以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に、本発明のメカニカルロック機構の実施形態の一例を示す。この実施形態にかかるメカニカルロック機構は、相対的に移動可能な2部材間の動きを任意に拘束・解放するものであり、例えば可動節たるロッド1に対して拘束をかけるものであり、ロッド1に対して斜めに交わり且つ互いに逆向きに配置される一対の板ばね2と、これら一対の板ばね2のロッド1に対する交差角度を変更してロック状態とアンロック状態とを切り替えるスイッチ3と、少なくとも一対の板ばね2を保持し該板ばね2を介してロッド1の固定を図るサポート部材(本実施形態の場合、ロッドとの関係で相対的に固定側部材即ち固定節(フィックスブロック)とされている。)4とを少なくとも有する。
サポート部材4は、固定節となる機素あるいは可動節となる機素のいずれかに固定されるかあるいはそれらいずれか一方の機素を構成するものとされる。つまり、ロッド1は、図示しているように、サポート部材4によって必ずしも摺動自在に支持されるのではなく、サポート部材4とは別の図示していない独立した軸受け部材によって支持され、軸方向に出入り自在に支持されても良い。本実施形態の場合、サポート部材4は、ロッド1の移動方向に対して板ばね2を保持し、板ばね2を介してロッド1の固定を図るものものであり、独立した部品としてあるいは他の部品の一部として構成されるものであるが、その形状や構造は図示のものに特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜形状・構造の部材が採用される。例えば、本実施形態の場合には、板ばね2を収容する空間29と、該空間29を貫通するロッド1を支持するための軸受け部41が両端に設けられたブロックとして構成されている。軸受け部41は、一般には適宜軸受け隙間が得られるようにロッド1の外周面の輪郭形状と相似形の孔が設けられているが、これに特に限られるものではない。例えば、図11に示しているように、サポート部材4とは別部材の摺動軸受けが備えられてロッド1が摺動自在に支持されている場合などには、サポート部材4の軸受け部41は必要ないかあるいはロッド1に対する径方向の位置決めさえ果たせれば良いので、点在する突起や線条突起などによって局所的に支持する構造であっても良い。つまり、サポート部材4のロッド1を支持する部分の断面形状はロッド1の外周面の輪郭形状と相似形の孔形状に限られるものではない。
本実施形態の板ばね2は、図1に示すように、一枚の板ばね材を折り曲げて成る一部品であって、底辺2cとその両端のロッド1に対して斜めに交わり且つ互いに逆向きに配置される一対の斜辺2a,2bとの3辺を有し、ばね自体の材料の弾性で両斜辺2a,2bが互いに内向きに倒れるように付勢される構造と成されている。即ち、本実施形態の板ばね2は、外力を付与しない解放時には互いに内向きに傾いて(両斜辺2a,2bの頂点が互いに接近する方向に変形して)ロッド1に対して斜めに交わるように変形する略ム形(上底に相当する部分が無い等脚台形状)を成すものである。ここで、両斜辺2a,2bは台形の脚に相当するものである。
この板ばね2の両斜辺2a,2bには、ロッド1を貫通させるロッド貫通孔5が設けられている。ロッド貫通孔5は、例えば図2に示すように、ロッド1の外径よりも僅かに大きく、各斜辺2a,2bに対して直交する方向に穿孔されている。したがって、板ばね2の斜辺2a,2bが変形させられてロッド1に対して直交するように配置されたときに最大の隙間がロッド1との間に生じ、ロッド1に対して斜めに傾くに従いロッド1に対する隙間が漸次狭くなって行き、外力が付与されない板ばねの自然状態(ニュートラル状態)に復元する前にロッド貫通孔5の周縁の上と下でロッド1と接触してロッド1を締め付ける関係に設けられている。即ち、板ばね2はフリー状態では両斜辺2a,2bのロッド1に対する傾き(交差角度)を小さくしてロッド1とロッド貫通孔5の周縁とを接触させて摩擦力を発生させてロッド1を拘束すると共に、スイッチ3による切換で板ばね2の両斜辺2a,2bを立てて(交差角度を大きくして)ロッド1と直交(軸直角平面と平行)あるいはそれに近づく姿勢に変形させたときにロッド1と板ばね2のロッド貫通孔5との間に隙間を発生させる。換言すれば、ロッド貫通孔5とロッド1の外形との間の隙間、即ちロッド1に対するロッド貫通孔5の大きさは、より大きな拘束力並びに応答性を高める上で、板ばね2の両斜辺2a,2bがニュートラル状態に復元するよりも前に、好ましくは十分なばね弾性力を蓄えた状態でロッド1と接触するように、可能な限り狭く設定することが好ましい。
また、ロッド貫通孔5の孔の形状及び大きさはロッド1を貫通させることができ、尚且つ板ばね2が傾いた際にロッド1とロッド貫通孔5の周縁とが接触し得る形状であれば良く、特定の形状及び大きさに限られない。例えば、本実施形態では、横断面形状円形のロッド(丸ロッド)1に対して相似形状で僅かに大きな円形のロッド貫通孔5を組み合わせるようにしているが、ロッド貫通孔はロッド外輪郭形状と相似形状としなくてもロックさせることは可能であり、例えば円形断面のロッド1に対して一辺の長さがそのロッド直径より僅かに大きい正方形のロッド貫通孔(角孔)5を組み合わせる場合であっても、少なくとも2点で接触するので摩擦力が発生し、拘束することはできる。尚、板ばね2によるロッド1の拘束力は、どんな場合においても完全に拘束されている(ロッド1と板ばね2の相対的位置は動かない)ことは絶対的な条件ではなく、解放動作を行わなくてもある程度の負荷を加えると動いても良い場合もある(例えば、安全対策や手間をかけずに相対位置を変更できるようにしたい場合等)。そこで、拘束力は必要に応じて適宜設定されることが好ましい。
ここで、スイッチ3と一対の板ばね2(本実施形態では、一対の斜辺2a,2b)との関係は、スイッチ操作によって一対の板ばね2a,2bの間隔を拡げるとき(即ち板ばねを起こして傾きを立てるとき)あるいは狭めるとき(即ち傾きを寝せるとき)に、一対の板ばね2a,2bが等しく変形するようにして、ロッド1に対する一対の斜辺2a,2bの傾きを同じにすることが好ましい。そこで、楕円カム27を利用したスイッチ3を採用した本実施形態では、板ばね2の一対の斜辺2a,2bの間を結ぶ線上の中心に楕円カム27の回転中心が位置するように、スイッチ3に対する板ばね2の位置決めあるいは板ばね2に対するスイッチ3の位置決めが行われる。
例えば、板ばね2の底辺2cには、位置決めピン7を通過させるための孔6が設けられている。他方、サポート部材4の底壁4dにも、位置決めピン7を貫通させて固定するための孔8が設けられている。そこで、サポート部材4の内部に収容された板ばね2にロッド1を貫通させた状態で、板ばね2の底辺2cの孔6とサポート部材4の底壁4dの孔8とを同軸に配置し、サポート部材4の底壁4dの孔8から板ばね2の孔6に位置決めピン7を貫通させてサポート部材4の底壁4dに固定することで、ロッド1の摺動方向に関して板ばね2とサポート部材4とが位置固定されて、板ばね2がロッド1と共にサポート部材4内を移動することがないように設けられている。
板ばね2のサポート部材4に対する固定手法は、上述の位置決めピン7を使った手法に限られず、板ばね2自体に設けた突起を利用してサポート部材4に予め明けられた位置決め用の凹部あるいは孔39に嵌合させることで固定するようにしても良い。例えば図3に示すように、板ばね2の底辺2c並びに斜辺2a,2bの一部を切り欠いて下向きに突出する爪部37を切り起こし、この爪部37をサポート部材4に形成した孔39に対して嵌合させることで位置決めと固定を図るようにしても良い。この場合には、切り欠き38の設け方によっては板ばね2の応力集中を回避できる。また、図4に示すように、板ばね2の底辺2cの両端の斜辺2a,2bとの間の角40をサポート部材4の内部空間29の両側壁(ロッドが貫通する側壁)4a,4bに当てることで位置決めするようにしても良い。例えば、板ばね2の底辺2cの両端の角40の間の長さとサポート部材4の板ばね2を収容する空間29の板ばね2の底辺2cの幅(ロッド1の軸方向の長さ)とをほぼ同一に折り曲げることでサポート部材4内に板ばね2が固定されるようにしても良い。この場合には部品点数を少なくできるし、また板ばね2への加工も加えなくて済む。
また、上述の実施形態では、板ばね2は、部品点数の削減と組み立て性の向上を図るため1枚のばね材を折り曲げて底辺2cと両斜辺2a,2bとを連続的に形成した1つの部品として構成しているが、これに特に限られるものではなく、互いに独立する2枚の板ばね2をそれぞれロッド1を貫通させた状態で互いに逆方向に傾斜させてサポート部材4に固定するようにしても良い。例えば、図6に示すように、サポート部材4に設けられたスリット42あるいは溝に板ばね2をそれぞれ埋設したり、あるいは嵌め込んだりして、サポート部材4に固定しても良い。サポート部材4と板ばね2とは接着剤などで固着しても良いが、場合によっては単に差し込むだけで固定するようにしても良い。
上述の実施形態の板ばね2によれば、ニュートラル状態で斜辺2a,2bが傾いているので、ロッド1を貫通させる際には、斜辺2a,2bの傾きをロッド1に対してほぼ直交あるいはそれに近い状態にまで立てることでロッド1とロッド貫通孔5の周縁とが接触しないようにできる。したがって、スイッチ3の駆動で板ばね2の両斜辺2a,2bがロッド1に対してほぼ直交するように保たれた状態でサポート部材4内にロッド1を装入するだけの簡単な作業で板ばね2とロッド1との組み立てが完了する。
また、板ばね2は上述した略ム形を成すものに限られない。例えば、図5に示すように、外側に拡がろうとするばね弾性を示す略V形としたものでも良い。この板ばね2の場合には、一対の板ばね即ち本実施形態の場合には斜辺2a,2bの外に斜辺2a,2bを内側に向けて付勢するスイッチ機構(図示省略)を備え、斜辺2a,2bを外側から内側へ向けて付勢することにより、斜辺2a,2bの傾きを寝せている状態から立てる状態に変移させ、ロッド1に対する交差角度を変更してロック状態とアンロック状態とを切り替えるようにしても良い。ここで、スイッチ機構としては、図示していないが、例えば、板ばねの両斜辺2a,2bとサポート部材4のロッドが貫通する側壁4a,4bとの間に、軸方向の変位を与える直動カムや斜板カムなどを利用したスイッチを備え、該スイッチを手動による直接駆動あるいはアクチュエータを介した駆動により、オン、オフの2位置操作させるようにしても良い。この実施形態の場合、スイッチの駆動により、斜辺2a,2bを外側から内側へ向けて付勢して斜辺2a,2bの傾きをロッド1とほぼ直交する姿勢に近づけたとき、板ばね2のロッド貫通孔5の周縁とロッド1の外周面との間に隙間が発生してロッドの拘束が解除される。他方、スイッチの開放によって外に向かって拡がるように傾斜してニュートラル状態に復元しようとする一対の板ばね(即ち斜辺2a,2b)のロッド貫通孔5の周縁がロッド1の外周面に接触してロッド1の動きを拘束する。
スイッチ3は、ロッド1に対する板ばね2の交差角度を変更する機構であって、特定の機構・構成に限定されるものではない。例えば本実施形態の場合、板ばね2の両斜辺2a,2bの間に配置される楕円形のカム輪郭線を有するカム板(以下、楕円カム27と呼ぶ)によって構成されている。この楕円カム27によるスイッチ3は、楕円カム板27の最大変位量(リフト)が与えられるときに板ばね2の両斜辺2a,2bの間隔を最大限に拡げてロッド1に対する両斜辺2a,2bの傾きをロッド1と略直交する状態あるいはそれに近い状態に変形させ、楕円カム27の基礎円に相当する位置に回転させたときに板ばね2の両斜辺2a,2bの間隔を狭めてロッド1に対して両斜辺2a,2bを斜交させる。
本実施形態において、スイッチ3は、例えば、サポート部材4に回転可能に支持されている。例えば、板ばね2の両斜辺2a,2bの間に配置されたサポート部材4と一体の軸承ブロック31に回転軸28を介してカム27及びクランク円板26が回転可能に支持されている。回転軸28は、段付きのねじであり、先端のねじ28aが軸承ブロック31のねじ孔31aに螺合されるともに段部が軸承ブロック31の上面に当接することで軸承ブロック部31に固定されている。回転軸28の上部の軸部28bは、楕円カム27及びクランク円板26を貫通して、クランク円板26及び楕円カム27を回転自在に支持している。また、軸部28bの中心に明けられているねじ孔28cにボルト33を螺合させることによって、クランク円板26が抜け外れないようにボルト33の頭で押さえつけられている。
尚、スイッチ3の駆動は、動力源を用いた駆動例えばモータや流体圧シリンダなどのアクチュエータを利用した機械駆動あるいはソレノイドなどの電気駆動など、様々な手法によって駆動することもできるが、手動による直接駆動によって切換操作が実行されるように構成されても良い。例えば、本実施形態では、スイッチ3は手動による直接駆動によって切換操作が実行されるように構成されている。例えば、回転可能に軸承ブロック31に支持されている楕円カム27と一体化された円板26を直接把持して回転させたり、あるいは円板26に摘み9を備え、該摘み9を掴んで円板26を回転させることで手動によって楕円カム27の直接駆動ができるように設けられている。
以上のように構成されたメカニカルロック機構によれば、スイッチ3が最小変位量の位置(基礎円)に切り替えられて斜辺2a,2bの間に楕円の短軸方向が配置されると、楕円カム27による位置規制が解除されるので、復元力により斜辺2a,2bの間が狭くなる。つまり、板ばね2の両斜辺2a,2bのロッド1に対する傾斜角度を小さく(きつく)して、斜辺2a,2bのロッド貫通孔5の周縁の上側と下側とがロッド1に接触することで、板ばね2の両斜辺2a,2bのそれ以上の変形が妨げられると共にロッド1が拘束される。
他方、スイッチ3が最大変位量の位置に切り替えられて斜辺2a,2bの間に楕円の長軸方向が配置されると、例えば、図3に仮想線で示すように、楕円カム27が板ばね2の両斜辺2a,2bを互いに逆方向に押し拡げてロッド1に対して両斜辺2a,2bがほぼ直交する状態に変形させる。これにより、斜辺2a,2bのロッド貫通孔5とロッド1とがほぼ同心状に配置されて、それらの間に隙間が発生するので、ロッド1の拘束が解かれ、自由に摺動可能となる。
つまり、本実施形態にかかる、メカニカルロック機構は、ロッド1と交差する板ばね2の両斜辺2a,2bの傾きを変化させるだけで、ロッド貫通孔5の周縁がロッド1の外周面に押し当てられたり(ロック状態)、ロッド1から離れて隙間を発生させたりする(アンロック状態)。
しかも、ロック状態においては、互いに逆方向に傾斜する一対の板ばねによってロッド1が双方向にロックされるので、ロッド1を伸縮させようとする外力がいずれの方向に作用したとしても、ロッド1が移動することがない。さらに、ロッド1が板ばね2(斜辺2a,2b)によって挟み込まれると同時にロッド1の動きでも板ばね2が軸方向に押されるので、板ばね2の力だけでロッド貫通孔5の周縁がロッド1に向けて押されるのではなく、ロッド1の動きでもさらに板ばね2の鎖交する部分(斜辺2a,2b)を押す力が付勢され、より強くロッド1に対して板ばね2が押されて食い込むこととなるので、外力が付与し続けても滑りを起こし難い。
図7〜図10に本発明にかかるメカニカルロック機構を組み込んだ伸縮装置の一実施形態を示す。
本発明にかかる伸縮装置は、固定節となる機素と可動節となる機素とで成り、固定節と可動節との間で相対移動することにより固定節と可動節との間の距離が伸び縮みする構造体であり、可動節となる機素と固定節となる機素との間の動きを任意に拘束・解放するメカニカルロック機構を含む伸縮装置であって、固定節となる機素あるいは可動節となる機素のいずれか一方には上述のメカニカル機構のサポート部材によって支持された板ばねを、他方にはロッドを含むものである。
例えば、本実施形態にかかる伸縮装置は、固定節となる機素例えばシリンダロッド10と可動節となる機素例えばピストンロッド1’とで成る入れ子構造(テレスコピック構造とも言う)の伸び縮みする構造体であり、ピストンロッド1’がシリンダロッド10から出入りすることにより全体の長さが可変にされると共に任意の長さで固定可能にされるものである。本実施形態の場合、伸縮装置は、例えば、シリンダロッド10と、該シリンダロッド10の先端に連結されて板ばね2を保持するサポート部材4と、シリンダロッド10とサポート部材4とを貫通して出入り自在に支持されているピストンロッド1’と、サポート部材4内でピストンロッド1’が貫通する板ばね2と、板ばね2の傾きを切り替えるスイッチ3と、スイッチ3を駆動するアクチュエータ11とその動きをスイッチ3に伝達するスライダクランク機構12と、これらを収容するケーシング13とで構成されている。
シリンダロッド10とその内部に収容されるピストンロッド1’とは、抜け止め(かえし)を設けることによって抜け外れることがないように設けられている。抜け止めは、例えば、ピストンロッド1’のシリンダロッド10の内部に収容される側の端部にビス15によって固定される平座金14と、シリンダロッド1の端部に嵌め込まれるスリーブ16とで構成され、シリンダロッド10の内周面よりも内側に突出するスリーブ16の内側の端部にピストンロッド1’の外周面よりも外側に突出する平座金14が当てられることによってピストンロッド1’のシリンダロッド10からの抜け外れが防がれる。
アクチュエータ11としては、特定の方式に限定されるものではないが、例えば本実施形態の場合には、サーボモータ17とねじ式送り機構18とが利用され、乾電池程度の電源でも高速作動させ得るように設けられている。サーボモータ17と送り機構18との間には、ギアボックス・増速ギア列19が備えられ、モータ17の回転が増速されて送り機構18のねじ棒20に伝えられる。ねじ棒20は、一端がギアボックス19の出力軸と連結されると共に他端側が送り機構18の筐体21内のねじ棒支え22によって回転自在に支持されている。ここで、ねじ棒20には、スライダロッド(雌ねじ部材)23が噛合されると共に、このスライダロッド23にスライダ24が連結されている。スライダ24はチャネル状の筐体21に回転不能に収容されると共に軸方向には摺動可能にガイドされる。さらに、このスライダ24には、連接棒25を介してクランク円板26がピン連結(滑節)されてスライダクランク機構が構成されている。クランク円板26には、スイッチ3を構成する楕円カム27が同軸心上に取り付けられ、両部材26,27間を貫通する連結ピン30の圧入によって互いに連結されて一体的に回転するように設けられている。したがって、サーボモータ17の回転がスライダロッド23の直線移動に変換され、スライダクランク機構を介してカム板27が回転させられる。クランク円板26は、連接棒25の軸方向の直線移動を回転運動に変換して、スイッチたる楕円カム27を任意の角度例えば90°程度回転させて、板ばね2の両斜辺2a,2bの間の間隔を拡げたりあるいは狭めて、一対の板バネ即ち両斜辺2a,2bの傾きを変更させる。
尚、本実施形態の場合、クランク円板26の回転中心(回転軸28あるいはボルト33の中心)と連接棒25とクランク円板26との連結点(ビス)43並びにスライダ24と連接棒25との連結点(球面ボルト)44とが一直線上に配置されないように、即ち死点を構成しないように連接棒25の長さが調整されている。また、図示していないが、筐体21には、スライダロッド23の移動量を検出するエンコーダが設けられ、サーボモータ17の回転が制御されている。
また、伸縮機構のロック状態とアンロック状態との切り替えを制御するための制御回路基板35と、サーボモータ17、ギアボックス19、送り機構18とは相互に連結されて1つのブロックを構成している。そして、送り機構18のケーシング・筐体21は、サーボグリップ34によってシリンダロッド10に沿って片持ち支持され、さらに筐体21の端部にギアボックス19、サーボモータ17、制御回路基板35が相互に連結されて支持されている。尚、本実施形態では、筐体21並びにシリンダロッド10及びピストンロッド1’はステンレス製であるがこれに特に限られるものではなく、場合によってはプラスチック製であっても良い。
ピストンロッド1’との関係で相対的に固定側部材とされている本実施形態のサポート部材4は、ピストンロッド1’と、該ピストンロッド1’に対し鎖交する板ばね2との関係を保持すると共にスイッチ3を板ばね2の両斜辺2a,2bの間に保持するためのものであり、本実施形態の場合、例えばポリアセタール(POM)やナイロンなどの摺動性に優れる素材によって構成されている。具体的には、本実施形態の場合、ロッド1が貫通する左右の側壁4a,4bと後壁4c並びに底壁4dの4面で構成され、手前側の開口から板ばね2が内部空間29に収容される。サポート部材4は、シリンダロッド10の先端に嵌合され、上下からねじ込まれる締め付けビス32によって固定されている。サポート部材4は、本実施形態では、2面開口の凹部・内部空間29を有するものとされているが、この形状に特に限られず、少なくともシリンダロッド10とピストンロッド1’とを摺動自在に支持する部分とこれらの間を一定に保持する部分との3面を有するブロックであれば良いし、場合によっては図示していないが全ての面が塞がれるようにしても良い。つまり、スイッチ3の支持構造は図示の形態に限られない。
また、サポート部材4の奥側の壁(後壁)4cからは、スイッチ3を回転自在に支持する軸承部31が内部空間29に向けて突出するように設けられている。軸承部31には、雌ねじ31aがあけられ、楕円カム27と一体化されるクランク円板26が回転軸28を介して回転自在に支承されている。回転軸28は、段付きのねじであり、先端のねじ28aが軸承ブロック31のねじ孔31aに螺合されるともに段部が軸承ブロック31の上面に当接することで軸承ブロック部31に固定されている。回転軸28の上部の軸部28bは、楕円カム27及びクランク円板26を貫通して、クランク円板26及び楕円カム27を回転自在に支持している。また、軸部28bの中心に明けられているねじ孔28cにボルト33を螺合させることによって、クランク円板26が抜け外れないようにボルト33の頭で押さえつけられている。
本実施形態の場合、軸承ブロック31はサポート部材4と一体成形された突起である。本実施形態の場合、軸承ブロック31は、ロッド1と直交する軸を回転中心にスイッチ3が揺動可能に設けられていることから、サポート部材4とモールド樹脂成形時に一体化されているが、これに特に限られるものではなく、サポート部材4とは別体に成形されたブロックをビス止めなどで固着するようにしても良い。
この伸縮機構の両端、即ちケーシング13の外に突出するシリンダロッド10の基端部及びピストンロッド1’の先端部には、当該伸縮機構を他の装置などに装着するための端部装着具(エンドフィッティング)36がそれぞれのロッド1,10のねじ孔を利用して装着されている。本実施形態の場合、ロッドは軽量化のため中空のパイプ状とされ、両端にねじ孔が形成されている。そして、そのねじ孔を利用して、他の部材と連結するための端部装着具(エンドフィッティング)が備えられている。
スイッチ3は、板ばね2のロッド1に対する交差角度の傾きを変化させ得る手段であれば、特に上述の楕円カム27を利用したものに限られない。即ち、本実施形態では楕円カム27を利用しているが、この機素と同様に内側から外側へ向けて板ばね2を押し広げる力を付勢する手段、あるいは外側から内側へ向けて板ばね2を縮める力を付勢する手段であれば、特定の手段に限定されるものではない。
また、メカニカルロック機構には、互いに逆方向に傾斜する一対の板ばね(斜辺2a,2b)2とこれを貫通するピストンロッド1’との摩擦力を利用したロック機構、例えば図1に示す実施形態のロック機構が採用され、伸縮機構のコンパクト化が実現されている。可動節たるピストンロッド1’と、固定節たるサポート部材4と板ばね2との関係についての詳細な説明は省く。
以上のように構成された伸縮装置によれば、メカニカルロック機構がアンロック状態においては、ピストンロッド1’が引き出される、あるいは押し込まれると、ピストンロッド1’がシリンダロッド10内に出入りするので、ピストンロッド1’の先端からシリンダロッド10の後端までの2点間の距離が変化させられる。
他方、必要に応じて任意の位置・長さでアクチュエータ11を操作してロック状態に切り替えると、板ばね2のロッド貫通孔5の周縁がピストンロッド1’の外周面と接触して板ばね2の変形を止めると同時に板ばね2とピストンロッド1’との間の摩擦力でピストンロッド1’の動きを拘束する。この拘束状況でさらにピストンロッド1’が軸方向の移動しようとする力が働くと、一対の板ばね(斜辺2a,2b)の一方にとっては、板ばね2をさらに傾けてピストンロッド1’との交差角度をさらに小さくする方向(斜交する方向)に付勢することとなるので、板ばね2のロッド貫通孔5の周縁がさらにピストンロッド1’に食い込むように働き、さらに拘束力を強めることとなる。
伸縮機構として上述のようなピストンロッド1’と一対の板ばね(斜辺2a,2b)2との摩擦力を利用したロック機構が用いられることにより、使用者の意図した通りにロッドの出没の程度を無段階で調節した上でロック状態にすることができる。しかも、本実施形態にかかるメカニカルロック機構は、互いに逆方向に傾斜する一対の板ばね(斜辺2a,2b)によってピストンロッド1’の摺動方向の双方向においてロック機能を発揮することから、ピストンロッド1’の摺動させようとする外力がいずれの方向に作用したとしても、ピストンロッド1’の動きを拘束できる。即ち、伸縮機構としての安全性や信頼性が損なわれることがない。因みに、このメカニカルロック機構を組み込んだ伸縮装置によれば、巻ばねをロッドの回りに巻き付ける方式のメカニカル・ロックに比べて、約50%程度の軽量化が実現できた。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、直動するストレートロッド(直棒)を拘束対象物とした例を挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではなく、例えば湾曲した棒状物を拘束対象物とすることもできる。即ち、本発明にかかるメカニカルロック機構は、特許文献1記載の巻ばね方式のメカニカルロックとは異なって、ストレートロッドに限られるものではない。互いに逆方向に傾斜する一対の板ばねのロッド貫通孔5の周縁の2点(あるいは2辺)でロッド1を締め付けるので、曲ったロッドでも拘束でき、直線的な動きに制約されない。したがって、可動節たるロッドの動きが一直線上である必要はなく、湾曲する軌跡あるいは蛇行する軌跡など、非直線状の動きに沿った形状とすることも可能である。この場合、伸縮装置の可動域が広がり面的な広がりを持つことが可能となる。このため、直線的な伸縮の用途に限られず、湾曲した動きや蛇行した動きなど、様々な分野での伸縮機構として、またその拘束手段として使える。
また、本発明にかかるメカニカルロックは、ロッド1の外周面を当該ロッド1と斜交する板ばね2のロッド貫通孔5の周縁で挟持して拘束力を付与する構造なので、ロッド1の形状もロッド貫通孔5の孔の形状も特定のものに限定されない。上述の実施形態では、ロッド1,1’としては、あくまで一例として挙げると、軸直角断面が真円形である丸棒(中空棒を含む)を拘束対象物としているがこれに特に限られるものではなく、断面矩形あるいは多角形の角ロッドあるいは非円形断面(楕円形を含む)のロッドを拘束対象物としても良い。この場合における板ばね2の両斜辺2a,2bに空けられるロッド貫通孔5の形状は、角ロッドあるいは非円形ロッドの輪郭形状よりも僅かに大きめの相似形状を成していることが好ましい。角ロッドあるいは非円形ロッドの場合、相似形状のロッド貫通孔5と組み合わせると、ピストンロッド1’と板ばねのロッド貫通孔5の周縁との接触が線接触となるため、ロッド1に傷が付き難い。また、角ロッドと角孔の組み合わせの場合(非円形断面のロッドと非円形のロッド貫通孔との組み合わせにおいても同様であるが)、ロッドの回転が起こらないことから、支持剛体として機能させる場合にも強くなる。ここで、ロッドの矩形あるいは多角形若しくは非円形の断面形状部位は、ロッドの全域であっても良いが、場合によってはロッド全域である必要はなく、少なくとも板ばねと係合する部位が矩形あるいは多角形若しくは非円形の断面形状であれば良い。
また、上述の実施形態の伸縮装置においても、少なくとも板ばね2と係合する部位の断面形状が矩形あるいは多角形若しくは非円形に形成されたピストンロッド1’と、矩形あるいは多角形若しくは非円形のロッド貫通孔5を有する一対の板ばね(両斜辺2a,2b)とを組み合わせたロック機構を備えるようにしても良い。この場合において、サポート部材4の軸受け部41並びにシリンダロッド10の先端のスリーブ16の内周面の輪郭形状が角ロッドの輪郭形状よりも僅かに大きめの相似形状を成すものであれば良く、固定ロッド(シリンダロッド)10そのものが矩形あるいは多角形若しくは非円形の断面形状であることは必要でない。
また、上述の実施形態の伸縮装置では、駆動源として、サーボモータ17と増速ギアボックス19を利用したリニア駆動源を採用しているが、これに特に限られるものではなく、その他のアクチュエータ例えば空気圧シリンダや油圧シリンダなどの流体圧シリンダ、ソレノイドなどの使用を妨げるものでもないし、また、図1に例示するスイッチ機構のように手動によって直接駆動させるようにしても良いことは言うまでもない。さらには例えば、アクチュエータを駆動源とするスイッチの切換操作をワイヤを介した遠隔レバー操作や無線による遠隔操作、電気的操作などで、必要に応じて適宜選択し得る。また、レバーでの直接駆動など、様々な手法によってスイッチを駆動することができる。さらには、板ばね2そのものを形状記憶合金で製作し、通電により形状を復元させて角度変更を与えるようにしても良い。
また、板ばね2は、本実施形態の場合、一重として使用する例を挙げて説明したが、これに特に限られるものではなく、場合によっては二重、三重に重ねて用いても良い。これによれば、板ばねを収容する容積を極端に増やすこと無く、ロック力を増加させ得る。
また、上述の実施形態では、説明の便宜上、ロッド1との間で相対的にサポート部材4を固定節としているが、これに特に限られるものではなく、サポート部材4側が可動節となり、ロッド1側が固定節としてメカニカルロック機構並びにそれを用いた伸縮装置を構成するようにしても良い。即ち、本発明は、相対的に移動可能な2部材間における動きを任意に拘束・解放可能とするメカニカルロック機構及びそれを用いた伸縮装置であって、可動節であるか固定節であるかは相対的に定まるものである。例えば、図11に示すように、ケーシング45を貫通し全長が不変のロッド1に対して、板ばね2をサポート部材4を介して支持しているケーシング45を相対的に軸方向に摺動可能とした伸縮機構によって、ロッド1の一端に設けたボールジョイント(端部装着具:エンドフィッティング)46と、ケーシング45に設けたボールジョイント(端部装着具:エンドフィッティング)47との間の間隔(距離)Lが可変となる伸縮装置を構成することができる。この場合、ボールジョイント46,47の何れを固定節あるいは可動節にするかは任意である。つまり、ボールジョイント46が固定節とされれば、ボールジョイント47即ちケーシング45側が可動節となり、逆にボールジョイント46が可動節とされれば、ボールジョイント47即ちケーシング45側が固定節となる。いずれにしても、ロッド1そのものの全長は変化しないが、ボールジョイント46,47間の間隔Lを変化させることができる。ロッド1はケーシング45に対してアウターケース(本実施例では円筒軸受け部)48によって摺動自在に支持され、ボールジョイント46が設けられている端部とは反対側の端部にはロッド1がアウターケース48内に入り込まないようにするためのフランジ49が装着されている。また、アスターケース48はケーシング45に対して溶接付などで固定されている。尚、スイッチ3の駆動は、本実施形態の場合、手動による直接駆動によって切換操作が実行できるように構成されている。例えば、スイッチ3はケーシング45に対して回転可能に支持されている楕円カム27と一体化された円板26に摘み9を備え、該摘み9を掴んで円板26を回転させることで手動による楕円カム27の直接駆動が行えるように設けられている。図中の符号50はベアリング、51は締結ボルトを示す。