以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、路面判断装置を車両に搭載又は配置した場合を例にして説明する。
図1は、本実施形態に係る路面判断装置100の構成を示す。図1に示すように、本実施形態に係る路面判断装置100は、アンテナ装置1と、信号処理装置2と、制御装置10を有する。これらは、相互に情報の授受が可能である。路面判断装置100の判断結果は、車載装置200において利用できる。車載装置200は、車両コントローラ20、走行支援装置30、及び出力装置40を有する。路面判断装置100は、車載装置200と、情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
アンテナ装置1は、車両の周囲に存在する対象物から放射されるマイクロ波、ミリ波などの電磁波を受信する。電磁波は特に限定されず、30GHz〜10THz程度の電磁波である。アンテナ装置1は、対象物から放射される熱に応じた電磁波を受信するパッシブ方式の装置であってもよいし、ミリ波などの電磁波を対象物に向けて照射し、対象物から反射される反射波(放射される電磁波)を受信して対象物の像を認識するアクティブ方式の装置であってもよい。本実施形態のアンテナ装置1は、ホーンアンテナなどの複数のアンテナ(素子)1a〜1xが二次元状に配列されたアレイアンテナと、スキャン機構と、レンズとを備える。
アンテナ装置1は、対象物から放射角(対象からアンテナ装置1への放射方向と垂直方向とがなす角度)で放射される電磁波を受信する。アンテナ装置1は、車両が走行する路面に対して主に略水平方向に放射される水平偏波成分と、車両が走行する路面に対して主に略垂直方向に放射される垂直偏波成分とを受信する。垂直偏波成分の電磁波を受信するアンテナ1a〜1xと、水平偏波成分の電磁波を受信するアンテナ1a〜1xとは、互いに隣接するように、市松模様(:checkered pattern)状に配置される。
車両の周囲に存在する対象物は特に限定されず、(1)車両が走行する道路の路面、(2)道路の路面に積層された雪、泥、砂、砂利、木材チップなどの粒状材料、アスファルト、(3)標識、信号、ガードレールなどの道路構造物、(4)建物などの立体物、(5)歩行者、他車両などの移動体、(6)天空(特開2004−177188号公報参照)を含む。
アンテナ装置1は、各アンテナ1a〜1xが受信した電磁波を、その受信強度に応じた受信信号に変換し、信号処理装置2に出力する。垂直偏波成分の電磁波を受信したアンテナ1a〜1xは、垂直偏波信号を受信信号として信号処理装置2に出力する。水平偏波成分の電磁波を受信したアンテナ1a〜1xは、水平偏波信号を受信信号として信号処理装置2に出力する。
信号処理装置2は、アンテナ装置1のアンテナ1aから出力された垂直偏波信号および水平偏波信号に基づいて、電波画像データを生成する。信号処理装置2は、各アンテナ1a〜1xから出力された垂直偏波信号をアンテナ1a〜1xの配列位置に応じて二次元に配列することにより、垂直偏波画像を生成する。信号処理装置2は、各アンテナ1a〜1xから出力された水平偏波信号をアンテナ1a〜1xの配列位置に応じて二次元に配列することにより、水平偏波画像を生成する。垂直偏波画像の各画素の値は、垂直偏波信号の値に対応する。水平偏波画像の各画素の値は、水平偏波信号の値に対応する。電波画像データの生成手法については特に限定されず、本願出願時に知られたミリ波イメージング法などの電波画像の生成手法を適宜に用いることができる
なお、アンテナ装置1と信号処理装置2は一体として構成してもよいし、別体として構成してもよい。アンテナ装置1と信号処理装置2と制御装置10は、一体として構成してもよいし、分散して配置してもよい。アンテナ装置1と信号処理装置2と制御装置10はすべて車両に搭載してもよいし、一部を車両に搭載し、他部を車両外に設けてもよい。たとえば、アンテナ装置1及び/又は信号処理装置2を道路側の外部装置として設け、外部装置が生成した電波画像データに基づいて、自車両の現在位置に応じて選択又は変換された電波画像データを、ITS(Intelligent Transport Systems)などの道路交通管理システムを介して取得してもよい。
本実施形態に係る制御装置10について説明する。
制御装置10は、路面を判断する処理を実行するプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とを備える。制御装置10は、車両に搭載してもよいし、車両に配置可能な携帯装置として構成してもよい。
制御装置10は、車両が走行する路面の高さが変化する領域の境界を検出する検出処理と、境界の検出結果に基づいて路面を判断する判断処理とを実行する。以下、各処理について説明する。
図2Aは、車両の前方の映像の画像CMと、その一部についての電波画像データRMとを重畳して表示する図である。同図に示すように、車両が走行する道路の路面には積雪が存在する。路面の積雪は、道路を走行した車両(車輪)の軌跡に沿う轍(わだち)RTL,RTRが形成されている。轍(わだち)とは、過去に通過した車が残した車輪の跡である。本例では、路面に雪が積もった場合を例にして説明するが、本実施形態の路面判断装置/路面判断方法は、車の通過により変形する路面を走行する場合に使用できる。車の通過により路面が変形する場合とは、路面が泥、特に水分を含む泥で覆われている場合、路面が砂、砂利、チップ材(木材チップ、貝殻チップ、廃材チップなど)、粒状材料などで覆われている場合、路面構造体(アスファルト層)の劣化や地形の変動などにより路面が変形している場合を含む。
材質、温度が異なる対象物から放射される電磁波は、垂直偏波成分の受信強度、垂直偏波信号の値、水平偏波成分の受信強度、水平偏波信号の値、垂直偏波信号と垂直電波信号の強度比が異なる。このため、対象物から放射される電磁波の垂直電波信号及び水平電波信号から得られる電波画像データは、対象物の存在及び位置を示す画像となる。
図2Bは、横軸を平均受信強度とし、縦軸を強度比として、対象物から放射された電磁波の受信信号を試験的にプロットした図である。本例における「強度比」は、垂直偏波信号の強度に対する水平偏波信号の強度とした。図2B中上側(矢印P)方向の座標であるほど、水平偏波信号の強度が相対的に強く、図中下側(矢印Q)方向の座標であるほど、垂直偏波信号の強度が相対的に強い。強度比は、水平偏波信号の強度に対する垂直偏波信号の強度としてもよい。
同図に示すように、予め設定された電磁波の受信条件の下においては、対象物ごとに異なる平均受信強度(値/値域)を示し、対象物ごとに異なる強度比(値又は値域)を示す。つまり、横軸を平均受信強度とし、縦軸を強度比とした座標において、プロットの座標位置に基づいて、対象物を特定できる。なお、平均受信強度とは、水平偏波信号の強度と垂直偏波信号の強度を平均した強度である。一例ではあるが、同図に示す例においては、Ob1は天空から放射された電磁波に対応し、Ob2は温度が25度程度の対象物から放射された電磁波に対応し、Ob3は建物から放射された電磁波、道路外側の雪壁から放射された電磁波に対応し、Ob4は路面上の積雪の壁(高さの変化がある部分)に対応し、Ob5は路面から放射された電磁波に対応し、Ob6は路面のうち、アスファルトから放射された電磁波に対応し、Ob7は人間から放射された電磁波に対応する。同図に示すプロットモデルを参照すれば、生成された電波画像データ(垂直偏波信号、水平偏波信号)に基づいて、対象物を特定することができる。
図2Aに示す電波画像データRMにおいて、積雪後に外的な力が加えられていない新雪の部分は一様の画像(画素値)となっているが、通過した車両によって雪が押し固められ又は押し退けられた轍の部分については、異なる画像(画素値)となっている。電波画像データRMにおいて薄墨が付された部分は新雪部分又は雪が残っている部分であり、薄墨が付されていない部分は雪が取り除かれ、露出したアスファルト等に対応する部分である。薄墨が付された部分と付されていない部分が混在している領域は、雪が点在する轍に対応する部分である。このアスファルトから放射された電磁波に基づく電波画像データの画素値は、図2BのOb5(路面)のうち、Ob6(アスファルト)に対応する画素値を示す。薄墨が付された部分と薄墨が付されていない部分が混在する領域において、薄墨が付されていない部分の端部が並ぶ部分(破線Edに沿う部分)は、路面の高さが変化する部分に対応する。本実施形態において、路面とは、道路の表面であって、アスファルトの上に雪、泥、砂利等などが積層されている場合には、その雪、泥、砂利等の最も上方向(鉛直方向とは逆方向、天空側)の露出された表面である。通過車両によって轍が形成されると、この轍の表面(雪が押し固められ又は押し退けられた部分の表面)の高さと、轍に接する積雪部分の表面の高さには差が生じる。轍の表面(凹部の底面)から積雪部分の表面に至る部分には、上方向(鉛直方向とは逆方向)に延在する壁が形成されている。
路面の高さが変化する領域(壁が形成された領域)の境界を含む領域において、電波画像データにおける垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比は変化する。この強度比の変化量は、路面の高さが変化しない領域の電波画像データにおける強度比の変化量よりも大きい。制御装置10は、電波画像データにおいて、隣り合う画素/画素群に対応づけられた垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比を比較し、その強度比の変動量(差分)が変動閾値以上である場合には、その画素/画素群に対応する座標点を変動点として抽出する。ここで、強度比は、単一の画素ごとに算出してもよいし、所定範囲に含まれる複数の画素群ごとに算出してもよい。強度比のプロットを繋ぐ予測曲線(最小近似式など)を求め、プロット間を結ぶ補間線形の微分値が、変動閾値以上である場合に、そのプロットを変動点として抽出してもよい。
強度比の変動点の抽出処理に用いられる変動閾値は予め設定できる。路面の高さが変化する領域(路側領域から路面領域に遷移する領域)の強度比に基づいて変動閾値を定義してもよい。変動閾値は、実測された電波画像データから求められたノイズ量に基づいて設定してもよい。特に限定されないが、変動閾値は、高さの変化のない路面の変化を計測した場合に得られる強度比の誤差/ノイズの2〜4倍、特に2倍程度にする。実測された電波画像データの路側領域から路面領域に遷移する部分の強度比に所定値を加算又は減算して変動閾値を定義してもよい。変動閾値は、路面を構成する材料、たとえば、アスファルト、雪、泥、砂、砂利、チップなどの材料ごとに設定できる。各材料によって信号の強度比は異なるからである。また、積雪量、気候、交通量などによって路面の高さの変化量は異なることを考慮し、変動閾値を、地域ごと、道路ごと、リンクごとに設定してもよい。
制御装置10は、抽出した強度比の変動点の連続性を判断する。制御装置10は、抽出された変動点に所定の関係性/傾向がある場合には「変動点に連続性がある」と判断する。制御装置10は、最小二乗法などの近似式を用いて、座標に示された変動点を繋いで連続する線形を導ける場合には、「変動点に連続性がある」と判断する。たとえば、制御装置10は、座標上で互いに隣り合う変動点を比較し、変動点の強度比の差が一定となる傾向、変動点の強度比が減少又は増加(変動)する傾向、受信強度が大きくなるにつれて、変動点の強度比が減少/増加(変動)する傾向が見いだせた場合には、変動点に連続性があると判断する。
また、本実施形態の路面判断装置100は、路面の高さが変化する領域の境界を、轍の境界として検出する。本実施形態では、轍に対応する路面領域から放射される電磁波の信号と、積雪部分(壁部分)から放射される電磁波の信号とは異なることを利用して、路面領域の境界を検出する。
図2Aの電波画像データRMにおいて示された、薄墨が付されていない部分の端部Edは、路面の高さが変化する領域の境界として検出できる。先述した図2Bの「平均受信強度(横軸)に対する強度比(縦軸)」の座標においては、端部Edは、対象物Ob4の積雪の壁(高さの変化がある部分)に対応する。図2Bにおいて、縦軸の強度比は、垂直偏波信号の強度に対する水平偏波信号の強度である。図2Bにおいて、プロットの位置が座標の上側であるほど、水平偏波信号の強度が相対的に高く、プロットの位置が座標の下側であるほど、垂直偏波信号の強度が相対的に高い。なお、強度比は、水平偏波信号の強度に対する垂直偏波信号の強度としてもよい。平均受信強度とは、水平偏波信号の強度と垂直偏波信号の強度を平均した強度である。図2C(a)に示す電波画像データRMAは、図2Aの端部Edを含む領域を拡大した画像である。路面判断装置100は、電波画像データRM(図2A参照)から各画素の垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比を算出し、垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比が変動閾値(設定された閾値)以上である変動点を抽出し、変動点が連続する特徴部を抽出する。抽出された変動点間に関係式が導かれる場合にはそれらの変動点は連続性を有する。図2C(b)のデータRMBは、変動点が連続する特徴部を示す。図2C(b)に示すように、特徴部は矢印Coに沿って連続しており、図2Aで示す端部Eb、図2Bに示す対象物Ob4(積雪の壁:高さの変化がある部分)に対応する。このように、路面判断装置100は、電波画像データRMにおける垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比の変動点の連続性に基づいて、路面の高さが変化する領域の境界を検出する。なお、本実施形態においては「強度比」を、垂直偏波信号の強度に対する水平偏波信号の強度として説明したが、「強度比」を水平偏波信号の強度に対する垂直偏波信号の強度とすることもできる。この場合における垂直偏波信号と水平偏波信号の強度比の変動点の連続性も路面の高さが変化する領域の境界に対応する。
図3Aは、横軸が平均受信強度、縦軸が強度比とした座標系に、得られた電波画像データをプロットした図である。本図の強度比は、垂直偏波信号の強度に対する水平偏波信号の強度の比である。図3Aにおいて、プロットの位置が座標の上側であるほど、水平偏波信号の強度が相対的に高く、プロットの位置が座標の下側であるほど、垂直偏波信号の強度が相対的に高い。なお、強度比は、水平偏波信号の強度に対する垂直偏波信号の強度としてもよい。平均受信強度とは、水平偏波信号の強度と垂直偏波信号の強度を平均した強度である。
図3Aに示す座標系に、道路の走行路の外側の領域を示す路側(路肩)領域に存在する対象物がプロットされる範囲(路側領域)と、道路の走行路の内側の領域を示す路面領域に存在する対象物(路面)がプロットされる範囲(路面領域)をマークした。図2Bに例示した、試験的に計測された電波画像データに基づく対象物ごとの強度比プロットのマップを用いて、図3Aに示す座標系に路側領域と路面領域をマークした。符号Ctで示す位置は、電波画像データの中央である。
図3Aに示す路面領域に、図3B(a)(b)に示す評価線Sb1の強度比をグラフSb1として示す。図3B(a)は垂直偏波画像と、評価線Sb1を示し、図3B(b)は水平偏波画像と、評価線Sb1を示す。図3B(a)(b)に示す垂直偏波画像及び水平偏波画像には凹凸のある路面の像が表れている。図3AのグラフSb1は、評価線Sb1上の画素/画素群の強度比のプロットを繋げたものである。評価線Sb1は、路面の高さに変化が生じている領域に含まれる。このため、図3Aに示すグラフSb1上の強度比は、隣接する画素の強度比とは変動閾値以上の差がある変動点を含む。本実施形態では、強度比の変動点が連続する場合には、その強度比の変動点が連続する線に沿って、実在する路面の高さが変化しているという知見に基づいて、強度比の変動点の連続線を「路面の高さが変化する領域の境界」として検出する。つまり、図3AのグラフSb1は「路面の高さが変化する領域の境界」の強度比を示す。
本実施形態の路面判断装置100は、電波画像データにおける垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比の変動点の連続性に基づいて、路面の高さが変化する領域の境界を検出する。轍は変形が可能であり、自然物により形成され、環境によって変化する。轍の形状は場所や状況によって異なる。轍の形状は、積雪の状態や交通量によっても変化するし、車両の通過に伴って経時的にも変化する。また、轍を形成する材料(泥、砂、砂利)によっても異なる。このため、画像上に設定した評価線上の信号値の推移は断絶しやすく、連続性のある特徴(信号の特徴)を追跡することは難しい。単に、信号値の強度の差に基づいて轍領域の境界を検出するのではなく、本実施形態では垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比の変動点の連続性に基づいてその境界を検出する。このように、垂直偏波信号と水平偏波信号の強度比に着目し、その変動点の連続性に基づいて路面の高さが変化する領域の境界を検出することにより、電波画像データの信号値が大きく変動した場合の影響を排除できるので、長い距離に渡って路面を検知できる。本実施形態では、路面に形成された轍に対応する電波画像データに着目し、その電波画像データ上の特徴に寄与する強度比の特性を分析することにより、強度比の変動点の連続性から轍を含む路面の高さが変化する境界を検出することを可能とした。
本実施形態の路面判断装置100は、電波画像データにおける水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度の変化が所定値以上となる位置を、路面の高さが変化する領域の境界の位置として検出する。図3Aに示すように、グラフSb1は路面領域を示す矩形の枠中右側奥手(右上)から図中左側手前(左下)に延在する。つまり、車両近傍から車両進行方向の消失点に向かって電波画像データの評価線Sb1上の強度比を観察したときに、グラフSb1において、垂直偏波信号の強度が増加又は水平偏波信号の強度が減少するとともに、平均受信強度が減少する傾向が観察できる。平均受信強度とは、水平偏波信号の強度と垂直偏波信号の強度を平均した強度である。
路面判断装置100は、水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度の変化が所定値以上である位置を、路面の高さが変化する領域の境界の位置として検出する。水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度の変化が大きい場所においては、材質、温度が異なる可能性が高いため、信号の強度が変化する位置を路面の高さが変化する領域の境界の位置と推測する。また、路面の高さが変化する領域の境界は、道路の延在方向に沿って形成されるので、アンテナ装置1から離隔するにつれて、信号の強度は減少(変化)することを利用し、信号の強度が変化する位置を路面の高さが変化する領域の境界の位置と推測する。強度比の変動点の連続性だけではなく、強度の変化の観点からも路面の高さが変化する領域の境界を検出できるので、轍の位置検出の精度を高めることができる。境界の位置に応じた轍の位置を正確に検出できる。所定値は特に限定されず、強度の変化のノイズの量に基づいて適宜に設定することができる。
本実施形態の路面判断装置100は、電波画像データにおける強度比から境界の存在領域を推測し、存在領域内の強度比の変動点の連続性に基づいて境界を検出する。先述したように、対象物に応じて強度比が異なるので、強度比により対象物を絞り込むことができる。図2Bに示すように、予め、試験的に撮像した路面の電波画像データに基づいて、路面及び路側から放射される電磁波の信号を得ることができるので、路面の高さが変化する領域の境界が存在する位置又は領域を絞り込むことができる。対象物を絞り込んでから、その存在領域内の電波画像データにおける強度比の変動点の連続性に基づいて境界を検出することにより、処理負荷を低減しつつ境界の位置の検出精度を向上させることができる。つまり、境界に対応する轍の位置を正確に検出できる。
図4Aは、横軸が平均受信強度、縦軸が強度比とした座標系に、得られた電波画像データをプロットした図である。本図の強度比は、垂直偏波信号の強度に対する水平偏波信号の強度の比である。図4Aにおいて、プロットの位置が座標の上側であるほど、水平偏波信号の強度が相対的に高く、プロットの位置が座標の下側であるほど、垂直偏波信号の強度が相対的に高い。なお、強度比は、水平偏波信号の強度に対する垂直偏波信号の強度としてもよい。
図4Aに示す座標系に、道路の走行路の外側の領域を示す路側(路肩)領域に存在する対象物がプロットされる範囲(路側領域)と、道路の走行路の内側の領域を示す路面領域に存在する対象物(路面)がプロットされる範囲(路面領域)をマークした。図2Bに例示した、試験的に計測された電波画像データに基づく対象物ごとの強度比プロットのマップを用いて、図4Aに示す座標系に路側領域と路面領域をマークした。符号Ctで示す位置は、電波画像データの中央である。
図4Aに示す路面領域に、図4B(a)(b)に示す評価線Sb2a,評価線Sb2bの強度比をグラフSb2a,グラフSb2bとして示す。図4B(a)は垂直偏波画像と、評価線Sb2a,評価線Sb2bを示し、図4B(b)は水平偏波画像と、評価線Sb2a,評価線Sb2bを示す。両図において、評価線Sb2bは轍などの路上に形成された路面高さが低い(異なる)領域(凹部領域)に含まれる評価線である。路面高さが低い凹部領域に薄墨を付して示す。評価線Sb2aは、轍などの凹部領域に連なる、路面高さが一定の領域(平面領域)に含まれる評価線である。図4B(a)(b)に示す垂直偏波画像及び水平偏波画像には、轍などの凹部領域と、これに連なる平坦領域を含む路面の像が表れている。
図4AのグラフSb2aは、評価線Sb2a上の画素/画素群の強度比のプロットを繋げたものである。評価線Sb2aは、路面の高さの変化が比較的小さい領域に含まれる。このため、図4Aに示すグラフSb2aには、強度が変化せず、強度比が縦軸方向に沿って延びる部分Hが存在する。評価線Sb2bは、路面の高さの変化がある領域(たとえば轍の領域)に含まれる。このため、図4Aに示すグラフSb2bには、車両近傍から消失点に向かって、強度が低下し、水平偏波信号の強度が増加又は垂直偏波信号の強度が低下する。図4Aに示すグラフSb2b上の強度比は、隣接する画素の強度比とは変動閾値以上の差があるため、変動点として抽出される。本実施形態では、強度比の変動点が連続する場合には、その強度比の変動点が連続する線に沿って、実在する路面の高さが変化しているという知見に基づいて、強度比の変動点の連続線を「路面の高さが変化する領域の境界」として検出する。つまり、図4AのグラフSb2bは路面の高さが変化する領域の境界」の強度比を示す。
路面判断装置100は、強度が変化せず、強度比が縦軸方向に沿って延びる部分Hを含むグラフSb2aと、車両近傍の電波画像データにおいて、近似するカーブを持つグラフSb2bとを一対のグラフとしてグループ化できる。グラフSb2bは路面に形成された轍に対応し、グラフSb2aは轍に挟まれた新雪(踏み固められていない積雪領域)に対応すると認識できる。路面判断装置100は、強度が共通するプロットの強度比を比較し、その差に基づいて路面の高さが変化する領域の境界を検出できる。また、路面に形成された轍に対応するグラフSb2bは、平坦領域に対応するグラフSb2aよりも水平偏波信号が強い又は垂直偏波信号が弱い傾向がある(強度比を水平偏波信号の強度に対する垂直偏波信号の強度とした場合には、垂直偏波信号が強いまたは水平偏波信号が弱い傾向がある)ので、それにより、グループ化した複数のグラフから路面の高さが変化する領域の境界を検出できる。
本実施形態の路面判断装置100は、水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度から境界の存在領域を推測し、その存在領域内の電波画像データにおける強度比の変動点の連続性に基づいて、路面の高さが変化する領域の境界を検出する。先述したように、対象物に応じて水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度が異なるので、強度により対象物を絞り込むことができる。対象物を絞り込んでから、その存在領域内の電波画像データにおける強度比の変動点の連続性に基づいて境界を検出することにより、処理負荷を低減しつつ境界の位置の検出精度を向上させることができる。つまり、境界の位置に応じた轍の位置を正確に検出できる。
本実施形態の路面判断装置100は、電波画像データにおける、車両の進行方向に沿う画素に対応する強度比の変動点の連続性を判断し、その判断結果に基づいて境界を検出する。轍などの路面の高さが変化する領域の境界は、車両の進行方向に沿って延在する、又は電波画像データの消失点に向かって延在するので、判断処理を行う画素領域を絞り込むことができる。これにより、処理負荷を低減しつつ境界の位置の検出精度を向上させることができる。
本実施形態の路面判断装置100は、電波画像データにおける、消失点に向かう方向に沿う画素に対応する強度比の変動点の連続性を判断し、その判断結果に基づいて境界を検出する。轍などの路面の高さが変化する領域の境界は、車両の進行方向に沿って延在するので、判断処理を行う画素領域を絞り込むことができる。これにより、処理負荷を低減しつつ境界の位置の検出精度を向上させることができる。
図5A、図5Bに基づいて、路面の高さが変化する領域が複数検出される例を説明する。図5Aは、横軸が平均受信強度、縦軸が強度比とした座標系に、得られた電波画像データをプロットした図である。本図の強度比は、垂直偏波信号の強度に対する水平偏波信号の強度の比である。図5Aにおいて、プロットの位置が座標の上側であるほど、水平偏波信号の強度が相対的に高く、プロットの位置が座標の下側であるほど、垂直偏波信号の強度が相対的に高い。なお、強度比は、水平偏波信号の強度に対する垂直偏波信号の強度としてもよい。
図5Aに示す座標系に、図3A、図4Aと同様に、道路の走行路の外側の領域を示す路側(路肩)領域に存在する対象物がプロットされる範囲(路側領域)と、道路の走行路の内側の領域を示す路面領域に存在する対象物(路面)がプロットされる範囲(路面領域)をマークした。図2Bに例示した、試験的に計測された電波画像データに基づく対象物ごとの強度比プロットのマップを用いて、図5Aに示す座標系に路側領域と路面領域をマークした。符号Ctで示す位置は、電波画像データの中央である。
図5Aに示す路面領域に、図5B(a)(b)に示す評価線Sb3a,Sb3b,Sb3c〜Sb3gの強度比をグラフSb3a,Sb3b,Sb3c〜Sb3gとして示す。図5B(a)は垂直偏波画像と、評価線Sb3a〜Sb3gを示し、図5B(b)は水平偏波画像と、評価線Sb3a〜Sb3gを示す。両図において、評価線Sb3a〜Sb3gは、轍などの路上に形成された路面高さが低い(異なる)領域(凹部領域)に含まれる評価線である。路面高さが低い凹部領域に薄墨を付して示す。図5AのグラフSb3a〜Sb3gは、それぞれ、評価線Sb3a〜Sb3g上の画素/画素群の強度比のプロットを繋げたものである。図5A,図5Bに示すように、幅員が広い道路では、走行軌跡の自由度が高いため、路面の高さが変化する領域の候補(複数の轍)が形成されてしまうことがある。このような場合には、複数の候補から、適切な一の「路面の高さが変化する領域の境界」を選択する必要がある。
本実施形態の路面判断装置100は、境界が複数検出された場合には、強度比が相対的に高い又は低い境界を路面に形成された轍であると判断する。本実施形態では、複数の境界のうち、強度比が最も高い又は最も低い境界を路面に形成された轍であると判断する。強度が最も高い又は最も低い境界と、これと同間隔で消失点方向に延在する境界を一対の轍の境界として検出してもよい。電波画像データにおける強度差が大きい境界を轍として抽出できる。境界の絞り込みの手法は特に限定されないが、境界を所定長さにおける電波画像データの強度比の平均が最も高い又は最も低い境界を、轍の領域を区画する境界とし、この境界との距離が所定値以内(所定値は車輪幅に応じた値)の他の境界を抽出し、これらを一対の轍として判断してもよい。境界を所定長さにおける電波画像データの強度比の平均が最も高い又は低い境界と、強度比の平均が二番目に高い又は低い境界を一対の轍として判断してもよい。複数の境界が検出された場合に、強度比が大きい又は小さい境界を選択することにより、轍を適切に判断できる。
図6A、図6Bも、路面の高さが変化する領域が複数検出された場合の処理例を説明するための図である。基本的に図6Aは図5Aと共通し、図6Bは図5Bと共通する。
図6Aに示す座標系に、道路の走行路の外側の領域を示す路側(路肩)領域に存在する対象物がプロットされる範囲(路側領域)と、道路の走行路の内側の領域を示す路面領域に存在する対象物(路面)がプロットされる範囲(路面領域)と、前方を走行する他車両領域をマークした。図2Bに例示した、試験的に計測された電波画像データに基づく対象物ごとの強度比プロットのマップを用いて、図6Aに示す座標系に路側領域と路面領域と他車両領域をマークした。符号Ctで示す位置は、電波画像データの中央である。
図6Aに示す路面領域に、図6B(a)(b)に示す評価線Sb4a,Sb4b,Sb4c〜Sb4gの強度比をグラフSb4a,Sb4b,Sb4c〜Sb4gとして示す。図6B(a)は垂直偏波画像と、評価線Sb4a〜Sb4gを示し、図6B(b)は水平偏波画像と、評価線Sb4a〜Sb4gを示す。両図において、評価線Sb4a〜Sb4gは、轍などの路上に形成された路面高さが低い(異なる)領域(凹部領域)に含まれる評価線である。路面高さが低い凹部領域に薄墨を付して示す。図6AのグラフSb4a〜Sb4gは、それぞれ、評価線Sb4a〜Sb4g上の画素/画素群の強度比のプロットを繋げたものである。図6A,図6Bに示す、路面の高さが変化する領域の候補(複数の轍)が形成されてしまう場面においても、複数の候補から、適切な一つの「路面の高さが変化する領域の境界」を選択する必要がある。
本実施形態の路面判断装置100は、境界が複数検出された場合には、車両の前方を走行する他車両V2の存在方向に沿って延在する境界を路面に形成された轍であると判断する。他車両V2の存在は電波画像データから判断する。図6Aに示す他車両領域に受信信号に基づくプロットから他車両V2の存在を検出できる。先行する他車両V2は轍に沿って走行する可能性が高い。また、自車両にとって、直前の他車両V2が走行する轍の上を走行するのが最も適切である。このため、自車両に対する他車両V2の存在方向に沿って延在する境界を、路面に形成された轍であると判断する。複数の境界が検出された場合に、走路に沿った境界を選択することにより、轍を適切に判断できる。
上述した路面の判断手法は、直線状の道路を例に説明したが、曲率(カーブ)を有する道路においても、同様に適用できる。図7(a)(b)は垂直偏波画像を示す。垂直偏波画像に対し、路面(道路)の曲率に基づく基準曲線CV,CVa,CVbを設定し、評価線ごとのプロットを座標変換し、座標変換後の電波画像データに基づいて路面の高さが変化する領域の境界を検出してもよい。電波画像データの座標変換の手法は、特に限定されず、出願時に知られた一般的な手法を用いることができる。基準曲線は、一般的なナビゲーション装置(車載装置200)を用いて、地図情報と現在位置とから現在の走行リンクを求め、走行リンクに対応づけられた曲率に基づいて算出してもよい。基準曲率は、自車両の車両コントローラ20から取得した、ステアリングの操舵角に基づいて算出してもよい。基準曲率は、車載カメラの撮像画像に基づいて検出された道路の曲率に基づいて算出してもよい。基準曲率は、実際に検出された境界に基づいて算出してもよい。図7(b)に示すように、轍に対応する凹部の境界に基づいて基準曲線CVを算出してもよいし、図7(a)に示すように、轍に対応する凹部の境界に基づく基準曲線CVbと、平坦領域の境界に基づく基準曲線CVbとを一対で算出してもよい。
制御装置10は、路面の高さが変化する領域の境界が検出された場合には、境界の位置に基づいて路面を判断する。路面の高さが変化する領域の内側(路側とは反対側)は、走行可能な路面であると判断できる。特に、路面の左右に一対の境界が検出された場合には、その一対の境界の間が走行可能な路面であると判断できる。検出された境界の位置情報を車載装置200の車両コントローラ20に送出する。車両コントローラ20は、走行支援装置30へ境界の位置情報を送出する。走行支援装置30は、境界により判断された走行可能な路面の内側に自車両が位置するように、自車両の走行を支援する。走行支援装置30は、一対の境界の位置情報を、道路のレーンマークの位置情報として利用する。路面に、積雪があり、ドライバの視覚、カメラ画像によっては走行可能な路面がどこからどこまでなのかが判らない場合がある。車両の走行によって荒れた、泥道や、砂利道においても同様に、走行可能な路面がどこからどこまでなのかが判らない場合がある。
本実施形態では、このような場面であっても、路面の高さが変化する領域の境界を検出し、この境界の位置から路面の領域を判断する。
路面の領域が判別しにくい場面では、より遠くの路面についてもその領域が判別できることが好ましい。本実施形態では、電波画像データにおける垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比の変動点の連続性に基づいて、路面の高さが変化する領域の境界を検出する。垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比は、垂直偏波信号の強度に対する水平偏波信号の強度であってもよいし、水平偏波信号の強度に対する垂直偏波信号の強度であってもよい。雪、泥、砂、砂利のように状況によって電波画像データの変動が激しい場合であっても、より遠くまで境界、ひいては走行可能な路面を判断できる。
以下、図8のフローチャートに基づいて、本実施形態の路面判断装置100の制御手順を説明する。
ステップ101において、アンテナ装置1は、車両の周囲に存在する対象物から放射される電磁波を受信する。電磁波は、車両が走行する路面に対して主に略水平方向に放射される水平偏波成分と、車両が走行する路面に対して主に略垂直方向に放射される垂直偏波成分を含む。主に略水平方向に放射されると表現したのは、水平方向へ放射するように制御しても、現実には全ての電磁波が水平方向に向かわない可能性を考慮したためである。主に略垂直方向に放射されると表現したことも同様に、制御したとしても、現実にはすべての電磁波が垂直方向に向かわない可能性を考慮したためである。
ステップ102において、信号処理装置2は、水平偏波成分に基づく水平偏波信号と、垂直偏波成分に基づく垂直偏波信号とを用いて電波画像データを生成する。制御装置10は、生成された電波画像データを取得する。
ステップ103において、制御装置10は、対象物の存在領域を推測する。制御装置10は、電波画像データにおける強度比から境界の存在領域を推測する。強度比は、垂直偏波信号の強度に対する水平偏波信号の強度の比であってもよいし、水平偏波信号の強度に対する垂直偏波信号の強度の比であってもよい。制御装置10は、電波画像データにおける水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度の分布から境界の存在領域を推測する。
ステップ104において、制御装置10は強度比を算出する。強度比は、水平偏波信号に対する垂直偏波信号であってもよいし、垂直偏波信号に対する水平偏波信号であってもよい。制御装置10は、ステップ103において推測された、路面などの境界の存在領域内についてのみ強度比を算出する。制御装置10は、電波画像データの全体について強度比を算出してもよい。この場合は、ステップ103をスキップして、ステップ104を実行する。
ステップ105において、制御装置10は、電波画像データにおける垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比の変動点の連続性に基づいて、路面の高さが変化する領域の境界を検出する。強度比の変動点とは、強度比が所定の変動閾値以上の変化がある画素又は画素群に対応する点である。制御装置10は、電波画像データにおける水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度の変化が所定値以上となる位置を、路面の高さが変化する領域の境界の位置として検出してもよい。制御装置10は、車両の進行方向に沿う画素に対応する強度比の変動点の連続性に基づいて、境界を検出してもよい。制御装置10は、電波画像データにおける、消失点方向に沿う画素に対応する強度比の変動点の連続性に基づいて、境界を検出してもよい。
ステップ106において、制御装置10は、3本以上の境界が検出されたか否かを判断する。四輪車両が走行した場合には、路面の高さが変化する領域は左右一対の二本形成される。幅員が広い道路においては、各車両が異なる位置を走行する可能性があるので、路面の高さが変化する領域が3本以上生じる場合がある。その場合は、ステップ107に進み、境界線を絞り込む。
ステップ107において、制御装置10は、強度比が相対的に高い又は強度比が相対的に低い境界を路面に形成された轍であると判断する。強度比の値が、他の強度比よりも高い/又は低い特徴的な境界の位置が、轍の位置に対応すると判断する。他の観点から、車両の前方を走行する他車両の存在方向に沿って延在する境界を路面に形成された轍であると判断する。
ステップ106,107において境界が絞りこまれたときには、ステップ108に進む。ステップ108において、制御装置10は、境界の位置に基づいて走行可能な領域を推測し、これを路面の領域と判断する。
ステップ109において、制御装置10は、得られた境界の位置、又はこれから導かれた路面の領域/位置の情報を車載装置200に出力する。車載装置200は、これらの結果を、ディスプレイやマイクなどの出力装置40を介して、ドライバに伝達してもよいし、境界の位置情報をレーンマーク又は走行路の路面の位置情報として走行支援装置30に入力し、車両のレーンキープ走行や自動運転に利用してもよい。
以上のとおり構成され、動作する本発明の本実施形態に係る路面判断装置100、これに使用される路面判断方法は以下の効果を奏する。
[1] 本実施形態の路面判断装置100又はこれに使用される判断方法は、電波画像データにおける垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比の変動点の連続性に基づいて、路面の高さが変化する領域の境界を検出するので、長い距離に渡って路面を検知できる。
轍は変形が可能であり、自然物により形成され、環境によって変化する。轍の形状は場所や状況によって異なる。轍の形状は、積雪の状態や交通量によっても変化するし、車両の通過に伴って経時的にも変化する。また、轍を形成する材料(泥、砂、砂利)によっても異なる。このため、画像上に設定した評価線上の信号値の推移は断絶しやすく、連続性のある特徴(信号の特徴)を追跡することは難しい。本実施形態では、単に、信号値の強度の差に基づいて轍領域の境界を検出するのではなく、垂直偏波信号と水平偏波信号との強度比の変動点の連続性に基づいてその境界を検出する。このように、垂直偏波信号と水平偏波信号の強度比に着目し、その変動点の連続性に基づいて路面の高さが変化する領域の境界を検出することにより、電波画像データの信号値が大きく変動した場合の影響を排除できる。本実施形態では、路面に形成された轍に対応する電波画像データに着目し、その電波画像データ上の特徴に寄与する強度比の特性を分析することにより、外乱の影響を排除して、強度比の変動点の連続性から轍を含む路面の高さが変化する境界を検出できる。この結果、長い距離に渡って路面を検知できる。
[2] 本実施形態の路面判断装置100又はこれに使用される判断方法は、水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度の変化が所定値以上である位置を、路面の高さが変化する領域の境界の位置として検出する。水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度の変化が大きい場所においては、材質、温度が異なる可能性が高いため、信号の強度が変化する位置を路面の高さが変化する領域の境界の位置と推測する。また、路面の高さが変化する領域の境界は、道路の延在方向に沿って形成されるので、アンテナ装置1から離隔するにつれて、信号の強度は減少(変化)することを利用し、信号の強度が変化する位置を路面の高さが変化する領域の境界の位置と推測する。強度比の変動点の連続性だけではなく、強度の変化の観点からも路面の高さが変化する領域の境界を検出できるので、検出精度を高めることができる。境界の位置に応じた轍の位置を正確に検出できる。所定値は特に限定されず、強度の変化のノイズの量に基づいて適宜に設定できる。
[3] 本実施形態の路面判断装置100又はこれに使用される判断方法は、水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度の分布から境界の存在領域を推定し、その存在領域内の電波画像データにおける強度比の変動点の連続性に基づいて、路面の高さが変化する領域の境界を検出する。対象物に応じて水平偏波信号又は垂直偏波信号の強度は異なるので、その強度の値により対象物を絞り込むことができる。対象物を絞り込んでから、その存在領域内の電波画像データにおける強度比の変動点の連続性に基づいて境界を検出することにより、処理負荷を低減しつつ境界の位置の検出精度を向上させることができる。つまり、境界の位置に応じた轍の位置を正確に検出できる。
[4] 本実施形態の路面判断装置100又はこれに使用される判断方法は、電波画像データにおける強度比から境界の存在領域を推測し、存在領域内の強度比の変動点の連続性に基づいて境界を検出する。対象物に応じて強度比は異なるので、強度比により対象物を絞り込むことができる。対象物を絞り込んでから、その存在領域内の電波画像データにおける強度比の変動点の連続性に基づいて境界を検出することにより、処理負荷を低減しつつ境界の位置の検出精度を向上させることができる。つまり、境界の位置に応じた轍の位置を正確に検出できる。
[5] 本実施形態の路面判断装置100又はこれに使用される判断方法は、電波画像データにおける、車両の進行方向に沿う画素に対応する強度比の変動点の連続性を判断し、その判断結果に基づいて境界を検出する。轍などの路面の高さが変化する領域の境界は、車両の進行方向に沿って延在するので、判断処理を行う画素領域を絞り込むことができる。これにより、処理負荷を低減しつつ境界の位置の検出精度を向上させることができる。
[6] 本実施形態の路面判断装置100又はこれに使用される判断方法は、電波画像データにおける、消失点に向かう方向に沿う画素に対応する強度比の変動点の連続性を判断し、その判断結果に基づいて境界を検出する。轍などの路面の高さが変化する領域の境界は、車両の進行方向に沿って延在するので、判断処理を行う画素領域を絞り込むことができる。これにより、処理負荷を低減しつつ境界の位置の検出精度を向上させることができる。
[7] 本実施形態の路面判断装置100又はこれに使用される判断方法は、複数の境界が検出された場合に、強度比が大きい又は小さい境界を選択することにより、路面の高さに変化があることが相対的に強く特徴づけられた境界を抽出することができるため、轍を適切に判断できる。
[8] 本実施形態の路面判断装置100又はこれに使用される判断方法は、複数の境界が検出された場合に、走路に沿った境界を選択することにより、轍を適切に判断できる。
[9] 本実施形態の路面判断装置100は、上記の作用効果を奏する。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。