルミナ微粒子を原料混合液10の原料として、(表1)のノズルb(S01L09),c(S01L15)を使用して、PNが200MPaの条件で処理を行った。代表的なNPが5,10,20の場合の懸濁液20中に存在するナノサイズアルミナ微粒子の径(nm)の百分率度(Frequency percentage)(%)と、アルミナ微粒子の平均径DのNP依存性を評価した。その結果を図39、図40に示す。この微粒子の粒度分布に関しては、体積基準で記載してある。
どのNPでも、ノズルc(S01L15)はノズルb(S01L09)よりも、小さな径になっていることが分かる。アルミナ微粒子の平均径Dが150nmになるNPを比較するとノズルc(S01L15)はノズルb(S01L09)に比べて4倍の性能を持っていた。ゼータ電位Vζに関しては、両者の違いはあまりなかった。この結果は100nmのサイズの粒子においても、ノズルチップを厚くすることで微粒化効率が進むことが確認できた。
(表1)のノズルaを使用し、2%濃度のセルロースを処理した場合のNPのAE信号電圧Vrmsの変化を計測した。ここでのPNは200MPaである。
その結果を図43に示す。図43は、各噴射回数NPにおけるAE信号電圧の時間経過変化を表すグラフである。粘度ηは初期の1mPa・sec程度から、NPが10で、140mPa・secにも上昇しているにも関わらず、その処理時間は2.25秒と、ほとんど変化しなかった。このことはノズル内の平均速度がほぼ一定であることを示している。一方、VrmsはNPが10まで、NPに比例して上昇するが、それ以降上昇は少なくなった。この変化はηの変化と良く対応し、セルロースの微細化の状態を上手くモニタリングできていることが分かる。
そして、以下(ア)、(イ)、(ウ)を導き出すことができる。
(ア)同じ径なら、ノズルチップが厚い方が、大きなAE信号電圧が得られた。
(イ)ノズルチップを積層するよりも分割した方が速度減少が少なく、大きなAE信号電圧が得られた。
(ウ)高圧側に径の小さなノズルチップを置く方が、低圧でも大きなAE信号電圧が得れていた。
(表1)(表2)(表3)に示すノズルb,c,d,e,f,g,h,iを高圧噴射処理装置に取り付け、原料混合液を高圧噴射処理し、AE信号を計測した。その解析から平均速度vNに対するVrmsを求めた結果を図42に示す。これは、これまで実施したvNとVrms関係をまとめたグラフであり、(a)はノズルチップの通孔の直径と厚みを変化させたノズルの結果を示し、(b)は積層ノズルと多段ノズルの結果を示し、(c)多段ノズルの結果を示す。
Dnが0.1mmで、Wnが0.9mmと薄い場合、vNが400m/sより大きくなるとVrmsが大きくなった。厚みWnが1.5mmになると、その倍程度の大きさに変化した。Wn/Dnの高い単独ノズルでは、300m/sを超えると急激にvNが大きくなった。つまり、300m/s以上の平均速度と、それを活かすノズル構造が必要になることが分かる。多段にした方がvNに比例してVrmsが大きくなる傾向があった。このことは、厚みが大きいほど、AE信号が大きくなることを示している。
DNを0.2mmにすると、vNが300m/s以上でVrmsは急激に大きくなった。これは、DNを大きくするとノズル内でのジェット流境界の表面積が多くなるため、計測されるAE信号量が増加することを示している。
また、ノズルチップを積層より多段にした方が、vNの減少が少なくAE信号は大きくなった。これは、AE信号が大きくなることからも、ノズルを多段構成にし、それらのノズルホルダー部分を利用することで、高圧領域がより拡大できることを示している。多段構成の中では、上流側にDnが小さい0.1mmの通孔径のノズルチップを配置し、それ以降、ジェット流の速度減少が起きないような構成で、かつ高圧が維持できるようにしたノズルが最もAE信号が大きくなった。つまり、その構成のノズルが最も微粒化特性が良いことになる。これらの傾向は、実際に各種ノズルを使用した場合のセラミックやセルロース処理の粒径変化と良く対応がとれていた。つまり、AE信号の大きさにより、ノズルの微粒化性能を定量的に評価できることが示された。
また、高圧に加圧するシリンダー部のポンプ能力や配管の膨張などから、急激に数百MPaに加圧できない場合もある。この場合、圧力の立ち上がりが鈍り、溶液の速度が規定値に達しない時間が発生する。ここで処理された懸濁液は、微細化効果がほとんど無い状態でノズル内を通過することになり、未処理部分が増加し、全体として処理効率が劣化する。この微細化効果のモニタリングとしてAE信号の変化が有効であると考えられ、その平均値でノズルや装置の微細化に関する性能評価が可能になる。
Nn,Nn1,Nn2,Nn3 ノズルチップ、
Nh,Nh1,Nh2,Nh3 ノズルホルダー、
1 モニタリング機器、
8 信号処理判定手段(FFTアナライザ)、
9 AEセンサ(共振型AEセンサ)、
10 原料混合液、
20 分散液(懸濁液)、
1a 微粒子の凝集体、
1c 微粒子、
40 チャンバー、
400 本発明の高圧噴射処理装置のノズル、
402 出口、
500 高圧シリンダー部、
600 AE信号の主な伝搬経路、
AEm 計測されるAE信号の強度、
AEp 粒子のキャビテーションによる信号、
AEs 溶液のキャビテーションによる信号、
Attu 超音波の伝搬特性(減衰率)、
NP 高圧噴射の噴射回数、
Vrms AE信号電圧
Claims (8)
- 原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化する高圧噴射処理装置のノズルにおいて、ダイヤモンドで作製されるノズルチップの厚みを分割するために前記ノズルは通孔をもつノズルチップとノズルホルダーで構成され、前記ノズルチップの通孔の径Dnと厚みWnの比(Wn/Dn)を10以上45未満とするものであり、前記ノズルチップの通孔の直径を下流側に配置されるノズルチップの通孔の直径がその上流側に配置されるノズルチップの通孔の直径よりも大きく形成した複数で構成され、前記ノズルチップのうち、最も上流側に位置する前記ノズルチップの通孔の直径Dn 1 を0.16mm以下とし、その他のノズルチップの通孔の直径Dn m を0.16mm以上0.8mm以下とすることを特徴とする高圧噴射処理装置のノズル。
- 原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化する高圧噴射処理装置のノズルにおいて、ダイヤモンドで作製されるノズルチップの厚みを分割するために前記ノズルは通孔をもつノズルチップとノズルホルダーで構成され、前記ノズルチップの通孔の径Dnと厚みWnの比(Wn/Dn)を10以上45未満とするものであり、前記ノズルチップの通孔の直径を下流側に配置されるノズルチップの通孔の直径がその上流側に配置されるノズルチップの通孔の直径よりも小さく形成した複数で構成され、前記ノズルチップのうち、最も下流側に位置する前記ノズルチップの通孔の直径Dn m を0.16mm以下とし、その他のノズルチップの直径Dn 1 ,Dn 2 ,・・・,Dn m−1 は0.16mm以上0.8mm以下とすることを特徴とする高圧噴射処理装置のノズル。
- 原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化する高圧噴射処理装置のノズルにおいて、ダイヤモンドで作製されるノズルチップの厚みを分割するために前記ノズルは通孔をもつ複数のノズルチップと複数のノズルホルダーで構成され、前記ノズルチップの通孔の直径Dnmの少なくとも一つは0.16mm以下で、かつ前記ノズルチップの通孔の直径Dnmのうち、一番小さい直径に対する複数の前記ノズルチップの通孔の厚みの合計の比を10以上45未満とするものであり、前記複数のノズルチップは、第1のノズルチップと第2のノズルチップから構成され、前記第2のノズルチップは前記第1のノズルチップよりも下流側に配置され、かつ前記第2のノズルチップの通孔の直径は前記第1のノズルチップの通孔の直径よりも大きく、0.16mm以上0.8mm以下の範囲としたことで、前記ノズル内平均速度を下げることなく高圧領域を増大させ、効率的な微細化を可能としたことを特徴とする高圧噴射処理装置のノズル。
- 原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化する高圧噴射処理装置のノズルにおいて、ダイヤモンドで作製されるノズルチップの厚みを分割するために前記ノズルは通孔をもつ複数のノズルチップと複数のノズルホルダーで構成され、前記ノズルチップの通孔の直径Dnmの少なくとも一つは0.16mm以下で、かつ前記ノズルチップの通孔の直径Dnmのうち、一番小さい直径に対する複数の前記ノズルチップの通孔の厚みの合計の比を10以上45未満とするものであり、前記複数のノズルチップは、一番上流側に配置された第3のノズルチップと第4のノズルチップから構成され、前記第4のノズルチップは第3のノズルチップよりも下流側に配置され、かつ前記第3のノズルチップの通孔の直径は第4のノズルチップの通孔の直径よりも大きく、0.16mm以上0.8mm以下の範囲としたことで、前記ノズル内平均速度を下げることなく高速な層流内のせん断力を利用したファイバーの適した解繊処理を可能としたことを特徴とする高圧噴射処理装置のノズル。
- ノズルチップ周辺の高圧領域の維持のために前記ノズルホルダーの通孔Dhの直径は、0.8mm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の高圧噴射処理装置のノズル。
- 原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化する請求項1から5のいずれか1項記載のノズルを備えた高圧噴射処理装置において、前記原料混合液を加圧する高圧ポンプと、前記高圧ポンプを駆動及び制御することで前記原料混合液を100MPa以上に加圧する駆動制御部と、高圧シリンダーを備え、100MPa以上に加圧された前記原料混合液を前記高圧シリンダーと連結された前記ノズルに噴射させることを特徴とする高圧噴射処理装置。
- 原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化する請求項1から5のいずれか1項記載のノズルを使用した高圧噴射処理方法において、前記原料混合液を加圧する高圧ポンプと、前記高圧ポンプを駆動及び制御することで前記原料混合液を100MPa以上に加圧する駆動制御部と、高圧シリンダーを備え、100MPa以上に加圧された前記原料混合液を前記高圧シリンダーと連結された前記ノズルに噴射させることを特徴とする高圧噴射処理方法。
- 原料混合液をノズル内平均速度が300m/s以上となるように高圧噴射して微細化する請求項1から5のいずれか1項記載のノズルを使用した高圧噴射処理装置において、前記原料混合液を加圧する高圧ポンプと、前記高圧ポンプを駆動及び制御することで前記原料混合液を100MPa以上に加圧する駆動制御部と、高圧シリンダーを備えるとともに、前記高圧噴射処理装置に、限定した周波数のAEセンサを取り付けて、キャビテーションによるAE信号を検出し、その値から微細化特性の性能評価を行うことを特徴とする高圧噴射処理装置の評価方法。
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