JP6826614B2 - 歯科用組成物 - Google Patents

歯科用組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP6826614B2
JP6826614B2 JP2018559986A JP2018559986A JP6826614B2 JP 6826614 B2 JP6826614 B2 JP 6826614B2 JP 2018559986 A JP2018559986 A JP 2018559986A JP 2018559986 A JP2018559986 A JP 2018559986A JP 6826614 B2 JP6826614 B2 JP 6826614B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
formula
groups
compound
polymerizable
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018559986A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019518743A (ja
JP2019518743A5 (ja
Inventor
フィック,クリストフ
ポーレ,スヴェン
クレー,ヨアヒム・エー
ストイリコヴィッチ,マリナ
シュミット,マグヌス
リングヴァルト,マルクス
Original Assignee
デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー.
デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー., デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. filed Critical デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー.
Publication of JP2019518743A publication Critical patent/JP2019518743A/ja
Publication of JP2019518743A5 publication Critical patent/JP2019518743A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6826614B2 publication Critical patent/JP6826614B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K6/00Preparations for dentistry
    • A61K6/80Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth
    • A61K6/802Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth comprising ceramics
    • A61K6/813Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth comprising ceramics comprising iron oxide
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K6/00Preparations for dentistry
    • A61K6/80Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth
    • A61K6/884Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth comprising natural or synthetic resins
    • A61K6/887Compounds obtained by reactions only involving carbon-to-carbon unsaturated bonds
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K6/00Preparations for dentistry
    • A61K6/80Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth
    • A61K6/884Preparations for artificial teeth, for filling teeth or for capping teeth comprising natural or synthetic resins
    • A61K6/898Polysaccharides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L33/00Compositions of homopolymers or copolymers of compounds having one or more unsaturated aliphatic radicals, each having only one carbon-to-carbon double bond, and only one being terminated by only one carboxyl radical, or of salts, anhydrides, esters, amides, imides or nitriles thereof; Compositions of derivatives of such polymers
    • C08L33/24Homopolymers or copolymers of amides or imides
    • C08L33/26Homopolymers or copolymers of acrylamide or methacrylamide

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Oral & Maxillofacial Surgery (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Plastic & Reconstructive Surgery (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Ceramic Engineering (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Saccharide Compounds (AREA)
  • Dental Preparations (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)

Description

本発明は、特定の酸性重合性化合物を含む歯科用組成物、及びこの化合物の調製プロセスに関する。さらに本発明は、歯科用組成物を調製するための特定の酸性重合性化合物の使用に関する。本発明の特定の酸性重合性化合物は、単糖基又は二糖基など、環に酸素原子を含有する5又は6員環状基を有する。
重合性化合物を含有する重合性歯科用組成物が知られている。従来、重合性歯科用組成物は、広範囲の用途に提供されており、したがって、多様な要件を満たさなければならない。例えば、重合性歯科用組成物は、歯科用接着剤組成物、結合剤、小窩裂溝封鎖材、歯科用減感作用組成物、歯髄覆罩組成物、歯科用複合材、歯科用グラスアイオノマーセメント、歯科用セメント、又は歯科用根管シーラー組成物、又は歯科用インフィルトラントであってもよい。
典型的には、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド及びアリルエーテルが、重合性歯科用組成物の重合性成分として使用される。(メタ)アクリレートは、ΔH=−80〜−120kJ/molの範囲の重合エンタルピーに基づいて示される場合があるラジカル重合における優れた反応性のため、特に好適である。架橋能を提供するために、ビス−GMAなどの多官能性(メタ)アクリレートは、早くも1962年に歯科用用途に使用された。
歯科用組成物の分野では、サッカリドに由来する成分も知られている。
特開第2000−044421 A号は細菌感染を予防するための歯科用接着剤組成物を開示し、特開第2000−178111 A号は歯科用接着剤のキットを開示している。歯科用接着剤組成物及びそのキットは、ポリエチレンソルビタンモノラウレート脂肪酸若しくはそれ以上の脂肪族アミンによって代表されるラウリルアルコールによって表される非イオン界面活性剤、又はエチレンオキシド若しくはプロピレンオキシドをオレイン酸アミドなどの脂肪族アミド、グリセロール、ペンタエリスリトールに加えることによって得られるポリエチレングリコールタイプ若しくはポリプロピレングリコールタイプの非イオン界面活性剤を含有し得る。
特開平第05−07859 B2号及び特開第2009−040772 A号は、1つ又は複数の(メタ)アクリレート基が多価アルコールの2級ヒドロキシル基(複数可)に結合している多価アルコールの形態の重合性モノマーを含む歯科使用のための重合性組成物を開示している。
特平開第05−260093 B2号及び特開第2009−215217 A号は、モノマーがテトラヒドロフラン環又はフラノース環を有する、歯科使用のための親水性重合性モノマーを開示している。特開第2009−215217 A号では、親水性重合性モノマーの具体例として、3,5,6−トリ−O−メタクリロイルオキシ−D−グルコフラノースのα−及びβ−アノマーの混合物が開示されている。
国際特許公開第2008/114621 A1号は、重合性基(複数可)及びヒドロキシル基を有する歯科使用のための重合性化合物を開示している。重合性化合物は、高密度に(メタ)アクリレート基ならびにヒドロキシル基を含む重合性基を含有する糖アルコール骨格を有する。重合性化合物は糖アルコールから調製されてもよい。
国際特許公開第2012/036838 A2号は、糖アミド化合物及び前記糖アミド化合物を含む歯科用組成物を開示している。糖アミド化合物は、疎水性基及び少なくとも1つのフリーラジカル重合性基を含むが、疎水性基はフリーラジカル重合性基のエチレン性不飽和炭素原子に結合していないことを条件とする。
欧州特許公開2 979 679 A1号は、−XM基(−Xは酸アニオン基でありMは金属カチオンである)を有する糖化合物を含む歯科用硬化性組成物を開示している。
(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド及びアリルエーテルなどの従来の重合性化合物と共重合可能な酸性重合性化合物を含む歯科用組成物を提供すること、ならびに象牙質及びエナメル質を含む歯の硬組織にどの化合物が優れた接着性及び非常に良好な生体適合性を提供するかが本発明の問題である。
本発明は、歯科用組成物であって、
(i)次式(Ia)、(Ib)又は(Ic):

(式中、
Xは同じであっても又は異なっていてもよく、環状部分に直接又はメチレン基を通して結合されており、スルフェート基、フォスフェート基、スルホネート基、ホスホネート基及びカルボン酸基から選択される酸性基を独立して表し、
Yは、存在する場合、水素原子、メチル基、ヒドロキシル基、アミノ基、重合性基、チオール基又はアミド基を表し、それぞれのY基は環状部分に直接又はメチレン基を通して結合しており、
Y’は、OH又はアミド基−NH−(C=O)−Rを表し、
Zは、単結合、カルバメート基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、尿素基、チオ尿素基、アミド基、酸素原子、硫黄原子、又はNR基を示し、R’は水素原子、直鎖C1〜6アルキル基、又は分岐若しくは環状C3〜6アルキル基を表し、これらはホスホネート基で置換されてもよく、Z基は環状部分に直接又はメチレン基を通して結合されており、
Lは二価のリンカー基を表し、
は、水素原子、直鎖C1〜20炭化水素基、分岐若しくは環状C3〜20炭化水素基、又は重合性基を表し、
及びRは、水素原子、直鎖C1〜6アルキル基、又は分岐若しくは環状C3〜6アルキル基を独立して表す)の酸性重合性化合物と、
(ii)開始剤系と、を含む歯科用組成物を提供する。
本発明は、式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物の調製プロセスも提供し、このプロセスは、
(a)ハロゲノグリコシドを得るために、触媒量のルイス酸又はブレンステッド酸の存在下、単糖類又は二糖類をハロゲノアルコールと反応させる工程と、
(b)アジドグリコシドを得るためにハロゲノグリコシドのハロゲンをアジ化ナトリウムで置換する工程と、
(c)アミノグリコシドを得るために、水素化触媒の存在下、アジドグリコシドを水素で水素化する工程と、
(d)対応する(メタ)アクリルアミドを得るために、アミノグリコシドを(メタ)アクリロイルハロゲン化物と反応させる工程と、
(e)以下の式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物を得るために、(メタ)アクリルアミドをリン酸化する工程と、を含み、
工程(a)〜(e)はワンポットプロセスとして行われる。
さらに本発明は、歯科用組成物の調製のための式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物の使用を提供する。
本発明は、式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物が、おそらくは、炭素環基によって提供されるキレート効果のために、歯の硬組織への優れた接着性を提供することの認識に基づいている。さらに、重合性基(R)ならびに所望による重合性基R及びYは、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド及びアリルエーテルの重合エンタルピーに匹敵する有利な重合エンタルピーを有する式(I)の酸性重合性化合物を提供するために、適宜選択されてもよい。その上、式(I)の酸性重合性化合物の粘度は、歯科組成物の分野で典型的に適用される範囲内に適宜調整することができる。最後に、以下の式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物は曲げ強度などの望ましい機械的特性を提供する。例えば、重合性基Rならびに所望による重合性基R及びYを適宜選択することにより、ならびに所望によりさらなる重合性化合物を加えることにより、例えば、機械的特性の有利な設定を提供する相互貫入ネットワーク(IPN)が形成される場合がある。
「重合」及び「重合性」という用語は、より大きな分子、即ち巨大分子又はポリマーを形成するために、モノマーなどの多数のより小さい分子の共有結合によって化合させる又は化合させる能力に関する。単に直鎖状の巨大分子が形成するためにモノマーを化合させてもよく、又は一般に架橋ポリマーと呼ばれる三次元の巨大分子が形成するためにこれらを化合させてもよい。例えば、単官能性モノマーは直鎖状ポリマーを形成するが、少なくとも2つの官能基を有するモノマーはポリマーネットワークとしても知られている架橋ポリマーを形成する。重合性モノマーの変換率がより高い場合には、多官能性モノマーの量が減り、即ち、浸出問題が軽減される場合がある。
「硬化」及び「光硬化」という用語は、架橋ポリマーネットワークへの官能性オリゴマー及びモノマー、又はさらにはポリマーの重合を意味する。硬化は、架橋剤の存在下における不飽和モノマー又はオリゴマーの重合である。
「化学線」は、光化学的作用を生じさせる能力を有する、少なくとも150nmから1250nm以下の、典型的には少なくとも300nmから750nm以下の波長を有することができる、任意の電磁放射線である。
「光開始剤」という用語は、例えば、光化学プロセスにおいて、光に暴露することにより、又は共開始剤との相互作用により活性化された時に、フリーラジカルを形成する任意の化学物質である。
「共開始剤」という用語は、光化学プロセスでの光開始剤のように、別の分子に化学変化を生じさせる分子を指す。共開始剤は、光開始剤又は電子供与体であってもよい。
本明細書で使用する「電子供与体」という用語は、光化学プロセスにおいて電子を供与する能力を有する化合物を意味する。適切な例としては、孤立電子対を有するヘテロ原子を有する有機化合物、例えばアミン化合物が挙げられる。
本発明は、任意の適切な種類の重合、好ましくは光開始剤系及び/又はレドックス開始剤系によって開始することができる重合によって重合可能又は共重合可能な歯科用組成物を提供する。
歯科用組成物は、口腔内で使用される歯科用材料であってもよい。本重合性歯科用組成物は、歯科用接着剤組成物、結合剤、小窩裂溝封鎖材、歯科用減感作用組成物、歯髄覆罩組成物、歯科用複合材、流動性歯科用複合材、歯科用グラスアイオノマーセメント、歯科用セメント、レジン強化型グラスアイオノマー、又は歯科用根管シーラー組成物であることが好ましい。
本発明による歯科用組成物は、水性歯科用組成物の形態であることが好ましい。水性歯科用組成物のpH値は、歯科用組成物に含まれる成分、及び意図される用途に応じて適宜調節される場合がある。歯科用組成物のpHは当技術分野において知られている任意の手段によって、例えば、所定量の1つ又は複数の酸性化合物をその水溶性歯科用組成物に添加することによって調節されてもよい。この文脈では、「酸性化合物」という用語はpKが約−10〜50の範囲内である化合物を意味する。適切な無機酸の例は、硫酸、ホスホン酸、リン酸、塩酸、硝酸などであり、これらは単独で、又は互いに組み合わせて使用されてもよい。適切な有機酸の例は、ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、イタコン酸、ポリ(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリビニルリン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、コハク酸、リンゴ酸、タンニン酸、トルエンスルホン酸、アジピン酸、酒石酸、及びアスコルビン酸から成る群より選択されることが好ましいカルボン酸である。水性歯科用組成物の設定pH値は、20℃の温度でpK値が約9〜50の範囲内である有機弱酸又は無機弱酸とその対応する塩の組み合わせである安定化させられる典型的な化学的緩衝系によって場合がある。あるいは、その緩衝系は20℃の温度におけるpK値が約6〜8の範囲である有機化合物を代表するノーマン・グッド緩衝液(グッド緩衝液)の形態であってもよく、生化学的に不活性であり、且つ人体などの生体系での適用に適切である。典型的な化学緩衝系の例は、酸性酸/酢酸塩緩衝液、リン酸二水素塩/リン酸一水素塩緩衝液、又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液である。グッド緩衝液の例は、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、又はN−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)である。用語「pH値」に関連し、pH値/系は、典型的には、水が主な化合物である水性系、例えば、歯科用組成物の液相の約55〜90重量パーセントの量で存在し得る水性系、に関することが留意される。歯科用組成物のpH値は、水性系のpH値を決定するための適切な標準手段、例えば、ガラス電極によって決定されてもよい。
式(I)の酸性重合性化合物
本発明の歯科用組成物は、式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の(i)酸性重合性化合物を含む。歯科用組成物は、式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の1つ又は複数の酸性重合性化合物を含んでもよい。
本発明の歯科用組成物は、歯科用組成物の総重量に基づいて1〜70重量%の量の式(Ia)、(Ib)又は(Ic)nの酸性重合性化合物を含む。好ましくは、歯科用組成物は、歯科用組成物全体の総重量に基づいて10〜60重量%の、最も好ましくは20〜60重量%の量の式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の1つ又は複数の酸性重合性化合物を含む。
以下の式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物の量は、意図する使用目的を考慮して適宜選択されてもよい。例えば、歯科用接着剤は、歯科用組成物全体の総重量に基づいて1〜70重量%、好ましくは20〜60重量%を構成してもよい。歯科用プライマーは、歯科用組成物全体の総重量に基づいて1〜70重量%、好ましくは5〜25重量%を構成してもよい。小窩裂溝封鎖材は、歯科用組成物全体の総重量に基づいて1〜70重量%、好ましくは5〜20重量%を構成してもよい。歯科用グラスアイオノマーセメントは、歯科用組成物全体の総重量に基づいて1〜30重量%、好ましくは2〜10重量%を構成してもよい。
(i)による酸性重合性化合物は、次式(I)を有する化合物の一般的クラスから選択される:
(X)(Y)Cyc−Z−L−NR (I)。
式(I)では、Cycは、環内に酸素原子を含む場合がある(m+n+1)価の4、5又は6員炭素環基を表す。炭素環基は飽和であっても又は不飽和であってもよい。不飽和の場合、炭素環基は、好ましくは1つ又は2つの炭素間二重結合を含み、より好ましくは1つの炭素間二重結合を含む。
好ましくは、Cycは、環内に1つの酸素原子を含む5又は6員炭素環基を示し、より好ましくは、環内に1つの酸素原子を含む5又は6員飽和炭素環基を表す。
式(I)のXは同じであってもよく又は異なっていてもよく、Cyc部分に直接又はメチレン基(−CH−)を通して結合されており、スルフェート基、フォスフェート基、スルホネート基、ホスホネート基及びカルボン酸基(−COOH)から選択される酸性基を独立して表す。スルフェート基は硫酸基(−O−(SO)−OH)である。フォスフェート基は、リン酸モノエステル基(−O−(P=O)(OH))又はリン酸ジエステル基(−O−(P=O)(OH)(OR))の形態であってもよく、式中、Rは直鎖C1〜6アルキル基、分岐若しくは環状C3〜6アルキル基、直鎖C2〜6アルケニル基又は分岐若しくは環状C3〜6アルケニル基を表す。スルホネート基はスルホン酸基(−(SO)−OH)である。ホスホネート基は、ホスホン酸基(−(P=O)(OH )又はホスホン酸モノエステル基(−(P=O)(OH)(OR))の形態であってもよく、式中、Rは直鎖C1〜6アルキル基、分岐若しくは環状C3〜6アルキル基、直鎖C2〜6アルケニル基又は分岐若しくは環状C3〜6アルケニル基を表す。
ホスホン酸ジエステル基(−O−(P=O)(OH)(OR))及びホスホン酸モノエステル(−(P=O)(OH)(OR))のRについては、直鎖C1〜6アルキル基又は分岐若しくは環状3〜6アルキル基が好ましい。
好ましくは、X基は同じであっても又は異なっていてもよく、Cyc部分に直接又はメチレン基(−CH−)を通して結合されており、フォスフェート基、スルホネート基、ホスホネート基及びカルボン酸基(−COOH)から選択される酸性基を独立して表す。より好ましくは、Xはフォスフェート基であり、最も好ましくはリン酸モノエステル基(−O−(P=O)(OH))であり、これはCyc部分に直接又はメチレン基を通して結合されてもよい。
Xは式(I)にm回存在し、mは1〜5の整数を表す。
式(I)は、水素原子、メチル基、ヒドロキシル基、アミノ基、重合性基、チオール基又はアミド基を表すYを所望により含んでもよい。あるいは、炭素環基Cycの隣接する炭素原子に存在する2つの所望によるY基は、それらが結合する炭素原子と共に環状アセタール、リン酸エステル又はオキサゾリンを形成する。それぞれのY基はCyc部分に直接又はメチレン基を通して結合される。
好ましくは、所望によるY基は水素原子、メチル基、ヒドロキシル基、アミノ基又はアミド基であるか、あるいは炭素環基Cycの隣接する炭素原子に存在する2つの所望によるY基は、それらが結合される炭素原子と共に環状アセタール又はリン酸エステルを形成するが、それぞれのY基はCyc部分に直接又はメチレン基を通して結合される。より好ましくは、所望によるY基は水素原子、メチル基、ヒドロキシル基、アミノ基又はアミド基であるか、あるいは炭素環基Cycの隣接する炭素原子に存在する2つの所望によるY基は、それらが結合される炭素原子と共に環状アセタール又はリン酸エステルを形成するが、それぞれのY基はCyc部分に直接又はメチレン基を通して結合される。さらにより好ましくは、所望によるY基は水素原子、メチル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基、アミド基又はメチレンアミド基であるか、あるいは、炭素環基Cycの隣接する炭素原子に存在する2つの所望によるY基は、それらが結合される炭素原子と共に環状アセタールを形成するが、それぞれのY基はCyc部分に直接結合される。またさらにより好ましくは、所望によるY基はCyc部分に直接結合したアミド基又はメチレンアミド基である。最も好ましくは、所望によるY基はCyc部分に直接結合したアミド基である。
Y基に対する、アミド基は特に限定されない。しかし、アミド基が−CO−NH−R又は−NH−CO−R(式中、Rは炭化水素基を表す)の形態であることがYに対しては好ましい。より好ましくは、アミド基の形態のYは−NH−CO−Rであって、式中、Rは直鎖C1〜6アルキル基又は分岐若しくは環状C3〜6アルキル基である。さらにより好ましくは、Yはアミド基−NH−CO−Rの形態のであって、式中、Rは直鎖C1〜6アルキル基又は分岐C3〜6アルキル基であり、最も好ましくは、アミド−NH−CO−CH−CH、即ち、N−アセチルである。
所望によるY部分は式(I)にn回存在し、式中、nは0〜3の整数を表し、nは1であることが好ましい。
Yがアミド基であり、nが1であることが最も好ましい。
式(I)のZについては、代替的特徴α)又はβ)から選択されてもよい。Zがα)による場合、式(I)は1つの炭素環基Cycのみを含有する。Zがβ)による場合、式(I)は2つの炭素環基Cyc及びCycを含有する。例えば、炭素環基Cyc及びCycがサッカリドを表す場合、α)によると、式(I)は単糖類化合物を表す一方、β)によると、式(I)は二糖類化合物を表す。
α)によると、Z基は単結合、カルバメート基(−O−(C=O)−NH−)、チオカルバメート基(−O−(C=S)−NH−又は−S−(C=O)−NH−)、ジチオカルバメート基(−S−(C=S)−NH−)、尿素基(−NH−(C=O)−NH−)、チオ尿素基(−NH−(C=S)−NH−)、酸素原子、硫黄原子、又はNR基を表す。NR’基では、R’は水素原子、直鎖C1〜6アルキル基、又は分岐若しくは環状C3〜6アルキル基を表し、これはホスホネート基で置換されてもよい。Z基はCyc部分に直接又はメチレン基を通して結合される。
好ましくは、α)によるZは、カルバメート基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、酸素原子又は硫黄原子を表し、より好ましくは、カルバメート基又は酸素原子を表す。最も好ましくは、α)によるZは酸素原子を表す。
あるいは、β)によると、Zは−O−(X (Y Cyc−Z−基を表してもよく、式中、X、Y、Cyc、Z、m及びnは、α)によりX、Y、Cyc、Zに対して定義されたものと同じ意味を有し、m及びnはそこから独立して選択される。前述の「同じ意味」によると、β)によるZの−O−(X (Y Cyc−Z−基では、X、Y及びZはそれぞれCyc部分に直接又はメチレン基を通して結合される。
α)及びβ)の両方によるZについては、カルバメート基、チオカルバメート基及びジチオカルバメート基は、それらのペンダント酸素又は硫黄原子を介してCyc部分又はCyc部分に結合されてもよい。あるいは、これらの基はそれらの窒素原子を介してCyc又はCyc部分に結合されてもよい。
Lは二価のリンカー基を表す。
Lについては、リンカー基は、脂肪族及び/又は芳香族であってもよいが、好ましくは脂肪族であり、且つ好ましくは1〜45個の炭素原子を有する炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は飽和であってもよく又は不飽和であってもよい。炭化水素基は、1〜6個のC1〜4アルキル基で置換されていてもよい。アルキル基の具体例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル又はtert−ブチルである。好ましい実施形態では、Lについては、リンカー基の炭化水素基は、酸素、窒素及び硫黄から選択される1〜20個のヘテロ原子を含んでもよい。炭化水素基中の酸素原子、窒素原子及び硫黄原子は、エーテル又はチオエーテル結合、アミン結合、ケト又はスルホキシド基、カルボン酸又はエステル基、アミド基、スルホン酸又はエステル基、ヒドロキシル基及びチオール又はチオエステル基の形態であってもよい。
好ましくは、Lは、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子の群から選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含んでもよい二価C1〜20炭化水素である。より好ましくは、Lは、酸素、窒素及び硫黄から選択される1〜20個のヘテロ原子を含んでもよく、このヘテロ原子が上述の形態であってもよい、直鎖状C〜C20又は分岐C〜C20アルキレン基、直鎖C〜C20及び分岐C〜C20アルケニレン基、C〜C20シクロアルキレン又はシクロアルケニレン基の形態の脂肪族基である。
本発明の一態様によると、Lは次式(II)の基であり、

式中、Rは水素原子又は炭化水素基であり、a、b及びcは同じであっても又は異なっていてもよく、0〜3の整数であり、pは0、1又は2である。好ましくは、Rは、水素原子又は直鎖C1〜6アルキル基、分岐若しくは環状C3〜6アルキル基、直鎖C2〜6アルケニル基又は分岐若しくは環状C3〜6アルケニル基である。より好ましくは、Rは水素原子、直鎖C1〜6アルキル基又は分岐若しくは環状C3〜6アルキル基であり、最も好ましくは、Rは水素原子である。
式(II)では、pは0又は1であることが好ましい。さらに、bは0であることが好ましい。a及びcについては、a又はcが0であることが好ましい。式(II)では、好ましくは、aは1であり、bは0又は1であり、cは0〜3である。より好ましくは、aは1であり、bは0又は1であり、またcは0又は1であり、最も好ましくは、a=1、b=c=0である。
本発明の別の態様によると、Lはアルキレン(ポリオキシアルキレン)基又はC2〜6アルキレン基であってもよい。Lに対するアルキレン(ポリオキシアルキレン)は特に限定されないが、C2〜6アルケニレン−(O−C2〜6アルキレン)(式中、kは1〜20)であることが好ましい。式(I)のZ又はNに結合してもよいC2〜6アルケニレン基については、炭素間二重結合は、式(I)のZ又はNに隣接して位置する第二の炭素原子と第三の炭素原子との間に位置することが好ましい。アルキレン(ポリオキシアルキレン)はエチレン(ポリオキシエチレン)(式中、kは1〜10)であることが好ましい。
式(I)のRは重合性基を表す。
式(I)のRは、水素原子、直鎖C1〜20炭化水素基、分岐若しくは環状C3〜20炭化水素基、又は重合性基を表す。式(I)のRは、水素原子、直鎖C1〜14炭化水素基、分岐若しくは環状C3〜14炭化水素基、又は重合性基を表すことが好ましい。式(I)のRは、水素原子、直鎖C1〜6炭化水素基、分岐若しくは環状C3〜6炭化水素基、又は重合性基を表すことがより好ましい。
「炭化水素基」という用語は、Rに関連して本明細書で使用する場合、アルキル基又はアルケニル基を意味する。
、R及びYについては、重合性基が重合を受けやすい限り、好ましくは、光開始剤系、レドックス開始剤系又は二重硬化開始剤系によって誘発される重合を受けやすい限り、重合性基は特に限定されない。重合性基はラジカル重合性炭素間二重結合又はカチオン重合性基であることが好ましい。ラジカル重合性炭素間二重結合は、(メタ)アクリロイル基(複数可)及び(メタ)アクリルアミド基(複数可)から選択されてもよく、好ましくは(メタ)アクリロイル基(複数可)である。カチオン重合性基(複数可)は、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基、及びアゼチジン基から選択されてもよい。好ましくは、Rについては、重合性基は(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基であり、Rについては、所望による重合性基は、ビニル基又はアリル基などのアルケニル基を表し、少なくとも1つのYについては、所望による重合性基はエポキシド基、オキセタン基又はビニルエーテル基を表す。最も好ましくは、Rについては、重合性基は(メタ)アクリロイル基であり、Rについては、所望による重合性基はアリル基を表し、1つのYについては、所望による重合性基はビニルエーテル基を表す。
最も好ましくは、Rは(メタ)アクリロイル基を表す。
最も好ましくは、Rは水素原子又はアリル基を表す。
好ましくは、式(I)の酸性重合性化合物は、(X)(Y)Cyc−Z−部分が単糖類又は二糖類を表すグリコシドを表し、これはZによって提供されるグリコシド結合を介して二価リンカー基Lに結合される。
グリコシドは式(Ia)若しくは(Ib)の単糖類のグリコシド又は式(Ic)の二糖類のグリコシドの形態である:

式中、X、Y、Z、L、及びRは上記に定義された通りであり、Y’はOH又はアミド基−NH−(C=O)−Rを表し、
及びRは、水素原子、直鎖C1〜6アルキル基、又は分岐又は環状C3〜6アルキル基を独立して表す。
式(Ia)、(Ib)及び(Ic)では、ギザギザの線は、それぞれの置換基Y−CH−、X、Y’及びZが、ハワース投影法として示される炭素環基Cycの環の平面より上(上位置)又は下(下位置)に位置してもよいことを示す。
好ましくは、式(Ia)、(Ib)及び(Ic)では、Z(又はZ)は単結合、酸素原子、硫黄原子又は−NR’基を表し、式中R’は上記の通り定義される。最も好ましくは、Z(又はZ)は酸素原子を表す。
好ましくは、式(Ia)及び(Ib)の化合物は、グルコシド、フルクトシド、グルクロニド、マンノシド、ガラクトシド、リボシド、アロシド、アルトロシド、グロシド、イドシド、タロシド、ラムノシド、キシロシド、プシコシド、リキソシド、アラビノシド、ソルボシド、タガトシド、又はこれらのデオキシ糖誘導体から選択される。
さらに、式(Ib)の化合物は、好ましくはリブロシド、キシルロシド、エリスレオシド、スレオシド、又はこれらのデオキシ糖誘導体から選択されてもよい。
好ましくは、式(Ic)の化合物は、ラクトシド、マルトシド、キトビオシド、又はこれらのデオキシ糖誘導体から選択される。
好ましくは、式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物は架橋剤である。「架橋剤」という用語は、本明細書で式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物と関連して使用される場合、2つ以上の重合性基を有する任意の化合物を意味し、これらの重合性基の少なくとも1つは上記に定義された重合性基を表すRであり、且つ所望によりR及び/又はYは、Cyc部分に、また所望によりCyc部分に直接又はメチレン基を通して結合されてもよい重合性基を表す。以下の式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物が架橋剤である場合は、前述の重合性基の他に、Cyc部分に直接又はメチレン基を通して結合されてもよい、酸性基を表すX又はヒドロキシル基、アミノ基若しくはチオール基を表すYは、重合性基としての機能する場合がある。これらのX基及びY基は、(重)付加反応又は(重)縮合反応によってそれ自体と又は歯科用組成物のその他の成分と反応又は重合してもよい。
式(I)の酸性重合性化合物の調製プロセス
式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物は特定の調製プロセスによって限定されず、調製に適した任意のプロセスによって提供されてもよい。
しかし、好ましくは、式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物は、
(a)ハロゲノグリコシドを得るために、触媒量のルイス酸又はブレンステッド酸の存在下、単糖類又は二糖類をハロゲノアルコールと反応させる工程と、
(b)アジドグリコシドを得るためにハロゲノグリコシドのハロゲンをアジ化ナトリウムで置換する工程と、
(c)アミノグリコシドを得るために、水素化触媒の存在下、アジドグリコシドを水素で水素化する工程と、
(d)対応する(メタ)アクリルアミドを得るために、アミノグリコシドを(メタ)アクリロイルハロゲン化物と反応させる工程と、
(e)式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物を得るために、(メタ)アクリルアミドをリン酸化する工程と、を含むプロセスによって得られる。
具体的には、前述の(a)〜(e)の工程は以下の通りである:
(a)次式(III)
(Yn#Cyc−Z (IIIa)
(式中、Cycは式(I)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有し、Yは式(I)の化合物に対して上記で定義されたYと同じ意味を有し、nは1〜8の整数を表し、Zはカルバミン酸基(−NH−CO−OH)、チオカルバミン酸(−NH−CS−OH)基、ジチオカルバミン酸基(−NH−CS−SH)、ヒドロキシル基又はチオアルコール基(−SH)であり、好ましくはZはヒドロキシル基である)の単糖類又は二糖類を、次式(IV)
Hal−L−Alc (IV)
(式中、Halは好ましくは塩素及び臭素から選択されるハロゲンであり、Lは式(I)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有し、Alcはヒドロキシル基又はチオアルコール基であり、好ましくはヒドロキシル基である)のハロゲノアルコールと、
触媒量のルイス酸又はブレンステッド酸の存在下で反応させ、次式(V)
(Yn#Cyc−Z’−L−Hal (V)
(式中、Cyc、Y及びnは式(III)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有し、Halは式(VI)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有し、Z’はカルバメート基(−NH−CO−O−)、チオカルバメート基(−NH−CS−O−)、ジチオカルバメート基(−NH−CS−S−)、酸素原子(−O−)又は硫黄原子(−S−)である)のハロゲノグリコシドを得て、
(b)式(V)のハロゲノグリコシドのハロゲニドをアジ化ナトリウムで置換して、次式(VI)
(Yn#Cyc−Z’−L−N (VI)
(式中、Cyc、Y、n及びZ’は式(V)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有する)のアジドグリコシドを得て、
(c)水素化触媒の存在下で、式(VI)のアジドグリコシドを水素で水素化して、次式(VII)、
(Yn#Cyc−Z’−L−NH (VII)
(式中、Cyc、Y、n及びZ’は式(V)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有する)のアミノグリコシドを得て、
(d)式(VII)のアミノグリコシドを(メタ)アクリロイルハロゲン化物と反応させて、次式(VIII)
(Yn#Cyc−Z’−L−NH−CO−CR°=CH (VIII)
(式中、Cyc、Y、n及びZ’は式(V)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有し、R°は水素原子又はメチル基)の対応する(メタ)アクリルアミドを得て、
(e)式(VIII)の(メタ)アクリルアミドをリン酸化して、式(I)の酸性重合性化合物を得る。
例として、スキーム1では、工程(a)〜(e)を含むプロセスが、式(III)の化合物としてN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)に対して示されている:
スキーム1:式(I)の化合物を合成するための工程(a)〜(e)を含むプロセス
(式中、(X)(Y)Cyc−Z−はGlcNAcのO−グリコシドであり、R=アクリロイル及びR=Hである)
上記に定義された工程(a)〜(e)を含むプロセスは、ワンポットプロセスとして行われることが好ましい。
代替的な好ましい実施形態によると、式(I)の酸性重合性化合物は、以下の工程を含むプロセスによって得ることができる:
(I−1)アジドグリコシドを得るために、触媒量のルイス酸又はブレンステッドの存在下、単糖類又は二糖類をアジドアルコールと反応させ、
次に、アミノグリコシドを得るために、水素化触媒の存在下、得られたアジドグリコシドを水素で水素化するか、又は
(I−2)ハロゲノグリコシドを得るために、触媒量のルイス酸又はブレンステッド酸の存在下、単糖類又は二糖類類をハロゲノアルコールと反応させ、アルキル又はアルケニル−アミノグリコシド又はアルケニルアミノグリコシドを得るために、ハロゲノグリコシドのハロゲンをアルキルアミン又はアルケニルアミンで置換し、
(I−3)アルキル−又はアルケニルアミノグリコシドを得るために、触媒量のルイス酸又はブレンステッド酸の存在下、
単糖類又は二糖類をN−アルキルアルコール又はN−アルケニルアルコールと反応させ、
(II)対応する(メタ)アクリルアミドを得るために、工程(i−1)で得られたアミノグリコシド又は工程(I−2)若しくは(I−3)で得られたアルキル−若しくはアルケニル−アミノグリコシドを(メタ)アクリロイルハロゲン化物と反応させ、
(III)式(I)の酸性重合性化合物を得るために、(メタ)アクリルアミドをリン酸化する。
具体的には、前述の工程(I−1)、(I−2)又は(I−3)〜(III)は以下の通りである:
(I−1)上記に定義された式(III)の単糖類又は二糖類を次式(IX)
−L−Alc (IX)
(式中、Lは式(I)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有し、Alcはヒドロキシル基又はチオアルコール基であり、好ましくはヒドロキシル基である)のアジドアルコールと、
触媒量のルイス酸又はブレンステッド酸の存在下で反応させ、次式(VI)
(Yn#Cyc−Z’−L−N (VI)
(式中、Cyc、Y、n及びZ’は式(V)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有する)のアジドグリコシドを得て、
次に、上記の式(VII)のアミノグリコシドを得るために、水素化触媒の存在下、得られた式(VI)のアジドグリコシドを水素で水素化するか、又は
(I−2)上記の式(V)のハロゲノグリコシドを得るために、触媒量のルイス酸又はブレンステッド酸の存在下、上記に定義された式(III)の単糖類又は二糖類を上記に定義された(IV)のハロゲノアルコールと反応させ、
前記ハロゲノグリコシドのハロゲンをアルキルアミン又はアルケニルアミンで置換し、
次式(X)
(Yn#Cyc−Z’−L−NH−R’ (X)
(式中、Cyc、Y、n及びL’は、式(V)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有し、R’はアルキル又はアルケニル基、好ましくは直鎖状C1〜4又は分岐C3若しくはC4アルキル基、又は直鎖状C2〜4若しくは分岐C3若しくはC4アルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基又はアリル基、最も好ましくはアリル基である)のアルキル−アミノグリコシド又はアルケニル−アミノグリコシドを得て、
(I−3)上記に定義された式(III)の単糖類又は二糖類を
式(XI)
Alc−L−NH−R’ (XI)
(式中、Lは式(I)に対して上記に定義された通りであり、R’は式(X)に対して上記に定義されたアルキル又はアルケニル基であり、Alcはヒドロキシル又はチオアルコール基であり、好ましくはヒドロキシル基である)のN−アルキル−又はN−アルケニルアルコールと、
触媒量のルイス酸又はブレンステッド酸の存在下で反応させ、上記の式(X)のアルキル−又はアルケニル−アミノグリコシドを得て、
(II)工程(I−1)で得られた式(VII)のアミノグリコシド又は工程(I−2)若しくは(I−3)で得られた式(XI)のアルキル−若しくはアルケニル−アミノグリコシドを、(メタ)アクリロイルハロゲン化物と反応させて、上記の式(VIII)の対応する(メタ)アクリルアミド又は次式(XII)
(Yn#Cyc−Z’−L−NR’−CO−CR°=CH (XII)
(式中、Cyc、Y、n及びZ’は式(V)に対して上記で定義されたものと同じ意味を有し、R’は式(X)に対して上記で定義されたアルキル又はアルケニル基であり、R°は水素原子又はメチル基である)のアルキル−(メタ)アクリルアミド若しくはアルケニル−(メタ)アクリルアミドを得て、
(III)式(I)の酸性重合性化合物を得るために、式(VIII)又は式(XII)の(メタ)アクリルアミドをリン酸化する。
上述のプロセスでは、式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物において、Zに対する特定の選択物Z’は、カルバメート基(−NH−CO−O−)、チオカルバメート基(−NH−CS−O−)、ジチオカルバメート基(−NH−CS−S−)、アミド基(−NH−CO−)、酸素原子(−O−)及び硫黄原子(−S−)から成る群である。この特定の選択物Z’は、上述のプロセスの式(IV)、(IX)又は(XI)の化合物の形態のアルコールと反応することによる。
しかし、特定の選択物Z’の他に、Zの群の残りの成分も容易に調製できることが容易に理解できる。例えば、単結合の形態のZは、アルデヒド基を有する単糖類又は二糖類を、例えば、式(RO)P−L−NProt(式中、Rはアルキル基又はアリール基であり、NProtは保護されたアミノ基である)のホスホネート化合物と、水素化ナトリウム(NaH)などのブレンステッド強塩基の存在下、ホーナー・ワズワース・エモンズ(HWE)反応によって反応させることで得られる。次に、結果として得られた単糖類又は二糖類内の、保護されたアミノ基NProtを脱保護して末端アミノ基−NHを得る。結果として得られる脱保護された単糖類又は二糖類に、上述の工程(II)及び(III)を同様に受けさせて、式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物を得ることができる。
さらに、式(I)(式中、Z基は尿素基、チオ尿素基又はN−R’基の形態である)の酸性重合性化合物は、尿素基、チオ尿素基又はアミノ基(−NH)を有する単糖類又は二糖類の形態の出発物質を、式X−L−NProt(式中、Xはハロゲン原子、好ましくはブロロ原子、クロロ原子又はヨード原子であり、NProtは保護されたアミノ基である)のハロゲニド化合物と反応させることにより得られる。ハロゲン原子は、単糖類又は二糖類の尿素基若しくはチオ尿素基のアミノ基(−NH)又は末端アミノ基で置換される。次に、結果として得られた単糖類又は二糖類の、保護されたアミノ基NProtを脱保護して末端アミノ基−NHを得る。結果として得られる脱保護された単糖類又は二糖類に、上述の工程(II)及び(III)を同様に受けさせて、式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物を得ることができる。
アミノ基を保護するための上述の保護基Protは、塩基性条件下で開裂可能でない限り特に限定されず、例えば、P.G.M.Wuts and T.W.Greene,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,4th Edition,John Wiley and Sons Inc.,2007に記載されているような、任意の従来のアミノ保護基であってもよい。
以下に、上述のプロセスの工程(a)〜(e)及び(I−1)、(I−2)又は(I−3)〜(III) を行なうための条件が記載される。
工程(a)、(I−1)、(I−2)及び(I−3)では、ルイス酸又はブレンステッド酸は特に限定されない。任意のルイス酸、即ち電子を供与する能力を有する化合物、及び任意のブレンステッド酸、即ちプロトンを供与する能力を有する化合物をこれらの工程に適用してもよい。好ましくは、ルイス酸は工程(a)、(I−1)、(I−2)及び(I−3)に適用され、より好ましくは、ルイス酸はB、Fe、Al、Bi、Cr、及びZnClの三フッ化物、三塩化物、三臭化物又は三ヨウ化物の三ハロゲン化物(三ハロゲン化物及び二ハロゲン化物はジエチルエーテルなどの溶媒と複合することができ、それによって、例えば、エーテラートを形成する)ならびにB、Fe、Al、Bi、Cr、Sc、In、Ga、Nd、及びトリメチルシリル・トリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)のトリ−トリフルオロメタンスルホネート(トリフレート、OTf)又はトリ−トリフルオロメタンスルホンイミデート(トリフルイミデート、TFSI)から成る群から選択される。最も好ましくは、工程(a)では、ルイス酸は三フッ化ホウ素エーテラート(BF・OEt)又はトリメチルシリル・トリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)である。
工程(a)、(I−1)、(I−2)及び(I−3)では、ルイス酸又はブレンステッド酸は、式(V)のハロゲノグリコシド、式(VI)のアジドグリコシド又は式(XI)のN−アルキル−若しくはN−アルケニルアルコールを得ることを目的として、単糖類又は二糖類を式(IV)のハロゲノアルコール、式(IX)のアジドアルコール、又は式(XI)のN−アルキルアルコール若しくはN−アルケニルアルコールと反応させるために適切な任意の触媒量で適用されてもよい。好ましくは、ルイス酸又はブレンステッド酸の触媒量は、式(III)の単糖類又は二糖類に対して最大30mol%、より好ましくは3〜20mol%、最も好ましくは5〜10mol%である。
工程(a)、(I−1)、(I−2)及び(I−3)では、式(IV)のハロゲノアルコール、式(IX)のアジドアルコール、又は式(XI)のN−アルキルアルコール若しくはN−アルケニルアルコールは、式(III)の単糖類又は二糖類に対して超化学量論的量で、好ましくは式(III)の単糖類又は二糖類に対して少なくとも4当量の量で、より好ましくは6〜25当量で、最も好ましくは8〜6当量で適用される。
工程(a)、(I−1)、(I−2)及び(I−3)は、典型的には式(IV)のハロゲノアルコール、式(IX)のアジドアルコール、又は式(XI)のN−アルキルアルコール若しくはN−アルケニルアルコールの沸点周辺の高温で行なわれることが好ましい。より好ましくは、工程(a)、(I−1)、(I−2)及び(I−3)は60〜120℃の温度で、最も好ましくは70〜90℃で行なわれる。
工程(a)、(I−1)、(I−2)及び(I−3)では、式(V)のハロゲノグリコシド、式(VI)のアジドグリコシド及び式(X)のアルキル−アミノグリコシド若しくはアルケニル−アミノグリコシドの形態の生成物は、任意の適切な精製方法、最も好ましくはカラムクロマトグラフィーによって精製されてもよい。
工程(I−3)では、式(XI)のN−アルキルアルコール又はN−アルケニルアルコールは、市販の出発物質から容易に調製することができる。例えば、式(XI)のN−アルキルアルコール又はN−アルケニルアルコールは、式(IV)のハロゲノアルコールを式(XIII)のアルキル−アミン又はアルケニル−アミンR’−NH(式中、R’ は式(X)に対して上記で定義されたアルキル−又はアルケニル基である)と反応させることによって調製される場合がある。
工程(b)及び(I−2)では、式(V)のハロゲノグリコシドのハロゲニドをアジ化ナトリウムで置換するための反応条件は適宜選択されてもよい。典型的には、これらの反応工程は高温で、好ましくは80〜120℃の温度で行われる。好ましくは、アジ化ナトリウムは式(V)のハロゲノグリコシドに対して超化学量論的量で、より好ましくは式(V)のハロゲノグリコシドに対して少なくとも1.2当量の量で、最も好ましくは1.5〜2.5当量の量で適用される。
工程(c)及び(I−1)では、任意の適切な水素化触媒が適用されてもよい。水素化触媒は、所望により炭素又は炭などのサポート上の元素形態、又は酸化物若しくは水酸化物の形態のPd又はPt、ラネーニッケル(Ni−Al合金を表す)又はリンドラー触媒(CaCO上に堆積され、鉛又は硫黄で被毒したPd)から成る不均一触媒の群から選択されることが好ましい。水素化触媒は、所望により炭素又は炭などのサポート上の元素形態、又は酸化物若しくは水酸化物の形態のPdであることが好ましい。水素化触媒は、炭のサポート上の元素形態のPd(Pd/C)であることが最も好ましく、元素Pdの量はPd/Cの総重量に対して4〜12重量%であることが好ましい。
工程(c)及び(I−1)では、水素化触媒は、好ましくは式(VI)のアジドグリコシドに対して最大20重量%、より好ましくは2〜15%、最も好ましくは4〜10重量%の量で適用される。
工程(c)及び(I−1)は好ましくは0〜40℃、より好ましくは10〜30℃、最も好ましくは15〜25℃の温度で行われる。
工程(c)及び(I−1)では、溶媒が典型的に適用される。好ましくは、溶媒はアルキルアルコール又はアルキルエーテル、より好ましくはC1〜6アルキルアルコール、C1〜6ジアルキルエーテル又はテトラヒドロフラン(THF)若しくはテトラヒドロピランの形態の環状アルキルエーテルであり、最も好ましくはエタノールである。
工程(c)及び(I−1)では、式(VII)のアミノグリコシドの形態の生成物は、さらなる精製を行わずに次の工程で使用されてもよいが、式(VI)のアジドグリコシドが式(VII)のアミノグリコシドに完全に変換していることを条件とする。しかし、次の工程を行なう前に、溶媒及び水素化触媒を除去することが好ましい。
工程(d)及び(II)では、適用される(メタ)アクリロイルハロゲン化物は、(メタ)アクリロイルフッ化物、塩化物、臭化物又はヨウ化物であってもよい。(メタ)アクリロイルハロゲン化物は(メタ)アクリロイル塩化物又は臭化物であり、最も好ましくは(メタ)アクリロイル塩化物である。
工程(d)及び(II)では、ブレンステッド塩基は典型的には、好ましくは有機ブレンステッド塩基、より好ましくは3級アルキルアミン、さらにより好ましくはトリ−C1〜4−アルキルアミン、最も好ましくはトリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンが適用される。ブレンステッド塩基は、好ましくは式(VII)のアミノグリコシド又は式(X)のアルキル−アミノグリコシド若しくはアルケニル−アミノグリコシドに対して超化学量論的量で、より好ましくは式(VII)のアミノグリコシド又は式(X)のアルキル−アミノグリコシド若しくはアルケニル−アミノグリコシドに対して1.5〜4当量の量で、最も好ましくは2〜2.5当量の量で適用される。
工程(d)及び(II)では、式(VII)の(メタ)アクリルアミド又は式(XII)のアルキル−(メタ)アクリルアミド若しくはアルケニル−(メタ)アクリルアミドの形態の生成物は、任意の適切な精製方法で精製されてもよく、最も好ましくは水系後処理で精製されてもよい。
工程(e)及び(III)では、ホスホネート基を表す式(I)のX基はリン酸化によって形成される。リン酸化では、リン酸化剤が適用される。オキシ塩化リン(POCl)をリン酸化剤として適用することが好ましい。
炭素環基Cycに付属したヒドロキシル基の形態のYあたりオキシ塩化リンの少なくとも1当量を適用することが好ましい。
工程(e)及び(III)では、溶媒が典型的に適用される。好ましくは、溶媒はアルキルエーテル、より好ましくはC1〜6ジアルキルエーテル、又はテトラヒドロフラン(THF)若しくはテトラヒドロピランの形態の環状アルキルエーテル、最も好ましくはTHFである。
工程(e)及び(III)では、ブレンステッド塩基が典型的に適用され、ブレンステッド塩基の種類及び量は工程(d)及び(II)に対して上記で定義したものと同じであり、そこから独立して選択される。
工程(e)及び(III)では、式(I)の化合物の形態の生成物は、任意の適切な精製方法で精製されてもよい。工程(e)及び(III)の反応混合物を、ブラインで洗浄した後乾燥し、最後に溶媒を除去して式(I)の所望の化合物を得ることが最も好ましい。生成物をカラムクロマトグラフィーでさらに精製してもよく、メタノール:アセトニトリル(1:1)の逆相シリカゲルなどの逆相法が言及されてもよい。
すべてのプロセス工程(a)〜(e)及び(I−1)、(I−2)、(1−3)〜(III)では、適切な反応時間を、例えば、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー又はNMRによるなどの変換制御によって決定することができる。
例として、スキーム2では、工程(I−1)、(II)及び(III)を含むプロセスが示され、式(III)の化合物としてN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)が使用される:
スキーム2:式(I)の化合物を合成するための工程(I−1)、(II)及び(III)を含むプロセス
(式中、(X)(Y)Cyc−Z−はGlcNAcのO−グリコシドであり、
=アクリロイル、及びR=Hである)
さらに例として、スキーム3では、工程(I−2)又は(I−3)、(II)及び(III)を含むプロセスが示され、式(III)の化合物としてN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)が使用される:
スキーム3:式(I)の化合物を合成するための工程(I−2)又は(I−3)、(II)及び(III)を含むプロセス
(式中、(X)(Y)Cyc−Z−はGlcNAcのO−グリコシドであり、R=アクリロイル及びR=アリルである)
Zが酸素原子以外である式(Ia)、(Ib)又は(Ic)の酸性重合性化合物は、本技術分野で知られている合成方法に従って調製されてもよい。例えば、Zが硫黄原子であるチオグリコシドは、Fugedi,P.et al.,J.Glycoconjugate (1987)4:97−108 or Codee,J.D.C.et al.,Chem.Soc.Rev.,2005,34,769−782に従って調製されてもよい。N−アリールグリコシドは、Fosso,M.Y.et al.,Journal of Carbohydrate Chemistry,31:603−619,2012に従って調製されてもよい。β−N−グリコシドは、Zheng,J.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2013,52(23):6068−6071、又はSmith,K.J.J.org.1981,46,3158−3160に従って調製されてもよい。
開始剤系(ii)
本発明による歯科用組成物は(ii)による開始剤系を含む。(ii)による開始剤系としては、本発明による式(I)の酸性重合性化合物の重合を開始する能力を有する任意の化合物又は系を使用してもよい。(ii)による開始系は、光開始剤系、レドックス開始剤系又は二重硬化開始剤系であってもよい。
「二重硬化開始剤系」という用語は、光開始剤系及びレドックス開始剤系を含有する開始剤系を意味する。
例えば、適切な光開始剤系は二成分系又は三成分系の形態であってもよい。例えば、米国特許代5,545,676号に記載されるように、二成分系は、光開始剤及び電子供与化合物を含んでもよく、三成分系はヨードニウム塩、スルホニウム塩又はホスホニウム塩、光開始剤、及び電子供与化合物を含んでもよい。
開始剤系(ii)に適した光開始剤は、約400nm〜約520nm(好ましくは約450nm〜約500nm)の範囲内のある量の光を吸収するモノケトン及びジケトンである。特に好適な化合物は、約400nm〜約520nm(さらにより好ましくは、約450〜約500nm)の範囲内のある量の光を吸収を有するアルファジケトンを含む。例としては、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロ−ヘキサンジオン、フェナントラキノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン及び他の1−アリール−2−アルキル−1,2−エタンジオン、並びに環状アルファジケトンが挙げられる。適切な電子供与体化合物は、置換アミン、例えばエチルジメチルアミノベンゾエート又はジメチルアミノベンゾニトリルを含む。
適切な光開始剤系はまた、典型的には、約380nm〜約1200nmの機能的波長範囲を有するホスフィンオキシドも含んでもよい。約380nm〜約450nmの機能的波長範囲を有するホスフィンオキシドフリーラジカル開始剤の例としては、米国特許第4,298,738号、同第4,324,744号、及び同第4,385,109号並びに欧州特許公開第0173567号に記載されているもののようなアシルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシドが挙げられる。アシルホスフィンオキシドの具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4−ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2−メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6−テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル−ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスホネート、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。約380nm超〜約450nmの波長範囲で照射された場合、フリーラジカル開始の能力を有する市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403)、重量比25:75のビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの混合物(IRGACURE 1700)、重量比1:1のビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの混合物(DAROCUR 4265)、及びエチル2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィナート(LUCIRIN LR8893X)、が挙げられる。典型的には、ホスフィンオキシド開始剤は、組成物の総重量に基づいて0.1重量パーセント〜5.0重量パーセントなどの、触媒有効量で組成物中に存在する。
第三級アミン還元剤は、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用されることができる。適切な芳香族第三級アミンの例としては、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−m−トルイジン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−4−エチルアニリン、N,N−ジメチル−4−イソプロピルアニリン、N,N−ジメチル−4−t−ブチルアニリン、N,N−ジメチル−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,4−ジメチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−エチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−4−t−ブチルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−イソプロピルアニリン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3,5−ジ−t−ブチルアニリン、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸n−ブトキシエチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノンエチル4−(N,N−ジメチルアミノ)安息香酸エステル、及びN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。脂肪族第三級アミンの例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エチルエチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N−エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、及びトリエタノールアミントリメタクリレートが挙げられる。
アミン還元剤は、組成物の総重量に基づいて、0.1重量パーセント〜5.0重量パーセントの量で組成物中に存在してもよい。
上述の光開始剤とは別に、次式(XV)を有する光開始剤が適用されてもよい:
−R (XV)
式中、
は、次式(XVI)の基である:

式中、
MはSi又はGeであり、
は、置換若しくは非置換ヒドロカルビル又はヒドロカルビルカルボニル基を表し、
は、置換若しくは非置換ヒドロカルビル又はヒドロカルビルカルボニル基を表し、
は、置換又は非置換ヒドロカルビル基を表し、
(i)はXと同じ意味を有し、これにより式(XV)の化合物は対称であっても又は非対称であってもよく、あるいは
(ii)は次式(XVII)の基であり、

式中、
は、単結合、酸素原子、又はNR’基を表し、NR’は置換ヒドロカルビル基若しくは非置換ヒドロカルビル基を表し、
は、置換若しくは非置換ヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)ジヒドロカルビルシリル基、又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基を表し、あるいは
(iii)MがSiである場合、Rは置換ヒドロカルビル基又は非置換ヒドロカルビル基であってもよい。
驚くべきことに、式(XV)の光開始剤化合物は、歯科用組成物に特に適切な重合開始剤を表すことが見出された。式(XV)の化合物を用いると、高い重合効率が達成され、着色の問題が生じず、又はカンファーキノンなどの従来の光開始剤を含む重合系では、着色が効率的に抑制される。さらに、式(XV)の化合物は、歯科用途において典型的に適用される波長範囲内で光吸収を有し、それらは歯科用組成物の成分と適合性があり、さらに生理学的に無害であると考えられる。
従って、式(XV)の化合物は光開始剤として特に好ましい。
式(XV)の化合物に関連して、本明細書で使用する「置換された」という用語は、R、R、R、R及びR´が、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1〜6アルキル基、C1〜6アルコキシ基、及び−NR基(式中、R及びRは互いに独立してC1〜6アルキル基を表す)から成る群から選択される置換基で置換されていてもよいことを意味する。ここで、ハロゲン原子の例示は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素とすることができる。C1〜6アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、及びn−ブチルである。C1〜6アルコキシ基の例示は、例えば、メトキシ、エトキシ、及びプロポキシである。これらの置換基におけるアルキル部分は、直鎖状、分岐又は環状であってもよい。好ましくは、置換基は、塩素原子、ニトロ基、C1〜4アルコキシ基及び−NR基(式中、R及びRは互いに独立してC1〜4アルキル基を表す)から選択される。
、R及びRが置換される場合、それらは1〜3個の置換基、より好ましくは1個の置換基で置換されることが好ましい。
式(XV)の化合物において、R、R、及びR部分は、以下のように定義されてもよい:
及びRは、互いに独立して、置換若しくは非置換ヒドロカルビル又はヒドロカルビルカルボニル基を表し、Rは、置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す。
ヒドロカルビル基は、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールアルキル基、又はアリール基であってもよい。
アルキル基は、直鎖又は分岐C1〜20アルキル基、典型的にはC1〜8アルキル基であってもよい。C1〜6アルキル基の例としては、1〜6個の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、及びn−ヘキシルを挙げることができる。
シクロアルキル基は、C3〜20シクロアルキル基、典型的にはC3〜8シクロアルキル基であってもよい。シクロアルキル基の例としては、3〜6個の炭素原子を有する基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを挙げることができる。
シクロアルキルアルキル基は、4〜20個の炭素原子を有してもよく、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐アルキル基と3〜14個の炭素原子を有するシクロアルキル基との組み合わせを含んでもよい。シクロアルキルアルキル(−)基の例としては、例えば、メチルシクロプロピル(−)メチルシクロブチル(−)、メチルシクロペンチル(−)、メチルシクロヘキシル(−)、エチルシクロプロピル(−)、エチルシクロブチル(−)、エチルシクロペンチル(−)、エチルシクロヘキシル(−)、プロピルシクロプロピル(−)、プロピルシクロブチル(−)、プロピルシクロペンチル(−)、プロピルシクロヘキシル(−)を挙げることができる。
アリールアルキル(−)基は、C7〜20アリールアルキル(−)基、典型的には、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐アルキル基と6〜10個の炭素原子を有するアリール(−)基との組み合わせであってもよい。アリールアルキル(−)基の具体例は、ベンジル(−)基又はフェニルエチル(−)基である。
アリール基は、6〜10個の炭素原子を有するアリール基を含むことができる。アリール基の例は、フェニル及びナフチルである。
及びRのヒドロカルビルカルボニル基は、有機残基Rorgが上記で定義されたヒドロカルビル残基であるアシル基(Rorg−(C=O)−)を表す。
式(XV)の化合物は、1個又は2個のヒドロカルビルカルボニル基を含んでもよく、即ちR又はRのいずれか一方がヒドロカルビルカルボニル基であるか、又はR及びR の両方がヒドロカルビルカルボニル基である。好ましくは、式(XV)の化合物は、1個のヒドロカルビルカルボニル基を含む。
好ましくは、ヒドロカルビルカルボニル基はアリールカルボニル基であり、より好ましくはベンゾイル基である。
好ましくは、R及びRは、直鎖又は分岐C1〜6アルキル基、及びフェニル基又はベンゾイル基から成る群から独立して選択され、これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基、C1〜4アルコキシ基及び−NR基から選択される1〜3個の置換基で所望により置換されてもよく、式中、R及びRは互いに独立してC1〜4アルキル基を表し、Rは直鎖又は分岐C1〜6アルキル基又はフェニル基である。
最も好ましくは、R及びRは、直鎖又は分岐C1〜4アルキル基、及びフェニル基又はベンゾイル基から成る群から独立して選択され、これらの基は、ハロゲン原子、ニトロ基、C1〜4アルコキシ基及び−NR基から選択されたものから成る群から選択される1個の置換基で所望により置換されてもよく、式中、R及びRは互いに独立してC1〜4アルキル基を表し、Rは直鎖又は分岐C1〜4アルキル基である。
式(XV)の化合物では、RはXと同じ意味を有してもよく、これにより式(XV)の化合物は対称又は非対称であってもよい。あるいは、Rは、置換又は非置換ヒドロカルビル基、又は式(XVII)の基を表してもよい。好ましくは、RがXと同じ意味を有する場合、式(XV)の化合物は非対称である。Rが置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す場合、ヒドロカルビル基は、Rについて上記で定義されたものと同じ意味を有し、且つそれらから独立して選択される。
式(XV)の化合物の式(XVII)の基において、Rは、置換又は非置換ヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)ジヒドロカルビルシリル基、又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基を表す。
式(XVII)のRがトリヒドロカルビルシリル基、モノ(ヒドロカルビルカルボニル)−ジヒドロカルビルシリル基、又はジ(ヒドロカルビルカルボニル)モノヒドロカルビルシリル基である場合、ヒドロカルビル及びヒドロカルビルカルボニル基の各々は、R、R及びRについて定義されたものと同じ意味を有し、且つそれらから独立して選択される。
式(XVII)では、R’はRについて定義されたのと同じ意味を有し、且つそれらから独立して選択される。
式(XV)の化合物においてMがSiである場合、Rはまた、置換又は非置換ヒドロカルビル基であってもよく、ヒドロカルビル基は、Rについて上記で定義されたものと同じ意味を有し、且つそれらから独立して選択される。
例えば、RがXと同じ意味を有し、且つ対称である式(XV)の化合物は、以下の構造式を有してもよい:
例えば、式(XV)(式中、Rが式(XVII)の基を表し、式中、Yは結合、酸素原子、又はNR´基であり、またRは置換若しくは非置換ヒドロカルビル基を表す)の化合物は、以下の構造式を有してもよい:
例えば、Rが式(XVII)の基を表し、Rがトリヒドロカルビルシリル基を表す式(XV)の化合物は、以下の構造式を有する:
例えば、MがSiであり、Rが置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す式(XV)の化合物は、以下の構造式を有してもよい:
好ましくは、式(XV)の化合物は、以下から成る群から選択され:
M=Siである式(XV)の化合物が特に好ましい。
最も好ましくは、式(XV)の化合物は、以下から成る群から選択され:
式(XV)の化合物は、以下から成る群から選択され:

特に好ましくは、M=Siである。
歯科用組成物が酸性組成物の形態である場合、即ち組成物のpH7が未満である場合、組成物のpHに応じて、式(XV)の化合物は、エステル基を含有しないか、又は一ヶ月以内に室温にてpH3の水性媒体中で著しく加水分解しないエステル基のみという条件で選択することが好ましい。それにより、未硬化歯科用組成物の保存期間の安定性、ならびに患者の口の内での硬化後の安定性に関して、7未満のpHを有する組成物である酸性歯科用組成物の有利な安定性が確保される。従って、酸性歯科用組成物のためには、Rが式(XVII)(Yは酸素原子である)の基であるものを除いて、式(XV)の化合物が特に好ましい。
さらに、アシルシリル部分(−C(=O)−Si−)は塩基性条件、即ち7よりも高いpHに対して感受性がある場合があるので、アシルシリル部分が選択された塩基性pHの水性媒体中で一ヶ月の間室温にて開裂されないという条件で、7より高い組成物のpH値を適宜選択することが好ましい。
式(XV)の化合物は、市販されているか、又は公表された手順に従って調製され得る既知の化合物であってもよい。
MがSiであり、且つRが置換又は非置換ヒドロカルビル基を表す式(XV)の化合物は、例えば、Yamamoto K.et al.,J.Tetrahedron Lett.,1980,vol.21,pages 1653 to 1656に記載されているように、例えばジシランを用いた一段階Pd触媒反応によって容易に調製されてもよい。
スキーム4:アシルシランの調製
スキーム4では、ジシランとしてヘキサメチルシランを用いて、反応が例示的に示されており、これによりR、R及びRがメチル基を表す式(XV)の化合物が得られる。メチル以外の炭化水素置換基を有するジシランを適用することにより、R、R、及びRを変えることができると考えられている。
が式(XVII)の基を表し、式中、Yが酸素原子であり、Rがヒドロカルビル基を表す式(XV)の化合物は、例えば、Nicewicz D.A.et al.in Org.Synth.,2008,85,pages 278 to 286に記載された三段階合成により調製されてもよい。この三段階合成では、アセトアセテートがアジド化合物に変換され、これを次にトリヒドロカルビルシリルトリフルオロメタン−スルホネートと反応させてトリヒドロカルビルシリルジアゾアセテートを得て、これを最終的にペルオキシ一硫酸カリウムと反応させて標的化合物に到達する:
スキーム5:シリルグリオキシレートの調製
スキーム5では、この反応は、式(XV)(式中、基(XVII)のRはtert−ブチルの形態のヒドロカルビル基を表す)の化合物を得るために例示的に示される。tert−ブチルアセトアセテート以外のアセトアセテートを適用することにより、Rを変えることができると考えられている。
あるいは、MがSiであり、Rが式(XVII)の基を表し、且つYが酸素原子を表す式(XV)の化合物は、Nicewicz D.A.in J.Am.Chem.Soc.,2005,127(17),pages 6170 to 6171に記載されるように、ZnI及びEtNの存在下でシリルグリオキシレート、末端アルキン、及びアルデヒドのワンポット3成分カップリング反応により調製されてもよい。シリルグリオキシレート化合物のさらなる合成は、例えばJ.Org.Chem.,2012,77(10),pages 4503 to 4515及びBoyce G.R.et al.in Org.Lett.,2012,14(2),pages 652 to 655に記載されている。
例えば、式(XV)の以下の化合物が知られており、市販されており、それらのケミカルアブストラクト(CAS)番号.は括弧内に記載されている:ベンゾイルトリフェニルシラン(1171−49−9)、ベンゾイルトリメチルシラン(5908−41−8)、1−[(トリメチルシリル)カルボニル]−ナフタレン(88313−80−8)、1−メトキシ−2−[(トリメチルシリル)−カルボニル]−ベンゼン(107325−71−3)、(4−クロロベンゾイル)(トリフェニル)シラン(1172−90−3)、(4−ニトロベンゾイル)(トリフェニル)シラン(1176−24−5)、(メチルジフェニルシリル)フェニル−メタノン(18666−54−1)、(4−メトキシベンゾイル)トリフェニルシラン(1174−56−7)、及びtert−ブチル(tert−ブチルジメチルシリル)グリオキシレート(852447−17−7)。
式(XV)の全ての化合物は式(XVI)の基を含み、

式中、M、R、R及びRは上記のように定義される。Mの選択に応じて、式(XVI)の基は、アシルシラン又はアシルゲルマン基を表す。UV−VIS光に暴露すると、Mとアシル基との間の結合は開裂される場合があり、これによりシリル/ゲルマニル及びアシルラジカルが重合開始構造として形成されるが、ラジカルへの開裂と競合して、カルベン構造が形成される場合がある:
スキーム6:カルベン形成対ラジカル形成
重合開始ラジカルの形成とカルベン形成との間の競合は、アシルシランについて、El−Roz,M.et al.により、Current Trends in Polymer Science,2011,vol.15,pages 1 to 13に記載されている。
加えて、RがXと同じ意味を有するか、又は式(XVII)の基である式(XV)の化合物の場合、1,2−ジケトン基(−C(=O)−C(=O)−)のC−C結合は、UV−VIS光に暴露されると2つのアシルラジカルへと開裂される場合がある。この開裂は、Rが式(XVII)の基であり、Yが酸素原子である式(XV)の化合物について、即ちグリオキシレート(−O−C=O)−C(=O)−)化合物について、例示的に示されている:
スキーム7:グリオキシレートの−O−C(=O)−C(=O)−部分の開裂
さらに、式(XV)の化合物では、Rが、式(XVII)(式中、Yが酸素原子であり、Rが置換又は非置換ヒドロカルビル基である)の化合物である場合には、ラジカル開裂に対する第三の可能性がある。即ち、分子内又は分子間の水素引き抜きが起こる場合があり、水素ラジカルが抽出される:
スキーム8:水素引き抜き(分子内又は分子間)
グリオキシレート基の開裂と水素引き抜き機構の両方は、ケイ素もゲルマニウムも含まない光開始剤(エチルフェニルグリオキシレート(Irgacure(登録商標)MBF)など)で知られている。
がXと同じ意味を有するか、又は式(XVII)の基である式(XV)の化合物では、本発明者らは分子モデリング計算を行い、計算から−C(=O)−C(=O)−基のC−C結合はSi−C又はGe−C結合よりも弱いために、Si−C又はGe−C結合の開裂が除外される可能性があると思われる。
光開始剤系は、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩及びテトラアリール又はテトラアルキルホスホニウム塩をさらに含んでもよい。これらの塩は、光開始剤の重合性能を改善するための共開始剤として機能する場合があるが、カチオン重合のための開始剤としても機能する場合がある。
例えば、ジアリールヨードニウム塩は、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボレートを含む(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム(DPI)テトラフルオロボレート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウム(Me2−DPI)テトラフルオロボレート、フェニル−4−メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(3−ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、DPIヘキサフルオロホスフェート、Me2−DPIヘキサフルオロホスフェート、DPIヘキサフルオロアルセネート、ジ(4−フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−2−チエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、3,5−ジメチルピラゾリル−4−フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、DPIヘキサフルオロアンチモネート、2,2’−DPIテトラフルオロボレート、ジ(2,4−ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3−メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(2−ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及びDPIヘキサフルオロホスフェートから成る群から選択されてもよい。
特に好ましいヨードニウム化合物としては、ジフェニルヨードニウム(DPI)ヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−メチルフェニル)ヨードニウム(Me2−DPI)ヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Irgacure(登録商標)250、BASF SEから市販されている製品)、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボレート、4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−(2−ヒドロキシテトラデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、及び4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムボレートが挙げられる。
特に好ましい実施形態によると、ヨードニウム化合物はDPIヘキサフルオロホスフェート及び/又は4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
好ましいトリアリールスルホニウム塩は次式のS−(フェニル)チアントレニウムヘキサフルオロホスフェートである。
特に好ましいホスホニウム塩は、テトラアルキルホスホニウム塩、テトラキス−(ヒドロキシメチル)−ホスホニウム(THP)塩又はテトラキス−(ヒドロキシメチル)−ホスホニウムヒドロキシド(THPOH)塩であり、式中、テトラアルキルホスホニウム塩のアニオンはギ酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物から成る群より選択される。
特に好ましい光開始剤系は、式(XV)の光開始剤を、所望によりカンファーキノンに加えて、上述のようにジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩又はテトラアリール若しくはテトラアルキルホスホニウム塩と組み合わせて含む。
適切なレドックス開始剤系は還元剤及び酸化剤を含み、これらは光の存在とは関係なく、成分(i)の重合性基の重合を開始することができるフリーラジカル又はさらなる重合性化合物を生成する。還元剤及び酸化剤は、典型的な歯科条件下での貯蔵及び使用が許容されるように、開始剤系(ii)が十分に貯蔵安定性があり、望ましくない着色がないように選択される。さらに、還元剤及び酸化剤は、開始剤系(ii)が樹脂系と十分に混和して組成物中に開始剤系が溶解できるように選択される。
有用な還元剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及び米国特許第5,501,727号に記載されているような金属錯体化アスコルビン酸化合物;アミン、即ち、第三級アミン(4−tert−ブチルジメチルアニリンなど);芳香族スルフィン酸塩(p−トルエンスルフィン酸塩及びベンゼンスルフィン酸塩なdl);チオ尿素(1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、及び1,3−ジブチルチオ尿素など);並びにそれら混合物、が挙げられる。他の補助還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、亜ジチオン酸又は亜硫酸陰イオンの塩、及びそれらの混合物が挙げられてもよい。
適切な酸化剤としては、過硫酸及びその塩、例えば、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、セシウム及びアルキルアンモニウム塩が挙げられる。追加の酸化剤としては、ベンゾイルペルオキシドなどの過酸化物、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びアミルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、並びに、塩化コバルト(III)及び塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)などの遷移金属の塩、過ホウ酸及びそれらの塩、過マンガン酸及びそれらの塩、過リン酸及びそれらの塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。1つ若しくは複数の異なる酸化剤又は1つ若しくは複数の異なる還元剤を開始剤系に使用してもよい。少量の遷移金属化合物を添加してレドックス硬化の速度を促進してもよい。還元剤及び酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。
還元剤又は酸化剤は、組成物の貯蔵安定性を増強するため、及び必要に応じて、還元剤及び酸化剤を一緒に包装できるようにするためにマイクロカプセル化されてもよい(米国特許第5,154,762号)。封入剤を適切に選択することにより、貯蔵安定状態で酸化剤と還元剤とを組み合わせ、且つ酸官能性成分及び所望により充填剤さえも組み合わせることができる場合がある。さらに、水不溶性封入剤を適切に選択することにより、微粒子反応性ガラス及び水と一緒に還元剤及び酸化剤を貯蔵安定状態で組み合わせられる。
開始剤系の活性種の量は特に限定されない。適宜、開始剤系(ii)の光開始剤の量は、成分(i)又は以下に記載されるさらなる重合性化合物などのモノマーの総量に基づいて、0.001〜5mol% の範囲である。
さらなる重合性化合物
式(I)の(i)酸性重合性化合物の他に、本発明の歯科用組成物は、式(I)の酸性重合性化合物とは異なるさらなる化合物である、少なくとも1つの重合性基を有する1つ又は複数の重合性化合物をさらに含有してもよい。
さらに含有される1つ又は複数の重合性化合物の重合性基は特に限定されない。少なくとも1つの重合性基は、例えば、ラジカル重合性炭素間二重結合及び/又はカチオン重合性基であってもよい。ラジカル重合性炭素間二重結合は、(メタ)アクリロイル基(複数可)及び(メタ)アクリルアミド基、好ましくは(メタ)アクリロイル基(複数可)の炭素間二重結合から選択されることが好ましい。さらに、カチオン重合性基は、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基、及びアゼチジン基から、好ましくはエポキシド基、ビニルエーテル基及びオキセタン基から、最も好ましくはエポキシド基及びビニルエーテル基から選択されることが好ましい。
少なくとも1つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する、所望によるさらなる含有化合物(複数可)は特に限定されない。しかし、それらのラジカル重合性炭素間二重結合は、(メタ)アクリロイル基及び(メタ)アクリルアミド基の炭素間二重結合から選択されることが好ましい。
少なくとも1つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する化合物の適切な例は、(メタ)アクリレート、アクリル酸又はメタクリル酸のアミド、ウレタンアクリレート又はメタクリレート、及びポリオールアクリレート又はメタクリレートから成る群から選択されてもよい
(メタ)アクリレートは次式(A)、(B)及び(C)の化合物から好ましくは選択されてもよい。

式中、R20、R 20、R** 20、R*** 20は、独立して水素原子、−COOM、直鎖状C1〜18又は分岐C3〜18アルキル基(C3〜6シクロアルキル基、C6〜14アリール若しくはC3〜14ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−PO、又は−SOによって置換されてもよい)、C〜C18シクロアルキル基(C1〜16アルキル基、C6〜14アリール若しくはC3〜14ヘテロアリール基、又はC〜C18アリール若しくはC〜C18ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−PO、又は−SOによって置換されてもよい)を表し、
21は、水素原子、直鎖状C1〜18若しくは分岐C3〜18アルキル基、又はC〜C18アルケニル基(C3〜6シクロアルキル基、C6〜14アリール基若しくはC3〜14ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−PO、又は−SOによって置換されていてもよい)、C〜C18シクロアルキル基(C1〜16アルキル基、C6〜14アリール基若しくはC3〜14 ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−PO、又は−SOによって置換されていてもよい)、又はC〜C18アリール基若しくはC〜C18ヘテロリール基を表し、
22は、1〜45個の炭素原子を有する二価の有機残基を表し、これにより二価の有機残基は1〜7個のC3〜12シクロアルキレン基(複数可)、1〜7個のC6〜14アリレン基、1〜7個のカルボニル基、1〜7個のカルボキシル基(−(C=O)−O−若しくは−O−(C=O−))、1〜7個のアミド基(−(C=O)−NH−若しくは−NH−(C=O)−)又は1〜7個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−若しくは−O−(C=O)−NH−)の少なくとも1つ、並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される1〜14個のヘテロ原子を含有してもよく、この二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C6〜14アリール基、−COOM、−POM、−O−PO又は−SOから成る群から選択される1つ又は複数の置換基で置換されてもよく、好ましくはR22は、1つ又は複数の−OH基(複数可)で置換されてもよいC〜C18アルキレン基であり、このアルキレン基は1〜4個のC6〜10アリレン基、1〜4個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−又は−O−(C=O)−NH−)、及び1〜8個の酸素原子のうちの少なくとも1つを含んでもよく、
23は、飽和した二価又は多価の置換又は非置換のC〜C18炭化水素基、飽和した二価又は多価の置換又は非置換環状C〜C18炭化水素基、二価若しくは多価の置換若しくは非置換C〜C18アリール基又はヘテロアリール基、二価若しくは多価の置換若しくは非置換C〜C18アルキルアリール基又はアルキルヘテロアリール基、二価若しくは多価の置換若しくは非置換C〜C30アラルキル基、又は1〜14個の酸素原子を有する、二価若しくは多価の置換若しくは非置換C〜C45モノ−、ジ−、又はポリエーテル残基を表し、また、
mは整数であり、好ましくは1〜10の範囲であり、
式中、R20、R 20、R** 20、*** 20、R21、及びR22のうちのいずれか1つのMは互いに独立しており、それぞれ水素原子又は金属原子を表し、且つ
20、R 20、R** 20、*** 20、R21、及びR22のうちのいずれか1つのMは互いに独立しており、それぞれ金属原子を表す。
20、R 20,、R** 20及びR*** 20について、直鎖状C1〜18又は分岐C3〜18アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、又はヘキシルであってよい。R21及びR 21について、C1〜18アルキル基又はC2〜18アルケニル基は、例えば、エチル(エテニル)、n−プロピル(プロペニル)、i−プロピル(プロペニル)、n−ブチル(ブテニル)、イソブチル(イソブテニル)、tert−ブチル(ブテニル)sec−ブチル(ブテニル)、ペンチル(ペンテニル)、又はヘキシル(ヘキセニル)であってよい。
20、R 20、R** 20、R*** 20及びR21について、アリール基は、例えば、フェニル基又はナフチル基であってもよく、C3〜14ヘテロアリール基は窒素、酸素、及び硫黄から選択される1〜3個のヘテロ原子を含んでもよい。
22について、「二価の有機残基は〜のうちの少なくとも1つを含んでもよい」という語句は二価の有機残基に含有されてもよい基が、共有結合によって二価有機残基に組み込まれることを意味する。例えば、BisGMAでは、フェニルの形態の2個のアリール基及び酸素原子の形態の2個のヘテロ原子がR22の二価の有機残基に組み込まれる。又は、さらなる例として、UDMAでは、2個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−又は−O−(C=O)−NH−)がR22の二価の有機残基に組み込まれる。
式(B)では、点線で表される結合は、R20及びR*** 20がCOに対して(Z)又は(E)配置で存在する場合があることを示している。
好ましくは、式(A)、(B)及び(C)では、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は独立して水素原子、直鎖状C1〜16又は分岐C3〜16アルキル基(C3〜6シクロアルキル基、C6〜14アリール又はC3〜14ヘテロアリール基で置換されてもよい)、C3〜6シクロアルキル基(C1〜16アルキル基、C6〜14アリール又はC3〜14ヘテロアリール基、C6〜14アリール又はC3〜14ヘテロアリール基で置換されてもよい)を表す。より好ましくは、式(B)では、R20、R 20、R** 20、及びR*** 20は独立して水素原子、直鎖状C1〜8又は分岐C3〜8アルキル基(C4〜6シクロアルキル基、C6〜10アリール又はC4〜10ヘテロアリール基によって置換されてもよい)、C4〜6シクロアルキル基(C1〜6アルキル基、C6〜10アリール若しくはC4〜10ヘテロアリール基、又はC6〜10アリール基によって置換されてもよい)を表す。さらにより好ましくは、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は独立して水素原子、直鎖状C1〜4若しくは分岐C又はCアルキル基(シクロへキシル基又はフェニル基で置換されてもよい)、又はシクロへキシル基(C1〜4アルキル基で置換されてもよい)を表す。最も好ましくは、R20、R 20、R** 20及びR*** 20は独立して水素原子、又は直鎖状C1〜4若しくは分岐C若しくはCアルキル基を表す。
好ましくは、式(A)では、R21は水素原子、直鎖状C1〜16若しくは分岐C3〜16アルキル基又はC2〜16アルケニル基(C3〜6シクロアルキル基、C6〜14アリール又はC3〜14ヘテロアリール基で置換されてもよい)、C3〜6シクロアルキル基(C1〜16アルキル基、C6〜14アリール又はC3〜14ヘテロアリール基、C6〜14アリール又はC3〜14ヘテロアリール基で置換されてもよい)を表す。より好ましくは、R21は、水素原子、直鎖状1〜10若しくは分岐C3〜10アルキル又はC2〜10アルケニル基(C4〜6シクロアルキル基、C6〜10アリール又はC4〜10ヘテロアリール基で置換されてもよい)、C4−6シクロアルキル基(C1〜6アルキル基、C6〜10アリール若しくはC4〜10ヘテロアリール基又はC6〜10アリール基で置換されてもよい)を表す。さらにより好ましくは、R21は、水素原子、直鎖状C1〜10若しくは分岐C3〜10アルキル基又は直鎖C2〜10若しくは分岐C3〜10アルケニル基(シクロへキシル基又はフェニル基で置換されてもよい)、又はシクロへキシル基(C1〜4アルキル基で置換されてもよい)を表す。またさらにより好ましくは、R21は、非置換型C1〜10アルキル基又はC2〜10アルケニル基を表し、それよりさらにより好ましくは非置換型C2〜6アルキル基又はC3〜6アルケニル基を表し、最も好ましくはエチル基又はアリル基を表す。
式(A)、(B)及び(C)の(メタ)アクリレート化合物は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレート(「ビス−GMA」、CAS−No.1565−94−2)、4,4,6,16(又は4,6,6,16)−テトラメチル−10,15−ジオキソ−11,14−ジオキサ−2,9−ジアザヘプタデク−16−エン酸2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロぺン−1−イル)オキシ]エチルエステル(CASno.72869−86−4)(UDMA)、グリセロールモノアクリレート及びグリセロールジアクリレート(1,3−グリセロールジメタクリレート(GDM)など)、グリセロールモノメタクリレート及びグリセロールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレンオキシド繰り返し単位の数は2〜30で変化する、特にトリエチレングリコールジメタクリレート(「TEGDMA」)、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトール並びにジペンタエリスリトールのモノアクリレート及びモノメタクリレート、ジアクリレート及びジメタクリレート、トリアクリレート及びトリメタクリレート、並びにテトラアクリレート及びテトラメタクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサンエチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス[4(2−ヒドロキシ−3−アクリルオキシ−フェニル)]プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−メタクリレート]プロパン、並びに2,2’−ビス[3(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−アクリレート]プロパン、から成る群から選択されてもよい。
最も好ましくは、式(B)の化合物は、以下から成る群から選択される:
特に好ましいモノ−又はビス−又は(メタ)アクリルアミド及びポリ[(メタ)アクリルアミド]は次式(D)、(E)及び(F)を有し、

式中、R24 24、R** 24、R*** 24は、式(A)、(B)及び(C)に対して上記で定義されたR20 20、R** 20、R*** 20と同じ意味を有し、R25、R 25は独立して、式(A)に対して上記で定義されたR21と同じ意味を有する残基を表し、R27及びm’は式(C)に対して上記で定義されたR23及びmと同じ意味を有する。
式(E)では、R26は、1〜45個の炭素原子を有する二価の置換又は非置換型有機残基を表し、前記有機残基は1〜7個のC3〜12シクロアルキレン基(複数可)、1〜7個のC6〜14アリレン基、1〜7個のカルボニル基、1〜7個のカルボキシル基(−(C=O)−O−若しくは−O−(C=O−))、1〜7個のアミド基(−(C=O)−NH−若しくは−NH−(C=O)−)又は1〜7個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−若しくは−O−(C=O)−NH−)の少なくとも1つ、並びに酸素、窒素及び硫黄から選択される1〜14個のヘテロ原子を含有してもよく、この二価の有機残基は、ヒドロキシル基、チオール基、C6〜14アリール基、−COOM、−POM、−O−PO又は−SOから成る群から選択される1つ又は複数の置換基(複数可)で置換されてもよく、好ましくはR26は、1〜4個のC6〜10アリーレン基及びC3〜8シクロアルキレン基、1〜4個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−又は−O−(C=O)−NH−)、並びに1〜8個の酸素原子又は窒素原子の少なくとも1つを含んでもよいC〜C18アルキレン基又はC〜C18アルケニル基である。
26について、「二価の有機残基は〜の少なくとも1つを含んでもよい」という語句は式(B)の化合物のR22に対して上記で定義されたものと類似の意味を有する。
式(D)、(E)、(F)では、点線で表される結合は、R24及びR*** 24がCOに対して(Z)又は(E)配置で存在する場合があることを示している。
式(D)の化合物では、R25とR25 は共同的に環を形成する場合があり、その場合、R25とR25 はC−C結合、又はエーテル基、チオエーテル基、アミン基、及びアミド基から成る群より選択される官能基によって結合される。
式(D)、(E)、(F)による好ましいメタアクリルアミドは次式を有する:
式(D)、(E)、(F)による好ましいアクリルアミドは次式を有する:
最も好ましいものはビス−(メタ)アクリルアミドであり:
次の構造式を有するN,N’−ジアリル−1,4−ビスアクリルアミド−(2E)−ブテ−2−エン(BAABE)、

及び
次の構造式を有するN,N’−ジエチル−1,3−ビスアクリルアミド−プロパン(BADEP)である。
また少なくとも1つの重合性二重結合を有する重合性化合物を含むリン酸エステル基から好適に選択された(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を有する化合物は次式(G)を有することが好ましい:

式中、
互いに独立したY部分は、水素原子又は
次式(Y)、(Y**)、若しくは(Y***)の部分を表し、

式中、
は、COORα、COSRβ、CON(Rα、CONRαβ、又はCONHRαであり、式中、Rα及びRβは独立して水素原子、所望によりC3〜8シクロアルキル基によって置換されるC1〜18アルキル基、所望により置換されるC3〜8シクロアルキル基、所望により置換されるC4〜18アリール又はヘテロアリール基、所望により置換されるC5〜18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、又は所望により置換されるC7〜30アラルキル基を表し、それにより2つのR13残基は、隣接する窒素原子と共にそれらが結合する5〜7員の複素環を形成してもよく、これはさらに窒素原子又は酸素原子を含んでもよく、またこれによって所望により置換される基が1〜5個のC1〜5アルキル基によって置換されてもよく、
及びRは独立して水素原子、所望により置換されるC1〜18アルキル基、所望により置換されるC3〜18シクロアルキル基、所望により置換されるC5〜18アリール又はヘテロアリール基、所望により置換されるC5〜18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、所望により置換されるC7〜30アラルキル基を表し、それによりそれらの所望により置換される基が1〜5個のC1〜5アルキル基によって置換されてもよく、
は、2〜45個の炭素原子、並びに酸素、窒素及び硫黄原子などの所望によるヘテロ原子を含有する(a+b)価の有機残基(式(D)におけるYが丸い括弧内にある場合、bは1である)を表し、炭素原子は、第1級及び第2級の脂肪族炭素原子、第2級脂環式炭素原子、並びに芳香族炭素原子から選択されるa+b炭素原子を含み、a+b炭素原子の各々は、フォスフェートまたは式(Y)、(Y**)及び(Y***)のいずれか1つの部分に結合し;aは1〜10、好ましくは1〜5の整数であり;bは1〜10、好ましくは1〜5の整数であり、少なくとも1個のYが水素でない条件である。Y=Yであるそのような化合物の調製は欧州特許出願公開第1 548 021 A1号から公知である。
さらに、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を有する化合物は、次式(H)の重合性酸性化合物を含むホスホン酸基からも選択されてもよい:

式中、
部分Yは、次式(Y **)又は(Y ***)の部分を表し、

はZに対して定義されたものと同じの意味を独立して有し、
及びRはR及びRに対して定義されたものと同じ意味を独立して有し、
は、2〜45個の炭素原子、並びに所望により酸素、窒素及び硫黄などのヘテロ原子を含有する(c+d)価の有機残基を表し、炭素原子は、第1級及び第2級の脂肪族炭素原子、第2級の脂環式炭素原子、並びに芳香族炭素原子から選択されるc+d炭素原子を含み、c+d炭素原子の各々は、ホスホネート又は式(Y )、(Y **)及び(Y ***)のいずれか1つの部分に結合し;且つ、
c及びdが独立して1から10までの整数を表す。
式(G’)の化合物から、次式が特に好ましく:

式中、Zは上記のように定義され、Lは所望により置換されたアルキレン基である。より好ましくは、Zはメチルであり、LはC〜C16アルキレン基である。さらにより好ましくは、LはC〜C12アルキレン基である。
さらに、1つ又は複数のラジカル重合性炭素間二重結合を有する化合物は、欧州特許公開第2 705 827号及び同第EP 2 727 576号に開示された加水分解安定性多機能重合性モノマーから選択されてもよい。
1つ又は複数のラジカル重合性炭素間二重結合を有する特に好ましい化合物は、式(A)、(B)、(C)、(G)、(H)の化合物から、より好ましくは式(A)、(B)、(C)の化合物から、最も好ましくは式(B)の化合物から選択される。
1つ又は複数のカチオン重合性基を有する所望によるさらなる含有化合物(複数可)は特に限定されない。しかし、これらのカチオン重合性基は、好ましくはエポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基、及びアゼチジン基から、より好ましくはエポキシド基、オキセタン基及びビニルエーテル基から、最も好ましくはエポキシド基及びビニルエーテル基から選択される。
エポキシド及び/又はオキセタン基の形態の1つ又は複数のカチオン重合性基を有する化合物は、式(J)、(K)、(L)の化合物から好ましくは選択されてもよく:

式中、
Aは単結合、メチレン(−CH−)基又は−R28**CR29**−であり、R28**及びR29**はR28及びR29に対して以下で定義されるものと同じ意味を有し、好ましくはAは単結合又はメチレン(−CH−)基であり、最も好ましくはAは単結合であり、
Hetは酸素原子又は窒素原子、好ましくは酸素原子であり、
28、R29、R30、R28*、R29*、R30*、R31は独立して、水素原子、−COOM、又は直鎖状C1〜18若しくは分岐若しくは環状C3〜18アルキル基(C3〜6シクロアルキル基、C6〜14アリール若しくはC3〜14ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−PO又は−SOで置換されていてもよい)、C〜C18シクロアルキル基(直鎖状C1〜16若しくは分岐若しくは環状C3〜16アルキル基、C6〜14アリール若しくはC3〜14ヘテロアリール基、−COOM、−POM、−O−PO又は−SOで置換されていてもよい)、又はC〜C18アリール若しくはC〜C18ヘテロアリール基(−COOM、−POM、−O−PO又は−SOで置換されていてもよい)から成る群から選択される有機部分を表し、この有機部分は以下から構成される群から選択される1つ又は複数の置換基(複数可)で置換されてもよく、
32は、1〜45個の炭素原子を有する二価の有機残基を表し、これによって前記有機残基は1〜7個のC3〜12シクロアルキレン基(複数可)、1〜7個のC6〜14アリレン基、1〜7個のカルボニル基、1〜7個のカルボキシル基(−(C=O)−O−又は−O−(C=O−)、1〜7個のアミド基(−(C=O)−NH−又は−NH−(C=O)−)、1〜7個のウレタン基(−NH−(C=O)−O−又は−O−(C=O)−NH−)、ケイ素、酸素、窒素及び硫黄から選択される1〜14個のヘテロ原子、の少なくとも1つを含んでもよく、好ましくはR32は、1〜4個のカルボキシル基(−(C=O)−O−若しくは−O−(C=O−))又は少なくとも1つの部分−SiR −O−SiR −を含んでもよいC〜C18アルキレン基であり、式中Rは独立して、直鎖状C1〜4又は分岐C若しくは Cアルキル基を表し、この二価の有機残基は、−OH、−SH、−COOM、−POM、−O−PO又は−SOから成る群から選択される1つ又は複数の基で置換されてもよく、
また、R33は飽和した二価又は多価の置換又は非置換型直鎖状C〜C18炭化水素基、飽和した二価又は多価の置換又は非置換型分岐又は環状C〜C18炭化水素基、二価又は多価の置換又は非置換型C〜C18アリール又はヘテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換型C〜C18アルキルアリール又はアルキルヘテロアリール基、二価又は多価の置換又は非置換型C〜C30アラルキル基、又は1〜14個の酸素又は硫黄原子を有する二価若しくは多価の置換若しくは非置換型C〜C45モノ−、ジ−、若しくはポリエーテル残基を表し、且つ、
は整数であり、好ましくは1〜10の範囲であり、
式中、R28、R29、R30、R28*、R29*、R30*、R31及びR32のうちのいずれか1つのMは互いに独立しており、それぞれ水素原子又は金属原子を表し、
28、R29、R30、R28*、R29*、R30*、R31及びR32のうちのいずれか1つのMは互いに独立しており、それぞれが金属原子を表す。
式(J)、(K)及び(L)の化合物において、R28、R30及びR28*、R30*は独立して共同的に環を形成する場合があり、その場合にR28、R30及びR28*、R30*はC−C結合、又はエーテル基、チオエーテル基、アミン基、及びアミド基から成る群から選択される官能基によって結合される。好ましくは、R28、R30及びR28*、R30*はC−C結合によって結合され、R28、R30及びR28*、R30*の間に位置するC−C結合と共に、3〜8員環、好ましくは5〜7員環、最も好ましくはC環を形成する。
32について、「二価の有機残基は〜の少なくとも1つを含んでもよい」という語句は式(B)の化合物のR22に対して上記で定義されたものと類似の意味を有する。
式(J)では、Hetは酸素であり、R28及びR29は独立して、1つ又は複数の−OH基で置換されていてもよい直鎖状C1〜8又は分岐又は環状C3〜8アルキル基を表すことが好ましい。より好ましくは、式(J)では、Hetは酸素であり、R28及びR29は独立して、1つ又は複数の−OH基で置換されてもよい直鎖状C1〜8アルキル基を表し、R30及びR31は水素原子を表し、Aは好ましくはメチレン(−CH−)基である。
式(K)では、Aは単結合であり、Hetは酸素であり、R28、R30及びR28*、R30*は独立して共同的に環を形成し、R28、R30及びR28*、R30*はC−C結合で結合され、R32は、1〜4個のカルボキシル基(−(C=O)−O−若しくは−O−(C=O−))又は少なくとも1つの部分−SiR −O−SiR −のうち少なくとも1つを含んでもよいC〜Cアルキレン基であり、式中、Rは独立して、直鎖状C1〜4又は分岐C若しくはCアルキル基を表すことが好ましい。
好ましくは、式(J)及び(K)の化合物は、以下から成る群から選択される:

EPOX及び/又はEPOX−Siである式(K)の化合物が最も好ましい。
ビニルエーテル基の形態の1つ又は複数のカチオン重合性基を有する化合物は好ましくは、式(M)、(N)、(O)の化合物から選択されてもよい:
34は、式(A)に対して上記で定義されたR21と同じ意味を有するか、又は代替的に、1〜14個の酸素原子を有する一価の置換又は非置換C〜C45モノエーテル、ジエーテル、又はポリエーテル残基を表してもよく、R35は式(B)に対して上記で定義されたR22と同じ意味を有し、R36及びm'''は式(C)に対して上記で定義されたR23及びm’と同じ意味を有する。
好ましくは、式(M)の化合物では、Hetは酸素原子であり、R34は直鎖状C1〜14若しくは分岐若しくは環状C3〜14アルキル基、又は式−[−O−CH−CH−]−Rγのエチレングリコール部分を表し、n=1〜9でありRγはハロゲン又はOHである。
好ましくは、式(N)の化合物では、Het及びHet##は酸素原子であり、R35は、1〜4個のC3〜8シクロアルキレン基又は1〜9個の酸素原子のうち少なくとも1つを含有してもよいC〜C18アルキレン基を表し、酸素原子は、式−[−O−CH−CH−]−(n=1〜9である)のエチレングリコール部分が形成されるように含まれてもよい。
最も好ましくは、式(M)及び(N)の化合物は、以下から成る群から選択される:
1つ又は複数のカチオン重合性基を有する特に好ましい化合物は、式(J)、(K)、(M)及び(N)の化合物から、より好ましくは式(K)、(M)及び(N)の化合物から選択される。
少なくとも1つのラジカル重合性炭素間二重結合及び少なくとも1つのカチオン重合性基(複数可)の組み合わせを有する所望によるさらなる含有化合物は特に限定されない。しかし、好ましくは、このような化合物では、ラジカル重合性炭素間結合は、(メタ)アクリロイル基(複数可)及び(メタ)アクリルアミド基(複数可)から選択され、カチオン重合性基は、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基、及びアゼチジン基から選択される。
より好ましくは、このような化合物では、ラジカル重合性炭素間結合(複数可)は、(メタ)アクリルアミド基(複数可)であり、またカチオン重合性基は、ビニルエーテル基、エポキシド基及びオキセタン基から選択される。最も好ましくは、カチオン重合性基(複数可)はビニルエーテル基(複数可)及び/又はエポキシド基(複数可)である。
少なくとも1つのラジカル重合性炭素間二重結合及び少なくとも1つのカチオン重合性基(複数可)の組み合わせを有する化合物は好ましくは式(P)の化合物から選択されてもよい:

37、R38、R39は式(J)、(K)及び(L)に対して上記で定義されたR28、R29、R30と同じ意味を有し、R40、R40*は式(A)、(B)及び(C)に対して上記で定義されたR20及びR20 と同じ意味を有し、R41は式(C)に対して上記で定義されたR23と同じ意味を有し、
jは0〜6、好ましくは1〜3の整数であり、
kは0〜6、好ましくは0〜3の整数であり、
jは0〜6、好ましくは0〜3の整数であるが、
j+k+l≧2であることを条件とする。
式(P)において、点線で表される結合は、R40がCOに対して(Z)又は(E)配置であってもよいことを示している。
式(P)では、R37及びR39は共同的に、式(G)及び(H)のR28及びR30に対して上記で定義された環を形成してもよい。
最も好ましくは、化合物(P)では、ラジカル重合性炭素間結合(複数可)は、(メタ)アクリルアミド基(複数可)であり、カチオン重合性基は、ビニルエーテル基である。
式(P)の化合物では、j=1〜3、k=0及びj=1〜3であり、R40は水素原子、R40*は直鎖状C1〜8又は分岐若しくは環状C3〜8アルキル基であり、R41は、1〜9個の酸素原子を含んでもよいC〜C18アルキレン基を表し、酸素原子は式−[−O−CH−CH−]−(n=1〜9である)のエチレングリコール部分が形成されるように含まれてもよいことが好ましい。
式(P)の特に好ましい化合物は、以下の構造式を有する2−ビニルオキシエトキシエチルメタクリレート(VEEM)である:

好ましくは、歯科用組成物は、モノマーの組み合わせ(x)及び(y)、(x)及び(z)、(y)及び(z)、若しくは(x)、(y)及び(z)を含む、又はモノマー(z)を含む均一相を含み、
(x)は少なくとも1つのラジカル重合性炭素間二重結合を有する1つ又は複数の化合物を表し、
(y)は少なくとも1つのカチオン重合性基を有する1つ又は複数の化合物を表し、
(z)は少なくとも1つのラジカル重合性炭素間二重と少なくとも1つのカチオン重合性基との組み合わせを有する1つ又は複数の化合物を表す。
「均一相」という用語は、モノマーの組み合わせ(x)及び(y)、(x)及び(z)、(y)及び(z)、若しくは(x)、(y)及び(z)、又はモノマー(z)が、単一相内の検出可能な相境界を伴わずに単一相内に存在することを意味する。
「モノマー(複数可)」という用語は本明細書で使用する場合、重合性基を有する化合物を意味する。
「相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)」という用語は本明細書で使用する場合、2つ以上のポリマーが分子スケールで少なくとも部分的に交絡しているが、互いに共有結合はしておらず、化学結合が破壊されない限り分離できないことを意味する。2つ以上の事前形成ポリマーの混合物はIPNを表さない。IPNの2つ以上のポリマーが、2つ以上の重合性基を有する化合物で形成される場合、IPNは次のような公式IUPAC定義に従う:「分子スケールで少なくとも部分的に交絡しているが、互いに共有結合はしておらず、化学結合が破壊されない限り分離できない2つ以上のネットワークを含むポリマー」。1つ又は複数のポリマー(複数可)が、2つ以上の重合基を有する化合物で形成され、1つ又は複数のポリマー(複数可)が、単一の重合性基を有する化合物で形成される場合、IPNはIUPAC定義、いわゆる「半相互貫入ポリマーネットワーク(SIPN)に従う:「直鎖状又は分岐巨大分子のうちの少なくともいくつかによる、ネットワークのうち少なくとも1つの分子スケールでの貫入を特徴とする、1つ又は複数のネットワーク及び1つ又は複数の直鎖状若しくは分岐ポリマー(複数可)を含むポリマー」。IPNの現在の一般的定義には、IUPAC定義によるIPN及びSIPNを含むが、分子スケールで少なくとも部分的に交絡しているが、互いに共有結合はしておらず、化学結合が破壊されない限り分離できない2つ以上の直鎖状又は分岐ポリマーも含む。
モノマー(x)、(y)及び(z)のラジカル重合性炭素間二重結合及びカチオン重合性基は特に限定されない。ラジカル重合性炭素間二重結合は、(メタ)アクリロイル基(複数可)及び(メタ)アクリルアミド基(複数可)、好ましくは(メタ)アクリロイル基(複数可)の炭素間二重結合から選択されることが好ましい。さらに、カチオン重合性基は、エポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基、及びアゼチジン基から、好ましくはエポキシド基、ビニルエーテル基及びオキセタン基から、最も好ましくはエポキシド基及びビニルエーテル基から選択されることが好ましい。
好ましくは、歯科用組成物は、モノマーの組み合わせ(x)及び(y)、(x)及び(z)、(y)及び(z)、又は(x)、(y)及び(z)、最も好ましくはモノマーの組み合わせ(x)及び(y)、(x)及び(z)、又は(x)、(y)及び(z)を含む均一相を含む。
例えば、モノマー(複数可)(x)は式(I)の酸性重合性化合物、並びに式(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)の化合物から選択されてもよく、モノマー(複数可)(y)は式(I)の酸性重合性化合物、及び式(J)、(K)、(L)、(M)、(N)、(O)の化合物から選択されてもよく、またモノマー(複数可)(z)は式(I)の酸性重合性化合物及び式(P)の化合物から選択されてもよい。
式(I)の酸性重合性化合物について、重合性基R並びに所望による重合性基(複数可)Y及びRは、式(I)の化合物がモノマー(x)、(y)及び(z)の定義の1つを満たすように適宜選択することができる。
モノマー(複数可)(x)については、少なくとも式(I)の酸性重合性化合物が選択され、モノマー(複数可)(y)については、式(J)〜(O)の化合物のうちのいずれか1つが選択され、モノマー(z)については式(P)の化合物(複数可)が選択されることが好ましい。より好ましくは、前述の組み合わせにおいて、式(I)の酸性重合性化合物は、Rが(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を表し、所望によりRがビニル又はアリルなどのアルケニル基を表す場合があり、所望により少なくとも1つのYが(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を表す場合がある化合物であり、そして最も好ましくは、式(I)の酸性重合性化合物は、Rが(メタ)アクリロイル基を表し、所望により1つのYが(メタ)アクリロイル基を表してもよい化合物である。
あるいは、モノマー(複数可)(x)については、式(A)〜(H)の化合物のうちのいずれか1つが選択され、モノマー(複数可)(y)については、式(J)〜(O)の化合物のうちのいずれか1つが選択され、モノマー(z)については、式(I)の酸性重合性化合物が選択されるが、Rは(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を表し、所望によりRはビニル又はアリルなどのアルケニル基を表してもよく、また少なくとも1つのYはエポキシド基、オキセタン基、ビニルエーテル基、アジリジン基、又はアゼチジン基を表す。より好ましくは、前述の組み合わせにおいて、式(I)の酸性重合性化合物は、Rが(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を表し、少なくとも1つのYがエポキシド基、オキセタン基又はビニルエーテル基を表す化合物であり、最も好ましくは、式(I)の酸性重合性化合物は、Rが(メタ)アクリロイル基を表し、1つのYがエポキシド基又はビニルエーテル基を表す化合物である。
均一相は、2つ以上の重合性炭素間二重結合又はカチオン重合性基を有する1つ又は複数の化合物(複数可)(x)及び/若しくは(y)、並びに/及び、少なくとも1つの重合性炭素間二重結合及び少なくとも1つのカチオン重合性基を有する1つ又は複数の化合物(複数可)(z)を含むことが好ましい。これは架橋ポリマーネットワークの形成を提供する。架橋ポリマーネットワークの形成は、形成されたIPNに追加的寸法/機械的安定性を付与するので有利である。より好ましくは、均一相(a)は、式(I)、(B)及び(E)の酸性重合性化合物から成る群から選択される2つ以上のラジカル重合性炭素間結合を有する化合物(複数可)(x)、及び/又は式(I)、(K)及び(O)の化合物から成る群から選択される2つ以上のカチオン重合性基を有する化合物(複数可)(y)、及び/又は少なくとも1つのラジカル重合性炭素間二重結合及び式(I)の化合物及び/又は式(P)の化合物から選択される少なくとも1つのカチオン重合性基を有する化合物(複数可)(z)を含む。
化合物(複数可)(x)を含む均一相については、均一相(a)が成分(x)、(y)及び(z)を0.1〜10の重量比(x)/((y)+(z))で含むことが好ましい。
さらなる所望による成分
本発明による歯科用組成物は、上述の所望による成分の他に、追加的な所望による成分を含んでもよい。
例えば、本発明による歯科用組成物は、適切な溶媒を含んでもよい。これらの溶媒は、水、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール(n−、i−)、ブタノール(n−、イソ−、tert−)など)、及びケトン(アセトンなど)又はこれに類するものから選択されてもよい。
本発明の歯科用組成物は、組成物の総重量に基づいて5〜75重量%の量で溶媒を含んでもよい。
さらに、本発明による歯科用組成物は、適切な微粒子状充填剤を含むことができる。これらの微粒子状充填剤は、歯科用組成物に現在使用されている充填剤から選択されてもよい。充填剤は、微細に分割されていなければならず、好ましくは約10μm未満の最大粒子径及び約1μm未満の平均粒子径を有する。充填剤は、単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)の粒子径分布を有してもよい。
充填剤は無機材料とすることができる。充填剤はまた、重合性樹脂に不溶性であり、所望により無機充填剤で充填される架橋有機材料とすることもできる。充填剤は放射線不透過性とすることができる。適切な微粒子状無機充填剤の例は、石英、窒化ケイ素のような窒化物、例えばCe、Sb、Sn、Zr、Sr、Ba及びAlから誘導されるガラス、コロイダルシリカ、長石、ホウケイ酸ガラス、カオリン、タルク、チタニア、及び亜鉛ガラスのような天然材料又は合成材料、及び焼成シリカのようなサブミクロンシリカ粒子である。適切な非反応性有機充填剤粒子の例としては、充填又は非充填粉砕ポリカーボネート又はポリエポキシドが挙げられる。好ましくは、充填剤粒子の表面は、充填剤とマトリックスとの間の結合を強化するためにカップリング剤で処理される。適切なカップリング剤の使用としては、ガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
微粒子状充填剤はまた、1〜70μmのメジアン粒子径(D50)を有する複合材充填剤粒子を提供するために、
(A)コーティング層を形成する被膜形成剤を含有するコーティング組成物を用いて1〜1200nmのメジアン粒子径(D50)を有する微粒子状充填剤を微粒子状充填剤の表面上にコーティングし、前記コーティング層は、前記コーティング層の表面上に反応性基を示し、前記反応性基は、付加重合性基及び逐次重合性基から選択され、それによりコーティングされた微粒子状充填剤を形成することと、続いて又は同時に、
(B)所望によりさらなる架橋剤の存在下で、かつ所望により反応性基を示さないさらなる微粒子状充填剤の存在下で、コーティングされた微粒子状充填剤の顆粒を提供するために、コーティングされた微粒子状充填剤を凝集させることと、を含み、顆粒は、コーティングされた微粒子状充填剤粒子、及び少なくとも1つのコーティング層によって互いに分離され、且つ結合された所望によるさらなる微粒子状充填剤粒子を含有し、それにより、少なくとも1つのコーティング層は、反応性基と、所望によりさらなる架橋剤とを反応させることによって得られた架橋性基によって架橋されてもよく、
(C)所望により、コーティングされた微粒子状充填剤の顆粒を粉砕、分級及び/又はふるい分けすることと、
(D)所望により、コーティングされた微粒子状充填剤の顆粒をさらに架橋することと、
を含む複合材充填剤粒子を調製するためのプロセスであって、反応性基が、反応性基と所望による追加の架橋剤との反応により得られる架橋基へと変換され、且つ、微粒子状充填剤が欧州特許公開第2 604 247(A)号にさらに記載されるように体積ベースで複合充填剤粒子の主成分である、プロセスによって得ることができる充填剤であってもよい。
本発明の歯科用組成物は、好ましくは、微粒子状充填剤の組成物の総重量に基づいて0.1〜85重量%を含んでもよい。
本発明の歯科用組成物は、保存剤、顔料、フリーラジカルスカベンジャー、反応性及び非反応性希釈剤、充填剤の反応性を高めるためのカップリング剤、レオロジー調整剤、及び界面活性剤をさらに含んでもよい。
好適な保存剤は、還元剤(ビタミンCなど)、無機硫化物、及び多硫化物等から選択されてもよい。
請求項1で定義される式(I)の酸性重合性化合物は、歯科用組成物、好ましくは上述のような本発明による歯科用組成物の調製のために使用されてもよい。
ここで、本発明を以下の実施例によりさらに例示する。
式(I)によるN−アクリロイルホスホグリコシドの合成
(式中、Z=酸素原子、R=アクリロイル及びR=H)
一般的手順:
単糖類又は二糖類及び触媒量のルイス酸(一般的に5〜10mol%の量の、BFOEt又はTMSOTfなど)を過剰のアジドアルコール(8〜16当量)に加え、80℃で12〜24時間撹拌した。結果として得られたアジドグリコシドをカラムクロマトグラフィーで精製し、エタノール中に溶解した。触媒量のパラジウム炭素(10重量%パラジウム炭素、5重量%)を加え、結果として得られた反応混合物を水素雰囲気下で、12〜48時間撹拌した。ろ過後、等モル量の有機塩基(トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンなど)を加え、混合物を5℃まで冷却した。その後、等モル量のアクリロイルクロリドを滴下して加え、混合物を1〜2時間撹拌した。
水系後処理によってアクリロイルグリコシドを得て、これをTHF中に溶解し、ヒドロキシル基あたり1当量の有機塩基(トリエチルアミン又はジイソプロピルアミンなど)及び1当量のオキシ塩化リン(POCl)を加えることによってリン酸化した。本混合物を一晩撹拌し、ブラインで洗浄し、乾燥・蒸発して、所望する式(I)によるN−アクリロイルホスホグリコシドを得た。
式(I)によるN−アリル−アクリロイルホスホグリコシドの合成
(式中、Z=酸素原子、R=アクリロイル及びR=アリル)
一般的手順:
ブロモアルコール(ヘキサノールブロミドなど)を、5〜10当量のアリルアミン中、1.2当量の炭酸カリウムなどの塩基存在下で16〜24時間撹拌した。ろ過後、過剰の炭酸カリウム、アリルアミンを除去した。
単糖類又は二糖類及び触媒量のルイス酸(一般的に5〜10mol%の量の、BFOEt又はTMSOTfなど)を過剰の対応するアリルアミノアルコール(8〜16当量)に加え、80℃で12〜24時間撹拌した。結果として得られたアリルアミノグリコシドをカラムクロマトグラフィーで精製し、エタノール中に溶解し、等モル量の有機塩基(トリエチルアミン又はジイソプロピルエチルアミンなど)を加え、結果として得られた混合物を5℃まで冷却した。その後、等モル量のアクリロイルクロリドを滴下して加え、混合物を1〜2時間撹拌した。
水系後処理によってアリルアクリロイルグリコシドを得て、これをTHF中に溶解し、ヒドロキシル基あたり1当量の有機塩基(トリエチルアミン又はジイソプロピルアミンなど)及び1当量のオキシ塩化リン(POCl)を加えることによってリン酸化した。本混合物を一晩撹拌し、ブラインで洗浄し、乾燥・蒸発して、所望する式(I)によるN−アリル−アクリロイルホスホグリコシドを得た。
アミノグリコシド糖アクリレートの合成:

N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及び触媒量のルイス酸(LA、一般的に5〜10mol%の量の、BF3OEt2又はTMSOTfなど)を過剰のアリルアミン(8〜16当量)に加え、80℃で12〜24時間撹拌した。過剰のアリルアミンを蒸発させて、結果として得られたアリルアミノグリコシドを単離し、さらに精製することなく使用した。その結果として、グリコシドをDMF/トリエチルアミン(2:1混合物)に溶解し、1当量のアクリロイルクロリドを−20℃で滴下して加えた。混合物を−20℃で14時間撹拌した。その後、揮発性成分を除去し、残渣を室温でピリジン(15当量)中に溶解し、無水酢酸(15当量)を加えた。5時間撹拌した後、過剰のピリジン及び無水酢酸を蒸発させ、粗生成物をDCMに溶解し、2N HCl、飽和炭酸水素ナトリウム溶液及びブラインで2回洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、DCMを除去し、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、その後生成物を30%の全体収率で単離した。

Claims (4)

  1. (i)次式(Ia)酸性重合性化合物であって、

    式中、
    Xは同じであっても又は異なっていてもよくスルフェート基、フォスフェート基、スルホネート基、ホスホネート基及びカルボン酸基から選択される酸性基を独立して表し、
    Yは、
    前記Xを表すか、又は
    水素原子、メチル基、ヒドロキシル基、アミノ基、重合性基、チオール基若しくはアミド基を表し
    Zは酸素原子示し
    Lは二価の 1−20 脂肪族炭化水素基であるリンカー基を表し、
    は、水素原子又はアリル基を表し、
    及びRは、水素原子、直鎖C1〜6アルキル基、又は分岐若しくは環状C3〜6アルキル基を独立して表す、
    酸性重合性化合物と、
    (ii)開始剤系と、を含む歯科用組成物。
  2. フォスフェート基である、請求項1記載の歯科用組成物。
  3. 請求項1で定義される式(I)酸性重合性化合物の歯科用組成物の調製のための使用。
  4. 前記歯科用組成物が、請求項1又は2で定義される、請求項に記載の使用。
JP2018559986A 2016-05-20 2017-05-19 歯科用組成物 Active JP6826614B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP16170584.3A EP3246002A1 (en) 2016-05-20 2016-05-20 Dental composition
EP16170584.3 2016-05-20
PCT/EP2017/062158 WO2017198843A1 (en) 2016-05-20 2017-05-19 Dental composition

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2019518743A JP2019518743A (ja) 2019-07-04
JP2019518743A5 JP2019518743A5 (ja) 2019-08-29
JP6826614B2 true JP6826614B2 (ja) 2021-02-03

Family

ID=56026752

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018559986A Active JP6826614B2 (ja) 2016-05-20 2017-05-19 歯科用組成物

Country Status (6)

Country Link
US (1) US11433004B2 (ja)
EP (2) EP3246002A1 (ja)
JP (1) JP6826614B2 (ja)
CN (1) CN109310582A (ja)
CA (1) CA3023524C (ja)
WO (1) WO2017198843A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3246002A1 (en) * 2016-05-20 2017-11-22 DENTSPLY DETREY GmbH Dental composition

Family Cites Families (27)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE2909994A1 (de) 1979-03-14 1980-10-02 Basf Ag Acylphosphinoxidverbindungen, ihre herstellung und verwendung
DE2909992A1 (de) 1979-03-14 1980-10-02 Basf Ag Photopolymerisierbare aufzeichnungsmassen, insbesondere zur herstellung von druckplatten und reliefformen
DE2830927A1 (de) 1978-07-14 1980-01-31 Basf Ag Acylphosphinoxidverbindungen und ihre verwendung
GR852068B (ja) 1984-08-30 1985-12-24 Johnson & Johnson Dental Prod
CA1323949C (en) 1987-04-02 1993-11-02 Michael C. Palazzotto Ternary photoinitiator system for addition polymerization
DE4011084A1 (de) * 1990-04-05 1991-10-10 Boehringer Mannheim Gmbh Saccharid-modifizierte, wasserloesliche proteine
US5154762A (en) 1991-05-31 1992-10-13 Minnesota Mining And Manufacturing Company Universal water-based medical and dental cement
US5501727A (en) 1994-02-28 1996-03-26 Minnesota Mining And Manufacturing Company Color stability of dental compositions containing metal complexed ascorbic acid
US5891862A (en) * 1996-03-15 1999-04-06 Geltex Pharmaceuticals, Inc. Polyvalent polymers for the treatment of rotavirus infection
JP4342035B2 (ja) 1998-05-28 2009-10-14 サンメディカル株式会社 歯科接着性組成物
JP4280343B2 (ja) 1998-12-17 2009-06-17 サンメディカル株式会社 歯科用接着剤のキット
DE10204234A1 (de) * 2002-02-02 2003-08-07 Wella Ag Unter Verwenung von Kohlenhydratmonomertensiden hergestellte Polymerlatices, Verfahren zu ihrer Herstellung und ihre Verwendung
ATE357450T1 (de) 2003-12-23 2007-04-15 Dentsply Detrey Gmbh In einem selbstätzendes, selbstgrundierendes dentales haftmittel
US20090022862A1 (en) * 2004-08-03 2009-01-22 Children's Medical Center Corporation Method to limit acrylamide in heated foods
FR2902102B1 (fr) * 2006-06-07 2011-11-18 Univ Paris 13 Procede de greffage de polymeres bioactifs sur des materiaux prothetiques
CN101516319B (zh) * 2006-09-13 2015-11-25 3M创新有限公司 包含有机凝胶因子的牙科用组合物、产品及方法
CN101663336B (zh) 2007-03-20 2012-10-10 可乐丽则武齿科株式会社 聚合性单体、聚合性组合物及牙科用材料
JP5207859B2 (ja) 2007-07-19 2013-06-12 クラレノリタケデンタル株式会社 重合性組成物及び歯科用材料
EP2178490B1 (en) * 2007-07-25 2019-09-04 3M Innovative Properties Company Film forming dental compositions
JP5260093B2 (ja) 2008-03-10 2013-08-14 クラレノリタケデンタル株式会社 重合性単量体、重合性組成物及び歯科用材料
RU2605097C2 (ru) * 2010-09-15 2016-12-20 3М Инновейтив Пропертиз Компани Соединения замещенных сахаридов и стоматологические композиции
EP2604247A1 (en) 2011-12-15 2013-06-19 Dentsply DeTrey GmbH Composite filler particles and process for the preparation thereof
EP2705827B1 (en) 2012-09-11 2017-12-27 DENTSPLY DETREY GmbH Dental composition
EP2727576A1 (en) 2012-11-05 2014-05-07 DENTSPLY DETREY GmbH Dental composition
WO2014156138A1 (ja) * 2013-03-26 2014-10-02 クラレノリタケデンタル株式会社 歯科用硬化性組成物
CN105109340A (zh) * 2015-08-31 2015-12-02 无锡伊佩克科技有限公司 一种基于开关电源控制器的车载酒精检测控制系统
EP3246002A1 (en) * 2016-05-20 2017-11-22 DENTSPLY DETREY GmbH Dental composition

Also Published As

Publication number Publication date
WO2017198843A1 (en) 2017-11-23
CA3023524A1 (en) 2017-11-23
US20200323743A1 (en) 2020-10-15
CN109310582A (zh) 2019-02-05
CA3023524C (en) 2024-01-16
EP3246002A1 (en) 2017-11-22
US11433004B2 (en) 2022-09-06
JP2019518743A (ja) 2019-07-04
EP3458014A1 (en) 2019-03-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3277248B1 (en) Dental composition
AU2017249668B2 (en) Dental composition
EP3478244B1 (en) Dental composition comprising a dental filler containing a structural filler and silanated glass flakes
EP2616476A2 (en) Substituted saccharide compounds and dental compositions
US20240180791A1 (en) Dental composition
EP3246001B1 (en) Dental composition
JP6826614B2 (ja) 歯科用組成物
US11116702B2 (en) Dental composition
EP3338757A1 (en) Direct dental filling composition
EP3470048B1 (en) Photocurable dental composition
EP3761942B1 (en) Dental composition
EP3075372A1 (en) Dental composition

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190716

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190716

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200609

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20200805

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201126

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201222

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210115

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6826614

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250