以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
更に、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを付す場合もある。
なお、以下の実施の形態においてA〜Bとして範囲を示す場合には、特に明示した場合を除き、A以上B以下を示すものとする。
(実施の形態1)
<磁気浮上式鉄道の軌道>
始めに、実施の形態1の温度推定方法が適用される磁気浮上式鉄道の軌道について説明する。
図1は、実施の形態1の温度推定方法が適用される磁気浮上式鉄道の軌道を模式的に示す斜視図である。図2は、実施の形態1の温度推定方法が適用される磁気浮上式鉄道の軌道を模式的に示す断面図である。
図1及び図2に示すように、実施の形態1の温度推定方法が適用される磁気浮上式鉄道の軌道1は、磁気浮上式鉄道の車両2が走行する軌道であり、走行路3と、走行路3上に、走行路3の幅方向において互いに間隔を空けて設けられた2つの側壁4と、を有する。
図1及び図2に示す例では、走行路3及び2つの側壁4を有する軌道1は、軌道1を磁気浮上した状態で走行する車両2を案内する。側壁4の、車両2と対向する側の側面部4aには、例えば、車両2の補助案内車輪を支持するガイド部5、浮上案内コイル6及び推進コイル7等が設けられている。図2に示す例では、浮上案内コイル6は、側壁4の側面部4aに、推進コイル7を介して設けられている。また、車両2の、側壁4と対向する側の側面部2aには、超電導磁石2b及び冷凍システム2c等が収容される。
つまり、図1及び図2に示す磁気浮上式鉄道は、車両2に、即ち車上に設けられた超電導磁石2bと、軌道1に、即ち地上に設けられた浮上案内コイル6及び推進コイル7との電磁気的な相互作用、即ち電磁力により、車両2に浮上力、案内力及び推進力を与えて、車両2を軌道1に対して非接触で高速移動させる磁気浮上式鉄道である。
なお、後述する図3を用いて説明するように、複数の推進コイル7により推進コイル群PGが形成される。また、電機子コイルとしての推進コイル7を含む推進コイル群PGにより電機子コイル装置としての推進コイル装置PDが形成され、超電導磁石2bにより界磁コイル装置が形成されるものとする。このような場合、図1及び図2に示す例では、車両2が走行する軌道1に沿って設けられた電機子コイル装置としての推進コイル群と、車両2に設けられた界磁コイル装置と、により地上一次リニアシンクロナスモータ(Linear Synchronous Motor:LSM)が形成されることになる。
<推進コイル及び浮上案内コイル>
次に、本実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置が有する推進コイル及び浮上案内コイルについて説明する。図3は、実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置が有する複数の推進コイル及び複数の浮上案内コイルの配列を模式的に示す図である。
図3に示すように、複数の推進コイル7により推進コイル群PGが形成される。言い換えれば、推進コイル群PGは、複数の推進コイル7を有する。
図3に示すように、地上コイル装置が備える推進コイル装置PDは、軌道1の幅方向における両側の各々に配置された2つの推進コイル群PGを有する。軌道1の幅方向における一方の側に配置された推進コイル群PGは、軌道1の長さ方向に沿って配列された複数の推進コイル7としての推進コイル7aを有する。軌道1の幅方向における反対側に配置された推進コイル群PGは、軌道1の長さ方向に沿って配列された複数の推進コイル7としての推進コイル7bを有する。
軌道1の幅方向における一方の側に配置された推進コイル群PGが有する複数の推進コイル7aは、互いに異なる位相を有する三相交流のU相、V相及びW相の各相の推進コイル7aが、軌道1に沿って、一例ではU相、V相、W相、U相、V相、W相・・・の順になるように、即ちU相、V相及びW相の順序で繰り返し配置される。図3では、U相の推進コイル7aを、推進コイル7Uと表示し、V相の推進コイル7aを推進コイル7Vと表示し、W相の推進コイル7aを推進コイル7Wと表示している。
軌道1の幅方向における反対側に配置された推進コイル群PGが有する複数の推進コイル7bは、三相交流のU相、V相及びW相の各相の推進コイル7bが、軌道1に沿って、一例ではU相、V相、W相、U相、V相、W相・・・の順になるように、即ちU相、V相及びW相の順序で繰り返し配置される。図3では、U相の推進コイル7bを、推進コイル7Uと表示し、V相の推進コイル7bを推進コイル7Vと表示し、W相の推進コイル7bを推進コイル7Wと表示している。
なお、例えばU相及びV相に着目すると、軌道1の幅方向における両側の各々において、複数の推進コイル7Uと、複数の推進コイル7Vとは、軌道1の長さ方向に沿って1つずつ交互に配置されている。
軌道1の幅方向における両側の各々において、軌道1の長さ方向に配列された複数のU相の推進コイル7Uは、複数のU相の推進コイル7Uと複数の接続ケーブル8Uとが1つずつ交互に配置され、且つ、互いに隣り合う2つの推進コイル7Uが接続ケーブル8Uを介して電気的に接続されることにより、互いに電気的に直列に接続される。
軌道1の幅方向における両側の各々において、軌道1の長さ方向に配列された複数のV相の推進コイル7Vは、複数のV相の推進コイル7Vと複数の接続ケーブル8Vとが1つずつ交互に配置され、且つ、互いに隣り合う2つの推進コイル7Vが接続ケーブル8Vを介して電気的に接続されることにより、互いに電気的に直列に接続される。
軌道1の幅方向における両側の各々において、軌道1の長さ方向に配列された複数のW相の推進コイル7Wは、複数のW相の推進コイル7Wと複数の接続ケーブル8Wとが1つずつ交互に配置され、且つ、互いに隣り合う2つの推進コイル7Wが接続ケーブル8Wを介して電気的に接続されることにより、互いに電気的に直列に接続される。
地上コイル装置が備える浮上案内コイル装置LDは、軌道1の幅方向における一方の側にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGに含まれる複数の推進コイル7aが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6としての浮上案内コイル6aを有する。また、浮上案内コイル装置LDは、軌道1の幅方向における反対側にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGに含まれる複数の推進コイル7bが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6としての浮上案内コイル6bを有する。
複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの各々は、8字形状を有する。浮上案内コイル6a及び6bの各々が8字形状を有することにより、浮上案内コイル6a及び6bの各々は、車両2に浮上力を与える。なお、図3では、理解を簡単にするために、浮上案内コイル6a及び6bの各々を、1回だけ巻回されたコイルとして示しているが、浮上案内コイル6a及び6bの各々については、複数回巻回されていてもよい(以下の浮上案内コイル6a及び6bの図示においても同様)。
複数の浮上案内コイル6bは、複数の浮上案内コイル6aの各々と接続線9としての接続線9a及び9bを用いてそれぞれ接続されることにより、複数の浮上案内コイル6aの各々と閉ループをそれぞれ形成する。浮上案内コイル6bが浮上案内コイル6aと閉ループを形成することにより、浮上案内コイル6a及び浮上案内コイル6bは、車両2に軌道1の幅方向における案内力を与える。接続線9a及び9bは、ヌルフラックス線とも称される。
なお、図3では、軌道1の長さ方向において互いに隣り合う2つの推進コイル7の中心間距離、即ち推進コイル7の配列間隔に対する、軌道1の長さ方向において互いに隣り合う2つの浮上案内コイル6の中心間距離、即ち浮上案内コイル6の配列間隔が、略0.5である場合を例示している。しかし、推進コイル7の配列間隔に対する、浮上案内コイル6の配列間隔の比は、特に限定されず、0.5以外の任意の値をとることができる。
<き電回路装置及びき電回路装置を用いたき電方法>
次に、本実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置が有するき電回路装置及びき電回路装置を用いたき電方法について説明する。
図4は、実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置が有するき電回路装置を示すブロック回路図である。図5は、実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置が有するき電回路装置による三重き電方法を説明するための図である。
本実施の形態1では、図5を参照して、地上コイル装置が備える推進コイル装置が3つのき電回路装置を有し、3つのき電回路装置により推進コイル装置が有する複数の推進コイルに電力を供給するき電方法、即ち三重き電によるき電方法を説明するが、その前に、まず、図4を参照して、1つのき電回路装置によるき電方法を説明する。
図4に示すように、地上コイル装置が備える推進コイル装置PDは、き電回路装置10を有し、き電回路装置10は、インバータ11と、U相、V相及びW相の三相の交流電力がそれぞれ供給される3本のき電ケーブル12と、複数の推進コイル群PGと、複数のき電区分開閉器13と、制御装置14と、を有する。図4では、U相の交流電力が供給されるき電ケーブル12をき電ケーブル12Uと表示し、V相の交流電力が供給されるき電ケーブル12をき電ケーブル12Vと表示し、W相の交流電力が供給されるき電ケーブル12をき電ケーブル12Wと表示している。3本のき電ケーブル12U、12V及び12Wの各々は、軌道1(図1参照)に沿って延在する。3本のき電ケーブル12U、12V及び12Wの各々は、インバータ11の出力端子に接続され、3本のき電ケーブル12U、12V及び12Wの各々には、インバータ11により、U相、V相及びW相の三相の交流電力の各々が供給される。
軌道1(図1参照)を走行する車両2(図1参照)が列車として運行される列車運行区間TSは、き電セクション長をそれぞれ有する複数のき電セクションPSに分割されている。推進コイル群PGと、き電区分開閉器13は、き電セクションPSごとに配置されている。き電セクション長は、通常、列車長よりも長く、例えば500mである。図4には、き電セクションPSとして、3つのき電セクションPS1、PS2及びPS3が示されているが、実際には、列車運行区間は、3つ以上の多数のき電セクションに分割されていてもよい。
き電セクションPS1、PS2及びPS3の各々には、推進コイル群PGが設けられている。図4では、き電セクションPS1、PS2及びPS3の各々にそれぞれ設けられた3つの推進コイル群PGを、推進コイル群PG1、PG2及びPG3と表示している。以下では、き電セクションPS1、PS2及びPS3を代表して、き電セクションPS1について説明するが、き電セクションPS2及びPS3の各々についても、き電セクションPS1と同様にすることができる。
き電セクションPS1に設けられた推進コイル群PGは、互いに異なる位相を有するU相、V相及びW相の三相の交流電力の各々がそれぞれ供給される3つの推進コイル群15を有する。図4では、U相の交流電力が供給される推進コイル群15を推進コイル群15Uと表示し、V相の交流電力が供給される推進コイル群15を推進コイル群15Vと表示し、W相の交流電力が供給される推進コイル群15を推進コイル群15Wと表示している。
なお、後述する図9に示すように、推進コイル群15Uは複数の推進コイル7Uを有し、推進コイル群15Vは、複数の推進コイル7Vを有し、推進コイル群15Wは、複数の推進コイル7Wを有する。
き電区分開閉器13は、き電セクションPSごとに設けられており、き電セクションPSごとに、推進コイル群PGとき電ケーブル12とが電気的に接続されていない状態と、推進コイル群PGとき電ケーブル12とが電気的に接続されている状態とを切り替える。言い換えると、き電区分開閉器13は、推進コイル群PGと、き電ケーブル12とを互いに電気的に開閉可能に接続する。また、き電区分開閉器13は、通電部としてのインバータ11と推進コイル群PGとの接続を遮断する開閉部である。
図4では、U相について、推進コイル群15Uと、き電ケーブル12Uとを開閉可能に電気的に接続するき電区分開閉器13を、き電区分開閉器13Uと表示している。また、V相について、推進コイル群15Vと、き電ケーブル12Vとを開閉可能に電気的に接続するき電区分開閉器13を、き電区分開閉器13Vと表示している。また、W相について、推進コイル群15Wと、き電ケーブル12Wとを開閉可能に電気的に接続するき電区分開閉器13を、き電区分開閉器13Wと表示している。
き電区分開閉器13Uは、インバータ11とU相の推進コイル群15Uとの接続を遮断し、き電区分開閉器13Vは、インバータ11とV相の推進コイル群15Vとの接続を遮断し、き電区分開閉器13Wは、インバータ11とW相の推進コイル群15Wとの接続を遮断する。
推進コイル群15Uの一端は、き電区分開閉器13Uを介してき電ケーブル12Uに接続され、推進コイル群15Vの一端は、き電区分開閉器13Vを介してき電ケーブル12Vに接続され、推進コイル群15Wの一端はき電区分開閉器13Wを介してき電ケーブル12Wに接続されている。また、推進コイル群15Uの他端、推進コイル群15Vの他端、及び、推進コイル群15Wの他端は、図4のように互いに電気的に接続される場合もあるが、別途3相ケーブルとは別の中性電位のケーブル(N線)を設け、それに接続される場合もある。
前述したように、き電セクションPS2及びPS3の各々についても、き電セクションPS1と同様にすることができる。そして、制御装置14は、プログラムに従って、インバータ11と、き電区分開閉器13と、を制御することにより、例えば列車の運行状況に応じて、き電セクションPSごとに、推進コイル群PGに三相交流電力を供給するか供給しないかを制御する。
次に、図5を参照して、3つのき電回路装置によるき電方法、即ち三重き電によるき電方法を説明する。
図5に示すように、推進コイル装置PDに含まれる複数の推進コイル群PGには、3つのき電回路装置10としてのき電回路装置10A、10B及び10Cにより電力が供給されるものとする。即ち、推進コイル装置PDは、3つのき電回路装置10A、10B及び10Cを有するものとする。
き電回路装置10Aは、インバータ11としてのインバータ11Aと、U相、V相及びW相の三相の交流電力がそれぞれ供給される3本のき電ケーブル12としてのき電ケーブル12Aと、複数のき電区分開閉器13としてのき電区分開閉器13Aと、制御装置(図示は省略)と、複数の推進コイル群PGとしての推進コイル群PGAと、を備えている。なお、3本のき電ケーブル12Aは、インバータ11A側と反対側の末端で三相各相をY結線した構成になっているが、図5では、理解を簡単にするために、単相即ち1本のき電ケーブル12Aのみを示している。
同様に、き電回路装置10Bは、インバータ11Bと、3本のき電ケーブル12B(図5では1本のみ)と、き電区分開閉器13Bと、制御装置(図示は省略)と、複数の推進コイル群PGとしての推進コイル群PGBと、を備えている。また、き電回路装置10Cは、インバータ11Cと、3本のき電ケーブル12C(図5では1本のみ)と、き電区分開閉器13Cと、制御装置(図示は省略)と、複数の推進コイル群PGとしての推進コイル群PGCと、を備えている。
複数の推進コイル群PGは、軌道1の幅方向において互いに対向配置された2つの推進コイル群PGの各々が、互いに異なるき電回路装置10によりそれぞれ電力が供給されるように、配置されている。また、複数の推進コイル群PGは、軌道1の長さ方向において互いに隣り合う2つの推進コイル群PGの間の境界が、軌道1の幅方向における一方の側(図5における上側)と反対側(図5における下側)とでは、軌道1の長さ方向における1つの推進コイル群PGの長さの半分だけずれるように、配置されている。
複数の推進コイル群PGは、軌道1の幅方向における一方の側(図5における上側)及び反対側(図5における下側)のいずれにおいても、例えば推進コイル群PGA、推進コイル群PGC、推進コイル群PGBの順番に繰り返されて、配置される。また、複数の推進コイル群PGA、複数の推進コイル群PGC、及び、複数の推進コイル群PGBよりなる全体の推進コイル群は、軌道1の幅方向における一方の側(図5における上側)と反対側(図5における下側)とでは、1つの推進コイル群PGの長さの1.5倍だけずれるように、配置される。
図5では、軌道1の幅方向における一方の側(図5における上側)では、軌道1の長さ方向に沿って、き電セクションPSとして、き電セクションPSB(き電セクションPSB1)、き電セクションPSA(き電セクションPSA1)、及び、き電セクションPSC(き電セクションPSC2)が、配置されている。また、軌道1の幅方向における反対側(図5における下側)では、軌道1の長さ方向に沿って、き電セクションPSとして、き電セクションPSC(き電セクションPSC1)、き電セクションPSB(き電セクションPSB2)、及び、き電セクションPSA(き電セクションPSA2)が、配置されている。
また、軌道1の幅方向における一方の側(図5における上側)では、き電セクションPSB1に、推進コイル群PGBとしての推進コイル群PGB1が配置され、き電セクションPSA1に、推進コイル群PGAとしての推進コイル群PGA1が配置され、き電セクションPSC2に、推進コイル群PGCとしての推進コイル群PGC2が配置されている。
また、軌道1の幅方向における反対側(図5における下側)では、き電セクションPSC1に、推進コイル群PGCとしての推進コイル群PGC1が配置され、き電セクションPSB2に、推進コイル群PGBとしての推進コイル群PGB2が配置され、き電セクションPSA2に、推進コイル群PGAとしての推進コイル群PGA2が配置されている。
このような配置とした場合、3つのき電回路装置10のうち1つのき電回路装置10、即ち三重き電を構成する3系統のうち1系統が故障した場合でも、推力は低下するものの、残りの2つのき電回路装置10、即ち三重き電を構成する3系統のうち2系統により列車の走行を確保することが可能である。
また、複数のき電セクションPSの各々の軌道1の長さ方向に沿った長さを、列車編成長の2倍以上にすることにより、推力を一定に保ったまま、電力が供給されるき電セクションの切替を、円滑に行うことができる。
図5に示す例では、軌道1を走行する車両2が、き電セクションPSA1、PSB2及びPSC2に在線している。また、推進コイル群PGA1、PGB2及びPGC2の各々にそれぞれ接続された3つのき電区分開閉器13の各々については、接続された状態である。そのため、推進コイル群PGA1には、き電区分開閉器13A及びき電ケーブル12Aを介してインバータ11Aから電力が供給され、推進コイル群PGB2には、き電区分開閉器13B及びき電ケーブル12Bを介してインバータ11Bから電力が供給され、推進コイル群PGC2には、き電区分開閉器13C及びき電ケーブル12Cを介してインバータ11Cから電力が供給される。
一方、推進コイル群PGB1、PGC1及びPGA2の各々にそれぞれ接続された3つのき電区分開閉器13の各々については、接続が遮断された状態である。そのため、推進コイル群PGB1、PGC1及びPGA2の各々には、電力が供給されない。
<温度推定方法>
次に、本実施の形態1の温度推定方法について説明する。本実施の形態1の温度推定方法は、磁気浮上式鉄道車両に推進力を与える推進コイル装置と、磁気浮上式鉄道車両に浮上力及び案内力を与える浮上案内コイル装置と、を備える磁気浮上式鉄道用の地上コイル装置における浮上案内コイル装置の温度を推定する温度推定方法である。
図6は、実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置を示すブロック回路図である。図7は、実施の形態1の温度推定方法の一例を示すフロー図である。図8は、実施の形態1の温度推定方法の一部のステップを説明するための図である。図8の左側は、推進コイル及び浮上案内コイルの断面図を示し、図8の右側は、図7に示すステップS1及びステップS2の詳細を示すフロー図である。図9は、実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置のうち推進コイル装置が有する測定部付近を示すブロック回路図である。
なお、図6では、図5に示した6つのき電セクションPSB1、PSC1、PSA1、PSB2、PSC2及びPSA2のうち、4つのき電セクションPSC1、PSA1、PSB2及びPSC2を図示している。また、以下では、U相、V相及びW相の三相のうちある一相のみについて説明するが、三相のうちいずれの相についても同様にすることができる。
図6に示すように、軌道1の長さ方向において、列車運行区間TSが、複数の区間SCとしての5つの区間SC1、区間SC2、区間SC3、区間SC4及び区間SC5に分割されるものとする。また、区間SC1、区間SC2、区間SC3、区間SC4及び区間SC5は、軌道1の長さ方向における一方の側から反対側に向かって、区間SC1、区間SC2、区間SC3、区間SC4及び区間SC5の順序で配置されるものとする。
区間SC1及び区間SC2において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)に、き電セクションPSC1が形成される。そして、推進コイル装置PDは、区間SC1及び区間SC2において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)に配置された推進コイル群PGC1を有する。
推進コイル群PGC1のうち、区間SC1及び区間SC2の各々にそれぞれ配置された部分を、推進コイル群PGC11及び推進コイル群PGC12とする。このとき、推進コイル装置PDは、区間SC1において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)に配置された推進コイル群PGC11を有し、区間SC2において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)に配置された推進コイル群PGC12を有することになる。推進コイル群PGC1は、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、電気的に直列に接続された複数の推進コイル7bを有するので、推進コイル群PGC11及び推進コイル群PGC12の各々も、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、電気的に直列に接続された複数の推進コイル7bを有する。
区間SC2及び区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)に、き電セクションPSA1が形成される。そして、推進コイル装置PDは、区間SC2及び区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)に配置された推進コイル群PGA1を有する。
推進コイル群PGA1のうち、区間SC2及び区間SC3の各々にそれぞれ配置された部分を、推進コイル群PGA12及び推進コイル群PGA13とする。このとき、推進コイル装置PDは、区間SC2において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)に配置された推進コイル群PGA12を有し、区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)に配置された推進コイル群PGA13を有することになる。推進コイル群PGA1は、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、電気的に直列に接続された複数の推進コイル7aを有するので、推進コイル群PGA12及び推進コイル群PGA13の各々も、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、電気的に直列に接続された複数の推進コイル7aを有する。
なお、推進コイル群PGA12に含まれる複数の推進コイル7aと、推進コイル群PGA13に含まれる複数の推進コイル7aとは、互いに電気的に直列に接続されている。
区間SC3及び区間SC4において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)に、き電セクションPSB2が形成される。そして、推進コイル装置PDは、区間SC3及び区間SC4において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)に配置された推進コイル群PGB2を有する。
推進コイル群PGB2のうち、区間SC3及び区間SC4の各々にそれぞれ配置された部分を、推進コイル群PGB23及び推進コイル群PGB24とする。このとき、推進コイル装置PDは、区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)に配置された推進コイル群PGB23を有し、区間SC4において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)に配置された推進コイル群PGB24を有することになる。推進コイル群PGB2は、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、電気的に直列に接続された複数の推進コイル7bを有するので、推進コイル群PGB23及び推進コイル群PGB24の各々も、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、電気的に直列に接続された複数の推進コイル7bを有する。
なお、推進コイル群PGC12に含まれる複数の推進コイル7bと、推進コイル群PGB23に含まれる複数の推進コイル7bとは、互いに電気的に接続されていない。また、推進コイル群PGB23に含まれる複数の推進コイル7bと、推進コイル群PGB24に含まれる複数の推進コイル7bとは、互いに電気的に直列に接続されている。
区間SC4及び区間SC5において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)に、き電セクションPSC2が形成される。そして、推進コイル装置PDは、区間SC4及び区間SC5において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)に配置された推進コイル群PGC2を有する。
推進コイル群PGC2のうち、区間SC4及び区間SC5の各々にそれぞれ配置された部分を、推進コイル群PGC24及び推進コイル群PGC25とする。このとき、推進コイル装置PDは、区間SC4において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)に配置された推進コイル群PGC24を有し、区間SC5において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)に配置された推進コイル群PGC25を有することになる。推進コイル群PGC2は、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、電気的に直列に接続された複数の推進コイル7aを有するので、推進コイル群PGC24及び推進コイル群PGC25の各々も、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、電気的に直列に接続された複数の推進コイル7aを有する。
なお、推進コイル群PGA13に含まれる複数の推進コイル7aと、推進コイル群PGC24に含まれる複数の推進コイル7aとは、互いに電気的に接続されていない。
推進コイル装置PDは、推進コイル群PGC1に含まれる複数の推進コイル7bに交流電流を通電して磁界を発生させる通電部としてのインバータ11Cを有する。即ち、インバータ11Cは、推進コイル群PGC11に含まれる複数の推進コイル7b、及び、推進コイル群PGC12に含まれる複数の推進コイル7bに、例えば同一の交流電流を通電して磁界を発生させる。また、インバータ11Cは、推進コイル群PGC2に含まれる複数の推進コイル7aに交流電流を通電して磁界を発生させる通電部である。即ち、インバータ11Cは、推進コイル群PGC24に含まれる複数の推進コイル7a、及び、推進コイル群PGC25に含まれる複数の推進コイル7aに、例えば同一の交流電流を通電して磁界を発生させる。
推進コイル装置PDは、2つの開閉部としてのき電区分開閉器13Cを有し、2つのき電区分開閉器13Cのうちの一方は、インバータ11Cと、推進コイル群PGC1に含まれる複数の推進コイル7bとの接続を遮断し、2つのき電区分開閉器13Cのうちの他方は、インバータ11Cと、推進コイル群PGC2に含まれる複数の推進コイル7aとの接続を遮断する。インバータ11Cは、き電ケーブル12C及びき電区分開閉器13Cを介して推進コイル群PGC1に接続され、き電ケーブル12C及びき電区分開閉器13Cを介して推進コイル群PGC2に接続される。
推進コイル装置PDは、推進コイル群PGA1に含まれる複数の推進コイル7aに交流電流を通電して磁界を発生させる通電部としてのインバータ11Aを有する。即ち、インバータ11Aは、推進コイル群PGA12に含まれる複数の推進コイル7a、及び、推進コイル群PGA13に含まれる複数の推進コイル7aに、例えば同一の交流電流を通電して磁界を発生させる。推進コイル装置PDは、開閉部としてのき電区分開閉器13Aを有し、き電区分開閉器13Aは、インバータ11Aと、推進コイル群PGA1に含まれる複数の推進コイル7aとの接続を遮断する。インバータ11Aは、き電ケーブル12A及びき電区分開閉器13Aを介して推進コイル群PGA1に接続される。
推進コイル装置PDは、推進コイル群PGB2に含まれる複数の推進コイル7bに交流電流を通電して磁界を発生させる通電部としてのインバータ11Bを有する。即ち、インバータ11Bは、推進コイル群PGB23に含まれる複数の推進コイル7b、及び、推進コイル群PGB24に含まれる複数の推進コイル7bに、例えば同一の交流電流を通電して磁界を発生させる。推進コイル装置PDは、開閉部としてのき電区分開閉器13Bを有し、き電区分開閉器13Bは、インバータ11Bと、推進コイル群PGB2に含まれる複数の推進コイル7bとの接続を遮断する。インバータ11Bは、き電ケーブル12B及びき電区分開閉器13Bを介して推進コイル群PGB2に接続される。
浮上案内コイル装置LDは、区間SC2において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGA12に含まれる複数の推進コイル7aが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6aを有する。また、浮上案内コイル装置LDは、区間SC2において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGC12に含まれる複数の推進コイル7bが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6bを有する。区間SC2において、複数の浮上案内コイル6bは、複数の浮上案内コイル6aの各々と接続線9としての接続線9a及び9bを用いてそれぞれ接続されることにより、複数の浮上案内コイル6aの各々と閉ループをそれぞれ形成する。
浮上案内コイル装置LDは、区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGA13に含まれる複数の推進コイル7aが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6aを有する。また、浮上案内コイル装置LDは、区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGB23に含まれる複数の推進コイル7bが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6bを有する。区間SC3において、複数の浮上案内コイル6bは、複数の浮上案内コイル6aの各々と接続線9としての接続線9a及び9bを用いてそれぞれ接続されることにより、複数の浮上案内コイル6aの各々と閉ループをそれぞれ形成する。
浮上案内コイル装置LDは、区間SC4において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGC24に含まれる複数の推進コイル7aが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6aを有する。また、浮上案内コイル装置LDは、区間SC4において、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGB24に含まれる複数の推進コイル7bが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6bを有する。区間SC4において、複数の浮上案内コイル6bは、複数の浮上案内コイル6aの各々と接続線9としての接続線9a及び9bを用いてそれぞれ接続されることにより、複数の浮上案内コイル6aの各々と閉ループをそれぞれ形成する。
なお、区間SC1及び区間SC5に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bについても、説明は省略するが、区間SC2乃至区間SC4に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bと同様にすることができる。
本実施の形態1の温度推定方法においては、例えば区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図6における上側)にそれぞれ設けられた複数の推進コイル7aにインバータ11Aにより交流電流を通電して磁界を発生させる(図7のステップS1)。
このとき、図6に示すように、例えば区間SC3において、インバータ11Bと、推進コイル群PGB2に含まれる複数の推進コイル7bとの接続を、き電区分開閉器13Bにより遮断する。また、インバータ11Cと、推進コイル群PGC1に含まれる複数の推進コイル7bとの接続を、き電区分開閉器13Cにより遮断し、インバータ11Cと、推進コイル群PGC2に含まれる複数の推進コイル7aとの接続を、き電区分開閉器13Cにより遮断する。そして、このような状態で、インバータ11Aと、推進コイル群PGA1に含まれる複数の推進コイル7aとを、き電区分開閉器13Aにより接続し、図8のステップS11に示すように、例えば区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図8における上側)に設けられた推進コイル7aに交流電流を通電して磁界を発生させる。
なお、図7のステップS1では、区間SC3のみならず、区間SC3及び区間SC2に配置された推進コイル群PGA1に通電することになる。また、図6では、推進コイル群PGA1に通電することを示すため、推進コイル群PGA1にハッチングを付している。
次に、例えば区間SC3において、図7のステップS1を行って磁界を発生させることにより、複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bを介して、軌道1の幅方向における一方の側と反対側(図6における下側)にそれぞれ設けられた複数の推進コイル7bに誘導される電位V1の波形を測定する(図7のステップS2)。
このとき、図8のステップS11を行って、軌道の幅方向における一方の側(図8における上側)に設けられた推進コイル7aに磁界を発生させる。推進コイル7aにより発生した磁界即ち磁束が軌道の幅方向における一方の側(図8における上側)に設けられた浮上案内コイル6aと鎖交することにより、浮上案内コイル6aに電圧が誘導される(図8のステップS21)。浮上案内コイル6aに電圧が誘導されることにより、ヌルフラックス線としての接続線9a及び9bを電流が流れる(図8のステップS22)。接続線9a及び9bを電流が流れ、軌道の幅方向における一方の側と反対側(図8における下側)に設けられた浮上案内コイル6bに電流が流れることにより、浮上案内コイル6bに磁界を発生させる(図8のステップS23)。浮上案内コイル6bにより発生した磁界即ち磁束が軌道の幅方向における一方の側と反対側(図8における下側)に設けられた推進コイル7bと鎖交することにより、軌道の幅方向における一方の側と反対側(図8における下側)に設けられた推進コイル7bに電圧が誘導される(図8のステップS24)。そして、推進コイル7bに誘導される電位V1の波形を測定する。
なお、例えば、後述する図9を用いて説明するように、電圧計に代えて電流計を用い、相間を電気的に接続した状態で、相間を流れる電流を測定する場合には、推進コイル7bに誘導される電位V1に代えて、推進コイル7bに誘導される電流I1の波形を、測定することができる(以下の電位V1の波形の記載についても同様)。
なお、図7のステップS2では、区間SC3のみならず、区間SC3及び区間SC4に配置された推進コイル群PGB2の波形を測定することになる。また、図6では、推進コイル群PGB2の波形を測定することを示すため、推進コイル群PGB2にハッチングを付している。
次に、例えば区間SC3において、図7のステップS2で測定された波形に基づいて、複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を推定する(図7のステップS3)。
後述する図10を用いて説明するように、図7のステップS2で推進コイル7bに誘導される電位V1の波高値(振幅)、及び、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電位V1の波形の位相差は、いずれも浮上案内コイル6a及び6bの平均温度に対する依存性を有する。従って、図7のステップS2では、推進コイル7bに誘導される電位V1の波形の波高値、又は、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電位V1の波形の位相差を測定することが好ましい。これにより、例えば区間SC3における複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を、いずれの浮上案内コイルの温度も直接測定することなく推定することができる。なお、電位V1に代えて電流I1を測定する場合も、同様に、図7のステップS2で、推進コイル7bに誘導される電流I1の波高値(振幅)、又は、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電流I1の波形の位相差を測定することにより、複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を推定することができる。
磁気浮上式鉄道においては、浮上案内コイルのモールド樹脂の温度を当該モールド樹脂の使用上限温度以下に保ちながら、列車即ち車両を運行することが望ましく、そのためには、浮上案内コイルが軌道に設置された状態で、浮上案内コイルの導体の温度を推定することが望ましい。
磁気浮上式鉄道において、浮上案内コイル又は推進コイル等の地上コイルに別途新たに温度センサを取り付けて当該地上コイルの導体の温度を推定する方法はある。しかし、複数の浮上案内コイルが軌道に設置された状態で、複数の浮上案内コイルの各々に温度センサを新たに取り付けることなく既存の設備を用いて複数の浮上案内コイルの導体の温度を同時に容易に推定する方法はなかった。
一方、本実施の形態1の温度推定方法では、軌道1のある区間に列車即ち車両が在線していない時、即ち非在線時に、軌道1の幅方向において、一方の側の推進コイル7aにのみ電流を通電し、反対側の推進コイル7bに誘導される電位又は電流の振幅又は位相から、当該区間における複数の浮上案内コイル6a及び6bの導体の平均温度を、抵抗法により推定する。また、本実施の形態1の温度推定方法に必要な追加設備は、例えば後述する図9を用いて説明するき電区分開閉器13近傍に設けられる電圧測定部17等の測定部16程度である。
そのため、本実施の形態1の温度推定方法によれば、複数の浮上案内コイルが軌道に設置された状態で、複数の浮上案内コイルの各々に温度センサを新たに取り付けることなく既存の設備を用いて複数の浮上案内コイルの導体の平均温度を推定することができる。即ち、複数の浮上案内コイルの各々に温度センサを新たに取り付けることなく既存の設備を用いて浮上案内コイル装置の温度を同時に容易に推定することができる。よって、複数の浮上案内コイルのモールド樹脂の平均温度を、当該モールド樹脂の使用上限温度以下に保ちながら、列車即ち車両を運行することができる。
好適には、推進コイル装置PDは、推進コイル群PGC1に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される電位V1の波形を測定する測定部16としての測定部16Cを有する。測定部16Cは、推進コイル群PGC1に含まれる複数の推進コイル7bと、推進コイル群PGC1に含まれる複数の推進コイル7bとインバータ11Cとの接続を遮断するき電区分開閉器13Cと、の間に設けられる。このような場合、例えば推進コイル群PGA12に含まれる複数の推進コイル7aに交流電流を通電して磁界を発生させることにより、推進コイル群PGC12に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される電位V1の波形を測定することができる。
好適には、推進コイル装置PDは、推進コイル群PGB2に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される電位V1の波形を測定する測定部16としての測定部16Bを有する。測定部16Bは、推進コイル群PGB2に含まれる複数の推進コイル7bと、推進コイル群PGB2に含まれる複数の推進コイル7bとインバータ11Bとの接続を遮断するき電区分開閉器13Bと、の間に設けられる。このような場合、例えば推進コイル群PGA13に含まれる複数の推進コイル7aに交流電流を通電して磁界を発生させることにより、推進コイル群PGB23に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される電位V1の波形を測定することができる。また、例えば推進コイル群PGC24に含まれる複数の推進コイル7aに交流電流を通電して磁界を発生させることにより、推進コイル群PGB24に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される電位V1の波形を測定することができる。
なお、推進コイル装置PDは、推進コイル群PGA1とき電区分開閉器13Aとの間に設けられた測定部16Aと、推進コイル群PGC2とき電区分開閉器13Cとの間に設けられた測定部16Cと、を有する。このような場合、複数の推進コイル7bに交流電流を通電して磁界を発生させることにより、複数の推進コイル7aに誘導される電位V1の波形を測定することができる。
好適には、図7のステップS1の前に、図7のステップS2で推進コイル7bに誘導される電位V1の波形の波高値と、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電位V1の波形の位相差と、複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度と、の関係を示すデータを用意する(図7のステップS4)。そして、図7のステップS4の後、図7のステップS1乃至ステップS3を行う。このとき、図7のステップS3では、図7のステップS2で測定された電位V1の波形の波高値又は位相差、及び、図7のステップS4で用意したデータに基づいて、平均温度を推定する。即ち波形の波高値又は位相差を、用意したデータと比較することにより、平均温度を推定する。
このような場合、記憶部と、演算部とを有する温度推定システムを用いることができる。また、当該温度推定システムにおいて、図7のステップS4を行って用意したデータを例えばコンピュータのハードディスクドライブ等の記憶部に記憶する。そして、図7のステップS3において、図7のステップS2で測定された波形と、例えばハードディスクドライブ等の記憶部に記憶されたデータとを、コンピュータのCPU等の演算部により比較する。これにより、複数の浮上案内コイル6a及び6bの平均温度を推定する作業を自動化することができる。そのため、複数の浮上案内コイル6a及び6bの平均温度を容易に推定することができる。
なお、図7のステップS2において、電位V1の波形の波高値と、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電位V1の波形の位相差のうち、いずれか一方のみを測定する場合には、図7のステップS4において、当該いずれか一方のみと平均温度との関係を示すデータを用意してもよい。
好適には、図7のステップS1では、軌道1を走行する車両2がある区間、例えば区間SC3を通過した後、区間SC3に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの温度が常温、即ち列車が運行されていない状態における温度まで低下する前に、インバータ11Aにより複数の推進コイル7aに交流電流を通電して磁界を発生させる。即ち、車両2がある区間を通過した後、直ぐに、その区間で複数の推進コイル7aにより磁界を発生させる。これにより、車両2がある区間を通過した後、直ぐに、その区間の推進コイル7bに誘導される電位V1を測定することができ、車両2がある区間を通過した後、直ぐに、その区間における複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を推定することができる。
好適には、図9に示すように、測定部16は、電圧測定部17としての電圧計17x、17y及び17zと、断路器18としての断路器18x、18y及び18zと、を含む。
き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側即ち複数の推進コイル7U側と、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側即ち複数の推進コイル7V側とは、電圧計17xを介して互いに接続される。これにより、測定部16は、電圧計17xにより、き電区分開閉器13Uの複数の推進コイル7U側と、き電区分開閉器13Vの複数の推進コイル7V側との間の電圧を測定することができる。また、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側、及び、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側のいずれかは、断路器18xを介して電圧計17xに接続される。
なお、電圧計17xに代えて電流計を用いることもでき、このような場合には、測定部16は、電流計により、き電区分開閉器13Uの複数の推進コイル7U側と、き電区分開閉器13Vの複数の推進コイル7V側との間を流れる電流、即ち相間を流れる電流を測定することができる。
き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側即ち複数の推進コイル7V側と、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側即ち複数の推進コイル7W側とは、電圧計17yを介して互いに接続される。これにより、測定部16は、電圧計17yにより、き電区分開閉器13Vの複数の推進コイル7V側と、き電区分開閉器13Wの複数の推進コイル7W側との間の電圧を測定することができる。また、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側、及び、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側のいずれかは、断路器18yを介して電圧計17yに接続される。
なお、電圧計17yに代えて電流計を用いることもでき、このような場合には、測定部16は、電流計により、き電区分開閉器13Vの複数の推進コイル7V側と、き電区分開閉器13Wの複数の推進コイル7W側との間を流れる電流、即ち相間を流れる電流を測定することができる。
き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側即ち複数の推進コイル7W側と、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側即ち複数の推進コイル7U側とは、電圧計17zを介して互いに接続される。これにより、測定部16は、電圧計17zにより、き電区分開閉器13Wの複数の推進コイル7W側と、き電区分開閉器13Uの複数の推進コイル7U側との間の電圧を測定することができる。また、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側、及び、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側のいずれかは、断路器18zを介して電圧計17zに接続される。
なお、電圧計17zに代えて電流計を用いることもでき、このような場合には、測定部16は、電流計により、き電区分開閉器13Wの複数の推進コイル7W側と、き電区分開閉器13Uの複数の推進コイル7U側との間を流れる電流、即ち相間を流れる電流を測定することができる。
3つの電圧計17x、17y及び17zの各々により測定された電圧の測定値を用いて演算を行うことにより、推進コイル群15U、15V及び15Wの各々の電位V1を測定することができる。なお、3つの電圧計17x、17y及び17zに代えて、3つの電流計を用いる場合には、3つの電流計の各々により測定された電流の測定値を用いて演算を行うことにより、推進コイル群15U、15V及び15Wの各々を流れる電流I1を測定することができる。
以下では、図9を参照し、3つの電圧計17x、17y及び17zの各々により測定された電圧の測定値を用いて演算を行うことにより、推進コイル群15U、15V及び15Wの各々の電位V1を測定する手順について、説明する。
具体的には、図7のステップS1の前に、例えば区間SC3(図6参照)において、き電区分開閉器13B(図6参照)に相当するき電区分開閉器13に含まれる三相のき電区分開閉器13U、13V及び13Wにより、インバータ11B(図6参照)と、推進コイル群PGB2(図6参照)に含まれる推進コイル群15U、15V及び15Wとを、接続する。
このとき、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側と、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側との接続は、断路器18xにより遮断されている。また、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側と、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側との接続は、断路器18yにより遮断されている。また、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側と、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側との接続は、断路器18zにより遮断されている。
そして、このような状態で、推進コイル群PGB2(図6参照)に含まれる推進コイル群15U、15V及び15Wの各々に互いに異なる位相を有する交流電流を通電して車両2(図6参照)に駆動力を与える。そしてこの車両2が当該セクション外に退出したとする。
次に、図7のステップS1では、例えば区間SC3(図6参照)において、き電区分開閉器13B(図6参照)に相当するき電区分開閉器13に含まれる三相のき電区分開閉器13U、13V及び13Wにより、インバータ11B(図6参照)と推進コイル群PGB2(図6参照)に含まれる推進コイル群15U、15V及び15Wとの接続を、遮断する。
このとき、断路器18xは閉じており、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側と、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側とは、互いに接続されている。また、断路器18yは閉じており、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側と、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側とは、互いに接続されている。また、断路器18zは閉じており、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側と、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側とは、互いに接続されている。
そして、このような状態で、推進コイル群PGA1(図6参照)に含まれる推進コイル群15U、15V及び15Wの各々に互いに異なる位相を有する交流電流を通電して磁界を発生させる。即ち、同時に、複数のU相の推進コイル7a(図6参照)にインバータ11A(図6参照)によりU相の交流電流を通電して磁界を発生させ、複数のV相の推進コイル7aに、インバータ11AによりV相の交流電流を通電して磁界を発生させ、複数のW相の推進コイル7aに、インバータ11AによりW相の交流電流を通電して磁界を発生させる。
また、図7のステップS2では、まず、例えば区間SC3(図6参照)において、図7のステップS1を行いながら、複数の推進コイル7b(図6参照)としての推進コイル7Uと、複数の推進コイル7b(図6参照)としての推進コイル7Vと、の間の電圧の波形を、電圧計17xにより測定する。或いは、電圧計17xに代えて電流計を用いる場合には、複数の推進コイル7Uと、複数の推進コイル7Vと、の間を流れる電流の波形を測定する。電圧計17y及び17zについても同様にして波形を測定することができる。
また、図7のステップS2では、次に、例えば区間SC3(図6参照)において、測定された波形を変換する。これにより、複数のU相の推進コイル7a(図6参照)が磁界を発生させることにより複数の浮上案内コイル6a(図6参照)及び複数の浮上案内コイル6b(図6参照)を介して複数の推進コイル7b(図6参照)としての推進コイル7Uに誘導される電位V1の波形を、測定することができる。また、V相及びW相についても同様にすることにより電位V1の波形を測定することができる。
図7のステップS2を行って測定される推進コイル群15に誘導される電位V1の波形の波高値は、車両2が走行する際に推進力を与える際の推進コイル群15の電位の波形の波高値よりも小さい。そのため、電圧計17x、17y及び17zとして、小電圧を測定するための高感度な電圧計が用いられる。しかし、電圧計17x、17y及び17zとして高感度だが耐圧性の低い電圧計を用い、且つ、断路器18x、18y及び18zが設けられない場合、車両2が走行する際に、推進コイル群15Uのき電区分開閉器13U側、推進コイル群15Vのき電区分開閉器13V側、及び、推進コイル群15Wのき電区分開閉器13W側の各々の間で短絡が発生するおそれがある。
従って、断路器18x、18y及び18zが設けられることにより、車両2が走行する際に、推進コイル群15Uのき電区分開閉器13U側、推進コイル群15Vのき電区分開閉器13V側、及び、推進コイル群15Wのき電区分開閉器13W側の各々の間で短絡が発生することを防止することができる。
なお、電圧計17x、17y及び17zとして、高耐圧な電圧計を用いる場合には、測定部16が断路器18を含まないようにすることもできる。
なお、本実施の形態1では、複数の推進コイル7a(図6参照)に通電し、これにより複数の浮上案内コイル6a(図6参照)及び複数の浮上案内コイル6b(図6参照)を介して複数の推進コイル7b(図6参照)に誘導される波形を測定した。しかし、1つの推進コイル7aに通電し、これにより1つの浮上案内コイル6a及び1つの浮上案内コイル6bを介して1つの推進コイル7bに誘導される波形を測定してもよい。
<波高値及び位相差と平均温度との関係>
次に、複数の推進コイルに誘導される電位又は電流の波形の波高値及び位相差と、複数の浮上案内コイルの平均温度との関係について説明する。
以下では、実施の形態1の温度推定方法において複数の推進コイル7(図6参照)に誘導される電位の波形を計算した。即ち、軌道1(図6参照)の幅方向における一方の側に設けられた複数の推進コイル7a(図6参照)に交流電流を通電して磁界を発生させることにより、複数の浮上案内コイル6a(図6参照)及び複数の浮上案内コイル6b(図6参照)を介して、軌道1の幅方向における反対側に設けられた複数の推進コイル7b(図6参照)に誘導される電位の波形を計算した。
複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度が、標準温度即ち常温として例えば20℃である場合を計算例1とし、複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度が、常温から50℃上昇して例えば70℃になった場合を計算例2とした。また、計算例2は、計算例1に対して、複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度が20℃から70℃に上昇し、複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bのインピーダンスのうち抵抗R成分のみが20%増加した場合についての計算を行った。計算例1及び計算例2において複数の推進コイルに誘導される電位の波形を計算した結果を、図10のグラフに示す。
図10の横軸は、時刻として、通電電流1周期分を示し、図10の縦軸は、1つの推進コイル7bの両端の電圧を示している。
なお、計算例1及び計算例2では、軌道1(図6参照)の幅方向における一方の側に設けられた複数の推進コイル7aに通電する交流電流の周波数を5Hzとした。軌道1の長さ方向において互いに隣り合う2つの推進コイル7の中心間距離にもよるが、この周波数が5Hzである場合は、車両の走行速度が例えば50km/hである場合に相当する。
図10に示すように、複数の浮上案内コイルの平均温度が20℃の場合(計算例1)と70℃の場合(計算例2)との間で、複数の推進コイル7bに誘導される電位の波形の波高値及び位相のいずれにおいても、顕著な差があることが分かる。従って、複数の推進コイル7aに交流電流を通電して磁界を発生させることにより、複数の浮上案内コイル6a及び6bを介して複数の推進コイル7bに誘導される電位の波形の波高値と位相を測定することにより、複数の浮上案内コイルの平均温度を精度良く推定することができることが明らかになった。
次に、複数の推進コイル7aに通電する交流電流の波形の周波数と波高値については、任意に設定できるものの(ただし波高値については通常走行時の最大電流以下)、温度を推定する目的に応じて最適な値を選ぶことが好ましいことについて説明する。先ほどは5Hzの周波数が50km/hの車両の走行速度に相当する場合を例示したが、低速度、中速度及び高速度の3つの速度領域の各々の場合に、速度の代表例、導体抵抗に対する感度、及び、特徴をまとめて表1に示す。また、表1では、感度が高い場合、感度がある程度高いか又はあまり高くない場合、感度が低い場合を、○、△、×の3段階評価により表している。
表1に示すように、例えば25km/h程度以下の速度領域を代表例とする低速度に相当する周波数領域(2.5Hz以下の周波数領域)では、インピーダンス全体に対する抵抗成分の寄与が大きく、速度の減少に伴って速度の2乗で電圧波形(電位波形)の波高値が低下するため、電圧波形(電位波形)の波高値の導体抵抗に対する感度は高い。しかし、インピーダンス全体に対するインダクタンス成分の寄与が小さいため、電圧波形(電位波形)の位相差の導体抵抗に対する感度はあまり高くないか又は低い。
また、例えば500km/hの速度を代表例とする高速度に相当する周波数(50Hzの周波数)では、電圧波形(電位波形)の波高値は高い(大きい)が、インピーダンス全体に対する抵抗成分の寄与が小さいため、電圧波形(電位波形)の波高値の導体抵抗に対する感度が低い。また、インピーダンス全体に対するインダクタンス成分の寄与は大きいものの、電圧波形(電位波形)の波高値の導体抵抗に対する感度が低いことに付随して、電圧波形(電位波形)の位相差の導体抵抗に対する感度も低い。
一方、例えば50〜100km/hの速度領域を代表例とする中速度に相当する周波数領域(5〜10Hzの周波数領域)では、電圧波形(電位波形)の波高値はある程度大きく、インピーダンス全体に対する抵抗成分の寄与もある程度大きいため、電圧波形(電位波形)の波高値の導体抵抗に対する感度はある程度高い。また、インピーダンス全体に対するインダクタンス成分の寄与もある程度大きいため、電圧波形(電位波形)の位相差の導体抵抗に対する感度も高い。従って、電圧波形(電位波形)の波高値の導体抵抗に対する感度と、電圧波形(電位波形)の位相の導体抵抗に対する感度とのバランスが一番取れた速度領域である。
即ち、複数の推進コイル7aに通電する交流電流の波形の周波数については、例えば50〜100km/hの速度領域を代表例とする中速度が好ましいことが分かる。つまり、導体抵抗の変化分に対する、誘導電位又は誘導電流の波形の波高値の変化分を、波高値の感度とし、導体抵抗の変化分に対する、励磁電流の波形と誘導電位又は誘導電流の波形との間の位相差の変化分である変化率を、位相差の感度としたとき、波高値の感度と、位相差の感度とがいずれもある程度高く、バランスが取れた周波数及び波高値を有する交流電流を推進コイルに通電することが好ましい。
なお、波高値の感度と位相差の感度がある程度高ければよいので、図7のステップS1では、軌道1(図6参照)を走行する車両2(図6参照)に推進力を与えるために複数の推進コイル7a(図6参照)に供給する電力よりも小さい電力を供給することが好ましい。言い換えれば、図7のステップS1では、軌道1を走行する車両2に推進力を与えるために複数の推進コイル7aに通電する電流よりも小さい電流を通電することが好ましい(後述する図17のステップS6においても同様)。これにより、温度推定方法を行うために消費する電力を低減することができる。
<実施の形態1の第1変形例>
次に、実施の形態1の第1変形例の温度推定方法について説明する。図11は、実施の形態1の第1変形例の温度推定方法が適用される地上コイル装置を示すブロック回路図である。
本第1変形例の温度推定方法については、車両の走行に合わせて車両を追いかけるように各区間において複数の浮上案内コイルの平均温度の推定を行う点を除いて、実施の形態1の温度推定方法と同様にすることができる。
本第1変形例の温度推定方法が適用される地上コイル装置については、実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置と同様にすることができ、その詳細な説明を省略する。
なお、本第1変形例では、車両2が、軌道1の長さ方向における区間SC1側即ち区間SC5側と反対側から区間SC5側に向かって走行するものとする。
本第1変形例では、まず、車両2が区間SC3を通過した後、区間SC3に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの温度が常温まで低下する前に、区間SC3において、図7のステップS1に相当するステップを行う。
このとき、図6に示すように、推進コイル群PGB2とインバータ11Bとの接続をき電区分開閉器13Bにより遮断し、推進コイル群PGC1とインバータ11Cとの接続をき電区分開閉器13Cにより遮断し、推進コイル群PGC2とインバータ11Cとの接続をき電区分開閉器13Cにより遮断する。そして、このような状態で、推進コイル群PGA1をき電区分開閉器13Aによりインバータ11Aに接続し、推進コイル群PGA1に含まれる複数の推進コイル7aにインバータ11Aにより交流電流を通電して磁界を発生させる。
なお、車両2が区間SC3を通過した後とは、区間SC3に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bが、車両2の超電導磁石が発生させる磁界と鎖交しなくなった後を意味する。
次に、区間SC3において、図7のステップS2に相当するステップを行って、推進コイル群PGB23に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される電位又は電流の波形を、測定部16Bにより測定する。
次に、区間SC3において、図7のステップS3に相当するステップを行って、区間SC3に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を推定する。
本第1変形例では、区間SC3において図7のステップS2を行って推進コイル群PGB23に誘導される電位又は電流の波形を測定し、且つ、車両2が区間SC4を通過した後、区間SC4に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの温度が常温まで低下する前に、区間SC4において、図7のステップS1に相当するステップを行う。
このとき、図11に示すように、推進コイル群PGA1とインバータ11Aとの接続をき電区分開閉器13Aにより遮断し、推進コイル群PGB2とインバータ11Bとの接続をき電区分開閉器13Bにより遮断し、推進コイル群PGC1とインバータ11Cとの接続をき電区分開閉器13Cにより遮断する。そして、このような状態で、推進コイル群PGC2をき電区分開閉器13Cによりインバータ11Cに接続し、推進コイル群PGC2に含まれる複数の推進コイル7aにインバータ11Cにより交流電流を通電して磁界を発生させる。
なお、図11では、区間SC4及び区間SC5に配置された推進コイル群PGC2に通電することを示すため、推進コイル群PGC2にハッチングを付している。また、車両2が区間SC4を通過した後とは、区間SC4に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bが、車両2の超電導磁石が発生させる磁界と鎖交しなくなった後を意味する。
次に、区間SC4において、図7のステップS2に相当するステップを行う。即ち、区間SC4において、図7のステップS1に相当するステップを行って、推進コイル群PGC2に磁界を発生させることにより、複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bを介して、推進コイル群PGB24に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される電位又は電流の波形を、測定部16Bにより測定する。なお、図11では、区間SC4及び区間SC3に配置された推進コイル群PGB2の波形を測定することを示すため、推進コイル群PGB2にハッチングを付している。
次に、区間SC4において、図7のステップS3に相当するステップを行う。即ち、区間SC4において、図7のステップS2に相当するステップで測定された波形に基づいて、区間SC4に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を推定する。
本第1変形例によれば、車両2の走行に合わせて車両2を追いかけるようにして各区間において複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度の推定を行うので、各区間に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの導体の平均温度を、速やかに測定することができる。また、複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの導体の車両2が走行する際の平均温度を、より正確に測定することができる。
なお、区間SC4において図7のステップS1に相当するステップを行う前に、区間SC4において図7のステップS4に相当するステップを行ってもよい。即ち、推進コイル群PGB24に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される電位又は電流の波形の波高値と、当該波形の推進コイル群PGC24に含まれる複数の推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する位相差と、区間SC4に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度と、の関係を示すデータを用意してもよい。
また、区間SC4において、図7のステップS2に相当するステップを行う際に、推進コイル群PGB24に誘導される電位又は電流の波形の波高値又は位相差を測定してもよい。また、区間SC4において、図7のステップS3に相当するステップを行う際に、推進コイル群PGB24に誘導される電位又は電流の波形の波高値又は位相差、及び、区間SC4において図7のステップS4に相当するステップを行って用意したデータに基づいて、区間SC4に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を推定してもよい。これにより、区間SC4に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び6bの平均温度を推定する作業を自動化することができる。
<実施の形態1の第2変形例>
次に、実施の形態1の第2変形例の温度推定方法について説明する。図12は、実施の形態1の第2変形例の温度推定方法が適用される地上コイル装置を示すブロック回路図である。
本第2変形例の温度推定方法は、軌道の幅方向における一方の側の1つのき電セクションで推進コイル群に通電するとき、その1つのき電セクションと対向する2つのき電セクションがそれぞれ有する2つの区間において同時に複数の浮上案内コイルの平均温度の推定を行う点を除いて、実施の形態1の温度推定方法と同様にすることができる。
本第2変形例の温度推定方法が適用される地上コイル装置については、実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置と同様にすることができ、その詳細な説明を省略する。
本第2変形例では、区間SC3において、図7のステップS1に相当するステップを行うとともに、区間SC2において、図7のステップS1に相当するステップを行う。
このとき、図12に示すように、推進コイル群PGB2とインバータ11Bとの接続をき電区分開閉器13Bにより遮断し、推進コイル群PGC1とインバータ11Cとの接続をき電区分開閉器13Cにより遮断し、推進コイル群PGC2とインバータ11Cとの接続をき電区分開閉器13Cにより遮断する。そして、このような状態で、推進コイル群PGA1をき電区分開閉器13Aによりインバータ11Aに接続し、推進コイル群PGA13に含まれる複数の推進コイル7aにインバータ11Aにより交流電流を通電して磁界を発生させるとともに、推進コイル群PGA12に含まれる複数の推進コイル7aにインバータ11Aにより交流電流を通電して磁界を発生させる。
次に、区間SC3において、図7のステップS2に相当するステップを行うとともに、区間SC2において、図7のステップS2に相当するステップを行う。
このとき、推進コイル群PGA13に磁界を発生させることにより推進コイル群PGB23に誘導される波形を測定部16Bにより測定するとともに、推進コイル群PGA12に磁界を発生させることにより推進コイル群PGC12に誘導される電位V1の波形を測定部16Cにより測定する。
次に、区間SC3において、図7のステップS3に相当するステップを行い、区間SC2において、図7のステップS3に相当するステップを行う。即ち、推進コイル群PGB23に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される波形であって、区間SC3において図7のステップS2に相当するステップを行って測定された波形に基づいて、区間SC3に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を推定する。また、推進コイル群PGC12に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される波形であって、区間SC2において図7のステップS2に相当するステップを行って測定された波形に基づいて、区間SC2に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を推定する。
本第2変形例によれば、軌道の幅方向における一方の側の1つのき電セクションで推進コイル群に通電するとき、その1つのき電セクションと対向する2つのき電セクションがそれぞれ有する2つの区間において同時に複数の浮上案内コイルの平均温度の推定を行う。そのため、本第2変形例によれば、実施の形態1に比べ、同じ通電時間で2倍の区間に設けられた複数の浮上案内コイルの導体の平均温度を測定することができる。
なお、区間SC2において図7のステップS3に相当するステップを行う前に、区間SC2において図7のステップS4に相当するステップを行ってもよい。即ち、推進コイル群PGC12に含まれる複数の推進コイル7bに誘導される電位又は電流の波形の波高値と、当該波形の推進コイル群PGA12に含まれる複数の推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する位相差と、区間SC2に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度と、の関係を示すデータを用意してもよい。
また、区間SC2において、図7のステップS2に相当するステップを行う際に、推進コイル群PGC12に誘導される電位又は電流の波形の波高値又は位相差を測定してもよい。また、区間SC2において、図7のステップS3に相当するステップを行う際に、推進コイル群PGC12に誘導される電位又は電流の波形の波高値又は位相差、及び、区間SC2において図7のステップS4に相当するステップを行って用意したデータに基づいて、区間SC2に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び複数の浮上案内コイル6bの平均温度を推定してもよい。これにより、区間SC2に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び6bの平均温度を推定する作業を自動化することができる。
<実施の形態1の第3変形例>
次に、実施の形態1の第3変形例の温度推定方法について説明する。図13は、実施の形態1の第3変形例の温度推定方法が適用される地上コイル装置のうち推進コイル装置が有する測定部付近を示すブロック回路図である。図14は、実施の形態1の第3変形例の温度推定方法の一例を示すフロー図である。
本第3変形例の温度推定方法は、車両がある区間を通過した後、その区間で温度推定方法を行う前に、三相の推進コイル群の各々のき電区分開閉器側を短絡する点を除いて、実施の形態1の温度推定方法と同様にすることができる。
本第3変形例の温度推定方法が適用される地上コイル装置については、推進コイル装置が有する測定部を除き、実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置と同様にすることができ、当該測定部以外の部分の詳細な説明を省略する。
図13に示すように、本第3変形例では、測定部16は、実施の形態1と同様に、電圧測定部17としての電圧計17x、17y及び17zと、断路器18としての断路器18x、18y及び18zと、を含む。電圧測定部17としての電圧計17x、17y及び17z、並びに、断路器18としての断路器18x、18y及び18zの接続については、実施の形態1と同様にすることができる。
一方、図13に示すように、本第3変形例では、測定部16は、開閉器19を有する。開閉器19は、例えば、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側と、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側とを短絡する短絡部としての開閉器19xと、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側と、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側とを短絡する短絡部としての開閉器19yと、を含む。
本第3変形例では、車両がある区間を通過した後、図7のステップS1に相当するステップ(図14のステップS1)を行う前に、三相の推進コイル群15U、15V及び15Wの各々のき電区分開閉器13側を短絡する(図14のステップS5)。
このとき、図13に示すように、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側と、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側とを開閉器19xにより短絡し、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側と、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側とを開閉器19yにより短絡する。
本第3変形例では、次に、き電区分開閉器13Uの推進コイル群15U側と、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側とを短絡しておらず、き電区分開閉器13Vの推進コイル群15V側と、き電区分開閉器13Wの推進コイル群15W側とを短絡していない状態で、図7のステップS1に相当するステップ(図14のステップS1)を行う。そして、推進コイル群15Uに含まれる複数の推進コイル7Uに磁界を発生させ、推進コイル群15Vに含まれる複数の推進コイル7Vに磁界を発生させ、推進コイル群15Wに含まれる複数の推進コイル7Wに磁界を発生させる。
例えばある区間において、推進コイル群に電流を通電して車両が通過した直後にき電区分開閉器によりインバータと推進コイル群との接続が遮断されることにより、その推進コイル群に電荷が蓄積、即ち充電された状態になる場合がある。このような場合、その後、その区間で、軌道の幅方向において、一方の側の推進コイル群に通電して磁界を発生させることにより反対側の推進コイル群に誘導される微弱な電圧を測定したときに、測定された電圧に誤差が発生するおそれがある。
一方、本第3変形例によれば、その区間で温度推定方法を行う前に、三相の推進コイル群の各々のき電区分開閉器側を短絡するので、推進コイル群に蓄積された電荷を逃がすことができ、三相の推進コイル群を接地したのと同様の効果を得ることができる。従って、その後、その区間で、軌道の幅方向において、一方の側の推進コイル群に通電して磁界を発生させることにより反対側の推進コイル群に誘導される波形の波高値又は位相差の測定精度を向上させることができ、その区間に設けられた複数の浮上案内コイルの平均温度として推定される温度の精度を向上させることができる。
なお、図14に示すように、本第3変形例において、図7のステップS4に相当するステップ(図14のステップS4)を行う場合には、図14のステップS4を行った後、図14のステップS1を行う前に、図14のステップS5を行うことができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2の温度推定方法について説明する。本実施の形態2の温度推定方法も、実施の形態1の温度推定方法と同様に、磁気浮上式鉄道車両に推進力を与える推進コイル装置と、磁気浮上式鉄道車両に浮上力及び案内力を与える浮上案内コイル装置と、を備える磁気浮上式鉄道用の地上コイル装置における浮上案内コイル装置の温度を推定する温度推定方法である。
図15は、実施の形態2の温度推定方法が適用される地上コイル装置を示すブロック回路図である。図16は、実施の形態2の温度推定方法が適用される地上コイル装置のうち浮上案内コイル装置が有する浮上案内コイルを示す回路図である。図17は、実施の形態2の温度推定方法の一例を示すフロー図である。
本実施の形態2の温度推定方法は、軌道の幅方向において、一方の側の推進コイル群に通電して磁界を発生させる点では、実施の形態1の温度推定方法と同様であるが、反対側の推進コイル群に誘導される電位又は電流の波形を測定せず、浮上案内コイルに誘導される電圧又は電流の波形を測定する点で、実施の形態1の温度推定方法と異なる。
本実施の形態2の温度推定方法が適用される地上コイル装置については、推進コイル装置が測定部を有するのに代えて、浮上案内コイル装置が測定部を有する点を除き、実施の形態1の温度推定方法が適用される地上コイル装置と同様にすることができ、当該測定部以外の部分の詳細な説明を省略する。
図15及び図16に示すように、本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、推進コイル装置PDは、例えば区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図15における上側)に配置された推進コイル群PGA13を有し、軌道1の幅方向における反対側(図15における下側)に配置された推進コイル群PGB23を有する。
また、図3、図15及び図16に示すように、本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、浮上案内コイル装置LDは、例えば区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図15における上側)にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGA13に含まれる複数の推進コイル7aが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6aを有する。
また、図3、図15及び図16に示すように、本実施の形態2でも、実施の形態1と同様に、浮上案内コイル装置LDは、例えば区間SC3において、軌道1の幅方向における反対側(図15における下側)にそれぞれ設けられ、軌道1の長さ方向に沿って配列され、且つ、推進コイル群PGB23に含まれる複数の推進コイル7bが発生させる磁界とそれぞれ鎖交する複数の浮上案内コイル6bを有する。
なお、区間SC3以外の区間SC1、SC2、SC4及びSC5の各々についても、実施の形態1と同様にすることができる。
一方、図15及び図16に示すように、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり、推進コイル装置PDは、測定部16(図6参照)を有さず、浮上案内コイル装置LDが、測定部20を有する。
図3、図15及び図16に示すように、浮上案内コイル6aと浮上案内コイル6bとは、2本の接続線(ヌルフラックス線)9としての接続線9a及び9bを用いて接続されることにより、閉ループを形成する。接続線9aは、浮上案内コイル6aの一方の側の端子21aと、浮上案内コイル6bの一方の側の端子21bとを接続する。接続線9bは、浮上案内コイル6aの端子21aと反対側の端子22aと、浮上案内コイル6bの端子21bと反対側の端子22bとを接続する。測定部20は、浮上案内コイル6aと浮上案内コイル6bとの間に設けられ、接続線9aと接続線9bとの間に発生する電圧V2又は接続線9a若しくは接続線9bを流れる電流I2の波形を測定する。
本実施の形態2の温度推定方法においては、実施の形態1の温度推定方法と同様に、図7のステップS1に相当するステップを行って、例えば区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図15における上側)に設けられた複数の推進コイル7aにインバータ11Aにより交流電流を通電して磁界を発生させる(図17のステップS6)。
このとき、図15に示すように、例えば区間SC3において、インバータ11Bと、推進コイル群PGB2に含まれる複数の推進コイル7bとの接続を、き電区分開閉器13Bにより遮断する。また、インバータ11Cと、推進コイル群PGC1に含まれる複数の推進コイル7bとの接続を、き電区分開閉器13Cにより遮断し、インバータ11Cと、推進コイル群PGC2に含まれる複数の推進コイル7aとの接続を、き電区分開閉器13Cにより遮断する。そして、このような状態で、インバータ11Aと、推進コイル群PGA1に含まれる複数の推進コイル7aとを、き電区分開閉器13Aにより接続し、例えば区間SC3において、軌道1の幅方向における一方の側(図15における上側)に設けられた推進コイル7aに交流電流を通電して磁界を発生させる。
なお、図17のステップS6では、区間SC3のみならず、区間SC3及び区間SC2に配置された推進コイル群PGA1に通電することになる。また、図15では、推進コイル群PGA1に通電することを示すため、推進コイル群PGA1にハッチングを付している。
次に、例えば区間SC3において、図17のステップS6を行って磁界を発生させる際に、一組の浮上案内コイル6a及び6bをそれぞれ接続する2本の接続線9としての接続線9aと接続線9bとの間の電圧V2、又は、接続線9a若しくは接続線9bを流れる電流I2の波形を測定する(図17のステップS7)。即ち、接続線9a又は接続線9bに誘導される波形を測定する。
このとき、図17のステップS6を行って、軌道1の幅方向における一方の側(図15における上側)に設けられた推進コイル7aに磁界を発生させる。推進コイル7aにより発生した磁界即ち磁束が軌道1の幅方向における一方の側(図15における上側)に設けられた浮上案内コイル6aと鎖交することにより、浮上案内コイル6aに電圧が誘導される。浮上案内コイル6aに電圧が誘導されることにより、ヌルフラックス線としての接続線9aと接続線9bとの間に電圧V2が発生する。又は、浮上案内コイル6aに電圧が誘導されることにより、ヌルフラックス線としての接続線9a及び9bに電流I2が流れる。このようにして発生した接続線9aと接続線9bとの間の電圧V2、又は、接続線9a若しくは接続線9bを流れる電流I2の波形を、測定部20により測定する。
次に、例えば区間SC3において、図17のステップS7で測定された波形に基づいて、一組の浮上案内コイル6a及び6bの温度を個別に推定する(図17のステップS8)。
図17のステップS7で接続線9aと接続線9bとの間に発生する電圧V2の波形の波高値、及び、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電圧V2の波形の位相差は、いずれも浮上案内コイル6a及び6bの温度に対する依存性を有する。従って、図17のステップS7では、接続線9aと接続線9bとの間に発生する電圧V2の波形の波高値、又は、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電圧V2の波形の位相差を測定することが好ましい。これにより、例えば区間SC3における一組の浮上案内コイル6a及び6bの温度を、直接測定することなく個別に推定することができる。
同様に、図17のステップS7で接続線9a若しくは接続線9bを流れる電流I2の波形の波高値、及び、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電流I2の波形の位相差は、いずれも浮上案内コイル6a及び6bの平均温度に対する依存性を有する。従って、図17のステップS7で接続線9a若しくは接続線9bを流れる電流I2の波形の波高値、又は、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電流I2の波形の位相差を測定することにより、例えば区間SC3における一組の浮上案内コイル6a及び6bの温度を、直接測定することなく個別に推定することができる。
磁気浮上式鉄道において、浮上案内コイルが軌道に設置された状態で、浮上案内コイルに温度センサを新たに取り付けることなく既存の設備を用いて浮上案内コイルの導体の温度を容易に推定する方法はなかった。
一方、本実施の形態2の温度推定方法では、非在線時に、軌道1の幅方向において、一方の側の推進コイル7aに電流を通電し、接続線9aと接続線9bとの間の電圧又は接続線9a若しくは接続線9bを流れる電流の振幅又は位相から、一組の浮上案内コイル6a及び6bの導体の温度を、抵抗法により個別に推定する。
そのため、本実施の形態2の温度推定方法によれば、浮上案内コイルが軌道に設置された状態で、浮上案内コイルに温度センサを新たに取り付けることなく既存の設備を用いて浮上案内コイルの温度を個別に推定することができる。即ち、浮上案内コイルに温度センサを新たに取り付けることなく既存の設備を用いて浮上案内コイル装置の温度を容易に推定することができる。よって、個別の浮上案内コイルのモールド樹脂の温度を、当該モールド樹脂の使用上限温度以下に保ちながら、列車即ち車両を運行することができる。
好適には、図16に示すように、測定部20は、電圧計20a又は電流計20bを有する。電圧計20aは、接続線9aと接続線9bとの間の電圧V2を測定する。電流計20bは、接続線9a又は接続線9bを流れる電流I2を測定する。
即ち、本実施の形態2では、温度を推定したい一組の浮上案内コイル6a及び6bを接続する接続線9a及び9bに、電圧計20a又は電流計20bとしての測定部20を取り付けて電圧V2又は電流I2を測定する。そのため、軌道1に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び6bのうち全てについて電圧計又は電流計を取り付ける場合には、取り付けられる電圧計又は電流計の数は膨大になる。従って、本実施の形態2では、軌道1に設けられた複数の浮上案内コイル6a及び6bのうち、個別に温度を推定することが望ましい特定の浮上案内コイル6a及び6bよりなる組を選択し、選択された組に含まれる接続線9a及び9bのみに電圧計又は電流計を取り付けることが望ましい。これにより、当該選択された組については、浮上案内コイル6a及び6bの温度を個別に推定することができる。
好適には、図17のステップS6の前に、図17のステップS7で接続線9aと接続線9bとの間に発生する電圧V2又は接続線9a若しくは接続線9bを流れる電流I2の波形の波高値と、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電圧V2又は電流I2の波形の位相差と、一組の浮上案内コイル6a及び6bの温度と、の関係を示すデータを用意する(図17のステップS9)。そして、図17のステップS9の後、図17のステップS6乃至ステップS8を行う。このとき、図17のステップS8では、図17のステップS7で測定された電圧V2又は電流I2の波形の波高値又は位相差、及び、図17のステップS9で用意したデータに基づいて、一組の浮上案内コイル6a及び6bの温度を個別に推定する。
このような場合、記憶部と、演算部とを有する温度推定システムを用いることができる。また、当該温度推定システムにおいて、図17のステップS9を行って用意したデータを例えばコンピュータのハードディスクドライブ等の記憶部に記憶する。そして、図17のステップS8において、図17のステップS7で測定された波形と、例えばハードディスクドライブ等の記憶部に記憶されたデータとを、コンピュータのCPU等の演算部により比較する。これにより、一組の浮上案内コイル6a及び6bの温度を推定する作業を自動化することができる。そのため、一組の浮上案内コイル6a及び6bの温度を個別に容易に推定することができる。
なお、図17のステップS7において、電圧V2又は電流I2の波形の波高値と、推進コイル7aに通電する交流電流の波形に対する電圧V2又は電流I2の波形の位相差のうち、いずれか一方のみを測定する場合には、図17のステップS9において、当該いずれか一方のみと温度との関係を示すデータを用意してもよい。
また、本実施の形態2では、複数の推進コイル7aに通電し、これにより一組の浮上案内コイル6a及び6bに誘導される波形を測定した。しかし1つの推進コイル7aに通電し、これにより一組の浮上案内コイル6a及び6bに誘導される波形を測定してもよい。
<実施の形態2の変形例>
次に、実施の形態2の変形例の温度推定方法について説明する。図18は、実施の形態2の変形例の温度推定方法が適用される地上コイル装置を示すブロック回路図である。
本変形例の温度推定方法は、実施の形態2の温度推定方法と、実施の形態1の温度推定方法とを組み合わせて行うものである。即ち本変形例では、軌道の幅方向において、一方の側の推進コイル群に通電して磁界を発生させることにより、実施の形態1の温度推定方法と同様に、反対側の推進コイル群に誘導される電位又は電流の波形を測定するとともに、実施の形態2の温度推定方法と同様に、一組の浮上案内コイルに誘導される電圧又は電流の波形を測定する。
図18に示すように、本変形例の温度推定方法が適用される地上コイル装置については、実施の形態1と同様に、推進コイル装置PDが測定部16を有し、且つ、実施の形態2と同様に、浮上案内コイル装置LDが測定部20を有するので、詳細な説明を省略する。
本変形例の温度推定方法によれば、実施の形態1の温度推定方法と同様に、非在線時に、軌道1の幅方向において、一方の側の推進コイル7aにのみ電流を通電し、反対側の推進コイル7bに誘導される電位又は電流の振幅又は位相から、当該区間における複数の浮上案内コイル6a及び6bの導体の平均温度を、抵抗法により推定する。
また、本変形例の温度推定方法によれば、実施の形態2の温度推定方法と同様に、非在線時に、軌道1の幅方向において、一方の側の推進コイル7aに電流を通電し、接続線9aと接続線9bとの間の電圧又は接続線9a若しくは接続線9bを流れる電流の振幅又は位相から、一組の浮上案内コイル6a及び6bの導体の温度を、抵抗法により個別に推定する。
そのため、本変形例の温度推定方法によれば、複数の浮上案内コイルが軌道に設置された状態で、既存の設備を用いて、実施の形態1の温度推定方法と同様に、複数の浮上案内コイルの平均温度を推定するとともに、実施の形態2の温度推定方法と同様に、一組の浮上案内コイルの温度を個別に推定することができる。よって、複数の浮上案内コイルのモールド樹脂の平均温度を、当該モールド樹脂の使用上限温度以下に保ちながら、列車即ち車両を運行することができ、且つ、それらの複数の浮上案内コイルのうち個別の浮上案内コイルのモールド樹脂の温度についても、当該モールド樹脂の使用上限温度以下に保ちながら、列車即ち車両を運行することができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。