第1動力伝達経路および第2動力伝達経路は、エンジン等の駆動力源に連結された入力軸と、駆動輪に連結された出力軸との間に、互いに並列に設けられる。第1動力伝達経路および第2動力伝達経路の他に、更に別の動力伝達経路が並列に設けられても良い。第1動力伝達経路には、前後進切換装置および2方向クラッチが直列に設けられる。前後進切換装置の前進用クラッチおよび後進用ブレーキとしては、油圧等による摩擦係合式のものが好適に用いられるが噛合い式のクラッチやブレーキを採用することもできる。2方向クラッチは、前後進切換装置の入力側に配置しても良いし、出力側に配置しても良いが、第2動力伝達経路の変速比γ2が1よりも小さい増速変速の場合、出力側に配置すれば高速走行時に出力軸からの高回転入力が遮断されるため、前後進切換装置(遊星歯車装置)が比較的低回転に保持されて望ましい。第1動力伝達経路にはまた、例えばギヤ変速機構等の歯車伝達機構が設けられ、その歯車伝達機構に対して直列に前後進切換装置および2方向クラッチが設けられる。歯車伝達機構の中間位置に2方向クラッチを配置することも可能である。第1動力伝達経路に、変速比を変更可能な変速機を設けることも可能である。
前後進切換装置に用いられる遊星歯車装置は、シングルピニオン型でもダブルピニオン型でも良く、シングルピニオン型の場合はサンギヤおよびリングギヤが入出力回転要素として用いられ、キャリアが後進用ブレーキによって回転停止させられるように構成される。ダブルピニオン型の場合はサンギヤおよびキャリアが入出力回転要素として用いられ、リングギヤが後進用ブレーキによって回転停止させられるように構成される。前進用クラッチは、シングルピニオン型かダブルピニオン型かに拘らず、サンギヤ、リングギヤ、およびキャリアの中の何れか2つの回転要素を連結するように設けられる。
第2動力伝達経路には、ベルト式無段変速機等の無段変速機や遊星歯車式、平行軸式等の有段の変速機が設けられ、その変速機に対して直列に第2経路断接装置が設けられる。第2経路断接装置は、変速機の入力側に配置しても良いし、出力側に配置しても良い。第2経路断接装置としては、油圧等による摩擦係合式のクラッチやブレーキが好適に用いられるが、噛合い式のクラッチ等を採用することもできる。
第1動力伝達経路の変速比γ1は、例えば第2動力伝達経路の変速比γ2よりも大きく、車両発進時や高負荷走行時に第1動力伝達経路が用いられ、車速の上昇や要求駆動力の減少などに伴って第2動力伝達経路に切り換えられる。変速比γ2は変速機によって変更可能であり、その全域で変速比γ1より小さくても良いが、少なくとも変速比γ1よりも小さい変速比領域(高速ギヤ領域)を備えていれば良く、変速比γ1よりも大きい変速比(低速ギヤ側)まで変速可能であっても良い。第2動力伝達経路の変速機は、例えば変速比γ2が1よりも小さい増速変速領域を含んで変速できるように構成されるが、車両によっては変速比γ2が1より大きい減速変速領域だけで変速するものでも良い。
2方向クラッチは、例えば内輪、外輪、およびそれ等の間でリテーナによって保持された複数のローラを備えているとともに、内輪の外周面または外輪の内周面が多角形状とされて隙間寸法が増減する複数のくさび空間が設けられ、そのくさび空間内におけるローラの保持位置に応じて正逆2つの噛合い状態を取り得るように構成される。リテーナによるローラの保持位置(中心線まわりの位相)は、例えば電磁ソレノイドや流体圧シリンダ等のアクチュエータによって電気制御で切り換えられるが、摩擦により回転方向に応じて機械的に噛合い状態が切り換えられるものでも良い。また、スプリング等の付勢部材により、常には動力伝達を遮断する中立状態に位置決めされるように構成することもできる。上記内輪および外輪は、何れか一方が入力側で他方が出力側とされ、任意に定めることができる。このようにローラがくさび作用で回転不能にロックされて動力伝達する2方向クラッチも、噛合い式伝達装置の一態様である。なお、爪部材を出入りさせるなどして正逆2つの噛合い状態を取り得るラチェット式の2方向クラッチや、その他の2方向クラッチを用いることもできる。
経路切換制御部は、例えば第2経路伝達状態の時に前進用クラッチを係合状態に維持して遊星歯車装置を一体回転させるように構成されるが、第2経路断接装置を接続して第2経路伝達状態に切り換えた後に任意のタイミングで前進用クラッチを解放し、遊星歯車装置を差動回転可能としても良い。その場合でも、2方向クラッチが空転させられることにより、入力軸および出力軸の回転速度に応じて遊星歯車装置が強制的に差動回転させられることはないため、耐久性の向上効果が得られる。
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例である車両用動力伝達装置10の構成を説明する骨子図で、互いに平行な複数の軸が一平面内に位置するように展開して示した図である。この車両用動力伝達装置10は、複数の軸が車両幅方向に沿って配置される横置き型のトランスアクスルで、本実施例ではFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に搭載される。走行用の駆動力源である内燃機関等のエンジン12の出力は、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から自動変速装置16を介して差動歯車装置18に伝達され、左右の前輪(駆動輪)20L、20Rへ分配される。車両用動力伝達装置10は、車両幅方向と略平行な第1軸線S1〜第5軸線S5を備えており、エンジン12およびトルクコンバータ14は第1軸線S1上に配設されており、差動歯車装置18は第5軸線S5上に配設されている。トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、および自動変速装置16の入力軸22に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うとともに、ロックアップクラッチ15を介して直結されるようになっている。ポンプ翼車14pには機械式オイルポンプ74が設けられており、エンジン12により回転駆動されて油圧を出力することにより、破線で示す油圧制御回路70の油圧源として用いられる。
自動変速装置16は、トルクコンバータ14の出力回転部材であるタービン軸と一体的に設けられた入力軸22、入力軸22に連結されたベルト式無段変速機24、同じく入力軸22に連結されてベルト式無段変速機24と並列に設けられた前後進切換装置26およびギヤ変速機構28、ベルト式無段変速機24およびギヤ変速機構28の共通の出力回転部材である出力軸30、減速歯車装置32を備えており、その減速歯車装置32の小径ギヤ34が差動歯車装置18のリングギヤ36と噛み合わされている。ギヤ変速機構28は歯車伝達機構に相当する。入力軸22、前後進切換装置26、およびベルト式無段変速機24のプライマリプーリ60は第1軸線S1上に配設されており、歯車式変速機構28は第1軸線S1と第3軸線S3とに跨がって配設されており、ベルト式無段変速機24のセカンダリプーリ64および出力軸30は第2軸線S2上に配設されており、減速歯車装置32は第2軸線S2と第4軸線S4とに跨がって配設されている。このように構成された自動変速装置16においては、エンジン12の出力が、トルクコンバータ14からベルト式無段変速機24を介して出力軸30へ伝達され、或いはベルト式無段変速機24を介することなく前後進切換装置26およびギヤ変速機構28を介して出力軸30へ伝達され、更に減速歯車装置32および差動歯車装置18を経て左右の前輪20L、20Rへ伝達される。
すなわち、本実施例の自動変速装置16は、エンジン12の出力を入力軸22から前後進切換装置26およびギヤ変速機構28を介して出力軸30へ伝達する第1動力伝達経路TP1と、エンジン12の出力を入力軸22からベルト式無段変速機24を介して出力軸30へ伝達する第2動力伝達経路TP2と、を備えているのであり、車両の走行状態に応じてそれ等の動力伝達経路が切り換えられる。このため、自動変速装置16は、上記第1動力伝達経路TP1における動力伝達を断接(接続・遮断)する第1経路断接装置として前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1を備えており、第2動力伝達経路TP2における動力伝達を断接する第2経路断接装置として第2経路断接クラッチC2を備えている。第1動力伝達経路TP1には更に、前後進切換装置26およびギヤ変速機構28に対して直列に、具体的には前後進切換装置26よりも下流側(出力側)に、噛合い式伝達装置として2方向クラッチ(TWC)50が設けられている。
前後進切換装置26は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置27を主体として構成されており、キャリア27cが入力回転要素として用いられて入力軸22に一体的に連結されている。また、サンギヤ27sが出力回転要素として用いられて、入力軸22に対して同軸に相対回転可能に配設された小径ギヤ42に連結されている。リングギヤ27rは、後進用ブレーキB1を介して選択的に回転停止させられるとともに、キャリア27cおよびサンギヤ27sは前進用クラッチC1を介して選択的に連結されるようになっている。そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されると、遊星歯車装置27が一体回転させられる直結状態となり、入力軸22と一体的に小径ギヤ42が回転させられる前進用動力伝達状態が成立させられる。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されると、小径ギヤ42は入力軸22に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進用動力伝達状態が成立させられる。前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に解放されると、動力伝達を遮断するニュートラル状態となる。上記前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、何れも複数の摩擦材が油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の摩擦係合装置で、その油圧シリンダに供給されるC1係合油圧Pc1、B1係合油圧Pb1がそれぞれ油圧作動制御部72によって調圧制御されることにより、それ等の係合力すなわち伝達トルク容量が連続的に調整される。
ギヤ変速機構28は、小径ギヤ42と、カウンタ軸44に相対回転不能に設けられて小径ギヤ42と噛み合わされた大径ギヤ46と、カウンタ軸44に対して同軸に相対回転可能に設けられた小径ギヤ48とを備えている。そして、カウンタ軸44と小径ギヤ48との間に、2方向クラッチ50が設けられており、それ等の間の動力伝達が断接される。2方向クラッチ50は、例えば図2に示すように、中心線Oと同心に設けられた内輪100、外輪102、およびそれ等の間でリテーナ104によって保持された複数(実施例では8つ)のローラ106を備えている。内輪100の外周面は正多角形状(実施例では8角形)とされ、外輪102の内周面との間の隙間寸法が増減する複数のくさび空間108が設けられており、そのくさび空間108内におけるローラ106の保持位置に応じて正逆2つの噛合い状態を取り得るように構成されている。リテーナ104によるローラ106の保持位置、すなわち内輪100に対する中心線Oまわりの位相は、TWC切換装置110により電気制御で変更されるようになっており、(a) の正噛合い状態、(b) の中立状態、および(c) の逆噛合い状態の何れかに位置決めされる。
(a) の正噛合い状態は、入力軸22から出力軸30へ動力伝達する方向を駆動方向として、前進走行時の回転方向(図2では右回り方向)である正回転の駆動可能で且つ被駆動不能、逆回転の駆動不能で且つ被駆動可能な状態である。図2において実線で示したローラ位置は、内輪100が入力側に連結され、外輪102が出力側に連結された場合で、ローラ106はくさび空間108内の左回り方向の端部に位置決めされており、内輪100が右回り(正回転方向)に回転駆動されると、ローラ106はくさび作用によってロックされ、外輪102が内輪100と一体的に右回りに回転駆動される。これにより、2方向クラッチ50を介してカウンタ軸44から小径ギヤ48に動力伝達可能となり、エンジン12による前進走行が可能となる。外輪102の右回りの回転速度が内輪100よりも速い場合は、ローラ106の回転により外輪102は空転させられ、内輪100を被駆動回転させることは不能である。一方、外輪102が左回り(逆回転方向)に内輪100よりも速い速度で回転させられると、ローラ106はくさび作用によってロックされ、内輪100が外輪102と一体的に左回りに被駆動回転させられる。これにより、2方向クラッチ50を介して小径ギヤ48からカウンタ軸44に動力伝達可能となり、後進走行時に入力側が被駆動回転させられてエンジンブレーキが効く状態になる。内輪100の左回りの回転速度が外輪102よりも速い場合は、ローラ106の回転により内輪100は空転させられ、外輪102を回転駆動することは不能である。なお、破線で示したローラ位置は、外輪102が入力側に連結され、内輪100が出力側に連結された場合で、ローラ106がくさび空間108内の右回り方向の端部に位置決めされることにより、上記と同様の機能が得られる。
(b) の中立状態は、ローラ106がくさび空間108の周方向の中間部に位置決めされている場合で、この中間部における内輪100と外輪102との間の隙間寸法はローラ106の直径よりも大きい。このため、正回転および逆回転の駆動、被駆動の何れの場合もローラ106は空転させられ、動力伝達が不能となる。
(c) の逆噛合い状態は、(a) の正噛合い状態と反対の状態である。すなわち、入力軸22から出力軸30へ動力伝達する方向を駆動方向として、後進走行時の回転方向(図2では左回り方向)である逆回転の駆動可能で且つ被駆動不能、正回転の駆動不能で且つ被駆動可能な状態である。具体的には、内輪100が入力側に連結され、外輪102が出力側に連結された場合、ローラ106は実線で示すようにくさび空間108内の右回り方向の端部に位置決めされており、内輪100が左回り(逆回転方向)に回転駆動されると、ローラ106はくさび作用によってロックされ、外輪102が内輪100と一体的に左回りに回転駆動される。これにより、2方向クラッチ50を介してカウンタ軸44から小径ギヤ48に動力伝達可能となり、エンジン12による後進走行が可能となる。外輪102の左回りの回転速度が内輪100よりも速い場合は、ローラ106の回転により外輪102は空転させられ、内輪100を被駆動回転させることは不能である。一方、外輪102が右回り(正回転方向)に内輪100よりも速い速度で回転させられると、ローラ106はくさび作用によってロックされ、内輪100が外輪102と一体的に右回りに被駆動回転させられる。これにより、2方向クラッチ50を介して小径ギヤ48からカウンタ軸44に動力伝達可能となり、前進走行時に入力側が被駆動回転させられてエンジンブレーキが効く状態になる。内輪100の右回りの回転速度が外輪102よりも速い場合は、ローラ106の回転により内輪100は空転させられ、外輪102を回転駆動することは不能である。なお、破線で示したローラ位置は、外輪102が入力側に連結され、内輪100が出力側に連結された場合で、ローラ106がくさび空間108内の左回り方向の端部に位置決めされることにより、上記と同様の機能が得られる。
TWC切換装置110は、図1に示すTWC切換用アクチュエータ52を備えており、内輪100に対してリテーナ104を中心線Oまわりに回転させることにより、ローラ位置を(b) の中立状態の位置から(a) の正噛合い状態の位置、および(c) の逆噛合い状態の位置へ移動させる。TWC切換用アクチュエータ52は、例えば一対の電磁ソレノイドを備えており、スプリング等の付勢部材によって(b) の中立状態となるように位置決めされているリテーナ104を、電磁ソレノイドの電磁力(吸引力)によって中心線Oまわりに正逆両方向へ変位させることにより、(a) の正噛合い状態、または(c) の逆噛合い状態に電気制御で切り換えることができる。電磁ソレノイドの代わりに油圧シリンダや、電動モータによって回転駆動される送りねじ機構等を用いてリテーナ104を変位させることも可能である。
前記小径ギヤ48は、出力軸30に設けられた大径ギヤ58と噛み合わされており、前進用クラッチC1が係合させられるとともに2方向クラッチ50が正噛合い状態とされることにより、エンジン12の出力が入力軸22から前後進切換装置26、ギヤ変速機構28、小径ギヤ48、および大径ギヤ58を順次経由して出力軸30に伝達されるようになり、第1動力伝達経路TP1により正回転のまま動力伝達する前進走行用の第1経路伝達状態が成立させられる。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに2方向クラッチ50が逆噛合い状態とされることにより、第1動力伝達経路TP1により回転方向を逆転させて動力伝達する後進走行用の第1経路伝達状態が成立させられる。なお、小径ギヤ48と大径ギヤ58との間でも変速(減速)が行なわれ、それ等を含めてギヤ変速機構28が構成されていると見做すこともできる。
ベルト式無段変速機24は、入力軸22に設けられた有効径が可変のプライマリプーリ60と、出力軸30と同軸のプーリ回転軸62に設けられた有効径が可変のセカンダリプーリ64と、それ等の一対の可変プーリ60、64の間に巻き掛けられた伝動ベルト66とを備えており、一対の可変プーリ60、64と伝動ベルト66との間の摩擦を介して動力伝達が行われる。一対の可変プーリ60、64は、それぞれV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとして油圧シリンダ60c、64cを備えており、例えば油圧シリンダ60cへ供給されるプライマリ油圧Ppriが油圧制御回路70の油圧作動制御部72によって制御されることにより、両可変プーリ60、64のV溝幅が変化して伝動ベルト66の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ2が連続的に変化させられる。ベルト式無段変速機24は、変速比γ2が1よりも小さい増速変速領域を含んで変速できるように構成されている。また、油圧シリンダ64cへ供給されるセカンダリ油圧Psecが油圧作動制御部72によって調圧制御されることにより、伝動ベルト66が滑りを生じないようにベルト挟圧力が調整される。
ここで、ギヤ変速機構28のギヤ比等によって定まる前記第1動力伝達経路TP1の変速比γ1は、第2動力伝達経路TP2の変速比(ベルト式無段変速機24の変速比と同じ)γ2の最大値γ2maxよりも大きく、例えば車両発進時や高負荷走行時に第1動力伝達経路TP1が用いられ、車速Vの上昇や要求駆動力の減少などに伴って第2動力伝達経路TP2に切り換えられる。但し、第2動力伝達経路TP2の変速比γ2は、変速比γ1よりも小さい変速領域まで変速可能であれば、最大変速比γ2maxが変速比γ1以上であっても良い。変速比γ1、γ2は、出力軸30の回転速度(出力回転速度)Noutに対するタービン回転速度Ntの比(Nt/Nout)である。タービン回転速度Ntは、入力軸22の回転速度(入力回転速度)Ninと同じである。
出力軸30は、プーリ回転軸62に対して同軸に相対回転可能に配設されており、その出力軸30とセカンダリプーリ64との間に設けられた前記第2経路断接クラッチC2により、それ等の出力軸30とセカンダリプーリ64との間の動力伝達が断接される。この第2経路断接クラッチC2が係合させられると、エンジン12の出力が入力軸22からベルト式無段変速機24を経由して出力軸30に伝達されるようになり、第2動力伝達経路TP2により動力伝達する第2経路伝達状態が成立させられる。ベルト式無段変速機24の出力側に設けられた第2経路断接クラッチC2は、複数の摩擦材が油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の摩擦係合装置であり、その油圧シリンダに供給されるC2係合油圧Pc2が油圧作動制御部72によって調圧制御されることにより、その係合力すなわち伝達トルク容量が連続的に調整される。
油圧作動制御部72は、油路を切り換える電磁式切換弁や油圧を制御する電磁式油圧制御弁等が設けられたバルブボデーなどで、電子制御装置80によってそれ等の切換弁や油圧制御弁が電気的に制御される。これにより、プライマリ油圧Ppri、セカンダリ油圧Psec、C1係合油圧Pc1、C2係合油圧Pc2、B1係合油圧Pb1等が調圧制御される。油圧制御回路70には、前記機械式オイルポンプ74の他に必要に応じて電動式オイルポンプが設けられる。また、TWC切換用アクチュエータ52が電子制御装置80によって電気的に制御されることにより、2方向クラッチ50が中立状態から正噛合い状態および逆噛合い状態に切り換えられる。
このような車両用動力伝達装置10は、ベルト式無段変速機24の変速制御や、第1動力伝達経路TP1および第2動力伝達経路TP2の切換制御などを行なうコントローラとして、電子制御装置80を備えている。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどを有する所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うもので、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用等に分けて複数の電子制御装置を用いて構成される。電子制御装置80には、シフトレバー90の操作位置(シフトポジション)Pshを表す信号がシフトポジションセンサ92から供給される他、エンジン回転速度Ne、入力回転速度であるタービン回転速度Nt、車速Vに対応する出力回転速度Nout、アクセルペダルの操作量(アクセル操作量)Accを表す信号など、各種の制御に必要な種々の情報が供給されるようになっている。シフトレバー90は、例えば前進走行用のD位置、後進走行用のR位置、動力伝達を遮断するN位置等の操作位置Pshを備えており、運転者によって選択操作される。
電子制御装置80は、駆動力源であるエンジン12の出力制御も行なうもので、エンジン制御部82、無段変速制御部84、前後進切換制御部86、および経路切換制御部88等を機能的に備えている。エンジン制御部82は、例えばアクセル操作量Acc等の要求駆動力に基づいてエンジントルク等のエンジン12の運転状態を制御する。無段変速制御部84は、例えば出力回転速度Noutおよびアクセル操作量Acc等に基づいて予め定められたマップから目標回転速度を算出し、入力回転速度Nin(Nt)がその目標回転速度となるようにベルト式無段変速機24の変速制御を行なう。
前後進切換制御部86および経路切換制御部88は、例えば図3のフローチャートのステップF1〜F10(以下、単にF1〜F10という)に従って信号処理を実行する。F1〜F3、およびF8〜F10は前後進切換制御部86に相当し、F4〜F7は経路切換制御部88に相当する。
図3のF1では、前進走行か否かをシフトレバー90の操作位置Psh等により判断し、前進走行の場合はF2以下を実行する。F2では、2方向クラッチ50を正噛合い状態とするようにTWC切換用アクチュエータ52を制御し、次のF3では前後進切換装置26の前進用クラッチC1を係合させるように油圧作動制御部72を制御する。このように2方向クラッチ50が正噛合い状態とされ且つ前進用クラッチC1が係合させられると、第1動力伝達経路TP1により動力伝達する前進走行用の第1経路伝達状態が成立させられ、エンジン12の出力が入力軸22から第1動力伝達経路TP1を経て出力軸30へ伝達され、更に減速歯車装置32および差動歯車装置18を経て左右の前輪20L、20Rに伝達されることにより、車両が前進走行させられる。この前進走行時には、アクセルOFFの減速走行時に2方向クラッチ50を逆噛合い状態に切り換えることにより、2方向クラッチ50が正回転の被駆動状態になってエンジンブレーキを効かせることができる。
F4では、第1動力伝達経路TP1から第2動力伝達経路TP2に切り換える1→2経路切換条件を満足するか否かを判断し、1→2経路切換条件を満足する場合は、F5〜F7を実行して第1動力伝達経路TP1により動力伝達する第1経路伝達状態から第2動力伝達経路TP2により動力伝達する第2経路伝達状態に切り換える。1→2経路切換条件は、例えば車速V(Nout)やアクセル操作量Acc等の運転状態をパラメータとして予め定められており、本実施例では車両発進時や高負荷走行時に第1動力伝達経路TP1が用いられ、車速Vの上昇や要求駆動力の減少などに伴って第2動力伝達経路TP2に切り換えられるように定められている。
1→2経路切換条件を満足した場合に実行するF5では、無段変速制御部84に対してベルト式無段変速機24の変速指令を出力し、ここでは第2動力伝達経路TP2の変速比γ2が最大変速比γ2maxになるように変速させる。次のF6では、第2経路断接クラッチC2を係合させるように油圧作動制御部72を制御する。第2動力伝達経路TP2の最大変速比γ2maxは第1動力伝達経路TP1の変速比γ1よりも小さいためアップ変速になり、出力回転速度Noutに対して相対的に入力回転速度Nin(=Nt)が低下させられるため、正噛合い状態の2方向クラッチ50は、出力側の外輪102が内輪100に対して空転させられるようになる。このため、前進用クラッチC1を係合させたまま、第2経路断接クラッチC2を係合させるだけで、第2動力伝達経路TP2により動力伝達する第2経路伝達状態に切り換えることができる。F7では、前進用クラッチC1を係合状態に維持し、第2動力伝達経路TP2により動力伝達する第2経路伝達時には、遊星歯車装置27の差動を阻止して比較的低回転速度の入力軸22と一体回転させられるようにする。但し、第2経路断接クラッチC2を係合させた後の適当なタイミングで前進用クラッチC1を解放するようにしても良い。また、2方向クラッチ50については、正噛合い状態に維持したままでも良いが、中立状態に切り換えることも可能である。
一方、前記F1の判断がNO(否定)の場合、すなわち前進走行でない場合はF8を実行する。F8では、後進走行か否かをシフトレバー90の操作位置Psh等により判断し、後進走行の場合はF9以下を実行し、後進走行でない場合はそのまま終了する。F9では、2方向クラッチ50を逆噛合い状態とするようにTWC切換用アクチュエータ52を制御し、次のF10では前後進切換装置26の後進用ブレーキB1を係合させるように油圧作動制御部72を制御する。このように2方向クラッチ50が逆噛合い状態とされ且つ後進用ブレーキB1が係合させられると、第1動力伝達経路TP1により回転方向を逆転させて動力伝達する後進走行用の第1経路伝達状態が成立させられ、エンジン12の出力が入力軸22から第1動力伝達経路TP1を経て出力軸30へ伝達され、更に減速歯車装置32および差動歯車装置18を経て左右の前輪20L、20Rに伝達されることにより、車両が後進走行させられる。この後進走行時には、アクセルOFFの減速走行時に2方向クラッチ50を正噛合い状態に切り換えることにより、2方向クラッチ50が逆回転の被駆動状態になってエンジンブレーキを効かせることができる。
このように本実施例の車両用動力伝達装置10においては、第1動力伝達経路TP1に前後進切換装置26と直列に設けられる噛合い式伝達装置として、前進走行時の回転方向である正回転の駆動可能で且つ被駆動不能な正噛合い状態、および後進走行時の回転方向である逆回転の駆動可能で且つ被駆動不能な逆噛合い状態の、2つの噛合い状態を取り得る2方向クラッチ50が用いられているため、従来の同期噛合いクラッチと同様に、前後進共に第1動力伝達経路TP1により入力軸22から出力軸30へ動力伝達して走行することが可能である。
一方、前進走行時に第1動力伝達経路TP1から第2動力伝達経路TP2へ切り換える経路切換においては、前進用クラッチC1が係合させられ且つ2方向クラッチ50が正噛合い状態とされた第1経路伝達状態において、第2経路断接クラッチC2を係合させるだけで、2方向クラッチ50を正噛合い状態のまま空転状態として第1経路伝達状態よりも変速比が小さい第2経路伝達状態に切り換えることができる。すなわち、一方向クラッチを用いた場合と同様の切換制御が可能となり、ショックを抑制しつつ容易に経路切換を行なうことができる。
また、第2経路伝達状態では、ベルト式無段変速機24の変速比γ2が小さい高速走行時においても、2方向クラッチ50が空転させられることにより、遊星歯車装置27の強制的な差動回転が防止されて耐久性が向上する。特に、本実施例では、第2経路伝達時に前進用クラッチC1を係合状態に維持し、遊星歯車装置27を比較的低回転速度の入力軸22と一体回転させるため、その遊星歯車装置27の差動回転が阻止されて耐久性が一層向上する。
また、2方向クラッチ50は、一般にシンクロ機構付きの同期噛合いクラッチに比べて構造が簡単で安価であり、耐久性にも優れていることから、車両用動力伝達装置10のコストを低減できる。
また、正逆2つの噛合い状態を電磁力で切り換えることができる電気制御式の2方向クラッチ50が用いられているため、従来のように油圧式の同期噛合いクラッチを用いる場合に比較して応答性が優れ、噛合い状態の切換制御を容易に高い応答性で行なうことができるとともに、油圧発生による効率(燃費など)の低下が抑制される。また、正逆2つの噛合い状態に保持できることから、正噛合い状態では逆回転の駆動不能で且つ被駆動可能となり、逆噛合い状態では正回転の駆動不能で且つ被駆動可能となるため、前進走行時および後進走行時共に、必要に応じて噛合い状態を切り換えることによりエンジンブレーキを効かせることができる。
また、2方向クラッチ50は、正逆2つの噛合い状態の他に、正回転および逆回転の駆動および被駆動を何れも不能とする中立状態に切り換えることができるため、動力伝達を完全に遮断することが可能であり、例えば急ブレーキ時等に動力伝達を速やかに遮断することができるなど、動力伝達状態の制御の幅が広くなる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図5〜図21は、図1の車両用動力伝達装置10に比較して前後進切換装置26、第2経路断接クラッチC2、および2方向クラッチ50の配設位置、すなわち第1軸線S1〜第3軸線S3に対する配設位置が異なる場合で、何れも図1に対応する骨子図である。図4は、図5〜図21の実施例における前後進切換装置26、第2経路断接クラッチC2、および2方向クラッチ50の第1軸線S1〜第3軸線S3に対する配設位置を、図1の実施例と比較してまとめて示した図である。
図5の車両用動力伝達装置200の自動変速装置202は、前記車両用動力伝達装置10に比較して、第3軸線S3上の小径ギヤ48がカウンタ軸44に直接連結され、2方向クラッチ50が第1軸線S1上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、前後進切換装置26の出力回転要素であるサンギヤ27sと小径ギヤ42との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。なお、前後進切換装置26の入力回転要素であるキャリア27cと入力軸22との間に2方向クラッチ50を設けることもできる。
図6の車両用動力伝達装置210の自動変速装置212は、前記車両用動力伝達装置10に比較して、第3軸線S3上の小径ギヤ48がカウンタ軸44に直接連結され、2方向クラッチ50が第2軸線S2上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、大径ギヤ58と出力軸30との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。なお、この実施例では、第2経路断接クラッチC2がプーリ回転軸62と出力軸30との間を断接するように設けられている。他の実施例でも、状況に応じてプーリ回転軸62と出力軸30との間に第2経路断接クラッチC2が設けられる。
図7の車両用動力伝達装置220の自動変速装置222は、前記車両用動力伝達装置10に比較して、第2軸線S2上の出力軸30がセカンダリプーリ64に直接連結され、第2経路断接クラッチC2が第1軸線S1上に配設されている点が相違する。入力軸22に対してCVT入力軸23が別個に設けられており、それ等の入力軸22とCVT入力軸23との間に第2経路断接クラッチC2が設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図8の車両用動力伝達装置230の自動変速装置232は、図7の車両用動力伝達装置220に比較して、第3軸線S3上の小径ギヤ48がカウンタ軸44に直接連結され、2方向クラッチ50が第1軸線S1上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、前後進切換装置26の出力回転要素であるサンギヤ27sと小径ギヤ42との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。なお、前後進切換装置26の入力回転要素であるキャリア27cと入力軸22との間に2方向クラッチ50を設けることもできる。
図9の車両用動力伝達装置240の自動変速装置242は、図7の車両用動力伝達装置220に比較して、第3軸線S3上の小径ギヤ48がカウンタ軸44に直接連結され、2方向クラッチ50が第2軸線S2上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、大径ギヤ58と出力軸30との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図10の車両用動力伝達装置250の自動変速装置252は、前記車両用動力伝達装置10に比較して、第1軸線S1上の小径ギヤ42が入力軸22に直接連結され、前後進切換装置26が第2軸線S2上に配設されている点が相違する。前後進切換装置26は、大径ギヤ58と出力軸30との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図11の車両用動力伝達装置260の自動変速装置262は、図10の車両用動力伝達装置250に比較して、第3軸線S3上の小径ギヤ48がカウンタ軸44に直接連結され、2方向クラッチ50が第1軸線S1上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、入力軸22と小径ギヤ42との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図12の車両用動力伝達装置270の自動変速装置272は、図10の車両用動力伝達装置250に比較して、第3軸線S3上の小径ギヤ48がカウンタ軸44に直接連結され、2方向クラッチ50が第2軸線S2上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、前後進切換装置26の出力回転要素であるサンギヤ27sと出力軸30との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。なお、前後進切換装置26の入力回転要素であるキャリア27cと大径ギヤ58との間に2方向クラッチ50を設けることもできる。
図13の車両用動力伝達装置280の自動変速装置282は、図10の車両用動力伝達装置250に比較して、第2軸線S2上の出力軸30がセカンダリプーリ64に直接連結され、第2経路断接クラッチC2が第1軸線S1上に配設されている点が相違する。入力軸22に対してCVT入力軸23が別個に設けられており、それ等の入力軸22とCVT入力軸23との間に第2経路断接クラッチC2が設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図14の車両用動力伝達装置290の自動変速装置292は、図13の車両用動力伝達装置280に比較して、第3軸線S3上の小径ギヤ48がカウンタ軸44に直接連結され、2方向クラッチ50が第1軸線S1上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、入力軸22と小径ギヤ42との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図15の車両用動力伝達装置300の自動変速装置302は、図13の車両用動力伝達装置280に比較して、第3軸線S3上の小径ギヤ48がカウンタ軸44に直接連結され、2方向クラッチ50が第2軸線S2上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、前後進切換装置26の出力回転要素であるサンギヤ27sと出力軸30との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。なお、前後進切換装置26の入力回転要素であるキャリア27cと大径ギヤ58との間に2方向クラッチ50を設けることもできる。
図16の車両用動力伝達装置310の自動変速装置312は、前記車両用動力伝達装置10に比較して、第1軸線S1上の小径ギヤ42が入力軸22に直接連結され、前後進切換装置26が第3軸線S3上に配設されている点が相違する。前後進切換装置26は、カウンタ軸44と2方向クラッチ50との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。なお、2方向クラッチ50と小径ギヤ48との間に前後進切換装置26を設けることもできる。
図17の車両用動力伝達装置320の自動変速装置322は、図16の車両用動力伝達装置310に比較して、第3軸線S3上の前後進切換装置26の出力回転要素であるサンギヤ27sが小径ギヤ48に直接連結され、2方向クラッチ50が第1軸線S1上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、入力軸22と小径ギヤ42との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図18の車両用動力伝達装置330の自動変速装置332は、図16の車両用動力伝達装置310に比較して、第3軸線S3上の前後進切換装置26の出力回転要素であるサンギヤ27sが小径ギヤ48に直接連結され、2方向クラッチ50が第2軸線S2上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、大径ギヤ58と出力軸30との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図19の車両用動力伝達装置340の自動変速装置342は、図16の車両用動力伝達装置310に比較して、第2軸線S2上の出力軸30がセカンダリプーリ64に直接連結され、第2経路断接クラッチC2が第1軸線S1上に配設されている点が相違する。入力軸22に対してCVT入力軸23が別個に設けられており、それ等の入力軸22とCVT入力軸23との間に第2経路断接クラッチC2が設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図20の車両用動力伝達装置350の自動変速装置352は、図19の車両用動力伝達装置340に比較して、第3軸線S3上の前後進切換装置26の出力回転要素であるサンギヤ27sが小径ギヤ48に直接連結され、2方向クラッチ50が第1軸線S1上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、入力軸22と小径ギヤ42との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図21の車両用動力伝達装置360の自動変速装置362は、図19の車両用動力伝達装置340に比較して、第3軸線S3上の前後進切換装置26の出力回転要素であるサンギヤ27sが小径ギヤ48に直接連結され、2方向クラッチ50が第2軸線S2上に配設されている点が相違する。2方向クラッチ50は、大径ギヤ58と出力軸30との間に設けられている。この場合も、実質的に前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図22は、前記図1に対応する骨子図で、この車両用動力伝達装置400の自動変速装置402は、前記車両用動力伝達装置10に比較して前後進切換装置26の入出力回転要素が相違する。すなわち、この実施例では遊星歯車装置27のサンギヤ27sが入力回転要素で入力軸22に連結され、キャリア27cが出力回転要素で小径ギヤ42に連結されている。この場合も、前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図23は、前記図1に対応する骨子図で、この車両用動力伝達装置410の自動変速装置412は、前記車両用動力伝達装置10に比較して、前後進切換装置414がシングルピニオン型の遊星歯車装置416を用いて構成されている点が相違する。すなわち、この前後進切換装置414は、遊星歯車装置416のサンギヤ416sが入力回転要素として用いられて入力軸22に連結され、リングギヤ416rが出力回転要素として用いられて小径ギヤ42に連結されている。また、サンギヤ416sおよびリングギヤ416rは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、キャリア416cは後進用ブレーキB1を介して選択的に回転停止させられるようになっている。そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が解放されると、遊星歯車装置416が一体回転させられる直結状態となり、入力軸22と一体的に小径ギヤ42が回転させられる前進用動力伝達状態が成立させられる。また、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が解放されると、小径ギヤ42が入力軸22に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進用動力伝達状態が成立させられる。このような車両用動力伝達装置410においても、第1動力伝達経路TP1に前後進切換装置414と直列に2方向クラッチ50が設けられることにより、前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図24は、前記図1に対応する骨子図で、この車両用動力伝達装置420の自動変速装置422は、上記車両用動力伝達装置410に比較して前後進切換装置414の入出力回転要素が相違する。すなわち、この実施例では遊星歯車装置416のリングギヤ416rが入力回転要素で入力軸22に連結され、サンギヤ416sが出力回転要素で小径ギヤ42に連結されている。この場合も、前後進切換装置414と直列に2方向クラッチ50が設けられることにより、前記車両用動力伝達装置10と同様の作用効果が得られる。
図25は、2方向クラッチの別の例を説明する断面図である。この2方向クラッチ120は、基本的な構造は前記2方向クラッチ50と同じであるが、リテーナ104を移動させるためのTWC切換機構122が相違する。すなわち、このTWC切換機構122は、内輪100の回転に伴ってリテーナ104が摩擦により機械的にくさび空間108内を移動させられ、内輪100が右回り方向(正回転方向)へ回転させられると(a) の正噛合い状態になり、内輪100が左回り方向(逆回転方向)へ回転させられると(b) の逆噛合い状態になる。すなわち、内輪100の回転方向に応じて噛合い状態が決まり、外輪102の回転に伴って内輪100が被駆動回転させられることはない。したがって、エンジンブレーキを効かせることはできないが、エンジン12の他にモータジェネレータ等を備えるハイブリッド車両など、エンジンブレーキが必要ない一定の条件下で前記2方向クラッチ50に代えてこの2方向クラッチ120を採用することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。