以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエスカレーターを示す模式的な側面図である。また、図2は、図1の下階の乗降口から見たときのエスカレーターを示す正面図である。図において、上階1と下階2との間には、乗客コンベヤであるエスカレーター3が設置されている。また、上階1と下階2とは、階間構造物4で仕切られている。従って、階間構造物4の下面は、下階2の天井面5になっている。エスカレーター3の上部は、エスカレーター3の幅方向について階間構造物4と隣接している。従って、エスカレーター3に隣接する隣接物である階間構造物4とエスカレーター3とをエスカレーター3の幅方向に沿って見たとき、下階2の天井面5とエスカレーター3とは互いに交差している。
エスカレーター3は、水平面に対して傾斜するトラス6と、トラス6の幅方向両端部に設けられている一対の欄干7と、一対の欄干7のそれぞれの外周部に移動可能に設けられている一対の移動手摺8と、一対の欄干7の間に設けられている複数の踏段9とを有している。
トラス6の長手方向上端部は上階1に位置し、トラス6の長手方向下端部は下階2に位置している。一対の欄干7のそれぞれは、トラス6の長手方向に沿って配置されている。複数の踏段9は、トラス6に支持されている。また、複数の踏段9は、無端状に連結されている。複数の踏段9は、上階1と下階2との間に設定されている無端状の経路を循環移動可能になっている。各移動手摺8は、欄干7の周囲を周回移動する無端状の手摺である。
トラス6の長手方向上端部には、上部機械室が設けられている。上部機械室には、図示しない駆動機と、エスカレーター3の運転を制御する制御装置10とが設置されている。複数の踏段9及び一対の移動手摺8は、駆動機の駆動力により、上階1に位置する上部乗降口と、下階2に位置する下部乗降口との間を互いに同期して移動する。制御装置10は、駆動機を制御することにより、複数の踏段9の移動及び一対の移動手摺8の移動を制御する。
エスカレーター3が設置されている建物には、地震感知器11が設けられている。地震感知器11からの情報は、建物の監視室内に設置されている監視盤12に送られる。監視盤12と制御装置10との間では、情報の送受信が可能になっている。これにより、地震感知器11からの情報は、監視盤12を介して制御装置10に送られる。制御装置10は、地震感知器11が地震を感知すると、エスカレーター3の運転を停止する制御を行う。
下階2の天井面5と、天井面5に隣接する移動手摺8との間に存在する空間であるデルタ部13には、固定デルタガード14と、可動デルタガード15とが配置されている。可動デルタガード15は、固定デルタガード14よりも下部乗降口に近い位置に配置されている。固定デルタガード14及び可動デルタガード15は、利用者が移動手摺8と天井面5との間に挟まることを防止するデルタ部安全装置である。
一方の欄干7の踏段9側の部分には、脱出装置16、脱出報知灯17及び保護装置18が設けられている。他方の欄干7の踏段9側の部分には、図2に示すように、保護報知灯19及び監視装置20が設けられている。
脱出装置16は、欄干7内に収容されている。また、脱出装置16は、欄干7内から取り出し可能になっている。脱出装置16は、エスカレーター3内からエスカレーター3外の下階2へ渡すことが可能な縄梯子を有している。脱出報知灯17は、脱出装置16の隣に配置されている。エスカレーター3内からの脱出が必要になった場合には、脱出報知灯17が制御装置10の制御によって点滅する。これにより、脱出装置16の位置が利用者に報知される。即ち、脱出報知灯17は、脱出装置16の位置を特定するための報知を行う報知装置である。
保護報知灯19及び監視装置20は、エスカレーター3の幅方向について保護装置18に対面する位置に設けられている。保護報知灯19は、地震感知器11が地震を感知すると、制御装置10の制御によって点滅する。これにより、保護装置18の位置が利用者に報知される。即ち、保護報知灯19は、保護装置18の位置を特定するための報知を行う報知装置である。監視装置20は、保護装置18を含む特定の範囲を撮影するカメラと、例えば監視室の監視員との会話を可能にする受話器と、エスカレーター3の運転に関する情報を音声によってアナウンスすることを可能にするアナウンス装置とを有している。
保護装置18は、エスカレーター3の上方からの落下物から利用者を保護するための装置である。保護装置18は、地震感知器11が地震を感知すると、制御装置10の制御によって使用可能になる。
図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。また、図4は、図3の矢印IVに沿って保護装置18を見たときの正面図である。欄干7の上縁部には、図3に示すように、移動手摺8を案内する案内レール75が固定されている。欄干7は、踏段9側に面する内側板71と、踏段9側とは反対側に面する外側板72と、内側板71及び外側板72のそれぞれの上縁部間に固定されている上板73とを有している。案内レール75は、上板73の上面に固定されている。
保護装置18は、保護装置本体21と、保護装置本体21を保持可能な第1の電気錠22及び第2の電気錠23と、保護装置本体21を踏段9側へ付勢する弾性体であるばね24とを有している。
欄干7の内側板71、即ち欄干7の踏段9側の部分には、開口部25が設けられている。保護装置本体21は、開口部25の下縁部に配置されたヒンジ26を介して内側板71に回転可能に取り付けられている。ヒンジ26の軸は、欄干7の長手方向に沿って配置されている。保護装置本体21は、ヒンジ26の軸を中心として回転することにより、開口部25を塞ぐ閉位置と、欄干7の内側板71から踏段9側へ突出して開口部25の一部を開く開位置との間で変位可能になっている。
第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれは、欄干7内の上部に固定されている。この例では、第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれが欄干7の上板73の下面に固定されている。また、第1の電気錠22は、第2の電気錠23よりも上部乗降口に近い位置に配置されている。
第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれは、電磁コイル及びばねを含む電気錠本体27と、電気錠本体27に進退可能に設けられた作動片28とを有している。作動片28は、電磁コイルへの通電が行われると電気錠本体27内に後退し、電磁コイルへの通電が停止されるとばねの弾性復元力によって電気錠本体27から突出する。また、作動片28には、傾斜面28aが設けられている。これにより、作動片28の幅は、作動片28の先端部に向かって連続的に狭くなっている。
保護装置本体21の上端部には、第1及び第2の電気錠22,23に対応する一対のフック29が固定されている。保護装置本体21は、上側のフック29が第1の電気錠22の作動片28に掛かるとともに、下側のフック29が第2の電気錠23の作動片28に掛かることにより、閉位置に保持される。
ばね24は、保護装置本体21と外側板72との間で縮められている。これにより、ばね24は、保護装置本体21を踏段9側へ付勢する弾性復元力を発生している。
図5は、図4の保護装置本体21が開位置に達している状態を示す断面図である。一対のフック29が第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれの作動片28に掛かっている状態では、保護装置本体21がばね24の弾性復元力を受けながら閉位置に保持されている。保護装置本体21が閉位置に保持されている状態で各電気錠本体27の電磁コイルへの通電が行われると、第1及び第2の電気錠22,23の各作動片28が電気錠本体27内に後退し、一対のフック29が第1及び第2の電気錠22,23の各作動片28から外れる。これにより、保護装置本体21は、ばね24の弾性復元力によって閉位置から開位置へ変位される。
制御装置10は、地震感知器11が地震を感知すると、第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれへの通電を行う。制御装置10の制御によって第1及び第2の電気錠22,23への通電を行うタイミングは、エスカレーター3の運転方向によって異なっている。即ち、地震感知器11が地震を感知したときのエスカレーター3の運転方向が上昇方向である場合には、制御装置10の制御により、第1の電気錠22への通電が先に行われて上側のフック29が第1の電気錠22から外れた後、第2の電気錠23への通電が行われて下側のフック29が第2の電気錠23から外れる。これに対して、地震感知器11が地震を感知したときのエスカレーター3の運転方向が下降方向である場合には、制御装置10の制御により、第2の電気錠22への通電が先に行われて下側のフック29が第2の電気錠23から外れた後、第1の電気錠23への通電が行われて上側のフック29が第1の電気錠22から外れる。
制御装置10は、第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれへの通電を行った後、設定時間の経過後に第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれへの通電を停止する。第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれへの通電が停止されると、第1及び第2の電気錠22,23の各作動片28が電気錠本体27から突出した状態に復帰する。
保護装置本体21がばね24の弾性復元力に逆らって開位置から閉位置に向けて押し込まれると、フック29が作動片28の傾斜面28aに接触しながら、作動片28がフック29によって電気錠本体27に押し込まれる。これにより、保護装置本体21が閉位置に達する。保護装置本体21が閉位置に達すると、電気錠本体27のばねによって、作動片28が電気錠本体27から突出する位置に復帰し、フック29が作動片28に掛かった状態になる。
欄干7内には、複数の内部報知灯30が設けられている。この例では、外側板72及び上板73のそれぞれに内部報知灯30が取り付けられている。各内部報知灯30は、地震感知器11が地震を感知すると、制御装置10の制御によって保護報知灯19と同期して点滅する。
図6は、図5の保護装置本体21を示す断面図である。保護装置本体21は、保護部材31と、保護部材31を収容するベース部材である可動ケース32と、保護部材31を可動ケース32に対して変位させる第1の保護部材駆動装置33と、保護部材31の状態を変化させる第2の保護部材駆動装置34と、保護部材31にそれぞれ設けられている爪35及び持ち手36とを有している。
可動ケース32は、ヒンジ26を介して欄干7の内側板71に取り付けられている。また、可動ケース32は、ヒンジ26の軸を中心として欄干7に対して回転可能になっている。これにより、可動ケース32は、開口部25を塞ぐ閉位置と、欄干7から踏段9側へ突出する開位置との間で変位される。一対のフック29は、可動ケース32の上端部に固定されている。
可動ケース32の上端部には、保護部材31を通すケース開口部が設けられている。ケース開口部は、可動ケース32が閉位置にあるときに欄干7内に隠れているが、可動ケース32が開位置に達すると欄干7から踏段9側に露出する。これにより、可動ケース32が開位置にあるときには、可動ケース32に対する保護部材31の出し入れが踏段9側から可能になる。従って、保護装置18は、可動ケース32が開位置に変位されることにより使用可能になる。
保護装置18では、保護部材31が可動ケース32に収容されている状態で可動ケース32が閉位置に達することにより、欄干7に位置する保管位置に保護部材31が達する。また、保護装置18では、可動ケース32が開位置に達している状態で保護部材31が可動ケース32から出されることにより、踏段9の上方に位置する保護位置に保護部材31が配置可能になる。即ち、保護部材31は、欄干7に位置する保管位置と、踏段9の上方に位置する保護位置とに選択的に配置可能になっている。
図7は、図6の保護部材31が保護位置に配置されているときの状態を示す断面図である。建物内に設置されているエスカレーター3には、地震が発生すると、天井板等の物がエスカレーター3の上方から落下するおそれがある。保護部材31が保護位置にあるときには、乗客が入ることが可能な保護空間38が保護部材31と踏段9との間に存在している。乗客が保護空間38に入っている状態では、乗客が保護部材31によって落下物から保護される。
保護部材31は、第1のパネル部材311と、第1のパネル部材311に対してスライド可能な第2のパネル部材312とを有している。この例では、第1のパネル部材311は、第2のパネル部材312を収容可能な扁平状のケースである。
保護部材31の状態は、第1のパネル部材311に対する第2のパネル部材312のスライドにより、保護部材31が可動ケース32内に収容されるサイズに縮小される縮小状態と、縮小状態のサイズよりも大きなサイズに保護部材31が拡大する拡大状態との間で変化する。保護部材31の状態は、第2のパネル部材312が第1のパネル部材311に収容されることにより、図6に示す縮小状態になる。また、保護部材31の状態は、第2のパネル部材312が第1のパネル部材311外に出ることにより、図7に示す拡大状態になる。さらに、保護部材31が保管位置にあるときには保護部材31の状態が縮小状態になっており、保護部材31が保護位置にあるときには保護部材31の状態が拡大状態になっている。
爪35は、第2のパネル部材312に変位可能に取り付けられている。爪35は、第2のパネル部材312に対する変位により、第2のパネル部材312に沿って配置されたり、第2のパネル部材312に交差する方向へ第2のパネル部材312から突出したりする。保護位置にあるときの保護部材31は、図7に示すように、可動ケース32を介して一方の欄干7に支持され、移動手摺8の側面に爪35が掛かった状態で他方の欄干7に支持されている。
第1の保護部材駆動装置33は、図6及び図7に示すように、保護部材31に設けられている歯車331と、保護部材31に設けられ、歯車331を回転させる駆動力を発生する駆動モータ332と、可動ケース32の内面に設けられ、歯車331と噛み合う複数の歯を持つラック333とを有している。
歯車331及び駆動モータ332は、第1のパネル部材311の下端部に設けられている。また、ラック333は、可動ケース32の長手方向に沿って配置されている。保護部材31は、歯車331とラック333とが互いに噛み合った状態で歯車331が回転することにより、可動ケース32に対して変位される。
可動ケース32の上端部及び下端部のそれぞれには、歯車331の移動を止めるストッパ334が設けられている。ストッパ334は、歯車331を受けることにより操作される内部接点を有している。即ち、ストッパ334は、歯車331を検出するセンサになっている。
図8は、図7の可動ケース32の上端部に設けられているストッパ334に歯車331が当たっている状態を示す拡大図である。歯車331がストッパ334に当たると、ストッパ334の内部接点が操作されて、ストッパ334から制御装置10へ検出信号が送られる。制御装置10は、ストッパ334からの検出信号を受けると、歯車331の回転を停止させる制御を行う。
第2の保護部材駆動装置34は、図6及び図7に示すように、第2のパネル部材312に設けられている歯車341と、第2のパネル部材312に設けられ、歯車341を回転させる駆動力を発生する駆動モータ342と、第1のパネル部材311の内面に設けられ、歯車341と噛み合う複数の歯を持つラック343とを有している。
歯車341及び駆動モータ342は、第2のパネル部材312の下端部に設けられている。また、ラック343は、第1のパネル部材311の長手方向に沿って配置されている。第2のパネル部材312は、歯車341とラック343とが互いに噛み合った状態で歯車341が回転することにより、第1のパネル部材311に対して変位される。
第1のパネル部材311の上端部及び下端部のそれぞれには、歯車341の移動を止めるストッパ344が設けられている。ストッパ344は、歯車341を受けることにより操作される内部接点を有している。即ち、ストッパ344は、歯車341を検出するセンサになっている。歯車341がストッパ344に当たると、ストッパ344の内部接点が操作されて、ストッパ344から制御装置10へ検出信号が送られる。制御装置10は、ストッパ344からの検出信号を受けると、歯車341の回転を停止させる制御を行う。
図9は、図7の持ち手36を示す拡大図である。持ち手36は、第2のパネル部材312に取り付けられている。また、持ち手36は、第2のパネル部材312の長手方向へ第2のパネル部材312に対して変位可能になっている。さらに、持ち手36は、第2のパネル部材312内に設けられたスイッチ37に連結されている。
スイッチ37は、第2のパネル部材312に対する持ち手36の変位によって開閉される第1及び第2の接点部371,372と、第1及び第2の接点部371,372のそれぞれが開いた状態となる基準位置に持ち手36の位置を保つ弾性保持部373とを有している。
第1の接点部371は、基準位置よりも第2のパネル部材312から引き出される方向への持ち手36の変位によって閉じる接点部である。第2の接点部372は、基準位置よりも第2のパネル部材312内に押し込まれる方向への持ち手36の変位によって閉じる接点部である。即ち、第1の接点部371が閉じるときの第2のパネル部材312に対する持ち手36の変位方向と、第2の接点部372が閉じるときの第2のパネル部材312に対する持ち手36の変位方向とは、互いに逆方向になっている。
弾性保持部373は、持ち手36を基準位置に保つ弾性復元力を発生する複数の保持用ばねを有している。持ち手36に外力が加わると、弾性保持部373の保持用ばねの弾性復元力に逆らって、持ち手36が第2のパネル部材312に対して変位される。持ち手36に加わる外力がなくなると、弾性保持部373の保持用ばねの弾性復元力によって、第2のパネル部材312に対する持ち手36の位置が基準位置に復帰する。
第1及び第2の接点部371,372のいずれかが閉じると、閉じた接点部に応じた検出信号がスイッチ37から制御装置10へ送られる。制御装置10は、スイッチ37からの検出信号に応じて、第1及び第2の保護部材駆動装置33,34のそれぞれを制御する。即ち、制御装置10は、第1の接点部371が閉じることで生じる検出信号をスイッチ37から受けると、可動ケース32から出る方向へ保護部材31を変位させる制御を第1の保護部材駆動装置33に対して行うとともに、保護部材31の状態を縮小状態から拡大状態に変化させる制御を第2の保護部材駆動装置34に対して行う。また、制御装置10は、第2の接点部372が閉じることで生じる検出信号をスイッチ37から受けると、可動ケース32内に収容される方向へ保護部材31を変位させる制御を第1の保護部材駆動装置33に対して行うとともに、保護部材31の状態を拡大状態から縮小状態に変化させる制御を第2の保護部材駆動装置34に対して行う。
次に、動作について説明する。図10は、図1のエスカレーター3及び保護装置18の動作を示すフローチャートである。エスカレーター3の運転中には、地震感知器11が初期微動地震を感知したか否かが監視盤12によって監視されている(S1)。エスカレーター3の運転中に地震感知器11が地震を感知した場合、地震感知器11からの感知信号が監視盤12を介して制御装置10へ送られる。これにより、保護報知灯19の点滅、脱出報知灯17の点滅、及び監視装置20によるエスカレーター3の運転停止のアナウンスが制御装置10の制御によって行われる。また、このとき、監視装置20のカメラによる撮影動作が開始され、監視装置20の受話器も使用可能になる。これにより、エスカレーター3での映像及び音声が監視装置20に記録される(S2)。
この後、エスカレーター3の運転方向が上昇方向である場合、制御装置10の制御によって第1の電気錠22への通電が行われて上側のフック29が第1の電気錠22から外れ、エスカレーター3の運転方向が下降方向である場合、制御装置10の制御によって第2の電気錠23への通電が行われて下側のフック29が第2の電気錠23から外れる。これにより、エスカレーター3の運転方向についての保護装置本体21の後端部のみが、欄干7から踏段9側へせり出す。これにより、開口部25の一部が開き、保護装置本体21と内側板71との隙間から欄干7内の内部報知灯30の点滅光が踏段9側へ漏れ出る(S3)。
この後、エスカレーター3の運転が制御装置10の制御によって停止し、踏段9及び移動手摺8のそれぞれの移動が停止する(S4)。
この後、第1及び第2の電気錠22,23のうち、通電されていなかった残りの電気錠への通電が行われて、上側及び下側のフック29のそれぞれが第1及び第2の電気錠22,23から外れる。これにより、保護装置本体21の全体が踏段9側へ突出する。即ち、保護装置本体21が閉位置から開位置へ変位される。保護装置本体21が開位置に達すると、可動ケース32内から保護部材31を取り出し可能になる。第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれへの通電は、設定時間が経過すると停止する(S5)。
この後、スイッチ37の第1の接点部371が閉じたか否かが制御装置10によって判定される(S6)。第1の接点部371が閉じていない場合には、第1の接点部371が閉じるまで、第1の接点部371が閉じたか否かの判定が制御装置10によって繰り返される。
利用者が持ち手36を引く操作を行って第1の接点部371が閉じると、第1及び第2の保護部材駆動装置33,34のそれぞれが制御装置10の制御によって駆動され、保護部材31が可動ケース32から出るとともに、保護部材31の状態が拡大状態になる(S7)。
この後、スイッチ37の第2の接点部372が閉じたか否かが制御装置10によって判定される(S8)。第2の接点部372が閉じていない場合には、第2の接点部372が閉じるまで、第2の接点部372が閉じたか否かの判定が制御装置10によって繰り返される。
利用者が持ち手36を押し込む操作を行って第2の接点部372が閉じると、第1及び第2の保護部材駆動装置33,34のそれぞれが制御装置10の制御によって駆動され、保護部材31が可動ケース32内に収容されるとともに、保護部材31の状態が縮小状態になる(S9)。このようにして、保護装置18が動作する。
次に、地震が発生したときの利用者の手順について説明する。図11は、図2の保護報知灯19が点滅し、下側のフック29が第2の電気錠23から外れているときのエスカレーター3を示す正面図である。この例では、エスカレーター3の運転方向が下降方向になっている。利用者40がエスカレーター3を利用しているときに初期微動地震を地震感知器11が感知すると、踏段9及び移動手摺8のそれぞれの移動が停止する前に、保護報知灯19及び内部報知灯30のそれぞれが点滅するとともに、下側のフック29が第2の電気錠23から外れる。これにより、利用者40は、保護装置本体21と内側板71との隙間から漏れ出た内部報知灯30の点滅光と、保護報知灯19の点滅光とによって、保護装置本体21の位置を特定可能になる。このとき、保護装置本体21が第2の電気錠23の位置で踏段9側にせり出すが、利用者40が進む方向へ保護装置本体21の突出量が連続的に増加しているだけなので、利用者40が保護装置本体21に引っ掛かりにくくなっている。
この後、エスカレーター3の運転が停止すると、上側のフック29も第1の電気錠22から外れて、保護装置本体21の全体が踏段9側の開位置へ変位される。図12は、図11の保護装置本体21の全体が踏段9側の開位置に達しているときのエスカレーター3を示す正面図である。保護装置本体21が開位置に達している状態では、可動ケース32のケース開口部から持ち手36が外部に露出しており、利用者40が踏段9側から持ち手36を操作可能になっている。
図13は、図12の保護装置本体21の保護部材31の状態が拡大状態になっているときのエスカレーター3を示す正面図である。利用者40が持ち手36を引くと、第1の保護部材駆動装置33の駆動力によって第1のパネル部材311が可動ケース32から出るとともに、第2の保護部材駆動装置34の駆動力によって保護部材31の状態が拡大状態になる。
この後、利用者40は、保護装置本体21が設けられた欄干7とは反対側の欄干7の移動手摺8の側面に第2のパネル部材312の爪35を掛ける。これにより、保護部材31が保護位置に保持され、保護部材31と踏段9との間に保護空間38が生じる。この後、利用者40は、地震の本震が収束するまで、保護部材31の下に入って保護空間38で待機する。
図14は、図13の保護部材31と踏段9との間に存在する保護空間38に利用者40が待機しているときのエスカレーター3を示す正面図である。利用者40が保護空間38に待機している状態では、利用者40の上方に保護部材31が配置されているので、地震によってエスカレーター3の上方から物が落下した場合でも、落下物が利用者40に当たることが保護部材31によって防止され、利用者40が落下物から保護される。
地震の本震が収束すると、利用者40は、爪35を移動手摺8から外した後、持ち手36を第2のパネル部材312に対して押し込む。これにより、第1及び第2の保護部材駆動装置33,34のそれぞれが駆動し、第1のパネル部材311が可動ケース32内に収容されるとともに保護部材31の状態が縮小状態になる。
この後、利用者40は、第1及び第2の電気錠22,23のそれぞれの作動片28の傾斜面28aにフック29を接触させながら、保護装置本体21を開位置から閉位置に押し込む。これにより、フック29が作動片28に掛かった状態に復帰し、保護部材31の位置が保管位置に復帰する。
この後、利用者40は、上部乗降口又は下部乗降口を通ってエスカレーター3内から脱出する。一方、落下物が邪魔になって利用者40が上部乗降口及び下部乗降口を通ることができない場合には、利用者40は、点滅する脱出報知灯17の場所へ移動し、脱出装置16の縄梯子を利用してエスカレーター3外へ脱出する。
このような保護装置18では、欄干7に位置する保管位置と、踏段9の上方に位置する保護位置とに保護部材31が選択的に配置可能になっているので、エスカレーター3の通常運転時には邪魔にならない位置に保護部材31を配置しておくことができるとともに、例えば地震が発生した場合に、保護部材31を用いて落下物から利用者40を保護することができる。
また、保護部材31は、閉位置と開位置との間で変位可能な可動ケース32に収容されており、可動ケース32が開位置にあるときには、可動ケース32に対する保護部材31の出し入れが踏段9側から可能になるので、保護部材31が可動ケース32に収容されて外部に露出しないようにすることができ、通常運転時のエスカレーター3の意匠性の向上を図ることができる。
また、可動ケース32は、第1及び第2の電気錠22,23によって閉位置に保持されており、地震感知器11が地震を感知すると、第1及び第2の電気錠22,23による可動ケース32の保持が制御装置10の制御によって解除されるので、落下物が生じる可能性のある地震の発生時にのみ保護部材31を用いることができ、保護部材31の不必要な使用を回避することができる。
また、保護部材31には、持ち手36の操作によって検出信号を発生するスイッチ37が設けられており、スイッチ37からの検出信号に基づいて第1の保護部材駆動装置33が制御されるので、可動ケース32に対して保護部材31を移動させる作業を補助する力として第1の保護部材駆動装置33の駆動力を用いることができる。これにより、可動ケース32に対する保護部材31の出し入れを行う利用者40の負担の軽減化を図ることができる。
また、第1の保護部材駆動装置33は、保護部材31に設けられている歯車331と、保護部材31に設けられて歯車331を回転させる駆動力を発生する駆動モータ332と、可動ケース32に設けられて歯車331と噛み合うラック333とを有しているので、第1の保護部材駆動装置33の構造を簡単にすることができるとともに、第1の保護部材駆動装置33の設置スペースの省スペース化を図ることができる。
また、制御装置10は、地震感知器11が地震を感知すると、保護部材31の位置を特定するための報知である点滅を保護報知灯19に行わせるので、エスカレーター3の利用者40に保護装置18の位置を容易に特定させることができる。これにより、地震感知器11が地震を感知してから利用者40が保護部材31を使用するまでの時間を短くすることができる。
なお、上記の例では、第1の保護部材駆動装置33の駆動力によって保護部材31が可動ケース32に対して変位するようになっているが、例えば保護部材31が軽量で、利用者40の力でも保護部材31を可動ケース32に対して変位させることができるのであれば、第1の保護部材駆動装置33はなくてもよい。
また、上記の例では、第2の保護部材駆動装置34の駆動力によって保護部材31の状態を縮小状態と拡大状態との間で変化させるようになっているが、例えば保護部材31が軽量で、利用者40の力でも保護部材31の状態を変えられるのであれば、第2の保護部材駆動装置34はなくてもよい。
また、上記の例では、保護部材31の状態が縮小状態と拡大状態との間で変化するようになっているが、保護部材31の状態を変えずに保管位置及び保護位置に保護部材31を配置可能であれば、保護部材31の構成は、縮小状態と拡大状態との間で変化する構成でなくてもよい。従って、例えば単一の板を保護部材31としてもよい。
実施の形態2.
図15は、この発明の実施の形態2による保護装置が用いられているエスカレーターを下部乗降口から見たときの状態を示す正面図である。エスカレーター3のデルタ部13には、保護装置18が可動デルタガードとして配置されている。保護装置18は、例えばワイヤ、紐又は鎖等の吊り部材41によって下階2の天井面5から吊り下げられている。これにより、利用者40が保護装置18に当たった場合でも、保護装置18が揺れることにより、保護装置18から受ける利用者40の衝撃が小さくなる。
保護報知灯19及び監視装置20は、一対の欄干7のうち保護装置18から遠い側の欄干7に設けられている。また、保護報知灯19及び監視装置20のそれぞれの位置は、エスカレーター3の幅方向について保護装置18に対面する位置となっている。保護報知灯19及び監視装置20のそれぞれの構成及び機能は、実施の形態1による保護報知灯19及び監視装置20のそれぞれの構成及び機能と同様である。
図16は、図15の矢印XVIに沿って保護装置18を見たときの正面図である。また、図17は、図16の保護装置18を示す側面図である。保護装置18は、天井面5から吊り部材41によって吊り下げられているベース部材である保持枠42と、保持枠42に着脱可能に取り付けられている保護部材43とを有している。
保持枠42は、第1の縦柱である短柱44と、第2の縦柱である長柱45と、短柱44及び長柱45間にそれぞれ連結されている下梁46及び上梁47とを有している。
長柱45の長さは、短柱44の長さよりも長くなっている。また、長柱45は、短柱44よりも下部乗降口に近い位置に配置されている。これにより、短柱44及び長柱45は、保持枠42の幅方向について互いに離して配置されている。
下梁46は、上梁47よりも下方に配置されている。この例では、短柱44及び長柱45のそれぞれの上端部間に上梁47が連結され、短柱44の下端部と長柱45の中間部との間に下梁46が連結されている。長柱45の下端部は、下梁46の位置から下方へ突出している。
保護部材43は、保持枠42に保持されることにより、デルタ部13に位置する保管位置に配置される。また、保護部材43は、保持枠42から外れることにより、踏段9の上方に位置する保護位置に配置可能になる。即ち、保護部材43は、デルタ部13に位置する保管位置と、踏段9の上方に位置する保護位置とに選択的に配置可能になっている。
保護部材43は、第1の板431及び第2の板432を有している。第1の板431及び第2の板432は、連結軸433を介して互いに連結されている。また、第1及び第2の板431,432は、連結軸433を中心として互いに回転自在になっている。第1及び第2の板431,432が連結軸433を中心として互いに回転することにより、保護部材43は連結軸433を境界として折れ曲がる。
第1の板431の連結軸433とは反対側の端部には、連結軸433と平行な下段軸434が設けられている。連結軸433及び下段軸434のそれぞれの両端部は、保護部材43から両側へ突出している。
短柱44及び長柱45のそれぞれには、連結軸433の端部が挿入可能な連結軸用溝48が設けられている。短柱44及び長柱45のそれぞれに設けられた各連結軸用溝48は、保持枠42の幅方向について互いに対向している。また、短柱44及び長柱45のそれぞれには、下段軸434の端部が挿入可能な下段軸用溝49が設けられている。短柱44及び長柱45のそれぞれに設けられた各下段軸用溝49は、保持枠42の幅方向について互いに対向している。各連結軸用溝48の位置は、各下段軸用溝49の位置よりも上方になっている。
保護部材43が保持枠42に保持されている状態では、第1の板431が第2の板432よりも下方に配置されている。また、保護部材43が保持枠42に保持されている状態では、図16に示すように、連結軸433及び下段軸434のそれぞれが保持枠42の幅方向に沿って配置されている。さらに、保護部材43が保持枠42に保持されている状態では、連結軸433の両端部が各連結軸用溝48に挿入され、下段軸434の両端部が各下段軸用溝49に挿入されている。この例では、連結軸433及び下段軸434のそれぞれの両端部にベアリングがそれぞれ設けられ、各ベアリングが短柱44及び長柱45の連結軸用溝48及び下段軸用溝49にそれぞれ挿入されている。
各連結軸用溝48及び各下段軸用溝49のそれぞれは、上下方向に沿った一定の長さを持つ溝である。また、各連結軸用溝48及び各下段軸用溝49のそれぞれの上端部は、図17に示すように、踏段9側へそれぞれ開放されている。これにより、連結軸433の両端部は、各連結軸用溝48の上端部の開放部分で各連結軸用溝48から踏段9側へ外れるようになっている。また、下段軸434の両端部は、各下段軸用溝49の上端部の開放部分で各下段軸用溝49から踏段9側へ外れるようになっている。
連結軸433には、保護部材43が折れ曲がる方向へ第1の板431に対して第2の板432を回転させる弾性復元力を発生する図示しない弾性体が設けられている。連結軸433に設けられている弾性体としては、例えば板ばね又はひねりばねが用いられている。保護部材43が保持枠42に保持されている状態では、保持枠42から踏段9側へ突出する方向へ第1の板431及び第2の板432が弾性体によって付勢されている。保護部材43が保持枠42に保持されている状態では、下段軸434の両端部が各下段軸用溝49に挿入されることにより、第1の板431が保持枠42から踏段9側へ突出することが阻止されている。
第1の板431の下端部には一対の下爪50が設けられ、第2の板432の上端部には一対の上爪51が設けられている。保護部材43が保護位置にある状態では、一対の下爪50が一方の移動手摺8の側面に掛けられ、一対の上爪51が他方の移動手摺8の側面に掛けられる。この例では、図17に示すように、下爪50及び上爪51のそれぞれの形状が移動手摺8の側面に沿ったC字状になっている。
短柱44の上端部には第1の電気錠52が設けられ、長柱45の上端部には第2の電気錠53が設けられている。これにより、第1の電気錠52は、第2の電気錠53よりも上部乗降口に近い位置に配置されている。第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれは、電磁コイル及びばねを含む電気錠本体と、電気錠本体に進退可能に設けられた作動片とを有している。第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれの作動片は、電磁コイルへの通電が行われると電気錠本体内に後退し、電磁コイルへの通電が停止されるとばねの弾性復元力によって電気錠本体から第2の板432に向けて突出する。第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれの作動片には、傾斜面が設けられている。
第2の板432の幅方向両側面には、第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれの作動片が個別に挿入可能な図示しない保持用溝がそれぞれ設けられている。保護部材43が保持枠42に保持されている状態では、電磁コイルへの通電が停止されて第1及び第2の電気錠52,53の作動片が第1の板431の各保持用溝にそれぞれ挿入されている。これにより、保護部材43が保持枠42に保持されている状態では、第2の板432が保持枠42から踏段9側へ突出することが阻止されている。
保護部材43が保持枠42に保持されている状態で第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれの電磁コイルへの通電が行われると、各作動片が電気錠本体内に後退し、第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれの作動片が第2の板432から外れる。第1及び第2の電気錠53のそれぞれの作動片が第2の板432から外れると、第1及び第2の電気錠53による第2の板432の保持が解除され、第2の板432は、連結軸433に設けられた弾性体の弾性復元力によって、連結軸433を中心に変位しながら保持枠42から踏段9側へ突出する。
制御装置10は、地震感知器11が地震を感知すると、第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれへの通電を行う。制御装置10の制御によって第1及び第2の電気錠52,53への通電を行うタイミングは、エスカレーター3の運転方向によって異なっている。即ち、地震感知器11が地震を感知したときのエスカレーター3の運転方向が上昇方向である場合には、制御装置10の制御により、第1の電気錠52への通電が先に行われて第1の電気錠52が第2の板432から外れた後、第2の電気錠53への通電が行われて第2の電気錠53が第2の板432から外れる。これに対して、地震感知器11が地震を感知したときのエスカレーター3の運転方向が下降方向である場合には、制御装置10の制御により、第2の電気錠52への通電が先に行われて第2の電気錠53が第2の板432から外れた後、第1の電気錠23への通電が行われて第1の電気錠52が第2の板432から外れる。第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれの電磁コイルへの通電は、設定時間後に停止する。
図18は、図17の第2の板432が保持枠42から踏段9側へ突出している状態を示す側面図である。第1及び第2の電気錠52,53による第2の板432の保持が解除されて第2の板432が保持枠42から踏段9側へ突出すると、連結軸433が各連結軸用溝48をスライド可能になるとともに、下段軸434が各下段軸用溝49をスライド可能になる。これにより、保護部材43は、短柱44と長柱45との間から取り外し可能になる。
図19は、図18の保護部材43が保持枠42から外れている状態を示す側面図である。また、図20は、図19の保護部材43及び保持枠42のそれぞれの下部を示す拡大図である。保護部材43の第1の板431は、伸縮体54を介して下梁46に接続されている。伸縮体54は、第1の板431に接続された紐55と、紐55に接続されているとともに下梁46に接続されているばね56とを有している。伸縮体54は、ばね56の伸縮によって伸縮する。
保護部材43は、ばね56が弾性変形されながら伸びることにより保護位置に配置される。従って、保護部材43が保護位置に配置されている状態では、紐55に張力が与えられている。
図21は、図19の伸縮体54が縮んでいる状態を示す側面図である。保護部材43が保護位置に配置されている状態から保護部材43を引く力がなくなると、ばね56の弾性復元力によって保持枠42に近づく方向へ保護部材43が移動する。紐55は、第1の板431の下端部における幅方向一端部に接続されている。これに対して、ばね56は、紐55が接続された第1の板431の端部とは反対側に位置する下梁46の長手方向端部に接続されている。これにより、保護部材43が保持枠42に取り付けられるときには、下梁46の長手方向、即ち保持枠42の幅方向に沿って紐55が配置される。他の構成は実施の形態1と同様である。
次に、動作について説明する。図22は、図15のエスカレーター3及び保護装置18の動作を示すフローチャートである。エスカレーター3の運転中には、実施の形態1と同様に、地震感知器11が初期微動地震を感知したか否かが監視盤12によって監視されている(S21)。エスカレーター3の運転中に地震感知器11が地震を感知した場合、実施の形態1と同様に、保護報知灯19の点滅、脱出報知灯17の点滅、及び監視装置20によるエスカレーター3の運転停止のアナウンスが制御装置10の制御によって行われる。また、このとき、監視装置20のカメラによる撮影動作が開始され、監視装置20の受話器も使用可能になる。これにより、エスカレーター3での映像及び音声が監視装置20に記録される(S22)。
この後、エスカレーター3の運転方向が上昇方向である場合、制御装置10の制御によって第1の電気錠52への通電が行われて第1の電気錠52が第2の板432から外れ、エスカレーター3の運転方向が下降方向である場合、制御装置10の制御によって第2の電気錠53への通電が行われて第2の電気錠53が第2の板432から外れる。これにより、第2の板432の中でエスカレーター3の運転方向の後端部側の部分のみが、弾性体の付勢力によって保持枠42から踏段9側へせり出す(S23)。
この後、エスカレーター3の運転が制御装置10の制御によって停止し、踏段9及び移動手摺8のそれぞれの移動が停止する(S24)。
この後、第1及び第2の電気錠52,53のうち、通電されていなかった残りの電気錠への通電が行われて、第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれが第2の板432から外れる。これにより、第2の板432の全体が保持枠42から踏段9側へ突出する。これにより、保護部材43が保持枠42から踏段9側へ取り出し可能になる(S25)。第1及び第2の電気錠52,53のそれぞれへの通電は、設定時間が経過すると停止する(S26)。
次に、地震が発生したときの利用者の手順について説明する。図23は、図15の保護報知灯19が点滅し、第2の板432が保持枠42から外れているときのエスカレーター3を示す正面図である。利用者40がエスカレーター3を利用しているときに地震感知器11が初期微動地震を感知すると、保護報知灯19が点滅するとともに、第1及び第2の電気錠52,53がエスカレーター3の運転方向に応じて第2の板432から順次外れる。これにより、第2の板432が保持枠42から踏段9側へ突出する。
この後、利用者40は、保護部材43を持ち上げることにより保持枠42から保護部材43を外した後、踏段9の上方に位置する保護位置に保護部材43を運ぶ。このとき、利用者40は、伸縮体54のばね56を伸ばしながら保護位置へ保護部材43を移動させる。また、このとき、利用者40は、各下爪50を一方の移動手摺8の側面に掛け、各上爪51を他方の移動手摺8の側面に掛けることにより、保護部材43を保護位置に保持する。
図24は、図23の保護部材43と踏段9との間に存在する保護空間38に利用者40が待機しているときのエスカレーター3を示す正面図である。保護部材43を保護位置に配置すると、保護部材31と踏段9との間に保護空間38が生じる。この後、利用者40は、地震の本震が収束するまで、保護部材31の下に入って保護空間38で待機する。
利用者40が保護空間38に待機している状態では、利用者40の上方に保護部材43が配置されているので、地震によってエスカレーター3の上方から物が落下した場合でも、落下物が利用者40に当たることが保護部材43によって防止され、利用者40が落下物から保護される。
地震の本震が収束すると、利用者40は、下爪50及び上爪51を移動手摺8から外した後、上部乗降口又は下部乗降口を通ってエスカレーター3内から脱出する。一方、落下物が邪魔になって利用者40が上部乗降口及び下部乗降口を通ることができない場合には、利用者40は、点滅する脱出報知灯17の場所へ移動し、脱出装置16の縄梯子を利用してエスカレーター3外へ脱出する。
このような保護装置18では、デルタ部13に位置する保護位置と、踏段9の上方に位置する保護位置とに保護部材43が選択的に配置可能になっているので、エスカレーター3の通常運転時には保護部材31を邪魔にならない位置に配置しておくことができるとともに、例えば地震が発生した場合に、保護部材31を用いて落下物から利用者40を保護することができる。
また、保護部材43は、ベース部材である保持枠42に着脱可能になっているので、デルタ部13に保護部材43を簡単な構成で容易に配置することができる。
また、地震感知器11が地震を感知すると、第1及び第2の電気錠52,53による保護部材43の保持が制御装置10の制御によって解除されるので、落下物が生じる可能性のある地震の発生時にのみ保護部材43を用いることができ、保護部材43の不必要な使用を回避することができる。
なお、上記の例では、保護部材43が第1及び第2の板431,432によって構成されているが、これに限定されず、単一の板を保護部材43としてもよい。
また、実施の形態1及び2では、地震感知器11が地震を感知することにより、脱出報知灯17が点滅するようになっているが、脱出報知灯17の点滅は、地震感知器11の情報ではなく、別の情報に基づいて行ってもよい。例えば、カメラの映像を表示させる画面と、脱出報知灯17の点滅を行わせる手動スイッチとを監視盤12に設けて、手動スイッチの操作によって脱出報知灯17を点滅させるようにしてもよい。このようにすれば、監視室内の監視員が監視盤12の画面を確認することによってエスカレーター3内の状態を把握することができるとともに、監視員が監視盤12の手動スイッチを操作することによって必要な時に脱出報知灯17を点滅させることができる。また、例えば、監視装置20のカメラが撮影した映像を監視盤12によって自動解析し、カメラの映像の自動解析の結果、利用者40が上部乗降口及び下部乗降口を通ってエスカレーター3から脱出することが不可能であると監視盤12で判定された場合に、制御装置10の制御によって脱出報知灯17を点滅させるようにしてもよい。
実施の形態3.
図25は、この発明の実施の形態3による保護装置が用いられているエスカレーターの欄干を示す断面図である。また、図26は、図25の保持部材631が解除位置にあるときの保護装置18を示す断面図である。さらに、図27は、図26の保護部材62の位置が保管位置から外れている状態を示す断面図である。一対の欄干7のそれぞれは、レール支持部材76と、レール支持部材76を支持する複数のガラス製の欄干パネル77(図27)とを有している。
複数の欄干パネル77は、欄干7の長手方向に沿って並んでいる。レール支持部材76は、複数の欄干パネル77が並んで構成された欄干本体部分の外周部に沿って配置されている。また、レール支持部材76の上面には、移動手摺8を案内する案内レール75が固定されている。レール支持部材76の下面には、照明装置61が取り付けられている。
保護装置18は一方の欄干7に設けられ、保護報知灯19及び監視装置20は他方の欄干7に設けられている。保護報知灯19及び監視装置20のそれぞれの構成は、実施の形態1と同様である。図25〜図27では、保護装置18が設けられた一方の欄干7のみが示されている。
保護装置18は、ガラス製の板状の保護部材62と、保護部材62を保持する電気錠63とを有している。保護部材62の上端部には、上部固定部材64が固定されている。上部固定部材64は、ヒンジ65を介してレール支持部材76の下面に取り付けられている。ヒンジ65の軸は、欄干7の長手方向に沿ってレール支持部材76の下面に設けられている。これにより、保護部材62は、レール支持部材76に対してヒンジ65の軸を中心に回転可能になっている。保護部材62は、レール支持部材76に対してヒンジ65の軸を中心に回転することにより、欄干7に位置する保管位置と、踏段9の上方に位置する保護位置との間で変位される。
保管位置にあるときの保護部材62は、欄干7の長手方向について欄干パネル77に隣接している。この例では、欄干7の長手方向について保護部材62の両側のそれぞれに欄干パネル77が隣接している。保護部材62は、他の欄干パネル77に連続して並ぶ欄干パネルとして保管位置に配置されている。即ち、保管位置にあるときの保護部材62は、欄干7の長手方向に沿って並ぶ複数の欄干パネルのうちの1つの欄干パネルとして機能している。保護部材62の下端部には、手掛け用の貫通穴66が設けられている。
この例では、衝撃に強いフィルムを保護部材62の表面に貼ることにより保護部材62が強化されている。なお、防弾ガラス等に用いられる強化ガラスで構成されたパネルを保護部材62として用いてもよい。
電気錠63は、欄干7の下部に設けられている。また、電気錠63は、保持部材631と、保持部材631を変位させる電気錠本体632とを有している。
保持部材631は、保護部材62の下端部に嵌る保持位置と、保護部材62の下端部から外れる解除位置との間で変位可能になっている。保持部材631の解除位置は、保持部材631の保持位置よりも下方に位置している。
保護部材62は、保持部材631が保持位置で保護部材62の下端部に嵌ることにより、保管位置に保持される。保持部材631が保護部材62の下端部に嵌っているときには、貫通穴66が保持部材631によって覆われている。また、保護部材62が保管位置に保持された状態は、保持部材631が解除位置に変位されることにより解除される。保持部材631が解除位置にあるときには、貫通穴66が踏段9側に露出している。
電気錠本体632は、電磁コイル及びばねを有している。保持部材631は、電気錠本体632の電磁コイルへの通電が行われると解除位置に変位され、電気錠本体632の電磁コイルへの通電が停止されるとばねの弾性復元力によって保持位置に変位される。
制御装置10は、地震感知器11が地震を感知すると、電気錠本体632の電磁コイルへの通電を行う。また、制御装置10は、電気錠本体632への通電を行ってから設定時間が経過した後に電気錠本体632への通電を停止する。保持部材631は、電気錠本体632への通電の停止によって解除位置から保持位置に復帰する。他の構成は実施の形態1と同様である。
次に、地震感知器11が地震を感知したときの保護装置18の動作について説明する。エスカレーター3の運転中には、保持部材631が保持位置に変位され、保持部材631が保護部材62の下端部に嵌っている。これにより、エスカレーター3の運転中には、保護部材62が電気錠63によって保管位置に保持されている。
エスカレーター3の運転中に地震感知器11が地震を感知すると、保護報知灯19の点滅、及び監視装置20によるエスカレーター3の運転停止のアナウンスが制御装置10の制御によって行われる。また、このとき、監視装置20のカメラによる撮影動作が開始され、監視装置20の受話器も使用可能になる。これにより、エスカレーター3での映像及び音声が監視装置20に記録される。
この後、エスカレーター3の運転が制御装置10の制御によって停止し、踏段9及び移動手摺8のそれぞれの移動が停止する。
この後、電気錠本体632の電磁コイルへの通電が制御装置10の制御によって行われる。これにより、保持部材631が保持位置から解除位置に変位され、電気錠63による保護部材62の保持が解除される。電気錠63による保護部材62の保持が解除されると、保護部材62の貫通穴66が露出するとともに、保管位置から保護位置への保護部材62の変位が可能になる。
電気錠本体632の電磁コイルへの通電が行われてから設定時間が経過すると、制御装置10の制御によって電気錠本体632への通電が停止される。これにより、保持部材631が解除位置から保持位置に復帰する。
次に、地震が発生したときの利用者40の手順について説明する。地震感知器11が初期微動地震を感知すると、上記したように、保護報知灯19が点滅するとともに、エスカレーター3の運転が停止する。この後、電気錠63による保護部材62の保持が解除される。
この後、エスカレーター3の利用者40は、電気錠63による保護部材62の保持が解除されているときに、踏段9側に露出した貫通穴66を利用して保護部材62を持ちながら、ヒンジ65の軸を中心として保護部材62を保管位置から保護位置へ変位させる。これにより、保護部材62と踏段9との間に保護空間が生じる。この後、利用者40は、地震の本震が収束するまで、保護部材62の下に入って保護空間で待機する。
このような保護装置18では、保護部材62が、レール支持部材76に設けられたヒンジ65の軸を中心として回転することにより、保管位置と保護位置との間で変位されるので、保護装置18の構成を簡単にすることができるとともに、保護部材62を保管位置から保護位置に変位させる操作を容易にすることができる。これにより、地震が発生してから保護部材62を利用するまでの時間を短縮することができる。
また、地震感知器11が地震を感知すると、電気錠63による保護部材62の保持が制御装置10の制御によって解除されるので、落下物が生じる可能性のある地震の発生時にのみ保護部材62を用いることができ、保護部材62の不必要な使用を回避することができる。
なお、各上記実施の形態では、一対の欄干7のうち一方の欄干7にのみ保護装置18が設けられているが、一対の欄干7のそれぞれに保護装置18を設けてもよい。
また、各上記実施の形態では、エスカレーター3にこの発明が適用されているが、乗客コンベヤとしての動く歩道にこの発明を適用してもよい。