JP6836700B2 - 敗血症患者血中エンドトキシン測定のための試料調整方法 - Google Patents

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本発明は、敗血症の診断の指標になる血液中エンドトキシンを測定用試料を得るための添加剤および操作の温度条件に関する。
エンドトキシン(endotoxin:内毒素)は、グラム陰性菌の外膜を構成する成分であり、その化学的本体はLPS (リポポリサッカライド:リポ多糖)である。エンドトキシンは一般的には巨大ミセルの状態で存在する。
エンドトキシンはグラム陰性菌感染症による敗血症、敗血症性ショックや、多臓器不全等の生命を脅かす病態を惹起する重要な細菌由来成分である。
血液中のエンドトキシンの測定によってグラム陰性菌敗血症の早期診断、治療にあたっての重要な情報が提供される。現在、エンドトキシンの測定方法の主流はカブトガニの血球抽出液を用いたリムルステストである。カブトガニの血球抽出液中にはエンドトキシンと特異的に反応する「C因子経路」が存在する。「C因子経路」は、まず、エンドトキシンが、C因子と強固に結合してC因子を活性化する。活性化C因子はB因子を活性化し、活性化B因子は前凝固酵素を凝固酵素にする。凝固酵素はコアギュローゲンを凝固タンパク質であるコアギュリンに変える。その結果、ゲル化がおこる。
また、カブトガニの血球抽出液中には、C因子経路の他にもβ-D-グルカンによって誘導される「G因子経路」が存在する。β-D-グルカンはG因子を活性化し、活性化G因子はエンドトキシンの場合と同様に前凝固酵素を凝固酵素にし、凝固酵素はコアギュローゲンを凝固タンパク質であるコアギュリンに変える。その結果、ゲル化がおこる。
リムルステストは、判定又は測定方法の違いからゲル化転倒法(ゲル化法)、発色合成基質法(比色法)、コアギュリンができるときに生じる濁度変化をとらえる比濁時間分析法(比濁法)等がある。最近は、エンドトキシンが最初に結合するC因子の遺伝子組み換え体を用いる手法も開発されている(非特許文献1,2)。また、遺伝子組み換えC因子やB因子や前凝固酵素の遺伝子組み換え体をも使用することが可能になってきた。さらにゲル化を電気化学的あるいは水晶発振子や質量変化で捉える方法も可能になってきた(非特許文献1,2,3)。
現在本邦ではエンドトキシンに特異的な測定法が開発され、血液中のエンドトキシンを正確に測定することによりグラム陰性菌による敗血症の診断ができるようになり臨床応用されている。β-D-グルカンの特異的な測定もできるようになり、深在性真菌症の迅速診断法として臨床応用されている。
血液中エンドトキシンをリムルステストで測定するには、血漿などに含まれるリムルステストの干渉因子を除去又は不活化する前処理ステップが必要である。血漿などに含まれるα2−plasmin inhibitor、antithrombin III、α1−antitrypsin等は、リムルステストの亢進因子であり、factor Xa、thrombin、trypsin等はリムルステストの抑制因子であり、血漿の前処理ステップによって不活化される。
また、白血球の顆粒由来のエンドトキシン分解酵素(アシロキシアシルヒドロラーゼ)やエンドトキシン結合蛋白(CAP−18やBPI)も血漿中に存在してる。リムルステストでのエンドトキシンの活性を阻害するこれらの活性は敗血症患者の血漿中に増加することが報告されている(非特許文献4)。
前処理ステップとして、これまでPCA法、New PCA法、アルカリ処理法などが用いられてきたが、現在本邦の保険適用の方法である比濁法では希釈加熱法が用いられている。
「希釈加熱法」は、血液由来試料に水や緩衝液を加えて希釈した後、加熱によって干渉因子を不活化する方法である。試料の希釈は加熱による試料の凝固がおこらいないようにする操作である。一般に血清や血漿を用いる場合は水で10倍希釈し、70℃、10分間加熱する。本邦で保険適用されている比濁法の前処理ステップでは、Triton X−100を0.02%に加えた水で希釈する(非特許文献1、2,特許文献1参照)。
エンドトキシンは、グラム陰性桿菌の死後、血流中に遊離して存在していると考えられ、従来からリムルステストに供される血液由来試料としては血漿や血清が用いられている。赤血球は溶血して測定系に悪影響を及ぼすので除去することが必要である。
血液中のエンドトキシンはLBP(LPS binding protein:LPS結合タンパク質)と複合体を形成した後に、白血球に含まれる単球や顆粒球上の細胞表面抗原CD14と結合する。続いて、MD−2とTLR4(Toll−like receptor:Toll様受容体のひとつ)に会合する。その結果、エンドトキシン結合の情報が細胞内のシグナル伝達経路を介して核へと伝達され、TNFαやIL−6等の炎症性サイトカイン遺伝子の発現が誘導され、それら炎症性サイトカインが産生される。(上記非特許文献1、2参照)
特異的な結合のほか、エンドトキシンは白血球表面の接着分子として知られているCD11/CD18に結合したり、スカベンジャーレセプターなどにも結合する。また、従来からエンドトキシンの疎水性部分と細胞膜の疎水性部位同士の結合も考えられてきた。
白血球に結合したエンドトキシンは、速やかに細胞内に取り込まれることが報告されている(非特許文献5)
従って、血液中のエンドトキシンは、血漿中や血清中に存在するばかりでなく、エンドトキシンとして白血球の膜表面に結合した状態、あるいは白血球内に取り込まれた状態でも存在していると推定される。すなわち、血漿中に含まれるエンドトキシン量の測定のみでは血液中のエンドトキシン量を正確に定量しているとは言い難い。感染後、血液を採取するまでに一定時間を経過した場合には、むしろ白血球の膜表面に結合した状態、又は白血球内に取り込まれた状態のエンドトキシン量が優位になっている可能性がある。エンドトキシンが白血球の膜表面に結合することでサイトカインの産生が誘導される結果敗血症性ショック等の症状等の病態が惹起されるので、白血球の膜表面に結合したエンドトキシンや白血球内に取り込まれたエンドトキシンの量を考慮しなければ病態との関連性を明確にすることはできない。
また、エンドトキシンはグラム陰性菌の表層に存在し、菌を対象としてもエンドトキシンとして測定可能であることはこれまで確認してきた(非特許文献2)。すなわちグラム陰性菌が白血球に認識されて結合している状態や細胞内に取り込まれていても細胞が破壊されればリムルステストで陽性を示すと考えられる。
そこで、本発明者らはこれまで白血球に結合したり内部に含まれるエンドトキシン(菌体の状態で存在するエンドトキシンも含めて)の測定方法を特許出願した(特許文献1)。この方法により白血球細胞の膜表面に結合したエンドトキシンや白血球内に取り込まれたエンドトキシン測定の意義について注目されるようになった。しかし、この方法では逆に従来の測定対象であった血漿中に含まれるエンドトキシンが除外されることになる。
本発明者らは、次に白血球と血漿のエンドトキシンを同時に測定する方法を考案した。この方法では、血漿と白血球を別操作で採取して両者を混合して測定するが、遠心分離操作が必要でありかつ操作が煩雑であるという課題があった(特許文献2)。
血液中の赤血球はエンドトキシン定量する際の前処理ステップによって溶血し、測定系を強く妨げるためできるだけ除去した試料が測定に供されるが、白血球や血漿から赤血球のみを簡易に分離するには遠心分離することが必要であり、臨床の現場で白血球と血漿あるいはそれぞれ単独の迅速なエンドトキシンの定量を妨げる要因になっていた。そこで、赤血球のみを除いて白血球と血漿を同時に得てエンドトキシンの測定に供する方法を考案し特許申請した。最初にヒドロキシエチル澱粉を血液凝集剤(非特許文献6)として用いる方法を(特許文献3)、次に同様に血球凝集作用をもつデキストランを用い氷冷下で白血球に富んだ血漿を得る方法を考案した(特許文献4)。氷冷下で行うのは敗血症患者血液中のエンドトキシン不活化因子が温度依存性にエンドトキシンを不活化されるとエンドト キシンの添加実験で報告され(非特許文献4)、室温以上で患者血液を扱うと血中のエン ドトキシンは不活化されエンドトキシン値が低値を示すと考えられるためである。なお、以下の記載では白血球に富んだ血漿を、多白血球血漿leukocyte-rich plasmaとした。
すなわち、ヒドロキシエチル澱粉を血液に適当量混ぜて室温に静置するか(特許文献3)やデキストランと血液を混ぜて氷冷下で静置すると(特許文献4)、これらのもつ赤血球凝集作用により、赤血球は沈降し上澄みに多白血球血漿をわずか約15ないし30分で得ることができる。
特許公開2004-1117127血液エンドトキシン測定方法 (白血球のエンドトキシンを測定対象とした方法について) 特許公開2007−786652007 血液エンドトキシン測定方法(血漿と白血球をいったん分離しそれを合体して測定する方法) 特許公開2013−124905 血液エンドトキシン測定用試料作成方法(ヒドロキシエチル澱粉を用いて多白血球血漿を得る方法) 特許出願2016−008536多白血球血漿の調整方法(デキストランを用いて氷冷下で調製する方法)
ホームページ(InadaKatsuya)エンドトキシンのお話http://www.asahi-net.or.jp/~CP6K-IND/index.html(エンドトキシンに関する総合的な記載のあるホームページで、毎日多数のアクセスがある。リムルステスについて詳述している) 遠藤重厚, 稲田捷也, エンドトキシンと病態. へるす出版, 1995.(発明者の著書で現在絶版になったが、上記ホームページに受け継がれている) Peng Miao.Electroochemical sensing strategies for the detection of endotoxin: a review. RSC Advances, An international journal to further the chemical sciences. 3, 9606-9617, 2013(電気的な手法でエンドトキシンを測定する試みについての総説) Olofsson P et al. Endotoxin inactivation in plasma from septic patients: An in vitro study. World Joumal of Surgey 10, 318-323,1986(血漿は冷やすべきであるとする最初の論文) Luchi M and Munford RS、Binding, internalization, and deacylation of bacterial lipopolysaccharide by human neutrophils. J Immunol 151,959-969,1993(エンドトキシンは白血球内に取り込まれる) Graham JM. Isolatfon of human polymorphonuclear leukocyes (granulocyes) from a leukocyte-rich fraction. Scientific World Journal 2.1393-1396. 2002(赤血球凝集剤を用いたLRPの分離法についての記述)
血液中エンドトキシンを測定する意義はグラム陰性菌敗血症を効率良く診断し、エンドトキシンに対する速やかな治療を開始する指標とすることである。しかし、実際には、敗血症でエンドトキシンが陽性になる率はグラム陰性菌敗血症と推定された患者のうちたかだか60から70%であり、状況によってはさらに低いのこともある。従って、この手法の臨床の現場での重要性が次第に低下しつつあった。本発明者の一連の白血球に結合したエンドトキシンを測定する技術はこの問題に終止符を打つことが期待されてきたが、ヒドロキシエチル澱粉を用いて多白血球血漿を得る方法にはいくつかの問題点が指摘されてきた。
すなわちヒドロキシエチル澱粉は水に難溶性のため生理食塩水溶液の調整は容易ではない。さらに、赤血漿増量剤として用いられかつ血球凝集作用を有する高い分子量の医療用ヒドロキシエチル澱粉溶液の入手も困難であった。そこでここでは、ヒドロキシエチル澱粉に替えて同様に赤血球凝集能をもつデキストランを多白血球血漿の調整に用いる方法を考案した。赤血球凝集能のある高分子デキストランの入手は容易であり、生理食塩水溶液の調整も容易である。敗血症患者血漿には37℃保温で添加したエンドトキシンを不活化する活性が健常者血漿に比較してく認められることから(非特許文献4)、発明者はいったん氷冷下でデキストランを用いて多白血球血漿を得る方法を特許出願した(特許文献4)。しかしその後、常温で調整した多白血球血漿と氷冷下で調整した多白血球血漿を比較した場合に、前者のエンドトキシン値がむしろ高値を示す場合があることがわかったので 37℃で保温しながら多白血球血漿を得る発明に至った。
すなわち発明者は採血後血液を直ちに37℃に保温し同じ温度に保温しているデキストラン溶液に加えて、多白血球血漿が得られるまで同じ温度で保温する方法を考案した。すな わち、エンドトキシンの患者血漿への添加保温実験では37℃で多白血球血漿を得ようと するとエンドトキシンは急激に減少するのに対して、患者血液をデキストラン溶液ととも に37℃で保温すると0℃保温で得た場合よりもエンドトキシン値が高値を示すこという 全く想定外に結果によってこの発明を考案することになった。
この方法によって血液中エンドトキシンの陽性率が改善されることが期待される。エンドトキシンは温度依存性にデキストランと何らかの相互作用をおこして、リムルス反応に対する活性が高まるようになり、かつ血中のエンドトキシン不活化因子の作用から免れるようになると推定される。この方法によって敗血症におけるエンドトキシン陽性率の向上が期待される。
1)氷冷下で採取した血漿(血漿0)、2)37℃で採取した血漿(血漿37)、3)氷冷下で採取した多白血球血漿(Dextran0)、4)37℃で採取した多白血球血漿(Dextran37)のエンドトキシ値。血漿(Plasma0、Plasma37)では測定値を10倍して血漿濃度とした。Dextran0とDextran37についてはヘマトクリット値で補正して血漿の値と整合性をとった。図では10名の敗血症患者から得られたそれぞれの4つの値を直線で結んだ。 図1のデータを箱ひげ図で表した。多群比較(一元配置分散分析、Newman−Kewis法)により有意性(p<0.05)を比較した。その結果、37℃で保温した場合(Dextran37)は他のすべての群に対して有意であった。 予め37℃または0℃で15分保温したデキストランT500または生理食塩水(control)に、同温度にあらかじめ保温した敗血症患者血漿をを加えてで15分保温しエンドトキシ値を測定した。
本発明は、赤血球凝集能をもつデキストラン溶液と試料を混合静置して多白血球血漿を採取する段階で操作する温度が37℃であることを特徴とするエンドトキシン測定用の試料調整剤および試料の前処理法である。
赤血球凝集能をもつデキストランはエンドトキシンフリーであり且つカブトガニ血球抽出液とエンドトキシンとの反応を阻害又は促進しない性質を有することを特徴とするエンドトキシン測定用試料の前処理剤および調整法についてである。
赤血球凝集能をもつデキストランであればその分子量の大小は問わない。例えばPharmacosmos社(デンマーク)のデキストランT500は平均分子量約50万で赤血球凝集能を保有している。
血液には抗凝固剤を加えるが、リムルステストに適した一般的な抗凝固剤が用いられる。例えばヘパリンをリムルステストに影響を与えない濃度で加えてもよい。この場合、ヘパリンの終濃度は10〜100units/mLにすることが好ましい。
6%のデキストラン溶液と例えば2倍量の血液を混合して軽く混和して静置する。デキストランの濃度は0.1%から6%までが良い。デキストラン粉末に血液を加えてもよい。凍結乾燥したデキストランを用いてもよい。保温温度は好ましくは37℃である。静置する時間は赤血球が沈降するまでの時間であり、温度やデキストラン濃度に影響されるので5分から30分程度である。いずれの方法においても沈降した赤血球層より上の層を多白血球血漿として回収する。
採取した多白血球血漿は前処理ステップを経てエンドトキシ測定に供される。前処理ステップは血漿の場合と同様に行う。すなわち水ないしトリトンX−100を0.02%に含む水で多白血球血漿を10倍に希釈してから70℃で10分加熱する。この操作は、血漿や白血球に含まれるリムルステスト影響因子を不活化する操作であり、希釈は試料の加熱による血漿の凝固を起こさせないためである。多白血球血漿の場合の希釈の程度と加温の時間は血漿と同様でもよいが、その希釈の程度は3倍から20倍で希釈することによりエンドトキシ濃度が低下して測定感度以下になることがなければそれ以上の希釈を行ってもかまわない。加熱時間は5分から15分、加熱温度は60℃から100℃程度が望ましい。
前処理ステップの水あるいはトリトンX−100水溶液での希釈と加熱の操作は、白血球の破壊の操作を兼ねても良い。その場合には、10倍に希釈した後ボルテックスミキサーで十分に攪拌してもよい。また、この操作で多白血球血漿中のリムルステストの干渉因子を除去出来なかった場合には、新たにその目的のために、他の方法で干渉因子を除去しても良い。
さらに、白血球は水での希釈と攪拌さらに加熱で破壊されるが、超音波破壊方法、物理的破砕方法、凍結融解方法等で、エンドトキシンが破壊されず白血球を十分に破壊できる方法であれば、これらの方法を追加してもよい。
「超音波破壊方法」は、前記試料に超音波を加えることによって、超音波の振動で白血球の細胞膜を破壊し、細胞内容物を溶出させる方法である。超音波処理は超音波細胞破砕機(ソニケーター)等の装置を用いて行ってもよい。当該方法における超音波の強さは、白血球の細胞膜を破壊できるが、エンドトキシンを破壊しない範囲であればよく、血液の分量や超音波の発振出力、発振時間によって適宜調節すればよい。
「物理的破砕方法」は、前記試料に物理的な外力を加えて、白血球を破壊する方法である。物理的破砕処理は、ホモジナイザー等の装置を用いてもよい。当該方法における外力の強さは、白血球の細胞膜を破壊できるが、エンドトキシンを破壊しない範囲であればよい。
「凍結融解方法」は、前記試料を液体窒素中やドライアイス中で急速凍結した後に温湯等で融解する操作を行うことによって血液中の白血球を破壊する方法である。急速凍結による細胞内水分の結晶化による体積膨張と、その後の結晶融解によって細胞膜を破壊する原理に基づくものである。凍結融解の操作は、前記成分血液中の白血球が十分に破壊されるまでエンドトキシンを破壊しない範囲であれば複数回繰り返してもよい。
リムルステストの方法としては、例えば、ゲル化法、発色法、比濁法、エンドトキシン光散乱法やなどの一般に行われている方法やその他の方法でもよい。また、この際に用いるカブトガニ血球抽出液は、通常のエンドトキシンの測定に使用できるもの、例えば和光純薬工業社、生化学バイオビジネス社製、エンドセ−フ社、ロンザ社で、リムルス(Limulus)属、タキプレウス(Tachypleus)属あるいはカルシノスコルピウス(Carcinoscorpius)属のカブトガニの血球から抽出されたものであれば特に限定されない。また、天然のリムルス経路の因子ではなく組み換え体因子を用いた方法でもよい。また、今後開発が期待されるリムルス試薬を用いない血液エンドトキシンの測定法(非特許文献1)にも応用可能である。
この試料作成法は、リムルステストを用いたβ−Dーグルカンの測定にも応用しても良い。
この方法は、一般に血液と呼ばれるもの以外にも、赤血球を含む生体由来の試料例えば臍帯血、骨髄細胞、体液、髄液、尿などのエンドトキシンを検出する場合に、白血球を含む試料から赤血球を除く目的で用いてもよい。
本発明の実施に用いる器具や試薬、水等は全てエンドトキシ・フリーのもの、あるいはエンドトキシ測定結果に影響を及ぼさない程度の極めて微量しかエンドトキシを含有していないものを使用した。操作はエンドトキシフリーのピペットチップ(バイオクリーンチップ;和光純薬工業社製)を用いた。デキストランとしてはPharmacosmos社(Holbaek、Denmark)製のデキストランT500を6%濃度(W/V)に溶解し、121℃で2時間オートクレーブしてエンドトキシ濃度が下記の測定法での測定限界である約0.05pg/ml以下になるようにした。エンドトキシはリムルス試薬として臨床検査用のエンドトキシーシングルテストワコー(和光純薬工業株式会社)を使用し、トキシノメーターMTー5500(和光純薬工業)を用いて行った。予め、血液保存容器とデキストランT500は37℃に15分以上保温しておいた。採血後直ちに血液は37℃に保温した容器にいれて血液を保持するようにした。保温した血液800μLを予め37℃に保温したデキストランT500の400μLに加えて37℃に静置した。約15ないし30分で上澄みが採取できるのでこれを多白血球血漿とした。白血球数は血液の総量の約85%以上がこの多白血球血漿画分に回収できた。多白血球血漿の100μLを900μLの市販の血漿前処理液(和光純薬工業)に加えて10倍希釈して、白血球を破壊する目的でボルテックスミキサーで十分に混和してから70℃、10分加熱し非特異的影響因子を失活させた。その後直ちに氷冷し、ボルテックスミキサーで十分に混和してからその200μLを凍結乾燥した上記リムルス試薬に加えてトキシノメーターにセットして200分まで測定した。多白血球血漿はデキストラン溶液で希釈されたのでヘマトクリット値(%)を考慮した補正式を用い得た値をエンドトキシ値に乗して血漿の値と比較した。補正式;(A+デキストラン量)/A。ここでA=(血液量−血液量×ヘマトクリット値/100)。図1,2にはその結果を示した。その結果、37℃でデキストランを用いて多白血球血漿を得ると、氷冷下で得るよりもエンドトキシ値が高値であることが明らかになった。
なを、いったん0℃で得た多白血球血漿を37℃に保温してもエンドトキシ値は0℃でえた多白血球血漿と同様に低値であった(1例目で0.9から0.8、2例目で1.0から1.3)。逆に37℃で得た多白血球血漿を0℃にしても値は高いままであった(1例目で4.0から3.7、2例目で1.6から2.0)(単位はpg/mL)。このことから、採血後多白血球血漿を採取する段階で37℃にすることが高値のエンドトキシをえる条件であることが推定された。
血漿にデキストランT500を加えて37℃で15分以上保温したところ測定値が同条件で0℃で保温した場合に比較して増加した。例えば図3に示すように敗血症患者血漿200μLに6%デキストランT500を100μL加えたところ、37℃で保温した場合はデキストラン濃度に依存してエンドトキシン値が増加したが(●)、0℃の場合はデキストラン濃度を高めてもエンドトキシ値はその増加は僅かであった(▲)。

本発明の37℃で温度条件でデキストランを用いて多白血球血漿をえる方法は、全血から遠心分離の操作を加えずにエンドトキシン測定を阻害する赤血球を除去でき、白血球の表面や内部のエンドトキシン測定が容易になるばかりでなく、エンドトキシンのリムルス活性を高められることができる。その結果、エンドトキシンの陽性率の向上がはかられ、緊急性を要する敗血症や敗血症性ショックの診断や治療方針の決定に寄与することができる。また、多白血球血漿の場合だけでなく従来の血漿測定法においても、デキストランを加えることによりより高い測定値が得られることがわかった。この発明は臨床医学に貢献すること大であると考える。さらに今後開発されることが期待される天然資源であるカブトガニ血球を用いたリムルステストに替わる血液エンドトキシンの検出手法にもこの方法が適用できると推定される。

Claims (6)

  1. 採取した血液を直ちに37℃に保温し、予め血液を保温する温度と同じ温度に保温した 液と等張の溶液に溶解したデキストラン溶液を加えて37℃で静置して得た多白血球血漿を試料とすることを特徴とする血液エンドトキシン測定用試料の作成法。
  2. 血液と等張の溶液に溶解したデキストラン溶液と血液の混合物を静置する時間が赤血球が沈降して上澄みの多白血球血漿が分離される時間であ請求項1に記載の血液エンドトキシン測定用試料作成法。
  3. 試料がヒト又は動物の血液である、請求項1または2に記載のエンドトキシン測定用試料の作成法。
  4. 赤血球凝集能を有し、血液と等張の溶液に溶解した請求項1から3までに記載の血液エンドトキシン測定用試料作法に用いる37℃に保温されたデキストラン溶液からなる試薬
  5. 血液と等張の溶液に溶解したデキストラン溶液の濃度(W/V%)が0.1から6%である請求項4に記載の血液エンドトキシン測定用試料作成に用いる試薬。
  6. 血液と等張の溶液に溶解したデキストラン溶液はエンドトキシンフリーである請求項4 たは5に記載の血液エンドトキシン測定用試料作成に用いる試薬。
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