JP6817717B2 - フライスカッタ、切削インサート及びフライス加工方法 - Google Patents

フライスカッタ、切削インサート及びフライス加工方法 Download PDF

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Description

本発明は、被削材の面粗度が所期する範囲に収まるようにフライス加工できるフライスカッタ、切削インサート及びフライス加工方法に関するものである。
従来、例えば下記特許文献1、2に示されるような刃先交換式フライスカッタが知られている。刃先交換式フライスカッタは、軸線回りに回転させられる工具本体と、工具本体の先端外周部に、周方向に互いに間隔をあけて形成された複数のインサート取付座と、これらのインサート取付座にそれぞれ着脱可能に装着される切削インサートと、を備えている。
また、切削インサートには、被削材を平坦面に加工するための正面刃(平坦面加工切れ刃)が設けられており、該切削インサートがインサート取付座に装着されたときに、正面刃は、工具本体の軸線に垂直な仮想平面に沿うように配置される。切削インサートの正面刃によりフライス加工された被削材の加工面は、平滑な平坦面に仕上げられる。
なお、特許文献1、2に記載された刃先交換式フライスカッタでは、インサート取付座に装着された切削インサートの軸線方向の位置を調整可能な調整機構が備えられており、該調整機構によって、複数の切削インサートの各正面刃が、軸線に垂直な1つの仮想平面上に位置するように調整される。
ところで、例えば自動車用のクラッチハウジングやトランスミッションケースなど、一対のケース体の合わせ面(ケース体の開口に沿って環状に形成される平坦面)同士を当接させて組み合わせる構造においては、上述した刃先交換式フライスカッタ等のフライスカッタにより、あらかじめ合わせ面をフライス加工して平坦面に形成している。そして、これら合わせ面同士の間に、液体パッキン等のシール剤を介在させて、シール性を確保することが行われている。
シール剤を合わせ面に安定して保持させるには、該合わせ面に平滑な平坦面を形成するよりは、ある程度の凹凸が形成された所定範囲の面粗度を付与することが好ましい。つまり、合わせ面に微小な凹凸が形成されていることにより、シール剤との接触面積が増え、シール剤の保持性が高められるとともにシール効果が安定し、また振動等によるシール剤の漏出等も生じにくくなる。詳しくは、被削材の面粗度として、いわゆる細かすぎず粗すぎない面粗度(所定の上限値と下限値の間に収まる面粗度)、例えば、Rz(十点平均粗さ)で数μmから数十μm程度の所定範囲の面粗度が要求される場合がある。
このような面粗度を実現するには、従来においては、まず刃先交換式フライスカッタにより被削材に平滑な平坦面を加工し、次いで別工程にて、研削砥石等を用いてこの平坦面を適度に傷付けあらすことで、所期する面粗度の合わせ面(加工面)とする必要がある。
特開2015−27707号公報 特開2015−27708号公報
しかしながら、刃先交換式フライスカッタにより被削材に平滑な平坦面を加工した後、別工程において、研削砥石等を用いてこの平坦面をあらす製法では、製造工程が複雑になり、生産効率が悪い。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、製造を複雑にすることなくフライス加工のみによって、被削材に対して所期する範囲の面粗度を精度よく付与することができるフライスカッタ、切削インサート及びフライス加工方法を提供することを目的としている。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明は、軸線回りに回転させられる工具本体と、前記工具本体の先端外周部に、前記軸線回りに沿う周方向に互いに間隔をあけて設けられる複数の切れ刃と、を備えたフライスカッタであって、前記複数の切れ刃には、前記軸線に垂直な仮想平面に沿うように延びる平坦面加工切れ刃と、前記平坦面加工切れ刃よりも前記軸線方向の先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃と、が含まれ、前記凹溝加工切れ刃は、前記軸線に直交する径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の先端側へ向かって延びる第1傾斜部と、前記第1傾斜部の前記径方向の外側に配置され、前記径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の基端側へ向かって延びる第2傾斜部と、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とを連結する先端部と、を有し、前記平坦面加工切れ刃が、複数設けられており、複数の前記平坦面加工切れ刃のうち、最も前記軸線方向の先端側に位置する最先端の平坦面加工切れ刃は、被削材の加工面に形成される平坦面を仕上げ加工するさらい刃とされ、前記さらい刃に対して、前記凹溝加工切れ刃が、前記軸線方向の先端側へ向けて突出していることを特徴とする。
また本発明は、軸線回りに回転させられる工具本体の先端外周部に、前記軸線回りに沿う周方向に互いに間隔をあけて形成された複数のインサート取付座のうち、少なくとも1つ以上に着脱可能に装着されるフライス加工用の切削インサートであって、前記インサート取付座に取り付けられるインサート本体と、前記インサート本体のすくい面と逃げ面との交差稜線に形成され、該インサート本体のうち最も前記軸線方向の先端側に配置される切れ刃と、を備え、前記インサート本体は長方形板状をなし、前記インサート本体の長手方向は前記軸線方向に沿うように配置され、前記切れ刃は、前記インサート本体の長手方向に沿って延びる外周刃と、前記インサート本体の長手方向に沿う前記軸線方向の先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃と、を有し、前記凹溝加工切れ刃は、前記軸線に直交する径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の先端側へ向かって延びる第1傾斜部と、前記第1傾斜部の前記径方向の外側に配置され、前記径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の基端側へ向かって延びる第2傾斜部と、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とを連結する先端部と、を有することを特徴とする。
また本発明は、軸線回りに回転させられる工具本体の先端外周部に、前記軸線回りに沿う周方向に互いに間隔をあけて複数の切れ刃を設け、被削材に対して前記工具本体を、前記周方向に回転させつつ前記軸線に直交する径方向に移動させて、被削材をフライス加工する方法であって、前記複数の切れ刃のうち、前記軸線に垂直な仮想平面に沿うように延びる平坦面加工切れ刃を用いて、被削材に平坦面を形成し、前記平坦面加工切れ刃を、複数設け、複数の前記平坦面加工切れ刃のうち、最も前記軸線方向の先端側に位置する最先端の平坦面加工切れ刃を、被削材の前記平坦面を仕上げ加工するさらい刃とし、前記複数の切れ刃のうち、前記さらい刃よりも前記軸線方向の先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃を用いて、被削材に前記平坦面から窪む断面V字状の凹溝を形成することを特徴とする。
本発明は、被削材に対して、フライス加工により平滑な平坦面を形成する点においては、従来のフライスカッタと同様であるが、平滑な平坦面のみを形成するのではなく、この平坦面に凹溝を形成する点に技術的特徴がある。
具体的に本発明では、平坦面を加工する切れ刃(平坦面加工切れ刃)よりも、工具先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃が備えられており、該凹溝加工切れ刃の第1傾斜部と第2傾斜部によって、被削材の平坦面には、断面V字状の凹溝が形成される。また、平坦面から窪む複数の凹溝の深さは、互いに略同一となる(つまり凹溝同士の深さが一定となる)。これにより被削材には、平坦面と、凹溝の最深部との間の距離(深さ)に概ね対応する面粗度とされた、所期する表面粗さを有する加工面が形成される。なお、凹溝の最深部の断面形状は、凹溝加工切れ刃の第1傾斜部と第2傾斜部とを連結する先端部の形状に対応して、例えばピンカド(鈍角、直角等)や小R等とされる。
つまり、従来のように被削材に平坦面をフライス加工しつつ、本発明ではこのフライス加工中(同一工程)において、該平坦面に凹溝をフライス加工する。このような簡単かつ特別な手法によって、被削材の加工面(フライス加工された面)に対して、所期する範囲(所定範囲)の面粗度を精度よく付与することができる。
具体的には、例えば、Rz(十点平均粗さ)で数μmから数十μm程度の所定範囲の面粗度とされた加工面を、被削材に高精度に形成できる。つまり、被削材の面粗度を、いわゆる細かすぎず粗すぎない面粗度(所望の上限値と下限値の間に収まる面粗度)として、要求される範囲に収めることができる。また、被削材の面粗度をコントロール(制御)することができる。
しかも、本発明によれば、切削送り、加工位置等の切削条件による影響を受けにくいことから、種々の切削条件において、所期する範囲の面粗度とされた加工面を、被削材に安定して形成することができる。
従って、例えば自動車用のクラッチハウジングやトランスミッションケースなどの、一対のケース体の合わせ面のフライス加工において本発明を適用することにより、該合わせ面に対して、所期する面粗度を精度よく付与して、合わせ面同士の間に介在するシール剤の保持性やシール効果を顕著に高めることができる。
また、本発明では、凹溝加工切れ刃の第1傾斜部と第2傾斜部によって、断面V字状の凹溝が形成されるため、一定の形状とされた凹溝を安定して複数形成することができる。また、フライス加工後において、被削材の加工面に凹溝が形成されたことを視認しやすくすることができる。なお、視認性を高める観点からは、凹溝加工切れ刃における第1傾斜部と第2傾斜部とを連結する先端部が、小Rよりはピンカド(鈍角、直角等)に形成されているとより反射量が大きくなり、好ましい。
以上より本発明によれば、製造を複雑にすることなくフライス加工のみによって、被削材に対して所期する範囲の面粗度を精度よく付与することができる。
また、フライスカッタに設けられた複数の平坦面加工切れ刃のうち、最も軸線方向の先端側に位置する最先端の平坦面加工切れ刃によって被削材がフライス加工されたときに、被削材の平坦面の最終的な軸線方向の高さ位置が決まる。そして、この最終的な高さ位置の平坦面に対して、凹溝加工切れ刃が所定深さの凹溝を形成する。従って、被削材に形成される加工面の面粗度が、所期する範囲の中でも狙い値(中央値)により近い高精度なものとなる。
また、本発明のフライスカッタにおいて、前記周方向のうち、前記工具本体が回転させられる方向を工具回転方向として、前記凹溝加工切れ刃の前記工具回転方向に、前記さらい刃が隣り合って配置されることが好ましい。
この場合、工具最先端に位置する平坦面加工切れ刃に対して、凹溝加工切れ刃がその直後(工具回転方向とは反対側の直後)に配置されている。従って、被削材の平坦面の最終的な軸線方向の高さ位置が決まった直後に、この平坦面に連続的に凹溝加工切れ刃が切り込んで凹溝が形成されるので、該凹溝の深さが所期する値に近いものになりやすく、また被削材に形成される加工面の面粗度も狙い値に近い高精度なものになりやすい。
すなわち、理論的には、工具本体における凹溝加工切れ刃の周方向位置が、最先端の平坦面加工切れ刃の周方向近傍に配置されていなくても、最先端の平坦面加工切れ刃に対する凹溝加工切れ刃の軸線方向先端側へ向けた切れ刃突き出し量(以下、突出量という)が正確にセットされれば、上記効果は得られるはずである。しかしながら実際には、フライスカッタの剛性や変形、セット時の測定誤差等が生じるため、突出量を正確にセットすることが難しい場合がある。そこで本発明では、工具最先端に位置する平坦面加工切れ刃に対して、凹溝加工切れ刃を直後(工具回転方向とは反対側の直後)に配置することにより、セットバラつき、変形による変位等を抑えて、突出量の精度を安定させることができるようにした。つまり、加工精度の安定性を考慮すると、最先端の平坦面加工切れ刃の周方向近傍に、凹溝加工切れ刃を配置することが望ましい。
詳しくは、一般にフライスカッタにおいては、工具本体の軸線が、被削材の加工予定面(フライス加工される面)に対して垂直とされずに、僅かに傾斜して配置される場合がある(いわゆるヒール角が付与されることがある)。また、スピンドル(主軸)の振れ(加工する平坦面からの振れ)が有ったりすると、平坦面からの凹溝の深さが所期する値から外れることが多くなる。
一方、本発明の上記構成によれば、工具本体にたとえヒール角が付与されていたり、スピンドルに振れが有ったりしても、最先端の平坦面加工切れ刃の直後に連続して凹溝加工切れ刃が切り込むため、工具本体の軸線の傾斜や振れ等による加工品位への影響を、確実に抑制することができる。
また、本発明のフライスカッタにおいて、前記平坦面加工切れ刃を前記周方向に回転させて形成される回転軌跡の、前記径方向の長さの範囲内又は前記径方向の内側に、前記凹溝加工切れ刃が配置されることが好ましい。
この場合、被削材の加工面に所期する面粗度を安定して付与しやすくなる。特に、平坦面加工切れ刃を周方向に回転させて形成される回転軌跡の径方向の長さの範囲内に、凹溝加工切れ刃が配置される場合には、凹溝加工切れ刃の平坦面加工切れ刃からの軸線方向先端側へ向けた突出量を正確に管理しやすくなる。また、平坦面加工切れ刃がフライス加工した平坦面に、凹溝加工切れ刃がほぼ同時に切り込む(ほぼ同じ送り位置において切り込む)こととなるため、被削材に所期する範囲の面粗度とされた加工面をより形成しやすくなる。
また、本発明のフライスカッタにおいて、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間に形成される角度が、鈍角又は直角であることが好ましい。
また、本発明の切削インサートにおいて、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間に形成される角度が、鈍角又は直角であることが好ましい。
この場合、凹溝加工切れ刃の第1傾斜部と第2傾斜部との間に形成される角度(先端角)が、鈍角又は直角であって鋭角とされてはいないので、該凹溝加工切れ刃により被削材に確実に凹溝を形成しつつも、この凹溝加工切れ刃の刃先強度が確保される。従って、凹溝加工切れ刃の欠損抑制効果が得られ、長期に亘り安定して凹溝をフライス加工できる。
また、被削材の加工面に形成される凹溝の溝幅を広く確保できるので、フライス加工後の凹溝の視認性を高めることができる。さらに、凹溝の溝幅が広い分、例えばこの加工面の表面近傍(凹溝の底部よりも開口部近傍)でシール剤を保持させやすくすることができ、よってシール効果の向上が期待できる。
また、本発明のフライスカッタにおいて、前記工具本体の先端外周部に、前記周方向に互いに間隔をあけて複数のインサート取付座が形成され、前記複数のインサート取付座に、前記切れ刃を有する切削インサートがそれぞれ着脱可能に装着されることが好ましい。
この場合、フライスカッタは、刃先交換式フライスカッタとされる。従って、例えば切れ刃が摩耗や損傷等した場合に、切削インサートを交換することでこの切れ刃を新しくすることができる。つまり、切れ刃の切れ味を高く維持して切削効率を安定化させることができ、また切れ刃の交換についても簡単かつ安価に対応可能である。
具体的に、例えば、凹溝加工切れ刃を有する切削インサートは、被削材に対して摺動する切れ刃部分(摺動辺)が長く、その分摩耗量が多くなるが、切削インサートを交換することで容易に対応できる。
また、本発明のフライス加工方法において、被削材に前記平坦面及び前記凹溝を形成することにより、該被削材の面粗度を、所定範囲に収めることが好ましい。
この場合、被削材に平坦面と凹溝を形成することにより、該被削材の面粗度を、所定範囲に収めるようにしたので、フライス加工された加工面において、例えばシール剤の保持性やシール効果を、所期する性能にまで確実に高めることができる。
また、本発明のフライス加工方法において、前記径方向の移動方向に沿う前記工具本体の軸線よりも前方に位置する前記凹溝加工切れ刃により、被削材に、前方に向けて凸となる円弧状の凹溝を形成し、前記径方向の移動方向に沿う前記軸線よりも後方に位置する前記凹溝加工切れ刃により、被削材に、後方に向けて凸となる円弧状の凹溝を形成し、これらの凹溝同士を交差させることで、被削材に網目状溝を形成することが好ましい。
この場合、フライス加工後の被削材の加工面には、凹溝同士が交差させられた網目状溝(クロスハッチング溝)が形成される。従って、被削材の加工面において、凹溝を見る角度等に係わらず視認しやすくすることができる。
また、被削材の加工面に凹溝を形成したことによる効果が安定したものとなる。具体的に、被削材の加工面に形成された凹溝同士は、互いに連通されているので、例えば凹溝にシール剤を保持するような場合において、シール剤を凹溝に供給した時点では加工面の各部で保持量に偏りが生じていたとしても、互いに連通された凹溝内を通して、このような偏りが自然に解消される。つまり、シール剤を加工面全体に均等に保持することができるので、シール効果が安定する。また、被削材の加工面において、凹溝同士の配置間隔が小さくなるので、該加工面の面粗度のバラつきを顕著に小さくすることができる。
また、本発明のフライス加工方法において、前記凹溝加工切れ刃は、前記軸線に直交する径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の先端側へ向かって延びる第1傾斜部と、前記第1傾斜部の前記径方向の外側に配置され、前記径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の基端側へ向かって延びる第2傾斜部と、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とを連結する先端部と、を有し、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間に形成される角度を、鈍角又は直角とし、被削材に付与する予定の面粗度に応じて、前記角度の大きさを設定することが好ましい。
この場合、凹溝加工切れ刃の第1傾斜部と第2傾斜部との間に形成される角度(先端角)が、鈍角又は直角であり、鋭角とされてはいないので、該凹溝加工切れ刃により被削材に確実に凹溝を形成しつつも、この凹溝加工切れ刃の刃先強度が確保される。従って、凹溝加工切れ刃の欠損抑制効果が得られ、長期に亘り安定して凹溝をフライス加工できる。
また、被削材の加工面に形成される凹溝の溝幅を広く確保できるので、フライス加工後の凹溝の視認性を高めることができる。さらに、凹溝の溝幅が広い分、例えばこの加工面の表面付近(凹溝の底部よりも開口部近傍)でシール剤を保持させやすくすることができ、よってシール効果の向上が期待できる。
さらに、上記構成によれば、被削材に付与する予定の面粗度(狙いの面粗度)に応じて、凹溝加工切れ刃の前記角度(先端角)の大きさを設定する(適宜選択する)ようにしたので、下記の作用効果が得られる。
例えば、被削材に付与する予定の面粗度が、5〜20μm、20〜40μm、40〜60μmのうちいずれかの範囲であるものとする。この場合において、被削材の加工面に対して、小さい面粗度である上記5〜20μmの範囲となるように凹溝を形成するときには、凹溝加工切れ刃の先端角の大きさを、例えば170°(大きな先端角)に設定する。また、中くらいの大きさの面粗度である上記20〜40μmの範囲となるように凹溝を形成するときには、凹溝加工切れ刃の先端角の大きさを、例えば160°(中くらいの大きさの先端角)に設定する。また、大きい面粗度である上記40〜60μmの範囲となるように凹溝を形成するときには、凹溝加工切れ刃の先端角の大きさを、例えば150°(小さな先端角)に設定する。つまり、被削材に付与する予定の面粗度が大きくなるに従い(凹溝の深さが深くなるに従い)、凹溝加工切れ刃の先端角の大きさを小さくしていくことにより、被削材の加工面に形成される凹溝の溝幅(溝開口部の幅)や溝本数を安定させて、見やすくすることができる。
また、本発明のフライス加工方法において、前記凹溝加工切れ刃を前記周方向に回転させて形成される回転軌跡の直径よりも、加工予定面の幅が小さくされた被削材を、カッターイン時とカッターアウト時とでオーバーラップさせてフライス加工するときに、前記加工予定面に対して前記工具本体を前記軸線方向に対向配置し、被削材に対して前記工具本体を、前記径方向に移動させつつ前記軸線方向に接近移動させてフライス削りした後、正面削りに移行し、前記加工予定面をすべて正面削りした後は、正面削りに移行した位置とオーバーラップする位置で、被削材に対して前記工具本体を、前記径方向に移動させつつ前記軸線方向に離間移動させることが好ましい。
このようにフライス加工された被削材の加工面には、加工開始時及び終了時に従来では意図せず形成されていた工具進入・退出による痕跡(いわゆるカッターマーク)が形成され難くなる。従って、本発明の上記構成によれば、被削材の加工面にカッターマークが形成されることを防止でき、該加工面全体にわたって凹溝が均等に形成されるため、上述した本発明の作用効果がこの加工面全体にわたって安定して奏功されることになる。
また、本発明のフライス加工方法において、被削材に対して前記工具本体を、前記径方向に移動させつつ前記軸線方向に接近移動させてフライス削りするときの、前記径方向の移動方向に沿う単位長さあたりの前記軸線方向への変位量が、正面削りをすべて終えた後、被削材に対して前記工具本体を、前記径方向に移動させつつ前記軸線方向に離間移動させるときの、前記径方向の移動方向に沿う単位長さあたりの前記軸線方向への変位量に比べて、小さくされていることが好ましい。
この場合、被削材に対して工具本体をカッターインするときのテーパ移動の傾き(移動方向に沿う単位長さあたりの軸線方向への変位量)が、工具本体をカッターアウトするときのテーパ移動の傾きよりも小さくされているので、特に正面削りを開始する際につきやすいカッターマークを、効果的に抑制することができる。
本発明のフライスカッタ、切削インサート及びフライス加工方法によれば、製造を複雑にすることなくフライス加工のみによって、被削材に対して所期する範囲の面粗度を精度よく付与することができる。
本発明の一実施形態に係る刃先交換式フライスカッタを示す縦断面図である。 刃先交換式フライスカッタを、工具軸線方向の先端から基端側へ向けて見た正面図である。 刃先交換式フライスカッタの外周の一部を拡大して示す側面図である。 刃先交換式フライスカッタに装着される複数の切削インサートのうち、平坦面加工切れ刃を備えた切削インサート(平坦面加工用インサート)を示す平面図である。 切削インサートの側面図である。 刃先交換式フライスカッタに装着される複数の切削インサートのうち、凹溝加工切れ刃を備えた切削インサート(凹溝加工用インサート)を示す平面図である。 (a)図4のA部(平坦面加工切れ刃)及び図6のB部(凹溝加工切れ刃)を拡大して示す図であるとともに、これら切れ刃同士の回転軌跡の位置関係を説明する図、(b)(a)の要部を拡大して示す図である。 (a)刃先交換式フライスカッタによるフライス加工(正面削り)を説明する側面図、(b)刃先交換式フライスカッタによるフライス加工で、被削材の加工面に網目状溝(クロスハッチ溝)を形成する技術を説明する上面図である。 被削材の加工面に形成された平坦面及び凹溝を説明する断面図である。 刃先交換式フライスカッタによるフライス加工において、(a)カッターイン(正面削りへの移行)時のツールパスを説明する図、(b)カッターアウト(正面削りの終了)時のツールパスを説明する図である。 切削インサート(凹溝加工用インサート)の変形例を示す平面図である。 (a)図4のA部(平坦面加工切れ刃)及び図11のD部(凹溝加工切れ刃)を拡大して示す図であるとともに、これら切れ刃同士の回転軌跡の位置関係を説明する図、(b)(a)の要部を拡大して示す図である。 切削インサート(凹溝加工用インサート)の変形例を示す平面図である。 (a)図4のA部(平坦面加工切れ刃)及び図13のE部(凹溝加工切れ刃)を拡大して示す図であるとともに、これら切れ刃同士の回転軌跡の位置関係を説明する図、(b)(a)の要部を拡大して示す図である。 切削インサート(凹溝加工用インサート)の変形例を示す平面図である。 (a)図4のA部(平坦面加工切れ刃)及び図15のH部(凹溝加工切れ刃)を拡大して示す図であるとともに、これら切れ刃同士の回転軌跡の位置関係を説明する図、(b)(a)の要部を拡大して示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る刃先交換式フライスカッタ1、及びこれに用いられるフライス加工用の切削インサート20、30について、図面を参照して説明する。
〔刃先交換式フライスカッタの概略構成〕
図1〜図3に示されるように、本実施形態の刃先交換式フライスカッタ1は、例えばアルミ合金等の金属材料からなる被削材にフライス加工を施す切削工具(転削工具)であり、具体的にこの刃先交換式フライスカッタ1は、被削材に主に正面削り(工具本体2の軸線Oに垂直な加工面を形成するフライス削り。図8(a)参照)を施すフライスカッタである。
本実施形態の刃先交換式フライスカッタ1は、鋼材等で形成された工具本体2と、超硬合金及び超高圧焼結体等の硬質材料で形成された切削インサート20、30と、を備えており、軸線O回りに回転させられる工具本体2の先端外周部に形成された凹状のインサート取付座4に、切れ刃7を有する切削インサート20、30が着脱可能に装着される。
図1及び図2において、工具本体2のインサート取付座4に取り付けられた切削インサート20、30は、その切れ刃7が、工具本体2の先端側及び径方向外側に突出して配置される。本実施形態の刃先交換式フライスカッタ1は、インサート取付座4が工具本体2に周方向に間隔をあけて例えば12箇所と多数形成されており、該インサート取付座4の数に応じて、切削インサート20、30も多数設けられた、いわゆる多刃のフライスカッタである。
刃先交換式フライスカッタ1は、その工具本体2の基端部(上端部)が工作機械の主軸等(不図示)に取り付けられ、軸線O回りの工具回転方向Tに回転させられつつ、軸線Oに交差する方向に送りを与えられて、工具本体2の先端外周部(下端外周部)に配設された切削インサート20、30の切れ刃7により、金属材料等の被削材をフライス削り(フライス加工)する。具体的に、この刃先交換式フライスカッタ1は、工具回転方向Tに回転させられつつ、軸線Oに直交する方向に送りを与えられることにより、被削材に主として正面削り(正面フライス加工)を施す。
そして、この刃先交換式フライスカッタ1によれば、後述する特別な構成により、被削材の加工面(フライス加工された面)に対して、所期する範囲(所定範囲)の面粗度を精度よく付与することができる。
〔本明細書で用いる向き(方向)の定義〕
本明細書では、図1〜図3において、工具本体2の軸線Oに沿う方向(軸線O方向)のうち、工作機械の主軸等に取り付けられる工具本体2の取付部(基端部)から、インサート取付座4へ向かう方向を先端側(図1及び図3における下側)といい、インサート取付座4から取付部へ向かう方向を基端側(図1及び図3における上側)という。
また、軸線Oに直交する方向を径方向といい、径方向のうち、軸線Oに接近する向きを径方向の内側といい、軸線Oから離間する向きを径方向の外側という。
また、軸線O回りに周回する方向を周方向といい、周方向のうち、切削時に工作機械の主軸等により工具本体2が回転させられる向きを工具回転方向Tといい、これとは反対の回転方向を、工具回転方向Tとは反対側(反工具回転方向)という。
〔工具本体〕
図1〜図3において、工具本体2は、円柱状又は円盤状をなしており、その中心軸(軸線O)回りに、工作機械の主軸等により回転させられる。本実施形態の例では、図1に示されるように、工具本体2が円柱状をなしている。
また、工具本体2には、該工具本体2を軸線O方向に貫通する取付孔5が形成されている。取付孔5の先端側の開口から該取付孔5内に不図示のボルト部材を挿入し、工作機械の主軸等に螺着することにより、該主軸等に対する工具本体2の移動が規制されて、工具本体2は固定される。
工具本体2の先端外周部には、周方向に互いに間隔をあけて、該先端外周部から凹状に切り欠かれるように複数のチップポケット6が形成されている。
これらのチップポケット6において、工具回転方向Tとは反対側に位置する部分には、切削インサート20、30が着脱可能に装着されるインサート取付座4がそれぞれ設けられている。インサート取付座4は、切削インサート20、30の形状に対応して、長方形穴状又は溝状をなしている。
また、工具本体2には、インサート取付座4に装着された切削インサート20、30の切れ刃7の軸線O方向の位置を調整可能な調整機構25が設けられている。
インサート取付座4及び調整機構25の構成については、切削インサート20、30の構成を説明した後に、別途詳述する。
なお、図3に符号35で示されるものは、刃先交換式フライスカッタ1の回転バランスを調整するためのバランスネジである。バランスネジ35は、工具本体2の外周面において、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられている。
図1及び図3において、チップポケット6には、インサート取付座4に装着された切削インサート20、30の切れ刃7近傍に向けて、クーラント(油性又は水溶性の切削液剤)を噴出するクーラント孔3が開口している。クーラント孔3は、その基端部が、工具本体2の基端部に装着される工作機械の主軸等を通して不図示のクーラント供給手段に接続し、その先端部が、チップポケット6に開口する。
〔切削インサート〕
本実施形態では、工具本体2の先端外周部に周方向に互いに間隔をあけて形成された複数のインサート取付座4に対して、フライス加工用であり互いに切れ刃7形状が異なる切削インサート20(平坦面加工用インサート)及び切削インサート30(凹溝加工用インサート)のうち、いずれかが装着される。切削インサート20、30は、フライス加工の中でも特に、正面フライス加工(正面削り)に用いられる正面フライス用インサートである。これらの切削インサート20、30同士は、互いの切れ刃7形状以外の構成については、概ね共通している。
切削インサート20、30のうち、凹溝加工用の切削インサート30は、工具本体2の複数のインサート取付座4のうち、少なくとも1つ以上に着脱可能に装着される。本実施形態では、工具本体2の複数のインサート取付座4のうち、凹溝加工用の切削インサート30が、1つのインサート取付座4のみに設けられ、それ以外の複数のインサート取付座4には、平坦面加工用の切削インサート20がそれぞれ設けられている。
図4〜図6に示されるように、切削インサート20、30は、工具本体2のインサート取付座4に取り付けられるインサート本体11と、インサート本体11のすくい面12と逃げ面13との交差稜線に形成され、該インサート本体11のうち最も先端側に配置される切れ刃7と、を備えている。
図2に示されるように、複数の切削インサート20、30の各切れ刃7は、工具本体2の先端外周部において、周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態の刃先交換式フライスカッタ1が備える複数の切れ刃7には、軸線Oに垂直な仮想平面に沿うように延びる平坦面加工切れ刃21(図4に示される平坦面加工用の切削インサート20の切れ刃7)と、平坦面加工切れ刃21よりも先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃31(図6に示される凹溝加工用の切削インサート30の切れ刃7)と、が含まれている。
〔インサート本体〕
図4〜図6において、切削インサート20、30のインサート本体11は、多角形板状をなしており、具体的に本実施形態では、インサート本体11が長方形板状をなしている。インサート取付座4に装着されたときに切削インサート20、30は、インサート本体11の長方形面(表裏面)の長手方向(長方形面が延在する方向。図4及び図6における上下方向)が、工具本体2の軸線O方向に沿うように配置される。また、インサート本体11の長方形面の短手方向(長方形面の幅方向。図4及び図6における左右方向)が、工具本体2の径方向に沿うように配置される。また、インサート本体11の厚さ方向(長方形面に直交する方向。図5における左右方向)が、工具本体2の周方向に沿うように配置される。
インサート本体11は、長方形板状をなす台金部14と、該台金部14の1つのコーナ部に接合され、切れ刃7が形成された三角形板状の切刃部15と、を備えている。
台金部14は、超硬合金等の硬質な焼結合金により形成されている。切刃部15は、台金部14よりも高硬度なダイヤモンド焼結体やcBN焼結体等の超高圧焼結体により形成されている。なお、インサート本体11は、台金部14及び切刃部15を含めたその全体が、超硬合金等の硬質な焼結合金により一体に形成されていてもよい。
本実施形態においては、切刃部15が、インサート本体11の表裏面をなす一対の多角形面(長方形面)11A、11Bのうち、表面となる一方の多角形面11Aの1つのコーナ部(この切削インサート20、30がインサート取付座4に装着されたときに刃先交換式フライスカッタ1の先端外周部に位置するコーナ部)に配置されて、台金部14に接合される。
台金部14における一方の多角形面11Aの前記コーナ部には、この多角形面11Aからインサート本体11の厚さ方向に窪む略直角三角形の切り欠き形状をなす凹部16が形成されており、この凹部16に切刃部15が、ロウ付け等により、又は台金部14と一体焼結されることにより、接合されている。
また、台金部14の一方の多角形面11Aには、該多角形面11Aから厚さ方向に窪むクランプ用凹所17が形成されている。本実施形態の例では、図4及び図6に示されるインサート平面視で、クランプ用凹所17がD字状をなしている。クランプ用凹所17の深さ(厚さ方向の長さ)は、インサート本体11の短手方向に沿う切刃部15から該切刃部15とは反対側の端部に向かうに従い浅くされており、つまりクランプ用凹所17の底面は、傾斜面とされている。
また、一方の多角形面11Aにおいて、クランプ用凹所17と、切刃部15との間に位置する部分には、この多角形面11Aから厚さ方向に突出するとともに該多角形面11A上を延びる切屑処理用リブ18が形成されている。切屑処理用リブ18は、図4及び図6に示されるインサート平面視において、略直角三角形状をなす切刃部15及び凹部16の斜辺に沿うように、直線状に延びて形成されている。
切屑処理用リブ18は、インサート本体11の前記コーナ部に位置する切刃部15を、該インサート本体11の長手方向及び短手方向から囲うように形成されている。従って、この切削インサート20、30がインサート取付座4に装着されたときに、図1に示されるように切屑処理用リブ18は、切刃部15を、工具本体2の軸線O方向に沿う基端側から、かつ径方向の内側から囲うように配置される。
図2に示されるように、インサート本体11の台金部14の厚さ(厚さ方向の長さ)、すなわちインサート本体11の表面となる一方の多角形面11Aと、裏面となる他方の多角形面11Bとの間の距離は、インサート本体11の短手方向(図2における工具本体2の径方向に相当)の切刃部15から、該切刃部15とは反対側の端部へ向かうに従い(工具本体2の径方向内側へ向かうに従い)厚くされている。
図4〜図6において、切刃部15は、一定の厚さの略直角三角形板状をなしている。切刃部15において厚さ方向を向く一対の三角形面のうち、裏面となる三角形面は凹部16に接合され、表面となる三角形面は、インサート本体11の一方の多角形面11Aの前記コーナ部において外部に露出させられて、すくい面12とされる。
また、切刃部15において厚さ方向に垂直な方向を向く外周面には、略長方形面状をなす3つの側面が形成されており、これら側面のうち、直角三角形板状の切刃部15の斜辺に位置する側面は、凹部16に接合される。また、3つの側面のうち、このインサート本体11がインサート取付座4に装着されたときに、工具本体2の先端側を向く側面及び工具本体2の径方向外側を向く側面は、逃げ面13とされる。
切削インサート20、30の切れ刃7は、切刃部15のすくい面12と逃げ面13の交差稜線に形成されている。本実施形態では、切削インサート20、30がインサート取付座4に装着されたときに、切れ刃7のすくい面12の軸方向すくい角(アキシャルレーキ角)がポジティブ角とされる。また、切れ刃7の逃げ面13には、逃げ角が付与される。
切れ刃7のうち、インサート本体11の一方の多角形面(長方形面)11Aの短辺に沿うように延びる切れ刃(短手方向に延びる切れ刃)は、切削インサート20、30がインサート取付座4に装着されたときに該インサート取付座4から工具本体2の先端側に向けて突出させられる正面刃とされる。また、切れ刃7のうち、一方の多角形面11Aの長辺に沿うように延びる切れ刃(長手方向に延びる切れ刃)は、切削インサート20、30がインサート取付座4に装着されたときに該インサート取付座4から工具本体2の径方向外側に向けて突出させられる外周刃とされる。
〔平坦面加工用の切削インサートの切れ刃〕
平坦面加工用の切削インサート20の切れ刃7について説明する。
図4及び図7(a)に示されるように、切削インサート20の切れ刃7は、正面刃21と、外周刃22と、これらを接続するコーナ刃23と、を有する。切削インサート20の正面刃21は、インサート本体11の短手方向に沿って直線状に延びる平坦面加工切れ刃21とされている。外周刃22は、インサート本体11の長手方向に沿って直線状に延びている。コーナ刃23は、凸曲線状をなしており、正面刃21の短手方向に沿うインサート外側の端縁(径方向の外縁)と、外周刃22の長手方向に沿うインサート外側の端縁(先端縁)とに、それぞれ接するように繋がっている。
また、切れ刃7のうち、平坦面加工切れ刃21に対してインサート本体11の短手方向に沿う外周刃22とは反対側に隣接する部分は、該平坦面加工切れ刃21との接続部分から前記反対側へ向かうに従い、インサート本体11の長手方向に沿うインサート内側へ向けて傾斜して延びている(長手方向のインサート内側へ向けて徐々に後退している)。
この切削インサート20がインサート取付座4に装着されたときに、平坦面加工切れ刃21は、工具本体2の軸線Oに垂直な仮想平面に沿うように延びて配置される。なお、平坦面加工切れ刃21は、軸線Oに垂直な仮想平面に沿うように延びていればよいことから、上述した直線状に限定されるものではなく、例えば、曲率半径の大きな凸曲線状をなしていてもよい。
図7(a)において、インサート本体11の短手方向に沿う平坦面加工切れ刃21の長さP(つまり平坦面加工切れ刃21の刃長)は、例えば2mm以下である。また、インサート本体11の短手方向に沿うコーナ刃23の長さQは、該コーナ刃23の曲率半径の大きさに対応しており、例えば0.4〜0.8mmである。
また本実施形態では、工具本体2の複数のインサート取付座4に対して、複数の切削インサート20が装着されることから、該工具本体2には、周方向に互いに間隔をあけて複数の平坦面加工切れ刃21が設けられている。これらの平坦面加工切れ刃21の軸線O方向の位置は、互いに略同一とされてはいるが、そのうち、最も軸線O方向の先端側に配置される最先端の平坦面加工切れ刃21は予め決められている(選択されている)。そして、この最先端の平坦面加工切れ刃21が、被削材の加工面に形成される平坦面を最終仕上げ加工するさらい刃とされる。図2においては、前記最先端の平坦面加工切れ刃21を有する切削インサート20に対して、それ以外の切削インサート20とは区別して、符号20Aを付している。
特に図示していないが、最先端の平坦面加工切れ刃21から、複数の平坦面加工切れ刃21のうち最も軸線O方向の基端側に配置される最基端の平坦面加工切れ刃21までの、軸線O方向に沿う距離(つまり正面振れ精度)は、管理値で例えば5μm以下であることが好ましい。
〔凹溝加工用の切削インサートの切れ刃〕
凹溝加工用の切削インサート30の切れ刃7について説明する。
図6及び図7(a)に示されるように、切削インサート30の切れ刃7は、正面刃31と、外周刃32と、これらを接続するコーナ刃33と、を有する。切削インサート30の正面刃31は、インサート本体11の長手方向に沿うインサート外側へ向けて突出する凸V字状をなす凹溝加工切れ刃31とされている。外周刃32は、インサート本体11の長手方向に沿って直線状に延びている。コーナ刃33は、長手方向及び短手方向に対して傾斜する直線状をなして面取り形状とされており、正面刃31の短手方向に沿うインサート外側の端縁(径方向の外縁)と、外周刃32の長手方向に沿うインサート外側の端縁(先端縁)とに、それぞれ鈍角に交差するように繋がっている。
また、切れ刃7のうち、凹溝加工切れ刃31に対してインサート本体11の短手方向に沿う外周刃32とは反対側に隣接する部分(内側刃36)は、該凹溝加工切れ刃31との接続部分から前記反対側へ向かうに従い、インサート本体11の長手方向に沿うインサート内側へ向けて傾斜して延びている(長手方向のインサート内側へ向けて徐々に後退している)。
図7(a)(b)は、平坦面加工用の切削インサート20の切れ刃7と、凹溝加工用の切削インサート30の切れ刃7の、軸線O回りの回転軌跡における相対位置(軸線O方向及び径方向の相対位置)を表している。
凹溝加工用の切削インサート30がインサート取付座4に装着されたときに、凹溝加工切れ刃31は、複数の平坦面加工切れ刃21のうち、最先端の平坦面加工切れ刃21よりも軸線O方向の先端側へ向けて突出させられる。
具体的には、最先端の平坦面加工切れ刃21に対して、凹溝加工切れ刃31が軸線O方向の先端側へ向けて突出する突出量Sが、被削材の加工面に付与する予定の所期する面粗度(狙いの面粗度)に応じて、所定値に設定される。なお、突出量S(所定値)を求めるには、狙いの面粗度に対して、凹溝加工切れ刃31の突出量Sを僅かに小さく設定する。例えば、下記式1、2は、この事を示す式である。
・式1「突出量(μm)=0.9248×狙いの面粗度Rz(μm)−0.3445」
・式2「突出量(μm)=0.9407×狙いの面粗度Rz(μm)−0.5984」
また、狙いの面粗度は、ばらつき(最大約8μm)を考慮し、要求される面粗度(予定の所期する範囲)の中央値にすることが望ましい。
なお、突出量S(所定値)は、上記式1、2以外の手法により求めてもよい。
図2に示されるように、本実施形態では、最先端の平坦面加工切れ刃21を有する平坦面加工用の切削インサート20A(最先端の切削インサート20)における工具回転方向Tとは反対側に隣り合って(つまり工具回転方向Tの直後に)、凹溝加工切れ刃31を有する凹溝加工用の切削インサート30が配置されている。言い換えると、凹溝加工切れ刃31の工具回転方向Tに、最先端の平坦面加工切れ刃21が隣り合って配置されている。
図7(a)(b)に示されるように、凹溝加工切れ刃31は、工具本体2の径方向の外側(図7における右側)へ向かうに従い軸線O方向の先端側へ向かって延びる第1傾斜部41と、第1傾斜部41の径方向の外側に配置され、径方向の外側へ向かうに従い軸線O方向の基端側へ向かって延びる第2傾斜部42と、第1傾斜部41と第2傾斜部42とを連結する先端部43と、を有している。このため凹溝加工切れ刃31は、全体として工具本体2の先端側(図7における下側)へ向けて凸となる凸V字状に形成される。
第1傾斜部41と第2傾斜部42との間に形成される角度θ(先端角)は、鈍角又は直角であり、本実施形態においては鈍角とされていて、具体的にはこの角度θが、例えば170°とされている。角度θの大きさは、被削材の加工面に付与する予定の所期する面粗度(狙いの面粗度)に応じて設定される。具体的に本実施形態では、所期する面粗度が5〜20μmと小さくされており、これに応じて凹溝加工切れ刃31の角度θの大きさが、平角(180°)に近い大きな鈍角とされている。所期する面粗度の大きさと、角度θの大きさとの関係については、別途後述する。
また、第1傾斜部41と第2傾斜部42とは、先端部43を通り工具本体2の軸線Oに平行な仮想直線Cを対称軸として、線対称形状に形成されている。
図7(a)(b)に示されるように、平坦面加工切れ刃21を工具本体2の軸線O回りに回転させて形成される回転軌跡の、径方向の長さの範囲内に、凹溝加工切れ刃31が配置されている。すなわち、平坦面加工切れ刃21の径方向に沿う刃長Pの範囲内に、凹溝加工切れ刃31の径方向位置が設定される。
図示の例では、凹溝加工切れ刃31が、平坦面加工切れ刃21の回転軌跡(刃長P)のうち、径方向の外側部分に対応して配置されている。ただしこれに限定されるものではなく、凹溝加工切れ刃31は、平坦面加工切れ刃21の回転軌跡のうち、径方向の内側部分に対応して配置されていてもよい。また、凹溝加工切れ刃31は、平坦面加工切れ刃21の回転軌跡のうち、径方向の内端部と外端部の間の中間部分(中央部を含む)に対応して配置されていてもよい。
図7(a)において、インサート本体11の短手方向に沿う外周刃32から凹溝加工切れ刃31の先端部43までの長さRは、Q≦R≦(P+Q)であり、好ましくは、R≒(P/2)+Qである。
例えば、平坦面加工切れ刃21が、曲率半径の大きな凸曲線状に形成されている場合には、該平坦面加工切れ刃21の回転軌跡のうち、最も軸線O方向の先端側に位置する最先端部分に対応して(最先端部分と同一の径方向位置となるように)、凹溝加工切れ刃31が配置されることが好ましい。これにより上記突出量Sが、精度よく所定値に設定される。
なお、実際の突出量Sは、上記式1、2等により算出した狙いの所定値に対して、管理値で例えば±1μmの範囲内であることが好ましい。
また本実施形態では、平坦面加工切れ刃21を周方向に回転させて形成される回転軌跡の径方向の長さの範囲内に、凹溝加工切れ刃31が配置されているが、これに限定されるものではない。例えば、平坦面加工切れ刃21の前記回転軌跡の径方向の内側に、凹溝加工切れ刃31が配置されていてもよい。
また本実施形態では、第1傾斜部41及び第2傾斜部42が、それぞれ直線状をなしており、先端部43は、これら傾斜部41、42の先端縁同士を接続する尖った角部(ピンカド)に形成されている。ただしこれに限定されるものではなく、第1傾斜部41及び第2傾斜部42は、例えば直線状以外の、凸曲線状、凹曲線状、及びこれらが複合して組み合わされた線状等に形成されていてもよい。また先端部43は、上記ピンカド以外の小R形状等に形成されていてもよい。
〔インサート取付座〕
図1〜図3に示されるように、インサート取付座4は、工具本体2の先端面と外周面とに開口して軸線O方向に延びており、長方形穴状又は溝状をなしている。インサート取付座4は、工具回転方向Tとは反対側を向く取付座壁面8と、工具回転方向Tを向く取付座壁面9と、該インサート取付座4の径方向内側の端部(奥部)に位置して径方向外側を向くとともに、取付座壁面8、9同士を接続する取付座底面10と、を備えている。
本実施形態の例では、取付座壁面8は、軸線Oを含む仮想平面に沿うように形成された平面状をなしており、取付座底面10は、この取付座壁面8と略垂直に交差する平面状に形成されている。また、取付座壁面9は、取付座底面10から径方向外側に向かうに従い取付座壁面8に近づくように傾斜する平面状に形成されている。
工具本体2の外周面のうち、インサート取付座4よりも工具回転方向Tに位置する部分には、不図示のネジ孔が開口しており、該ネジ孔は、工具本体2の外周面からインサート取付座4の取付座壁面8まで貫通して形成されている。ネジ孔は、工具本体2の外周面から工具回転方向Tとは反対側へ向かうに従い漸次径方向の内側へ向けて傾斜して延びている。このネジ孔には、切削インサート20、30のインサート本体11を押圧してインサート取付座4に固定するための押圧手段であるクランプネジ19が螺着する。クランプネジ19の先端は、切削インサート20、30のクランプ用凹所17内に当接する。
〔調整機構〕
各インサート取付座4の基端側には、工具本体2の外周面に開口して軸線O方向に延びる調整機構収容凹部24がそれぞれ形成されており、インサート取付座4の基端部は、調整機構収容凹部24内に連通している。調整機構収容凹部24内には、インサート取付座4に対する切削インサート20、30の軸線O方向の位置を調整する調整機構25が備えられている。
調整機構25は、軸部材26と、ナット部材27と、を有している。
軸部材26は、その両端部がネジ軸28、29とされており、一対のネジ軸28、29同士の間に位置する円板状の部分が、これらネジ軸よりも大径の操作部とされている。操作部の外周面には、レンチ等の作業用工具が係止される係止穴が形成されている。また、一対のネジ軸28、29同士は、互いにネジのピッチが異なっている。具体的には、軸部材26において軸線O方向の基端側に位置するネジ軸28のネジのピッチが、軸線O方向の先端側に位置するネジ軸29のネジのピッチよりも大きくされている。
軸部材26のうち基端側に位置するネジ軸28は、調整機構収容凹部24において軸線O方向の先端側を向く壁面に開口するネジ孔34に螺着している。軸部材26のうち先端側に位置するネジ軸29は、ナット部材27に螺着している。
ナット部材27の先端面は、切削インサート20、30のインサート本体11の基端面に当接している。ナット部材27の外周面には、レンチ等の作業用工具が係止される係止穴が形成されている。
作業用工具を操作して、軸部材26及びナット部材27を軸回りに回転させることにより、インサート取付座4に対する切削インサート20、30の軸線O方向の位置を調整することができる。
〔インサート取付座への切削インサートの装着姿勢及び装着手順〕
切削インサート20、30は、そのインサート本体11の一方の多角形面11A及び切刃部15のすくい面12を工具回転方向Tに向け、他方の多角形面11Bを工具回転方向Tとは反対側に向けて、工具本体2の先端から基端側へ向かってインサート取付座4に挿入される。この際、インサート本体11の側面(径方向内側を向く側面)と取付座底面10とが摺接し、一方の多角形面11Aと取付座壁面8とが摺接し、かつ、他方の多角形面11Bと取付座壁面9とが摺接しながら、切削インサート20、30はインサート取付座4に挿入される。このようにしてインサート取付座4内に挿入された切削インサート20、30は、該インサート取付座4に対して径方向外側へ向けた移動が規制されている。
また、工具本体2の外周面から取付座底面10までの、インサート取付座4の径方向の深さは、該インサート取付座4に配設された切削インサート20、30の切刃部15の外周刃22、32が、工具本体2の外周面から突出する大きさとされている。そして、インサート取付座4に挿入されたインサート本体11の基端面が、調整機構25のナット部材27の先端面に当接したところで、インサート本体11は軸線O方向に着座させられる。次いで、クランプネジ19を締め込むと、該クランプネジ19の先端面によって、インサート本体11のクランプ用凹所17の底面が略垂直に押圧され、切削インサート20、30はインサート取付座4に固定される。
この状態から、インサート取付座4に取り付けられた各切削インサート20の切刃部15の平坦面加工切れ刃21が、工具本体2の先端面から突出させられるとともに、軸線Oに垂直な1つの仮想平面上に位置するように、調整機構25によって位置調整を行う。また、切削インサート30の切刃部15の凹溝加工切れ刃31が、複数の平坦面加工切れ刃21のうち最先端の平坦面加工切れ刃21に対して、軸線O方向への突出量Sが所定値となるように、調整機構25によって位置調整を行う。
〔刃先交換式フライスカッタによるフライス加工方法〕
次に、本実施形態の刃先交換式フライスカッタ1を用いた被削材のフライス加工方法について、説明する。
図8(a)(b)に示されるように、刃先交換式フライスカッタ1により被削材Wをフライス加工(正面削り)するには、被削材Wに対して工具本体2を、周方向のうち工具回転方向Tに回転させつつ、軸線Oに直交する径方向に移動させる。図示の例では、被削材Wに対して工具本体2を、該被削材Wの延在方向に沿うように、径方向のうち移動方向Mに移動させている。なお、図8(b)に示される上面視において、被削材Wの延在方向に対して、工具本体2の径方向への移動方向Mを、僅かに傾斜させてもよい。
図7〜図9に示されるように、刃先交換式フライスカッタ1は、周方向に間隔をあけて設けられる複数の切れ刃7のうち、軸線Oに垂直な仮想平面に沿うように延びる平坦面加工切れ刃21(平坦面加工用の切削インサート20の切れ刃7)を用いて、被削材Wに平坦面Fを形成する。また、複数の切れ刃7のうち、平坦面加工切れ刃21よりも軸線O方向の先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃31(凹溝加工用の切削インサート30の切れ刃7)を用いて、被削材Wに平坦面Fから窪む断面V字状の凹溝Gを形成する。
つまり、被削材Wに平坦面F及び凹溝Gを形成することにより、該被削材Wの面粗度を、所定範囲に収めるようにした。具体的には、図9(a)(b)に示されるように、被削材Wの加工面に形成される凹溝G同士の間に、平坦面Fが残されるようにフライス加工を行い、これにより凹溝Gの深さ(平坦面Fから凹溝Gの底部までの距離)を一定に保持して、面粗度を所定範囲に収めるようにした。
図9(a)(b)に示されるフライス加工後の被削材Wの加工面においては、凹溝Gの溝幅が互いに同一となるように設定しており、具体的には、例えば溝幅の狙い値をともに0.25mmとしている。また、凹溝Gの深さを互いに同一としている。そして、図9(a)に対して図9(b)では、切削送り(刃当たりの送り)を1/2倍にしており、又は、切削送りは同じにして刃数(凹溝加工用の切削インサート30の数)を2倍としている。これにより、図9(a)に対して図9(b)では凹溝Gの溝ピッチが1/2倍(半分)とされている。一方、被削材Wの加工面の面粗度は、図9(a)(b)の両方ともに所期する範囲に収められている。
具体的には、切削送りは、その変化が凹溝G同士の間隔(溝ピッチ)の変化に影響し、カッタの単位回転当たり切削送り量と凹溝加工切れ刃31のカッタ取付刃数、位置で決定される。また、加工位置に関しては、図8(b)に示すように、カッタ中心からカッタ外径方向(径方向のうち移動方向Mに直交する方向)に向かうほど凹溝G同士の間隔が狭くなり、凹溝加工切れ刃31が取り付いているカッタ外径位置では凹溝G同士が重なり平坦面Fがゼロとなり、厳密には条件によって所期する範囲は決定される。なお、切削速度に関しては、加工面に平坦面Fが残されつつ正常に切削されている条件下では、切削速度の変化が面粗度に大きく影響することはない。
よって、所期する範囲の面粗度が得られるか否かは、加工面に平坦面Fが残されるか否かで判断でき、凹溝Gの幅とカッタ回転当たり切削送り量の関係により決定され、また、同時に有効な加工位置も決定される。
また、図8(b)に示されるように、フライス加工時には、径方向の移動方向Mに沿う工具本体2の軸線Oよりも前方(図8(b)における軸線Oの左側)に位置する凹溝加工切れ刃31(凹溝加工用の切削インサート30の切れ刃7)により、被削材Wに、前方に向けて凸となる円弧状の凹溝Gを形成し、径方向の移動方向Mに沿う軸線Oよりも後方(図8(b)における軸線Oの右側)に位置する凹溝加工切れ刃31により、被削材Wに、後方に向けて凸となる円弧状の凹溝Gを形成し、これらの凹溝G同士を交差させることで、被削材Wに網目状溝(クロスハッチング溝)を形成する。なお、このとき被削材Wの加工面には、前方に向けて凸となる円弧状の凹溝Gと、後方に向けて凸となる円弧状の凹溝Gとが、径方向の移動方向Mに沿って交互に形成される。
また、図10(a)に示されるものは、刃先交換式フライスカッタ1により被削材Wをフライス加工し始める加工初期(カッターイン時)における、被削材Wに対する刃先交換式フライスカッタ1の移動(ツールパス)を説明する図であり、図10(b)に示されるものは、刃先交換式フライスカッタ1による被削材Wのフライス加工を終了する加工末期(カッターアウト時)における、被削材Wに対する刃先交換式フライスカッタ1の移動(ツールパス)を説明する図である。
なお、図10(a)(b)においては、刃先交換式フライスカッタ1の加工径(詳しくは、凹溝加工切れ刃31を軸線O回りに回転させて形成される回転軌跡の直径)に対して、被削材Wの加工予定面(フライス加工する予定の面)の幅が小さくされている。
図10(a)に示されるように、加工初期においては、被削材Wの加工予定面に対して工具本体2の先端面を軸線O方向に対向配置し、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に接近移動させてフライス削りした後、正面削りに移行する。
具体的には、被削材Wに対して工具本体2を、まず径方向の移動方向Mに移動させて正面削りしていき(水平移動)、工具本体2が加工予定面の所定位置Jに配置されたときに、被削材Wに対して工具本体2を、径方向の移動方向Mに移動させつつ軸線O方向に接近移動(下降)させてランピング削りし(斜め下方にテーパ移動)、その後、また被削材Wに対して工具本体2を、径方向の移動方向Mに移動させて正面削りしていく(水平移動)。
なお、カッターイン時の上記ランピング削りは、例えば、移動方向Mに沿う長さX1=20mmあたりに、軸線O方向への下降量Z1=0.05mm程度とされた、緩やかな傾斜で加工が行われる。
図10(b)に示されるように、加工末期においては、被削材Wの加工予定面をすべて正面削りした後、上述の正面削りに移行した位置(所定位置J)とオーバーラップする位置で、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に離間移動させる。なお、上記加工方法は、被削材Wが椀状をなしており、該被削材Wの加工面が無端の環状をなしている場合に特に有効である。
具体的には、被削材Wに対して工具本体2を、径方向の移動方向Mに移動させて正面削りしていき(水平移動)、工具本体2が所定位置Jに配置されたときに、被削材Wの加工予定部全体の正面削りが終了する。なお、この正面削りの終了時には、上面視において工具本体2が、加工初期と同じ軌道上に一致させられるように移動する。その後、この所定位置Jからは、被削材Wに対して工具本体2を、径方向の移動方向Mに移動させつつ軸線O方向に離間移動(上昇)させていく(斜め上方にテーパ移動)。
なお、カッターアウト時の上記テーパ移動は、例えば、移動方向Mに沿う長さX2=100mmあたりに、軸線O方向への上昇量Z2=1mm程度とされた、緩やかな傾斜で行われる。
従って本実施形態では、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に接近移動させてフライス削りするとき(つまりカッターイン時)の、径方向の移動方向Mに沿う単位長さあたりの軸線O方向への変位量が、正面削りをすべて終えた後、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に離間移動させるとき(つまりカッターアウト時)の、径方向の移動方向Mに沿う単位長さあたりの軸線O方向への変位量に比べて、小さくされている。つまり、移動方向Mに沿う単位長さあたりの軸線O方向への変位量(つまりテーパ移動の傾き)は、カッターアウト時に比べて、カッターイン時の方が小さくされている。
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態では、被削材Wに対して、フライス加工により平滑な平坦面Fを形成する点においては、従来のフライスカッタと同様であるが、平滑な平坦面Fのみを形成するのではなく、この平坦面Fに凹溝Gを形成する点に技術的特徴がある。
具体的に本実施形態では、平坦面Fを加工する切れ刃7(平坦面加工切れ刃21)よりも、工具先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃31が備えられており、該凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と第2傾斜部42によって、被削材Wの平坦面Fには、断面V字状の凹溝Gが形成される。また、平坦面Fから窪む複数の凹溝Gの深さは、互いに略同一となる(つまり凹溝G同士の深さが一定となる)。これにより被削材Wには、平坦面Fと、凹溝Gの最深部との間の距離(深さ)に概ね対応する面粗度とされた、所期する表面粗さを有する加工面が形成される。なお、凹溝Gの最深部の断面形状は、凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と第2傾斜部42とを連結する先端部43の形状に対応して、例えば本実施形態のように鈍角の尖った角部(ピンカド)とされたり、或いは直角のピンカドや小R等とされる。
つまり、従来のように被削材Wに平坦面Fをフライス加工しつつ、本実施形態ではこのフライス加工中(同一工程)において、該平坦面Fに凹溝Gをフライス加工する。このような簡単かつ特別な手法によって、被削材Wの加工面(フライス加工された面)に対して、所期する範囲(所定範囲)の面粗度を精度よく付与することができる。
具体的には、例えば、Rz(十点平均粗さ)で数μmから数十μm程度の所定範囲の面粗度とされた加工面を、被削材Wに高精度に形成できる。つまり、被削材Wの面粗度を、いわゆる細かすぎず粗すぎない面粗度(所望の上限値と下限値の間に収まる面粗度)として、要求される範囲に収めることができる。また、被削材Wの面粗度をコントロール(制御)することができる。
しかも、本実施形態によれば、切削送り、加工位置等の切削条件による影響を受けにくいことから、種々の切削条件において、所期する範囲の面粗度とされた加工面を、被削材Wに安定して形成することができる。
従って、例えば自動車用のクラッチハウジングやトランスミッションケースなどの、一対のケース体の合わせ面のフライス加工において本実施形態を適用することにより、該合わせ面に対して、所期する面粗度を精度よく付与して、合わせ面同士の間に介在するシール剤の保持性やシール効果を顕著に高めることができる。
また、本実施形態では、凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と第2傾斜部42によって、断面V字状の凹溝Gが形成されるため、一定の形状とされた凹溝Gを安定して複数形成することができる。また、フライス加工後において、被削材Wの加工面に凹溝Gが形成されたことを視認しやすくすることができる。なお、視認性を高める観点からは、凹溝加工切れ刃31における第1傾斜部41と第2傾斜部42とを連結する先端部43が、小Rよりはピンカド(鈍角、直角等)に形成されているとより反射量が大きくなり、好ましい。
以上より本実施形態によれば、製造を複雑にすることなくフライス加工のみによって、被削材Wに対して所期する範囲の面粗度を精度よく付与することができる。
また本実施形態では、工具本体2に設けられる複数の切れ刃7に、平坦面加工切れ刃21が複数含まれており、これらの平坦面加工切れ刃21のうち、最も軸線O方向の先端側に位置する最先端の平坦面加工切れ刃21に対して、凹溝加工切れ刃31が、軸線O方向の先端側へ向けて突出しているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、刃先交換式フライスカッタ1に設けられた複数の平坦面加工切れ刃21のうち、最も軸線O方向の先端側に位置する最先端の平坦面加工切れ刃21によって被削材Wがフライス加工されたときに、被削材Wの平坦面Fの最終的な軸線O方向の高さ位置が決まる。そして、この最終的な高さ位置の平坦面Fに対して、凹溝加工切れ刃31が所定深さの凹溝Gを形成する。従って、被削材Wに形成される加工面の面粗度が、所期する範囲の中でも狙い値(中央値)により近い高精度なものとなる。
また本実施形態では、工具本体2における凹溝加工切れ刃31の工具回転方向Tに、最先端の平坦面加工切れ刃21が隣り合って配置されるので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、工具最先端に位置する平坦面加工切れ刃21に対して、凹溝加工切れ刃31がその直後(工具回転方向Tとは反対側の直後)に配置されている。従って、被削材Wの平坦面Fの最終的な軸線O方向の高さ位置が決まった直後に、この平坦面Fに連続的に凹溝加工切れ刃31が切り込んで凹溝Gが形成されるので、該凹溝Gの深さが所期する値に近いものになりやすく、また被削材Wに形成される加工面の面粗度も狙い値に近い高精度なものになりやすい。
すなわち、理論的には、工具本体2における凹溝加工切れ刃31の周方向位置が、最先端の平坦面加工切れ刃21の周方向近傍に配置されていなくても、最先端の平坦面加工切れ刃21に対する凹溝加工切れ刃31の軸線O方向先端側へ向けた突出量Sが正確にセットされれば、上記効果は得られるはずである。しかしながら実際には、フライスカッタ1の剛性や変形、セット時の測定誤差等が生じるため、突出量Sを正確にセットすることが難しい場合がある。そこで本実施形態では、工具最先端に位置する平坦面加工切れ刃21に対して、凹溝加工切れ刃31を直後(工具回転方向Tとは反対側の直後)に配置することにより、セットバラつき、変形による変位等を抑えて、突出量Sの精度を安定させることができるようにした。つまり、加工精度の安定性を考慮すると、最先端の平坦面加工切れ刃21の周方向近傍に、凹溝加工切れ刃31を配置することが望ましい。
詳しくは、一般にフライスカッタにおいては、工具本体2の軸線Oが、被削材Wの加工予定面(フライス加工される面)に対して垂直とされずに、僅かに傾斜して配置される場合がある(いわゆるヒール角が付与されることがある)。また、スピンドル(主軸)の振れ(加工する平坦面Fからの振れ)が有ったりすると、平坦面Fからの凹溝Gの深さが所期する値から外れることが多くなる。
一方、本実施形態の上記構成によれば、工具本体2にたとえヒール角が付与されていたり、スピンドルに振れが有ったりしても、最先端の平坦面加工切れ刃21の直後に連続して凹溝加工切れ刃31が切り込むため、工具本体2の軸線Oの傾斜や振れ等による加工品位への影響を、確実に抑制することができる。
なお、本実施形態では、工具本体2における凹溝加工切れ刃31の工具回転方向Tに、最先端の平坦面加工切れ刃21が隣り合って配置されるとしたが、これに代えて、凹溝加工切れ刃31の工具回転方向Tとは反対側に、最先端の平坦面加工切れ刃21が隣り合って配置されてもよい。この場合も、上記同様に加工精度を安定させることができる。
また本実施形態では、平坦面加工切れ刃21を軸線O回りに回転させて形成される回転軌跡の、径方向の長さPの範囲内又は径方向の内側に、凹溝加工切れ刃31が配置されるので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、被削材Wの加工面に所期する面粗度を安定して付与しやすくなる。特に、平坦面加工切れ刃21を周方向に回転させて形成される回転軌跡の径方向の長さPの範囲内に、凹溝加工切れ刃31が配置される場合には、凹溝加工切れ刃31の平坦面加工切れ刃21からの軸線O方向先端側へ向けた突出量Sを正確に管理しやすくなる。また、平坦面加工切れ刃21がフライス加工した平坦面Fに、凹溝加工切れ刃31がほぼ同時に切り込む(ほぼ同じ送り位置において切り込む)こととなるため、被削材Wに所期する範囲の面粗度とされた加工面をより形成しやすくなる。
なお、被削材Wとフライスカッタ1の位置関係において、カッタの凹溝加工切れ刃31の回転軌跡が重なる部分と、その近傍は面粗度が良くなり(平坦面Fが無くなり)面粗度をコントロールできないので、この部分での加工を避けるため、被削材Wの加工幅(加工面の幅)に対して、カッタ径とカッタ軌跡の適切な選定が必要である。
また、凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と第2傾斜部42との間に形成される角度θが、鈍角又は直角であり、本実施形態では鈍角とされているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と第2傾斜部42との間に形成される角度θ(先端角)が、鈍角又は直角であって鋭角とされてはいないので、該凹溝加工切れ刃31により被削材Wに確実に凹溝Gを形成しつつも、この凹溝加工切れ刃31の刃先強度が確保される。従って、凹溝加工切れ刃31の欠損抑制効果が得られ、長期に亘り安定して凹溝Gをフライス加工できる。
また、被削材Wの加工面に形成される凹溝Gの溝幅を広く確保できるので、フライス加工後の凹溝Gの視認性を高めることができる。さらに、凹溝Gの溝幅が広い分、例えばこの加工面の表面近傍(凹溝Gの底部よりも開口部近傍)でシール剤を保持させやすくすることができ、よってシール効果の向上が期待できる。
また本実施形態では、凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と第2傾斜部42とが、先端部43を通り軸線Oに平行な仮想直線Cを対称軸として、線対称形状に形成されているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、凹溝加工切れ刃31のうち、先端部43を通る仮想直線C(対称軸)の径方向内側に位置する第1傾斜部41と、径方向外側に位置する第2傾斜部42とで、形状が互いに線対称であるので、製造が容易である。
また、被削材Wの加工面に形成される凹溝Gの断面形状が、凹溝加工切れ刃31の形状に応じて線対称形状に形成されるので、該凹溝Gの視認性を、見る角度等に係わらず向上させることができる。
なお、凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と、第2傾斜部42とで、切削抵抗や切屑形態を均等化する観点からは、仮想直線Cを挟んで第1傾斜部41と第2傾斜部42とが、線対称形状に形成されていない(非線対称形状とされている)ことが好ましい。またこの場合、図16(a)(b)に示されるように、凹溝加工切れ刃31のすくい面を正面に見て、第1傾斜部41の傾き(軸線Oに垂直な仮想平面(不図示)に対する傾斜角)が、第2傾斜部42の傾きよりも小さくされていることが望ましい。
詳しくは、切削加工時においては、凹溝加工切れ刃31のうち、径方向内側に位置する第1傾斜部41における周速度が、径方向外側に位置する第2傾斜部42における周速度よりも小さくなる。このため、これら第1、第2傾斜部41、42の切削抵抗や切屑形態を均等化させるには、第1傾斜部41での切削量(単位切り込み当たりの削り代)を、第2傾斜部42での切削量よりも大きく設定する必要がある。
従って、凹溝加工切れ刃31は、先端部43を通り軸線Oに平行な仮想直線Cに関して非線対称形状に形成されることが好ましい。また、第1傾斜部41の傾きが、第2傾斜部42の傾きよりも小さくされている(寝かされている)ことにより、第2傾斜部42での切削量に比べて第1傾斜部41での切削量を大きく確保しやすくなることから、望ましい。
なお、第1、第2傾斜部41、42の傾斜角については、凹溝加工切れ刃31のすくい面を正面に見て、仮想直線Cを中心とした左右(径方向内側、径方向外側)の切れ刃部分(第1傾斜部41、第2傾斜部42)の切削バランスや切屑形態を考慮し、個別に角度が設定される。
また、本実施形態のフライスカッタは、工具本体2の先端外周部に、周方向に互いに間隔をあけて複数のインサート取付座4が形成され、複数のインサート取付座4に、切れ刃7を有する切削インサート20、30がそれぞれ着脱可能に装着される刃先交換式フライスカッタ1であるので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、例えば切れ刃7が摩耗や損傷等した場合に、切削インサート20、30を交換することでこの切れ刃7を新しくすることができる。つまり、切れ刃7の切れ味を高く維持して切削効率を安定化させることができ、また切れ刃の交換についても簡単かつ安価に対応可能である。
具体的に、例えば、凹溝加工切れ刃31を有する切削インサート30は、被削材Wに対して摺動する切れ刃部分(摺動辺)が長く、その分摩耗量が多くなるが、切削インサート30を交換することで容易に対応できる。
ここで、図11〜図16として、本実施形態で説明した凹溝加工用の切削インサート30の変形例を示す。
図11及び図12に示される変形例では、切削インサート30の切れ刃7は、インサート本体11の長手方向に沿うインサート外側へ向けて突出する凸V字状をなす凹溝加工切れ刃31(正面刃)と、インサート本体11の長手方向に沿って直線状に延びる外周刃32と、を有しており、これらの刃31、32同士がコーナ刃を介さずに直接接続されている。
また、凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と第2傾斜部42との間に形成される角度θ(先端角)は、鈍角とされていて、具体的にはこの角度θが、例えば120°とされている。また、第1傾斜部41と第2傾斜部42とは、先端部43を通り工具本体2の軸線Oに平行な仮想直線Cを対称軸として、線対称形状に形成されている。
図11及び図12に示される変形例においても、上述した本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、図13及び図14に示される変形例においても、切削インサート30の切れ刃7は、インサート本体11の長手方向に沿うインサート外側へ向けて突出する凸V字状をなす凹溝加工切れ刃31(正面刃)と、インサート本体11の長手方向に沿って直線状に延びる外周刃32と、を有しており、これらの刃31、32同士がコーナ刃を介さずに直接接続されている。
また、凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と第2傾斜部42との間に形成される角度θ(先端角)は、直角とされていて、具体的にはこの角度θが90°である。また、第1傾斜部41と第2傾斜部42とは、先端部43を通り工具本体2の軸線Oに平行な仮想直線Cを対称軸として、線対称形状に形成されている。
図13及び図14に示される変形例においても、上述した本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、図15及び図16に示される変形例では、切削インサート30の切れ刃7は、インサート本体11の長手方向に沿うインサート外側へ向けて突出する凸V字状をなす凹溝加工切れ刃31(正面刃)と、インサート本体11の長手方向に沿ってインサート外側(軸線O方向の先端側)へ向かうに従い漸次短手方向のインサート内側(径方向の内側)へ向けて傾斜する直線状の外周刃32と、を有している。
また、凹溝加工切れ刃31のうち、第1傾斜部41は、工具本体2の径方向の外側(図16における右側)へ向かうに従い軸線O方向の先端側へ向かって延びる直線状をなしており、第2傾斜部42は、第1傾斜部41の径方向の外側に配置され、径方向の外側へ向かうに従い軸線O方向の基端側へ向かって延びる凸曲線状をなしている。また、第1傾斜部41と第2傾斜部42とを連結する先端部43は、工具先端側へ向けて凸となる凸曲線状をなしている。また、第1傾斜部41と第2傾斜部42とは、先端部43を通り工具本体2の軸線Oに平行な仮想直線C(不図示)に関して、非線対称形状に形成されている(つまり線対称形状ではない)。
図15及び図16に示される変形例においても、上述した本実施形態と同様の作用効果を得ることができる(ただし上述の線対称形状による効果を除く)。
また本実施形態では、被削材Wに平坦面Fと凹溝Gを形成することにより、該被削材Wの面粗度を、所定範囲に収めるようにしたので、フライス加工された加工面において、例えばシール剤の保持性やシール効果を、所期する性能にまで確実に高めることができる。
また本実施形態では、径方向の移動方向Mに沿う工具本体2の軸線Oよりも前方に位置する凹溝加工切れ刃31により、被削材Wに、前方に向けて凸となる円弧状の凹溝Gを形成し、径方向の移動方向Mに沿う工具本体2の軸線Oよりも後方に位置する凹溝加工切れ刃31により、被削材Wに、後方に向けて凸となる円弧状の凹溝Gを形成し、これらの凹溝G同士を交差させることで、被削材Wに網目状溝を形成するようにしたので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、フライス加工後の被削材Wの加工面には、凹溝G同士が交差させられた網目状溝(クロスハッチング溝)が形成される。従って、被削材Wの加工面において、凹溝Gを見る角度等に係わらず視認しやすくすることができる。
また、被削材Wの加工面に凹溝Gを形成したことによる効果が安定したものとなる。具体的に、被削材Wの加工面に形成された凹溝G同士は、互いに連通されているので、例えば凹溝Gにシール剤を保持するような場合において、シール剤を凹溝Gに供給した時点では加工面の各部で保持量に偏りが生じていたとしても、互いに連通された凹溝G内を通して、このような偏りが自然に解消される。つまり、シール剤を加工面全体に均等に保持することができるので、シール効果が安定する。また、被削材Wの加工面において、凹溝G同士の配置間隔が小さくなるので、該加工面の面粗度のバラつきを顕著に小さくすることができる。
また本実施形態では、凹溝加工切れ刃31において、第1傾斜部41と第2傾斜部42との間に形成される角度θを、鈍角又は直角とし、被削材Wに付与する予定の面粗度に応じて、角度θの大きさを設定することとしたので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、凹溝加工切れ刃31の第1傾斜部41と第2傾斜部42との間に形成される角度θ(先端角)が、鈍角又は直角であり、鋭角とされてはいないので、上述した鈍角又は直角による作用効果と同様の作用効果が得られる。
さらに、上記構成によれば、被削材Wに付与する予定の面粗度(狙いの面粗度)に応じて、凹溝加工切れ刃31の角度θ(先端角)の大きさを設定する(適宜選択する)ようにしたので、下記の作用効果が得られる。
例えば、被削材Wに付与する予定の面粗度が、5〜20μm、20〜40μm、40〜60μmのうちいずれかの範囲であるものとする。この場合において、被削材Wの加工面に対して、小さい面粗度である上記5〜20μmの範囲となるように凹溝Gを形成するときには、凹溝加工切れ刃31の先端角θの大きさを、例えば170°(大きな先端角)に設定する。また、中くらいの大きさの面粗度である上記20〜40μmの範囲となるように凹溝Gを形成するときには、凹溝加工切れ刃31の先端角θの大きさを、例えば160°(中くらいの大きさの先端角)に設定する。また、大きい面粗度である上記40〜60μmの範囲となるように凹溝Gを形成するときには、凹溝加工切れ刃31の先端角θの大きさを、例えば150°(小さな先端角)に設定する。つまり、被削材Wに付与する予定の面粗度が大きくなるに従い(凹溝Gの深さが深くなるに従い)、凹溝加工切れ刃31の先端角θの大きさを小さくしていくことにより、被削材Wの加工面に形成される凹溝Gの溝幅(溝開口部の幅)や溝本数を安定させて、見やすくすることができる。
また本実施形態では、凹溝加工切れ刃31を周方向に回転させて形成される回転軌跡の直径(フライスカッタの加工径)よりも、加工予定面の幅が小さくされた被削材Wをフライス加工するときに、加工予定面に対して工具本体2を軸線O方向に対向配置し、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に接近移動させてフライス削りした後、正面削りに移行し、加工予定面をすべて正面削りした後は、正面削りに移行した位置(所定位置J)とオーバーラップする位置で、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に離間移動させることとしたので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、正面削り(工具本体2の軸線Oに垂直な加工面を形成するフライス削り)に移行する前においては、被削材Wの加工予定面に、工具本体2を軸線O方向に対向配置した状態から、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に接近移動させてフライス削りしていく。また、加工予定面を一通り正面削りした後には、正面削りに移行したときの位置とオーバーラップする位置において、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に離間移動させて、加工を終了する。
このようにフライス加工された被削材Wの加工面には、加工開始時及び終了時に従来では意図せず形成されていた工具進入・退出による痕跡(いわゆるカッターマーク)が形成され難くなる。従って、本実施形態の上記構成によれば、被削材Wの加工面にカッターマークが形成されることを防止でき、該加工面全体にわたって凹溝Gが均等に形成されるため、上述した本実施形態の作用効果がこの加工面全体にわたって安定して奏功されることになる。
なお、正面削りに移行するときと正面削りを終えるときにおいて、被削材Wに対して工具本体2を移動させる径方向の向きは、互いに同一であることが好ましい。具体的には、正面削りに移行するときに工具本体2が移動させられる径方向の移動方向Mに沿う軌道と、正面削りを終えるときに工具本体2が移動させられる径方向の移動方向Mに沿う軌道とが、互いに一致していることが好ましい。これにより、カッターマークの発生をさらに顕著に抑制することができ、加工面を高品位に仕上げることが可能になる。
また本実施形態では、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に接近移動させてフライス削りするときの、径方向の移動方向Mに沿う単位長さあたりの軸線O方向への変位量を、正面削りをすべて終えた後、被削材Wに対して工具本体2を、径方向に移動させつつ軸線O方向に離間移動させるときの、径方向の移動方向Mに沿う単位長さあたりの軸線O方向への変位量に比べて、小さくしたので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、被削材Wに対して工具本体2をカッターインするときのテーパ移動の傾き(移動方向Mに沿う単位長さあたりの軸線O方向への変位量)が、工具本体2をカッターアウトするときのテーパ移動の傾きよりも小さくされているので、特に正面削りを開始する際につきやすいカッターマークを、効果的に抑制することができる。
また本実施形態では、最先端の平坦面加工切れ刃21に対して、凹溝加工切れ刃31が軸線O方向の先端側へ向けて突出する突出量Sが、所期する面粗度に応じて所定値に設定されているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの場合、複数の平坦面加工切れ刃21のうち、最先端の平坦面加工切れ刃21に対して、凹溝加工切れ刃31が軸線O方向の先端側へ向けて突出する突出量Sを、所期する面粗度に応じた所定値に予め設定することにより、被削材Wに形成される加工面の面粗度が、さらに高精度なものとなる。具体的に、突出量Sは、上述した式1、2等により説明したように、所期する面粗度(狙いの面粗度)よりも小さい値に設定されることが好ましい。
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前述の実施形態では、フライスカッタとして、刃先交換式フライスカッタ1を用いて説明したが、これに限定されるものではない。すなわち本発明は、例えば、工具本体の先端外周部に、軸線回りに互いに間隔をあけて複数の切れ刃チップがろう付け等により接合された、刃先交換式ではないフライスカッタにも適用可能である。
また、前述の実施形態では、工具本体2において、凹溝加工切れ刃31の工具回転方向T又は工具回転方向Tとは反対側に、最先端の平坦面加工切れ刃21が隣り合って配置されることとしたが、これに限定されるものではなく、これらの刃31、21同士が周方向に隣り合っていなくてもよい。ただし、前述の実施形態のように構成されることにより、被削材Wの加工面の面粗度を顕著に安定させることができ、好ましい。
また、前述の実施形態では、工具本体2の複数のインサート取付座4のうち、凹溝加工用の切削インサート30が、1つのインサート取付座4のみに設けられ、それ以外の複数のインサート取付座4には、平坦面加工用の切削インサート20がそれぞれ設けられていることとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、工具本体2の複数のインサート取付座4に対して、凹溝加工用の切削インサート30が、複数のインサート取付座4に設けられていてもよい(つまり、工具本体2に凹溝加工用の切削インサート30が2つ以上設けられていてもよい)。この場合、フライス加工時の切削送り等を高めて、加工効率を向上することが可能になる。なお、凹溝加工用の切削インサート30が複数設けられる場合には、工具本体2においてこれら切削インサート30同士が、互いに周方向均等に間隔をあけて配置されることにより、被削材Wの加工面に形成される凹溝G同士の溝ピッチが均等となり、好ましい。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
1 刃先交換式フライスカッタ(フライスカッタ)
2 工具本体
4 インサート取付座
7 切れ刃
11 インサート本体
12 すくい面
13 逃げ面
20 切削インサート(平坦面加工用の切削インサート)
21 平坦面加工切れ刃(正面刃)
30 切削インサート(凹溝加工用の切削インサート)
31 凹溝加工切れ刃(正面刃)
41 第1傾斜部
42 第2傾斜部
43 先端部
C 仮想直線(対称軸)
F 平坦面
G 凹溝
J 所定位置(正面削りに移行した位置)
M 径方向の移動方向
O 軸線
P 長さ(平坦面加工切れ刃の径方向の長さ、刃長)
T 工具回転方向
W 被削材
θ 角度(先端角)

Claims (13)

  1. 軸線回りに回転させられる工具本体と、
    前記工具本体の先端外周部に、前記軸線回りに沿う周方向に互いに間隔をあけて設けられる複数の切れ刃と、を備えたフライスカッタであって、
    前記複数の切れ刃には、
    前記軸線に垂直な仮想平面に沿うように延びる平坦面加工切れ刃と、
    前記平坦面加工切れ刃よりも前記軸線方向の先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃と、が含まれ、
    前記凹溝加工切れ刃は、
    前記軸線に直交する径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の先端側へ向かって延びる第1傾斜部と、
    前記第1傾斜部の前記径方向の外側に配置され、前記径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の基端側へ向かって延びる第2傾斜部と、
    前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とを連結する先端部と、を有し、
    前記平坦面加工切れ刃が、複数設けられており、
    複数の前記平坦面加工切れ刃のうち、最も前記軸線方向の先端側に位置する最先端の平坦面加工切れ刃は、被削材の加工面に形成される平坦面を仕上げ加工するさらい刃とされ、
    前記さらい刃に対して、前記凹溝加工切れ刃が、前記軸線方向の先端側へ向けて突出していることを特徴とするフライスカッタ。
  2. 請求項に記載のフライスカッタであって、
    前記周方向のうち、前記工具本体が回転させられる方向を工具回転方向として、
    前記凹溝加工切れ刃の前記工具回転方向に、前記さらい刃が隣り合って配置されることを特徴とするフライスカッタ。
  3. 請求項1又は2に記載のフライスカッタであって、
    前記平坦面加工切れ刃を前記周方向に回転させて形成される回転軌跡の、前記径方向の長さの範囲内又は前記径方向の内側に、前記凹溝加工切れ刃が配置されることを特徴とするフライスカッタ。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載のフライスカッタであって、
    前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間に形成される角度が、鈍角又は直角であることを特徴とするフライスカッタ。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載のフライスカッタであって、
    前記工具本体の先端外周部に、前記周方向に互いに間隔をあけて複数のインサート取付座が形成され、
    前記複数のインサート取付座に、前記切れ刃を有する切削インサートがそれぞれ着脱可能に装着されることを特徴とするフライスカッタ。
  6. 軸線回りに回転させられる工具本体の先端外周部に、前記軸線回りに沿う周方向に互いに間隔をあけて形成された複数のインサート取付座のうち、少なくとも1つ以上に着脱可能に装着されるフライス加工用の切削インサートであって、
    前記インサート取付座に取り付けられるインサート本体と、
    前記インサート本体のすくい面と逃げ面との交差稜線に形成され、該インサート本体のうち最も前記軸線方向の先端側に配置される切れ刃と、を備え、
    前記インサート本体は長方形板状をなし、前記インサート本体の長手方向は前記軸線方向に沿うように配置され、
    前記切れ刃は、
    前記インサート本体の長手方向に沿って延びる外周刃と、
    前記インサート本体の長手方向に沿う前記軸線方向の先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃と、を有し、
    前記凹溝加工切れ刃は、
    前記軸線に直交する径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の先端側へ向かって延びる第1傾斜部と、
    前記第1傾斜部の前記径方向の外側に配置され、前記径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の基端側へ向かって延びる第2傾斜部と、
    前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とを連結する先端部と、を有することを特徴とする切削インサート。
  7. 請求項に記載の切削インサートであって、
    前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間に形成される角度が、鈍角又は直角であることを特徴とする切削インサート。
  8. 軸線回りに回転させられる工具本体の先端外周部に、前記軸線回りに沿う周方向に互いに間隔をあけて複数の切れ刃を設け、
    被削材に対して前記工具本体を、前記周方向に回転させつつ前記軸線に直交する径方向に移動させて、被削材をフライス加工する方法であって、
    前記複数の切れ刃のうち、前記軸線に垂直な仮想平面に沿うように延びる平坦面加工切れ刃を用いて、被削材に平坦面を形成し、
    前記平坦面加工切れ刃を、複数設け、
    複数の前記平坦面加工切れ刃のうち、最も前記軸線方向の先端側に位置する最先端の平坦面加工切れ刃を、被削材の前記平坦面を仕上げ加工するさらい刃とし、
    前記複数の切れ刃のうち、前記さらい刃よりも前記軸線方向の先端側へ向けて突出する凹溝加工切れ刃を用いて、被削材に前記平坦面から窪む断面V字状の凹溝を形成することを特徴とするフライス加工方法。
  9. 請求項に記載のフライス加工方法であって、
    被削材に前記平坦面及び前記凹溝を形成することにより、該被削材の面粗度を、所定範囲に収めることを特徴とするフライス加工方法。
  10. 請求項又はに記載のフライス加工方法であって、
    前記径方向の移動方向に沿う前記工具本体の軸線よりも前方に位置する前記凹溝加工切れ刃により、被削材に、前方に向けて凸となる円弧状の凹溝を形成し、
    前記径方向の移動方向に沿う前記軸線よりも後方に位置する前記凹溝加工切れ刃により、被削材に、後方に向けて凸となる円弧状の凹溝を形成し、
    これらの凹溝同士を交差させることで、被削材に網目状溝を形成することを特徴とするフライス加工方法。
  11. 請求項8〜10のいずれか一項に記載のフライス加工方法であって、
    前記凹溝加工切れ刃は、
    前記軸線に直交する径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の先端側へ向かって延びる第1傾斜部と、
    前記第1傾斜部の前記径方向の外側に配置され、前記径方向の外側へ向かうに従い前記軸線方向の基端側へ向かって延びる第2傾斜部と、
    前記第1傾斜部と前記第2傾斜部とを連結する先端部と、を有し、
    前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との間に形成される角度を、鈍角又は直角とし、
    被削材に付与する予定の面粗度に応じて、前記角度の大きさを設定することを特徴とするフライス加工方法。
  12. 請求項8〜11のいずれか一項に記載のフライス加工方法であって、
    前記凹溝加工切れ刃を前記周方向に回転させて形成される回転軌跡の直径よりも、加工予定面の幅が小さくされた被削材を、カッターイン時とカッターアウト時とでオーバーラップさせてフライス加工するときに、
    前記加工予定面に対して前記工具本体を前記軸線方向に対向配置し、被削材に対して前記工具本体を、前記径方向に移動させつつ前記軸線方向に接近移動させてフライス削りした後、正面削りに移行し、
    前記加工予定面をすべて正面削りした後は、正面削りに移行した位置とオーバーラップする位置で、被削材に対して前記工具本体を、前記径方向に移動させつつ前記軸線方向に離間移動させることを特徴とするフライス加工方法。
  13. 請求項12に記載のフライス加工方法であって、
    被削材に対して前記工具本体を、前記径方向に移動させつつ前記軸線方向に接近移動させてフライス削りするときの、前記径方向の移動方向に沿う単位長さあたりの前記軸線方向への変位量が、
    正面削りをすべて終えた後、被削材に対して前記工具本体を、前記径方向に移動させつつ前記軸線方向に離間移動させるときの、前記径方向の移動方向に沿う単位長さあたりの前記軸線方向への変位量に比べて、小さくされていることを特徴とするフライス加工方法。
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