従来、液晶表示装置などの面状の照明を必要とする表示機器に対して、種々の面発光装置が使用されている。特に、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンやTVの液晶表示パネルの被表示体の背面に配置する面発光装置が、バックライトユニットとしてよく知られている。また、表示物を前から照らし出す、導光板自体の透光性を重視するフロントライトユニットや、さらには、導光板の両面からの光を利用した照明や、また、絵文字等の情報を表示するピクトグラムのような両面発光型パネルにも面発光装置が用いられる。
図13は、従来技術による代表的なバックライトユニットに用いられる面発光装置1の構成を示す概略図である。この面発光装置1の下部には、反射シート2が配置され、導光板3とLED光源4とを有しており、LED光源4の光は、導光板3の入光端面部5より導光板3内部に照射される構造となっている。
また、図14と図15に示す様に、導光板3の下面には、光拡散物質粒子が含まれるドット6がパターン化されて形成され、LED光源4に面する入光端面部4は滑らかに研磨され、入光端面部4と対向する離隔端面部10及びその他の出光端面部には反射テープ11が貼りつけられている。
次に、このような従来例の面発光装置1の構成における光の状態を説明する。
LED光源4の光は、入光端面部5から入射光7としてアクリル樹脂等の透光基板からなる導光板3内に入ると、アクリル樹脂と空気との光屈折率の違いにより折れ線で示すように全反射し、また、側壁の離隔端面部10を含む三つの出光端面部に到達した光は反射テープ11で反射し導光板3内に跳ね返されて導光板3内部にもどり閉じこもろうとする。
しかし、入射光7が、導光板3の下面に形成された光拡散物質を含む複数のドット6に当たると、ドット6内に含まれる光拡散物質、又は、ドット6の表面に形成された凹凸、により拡散及び乱反射することになる。その結果、拡散及び乱反射して導光板3の上面に向かって垂直に近い角度で当たる光は上面から、ドット6を通り抜けた光は導光板3の下面から出射光8として飛び出すことになる。尚、下面から飛び出した出射光8は反射シート7にて反射され導光板3内に戻り上面からの光として出射光8に加わることになる。
上面からの上方に向かう出射光は、プリズムシートやレンズシート等の拡散シート9を通過することにより、光の強弱が均一化された品質の良い調和光となり、液晶等の被表示体12のバックライトとして画面を明るく照らし出すことになる。
なお、このような従来の面発光装置1に使用されている導光板3は、透光基板表面にドット6をスクリーン印刷工法により、LED光源4近傍の入光端面部5面はドット6の面積比率を小さくし、LED光源4から離れるにつれて徐々にドット6の面積比率を高めていくようにパターン配列化されて形成するものが主流となっていた。
しかし、この様な導光板3を用いた面発光装置1には、導光板3の表面に手垢や指紋等の汚れ、傷つきを防止するために、保護カバーが必要であった。バックライトユニットとして使用される場合には、反射シート7やプリズムシートやレンズシート等の拡散シート9が、導光板の表と裏を覆うことで保護カバーの代わりをすることもあるが、フロントライトユニットや両面発光型パネルにおいては、導光板3自体が表面に位置する場合があり、そのため、手垢や指紋等の汚れを防止するためだけに保護カバーが必要となる。
また、導光板3のような光学シートは、生産工程においても、手垢や指紋等の汚れに対して非常に神経を費やすることとなる。常にクリーンルームにて防塵手袋をして作業に当たるものの、印刷工程、乾燥工程、検査工程、搬送工程、出荷工程等でのちょっとした不注意により、手袋をはずしたときに手垢や指紋等の汚れを付着させてしまうことが多々発生する。
先に述べたように、光の屈折を利用して平面部から均一な出射光として取り出す面発光装置の照明の為に、表面不良が少しでもあると点灯時に異常な散乱光を発生させ非常に目立ちやすくなる。このような光学シートの場合、手垢を取り除く洗浄での修正をすると、さらに汚れを広げることとなり、その製品全体がスクラップとなるため、コスト的に大きな損失となる。
また、この様に汚れに対する製品価値の低下が大きいため、フロントライトユニットや両面発光パネルのような商品には、必ずガラス板等の保護カバーが必要となり、製品としての製造コストも高くつくとの課題もあった。
その課題を解決するために、特許文献1では、エッジライト型面発光装置として、外側に面する光拡散シートを40%未満の光沢度を持つマット形状を有するものとし、表面に付着した指紋の隠蔽性を向上させるものが紹介されている。
また、特許文献2では、両面が発光するエッジライト型面発光装置が紹介されており、外面板の表面には指紋付着防止加工を施すとある。詳細な説明はされていないが、樹脂中に粒子を練り込む手段、ブラスト加工による手段で、表面に凹凸を形成する方法と推察される。
確かに、このような方法であれば、指紋がついても目立たなくはなり、拡散シートには採用できる。しかし、樹脂に粒子を練り込む方法とか、表面に凹凸を形成させる手段は、全体の表面屈折率を大きく変化させるため、光が裏側から表側に通り抜ける拡散シートには採用できても、光を端面より導いて平面全体を均一に光らす導光板には適切な方法ではない。
また、特許文献3には、面光源装置及び画像表示装置の光学シートの光学機能発現部に優れた耐指跡性(指跡付着防止性)を付与するものとして、透光樹脂にケイ素系化合物及びフッ素系化合物から選ばれる防汚剤を3重量%以上含有することで、皮脂に起因する指跡がつき難くなり、耐指跡性が向上すると紹介されている。
確かに、シリコンオイル系のケイ素系化合物や、界面活性剤であるフッ素系化合物から選ばれる防汚剤を使用することで、光学シート表面の指紋付着防止を施すことは可能と思われる。
しかし、液体状の防汚剤で、紫外線硬化タイプの透光樹脂への添加剤でもあり、用途が制限され、一般的に導光板として使用されるスクリーン印刷用の溶剤型のスクリーンインキに添加剤として採用するには、硬化条件に大きな違いがあり、また、スクリーン印刷可能なインキへの粘度調整の問題や、さらには、硬化後でのドット表面への液状物のブリードによる光屈折率の変化等があり、均一な光の取り出しが困難である課題を有していた。
また、透光基板の素地表面に手垢や指紋の汚れが付着しないドット印刷が可能であったとしても、ドット自体への手垢がつかなくなるだけである。すなわち、ドット間隔が大きく、素地の部分が広くなると、その素地面に、工程作業での導光板を取り扱う時に、手垢や指紋等の汚れが付くことで輝度が変化してしまうため課題の解決には至らなかった。
ドット間隔に関する従来技術として、特許文献4に、ひとつのドットの中心から最接近するドットの中心までの距離が0.4mm以上で1.5mm以下との記載も見受けられるが、透光基板の透光性を重視して、1.5mm以下としたのは均一な輝度を確保するためで、0.4mm以上としたのは消灯時でのドットの目視確認での有無を評価するもので、すべてのドットが前記距離間で導光板全面を覆う導光板ではなく、また、輝度の均一化を考慮して印刷面積率をパターン配列化により増減させると、導光板の透光基板面がむき出しとなる個所が多くなるとも考えられる。
また、この文献ではドット自体への手垢のつかない工夫は無く、透光基板素地面のみならず、ドット印刷層にも手垢とか指紋の汚れが付くことが考えられ、汚れ部分の輝度が変化して見苦しくなる問題は解決できていない。
また、特許文献5には、ドットパターンを構成するドットの望ましい間隔について検討されており、アクリル板等の印刷基材の厚さよりも大きなドット間隔にすると、光が導光板の外部に飛び出さない部分が生じるため、導光板全面からの均一な光を取り出すためのドット間隔は、印刷基材の厚さ以下であることが望ましい、と記載されている。
確かに、光の屈折角度が約45度であり板厚以上のドット間隔では暗くなる部分が発生するように推論できるが、実際はドットにより広く拡散される光で暗くなる部分を無くすことは可能であり、また、均一な輝度を確保する狙いのもので、一部分的な条件となる。すなわち、すべてのドットが前記距離間で導光板全面を覆うものではなく、また、輝度の均一化を考慮して印刷面積を増減させると導光板の板厚によっても透光基板面がむき出しとなる個所が多くなると考えられる。
また、特許文献4同様に、ドット自体への手垢のつかない工夫の記載は無く、透光基板素地面のみならず、ドット印刷層にも手垢とか指紋の汚れが付くことが考えられ、汚れ部分の輝度が変化して見苦しくなる問題は解決できていない。
また、従来のシルクスクリーン印刷による導光板3となる透光基板12の印刷面13への従来拡散インキ14での塗布状態は、図16に示す断面となっている。すなわち、光拡散物粒子16と、増粘剤や消泡材や防汚剤を含む添加剤17と、溶剤を含むバインダー樹脂とから構成されており、乾燥工程にて溶剤を揮散させると、図17で示す様に、その揮発する分、厚みが減少するが、比較的大きな径を有する光拡散物粒子16が抵抗体となって表面に凹凸の乱反射面を形成することにより光拡散用のドットを形成するものであった。
光拡散物粒子16としては、酸化チタンを含むものもあったが、一般的にはバインダー樹脂15と光屈折率が類似した酸化ケイ素やガラスビーズやアクリル樹脂ビーズ等の大きな粒子を使用することが多かった。
従来においては、導光板用の拡散インキ自体への手垢や指紋の汚れ付着防止のための手段は一切されておらず、また、先の文献にも印刷されるドット自体への手垢や指紋が付かない工夫は記載されていない。よって、製品完成後のみならず、製造工程での取り扱い時にドット印刷面にも手垢とか指紋の汚れが付くことが考えられ、特に導光板においては汚れ部分の輝度が変化してより見苦しくなるにもかかわらず、手垢や指紋の汚れが付着により不良となる課題は解決されていない。
本発明は、スクリーン印刷用のインキに手垢や指紋等の汚れが付かない機能を持たせ、導光板の印刷層および透光基板素地表面を含む全面での手垢や指紋の汚れ付着防止ができる、新しい機能を持つ導光板と面発光装置とその製造方法として開発したものである。
以下、本発明の第一実施形態について、図1から図5を参照にしつつ説明する。
図1は本発明の第一実施形態による導光板をフロントライトユニットとして用いられた面発光装置の一例を示す概略断面構成図であり、図2は本発明の第一実施形態による導光板部分の縦断面図であり、図3は本発明の第一実施形態による導光板の複数のホールをパターン配列により形成した印刷層からなる発光部の一例を示す平面図であり、図4は本発明の第一実施形態による導光板の複数のホールの一部を示す拡大平面図であり、図5は本発明の第一実施形態による導光板の複数のホールの一部を示す拡大A−A断面図である。
図1に例示する第一実施形態の面発光装置31は、例えば写真、絵画、あるいは反射板を有する液晶画面等の不透光な被表示体32を、上方から照射する発光器具33と、ハウジング体からなる固定治具体34とで構成されている。
発光器具33は、導光板35と、LED光源36とを有しており、導光板35の両主面と接する端面の入光端面部37に配置されたLED光源36の光が、導光板35の入光端面部37より導光板35内部に照射される構造となっている。導光板35は、例えば透光性のあるアクリル樹脂からなる透光基板38と、透光基板38の両主面のうち、透光性のない被表示体32に対向する下面39とは反対の上面40に、スクリーン印刷法により非発光部となる主面素地部53と発光部42とで形成された印刷層41が構成されている。
なお、透光基板38は、導光板35の本体部であるので、時に、両者を区別することなく記載する場合がある点に注意されたい。以下の説明では、一例として、透光基板38は透光性のあるアクリル樹脂板であるとする。
ハウジング体からなる固定治具体34は、導光板35とLED光源36からなる発光器具33を一体に固定するとともに、LED光源36や導光板35の面を保護する役目を持つもので、ハウジング体からなる固定治具体34の表開口部43には透光の保護カバー44が取り付けられ、裏開口部45には裏板46が留め金47により取り付けられてある。ハウジング体からなる固定治具体34の内部にある不透光な被表示体32を取り替えたい場合には、この留め金47をはずして裏板46を開口して取り換えることができる。
なお、透光の保護カバー44については、傷つきや破損防止として、念のために取り付けてはいるが、手垢や指紋等の汚れを防止するためだけであれば、導光板35自体が手垢や指紋等の付着防止効果を有するため必要はなく、手の届かない高い場所等に設置する場合には保護カバー44を外して使用することができるようになっている。
LED光源36は、電源コード48によりON−OFFスイッチ49と変圧器50とコンセント51とに連結されている。
第一実施の形態の導光板35は、透光基板38の上面40全体を非発光部となる主面素地部53と発光部42とを持つ複数のホール52で構成する印刷層41をスクリーン印刷で形成したものである。この発光部42は、アクリル樹脂等の透光性のバインダー樹脂と、バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子と、手垢や指紋の汚れ付着防止効果を有する疎水基を結合させた無機物粒子と、溶剤とを含むスクリーン印刷用の複合物インキを用いて印刷し、印刷処理後に乾燥処理で溶剤を揮散させて形成したものである。
図2と図3で示す様に、導光板35の上面40全体には、スクリーン印刷法により、非発光部となる主面素地部53の複数のホール52とその周りの発光部42とからなる印刷層41が形成されている。また、LED光源36に対向する入光端面部37は鏡面仕上げされ、他の側2つの側壁端面と離隔端面部54には反射テープ55が貼り付けられている。
また、印刷層41にあるホール52は一つ一つが独立してなり、複数のホール52内面の非発光部となる主面素地部53は透光基板38の主面素地が露出してなるものである。
また、透光基板38主面の上面40全体が概ね印刷層41となるが、印刷層41に対する複数のホール52内面の非発光部となる主面素地部53の面積比率が、LED光源36に面する入光端面部37から、対向する離隔端面部54に向かって徐々に減少する条件で透光基板38の上面40全体に複数のホール52がきめ細かにパターン配列されてある。
なお、ここでは印刷層41にある複数のホール52内面は、透光基板38の主面素地部53となる非発光部を形成させたが、スクリーンインキ内の光拡散物質の量を調整さえすれば、複数のホール52の位置に複数のホール52と同じ大きさのドット形状を形成させ、入光端面部37と離隔端面部53とを反転させ取り付ければ、ほぼ同じ効果が得られる。本実施例では、導光板35の全体面が手垢や指紋等の汚れが付かない様に確実に覆われることを狙い、複数のホール52のパターン設計を事例としてあげているが、複数のドットによるパターン設計でも主面全体がきめ細かく覆われていれば問題はなく、複数のホール52に限定するものではない
また、図4は、本発明の第一実施形態による導光板の複数のホール52の一部を示す拡大平面図で、図3中に示す(M)の囲い部を拡大して示すものである。図5は、本発明の第一実施形態による導光板の複数のホール52の一部を示す拡大断面図で、(M)囲い部のA−A断面を示している。
印刷層41に形成した複数のホール52内面の非発光部となる主面素地部53に描く仮想円56径の大きさ(W)は、発光部42の厚み、すなわち印刷層41の厚み寸法(t)に対して300倍以下の寸法とした。実際の試作実験においては、発光部42の厚み(t)は、1μmから7μm程度となり、最大値である7μmの発光部42の厚みであれば、ホール内の非発光部となる主面素地部53の面の大きさは2.1mm以上の径の大きさの円が描けない大きさに止めておく必要がある。その根拠は、発光部42のホール52上面に人の指が触れて、ホール52の内面の素地にまで届くホール52の大きさを計算で求めたものである。
また、バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子は酸化チタンの粒子とした。酸化チタンの光屈折率は約2.7であり、導光板材やバインダー樹脂として使用されるアクリル樹脂等の光屈折率の約1.47に比べ2倍近く大きく、バインダー樹脂内に埋没されていても、その境界部分で光が屈折及び反射し、酸化チタン粒子の界面で効率よく発光することになる。
また、主面全体に手垢や指紋の汚れを防止するためには、できるだけ透光基板の主面全体をきめ細かく防汚処理効果のある印刷層で覆う必要があり、光拡散物質粒子は粒子径が小さく混合量を少なくして、輝度を均一にコントロールする。
また、バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた無機物粒子としては合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを選定した。合成非晶質シリカには乾式法シリカと湿式法シリカとがある。乾式法シリカも湿式法シリカも一次粒子径は数nmの大きさであるが、湿式法シリカは凝集力が強く数μmの粒子径の二次粒子として存在し、プラスチックやゴム等の合成樹脂の補強材や艶消し等の充填剤、及び、水分吸着力を利用して乾燥剤に応用されている。
一方、乾式法シリカは別名フュームドシリカと呼ばれ、緩い凝集性を有し液体への分散性に優れており、液体中に添加するとシリカ表面のシラノール基が互いに水素結合することにより液体中で三次元の網目構造を形成してその組成物液の粘度は高くなりチキソトロピー特性を付与し、沈降を抑え液体の垂れを防止するのに利用されている。
フュームドシリカの表面には、親水性のシラノール基(Si−OH)と疎水性のシロキサン(Si−O−Si)が存在するが、そのままではシラノール基が勝り水との相溶性が良く水溶性の液体に溶け込みやすい。しかし、一般的に、導光板に用いるスクリーン印刷用インキは溶剤タイプであるので、疎水性フュームドシリカに改質して用いる。疎水性フュームドシリカはシラノール基をクロロシラン類等のシラン化合物と反応させることにより、(化学式1)から(化学式3)で示す疎水基を結合させたものである。市販されている疎水基を結合させた疎水性フュームドシリカとしては、日本アエロジル社製のR972、R974、R809、R812、R202、等がある。
クロロシラン類等のシラン化合物としては、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリル、等の中から選ばれるものである。
一般的に、フュームドシリカは親水性、疎水性を問わず、チキソトロピー効果を期待して塗料やインキの液体組成物の粘度調整やたれ防止剤として用いられ、その量は比較的少量で効果があることから、バインダー樹脂と光拡散物質粒子と疎水性フュームドシリカとの総重量を印刷層重量とした時、その印刷層重量に対して1wt%以下の混合量であった。しかし、手垢や指紋の汚れ付着防止効果についての公知例は無く知られていない。本発明においては、疎水性フュームドシリカの疎水性効果をさらに発揮させ、手垢や指紋の汚れ防止効果に繋げるために、疎水性フュームドシリカの混合量は印刷層重量の重量に対して、5wt%以上で35wt%以下の混合量となるように調合した。
次に、このようなフロントライトユニット構造の面発光装置31における光の動きと、導光板35としての機能的な特徴を説明する。
まず、コンセント51を商用電源につなぎ、ON−OFFスイッチ49をONにすると直流変圧器50で直流12Vに変化した電圧が電源コード48に繋がったLED光源36に加わり点灯する。
LED光源36に面する入光端面部37から導光板35内に進入した入射光は、アクリル樹脂と空気との屈折率の関係から全反射を導光板35内で繰り返すことにより、また、離隔端面部53及び側壁端面部に到達した光は反射テープ55で反射し導光板35内に跳ね返されることにより、通常はアクリル樹脂の導光板35内部に閉じ込められる。
しかし、不透光な被表示体32に対向する面の反対側の導光板35の上面40全体に形成された複数のホール52持つ印刷層41の発光部42の中に含まれる光拡散物質粒子に光が当たると、この光は拡散及び乱反射し、導光板35の上下に分散して一部が出射光として飛び出すことになる。
下面39に飛び出した光は、不透光の被表示体32にあたり、被表示体32の表面を明るく照らし、かつ上方に反射される。反射された光は、導光板35を鋭角に通り抜け、また発光部42の印刷層41の厚みが1μmから7μm程度で薄く、光拡散物質の含有量もバインダー樹脂量に対して1%以下と少なく、粒子径も2μm以下と小さいので、大きく減衰されることがなくほとんどの光は通り抜け、よって、被表示体32で反射された光は、被表示体32全体のきれいな画像として視認される。
ただし、拡散光の場合には、発光部42内の一つの光拡散物質粒子に光が衝突すると拡散及び乱反射により光が大きく広がることになり導光板35の面を広く光らせることになる。また、発光部42内の光拡散物質粒子に衝突しない光は、バインダー樹脂と空気との界面で全反射することになるので、発光部42の無い非発光部となる主面素地部53の複数のホール52の面と同様に、離隔端面部54に向かって進む。
すなわち、光拡散物質粒子の粒径が小さくて含有量が少なく、印刷された発光部42が薄くて表面にはほとんど凹凸がないので、発光部42が導光板35全面を占めていても、光拡散物質粒子に衝突しない光は全反射することで、さらに奥へ光を送る機能が残り、均一で安定した面発光体となりうる。
また、直接上方に向かう光は、LED光源36からの直接的な光でなく、光拡散物質粒子である酸化チタンの粒子により拡散及び乱反射された光であり、逆光としての被表示体32の画像の視認性への悪影響を抑制するものである。よって、点灯時も消灯時も透光度は良好であり、フロントライトユニットとして面発光装置31の役割を十分担うものである。
また、印刷層41の発光部42に含まれる光拡散物質を光の屈折率が高い酸化チタンとすることで、バインダー樹脂内に埋没していても光を反射し拡散する効果を得る。すなわち、酸化チタンの光屈折率は約2.7であり、導光板材やバインダー樹脂として使用されるアクリル樹脂等の光屈折率の約1.47に比べ2倍近く大きく、バインダー樹脂内に埋没されていても、その界面部分で光が拡散及び乱反射するため酸化チタンの粒子の界面で効率よく全方位に向かい発光することになる。なお、光屈折率の高い他の光拡散物質粒子としては、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、カーボン等が考えられるが、安全性と色目と透光性で酸化チタンが最も優れるが限定するものではない。
また、複数のホール52内面の透光基板38の主面素地部53の非発光部の大きさが、発光部42の厚みに対し300倍以上の径の仮想円56を描くことができないホール52内面としたのは、導光板35を不用意に指先で触れても、複数のホール52の内面壁が抵抗となって、主面素地面にまで指の皮膚が届くことがなく、手垢や指紋の汚れの付着を防止できるからである。
その根拠となるのは、先にも述べたように、発光部42のホール上面に人の指が触れてホールの内面の素地に届くホールの大きさを計算で求めたもので、ここでは説明を省略する。
よって、発光部42の印刷層41厚み(t)に対し300倍の径で仮想円56を描くことができない非発光部となる主面素地部53を備える、すなわち、仮想円56よりも小さな複数のホール52内面径寸法(W)を有する印刷層41で導光板35全面をきめ細かく覆えば、LED光源36の点灯時には均一で安定した面発光体となると共に、複数のホール52内部に露出する透光基板38の素地面も、発光部42面上も疎水基を結合させた無機物粒子の効果により汚れの付着防止ができ、手垢や指紋が付かない導光板となる。
また、印刷層41からなる発光部42の厚み(t)は、1μm以上で7μm以下で形成する。発光部の厚みが1μm以上であれば、ほぼ光拡散物質の径以上の高さとなり、表面で光を屈折させる凹凸を形成することが少なくなる。また、7μm以上となると、発光部42の一定面積内に含まれる光拡散物質の量が多くなり、拡散及び乱反射が過剰に発生し発光の均一化が崩れ、透光度が低下するためであるが、手垢や指紋等の汚れが付かない効果には、特に影響するものではなく、ここで限定するものではない。
ただし、本発明の場合、溶剤が多く含まれるインキを使うスクリーン印刷製法となるので、従来の印刷発光部の高さに比べると本発明の印刷層41発光部42の厚みは薄くなり、光拡散物質粒子の量も少なくなるが、輝度強度の低下を抑えるためには、導光板35の表面全体に複数のホール52を有する印刷層41からなる発光部42をきめ細かく覆うことで対応できる。よって、発光部の厚みが薄く、光拡散物質粒子の量が少なく透光度が高くなる分、フロントライトユニットとしての機能は高くなりメリットが大きい。
さらに、疎水基を結合させた無機物粒子として、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカとしたのは、屈折率が約1.46で、導光板素材やバインダー樹脂であるアクリル系樹脂の光屈折率1.47と比べると近似しており、多くの量を含んでも光の透過を邪魔することなく透光性が維持されるからである。
また、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカは、バインダー樹脂成分や溶剤に良く溶け込み、スクリーン印刷用インキ状態においては増粘効果を持ち、チキソトロピー剤として、流動性を制御するものでありダレを防止するものであるので、溶剤タイプのスクリーン印刷用のインキ組成物とするには好都合な無機物粒子である。
また、乾燥後の印刷層41の発光部42として固形化された状態では、透光性を失わずに、乾燥工程途上時には凝集力を利用して滑らかな面を形成すると共に、乾燥後には疎水性フュームドシリカの疎水基が表面の粘着を防止するばかりか、印刷後の導光板35を取り扱う工程において、疎水性フュームドシリカを印刷層の表面に分布させ疎水基の頭を表面に出させることで疎水性フュームドシリカの疎水性効果をさらに発揮させ、人の指に触れても手垢や指紋の汚れの付着を防止する汚れにくい表面となる。特に、導光板35としては表面に付着物がつくと光がその部分で拡散及び乱反射して目立ちやすくなるため、この効果は重要な機能である。
また、市販されている無機物粒子であり汎用性が高く比較的安価であり、さらに、固体であるので、液状の添加物のようなブレード現象等の光屈折率を阻害させる表面への悪影響はない。
従来、塗料やインキの液体組成物の粘度調整やたれ防止剤としてチキソトロピー効果を発揮するフュームドシリカの混合量は、バインダー樹脂量等の印刷層重量に対して1wt%以下の混合量であった。しかし、本発明の課題は手垢や指紋の汚れが付かない導光板であり、疎水性効果を十二分に発揮させるために、疎水性フュームドシリカの混合量はバインダー樹脂量等の印刷層重量に対して、5wt%以上となるように発光部を形成させている。先にも説明したが、疎水性フュームドシリカの混合量がバインダー樹脂等の重量に対して5wt%以下では十分な手垢や指紋の汚れが付かない効果が発揮できず、また、35wt%以上では印刷物が脆くなりスクリーン印刷出来るインキ性状とならなかった。
バインダー樹脂と光屈折率が近似する光透過性材料の無機物粒子としては、天然の酸化ケイ素、ガラスビーズ、等の無機物や、ポリスチレン、ポリカーボネートのような有機物、又は、湿式法で作られるゲル法合成非晶質シリカが考えられるが、印刷層に凹凸を付けないためにはナノオーダーの微粉末にする必要があり製造コストが高くなる。
また、機能として期待する、増粘性、チキソトロピー性、防汚性、が合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカ以外では不十分となる。よって、すでに日本アエロジル社等で商業化されている安価で機能性の高い合成非晶質シリカのひとつである疎水基を結合させた疎水性フュームドシリカを使用するのが得策である。
すなわち、このような手垢や指紋の汚れ付着防止効果を有する無機物粒子を利用することで、また、導光板35の表面に複数のホール52を有する印刷層41からなる発光部42を形成して導光板35全面をきめ細かく覆うことで、取り扱い時の指紋や指の汚れがつきにくく、面発光装置31としての導光板35表面の保護カバー44も不要とすることができ面発光装置31として価格の低減もできる。
また、複数のホール52内面の非発光部となる主面素地部53が、一つ一つ独立し、透光基板38の主面素地にまで達する面とすることで、発光部42と非発光部となる主面素地部53とが明確であり、発光部42となる面積比率を入光端面から離隔端面へパターン配列を計算するのに都合がよい。すなわち、印刷層41面積に対する発光部42の面積比率と光の輝度強度とは比例関係を有するので、複数のホール52の面積比により発光部の実面積を計算で求め論理的な比率変化させることが可能であり、透光基板38の表面においてホールの数と、ひとつ当たりの面積との総和により所定の条件でパターン配列設計が容易にでき、導光板35表面の輝度と均一性をコントロールすることができる。
なお、本発明の第一実施形態では、透光基板38の上面40の主面全体に複数のホール52を有する印刷層41からなる発光部42を形成したが、フロントライトユニット用の導光板としては下面39に発光部42を形成すると逆光の光となりまぶしく感じ、被表示体32が見にくくなるため上面40だけの処理としたものである。しかし、片面であることを限定するものではない。
また、両主面の一方の片面だけの処理となると、もう片側面に手垢や指紋の汚れが付着する可能性があるが、フロントライトユニットの場合には、裏開口部45には裏板46があり人の手には触れないものである。また、印刷工程での取り扱い時の汚れについては、もう片側面は常に剥離フィルムによって保護されており汚れや傷は付くことがない。
次に、図6と図10を参照にして、本発明の第二実施形態としてピクトグラムに用いられる両面発光可能な面発光装置61について説明する。尚、先の第一実施形態と同じ部品で同じ機能のものについては同じ番号を付け説明を省略する。
図6は本発明の第二実施形態による導光板をピクトグラムに用いられた両面発光可能な面発光装置の一例を示す概略断面構成図で、図7は本発明の第二実施形態による導光板の部分の縦断面図で、図8は本発明の第二実施形態による複数のドットのパターン配列により形成した印刷層からなる発光部の一例を示す平面図で、図9は本発明の第二実施形態による複数のドット部の(M)の囲い部を示す拡大平面図で、図10は本発明の第二実施形態による複数のドット部のB−B断面を示す拡大断面図である。
図6に例示する面発光装置61は、導光板62と、LED光源63と、上下が開口された上開口部64と下開口部65とを有し、導光板62とLED光源63とを固定するハウジング体66からなる固定治具体67とで構成されている。
導光板62は、透光基板68の上面69及び下面70の両主面全体に非発光部となる主面素地部77と発光部73とを有し、非発光部となる主面素地部77又は発光部73を所定の条件でパターン配列した印刷層71を備え、複数のドット72を発光部73とする印刷層71としたものである。この発光部73は、第一実施形態と同じく、アクリル樹脂等の透光性を有するバインダー樹脂と、手垢や指紋の汚れ付着防止効果を有する疎水基を結合させた疎水性無機物粒子とを含むもので、スクリーン印刷でのインキ塗布後に乾燥処理して溶剤を揮散させることで発光部73を形成するものである。
導光板62となる透光基板68の上面69と下面70の両主面には、スクリーン印刷法により印刷層71全体に複数のドット72からなる発光部73が形成されている。また、LED光源63に対向する入光端面部74は鏡面仕上げされ、離隔端面部75等と2つの側壁端面には反射テープ76が貼り付けられている。
また、印刷層71に形成された発光部73の複数のドット72は一つ一つが独立してなり、複数のドット72外面の非発光部となる主面素地部77は透光基板68の主面素地が露出した面となる。
また、透光基板68の上面69と下面70の両主面全体が概ね印刷層71となり、印刷層71に対する複数のドット72の面積比率が、LED光源63に面する入光端面部74から、対向する離隔端面部75に向かって徐々に増加する条件で透光基板68の上面69と下面70の両主面全体に複数のドット72がきめ細かにパターン配列されてある。
また、図9は、図8中に示す(M)の囲い部を拡大して示すもので、図10は(M)囲い部のB−B断面を示している。印刷層71は発光部層73と非発光部となる主面素地部77とからなり、複数のドット72形成部外面の非発光部となる主面素地部77の面の大きさは、発光部73の印刷層41厚み寸法(t)に対し300倍の径寸法(Z)となる仮想の仮想円78を前記非発光部となる主面素地部77のみで描くことができないドット間隔距離寸法とした。
実際の試作実験においては、発光部73の厚み(t)は、1μmから7μm程度となり、最大値である7μmの発光部73の厚みであれば、ドット72が位置しない非発光部となる主面素地部77の面の大きさは2.1mmの径の大きさの円が描けないドット72間隔にする必要がある。その根拠は、第一実施形態でのホール52の大きさを設定した時と同じであり複数のドット72の側壁上部に人の指が触れて、非発光部となる主面素地部77の素地にまで届かないドット72間距離を計算で求めたものである。
また、第一実施形態と同様に、バインダー樹脂より大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子は酸化チタンの粒子とし、粒径が2μm以下程度のものを選定して使用した。また、光拡散物質としての酸化チタン混合比率は、透光基板68の上面69及び下面70の両主面を印刷層71として複数のドット72を有する発光部73を形成したものであり、第一実施形態より少なく調合して用いた。
また、バインダー樹脂と光屈折率が近似する疎水基を結合させた無機物粒子としては合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを選定し、バインダー樹脂等の印刷層重量に対して5wt%から35wt%になるように混合して作成した。
また、ハウジング66の上開口部64と下開口部65には保護シートも裏板もなく開放されており、直接導光板が外気に当たる状態となっている。尚、その他の部材については先の第一の実施形態と同じであり、説明を省略する。
次に、このようなピクトグラムに利用できる両面が発光する構造の面発光装置61における光の動きと、導光板62としての機能的な特徴を説明する。なお、図示していないが、ピクトグラムとして利用する場合には上面68と下面69に、情報が描かれた透光性の板やフィルム、又は、液晶パネルや、別途拡散インキで絵柄を付けた導光板パネルを取り付けることが必要である。
面発光装置61のLED光源63が点灯すると、光が照射され、入光端面部74から導光板62内に入射光として進入する。入射光は、アクリル樹脂と空気との屈折率の関係から全反射を繰り返すことにより、また、離隔端面部75及び側壁端面部に到達した光は反射テープ76で反射し、導光板62内に跳ね返されることによりアクリル樹脂の導光板62内部に閉じ込められる。
しかし、上面69と下面70の両主面全体に形成された複数のドット72の発光部73を有する印刷層71があると、発光部73に埋没した光拡散物質粒子に光が当たり、光は粒子表面で拡散及び乱反射し、導光板62の上下にも分散して一部が導光板62面からの出射光として上面69及び下面70から飛び出すことになる。
第二実施形態では、導光板62の上面69と下面70の両主面全体に、複数のドット72の発光部73を有する印刷層71が、きめ細かく両主面全体を覆うように形成されているので、入射した光が一つ一つの光拡散物質粒子で拡散及び乱反射により広がることになり、また、発光部73内の光拡散物質粒子に衝突しない光は、バインダー樹脂と空気との界面で全反射することになり、ドット72が存在しない非発光部となる主面素地部77面と同様に、離隔端面部75に向かって進む。すなわち、光拡散物質粒子の径が小さくて数が少なく、印刷された発光部73が薄くて表面にはほとんど凹凸がないので、発光部73が導光板35の両主面全体を占めていても、光拡散物質粒子に衝突しない光は全反射するので、奥へ奥へと光を送る機能があり、均一で安定した面発光体となる。
なお、光拡散物質の個体平均粒子径、光拡散物質の混合比率、発光部73となる印刷層71の厚み(t)、複数のドット72外面の非発光部となる主面素地部77の大きさ、一つ一つ独立したドット72を設定した理由については、第一実施形態の機能と同じであり説明を省略する。
なお、本発明の第二実施形態ではピクトグラムを参考にして説明したが、両面での発光を利用する商品としては、光透過型仕切り照明器具などもある。ピクトグラムでは表面を別途光透過性の情報フィルムを貼り付けることにより導光板の表面が保護されることにもなるが、普段は光を透過するオープンな仕切りとして使用し、個々のセキュリティーが必要な時には照明器具として点灯すれば見えなくなる製品が考えられる。このような光透過型仕切り照明器具では、直接人が触れることが多くなり従来の導光板では保護シートが必要であるが、本発明の導光板であれば、手垢や指紋等の汚れが付着しないので保護シートは不要となり、シンプルで安価な商品として期待できる。
<導光板の製造方法>
次に、本発明の実施形態にかかる導光板35、62の製造方法について図11と図12を参考にして説明する。図11は、本発明の複合物インキ(G)80を用いてスクリーン印刷工法で透光基板38、68の印刷層41、71に塗布したインキ状態を示す拡大断面図であり、図12は、本発明の複合物インキ80を用いてスクリーン印刷して複合インキ(G)80を乾燥して濃縮されインキ固形物からなる印刷層41、71を形成した状態を示す拡大断面図である。
まず、透光基板38、68の主面全体の印刷層41、71に形成する発光部42、73のスクリーン印刷用の複合物インキ(G)80を調合する。
複合物インキ(G)80は、透光性を有するバインダー樹脂81と、バインダー樹脂81よりも大きな光屈折率を持つ光拡散物質粒子82と、光屈折率がバインダー樹脂と近似し、チキソトロピー特性を有する疎水基を結合させた無機物粒子83と、バインダー樹脂81を溶かす溶剤(バインダー樹脂成分に含まれるため図示せず)とからなるものである。
まず、透光性を有するバインダー樹脂81としてはアクリル系の樹脂が多く用いられ、光拡散物質粒子82としては光屈折率の大きい粒径が2μm以下の酸化チタン粒子が用いられる。また、バインダー樹脂81を溶かす溶剤として主にイソホロン溶剤を、光屈折率がバインダー樹脂と近似し、チキソトロピー特性を有する疎水基を結合させた無機物粒子83としては、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを使用した。
チキソトロピー特性を有する無機物粒子83としては、合成非晶質シリカの乾式法で製造されるフュームドシリカが良く知られているが。そのフュームドシリカの粒子は一次粒子が数nm程度の微粒子であり、水や溶剤の液中に存在する場合には一次粒子から二次粒子を作ろうとする緩い凝集力が働くことでチキソトロピー特性を発揮する。
水溶性の塗料やインキには親水性フュームドシリカを利用し、溶剤性の塗料やインキには疎水性フュームドシリカが通常使用されている。フュームドシリカの混合量としては塗料やインキ重量に対して1wt%以下でもチキソトロピー特性は有効に働き、タレの防止効果を発揮する。
乾式法で作成された合成非晶質シリカのフュームドシリカは、湿式法で作られる合成非晶質シリカや結晶性の鉱物シリカとは違い、平均一次粒子径が4〜40nmで、その比表面積が50〜380平方m/gの超微粉末状態で、表面には親水性のシラノール基と疎水性のシロキサンが存在し、特にシラノール基はバインダー樹脂の補強効果とチキソトロピー効果とを有し、液状態に混ぜると増粘性を発揮する。
フュームドシリカの中でも、疎水性フュームドシリカはシラノール基をクロロシラン類等のシラン化合物と反応させることにより、(化学式1)から(化学式3)で示す疎水基を結合させ、疎水性を高めたものである。
次に、得られた酸化チタン粒子を、少量のバインダー樹脂81のアクリル系の樹脂液と混ぜ合わせペースト(P)とする。ペースト(P)における酸化チタン粒子の重量混合量は、ペースト(P)全重量に対して約30wt%とした。混ぜ合わせる方法としては、例えば棒状部材で混合物を混ぜ合わせるなどの、公知の攪拌方法を用いることができる。
また、透光性を有するバインダー樹脂81に透光性を阻害しない増粘剤や消泡剤や防腐剤等の添加材を混ぜ、さらに溶剤を加え合わせることにより、スクリーン印刷が可能な粘度に調整し、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)を作成した。
次に、第一工程として、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)に、先に準備したペースト(P)を適量分混合することによりスクリーン印刷用拡散インキ(D)を作成した。ペースト(P)の適量分とは、光拡散物質粒子82として酸化チタン粒子を用いた場合は、溶剤分を除くインキ固形分重量に対し1wt%程度になるように計算して混合する。
なお、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)は、市販品インキを利用しても差し支えない。例えば、ミノグループ社製のSR930メジウムインキはすでにスクリーン印刷用クリアーインキ(C)として性状を保つもので使用でき、光拡散物質粒子82としては酸化チタン粒子を含むペースト(P)を適量分加えスクリーン印刷用拡散インキ(D)として用いても良い。
次に、第二工程として、チキソトロピー特性を有し、疎水基を結合させた無機物粒子83を疎水性フュームドシリカとして、イソホロン溶液に対し約10wt%から約30wt%になるようイソホロン溶剤に混合し、スクリーン印刷用拡散インキ(D)と同程度の粘度に調整した溶液組成物(S)を作成した。この溶液組成物(S)は、疎水性フュームドシリカが緩い凝集性を有するために十分な混練りが必要となり、必要に応じては三本ロールミルに所定の条件で溶液組成物(S)を数回通して混練りし、凝集した粒子をほぐす工程が必要である。
所定の条件とは、三本ロールミルによる混錬作業において、各ロールを1:3:8程度の回転比とし、前ロール回転数を約120rpm、ロール間隔を200μm程度に条件を設定し、3回から5回三本ロールミル通しで、粘度を4000〜8000pa'sとなるように調整するのが良い。
チキソトロピー特性を有する疎水性フュームドシリカの性質上、イソホロン溶液に対し10wt%から30wt%も混ぜ合わせるとパテ状態となるが、三本ロールミルで、せん断応力がかかると粘度が小さくなり流動化してくる。
次に、第三工程として、流動化した溶液組成物(S)とスクリーン印刷用拡散インキ(D)とを用途に合わせた比率で適切に混ぜることにより、粘度を4000〜8000pa'sとなる、本発明に使用できる導光板用の複合物インキ(G)80を作成した。
用途に合わせた適切な混合比とは、複数のドット72を有する印刷層71からなる発光部73の場合には、スクリーン印刷用拡散インキ(D)の分量を増やし、また、複数のホール52を有する印刷層41からなる発光部42の場合はスクリーン印刷用拡散インキ(D)の分量を減らし、輝度の調整や手垢や指紋の汚れ付着防止度合いをコントロールする。また、両主面ともに発光部73を有する導光板62を作成するには、発光部73となる面積が大きくなることからスクリーン印刷用拡散インキ(D)の分量を減らす必要がある。すなわち、用途に合わせて適切な配合を検討しておく必要がある。
なお、ペースト(P)の光拡散物質粒子82である酸化チタン粒子の割合をバインダー樹脂液81となるアクリル樹脂成分量に対して調整することでもコントロールはできる。
次に、第四工程として、略矩形のアクリル樹脂の透光基板38、67を用いた場合を例に挙げて説明する。
上記のようにして得られた複合物インキ(G)80を用いて、シルクスクリーン印刷法により、略矩形のアクリル樹脂の透光基板38、67の一方の面に、複数のホール52の非発光部となる主面素地部53と発光部42を有する印刷層41を所定のパターン配列で印刷する。
スクリーン印刷では、スクリーンメッシュ(紗)の開口率、乳剤厚さを適宜変更することにより、所望とする複数のホール52を有する印刷層41ともなる発光部42の厚さ(t)、複数のホールの径(W)、ホールのホールとの距離を考慮してパターン配列した版を得る。通常、スクリーン印刷法で印刷する印刷層の厚みは、溶剤タイプのインキを使用する場合、UV照射型のインキに比べると薄くなるが、特に、上記の様に溶剤を多く含む複合物インキ(G)80の場合、乾燥により膜厚はより薄くなる。
スクリーンメッシュとしては、スクリーン印刷版におけるメッシュ(紗)の材料として用いられてきた公知のものを用いることができる。例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、およびこれらの金属を含む合金等の金属メッシュ(メタルメッシュ)や、ポリエステル(例えばテトロン(登録商標))等の樹脂製メッシュが挙げられる。スクリーンメッシュとして、例えば、メッシュ数が270のテトロン(登録商標)製のメッシュシートを用いて乳剤としての50μmの厚さを調整することにより、4μm以上6μm以下の厚み(t)の複数のホール52を有する印刷層41としての発光部42を得ることができ、メッシュ数が420のテトロン(登録商標)製のメッシュシートを用いることにより2μm以上3μm以下の厚みの複数のホール52を有する印刷層41の発光部42を得ることができる。
次に、第五工程の乾燥工程として、片面にスクリーン印刷で複合物インキ(G)80が塗布された透光基板38、67を80℃で20分間乾燥炉に入れ複合物インキ80内の溶剤を揮発し揮散させて固化させる。この乾燥工程で、複数のホール52を有する印刷層41として発光部42が備わった導光板35,62が得られる。両面発光可能な面発光装置61に取り付ける導光板62の場合は、片面を処理して乾燥後に改めてもう一方の面に同様の方法で複数のホール52を有する印刷層41とした発光部42を形成する。
このように、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカを使うことにより、溶剤が多く加えられた複合物インキ80でも粘度を保ちスクリーン印刷ができるので、塗布後に乾燥工程で溶剤を揮散させると印刷層は比較的薄く仕上がることになる。すなわち、スクリーン印刷工程で溶剤を多く含む複合物インキ80の塗布膜厚が10〜20μmであっても、乾燥工程で溶剤を揮散させると、1μm以上で7μm以下の薄膜を形成することも可能となる。
また、乾燥工程での溶剤を揮散される過程においても、疎水性フュームドシリカのチキソトロピー効果で表面に張力が働き、表面粗度が小さい、凹凸の少ない比較的滑らかな面を作ることになる。
すなわち、従来技術として示す図16と図17の様に、粒子径の大きい湿式シリカや鉱物シリカを使用した場合には、導光板として表面で光拡散効果を発揮する凹凸の形成が成り行きで行われていた。
しかし、本発明の様に均一な滑らかな表面を作るということは、光拡散物質粒子の混合量を制御することで光の拡散効果を安定して均一に作り出すことができ、酸化チタンの粒度と含有量とで導光板の輝度強度と輝度の均一性の制御がたやすくなるメリットがある。
さらに、乾燥工程により溶剤が揮散されることで、複合物インキ(G)80に含まれる疎水性フュームドシリカが濃縮される。この濃縮により、もともと、複合物インキ(G)80の状態で10wt%濃度の疎水性ヒュームドシリカが含まれていると仮定すると、溶剤が揮散することでインキ固形物樹脂中に含まれる疎水性フュームドシリカの濃度は約20wt%以上の濃度にまで高まることになる。それにより、疎水性フュームドシリカの表面に結合した疎水基が発光部42、73の界面に飛び出し、発光部42、73の表面は手垢や指紋の汚れが付着しない面となる。
以上のように、合成非晶質シリカのひとつである疎水性フュームドシリカは、バインダー樹脂成分や溶剤に溶け込み、スクリーン印刷用インキ状態においては増粘剤として、また、チキソトロピー剤として、流動性を阻止することでダレを防止する機能をもつ。また、乾燥工程では、印刷層41、71の発光部42、73表面の凹凸を少なくするように働き滑らかな面を作り、乾燥後には、疎水基を表面に形成し粘着を抑制する防汚機能を出し、印刷後の導光板を取り扱うにおいて、人の指に触れても手垢や指紋の汚れが残らない汚れにくい表面とする。特に、導光板としては表面に付着物がつくと光がその部分で拡散及び乱反射して見苦しいため、この効果は重要である。
以上の効果を狙い、複合物インキ(G)80で両主面を有する透光基板の少なくとも一方の主面上にスクリーン印刷工法で塗布した後、乾燥処理によって複合物インキ80の揮発物を揮散させ、透光基板38、68の印刷層に印刷層41、71の発光部42、73を形成する。
アクリル樹脂透光基板38、67に印刷され塗布された複合インキの溶剤が揮発し乾燥することで、複数のドット72やホール52を有する印刷層41、71として発光部42、73が備わった導光板35,62が得られる。両面発光可能な面発光装置61に取り付ける導光板62の場合は、片面を処理した後、乾燥後に改めてもう一方の面に同様の方法で複数のホール52又は、ドットを有する印刷層41とした発光部42を形成する。
すなわち、本発明技術と従来技術とでは以下の違いがある。図11と図16、図12と図17とを比較して説明する。
(1)従来技術に比べて、複合物インキ80液に含まれる疎水性フュームドシリカ等の無機物粒子の混合量が多く、発光部表面での手垢や指紋の汚れ防止効果を有する。
(2)従来技術に比べて、光拡散物質粒子は、混合量が少なく粒子径は小さいので。発光部表面の光に影響する凹凸が少ない。
(3)従来技術に比べて、複合物インキ80としての溶剤成分が多いため、乾燥工程でのバインダー樹脂液81の目減りが大きく、乾燥後の膜厚が薄くなり、導光板の透光性を維持する。
(4)従来技術に比べて、チキソトロピー効果がある疎水性フュームドシリカが多く入っているので、印刷層となる発光部の表面が滑らかで、光に影響する凹凸が少ない。
(5)スクリーン印刷用拡散インキに、溶剤と疎水性フュームドシリカの溶液組成物をブレンドする製造方法により、疎水性フュームドシリカの混合量を多くすることができ、発光部表面での手垢や指紋の汚れ防止効果を発揮させる。
本発明の実施形態においては、疎水基を結合させた疎水性フュームドシリカの混合量は、印刷層重量に対し5wt%から35wt%の量を混入している。従来は、増粘剤や消泡材や防汚剤との添加物を含めて1wt%程度であったのに比べると非常に多くの混合量となっている。
通常は印刷層重量に対してチキソトロピー効果を有するフュームドシリカを高濃度で混合することは困難であるが、本発明の複合物インキ80の製法形態によると、スクリーン印刷用拡散インキ(D)と溶液組成物(S)とを別々に同じ粘度に調合し、その後でブレンドし混ぜ合わせ、スクリーン印刷用の複合物インキ80とすることで目的を達したものである。
すなわち、図11で示す複合物インキ80は従来技術より数倍多い疎水性フュームドシリカと溶剤を含んでおり、乾燥工程によって溶剤を揮発させることで、膜厚が薄くなり、多量に含まれている疎水性フュームドシリカが発光部の表面に濃縮され、疎水性フュームドシリカに結合された疎水基が発光部の界面に頭を出すことにより、防汚性が高まり、手垢や指紋の汚れが付かない印刷層となる発光部に仕上げることができる。
乾燥によるバインダー樹脂液81の目減りが大きいのは、溶剤の含有量が大きく、通常は20%程度であるのに、本発明の複合インキは50%以上の溶剤が含まれている。その結果、溶剤が揮散することにより疎水性フュームドシリカの割合が高くなることで、疎水性フュームドシリカの表面にある疎水基が発光部の表面に飛び出す状態となる。
結局、バインダー樹脂量等の印刷層重量に対してフュームドシリカの量は5wt%から35wt%の量が発光部に残ることになり、疎水性フュームドシリカの疎水基は発光部の表面に分布するように出現する。
フュームドシリカに疎水性を与えるには疎水基をフュームドシリカの表面に結合させる処理が必要で、そのような処理をしたものを疎水性フュームドシリカと言われている。本発明においては、疎水性フュームドシリカが印刷インキの粘度調整が可能で、乾燥時における表面円滑化効果があり、手垢や指紋の汚れをつきにくくする防汚効果を有することからしてベストの選択と言える。商業化されているグレードとしては、日本アエロジル社の疎水性フュームドシリカR202がチキソトロピー特性を有し、滑らかな発光部表面を作り。疎水性基を有するものとして使用できる。
さらに、従来の導光板であれば水中に浸漬すると、表面の凹凸が水で覆われ、輝度が極端に低下するが、本発明の導光板であれば、水に浸漬させても光り続けるという特殊な特性を導光板に付与することも可能である。この現象の理由としては、本発明の導光板35、62は表面の凹凸の拡散と乱反射を利用したものではなく、バインダー樹脂との中に埋没する光屈折率の高い光拡散物質粒子が拡散及び乱反射を行って発光しているとの推察理論を証明するものとなる。
本実施形態に係る導光板35,62は、例えば、遊技機、及び自動販売機等の照明パネルなどに使用され、保護シートが必要としないので演出効果を高めることができるとともに、意匠性にも優れたものとすることができる。また、水の中でも光るので、例えば、水族館の水槽の一部に本実施形態の導光板35、62を使用することで、水槽における演出効果を高めることも可能となる。さらに、導光板35,62は、電子機器のディスプレイ用の面発光体(バックライトやフロントライト)や照明装置として使用することもできる。
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、粒子径が2μm以下の酸化チタン粒子とアクリル樹脂とを、混ぜ合わせてペースト(P)とした。ペースト(P)における酸化チタン粒子の配合量は、ペースト(P)重量に対して、30wt%となるように調整した。
また、透光性を有するバインダー樹脂81として先と同じアクリル樹脂に、透光性を阻害しない増粘剤や消泡剤や防腐剤等の添加材を混ぜ、さらに溶剤としてイソホロン溶剤を加えることにより、スクリーン印刷が可能な粘度4000〜8000pa'sに調整しスクリーン印刷用クリアーインキ(C)を作成した。
次に、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)に、先に準備したペースト(P)をバインダー樹脂81となるアクリル樹脂成分量に対し0.2wt%混合することでスクリーン印刷用拡散インキ(D)を作成した。
次に、チキソトロピー特性を有する無機物粒子83を疎水性フュームドシリカとしてイソホロン溶剤に投入し、イソホロン溶液に対し約10wt%になるよう混合してスクリーン印刷用拡散インキ(D)と同程度の粘度に調整した溶液組成物(S)を作成した。この溶液組成物(S)は、疎水性フュームドシリカが緩い凝集性を有するために十分な混練りが必要となり、三本ロールミルによる混錬作業において、各ロールを1:3:8程度の回転比とし、前ロール回転数を約120rpm、ロール間隔を200μm程度に各条件を設定し、3回通しで、粘度を4000〜8000pa'sとなるように調整した。
なお、今回用いたチキソトロピー特性を有し、バインダー樹脂と光屈折率が近似し、疎水基を結合させた無機物粒子83である疎水性フュームドシリカは、日本アエロジル社製のR202を用いて実施した。
この流動化した溶液組成物(S)とスクリーン印刷用拡散インキ(D)とを1対1の割合で混ぜることにより、導光板用の複合物インキ80(G−1)を作成した。印刷層重量に対する疎水性フュームドシリカの混合量は約9wt%となる。
(実施例2)
次に、ペースト(P)、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)、スクリーン印刷用拡散インキ(D)、溶液組成物(S)の作成方法は実施例1と同じで、溶液組成物(S)とスクリーン印刷用拡散インキ(D)とを1対2の割合で混ぜることにより、導光板用の複合物インキ80(G−2)を作成した。印刷層重量に対する疎水性フュームドシリカの混合量は約17wt%となる。
(実施例3)
次に、ペースト(P)、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)、スクリーン印刷用拡散インキ(D)、溶液組成物(S)の作成方法は実施例1と同じで、溶液組成物(S)とスクリーン印刷用拡散インキ(D)とを1対3の割合で混ぜることにより、導光板用の複合物インキ80(G−3)を作成した。印刷層重量に対する疎水性フュームドシリカの混合量は約24wt%となる。
(実施例4)
次に、ペースト(P)、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)、スクリーン印刷用拡散インキ(D)、溶液組成物(S)の作成方法は実施例1と同じで、溶液組成物(S)とスクリーン印刷用拡散インキ(D)とを1対4の割合で混ぜることにより、導光板用の複合物インキ80(G−4)を作成した。印刷層重量に対する疎水性フュームドシリカの混合量は約29wt%となる。
(実施例5)
次に、ペースト(P)、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)、スクリーン印刷用拡散インキ(D)、溶液組成物(S)の作成方法は実施例1と同じで、溶液組成物(S)とスクリーン印刷用拡散インキ(D)とを1対5の割合で混ぜることにより、導光板用の複合物インキ80(G−5)を作成した。印刷層重量に対する疎水性フュームドシリカの混合量は約34wt%となる。
(実施例6)
次に、ペースト(P)、スクリーン印刷用クリアーインキ(C)、スクリーン印刷用拡散インキ(D)、溶液組成物(S)の作成方法は実施例1と同じで、溶液組成物(S)とスクリーン印刷用拡散インキ(D)とを2対1の割合で混ぜることにより、導光板用の複合物インキ80(G−0)を作成した。印刷層重量に対する疎水性フュームドシリカの混合量は約6wt%となる。
(評価試験)
次に、長さ600mm、幅300mm、厚さ3mmの長方形状のアクリル樹脂透光基板68を用意する。そこに、メッシュ数が420のテトロン(登録商標)製のメッシュシートを用いて、乳剤(ミノグループ社製、MコートD)の厚みを50μmとしたスクリーン印刷版でスクリーン印刷を行った。実施例1から実施例6の複合物インキ80を個々に使用しシルクスクリーン印刷を行い、アクリル樹脂透光基板68の一方主面全体に印刷層を形成し、複数のドットを持つ発光部を有する導光板とした。そのドット径は200μmであり、複数のドットの間隔が1mmで、正三角形の千鳥状のパターン配列を持つドットを形成した。ドット外面の非発光部となる主面素地部の大きさは、非発光部となる主面素地部のみで約850μm径の円が描くことができないドット間隔距離となっている。
次に、実施例1から実施例6で作成した複合インキで印刷した6枚の導光板を、<防汚性>、<表面粗度>、<インキ性状>、<印刷物性>、<ドット厚み>の評価を行った。
<防汚性>
10名の評価員を選定し、通気性の無いゴム手袋を着けて約1時間の作業後に手袋をはずし、実施例1から実施例6で作成した複合インキで印刷した6枚の導光板面に手形をつける評価を行った。その結果、従来のインキでは手形の一部が数カ所に見受けられたが、実施例2から実施例5のインキで印刷した導光板については、手垢や指紋等の汚れは付着することはなく良好であった。しかし、実施例6については、ドット部に陰りが見られ、また、実施例5については非発光部となる主面素地部に手垢跡らしきものが見受けられた。特に、エッジよりLED光源で光を入射させることで顕著な違いが見受けられた。
<表面粗度>
レーザー顕微鏡(キーエンス社製VK−9700)を用いて、線粗度を測定した。実施例1から実施例4については平均表面粗さ(Ra)が約0.2μm程度で滑らかな表面を示すが、実施例5では部分的にひび割れが見られ、最大粗度値となるRyに4μmの値が見られた。実施例6もやや表面粗度のRaが大きくなっていた。
<インキ性状>
スクリーン印刷を行う際においてのスクリーン印刷性を評価した。実施例1から実施例4、及び実施例6については大きな問題もなく印刷が可能であった。しかし、実施例5のインキについては、スクリーン版面上のスキージが滑りやすくインキが脆く破断が見られやや印刷がやりにくい傾向にあった。
<印刷物性>
実施例1から実施例6で作成した複合物インキ(G)80で印刷した6枚の導光板面のドットについて、テープ剥離、爪でのひっかきテストで印刷物性を評価した。実施例1から実施例4と実施例6については、良好な印刷層であったが、実施例5については一部にドットの欠けや剥がれが見られた。
以上の評価の結果を下の表1にまとめると、実施例1から実施例4については、防汚性も表面粗度もインキ性状も印刷物性も良好であったが、印刷層重量に対し疎水性フュームドシリカが5wt%以下の複合物インキ80については防汚性が発揮できておらず、また、34wt%の複合物インキ80ではドット表面のひび割れの悪影響もあり、また、発光部のドット厚み(t)が低いこともあり防汚性が発揮されていない結果となった。
よって、バインダー樹脂等の印刷層重量に対して疎水性フュームドシリカが5wt%以上で35wt%以下の量を含むことが望ましく、バインダー樹脂等の印刷層重量に対して疎水性フュームドシリカの混合量は10wt%から30wt%にするのがより望ましい。
また、上記実施形態においては、LED光源36、63は、略四角柱の部材のひとつの側面の端面部としているが、二つの端面からの照射でも良く、限定するものではない。
以上、説明した実施形態及び実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、当該実施形態及び実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の導光板、面発光装置での構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。