<第1実施形態>
本実施形態に係るクラッチ装置100について詳細な説明を行う前に、当該クラッチ装置100を備えることが可能な農作業機10の概略構成について説明する。本実施形態においては、特に代掻き作業のための農作業機10を例示して説明する。しかし、後述するクラッチ装置100の構成は、これに限られず、耕耘・整地作業のための農作業機にも適用することができる。
以下、本実施形態に係る農作業機10の構成について、図面を参照しながら説明する。図1、図2及び図3はそれぞれ、本実施形態に係る農作業機10の構成を説明する展開状態の斜視図、上面図及び側面図である。図4は及び図5は、本実施形態に係る農作業機10の構成を説明する折畳状態の斜視図及び側面図である。
本実施形態に係る農作業機10は、中央作業部10C、延長作業部左10L及び延長作業部右10Rを備えた3分割構造を有している。中央作業部10Cは、農作業機10の中央部に配置されている。延長作業部左10L及び延長作業部右10Rは、中央作業部10Cの左右両端部に配置されている。
延長作業部左10L及び延長作業部右10Rはそれぞれ、中央作業部10Cの左右方向両端部に設けられた回動支点である前後方向の折畳用軸52を中心として、上下方向に回動可能となっている。延長作業部左10L及び延長作業部右10Rは、回動により展開状態又は折畳状態に選択的に切り換えられる。
中央作業部10Cは、トップマスト12と、ロアーリンク連結部14と、入力軸16と、伝動フレーム20と、支持フレーム22と、耕耘ロータ28と、シールドカバー34と、整地板42と、リンク機構部44とを備えている。
トップマスト12及びロアーリンク連結部14は、中央作業部10Cの前方中央部及び前方左右2箇所にそれぞれ設けられている。トップマスト12及び左右2箇所に設けられたロアーリンク連結部14は、図示しないトラクタのトップリンク及び左右2箇所に設けられたロアーリンク(3点リンクヒッチ機構)にそれぞれ連結され、農作業機10はトラクタの後部に昇降可能に装着される。
本実施形態に係る農作業機10の中央作業部10Cの構成について説明する。入力軸16は、中央作業部10Cの前方中央部に設けられたギヤボックス18に内装され、前方に突出している。入力軸16には、トラクタのPTO軸から、ユニバーサルジョイント、伝動シャフト等を介して、動力が伝達される。
伝動フレーム20及び支持フレーム22は、本体フレームを兼ね、ギヤボックス18の左右両側に、水平方向に延設されている。伝動フレーム20は、伝動シャフト21(図示せず)を内装している。支持フレーム22は、伝動シャフト21を内装せず、中空となっていてもよい。伝動フレーム20の側端部にはチェーン伝動ケース24が垂設され、また、支持フレーム22の側端部には側部フレーム26がチェーン伝動ケース24と対向して垂設されている。
耕耘ロータ28は、回転軸30(図示せず)、駆動側クラッチ31C及び複数の耕耘爪32を含む。回転軸30は、チェーン伝動ケース24の下端部と側部フレーム26の下端部との間に軸架されている。駆動側クラッチ31Cは、回転軸30の両端に設けられている。詳細は後述するが、駆動側クラッチ31Cは、展開状態において延長作業部左10L側に設けられた従動側クラッチ31Lと噛み合うことによって、延長作業部左10L側に回転の動力を供給することができる。複数の耕耘爪32は、回転軸30の軸周りに、脱着可能に取り付けられている。例えば、回転軸30の軸周りに、耕耘爪32を装着するためのホルダが複数設けられ、耕耘爪32をホルダに挿通すると共にボルトで固定してもよい。トラクタから入力軸16に伝達された動力は、ギヤボックス18内で変速され、伝動シャフト21を回転させてチェーン伝動ケース24を介して回転軸30を回転駆動し、耕耘ロータ28を所定方向に回転させて耕耘作業を行う構成となっている。
シールドカバー34は、伝動フレーム20と支持フレーム22の下部間に配置され、耕耘ロータ28を覆う。
整地板42は、シールドカバー34の後端部に取り付けられている。本実施形態においては、整地板42は、第1整地板42a及び第2整地板42bから構成される。第1整地板42aは、シールドカバー34の後端部に、上下方向に回動自在に取り付けられ、後側が斜め下方へ延びる。第1整地板42aの後端部によって耕耘地面が平坦に整地される。第2整地板42bは、第1整地板42aの後端部に取り付けられ、第1整地板42aの後端部に上下方向に回動自在に取り付けられている。第2整地板42bによって圃場の耕耘地面が更に平坦に整地される。
リンク機構部44は、一端部がギヤボックス18の後部に接続され、他端部が第2整地板42bの上面に接続されている。リンク機構部44は、第2整地板42bの上下方向の回動に伴って上下方向に移動自在となっている。本実施形態においては、リンク機構部44は、揺動アーム46及び連結ロッド48から構成されている。
揺動アーム46は、ギヤボックス18の後部に一端部が回動自在に接続され、他端部が機体進行方向後側に延びて上下方向に揺動可能となっている。ここで、揺動アーム46の一端部は、ギヤボックス18の後部に横方向に延びる軸部50を回動支点として回動自在に接続されている。
連結ロッド48は、揺動アーム46の他端部と第2整地板42bの上面との間に接続されている。つまり、揺動アーム46は、連結ロッド48を介して第2整地板42bに接続されている。連結ロッド48の両端部は、揺動アーム46及び第2整地板42bに対して回動自在に接続されている。このため、第2整地板42bが上下方向に回動すると、連結ロッド48を介して揺動アーム46が軸部50を回動支点として上下方向に回動する。
次いで、延長作業部左10L及び延長作業部右10Rの構成について説明する。延長作業部左10L及び延長作業部右10Rは、互いにほぼ左右反転対称の構造を有するため、以下では特に延長作業部左10Lの構成について詳細に説明する。
延長作業部左10Lは、左油圧シリンダ54Lと、2つの側部フレーム左56L及び57Lと、耕耘ロータ28Lと、シールドカバー左34Lと、整地板左42Lとを備えている。
左油圧シリンダ54Lは、伸縮動作に基づいて延長作業部左10Lを中央作業部10Cに対して回動させる駆動源としての左回動駆動手段として機能する。延長作業部左10Lは、左油圧シリンダ54Lの作動に基づき、折畳用軸52を中心とする展開方向への所定角度、例えば略180度回動することにより中央作業部10Cの外側方に位置する展開状態となり、折畳用軸52を中心とする折畳方向への所定角度、例えば略180度回動することにより中央作業部10Cの上方に位置する折畳状態となる。
側部フレーム左56L及び57Lは、延長作業部左10Lの左右両端に設けられている。
耕耘ロータ28Lは、側部フレーム左56L及び57Lの下部間に、回転自在に支持されている。耕耘ロータ28Lは、中央作業部10Cに設けられた耕耘ロータ28と同様に、回転軸30L(図示せず)、従動側クラッチ31L及び複数の耕耘爪32を有している。従動側クラッチ31Lは、回転軸30Lの一端に設けられている。詳細は後述するが、従動側クラッチ31Lは、展開状態において中央作業部10C側に設けられた駆動側クラッチ31Cと噛み合うことによって、中央作業部10C側から回転の動力が供給される。
シールドカバー左34Lは、側部フレーム左56L及び57Lの上部間に、耕耘ロータ28Lを覆うように設けられている。本実施形態においては、シールドカバー左34Lは、中央作業部10Cに設けられたシールドカバー34と同様に構成される。
整地板左42Lは、シールドカバー左34Lの後端部に取り付けられている。本実施形態においては、整地板左42Lは、中央作業部10Cに設けられた整地板42と同様に、第1整地板左42La及び第2整地板左42Lbから構成される。
延長作業部左10Lは、耕耘ロータ28Lの回転軸30L(図示せず)方向の構成が、中央作業部10Cの構成とほぼ同様となっている。つまり、耕耘ロータ28Lの回転軸30Lに直交する平面上の断面において、耕耘ロータ28Lの回転軸30L、シールドカバー左34L及び整地板左42Lの断面構成が、中央作業部10Cのそれらとほぼ同様の断面構成を有している。
前述のように、トラクタから入力軸16に伝達された動力が、前述の伝動機構を介して中央作業部10Cの耕耘ロータ28と共に、延長作業部左10L及び延長作業部右10Rに設けられた耕耘ロータ28L及び28R(図示せず)に伝達され、耕耘ロータ28L及び28Rを所定方向に回転させるように構成されている。
延長整地板左58Lは、第2整地板左42Lbの外側端部に、上下方向に回動自在に設けられている。延長整地板左58Lは、第2整地板左42Lbの左右方向外側端部に前後方向に延設された軸部60を中心として回動自在に設けられている。延長整地板左58Lは、展開された作業位置では第2整地板左42Lbの外側に延びて第2整地板左42Lbの整地作業を補助し、第2整地板左42Lbの上方側に折り畳まれる位置(格納位置)に回動すると第2整地板左42Lb上に格納される。
延長整地板左58Lは、更に、延長作業部左10Lのシールドカバー左34L上に設けられた回動装置62によって格納位置と作業位置との間を回動可能である。回動装置62は、カバー64によって覆われた駆動モータ66(図示せず)と、駆動モータ66と延長整地板左58Lとの間に接続され、駆動モータ66からの駆動力によって延長整地板左58Lを回動させるリンク機構部68とを有している。
以上、延長作業部左10Lの構成について説明した。延長作業部右10Rの構成は延長作業部左10Lとほぼ同様であり、説明で用いた符号についてはLをRと読み替えればよい。
農作業機10は、更に、複数の土寄せ板70を備えてもよい。複数の土寄せ板70は、農作業機10の前方に取り付けられる。例えば、走行するトラクタのタイヤ痕が耕耘地面に形成されて土の片寄りが発生した場合に、土寄せ板70によって土の片寄りを戻して耕耘地面を平坦にすることができる。
以上、本実施形態に係るクラッチ装置100を備えることが可能な農作業機10の概略構成について説明した。以下、本実施形態に係るクラッチ装置100の構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。延長作業部左10L及び延長作業部右10Rは、互いにほぼ左右反転対称の構造を有するため、以下では中央作業部10Cの駆動側クラッチ31C、及び中央作業部10Cの駆動側クラッチ31Cに噛み合う延長作業部左10Lの従動側クラッチ31Lの構成ついて詳細に説明する。
尚、以下では説明の便宜上、中央作業部10Cの回転軸30を第1回転軸102と呼称し、延長作業部左10Lの回転軸30Lを第2回転軸104と呼称することにする。また、中央作業部10Cの駆動側クラッチ31Cを第1クラッチ106と呼称し、延長作業部左10Lの従動側クラッチ31Lを第2クラッチ108と呼称することにする。
図6は、本実施形態に係るクラッチ装置100の構成を説明する側面図である。図6(a)は、農作業機10の展開状態において、第1クラッチ106及び第2クラッチ108が噛み合った状態のクラッチ装置100を説明する側面図である。図6(b)は、農作業機10の延長作業部左10Lが上方に向けて回動し、第1クラッチ106及び第2クラッチ108が分離した状態のクラッチ装置100を説明する側面図である。尚、これらの図面において、斜線で示した領域は、第1回転軸102の回転中心又は第2回転軸104の回転中心を通る平面上の断面構造を示している。
本実施形態に係るクラッチ装置100は、第1クラッチ106と、第2クラッチ108と、クッションラバー110とを備えている。
第1クラッチ106は、第1回転軸102の端部に設けられる。本実施形態においては、第1クラッチ106及び第1回転軸102の端部は、スプラインによって両者が互いに嵌合し、更にボルトによって固定されている。
第2クラッチ108は、第2回転軸104の端部に設けられている。更に、第2クラッチ108は、第2回転軸104の端部に脱着可能に固定されている。
本実施形態においては、第2回転軸104は、クラッチベース104aを有している。クラッチベース104aは、スプラインによって第2回転軸104の一端部と嵌合し、更にボルトで固定されている。クラッチベース104aには、耕耘爪32を装着するためのホルダ104bが設けられている。
詳細は後述するが、第2クラッチ108は、第2回転軸104側に複数のボルト挿通孔が設けられており、複数のボルトを介してクラッチベース104aに固定されている。これによって、第2クラッチ108は第2回転軸104に脱着可能に固定され、両者が一体となって回転するように構成されている。
このような構成を有することによって、第2クラッチ108のみを容易に脱着することができる。つまり、第2クラッチ108を脱着する際に、耕耘爪32を脱着する必要が無い。更に、耕耘爪32を第2クラッチ108に直接取り付ける必要が無いため、耕耘爪32を固定する機構の制限が緩和される。これによって、複数の耕耘爪32を固定する機構を統一することができ、クラッチベース104aに固定される耕耘爪32は、他の耕耘爪32と同様のものを使用することができる。
これによって、第2クラッチ108及び耕耘爪32のそれぞれの交換等のメンテナンスが容易になり、更にメンテナンス費用を低減することができる。
次いで、第1クラッチ106の構成について更に詳細に説明する。図7は、本実施形態に係る第1クラッチ106の構成を説明する図であり、(a)、(b)及び(c)はそれぞれ上面図、側面図及び断面図である。ここで、図7(b)には、複数の第1爪部106dの内の一つの断面が斜線で示されている。また、図7(c)には、AOA´に沿った断面が斜線で示されている。
図7(b)に示すように、第1クラッチ106が、噛み合い時に第2クラッチ108と対向する側の面を第1面106a、第1面106aとは反対側の面を第2面106bとする。
本実施形態に係る第1クラッチ106は、第1基板106c、複数の第1爪部106d及び外周リング106eを有する。第1基板106cは、スプライン穴を有する。スプライン穴に第1回転軸102を挿通させることによって、第1クラッチ106が第1回転軸102の端部に固定される。複数の第1爪部106dは、第1基板106cの外側に設けられている。外周リング106eは、複数の第1爪部106dの外側に設けられ、第1回転軸102の回転中心Oを中心とする円状の外周を有する。外周リング106eは、その外周の形状が第1回転軸102の回転中心Oを中心とする円であればよく、その内周の形状は任意である。外周リング106eの平面視における輪郭が、第1クラッチ106の平面視における輪郭に相当する。
本実施形態においては、複数の第1爪部106dは、第1回転軸102の周りに放射状に配置されている。複数の第1爪部106dの各々は、一端部が第1基板106cに接続され、他端部が外周リング106eに接続されている。これによって、第1クラッチ106は、第1爪部106dと同数の開口部106fを有するとも言える。
複数の第1爪部106dの各々は、第1面106a側に凸の先端部を有している。本実施形態においては、複数の第1爪部106dの各々の第1面106a側の表面は2つの平面106gを含む。これら2つの平面106gの成す角は90°であり、これによって当該先端部が形成されている。
尚、2つの平面106gの成す角、つまり複数の第1爪部106dの各々の先端部の角度は90°に限られるものではない。しかし、第1クラッチ106と第2クラッチ108とを噛み合わせる際に、当該凸部はガイドとして機能するため、90°に比べて大きすぎると円滑に噛み合わせにくくなる。更に、回転時において両者の噛み合いが容易に分離してしまうことが懸念される。一方、当該角度が90°に比べて小さすぎると、複数の第1爪部106dの強度が低下してしまう。
本実施形態においては、第1爪部106dの個数は8である。隣接する第1爪部106dの対は、全て等間隔となっている。本実施形態に係る第1クラッチ106は、少なくとも外周リング106e及び8個の第1爪部106dの形状について、第1回転軸102周りの45°の回転に対する対称性を有する。更に、少なくとも、外周リング106e及び8個の第1爪部106dの形状に関して鏡面対称性を有する。
尚、本実施形態においては、第1爪部106dの個数を8としたが、これに限られるものではない。第1爪部106dの個数は、2以上であれば足りる。第1爪部106dの個数をn(nは2以上の整数)とした場合に、第1クラッチ106は、少なくとも、外周リング106e及びn個の第1爪部106dにおいて、第1回転軸102の回転中心Oの周りの360°/nの回転に対する対称性を有することが好ましい。
尚、上述した本発明の目的を達成するためには、外周リング106eを設けることは必須ではない。
次いで、第2クラッチ108の構成について更に詳細に説明する。図8は、本実施形態に係る第2クラッチ108の構成を説明する図であり、(a)、(b)及び(c)はそれぞれ上面図、側面図及び断面図である。ここで、図8(c)には、AOA´に沿った断面が斜線で示されている。
図8(b)に示すように、第2クラッチ108が、噛み合い時に第1クラッチ106と対向する側の面を第1面108a、第1面108aとは反対側の面を第2面108bとする。
本実施形態に係る第2クラッチ108は、第2基板108c及び複数の第2爪部108dを有する。第2基板108cは、第2回転軸104の回転中心Oを中心とする円状の外周を有している。また、第2基板108cは、第2回転軸104の回転中心Oを中心とする円状の開口部108eを有している。複数の第2爪部108dは、第2基板108cの第1面108a側に設けられ、複数の第1爪部106dと噛み合うように配置されている。
本実施形態においては、複数の第2爪部108dは、第2回転軸104の回転中心Oを中心とする円周に沿って配置されている。これによって、第2クラッチ108は、第2爪部108dと同数の溝部108fを有するとも言える。複数の溝部108fの各々は、互いに隣接する第2爪部108dの間に形成される。
本実施形態においては、複数の溝部108fの各々の底面形状は第2面108b側に凸の曲面であるが、これに限られるものではない。例えば、複数の溝部108fの底面形状は平面であっても構わない。
本実施形態においては、第2爪部108dの個数は8であり、第1爪部106dの個数と同数である。第1爪部106d及び第2爪部108dの個数は同数である必要は無いが、同数であれば複数の第1爪部106d及び複数の第2爪部108dはそれぞれ、摩耗の進み方が最も均一に近くなる点で好ましい。
隣接する第2爪部108dの対は、全て等間隔となっている。本実施形態に係る第2クラッチ108は、少なくとも、8個の第2爪部108dの形状に関して、第2回転軸104周りの45°の回転に対する対称性を有する。更に、少なくとも、8個の第2爪部108dの形状に関して鏡面対称性を有する。
8個の第2爪部108dは、先端部付近が先細となる形状を有している。第1クラッチ106と第2クラッチ108とを噛み合わせる際に、先細の先端部はガイドとして機能する。
第2基板108cの第2面108b側には、前述した複数のボルト挿通孔108gが設けられている。複数のボルト挿通孔108gは、第2爪部108dに対応する箇所に設けられている。本実施形態においては、ボルト挿通孔108gの数は4であり、隣接するボルト挿通孔108gの対は、全て等間隔となっている。4箇所に設けられたボルト挿通孔108gによって、第2回転軸104の端部(クラッチベース104a)と第2クラッチ108とが4本のボルトで固定される。
第2クラッチ108は、後述するクッションラバー110を固定する係止部108hを有している。本実施形態においては、開口部108eの側壁に、開口部108eを周回する段差部が設けられている。当該段差部が、クッションラバー110の、第1面108a方向の移動を拘束する係止部として機能する。
次いで、クッションラバー110の構成について説明する。図9は、本実施形態に係るクッションラバー110の構成を説明する図であり、(a)、(b)及び(c)はそれぞれ上面図、側面図及び断面図である。図10は、本実施形態に係るクッションラバー110を第2クラッチ108に装着した状態を説明する図であり、(a)、(b)及び(c)はそれぞれ上面図、側面図及び断面図である。ここで、図9(c)及び図10(c)には、AOA´に沿った断面が斜線で示されている。
クッションラバー110は、第2クラッチ108の少なくとも複数の第2爪部108dの内側に配置される。つまり、クッションラバー110は、少なくとも開口部108eの側壁に沿って配置される。
本実施形態においては、クッションラバー110は、第2クラッチ108の複数の第2爪部108dの内側に環状に配置されている。更に、クッションラバー110は、第2クラッチ108に設けられた係止部108hによって、第1面108a方向の移動が拘束される。
本実施形態に係るクッションラバー110は、更に、複数の第2爪部108dの各々の間に延長される複数の突出部110aを有している。換言すると、複数の突出部110aの各々は、複数の溝部108fに延長される。複数の突出部110aの各々は、第2クラッチ108の複数の溝部108fの各々の側壁の一部及び底部に沿って配置されている。
クッションラバー110の複数の突出部110aの各々は、二つの平面110b及び溝部110cを含んでいる。本実施形態においては、第1クラッチ106及び第2クラッチ108が分離した状態において、二つの平面110bの成す角は101.8°である。溝部110cは、突出部110aのほぼ中央に、突出部110aの付け根から先端にかけて設けられている。溝部110cは、二つの平面110bの間に設けられ、二つの平面110bを互いに隔てている。
クッションラバー110は、弾性を有する材料から成る。弾性を有する材料としては、例えばゴム、樹脂又はスポンジ等を用いることができる。クッションラバー110の交換時には、手作業によって変形させることによって、第2クラッチ108に対して容易に脱着できるように構成されている。
図11は、本実施形態に係る第1クラッチ106及び第2クラッチ108が互いに噛み合った状態を説明する側面図である。ここで、図11には、複数の第1爪部106dの内の一つの断面が斜線で示されている。
第1クラッチ106の8個の第1爪部106d及び第2クラッチ108の8個の第2爪部108dは互いに噛み合う。換言すると、第1クラッチ106の8個の第1爪部106dの各々と、第2クラッチ108の8箇所の溝部108fの各々とが嵌合する。更に換言すると、第1クラッチ106の8個の開口部106fの各々と、第2クラッチ108の8個の第2爪部108dとが嵌合する。これによって、第1クラッチ106及び第2クラッチ108の、回転軸周りの相対的な回転が拘束される構成となっている。
本実施形態においては、第1クラッチ106の8個の第1爪部106d及び第2クラッチ108の8個の第2爪部108dは、互いに噛み合っている。ここで、第1クラッチ106及び第2クラッチ108の間にクッションラバー110が介在することによって、第1クラッチ106の8個の第1爪部106dの頂部は、第2クラッチ108に接触しない。尚、第1クラッチ106の8個の第1爪部106dの頂部が、第2クラッチ108に接触しなければよく、第1クラッチ106の8個の第1爪部106dの側部は第2クラッチ108に接触しても構わない。本実施形態においては、回転時において、第1クラッチ106の8個の第1爪部106dの側部が第2クラッチ108に接触することによって回転の駆動を伝達する構成となっている。
図11からわかるように、側面視において、複数の第1爪部106dは、外周リング106eによって覆われている。そのため、複数の第1爪部106dは外部から視認されない。つまり、特に農作業機10を折畳状態とした中央作業部10Cのみの農作業中においては、本実施形態に係るクラッチ装置100は、外周リング106eが主として外部に晒される。これによって、藁や草等の残渣物が複数の第1爪部106dに巻き付きにくくなる。これによって、農作業機10を展開状態にする際に、付着した残渣物によってクラッチ装置100が連結しなくなることを防止することができる。
外周リングを有しない従来の構成の場合、複数の第1爪部106dが、農作業中外部に晒される。この場合、突出した第1爪部106dに起因する凹凸のために、藁や草等の残渣物がクラッチ装置に巻き付き易くなってしまう。
本実施形態においては、複数の第1爪部106dの各々が有する2つの平面106gは、クッションラバー110の複数の突出部110aの各々と接触している。
クッションラバー110の突出部110aが含む二つの平面110bの成す角は、前述したように101.8°である。一方、第1爪部106dが含む二つの平面106gの成す角は、前述したように90°である。第1クラッチ106及び第2クラッチ108が噛み合うと、クッションラバー110は弾性を有するため、平面110bのほぼ全ての領域が、第1爪部106dの二つの平面106gに接触するように変形する。第1爪部106dの先端部は、突出部110aの溝部110cのために、クッションラバー110と接触しない。
このような構成を有することによって、第1クラッチ106が有する複数の第1爪部106dの側部と、第2クラッチ108とは接触するが、第1クラッチ106が有する複数の第1爪部106dの頂部と、第2クラッチ108が有する複数の溝部108fとの接触を避けることができる。よって、クッションラバー110が緩衝材として機能し、第1回転軸102又は第2回転軸104方向の振動に起因する第1クラッチ106が有する複数の第1爪部106dの頂部及び第2クラッチ108の第1面108aの衝突が発生しない。よって、これによる摩耗や衝突音の発生を抑制することができる。
更に、このような構成を有することによって、第1クラッチ106及び第2クラッチ108間の押圧が、複数の第1爪部106dの頂部に集中しない。第1クラッチ106及び第2クラッチ108間の押圧は、突出部110aが有する平面110c及び第1爪部106dが有する平面106gの接触面にほぼ均一に分散される。これによって、第1クラッチ106及び第2クラッチ108のがたつきを緩和することができ、それらの衝突による摩耗や衝突音の発生を抑制することができる。
更に、このような構成を有することによって、複数の第1爪部106dの、第2クラッチ108に対する回転方向の配置は、噛み合い時の配置で最も安定する。つまり、複数の第1爪部106dの各々が有する2つの平面106gと、クッションラバー110の複数の突出部110aの各々との接触面の形状から、複数の第1爪部106dが回転方向の外力を受けると、当該外力に対する反発力をクッションラバー110から受ける。これによって、回転方向の加速又は減速に起因する第1クラッチ106及び第2クラッチ108の衝突による摩耗や衝突音の発生を抑制することができる。
第1クラッチ106及び第2クラッチ108の衝突による摩耗や衝突音の発生を抑制するには、第1クラッチ106とクッションラバー110とが接触する面積を可能な限り大きくすることが好ましい。本実施形態によれば、クッションラバー110に複数の突出部110aを設けることによって、第1クラッチ106とクッションラバー110とが接触する面積を極力大きくすることができる。
更に、このような構成を有することによって、第1爪部106dの先端部と、突出部110aの溝部110cとによって空隙が形成される。これによって、クラッチ装置100の内部に侵入した泥を、当該空隙を介して外部に放出することができる。
尚、クッションラバー110の突出部110aが含む二つの平面110bの成す角は、101.8°に限られるものではない。第1クラッチ106及び第2クラッチ108間の押圧が、突出部110aが有する平面110c及び第1爪部106dが有する平面106gの接触面で極力均一に分散されるように設計すればよい。
尚、クッションラバー110が複数の突出部110aを有していなくても、回転方向の加速又は減速に起因する第1クラッチ106及び第2クラッチ108の衝突による摩耗や衝突音の発生を抑制することは可能である。クッションラバー110は、少なくとも、第2クラッチ108の複数の第2爪部108dの内側に環状に配置されていればよい。
このとき、第2クラッチ108の第1面108a側のクッションラバー110の頂部は、複数の溝部108fの底部よりも第2クラッチ108の第1面108a側に配置されればよい。つまり、第1クラッチ106及び第2クラッチ108が噛み合った状態において、第1クラッチ106の複数の爪部106dの頂部及び第2クラッチ108の第1面108aが互いに接触しなければよい。
更にこのとき、第1クラッチ106及び第2クラッチ108が、互いに引き合う方向の押圧を加える必要がある。つまり、第1クラッチ106及び第2クラッチ108が噛み合い、互いに引き合う方向の押圧を加えられた状態において、第1クラッチ106の複数の爪部106dの頂部及び第2クラッチ108の第1面108aが互いに接触しなければよい。
このような構成を有することによって、複数の第1爪部106dと第1基板106cとの接合部近傍がクッションラバー110に接触すると共に、それに食い込む。これによって、複数の第1爪部106dが回転方向の外力を受けると、クッションラバー110から当該外力に対する反発力を受ける。これによって、回転方向の加速又は減速に起因する第1クラッチ106及び第2クラッチ108の衝突による摩耗や衝突音の発生を抑制することができる。
以上、本実施形態に係るクラッチ装置100について説明した。本実施形態に係るクラッチ装置100によれば、複数の耕耘爪を固定する機構が統一され、耕耘爪等のメンテナンスを容易にすること、及び爪部同士の衝突による摩耗や衝突音の発生を抑えることが可能なクラッチ装置及びそれを用いた農作業機10を提供することができる。
また、本実施形態においては、特に代掻き作業のための農作業機10を例示して説明した。しかし、本実施形態に係るクラッチ装置100は、これに限られず、耕耘・整地作業のための農作業機にも適用することができる。