種々の態様および実施形態において、本開示は、不飽和分子の分離のために有用な全体的保持を示しながら、保持のドリフトまたは変化を軽減または回避する、順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用液体クロマトグラフィー用のクロマトグラフィー材料ならびに対応する装置、キット、製造方法および使用方法に関する。幾つかの実施形態において、本開示は、構造的に関連する化合物、例えば分離が困難であるクリティカルペアの保持および分離も提供する。
本開示は、有用な全体的保持を示しながら保持のドリフトまたは変化を有利に軽減または回避する。例えばSFCにおいて、保持のドリフトまたは変化は、(種々の理論のうちでも特に)SFCに用いられる標準CO2/MeOH移動相の下での(および/または他のアルコール共溶媒による)粒子に対する溶媒に接触可能なシラノールのアルコキシル化に起因することがある。このことは問題であるのは、カラムが老化するにつれて、新たな非アルコキシル化カラムをシステムに設置するときに再度、これらのSFCシステムで得られるクロマトグラフィー(例えば保持時間)の変化をユーザーが認めるためである。
種々の態様および実施形態において、本開示は、クロマトグラフィー材料の選択的修飾および/または対象の不飽和化合物の混合物の分割による、このような保持のドリフトまたは変化および関連する問題(例えば保持、ピーク形状など)の種々の解決策を提供する。
定義
種々の態様および実施形態において、本発明は、保持のドリフトまたは変化の軽減または防止を提供する。「保持のドリフト」または「保持の変化」は、クロマトグラフィーの実行または実験の間の溶離時間の望ましくない差(例えば実行1において、ピークxは時間yにて溶離するが、実行1+nにおいて、ピークxは時間zにて溶離する。)を包含し得る。ゆえに、保持のドリフトまたは変化は、実験ノイズ、再現不能性または不具合を含めた望ましくない効果をも生じることがある。従って、広義の意味で、保持のドリフトまたは変化の軽減または防止は、クロマトグラフィー実験がクロマトグラフィー的に許容される結果を与える程度に、クロマトグラフィー実行間の溶離時間の望ましくない差に対処または対抗することを包含する。
幾つかの実施形態において、保持のドリフトまたは変化の軽減または防止は、絶対値または一定値ではない。例えば、クロマトグラフィー的に許容される結果をなお達成しながら生じ得る保持のドリフトまたは変化の量は、所与の実験において許容される誤差または変動、試料の複雑さ(例えばピークの数および/または分離)に応じて変化することがある。クロマトグラフィー的に許容される結果をなお達成しながら生じることができる保持のドリフトまたは変化の量は、所与の実験における継続時間または必要な再現性に応じて変化することがある(例えば再現性が、比較的大きい回数の実行で必要とされる場合、実行間の許容される保持のドリフトまたは変化は、小さいことがある。)。従って、保持のドリフトまたは変化の軽減または防止は、保持のドリフトまたは変化を完全に排除することを必ずしも意味するわけではないことは明らかなはずである。
幾つかの実施形態において、保持のドリフトまたは変化の軽減または防止は、定量することができる。例えば、保持のドリフトまたは変化は、単一のピークについて測定することができるか、または一組のピークについて平均することができる。保持のドリフトまたは変化は、所与の期間または実行回数にわたって測定することができる。保持のドリフトまたは変化は、標準値、開始値に対して、または2つ以上の所与の実行間で測定することができる。
さらに、保持のドリフトまたは変化は、標準化試験によって定量することができる。例えば、平均保持変化%は、第1日のクロマトグラフィー試験で測定した平均絶対ピーク保持からの、第3日、第10日または第30日のクロマトグラフィー試験で測定した平均絶対ピーク保持のパーセント差を求めることによって計算できる。試験を行った各日には、カラムは1組の試験条件下で平衡化して、続いて第1のテストミックスを複数回注入し、次いで第2の組の試験条件下で平衡化して、続いて第2の試験ミックスを複数回注入することができる。
この標準化試験に従って、保持のドリフトまたは変化の軽減または防止は、30日間にわたって≦5%、30日間にわたって≦4%、30日間にわたって≦3%、30日間にわたって≦2%、30日間にわたって≦1%、10日間にわたって≦5%、10日間にわたって≦4%、10日間にわたって≦3%、10日間にわたって≦2%、10日間にわたって≦1%、3日間にわたって≦5%、3日間にわたって≦4%、3日間にわたって≦3%、3日間にわたって≦2%、3日間にわたって≦1%、30回の実行にわたって≦5%、30回の実行にわたって≦4%、30回の実行にわたって≦3%、30回の実行にわたって≦2%、30回の実行にわたって≦1%、10回の実行にわたって≦5%、10回の実行にわたって≦4%、10回の実行にわたって≦3%、10回の実行にわたって≦2%、10回の実行にわたって≦1%、3回の実行にわたって≦5%、3回の実行にわたって≦4%、3回の実行にわたって≦3%、3回の実行にわたって≦2%または3回の実行にわたって≦1%の保持のドリフトまたは変化を含むことができる。
他の実施形態において、保持のドリフトまたは変化の軽減または防止は、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1日(または実行)にわたって、≦5.0、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1,2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1%の保持のドリフトまたは変化を含むことができる。
「高純度」または「高純度クロマトグラフィー材料」は、高純度前駆体から調製される材料を含む。ある態様において、高純度材料は、金属の汚染の減少および/またはこれに限定されるわけではないが、表面シラノールの酸性度および表面の不均質を含むクロマトグラフィー特性が低下しないことを示した。
「クロマトグラフィー表面」は、試料のクロマトグラフィー分離をもたらす表面を含む。ある態様において、クロマトグラフィー表面は多孔性である。幾つかの態様において、クロマトグラフィー表面は、粒子、表面多孔性材料またはモノリスの表面であることができる。ある態様において、クロマトグラフィー表面は、クロマトグラフィー分離の間に組み合わせて使用される1種以上の粒子、表面多孔性材料またはモノリスの表面から構成される。他のある態様において、クロマトグラフィー表面は、非多孔性である。
「イオン化性修飾剤」は、電子供与基または電子求引基を保持する官能基を含む。ある態様において、イオン化性修飾剤は、1個以上のカルボン酸基、アミノ基、イミド基、アミド基、ピリジル基、イミダゾリル基、ウレイド基、チオニル−ウレイド基もしくはアミノシラン基またはこれらの組み合わせを含有する。他の態様において、イオン化性修飾剤は、自由電子非共有電子対を有する窒素原子またはリン原子を保持する基を含有する。ある態様において、イオン化性修飾剤は、材料表面に共有結合していて、イオン化性基を有する。幾つかの例において、イオン化性修飾剤は、表面ハイブリッド基の化学修飾によってクロマトグラフィー材料に結合している。
「疎水性表面基」は、疎水性を示すクロマトグラフィー表面上の表面基を含む。ある態様において、疎水性は、C4−C18結合相などの炭素結合相であることができる。他の態様において、疎水性表面基は、疎水性表面の外側部分が疎水性を維持するように、埋め込み極性基を含有することができる。幾つかの例において、疎水性表面基は、表面ハイブリッド基の化学修飾によってクロマトグラフィー材料に結合している。他の例において、疎水性は、C4−C30埋め込み極性、キラル、フェニルアルキル、またはペンタフルオロフェニル結合およびコーティングであることができる。
「クロマトグラフィーコア」は、これに限定されるわけではないが、粒子、モノリスまたは本開示の材料の内側部分を形成する別の好適な構造の形態の、本明細書で定義するようなシリカまたはハイブリッド材料などの有機材料を含む、クロマトグラフィー材料を含む。ある態様において、クロマトグラフィーコアの表面は、本明細書で定義するようなクロマトグラフィー表面を表し、または本明細書で定義するようなクロマトグラフィー表面で包囲した材料を表す。クロマトグラフィー表面材料は、不連続のもしくは明瞭な移行が識別できるようにクロマトグラフィーコア上に配置、もしくはコアに結合、もしくはコアにアニーリングすることができるか、またはクロマトグラフィーコアの表面とブレンドして材料の段階的変化を生じ、不連続内部コア表面を生じないようにクロマトグラフィーコアに結合することができる。ある実施形態において、クロマトグラフィー表面材料は、クロマトグラフィーコアの材料と同じでありまたは異なっていてもよく、これに限定されるわけではないが、細孔容積、表面積、平均孔径、炭素含有率または加水分解pH安定性を含む、クロマトグラフィーコアと異なる物理的または物理化学的特性を示すことができる。
「ハイブリッド無機/有機材料」を含む「ハイブリッド」は、有機官能基が内部または「骨格」無機構造ならびにハイブリッド材料表面の一部分を成す無機系構造を含む。ハイブリッド材料の無機部分は、例えばアルミナ、シリカ、チタン、セリウムもしくはジルコニウムまたはこれらの酸化物またはセラミック材料であることができる。「ハイブリッド」は、有機官能基が、ハイブリッド材料表面のみならず、内部または「骨格」無機構造の両方の一部分を成す無機系構造を含む。上述のように、例示的なハイブリッド材料は、米国特許第4,017,528号、第6,528,167号、第6,686,035号および第7,175,913号に示され、これらの内容は、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
「脂環式基」という用語は、3個以上の炭素原子の閉環構造を含む。脂環式基としては、飽和環状炭化水素であるシクロパラフィンまたはナフタレン、2個以上の二重結合を有して不飽和であるシクロオレフィンおよび三重結合を有するシクロアセチレンが挙げられる。これらは芳香族基を含まない。シクロパラフィンの例としては、シクロプロパン、シクロヘキサンおよびシクロペンタンが挙げられる。シクロオレフィンの例としては、シクロペンタジエンシクロヘキサジエンおよびシクロオクタテトラエンが挙げられる。脂環式基は、縮合環構造およびアルキル置換脂環式基などの置換脂環式基も包含する。脂環式化合物の例では、このような置換基は、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF3、−CNなどをさらに含むことができる。
「脂肪族基」という用語は、通例、1から24個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖を特徴とする有機化合物を含む。脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基が挙げられる。複雑な構造では、鎖は分枝または架橋することができる。幾つかの実施形態において、脂肪族基は、2から24個の炭素原子、もしくは4から22個の炭素原子、もしくは6から20個の炭素原子、もしくは8から18個の炭素原子、もしくは10から16個の炭素原子、もしくは12から14個の炭素原子またはこれらの数の組み合わせ、例えば約6から12個の炭素原子もしくは10から14個の炭素原子を有する鎖を含むことができる。アルキル基は、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキルを含む、1個以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を含む。このような炭化水素部分は、例えばハロゲン基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルカルボキシ基、アルキルチオ基またはニトロ基によって1個以上の炭素を置換することができる。炭素の数を別途規定しない限り、本明細書で使用する場合、「低級脂肪族」は、上で定義したような、しかし1から6個の炭素原子を有する脂肪族基(例えば低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル)を意味する。このような低級脂肪族基、例えば低級アルキル基の代表例は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−クロロプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、2−アミノブチル、イソブチル、tert−ブチル、3−チオペンチルなどである。本明細書で使用する場合、「ニトロ」という用語は−NO2を意味し、「ハロゲン」という用語は、−F、−Cl、−Brまたは−Iを指定し、「チオール」という用語はSHを意味し、「ヒドロキシル」という用語は「−OH」を意味する。このため、「アルキルアミノ」という用語は、本明細書で使用する場合、上で定義したようなアルキル基であって、これに結合したアミノ基を有するアルキル基を意味する。好適なアルキルアミノ基は、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基を含む。「アルキルチオ」という用語は、上で定義したようなアルキル基であって、これに結合したスルフヒドリル基を有するアルキル基を示す。好適なアルキルチオ基は、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基を含む。「アルキルカルボニル」という用語は、本明細書で使用する場合、上で定義したようなアルキル基であって、これに結合したカルボキシル基を有するアルキル基を意味する。「アルコキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、上で定義したようなアルキル基であって、これに結合した酸素原子を有するアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基は、1から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどを含む。「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、アルキルに類似した、しかし少なくとも1個の二重または三重結合をそれぞれ有する不飽和脂肪族基を示す。好適なアルケニル基およびアルキニル基は、2から約12個の炭素原子、好ましくは1から約6個の炭素原子を有する基を含む。
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基を含む。ある実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキルは、これの主鎖に30個以下の炭素原子、例えば直鎖にはC1−C30または分枝鎖にはC3−C30を有する。ある実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキルは、これの主鎖に20個以下の炭素原子、例えば直鎖にはC1−C20または分枝鎖にはC3−C20、より好ましくは18個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、これらの環構造に4−10個の炭素原子を有し、より好ましくはこれらの環構造に4−7個の炭素原子を有する。「低級アルキル」という用語は、鎖中に1から6個の炭素を有するアルキル基、および環構造に3から6個の炭素を有するシクロアルキルを示す。
さらに、「アルキル」(「低級アルキル」を含む。)という用語は、本開示を通して使用する場合、「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含み、「置換アルキル」は、炭化水素主鎖の1個以上の炭素に水素を置き換える置換基を有するアルキル部分を示す。このような置換基としては、例えばハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキルまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。炭化水素鎖にて置換された部分は、適切な場合には、これら自体を置換できることが当業者に理解される。シクロアルキルは、例えば上記の置換基でさらに置換することができる。「アラルキル」部分は、例えば1から3個の別個の環または縮合環および6から約18個の炭素環原子を有するアリールによって置換されたアルキル、例えばフェニルメチル(ベンジル)である。
「アミノ」という用語は、本明細書で使用する場合、式−NRaRbの非置換または置換部分を示し、式中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリールもしくはヘテロシクリルであるか、またはRaおよびRbは、これらが結合している窒素原子とひとまとめとなって、環内に3から8個の原子を有する環状部分を形成する。このため、「アミノ」という用語は、別途示さない限り、ピペリジニル基またはピロリジニル基などの環状アミノ部分を含む。「アミノ置換アミノ基」は、RaおよびRbの少なくとも1個がアミノ基でさらに置換されているアミノ基を示す。
「芳香族基」という用語は、1個以上の環を含む不飽和環状炭化水素を含む。「モノ芳香族」という用語は、1個の環を含有する不飽和環状炭化水素を含む。「ポリ芳香族」という用語は、2個以上の環を含有する不飽和環状炭化水素を含む。芳香族基としては、0から4個のヘテロ原子を含むことができる5および6員単環基、例えばフラン、ピロール、ピロリン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、チオフェンなどが挙げられる。芳香族環は、例えばハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF3、−CNなどによって1つ以上の環位置にて置換することができる。芳香族基としては、0から8個のヘテロ原子を含むことができる5および6員多環基、例えばインデン、インドリジン(indolinzine)、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール(benzthiazole)、ナフタレン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、キヌクリジン、フルオレン、カルバゾール、アントラセン、アクリジン、フェナジン(phanazine)、フェノチアジン、フェノキサジン、ピレンなどが挙げられる。ポリ芳香族基としては、縮合芳香族基が挙げられる。
「アリール」という用語は、ゼロから4個のヘテロ原子を含むことができる5および6員の単環芳香族基、例えば非置換または置換ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを含む。アリール基としてはまた、多環縮合芳香族基、例えばナフチル、キノリル、インドリルなどが挙げられる。芳香族環は、例えばアルキル基について上記した、このような置換基によって1つ以上の環位置にて置換することができる。好適なアリール基としては、非置換および置換フェニル基が挙げられる。「アリールオキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、上で定義したようなアリール基であって、これに結合した酸素原子を有するアリール基を意味する。「アラルコキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、上で定義したようなアラルキル基であって、これに結合した酸素原子を有するアラルキル基を意味する。好適なアラルコキシ基は、1から3個の別個の環または縮合環および6から約18個の炭素環原子を有し、例えばO−ベンジルである。
「セラミック前駆体」という用語は、セラミック材料の形成をもたらす任意の化合物を含むことが意図される。
「キラル部分」という用語は、キラルまたは立体選択性合成を可能にする任意の官能基を含むことが意図される。キラル部分としては、これに限定されるわけではないが、少なくとも1個のキラル中心を有する置換基、天然および非天然アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質、誘導体化セルロース、大環状抗生物質、シクロデキストリン、クラウンエーテルならびに金属錯体が挙げられる。
「埋め込み極性官能基」という用語は、シリカ表面上の未反応シラノール基の遮蔽によって塩基性試料との相互作用が低下するように一体化極性部分を与える官能基である。埋め込み極性官能基としては、これに限定されるわけではないが、米国特許第5,374,755号に開示されたようなカーボネート、アミド、尿素、エーテル(例えば炭素含有基間の−O−)、チオエーテル、スルフィニル、スルホキシド、スルホニル、チオ尿素、チオカーボネート、チオカルバメート、エチレングリコール、ヘテロ環式、トリアゾール官能基またはカルバメート官能基およびキラル部分が挙げられる。
「クロマトグラフィー向上性細孔形状」という用語は例えば、当分野における他のクロマトグラフィー媒体と区別されるように、材料のクロマトグラフィー分離能を向上させることが見出された、本願に開示される材料の細孔構造の形状を含む。例えば、形状を形成、選択または構造することができ、例えば当分野で既知のまたは従来使用された形状と比較して、材料のクロマトグラフィー分離能が「向上」しているか否かを判定するために、種々の特性および/または因子を使用することができる。これらの因子の例としては、高い分離効率、より長いカラム寿命および高い物質移動特性(例えばバンドの広がりの低減および良好なピーク形状によって実証されるような)が挙げられる。これらの特性は、当分野で認識された技術を用いて測定または観測することができる。例えば本発明の細孔無機/有機ハイブリッド材料のクロマトグラフィー向上性細孔形状は、「インクビン」または「シェル形」細孔形状または形態が存在しないことによって従来技術の材料とは区別されるが、「インクビン」または「シェル形」細孔形状または形態のどちらも、例えば物質移動速度を低下させ、より低い効率をもたらすので望ましくない。
クロマトグラフィー向上性細孔形状は、小集団のマイクロポアのみを含有するハイブリッド材料に見出される。ハイブリッド材料にて小集団のマイクロポアが得られるのは、約34Å未満の直径の全細孔が材料の比表面積に対して約110m2/g未満となる場合である。このような低いマイクロポア表面積(MSA)を有するハイブリッド材料は、高い分離効率および良好な物質移動特性(例えばバンドの広がりの低下および良好なピーク形状によって実証されるような)を含むクロマトグラフィーの向上をもたらす。マイクロポア表面積(MSA)は、BJH法を使用して等温線の吸着脚部からの多点窒素収着分析によって決定される、34Å以下の直径を有する細孔の表面積と定義される。本明細書で使用する場合、「MSA」および「MPA」という頭字語は、「マイクロポア表面積」を示すために互換的に使用される。
「官能化性基」という用語は、クロマトグラフィー固定相にある種のクロマトグラフィー官能基を付与する有機官能基を含む。
「ヘテロ環基」という用語は、環内の原子の1個以上が、炭素以外の元素、例えば窒素、硫黄または酸素である閉環構造を含む。ヘテロ環基は、飽和または不飽和であることができ、ピロールおよびフランなどのヘテロ環基は芳香族特性、即ち「ヘテロ環芳香族基」を有することができる。これらは1個以上の環構造を含む。2個以上の環構造を含むヘテロ環基は、「ポリヘテロ環芳香族基」である。これらの基は、キノリンおよびイソキノリンなどの縮合環構造を有することができる。ヘテロ環基の他の例としては、ピリジンおよびプリンが挙げられる。ヘテロ環基はまた、例えばハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF3、−CNなどによって1個以上の構成原子にて置換することができる。好適なヘテロ芳香族基およびヘテロ脂環式基は、一般に環1個に付き3から約8環員を有する1から3個の別個の環または縮合環および1個以上のN、OまたはS原子を有し、例えばクマリニル、キノリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノおよびピロリジニルである。
「金属酸化物前駆体」という用語は、金属を含有して、金属酸化物、例えばアルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウムの形成をもたらす、いずれの化合物も含むことが意図される。
「モノリス」という用語は、個々の粒子の形状および形態が維持される、床構成に充填された個々の粒子の集合を含むことが意図される。粒子は、有利には粒子を結合する材料を用いて充填される。当分野で周知の結合材料の幾つでも、例えばジビニルベンゼン、メタクリレート、ウレタン、アルケン、アルキン、アミン、アミド、イソシアネートまたはエポキシ基の線形もしくは架橋ポリマー、ならびに有機アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、ポリオルガノアルコキシシロキサン、ポリエトキシシロキサンの縮合反応物、ならびにセラミック前駆体を使用することができる。ある実施形態において、「モノリス」という用語は、他の方法によって作製されたハイブリッドモノリス、例えば米国特許第7,250,214号に詳述されたハイブリッドモノリス;0−99モルパーセントのシリカ(例えばSiO2)を含有する1種以上のモノマーの縮合から調製されたハイブリッドモノリス;合体多孔性無機/有機粒子から調製されたハイブリッドモノリス;クロマトグラフィー向上性細孔形状を有するハイブリッドモノリス;クロマトグラフィー向上性細孔形状を有しないハイブリッドモノリス;規則細孔構造を有するハイブリッドモノリス;非周期的細孔構造を有するハイブリッドモノリス;非結晶質または非晶質分子規則性を有するハイブリッドモノリス;結晶質ドメインまたは領域を有するハイブリッドモノリス;様々な異なるマクロポア特性およびメソポア特性を有するハイブリッドモノリス;ならびに様々な異なる縦横比のハイブリッドモノリスも含む。ある実施形態において、「モノリス」という用語は、無機モノリス、例えばG.Guiochon/J.Chromatogr.A 1168(2007)101−168に記載されたものも含む。
「ナノ粒子」という用語は、結晶質または非結晶質であることができる、約100nm未満の少なくとも1つの寸法、例えば約100nm(0.1mm)未満の直径または粒子厚さを有する、微細粒子/粒状物、または粉末/ナノ粉末の微細構成要素である。ナノ粒子は、例えばより高い強度、硬度、延性、焼結性およびより高い反応性を含む、従来のバルク材料の特性とは異なる、これらよりしばしば優れている特性を有する。ナノ材料の特性を決定するために相当の科学的研究が引き続き行われ、コロイド沈殿、機械的粉砕ならびに気相核形成および成長を含む複数の方法によって、(主にナノサイズ粉末として)少量のナノ材料が合成されている。広範な概説により、ナノ相材料の最近の開発が記録され、これへの参照により本明細書に組み入れられている:Gleiter,H.(1989)「Nano−crystalline materials」,Prog.Mater.Sci.33:223−315およびSiegel,R.W.(1993)「Synthesis and properties of nano−phase materials」,Mater.Sci.Eng.A168:189−197。ある実施形態において、ナノ粒子は、以下の炭化ケイ素、アルミニウム、ダイヤモンド、セリウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ジルコニウム、バリウム、セリウム、コバルト、銅、ユウロピウム、ガドリニウム、鉄、ニッケル、サマリウム、ケイ素、銀、チタン、亜鉛、ホウ素およびこれらの混合物の酸化物または窒化物を含む。ある実施形態において、本開示のナノ粒子は、ダイヤモンド、酸化ジルコニウム(非晶質、単斜晶系、正方晶系および立方晶系形態)、酸化チタン(非晶質形態、アナターゼ形態、ブルッカイト形態およびルチル形態)、アルミニウム(非晶質形態、アルファ形態およびガンマ形態)およびホウ窒化物(立方晶形態)から選択される。特定の実施形態において、本開示のナノ粒子は、ナノダイヤモンド、炭化ケイ素、二酸化チタン(アナターゼ形態)、立方晶ホウ窒化物およびこれらのいずれかの組み合わせから選択される。さらに、特定の実施形態において、ナノ粒子は、結晶質または非晶質であることができる。特定の実施形態において、ナノ粒子は、直径100mm以下、例えば直径50mm以下、例えば直径20mm以下である。
さらに、本開示の複合体内に分散しているとして特徴付けられるナノ粒子は、外部から添加したナノ粒子と説明されるものであることが理解されるべきである。このことは、例えば粒子などのマクロ分子構造が内部的に生成されたこれらの凝集物を含むことができる、ナノ粒子、即ちその場で形成可能である推定ナノ粒子と著しい類似性を有する構成物とは対照的である。
「実質的に不規則な」という用語は、X線粉末回折分析に基づいた細孔規則性がないことを示す。具体的には、「実質的に不規則な」は、X線回折パターンにおける少なくとも1nmのd値(またはd間隔)に相当する回折角にピークがないことによって定義される。
「表面修飾剤」は、通例、クロマトグラフィー固定相にある種のクロマトグラフィー官能基を付与する有機官能基を含む。多孔性無機/有機ハイブリッド材料は、表面修飾剤でさらに置換または誘導体化することができる有機基とシラノール基の両方を有する。
「表面修飾された」という用語は、本明細書では、表面修飾剤でさらに置換または誘導体化することができる有機基とシラノール基の両方を有する本開示の複合材料を説明するために使用される。「表面修飾剤」は、(通例)クロマトグラフィー固定相にある種のクロマトグラフィー官能基を付与する有機官能基を含む。本明細書で開示するような表面修飾剤は、例えば誘導体化またはコーティング、およびその後の架橋を介して基材に結合し、基材に表面修飾剤の化学的特性を付与する。一実施形態において、ハイブリッド材料の有機基は反応して、表面修飾剤との有機共有結合を形成する。修飾剤は、これに限定されるわけではないが、求核反応、求電子反応、付加環化反応、フリーラジカル反応、カルベン反応、ナイトレン反応およびカルボカチオン反応を含む、有機およびポリマー化学におけて周知の幾つかの機構を介して、材料の有機基への有機共有結合を形成することができる。有機共有結合は、これに限定されるわけではないが、水素、ホウ素、炭素、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄およびハロゲンを含む、有機化学の一般的な元素間の共有結合の形成を包含すると定義される。さらに、炭素−ケイ素結合および炭素−酸素−ケイ素結合は、有機共有結合と定義されるが、一方でケイ素−酸素−ケイ素結合は、有機共有結合と定義されない。様々な合成変換が文献において周知であり、例えばMarch,J.Advanced Organic Chemistry、3rd Edition,Wiley,New York、1985を参照のこと。
本開示のクロマトグラフィー材料は、シリカコア材料、金属酸化物コア材料、無機−有機ハイブリッド材料またはこれらのブロックコポリマーの一群のコア材料を含むものを含むことができる。コア材料は、本明細書で論じるような高純度クロマトグラフィーコア組成物であることができる。同様に、クロマトグラフィーコア材料は、本明細書で検討される高純度材料の通常の、例えば高純度でないバージョン/類似体/同族体であり得る。
好適なコア材料の例としては、これに限定されるわけではないが、従来のクロマトグラフィーシリカ材料、金属酸化物材料、無機−有機ハイブリッド材料またはこれらのブロックコポリマーの一群、セラミック、酸化ケイ素、イミド窒化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウムケイ素、ジイミドケイ素およびオキシ窒化ケイ素が挙げられる。(修飾してまたは修飾せずに用いるための)好適なコア材料のさらなる例は、米国特許出願公開第2009/0127177号、2007/0135304号、2009/0209722号、2007/0215547号、2007/0141325号、2011/0049056号、2012/0055860号および2012/0273404号ならびに国際公開第2008/103423号に記載されており、これらはこれらの全体が参照により本明細書に組み入れられている。
クロマトグラフィーコア材料は、離散した(discreet)粒子の形態であることができるか、またはモノリスであることができる。クロマトグラフィーコア材料は、いずれかの多孔性材料であることができ、市販のものであることができ、または既知の方法、例えば米国特許第4,017,528号、6,528,167号、6,686,035号および7,175,913号に記載された方法によって製造することができ、これらはこれらの全体が参照により本明細書に組み入れられている。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィーコア材料は、非多孔性コアであることができる。
クロマトグラフィー表面材料およびクロマトグラフィーコア材料との組成を当業者が変化させて、クロマトグラフィー選択性の向上、カラム化学的安定性の向上、カラム効率の向上および/または機械的強度の向上を与えることができる。同様に、周囲材料の組成によって、親水性/親油性バランス(HLB)、表面電荷(例えば等電点またはシラノールpKa)および/またはクロマトグラフィー分離向上のための表面官能性の変化がもたらされる。さらに、幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー材料の組成は、さらなる表面修飾に利用できる表面官能性も与えることができる。
本開示のクロマトグラフィー材料のイオン化性基および疎水性表面基は、既知の方法を用いて調製することができる。イオン化性修飾剤試薬の幾つかは、市販されている。例えばアミノアルキルトリアルコキシシラン、メチルアミノアルキルトリアルコキシシランおよびピリジルアルキルトリアルコキシシランを有するシランが市販されている。クロロプロピルアルキルトリクロロシランおよびクロロプロピルアルキルトリアルコキシシランなどの他のシランも市販されている。これらはイミダゾールと結合および反応して、イミダゾリルアルキルシリル表面種を生成することができるか、またはピリジンと結合および反応して、ピリジルアルキルシリル表面種を生成することができる。これに限定されるわけではないが、スルホプロピルトリシラノール、カルボキシエチルシラントリオール、2−(カルボメトキシ)エチルメチルジクロロシラン、2−(カルボメトキシ)エチルトリクロロシラン、2−(カルボメトキシ)エチルトリメトキシシラン、n−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、三酢酸、(2−ジエチルホスファトエチル)トリエトキシシラン、2−(クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシランおよび2−(クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシランを含む他の酸性修飾剤も市販されている。
グリニャール反応およびヒドロシリル化を含む一般的な合成プロトコルを用いてこれらの種類のシランを合成することは、当業者に既知である。生成物は、クロマトグラフィー、再結晶または蒸留によって精製することができる。
イソシアネートなどの他の添加剤も、市販されているか、または当業者が合成することができる。一般的なイソシアネート形成プロトコルは、第一級アミンとホスゲンまたはトリホスゲンとして既知の試薬との反応である。
一態様において、本開示は、対象の化合物を混合物から分離する方法に関し、該方法は、(a)対象の化合物を含有する混合物を提供すること、(b)クロマトグラフィーカラムを有するクロマトグラフィーシステムに混合物の一部を導入すること、(c)分離された対象化合物をカラムから溶離させることを含み、カラムは以下の構造(i):
[X](W)a(Q)b(T)c (i)
を有する固定相を有し、式中:
Xは、シリカ、金属酸化物、無機−有機ハイブリッド材料、ブロックコポリマーの群またはこれの組み合わせを含有するクロマトグラフィー基材であり、
Wは、水素およびヒドロキシルから成る群から選択され、WはXの表面に結合し、
Qは、低い水分濃度を有するクロマトグラフィー条件下で時間に対する分析物の保持の変化を最小化する第1の置換基であり、
Tは、クロマトグラフィー的に分析物を保持する第2の置換基であり、Tは1個以上のモノ芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族基を有し、各基は脂肪族基によって場合により置換され、ならびに
bおよびcは正の数であり、0.05≦(b/c)≦100およびa≧0である。
種々の実施形態において、クロマトグラフィー材料の選択性は、Qおよび/もしくはTの選択、表面上のQおよび/もしくはTの密度、またはこれの組み合わせによって制御することができるか、または影響されることができる。幾つかの実施形態において、QおよびTはどちらも、対象の化合物の保持で役割を果たす。他の実施形態において、Tは、それぞれ異なる対象の化合物を選択的に保持する。
種々の実施形態において、本開示は、リガンドを結合することができる結合クロマトグラフィー材料を提供する。本発明の結合方法によって達成される高密度の被覆率は、従来のSFC材料で現在実施されているシラン結合化学作用よりも2倍から3倍高くなることがある。Qおよび/またはTの高い被覆率と他の特性とを組み合わせることにより、表面シラノールと分析物との相互作用を妨げることができる。
種々の実施形態において、本開示は結合相の高い密度を提供し、この高い密度により保持が増加して、表面シラノールとの分析物との相互作用または他の二次的保持機構によって生じる保持のドリフトもしくは変化が防止される。これらの二次的および微量の選択性成分の排除により、とりわけ塩基性分析物について、ピーク形状およびカラムピークキャパシティが大きく改善する。
種々の実施形態において、本開示は、混合表面官能基の均一な被覆率をもたらすカップリング化学作用に基づく、2成分系の使用を提供する。異なる表面化学作用を備える2種の別個の粒子が混合される混合粒子床と違って、この材料は全体にわたって均一で、予測可能な表面特性を有する。このような材料で充填されたカラムは、カラム充填中の粒子混合不足または粒子タイプ分離によってクロマトグラフィー的に不安定となりにくい。
種々の実施形態において、本開示は、単一粒子スラリーの使用によって容易となるカラム充填を提供する。
種々の実施形態において、本開示は、混合粒子または多粒子系床を使用することなく、単一カラム中の酸性、中性および塩基性分析物に対する選択性が向上したクロマトグラフィー充填材を提供する。
種々の実施形態において、本開示は、支持体の選択性を変更するために容易に操作され、クロマトグラフィー分離の広範な選択肢を与えることができる、粒子表面での成分の比を提供する。
種々の実施形態において、本開示は、選択性リガンドの添加前、添加中または添加後のいずれかにおいて、表面反応基の重合または架橋剤の添加のどちらかによって、シラン表面修飾剤の架橋膜が形成される結合化学作用を提供する。
ある他の実施形態において、本開示のクロマトグラフィー材料は非多孔性である。別の実施形態において、本開示のクロマトグラフィー材料は、約1から約14のpH、約10から約14のpHまたは約1から約5のpHにて加水分解的に安定である。
別の態様において、本開示は、クロマトグラフィー材料がクロマトグラフィー表面内に分散したナノ粒子または1を超えるナノ粒子の混合物をさらに含む、本明細書で記載するような材料を提供する。
ある実施形態において、ナノ粒子は、ナノコンポジットの20重量%未満、ナノコンポジットの10重量%未満またはナノコンポジットの5重量%未満で存在する。
他の実施形態において、ナノ粒子は、結晶質または非晶質であり、炭化ケイ素、アルミニウム、ダイヤモンド、セリウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ジルコニウム、バリウム、セリウム、コバルト、銅、ユウロピウム、ガドリニウム、鉄、ニッケル、サマリウム、ケイ素、銀、チタン、亜鉛、ホウ素、これの酸化物またはこれの窒化物であることができる。特定の実施形態において、ナノ粒子は、ナノダイヤモンド、炭化ケイ素、二酸化チタンおよび立方晶−ホウ窒化物から成る群から選択される1つ以上の部分を含む物質である。他の実施形態において、ナノ粒子は、直径200nm以下、直径100nm以下、直径50nm以下または直径20nm以下であり得る。
1つ以上の実施形態において、Qは:
によって表され、
式中:
n
1は、1−30の整数であり;
n
2は、1−30の整数であり;
R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、フルオロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、低級アルキル、保護または脱保護アルコールおよび双性イオンから成る群から選択され;
Zは、
(a)式(B
1)
x(R
5)
y(R
6)
zSi−を有する表面結合基であって、式中、xが1−3の整数であり、yが0−2の整数であり、zが0−2の整数であり、およびx+y+z=3であり;R
5およびR
6がそれぞれ独立してメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、置換または非置換アリール、環式アルキル、分枝アルキル、低級アルキル、保護または脱保護アルコール、双性イオン基およびシロキサン結合から成る群から選択され;ならびにB
1がシロキサン結合である、表面結合基;
(b)直接炭素−炭素結合形成を介したまたはヘテロ原子、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、イミド、尿素、カーボネート、カルバメート、ヘテロ環、トリアゾールもしくはウレタン結合を介した表面有機官能性ハイブリッド基への結合;または
(c)材料の表面に共有結合していない、吸着された表面基であり;
Yは、埋め込み極性官能基であり;ならびに
Aは、親水性末端基、官能性化基、水素、ヒドロキシル、フルオロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、低級アルキルおよび極性化性基から成る群から選択される。
1つ以上の実施形態において、Tは:
によって表され、
式中:
m
1は、1−30の整数であり;
m
2は、1−30の整数であり;
m
3は、1−3の整数であり;
R
7、R
8、R
9およびR
10はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、フルオロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、低級アルキル、保護または脱保護アルコール、双性イオン、芳香族炭化水素基およびヘテロ環芳香族炭化水素基から成る群から選択され;
Zは、
(a)式(B
1)
x(R
5)
y(R
6)
zSi−を有する表面結合基であって、式中、xが1−3の整数であり、yが0−2の整数であり、zが0−2の整数であり、x+y+z=3であり;R
5およびR
6がそれぞれ独立してメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、置換または非置換アリール、環式アルキル、分枝アルキル、低級アルキル、保護または脱保護アルコール、双性イオン基およびシロキサン結合から成る群から選択され;ならびにB
1がシロキサン結合である、表面結合基;
(b)直接炭素−炭素結合形成を介したまたはヘテロ原子、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、イミド、尿素、カーボネート、カルバメート、ヘテロ環、トリアゾールもしくはウレタン結合を介した表面有機官能性ハイブリッド基への結合;または
(c)材料の表面に共有結合していない、吸着された表面基であり;
Yは、埋め込み極性官能基であり;
Dは、結合、N、O、S、
−(CH
2)
0−12−N−R
11R
12、
−(CH
2)
0−12−O−R
11、
−(CH
2)
0−12−S−R
11、
−(CH
2)
0−12−N−(CH
2)
0−12−R
11R
12、
−(CH
2)
0−12−O−(CH
2)
0−12−R
11、
−(CH
2)
0−12−S−(CH
2)
0−12−R
11、
−(CH
2)
0−12−S(O)
1−2−(CH
2)
0−12−N−R
11R
12、
−(CH
2)
0−12−S(O)
1−2−(CH
2)
0−12−O−R
11、
−(CH
2)
0−12−S(O)
1−2−(CH
2)
0−12−S−R
11;
−(CH
2)
0−12−S(O)
1−2−(CH
2)
0−12−N−(CH
2)
0−12−R
11R
12、
−(CH
2)
0−12−S(O)
1−2−(CH
2)
0−12−O−(CH
2)
0−12−R
11および
−(CH
2)
0−12−S(O)
1−2−(CH
2)
0−12−S−(CH
2)
0−12−R
11から成る群から選択され;
R
11は、第1のモノ芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族基であり;ならびに
R
12は、水素、脂肪族基または第2のモノ芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基もしくはポリヘテロ環芳香族基であり、式中、R
11およびR
12は、脂肪族基、ハロゲン、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシル基、アルキルカルボキシ基、アルキルチオ基およびニトロ基から成る群から選択される1個以上の基によって場合により置換される。
幾つかの実施形態において、R11およびR12の第1または第2のモノ芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族は、少なくとも2個の芳香族環を有するポリ芳香族またはポリヘテロ環芳香族炭化水素であることができる。R11およびR12の第1または第2のモノ芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族は、少なくとも3個の芳香族環を有するポリ芳香族またはポリヘテロ環芳香族炭化水素であることもできる。R11およびR12の第1または第2のモノ芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族は、少なくとも4個の芳香族環を有するポリ芳香族またはポリヘテロ環芳香族炭化水素であることもできる。
一実施形態において、R11またはR12の第1または第2のモノ芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族基は、フラン、ピロール、ピロリン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、チオフェン、インデン、インドリジン、インドール、イソインドール、インドリン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール(benzthiazole)、ナフタレン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、1,8−ナフチリジン、キヌクリジン、フルオレン、カルバゾール、アントラセン、アクリジン、フェナジン(phanazine)、フェノチアジン、フェノキサジン、ピレンおよびこれの誘導体から成る群から選択され、ここで該基は非置換であるか、または場合により脂肪族基によって置換されている。
他の実施形態において、R11またはR12の第1または第2のモノ芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族は、少なくとも1個のC1−C24脂肪族基によって置換することができる。特に、該基は、少なくとも1個のC2−C22脂肪族基、1個のC3−C20脂肪族基、1個のC4−C18脂肪族基、1個のC5−C16脂肪族基、1個のC6−C14脂肪族基、1個のC7−C12脂肪族基、1個のC8−C10脂肪族基または1個の上述の炭素長の任意の組み合わせの脂肪族基、例えばC8−C18脂肪族基または本開示で記載するような他の種々の大きさの基によって置換することができる。
R11またはR12は、アミノアントラセン(例えば1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセンまたは9−アミノアントラセン)またはメチルアミノアントラセン(例えば1−メチルアミノアントラセン、2−メチルアミノアントラセンまたは9−メチルアミノアントラセン)であることができる。アミノアントラセンまたはメチルアミノアントラセンは、環構造上で1個以上の(one more)脂肪族基、例えば低級アルキルによって置換することができる。幾つかの実施形態において、アミノアントラセンまたはメチルアミノアントラセンは、式(X)−アミノ−(Y)−アルキル−アントラセンまたは(X)−メチルアミノ−(Y)−アルキル−アントラセンを有することができ、式中、Xは、1、2または9であり、Yは、アントラセン上の炭素位置を表す1−10である(例えば1−アミノ−1−メチル−アントラセン;1−アミノ−2−メチル−アントラセン;1−アミノ−3−メチル−アントラセン;1−アミノ−4−メチル−アントラセン;1−アミノ−5−メチル−アントラセン;1−アミノ−6−メチル−アントラセン;1−アミノ−7−メチル−アントラセン;1−アミノ−8−メチル−アントラセン;1−アミノ−9−メチル−アントラセン;1−アミノ−10−メチル−アントラセン;1−メチルアミノ−1−メチル−アントラセン;1−メチルアミノ−2−メチル−アントラセン;1−メチルアミノ−3−メチル−アントラセン;1−メチルアミノ−4−メチル−アントラセン;1−メチルアミノ−5−メチル−アントラセン;1−メチルアミノ−6−メチル−アントラセン;1−メチルアミノ−7−メチル−アントラセン;1−メチルアミノ−8−メチル−アントラセン;1−メチルアミノ−9−メチル−アントラセン;および1−メチルアミノ−10−メチル−アントラセンなど)。
他の実施形態において、アミノアントラセンまたはメチルアミノアントラセンは、式(X)−アミノ−(Y)−アルキル−(Z)−アルキル−アントラセンまたは(X)−メチルアミノ−(Y)−アルキル−(Z)−アルキル−アントラセンを有することができ、式中、Xは、1、2または9であり、YおよびZは、アントラセン上の炭素位置を表す1−10であり、ただしYおよびZは同じではない(例えば1−アミノ−1−メチル−2−メチル−アントラセン;1−アミノ−1−メチル−3−メチル−アントラセン;1−アミノ−1−メチル−4−メチル−アントラセン;1−アミノ−1−メチル−5−メチル−アントラセン;1−アミノ−1−メチル−6−メチル−アントラセン;1−アミノ−1−メチル−7−メチル−アントラセン;1−アミノ−1−メチル−8−メチル−アントラセン;1−アミノ−1−メチル−9−メチル−アントラセン;1−アミノ−1−メチル−10−メチル−アントラセンなど)。アミノアントラセンまたはメチルアミノアントラセンは環構造上で第2の極性基、例えばアミンによって2置換することができる(例えば1−アミノ,4−N,N−ジメチルアミノアントラセン)。
R11またはR12は、ナフチルアミン(例えば1−ナフチルアミンもしくは2−ナフチルアミン)またはメチルナフチルアミン(例えば1−メチルナフチルアミンもしくは2−メチルナフチルアミン)であることができる。ナフチルアミンまたはメチルナフチルアミンは、1個以上の(one more)脂肪族基、例えば低級アルキルによって置換することができる。幾つかの実施形態において、ナフチルアミンまたはメチルナフチルアミンは、式(X’)−アミノ−(Y’)−アルキル−ナフタレンまたは(X’)−メチルアミノ−(Y’)−アルキル−ナフタレンを有することができ、式中、X’は1または2であり、Y’は、ナフタレン上の炭素位置を表す1−8である(例えば1−アミノ−1−メチル−ナフタレン;1−アミノ−2−メチル−ナフタレン;1−アミノ−3−メチル−ナフタレン;1−アミノ−4−メチル−ナフタレン;1−アミノ−5−メチル−ナフタレン;1−アミノ−6−メチル−ナフタレン;1−アミノ−7−メチル−ナフタレン;1−アミノ−8−メチル−ナフタレン;9および10位は、置換不可能である;1−メチルアミノ−1−メチル−ナフタレン;1−メチルアミノ−2−メチル−ナフタレン;1−メチルアミノ−3−メチル−ナフタレン;1−メチルアミノ−4−メチル−ナフタレン;1−メチルアミノ−5−メチル−ナフタレン;1−メチルアミノ−6−メチル−ナフタレン;1−メチルアミノ−7−メチル−ナフタレン;1−メチルアミノ−8−メチル−ナフタレンなど)。
他の実施形態において、ナフチルアミンまたはメチルナフチルアミンは、式(X’)−アミノ−(Y’)−アルキル−(Z’)−アルキル−ナフタレンまたは(X’)−メチルアミノ−(Y’)−アルキル−(Z’)−アルキル−ナフタレンを有することができ、式中、X’は1または2であり、Y’およびZ’は、ナフタレン上の炭素位置を表す1−10であり、ただしY’およびZ’は同じではない(例えば1−アミノ−1−メチル−2−メチル−ナフタレン;1−アミノ−1−メチル−3−メチル−ナフタレン;1−アミノ−1−メチル−4−メチル−ナフタレン;1−アミノ−1−メチル−5−メチル−ナフタレン;1−アミノ−1−メチル−6−メチル−ナフタレン;1−アミノ−1−メチル−7−メチル−ナフタレン;1−アミノ−1−メチル−8−メチル−ナフタレンなど)。
R11またはR12は、アミノフェナントレン(例えば1−アミノフェナントレン、2−アミノフェナントレン、3−アミノフェナントレン、4−アミノフェナントレンもしくは9−アミノフェナントレン)またはメチルアミノフェナントレン(例えば1−メチルアミノフェナントレン、2−メチルアミノフェナントレン、3−メチルアミノフェナントレン、4−メチルアミノフェナントレンもしくは9−メチルアミノフェナントレン)であることができる。アミノフェナントレンまたはメチルアミノフェナントレンは、環構造上で1個以上の(one more)脂肪族基、例えば低級アルキルによって置換することができる。幾つかの実施形態において、アミノフェナントレンまたはメチルアミノフェナントレンは、式(X”)−アミノ−(Y”)−アルキル−フェナントレンまたは(X”)−メチルアミノ−(Y”)−アルキル−フェナントレンを有することができ、式中、Xは1、2、3、4または9であり、Yはフェナントレン上の炭素位置を表す1−10である(例えば1−アミノ−1−メチル−フェナントレン;1−アミノ−2−メチル−フェナントレン;1−メチルアミノ−1−メチル−フェナントレン;1−メチルアミノ−2−メチル−フェナントレンなど)。
他の実施形態において、アミノフェナントレンまたはメチルアミノフェナントレンは、式(X”)−アミノ−(Y”)−アルキル−(Z”)−アルキル−フェナントレンまたは(X”)−メチルアミノ−(Y”)−アルキル−(Z”)−アルキル−フェナントレンを有することができ、式中、Xは1、2、3、4または9であり、YおよびZは、フェナントレン上の炭素位置を表す1−10であり(接合炭素はカウントしない。)、ただしYおよびZは同じではない(例えば1−アミノ−1−メチル−2−メチル−フェナントレンなど)。
同様に、R11またはR12は、アミノピレン(例えば1−アミノピレン、2−アミノピレン、3−アミノピレン、4−アミノピレンもしくは5−アミノピレン)またはメチルアミノピレン(例えば1−メチルアミノピレン、2−メチルアミノピレン、3−メチルアミノピレン、4−メチルアミノピレンもしくは5−メチルアミノピレン)であることができる。アミノピレンおよびメチルアミノピレンは、アミノアントラセンおよびメチルアミノアントラセンと同様に置換することができる。
同様に、R11またはR12は、アミノクリセン(例えば1−アミノクリセン、2−アミノクリセン、3−アミノクリセン、4−アミノクリセン、5−アミノクリセンもしくは6−アミノクリセン)またはメチルアミノクリセン(例えば1−メチルアミノクリセン、2−メチルアミノクリセン、3−メチルアミノクリセン、4−メチルアミノクリセン、5−メチルアミノクリセンもしくは6−メチルアミノクリセン)であることができる。アミノクリセンおよびメチルアミノクリセンは、アミノアントラセンおよびメチルアミノアントラセンと同様に置換することができる。
幾つかの実施形態において、Tは、以下の構造:
の1つによって示され、
式中、各Eは独立して、結合またはヒドロキシル、フルオロ、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、低級アルキル、保護または脱保護アルコール、双性イオン、芳香族炭化水素基もしくはヘテロ環芳香族炭化水素基によって場合により置換することができる低級アルキルであり、Z、Y、R
9、m
1、m
2およびDは、上で定義した通りである。
他の実施形態において、Tは以下の構造:
の1つによって示され、
式中、Z、Y、R
9、m
1、m
2およびDは、上で定義した通りである。
幾つかの実施形態において、bおよびcは正の数であり、比0.05≦(b/c)≦100およびa≧0である。幾つかの実施形態において、QおよびTは異なるが、他の実施形態において、QおよびTは同じである。Qは2個以上の異なる部分を含むことができ、Tは2個以上の異なる部分を含むことができる。幾つかの実施形態において、第1、第2、第3、第4および第5の画分はそれぞれ独立して、約0−100、1−99、5−95、10−90、20−80、30−70、40−60、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95%である。
1つ以上の実施形態において、Qは非極性である。幾つかの実施形態において、Qは、ホウ酸塩またはニトロ官能基を含む。幾つかの実施形態において、Qは、
の1つによって表され、
式中、Zは、式(B
1)
x(R
5)
y(R
6)
zSi−を有する表面結合基を含むことができ、xは1−3の整数であり、yは0−2の整数であり、zは0−2の整数であり、x+y+z=3である。R
5およびR
6の各出現は独立して、メチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソプロピル、テキシル、置換または非置換アリール、環式アルキル、分枝アルキル、低級アルキル、保護または脱保護アルコールまたは双性イオン基を表すことができ、B
1はシロキサン結合を表すことができる。
別の実施形態において、Zは、直接炭素−炭素結合形成を介したまたはヘテロ原子、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、イミド、尿素、カーボネート、カルバメート、ヘテロ環、トリアゾールもしくはウレタン結合を介した表面有機官能性ハイブリッド基への結合である。また別の実施形態において、Zは、材料の表面に共有結合していない、吸着された表面基である。
幾つかの実施形態において、Tは、
の1つによって表され、
式中、Zは、式(B
1)
x(R
5)
y(R
6)
zSi−を有する表面結合基を含むことができ、xは1−3の整数であり、yは0−2の整数であり、zは0−2の整数であり、x+y+z=3である。R
5およびR
6の各出現は独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、置換または非置換アリール、環式アルキル、分枝アルキル、低級アルキル、保護または脱保護アルコール、双性イオン基およびシロキサン結合を表すことができ、B
1はシロキサン結合を表すことができる。幾つかの実施形態において、Zは、直接炭素−炭素結合形成を介したまたはヘテロ原子、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、イミド、尿素、カーボネート、カルバメート、ヘテロ環、トリアゾールもしくはウレタン結合を介した表面有機官能性ハイブリッド基への結合である。幾つかの実施形態において、Zは、材料の表面に共有結合していない、吸着された表面基である。
幾つかの実施形態において、R11またはR12の第1または第2のモノ芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族は、シクロオレフィンに変換することができる。例えば、ピリジン基は、ある条件下の溶液中でシクロオレフィンに変換され得る。ある環境において、シクロオレフィンは、混合物から対象の構造的に関連する化合物を保持および分離するために十分な不飽和を保持している。特定の状況において、シクロオレフィンを含有する本開示の固定相は、ビタミンに関連するクリティカルペア(例えばD2およびD3、K1およびK2)を保持、分離および分割することができる。
QおよびT置換基は重合することもできる。QおよびT置換基は、これ自体にそれぞれ重合することができる、例えばQ−Q、T−Tまたは相互に対して重合することができる、例えばQ−T。図4に示すように、重合は、表面レベルにてシロキサン基の間で、炭化水素置換基の間でまたは両方で生じることができる。置換基の間の重合によって、架橋表面コーティングもしくは表面コーティング上の第2のコーティング、例えば重合され得るもしくは重合され得ない置換基の第2の層、または両方の混合物が生成される。QおよびT置換基の重合度は変化させることができる。例えば、Qの第1の画分はXに結合することができ、Qの第2の画分は重合することができる。同様に、Tの第1の画分はXに結合することができ、Tの第2の画分は重合することができる。別の実施形態において、Qの第1の画分はXに結合することができ、Qの第2の画分は重合することができ、Tの第3の画分はXに結合することができ、Tの第4の画分は重合することができる。QおよびTの重合部分は、これ自体にまたは相互に重合することができる。
上の態様のいずれかの1つ以上の実施形態において、Xは、クロマトグラフィー条件下でクロマトグラフィー移動相によってアルコキシ化を受けるコア表面を有する高純度クロマトグラフィー材料である。Xは、クロマトグラフィー条件下でクロマトグラフィー移動相によってアルコキシ化を受けるコア表面を有するクロマトグラフィー材料であることができる。幾つかの実施形態において、Qを含む官能基はジオールである。Tを含む官能基は、アミン、エーテル、チオエーテルまたはこれの組み合わせであることができる。Tはキラル分離に適したキラル官能基を含むことができ、Qはキラル分離に適したキラル官能基を含むことができ、またはTおよびQはどちらもキラル分離に適したキラル官能基を含むことができる。
上の態様の1つ以上の実施形態において、比b/cは、約0.05−75、0.05−50、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80または90である。幾つかの実施形態において、Xの表面はシリカを含まず、b=0またはc=0である。幾つかの実施形態において、合計表面被覆率は、約0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、5、6、7または8μmol/m2を超える。
上の態様の幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー固定相は、30日間にわたって≦5%、30日間にわたって≦4%、30日間にわたって≦3%、30日間にわたって≦2%、30日間にわたって≦1%、10日間にわたって≦5%、10日間にわたって≦4%、10日間にわたって≦3%、10日間にわたって≦2%、10日間にわたって≦1%、3日間にわたって≦5%、3日間にわたって≦4%、3日間にわたって≦3%、3日間にわたって≦2%、3日間にわたって≦1%、30回の実行にわたって≦5%、30回の実行にわたって≦4%、30回の実行にわたって≦3%、30回の実行にわたって≦2%、30回の実行にわたって≦1%、10回の実行にわたって≦5%、10回の実行にわたって≦4%、10回の実行にわたって≦3%、10回の実行にわたって≦2%、10回の実行にわたって≦1%、3回の実行にわたって≦5%、3回の実行にわたって≦4%、3回の実行にわたって≦3%、3回の実行にわたって≦2%または3回の実行にわたって≦1%の保持のドリフトまたは変化を示す。
幾つかの実施形態において、コア材料は、シリカ材料から本質的に成る。場合により、コア材料は、有機−無機ハイブリッド材料または表面多孔性材料から本質的に成る。1つ以上の実施形態において、コア材料は、ハイブリッド表面層を有する無機材料、無機表面層を有するハイブリッド材料、包囲ハイブリッド層または異なるハイブリッド表面層を有するハイブリッド材料から本質的に成る。固定相材料は、場合により複数の粒子、モノリスまたは表面多孔性材料の形態であることができる。幾つかの実施形態において、固定相材料は、クロマトグラフィー向上性細孔形状を有しないが、一方で他の実施形態において、固定相材料は、クロマトグラフィー向上性細孔形状を有する。固定相材料は、球状材料、(例えばトロイド、多面体を含む)非球状材料の形態であることができる。ある実施形態において、固定相材料、高度に球状のコア形態、棒形状コア形態、曲棒形状コア形態、トロイド形状コア形態またはダンベル形状コア形態を有する。ある実施形態において、固定相材料は、高度球状、棒形状、曲棒形状、トロイド形状、またはダンベル形状の形態の混合物を有する。
幾つかの実施形態において、固定相材料は、約25から1100m2/g、約150から750m2/gまたは約300から500m2/gの表面積を有する。幾つかの実施形態において、固定相材料は、約0.2から2.0cm3/gまたは約0.7から1.5cm3/gの細孔容積を有する。幾つかの実施形態において、固定相材料は、約105m2/g未満、約80m2/g未満または約50m2/g未満のマイクロポア表面積を有する。固定相材料は、約20から1500Å、約50から1000Å、約60から750Åまたは約65から200Åの平均孔径を有することができる。幾つかの実施形態において、複数の粒子は、約0.2から100ミクロン、約0.5から10ミクロンまたは約1.5から5ミクロンのサイズを有する。
1つ以上の実施形態において、Xはシリカコアを含み、c=0であり、Qは≧2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.5、4.0、4.5もしくは5μmol/m2の合計表面被覆率を有し、またはXは、非シリカコアまたはシリカ−有機ハイブリッドコアを含み、c=0であり、Qは≧0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5もしくは5μmol/m2の合計表面被覆率を有し、またはb>0、c>0であり、Qは≧0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5もしくは5μmol/m2の合計表面被覆率を有する。
他の実施形態において、Qは、≧0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0μmol/m2の合計表面被覆率を有する。他の実施形態において、Tは、≧0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0または3.5μmol/m2の合計表面被覆率を有する。Tは、約0.1から約4.0μmol/m2もしくは約0.2から約3.9μmol/m2もしくは約0.3から約3.8μmol/m2もしくは約0.4から約3.7μmol/m2もしくは約0.5から約3.6μmol/m2もしくは約1.0から約3.5μmol/m2もしくは約1.2から約3.0μmol/m2または値の任意の組み合わせ、例えば約3.0から約4.0μmol/m2の合計表面被覆率も有する。
他の実施形態において、QおよびTの総合計被覆率は、≧0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.5、6.0または6.5μmol/m2である。
クロマトグラフィー固定相は、順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用液体クロマトグラフィーに適合させることができる。
クロマトグラフィー固定相は、放射状調整細孔、非放射状調整細孔、規則細孔、不規則細孔、単分散細孔、非単分散細孔、平滑面、粗面またはこれの組み合わせを含むことができる。1つ以上の実施形態において、Tは、1種のイオン性基を有し、Tは、1種より多いイオン性基を有し、Tは、同じpKaの2種以上のイオン性基を有し、またはTは、異なるpKaの2種以上のイオン性基を有する。
別の実施形態において、本開示は、以下の構造(i):
[X](W)a(Q)b(T)c (i)
を有するクロマトグラフィー固定相に関し、
式中、Xは、シリカ、金属酸化物、無機−有機ハイブリッド材料、ブロックコポリマーの群またはこれの組み合わせを含むクロマトグラフィー基材であり、Wは、水素およびヒドロキシルから成る群から選択され、WはXの表面に結合し、Qは、低い水分濃度を有するクロマトグラフィー条件下で時間に対する分析物の保持の変化を最小化する第1の置換基であり、Tは、クロマトグラフィー的に分析物を保持する第2の置換基であり、Tは1個以上の芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族炭化水素基を有し、各基は、脂肪族基によって場合により置換されており、ならびにbおよびcは、正の数であり、0.05≦(b/c)≦100およびa≧0である。
別の実施形態において、本開示は、順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用液体クロマトグラフィー用のカラム、キャピラリカラム、マイクロ流体デバイスまたは装置に関し、該デバイスまたは装置は、入口および出口を有するチャンバーを画定する少なくとも1つの壁を有するハウジング、ならびにハウジング内に配置された本開示に記載されるような固定相であって、順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用液体クロマトグラフィーに適合したハウジングおよび固定相を含む。
別の実施形態において、本開示は、順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用液体クロマトグラフィー用のキットであって、該キットは、入口および出口を有するチャンバーを画定する少なくとも1つの壁を有するハウジング、ならびにハウジング内に配置された本開示に記載するような固定相を含み、ハウジングおよび固定相が順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用液体クロマトグラフィーに適合し、;および該ハウジングおよび固定相を用いた順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用液体クロマトグラフィーを行うための説明書を含む。
キットは、入口および出口を有するチャンバーを画定する少なくとも1つの壁を有するハウジングならびにハウジング内に配置された本開示のいずれかの実施形態による固定相を含むことができる。デバイスは、事前形成されたフリット、相互連材料によって生成されたフリットまたはフリットのないデバイスを有することができる。ハウジングおよび固定相は、順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーもしくは疎水性相互作用液体クロマトグラフィーまたはこれの組み合わせに適合させることができる。さらに、ハウジングおよび固定相を用いて順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーもしくは疎水性相互作用液体クロマトグラフィーまたはこれの組み合わせを行うための説明書を含めることができる。
従って、本開示のキットを使用して、本明細書に記載する本発明の方法を実施することができる。さらに、本発明のキットを使用して、以下に記載するものを含む、多種多様の異なる試料および試料タイプを分析することができる。
1つ以上の実施形態において、本発明は、保持のドリフトまたは変化の作用を低減または軽減するために本開示の態様を含有するキットを検討することができる。例えば、キットは、本開示の固定相媒体を充填したクロマトグラフィーカラムを含有することができる。幾つかの実施形態において、充填カラムは、標準クロマトグラフィーシステム(例えばWaters Acquity(R)クロマトグラフィーシステムなどの市販のクロマトグラフィーシステム)において直接使用することができる。キットは、使用のための取扱説明書をさらに含有することができる。さらに、キットは、機器の較正のための、および/または保持のドリフトまたは変化が実質的にないことを確認するための純粋分析物のストック試料をさらに含有することができる。キットは、保持のドリフトまたは変化を軽減するために、上記のあらゆる構成要素(例えば、固定相、充填カラムまたはクロマトグラフィー装置)を含むことができる。
別の実施形態において、本開示は、順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用液体クロマトグラフィーにおける保持のドリフトを軽減または防止する方法であって、本開示に記載するようなクロマトグラフィー固定相を含むクロマトグラフィーデバイスを用いて試料をクロマトグラフィー的に分離し、保持のドリフトを軽減または防止することを含む方法に関する。
1つ以上の実施形態において、保持のドリフトまたは変化の軽減または防止は、30日間にわたって≦5%、30日間にわたって≦4%、30日間にわたって≦3%、30日間にわたって≦2%、30日間にわたって≦1%、10日間にわたって≦5%、10日間にわたって≦4%、10日間にわたって≦3%、10日間にわたって≦2%、10日間にわたって≦1%、3日間にわたって≦5%、3日間にわたって≦4%、3日間にわたって≦3%、3日間にわたって≦2%、3日間にわたって≦1%、30回の実行にわたって≦5%、30回の実行にわたって≦4%、30回の実行にわたって≦3%、30回の実行にわたって≦2%、30回の実行にわたって≦1%、10回の実行にわたって≦5%、10回の実行にわたって≦4%、10回の実行にわたって≦3%、10回の実行にわたって≦2%、10回の実行にわたって≦1%、3回の実行にわたって≦5%、3回の実行にわたって≦4%、3回の実行にわたって≦3%、3回の実行にわたって≦2%または3回の実行にわたって≦1%の保持のドリフトまたは変化を含む。幾つかの実施形態において、保持のドリフトまたは変化の軽減または防止は、保持に対するクロマトグラフィー材料のアルコキシル化および/または脱アルコキシル化の効果を実質的に排除することを含む。
化学修飾クロマトグラフィーコア材料の概念は、本明細書で使用する場合、例えば極性シランまたは他の官能基によってクロマトグラフィーコアを官能化して、保持のドリフトまたは変化を軽減または回避することを含むと理解される。例えば、官能化は、分析物とクロマトグラフィーコアの間のクロマトグラフィー相互作用を本質的に妨げることができる(例えばコア表面シラノールおよび/またはアルコキシル化シラノールのクロマトグラフィー効果を有効に排除する。)。幾つかの場合において、(例えば非極性基を使用する)官能化は、カラムの保持性を低下させることができる。従って、種々の実施形態において、クロマトグラフィーコア材料の官能化は、クロマトグラフィー的に有用な全体的保持を保存または達成するための、分析物とクロマトグラフィー的に相互作用する親水性基、極性基、イオン化性基および/または荷電官能基の使用を含むことができる。このような末端キャッピング基は、例えば標準的な結合化学によって導入することができる。
幾つかの実施形態において、官能化は、永続的な結合を与える。従って、クロマトグラフィー相に適切な官能化を選択することが重要である。好ましい実施形態において、クロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィー的に望ましい特性(例えば全体的保持)を有する。従って、幾つかの実施形態において、従来のクロマトグラフィー材料の望ましい(例えば全体的保持)特性を模倣することができる特性を有する官能化を選択することが重要である。
種々の実施形態において、官能基の化学的特性は、所望の効果を達成するように選択することができる。例えば、1個以上の親水性基、極性基、イオン化性基および/または荷電官能基を用いて、分析物との望ましい相互作用(例えばクロマトグラフィー的に許容される保持)および/または移動相との望ましい相互作用(例えばクロマトグラフィーコア表面をアルコキシル化し得るアルコールの排除)を得ることができる。同様に、末端キャップの大きさおよび/または立体構造は、コア表面をマスキングするおよび/またはキラル分離を行うように選択することができる。
同様に、官能化の濃度を変化させることができる。幾つかの実施形態において、より大きくおよび/またはより強く相互作用する官能基は、(例えばより小さい官能基と比較して)より低い濃度で保持のドリフトまたは変化を軽減または回避することができる。他の実施形態において、被覆率は、望ましい特性に合わせて調整することができる。例えば、非極性官能基は、(例えば望ましい保持を維持するために)極性官能基よりもより低い被覆率で使用することができる。種々の実施形態において、官能化は、1個以上の極性もしくは非極性末端キャップまたはこれらの組み合わせを使用することができる。幾つかの実施形態において、クロマトグラフィー媒体の表面積は、官能基の変更された極性による保持の低下または上昇を補償するために増加または減少させる。
別の実施形態において、本開示は、本開示に記載するような固定相を調製する方法であって、クロマトグラフィー基材を、ペンダント反応性基を有するシランカップリング剤と反応させること、1つ以上の芳香族炭化水素基、ポリ芳香族炭化水素基、ヘテロ環芳香族炭化水素基またはポリヘテロ環芳香族炭化水素基を含む第2の化学剤を該ペンダント反応性基と反応させること、および残存するいずれの未反応ペンダント反応性基も中和して固定相を生成することを含む方法に関する。
別の実施形態において、本開示は、本開示に記載するような固定相を調製する方法であって、ペンダント反応基を有するシランカップリング剤をオリゴマー化すること、コア表面を該オリゴマー化シランカップリング剤と反応させること、1つ以上の芳香族基、ポリ芳香族基、ヘテロ環芳香族基またはポリヘテロ環芳香族炭化水素基を含む第2の化学剤を該ペンダント反応性基と反応させること、ならびに残存するいずれの未反応ペンダント反応性基も中和して固定相を生成することを含む方法に関する。
1つ以上の実施形態において、Qは、以下の構造:
の1つ(one or the)を有する試薬に由来する。
幾つかの実施形態において、Yは、以下の構造:
式中、Y基に結合したR6基およびR7基はそれぞれ個々に、脂肪族基である。ある実施形態において、Y基は結合または脂肪族基でもよい。
上の方法を使用して、本明細書に記載するような材料(例えばクロマトグラフィー固定相材料)のいずれも作ることができる。例えば本開示の方法は、固定相の表面を化学的に修飾するためにクロマトグラフィー固定相(例えばシリカ粒子)を化学試薬(例えば、本明細書で記載するような上記試薬のいずれか)と反応させて、保持のドリフトまたは変化の効果を軽減する方法を含むことができる。
本開示は、本明細書に記載するクロマトグラフィー材料を含む種々の装置(例えばクロマトグラフィー用カラム、キャピラリおよびマイクロ流体デバイスおよびこれらの使用のためのシステム)を含む。複数の例証的な実施例を以下で論じるが、当業者は、本開示が、これに限定されるわけではないが、クロマトグラフィー用カラム、装置、使用方法またはキットを含めて、複数の異なる実施形態を検討できること理解する。
幾つかの実施形態において、本開示は、順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーもしくは疎水性相互作用液体クロマトグラフィーまたはこれの組み合わせのためのカラムまたは装置を提供する。カラムまたは装置は、入口および出口を有するチャンバーを画定する少なくとも1つの壁を有するハウジングならびにハウジング内に配置された本開示のいずれかの実施形態による固定相を含む。デバイスは、事前形成されたフリット、相互連材料によって生成されたフリットまたはフリットのないデバイスを有することができる。ハウジングおよび固定相は、順相クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、溶媒和ガスクロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィーもしくは疎水性相互作用液体クロマトグラフィーまたはこれの組み合わせに適合させることができる。
従って、本開示の装置は、本開示の材料(例えば保持のドリフトまたは変化を低減または軽減するように適合させた化学修飾された固定相などのクロマトグラフィー固定相)を含有(例えば該材料を充填)することができる。さらに、本発明の装置を使用して、本明細書で記載するような本発明の方法を実施することができる。
一実施形態において、本開示は充填カラムの形態である。カラムを本明細書で記載する固定相(例えばクロマトグラフィー材料)によって充填することができる。このようなカラムは、保持のドリフトまたは変化を軽減または回避しながら、異なる種類のクロマトグラフィー(例えば順相クロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、二酸化炭素系クロマトグラフィー、疎水性相互作用液体クロマトグラフィー、親水性相互作用液体クロマトグラフィー、亜臨界流体クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィーおよび溶媒和ガスクロマトグラフィー)を行うために使用することができる。
カラムは、Waters Alliance(R)HPLCシステム、Waters Acquity(R)システムまたはWaters UPC2(R)システムを含む、市販のクロマトグラフィーシステムなどの既存のクロマトグラフィープラットフォームと組み合わせて使用することができる。本開示のカラムは、保持のドリフトまたは変化の作用を軽減しながら、複数の異なるマススループット(例えば、分析規模クロマトグラフィー、分取スケールクロマトグラフィー)用に使用することができる。同様に、本開示は、キャピラリおよびマイクロ流体デバイスならび(例えば市販され、当業者に既知の)これの使用のためのシステムにおいて具体化することができる。カラム、キャピラリおよびマイクロ流体デバイスならびに関連システムの選択は、当業者に容易に理解できる。
種々の実施形態において、本開示による材料は、SFC、HPLCおよび/またはUHPLCシステムで使用するマイクロボアカラムに用途を有することができる。種々の実施形態において、本開示による材料は、高速平衡カラム、長寿命カラム、水安定カラムを有するSFCに用途を有することができる。
本開示を使用して、多くの異なる分野、例えば臨床化学、医学、獣医学、法化学、薬理学、食品産業、業務安全性および環境汚染からの多くの異なる試料からの複数の異なる対象の化合物を保持、分離および/または分析することができる。複数の試料は、これに限定されるわけではないが、限定されないが、有機小分子、タンパク質、核酸、脂質、脂肪酸、炭水化物、ポリマーなどを含む。同様に、本開示は、小分子、極性小分子、医薬品で使用する分析物、生体分子、抗体、ポリマーおよびオリゴマー、糖類、グリカン分析、石油化学薬品分析、脂質分析、ペプチド、リンペプチド、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、極性酸、ポリ芳香族炭化水素、食品分析、化学薬品分析、生物分析、薬物乱用、法医学、殺虫剤、農薬、バイオ後続品、製剤の分離のために使用することができる。
本開示によるクロマトグラフィー分離に適した分析物としては、例えば有機小分子、脂質、ペプチド、核酸、合成ポリマーを含む、本質的にいずれの対象の分子も挙げることができる。
臨床化学の標的分析物としては、生物(例えば人体、動物体、菌類、細菌、ウイルスなど)中に存在するいずれの分子も挙げることができる。例えば臨床化学の標的分析物としては、これに限定されるわけではないが、タンパク質、代謝産物、バイオマーカーおよび薬剤が挙げられる。
ヒト医学および獣医学の標的分析物としては、対象の疾患または状態の診断、予防または処置に使用することができるいずれの分子も挙げることができる。例えばヒト医学および獣医学の標的分析物としては、これに限定されるわけではないが、疾患マーカー、予防剤または治療剤が挙げられる。
法化学の標的分析物としては、犯罪の現場から採取された試料、例えば犠牲者の身体からの試料(例えば組織または流体試料、毛髪、血液、精液、尿など)中に存在するいずれの分子も挙げることができる。例えば臨床化学の標的分析物としては、これに限定されるわけではないが、毒物、薬剤およびこれの代謝産物、バイオマーカーおよび同定化合物が挙げられる。
薬理学の標的分析物としては、医薬品もしくはこれの代謝産物であるまたは薬剤の設計、合成およびモニタリングに使用することができるいずれの分子も挙げることができる。例えば薬理学の標的分析物としては、これに限定されるわけではないが、予防剤および/または治療剤、これのプロドラッグ、中間体および代謝産物が挙げられる。薬理学分析は、例えばジェネリック医薬品の承認、製造およびモニタリングに関連して、生物学的同等性試験を含むことができる。
食品産業および農業の標的分析物としては、食品、飲料および/または他の食品産業/農業製品の安全性のモニタリングに関連する任意の分子を挙げることができる。食品産業の分野からの標的分析物の例としては、これに限定されるわけではないが、病原菌マーカー、アレルゲン(例えばグルテンおよびナッツタンパク質)ならびにマイコトキシンが挙げられる。
標的分析物としては、ポリペプチド(例えば天然および/または非天然に存在するアミノ酸、例えばGly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trp、Cys、Met、Ser、Thr、Tyr、His、Lys、Arg、Asp、Glu、Asn、Gln、セレノシステイン、オルニチン、シトルリン、ヒドロキシプロリン、メチルリシン、カルボキシグルタメートのポリマー)、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質;ペプチド−核酸;ホルモン(例えばペプチドホルモン(例えばTRHおよびバソプレッシン)ならびに合成ポリペプチドおよび工業用ポリペプチドを挙げることができる。
幾つかの実施形態において、対象化合物は、飽和もしくは不飽和脂質、ビタミンまたは多環芳香族炭化水素である。「飽和」という用語は、本明細書で使用する場合、分子のアシル部位に二重結合を含有しない構成要素を示す。「飽和脂質」という用語は、本明細書で使用する場合、分子のアシル鎖部位に二重結合を含有しない脂肪および油の構成要素を示す。「不飽和」という用語は、本明細書で使用する場合、分子中に1個以上の不飽和部位を含有する構成要素を示す。「不飽和脂質」という用語は、本明細書で使用する場合、分子中に1個以上の不飽和部位を含有する脂肪および油の構成要素を示す。これらはトリグリセリド、リン脂質および糖脂質などの分子の脂肪酸部分において、または分子中のアルキル鎖において、例えばカロテノイド、炭化水素および脂溶性ビタミンにおいて発生し得る。脂質は、飽和および不飽和脂肪酸、リン脂質、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、リゾホスホグリセロ脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、サッカロ脂質、カロテノイド、ワックスおよびポリケチドから成る群から選択することができる。
別の実施形態において、本開示を使用して、多環芳香族炭化水素および関連化合物を保持、分離および分割することができる。多環芳香族炭化水素(PAH)は、縮合芳香族環で構成された非官能化芳香族化合物のファミリを形成している。約2000の化合物がPAHとして分類されている。PAHおよびこれの誘導体は、化石燃料の燃焼などの燃焼工程の結果として、環境に広まっている。これらは土壌有機物(フミン酸類)に強く結合し、土壌および他の環境コンパートメントにおけるこれらの分解速度は通常低い。さらに水流に達するPAHは、沈降物中に急速に移行する。
PAHは、家庭でのおよび工業的な燃焼工程、例えば植物油、ハーブ、スパイスおよび他の食品材料の抽出、食品材料の燻製およびグリル焼きなどの間にも生成される。PAHは、毒性および発癌性の化合物である。PAHの存在およびレベルを制御することは、食品安全性ならびに健康および安全規制の状況において重要性を増している。PAHの効果の幾つかは、酵素誘導、免疫抑制、催奇性(teratogenecity)および腫瘍促進である。
特定の実施形態において、脂質は、飽和または不飽和脂肪酸、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリド、リン脂質またはステロイドであることができる。トリグリセリド(TG、トリアシルグリセロール、TAGまたはトリアシルグリセリド)は、グリセロールおよび3個の脂肪酸から誘導されたエステルである。これらは血中脂質として、肝臓からの脂肪細胞脂質および血中グルコースの双方向移動を助けることができる。油源に応じて多くのトリグリセリドがあり、一部は高不飽和性であり、一部はより低い不飽和性である。トリグリセリドは、植物油(通例、より不飽和性である。)および動物脂肪(通例、より飽和性である。)の主要構成要素である。トリグリセリドは、ヒト皮膚油の主成分である。
ステロイドは、相互に接合された4個のシクロアルカン環の特徴的な配置を含有する一種の有機化合物である。ステロイドの例としては、脂質コレステロール、性ホルモンのエストラジオールおよびテストステロンならびに抗炎症薬のデキサメタゾンが挙げられる。ステロイドのコアは、4個の縮合環、即ち3個のシクロヘキサン環と1個のシクロペンタン環の形態を取る、共に結合された17個の炭素原子で構成されている。ステロイドは、この4個の環コアに結合された官能基によって、および環の酸化状態によって変化する。ステロールは、3位のヒドロキシル基およびコレスタンに由来する骨格を備えた、ステロイドの特殊な形態である。
数百種の特徴的なステロイドが植物、動物および真菌に見出されている。すべてのステロイドは、ステロールであるラノステロール(動物および真菌)またはシクロアルテノール(植物)のどちらかから、細胞中で生成される。ラノステロールおよびシクロアルテノールはどちらも、トリテルペンであるスクアレンの環化から誘導される。
他の実施形態において、対象化合物は、ビタミンC、ビタミンBまたはこれの誘導体もしくは組み合わせから成る群から選択される脂溶性ビタミンであることができる。脂溶性ビタミンは、これらが溶解しにくく、強有機溶媒が必要であり、RPLCによって分離されることが多いため興味深い。通例、脂溶性ビタミンは、SFC条件を使用して、C18シラン(ODS)および他のアルキル結合相の使用により分離する。これらの方法は、非常に弱い共溶媒および非常に高いパーセンテージのCO2を移動相で使用することが多い。本開示の利点の1つは、固定相がπ電子の豊富なセレクタ、例えば1−アミノアントラセンによって修飾されていることである。π電子の豊富なセレクタを固定相にカップリングすると、ビタミンD2およびD3またはK1およびK2などの2つのクリティカルペアの間のクロマトグラフィー選択性が最大化される。
本開示の別の利点は、分離を実施するために酸または塩基性添加剤が必要ないように、固定相が比較的高いpKaを有するセレクタを有することである。一実施形態において、本開示は、酸添加剤、塩基性添加剤または両方を含まない移動相を利用する方法に関する。他の実施形態において、本開示は、5.0%未満の、または4.0%、または3.0%、または2.0%、1.0%、または0.5%、または0.2%、または0.1%、または0.05%の酸添加剤、塩基性添加剤または両方を含む移動相を利用する方法に関する。共溶媒としてメタノールによって修飾した二酸化炭素のみを使用すると、高速で汎用的な方法とすることができる。例えば、上述のビタミンのクリティカルペアの分離は、例えば1−アミノアントラセンをセレクタとして有する本開示の固定相を使用して行う。一実施形態において、ビタミンのクリティカルペア間の分割のレベルは、現行の方法より高い(同じカラム長による分割、2μm未満の粒子および50mmカラム長の使用)。
本開示を使用して、ビタミンCおよび関連化合物を保持、分離および分割することができる。ビタミンC[2−オキソ−L−トレオ−ヘキソノ−1,4−ラクトン2,3−エネジオール]、即ちL−アスコルビン酸は、水溶性ビタミンおよびヒトにとっての必須栄養素である。ビタミンCは、体のあらゆる部分における正常な成長および発達ならびに組織修復に必要であるコラーゲンの形成に必須である。ビタミンCは、フリーラジカルによって引き起こされる損傷を阻止し、毒性化学物質および汚染物質を直接低減する抗酸化剤としても機能する。
ヒトは体内でビタミンCを産生しないため、果物や野菜などの食事源から主に取得される。食事でのビタミンCが不足すると、ビタミンC欠乏症が引き起こされることがある。重篤なビタミンC欠乏症は、「壊血病」としても知られ、皮膚の肝斑の生成、海綿状歯肉および粘膜からの出血、または死亡にさえつながる。
現在、ビタミンCは、食餌栄養補助食品としてだけではなく、一部のウイルス感染および末期癌の補助療法としても使用されている。欠乏症を防止するための、成人のビタミンCの推奨される1日の摂取量は、女性で75mg、男性で90mg、許容上限はどちらも2,000mgである。解毒および癌治療における治療的用途のためには、ビタミンCははるかに高い用量で静脈内投与される。ビタミンCの毒性は臨床的にはまれであるが、比較的高用量の経口摂取は、胃の調子が悪くなるおよび下痢につながることがある。ビタミンC血中濃度のアッセイが開発され、栄養状態を評価するために、または治療投薬量を最適化するために、患者および医師によって使用されている。これらの化合物の測定は、ビタミンC栄養状態およびあるビタミンC類似体の効力の有用な指標である。
別の実施形態において、本開示を使用して、ビタミンBおよび関連化合物を保持、分離および分割することができる。Bビタミン類は、細胞代謝において重要な役割を果たす水溶性ビタミンの群である。Bビタミン類はかつて単一のビタミンとして考えられ、単にビタミンBと呼ばれた。後の研究により、これらは同じ食品中に共存することが多い、化学的に別個のビタミンであることが示された。一般に、8種すべてを含有する栄養補助食品は、ビタミンBコンプレックスと呼ばれる。個々のBビタミン栄養補助食品は、各ビタミンの具体的な名称(例えばB1、B2、B3など)で呼ばれる。Bビタミン類の一覧として、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシンまたはナイアシンアミド)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン、ピリドキサールまたはピリドキサミンまたはピリドキシンヒドロクロリド)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(種々のコバラミン;普通は、ビタミン栄養補助食品中のシアノコバラミン)が挙げられる。
ビタミンB化合物の役割は様々である。例えば、チアミンは、炭水化物からのエネルギー生成において中心的な役割を果たす。チアミンは、RNAおよびDNA産生ならびに神経機能に関与する。チアミンの活性形態は、チアミンピロホスフェート(TPP)と呼ばれる補酵素であり、代謝におけるピルベートのアセチル補酵素A(CoA)への変換において役割を果たす。リボフラビンは、電子伝達系、クエン酸サイクルならびに脂肪酸異化(ベータ酸化)のためのエネルギー産生に関与する。ナイアシンは、2種類の構造:ニコチン酸およびニコチンアミドで構成されている。ナイアシンには2種類の補酵素形態:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NADP)がある。どちらも、グルコース、脂肪およびアルコールの代謝におけるエネルギー伝達反応において重要な役割を果たす。NADは、クエン酸サイクルから電子伝達系までの経路を含む代謝反応中に、水素およびこれの電子を担持する。NADPは、脂質および核酸合成における補酵素である。
パントテン酸は、脂肪酸および炭水化物の酸化に関与する。補酵素Aはパントテン酸から合成され、アミノ酸、脂肪酸、ケトン、コレステロール、リン脂質、ステロイドホルモン、神経伝達物質(例えばアセチルコリン)および抗体の合成に関与する。ピリドキシンは通常、ビタミンB6の補酵素形態であるピリドキサール5’−ホスフェート(PLP)として体内に貯蔵されている。ピリドキシンは、アミノ酸および脂質の代謝;神経伝達物質およびヘモグロビンの合成ならびにニコチン酸(ビタミンB3)の産生に関与する。ピリドキシンは、糖新生でも重要な役割を果たす。ビオチンは、脂質、タンパク質および炭水化物の代謝において重要な役割を果たす。ビオチンは、4種類のカルボキシラーゼ:アセテートから脂肪酸の合成に関与する、アセチルCoAカルボキシラーゼ;糖新生に関与する、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ;ロイシンの代謝に関与する、β−メチルクロトニルCoaカルボキシラーゼ;ならびにエネルギー、アミノ酸およびコレステロールの代謝に関与する、ピルベートCoAカルボキシラーゼの重要な補酵素である。
葉酸は、核酸およびアミノ酸の代謝における単一炭素単位の伝達に関与する、テトラヒドロフォレート(THF)の形態の補酵素として作用する。THFはピリミジンヌクレオチド合成に関与するため、とりわけ、急速な成長の時期である妊娠中および幼年期の正常な細胞分裂に必要である。フォレートは、赤血球の産生である赤血球生成も補助する。ビタミンB12は、炭水化物、タンパク質および脂質の細胞代謝に関与する。ビタミンB12は、骨髄における血球、神経鞘およびタンパク質の産生に不可欠である。ビタミンB12は、メチルコバラミンとのメチオニンシンターゼ反応およびアデノシルコバラミンとのメチルマロニルCoAムターゼ反応のための中間代謝における補酵素として機能する。
これらのビタミンのいずれの欠乏症の影響も様々である。ビタミンB1チアミン欠乏症は、脚気を引き起こす。この神経系疾患の症状としては、体重減少、情緒障害、ウェルニッケ脳症(感覚認知障害)、四肢の虚弱および疼痛、不規則心拍期および浮腫(体組織の膨潤)が挙げられる。進行症例では、心不全および死亡が起こることがある。慢性チアミン欠乏症は、健忘症および代償性作話を特徴とする不可逆性認知症である、コルサコフ症候群も引き起こすことがある。
ビタミンB2リボフラビン欠乏症は、リボフラビン欠乏症を引き起こす。症状としては、口唇症(唇の割れ)、高度の日光過敏症、口角炎、舌炎(舌の炎症)、脂漏性皮膚炎または偽性梅毒(pseudo−syphilis)(特に陰嚢または大陰唇および口に影響する。)、咽頭炎(咽喉痛)、充血ならびに咽頭および口腔粘膜の浮腫が挙げられ得る。
ビタミンB3ナイアシン欠乏症は、トリプトファン欠乏症と共に、ペラグラを引き起こす。症状としては、攻撃性、皮膚炎、不眠症、虚弱、精神錯乱および下痢が挙げられる。進行症例においては、ペラグラは認知症および死亡につながり得る(3(+1)のD:皮膚炎、下痢、認知症および死亡。
ビタミンB5パントテン酸欠乏症は、一般的ではないが、座瘡および感覚異常を生じることがある。ビタミンB6ピリドキシン欠乏症は、小球性貧血(ピリドキシルホスフェートがヘム合成の補因子であるため)、うつ病、皮膚炎、高血圧(high blood pressure(hypertension))、水貯留およびホモシステインのレベル上昇につながり得る。ビタミンB7ビオチン欠乏症は通例、成人では症状を引き起こさないが、乳児の成長障害および神経障害につながり得る。複合カルボキシラーゼ欠乏症は、先天性代謝異常であり、食事によるビオチン摂取が正常であっても、ビオチン欠乏症につながることがある。
ビタミンB9葉酸欠乏症は、大球性貧血およびホモシステインのレベル上昇が生じる。妊娠中の女性における欠乏症は、先天性異常につながることがある。妊娠中の補給が推奨されることが多い。研究者らは、葉酸が脳に対する年齢の潜行性影響も遅延し得ることを示している。ビタミンB12コバラミン欠乏症は、大球性貧血、ホモシステイン上昇、末梢性神経障害、記憶喪失および他の認知障害を生じる。消化管を介した吸収が年齢と共に低下するため、この欠乏症は高齢者で最も起こりやすい。自己免疫疾患である悪性貧血は、もう1つのよくある原因である。この欠乏症は、躁病および精神病の症状も引き起こすことがある。まれな極端な症例では、麻痺が起こることがある。これらの化合物の測定は、ビタミンB栄養状態およびあるビタミンB類似体の効力の有用な指標である。
他の実施形態において、対象化合物は、ビタミンD、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンE、ベータカロテンもしくはこれの誘導体もしくは組み合わせから成る群から選択される脂溶性ビタミンであることができる。本開示を使用して、ビタミンDおよび関連化合物を保持、分離および分割することができる。ビタミンDは、カルシウム恒常性の正の調節において重要な生理学的役割を持つ必須栄養素である。ビタミンDは、日光への暴露により皮膚でデノボ生成することができるか、または食事から吸収することができる。ビタミンDには2種類の形態;ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)およびビタミンD3(コレカルシフェロール)がある。ビタミンD3は、動物によってデノボ合成された形態である。ビタミンD3は、米国で製造される乳製品およびある食品に添加される一般的な栄養補助食品でもある。食事によるビタミンD3および内在的に合成されたビタミンD3は、生物活性代謝産物を生成するために代謝活性化を受ける必要がある。ヒトにおいて、ビタミンD3活性化の最初の工程は、主に肝臓で行われ、25位にて酵素的にヒドロキシル化されている、中間代謝産物25−ヒドロキシコレカルシフェロール(カルシフェジオール)を形成するためのヒドロキシル化を含む。カルシフェジオールは、循環におけるビタミンD3の主な形態である。循環カルシフェジオールは次に、腎臓によって変換されて、一般に、最も高い生物活性を有するビタミンD3の代謝産物と考えられている1,25−ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)を形成する。ビタミンD2は、真菌および植物源に由来する。多くの市販のダイエタリー栄養補助食品は、コレカルシフェロール(ビタミンD3)よりもエルゴカルシフェロール(ビタミンD2)を含有している。ドリスドールは、米国で入手できるビタミンDの唯一の高力価の処方形態であり、エルゴカルシフェロールを用いて製剤される。ビタミンD2は、ヒトにおいてビタミンD3と同様の代謝活性化経路を経て、代謝産物のカルシフェジオールおよびカルシトリオールを形成する。ビタミンD2およびビタミンD3は、ヒトにおいて生物学的に等価であると長らくみなされてきたが、最近の報告では、ビタミンDのこれらの2種類の形態の生物活性および生物学的利用能に相違があり得ることが示唆されている。これらの化合物の測定は、ビタミンD栄養状態およびあるビタミンD類似体の効力の有用な指標である。
別の実施形態において、本開示を使用して、ビタミンAおよび関連化合物を保持、分離および分割することができる。ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸および複数のプロビタミンAのカロテノイドを含む不飽和栄養有機化合物の群であり、カロテノイドの中でもベータカロテンが最も重要である。ビタミンAは複数の機能を有する。ビタミンAは、成長および発達、免疫系の維持ならびに良好な視界のために重要である。ビタミンAは、眼の網膜によってレチナールの形態で必要とされ、レチナールはタンパク質オプシンと化合して、低照度(暗所視)および色視の両方に必要である、光吸収分子のロドプシンを形成する。ビタミンAは、上皮および他の細胞にとっての重要なホルモン様成長因子である、レチノイン酸として既知であるレチノールの不可逆的酸化形態として、非常に異なる役割においても機能する。
動物源の食品において、ビタミンAの主要な形態は、エステル、主にレチニルパルミテートであり、レチニルパルミテートは、小腸においてレチノール(化学的にアルコール)に変換される。レチノール形態は、ビタミンの貯蔵形態として機能し、これの視覚的に活性なアルデヒド形態であるレチナールへ、およびレチナールから変換することができる。ビタミンAから不可逆的に合成することができる代謝産物である、関連する酸(レチノイン酸)は、部分ビタミンA活性のみを有し、視サイクルのために網膜において機能しない。レチノイン酸は、成長および細胞分化に使用される。
ビタミンAのすべての形態は、レチニル基と呼ばれる、イソプレノイド鎖が結合したベータイオノン環を有する。どちらの構造的特徴も、ビタミン活性に不可欠である。ニンジンのオレンジ色の色素であるベータカロテンは、体内でビタミンAレベルに貢献するのに使用される、2個の結合したレチニル基として表すことができる。アルファカロテンおよびガンマカロテンも、多少のビタミン活性をこれらに与える1個のレチニル基を有する。
ビタミンAは、食品中に2種類の主要な形態で見出すことができる:(i)レチノールは、動物食品源を食べた場合に吸収されるビタミンAの形態であり、黄色の脂溶性物質である。純粋なアルコール形態は不安定であるため、該ビタミンは組織中ではレチニルエステルの形態で見出される。レチノールは商業的にも製造され、レチニルアセテートまたはパルミテートなどのエステルとして投与される。(ii)カロテンのアルファカロテン、ベータカロテン、ガンマカロテン;およびキサントフィルのベータクリプトキサンチン(このすべてがベータイオノン環を含有)は、他のカロテノイドを除いて、小腸粘膜においてベータカロテンを切断し、これをレチノールに変換する酵素(15−15’−ジオキシゲナーゼ)を有する草食動物および雑食性動物において、プロビタミンAとして機能する。一般に、肉食動物はイオノン含有カロテノイドを十分に変換せず、純粋な肉食動物、例えばネコおよびフェレットには、15−15’−ジオキシゲナーゼがなく、いずれのカロテノイドもレチナールに変換することができない(これらの種ではビタミンAの形態であるカロテノイドをいずれも生じない。)。これらの化合物の測定は、ビタミンA栄養状態およびあるビタミンA類似体の効力の有用な指標である。
別の実施形態において、本開示を使用して、ビタミンKおよび関連化合物を保持、分離および分割することができる。ビタミンKは、血液凝固に、ならびに骨および他の組織での代謝経路において必要とされる、あるタンパク質の翻訳後修飾で人体が必要とする構造的に類似した脂溶性ビタミンの群である。これらは2−メチル−1,4−ナフトキノン(3−)誘導体である。ビタミンのこの群は、2種類の天然ビタマー:ビタミンK1およびビタミンK2を含む。
ビタミンK1は、フィロキノン、フィトメナジオンまたはフィトナジオンとしても既知であり、植物によって合成され緑色葉物野菜で最も多く見出されるのは、光合成に直接関与しているためである。ビタミンK1はビタミンKの「植物形態」として考えられ得る。これは動物中で活性であり、血液凝固タンパク質の産生におけるビタミンKの活性を含む、動物におけるビタミンKの古典的機能を果たし得る。動物はまた、ビタミンK1をビタミンK2に変換し得る。
ビタミンK2は、動物における主な貯蔵形態であり、イソプレノイド鎖長が異なる、複数のサブタイプを有する。これらのビタミンK2同族体はメナキノンと呼ばれ、これの側鎖中のイソプレノイド残基の数によって特徴付けられる。メナキノンはMK−nと短縮され、Mはメナキノンを表し、KはビタミンKを表し、nはイソプレノイド側鎖残基の数を表す。例えば、メナキノン−4(MK−4と短縮)は、これの側鎖に4個のイソプレン残基を有する。メナキノン−4(これの4個のイソプレン残基からメナテトレノンとしても既知)が動物生成物中のビタミンK2の最も普通のタイプであるのは、ある動物組織(動脈壁、膵臓および精巣)においてビタミンK1から、4個のイソプレン単位を含有する不飽和ゲラニルゲラニルテールでフィチルテールを、置き換えることによってMK−4が通常合成され、これによりメナキノン−4が得られるためである。ビタミンK2のこの同族体は、ビタミンK1の同族体とは別個の酵素機能を有し得る。
結腸(大腸)中の細菌も、K1をビタミンK2に変換することができる。さらに細菌は通例、一連のビタミンK2形態、最も顕著にはビタミンK2のMK−7からMK−11同族体を生成するために、ビタミンK2のイソプレノイド側鎖を延長する。MK−4以外のK2のすべての形態は、嫌気性呼吸にてこれらの形態を使用する細菌によってのみ産生することができる。MK−7およびビタミンK2の他の細菌由来形態は、動物においてビタミンK活性を示すが、MK−4を超えるMK−7のさらなる有用性は、存在するとしても不明であり、現在、調査中の問題である。
ビタミンKの3つの合成タイプであるビタミンK3、K4およびK5が既知である。天然のK1同族体およびすべてのK2同族体が非毒性であることが判明しているが、合成形態K3(メナジオン)は毒性を示している。K4およびK5も非毒性である。これらの化合物の測定は、ビタミンK栄養状態およびあるビタミンK類似体の効力の有用な指標である。
別の実施形態において、本開示を使用して、ビタミンEおよび関連化合物を保持、分離および分割することができる。ビタミンEは、トコフェロールおよびトコトリエノールを含む8種類の脂溶性化合物の群を示す。ビタミンEの多くの異なる形態のうち、γ−トコフェロールは、北米の食事において最も一般的である。γ−トコフェロールは、トウモロコシ油、ダイズ油、マーガリンおよびドレッシング中に見出すことができる。α−トコフェロールは、ビタミンEの最も生物学的に活性な形態であり、食事中のビタミンEの2番目に最も一般的な形態である。この変形は、小麦芽油、ヒマワリ油およびベニバナ油中に最も豊富に見出すことができる。α−トコフェロールは、脂溶性酸化防止剤として、脂肪が酸化するときに形成される反応性酸素種の産生を停止させる。1日に付き1,000mg(1,500IU)を超える量は、出血の問題やビタミンK欠乏症のリスクを上昇させ得るので、ビタミンE過剰症と呼ばれる。これらの化合物の測定は、ビタミンE栄養状態およびあるビタミンE類似体の効力の有用な指標である。
一般に、試料は、少なくとも1種の標的分析物(例えばマトリックスと一緒の、上に開示したクラスまたは種類の分析物)を含む組成物である。試料としては、固体、液体、気体、混合物、(例えば抽出物、細胞、組織、生物などの中間稠度の)材料またはこれの組み合わせが挙げることができる。種々の実施形態において、試料は、身体試料、環境試料、食品試料、合成試料、(例えば分離技術によって得られた)抽出物またはこれの組み合わせである。
身体試料としては、個体の身体に由来するいずれの試料も挙げることができる。この文脈において、個体は動物、例えば哺乳動物、例えばヒトであることができる。他の例の個体としては、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシまたはウマが挙げられる。個体は、患者、例えば疾患に罹患したまたは疾患に罹患したことが疑われる個体であることができる。身体試料は、(例えば病原体またはバイオマーカーの存在を検出および/または同定することによって)疾患を検査または診断するなどのための、化学的または医学的試験の目的で採取した体液または身体組織であることができる。身体試料としては、細胞、例えば個体の身体試料の病原体または細胞(例えば腫瘍細胞)も挙げることができる。このような身体試料は、組織生検(例えばパンチ生検)を含む既知の方法によって、および血液、気管支吸引物、唾液、尿、糞便または他の体液を採取することによって、得ることができる。例示的な身体試料としては、体液、全血、血漿、血清、臍帯血(特に経皮臍帯血採取(PUBS)によって得た血液)、脳脊髄液(CSF)、唾液、羊膜液、母乳、分泌液、膿漿液、尿、糞便、胎便、皮膚、爪、毛髪、臍、胃内容物、胎盤、骨髄、抹消血リンパ球(PBL)および固体器官組織抽出物が挙げられる。
環境試料としては、自然環境(例えば海、土壌、空気および植物相)または人工環境(例えば運河、トンネル、建造物)などの環境に由来するいずれの試料も挙げることができる。例示的な環境試料としては、水(飲用水、河川水、地表水、地下水、飲料水、下水、排水、廃水または浸出水)、土壌、空気、堆積物、生物相(例えば土壌生物相)、植物相、動物相(例えば魚)および土塊(例えば掘削物)が挙げられる。
食品試料としては、(飲料を含む)食品に由来するいずれの試料も挙げることができる。このような食品試料は、例えば(1)食品が安全であるか否かを検査するため;(2)食品が食べられる時点で有害な汚染物質を含有していたか否か(保管試料)もしくは食品が有害な汚染物質を含有しないか否かを検査するため;(3)食品が認可添加物のみを含有するか否かを検査するため(例えば法規制の順守);(4)食品が必須成分の正しいレベルを含有するか否か(例えば食品のラベルの表示が正しいか否か)を検査するため;または(5)食品が含有する栄養素の量を分析するため;を含む種々の目的に使用することができる。例示的な食品試料としては、動物、植物または合成源の食用製品(例えばミルク、パン、卵または肉)、ミール、飲料およびこれの一部、例えば保管試料が挙げられる。食品試料としては、果実、野菜、豆類、ナッツ、油糧種子、油糧果実、シリアル、茶、コーヒー、薬草浸出液、ココア、ホップ、薬草、スパイス、糖料植物、肉、脂肪、腎臓、肝臓、臓物、ミルク、卵、蜂蜜、魚および飲料も挙げることができる。
合成試料としては、工業工程に由来するいずれの試料も挙げることができる。工業工程は、生物学的工業工程(例えば遺伝子情報を含み、これ自体再生するまたはトランスフェクト細胞を用いる発酵工程などの生物学的系において再生できる生物学的物質を用いる工程)または非生物学的工業工程(例えば医薬品などの化合物の化学合成または分解)であることができる。合成試料は、所望の製品の収率を決定するならびに/または副生成物および/もしくは出発物質の量を測定するために、工業工程の進捗を検査および監視するために用いることができる。
材料
すべての試薬は、別途記載しない限り、受け入れたまま使用した。当業者は、以下の供給物および供給者の等価物が存在し、従って、以下に記載する供給者は限定されるとして解釈すべきでないことを理解する。
キャラクタリゼーション技法
当業者は、以下の機器および供給者の等価物が存在し、従って、以下に記載する機器は限定されるとして解釈すべきでないことを理解する。
C%値は、燃焼分析(CE−440元素分析装置;Exeter Analytical Inc.、ノース・チェルムズフォード、マサチューセッツ州)または電量炭素分析器(モジュールCM5300、CM5014、UIC Inc.、ジョリエット、イリノイ州)によって測定した。臭素および塩素含有量は、フラスコ燃焼、続いて、イオンクロマトグラフィー(Atlantic Microlab、ノークロス、ジョージア州)によって測定した。これらの材料の比表面積(SSA)、比細孔容積(SPV)および平均孔径(APD)は、多点N2吸着法(Micromeritics ASAP2400;Micromeritics Instruments Inc.、ノークロス、ジョージア州)を用いて測定した。SSAは、BET法を用いて計算し、SPVは、P/P0>0.98について決定した単点値であり、APDは、BJH法を用いて等温線の脱着脚部から計算した。マイクロポア表面積(MSA)は、比表面積(SSA)から減算した34Å未満の細孔の累積的吸着孔径データとして決定した。中央メソポア径(MMPD)およびメソポア細孔容積(MPV)は、水銀ポロシメトリー(Micromeritics AutoPore II 9220またはAutoPore IV、Micromeritics、ノークロス、ジョージア州)によって測定した骨格密度は、Micromeritics AccuPyc1330ヘリウムピクノメータ(V2.04N、ノークロス、ジョージア州)を用いて測定した。粒度は、Beckman Coulter Multisizer3分析装置(30μmアパーチャ、70,000カウント;マイアミ、フロリダ州)を用いて測定した。粒径(dp50)は、体積ベース粒度分布の50%累積径として測定した。分布の幅は、10%累積体積径で除した90%累積体積径として測定した(90/10比を意味する。)。これらの材料の粘度は、ブルックフィールドデジタル粘度計Model DV−II(ミドルボロ、マサチューセッツ州)を用いて測定した。pHの測定は、Oakton pH100シリーズメータ(Cole−Palmer、ヴァーノンヒルズ、イリノイ州)によって行い、周囲温度で使用直前にOrion(Thermo Electron、ビバリー、マサチューセッツ州)pH緩衝標準を用いて較正した。滴定は、Metrohm 716DMS Titrino自動滴定器(Metrohm、ヘリザウ、スイス国)を用いて行い、グラム当たりミリ当量(mequiv/g)として報告する。エポキシドの被覆率レベルは、ナトリウムチオサルフェートの添加時に遊離したOH−を滴定することによって決定した。多核(13C、29Si)CP−MASNMRスペクトルは、Bruker Instruments Avance−300分光計(7mm二重広域帯プローブ)を用いて得た。スピン速度は通例、5.0−6.5kHzであり、待ち時間は5秒であり、交差分極接触時間は6ミリ秒であった。報告した13Cおよび29Si CP−MAS NMRスペクトルシフトを、外部標準アダマンタン(13C CP−MAS NMR、δ38.55)およびヘキサメチルシクロトリシロキサン(29Si CP−MAS NMR、δ−9.62)を用いてテトラメチルシランと比べて記録した。異なるケイ素環境の集団は、DMFitソフトウェアを用いてスペクトルデコンボリューションにより評価した[Massiot,D.;Fayon,F.;Capron,M.;King,I.;Le Calve,S.;Alonso,B.;Durand,J.−O.;Bujoli,B.;Gan,Z.;Hoatson,G.Magn.Reson.Chem.2002,40,70−76]。
[実施例1]固定相用のエポキシド層の作製
代表的な反応において、ハイブリッド多孔性粒子を、70℃にて60分間プレミックスした20mM酢酸緩衝液(pH5.5、酢酸およびナトリウムアセテートを用いて調製、J.T.Baker、5mL/g希釈)によるグリシドキシプロピルトリメトキシシラン/メタノールの溶液(0.25mL/g)(GLYMO、Aldrich、ミルウォーキー、ウィスコンシン州)に分散させた。混合物を70℃にて20時間保持した。次いで、この反応物を冷却し、生成物をろ過し、水およびメタノールで続けて洗浄した(J.T.Baker)。次いで、生成物を減圧下80℃にて16時間乾燥させた。使用した具体的な粒子を表1に示す。
反応データを表2に記載する。この一般手順への具体的な変更は、以下を含む:1)材料1Eは、6時間の反応時間を利用して調製した、2)材料1Fは、100mM酢酸緩衝液を利用して調製した、3)材料1Gは、50℃保持20時間を利用して調製した、4)材料1Hは、50℃プレミックスおよび50℃保持を利用して調製した。3.90−6.0μmol/m2の全表面被覆率は、元素分析により測定した表面修飾前後の粒子C%の差によって決定した。13C CP−MAS NMR分光法によるこれらの材料の分析は、エポキシ基およびジオール基の混合物がこれらの材料について存在することを示す。
[実施例2]ジオール官能基を有する固定相の調製
代表的な反応において、ハイブリッド多孔性粒子を、70℃にて60分間プレミックスした20mM酢酸緩衝液(pH5.5、酢酸およびナトリウムアセテートを用いて調製、J.T.Baker、5mL/g希釈)によるグリシドキシプロピルトリメトキシシラン/メタノールの溶液(0.25mL/g)(GLYMO、Aldrich、ミルウォーキー、ウィスコンシン州)に分散させた。混合物を70℃にて20時間保持した。次いで、この反応物を冷却し、生成物をろ過し、水およびメタノールで続けて洗浄した(J.TBaker)。材料を次いで、0.1M酢酸溶液(5mL/g希釈、J.T.Baker)中、70℃にて20時間還流させた。次いで、この反応物を冷却し、生成物をろ過し、水およびメタノールで続けて洗浄した(J.T.Baker)。次いで、生成物を減圧下80℃にて16時間乾燥させた。反応データを表3に記載する。元素分析により測定した表面修飾前後の粒子C%の差によって0.93−6.0μmol/m2の表面被覆率を決定した。13C CP−MAS NMR分光法によるこれらの材料の分析は、測定可能な量のエポキシ基は残存せず、これらの材料についてジオール基のみが存在することを示す。
[実施例3]混合官能性を有する固定相の調製
標準的な実験において、上で調製した材料10gを溶媒、例えばこれに限定されるわけではないが、水、イソプロパノールまたはジオキサンに分散させた。上で調製した材料について決定したエポキシド被覆率を超える求核試薬量を添加し、この混合物を70℃で16時間加熱した。表4に使用した具体的な求核試薬を示す。反応後、粒子を水および0.5M酢酸で続けて洗浄し、次いでこの材料を、0.1M酢酸溶液(5mL/g希釈、J.T.Baker)中70℃にて20時間撹拌した。次いで、この反応物を冷却し、生成物をろ過し、水およびメタノールで続けて洗浄した(J.T.Baker)。次いで、生成物を減圧下80℃にて16時間乾燥させた。反応データを表5に記載する。0.2−2.3μmol/m2の求核試薬表面濃度は、元素分析により測定した表面修飾前後の粒子C%、N%またはS%の差によって決定した。13C CP−MAS NMR分光法によるこれらの材料の分析は、測定可能な量のエポキシド基が残存しないことを示す。
[実施例4]固定相のさらなるキャラクタリゼーション
実施例1−3で詳述する粒子の結合/官能化のための一般手順を適用して、種々の多孔性材料の表面シラノール基を修飾する。これにはシリカ、ハイブリッド無機/有機材料、ハイブリッド無機/有機、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、ポリマーまたは炭素の材料上のハイブリッド無機/有機表面層、およびハイブリッド無機/有機、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニアまたはポリマーもしくは炭素の材料上のシリカ表面層である、モノリシック、球状、粒状、表面多孔性および不規則材料が含まれる。球状材料、非球状材料(例えばトロイド、多面体を含む。)の形態の固定相材料;高度に球状コア形態、棒形状コア形態、曲棒形状コア形態、トロイド形状コア形態;またはダンベル形状コア形態を有する固定相材料;および高度に球状、棒形状、曲棒形状、トロイド形状またはダンベル形状形態の混合物を有する固定相材料も含まれる。ハイブリッド材料の例は、米国特許第4,017,528号、6,528,167号、6,686,035号および7,175,913号ならびに国際公開第2008/103423号に示されており、これの内容はこれの全体が参照により本明細書に組み入れられている。表面多孔性粒子としては、米国特許出願公開第2013/0112605号、2007/0189944号および2010/061367号に記載されたものが挙げられ、これの内容はこれの全体が参照により本明細書に組み入れられている。球状、粒状または不規則材料の粒度は、5−500μm、より好ましくは15−100μm、より好ましくは20−80μm、より好ましくは40−60μmで変化することができる。これらの材料のAPDは、30から2000Å、より好ましくは40から200Å、より好ましくは50から150Åで変化することができる。これらの材料のSSAは、20から1000m2/g、より好ましくは90から800m2/g、より好ましくは150から600m2/g、より好ましくは300から550m2/gで変化することができる。これらの材料のTPVは、0.3から1.5cm3/g、より好ましくは0.5から1.4cm3/g、より好ましくは0.7から1.3cm3/gで変化することができる。モノリシック材料のマクロポア径は、0.1から30μm、より好ましくは0.5から25μm、より好ましくは1から20μmで変化することができる。
[実施例5]固定相は、クロマトグラフィー条件下で時間に対する最小分析物保持変化を示す
保持変化平均%は、1日目のクロマトグラフィー試験で測定した絶対ピーク保持平均から3日目、10日目または30日目のクロマトグラフィー試験から測定した絶対ピーク保持平均のパーセント差を求めることによって計算した。各試験日について、カラムをMix1試験条件下で20分間平衡化し、続いてMix1を3回注入し、次いでMix2試験条件下で10分間平衡化し、続いてMix2を3回注入した。条件を表6に示す。結果を表7および8に示す。
保持低下%は、実施例1AでMix1およびMix2について測定した1日目の絶対ピーク保持平均からのMix1およびMix2について測定した1日目の絶対ピーク保持平均のパーセント差を求めることによって計算した。
[実施例6]グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)および1−アミノアントラセンによる有機−無機ハイブリッド粒子の表面官能化
GPTMSおよび1−アミノアントラセンの構造を図1に示す。図1Aは、シラン表面修飾剤であるGPTMSの構造を示す。部分105はGPTMS(トリアルコキシシラン)の表面反応性基を示し、部分110は反応性基(エポキシド)を示す。図1Bは、選択性リガンド(1−アミノアントラセン)を示す。
GPTMSに最初に、20mMナトリウムアセテート緩衝液pH5.0中70℃でのプレインキュベーションによってオリゴマーを事前形成させる。インキュベーションの間に、加水分解したシランの小オリゴマーを形成する。適切なプレインキュベーション期間後に、修飾される粒子を乾燥粉末として添加する。オリゴマーおよびいずれの残存モノマーも、材料表面と反応して、図2に示すように材料表面へ共有結合したシラン修飾剤の高い表面被覆率を生じる。
図2は、シランカップリング剤と有機−無機ハイブリッド材料表面との反応を示す。シラン(205)は、簡単にするためにモノマーとして描いている。事前に形成されたオリゴマーシランは、表面反応性基(210)と同様にカップリングすることができる。幾つかの実施形態において、表面に結合していないシランの部分も、コーティングにカップリングすることができる(例えばクロス重合)。反応条件下で、メタノールは失われて(215)、表面修飾粒子(220)を得る。
シランがクロマトグラフィー材料と反応した後、過剰の試薬および緩衝塩は、MilliQ H2Oで洗浄することによって除去し、材料を有機溶媒(例えば、1,4−ジオキサン)中に移し、1−アミノアントラセンを添加する。1−アミノアントラセンのアミノ基は、GPTMSのペンダントエポキシド基を介して表面にカップリングする。変換されたエポキシ基の部分は、添加される1−アミノアントラセンの量を制限することによって調節され得る。カップリングされた材料は次いで、0.5M酢酸中へと洗浄され、未反応のエポキシド基は図3に示すように対応するジオールに加水分解される。
得られた1−アミノアントラセン/ジオール表面は、均一に分布した1−アミノアントラセン基を有し、優れた選択性を与えるが、ジオールは、分析物との相互作用から表面シラノールを遮蔽する。多成分表面は、ジオール単独の表面または1−アミノアントラセン単独の表面よりも優れている。
図3は、表面修飾粒子(305)と選択性リガンド(310)との反応を示す。反応条件(315)が与えられ、70℃でのイソプロパノールおよび0.5M酢酸による処理を含む。結果は、クロマトグラフィー分離(320)のための多成分表面を有する固定相粒子である。
または、多成分表面は、基材表面に同時に結合し、ペンダント反応基を部分的に反応させて不活性ペンダント基を形成し、また隣接するシランカップリング剤分子上のペンダント反応基間の限定された重合をもたらす反応条件下で結合相としてペンダント反応基と共にシランカップリング剤を用いることによって、重合表面を生じる条件下で生成することができる。
同様に、多成分表面は、クロマトグラフィー相への荷電、非荷電、極性、非極性、親油性または親水性の特性の導入によって保持に影響を与える、分析物と相互作用することができる第2の化学剤を共有結合させることによって、重合表面を生じる条件下で生成され得る。または、ある条件下でGPTMSのエポキシ基は、隣接するシランのヒドロキシル基と反応して、エーテル架橋を形成することができ、これは表面上でGPTMSを架橋する。このような架橋は、結合相に安定性を与えることができ、シラノール遮蔽も向上させることができる。このような架橋の存在は、これらの材料のNMR分析と一致する。架橋表面の種類の実施形態を図4に示す。図4は、シランが表面に結合していないコーティングにおける架橋シラン基も示す。このような構造は、表面エポキシドの重合によるエーテル架橋の形成を実証する。
[実施例7]
図5は、本開示のクロマトグラフィー固定相を調製する2つの考えられる合成経路を示す。スキーム(500)に示すように、未修飾BEH粒子(505)は、少なくとも2つの異なる方法で化学修飾することができる。従って、1つの選択肢は、GPTMSを1−アミノアントラセンと反応させることによって、化学修飾剤(510)を最初に調製することである。次いで、試薬510はBEH粒子(505)と反応して、官能化クロマトグラフィー表面(515)が生じる。
または、図5は異なる合成経路を示す。本実施形態において、粒子505はGPTMSと直接反応して、GPTMS修飾表面(520)を生じる。次いで表面520は、1−アミノアントラセン(525)と反応して、官能化クロマトグラフィー表面(515)を生じることができる。
好ましい実施形態において、最初に粒子505をGPTMSと反応させて、続いて1−アミノアントラセン(525)によって官能化することを含む第2の反応経路は、粒子505を事前に形成した化学修飾剤510と反応させることを含む第1の反応経路に優先して行われる。
[実施例8]有機−無機ハイブリッド上のGPTMS結合は保持のドリフトまたは変化を軽減する
図6に示すように、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)による架橋エチレンハイブリッド(BEH)固定相の処理、続いての次のジオールを与えるエポキシド開環反応は、保持ドリフトの効果を著しく軽減することができる。グラフ600は、ジオール官能化3μm BEH粒子(610)と比較した未官能化3μm BEH粒子(605)の元の保持率%のプロットを示す。元の保持率%は、X軸上で日数による時間の関数として示す。結果は、少なくとも一部の好ましい実施形態において、GPTMSによるクロマトグラフィー表面の官能化および次のジオールを与えるエポキシド開環が、保持のドリフトを軽減できること示す。結果はまた、GPTMSコーティングが単独で、保持のドリフトの問題に対処するとともに、著しい保持も与えることを示している。
[実施例9]1−アミノアントラセン系固定相を使用した、対象化合物の分離
本開示の方法および固定相は、簡単なクロマトグラフィー条件を使用して、現行の最新技術の方法と比較して、対象化合物、例えば脂質および脂溶性ビタミンの優れた分離を提供する、本開示の方法および固定相は、化合物の異なるクラスを分割するのに有利である、異なる選択性も同様に与える。
コンバージェンス・クロマトグラフィー・バイナリ・ソルベント・マネージャ(ccBSM)、サンプルマネージャ(SM)、コンバージェンス・クロマトグラフィー・マネージャ(CCM)、カラムマネージャ(CM−A)およびフォトダイオード・アレイ(PDA)を装備したACQUITY UPC2システムを使用した。システムおよび分離条件を以下に示す:
第1条件:流速:グラジエント:CO2中3−20%メタノールで2分;CO2中20%メタノールで0.5分;CO2中20−3%メタノールで0.5分。ABPR設定:2175psi。カラム温度:40℃。検出:235nm補正。400−500nm(ビタミンAでは必要に応じて、320nm補正400−500nm)。カラム寸法:3.0×50mm。固定相:実施例7で与えたような、1−アミノアントラセン修飾ジオール、2.5μm。
第2条件:流速:2.0mL/分。グラジエント:CO2中3−8%メタノールで3分(#8カーブ);CO2中8−35%メタノールで0.5分(#1カーブ);CO2中35%メタノールで1分;CO2中35−3%メタノールで0.5分(#1カーブ)。ABPR:1800psi。カラム温度:50℃。試料:GLC85脂質標準(Nu−chek Prep,エリジアン、ミネソタ州、米国)、1:1 ヘプタン:IPAで20倍希釈した.CHCl3ストック中1g/L。カラム寸法:3.0×50mm。固定相:実施例7で与えたような、1−アミノアントラセン修飾ジオール、2.5μm。
ピーク検出および構造決定も、ACQUITY SQD2質量分析計:3.46kVキャピラリ;25Vコーン;350℃源;500L/時、脱溶媒ガス;10L/時、コーンガス;LM Res 11.8;HM Res 15.1;−0.2イオンエネルギーを使用して得た。
図7−16は、本開示の方法および固定相を使用して得た脂質分離を示す。これらの分離の結果は、脂溶性ビタミン、脂質および代謝産物の保持および分離において1−アミノアントラセンカップリングがひときわ優れていることを示している。1−アミノアントラセンカップリングは、C18結合相と比べて、形状/異性体選択性を上昇させる。
これらの結果が驚くべきであるのは、同じリガンドでの疎水性基と親水性基との混合は、難しいだけでなく、固定相にとって異例のテーマでもある。多くの場合、π電子が豊富なリガンドはきわめて特殊な分離に使用され、C18結合相とわずかに異なる選択性を与えるために使用される。1−アミノアントラセン系固定相と、例えばACQUITY UPC2 HSS C18 SB(本開示では比較する目的で使用)との間には非常に異なる選択性が存在することが見出された。
脂溶性ビタミンの場合、これの名称が示唆するように、これらの分子は非極性であり、イオン化性基をほとんど有さないことが多い。幾つかの実施形態において、固定相は、非極性化合物の分離を向上させ得ない残留アミンを含有することができる。幾つかの実施形態において、これらの基は、リガンドの表面pHを制御することができる。これらの基の存在は、脂溶性ビタミンの分離が可能であることを指摘していない。通常、ビタミン、脂質および代謝産物の分離は、C18結合相、例えばACQUITY UPC2 HSS C18 SBで行われる。このような材料では、アルキル鎖が、高いメチレン/疎水性選択性を生じるが、形状/異性体選択性はほとんど生じない保持セレクタである。本開示の材料、例えば1−アミノアントラセンを含有する材料は、脂溶性ビタミン,脂質および代謝産物の保持および分離においてひときわ優れている。これらの材料は、C18結合相と比較して、形状/異性体選択性も向上させる。
脂質の処理によって、1−アミノアントラセンカップリングがACQUITY UPC2 HSS C18 SBよりも優れているという、同様の結果を得た。最適化された方法を使用する場合、より多くの脂質ピークが、1−アミノアントラセンがカップリングされたプロトタイプで分解される。観測ピーク数の増加は、脂肪酸の炭素鎖長および飽和度の選択性に関連している。1−アミノアントラセンプロトタイプは、「Fast and Simple Free Fatty Acids Analysis Using UPC2/MS」(Library Number:APTNT134753626;Part Number 720004763en)によって示される問題に対処し、この問題は、「逆相クロマトグラフィーは、鎖長および不飽和度の両方によって脂質を分離する。問題は、逆走分離工程の二面的な性質(脂肪アシル鎖中の二重結合が保持時間を短縮し、脂肪アシル鎖長が保持時間を延長する。)によって、実際の試料の分析が妨げられることにある;成分の数がしばしばあまりに多く、同時溶出のために同定が困難となる。」ことを示している。本開示の固定相により、不飽和脂肪酸鎖(より多くの二重結合がより長い保持時間を生じる。)およびより長い鎖長に対する保持の増加が生じる。分離は保持を増大させるための炭素原子の数および二重結合の数に基づき、保持の増大は、アルキル結合固定相と比較してひときわ優れた改善点である。
当業者は、本開示を使用して、ファインケミカル/材料(OLED、農薬、染料/有機染料、立体配座ポリマー、ポリマー添加剤および界面活性剤)、食品および環境(殺虫剤、グリセリド、食用油、タバコ、食品異物混入)、医薬/ライフサイエンス(脂質プロファイリング、天然生成物、DMPK/生体分析、不純物プロファイリング、医薬品化学)ならびに法科学/研究(アヘン剤、乱用薬物、ステロイド、脂肪酸、抗うつ剤、火薬成分、爆薬)の、他の応用分野における方法を開発および調整できることを理解する。
さらにこれらの材料および方法を、多次元実験の一部として使用することができる(2D−SFC、SFC−LCなど)。これらと併用する他の材料としては、鍍銀(銀含浸材料)および既存の脂質方法、例えばCSHブランドカラムでの方法が挙げられる。
[実施例10]本開示の種々の固定相を使用する対象化合物の分離
先の実施例に従い、別のセレクタを使用して、追加のクロマトグラフィー材料を調製した。これらの追加の固定相で脂質分析を行った。試験材料としては、以下のセレクタ:1−アミノアントラセン、2−ピコリルアミン、ピリジン、6−アミノキノリン、アニリン、ジオールおよび4−n−オクチルアニリンを使用する固定相が挙げられる。
一般クロマトグラフィー条件を以下のように与える:試料:GLC85脂質(Nu−chek Prep)、CHCl3中1g/L、1:1 IPA:ヘプタンで20倍希釈。システム:UPC2、w/SQD2、ESI−イオン化。移動相:97.5/2.5 MeOH/H2O、w/0.1M NH3メイクアップフロー。3.0×50mmカラム。試料は、C4−C24脂質の混合物を含有していた(m/z:87;115.1;143.1;171.1;185.1;199.2;213.2;227.2;241.2;255.2;269.2;283.3;311.3;339.3;225.2;239.2;253.2;267.2;277.2;279.2;281.2;303.2;305.2;307.3;309.3;327.2;335.3;337.3;365.3)。
図17−24は、これらの固定相を使用した、炭素結合数に基づくプロフィールおよび個々の脂質の両方で、脂質分離を示す。一般に、1−アミノアントラセンおよび4−n−オクチルアニリンを含有する固定相は、混合物の十分な分解ならびに二重結合の数に基づく保持の増大を示す。2−ピコリルアミン、ピリジン、6−アミノキノリンならびにアニリンカップリングおよびジオールを使用する固定相は、試料中の大半の脂質ピークを分解することができない。表9は、これらの固定相の性能のまとめを示す。
表9は、結果のまとめを示す。保持ウィンドウを、脂質混合物の最初および最後の溶出ピーク間の時間差として測定する。この値は分離スペースを表すため、最大化することが望ましい。材料3Aは、HSS C18 SB(比較)より200%大きい、最大保持ウィンドウ値を与える。ピークキャパシティを、保持ウィンドウ内で溶出したすべてのピークの平均ピーク幅で割った保持ウィンドウとして測定する。材料3Eは、HSS C18 SBよりも、20%大きいピークキャパシティの著しい改善を与える。C18:0、C18:1、C22:1およびC22:6の保持値は、それぞれ18および22個の炭素長、それぞれ0、1および6の鎖中二重結合を有する脂質の保持時間を表す。材料3EおよびHSS C18 SBは、二重結合の数が増加すると保持の低下を示すが、他はすべて保持の増大を示す。混合物中のすべてのC18およびC22脂質の(保持)範囲を、飽和脂質C18またはC22それぞれの保持時間から、最高レベルの不飽和(大半の二重結合)、C18またはC22をそれぞれ有する脂質の保持時間を減算することによって計算する。これらのカラムのどちらの負の値も、鎖中に存在する二重結合の数に基づく保持の低下を表す。この一覧の材料の正のC18およびC22範囲値は、HSS C18 SBと比較して独自の選択性を示す。全二重結合(DB)範囲は、C18およびC22範囲の和の絶対値から計算した、C18およびC22脂質種の全範囲である。材料3Aについて示されるこの値を最大化することが望ましい。幾つかの実施形態において、本開示の材料は、正常または通常のクロマトグラフィー条件下で0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5を超えるDBを与える。
最良のピークキャパシティは、N−オクチル−アニリン、HSS C18 SB(比較カラム)、1−アミノアントラセンおよびアニリン系固定相によって与えられることが認められる。ピークキャパシティは、13.4%における平均ピーク幅(4σ幅)で除算した保持ウィンドウである。最良のC18およびC22範囲は、ピリジン、6−アミノキノリン、2−ピコリルアミンおよび1−アミノアントラセンによって与えられる。C18範囲は、C18:2とC18:0との時間差である。負の数は、C18:2がC18:0の前に溶出したことを示す。C22範囲についても同じである。また、最良の全二重結合範囲は、1−アミノアントラセン、ピリジン、6−アミノキノリンおよび2−ピコリルアミンによって与えられる。C18:0は、18個の炭素および0個の二重結合を有し、C18:1は、18個の炭素および1個の二重結合を有するなどである。全DB(二重結合)範囲は、C18およびC22シリーズの最大保持時間と最小保持時間との間の差である。
[実施例11]本開示の種々の固定相を使用するビタミンDおよびKの分離
2つのクリティカルペアである、ビタミンK1およびK2ならびにビタミンD2およびD3を、本開示の固定相を使用して試験し、これらの材料がこれらのペアの分割を改善するか否かを判定した。クロマトグラフィー条件を表10に示す。表11は、結果のまとめを示す。試験した各材料について、2つのクリティカルペアである、ビタミンK1およびK2ならびにビタミンD2およびD3の分割をそれぞれ測定した。材料3J、3Hおよび3Pは、クリティカルペア、特にビタミンK1およびK2の分割をHSS C18 SB(比較)と比較して著しく改善する。改善パーセントを以下のように計算する:
材料3J、3Hおよび3Pの粒度がより小さいと、クリティカルペアの分割がさらに増加することが予想される。例えば、材料3Pの粒度を縮小すると、観測される分割はさらに44%増加することが予想される。材料3J、3Hおよび3Pのコンジュゲート部分によって、独自の選択性を作用させる、クロマトグラフィー表面とビタミンとの相互作用が、HSS C18 SBと比較して上昇すると考えられる。
幾つかの実施形態において、本開示の材料は、正常または通常のクロマトグラフィー条件下で、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0または4.5を超える、ビタミンD3/D4のRs値を与える。幾つかの実施形態において、本開示の材料は、正常または通常のクロマトグラフィー条件下で、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0または4.5を超える、ビタミンK1/K2のRs値を与える。
別途指摘しない限り、キットおよび試薬の使用を含む、すべての技法は、製造業者の情報、当分野で既知の方法に従って実施することができる。
本明細書における値の範囲の列挙は、範囲内に含まれる各別個の値にそれぞれ言及する簡単な方法として役立つことを意図するに過ぎない。別途指摘しない限り、各別個の値は、あたかもこれが個々に列挙されるかのように本明細書中に組み入れられている。本明細書で引用した各文書(すべての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様および取扱説明書を含む。)は、これの全体が参照により本明細書に組み入れられている。
本明細書は、特に文脈が指摘しない限り、記載された態様、実施形態および実施例の可能な順列および組み合わせのすべてを開示および包含すると理解されるべきである。当業者は、本発明が、限定のためでなく例証のために示される、要約および記載された態様、実施形態および実施例以外によって実施できることを理解する。