<第1実施形態>
次に、本発明の第1実施形態に係るスターリングエンジン1の全体的な構成について、図1を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係るスターリングエンジン1の全体的な構成を示す模式図である。
図1に示す本実施形態のスターリングエンジン1は、外燃機関の一種である。このスターリングエンジン1は、シリンダ2内に充填された作動流体を、外部から取り入れた熱を利用して膨張及び収縮させることによりパワーピストン3を往復運動させ、この往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換して動力を取り出すものである。
本実施形態のスターリングエンジン1は、シリンダ2と、パワーピストン3と、ディスプレーサピストン4と、ヒータ5と、再生器6と、クーラ7と、クランクシャフト8と、クランクケース9と、フライホイール10と、クランクボックス11と、第1動力変換部材30と、第2動力変換部材40と、を主として備える。なお、本実施形態のスターリングエンジン1は、パワーピストン3とディスプレーサピストン4とが同一のシリンダ2内に収容される、いわゆるβ型のスターリングエンジンである。
シリンダ2は、パワーピストン3及びディスプレーサピストン4を収容する円筒状の部材である。シリンダ2内には作動流体が充填される。作動流体としては、ヘリウムガス、水素ガス、空気等の様々な流体を用いることができるが、本実施形態では、熱伝導率が高いヘリウムガスが用いられる。シリンダ2の軸線方向の一端部はディスプレーサピストン4より上部でヒータ5と接続されており、当該軸線方向の他端部はクランクケース9に接続されている。後に詳述するように、作動流体は加熱・冷却されることにより、シリンダ2内でその圧力を変化させる。
ディスプレーサピストン4は、その軸線方向にスライド可能なようシリンダ2内に収容される概ね円柱形状の部材である。シリンダ2内のうち、ディスプレーサピストン4よりもシリンダ2とヒータ5との接続側(図では上方側)には、相対的に高温である膨張空間S1が形成される。シリンダ2内のディスプレーサピストン4よりもクランクケース9側(図では下方側)には、相対的に低温である圧縮空間S2が形成される。ディスプレーサピストン4は、高温の膨張空間S1及び低温の圧縮空間S2の容積の割合を変化させる役割を果たす。
パワーピストン3は、その軸線方向にスライド可能なようシリンダ2内に収容される短い円柱形状の部材である。パワーピストン3は、ディスプレーサピストン4よりもクランクケース9に近い側に配置される。前記圧縮空間S2は、ディスプレーサピストン4とパワーピストン3との間に配置される。パワーピストン3は、膨張空間S1及び圧縮空間S2(高温領域と低温領域)の圧力差による力を受けて、当該パワーピストン3の軸線方向に変位することができる。
シリンダ2のすぐ外側には、当該シリンダ2のヒータ5との接続側からクランクケース9が配置される側に向かって、ヒータ5、再生器6、及びクーラ7がこの順に並ぶように設けられる。作動流体は、膨張空間S1からヒータ5、再生器6、及びクーラ7を順に通って、圧縮空間S2に流入することができる。また、作動流体は、圧縮空間S2からクーラ7、再生器6、及びヒータ5を順に通って、膨張空間S1に流入することもできる。
ヒータ5は、作動流体を加熱するための熱交換器である。ヒータ5の構成としては、公知の様々な構成をとることができるが、本実施形態では、伝熱面積を大きく確保できるように、多数並べられた細管の内部を作動流体が流動する構成を採用している。加熱媒体は、例えば発電プラントで生じた排ガス等であり、ヒータ5の細管の外側を流れる。この細管の外側を加熱媒体が流れることにより、当該作動流体が加熱媒体からの熱を受けて昇温(加熱)される。
クーラ7は、作動流体を冷却するための熱交換器である。クーラ7の構成としては、公知の様々な構成をとることができるが、本実施形態では、ヒータ5と同様に、多数の細管を備える構成を採用している。何らかの方法で冷却された冷却媒体がクーラ7の細管の外側を流れることにより、細管の内部を流れる作動流体が、冷却媒体に熱を奪われて降温(冷却)される。
再生器6は、蓄熱用の熱交換器である。再生器6の構成としては、公知の様々な構成をとり得るが、本実施形態では、金属製の網を積層させた構成を採用している。再生器6は、膨張空間S1の高温の作動流体がヒータ5から当該再生器6を介してクーラ7に流れる際には、作動流体の熱を奪って蓄える。一方、再生器6は、圧縮空間S2の低温の作動流体がクーラ7から当該再生器6を介してヒータ5に流れる際には、前記のようにして蓄えた熱を作動流体に与える。
クランクシャフト8は、シリンダ2内で発生させた動力(具体的には、パワーピストン3の往復運動による動力)を回転運動としてスターリングエンジン1の外部に取り出すためのものである。クランクシャフト8は、クランクケース9に回転可能に支持されている。クランクシャフト8の一端部はクランクケースの外部に突出しており、この一端部に発電機29が取り付けられている。この発電機29により、スターリングエンジン1で発生させた回転動力が電力に変換される。
クランクケース9は、クランクシャフト8が架け渡されるケースであり、内部にフライホイール10と、クランクボックス11と、を収容している。シリンダ2とクランクケース9とは、図示しない孔によって連通されている。そのため、本実施形態では、シリンダ2内だけではなくクランクケース9内にも作動流体が充填される。
フライホイール10は円板状の部材であり、クランクケース9内でありかつクランクボックス11外の領域に、クランクシャフト8に貫通された状態で設けられる。フライホイール10は、クランクシャフト8の回転する勢いを保ちつつ、回転速度のムラを小さくして滑らかに回転させるための、はずみ車として機能する。
クランクボックス11は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換する第1動力変換部材30を収容する。また、クランクボックス11は、クランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換するための第2動力変換部材40を収容する。これらの動力変換部材30,40は、摺動する部材である(厳密には、摺動する部材を含む)ため、潤滑する必要がある。本実施形態のスターリングエンジン1では、クランクボックス11に貯留した潤滑油により動力変換部材30,40を潤滑する湿式潤滑方式を採用している。
ここで、仮に潤滑油がシリンダ2内に混入すると、熱交換器5,6,7の性能等に悪影響を及ぼすことが懸念される。具体的には、例えば潤滑油が前記の再生器6の上記の金属製の網等に付着すると、再生器6が汚損するおそれがある。よって、スターリングエンジン1では、潤滑油のシリンダ2内への混入を確実に防ぐことが望まれる。そこで、本実施形態では、潤滑が必要な動力変換部材30,40を収容するクランクボックス11内にだけ潤滑油を貯留し、その外側のクランクケース9内(クランクケース9内でありかつクランクボックス11外である領域)には潤滑油が漏れないようにしている。言い換えれば、クランクケース9を2重構造にし、その一番内側に相当するクランクボックス11内に潤滑油を封入することで、シリンダ2内への潤滑油の混入を防止している。
図1に示すように、クランクボックス11は、クランクシャフト8により貫かれている。クランクシャフト8がクランクボックス11を貫通している部分には、クランクシャフト8の外周面と、クランクボックス11に形成された貫通孔と、の隙間を埋めるためのオイルシールが設けられている。これにより、クランクボックス11内の潤滑油が、クランクシャフト8の外周面と、クランクボックス11に形成された前記貫通孔と、の間の隙間を通って漏れ出てしまうことを防止している。
第1動力変換部材30は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換するものであり、後述の第2動力変換部材40を挟むように1対で設けられている。β型のスターリングエンジンにおいて往復運動を回転運動に変換するための機構としては、クロスヘッド機構、ロンビック機構、スコッチヨーク機構等の、様々な構成の機構を用いることができるが、本実施形態では、第1動力変換部材30として、サイズを小さくするとともに比較的簡素な構成にすることが可能なスコッチヨーク機構を採用している。具体的には、本実施形態の第1動力変換部材30は、図2に示すように、パワーピストンヨーク31、ガイド軸32、第1偏心クランクピン(不図示)、及びロッド34等を備える。
パワーピストンヨーク31は、スライド移動(往復移動)することが可能な板状の部材である。パワーピストンヨーク31には、当該パワーピストンヨーク31を貫通する1対の貫通孔が形成される。当該1対の貫通孔は、シリンダ2の軸線方向と平行な方向に延びている。また、パワーピストンヨーク31には、その板面を貫くように案内溝が形成されている。後に説明するように、この案内溝には、前記第1偏心クランクピンが収容される。
ガイド軸32は、シリンダ2の軸線方向に平行な方向に延びる軸状の部材であり、その両端部がクランクボックス11に固定される(図2を参照)。ガイド軸32は、クランクシャフト8を挟むように1対で設けられる。ガイド軸32は、パワーピストンヨーク31の前記貫通孔に差し込まれる。これにより、ガイド軸32は当該パワーピストンヨーク31をスライド可能に支持している。なお、パワーピストンヨーク31の前記貫通孔とガイド軸32との摺動部分には、例えばロータリブッシング等の直動軸受が設けられる。
前記第1偏心クランクピンは、クランクシャフト8に偏心した状態で取り付けられるクランクピンである。この第1偏心クランクピンは、クランクシャフト8に貫通された状態で、当該クランクシャフト8に対して固定され、又は当該クランクシャフト8と一体的に形成されている。前記第1偏心クランクピンは、パワーピストンヨーク31の前記案内溝の中を転がりながら移動することができるように、当該案内溝の中に収容される。なお、パワーピストンヨーク31の当該案内溝と前記第1偏心クランクピンとの摺動部分には、例えば転がり軸受等の回転軸受が設けられる。
ロッド34は、パワーピストンヨーク31の往復移動と、パワーピストン3の往復移動とを連動させるものである。ロッド34は、長い軸状に形成され、その一端部がパワーピストン3に接続され、その他端部がパワーピストンヨーク31に接続されている。
このような構成の第1動力変換部材30において、パワーピストン3がシリンダ2内で変位すると、このパワーピストン3とロッド34を介して連結されているパワーピストンヨーク31がガイド軸32に沿ってスライド移動し、これに伴い前記案内溝の中を前記第1偏心クランクピンが転がりながら移動する。これにより、クランクシャフト8が回転変位される。こうして、パワーピストン3の往復運動がクランクシャフト8の回転運動に変換されて、発電機29へと伝達される。
第2動力変換部材40は、クランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換するものである。β型のスターリングエンジンにおいて回転運動を往復運動に変換するための機構としては、上述のように種々の機構を用いることができるが、本実施形態では、第2動力変換部材40として、第1動力変換部材30と同様にスコッチヨーク機構を採用している。具体的には、本実施形態の第2動力変換部材40は、ディスプレーサヨーク41、ガイド軸42、第2偏心クランクピン、及びロッド44等を備える。
第2動力変換部材40のディスプレーサヨーク41、ガイド軸42、第2偏心クランクピン、及びロッド44の構成は、それぞれ、第1動力変換部材30のパワーピストンヨーク31、ガイド軸32、第1偏心クランクピン、及びロッド34の構成と実質的に同様であるため、詳細な説明は省略する。
第2動力変換部材40のロッド44は、ディスプレーサヨーク41とディスプレーサピストン4とを連結するために、パワーピストン3に形成された図略の貫通孔に差し込まれている。パワーピストン3はロッド44に対して摺動可能に設けられており、当該摺動部分には、気密を保つための図示しないシール機構が配置されている。
このような構成の第2動力変換部材40において、クランクシャフト8が回転運動すると、当該クランクシャフト8と一体的となっている前記第2偏心クランクピンが、ディスプレーサヨーク41の案内溝の中を転がりながら移動する。これに伴い、ディスプレーサヨーク41が、ガイド軸42に沿ってスライド移動する。これにより、ディスプレーサヨーク41とロッド44を介して連結されているディスプレーサピストン4が、ディスプレーサヨーク41と連動して変位する。こうして、クランクシャフト8の回転運動がディスプレーサピストン4の往復運動に変換され、パワーピストン3の往復運動とも相まって、膨張空間S1と圧縮空間S2との容積の割合が周期的に変化するようになっている。
なお、パワーピストン3が上死点(図1では、最もシリンダ2の上方側)に至るタイミングと、ディスプレーサピストン4が上死点に至るタイミングと、がズレるように、前記第1偏心クランクピン及び前記第2偏心クランクピンは、所定の位相差(本実施形態では、90°の位相差)が生じるように配置されている。
以下では、スターリングエンジン1の作動原理について、簡単に説明する。
ディスプレーサピストン4が上死点の付近にあるとき、圧縮空間S2内の作動流体は、クランクシャフト8の回転に伴って上昇するパワーピストン3に押されて圧縮される。また、クランクシャフト8の回転によりディスプレーサピストン4が下降し始めると、圧縮空間S2の容積が減少し、膨張空間S1の容積が増大する。この結果、圧縮空間S2内の作動流体は、クーラ7、再生器6、及びヒータ5をこの順に通過して、膨張空間S1内に移動する。この過程で、作動流体は加熱されて相対的に高温となるので、作動流体は膨張空間S1内で熱膨張しようとし、圧力が上昇する。
この高まった膨張空間S1内の圧力は直ちに圧縮空間S2内に伝播するので、圧縮空間S2の圧力は膨張空間S1と同様に高くなる。この状況で、パワーピストン3が上死点に至った後に下降し始めると、作動流体によってパワーピストン3が下向きに押されて、これにより当該パワーピストン3がシリンダ2内をスライドする。パワーピストン3の変位はクランクシャフト8に伝達され、クランクシャフト8が駆動力を得て回転する。
クランクシャフト8の回転によりディスプレーサピストン4が下死点に至り、その後上昇すると、膨張空間S1の容積が減少し、圧縮空間S2の容積が増大する。これに伴って、膨張空間S1内の作動流体が、ヒータ5、再生器6、及びクーラ7をこの順に通過して、圧縮空間S2内に移動する。この過程で、作動流体は冷却されて相対的に低温となり、圧力が低下する。
パワーピストン3はディスプレーサピストン4に遅れて下死点に至り、その後上昇を開始する。やがて、ディスプレーサピストン4が上死点付近に至る。
以上のサイクルが繰り返されることにより、膨張空間S1及び圧縮空間S2の作動流体の体積変化(即ち、熱による膨張・収縮)に伴う圧力変化が反復され、これを利用してパワーピストン3が往復運動されて、この往復運動がクランクシャフト8の回転運動に変換されて動力が取り出される。
以上のような構成のスターリングエンジン1において、上述のように、膨張空間S1及び圧縮空間S2には作動流体が充填される。また、シリンダ2内においてパワーピストン3よりもクランクシャフト8に近い側の空間、クランクケース9内、及びクランクボックス11内にも、作動流体が充填される。本実施形態では、作動流体の圧力変化を大きくして効率よく動力を得られるようにするために、作動流体はこれらの空間内に高圧(大気圧よりも高圧)で充填される。
ところで、スターリングエンジン1の稼動中に、クランクボックス11内の潤滑油の残量が少なくなっているか否かを確認したい場合があった。ところが、クランクボックス11内には高圧の作動流体が充填されているため、一般的な検油棒等を用いる方法は採用し得ず、従来からの課題となっていた。
この課題を解決するための特徴的な構成として、本実施形態のスターリングエンジン1は、検出路51と、流量計(検出装置)52と、第1逆止弁53と、第2逆止弁54と、アキュムレータ55と、を主として備えている。以下では、これらの構成について詳細に説明する。
検出路51は、クランクボックス11からの潤滑油を、その内部の流路を通過させた後に、再びクランクボックス11内に戻すものである。検出路51は、クランクボックス11の外部に設けられ、その中途部がクランクケース9の外側に配置される。本実施形態の検出路51の一端部はクランクボックス11の底部に接続されており、クランクボックス11内に開放されている。検出路51は、その一端部の近傍(言い換えれば、クランクボックス11の底部と接続している部分の近傍)の位置でクランクケース9を貫通している。
本実施形態の検出路51の他端部はクランクボックス11の上部に接続されており、クランクボックス11内に開放されている。検出路51は、その他端部の近傍(言い換えれば、クランクボックス11の上部と接続している部分の近傍)の位置でクランクケース9を貫通している。
第1逆止弁53は、検出路51のうちの、クランクケース9の外側に配置される部分に設けられる。第1逆止弁53は、検出路51内の流路の一の方向への潤滑油の流れを許容する一方、反対方向への潤滑油の流れ(逆流)は阻止するものである。具体的には、第1逆止弁53は、クランクボックス11の底部に接続された検出路51の一端部から、当該クランクボックス11の上部に接続された検出路51の他端部に向かう潤滑油の流れを許容する。なお、第1逆止弁53としては、公知の様々な方式のものを採用することができる。
第2逆止弁54は第1逆止弁53と同様に、検出路51のうちの、クランクケース9の外側に配置される部分に設けられる。また、第2逆止弁54は、検出路51の、当該第1逆止弁53が設けられる位置よりも下流側に配置されている。第2逆止弁54は、第1逆止弁53によって許容される流れの方向の上流から下流への潤滑油の流れを許容する一方、反対方向への潤滑油の流れ(逆流)は阻止するものである。なお、第2逆止弁54としては、例えば第1逆止弁53と同様のものを採用することができる。
流量計52は、検出路51の中途部に設けられ、当該検出路51内の流路を流れる潤滑油の流量を計測できるものである。言い換えれば、検出路51は、クランクボックス11から検出路51へと抜き出された潤滑油の流量を計測することが可能である。本実施形態の流量計52は、検出路51の、第1逆止弁53が設けられる位置よりも下流側、かつ、第2逆止弁54が設けられる位置よりも上流側の位置に設けられる。即ち、流量計52は、検出路51において、第1逆止弁53と第2逆止弁54との間に配置されている。なお、本実施形態では、流量計52として公知のコリオリ式のものが用いられているが、これ以外の方式の流量計に変更することもできる。
アキュムレータ55は、検出路51の中途部の位置に備えられる。アキュムレータ55はいわゆる蓄圧器であり、検出路51内の流路が相対的に高圧となっているときに、その内部に高圧の状態の潤滑油を一時的に蓄え、検出路51内の流路が相対的に低圧となったときに、その内部に蓄えていた高圧の潤滑油を放出する機能を果たす。アキュムレータ55は、第1逆止弁53が設けられる位置よりも下流側、かつ、第2逆止弁54が設けられる位置よりも上流側の位置に設けられる。本実施形態では、第1逆止弁53と流量計52との間の位置に、検出路51から分岐した分岐通路57を介して設けられる。
本実施形態のスターリングエンジン1は、検出路51の中途部の位置にオイルフィルタ56を備える。オイルフィルタ56は、検出路51内の流路を流れる潤滑油を濾過して、ゴミ等の混入物を捕捉して取り除くものである。本実施形態のオイルフィルタ56は、検出路51の、アキュムレータ55が設けられる位置と、流量計52が設けられる位置と、の間に配置される。
以下では、検出路51内の流路における潤滑油の流れについて、図2及び図3を参照して詳細に説明する。図2は、クランクボックス11内の潤滑油及び作動流体の圧力が脈動により相対的に高くなっているときの、検出路51内の潤滑油の流れを説明する図である。図3は、クランクボックス11内の潤滑油及び作動流体の圧力が脈動により相対的に低くなっているときの、検出路51内の潤滑油の流れを説明する図である。なお、図中の矢印は、潤滑油の流れの方向を示している。
スターリングエンジン1の稼動中においては、パワーピストン3がシリンダ2内を往復運動すること等の影響を受けて、クランクボックス11内の潤滑油及び作動流体の圧力に脈動が発生する。具体的には、クランクボックス11内の潤滑油及び作動流体の圧力が、例えば正弦波のような挙動で周期的に変化する。本実施形態のスターリングエンジン1では、この潤滑油及び作動流体の圧力脈動を利用して、スターリングエンジン1の稼動中に、検出路51内の流路に潤滑油を流している。そして、検出路51内で見られる潤滑油の流れを流量計52で検出することにより、クランクボックス11内の潤滑油が少なくなっているか否かを確認できるようにしている。
具体的には、スターリングエンジン1の稼動中において、クランクボックス11内の潤滑油及び作動流体の圧力が脈動により相対的に高くなっているときには、第1逆止弁53が自動的に開かれる。従って、潤滑油は、検出路51の一端部、及び第1逆止弁53をこの順に経由して、その大部分がアキュムレータ55に蓄えられる(図2を参照)。
続いて、クランクボックス11内の潤滑油及び作動流体の圧力が相対的に低くなると、アキュムレータ55に一時的に蓄えられていた高圧の状態の潤滑油が当該アキュムレータ55から放出される。第1逆止弁53は自動的に閉じられるので、アキュムレータ55から送られた潤滑油は、オイルフィルタ56、及び流量計52を経由して、第2逆止弁54に至る(図3を参照)。潤滑油は、自動的に開かれる第2逆止弁54を通過して検出路51の他端部に至り、クランクボックス11内に戻される。
このとき、検出路51内の流路を通過する潤滑油の流量が、流量計52によって検出される。ここで、仮にクランクボックス11内の潤滑油の量が低下して、作動流体が検出路51内に混入するようになると、流量計52が異常値を検出することになる。従って、流量計52の検出結果を監視することで、オペレータは、クランクボックス11内の潤滑油の残量が低下した場合に、スターリングエンジン1の外側からこれを容易に知ることができる。
以上に説明したように、本実施形態のスターリングエンジン1は、クランクケース9と、検出路51と、流量計52と、を備える。クランクケース9内のクランクボックス11は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換する第1動力変換部材30、及びクランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換する第2動力変換部材40を収容する。このクランクボックス11には、第1動力変換部材30及び第2動力変換部材40を潤滑するための潤滑油が内部に収容されるとともに、パワーピストン3を往復運動させるための作動流体が内部に充填される。検出路51は、クランクボックス11からの潤滑油を、その内部の流路を通過させた後に、再びクランクボックス11内に戻す。流量計52は、検出路51に設けられ、当該検出路51内の潤滑油の流れの程度を検出する。
これにより、潤滑油を循環させる検出路51をクランクケース9の外部に設け、検出路51内の潤滑油の流れの程度を流量計52により検出する構成であるため、スターリングエンジン1の稼動中に、流量計52の検出結果に基づいて、クランクボックス11内の潤滑油の残量が低下しているか否かを判断することができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1は、第1逆止弁53と、第2逆止弁54と、アキュムレータ55と、を更に備える。第1逆止弁53は、検出路51に設けられる。第2逆止弁54は、第1逆止弁53によって許容される流れの方向において、検出路51の、第1逆止弁53が設けられる位置よりも下流側に設けられ、上流から下流への潤滑油の流れを許容する一方、反対方向への潤滑油の流れを阻止する。アキュムレータ55は、検出路51の、第1逆止弁53が設けられる位置よりも下流側、かつ、第2逆止弁54が設けられる位置よりも上流側の位置に設けられる。
これにより、クランクボックス11の内部に十分な量の潤滑油があれば、スターリングエンジン1の稼動中にクランクボックス11内の圧力が変動することに伴う潤滑油及び作動流体の脈動圧により、より確実に、検出路51(厳密には、流量計52が設けられている流路)に潤滑油が流れる。よって、スターリングエンジン1の稼動中にクランクボックス11内の潤滑油の残量が低下した場合に、これを簡単な構成で知ることができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1においては、検出路51は、潤滑油を濾過するために、クランクボックス11からの潤滑油を、その内部の流路を通過させて中途部に設けられるオイルフィルタ56を通した後に、再びクランクボックス11内に戻す濾過用経路を兼ねる。
これにより、スターリングエンジン1に設ける通路を少なくすることができ、合理的な構成を実現することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るスターリングエンジン1について、図4を参照して説明する。図4は、第2実施形態に係るスターリングエンジン1の部分的な構成を示す模式図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
本実施形態のスターリングエンジン1は、クランクボックス11内に外部からの潤滑油を供給するための構成を備える点で、第1実施形態とは異なる。更に、本実施形態のスターリングエンジン1は、流量計52の検出結果に応じて自動でクランクボックス11内に潤滑油を補充(補給)することが可能な点で、第1実施形態とは異なる。
本実施形態のスターリングエンジン1は、供給路61と、供給バルブ62と、潤滑油供給用タンク63と、制御装置28と、を備えている。以下では、これらの構成について詳細に説明する。
供給路61は、新しい潤滑油をクランクボックス11の内部に供給する作業を行うときに、潤滑油を通過させる流路を形成する部材である。供給路61は、クランクボックス11の外側に設けられ、当該クランクボックス11と、潤滑油供給用タンク63と、の間を接続する。本実施形態の供給路61は、その一端部がクランクボックス11の上部に接続され、その他端部が潤滑油供給用タンク63の下部に接続される。
本実施形態の供給路61の中途部は、クランクケース9の上部を貫通している。供給路61の中途部の、クランクケース9を貫通している部分よりも潤滑油の供給方向の上流側には、供給路61内の流路を自動で開閉可能な供給バルブ62が設けられている。供給バルブ62としては、様々な方式のものを採用し得るが、本実施形態では電磁弁としている。
潤滑油供給用タンク63は、クランクボックス11の内部へと供給する潤滑油を貯留するものである。なお、潤滑油供給用タンク63は、スターリングエンジン1を構成する部材の1つとしてもよいし、或いはスターリングエンジン1に対して取付け・取外し可能な外部の部材としてもよい。
本実施形態では、上流側供給路66が、当該潤滑油供給用タンク63の上流側に更に設けられる(図4を参照)。上流側供給路66は、潤滑油供給用タンク63内に潤滑油を追加(補充)するために用いられる。上流側供給路66の一端部は潤滑油供給用タンク63の上部に接続されている。上流側供給路66の他端部は、注油口をなしている。上流側供給路66の中途部の上流側供給バルブ67を操作することにより、上流側供給路66内の流路を開閉し、新しい潤滑油を潤滑油供給用タンク63の中に補給することが可能になっている。
なお、潤滑油供給用タンク63の容量を制限するとともに、注油を行っていない間は上流側供給バルブ67を閉じた状態に保つことにより、潤滑油供給用タンク63から供給路61を介してクランクボックス11の内部に潤滑油を補給したときに、クランクボックス11内の作動流体が過剰に抜けないようにすることができる。
制御装置28は、流量計52の検出結果を監視し、当該検出結果に応じて自動でクランクボックス11内に潤滑油を補充(補給)する制御を行うものである。制御装置28は、コンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM等を備える。また、前記ROMには、前記の供給バルブ62を動作させるための適宜の動作プログラムが記憶(格納)されている。このソフトウェアとハードウェアの協働により、制御装置28を、クランクボックス11内の潤滑油の残量に応じて供給バルブ62を適宜に動作させ、潤滑油を自動で補給するための指令信号を送る指令部として機能させることが可能となっている。
制御装置28は、流量計52の検出結果、即ち検出路51内の流路を流れる潤滑油の流量の情報を、常時若しくは定期的又は不定期に電気信号(検出信号)として受信する。
本実施形態の制御装置28は、流量計52から取得した流量が閾値以上であれば、スターリングエンジン1内の潤滑油が足りている(過剰に少なくはなっていない)と判断し、供給バルブ62を閉じた状態に保つ。一方、制御装置28は、流量計52から取得した流量が閾値未満であれば、スターリングエンジン1内の潤滑油が少なくなっている(不足している)と判断し、供給バルブ62を開いた状態にするための制御信号を当該供給バルブ62に送信する。
これにより、スターリングエンジン1のクランクボックス11内の潤滑油の残量が少なくなったときに、自動で供給バルブ62を開いて潤滑油を補充することができ、オペレータの作業負担を軽減することができる。
<変形例>
次に、上記実施形態の変形例に係るスターリングエンジン1について、図5を参照して説明する。図5は、変形例に係るスターリングエンジン1の部分的な構成を示す模式図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
この変形例に係るスターリングエンジン1は、検出路51の一端部とクランクボックス11との接続位置(高さ)が、第1実施形態とは異なる。更に、この変形例に係るスターリングエンジン1は、油保持部材71を備える点で、第1実施形態とは異なる。
変形例に係るスターリングエンジン1では、検出路51の一端部が、クランクボックス11の側面に接続されている。より具体的には、検出路51の一端部は、クランクシャフト8が貫通している2つの側面のうちの一方の側面11aに接続されている。
スターリングエンジン1の側面11aに接続されている検出路51の一端部の高さは、クランクボックス11内に補充(追加)の必要がない最低限の量以上の潤滑油が貯留されている場合には、クランクボックス11内の油溜まりの液面がこの一端部の開口51aよりもやや上方となる程度に設定されている。従って、クランクボックス11内の潤滑油の量が不足すると、潤滑油の液面が検出路51の一端部よりも下がることになる。
また、図5に示すように、変形例に係るスターリングエンジン1は、検出路51の一端部の開口51aのすぐ上方の位置に配置された油保持部材71を備える。油保持部材71は板状の部材であり、側面11aの内壁から突出するように取り付けられている。油保持部材71は、側面11aに形成された開口51aに近づくほど低くなるように、傾斜している。
変形例に係るスターリングエンジン1の稼動中は、クランクシャフト8、第1動力変換部材30及び第2動力変換部材40が動作すること等により、クランクボックス11内の油溜まりの液面が激しく変動すると考えられる。しかしながら、潤滑油の液面が油保持部材71の近傍の高さにあるとき、検出路51の一端部の開口51aの近傍では、油保持部材71がこの油溜まりの液面に作用して揺らぎを低減させ、結果として、開口51aの周囲に潤滑油が安定して保持される。また、液面の変動により生じる気泡が油保持部材71の下面に到達した場合でも、気泡の浮力と、油保持部材71が有する上述の傾斜により、当該気泡は、開口51aから遠ざかる向きに斜め上方へ移動する。従って、クランクボックス11内の潤滑油の量が足りている(最低限の量以上入っている)にもかかわらず、潤滑油の液面の変動によって検出路51に潤滑油が流れなくなることを防止することができる。
なお、油保持部材71の構成は上記のように板状とすることに限定されず、例えば、クランクボックス11の側面11aの内壁から、開口51aを取り囲むパイプ状の部材を突出させる構成とすることができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態及び変形例では、クランクボックス11内に貯留される潤滑油の量が低下しているか否かを知るために検出路51及び流量計52等が備えられている。言い換えれば、2重構造のクランクケース9のうち内側のケース(クランクボックス11)内に貯留される潤滑油の量を、流量計52等によって検出する構成となっている。しかしながら、必ずしもこれに限るものではない。例えば、一般的な1重構造のクランクケース9内に貯留された潤滑油の量を知るために、検出路51に相当する検出路や、流量計52に相当する検出装置を備える構成としてもよい。
上記の実施形態及び変形例では、検出装置は、検出路51内の潤滑油の流れの程度(流量)を検出する流量計52であるものとしたが、必ずしもこれに限るものではない。例えばこれに代えて、検出装置を、検出路51内の潤滑油の圧力を計測する圧力計、又は検出路51内の潤滑油の圧力が閾値以上であるか否かを検出する圧力スイッチとしてもよい。
或いは、検出装置を、例えばオイルフィルタ56の上流側及び下流側の位置での検出路51内の潤滑油の圧力(油圧)を検出する圧力計により構成し、この上流側の位置での油圧と、下流側の位置での油圧と、の差(差圧)を算出することにより、潤滑油の流れの程度を検出するものとしてもよい。
上記の実施形態では、検出路51の中途部にはアキュムレータ55が設けられるものとしたが、検出路51内に潤滑油の流れを形成できる構成であればよく、例えばアキュムレータ55、第1逆止弁53、及び第2逆止弁54に代えて、高圧に対して耐久性を有するポンプを設けることとしてもよい。
上記の実施形態では、検出路51の中途部には第2逆止弁54が設けられるものとしたが、この第2逆止弁54に代えて、検出路51内の流路面積を狭くする或いは変化させる絞りを設けるものとしてもよい。或いは、検出路51の流路抵抗で第2逆止弁54が無くても潤滑油が流れる場合は、第2逆止弁54を省略してもよい。
上記の実施形態では、スターリングエンジン1はいわゆるβ型の形式のものとしたが、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、α型或いはγ型の形式のものとしてもよい。