JP6810820B1 - 抵抗溶接装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接条件を得るデータベースを小容量化する。【解決手段】第一のデータベース38は、材料の材質と厚さと電極の種別を含む基礎的要素32に対応する溶接電流44と通電時間46と加圧力48等を出力する。第二のデータベース40は、追加要素34の性質に応じて第一のデータベース38の出力を補正するための傾向式52を出力する。要素選択装置36は要素を選択してデータベース38や40を検索する。演算装置42は、第一のデータベース38の検索結果に対して第二のデータベース40の検索結果を使用した補正演算処理を実行して、溶接電流44と通電時間46と加圧力48等を含む溶接条件50を出力する。【選択図】図1

Description

本発明は、様々な要素を考慮した溶接条件の最適化を可能にする抵抗溶接機に関する。
既知の抵抗溶接装置では、溶接したい材料を重ね合わせて、溶接部分を電極で挟んで圧力をかけ、電極間に溶接電流を流すように構成されている。電極には、例えば、テーブル電極やガン型電極等が使用される。ガン型電極の先端部分には、溶接箇所に応じて様々な形状の電極チップが使用される。抵抗溶接装置の具体例は、例えば、特許文献1により紹介されている。
抵抗溶接装置による溶接品質は、電極で挟まれた部分に流れる溶接電流と通電時間と溶接用の電極がワークに加える圧力とにより定まる。以下の説明ではこれらを溶接条件と呼ぶことにする。ユーザの製品の溶接品質に対する要求は多種多様であって、ユーザは製品の試作段階で溶接条件を調整しながら最適値を求めている。
特開2019−150874号公報 特開平7−178566号公報 特開平9−029456号公報 特開平11−047950号公報 特開2005−128818号公報
上記のように、ユーザの要求を満たす溶接条件の最適値を求めるには、溶接条件を変えながら多数のサンプルを作成し、その接合強度やナゲット径を測定し、外観等を含めた総合評価を行う。熟練した作業者であっても、溶接条件の最適値を求めるために数十時間をかけることがある。未熟な作業者では、さらに多くの時間を要し、そのあげく最適値を求めることが困難になる場合もある。上記の特許文献1では、この課題を解決するための一案を提供している。
特許文献1では、溶接される材料の材質と厚さと電極の種別(形状)等の要素を入力すると溶接電流や通電時間等の溶接条件を出力するデータベースを設ける例が紹介されている。しかしながら、溶接条件を定めるための要素には様々なものがある。例えば、溶接される材料にメッキが施されていたり、異なる厚さの複数枚の材料を重ねて溶接したりするような場合を含めると、要素の組み合わせの数が膨大になり、データベースのデータサイズも作成コストも増大する。
また、どれだけデータベースを充実させたとしても、溶接装置を使用するユーザの製品に求められる溶接品質を得るためには、溶接条件を調整しながら試作をくりかえして最適値を求める作業を省略することはできない。
本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、データベースの拡大を抑えつつ、ユーザの要求を満たす溶接条件の最適値を求めるために、その最適値にできるだけ近い溶接条件を得ることができる抵抗溶接装置を提供することを目的とする。
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
<構成1>
複数の材料を重ね合わせたワークを電極で挟んで圧力を加えて、電極間に溶接電流を流す抵抗溶接装置であって、
上記の溶接電流と通電時間と上記の電極によるワークへの加圧力とを含む溶接条件を決定するために、複数の要素を入力するための入力装置と、
この入力装置により入力された複数の要素の中から、上記のワークを構成する材料の材質と厚さと電極の種別を含む基礎的要素を選択して、第一のデータベースを検索する処理を実行し、上記以外の追加要素を選択して、第二のデータベースを検索する処理を実行する要素選択装置と、
第一のデータベースにより検索された溶接条件の初期値に対して第二のデータベースの検索結果を使用した補正演算処理を実行して、上記の溶接電流と通電時間と加圧力とを含む溶接条件を出力する演算装置と、
この演算装置の出力した溶接条件を表示する表示装置と、
この演算装置の出力した溶接条件を使用して、ワークの溶接制御を行う電源装置を備え、
上記の第一のデータベースは、上記の基礎的要素と対応する溶接電流と通電時間と加圧力を含む溶接条件を検索してその検索結果を出力するためのデータを蓄積したもので、
上記の第二のデータベースは、上記の追加要素の性質に応じて第一のデータベースの出力した溶接条件の初期値を補正するための単数または複数の傾向式を含むデータを、追加要素または追加要素の組み合わせに対応させて蓄積したものであることを特徴とする抵抗溶接装置。
<構成2>
厚さの異なる複数の材料を重ね合わせて溶接するとき、
入力装置は、それぞれの材料毎に、その厚さを含む基礎的要素を受け付けて、
要素選択装置は、それぞれの材料の基礎的要素を順に選択して第一のデータベースを検索し、それぞれの材料について溶接条件の初期値を出力させ、
要素選択装置は、厚さの異なる複数の材料を溶接するという追加要素により第二のデータベースを検索して、板厚比をパラメータに含む溶接条件の補正演算のための傾向式を選択して出力させ、
上記の演算装置は、上記の傾向式を使用して補正演算処理を実行して、溶接電流と通電時間と加圧力とを含む溶接条件を出力することを特徴とする構成1に記載の抵抗溶接装置。
<構成3>
メッキが施された材料の溶接を複数回に分けて行うとき、
第一のデータベースは、各回毎の溶接電流と通電時間とこれらの溶接の間の冷却時間とを出力し、
要素選択装置は、メッキが施された材料の溶接を行うという追加要素により場合の、第二のデータベースを検索して、基準値に対する目付量比率をパラメータに含む溶接条件の補正演算のための傾向式を選択して出力させ、
上記の演算装置は、第二のデータベースから出力された傾向式を使用して、一回目と二回目の溶接電流と通電時間の補正演算処理を行って、溶接電流と通電時間と加圧力とを含む溶接条件を出力することを特徴とする構成1に記載の抵抗溶接装置。
<構成4>
上記の要素選択装置が、複数種類の要素を使用して、第一のデータベースと第二のデータベースを検索して、
上記の演算装置から出力される溶接条件の標準値での溶接品質に対する、要求される溶接品質の相対的な割合を指定する手段が設けられており、
要素選択装置は、第二のデータベースを検索して、複数種類の追加要素の組み合わせに対応する、溶接条件の補正演算のための傾向式を出力させ、
上記の演算装置は、第一のデータベースの検索結果に対して、上記の相対的な割合を傾向式のパラメータに含めて、上記の傾向式を用いた溶接条件の補正演算処理を行って、溶接電流と通電時間と加圧力とを含む溶接条件を出力することを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の抵抗溶接装置。
<構成5>
上記の入力装置には、演算処理の結果上記の表示装置に表示された溶接条件を、予め制限した範囲で制限された幅で段階的に増減して、新たな溶接条件を得る調整装置が設けられていることを特徴とする構成1乃至4のいずれかに記載の抵抗溶接装置。
<構成6>
上記の調整装置により得られた新たな溶接条件を蓄積する第三のデータベースを備えたことを特徴とする構成5に記載の抵抗溶接装置。
<構成7>
上記の調整装置により得られた新たな溶接条件から、使用した傾向式のパラメータを逆算して、新たな傾向式を得て、第二のデータベースまたは第三のデータベースに記憶させることを特徴とする構成6に記載の抵抗溶接装置。
<構成8>
コンピュータを、構成1に記載の入力装置と要素選択装置と演算装置と表示装置として機能させる抵抗溶接機の制御用コンピュータプログラム。
<構成9>
構成8に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータで読取り可能な記録媒体。
<構成1の効果>
基礎的要素以外の追加要素が各種存在する場合に、基礎的要素と追加要素の組み合わせ等に対応させた傾向式を使用して溶接条件の初期値を補正して、データベース全体の拡大を抑制しつつ、最適値に近い溶接条件を得ることができる。
<構成2の効果>
厚さの異なる板材を重ねて溶接するようなときに、それぞれの厚さの材料に対する溶接条件を組み合わせて、追加要素で厚さの比等を指定することで、適切な傾向式を選択して補正し、最適値に近い溶接条件を得ることができる。
<構成3の効果>
メッキが施された材料の溶接を行うときには、第一のデータベースで例えば2回分の溶接条件の初期値とその間の冷却期間を出力するようにして、追加要素でメッキの目付量等を指定することで、第二のデータベースの出力から適切な傾向式を選択して補正し、最適値に近い溶接条件を得ることができる。
<構成4の効果>
予め設定された溶接条件の標準値を使用した溶接の品質に対して、要求される溶接品質の相対的な割合を指定しておくと、常にユーザの求める溶接条件に近い溶接条件が得られるように、傾向式による補正演算処理の結果が調整できる。従って、データベース全体をユーザの好む性質に一括してカスタマイズすることができる。
<構成5の効果>
予め制限した範囲で制限された幅で段階的に溶接条件を増減することで、最適値に到達し易い手順を自動的に示すことができる。
<構成6の効果>
調整装置により調整して得られた最適化された溶接条件を蓄積して、要素をキーにして溶接条件を出力できるようにすれば、次回には直接最適化された溶接条件が利用できる。また、その前回の結果を起点にさらに溶接条件を改善できる。
<構成7の効果>
調整装置により調整して得られた最適化された溶接条件から、新たな傾向式を得て、次回からこれを利用した計算が可能になる。
本発明の抵抗溶接装置の実施例を示す機能ブロック図である。 入力装置の要素入力画面を示す図である。 第一のデータベースの構造例を示す図である。 第二のデータベースの構造例を示す図である。 第二のデータベースの次の構造例を示す図である。 第二のデータベースのさらに次の構造例を示す図である。 演算装置の動作例を示すフローチャートである。 厚さの相違する2枚の材料の溶接経過を示す説明図である。 厚さが異なる板の溶接のための第二のデータベースの構造例を示す図である。 メッキされた2枚の材料の溶接経過を示す説明図である。 メッキされた板のための第一のデータベースの構造例を示す図である。 メッキされた板のための第二のデータベースの構造例を示す図である。 抵抗溶接機の変形例のブロック図である。 第三のデータベースの構成例を示す図である。 操作画面例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
図1は、本発明の抵抗溶接装置の実施例を示す機能ブロック図である。
この図の例では、上側ワーク12と下側ワーク14とを重ね合わせたワークを、テーブル型の下側電極18の上に置いて、ガン型の上側電極16を押しつけるようにしてこれらの電極で挟んだ部分に圧力を加えて、電極間に溶接電流44を流す。2枚だけでなく3枚以上の複数の材料を重ね合わせたワークを溶接することもできる。
この抵抗溶接装置には、図のように、入力装置28と要素選択装置36と第一のデータベース38と第二のデータベース40と演算装置42と表示装置30と電源装置26と調整装置54といった装置が設けられている。入力装置28と表示装置30と調整装置54とは、例えばタッチパネル式のディスプレイに一体に組み込まれる。
表示装置30は、この演算装置42の出力した溶接条件50をディスプレイに表示する。調整装置54は、得られた溶接条件50をユーザの求める溶接品質を得るために調節操作をするボタン等により構成される。もちろん、入力装置28と表示装置30と調整装置54とが、それぞれ独立したパネル等に組み込まれていてもよい。
電源装置26は、上側電極16と下側電極18との間に溶接電流を供給する既知の電源回路から構成される。電源装置26は、演算装置42の出力した溶接条件50を使用して、ワークの溶接制御を行う。
要素選択装置36と演算装置42とは抵抗溶接装置を制御するコンピュータプログラムモジュールにより実現される。この両者は以下に説明する機能を実現するための演算処理を実行するもので、必ずしも別々に独立していなくて混在していてもよい。即ち、一体化されていても構わない。第一のデータベース38と第二のデータベース40とは抵抗溶接装置に組み込まれた図示しない記憶装置に記憶されている。この記憶装置は、ネットワークを介して接続された外部の記憶装置であってもよい。
図2は、入力装置の要素入力画面を示す図である。
入力装置28は、溶接電流44と通電時間46と上記の電極によるワークへの加圧力48とを含む溶接条件50を決定するための複数の要素を入力するためのマンマシンインタフェースである。この図のような画面が抵抗溶接装置の入力装置28に表示される。
この図の例では、入力装置28と表示装置30と調整装置54とが一体になった画面を示した。溶接電流44と通電時間46と加圧力48とを出力表示した部分が表示装置30に該当する。「調整上限(下限)」や「調整間隔」と表示した部分が調整装置54である。なお、この画面中に示した調整装置54や溶接条件の相対値調整部66の機能や操作については、後の実施例で詳細に説明する。
複数の要素には、この図の例では、材料の材質、板厚(厚さ)、電極の機種(種別)、溶接方式(図の例はテーブル式の電極)、等が該当する。この他に、溶接後の製品に求められる見映えや強度等があり、例えばこの例では見映えを優先するという指定ができるようになっている。見映えを左右するのは、「散り」と「打痕」と「歪」である。これらのうちのどれを優先するかを指定することができる。
ここで、材料の材質と厚さと電極の種別等を含むものを基礎的要素32と呼ぶことにする。そして、基礎的要素32以外の要素を追加要素34とする。後で説明するが、追加要素34には様々なものを含めることができる。基礎的要素32にこれ以外のものを含めても構わないが、少なくとも、上記の溶接条件50を一意的に決定できる数値や性質や種別や品名等で特定されるものとする。
基礎的要素32に該当する要素が各種あるとしても、基礎的要素32を増やすと第一のデータベース38の構造上、データサイズも増大するおそれがある。従って、この実施例のように、材料の材質と厚さ(板厚)と電極の種別(機種)の3種類とするのが最も実用的である。
要素選択装置36(図1)は、基礎的要素32を選択して、第一のデータベース38を検索する処理を実行し、追加要素34を選択して、第二のデータベース40を検索する処理を実行する機能を有する。
図3は、第一のデータベースの構造例を示す図である。
第一のデータベース38は、上記の基礎的要素32と対応する溶接電流44と通電時間46と加圧力48等を検索して出力するためのデータを蓄積したものである。材料の材質と板厚(厚さ)と電極の種別を特定して入力すると、その溶接に適する溶接電流44と通電時間46と上記の電極によるワークへの加圧力48等の溶接条件50が数値で一意的に出力される。
図3に例示した第一のデータベース38の構造は、例えば、特許文献1等に記載されたとおりのものである。これにさらに後で図11で説明するように、本発明特有の機能を付加することができる。なお、この第一のデータベース38から出力される溶接条件50は、その後補正されるので、溶接条件の初期値と表現することにする。そして、溶接条件の初期値に含まれるデータをそれぞれ選出溶接電流44、選出通電時間46、選出加圧力48と表現する。
図4から図6は第二のデータベースの構造例を示す図である。
図4は、「見映え」を優先し、かつ、そのうちの「散り」を優先した場合の、溶接電流44と通電時間46と加圧力48の補正係数を計算するための、3種類の傾向式52を示す。「見映えを優先」や「散りを優先」というのが追加要素34である。第二のデータベース40は、このように、追加要素34の性質に応じて第一のデータベース38の出力した検索結果を補正するための単数または複数の傾向式52を、追加要素34に対応させて蓄積したものである。
追加要素34は単数の場合も複数の場合もある。出力される傾向式52も、単数の場合と複数の場合とがある。追加要素34が複数ある場合には、それらの組み合わせに対応させて傾向式が蓄積されている。
図4の傾向式52の係数1〜係数3は、追加要素の種類に応じて予め実験などにより定められる。「打痕」を優先の場合や、「歪」を優先の場合の傾向式52を、図5と図6に示した。「散り」と「打痕」と「歪」では、形式が同じ計算で、係数1〜3のみが相違している。
即ち、入力装置28に追加要素34を入力すると、対応する傾向式52が出力され、係数1〜3等のパラメータを決めて計算をすると、第一のデータベース38の出力を補正する補正係数を求めることができる。なお、係数1〜3や、補正率などの、傾向式中の任意の変数に相当するものをパラメータと呼ぶことにする。
図4〜図6の例では、傾向式52に、選出溶接電流44と選出通電時間46と選出加圧力48等が含まれている。第一のデータベース38の出力する溶接条件50の初期値である。このように、それぞれの初期値を補正する補正係数を求めるための3種類の傾向式52が第二のデータベース40から出力される。なお、このほかに、溶接条件50の初期値の一部だけを補正する傾向式52を出力することもできる。
図4〜図6の傾向式52は、係数1〜3の部分以外は共通の形式である。これらのパラメータを変数にして、置き換えをすれば、広範囲の補正係数の計算ができる。即ち、一種類の傾向式52でパラメータを変えればそれに応じた補正係数を計算で求められるから、第一のデータベース38に比べて第二のデータベース40のデータサイズを充分に小さくできる。
図4〜図6の傾向式52には、(補正率%)という変数が含まれている。これもパラメータである。この(補正率%)は、例えば、95%から105%の範囲に設定される。第一のデータベース38や第二のデータベース40は、溶接機メーカーが経験値に基づいて適切な溶接品質が得られるように作成したものである。しかし、溶接機メーカーの求めた溶接品質は標準値である。ユーザが求める溶接品質とは微妙な差異が生じることがある。
(補正率%)は、これを解決するためのもので、相対値調整部66(図2)を使用して標準値とユーザにより要求される溶接品質の相違を、相対的な割合を指定することで調整できる。例えばこれを102%と設定したら、図4から図6に示したように、全ての傾向式について、計算結果に(100%/102%)の補正が加えられる。これで、データベース全体をユーザの好む性質のものに一括してカスタマイズすることができる。
図7は演算装置42の動作例を示すフローチャートである。
演算装置42(図1)は、第一のデータベース38の検索結果に対して、第二のデータベース40の検索結果を使用した上記の補正演算処理を実行して、その演算処理の結果得られた溶接電流44と通電時間46と加圧力48等を含む溶接条件50を出力する機能を有する。
具体的には、図7に示すように、まず、ステップS11で、入力装置28により要素の入力の受け付けをする。ステップS12では、要素選択装置36が、基礎的要素32を選択する。ステップS13では、要素選択装置36が基礎的要素32を使用して第一のデータベースの検索をする。
ステップS14では、演算装置42が溶接条件の初期値を取得する。さらに、ステップS15で、要素選択装置36が追加要素34を選択する。ステップS16では、要素選択装置36が第二のデータベースを検索する。
ステップS17では、演算装置42が傾向式を取得する。ステップS18では、取得した傾向式により補正値の計算をする。ステップS19では、その補正値を使用して、溶接条件50の初期値を補正する。ステップS20では、表示装置30に溶接条件50を出力表示する。さらに自動的にもしくはユーザの操作により、溶接条件50を電源装置26に出力する。
上記のように、基礎的要素32以外の追加要素34が各種存在する場合に、その追加要素34または追加要素34の組み合わせに対応させた傾向式52を使用して溶接条件50を補正すると、データベース全体、特に第一のデータベース38の拡大を抑制しつつ、最適値により近い溶接条件50を得ることができる。
追加要素34を上記のように、「強度」と「見映え」のいずれかを優先と指定して、溶接された製品に求められる品質に応じた、溶接条件の補正をすることができる。また、上記の相対値調整部66の機能を利用して、補正係数を演算するための多種の傾向式による演算処理結果を一括して調整することができる。
(厚さが異なる板の溶接)
図8は厚さの相違する2枚の材料の溶接経過を示す説明図である。
スポット溶接をする場合には、上側ワーク12と下側ワーク14とを上側電極16と下側電極18で挟み、加圧力を加えて、上下の電極間に数千〜数万アンペア(A)の電流を流す。溶接する材料自身の抵抗発熱により溶接する材料自身を溶かすので、楕円体形状のナゲット20が形成される。
上側ワーク12と下側ワーク14の接触部には材料の抵抗値よりも大きい接触抵抗が存在し、電極で加圧力を加えた中心部の接触抵抗は周辺の接触抵抗よりも小さくなり、電流が流れやすい。この中心部の電流密度は高くなり、中心部より材料は溶け始める。必要とする溶接後のせん断強度は板厚に関係する。板厚が厚くなるほど強度が要求されるから、必要とするナゲット径も大きくなる。板厚が厚くなると溶融しなければならない体積が大きくなり、溶接に必要とするエネルギーも大きくなる。
一方、上側電極16と下側電極18とは銅の合金で構成されており、溶接により溶融しないように、内部を循環する冷却水で冷却されている。上側ワーク12や下側ワーク14も通常それなりの大きさがあり、溶接により中心部は溶融するが、周辺部は電極を通じて、あるいはワーク自身の表面で放熱する。
放熱があるので、極端な事例では、低い電流値で長時間の通電を行なっても、電極とワーク自身による放熱で全く溶融せず、溶接できないことがある。ナゲット20を形成するために溶融する部分の体積は、電極の先端面積×(上側ワークの板厚+下側ワークの板厚)と相関関係がある。
溶接電流値の二乗×抵抗×通電時間が供給される電気エネルギーで、このエネルギーで発熱をする。溶接電流を下げれば通電時間を長く必要とする。ただし、通電時間を長くすると放熱量は大きくなり、その分だけ溶接電流値を高めに設定しなければならない。加圧力を上げれば溶接電流が材料の中を流れる範囲が広がって、電流密度が低下するため、溶接電流を上げたり通電時間を長くする必要がある。
溶接電流を大きくしたり、通電時間を長くしたりすると、投入するエネルギーが大きくなって、ナゲット20の周辺より溶融した材料が飛び出す(散りの発生)現象が発生する。これは、溶接強度の低下、溶接品質の低下、溶接不良となるおそれがある。加圧力を高くすると、溶接電流を大きくまたは通電時間を長くする調整が必要となる。いずれにしても、各調整を一緒に行う必要である。
以上のことから、見映えや強度をどの程度要求するかはユーザにとって重要であり、その調整も複雑になる。上記の傾向式がその調整を容易にする溶接条件を出力するのに寄与する。図8の(a)と(b)の場合は、溶接される2枚の板の厚さが等しいが、(c)と(d)のように2枚の厚さが相違すると、もう一歩進んだ取り扱いが必要になる。
即ち、2枚の板を溶接する場合、必要とする溶接強度は一般に、薄板側の板厚で規定される場合が多い。溶接部のせん断強度の上限は母材の強度となり、溶接部の強度が母材の強度を超えるとナゲット周囲の母材が栓抜けする形で先に破断する。厚板と薄板を溶接する場合、薄板側母材が先に破断することになる。
(c)は、平らに近い電極の場合、(d)は薄板側に電極先端が狭い電極の場合である。上側ワーク12は厚板、下側ワーク14は薄板で、ナゲット20の生成は2枚の板の接触部から始まり、徐々に2枚の板の中心部へと移行し、ナゲット20が中心部に生成される。
ナゲット20が中心部に生成されると、薄板側で見ると強度に寄与するナゲット径は小さくなる。ナゲット径は小さくなるが、溶接強度は薄板側で規定されるので、寄与するナゲット径が小さくなっても必要とする強度は満足できる。
溶接品質で見映えをよくするためには、平らまたは平らに近い電極を使用する。溶接する2枚の板の厚さが近似している場合は問題ないが、板の厚さの異なる度合いが大きくなるにつれ、寄与するナゲット径が小さくなり、必要とするナゲット径あるいは溶接強度が得られにくくなる。
通常、溶接品質の見映えは両面に要求されるわけではなく、外板と呼ばれる製品となった時の外面に要求されるだけである。反対側の面は見映えを要求されない場合が多い。また、骨組みとなるワークは強度が必要となるため厚板側となり、外側は薄板となる場合が多い。溶接品質の見映えをよくする側の電極は打痕が残らないように平らな電極を使用するとよい。
図8(d)のように、薄板側の電極に先端を狭くした電極を使用し、電流の経路が薄板側で集中するように配慮すると、ナゲット20が薄板側に偏るように生成される。このときの溶接条件は薄板側の溶接条件に近い値になる。テーブル型のような平らな電極を使用する場合、溶接条件は容易に設定できない。
通常は薄板側の溶接条件で溶接できるが、板厚比が大きくなると薄板側の溶接条件からの調整では、適正値と離れていて、熟練者であれば経験をもとに容易に調整できるが、経験が少ないと調整は容易ではない。
また、板厚の差が大きい溶接では、溶接条件は薄板側の条件から離れてしまう。厚板側の溶接条件では過度な溶接となり散りが発生して適正な溶接ができない。板厚の差が大きい場合の適正な溶接条件は薄板側の溶接条件をベースに、溶接電流と通電時間と板厚比に相関する傾向があると考えられる。
図9は厚さが異なる板の溶接のための第二のデータベースの構造例を示す図である。
本発明では、まず、入力装置28(図2)により上側ワーク12の基礎的要素32と下側ワーク14の基礎的要素32とを入力する。そして、要素選択装置36で、第一のデータベース38を検索して、2組の溶接条件50の初期値を得る。即ち、厚板側の溶接電流44と厚板側の通電時間46と厚板側の加圧力48とで一組、薄板側の溶接電流44と薄板側の通電時間46と薄板側の加圧力48とで一組を得る。
上記の二組の溶接条件50の初期値を、例えば、3種類の傾向式52のいずれかで補正する。傾向式1は薄板側の溶接条件をベースに補正をするための傾向式である。この場合の追加要件は厚さが異なる板の溶接であって板厚比が次のような場合であるということを指定すればよい。
(上板の板厚>下板の板厚)で、下板側の電極が平面電極の場合と、(上板の板厚<下板の板厚)で下板側の電極が平面電極の場合では、傾向式が異なる場合があり、個別に傾向式を設ける必要がある。ここでは(上板の板厚>下板の板厚)で下板側の電極が平面電極の場合について説明する。また、溶接される材料の材質、ワークの形状、上側の電極形状により異なる場合があるので、それぞれ傾向式を設けるとよい。
例えば、材質SPCCで上板2.0mm、下板1.0mmで、下板側が平面電極(Table形状)の場合には、第一のデータベースを検索すると、下記のデータが得られる。上板(2.0mm)は、加圧力:1.9kN、溶接電流:7.7KA、通電時間:360msecとなる。下板(1.0mm)は、加圧力:1.6kN、溶接電流:6.0KA、通電時間:250msecとなる。
図9の傾向式2を使用して、その補正率が100%の場合には、以下の計算をする。これで、補正された溶接電流44と通電時間46と加圧力48とが得られる。
加圧力=(薄板側圧力+(厚板側圧力−薄板側圧力)×係数1)×補正率%
=1.6kN+(1.9kN−1.6kN)×0.5×100%=1.75kN
溶接電流=(薄板側溶接電流+(平均溶接電流−薄板側溶接電流)×係数2)×補正率%
=6.0KA+(6.85kA−6.0KA)×1.05×100%=6.89KA
平均溶接電流=(薄板側溶接電流+厚板側溶接電流)/2=(7.7KA+6.0KA)/2
=6.85kA
通電時間=(薄板側通電時間+(平均通電時間−薄板側通電時間)×係数3)×補正率%
=250msec+(305msec−250msec)×0.5×100%=278msec
平均通電時間=(薄板側通電時間+厚板側通電時間)/2=(250msec+360msec)/2
=305msec
(メッキされた板の溶接)
図10は、メッキされた2枚の材料の溶接経過を示す説明図である。
メッキされた材料は、メッキの種類や目付量(メッキ厚)により溶接条件が異なる。メッキの材質は母材より融点が低く、通電を開始すると初期段階で電極とワークの間のメッキ層22が溶融する。電極により加圧されているために、溶融したメッキ層22は押し出され電極周囲にまとわりつく。
即ち、図10の(a)と(b)のように、メッキ層22が上側電極16や下側電極18の周囲にまとわりつく形となることで、電流の流れやすい範囲が広がる。従って、メッキなしの材料に比較して溶接電流は高く、通電時間は長くなる。
メッキ層22が薄ければ、通電初期のメッキ層22が溶融して電極にまとわりつく影響が少ないため、メッキなしの溶接条件に近い溶接条件となる。ただし溶接電流は多少高めで、通電時間は長めとなる。
メッキ層22が厚くなると、メッキなしの溶接条件に近い条件では溶接できなくなり、通常、2回通電と呼ばれる溶接方式を採用する。2回通電では、1回目の通電でメッキ層22を溶融し、電極回りにメッキ層22をまとわりつかせる。その後、冷却時間をとり、メッキ層22の溶融状態を個体状態に戻してから、安定した状態で、本通電を行う。3回以上複数回に分けて通電することもある。
本通電はメッキなしの溶接条件に近い溶接条件となるが、電極周囲にメッキ層22がまとわりついているので、溶接電流は高め、通電時間は長めとなる。メッキ層22が厚くなるに従い、初期段階でメッキ層22を電極周囲へ除去するための溶接電流や、溶接時間は高め、長めとなる。本通電でもメッキ層22が厚くなるに従い電極周囲へまとわりつくメッキ層22の量が多くなるため、溶接電流は高め、長めの傾向となる。
メッキ層22は厚くなるにつれて、厚さのバラつきが大きくなる傾向があり、メッキ厚22は目付量(g/m)で管理されている。メッキ厚さのバラつきが少ない材料の場合は1回通電、メッキ厚さのバラつきが大きい場合には2回通電を採用する。
図11はメッキされた板のための第一のデータベース構造を示す図である。
この第一のデータベースは、1回で溶接をする場合と2回で溶接をする場合のいずれの場合でも、同様の出力が出るように構成されている。すなわち基礎的要素32の入力に対して、電極の加圧力のほかに、溶接時間と溶接電流とが2組出力される。
そして、第1回目の溶接と第2回目の溶接との間の冷却時間が出力されるようになっている。この図11(b)と(c)に示した初期加圧時間は溶接開始前の準備をする時間である。保持時間は溶接終了後の、溶接部分の状態が安定するまでの後処理時間である。これらはユーザが自由に設定する。
1回で溶接する場合には冷却時間と通電時間2と溶接電流2は値が「0」で出力される。2回で溶接する場合には冷却時間と通電時間2と溶接電流2に実際の数値が当てはめられる。その結果、2回で溶接する場合にはこの図に示すように、初期加圧時間を経て通電時間1で溶接電流1を供給し、その後冷却時間を経て溶接電流2を通電時間2だけ供給してから溶接を終了するというデータが第1のデータベースから出力されることになる。このようにして得られた第1のデータベースの出力が、対応する傾向式52によって補正される。
図12は、メッキされた板のための第二のデータベースの構造例を示す図である。
2回通電の場合にはこの図の傾向式52を使用する。ここに示したのは、メッキ厚のバラつきが大きい場合の傾向式である。この場合はメッキされた板の溶接が追加要件であって、ここでは、メッキの目付量を追加要件に指定して第二のデータベースを検索すればよい。
メッキ材の場合は、通電初期のメッキの溶融による電極周囲へのまとわりつきにより電流経路がひろがることによる電流密度の低下が発生し、電極周囲へまとわり付きの影響や電流密度の低下の度合いが目付量に相関する。
目付量の最小値を基準値とし、基準値に対する目付量比率をパラメータに設定する。例えば、目付量30g/mを基準値、目付量90g/mの場合には、目付量比率=90/30=3をパラメータに設定する。以下の計算で、メッキを有する材料の特徴的な溶接条件を自動的に出力できる。
材質AAAで、基準目付量30g/m
係数1=0.03、係数2=0.03、係数3=0.03、係数4=0.07、係数5=0.07
板厚1.0mmの各溶接条件が、
加圧力=2.0kN、溶接電流1=5.0kA、通電時間1=150msec、
溶接電流2=7.5kA、通電時間2=250msec、
材質 目付量90g/m 、板厚1.0mm 、補正率100%の場合
目付量比率は、90/30=3 を設定する。
加圧力=2.0kN×(1+(3−1)×0.03)×100%=2.12kN
溶接電流1=5.0kA×(1+(3−1)×0.03)×100%=5.3kA
通電時間1=150msec×(1+(3−1)×0.03)×100%=159msec
溶接電流2=7.5kA×(1+(3−1)×0.07)×100%=8.6kA
通電時間2=250msec×(1+(3−1)×0.07)×100%=285msec
なお、1回通電が可能な場合もある。1回通電の傾向式は図示しないが、上記の傾向式の1回分の式で係数が異なる下記のような式となる。
加圧力=選出加圧力×(1+(目付量比率−1)×係数1)×補正率%
溶接電流1=選出溶接電流1×(1+(目付量比率−1)×係数2)×補正率%
通電時間1=選出通電時間1×(1+(目付量比率−1)×係数3)×補正率%
係数1=0.03、係数4=0.08、係数5=0.08
上記の演算装置42から溶接条件50が出力された後に、ユーザが製品に対して期待している溶接品質、例えば、強度や見映え等が得られるように。図2にした示した画面を操作して、溶接条件の調整が行われる。
図2に示した調整ボタン56は、溶接条件50を個別に増減する操作のためのボタンである。調整範囲58には、調整上限と調整下限とが表示されている。調整をしたときの、増減操作の範囲を自動的に定めるものである。これ以上増減すると目的とする溶接品質に近づけなくなるという範囲に、自動的に設定をして、操作ミス等を防止する。
調整間隔60は、調整ボタン56を1回クリックして調整できる幅を示すもので、目的とする溶接品質を通りすぎないで目的に少しずつ近づくように、適切な幅が自動的に設定される。調整上下限解除ボタン62は、強制的に調整上下限を解除するボタンである。このときは、自由に調整範囲を超えた調整ができる。調整により最適値が見つかったときには、データ保存ボタン64をクリックして、その結果が保存できる。
例えば溶接電流の値を大きくして、期待する品質に近づくかを判断する。期待する品質に近づけばさらにその値を大きくし、期待する品質より悪くなるときは、その値を小さくして調整を行なう。調整量を小さくして一歩ずつ目的とする品質に近づけていけばよいが、大変な時間がかかる。調整量を大きくすると最適値を通りすぎたり戻りすぎたりすることになる。
熟練者であれば、少ない回数の溶接テストで必要とする溶接条件へ到達できるが、経験が少ないと一回の調整量が大きすぎたり、条件を間違えて入力したりして、最適値に到達するのに時間がかかる。調整範囲58や調整間隔60を自動設定することにより、こうした問題を解決できる。
図13は抵抗溶接機の変形例のブロック図で、図14は第三のデータベースの構成例を示す図、図15はその操作画面例を示す図である。
本発明では、上記のように、目安となる調整範囲の上下限を設けて、調整量に制限をかけ、間違えてかけ離れた値に調整することを防ぐ機能を設けた。
例えば、図2の例で説明すると、通電時間の調整が有効な範囲を170msecから230msecに制限し、かつ、溶接条件の切り換えを2msecきざみで行うように、自動的に指定している。第二のデータベース40から、これらを指定するデータを出力できるようにすれば、調整装置54を適切に使用して最適値に効率よく到達できるようになる。
また、条件の切り替えに複数回の操作を必要とすると、暗黙的に一回の調整量を制限することができ、適度な調整が可能になる。しかし、必要としている溶接品質によっては目安とする調整範囲を超える調整が必要となる場合が存在する。
例えば、溶接強度が非常に低くてもよい(付いていればよい)レベルでよいとする一方で、見映えは全く溶接箇所が見分けられないレベルが要求される場合、通常の目安の範囲を超えての調整が必要となる。その場合には調整範囲に制限を設けないで調整を行うとよい。調整上下限解除ボタン62(図2)を操作した場合には、制限を越えている状態で操作でき、そのかわりに制限外の表示を行って注意を喚起するとよい。
例えば、通電時間を200msecから210msecへ調整する。目安とする調整範囲は、170msec〜230msecである。
調整ボタン56(図2)を操作すると、一回に加算、減算する調整(調整ステップ)量は2msecである。第一のデータベース38から出力された溶接条件が要求している溶接品質に対してどの程度近似しているかによるが、基準値の1%〜2%の範囲で調整間隔を設定するとよい。調整範囲の上限値や下限値も含めて第二のデータベース40に傾向式とともに記憶させておくとよい。
また、ユーザの製品(ワーク)の材質及び形状が類似していれば、溶接条件は同種の傾向を示す場合が多い。従って、ユーザが調整して得た結果と関連する傾向式等を保存しておくことが好ましい。この実施例では図13に示すように、第三のデータベース41を設けることにした。
例えば、第三のデータベース41には、図14に示すように、第一のデータベース38から出力された溶接条件の初期値や調整値や、使用した傾向式やそのパラメータ等を、任意の形式のファイルにして記憶させるとよい。この第三のデータベース41は、ユーザが最適化をした溶接条件でその後溶接作業ができるように、必要なデータを記録しておくことに使用するとよい。
入力する要素の組合せが第三のデータベース41に既に存在しているような場合には、それを読み出して、その溶接条件の調整作業が適正かを確認してすぐに利用できる。また、あるいは、さらに調整作業が必要であっても、その時間短縮ができる。いずれかの要素が一致していても、他の要素が一致しないものが第三のデータベース41に存在している場合、その溶接条件を出発点にすれば、調整作業の時間短縮ができる。
一方、ユーザが将来、これまでとは別の製品について、溶接条件を求めたい場合にも、第三のデータベース41に記録した結果を利用することができる。そのときは、第三のデータベース41に記憶させたデータの中で、同じ要素の組合せがあれば、それらの平均化、多数決、最小値、最大値等の処理をして、新たなデータを生成する。それを第一のデータベース38や第二のデータベース40に付け加える。これにより、その後、要素を入力して溶接条件を得るとき、ユーザの求める溶接品質に近い結果を得る溶接条件が出力される。
ユーザの製品(ワーク)の溶接品質が、抵抗溶接装置のメーカーが想定している製品の強度や見栄えなどの溶接品質に近ければ、上記の演算装置の出力した溶接条件をわずかな調整で使用できる。しかし、ユーザが求める溶接品質が特殊な場合には、大きな調整を必要とする。
第三のデータベース41は、ユーザが常時生産する製品の溶接条件や、類似する製品の溶接条件を求めるのに適する。さらにこの第三のデータベース41を使用して、上記の第一のデータベース38や第二のデータベース40に新たなデータを追加することができる。
これには、第三のデータベース41の内容を学習する機能を設ける。即ち、第三のデータベース41から、同じ要素の組合せを抽出して、それらの要素を入力したときに出力される溶接条件の初期値や傾向式のパラメータを最適化する。例えば、(平均化、多数決、最小値、最大値)といった方法を採用すると良い。
例えば材質SPCC、上板厚1.0、上電極Φ16−8Rの要素を入力して得られた溶接条件のファイル保存を10回行っていた場合、その10個のデータに対して溶接条件の項目ごとに平均値を求め、1個のデータに集約する。多数決の場合も一番多いものを選出するのではなく、例えば通電時間であれば10msecごとに区切り、10〜19、・・・、100〜119、120〜129、・・・の範囲ごとに個数を求めて多数決で多い範囲のものを選出しその範囲の平均値を1個の値とすることもできる。
また、例えば、既存の第二のデータベース40から出力された傾向式52を使用して演算処理した結果得られた溶接条件と、ユーザが最適化した溶接条件とを比較する。そして、その結果を使って、傾向式52のパラメータを逆算し、第二のデータベース40に新たなデータを記憶させる。例えば、図4の加圧力の補正のための傾向式52であれば、最適化した加圧力から係数1を逆算して、新たな係数1として保存する。
この操作には、例えば、図15に示したような運転画面を使用する。この運転画面68で、例えば、通電時間に新たな設定値を設定するときは、設定ボタン70をクリックする。これで実際の溶接が可能になる。さらに、保存先指定部74を第三のデータベース41に指定して、保存ボタン72をクリックすると、設定値が第三のデータベース41に記憶される。そして、学習ボタン76をクリックすると、上記のように新たなパラメータを持つ傾向式が第二のデータベース40に記憶される。
なお、上記の実施例では、第一のデータベース38と第二のデータベース40と第三のデータベース41がそれぞれ独立して設けられている。しかし、これらのデータベースには共通する項目も存在するため、共通しない項目も全て混在させたひとまとまりのデータベースに統合することもできる。即ち、実質的に上記の役割を持つ第一のデータベース38と第二のデータベース40と第三のデータベース41が存在すればよい。
また、上記の装置を制御するコンピュータプログラムやデータベースは、装置本体に装着される各種の記憶媒体のほか、ネットワークを通じて接続されたサーバ等の記憶装置に記憶されていてもよい。
12 上側ワーク
14 下側ワーク
16 上側電極
18 下側電極
20 ナゲット
22 メッキ層
26 電源装置
28 入力装置
30 表示装置
32 基礎的要素
34 追加要素
36 要素選択装置
38 第一のデータベース
40 第二のデータベース
41 第三のデータベース
42 演算装置
44 溶接電流
46 通電時間
48 加圧力
50 溶接条件
52 傾向式
54 調整装置
56 調整ボタン
58 調整範囲
60 調整間隔
62 調整上下限解除ボタン
64 データ保存ボタン
66 相対値調整部
68 運転画面
70 設定ボタン
72 保存ボタン
74 保存先指定部
76 学習ボタン

Claims (9)

  1. 複数の材料を重ね合わせたワークを電極で挟んで圧力を加えて、電極間に溶接電流を流す抵抗溶接装置であって、
    上記の溶接電流と通電時間と上記の電極によるワークへの加圧力とを含む溶接条件を決定するために、複数の要素を入力するための入力装置と、
    この入力装置により入力された複数の要素の中から、上記のワークを構成する材料の材質と厚さと電極の種別を含む基礎的要素を選択して、第一のデータベースを検索する処理を実行し、上記以外の追加要素を選択して、第二のデータベースを検索する処理を実行する要素選択装置と、
    第一のデータベースにより検索された溶接条件の初期値に対して第二のデータベースの検索結果を使用した補正演算処理を実行して、上記の溶接電流と通電時間と加圧力とを含む溶接条件を出力する演算装置と、
    この演算装置の出力した溶接条件を表示する表示装置と、
    この演算装置の出力した溶接条件を使用して、ワークの溶接制御を行う電源装置とを備え、
    上記の第一のデータベースは、上記の基礎的要素と対応する溶接電流と通電時間と加圧力を含む溶接条件を検索してその検索結果を出力するためのデータを蓄積したもので、
    上記の第二のデータベースは、上記の追加要素の性質に応じて第一のデータベースの出力した溶接条件の初期値を補正するための単数または複数の傾向式を含むデータを、追加要素または追加要素の組み合わせに対応させて蓄積したものであることを特徴とする抵抗溶接装置。
  2. 厚さの異なる複数の材料を重ね合わせて溶接するとき、
    入力装置は、それぞれの材料毎に、その厚さを含む基礎的要素を受け付けて、
    要素選択装置は、それぞれの材料の基礎的要素を順に選択して第一のデータベースを検索し、それぞれの材料について溶接条件の初期値を出力させ、
    要素選択装置は、厚さの異なる複数の材料を溶接するという追加要素により第二のデータベースを検索して、板厚比をパラメータに含む溶接条件の補正演算のための傾向式を選択して出力させ、
    上記の演算装置は、上記の傾向式を使用して補正演算処理を実行して、溶接電流と通電時間と加圧力とを含む溶接条件を出力することを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接装置。
  3. メッキが施された材料の溶接を複数回に分けて行うとき、
    第一のデータベースは、各回毎の溶接電流と通電時間とこれらの溶接の間の冷却時間とを出力し、
    要素選択装置は、メッキが施された材料の溶接を行うという追加要素により場合の、第二のデータベースを検索して、基準値に対する目付量比率をパラメータに含む溶接条件の補正演算のための傾向式を選択して出力させ、
    上記の演算装置は、第二のデータベースから出力された傾向式を使用して、一回目と二回目の溶接電流と通電時間の補正演算処理を行って、溶接電流と通電時間と加圧力とを含む溶接条件を出力することを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接装置。
  4. 上記の要素選択装置が、複数種類の要素を使用して、第一のデータベースと第二のデータベースを検索して、
    上記の演算装置から出力される溶接条件の標準値での溶接品質に対する、要求される溶接品質の相対的な割合を指定する手段が設けられており、
    要素選択装置は、第二のデータベースを検索して、複数種類の追加要素の組み合わせに対応する、溶接条件の補正演算のための傾向式を出力させ、
    上記の演算装置は、第一のデータベースの検索結果に対して、上記の相対的な割合を傾向式のパラメータに含めて、上記の傾向式を用いた溶接条件の補正演算処理を行って、溶接電流と通電時間と加圧力とを含む溶接条件を出力することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の抵抗溶接装置。
  5. 上記の入力装置には、演算処理の結果上記の表示装置に表示された溶接条件を、予め制限した範囲で制限された幅で段階的に増減して、新たな溶接条件を得る調整装置が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抵抗溶接装置。
  6. 上記の調整装置により得られた新たな溶接条件を蓄積する第三のデータベースを備えたことを特徴とする請求項5に記載の抵抗溶接装置。
  7. 上記の調整装置により得られた新たな溶接条件から、使用した傾向式のパラメータを逆算して、新たな傾向式を得て、第二のデータベースまたは第三のデータベースに記憶させることを特徴とする請求項6に記載の抵抗溶接装置。
  8. コンピュータを、請求項1に記載の入力装置と要素選択装置と演算装置と表示装置として機能させる抵抗溶接機の制御用コンピュータプログラム。
  9. 請求項8に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータで読取り可能な記録媒体。
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