以下、本発明に係る電気化学装置の一種である燃料電池装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
第1実施形態では、電気化学セルの一種である平板型燃料電池セルを備える燃料電池装置について説明する。
第2実施形態では、電気化学セルの一種である片持ち式の横縞型燃料電池セルを備える燃料電池装置について説明する。
[第1実施形態]
(燃料電池装置1の構成)
第1実施形態に係る燃料電池装置1の構成について説明する。図1は、燃料電池装置1の構成を示す断面図である。
燃料電池装置1は、燃料電池セル10、インターコネクタ20、セパレータ30、酸化剤ガス供給部40、及び酸化剤ガス排出部50を備える。燃料電池装置1を複数積層することによって、燃料電池セルスタックを構成しうる。
(燃料電池セル10)
燃料電池セル10は、いわゆる平板型の燃料電池セルである。燃料電池セル10は、電解質11、燃料極12、空気極13、燃料極側集電部14、及び空気極側集電部15を有する。
本実施形態に係る燃料電池セル10は、空気極13及び電解質11に比べて燃料極12が厚い燃料極支持型セルである。ただし、燃料電池セル10は、電解質11及び燃料極12に比べて空気極13が厚い空気極支持型セルであってもよく、燃料極12及び空気極13に比べて電解質11が厚い電解質支持型セルであってもよい。
電解質11は、薄板状に形成される。電解質11の厚みは、3μm以上20μm以下とすることができる。電解質11は、空気極13において発生する酸素イオンを燃料極12に移動させる酸素イオン伝導性を有する電解質材料によって構成される。このような電解質材料としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、サマリウム添加セリア(CeSmO2)、ガドリウム添加セリア(CeGdO2)、及びカルシア安定化ジルコニア(CaSZ)の1種、或いは2種以上の組み合わせが挙げられる。
電解質11は、緻密質である。電解質11は、酸化剤ガスの燃料極12側への透過、及び、燃料ガスの空気極13側への透過を防止する。アルキメデス法によって求められる電解質11の相対密度は、95%以上が好ましい。
燃料極12は、本発明に係る「第2電極」の一例である。燃料極12は、電解質11の第1主面11S上に配置される。燃料極12は、燃料電池セル10のアノードとして機能する。燃料極12は、多孔質体である。
燃料極12は、燃料ガス室S1内に配置される。燃料ガス室S1には、図示しない燃料ガス供給部から燃料ガスが供給される。燃料ガスは、燃料電池セル10の作動(発電)に用いられる作動用ガスの一つである。燃料ガスとしては、水素、炭化水素、及び、水素と炭化水素との混合ガスが挙げられる。炭化水素としては、例えば、天然ガス、ナフサ、及び石炭ガス化ガスなどが挙げられるが、これに限られない。燃料ガスは、1種類の炭化水素であってもよく、2種類以上の炭化水素の混合物であってもよい。燃料ガスは、窒素及びアルゴンなどの不活性ガスを含有していてもよい。
燃料極12は、周知の燃料極材料によって構成される。燃料極12は、例えば、Ni及び/又はFe等の金属と上述した電解質材料との混合物によって構成することができる。
空気極13は、本発明に係る「第1電極」の一例である。空気極13は、電解質11の第2主面11T上に配置される。空気極13は、燃料電池セル10のカソードとして機能する。空気極13は、多孔質体である。空気極13の気孔率は特に制限されないが、10%以上とすることができる。空気極13の厚みは特に制限されないが、例えば30μm以上200μm以下とすることができる。
空気極13は、酸化剤ガス室S2内に配置される。酸化剤ガス室S2は、本発明に係る「ガス室」の一例である。酸化剤ガス室S2には、酸化剤ガス供給部40から酸化剤ガスが供給される。空気極13の内部及び周辺を通過した酸化剤ガス(いわゆる、オフガス)は、酸化剤ガス室S2から酸化剤ガス排出部50へと排出される。酸化剤ガスは、燃料電池セル10の作動に用いられる作動用ガスの一つである。酸化剤ガスとしては、例えば、酸素と他の気体との混合ガスを用いることができる。酸化剤ガスとしては、安全かつ安価である空気が特に好ましい。酸化剤ガスには、窒素及びアルゴンなどの不活性ガスが含有されていてもよい。
空気極13は、酸素イオン伝導性及び電子伝導性を有する材料によって構成することができる。このような材料としては、La、Sr、Co、及びFeの少なくとも1種の元素を含む複合酸化物が好適である。このような複合酸化物としては、La1−xSrxCoO3系複合酸化物、La1−xSrxFeO3系複合酸化物、La1−xSrxCo1−yFeyO3系複合酸化物、La1−xSrxMnO3系複合酸化物、Pr1−xBaxCoO3系複合酸化物、及びSm1−xSrxCoO3系複合酸化物などが挙げられる。
燃料極側集電部14は、燃料極12と電気的かつ機械的に接合される。燃料極側集電部14の構成材料としては、例えば、通気性を有するNiフェルト等が挙げられる。燃料極側集電部14は、燃料電池装置1が複数積層された場合、燃料極12とインターコネクタ20との間に挟まれる。なお、燃料電池装置1が複数積層された場合、燃料極側集電部14は、インターコネクタ20と一体的に形成されていてもよい。
空気極側集電部15は、空気極13と電気的かつ機械的に接合される。空気極側集電部15の構成材料としては、例えば、通気性を有するNiフェルト等が挙げられる。空気極側集電部15は、空気極13とインターコネクタ20との間に挟まれる。なお、空気極側集電部15は、インターコネクタ20と一体的に形成されていてもよい。
(インターコネクタ20)
インターコネクタ20は、空気極13と対向して配置される。インターコネクタ20は、燃料電池セル10との間に酸化剤ガス室S2を形成する。インターコネクタ20は、空気極側集電部15を介して空気極13と電気的に接合される。インターコネクタ20は、燃料電池装置1が複数積層された場合、隣接する2つの燃料電池セル10の間に挟まれる。
インターコネクタ20は、金属によって構成することができ、ステンレスによって構成されるのが好ましい。
(セパレータ30)
セパレータ30は、燃料電池セル10の周囲を取り囲むように配置される。本実施形態に係るセパレータ30は、電解質11の第2主面11Tの外縁全周に接合され、空気極13を取り囲むように配置される。ただし、セパレータ30は、電解質11の側面に接合されていてもよい。
セパレータ30は、燃料ガス室S1と酸化剤ガス室S2とを隔てる。すなわち、セパレータ30は、電解質11と同様、酸化剤ガスの燃料極12側への透過、及び、燃料ガスの空気極13側への透過を防止する。
セパレータ30は、金属によって構成することができ、ステンレスによって構成されるのが好ましい。
(酸化剤ガス供給部40)
酸化剤ガス供給部40は、本発明に係る「ガス供給部」の一例である。酸化剤ガス供給部40は、燃料電池セル10の側方に配置される。酸化剤ガス供給部40は、金属材料(例えば、ステンレスなど)によって構成される。酸化剤ガス供給部40は、酸化剤ガス供給路41と酸化剤ガス供給口42とを有する。
酸化剤ガス供給路41は、燃料電池セル10の積層方向(図1の上下方向)に沿って延びる。燃料電池装置1が複数積層された場合、酸化剤ガス供給路41どうしが連なることによって、1本の酸化剤ガス供給経路が形成される。
酸化剤ガス供給口42は、本発明に係る「ガス供給口」の一例である。酸化剤ガス供給口42は、酸化剤ガス供給路41と酸化剤ガス室S2との間に設けられる。酸化剤ガス供給口42は、燃料電池セル10に向かって開口する。
酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給路41と酸化剤ガス供給口42とを順次通過して、酸化剤ガス室S2に供給される。酸化剤ガス供給口42から酸化剤ガス室S2に供給された酸化剤ガスは、図1に示すように、流通方向D1に沿って酸化剤ガス室S2内を流れる。流通方向D1は、酸化剤ガス供給口42から後述する酸化剤ガス排出口52へと向かう方向である。流通方向D1は、酸化剤ガス供給口42の中心と酸化剤ガス排出口52の中心とを結ぶ直線によって規定される。酸化剤ガス供給口42及び酸化剤ガス排出口52の少なくとも一方が複数存在する場合、流通方向D1は、いずれか1つの酸化剤ガス供給口42の中心といずれか1つの酸化剤ガス排出口52の中心とを結ぶ直線によって規定される。
(酸化剤ガス排出部50)
酸化剤ガス排出部50は、燃料電池セル10の側方に配置される。酸化剤ガス排出部50は、金属材料(例えば、ステンレスなど)によって構成される。酸化剤ガス排出部50は、酸化剤ガス排出路51と酸化剤ガス排出口52とを有する。
酸化剤ガス排出路51は、燃料電池セル10の積層方向に沿って延びる。燃料電池装置1が複数積層された場合、酸化剤ガス排出路51どうしが連なることによって、1本の酸化剤ガス排出経路が形成される。
酸化剤ガス排出口52は、酸化剤ガス排出路51に連なる。酸化剤ガス排出口52は、酸化剤ガス室S2と酸化剤ガス排出路51との間に設けられる。酸化剤ガス排出口52は、燃料電池セル10に向かって開口する。
酸化剤ガス供給口42から酸化剤ガス室S2に供給され、流通方向D1に沿って酸化剤ガス室S2内を通過した酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出口52から酸化剤ガス排出路51に排出される。
(酸化剤ガスの温度)
燃料電池セル10の作動中、空気極13に供給される酸化剤ガスに含まれる酸化剤は、酸化剤ガスの流通方向D1における上流側から下流側に流れるに従って電極反応に利用される。そのため、酸化剤ガスに含まれる酸化剤の濃度は、下流側に比べて上流側の方が高く、空気極13の上流側部位では下流側部位よりも電極反応が活発になって発熱しやすい。その結果、空気極13のうち上流側部位及び下流側部位の間に熱応力が発生して、燃料電池セル10に損傷(割れや層間剥離など)が生じるおそれがある。
そこで、本実施形態では、空気極13の上流側部位に供給される酸化剤ガスの温度が、空気極13の下流側部位に供給される酸化剤ガスの温度よりも低くされている。
具体的には、図1に示すように、酸化剤ガス室S2内において、第1位置P1における酸化剤ガスの温度T1(第1温度の一例)は、第2位置P2における酸化剤ガスの温度T2(第2温度の一例)よりも低い。第1位置P1は、燃料電池セル10のうち酸化剤ガス供給口42側の第1端部10Sの上方に設定される。第1位置P1は、第1端部10Sの直上に設定されることが好ましい。第2位置P2は、燃料電池セル10のうち酸化剤ガス排出口52側の第2端部10Tの上方に設定される。第2位置P2は、第2端部10Tの直上に設定されることが好ましい。燃料電池セル10の積層方向(図1の上下方向)において、第1位置P1と燃料電池セル10との間隔は、第2位置P2と燃料電池セル10との間隔と同じであることが好ましい。
このように、温度T1を温度T2よりも低くすることによって、空気極13のうち上流側部位及び下流側部位の温度差を低減できるため、燃料電池セル10の損傷を抑制できる。
温度T1は、燃料電池装置1の設計や燃料電池セル10の作動状態によって変動するため特に制限されないが、例えば400度〜900度に設定することができる。同様に、温度T2は、燃料電池装置1の設計や燃料電池セル10の作動状態によって変動するため特に制限されないが、例えば400度〜900度に設定することができる。
なお、温度T1は、燃料電池セル10が所定の作動温度(400度〜900度)で定常的に作動している場合に、第1位置P1に設置された熱電対(不図示)によって測定することができる。温度T2は、燃料電池セル10が所定の作動温度(400度〜900度)で定常的に作動している場合に、第2位置P2に設置された熱電対(不図示)によって測定することができる。作動温度とは、燃料電池セル10の温度制御のために管理される温度である。作動温度としては、燃料電池セル10表面あるいは燃料電池セル10付近の所定の測定箇所における温度を用いることができる。例えば、セル中央部分(具体的には、酸化剤ガスの流通方向D1における空気極13の中央部分)の温度を作動温度として用いることができるが、測定箇所はこれに限られない。定常的に作動するとは、1時間の間の作動温度変化が±5度以内の状態で作動することを意味する。
燃料電池セル10の作動中、温度T1及び温度T2の温度差は、3度以上40度以下である。温度T1及び温度T2の温度差を3度以上とすることによって、空気極13のうち上流側部位及び下流側部位の温度差を十分に低減でき、温度T1及び温度T2の温度差を40度以下とすることによって、空気極13の上流側部位が過度に冷却されることを抑制できる。その結果、空気極13のうち上流側部位及び下流側部位の間に発生する熱応力によって燃料電池セル10が損傷を受けることを抑制できる。
燃料電池セル10の作動中、温度T1及び温度T2の温度差は、5度以上20度以下であることが好ましい。これにより、燃料電池セル10が損傷を受けることを更に抑制できる。
温度T1を温度T2よりも低くする方法としては、酸化剤ガス供給部40の熱伝導率を酸化剤ガス排出部50の熱伝導率よりも高くする方法が簡便である。この方法によれば、酸化剤ガス室S2に供給された酸化剤ガスの熱を酸化剤ガス供給部40側に放熱しやすくなるため、上流側における酸化剤ガスの温度を低下させることができる。この方法では、酸化剤ガス供給部40と酸化剤ガス排出部50との熱伝導率差を適宜設定することによって、温度T1及び温度T2の温度差を簡便に調整できる。
なお、酸化剤ガス供給部40及び酸化剤ガス排出部50それぞれの熱伝導率を調整する手法としては、構成材料自体の熱伝導率を調整する手法のほか、図示しない断熱材の厚み及び量を調整する手法がある。
[第1実施形態の変形例]
上記第1実施形態では、空気極13の上流側部位に供給される酸化剤ガスの温度を、空気極13の下流側部位に供給される酸化剤ガスの温度よりも低くすることによって燃料電池セル10の損傷を抑制できる構成について説明した。
本変形例では、燃料極12の上流側部位に供給される燃料ガスの温度を、燃料極12の下流側部位に供給される燃料ガスの温度よりも低くすることによって、燃料電池セル10の損傷を抑制できる構成について説明する。
(燃料電池装置2の構成)
本変形例に係る燃料電池装置2の構成について説明する。図2は、燃料電池装置2の構成を示す断面図である。
燃料電池装置2では、燃料電池セル10、インターコネクタ20、セパレータ30、燃料ガス供給部60、及び燃料ガス排出部70を備える。
燃料電池セル10、インターコネクタ20、及びセパレータ30の構成は、上記第1実施形態にて説明したとおりである。
(燃料ガス供給部60)
燃料ガス供給部60は、本発明に係る「ガス供給部」の一例である。燃料ガス供給部60は、燃料電池セル10の側方に配置される。燃料ガス供給部60は、金属材料(例えば、ステンレスなど)によって構成される。燃料ガス供給部60は、燃料ガス供給路61と燃料ガス供給口62とを有する。
燃料ガス供給路61は、燃料電池セル10の積層方向(図2の上下方向)に沿って延びる。燃料電池装置1が複数積層された場合、燃料ガス供給路61どうしが連なることによって、1本の燃料ガス供給経路が形成される。
燃料ガス供給口62は、本発明に係る「ガス供給口」の一例である。燃料ガス供給口62は、燃料ガス供給路61と酸化剤ガス室S1との間に設けられる。燃料ガス供給口62は、燃料電池セル10に向かって開口する。
燃料ガスは、燃料ガス供給路61と燃料ガス供給口62とを順次通過して、燃料ガス室S1に供給される。燃料ガス供給口62から燃料ガス室S1に供給された燃料ガスは、図2に示すように、流通方向D2に沿って燃料ガス室S1内を流れる。流通方向D2は、燃料ガス供給口62から後述する燃料ガス排出口72へと向かう方向である。流通方向D2は、燃料ガス供給口62の中心と燃料ガス排出口72の中心とを結ぶ直線によって規定される。燃料ガス供給口62及び燃料ガス排出口72の少なくとも一方が複数存在する場合、流通方向D2は、いずれか1つの燃料ガス供給口62の中心といずれか1つの燃料ガス排出口72の中心とを結ぶ直線によって規定される。
(燃料ガス排出部70)
燃料ガス排出部70は、燃料電池セル10の側方に配置される。燃料ガス排出部70は、金属材料(例えば、ステンレスなど)によって構成される。燃料ガス排出部70は、燃料ガス排出路71と燃料ガス排出口72とを有する。
燃料ガス排出路71は、燃料電池セル10の積層方向に沿って延びる。燃料電池装置1が複数積層された場合、燃料ガス排出路71どうしが連なることによって、1本の燃料ガス排出経路が形成される。
燃料ガス排出口72は、燃料ガス排出路71に連なる。燃料ガス排出口72は、燃料ガス室S1と燃料ガス排出路71との間に設けられる。燃料ガス排出口72は、燃料電池セル10に向かって開口する。
燃料ガス供給口62から燃料ガス室S1に供給され、流通方向D2に沿って燃料ガス室S1内を通過した燃料ガス(いわゆる、オフガス)は、燃料ガス排出口72から燃料ガス排出路71に排出される。
(燃料ガスの温度)
燃料電池セル10の作動中、燃料極12に供給される燃料ガスに含まれる燃料は、燃料ガスの流通方向D2における上流側から下流側に流れるに従って電極反応に利用される。従って、燃料ガスに含まれる燃料の濃度は、下流側に比べて上流側の方が高いため、燃料極12の上流側部位では、燃料極12の下流側部位よりも電極反応が活発になって発熱しやすい。その結果、燃料極12のうち上流側部位及び下流側部位の間に熱応力が発生して、燃料電池セル10に損傷(割れや層間剥離など)が生じるおそれがある。
そこで、本変形例では、燃料極12の上流側部位に供給される燃料ガスの温度が、燃料極12の下流側部位に供給される燃料ガスの温度よりも低くされている。
具体的には、図2に示すように、燃料ガス室S1内において、第3位置P3における燃料ガスの温度T3(第1温度の一例)は、第4位置P4における燃料ガスの温度T4(第2温度の一例)よりも低い。第3位置P3は、燃料電池セル10のうち燃料ガス供給口62側の第3端部10Xの上方に設定される。第3位置P3は、第3端部10Xの直上に設定されることが好ましい。第4位置P4は、燃料電池セル10のうち燃料ガス排出口72側の第4端部10Yの上方に設定される。第4位置P4は、第4端部10Yの直上に設定されることが好ましい。燃料電池セル10の積層方向(図2の上下方向)において、第3位置P3と燃料電池セル10との間隔は、第4位置P4と燃料電池セル10との間隔と同じであることが好ましい。
このように、温度T3を温度T4よりも低くすることによって、燃料極12のうち上流側部位及び下流側部位の温度差を低減できるため、燃料電池セル10の損傷を抑制できる。
温度T3は、燃料電池装置1の設計や燃料電池セル10の作動状態によって変動するため特に制限されないが、例えば400度〜900度に設定することができる。同様に、温度T4は、燃料電池装置1の設計や燃料電池セル10の作動状態によって変動するため特に制限されないが、例えば400度〜900度に設定することができる。
なお、温度T3は、燃料電池セル10が所定の作動温度(400度〜900度)で定常的に作動している場合に、第3位置P3に設置された熱電対(不図示)によって測定することができる。温度T4は、燃料電池セル10が所定の作動温度(400度〜900度)で定常的に作動している場合に、第4位置P4に設置された熱電対(不図示)によって測定することができる。作動温度とは、燃料電池セル10の温度制御のために管理される温度である。作動温度としては、燃料電池セル10表面あるいは燃料電池セル10付近の所定の測定箇所における温度を用いることができる。例えば、セル中央部分(具体的には、燃料ガスの流通方向D2における燃料極12の中央部分)の温度を作動温度として用いることができるが、測定箇所はこれに限られない。定常的に作動するとは、1時間の間の作動温度変化が±5度以内の状態で作動することを意味する。
燃料電池セル10の作動中、温度T3及び温度T4の温度差は、3度以上40度以下である。温度T3及び温度T4の温度差を3度以上とすることによって、燃料極12のうち上流側部位及び下流側部位の温度差を十分に低減でき、温度T3及び温度T4の温度差を40度以下とすることによって、燃料極12の上流側部位が過度に冷却されることを抑制できる。その結果、燃料極12のうち上流側部位及び下流側部位の間に発生する熱応力によって燃料電池セル10が損傷を受けることを抑制できる。
燃料電池セル10の作動中、温度T3及び温度T4の温度差は、5度以上20度以下であることが好ましい。これにより、燃料電池セル10が損傷を受けることを更に抑制できる。
温度T3を温度T4よりも低くする方法としては、燃料ガス供給部60の熱伝導率を燃料ガス排出部70の熱伝導率よりも高くする方法が簡便である。この方法によれば、燃料ガス室S1に供給された燃料ガスの熱を燃料ガス供給部60側に放熱しやすくなるため、上流側における燃料ガスの温度を低下させることができる。この方法では、燃料ガス供給部60と燃料ガス排出部70との熱伝導率差を適宜設定することによって、温度T3及び温度T4の温度差を簡便に調整できる。
なお、燃料ガス供給部60及び燃料ガス排出部70それぞれの熱伝導率を調整する手法としては、構成材料自体の熱伝導率を調整する手法のほか、図示しない断熱材の厚み及び量を調整する手法がある。
[第2実施形態]
(燃料電池装置3の構成)
第2実施形態に係る燃料電池装置3の構成について説明する。図3は、燃料電池装置3の構成を示す断面図である。
図3に示すように、燃料電池装置3は、マニホールド100と、燃料電池セル101とを備える。
(マニホールド100)
マニホールド100は、燃料電池セル101に燃料ガスを供給するように構成されている。また、マニホールド100は、燃料電池セル101から排出された燃料ガスを回収するように構成されている。
マニホールド100は、仕切板100aによって隔離されたガス供給室S3とガス回収室S4とを有する。ガス供給室S3には、燃料ガスが供給される。ガス回収室S4は、燃料電池セル101にて使用された燃料ガスを回収する。燃料ガスは、燃料電池セル101の作動(発電)に用いられる作動用ガスの一つである。
マニホールド100の上板には、貫通孔100bが形成されている。貫通孔100bには、燃料電池セル101の基端部が挿入される。
(燃料電池セル101)
図3に示すように、燃料電池セル101は、マニホールド100から上方に延びる。燃料電池セル101の基端部は、マニホールド100の貫通孔100bに挿入されており、接合材などによって固定されている。
燃料電池セル101は、支持基板102及び連通部材103を有する。
支持基板102は、マニホールド100から上方に延びる。支持基板102は、扁平状に形成される。支持基板102は、複数の第1ガス流路102aと、複数の第2ガス流路102bとを有する。
各第1ガス流路102aは、支持基板102内を長さ方向(x軸方向)に延びる。各第1ガス流路102aは、支持基板102を貫通する。各第1ガス流路102aは、支持基板102の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置される。第1ガス流路102aの本数は、適宜変更可能である。各第1ガス流路102aは、ガス供給室S3に連なる燃料ガス供給口102cを有する。
各第2ガス流路102bは、支持基板102内を長さ方向に延びている。第2ガス流路102bは、支持基板102を貫通する。各第2ガス流路102bは、支持基板102の幅方向において互いに間隔をあけて配置される。第2ガス流路102bの本数は、適宜変更可能である。各第2ガス流路102bは、ガス回収室S4に連なる燃料ガス排出口102dを有する。
各第1ガス流路102aと各第2ガス流路102bとは、燃料電池セル101の先端部側において、連通部材103の連通流路103aを介して、互いに連通している。第1ガス流路102a、第2ガス流路102b及び連通流路103aは、本発明に係る「ガス流路」を構成する。連通部材103の表面は、緻密層104によって覆われている。この緻密層104は、例えば、結晶化ガラス等によって形成することができる。
ここで、図4は、燃料電池セル101の斜視図である。図5は、燃料電池セル101の断面図である。
支持基板102は、複数の発電素子部5を支持する。支持基板102は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板102は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成される。または、支持基板102は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl2O4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板102の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。この気孔率は、例えば、アルキメデス法、又は微構造観察により測定される。
支持基板102は、緻密層105によって覆われている。緻密層105は、第1ガス流路102a及び第2ガス流路102bから支持基板102内に拡散された燃料ガスが外部に漏出することを抑制する。本実施形態において、緻密層105は、後述する電解質7と、インターコネクタ91とによって構成されている。緻密層105は、支持基板102よりも緻密である。例えば、緻密層105の気孔率は、0〜7%程度である。
各発電素子部5は、支持基板102の幅方向に延びる。図5に示すように、各発電素子部5は、燃料極6、電解質7、及び空気極8を有する。また、発電素子部5は、反応防止膜7aをさらに有している。
燃料極6は、本発明に係る「内側電極」の一例である。燃料極6は、アノードとして機能する。燃料極6には、ガス流路(第1ガス流路102a、第2ガス流路102b及び連通流路103a)を流れる燃料ガスと接触する。燃料極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極6は、燃料極集電部61と燃料極活性部62とを有する。
燃料極集電部61は、凹部49内に配置されている。凹部49は、支持基板102に形成されている。各燃料極集電部61は、第1凹部611及び第2凹部612を有している。燃料極活性部62は、第1凹部611内に配置されている。
燃料極集電部61は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部61は、NiO(酸化ニッケル)とY2O3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部61の厚さ、及び凹部49の深さは、50〜500μm程度である。
燃料極活性部62は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部62は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部62の厚さは、5〜30μmである。
電解質7は、燃料極6上を覆うように配置される。詳細には、電解質7は、一のインターコネクタ91から他のインターコネクタ91まで長さ方向に延びている。従って、支持基板102の長さ方向(x軸方向)において、電解質7とインターコネクタ91とが交互に配置されている。電解質7は、支持基板102の第1主面45及び第2主面46を覆う。
電解質7は、支持基板102よりも緻密である。例えば、電解質7の気孔率は、0〜7%程度である。電解質7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質7は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
反応防止膜7aは、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜7aは、平面視において、燃料極活性部62と略同一の形状である。反応防止膜7aは、電解質7を介して、燃料極活性部62と対応する位置に配置されている。反応防止膜7aは、電解質7内のYSZと空気極8内のSrとが反応して電解質7と空気極8との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜7aは、例えば、GDC=(Ce,Gd)O2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7aの厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
空気極8は、本発明に係る「外側電極」の一例である。空気極8は、カソードとして機能する。空気極8は、燃料電池装置3の外部から供給される酸化剤ガスと接触する。空気極8は、反応防止膜7a上に配置されている。空気極8は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極8は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極8は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極8の厚さは、例えば、10〜100μmである。
電気的接続部9は、隣り合う発電素子部5を電気的に接続する。電気的接続部9は、インターコネクタ91及び空気極集電膜92を有する。インターコネクタ91は、第2凹部612内に配置されている。インターコネクタ91は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ91は、支持基板102よりも緻密である。例えば、インターコネクタ91の気孔率は、0〜7%程度である。インターコネクタ91は、例えば、LaCrO3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ91の厚さは、例えば、10〜100μmである。
空気極集電膜92は、隣り合う発電素子部5のインターコネクタ91と空気極8との間を延びるように配置される。空気極集電膜92は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電膜92は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜92の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
(燃料ガスの温度)
燃料電池セル101の作動中、燃料極6に供給される燃料ガスに含まれる燃料は、ガス流路(第1ガス流路102a、第2ガス流路102b及び連通流路103a)の燃料ガス供給口102cから燃料ガス排出口102dに流れるに従って電極反応に利用される。従って、燃料ガスに含まれる燃料の濃度は、下流側に比べて上流側の方が高いため、燃料極6のうち上流側部位(燃料ガス供給口102c付近の部位)では、燃料極6のうち下流側部位(燃料ガス排出口102d付近の部位)よりも電極反応が活発になって発熱しやすい。その結果、燃料極6の上流側部位及び下流側部位の間に熱応力が発生して、燃料電池セル101に損傷(割れや層間剥離など)が生じるおそれがある。
そこで、本実施形態では、燃料極6のうち上流側部位に供給される燃料ガスの温度が、燃料極6のうち下流側部位に供給される燃料ガスの温度よりも低くされている。
具体的には、図3に示すように、燃料ガス供給口102cの中心に設定された第5位置P5における燃料ガスの温度T5(第3温度の一例)は、燃料ガス排出口102dの中心に設定された第6位置P6における燃料ガスの温度T6(第4温度の一例)よりも低い。
このように、温度T5を温度T6よりも低くすることによって、燃料極6のうち上流側部位及び下流側部位の温度差を低減できるため、燃料電池セル101の損傷を抑制できる。
温度T5は、燃料電池装置3の設計や燃料電池セル101の作動状態によって変動するため特に制限されないが、例えば400度〜900度に設定することができる。同様に、温度T6は、燃料電池装置3の設計や燃料電池セル101の作動状態によって変動するため特に制限されないが、例えば400度〜900度に設定することができる。
なお、温度T5は、燃料電池セル101が所定の作動温度(400度〜900度)で定常的に作動している場合に、第5位置P5に設置された熱電対(不図示)によって測定することができる。本実施形態のように、複数のガス流路が存在する場合には、いずれの燃料ガス供給口102cにおいて温度T5を測定してもよい。温度T6は、燃料電池セル101が所定の作動温度(400度〜900度)で定常的に作動している場合に、第6位置P6に設置された熱電対(不図示)によって測定することができる。本実施形態のように、複数のガス流路が存在する場合には、いずれの燃料ガス排出口102dにおいて温度T6を測定してもよい。作動温度とは、燃料電池セル101の温度制御のために管理される温度である。作動温度としては、燃料電池セル101表面あるいは燃料電池セル101付近の所定の測定箇所における温度を用いることができる。例えば、セル先端部の端面の温度を作動温度として用いることができるが、測定箇所はこれに限られない。定常的に作動するとは、1時間の間の作動温度変化が±5度以内の状態で作動することを意味する。
燃料電池セル101の作動中、温度T5及び温度T6の温度差は、1度以上20度以下である。温度T5及び温度T6の温度差を1度以上とすることによって、燃料極6のうち上流側部位及び下流側部位の温度差を十分に低減でき、温度T5及び温度T6の温度差を20度以下とすることによって、燃料極6の上流側部位が過度に冷却されることを抑制できる。その結果、燃料極6のうち上流側部位及び下流側部位の間に発生する熱応力によって燃料電池セル101が損傷を受けることを抑制できる。
燃料電池セル10の作動中、温度T5及び温度T6の温度差は、3度以上15度以下であることが好ましい。これにより、燃料電池セル101が損傷を受けることを更に抑制できる。
温度T5を温度T6よりも低くする方法としては、例えば、支持基板102のうち燃料ガス供給口102c周辺の温度を、支持基板102のうち燃料ガス排出口102d周辺の温度よりも低くする方法が挙げられる。このような温度差を支持基板102に設けるには、例えば、支持基板102のうち燃料ガス供給口102c周辺の外表面(図3では、セル基端部左側の外表面)を流れる酸化剤ガスの流量を、支持基板102のうち燃料ガス排出口102d周辺の外表面(図3では、セル基端部右側の外表面)を流れる酸化剤ガスの流量よりも多くすればよい。
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
(A)上記第2実施形態において、燃料電池装置3が備える燃料電池セル101は、複数の発電素子部5が支持基板102の長さ方向に配列された、いわゆる横縞型の燃料電池セルであることとしたが、燃料電池セル101の構成はこれに限定されない。例えば、燃料電池セル101は、支持基板102の第1主面45に1つの発電素子部5が支持され、かつ、支持基板102の第2主面46に1つのインターコネクタが支持された、いわゆる縦縞型の燃料電池セルであってもよい。
(B)上記第2実施形態において、燃料電池装置3が備える燃料電池セル101は、「内側電極」としての燃料極6と、「外側電極」としての空気極8とを備えることとしたが、燃料電池セル101の構成はこれに限定されない。例えば、燃料電池セル101は、「外側電極」としての燃料極6と、「内側電極」としての空気極8とを備えていてもよい。この場合、燃料極6と空気極8とが逆に配置されるとともに、ガス流路(第1ガス流路102a、第2ガス流路102b及び連通流路103a)には酸化剤ガスが流される。
(C)上記第2実施形態において、第1ガス流路102aと第2ガス流路102bは、連通部材103が有する連通流路103aによって連通されることとしたが、この構成に限定されない。例えば、第1ガス流路102aと第2ガス流路102bとに連通する連通流路103aは、支持基板102の内部に形成されていてもよい。
(D)上記第1及び第2実施形態では、電気化学セルを備える電気化学装置の一例として、燃料電池セルを備える燃料電池装置について説明したが、これに限られない。電気化学装置には、水蒸気から水素と酸素を生成する電解セルを電気化学セルとして備えるものが含まれる。
以下において、本発明に係る燃料電池装置及び燃料電池セルの実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
(サンプルNo.1〜12の作製)
以下のようにして、上記第1実施形態に係る平板型の燃料電池装置1(図1参照)の構成を有するサンプルNo.1〜12を作製した。
まず、8YSZによって構成される電解質11と、NiO−8YSZによって構成される燃料極12と、LSCFによって構成される空気極13とを備える燃料電池セル10を形成した。
そして、Niフェルトによって構成される燃料極側集電部14を燃料電池セル10の燃料極12に電気的に接合するとともに、Niフェルトによって構成される空気極側集電部15を燃料電池セル10の空気極13とステンレスによって構成されるインターコネクタ20とに電気的に接合した。
そして、酸化剤ガス供給部40、酸化剤ガス排出部50、燃料ガス供給部60及び燃料ガス排出部70を燃料電池セル10に組み付けた。
この際、サンプルNo.1〜5、7〜11では、酸化剤ガス供給部40の熱伝導率を酸化剤ガス排出部50の熱伝導率よりも高くすることによって、第1位置P1における空気の温度T1が第2位置P2における空気の温度T2よりも低くなるようにした。また、酸化剤ガス供給部40と酸化剤ガス排出部50との熱伝導率差を調整することによって、表1に示すように、温度T1及び温度T2の温度差を調整した。
一方、サンプルNo.6、12では、酸化剤ガス供給部40の熱伝導率を酸化剤ガス排出部50の熱伝導率と同じにした。
なお、サンプルNo.1〜12では、燃料ガス供給部60の熱伝導率を燃料ガス排出部70の熱伝導率と同じにした。
次に、サンプルNo.1〜6においてT1及びT2の温度差を制御した試験を実施した。具体的には、燃料ガス室S1に水素ガスを供給し、かつ、酸化剤ガス室S2に空気を供給しながら燃料電池セル10を765度まで昇温した後、1時間経過後に酸化剤ガスの温度T1及び温度T2を測定した。温度T1と、温度T2と、温度T1及び温度T2の温度差とは、表1に示すとおりであった。
また、サンプルNo.7〜12では、サンプルNo.7〜12よりも低温側での試験を実施した。具体的には、燃料ガス室S1に水素ガスを供給し、かつ、酸化剤ガス室S2に空気を供給しながら580度まで昇温した後、1時間経過後に酸化剤ガスの温度T1及び温度T2を測定した。温度T1と、温度T2と、温度T1及び温度T2の温度差とは、表1に示すとおりであった。
なお、サンプルNo.1〜12では、燃料電池セル10のうちセル中央部分(具体的には、空気の流通方向D1における空気極13の中央部分)の温度を測定することによって燃料電池セル10の作動温度を取得した。また、サンプルNo.1〜5、7〜11では、空気極13のうち上流側部位及び下流側部位の温度差は、20度以下であった。一方、サンプルNo.6,12では、空気極13のうち上流側部位及び下流側部位の温度差は、23度以上であった。空気極13の上流側部位の温度とは、空気極13の上流側端面の温度である。空気極13の下流側部位の温度とは、空気極13の下流側端面の温度である。
(サンプルNo.13〜24の作製)
以下のようにして、上記第1実施形態の変形例に係る平板型の燃料電池装置2(図2参照)の構成を有するサンプルNo.13〜24を作製した。
まず、8YSZによって構成される電解質11と、NiO−8YSZによって構成される燃料極12と、LSCFによって構成される空気極13とを備える燃料電池セル10を形成した。
そして、Niフェルトによって構成される燃料極側集電部14を燃料電池セル10の燃料極12に電気的に接合するとともに、Niフェルトによって構成される空気極側集電部15を燃料電池セル10の空気極13とステンレスによって構成されるインターコネクタ20とに電気的に接合した。
そして、酸化剤ガス供給部40、酸化剤ガス排出部50、燃料ガス供給部60及び燃料ガス排出部70を燃料電池セル10に組み付けた。
この際、サンプルNo.13〜17、19〜23では、燃料ガス供給部60の熱伝導率を燃料ガス排出部70の熱伝導率よりも高くすることによって、第3位置P3における水素ガスの温度T3が第4位置P4における水素ガスの温度T4よりも低くなるようにした。また、燃料ガス供給部60と燃料ガス排出部70との熱伝導率差を調整することによって、表1に示すように、温度T3及び温度T4の温度差を調整した。
一方、サンプルNo.18、24では、燃料ガス供給部60の熱伝導率を燃料ガス排出部70の熱伝導率と同じにした。
なお、サンプルNo.13〜24では、酸化剤ガス供給部40の熱伝導率を酸化剤ガス排出部50の熱伝導率と同じにした。
次に、サンプルNo.13〜18においてT3及びT4の温度差を制御した試験を実施した。具体的には、燃料ガス室S1に水素ガスを供給し、かつ、酸化剤ガス室S2に空気を供給しながら燃料電池セル10を765度まで昇温した後、1時間経過後に酸化剤ガスの温度T3及び温度T4を測定した。温度T3と、温度T4と、温度T3及び温度T4の温度差とは、表1に示すとおりであった。
また、サンプルNo.19〜24では、サンプルNo.13〜18よりも低温側での試験を実施した。具体的には、燃料ガス室S1に水素ガスを供給し、かつ、酸化剤ガス室S2に空気を供給しながら燃料電池セル10を580度まで昇温した後、1時間経過後に酸化剤ガスの温度T3及び温度T4を測定した。温度T3と、温度T4と、温度T3及び温度T4の温度差とは、表1に示すとおりであった。
なお、サンプルNo.13〜24では、燃料電池セル10のうちセル中央部分(具体的には、水素ガスの流通方向D2における燃料極12の中央部分)の温度を測定することによって燃料電池セル10の作動温度を取得した。また、サンプルNo.13〜17、19〜23では、燃料極12のうち上流側部位及び下流側部位の温度差は、20度以下であった。一方、サンプルNo.18,24では、燃料極12のうち上流側部位及び下流側部位の温度差は、23度以上であった。燃料極12の上流側部位の温度とは、燃料極12の上流側端面の温度である。燃料極12の下流側部位の温度とは、燃料極12の下流側端面の温度である。
(サンプルNo.25〜36の作製)
以下のようにして、上記第2実施形態に係る片持ち式横縞型の燃料電池装置3(図3参照)の構成を有するサンプルNo.25〜36を作製した。
まず、NiO−Y2O3によって構成される支持基板102と、NiO−8YSZによって構成される燃料極6と、8YSZによって構成される電解質7と、GDCによって構成される反応防止膜7aと、LSCFによって構成される空気極8とを備える燃料電池セル101を形成した。なお、支持基板102には、ガス流路(第1ガス流路102a、第2ガス流路102b及び連通流路103a)を6本形成した。
次に、マニホールド100に燃料電池セル101を固定した。
そして、サンプルNo.25〜30においてT5及びT6の温度差を制御した試験を実施した。具体的には、マニホールド100のガス供給室S3に水素ガスを供給し、かつ、燃料電池セル101の周囲に空気を供給しながら750度で燃料電池セル10を定常的に作動させた。
この際、サンプルNo.25〜29では、燃料電池セル101のうち燃料ガス供給口102c周辺における空気流量を、燃料電池セル101のうち燃料ガス排出口102d周辺における空気流量よりも多くすることによって、第5位置P5における水素ガスの温度T5が第6位置P6における水素ガスの温度T6よりも低くなるようにした。また、燃料ガス供給口102c周辺及び燃料ガス排出口102d周辺の空気流量差を調整することによって、表1に示すように、温度T5及び温度T6の温度差を調整した。
一方、サンプルNo.30では、燃料電池セル101周辺の空気流量を一様にした。
そして、燃料電池セル101が750度まで昇温した後、1時間経過後に水素ガスの温度T5及び温度T6を測定した。温度T5と、温度T6と、温度T5及び温度T6の温度差とは、表1に示すとおりであった。
また、サンプルNo.31〜36においてサンプルNo.25〜30よりも低温側での試験を実施した。具体的には、マニホールド100のガス供給室S3に水素ガスを供給し、かつ、燃料電池セル101の周囲に空気を供給しながら588度まで昇温させた後、燃料電池セル101を定常的に作動させた。
この際、サンプルNo.31〜35では、燃料電池セル101のうち燃料ガス供給口102c周辺における空気流量を、燃料電池セル101のうち燃料ガス排出口102d周辺における空気流量よりも多くすることによって、第5位置P5における水素ガスの温度T5が第6位置P6における水素ガスの温度T6よりも低くなるようにした。また、燃料ガス供給口102c周辺及び燃料ガス排出口102d周辺の空気流量差を調整することによって、表1に示すように、温度T5及び温度T6の温度差を調整した。
一方、サンプルNo.36では、燃料電池セル101周辺の空気流量を一様にした。
そして、燃料電池セル101が588度まで昇温した後、1時間経過後に水素ガスの温度T5及び温度T6を測定した。温度T5と、温度T6と、温度T5及び温度T6の温度差とは、表1に示すとおりであった。
なお、サンプルNo.25〜36では、燃料電池セル101のうちセル先端部の端面の温度を測定することによって燃料電池セル101の作動温度を取得した。また、サンプルNo.25〜29,31〜35では、燃料電池セル101のうち上流側部位及び下流側部位の温度差は、10度以下であった。一方、サンプルNo.30,36では、燃料電池セル101のうち上流側部位及び下流側部位の温度差は、11度以上であった。燃料電池セル101の上流側部位の温度とは、燃料電池セル101のうち燃料ガス供給口102c周辺におけるセル外表面の温度である。燃料電池セル101の下流側部位の温度とは、燃料電池セル101のうち燃料ガス排出口102d周辺におけるセル外表面の温度である。
(燃料電池セルの損傷確認)
サンプルNo.1〜36を定常的に10時間作動させた後、各サンプルを室温まで降温し、ガスリーク有無とセル損傷有無とに基づいてクラック評価を行った。その結果を下表1に記載する。
ガスリーク量については、空気極12から燃料極13へリークするガスの流量を測定した。詳細には、燃料電池装置1の酸化剤ガス排出部50の出口側及び燃料ガス供給部60の入口側を封止した上で、酸化剤ガス供給部40からアルゴンガスを供給し、酸化剤ガス側の内圧を10kPaとして燃料ガス排出部70の出口端部に設けた流量計によりガスリーク量を測定した。なお、測定下限界が0.1(cc/min)であるので、ガスリーク量が0.1(cc/min)未満であればガスリーク無しと判定し、ガスリーク量が0.1(cc/min)以上であればガスリーク有りと判定した。
また、損傷の有無については、セル表面を観察することで確認した。具体的には、燃料電池セルの表面をマイクロスコープで観察し、セルの電極および電解質におけるクラックの有無を確認した。
表1では、クラックがあり、ガスリークのあったサンプルを×と評価し、微小なクラックはあったがガスリークはなかったサンプルを○と評価し、クラック及びガスリークともになかったサンプルを◎と評価した。
表1に示すように、平板型燃料電池装置に係るサンプルNo.1〜12のうち、温度T1を温度T2よりも低くし、かつ、温度T1及び温度T2の温度差を3度以上40度以下としたサンプルNo.1〜4,7〜10では、燃料電池セル10にクラックが発生することを抑制できた。
このような結果が得られたのは、温度T1を温度T2よりも3度以上低くすることによって、空気極13のうち上流側部位及び下流側部位の温度差を低減させるとともに、温度T1及び温度T2の温度差を40度以下とすることによって、空気極13の上流側部位が過度に冷却されることを抑制できたためである。
さらに、表1に示すように、サンプルNo.1〜4,7〜10のうち温度T1及び温度T2の温度差を5度以上20度以下としたサンプルNo.2,3,8,9では、燃料電池セル10にクラックが発生することをより抑制できた。
また、表1に示すように、平板型燃料電池装置に係るサンプルNo.13〜24のうち、温度T3を温度T4よりも低くし、かつ、温度T3及び温度T4の温度差を3度以上40度以下としたサンプルNo.13〜16,19〜22では、燃料電池セル10にクラックが発生することを抑制できた。
このような結果が得られたのは、温度T3を温度T4よりも3度以上低くすることによって、燃料極12のうち上流側部位及び下流側部位の温度差を低減させるとともに、温度T3及び温度T4の温度差を40度以下とすることによって、燃料極12の上流側部位が過度に冷却されることを抑制できたためである。
さらに、表1に示すように、サンプルNo.13〜16,19〜22のうち温度T3及び温度T4の温度差を5度以上20度以下としたサンプルNo.14,15,20,21では、燃料電池セル10にクラックが発生することをより抑制できた。
また、表1に示すように、片持ち式横縞型の燃料電池装置に係るサンプルNo.25〜36のうち、温度T5を温度T6よりも低くし、かつ、温度T5及び温度T6の温度差を1度以上20度以下としたサンプルNo.25〜28,31〜34では、燃料電池セル101にクラックが発生することを抑制できた。
このような結果が得られたのは、温度T5を温度T6よりも1度以上低くすることによって、燃料極6のうち上流側部位及び下流側部位の温度差を低減させるとともに、温度T5及び温度T6の温度差を20度以下とすることによって、燃料極6の上流側部位が過度に冷却されることを抑制できたためである。
さらに、表1に示すように、サンプルNo.25〜28,31〜34のうち温度T5及び温度T6の温度差を3度以上15度以下としたサンプルNo.26,27,32,33では、燃料電池セル101にクラックが発生することをより抑制できた。