JP6814593B2 - 幹細胞及び投与システム - Google Patents
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幹細胞投与による治療においては、例えば再生すべき部位(患者の欠損部位)に幹細胞が効率的に受容されることが、治療の効率を大きく左右する。
しかし、投与した幹細胞を希望する部位に受容される様に誘導する技術は、現時点では確立していない。
本発明は係る着目に基づいており、本発明の幹細胞は、幹細胞を投与したい(身体の)部位の細胞における温度受容体が活性化する温度に温度調整されていることを特徴としている。
例えば、肺であれば温度刺激により温度受容体TRPM8が活性化される28℃以下であるか、或いは温度受容体TRPA1が活性化される17℃以下であるのが好ましく、例えば10℃に温度調整するのが好ましい。
また、前立腺の場合には、温度刺激により温度受容体TRPM8が活性化される28℃以下であるのが好ましく、或いはTRPM8は活性化されるがTRPA1は活性化されない温度である28℃〜17℃であるのが好ましく、例えば20℃に温度調整されるのが好ましい。
そして、脂肪由来の幹細胞或いは臍帯由来の幹細胞は、血清を含まない培地(無血清培地)により培養されることが好ましい。
そして前記温度調整システム(10)は、前記幹細胞を一時的に貯留して患者に投与する幹細胞投与装置(1:幹細胞貯留槽)と、加熱装置(2A:ヒーター)を備え幹細胞投与装置(1)に貯留された幹細胞の温度を調整(制御)する幹細胞温度調整装置(2:調温槽)と、幹細胞温度調整装置(2:調温槽)の加熱量を制御する加熱制御装置(3:サーモスタット)と、制御装置(4:コントロールユニット)を有し、
制御装置(4:コントロールユニット)は、前記患者における幹細胞を投与するべき部位を決定し、当該部位における細胞の温度受容体が活性化する温度を調整するべき幹細胞の温度として、制御信号(温度制御信号)を加熱制御装置(3:サーモスタット)に対して発信する機能を有することが好ましい。
本発明によれば、幹細胞を投与したい(身体の)部位の温度受容体が活性化する温度に温度調整されているので、本発明の幹細胞が、再生治療を受ける患者に投与されれば、当該患者の再生したい箇所に幹細胞が受容され易くなり、再生治療の効率が向上する。
そして無血清培地により幹細胞を培養すれば、外来ウイルスによる汚染、異種タンパク質混入に起因するアレルギー反応、幹細胞の不均一製等の問題を防止することが出来る。
図1において全体を符号100で示す幹細胞投与システムは、医療機関200から再生治療等を受ける患者Pの再生部位に関する情報を取得し、幹細胞を培養して、培養した幹細胞を患者Pに投与するシステムである。そして幹細胞投与システム100は、培養した幹細胞を患者Pに投与するに際して、投与する幹細胞を所定の温度に調整したうえで患者Pに投与する機能を有しており、ここで「所定の温度」は、患者Pの再生部位(幹細胞を投与したい部位)における細胞の温度受容体が活性化する温度である。
幹細胞投与システム100は温度調整システム10と幹細胞培養装置20を備えている。ここで温度調整システム10は、幹細胞の温度を、幹細胞を投与したい(再生医療の対象となる)身体部位の細胞における温度受容体が活性化する温度に調整する機器である。そして幹細胞培養装置20は、温度調整システム10による幹細胞の温度調整に先立ち、医療機関200の幹細胞培養の指示(実行ラインAL1)に基づき幹細胞を培養する装置である。
幹細胞貯留槽1は、幹細胞培養装置20で培養された幹細胞を患者Pに投与する直前の段階で一時的に貯留し、幹細胞の温度を所定温度(再生部位における細胞の温度受容体が活性化する温度)に調整した上で、患者Pに投与する機能を有する。ここで、幹細胞貯留槽1における温度調整機能は、調温槽2、サーモスタット3と協働して実行される。
調温槽2中の複数個所(図1では水面近傍及び底部近傍)に温度センサ2Bが設けられており、温度センサ2Bは調温槽2に充填された伝熱流体Wの温度を検出し、当該検出結果(水温)は情報伝達ラインIL1を介してサーモスタット3に送信される。温度センサ2Bの検出結果を受け、サーモスタット3から調温槽2のヒーター2Aには調温槽2の加熱量を制御する信号(加熱制御信号)が情報伝達ラインIL2を介して送信される。
調温槽2の底部近傍には対流発生装置2Cが設けられ、対流発生装置2Cは調温槽2中の水Wを対流し(矢印C)、伝熱流体Wの温度を均一に保っている。調温槽2中の伝熱流体Wを対流(C)し且つ複数個所で液温(水温)を計測することにより、調温槽2内の液温を均一に維持して、幹細胞貯留槽1内の幹細胞の温度を正確に調整している。
コントロールユニット4は、再生部位特定ブロック4A、幹細胞温度決定ブロック4B、記憶ブロック4Cを備える。
幹細胞温度決定ブロック4Bは、(再生部位特定ブロック4Aで特定された)幹細胞を投与するべき部位の情報を受信した後、情報伝達ラインIL7を介して記憶ブロック4Cから「幹細胞を投与したい身体の部位における細胞の温度受容体が活性化する温度(適合温度)」のデータを取得して、患者Pに投与するべき部位における細胞の温度受容体が活性化する温度(適合温度)を決定する機能を有している。
ここで記憶ブロック4Cは、再生部位特定ブロック4Aで特定した幹細胞を投与するべき部位の情報や、「身体の各部位における細胞の温度受容体が活性化する温度(適合温度)」のデータを記憶する機能を有し、記憶ブロック4Cに蓄積された情報は、必要に応じてブロックに送信される。
幹細胞培養装置20で培養された幹細胞は、ラインAL3を介して温度調整システム10内の幹細胞貯留槽1に送られ一時貯留される。その際に、温度調整システム10により、患者Pの幹細胞を投与したい部位における細胞の温度受容体が活性化する温度に調温される。
温度調整システム10で所定温度(患者Pの幹細胞を投与したい部位における細胞の温度受容体が活性化する温度:適合温度)に調整された幹細胞は、公知の装置を用いてラインAL4を介して、幹細胞貯留槽1(幹細胞投与装置)から患者Pに投与される。
図1では、幹細胞投与システム100を医療機関200と別体に示しているが、幹細胞投与システム100を医療機関200の一部として構成することが可能である。
図2のステップS1では、(例えば医療機関200からの情報に基づいて)患者Pの脂肪或いは臍帯より、幹細胞培養装置20(図1)で幹細胞を培養する(脂肪由来の幹細胞或いは臍帯由来の幹細胞を培養する)。
次のステップS2では、培養された幹細胞を患者Pへの投与直前の段階で、幹細胞貯留槽1(図1)へ一時的に貯留する。そしてステップS3に進む。
次のステップS4では、ステップS3で温度調整された幹細胞を患者Pに投与する。幹細胞の投与は、公知の装置を用いて公知の技術により行われる。
幹細胞が患者Pに投与されたならば、図2で示す手順は完了する。
また、投与したい箇所が例えば前立腺の場合には、温度刺激により温度受容体TRPM8が活性化される28℃以下、より好ましくは、温度受容体TRPM8は活性化されるが温度受容体TRPA1は活性化されない28℃〜17℃である。図示の実施形態では、前立腺の場合には20℃に温度調整される。
図示の実施形態では、当該無血清培地は、還元型グルタチオンおよびフィブロネクチンを含み、培地中の還元型グルタチオンの濃度が20μg/ml〜200μg/mlであり、培地中のフィブロネクチンがカイコ発現リコンビナントタンパク質であり、エコチン及び分子量4000以下の超低分子ヒアルロン酸を含んでいる。
図示の実施形態において、「幹細胞を投与したい部位の温度受容体が活性化する温度」は4℃〜40℃の範囲内であり、また、伝熱流体Wを介して(いわゆる「湯せん」により)温度調整(制御)を行っているので、培養された幹細胞に急激な温度変化を与えて幹細胞が損傷する恐れがない。
そして無血清培地により幹細胞を培養しているので、外来ウイルスによる汚染、異種タンパク質混入に起因するアレルギー反応、幹細胞の不均一製等の問題を防止することが出来る。
肺が欠損して肺機能が低下し、肺の再生治療が必要な複数の患者について、脂肪から培養した幹細胞と、臍帯から培養した幹細胞の各々について、常温に保持した状態で投与した場合と、肺を構成する細胞における温度受容体TRPM8及び温度受容体TRPA1が活性化される温度である10℃に温度調整して投与した場合を比較した。
なお、脂肪由来の幹細胞も、臍帯由来の幹細胞も、血清を含まない培地(無血清培地)であって、還元型グルタチオンおよびフィブロネクチンを含み、培地中の還元型グルタチオンの濃度が20μg/ml〜200μg/mlであり、培地中のフィブロネクチンがカイコ発現リコンビナントタンパク質であり、さらにエコチンと分子量4000以下の超低分子ヒアルロン酸を含む培地により培養した。
実験例1から、肺を構成する細胞における温度受容体が活性化する温度に保持した幹細胞を投与することにより、肺の再生治療の効率が向上することが確認できた。
前立腺の再生治療を行う複数の患者について、常温に保持した状態で投与した場合と、前立腺を構成する細胞における温度受容体TRPM8は活性化されるが温度受容体TRPA1は活性化されない温度である20℃に保持した場合を比較した。
実験例2においても、実験例1と同様に、脂肪から培養した幹細胞と、臍帯から培養した幹細胞の各々について、比較した。培養に使用した培地についても、実験例1と同様である。
実験例2から、前立腺を構成する細胞における温度受容体TRPM8は活性化されるが温度受容体TRPA1は活性化されない温度である20℃に保持した幹細胞を投与することにより、前立腺の再生治療の効率が向上することが確認できた。
2・・・調温槽(幹細胞温度調整装置)
2A・・・ヒーター(加熱装置)
2B・・・温度センサ
2C・・・対流発生装置
3・・・サーモスタット(加熱制御装置)
4・・・コントロールユニット(制御装置)
4A・・・再生部位特定ブロック
4B・・・幹細胞温度決定ブロック
4C・・・記憶ブロック
10・・・温度調整システム
20・・・幹細胞培養装置
100・・・幹細胞投与システム
200・・・医療機関
P・・・患者
Claims (4)
- 幹細胞を患者に投与するための幹細胞投与システムにおいて、患者に投与する幹細胞を培養する培養装置と、幹細胞を投与したい部位の温度受容体が活性化する温度に幹細胞の温度を調整する幹細胞温度調整装置と、幹細胞温度調整装置で温度調整された幹細胞を患者に投入する幹細胞投与装置を備えていることを特徴とする幹細胞投与システム。
- 前記温度が4℃〜28℃の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の幹細胞投与システム。
- 前記幹細胞温度調整装置が伝熱流体を介して温度調整を行うことを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の幹細胞投与システム。
- 前記幹細胞温度調整装置は幹細胞を患者に投与する直前の段階で一時的に貯留し、前記幹細胞の温度を所定温度に調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の幹細胞投与システム。
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JP2016202218A JP6814593B2 (ja) | 2016-10-14 | 2016-10-14 | 幹細胞及び投与システム |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2016202218A JP6814593B2 (ja) | 2016-10-14 | 2016-10-14 | 幹細胞及び投与システム |
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JP2016202218A Active JP6814593B2 (ja) | 2016-10-14 | 2016-10-14 | 幹細胞及び投与システム |
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