<第1実施形態>
次に、本発明の第1実施形態に係るスターリングエンジン1の全体的な構成について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るスターリングエンジン1の全体的な構成を示す模式図である。
図1に示す本実施形態のスターリングエンジン1は、外燃機関の一種である。このスターリングエンジン1は、シリンダ2内に充填された作動流体を、外部から取り入れた熱を利用して膨張及び収縮させることによりパワーピストン3を往復運動させ、この往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換して動力を取り出すものである。
本実施形態のスターリングエンジン1は、シリンダ2と、パワーピストン3と、ディスプレーサピストン4と、ヒータ5と、再生器6と、クーラ7と、クランクシャフト8と、クランクケース9と、フライホイール10と、クランクボックス11と、第1動力変換部材(動力変換部材)30と、第2動力変換部材40と、を主として備える。なお、本実施形態のスターリングエンジン1は、パワーピストン3とディスプレーサピストン4とが同一のシリンダ2内に収容される、いわゆるβ型のスターリングエンジンである。
シリンダ2は、パワーピストン3及びディスプレーサピストン4を収容する円筒状の部材である。シリンダ2内には作動流体が充填される。作動流体としては、ヘリウムガス、水素ガス、空気等の様々な流体を用いることができるが、本実施形態では、熱伝導率が高いヘリウムガスが用いられる。シリンダ2の軸線方向の一端部はディスプレーサピストン4より上部でヒータ5と接続されており、当該軸線方向の他端部はクランクケース9に接続されている。後に詳述するように、作動流体は加熱・冷却されることにより、シリンダ2内でその圧力を変化させる。
ディスプレーサピストン4は、その軸線方向にスライド可能なようシリンダ2内に収容される概ね円柱形状の部材である。シリンダ2内のうち、ディスプレーサピストン4よりもシリンダ2とヒータ5との接続側(図では上方側)には、相対的に高温である膨張空間S1が形成される。シリンダ2内のディスプレーサピストン4よりもクランクケース9側(図では下方側)には、相対的に低温である圧縮空間S2が形成される。ディスプレーサピストン4は、高温の膨張空間S1及び低温の圧縮空間S2の容積の割合を変化させる役割を果たす。
パワーピストン3は、その軸線方向にスライド可能なようシリンダ2内に収容される短い円柱形状の部材である。パワーピストン3は、ディスプレーサピストン4よりもクランクケース9に近い側に配置される。前記圧縮空間S2は、ディスプレーサピストン4とパワーピストン3との間に配置される。パワーピストン3は、膨張空間S1及び圧縮空間S2(高温領域と低温領域)における作動流体の圧力変化、即ちパワーピストン3の上方及び下方の圧力差による力を受けて、軸線方向に変位する。
シリンダ2のすぐ外側には、当該シリンダ2のヒータ5との接続側からクランクケース9が配置される側に向かって、ヒータ5、再生器6、及びクーラ7がこの順に並ぶように設けられる。作動流体は、膨張空間S1からヒータ5、再生器6、及びクーラ7を順に通って、圧縮空間S2に流入することができる。また、作動流体は、圧縮空間S2からクーラ7、再生器6、及びヒータ5を順に通って、膨張空間S1に流入することもできる。
ヒータ5は、作動流体を加熱するための熱交換器である。ヒータ5の構成としては、公知の様々な構成をとることができるが、本実施形態では、伝熱面積を大きく確保できるように、多数並べられた細管の内部を作動流体が流動する構成を採用している。加熱媒体は、例えば発電プラントで生じた排ガス等であり、ヒータ5の前記細管の外側を流れる。これにより、当該作動流体が加熱媒体からの熱を受けて昇温(加熱)される。
クーラ7は、作動流体を冷却するための熱交換器である。クーラ7の構成としては、公知の様々な構成をとることができるが、本実施形態では、ヒータ5と同様に、多数の細管を備える構成を採用している。何らかの方法で冷却された冷却媒体がクーラ7の細管の外側を流れることにより、細管の内部を流れる作動流体が、冷却媒体に熱を奪われて降温(冷却)される。
再生器6は、蓄熱用の熱交換器である。再生器6の構成としては、公知の様々な構成をとり得るが、本実施形態では、金属製の網を積層させた構成を採用している。再生器6は、膨張空間S1の高温の作動流体がヒータ5から当該再生器6を介してクーラ7に流れる際には、作動流体の熱を奪って蓄える。一方、再生器6は、圧縮空間S2の低温の作動流体がクーラ7から当該再生器6を介してヒータ5に流れる際には、前記のようにして蓄えた熱を作動流体に与える。
クランクシャフト8は、シリンダ2内で発生させた動力(具体的には、パワーピストン3の往復運動による動力)を回転運動に変換するためのものである。クランクシャフト8は、クランクケース9に回転可能に支持されている。クランクシャフト8の一端部はクランクケース9の外部に突出しており、この一端部に発電機29が取り付けられている。この発電機29により、クランクシャフト8の回転動力が電力に変換される。
クランクケース9は、クランクシャフト8が架け渡されるケースであり、内部にフライホイール10と、クランクボックス11と、を収容している。シリンダ2とクランクケース9とは、図示しない孔によって連通されている。そのため、本実施形態では、シリンダ2内だけではなくクランクケース9内にも作動流体が充填される。
フライホイール10は円板状の部材であり、クランクケース9内でありかつクランクボックス11外の領域に、クランクシャフト8に貫通された状態で設けられる。フライホイール10は、クランクシャフト8の回転する勢いを保ちつつ、回転速度のムラを小さくして滑らかに回転させるための、はずみ車として機能する。
クランクボックス11は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換する第1動力変換部材30を収容する。また、クランクボックス11は、クランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換するための第2動力変換部材40を収容する。これらの動力変換部材30,40は、摺動する部材である(厳密には、摺動する部材を含む)ため、潤滑する必要がある。本実施形態のスターリングエンジン1では、クランクボックス11に貯留した潤滑油により動力変換部材30,40を潤滑する湿式潤滑方式を採用している。
ここで、仮に潤滑油がシリンダ2内に混入すると、熱交換器5,6,7の性能等に悪影響を及ぼすことが懸念される。具体的には、例えば潤滑油が前記の再生器6の上記の金属製の網等に付着すると、再生器6が閉塞して作動流体の流れが阻害されるおそれがある。よって、スターリングエンジン1では、潤滑油のシリンダ2内への混入を確実に防ぐことが望まれる。そこで、本実施形態では、潤滑が必要な動力変換部材30,40を収容するクランクボックス11内にだけ潤滑油を貯留し、その外側のクランクケース9内(クランクケース9内でありかつクランクボックス11外である領域)には潤滑油が漏れないようにしている。言い換えれば、クランクケース9を2重構造にし、その一番内側に相当するクランクボックス11内に潤滑油を封入することで、シリンダ2内への潤滑油の混入を防止している。
なお、クランクボックス11内をその外側の空間に対して封鎖(閉塞)した状態に保つために、オイルシール21,22,23が設けられている。言い換えれば、オイルシール21,22,23は、クランクボックス11の内側の空間を、クランクケース9の内側でありかつクランクボックス11の外側である空間に対して、概ね気密な状態に保つために設けられているシール部材である。
図1に示すように、クランクボックス11は、クランクシャフト8により貫かれている。クランクシャフト8がクランクボックス11を貫通している部分には、クランクシャフト8の外周面と、クランクボックス11に形成された貫通孔と、の隙間を埋めるためのオイルシール21が設けられている。これにより、クランクボックス11内の潤滑油が、クランクシャフト8の外周面と、クランクボックス11に形成された前記貫通孔と、の間の隙間を通って漏れ出てしまうことを防止している。
第1動力変換部材30は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換するものであり、後述の第2動力変換部材40を挟むように1対で設けられている。β型のスターリングエンジンにおいて往復運動を回転運動に変換するための機構としては、クロスヘッド機構、ロンビック機構、スコッチヨーク機構等の、様々な構成の機構を用いることができるが、本実施形態では、第1動力変換部材30として、サイズを小さくするとともに比較的簡素な構成にすることが可能なスコッチヨーク機構を採用している。具体的には、本実施形態の第1動力変換部材30は、図2に示すように、パワーピストンヨーク31、ガイド軸32、第1偏心クランクピン(不図示)、及びロッド34等を備える。
パワーピストンヨーク31は、スライド移動(往復移動)することが可能な板状の部材である。パワーピストンヨーク31には、当該パワーピストンヨーク31を貫通する1対の貫通孔が形成される。当該1対の貫通孔は、シリンダ2の軸線方向と平行な方向に延びている。また、パワーピストンヨーク31には、その板面を貫くように案内溝が形成されている。後に説明するように、この案内溝には、前記第1偏心クランクピンが収容される。
ガイド軸32は、シリンダ2の軸線方向に平行な方向に延びる軸状の部材であり、その両端部がクランクボックス11に固定される(図2を参照)。ガイド軸32は、クランクシャフト8を挟むように1対で設けられる。ガイド軸32は、パワーピストンヨーク31の前記貫通孔に差し込まれる。これにより、ガイド軸32は当該パワーピストンヨーク31をスライド可能に支持している。なお、パワーピストンヨーク31の前記貫通孔とガイド軸32との摺動部分には、例えばロータリブッシング等の直動軸受が設けられる。
前記第1偏心クランクピンは、クランクシャフト8に偏心した状態で取り付けられるクランクピンである。この第1偏心クランクピンは、クランクシャフト8に貫通された状態で、当該クランクシャフト8に対して固定され、又は当該クランクシャフト8と一体的に形成されている。前記第1偏心クランクピンは、パワーピストンヨーク31の前記案内溝の中を転がりながら移動することができるように、当該案内溝の中に収容される。なお、パワーピストンヨーク31の当該案内溝と前記第1偏心クランクピンとの摺動部分には、例えば転がり軸受等の回転軸受が設けられる。
ロッド34は、パワーピストンヨーク31の往復移動と、パワーピストン3の往復移動とを連動させるものである。ロッド34は、長い軸状に形成され、その一端部がパワーピストン3に接続され、その他端部がパワーピストンヨーク31に接続されている。ロッド34がクランクボックス11を貫通している部分には、ロッド34の外周面と、クランクボックス11に形成される貫通孔と、の隙間を埋めるためのオイルシール22が設けられている。これにより、クランクボックス11内の潤滑油が、ロッド34の外周面と、クランクボックス11に形成された前記貫通孔と、の間の隙間を通って漏れ出てしまうことを防止している。
このような構成の第1動力変換部材30において、パワーピストン3がシリンダ2内で変位すると、このパワーピストン3とロッド34を介して連結されているパワーピストンヨーク31がガイド軸32に沿ってスライド移動し、これに伴い前記案内溝の中を前記第1偏心クランクピンが転がりながら移動する。これにより、クランクシャフト8が回転変位される。こうして、パワーピストン3の往復運動がクランクシャフト8の回転運動に変換されて、発電機29へと伝達される。
第2動力変換部材40は、クランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換するものである。β型のスターリングエンジンにおいて回転運動を往復運動に変換するための機構としては、上述のように種々の機構を用いることができるが、本実施形態では、第2動力変換部材40として、第1動力変換部材30と同様にスコッチヨーク機構を採用している。具体的には、本実施形態の第2動力変換部材40は、ディスプレーサヨーク41、ガイド軸42、第2偏心クランクピン、及びロッド44等を備える。
第2動力変換部材40のディスプレーサヨーク41、ガイド軸42、第2偏心クランクピン、及びロッド44の構成は、それぞれ、第1動力変換部材30のパワーピストンヨーク31、ガイド軸32、第1偏心クランクピン、及びロッド34の構成と実質的に同様であるため、詳細な説明は省略する。
第2動力変換部材40のロッド44は、ディスプレーサヨーク41とディスプレーサピストン4とを連結するために、パワーピストン3に形成された図略の貫通孔に差し込まれている。パワーピストン3はロッド44に対して摺動可能に設けられており、当該摺動部分には、気密を保つための図示しないシール機構が配置されている。また、ロッド44がクランクボックス11を貫通している部分には、ロッド44の外周面と、クランクボックス11に形成される貫通孔と、の隙間を埋めるためのオイルシール23が設けられている。
このような構成の第2動力変換部材40において、クランクシャフト8が回転運動すると、当該クランクシャフト8と一体的となっている前記第2偏心クランクピンが、ディスプレーサヨーク41の案内溝の中を転がりながら移動する。これに伴い、ディスプレーサヨーク41が、ガイド軸42に沿ってスライド移動する。これにより、ディスプレーサヨーク41とロッド44を介して連結されているディスプレーサピストン4が、ディスプレーサヨーク41と連動して変位する。こうして、クランクシャフト8の回転運動がディスプレーサピストン4の往復運動に変換され、パワーピストン3の往復運動とも相まって、膨張空間S1と圧縮空間S2との容積の割合が周期的に変化するようになっている。
なお、パワーピストン3が上死点(図1では、最もシリンダ2の上方側)に至るタイミングと、ディスプレーサピストン4が上死点に至るタイミングと、がズレるように、前記第1偏心クランクピン及び前記第2偏心クランクピンは、所定の位相差(本実施形態では、90°の位相差)が生じるように配置されている。
以下では、スターリングエンジン1の作動原理について、簡単に説明する。
ディスプレーサピストン4が上死点の付近にあるとき、圧縮空間S2内の作動流体は、クランクシャフト8の回転に伴って上昇するパワーピストン3に押されて圧縮される。また、クランクシャフト8の回転によりディスプレーサピストン4が下降し始めると、圧縮空間S2の容積が減少し、膨張空間S1の容積が増大する。この結果、圧縮空間S2内の作動流体は、クーラ7、再生器6、及びヒータ5をこの順に通過して、膨張空間S1内に移動する。この過程で、作動流体は加熱されて相対的に高温となるので、作動流体は膨張空間S1内で熱膨張しようとし、圧力が上昇する。
この高まった膨張空間S1内の圧力は直ちに圧縮空間S2内に伝播するので、圧縮空間S2の圧力は膨張空間S1と同様に高くなる。この状況で、パワーピストン3が上死点に至った後に下降し始めると、作動流体によってパワーピストン3が下向きに押されて、これにより当該パワーピストン3がシリンダ2内をスライドする。パワーピストン3の変位はクランクシャフト8に伝達され、クランクシャフト8が駆動力を得て回転する。
クランクシャフト8の回転によりディスプレーサピストン4が下死点に至り、その後上昇すると、膨張空間S1の容積が減少し、圧縮空間S2の容積が増大する。これに伴って、膨張空間S1内の作動流体が、ヒータ5、再生器6、及びクーラ7をこの順に通過して、圧縮空間S2内に移動する。この過程で、作動流体は冷却されて相対的に低温となり、圧力が低下する。
パワーピストン3はディスプレーサピストン4に遅れて下死点に至り、その後上昇を開始する。やがて、ディスプレーサピストン4が上死点付近に至る。
以上のサイクルが繰り返されることにより、膨張空間S1及び圧縮空間S2の作動流体の圧力変化が反復され、これを利用してパワーピストン3が往復運動されて、この往復運動がクランクシャフト8の回転運動に変換されて動力が取り出される。
以上のような構成のスターリングエンジン1において、上述のように、膨張空間S1及び圧縮空間S2には作動流体が充填される。また、シリンダ2内の、パワーピストン3よりもクランクシャフト8に近い側の空間(以下、パワーピストン3の背面側の空間という。)、クランクケース9内、及びクランクボックス11内にも、作動流体が充填される。本実施形態では、作動流体の圧力変化を大きくして効率よく動力を得られるようにするために、作動流体はこれらの空間内に高圧(大気圧よりも高圧)で充填される。
ところで、上述したように、クランクボックス11の内側の空間を、クランクボックス11の外側の空間に対して概ね気密な状態に保つ構成とした場合、以下のような問題が考えられる。即ち、従来は、クランクケース9の内部空間に作動流体を充填する作業を行う場合、クランクケース9に開口するように設けた作動流体通路から作動流体を充填していた。図7に、従来からある、作動流体通路を有するスターリングエンジンの例を示している。仮に、この充填方法をこのまま本実施形態のスターリングエンジン1に適用したとすると、前記の作動流体通路を経由して第2空間S9に流入した作動流体は、ロッド34とオイルシール22との間、ロッド44とオイルシール23との間、及びクランクシャフト8とオイルシール21との間等の、僅かな隙間を通ってクランクボックス11の内部空間に流入することとなる。これにより、第1空間S11及び第2空間S9の両空間に作動流体を充填することが可能である。しかしながら、作動流体の充填を、時間をかけてゆっくり行わないと、両空間S9,S11の間で大きな圧力差が生じ、オイルシール21,22,23が破損することとなる。同様に、クランクケース9内の作動流体を排出する作業を、前記の作動流体通路を介して行うこととした場合にも、時間をかけてゆっくり排出しないと、両空間S9,S11の間で大きな圧力差が生じ、オイルシール21,22,23が破損することとなる。
そこで、本実施形態では、オイルシール21,22,23等が破損することを防止するために、クランクボックス11の内側の空間の圧力と、クランクボックス11の外側でありかつクランクケース9の内側である空間の圧力と、を均衡させるための経路を備えている。以下では、この経路について、図2を参照して詳細に説明する。図2は、第1実施形態に係るスターリングエンジン1の部分的な構成を示す模式図である。なお、以下の説明においては、クランクボックス11の内側の空間を、単に「第1空間S11」と称することがある。また、クランクボックス11の外側でありかつクランクケース9の内側である空間を、単に「第2空間S9」と称する場合がある。
図2に示すように、本実施形態のスターリングエンジン1は、接続路(経路)51と、バルブ52と、作動流体流通路53と、バルブ54と、を備えている。
接続路51は、第1空間S11の圧力と、第2空間S9の圧力と、を均衡させるための経路である。本実施形態の接続路51は、断面が円形状のパイプ状の部材であり、内部に作動流体が通過する流路が形成されている。言い換えれば、接続路51は、第1空間S11と第2空間S9とを連通させる流路を有する。
接続路51の一端部(第1端部)51aは、クランクボックス11の側面に接続されており、第1空間S11に開放(開口)されている。この接続路51の一端部51aは、クランクボックス11内の潤滑油の油溜まりの液面よりも上方の位置に配置されている。なお、図中に2点鎖線で示したのが潤滑油の油溜まりの液面の位置の具体例である。接続路51の他端部(第2端部)51bは、クランクケース9の底面に接続されており、第2空間S9に開放(開口)されている。
接続路51のうちの、一端部51aと他端部51bとの間の中途部の一部は、クランクケース9の外に配置されている。
バルブ52は、接続路51内の流路を開閉可能なバルブである。バルブ52は、接続路51の中途部に設けられる。バルブ52は、接続路51のうち、クランクケース9の外に配置される部分に設けられている。本実施形態において、バルブ52は、オペレータが手動で開閉可能に構成されている。
作動流体流通路53は、作動流体を第1空間S11及び第2空間S9に充填するとき、及び、作動流体を第1空間S11及び第2空間S9から排出(放出)するときに、作動流体を流通させるための通路である。本実施形態の作動流体流通路53は、断面が円形状のパイプ状の部材であり、内部に作動流体が通過する流路が形成されている。
作動流体流通路53の一端部は、クランクケース9の側面に接続されており、第2空間S9に開放されている。作動流体流通路53の他端部は、クランクケース9の外に開放されている。
バルブ54は、作動流体流通路53内の流路を開閉可能なバルブである。バルブ54は、作動流体流通路53に設けられる。本実施形態において、バルブ54は、オペレータが手動で開閉可能に構成されている。
このような構成のスターリングエンジン1において、作動流体を第1空間S11及び第2空間S9に充填するときは、以下のような作業を行う。即ち、作動流体の充填を開始する前に、バルブ52を開いて、第1空間S11と第2空間S9とが接続(連通)された状態とする。また、パワーピストン3の背面側の空間と、圧縮空間S2と、を連通路(不図示)を介して接続して、連通させる。この状態で、作動流体流通路53の他端部に、作動流体を入れた容器(例えば、ボンベ)を接続し、バルブ54を開いて、作動流体を、適宜の流速で作動流体流通路53を介してクランクケース9内に供給する。
上記のようにして作動流体流通路53を介して供給された作動流体は、次第にクランクケース9の中(第2空間S9)に充填されていく。また、クランクケース9内に充填された作動流体の一部は、クランクケース9の前記貫通孔を経由して、パワーピストン3の背面側の空間に充填される。また、パワーピストン3の背面側の空間に充填された作動流体の一部は、前記連通路を経由して圧縮空間S2及び膨張空間S1にも充填される。
また、バルブ52が開かれているので、第2空間S9に充填された作動流体の一部が接続路51を介して第1空間S11内に速やかに供給され、この結果、第1空間S11の圧力と、第2空間S9の圧力と、は均衡した状態に保たれる。この際、接続路51の一端部51aはクランクボックス11内の潤滑油の油溜まりの液面よりも高い位置に配置されているので、クランクボックス11内に潤滑油が収容された状態であっても、第2空間S9内の作動流体の一部を、接続路51を介して、第1空間S11内に供給することができる。このように、本実施形態では、簡単な構成で、第1空間S11の圧力と第2空間S9の圧力との間に差が生じるのを抑制することができる。よって、作動流体を両空間内に充填するときに、速い速度で作動流体を供給しても、オイルシール21,22,23の破損を招くことがない。この結果、作動流体の充填作業を短時間で完了させることができる。
また、本実施形態では、接続路51のうちの、クランクケース9の外に配置されている中途部にバルブ52が設けられているので、オペレータがクランクケース9の外からこのバルブ52を操作することができ、簡単に、必要なときだけ第1空間S11と第2空間S9とを連通させることができる。
また、第1空間S11及び第2空間S9に充填していた作動流体を作動流体流通路53を介して外部に排出するときも、パワーピストン3の背面側の空間と、圧縮空間S2と、を前記連通路を介して連通させつつ、バルブ52を開くことで、第1空間S11の圧力と、第2空間S9の圧力と、を均衡した状態に保ちながら作動流体を排出することができる。
以上に説明したように、本実施形態のスターリングエンジン1は、クランクケース9と、クランクボックス11と、接続路51と、を備える。クランクケース9には、動力を外部に取り出すためのクランクシャフト8が架け渡される。クランクボックス11は、クランクケース9内に配置される。クランクボックス11は、パワーピストン3の往復運動をクランクシャフト8の回転運動に変換する第1動力変換部材30と、クランクシャフト8の回転運動をディスプレーサピストン4の往復運動に変換する第2動力変換部材40と、を収容する。接続路51は、クランクボックス11内の第1空間S11の圧力と、クランクケース9内でありかつクランクボックス11外である第2空間S9の圧力と、を均衡させる。
このように、クランクボックス11内の第1空間S11の圧力とクランクケース9内の第2空間S9の圧力とを均衡させるための接続路51を設けたため、作動流体を第1空間S11及び第2空間S9に充填するときや、充填していた作動流体を排出するときに、第1空間S11の圧力と第2空間S9内の圧力との間に差が生じるのを抑制することができる。よって、作動流体をクランクケース9内及びクランクボックス11内に充填するときや、充填していた作動流体を排出するときに、長時間を掛ける必要がなくなる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1においては、接続路51は、第1空間S11と第2空間S9とを連通させる流路を有する。
これにより、簡素な構成で、クランクボックス11内の圧力とクランクケース9内の圧力とを均衡させることができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1においては、接続路51は、一端部(第1端部)51aと、他端部51b(第2端部)と、を備える。接続路51の一端部51aは、第1空間S11に開口する。接続路51の他端部51bは第2空間S9に開口する。この一端部51aと他端部51bとの間の中途部の少なくとも一部は、クランクケース9の外に配置されている。
これにより、非常に簡単な構成で、クランクボックス11内の圧力とクランクケース9内の圧力とを均衡させることができる。また、例えば本実施形態のように、接続路51内の流路を開閉可能なバルブ52を接続路51の中途部に設けることで、オペレータがクランクケース9の外からこのバルブ52を操作することができ、簡単に、必要なときだけクランクボックス11内とクランクケース9内とを連通させることができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1においては、接続路51の一端部51aは、クランクボックス11内の潤滑油の油溜まりの液面よりも上方の位置に配置される。
これにより、クランクボックス11内に潤滑油を収容した状態で、作動流体を、接続路51を介して第1空間S11と第2空間S9との間を流通させることができる。よって、クランクボックス11内に潤滑油を入れたままの状態で、クランクケース9内及びクランクボックス11内への作動流体の充填・開放を速やかに行える。
<第1実施形態の変形例>
続いて、第1実施形態の変形例に係るスターリングエンジン1について、図3を参照して説明する。図3は、第1実施形態の変形例に係るスターリングエンジン1の部分的な構成を示す模式図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
図3に示すように、本変形例に係るスターリングエンジン1は、接続路51及び作動流体流通路53に代えて、兼用路55を備える点で、第1実施形態とは異なっている。
兼用路55は、中途部で2本に分岐しているパイプ状の部材であり、分岐している一方の通路(分岐路)の端部(第1端部)55aが、クランクボックス11に接続されている。この兼用路55の一方の分岐路の端部55aは、クランクボックス11内に開口している。
兼用路55のうちの、分岐している他方の通路(分岐路55e)の他端部(第2端部)55bが、クランクケース9に接続されている。この兼用路55の他方の分岐路55eの端部55bは、クランクケース9内に開口している。
兼用路55の他方の分岐路55eは、クランクケース9の外に配置されている。分岐路55eの中途部には、この分岐路55e内の流路を開閉するバルブ52が設けられている。
兼用路55の、分岐していない部分の開放側の端部(第3端部)に、バルブ54が設けられている。
このような構成のスターリングエンジン1では、第1空間S11と第2空間S9とを連通させるための通路(接続路51に相当するもの)と、作動流体を充填・排出するときに作動流体を流通させるための通路(作動流体流通路53に相当するもの)と、を1つの通路で構成することができ、通路を簡素化することができる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るスターリングエンジン1について、図4を参照して説明する。図4は、第2実施形態に係るスターリングエンジン1の部分的な構成を示す模式図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
図4に示すように、本実施形態のスターリングエンジン1は、第1充填排出用経路(第1経路)61と、第2充填排出用経路(第2経路)62と、バルブ63と、バルブ64と、を備えている。
第1充填排出用経路61は、作動流体を第1空間S11に充填するとき、及び作動流体を第1空間S11から排出するときに、作動流体を流通させるための通路である。本実施形態の第1充填排出用経路61は、断面が円形状のパイプ状の部材であり、内部に作動流体が流通する流路が形成されている。
第1充填排出用経路61の一端部61aは、クランクボックス11の側面に接続されており、第1空間S11に開放(開口)されている。第1充填排出用経路61は、クランクボックス11の側面からクランクケース9の外に向かって延びている。第1充填排出用経路61の他端部は、クランクケース9の外に配置されており、クランクケース9の外に開放(開口)されている。
第2充填排出用経路62は、作動流体を第2空間S9に充填するとき、及び作動流体を第2空間S9から排出するときに、作動流体を流通させるための通路である。本実施形態の第2充填排出用経路62は、断面が円形状のパイプ状の部材であり、内部に作動流体が流通する流路が形成されている。
第2充填排出用経路62は、クランクケース9の外に配置されている。第2充填排出用経路62の一端部62aは、クランクケース9の底面に接続されており、第2空間S9に開放(開口)されている。第2充填排出用経路62の他端部は、クランクケース9の外に配置されており、クランクケース9の外に開放(開口)されている。
ここで、第1充填排出用経路61の前記流路の流路面積と、第2充填排出用経路62の前記流路の流路面積と、の比率は、第1空間S11に作動流体を供給することにより当該作動流体が充填される部分の容積と、第2空間S9に作動流体を供給することにより当該作動流体が充填される部分の容積と、の比率を考慮して、設定される。具体的には、例えば、第1充填排出用経路61の前記流路の流路面積と、第2充填排出用経路62の前記流路の流路面積と、の比率は、上記の比率と概ね同じとなるように設定するものとすることができる。
バルブ63は、第1充填排出用経路61内の流路を開閉可能なバルブである。バルブ63は、第1充填排出用経路61の他端部に設けられている。
バルブ64は、第2充填排出用経路62内の流路を開閉可能なバルブである。バルブ64は、第2充填排出用経路62の他端部に設けられている。
このような構成のスターリングエンジン1において、作動流体を第1空間S11及び第2空間S9に充填するときは、例えば以下のような作業を行う。即ち、第1充填排出用経路61の他端部と、第2充填排出用経路62の他端部に、作動流体を入れた容器(例えば、ボンベ)を接続し、バルブ63及びバルブ64をほぼ同時に開いて、作動流体を、適宜の流速で第1空間S11及び第2空間S9に供給する。
このとき、第1充填排出用経路61の前記流路の流路面積と、第2充填排出用経路62の前記流路の流路面積との比率は、上述したように、作動流体が充填される部分の容積の比率を考慮して設定されているので、作動流体を供給する流速等を適宜に調整することにより、第1空間S11の圧力と第2空間S9の圧力とを容易に均衡した状態に保つことができる。これにより、オイルシール21,22,23の破損を招くことなく、早急に両空間に作動流体を充填することができる。
以上に説明したように、本実施形態のスターリングエンジン1は、前記経路として、第1充填排出用経路61と、第2充填排出用経路62と、を有する。
これにより、例えば、第1空間S11に作動流体を供給することにより当該作動流体が充填される部分の容積と、第2空間S9に作動流体を供給することにより当該作動流体が充填される部分の容積と、の比率を考慮して、適宜の速度でかつ適時に、第1充填排出用経路61の他端部、及び第2充填排出用経路62の他端部のそれぞれから作動流体を供給することができる。よって、第1空間S11の圧力と第2空間S9の圧力とを均衡した状態に保ちながら、作動流体を両空間に充填することができる。
なお、両空間の圧力を均衡した状態に保つために、第1充填排出用経路61及び第2充填排出用経路62の内周面で生じ得る抵抗や、第1充填排出用経路61及び第2充填排出用経路62の流路の長さや、前記容器から第1充填排出用経路61の他端部、及び第2充填排出用経路62の他端部に作動流体が押し込まれる圧力等が、考慮されてもよい。
また、本実施形態のスターリングエンジン1においては、第1空間S11に作動流体を供給することにより当該作動流体が充填される部分の容積と、第2空間S9に作動流体を供給することにより当該作動流体が充填される部分の容積と、の比率を考慮して設定されている。
これにより、作動流体を供給する速度等を適宜に調整することにより、第1空間S11の圧力と第2空間S9の圧力とを均衡した状態に容易に保つことができ、両空間に作動流体を早急に充填し易くなる。同様に、両空間から作動流体を早急に排出することも容易となる。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るスターリングエンジン1について、図5を参照して説明する。図5は、第3実施形態に係るスターリングエンジン1の部分的な構成を示す模式図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
図5に示すように、本実施形態のスターリングエンジン1は、第1充填排出用経路(第1経路)71と、第2充填排出用経路(第2経路)72と、バルブ73と、バルブ74と、絞り75と、を備えている。
第1充填排出用経路71は、作動流体を第1空間S11に充填するとき、及び作動流体を第1空間S11から排出するときに、作動流体を流通させるための通路である。本実施形態の第1充填排出用経路71は、断面が円形状のパイプ状の部材であり、内部に作動流体が流通する流路が形成されている。
第1充填排出用経路71の一端部71aは、クランクボックス11の側面に接続されており、第1空間S11に開口されている。第1充填排出用経路71は、クランクボックス11の側面からクランクケース9の外に向かって延びている。第1充填排出用経路71の他端部は、クランクケース9の外に配置されており、クランクケース9の外に開口されている。
第2充填排出用経路72は、作動流体を第2空間S9に充填するとき、及び作動流体を第2空間S9から排出するときに、作動流体を流通させるための通路である。本実施形態の第2充填排出用経路72は、断面が円形状のパイプ状の部材であり、内部に作動流体が流通する流路が形成されている。
第2充填排出用経路72は、クランクケース9の外に配置されている。第2充填排出用経路72の一端部72aは、クランクケース9の底面に接続されており、第2空間S9に開口されている。第2充填排出用経路72の他端部は、クランクケース9の外に配置されており、クランクケース9の外に開口されている。
本実施形態では、第1充填排出用経路71の前記流路の流路面積と、第2充填排出用経路72の前記流路の流路面積と、は略同じである。
バルブ73は、第1充填排出用経路71内の流路を開閉可能なバルブである。バルブ73は、第1充填排出用経路71の他端部に設けられている。
バルブ74は、第2充填排出用経路72内の流路を開閉可能なバルブである。バルブ74は、第2充填排出用経路72の他端部に設けられている。
絞り75は、それが設けられている流路の流路面積を制限するものである。本実施形態では、第2充填排出用経路72の中途部に、絞り75が設けられている。なお、本実施形態の絞り75は、第2充填排出用経路72内の流路面積を所定の流路面積にするものである。この流路面積は、第1空間S11に作動流体を供給することにより当該作動流体が充填される部分の容積と、第2空間S9に作動流体を供給することにより当該作動流体が充填される部分の容積と、の比率や、第1充填排出用経路71及び第2充填排出用経路72の長さや、供給される作動流体の圧力・温度等の、様々な要素を考慮に入れて適宜に設定される。なお、本実施形態では、絞り75は第2充填排出用経路72に設けられるものとしたが、これに加えて又は代えて、第1充填排出用経路71に設けられるものとしてもよい。
このような構成のスターリングエンジン1において、作動流体を第1空間S11及び第2空間S9に充填するときは、例えば以下のような作業を行う。即ち、第1充填排出用経路71の他端部と、第2充填排出用経路72の他端部に、作動流体を入れた容器を接続し、バルブ73及びバルブ74をほぼ同時に開いて、作動流体を、適宜の流速で第1空間S11及び第2空間S9に供給する。
このとき、絞り75が第2充填排出用経路72の流路を絞る程度は、上述したように、様々な要素を考慮に入れて設定されているので、供給する作動流体の圧力・温度等を適宜に調整することにより、第1空間S11の圧力と第2空間S9の圧力とを容易に均衡した状態に保つことができる。これにより、多くの時間を掛けずに両空間に作動流体を充填することができる。
以上に説明したように、本実施形態のスターリングエンジン1は、前記経路として、第1充填排出用経路71と、第2充填排出用経路72と、を有する。第1充填排出用経路71又は第2充填排出用経路72の少なくとも一方には、その流路の流路面積を制限するための絞り75が設けられている。
これにより、適宜の絞り75を設けることにより、第1空間S11の圧力と第2空間S9の圧力とを実質的に均衡した状態に保ちながら、早急に、作動流体を両空間に充填したり、両空間から抜いたりすることができる。
<第4実施形態>
次に第4実施形態に係るスターリングエンジン1について、図6を参照して説明する。
図6は、第4実施形態に係るスターリングエンジン1の部分的な構成を示す模式図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
図5に示すように、本実施形態のスターリングエンジン1は、第1充填排出用経路71と、第2充填排出用経路72と、バルブ73と、バルブ74と、可変絞り85と、差圧センサ86と、制御装置87と、を備えている。
可変絞り85は、それが設けられている流路の流路面積を調整するものである。本実施形態では、第2充填排出用経路72の中途部に、可変絞り85が設けられている。可変絞り85は、制御装置87から送られてくる指令信号に応じて、その流路の流路面積(絞りの開度)を、複数段階で又は無段階で変更することができる。なお、本実施形態では、可変絞り85は第2充填排出用経路72に設けられるものとしたが、これに加えて又は代えて、第1充填排出用経路71に設けられるものとしてもよい。
差圧センサ86は、第1空間S11の圧力と、第2空間S9の圧力と、の差を検出するセンサである。差圧センサ86の検出結果は、検出信号として制御装置87に送信される。
制御装置87は、差圧センサ86の検出結果を監視し、当該検出結果に応じて自動で可変絞り85の状態を調整して、第2充填排出用経路72内の流路面積を調整する制御を行うものである。制御装置87は、コンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM等を備える。また、前記ROMには、可変絞り85を動作させるための適宜の動作プログラムが記憶(格納)されている。このソフトウェアとハードウェアの協働により、制御装置87を、第1空間S11と第2空間S9との間の差圧に応じて可変絞り85を適宜に動作させ、流路面積を調整するための指令信号を送る指令部として機能させることが可能となっている。
制御装置87は、差圧センサ86の検出結果、即ち第1空間S11と第2空間S9との間の差圧の情報を、定期的又は不定期に検出信号として受信する。
第1空間S11及び第2空間S9に作動流体を充填する場合、本実施形態の制御装置87は、差圧センサ86から取得した差圧に基づき、第2空間S9の圧力が第1空間S11の圧力よりも低い場合は、可変絞り85の開度を現在より増大させるための指令信号を当該可変絞り85に出力する。一方、制御装置87は、第2空間S9の圧力が第1空間S11の圧力よりも高い場合は、可変絞り85の開度を現在より減少させるための指令信号を当該可変絞り85に出力する。
このフィードバック制御を反復することにより、第1充填排出用経路71及び第2充填排出用経路72の流路面積の比率が、第1空間S11の圧力と、第2空間S9の圧力と、の差を十分に低減させるために好適な比率となるように自動調整される。この状態で、第1充填排出用経路71及び第2充填排出用経路72を介して作動流体を供給し続けることで、複雑な計算を要することなく、第1空間S11の圧力と、第2空間S9の圧力と、を自動的に均衡させながら作動流体を充填することができる。よって、オイルシール21,22,23等の破損を招くことなく、早急に、作動流体の充填を行うことができる。
なお、第1空間S11及び第2空間S9から作動流体を排出する場合は、可変絞り85の開度を上記と反対に制御すればよい。
以上に説明したように、本実施形態のスターリングエンジン1は、前記経路として、第1充填排出用経路71と、第2充填排出用経路72と、を有する。また、このスターリングエンジン1は、前記の流路面積を制限するための絞りとして、可変絞り85を備えている。この可変絞り85は、その流路の流路面積を調整可能に構成されている。
これにより、様々な状況に応じて圧力調整を柔軟に行うことができる。
また、本実施形態のスターリングエンジン1は、差圧センサ86と、制御装置87と、を更に備える。差圧センサ86は、第1空間S11の圧力と第2空間S9の圧力との差を検出する。制御装置87は、差圧センサ86の検出結果に応じて、可変絞り85の状態を制御する。
これにより、第1空間S11と第2空間S9との間で圧力差を生じさせないための自動的な圧力調整を実現することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の第1実施形態では、作動流体流通路53の一端部は、第2空間S9に開口されるものとしたが、これに限るものではない。例えばこれに代えて、作動流体流通路(作動流体流通路53に相当するもの)の一端部が第1空間S11に開口されるものとしてもよい。
クランクボックス11に潤滑油を補充するときに用いる潤滑路流通路を、作動流体流通路53として用いることとしてもよい。
上記の実施形態では、例えば作動流体を収容したボンベを作動流体流通路53の他端部等に接続することにより、第1空間S11及び第2空間S9に作動流体を供給できることを開示したが、作動流体の供給源の構成はこれに限るものではない。例えば、これに代えて、作動流体を収容した容器(タンク)から、ポンプ等を用いて、第1空間S11及び第2空間S9に作動流体を圧送するものとしてもよい。
第2から第4までの実施形態において、第1空間S11及び第2空間S9には、同一の供給源から作動流体が供給されることとしてもよいし、或いは個別の供給源から作動流体が供給されることとしてもよい。
上記の第3実施形態及び第4実施形態では、作動流体を充填・排出するときに当該作動流体を通す流路の流路面積を制限するための構成として、絞り75及び可変絞り85をそれぞれ備えるものとしたが、これに限るものではない。即ち、絞りに代えて、流路面積を制限できる「バルブ」を備えるものとしてもよい。その場合、例えば、バルブ63,64(バルブ73,74)に流路面積を制限する機能を持たせ、これらのバルブが前記「バルブ」を兼ねるものとしてもよい。
上記の第1実施形態では、第1空間S11と第2空間S9とはパイプ状の接続路51で接続されるものとしたが、必ずしもこれに限るものではない。例えば、これに代えて、第1空間S11と第2空間S9とを連通・遮断することが可能な流路が形成される円柱状のプラグがクランクボックス11及びクランクケース9を貫通するように設けられるものとしてもよい。その場合、オペレータがクランクケース9の外からこのプラグを操作することにより、第1空間S11と第2空間S9との連通・遮断を切り換えられるように構成することができる。
また、例えば、上記に代えて、第1空間S11と第2空間S9とを連通・遮断することが可能なバルブがクランクボックス11を貫通するように設けられているものとしてもよい。その場合、作動流体を充填・排出するときに、このバルブを開く又は閉じることにより、第1空間S11と第2空間S9とを連通・遮断を切り換えられるように構成することができる。このバルブを、第1空間S11側に閉止する第1逆止弁と、第2空間S9側に閉止する第2逆止弁とにすれば、第1空間S11と第2空間S9との間に圧力差が生じた際に、どちらか片方の逆止弁が開くので、クランクケース9の外からバルブを操作すること無く、第1空間S11と第2空間S9との連通・遮断を切り換えられる。
上記の実施形態では、スターリングエンジン1はいわゆるβ型の形式のものとしたが、必ずしもこれに限るものではなく、例えばこれに代えて、α型或いはγ型の形式のものとしてもよい。