JP6841491B2 - 接着細胞内へのナノ粒子取り込み方法 - Google Patents

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本発明は接着細胞内へのナノ粒子取り込み方法に関し、特にエンドサイトーシスを利用せずにナノ粒子を直接細胞質へ取り込む方法に関する。
多くの分子は細胞膜を透過できない。そのような非透過分子を細胞内へ輸送する方法の一つは、分子を付着させたナノ粒子を取り込ませることである。この方法は、一定程度の大きさを持つ粒子がエンドサイトーシス等の細胞に備えられた機能により取り込まれる性質を利用する。
しかしエンドサイトーシスにより取り込まれた粒子は、脂質二重膜構造で覆われた細胞内の特定の区画(エンドソーム・リソソーム等)に閉じ込められる。すなわち、取り込まれた粒子と粒子に付着した分子は、細胞質ゾル・核などの細胞内の重要な生化学反応の大半が起こる区画と脂質二重膜により空間的に隔離される。したがってエンドサイトーシスを利用して細胞質ゾルや他の細胞内小器官へ分子を届けるためには更に"Endosomal escape"と呼ばれる過程、すなわち隔離されたエンドソーム・リソソーム区画から脂質二重膜透過を要する分子移動が必要となるが、粒子・付着分子とも脂質膜非透過性である条件下では非効率的となる。
この問題を解決するため、ナノ粒子を様々に表面修飾してEndosomal escapeを増加させようとする方法等が多数提案されている。しかし、修飾は一般に煩雑で再現性や効率性の問題が多く、また修飾による毒性の問題もあるため、エンドサイトーシス等を利用した従来の方法は依然として使いやすいものではなかった。
この種の従来技術の具体例としては、非特許文献1が挙げられる。この文献では、メソポーラスシリカ・ナノ粒子に脂質二重膜を透過できないシトクロムという比較的小さなタンパク質(蛍光分子で標識されている)を閉じ込め、その粒子を細胞内にエンドサイトーシスさせたことが報告されている。その記載内容を検討するに、細胞内にシリカ+シトクロムを導入できているのはわかるが、細胞内分布を見れば粒子とタンパクは細胞内の区画に閉じ込められており、粒子がエンドサイトーシスされた後にシトクロム分子が細胞質内に移動していないことがわかる(fig-6等を参照)。細胞質内にもシトクロム分子が輸送されたかのように見えるデータもあるが(Fig-7b)、その細胞の構造は粒子導入前とくらべて大きく変化しており(Fig-7a)細胞死が疑われる。従って細胞質内に観察された蛍光シグナルは、細胞死によって発生する自家蛍光や、細胞死によって膜構造に孔が形成された結果、拡散移動したシトクロム分子のものである可能性がある。さらにこの文献中の実験データでは、移動に要する時間は18時間と非常に長時間であり、エンドソームへのナノ粒子隔離を経る分子輸送が非効率的であることがわかる。
細胞内へ物質を取り込むための別の方法として、非特許文献2には浸透圧を利用することが開示されている。この文献では、MRI計測に有利となるように、浮遊細胞に磁性粒子(γ−Feのナノ粒子)を低浸透圧条件下で導入したことが説明されている。非特許文献2の実験においては細胞を継続して振盪させながら4℃で12時間浸透圧を加え続けるという非常に過酷な条件で磁性粒子の取り込みを行っている。しかしエンドサイトーシスによってナノ粒子を取り込む場合との比較・検討がなされていない。温和な生理学的状況下で発生するエンドサイトーシス機構と比較して、エンドソーム・リソソーム区画以外へのナノ粒子導入や粒子取り込み量の増大などの効果がなければ、このような過酷な条件で粒子を取り込ませる方法に優位性はない。また、このような過酷な条件下では非特許文献2中に記載される通り細胞死が多いことが推察されるが、細胞数の変化に関するデータが無い。非特許文献2では、溶液中の鉄原子総量の計測値を細胞数で除することで細胞内に取り込まれた磁性粒子量を推測しているが、細胞死による細胞数変化が十分考慮されていないため浸透圧に応じた細胞あたりの粒子取り込み量の変化という重要なデータの信頼性が十分ではない。加えて、細胞内の粒子分布についても全く検討がなされていない。
本発明は、温和な条件下でナノ粒子を接着細胞内に効率よく輸送することを目的とする。ここで「接着細胞」とは、自らの性質で基板に膜タンパク質や細胞外マトリックスを介して固定できる接着性細胞に加えて、基板上に沈殿することで接し付着するが固定はできない浮遊系細胞であって、現に付着している細胞も意味する。
本発明の一側面によれば、接着細胞を、ナノ粒子が分散しており、浸透圧が生理学的な環境における浸透圧よりも低い水溶液に浸漬する、接着細胞へのナノ粒子取り込み方法が与えられる。
ここで、前記水溶液の浸透圧モル濃度が250mOsm/L以下であってよい。
また、前記ナノ粒子の直径は1nm〜1000nmであってよい。
また、前記ナノ粒子は第1の物質からなる担持体粒子と、前記第1の物質とは異なる第2の物質との複合粒子であってよい。
また、前記担持体粒子は金属ナノ粒子、無機ナノ粒子及びポリマーナノ粒子からなる群から選択される粒子であり、前記第2の物質は核酸、タンパク質、脂質、合成高分子及び低分子医薬品からなる群から選択される物質であってよい。
また、前記金属ナノ粒子は金ナノ粒子、銀ナノ粒子及び銅ナノ粒子からなる群から選択される金属ナノ粒子であってよい。
また、前記担持体粒子はメソポーラスナノ粒子であり、前記第2の物質が少なくとも前記担持体粒子のメソ細孔内に収容されてよい。
また、前記メソポーラスナノ粒子はメソポーラスシリカナノ粒子であってよい。
前記ナノ粒子はエンドサイトーシスの過程を経由せずに、前記接着細胞の細胞質ゾルに直接輸送されてよい。
本発明の他の側面によれば、上述の接着細胞へのナノ粒子取り込み方法を使用して接着細胞の細胞質ゾル中へ金属ナノ粒子を取り込ませ、前記細胞質ゾル内の蛍光タンパク質を前記取り込まれた金ナノ粒子の表面に結合させる、細胞質内にプラズモンアンテナを作製する方法が与えられる。
ここで、前記金属ナノ粒子は金ナノ粒子であってよい。
本発明の更に他の側面によれば、金属ナノ粒子が取り込まれている、光音響イメージング、X線透視撮影またはX線CTによって識別可能な接着細胞が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、上述の光音響イメージング、X線透視撮影またはX線CTによって識別可能な接着細胞を生体内に導入することによる、光音響、X線透視またはX線CTによるイメージング方法が与えられる。
本発明によれば、ナノ粒子を接着細胞の細胞質ゾル内を含む領域へ高い効率で直接的に輸送することができる。多くのナノ粒子がエンドサイトーシスの過程を経ることがなく直接細胞質ゾルに輸送されるので、迅速かつリソソーム等の内部での消化作用等を受けることなしにナノ粒子と粒子に結合させた物質を細胞質ゾルへ輸送することができる。
リソソームマーカーであるLamp1−GFPを発現したHeLa細胞内に取り込まれた、赤色蛍光タンパク質mCherryを結合した直径5nmの金ナノ粒子(GNP)の蛍光顕微鏡像。HeLa細胞は生理学的な環境下に近い浸透圧(300mOsm/L)下に置かれた。図中、上段の横長の写真はGNPとLamp1の蛍光色(元のカラー像ではGNPが赤、Lamp1が緑)がマージされた細胞全体の像を示し、下段の正方形の3枚の写真は上段の写真中の白枠部分の拡大像である。 リソソームマーカーであるLamp1−GFPを発現したHeLa細胞内に取り込まれた、赤色蛍光タンパク質mCherryを結合した直径100nmのGNPの蛍光顕微鏡像。HeLa細胞は生理学的な環境下に近い浸透圧(300mOsm/L)下に置かれた。図中、上段の横長の写真及び下段の正方形の3枚の写真は図1Aと同様である。 5μg/mLの直径100nm未修飾GNPを浸透圧モル濃度100mOsm/Lの溶液によりLamp1−GFPを発現したHeLa細胞内に取り込ませた後の蛍光顕微鏡像。未修飾GNPは落射蛍光顕微鏡下において散乱光を検出することによりイメージングすることが出来た。図中、上段の横長の写真及び下段の正方形の3枚の写真は図1Aと同様である。 20μg/mLの直径100nm未修飾GNPを浸透圧モル濃度100mOsm/Lの溶液によりLamp1−GFPを発現したHeLa細胞内に取り込ませた後の蛍光顕微鏡像。未修飾GNPは落射蛍光顕微鏡下において散乱光を検出することによりイメージングすることが出来た。図中、上段の横長の写真及び下段の正方形の3枚の写真は図1Aと同様である。 GNPの細胞内取込み処理におけるGNPの添加濃度(5、20μg/mL)と処理液の浸透圧モル濃度(100、200、300mOsm/L)の条件の組み合わせ毎の、細胞の切片像中の取り込まれている直径100nmの未修飾GNPの密度を示すグラフ。この密度計算に当たっては、像中のGNPの個数及び細胞切片の面積は画像解析により求めた。上記条件の組み合わせ毎に、20個を超える細胞の解析を行った。 図1Eに示すような像の解析の過程で検出されたところの、GNP上にリソソームマーカーであるLamp1−GFPが共局在化しているものを計数して、取り込まれたGNP全体に対する割合を計算したグラフ。縦棒中の黒色部分が共局在化(colocalization)している(つまり、リソソーム中に収容されていると考えられる)GNPの割合。 GNPを取り込んだHeLa細胞の代表的な蛍光顕微鏡像。20μg/mLの直径100nmのGNPが浸透圧モル濃度100mOsm/Lで取り込まれた、野生型mCherry(mCherry(WT))を発現したHeLa細胞を使用。 GNPを取り込んだHeLa細胞の代表的な蛍光顕微鏡像。20μg/mLの直径100nmのGNPが浸透圧モル濃度300mOsm/Lで取り込まれた、C−mCherry−C(N,C両末端にシステイン残基を融合させた改変型のmCherry)を発現したHeLa細胞を使用。 GNPを取り込んだHeLa細胞の代表的な蛍光顕微鏡像。20μg/mLの直径100nmのGNPが浸透圧モル濃度100mOsm/Lで取り込まれた、C−mCherry−C(N,C両末端にシステイン残基を融合させた改変型のmCherry)を発現したHeLa細胞を使用。 2つの異なる浸透圧モル濃度(300mOsm/L、100mOsm/L)下での細胞内でのGNP及びmCherryタンパク質の所在を示す概念図。 三通りの条件(細胞が300mOsm/Lに調整されたD−MEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)培養培地中に置かれるという条件、並びに細胞が浸透圧モル濃度300mOsm/L(D−MEM培地)及び100mOsm/L(D−MEM培地と水との1:2の比率での混合物)で20μg/mLのGNPとともに2時間培養されるという条件)下でのHeLa細胞の増殖を示す図。GNP含有溶液下で2時間培養した後、三通りの条件全てで培地溶液を新しいD−MEM培地に入れ替え、その0、1及び2日後の時点で、460nmにおけるホルマザン色素WST−8の吸収を観測することによって測定した。 浸透圧モル濃度100mOsm/Lで20μg/mLのGNPとともに2時間培養した後、培地を交換して生理学的な環境下に近い浸透圧(300mOsm/L)に戻して余剰のGNPを除いた直後(0時間)及び2日間(48時間)経過後の細胞の像。 浸透圧モル濃度100mOsm/LでのHeLa細胞のカルセイン(calcein)蛍光の時間変化を、2つの時点(当該浸透圧環境下に置かれた直後(0分)及び当該環境下に20分間置かれた時点)で観測した像。 三通りの浸透圧モル濃度(100mOsm/L、200mOsm/L、300mOsm/L)でのHeLa細胞中のカルセインの時間変化から求められた、正規化された細胞断面積の時間変化を示すグラフ。 三通りの浸透圧モル濃度(100mOsm/L、200mOsm/L、300mOsm/L)でのHeLa細胞のカルセイン蛍光の正規化された総輝度の時間変化を示すグラフ。 細胞へのGNP取込みをフローサイトメトリーによって測定した結果を示す図。各条件下での細胞のドットプロットである。ここで、一つのドットは単一の細胞からの信号を表す。浸透圧モル濃度300mOsm/L(D−MEM培地)で5μg/mLの直径100nmのGNPとともに2時間培養されたHeLa細胞(未修飾のGNPを含む細胞(上段右側、黒プロット、図4Bでは+GNP(黒)と表記)及びmCherryで標識付けされたGNPを含む細胞(下段左側、濃灰色プロット、図4Bでは+GNP(灰色)と表記))及び対照細胞(GNPなし(図4Bではnull)、淡灰色プロット)(上段左)の蛍光(赤)と後方散乱信号(BSC)とを示す。更に、信号の平均及び標準偏差(SD)を右端に示す。 図4Aに示す測定で得られたHeLa細胞の細胞分画(cell fraction)のヒストグラム。全ての条件で2000個を超える細胞を測定し、細胞分画の正規化の計算を行った。 HEK293細胞からの赤色蛍光及び後方散乱信号の細胞分画ヒストグラム(GNPの取込みはHeLa細胞についての図4Aに示す実験と同じ条件で行われた。グラフ中のカーブの表記は図4Bの例に従っている)。全ての条件で2000個を超える細胞を測定し、細胞分画の正規化の計算を行った。 浸透圧モル濃度100mOsm/L及び300mOsm/Lで、0μg/mL(対照、nullと表記)、2μg/mL、5μg/mL及び20μg/mLの直径100nmのGNPとともに2時間培養したHEK293細胞の後方散乱信号を示すヒストグラム。全ての条件で2000個を超える細胞を測定し、細胞分画の正規化の計算を行った。 浸透圧モル濃度300mOsm/Lで、5μMのブレフェルジンA(brefeldin A、BFA)入り(+BFAと表記)及びなし(GNP 5μg/mLと表記)、並びに10μMのコルヒチン(colchicine)入り(+コルヒチンと表記)のそれぞれの場合について、5μg/mLの直径100nmのGNPとともに、2時間培養したHEK293細胞の後方散乱信号を示すヒストグラム。GNPなしの対照細胞(nullと表記))に対してもいずれの阻害剤とも添加した。阻害剤とともに処理される細胞は、阻害剤とともに37℃で1時間事前培養した後、GNPを添加した。全ての条件で2000個を超える細胞を測定し、細胞分画の正規化の計算を行った。 浸透圧モル濃度100mOsm/Lで、5μMのブレフェルジンA入り(+BFAと表記)及びなし(GNP 5μg/mLと表記)、並びに10μMのコルヒチン入り(+コルヒチンと表記)のそれぞれの場合について、5μg/mLの直径100nmのGNPとともに、2時間培養したHEK293細胞の後方散乱信号を示すヒストグラム。GNPなしの対照細胞に対してもいずれの阻害剤とも添加した。阻害剤とともに処理される細胞は、阻害剤とともに37℃で1時間事前培養した後、GNPを添加した。全ての条件で2000個を超える細胞を測定し、細胞分画の正規化の計算を行った。 浸透圧モル濃度100mOsm/L及び300mOsm/Lで、5μMのGFP入り(100mOsm/L及び300mOsm/Lと表記)及びなし(null 100mOsm/L及びnull 300mOsm/Lと表記)で培養したHEK293細胞の蛍光(緑)信号で表される細胞分画のヒストグラム。検出器の信号ゲインは測定毎に異なっていたので、図4G〜図4Iのバックグラウンド信号(null)は異なったものとなった。全ての条件で2000個を超える細胞を測定し、細胞分画の正規化の計算を行った。 浸透圧モル濃度100mOsm/L及び300mOsm/Lで、5μMのカルセイン入り及びなしで培養したHEK293細胞の蛍光(緑)信号で表される細胞分画のヒストグラム。表記は図4Gの例に従っている。検出器の信号ゲインは測定毎に異なっていたので、図4G〜図4Iのバックグラウンド信号(null)は異なったものとなった。全ての条件で2000個を超える細胞を測定し、細胞分画の正規化の計算を行った。 浸透圧モル濃度100mOsm/L及び300mOsm/Lで5μMのDiBAC4(3)入り及びなしで培養したHEK293細胞の蛍光(緑)信号で表される細胞分画のヒストグラム。表記は図4Gの例に従っている。検出器の信号ゲインは測定毎に異なっていたので、図4G〜図4Iのバックグラウンド信号(null)は異なったものとなった。全ての条件で2000個を超える細胞を測定し、細胞分画の正規化の計算を行った。 HEK293細胞を浸透圧モル濃度300mOsm/L及び100mOsm/Lで、33pMのAgナノ粒子(直径30nm)、メソポーラスシリカ(直径200nm、4nmのサイズの孔を有する)及び酸化チタン(直径30nm)とともに2時間培養し、細胞の後方散乱信号をフローサイトメトリーによって測定(それぞれNP 300mOsm/L及びNP 100mOsm/Lと表記)して、浸透圧モル濃度100mOsm/Lでナノ粒子なしで培養した対照細胞(nullと表記)と比較を行った結果を示すヒストグラム。全ての条件で2000個を超える細胞を測定し、細胞分画の正規化の計算を行った。 Alexa555で標識付けられたファロイジン(phalloidin)をロードした33pMのメソポーラスシリカナノ粒子(直径200nmのナノ粒子であり、4nmのサイズの孔を有する)とともに、300mOsm/L、37℃でHeLa細胞を培養開始後1時間経過時における顕微鏡写真。図中、アスタリスクは個々の細胞を示す。 Alexa555で標識付けられたファロイジン(phalloidin)をロードした33pMのメソポーラスシリカナノ粒子(直径200nmのナノ粒子であり、4nmのサイズの孔を有する)とともに、100mOsm/L、37℃でHeLa細胞を培養開始後1時間経過時における顕微鏡写真。図中、アスタリスク及び矢印は夫々個々の細胞及びファロイジンで染色されたF−アクチンを示す。 図5A〜図5Cに示された現象を説明する概念図。図中、中央付近に示す縦方向破線の左側は浸透圧モル濃度が300mOsm/Lの場合を、右側は浸透圧モル濃度が100mOsm/Lの場合を示す。 浸透圧モル濃度100mOsm/Lで2時間のGNPの取込み処理を行った場合及び行っていない場合の、蛍光タンパク質(mCherry,C−GFP−C,C−mCherry−C,C−iRFP−C)(それぞれ野生型mCherry, N,C両末端にシステイン残基を融合させた改変型AcGFP,N,C両末端にシステイン残基を融合させた改変型mCherry,N,C両末端にシステイン残基を融合させた改変型iRFP)を発現した細胞の蛍光信号についてのフローサイトメトリー測定の結果を示す図。 浸透圧モル濃度300mOsm/LでGNPを取り込んだHeLa細胞の暗視野顕微鏡像をCCDカメラで取り込んだ像(元図はカラー映像)。像中の一つの細胞におけるGNPの拡大像を全体の像の下に示す。 浸透圧モル濃度100mOsm/LでGNPを取り込んだHeLa細胞の暗視野顕微鏡像をCCDカメラで取り込んだ像(元図はカラー映像)。像中の一つの細胞におけるGNPの拡大像を全体の像の下に示す。 細胞質ゾル中の最も明るいGNPスポットの一つ、リソソーム中の典型的な単独のGNP、及び細胞外(ガラス板上)の典型的な単独のGNPの代表的なスペクトル。差し込み図中のスケールバーは1μmである。 有限差分時間領域(finite difference time domain、FDTD)法を使ってモデル化された、単独のGNP(単量体(モノマー)、d=100nm)、二量体及び三量体の相対散乱強度を示すグラフ。屈折率nとして1.35を選択することで、このモデルが細胞質環境とよく一致するようにした。 図6B及び図6Cに示す像中の個々のGNPスポットの平均積分RGB信号のヒストグラム。 図6B及び図6Cに示す像中の個々のGNPスポットの赤の信号と青の信号との間の比の値のヒストグラム。 細胞質内のGNPのクラスタ化及び蛍光タンパク質の色に依存した局所化されたアンテナの効果を示す概念図。
本願発明者は、接着細胞を細胞が破裂しない限度の低張液(生理学的な環境下における浸透圧(ヒトを含む脊椎動物由来細胞の場合は280〜300mOsm/L。細胞培養に用いられる培地の浸透圧と同等)以下で、下限濃度は細胞種により異なる。脊椎動物由来細胞の場合は実用的な上限は250mOsm/L、より好ましくは200mOsm/L、さらに好ましくは100mOsm/L)に浸し浸透圧をかけることで、好ましくは1〜1000nm、更に好ましくは30〜200nm粒径のナノ粒子を細胞膜透過させて直接的に細胞質内に取り込ませることができることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。本発明の一態様によれば、ナノ粒子はエンドサイトーシス等の経路を回避して細胞質全体へと拡散させることができる。またこの過程中での細胞へのダメージは検出できなかった(効率的な粒子輸送が確認された100mOsm/Lの条件下において)。ここで、ナノ粒子の材質(金属・無機・ポリマー)や修飾への依存性は殆ど見られない。
ここで、先に挙げた浸透圧を利用した細胞内へのナノ粒子の取込みに関する先行技術である非特許文献2との対比により、本発明を更に具体的に説明する。
非特許文献2に開示された実験結果を見ると、低浸透圧環境を利用して生きている細胞にナノ粒子を取り込ませる方法を実行するためは、振盪させて浮遊状態を維持した細胞を低温で低浸透圧環境下に長時間置くという、細胞にとって過酷な条件が求められ、結果として細胞の生存率が非常に悪くなる。また長時間の煩雑な処理が必要なことから作業効率も低いものとなる。従って、非特許文献2を見ただけでは、当然ながら、浸透圧を使った細胞内へのナノ粒子取り込みは実用性がないと理解される。
このように理解するのが当然であるにもかかわらず、本願発明者は非特許文献2で使用された赤血球とは種類の異なる接着性細胞を使用して表面上に細胞を接着させた状態のまま低浸透圧下でナノ粒子を取り込ませてみたところ、意外なことに、生体内の温度領域で短時間のうちに大量にナノ粒子を取り込ませることに成功した。取り込まれるナノ粒子の数は、生理学的な浸透圧下において細胞にエンドサイトーシスで取り込まれる粒子数よりも数倍以上となった。そしてエンドサイトーシスされた場合には大半のナノ粒子がエンドソーム・リソソーム等の細胞内区画に隔離されるが、低浸透圧下の細胞では全体の半分以上のナノ粒子が細胞質ゾルへと局在する事が観察された。また、取込み処理による細胞死は検出されず、長期間培養後の細胞の生存率も十分に高くなった。
本願発明者による上記細胞取込み処理の実験は、HeLa細胞だけではなく、他にも2種類の接着性細胞(HEK293及びL929)について行ったが、何れもHeLa細胞と同様な結果が得られた。従って、本願発明者による実験(実施例で詳細に説明する)で得られた結果は単にHeLa細胞に特異的な現象ではなく、接着性細胞に共通なものであるとすることに高い蓋然性がある。また浮遊性細胞であっても、付着性表面上に強制的に接着し伸展させた、つまり現に接着している浮遊性細胞に対する粒子の導入も接着性細胞と同様に可能である。
浮遊している赤血球では取込みが困難であるところ、接着細胞では低浸透圧下で容易にナノ粒子が取り込まれる理由は以下の通りであると考えられる。
ナノ粒子は全て水溶液と比較して比重が大きい。従って、ナノ粒子は底面に接着している接着細胞の細胞膜上に沈殿し接触する。この際に細胞膜に圧力が加わる。通常の、つまり体液と同程度の浸透圧下ではこの接触の際の圧力があってもナノ粒子は細胞質内に流入しないが、低浸透圧中の細胞膜には取り込まれる。
ここで、浮遊する細胞の場合は、重力・比重によるナノ粒子の沈殿付着が難しい上に、細胞の形状が球に近づくために低浸透下の水分の流入に弱い。具体的には、球状に近い浮遊細胞では比較的少ない量の水の流入により破裂が起こる。従って、浮遊細胞をナノ粒子を含む低浸透圧環境に置いた場合、細胞が破裂して死滅する前にこの処理を停止した場合にはナノ粒子がほとんど取込まれず、他方、ナノ粒子が充分取り込まれるまでこの状態を継続すると、多数の細胞が破裂により死滅してしまう。何れにせよ、この方法を浮遊細胞に適用した場合には非常に効率の悪い処理になってしまう。
これに対して、細胞が表面に接着する場合には平板的な形状、すなわち体積に比べて厚みが薄い形状を取る。平板な接着細胞は表面積に比べて体積が小さいので、水が流入しても破裂寸前のほとんど球状の状態に膨れ上がるまでには、流入量、時間ともかなりの余裕がある。本発明では接着細胞が有しているこの余裕を利用して、細胞の破裂が起こる前に充分な量のナノ粒子が細胞内に取り込まれると考えられる。
また低浸透圧環境下でのナノ粒子の細胞への総流入数は、生理学的な浸透圧下の細胞へエンドサイトーシスにより流入した粒子数と比較して数倍以上となる。エンドサイトーシスによる粒子取り込みでは粒子が運ばれるエンドソーム・リソソームの体積が限られることから粒子取り込み数に上限があるのに対して、細胞膜を介した細胞質ゾルへの流入については細胞質ゾルの体積がエンドソーム・リソソームの体積と比較して遥かに大きいためにそのような制限を受けにくいことが理由の一つと考えられる。
ここで注意すべき点として、上に示した理由付けは、本願発明者による上記実験結果を見て初めて出てきたものであることである。浮遊細胞と接着細胞とではナノ粒子の取込みに違いがあることについては示唆もない非特許文献2を見ただけでは、接着細胞であれば非特許文献2の実験結果(非特許文献2では、低浸透圧処理の間、処理溶液を振盪し続けているため、赤血球は浮遊状態を維持しており、容器壁等への接着は起こり得ないことに注意されたい)とは逆の結果が得られると予測することができないのは当然である。従って、接着条件下の細胞に限定した本件発明のナノ粒子細胞内取込み方法は、先行文献からは予想もできない優れた結果をもたらすものである。
上で説明した本発明の原理に基づき、(1)細胞質ゾル内への効率的物質移動、(2)細胞質ゾル内でのナノ粒子と分子との結合、(3)ナノ粒子を大量に含む細胞の生体内への再導入、を実現できるので、以下に例示する様々な応用が考えられる。もちろん、本発明をこれらの態様だけに限定する意図はなく、本発明の技術的範囲は添付の特許請求の範囲のみにより定められることに注意しなければならない。
1.細胞質内へのタンパク質、その他の生体分子等の効率的導入
金ナノ粒子表面に、プラスミドDNAやsiRNA等の核酸、システイン残基(アミノ酸)を含むタンパク質を結合した複合粒子を合成する。または、脂質とヘキサデカンチオールとの混合溶液により金ナノ粒子表面上に脂質二重膜を形成することで被覆を行い、その被覆界面へ脂質結合性分子等を利用してタンパク等の生体分子を導入する。このようにして生体分子を導入した複合粒子を、低張浸透圧下で細胞へ作用させることで細胞質内へ直接・迅速・効率的に分子を導入できる。またリソソーム(低pH、多様な分解酵素を含む)を経由することを回避することで細胞質ゾル中へ導入されるタンパク質の変性や分解を防止することができる。
本態様は、核酸・タンパク質以外にもあらゆる分子に対応可能することができる。また、金ナノ粒子以外にも多様な粒子を効率よく輸送できる。例えば、これに限られるものではないが、メソポーラスのナノ粒子も使用できる。メソポーラスナノ粒子を使用すれば、分子(核酸・タンパク質・低分子等)を多孔質内に閉じ込めて高い効率で輸送できるようになる。
2.細胞質内でナノ粒子とタンパク質等の分子を結合させることによる細胞機能制御
例えば、蛍光タンパク質を細胞内へ導入することによって、細胞内の機能のための測定を行うことがある。この際に、細胞質内へ金ナノ粒子を導入し、その表面へ蛍光タンパク質を結合させることにより、細胞質内にプラズモン・アンテナを構築することで、細胞からの蛍光シグナルを増強させて検出感度を上げることができる。
3.金ナノ粒子等を多量に導入した細胞を動物の体内に移植すること
金属粒子、特に多量の電子を持つ金粒子を濃縮した細胞は、たとえば、光音響イメージング、X線透視撮影またはX線CTによって周囲と区別できる可能性がある。小動物(マウス等)から取り出した後に分離・分化させた細胞、またはヒトなど他動物由来の細胞(癌細胞株など)に対して、本特許の方法で特定の細胞に金ナノ粒子を大量に導入し生きている動物内に移植する。これにより、X線CTによるイメージングを行うことによって、個体内における細胞レベルでの動態観察が可能となる。本発明の方法を使用すれば大量の金ナノ粒子を接着細胞内へ取り込ませることができるため、X線CTによって識別可能な金ナノ粒子入り細胞が得られる。
以下で、本発明の実施例を説明する。当然のことであるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[生細胞へのGNPの取込み及びその細胞内分布]
先ず、本発明ではない、すなわち低浸透圧環境を使用しない従来の方法によってGNPがどのように細胞内へ取り込まれるかを、蛍光顕微鏡を使用して調べた。GNPの蛍光標識付けを行うため、大腸菌内に組み換え型mCherry蛍光タンパク質を発現させて、それを精製した。野生型mCherryタンパク質は内部システイン残基を有していないため、ペプチドのN−終端にシステインを遺伝子工学的に導入することで、タンパク質を硫黄−金結合を介してGNPに結合させた。細胞内に取り込まれたナノ粒子を撮影するため、HeLa細胞を5μg/mLのmCherry結合GNPとともに培養基中で2時間培養した。洗浄(washout)後、細胞中に存在する直径が5nm及び100nmの両方の粒子を含む個々の蛍光GNPを、図1A及び図1Bに示すように撮影することができた。この結果、上記標識付けは有効であり、また金表面によるmCherry蛍光の消光は検出のための重大な問題でないことが確認された。二色撮影により、ほとんどのGNPがリソソームマーカーであるLamp−1 GFPと同じ位置にあることがわかった。なお、添付図面は白黒化されているが、これらの白黒写真上では、図1A及び図1Bの下段右端にあるマージされた写真上で、GNPの蛍光とLamp−1 GFP(図中ではLamp1と表記)の蛍光とが重なっている場所では蛍光の輝度が加算されて輝度が高められていることから、上記事項が確認できる。一方、写真は示さないが、ほとんどのGNPは初期エンドソームマーカーであるRab5−GFPとは同じ位置にないことも分かった。従って、広いサイズ範囲のGNPが細胞中に取り込まれたが、予想通り、これらはエンドサイトーシスを経てリソソーム内に輸送された。
撮影の対照細胞として、界面活性剤Triton X−100で処理した細胞中のナノ粒子の局在性を調べた。この界面活性剤は細胞膜及び細胞内膜に細孔を形成し、細胞が生存できないようにしてエンドサイトーシスが機能しないようにする。予想される通り、mCherry−GNPは、短時間(約10分間)の培養により、Triton X−100で処理したHeLa細胞の細胞質中に入り込んだが、これらはリソソームの外部に位置していた。これらのGNPは、細胞膜中の孔を通して拡散によって入り込んだものと思われる。これに加えて、既にリソソーム中にGNPを含んでいる細胞にTriton X−100を添加してみたところ、これらのリソソーム中にトラップされていたナノ粒子の一部が細胞質の区画中へ漏出したように見えた。これらの結果からも、GNPとLamp1とが同じ位置にあることはGNPがリソソーム中にトラップされていることによるものであることが確認された。
[加圧された細胞膜を経由した生細胞の細胞質ゾルへのGNPの増強された取込み]
生細胞の細胞質中にナノ粒子を導入するため、2つの異なる方法を使用した。第1の方法として、培養の際のナノ粒子濃度を高くした。第2の方法では、培養中に浸透圧を細胞に印加した。これらの処理により、リソソーム経路を飽和させて、過剰の粒子が細胞質ゾル中に漏出することを期待した。更に、細胞膜に印加される浸透圧力により一部の粒子が細胞膜を透過するかもしれない。これらの実験では、修飾されていない100nmのGNPを使用することで、表面修飾により起こるかもしれないアーティファクトを回避した。これらの修飾されていないGNPは反射フィルターを使用することで撮影できた。それは、これらの粒子は背景反射よりもはるかに強く光を拡散するからである(詳細は後述)。
驚いたことに、細胞が低浸透圧に曝された時、100nmの直径のGNPはリソソーム外部の空間である細胞質ゾル中にのみ輸送することができた。このようなGNPの細胞質ゾルへの輸送は、図1C及び図1Dに示すように、各種の細胞外媒体濃度で観察された。これらの観察結果を数量化するため、各画像中で取り込まれているGNPの個数を計数した。細胞内GNPの総数は細胞外GNPの濃度を増加させても、あるいは浸透圧を300mOsm/L(生理学的な環境下における浸透圧に近い値)から100mOsm/L(低浸透圧)に変化させても増大させることができた。生理学的な浸透圧下では、細胞外GNP濃度が高い場合であってもほとんどのGNPはリソソーム中にトラップされ、これらの条件ではリソソーム経路を満杯にすることができないことを示した。換言すれば、培養の際のナノ粒子の個数を増加すればエンドサイトーシスが促進されたが、低浸透圧ストレス下の細胞だけが、GNPをエンドサイトーシス過程に入れてリソソーム中に取り込むことに加えて、もっと多くのGNPを受け入れて細胞質ゾル中に送達することができた。
ナノ粒子が実際に細胞質ゾル中に入っていて、他の細胞小器官中に包含されているのではないことを確実に証明することを試みた。共局在化を調べることで、GNPがどこに位置するかを知ることができる。より具体的には、GNPと細胞質ゾルタンパク質との結合は、GNPが細胞内の別個の区画内に隔離されている場合には起こり得ないことを利用して上記位置の特定を行った。実験では以下の2種類のたんぱく質を使用した。その一つは野生型のmCherryであり、このたんぱく質は遺伝子本体にシステイン残基を含まない。もう一つは遺伝子工学的に修飾されたmCherryであり、こちらはNとCの両方の末端に三つ組みのシステイン残基が導入されている(C−mCherry−C等)。システインに富むmCherryは金−硫黄結合を介して金表面に結合すると考えられるが、システイン残基を含まない野生型のタンパク質の方は金表面への特異的な結合能力を欠如している。両たんぱく質の遺伝子は細胞内小器官等への局在に必要な特定のアミノ酸配列であるシグナルシーケンスを欠如した状態で、哺乳類細胞用の発現プラスミドベクター中にクローニングされた。従って、これらのタンパク質は、細胞中での発現レベルが充分低く維持される限り細胞質ゾル中に均一に発現する(過剰発現した場合は、凝集やエンドソームや他の細胞小器官中への集積が発生しうる)。
細胞質ゾル中に取り込まれたGNP(浸透圧100mOsm/L以下で)は、図2Cに示す通り、C−mCherry−Cと共局在していることを見出した。これは両者が直接に結合していることを強く示している。これと対照的に、図2Bからわかるように、エンドソーム中のGNP(浸透圧300mOsm/Lの下に取り込まれたもの)と細胞質ゾルC−mCherry−Cとは共局在していなかったが、このことはこれら2つが空間的に隔離されていることを示唆している。図2Cにおける共局在が金−硫黄結合を介したGNP−タンパク質結合によるものであることを示すための対照実験として、細胞質ゾル中に存在するGNP(浸透圧100mOsm/L以下で取り込まれたもの)と、細胞質ゾル中に存在するところのシステインを欠いている野生型mCherryとの組み合わせを観察した。図2Aにあるように、両者は明確な共局在化を示さないことが観察されたことから、システインを介した金−硫黄結合により細胞質ゾル中のGNPとタンパク質の共局在が誘導されることを確認した。従って、図2Dに示すように、GNPは浸透圧の下に細胞質ゾルに入り込むと結論付けられた。
次に、浸透圧ストレスの細胞への短期的及び長期的作用を調べた。最初に、HeLa細胞にカルセインを前もって充填しておき、低浸透圧の作用を蛍光顕微鏡を使用してモニターした。その結果を図3C〜図3Eに示す。これらの圧力のかかった細胞は、図3C及び図3Dからわかるように、予期した通り、即座に膨潤した。しかしながら、細胞中にトラップされたカルセインの総量は、図3Eに示すように、わずかしか変化しなかった。これは、細胞からのカルセインの漏出は最小であったことを示している。従って、低浸透圧処理では細胞膜に巨視的な孔を開裂したり形成することはないと結論付けた。これに加えて、図3A及び図3Bに示すように、細胞増殖分析によって長期的な作用をモニターした。GNP導入のための2時間の低浸透圧処理を施した細胞を、生理学的な浸透圧に戻した後48時間の間観察したが、この低浸透圧処理はその後の細胞増殖に重大な影響を与えることはなかった。結局のところ、本願発明者の実験では、低浸透圧ストレス及び取り込まれたGNPが細胞に引き起こした顕著な損傷は何も検出できなかった。
[低浸透圧下での細胞質ゾル中へのGNP輸送のメカニズム]
フローサイトメトリーに基づく測定を行うことによって、個々の細胞の細胞質ゾル中へのGNPの取込みを統計的に解析した。従来の研究で、細胞からの後方散乱を細胞中の金属ナノ粒子の取込みの測定に使用できることが示されている。細胞中のGNPがフローサイトメトリーによって検出できるかどうかを調べるため、先ず、mCherryで蛍光標識付けされたGNPが取り込まれている細胞と修飾されていないGNPが取り込まれている細胞の夫々からの蛍光信号及び後方散乱(BSC)信号とを比較した。5μg/mLの濃度のGNPとともに2時間培養したHeLa細胞をフローサイトメーターを使って測定した。期待されたように、修飾されたGNPとともに培養された場合とmCherryで標識付けられたGNPとともに培養された場合の細胞集団は何れもGNPなしの対照細胞と比較して平均的な後方散乱信号が増大するが、mCherry−GNPとともに培養された細胞集団だけが大きな赤色蛍光を示すことを見出した。これらの測定結果を図4Aに示す。これに加えて、図4Aのドットプロット上で個々の細胞からのシグナルを個別に検討した所、増大した赤色蛍光信号を示す個々の細胞から、より大きな後方散乱信号が観察されたが、このことはこれらの細胞がmCherry−GNPを含むことも示している。これについても図4Aを参照されたい。これらの結果から、平均のBSC信号を測定することによってGNPの取込みを統計的に測定できることが示される。図4B及び図4Cに示すように、HeLa細胞とHEK293細胞の両者へのGNPの取込みは、同様に検出可能である。しかし、mCherry−GNPを含む細胞のBSC信号は、何れのタイプの細胞についてもその中に修飾されていないGNPを有する細胞のBSC信号よりもわずかに小さかった。mCherryによる修飾は一部のGNPの凝集を引き起こし、大きすぎて細胞内に入ることができない過大な集塊を生成したのかもしれない。
フローサイトメトリーに基づく測定を、浸透圧によって引き起こされるGNP取込みの測定に使用した。低浸透圧下でGNPを取り込んだ細胞からのBSC信号は、HEK293細胞の場合(図4C)もまたHeLa細胞の場合(図示せず)も、生理学的な浸透圧に曝された細胞に比べて大幅に大きくなった。低浸透圧処理により、何れのGNP濃度についても細胞からのBSCが増大した。ここで、条件毎に2000個を超える細胞について測定を行った。従って、これらの結果から、顕微鏡下での観察、すなわち低浸透圧はGNPの取込みを増加させるという図1Eに示されている観察結果が統計的に検証される。
GNPがどのようにして細胞質ゾル内に入り込むことができるのかを調べるため、エンドサイトーシス阻害剤が細胞内への取込みに影響を与えるか否かを調べた。多くの阻害剤が存在するが、ここではブレフェルジンA(brefeldin A、BFA)及びコルヒチンを選択した。その理由は、これらは細胞膜構造には影響を与えず、細胞質成分を変化させるだけだからである。BFAが阻害するのはGBF−1であるが、これは小胞体−ゴルジ体逆行輸送(ER-golgi retrograde transport)に関わるグアニン交換因子である。コルヒチンはマクロピノサイトーシス阻害剤であって、チューブリンGTPase活性を変更する。期待されるように、ほとんどのGNPがエンドサイトーシス経路に入ってリソソーム中にトラップされる場合(図1A及び図1Bに示すように、生理学的な環境に近い浸透圧である300mOsm/Lにおいて濃度5μg/mLのGNPとともに培養した場合)には、BFAとコルヒチンは何れも、細胞のBSC信号を大きく減衰させた。平均BSC信号は4.2E+5(対照細胞、つまり、両方の阻害剤だけを与えた細胞)、7.7E+5(GNPを与えた細胞)、5.8E+5(GNP及びBFAを与えた細胞)、5.5E+5(GNP及びコルヒチンを与えた細胞)であった。なお、平均化する前のデータを図4Eに示す。これらの結果は、BFAとコルヒチンは両方ともGNPのエンドサイトーシスを阻害したことを示している。これとは対照的に、浸透圧が100mOsm/Lの場合には、これらの阻害剤ではBSCのレベルが変化しないことが繰り返し観察された。平均BSC信号は、両方の阻害剤だけを与えた対照細胞では6.6E+5、GNPを与えた細胞では10.0E+5、GNP及びBFAを与えた細胞では9.8E+5、またGNP及びコルヒチンを与えた細胞では10.4E+5であった。なお、平均化前のデータを図4Fに示す。この結果は、エンドサイトーシスを阻害しても低浸透圧下での細胞内へのGNP取込みは阻止されないことを示す。
エンドサイトーシスを阻害しても細胞中へのGNPの取込みは阻止されなかったので、細胞が低浸透圧ストレスにさらされた時にはGNPは細胞膜を通して直接拡散することができるとの仮説を立てることができる。この仮説を更に検証するため、細胞膜に圧力をかけることで分子を取り込むことができるか否かを調べた。その結果、図4Gに示すように、可溶性の緑色蛍光タンパク質(GFP)を5μMの濃度で培養した場合、その取込み量は圧力を変化させても僅かしか変化しないことを見出した。従って、細胞膜は高い浸透圧下であっても高度に親水的な分子に対しては基本的には非透過性である。しかしながら、膜透過性の蛍光低分子の場合、図4H及び図4Iに示すように、カルセイン及びDiBAC(3)の取込みが大幅に増大したことが観察された。図4Hにおいて、当初カルセインは非蛍光性の疎水性エステルの形で細胞に添加したが、細胞質中のエステラーゼはこの形態のカルセインを消化するので、もはや細胞膜を透過できない蛍光性で親水性のカルセインが細胞質内に蓄積する(図3C〜図3Eを参照)。DiBAC(3)はビスオキソノール型のアニオン分子であって、膜電位についての蛍光指示薬としてしばしば使用される。しかしながら、DiBAC(3)の取込みは、細胞外培地のイオン濃度が突然変動することによって引き起こされることがある細胞膜の瞬間的な脱分極(instantaneous depolarization)によるものではない。それは、この低分子は細胞が低浸透圧ストレスに2時間連続的に曝された後で添加したからである。細胞膜電位の長期的な脱分極については、低浸透圧(177〜200mOsm/L)は膜電位に微小な変化(5〜10mVの脱分極あるいは過分極)しかもたらさなかったとの論文が存在している。この変化は本願発明者が観察したものよりも小さい。従って、DiBAC(3)の取込みを増大させる別のメカニズム、例えば各種の疎水性の分子やナノ粒子の取込みの増大についてよく見られる膜構造の変化のようなもの、が存在するかもしれない。
更に、図3Bに示すように、急速な細胞の膨潤も観察した。これは横方向の張力を増大させ、細胞膜を引き延ばすことさえあるかもしれない。このような引き伸ばしが起きていると、細胞膜の基本構造及び動力学特性が変化し、疎水性層の分子流動性が減少するとともに層の厚みが薄くなるかもしれない。本願発明者は、このような変化が細胞膜の透過性を実効的に増大させ、重力の影響によって比重の大きいGNPが膜を透過して細胞質ゾル中に直接浸透する現象を引き起こすと推測している。これはまた、図4Gに示すように親水性の高いタンパク質の取込みを増大させるには不十分なものの、図4H及び図4Iに示すように疎水性低分子の浸透も促進する。従って、GNPが実際にどのようにして細胞に浸透できるかを解明するために、細胞膜構造の特徴を更に明らかにする必要がある。脂質輸送、細胞骨格動態、細胞膜トランスポーター分子及びイオンチャネル分子の活動のような細胞の能動的なプロセス、更にはイオン強度の増減によって変化するGNPと膜表面との間の相互作用なども、GNP取込みに何らかの役割を果たしているかもしれない。
[ナノ粒子を用いた細胞質ゾル中への分子の急速輸送]
これまでに説明した圧力誘起取込み機構の理解に基づいて考えれば、このプロセスは材料固有のものではなく、他の材料でも浸透圧によって細胞質ゾル中へ取り込まれる。実際図5Aに示すように、銀ナノ粒子(直径30nm)、酸化チタンナノ粒子(直径40nm)及びメソポーラスシリカナノ粒子(直径200nm、細孔サイズ4nm)について、低浸透圧下での取込みの増大が観察された。これらのナノ粒子は、一定濃度33pMで細胞とともに培養した。なお、この濃度は直径100nmのGNPについての20μg/mLの濃度と等価である。従って、浸透圧誘起取込みは、材料の性質及び粒子サイズとは独立に起こったものである。これらの結果から、ナノ粒子と細胞膜との表面相互作用は低浸透圧条件下での取込みについては非常に重要というわけではないかもしれない。
メソポーラスシリカナノ粒子は分子を細胞内へ輸送するための「運搬装置」としても開発されてきた。従来のほとんどの研究では、これらの粒子はエンドサイトーシスにより細胞に取り込まれ、分子を細胞質ゾルへ送達するためには非効率的で時間のかかるエンドソーム脱出(endosomal escape)が必要とされる。このような緩慢なプロセスは長期的な作用、例えば送達された遺伝子素材により引き起こされる数日間にわたる細胞変化のようなもの、を観察するには有益である場合があるかもしれない。しかし、取込み分子を素早く送達することが必要なシステムには理想的でない。これとは対照的に、本発明ではナノ粒子を数時間以内に細胞質ゾルへ直接に送達できるようになる。分子送達システムのモデルとして、メソポーラスシリカナノ粒子(直径200nm、細孔サイズ4nm)中に蛍光性のファロイジンをロードし、浸透圧を使用してこれらのナノ粒子をHeLa細胞中に取り込んだ。図5Cに示すようにフィラメント状の染色箇所が1時間以内に細胞中に現れ、これによりファロイジンが細胞質ゾル中へ輸送されてフィラメント状のアクチンと結合したことが示された。これとは対照的に、生理学的な浸透圧下では図5Bに示すように蛍光スポットが見られただけであるが、これはファロイジンがロードされたナノ粒子がリソソーム中にトラップされ、ファロイジンの拡散はリソソーム内に局限されていることを示唆している。これらの結果から、図5Dの右側に図式的に示すように、細胞を低浸透圧下でナノ粒子に曝すことによって、分子を急速かつ効率的に細胞質ゾル中に送達できることがわかる。
[細胞質ゾル中タンパク質−GNP結合を利用した、細胞内のプラズモンナノアンテナ構築]
細胞質ゾル中のGNPを使用して細胞の蛍光信号を変調することを検討した。これは診断及びイメージング用途に有用となる可能性がある。図2に示されるGNPと蛍光タンパク質との間の相互作用を調べることで、これらの用途の開発を試みた。mCherryタンパク質(野生型及びC−mCherry−C)に加えて、緑及び近赤外線(NIR)蛍光タンパク質であるAcGFP及びiRFPも発現させて、GNPがどのようにこれらのたんぱく質の蛍光を細胞内で変調することができるかを調べた。先にC−mCherry−Cについて行ったように、複数のシステイン残基をAcGFP及びiRFPに付加した(以下、C−GFP−C及びC−iRFP−Cと称する)。ただし、ここで野生型AcGFP及びiRFPは内部にシステイン残基を含む。これにより、図6A中のC−GFP−C、C−mCherry−C及びC−iRFP−Cのグラフに示すように、改変されたタンパク質(C−GFP−C、C−mCherry−C及びC−iRFP−C)を発現した細胞の蛍光信号は取り込まれた細胞質ゾル内GNPによって増強されることがわかった。これと対照的に、図6A中のmCherry(WT)のグラフからは、野生型mCherryを発現した細胞についてはこのような増強は観察されなかった。先に、C−mCherry−Cとは対照的に、図2Aにあるように、野生型のmCherryはGNPに結合しないことを示した。従って、これらの結果から、GNPと蛍光タンパク質との相互作用は蛍光を増強するように機能したことが証明される。
貴金属粒子は光学アンテナのように振る舞って、プラズモン増強蛍光により、隣接する蛍光性の分子の吸収や放射特性を増幅することができる。従って、細胞の蛍光増強の全体は、GNPに結合された全蛍光性タンパク質によって起こされる積算的な集団(ensemble)プラズモンアンテナ効果であると解釈することができる。単一分子のプラズモン増強蛍光は、励起波長が局所表面プラズモン共鳴(LSPR)にオーバーラップしたとき最も強くなり、蛍光色素分子の放射波長は粒子のLSPRから赤方偏移する。以下の表に示すように、異なった励起波長を有する複数の蛍光色素分子間では増幅度が変化し、各蛍光色素分子の放出の増幅度は放出波長が長い方が僅かに強いことがわかった。これらのタンパク質のピーク励起波長は夫々475nm(AcGFP)、587nm(mCherry)、690nm(iRFP)であった。まとめて言えば、これらの結果は、蛍光タンパク質とGNPとの結合は蛍光信号の増幅に使用でき、また増強度はプラズモンアンテナ効果によると考えるのが最も確からしいということを示している。これに加えて、各種のレーザー(488nm、561nm、638nm)を使用して各々のタンパク質を励起していることから、またGNP表面によって各タンパク質の構造が特異的に影響されている可能性もあるので、観察された波長依存性の蛍光増強について各蛍光色素分子固有の寄与があるかもしれない。








上掲の表においては、異なる波長レンジの蛍光検出器において各タンパク質を発現する細胞の平均蛍光信号を測定し、GNPを有する細胞(浸透圧100mOsm/Lで2時間の取込み処理)と対照細胞(GNPを加えずに浸透圧100mOsm/Lで2時間培養)との間で比較した。全ての条件で、2000個を超える細胞を測定した。
[細胞質ゾル中でのGNPのクラスタ形成]
実施例中で使用した100nmのGNPの水溶液中での吸収スペクトルは550〜570nmに最大値を有していた。GNPに見られる強い光吸収はLSPRによるものであり、単一のGNPのLSPRによって生成された電磁(EM)場の強度はこれらの波長の周囲で最も大きくなる。プラズモン増強蛍光はまた、励起光の波長がこれらの波長に近いとき最も大きくなることが知られる。しかしながら、上の表に示すように、iRFPについてのプラズモン増強(690nmで励起)の方がmCherryについてのプラズモン増強(587nmで励起)よりも大きいことが観察された。この食い違いは細胞質ゾル中でのGNPのLSPRの赤方偏移で説明できるだろう。つまり、赤方偏移したLSPRがiRFP励起スペクトルともっと良くオーバーラップした可能性があるということである。LSPRのこのような赤方偏移は、タンパク質の結合あるいはGNPのクラスタ形成等のGNPの表面状態の変化によって引き起こすことができる。GNP表面へのタンパク質の結合は屈折率を変化させ、その結果、LSPR波長を約10nm以下だけ赤方偏移させる。これとは対照的に、GNPクラスタは単一粒子の場合に比べて強い電磁場をサポートし、クラスタのLSPRはもっと大きな規模で赤方偏移及び帯域の拡大をもたらす傾向がある。iRFPの場合の励起波長は単一のGNPのLSPR波長よりも100nm程度長いので、GNPのクラスタ形成の方が、単粒子へのタンパク結合と比較すると、上記観察結果をよりよく説明できる可能性がある。
LSPRの変調を明らかにするため、細胞質ゾル中のGNPの散乱を暗視野顕微鏡によって測定した。この測定では、GNPから散乱された光だけが検出され、光の色をカラーCCDカメラの赤、緑及び青(RGB)のピクセルに分割された信号として記録することができる。GNPから散乱された光はGNPのピークLSPR波長付近で大きく増強されるため、粒子のLSPRが赤方偏移しているのであれば、散乱された光の色は更に赤く見えるはずである。細胞質ゾル中のGNPとリソソーム中のGNPとの測色上の違いを求めるため、図1Fに示すように、夫々浸透圧100mOsm/L及び300mOsm/Lの下でHeLa細胞に取り込まれたGNPを測定した。これらの測定は外来の蛍光タンパク質が存在しない状態で行った。実際、図6B及び図6Cに示されているRGBの全てのチャネルからの出力で構成された画像では、リソソーム中にトラップされているGNPの、概ね黄色がかって見えるGNP(図6B下側の拡大像を参照。これは白黒化されているが、元のカラー画像では特にその中の輝度が高い、つまり白黒画像で白色の部分が黄色に見えている)と比較すると、細胞質ゾル中のGNPの赤方偏移が観察される(図6Cの下方の拡大像を参照。図6Bの拡大像とは異なり、元のカラー画像中でのGNPの像の色相はほぼ一様に赤色である)。更に、壊死細胞の細胞質ゾル中に拡散したGNPの同様な赤方偏移も観察した(壊死細胞では細胞膜は破裂している)。
単一のGNPからの散乱光のスペクトルを測定して、図6Dに示す結果を得た。細胞質ゾル中の最も明るいGNPのスペクトルは、リソソーム中の黄色いGNPのスペクトルに比べて、100nm程度赤方偏移していた。リソソーム中のこれらの黄色いGNPは単一のGNPであると考えられる。そのわけは、これらの黄色いGNPのスペクトルは図6Dに示すところの細胞外の単一のGNPのスペクトルと非常に類似していたからである。これに加えて、図6Dからわかるように、細胞質ゾル中の赤方偏移したGNPのスペクトルは、単一GNPのスペクトルの数倍の強度となった。これは、細胞質ゾル中のこれらのGNPスポットが1個よりも多くのGNPを含んでいるらしいことを示唆している。しかしながら、GNPスポットの物理的なサイズは細胞質ゾル中でもリソソーム中でも同じように見えた。このことは、細胞質ゾル中の大きく赤方偏移しているGNPスポットでも多数の直径100nmのGNPを含んでいるわけではないことを示唆している。数個程度のGNPを含むクラスタが赤方偏移を引き起こすことができるかどうかを調べるため、GNPの単量体、二量体及び三量体の散乱スペクトルを有限差分時間領域法(TDTD法)によってシミュレーションし、図6Eに示す結果を得た。これらのシミュレーションにより、二量体であっても、単一のGNPと比較したとき、散乱スペクトルに約100nmの赤方偏移をもたらすとともに散乱強度が数倍に増幅されることが示された。これに加えて、図6B及び図6C中の全てのGNPスポットについてのRGBピクセル強度を測定した。その結果、図6F及び図6Gからわかるように、全てのGNPのRGB強度及び青に対する赤の強度の比は細胞質ゾルGNPの場合に増強されることが見出された。これらの解析の結果、細胞質ゾル中のGNPスポットはリソソーム中のGNPスポットに比べてより多くのGNPを含み、それらの散乱スペクトルが赤方偏移したということが統計的に確認された。これらの結果から、細胞質ゾル中のGNPはクラスタを形成してLSPRの赤方偏移を引き起こす傾向があることが示された。
細胞質ゾルではタンパク質が密に存在するので、タンパク質の吸着によるGNPの表面中性化に加えて枯渇力(depletion force)が細胞質ゾル中でのGNPクラスタ形成を引き起こす可能性がある。これとは対照的に、リソソーム中では消化酵素による分解のためにタンパク質の密度が低くなって、さらにまた単一のリソソーム中のGNPの個数が比較的少ないので、クラスタ形成の頻度は相対的に小さくなるかもしれない。クラスタ中のナノメートル規模のギャップ中に電磁波が局在し、蛍光染料分子がこれらのギャップにトラップされた場合に単一粒子よりも何倍も大きな蛍光増強が引き起こされる。本願発明者の協力者が行なったFDTDシミュレーションでも、GNPのクラスタ形成の結果、長波長側では、より大きな空間において電磁場の増強が起こることが示された。従って、GNPクラスタ形成は、図6Hに概念的に示すところの細胞蛍光の蛍光染料分子に依存した増幅の原因となっていると考えられる。
[まとめと検討]
低浸透圧によって細胞質ゾル中へのナノ粒子の取込みが引き起こされることを示した。また、本願発明者の解析により、これらの取り込まれたナノ粒子の大部分は圧力のかかった細胞膜を通して直接浸透したものであることが示唆される。浸透圧ストレスの下でのこのような浸透がどのようにして起こり得るかは、物理化学の基本的なテーマである。しかしながら、この機構を完全に解明するためにはさらに研究を進めることが依然として必要とされる。というのも、これは脂質膜の生物物理学の単純な問題ではないからである。脂質だけの小胞では膜構造は浸透圧によって劇的に変化し、あるいは破裂する。しかし、細胞膜の構造は低浸透圧であっても維持されることが観察された。このような安定性・堅牢性は、物理的にはアクチンフィラメントのような細胞内の物理的構造によって、また、化学的には細胞膜の損傷を治癒するためのイオンチャネル及び輸送体による制御された分子輸送や脂質の輸送によって成り立っている。更には、より生理学的な視点からの浸透圧の研究も重要である。例えば、最近の研究によれば、膜の浸透圧膨張は動物での細胞内シグナル伝達で積極的な役割さえも演じている可能性があることが示唆されている。
細胞質へのナノ粒子の送達は、治療から医学的なイメージングまで、多様な用途に有用である。その例として、図5A〜図5Dを参照して膜を透過できない分子を細胞質ゾル中へ輸送できることを示した。この手法はエンドソーム脱出を巧妙に回避し、従ってこれは数時間から数日も要した従来のエンドソーム脱出を利用した方法に比べて大幅に高速である。更には、ナノ粒子を「貨物運搬装置」として使用することにより、送達の効率を増大させる。それは、図4Gからもわかるように、水溶性の親水性タンパク質(例としてGFPを挙げた)は単に低浸透圧環境とするだけでは細胞質内への輸送効率が増大しないからである。生体内で浸透圧を印加して細胞内にナノ粒子を導入することはそれほど単純なことではないが、本発明はインビトロでナノ粒子を前もってロードしておいた細胞を移植することによって生体内にも適用できる。すなわち、生体内から取り出した細胞、または株化細胞、またそれらを分化・培養した細胞にインビトロで適切な浸透圧の下でナノ粒子を取り込み、その後これらナノ粒子取り込み済みの細胞を、細胞を取り出した元の生体または別の個体へと移植する事が可能である。もう一つの例として、図6A〜図6Hを参照して説明したように、生細胞内にプラズモンアンテナを作成することができる。これにより、多様な種類の測定・分析やイメージングの感度の向上に役立たせることができる。これらの例は、本願発明により、遺伝子操作を必要とせずに、人工的な分子プラットフォームを細胞内に注入できることを一般的に示している。これは基本的な細胞生物学の研究のための新たな手段を提供することにもなる。
[材料及び方法]
<化学薬品及び遺伝子素材>
金属ナノ粒子及び無機ナノ粒子は、金ナノ粒子については田中貴金属(東京)から、銀ナノ粒子はグリーンケム株式会社(堺)から、酸化チタンは石原産業(大阪)から、またメソポーラスシリカはSigma Aldrich(米国ミズーリ州)から入手した。これらナノ粒子の特性も生業業者から提供されたものである。ブレフェルジンA及びコルヒチンはSigma Aldrichから入手した。カルセインAM、DiBAC(3)は同人化学研究所(熊本)から入手した。Alexa555で標識が付けられたファリオジンはThermo Fischer(米国マサチューセッツ州)から入手した。BSA及びTriton X−100は和光純薬工業(大阪)から入手した。野生種のLamp1及びRab5の遺伝子はDr. Walther Mothes及びDr. Ari Heleniusから入手したベクターから、pAcGFP−N1/C1ベクター(タカラバイオ(滋賀))へサブクローニングした。C−AcGFP−C及びC−mCherry−C遺伝子は3つの追加のシステイン残基を含む配列を野生型AcGFP、mCherry遺伝子のN−末端及びC−末端の両方に導入することで構築した。既にシステイン残基をN−、C−両末端の近傍に有するiRFPへは2つのシステイン残基を含む配列を両末端に付加することでC−iRFP−C遺伝子を構築した(iRFP遺伝子はDr. Vladislav Verhushaから入手)。これらの遺伝子及び野生型mCherryはpAcGFP−N1ベクター内のAcGFP遺伝子と組み替えてクローニングした。
<タンパク質の生成及びナノ粒子標識付け>
可溶性のcys−mCherryタンパク質を発現し精製するため、N−末端での一つのシステインとmCherryとの融合遺伝子をpGex6p1ベクター(GE Healthcare)中でクローニングし、IPTG誘導を使ってBL21−DE3大腸菌中にcys−mCherryタンパク質を発現させた。可溶性のGFPタンパク質を発現し生成するため、AcGFPをpET30aベクター(EMD millipore)中でクローニングし、IPTG誘導を使ってBL21−DE3大腸菌中にAcGFPタンパク質を発現させた。タンパク質(mCherry及びGFP)の精製は、mCherryについては、グルタチオン−セファロース4B(GE)を使用し、またそれに続いてPreScissionプロテアーゼ(GE)による消化(digestion)を行った。GFPの方はNi−NTA His−Band Resin(EMD millipore)を使用した。両者ともその後にゲル濾過精製を行った。タンパク質濃度は分光光度計を使用して測定した。GNPへの標識付けは、精製したcys−mCherryと0.1mMのTHCPの存在の下でpH=7で混合して2時間以上振盪することで行った。
<細胞培養、遺伝子導入、及び細胞増殖分析>
血清入りDMEM培地中で継代維持されているHeLa細胞、HEK293細胞及びL929細胞を、イメージング実験の24時間前にLipofectamine 2000(Thermo Fischer)を使用して遺伝子導入を行った。蛍光顕微鏡、反射顕微鏡及び暗視野顕微鏡観察については細胞をガラスボトムディッシュ(松浪硝子工業(大阪))上で培養したが、他の試験では通常の細胞培養皿及びマイクロプレート上で培養した。細胞増殖試験では、対照細胞及び各種の浸透圧下でGNPとともに培養する細胞はGNPとともに2時間培養した後のいくつかの時点で試験に付された。Cell Counting Kit−8(同仁化学研究所)を使用し、460nmにおけるWST−ホルマザンの吸収を、マイクロプレートリーダー(日立ハイテクノロジーズ(東京))を使用して測定した。
<低浸透圧ストレス、細胞中へのナノ粒子導入及び分子送達>
細胞への2時間の低浸透圧印加のため、培地の2/3を水及び/またはGNPあるいは他のナノ粒子を含有する緩衝液の混合液で置換した。タンパク質濃度一定での各種のオスモル濃度を比較するため、培地(血漿入りのDMEM)の1/3の体積を残して、最終的に300mOsm/L溶液とするものについては残りを2/3体積のHEPES緩衝生理食塩水(300mOsm/Lに調整したHBS)で、最終的に200mOsm/L溶液とするものについては1/3体積のHBSと1/3体積の水との混合物で、また最終的に100mOsm/L溶液とするものについては2/3体積の水で置換した。溶液のpHは実験の間中ほぼ7に保持した。たんぱく質(GFP)及び蛍光低分子(セルセイン−AM及びDiBAC(3))の取り込み実験においては、細胞を低浸透圧下に2時間置いた後に、低浸透圧状態を維持したままで各分子を添加することで行った。エンドサイトーシス阻害剤添加の実験においては、ナノ粒子を添加する1時間前に各阻害剤(5μMのBFA及び10μMのコルヒチン)を細胞に添加して、GNP取り込みの間、阻害剤が含まれたままとした。過剰のナノ粒子及び分子を洗い流してから、細胞の像を撮影し、あるいはサイトメトリー分析のためにEDTA及び/またはトリプシンで細胞を剥離してPBS中に分散させた。分子送達のために、PBS中で1mg/mLのメソポーラスシリカをAlexa555で標識された6μMのファロイジンによりローディングした。遠心分離による洗浄後、収集されたナノ粒子を33pMの濃度で細胞に添加した。
<顕微鏡観察、フローサイトメトリー及び像解析>
Cascade II EMCCDカメラ(米国アリゾナ州TusconのRoper)を備えたLeica AF6000LX顕微鏡及び100×の油浸レンズを使用して蛍光イメージングを行った。非蛍光性のGNPの散乱光は、535nmの入射光及び反射光を通すフィルターキューブを使用して検出した。DS−Ri1ディジタルカメラ及び40×水浸レンズを備えたNikon ECLISPE 80i顕微鏡を使用して暗視野顕微鏡撮影を行った。散乱スペクトルは、光ファイバーを介して顕微鏡に結合された小型グレーティング分光器(Ocean Optics UBS4000、スペクトル分解能1.55nm)を使用して測定した。収集容積(collection volume)は約1μmであり、取得時間は1秒であった。像中のGNPスポットはImageJ(NIH)を使用し、バックグラウンドシグナル減算及び閾値処理を全ての像に同じ態様で適用することで検出を行った。RGBの数値化のために、同じ条件(露出時間等)で撮影された元画像を比較した。細胞ソーターSH800(ソニー)を使用してフローサイトメトリー解析を行い、またレーザー線(488nm、561nm及び638nm)及び放射フィルターセット(緑:500nm〜550nm、赤:570nm〜630nm、遠赤色:650nm〜680nm、近赤外:755nm〜815nm)を使用して蛍光及び散乱検出を行った。
Igor I. Slowing et al., "Mesoporous Silica Nanoparticles for Intracellular Delivery of Membrane-Impermeable Proteins", J. AM. CHEM. SOC. 2007, 129, 8845-8849. Mounir Ibrahim et al., "Loading Erythrocytes with Maghemite Nanoparticles via Osmotic Pressure Induced Cell Membrane Pores", CP1311, 8th International Conference on the Scientific and Clinical Applications of Magnetic Carriers , 2010

Claims (11)

  1. 基板に固定された接着性細胞、又は、基板上に沈殿し付着した浮遊系細胞である接着細胞を、ナノ粒子が分散しており、浸透圧が生理学的な環境における浸透圧よりも低い水溶液に生体内での温度領域で浸漬する、接着細胞へのナノ粒子取り込み方法。
  2. 前記ナノ粒子の直径は30nm〜1000nmである、請求項1に記載の接着細胞へのナノ粒子取り込み方法。
  3. 前記水溶液の浸透圧モル濃度が250mOsm/L以下である、請求項1又は2に記載の接着細胞へのナノ粒子取り込み方法。
  4. 前記ナノ粒子は第1の物質からなる担持体粒子と、前記第1の物質とは異なる第2の物質との複合粒子である、請求項1から3の何れかに記載の接着細胞へのナノ粒子取り込み方法。
  5. 前記担持体粒子は金属ナノ粒子、無機ナノ粒子及びポリマーナノ粒子からなる群から選択される粒子であり、前記第2の物質は核酸、タンパク質、脂質、合成高分子及び低分子医薬品からなる群から選択される物質である、請求項4に記載の接着細胞へのナノ粒子取り込み方法。
  6. 前記金属ナノ粒子は金ナノ粒子、銀ナノ粒子及び銅ナノ粒子からなる群から選択される金属ナノ粒子である、請求項5に記載の接着細胞へのナノ粒子取り込み方法。
  7. 前記担持体粒子はメソポーラスナノ粒子であり、前記第2の物質が少なくとも前記担持体粒子のメソ細孔内に収容される、請求項5または6に記載の接着細胞へのナノ粒子取り込み方法。
  8. 前記メソポーラスナノ粒子はメソポーラスシリカナノ粒子である、請求項7に記載の接着細胞へのナノ粒子取り込み方法。
  9. 前記ナノ粒子はエンドサイトーシスの過程を経由せずに、前記接着細胞の細胞質ゾルに直接輸送される、請求項1から8の何れかに記載の接着細胞へのナノ粒子取り込み方法。
  10. 請求項1に記載の方法を使用して接着細胞の細胞質ゾル中へ金属ナノ粒子を取り込ませ、前記細胞質ゾル内の蛍光タンパク質を前記取り込まれた金ナノ粒子の表面に結合させる、細胞質内にプラズモンアンテナを作製する方法。
  11. 前記金属ナノ粒子は金ナノ粒子である、請求項10に記載の細胞質内にプラズモンアンテナを作製する方法。
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