JP6833662B2 - 炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法 - Google Patents

炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、新規な炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法に関し、より詳しくは、気相の酸化ケイ素と気相の炭素化合物を原料として、特定の触媒成分が担持された無機繊維のプリフォームの内部空隙にマトリックスとして炭化ケイ素を生成させる炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法に関する。
炭化ケイ素マトリックス複合材料は、耐熱性や化学的安定性などに優れる炭化ケイ素セラミック材料を、耐熱性や高温強度などに優れる無機繊維によって強化することにより、高温下での強度や靭性などについても格段に向上させることを意図した材料である。かかる複合材料は、航空宇宙エンジンや発電ガスタービンなどの構造材料としての卓越した材料性能が目論まれ、燃費や熱効率の大幅な向上が期待されている。
従来、こうした炭化ケイ素マトリックス複合材料は、一般に、先ず無機繊維の二次元又は三次元織物からなるプリフォームを作成し、このプリフォームの繊維間の空隙に炭化ケイ素をマトリックスとして形成することによって製造される。
このような炭化ケイ素マトリックスを形成するために種々の方法が検討されており、一つは気相含浸法と称される方法である。この方法では、SiClなどのシラン化合物とCなどの炭化水素を、SiCを生成させる原料ガスとしてプリフォーム内に供給して、これら原料ガスの熱分解反応などによってSiCマトリックスを形成する(特許文献1)。
この方法では、形成されたマトリックスは緻密で高純度な膜状組織となり得るものの、SiC生成条件を満たすプリフォームの外部空間にもSiCが生成しやすく、先に生成したSiC膜が次のSiC生成箇所になりやすい。このため、プリフォーム内の空隙の全体にわたって均等にSiCを形成させるためにはSiCの生成速度を大幅に下げる必要があり、原料の供給と排ガスの処理に特殊な装置を必要とするため、高コストになるという問題もある。
また、固相含浸法と称される方法があり、原料である金属ケイ素と炭素の混合粉末をプリフォーム中に含浸して反応させてSiCマトリックスを形成する。この含浸は、例えば、混合粉末のスラリー中にプリフォームを沈め、振動を加えることで行うが、微細な繊維からなるプリフォームの内部に原料粉末を十分に含浸させることは極めて困難である。さらに、含浸させた原料粉末をその後反応させて緻密化させる際に、プリフォームが変形し、繊維が損傷するといった問題もある(特許文献2)。
また、液相含浸法と称される方法あり、SiC前駆体ポリマーをプリフォームに含浸し、焼成してセラミック化することでSiCマトリックスを形成する。しかしながら、SiC前駆体ポリマーからSiCに変化するときの体積収縮が極めて大きいため、炭化ケイ素マトリックスの十分な密度を得るには、含浸と焼成をバッチ方式で何度も繰り返す必要がある(特許文献3)。
また、溶融含浸法と称される方法があり、骨材としてのSiC粉末とC粉末の混合物をプリフォームに含浸させた後、溶融したSiを注入することでSiとCを反応させ、SiCマトリックスを形成する。この方法では、低コストで気孔のない緻密な組織を形成できるが、反応速度が大きいため生成する組織の制御が難しく、プロセス温度が高いために繊維を損傷させやすいといった問題もある。
また、ナノインフィルトレーション遷移共晶相プロセスと称される方法があり、SiC微粉末及び焼結助剤をプリフォームに含浸させて予備成形体を作成した後、加圧焼結させ、緻密なSiCマトリックスを形成する。この方法では、気孔の少ない組織を形成できるが、加圧焼結の必要性によって、予備成形体の寸法が変化する、プリフォームの繊維が損傷する、複雑形状の構造体の製造が困難という問題がある(特許文献4)。
特開2015−151587号公報 特開2017−48103号公報 特開平11−49570号公報 特開2010−070421号公報
本発明は、SiCマトリックスの生成速度を大きくしてもプリフォーム内でのSiCマトリックスの生成速度が均一化され、プリフォームに直接外力を与える必要がなく、マトリックスを形成するのに要する時間が著しく短縮され、かつ比較的低い温度でSiCマトリックスを形成することができる、という特長を有す炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的は、
炭化ケイ素繊維を含んでなるプリフォームの内部空隙に、炭化ケイ素をマトリックスとして生成させる炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法であって、
前記プリフォームの内部に酸化ニッケルまたは酸化鉄を配置し、前記プリフォームの内部空隙に炭化ケイ素粉末を配置した後、
加熱下の前記プリフォーム内に配置された酸化ニッケルまたは酸化鉄に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させる、ことを特徴とする炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法によって達成される。
即ち、本発明は、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物をプリフォームの内部空隙まで拡散させ、加熱下の酸化ニッケルまたは酸化鉄の触媒作用を利用して、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物より、その場で炭化ケイ素を生成させることにより炭化ケイ素マトリックスを形成する方法である。
この触媒作用の機構は、必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。即ち、酸化ニッケルまたは酸化鉄が気相の酸化ケイ素を還元してケイ素を液相又は固相の状態にして固定し、その固定されたケイ素と炭素化合物が反応して炭化ケイ素を生成する。この反応は、酸化ケイ素と炭素化合物が直接反応して炭化ケイ素を生成する温度よりも低い温度で進行することから、プリフォームを適切な温度にすることで、プリフォーム内に配置された酸化ニッケルまたは酸化鉄の存在する箇所にのみ炭化ケイ素を生成させることができる。
このため、こうした触媒作用の高い酸化ニッケルまたは酸化鉄を選定し、温度や圧力などの各種の反応条件から炭化ケイ素の生成速度が大きい条件を選択しても、プリフォームの外部空間にもSiCが生成することは抑えられ、プリフォーム内の酸化ニッケルまたは酸化鉄の均一な配置が、均一な炭化ケイ素の生成をもたらすことができる。
また、こうした炭化ケイ素の生成は、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物がプリフォームの内部に拡散して起きるため、緻密な炭化ケイ素マトリックスを得るためにプリフォームに直接外力を与える必要はなく、また、酸化ケイ素と炭素化合物が酸化ニッケルまたは酸化鉄の存在する箇所に供給される限り炭化ケイ素が連続的に生成するため、焼成をバッチ方式で何度も繰り返す必要はない。
また、こうした炭化ケイ素の生成は、酸化ニッケルまたは酸化鉄の触媒作用を利用して比較的低い温度で進行することから、プリフォームの炭化ケイ素繊維の熱劣化を著しく軽減することができる。なお、本発明におけるプリフォームの内部に配置される「酸化ニッケルまたは酸化鉄」は、単体金属以外の酸化物、塩化物、炭化物、窒化物などの形態であってもよい。
好ましくは、前記プリフォームの繊維を酸化ニッケルまたは酸化鉄化合物の溶液で湿潤させ、前記溶液の溶媒を除去して前記プリフォームの内部に酸化ニッケルまたは酸化鉄を配置した後、加熱下の前記プリフォーム内に配置された酸化ニッケルまたは酸化鉄に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させ、前記プリフォームの内部空隙に炭化ケイ素を生成させる。かかるプリフォームの繊維を酸化ニッケルまたは酸化鉄化合物の溶液で湿潤させる状態を介することにより、酸化ニッケルまたは酸化鉄をプリフォームの繊維上に均等に堆積させることができる。
好ましくは、前記プリフォームの内部に酸化ニッケルまたは酸化鉄を配置し、前記プリフォームの内部空隙に炭化ケイ素粉末を配置した後、加熱下の前記プリフォーム内に配置された酸化ニッケルまたは酸化鉄に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させる。
このように、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物から炭化ケイ素を生成させる前に、予めプリフォームの内部空隙に炭化ケイ素粉末を配置することで、マトリックスを緻密化するまでの時間を短縮することができる。
好ましくは、前記炭化ケイ素粉末が、酸化ニッケルまたは酸化鉄を担持された後に前記プリフォームの内部空隙に配置される。このように炭化ケイ素粉末にも酸化ニッケルまたは酸化鉄を担持することで、プリフォームの内部空隙に存在する炭化ケイ素粉末の緻密化を迅速にすることができる。
好ましくは、前記プリフォームの内部に配置された酸化ニッケルまたは酸化鉄が、前記プリフォームの表面から中央までの厚さ方向に正の濃度勾配を有する。かかる濃度勾配を設けて酸化ニッケルまたは酸化鉄を配置することにより、肉厚のプリフォームにおいて酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物の拡散が遅れたとしても、中央部分の炭化ケイ素生成が促進され、厚さ方向において実質的に均等な速度で気相混合物から炭化ケイ素を生成させることができる。
好ましくは、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させる前の前記プリフォームが、酸化ニッケルまたは酸化鉄を0.1〜10重量%含む。かかるプリフォームの酸化ニッケルまたは酸化鉄含有率が、プリフォームをより効率的に緻密化することができる。
好ましくは、前記気相混合物を1300〜1600℃の温度で酸化ニッケルまたは酸化鉄に接触させる。かかる温度範囲であれば、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物から酸化ニッケルまたは酸化鉄の触媒作用下で炭化ケイ素を生成させることができる。好ましくは、前記炭素化合物がC1〜C16化合物から選択される。かかる炭素化合物より、好適に炭化ケイ素を生成させることができる。
本発明は、SiCマトリックスの生成速度を大きくしてもプリフォーム内でのSiCマトリックスの生成速度が均一化され、プリフォームに直接外力を与える必要がなく、焼成をバッチ方式で何度も繰り返す必要がないため、マトリックスを形成するのに要する時間が著しく短縮され、比較的低い温度でSiCマトリックスを形成することができる、という特長を有す炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法を提供することができる。
本発明の方法に用いる炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造装置を模式的に例示する断面図 本発明の方法に用いる別の態様の炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造装置を模式的に例示する断面図
本発明は、炭化ケイ素繊維を含んでなるプリフォームの内部空隙に、炭化ケイ素をマトリックスとして生成させる炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法であって、前記プリフォームの内部に遷移金属を配置した後、加熱下の前記プリフォーム内に配置された前記遷移金属に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させ、前記プリフォームの内部空隙に炭化ケイ素を生成させる炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法である。
本発明において使用されるプリフォームは、炭化ケイ素を含んでなる繊維を製織して立体形状にした製織体が好適に使用可能である。
本発明においては、こうした炭化ケイ素を含んでなる繊維のプリフォームの内部に遷移金属を配置する。この配置の仕方は、溶融した金属をプリフォームに流し込むか、炭化ケイ素繊維の間隙に金属粉末を入れ込むことでもよいが、好ましくは、プリフォームの繊維を遷移金属化合物の溶液で湿潤させた後、その溶液の溶媒を除去してプリフォームの内部に遷移金属を配置する。
なお、こうしたプリフォームは、シート状構造のプリプレグを積層した構造体であってもよい。その場合、プリプレグの繊維を遷移金属化合物の溶液で湿潤させた後、その溶液の溶媒を除去してプリプレグの内部に遷移金属を配置し、これらのプリプレグの複数枚を積層してプリフォームを構成することで、プリフォームの内部に遷移金属を配置することもできる。
かかる遷移金属化合物の溶液は、遷移金属の硝酸塩、塩酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、塩化物、及び各種の有機金属化合物などの水溶液、無機酸溶液、アルカリ溶液、有機溶媒溶液などが挙げられる。
こうした遷移金属化合物の溶液でプリフォームの繊維を湿潤させ、その溶液の溶媒を除去してプリフォームの内部に配置された遷移金属は、もとの遷移金属化合物のままの硝酸塩、塩酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、塩化物、又は各種の有機金属化合物などの形態であってよい。あるいは、例えば、大気雰囲気中で数100℃に加熱して遷移金属酸化物の形態にしてもよい。
このようにして配置される遷移金属の量は、単体の遷移金属に換算してプリフォームの重量を基準に、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
次いで、加熱下のプリフォーム内に配置された遷移金属に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させ、プリフォームの内部空隙に炭化ケイ素を生成させる。
この工程においては、プリフォームを好ましくは1300〜1600℃、より好ましくは1300〜1500℃に加熱し、内部に配置された遷移金属に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させる。
ここで、本発明における酸化ケイ素は、好ましくは一酸化ケイ素であるが、SiOxで表わしたときに必ずしもx=1である必要はない。即ち、本発明における酸化ケイ素は、SiOxで表わしたときに0.7<x<1.5であって、1600℃以下の温度で気体になることができる酸化ケイ素である。
こうした本発明における気相の酸化ケイ素は、例えば、シリカと金属ケイ素とを等しいモル量で混合し、減圧下で約1300〜1600℃に加熱することによって生成させることができる。好ましくは、かかる気相の酸化ケイ素は、シリカと金属ケイ素との等モル量の混合物を加熱して得られる実質的にx=1の一酸化ケイ素を挙げることができる。このような一酸化ケイ素を発生させる先行技術は、特開2002−97567号公報、特開2005−225690号公報、特開2009−78949号公報などに開示されている。
また、こうした本発明における気相の酸化ケイ素は、上記の先行技術などに記載の方法によって得られた固体の一酸化ケイ素を約1300〜1800℃に加熱して昇華させることによって生成させることもできる。
本発明における炭素化合物は、好ましくは、1つの分子の中に1〜16個の炭素原子を有する化合物、即ち、C〜C16化合物から選択され、具体的には、CO、CH、C、C、C、C、C、及びこれらの混合物が挙げられる。また、加熱により気相を形成する揮発性の有機化合物、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、キシレン、トルエン、スチレン、酢酸エチル、ノルマルヘキサン、石油ベンジン、ミネラルスピリットなども好適に使用可能である。
本発明の方法において、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を加熱下のプリフォーム内に配置された遷移金属に接触させるには、この気相混合物の雰囲気下にプリフォームを配置し、好ましくは、この気相混合物とプリフォームを1300〜1500℃の温度に維持することでよい。このような状態に所定の時間にわたって維持することで、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物がプリフォームの内部に拡散して酸化ケイ素及び炭素化合物より炭化ケイ素が生成し、炭化ケイ素マトリックスが形成される。
かかる状態に気相混合物とプリフォームを維持する時間は、プリフォームの厚さなどによっても異なるが、通常は、数時間から数10時間で十分であり、従来の気相含浸法のように数100時間にも及ぶような長時間の操作が必要ない。これの理由の一つは、炭化ケイ素の生成がプリフォーム内の遷移金属の存在箇所に限られ、従来の気相含浸法のように、炭化ケイ素がプリフォームの外側表面を被覆することがないためと考えられる。
好ましい態様において、プリフォームの内部空隙に炭化ケイ素粉末を配置した後、加熱下のプリフォーム内に配置された遷移金属に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させる。こうした炭化ケイ素粉末の配置は、気相混合物から炭化ケイ素を生成させてマトリックスを緻密化するまでの時間を短縮させることができる。
配置される炭化ケイ素粉末の量は、特に限定する必要はないが、好ましくは、プリフォームの重量の5〜40重量%である。また、この炭化ケイ素粉末の粒子径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。
なお、プリフォームの内部空隙に炭化ケイ素粉末を配置するには、例えば、炭化ケイ素粉末を水に分散させてスラリーを調製し、このスラリーにプリフォームを浸して必要により超音波振動を与えた後、乾燥させて水を除去する方法が挙げられる。
好ましい態様において、プリフォームの内部空隙に配置される炭化ケイ素粉末には、遷移金属が担持される。この担持の仕方は、プリフォームと同様に、炭化ケイ素粉末を遷移金属化合物の溶液で湿潤させ、その溶液の溶媒を除去することでよく、かかる遷移金属化合物の溶液は、遷移金属の硝酸塩、塩酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、塩化物、及び各種の有機金属化合物などの水溶液、無機酸溶液、アルカリ溶液、有機溶媒溶液などが挙げられる。
かかる態様において担持される遷移金属の量は、単体の遷移金属に換算して炭化ケイ素粉末の重量を基準に、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
好ましい態様において、プリフォームの内部に配置された遷移金属が、プリフォームの表面から中央までの厚さ方向に正の濃度勾配を有する。これにより、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物が、表面から中央部分に拡散するにつれて濃度の低下や拡散の遅延を生じたとしても、炭化ケイ素の生成速度を厚さ方向に均等化することができ、全体的に緻密な炭化ケイ素マトリックスとすることができる。
こうした濃度勾配を有するプリフォームは、例えば、炭化ケイ素繊維を含んでなるシート状構造のプリプレグを複数枚用意し、上記のようにして、遷移金属化合物の溶液を用いてプリプレグの内部に遷移金属を配置する際に、遷移金属の濃度をプリプレグごとに変化させ、濃度の高いプリプレグを中央に配置して所定の濃度勾配が形成されるように複数枚を積層することで製造可能である。
このような積層される複数枚のプリプレグは、上記と同様にして、それらの内部空隙に炭化ケイ素粉末が配置された状態で積層されることが好ましく、さらに、それぞれのプリプレグに配置される炭化ケイ素粉末の遷移金属含有率もまた、プリプレグを形成する繊維と同等な濃度勾配を設けることが好ましい。
好ましくは、これらのプリフォーム、プリプレグ、及び炭化ケイ素に配置又は担持される遷移金属は、IUPAC周期律表の第3族から12族の元素から選択され、より好ましくは、Fe、Ni、Cu、CoZnから選択される。
これら遷移金属は、気相混合物中の酸化ケイ素と炭素化合物の比率にかかわらず、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物から、結晶性の高い立方晶炭化ケイ素を生成させる触媒作用を発揮することができる。
図1は、本発明の方法に使用する炭化ケイ素マトリックス複合材料を製造するための装置の一態様を断面図で例示する。内部に遷移金属が配置されたプリフォーム1を真空チャンバー2の中の支持台3の上に配置する。酸化ケイ素を流路4より供給し、同時に炭素化合物を流路5より供給し、酸化ケイ素と炭素化合物の比率はバルブ6で調整する。
このようにして酸化ケイ素と炭素化合物を供給しながら、プリフォーム1を所定時間にわたってヒーター7によって加熱することで、プリフォーム1の内部空隙に炭化ケイ素を生成させることができ、炭化ケイ素マトリックス複合材料を製造することができる。
また、図2は、本発明の方法に使用する炭化ケイ素マトリックス複合材料を製造するための別の態様の装置を断面図で例示する。内部に遷移金属が配置されたプリフォーム1を真空チャンバー2の中の支持台3の上に配置する。顆粒状の酸化ケイ素8を、真空チャンバー2の中の下部の皿状容器9の中に配置する。炭素化合物は流路5より供給し、炭素化合物の流量はバルブ6で調整する。
このような状態で炭素化合物を供給しながら所定時間にわたってヒーター7によって加熱することで、酸化ケイ素8を徐々に昇華させて、真空チャンバー2内を酸化ケイ素と炭素化合物を含む気相混合物の雰囲気にし、プリフォーム1の内部空隙に炭化ケイ素を生成させることができ、炭化ケイ素マトリックス複合材料を製造することができる。
なお、図1及び図2は本発明の方法に用いる炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造装置を概念的に示すものに過ぎなく、形状や各寸法の比率は実際の装置とは必ずしも一致していない。
実施例1
炭化ケイ素繊維の織布(朱子織、平均繊維径13μm、目付354g/m)を硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO)の30重量%水溶液に浸した後、乾燥し、大気中600℃に加熱して、炭化ケイ素繊維の100重量部あたり5重量部の酸化ニッケルを炭化ケイ素繊維上に配置した。
また、炭化ケイ素粉末(比表面積17m/g、平均粒子径0.2μm)を硝酸ニッケルの30重量%水溶液と混合した後、乾燥し、大気中600℃に加熱して、炭化ケイ素粉末の100重量部あたり5重量部の酸化ニッケルを炭化ケイ素粉末に担持した。
得られた酸化ニッケルを担持した炭化ケイ素粉末を、水に分散させてスラリーにし、このスラリーに、上記の酸化ニッケルを配置した炭化ケイ素繊維を浸して超音波振動を与えた後、乾燥し、炭化ケイ素粉末粒子を繊維の間隙に含有する炭化ケイ素繊維を得た。これらの炭化ケイ素粉末と炭化ケイ素繊維の重量比は約1:1であった。
このようにして得られた炭化ケイ素粉末粒子を含有する厚さ3mmの炭化ケイ素繊維を5cm×5cmに裁断して黒鉛坩堝の中に配置し、さらに一酸化ケイ素の粉末20gを黒鉛坩堝内の下側周辺に配置した。この状態で、黒鉛坩堝内に一酸化炭素を供給しながら、黒鉛坩堝を1400℃で30時間にわたって加熱した。
これらのプロセスにより、炭化ケイ素粉末と炭化ケイ素繊維が一体に緻密化した複合体が得られ、この複合体の空隙率は20体積%以下であった。
実施例2
硝酸ニッケル(Ni(NO・6HO)を硝酸鉄(Fe(NO・9HO)に代える以外は実施例1と同様にし、炭化ケイ素繊維の100重量部あたり7重量部の酸化鉄を炭化ケイ素繊維上に配置し、炭化ケイ素粉末の100重量部あたり7重量部の酸化鉄を炭化ケイ素粉末に担持した。
次いで、実施例1と同様にし、間隙に炭化ケイ素粉末粒子が間隙に入り込んだ炭化ケイ素繊維を作成し、これを黒鉛坩堝内で一酸化炭素と一酸化ケイ素の気相混合物に曝し、炭化ケイ素粉末と炭化ケイ素繊維が一体に緻密化した複合体を得た。この複合体の空隙率は20体積%以下であった。
耐熱性などに優れる炭化ケイ素のマトリックスと、高強度の炭化ケイ素繊維とが複合化された、高温下での強度や靭性などが格段に優れる複合材料を提供することができる。かかる複合材料は、航空宇宙エンジンや発電ガスタービンなどの構造材料としての卓越した材料性能が目論まれ、燃費や熱効率の大幅な向上が期待される。
1 プリフォーム
2 真空チャンバー
3 支持台
4 流路
5 流路
6 バルブ
7 ヒーター
8 酸化ケイ素
9 皿状容器

Claims (7)

  1. 炭化ケイ素繊維を含んでなるプリフォームの内部空隙に、炭化ケイ素をマトリックスとして生成させる炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法であって、
    前記プリフォームの内部に酸化ニッケルまたは酸化鉄を配置し、前記プリフォームの内部空隙に炭化ケイ素粉末を配置した後、
    加熱下の前記プリフォーム内に配置された酸化ニッケルまたは酸化鉄に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させる、ことを特徴とする炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法。
  2. 前記プリフォームの繊維を酸化ニッケルまたは酸化鉄の溶液で湿潤させ、前記溶液の溶媒を除去して前記プリフォームの内部に酸化ニッケルまたは酸化鉄を配置した後、
    加熱下の前記プリフォーム内に配置された酸化ニッケルまたは酸化鉄に、酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させ、前記プリフォームの内部空隙に炭化ケイ素を生成させる、ことを特徴とする請求項1に記載の炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法。
  3. 前記炭化ケイ素粉末が、酸化ニッケルまたは酸化鉄を担持された後に前記プリフォームの内部空隙に配置される、請求項1又は2に記載の炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法。
  4. 前記プリフォームの内部に配置された酸化ニッケルまたは酸化鉄が、前記プリフォームの表面から中央までの厚さ方向に正の濃度勾配を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法。
  5. 酸化ケイ素及び炭素化合物を含む気相混合物を接触させる前の前記プリフォームが、酸化ニッケルまたは酸化鉄を0.1〜10重量%含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法。
  6. 前記気相混合物を1300〜1600℃の温度で酸化ニッケルまたは酸化鉄に接触させる、請求項1〜のいずれか1項に記載の炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法。
  7. 前記炭素化合物がC1〜C16化合物から選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の炭化ケイ素マトリックス複合材料の製造方法。
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