JP6805925B2 - 差厚板材の製造方法、及び差厚板材 - Google Patents

差厚板材の製造方法、及び差厚板材 Download PDF

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Description

本発明は、板幅方向に板厚分布を有する差厚板材、及び当該差厚板材の製造方法に関する。
近年、自動車においては、燃費の向上のために、軽量化が推進されている。軽量化のための1つの方法として、面内において板厚分布を有する鋼板(差厚鋼板)を用いる方法が検討されている。差厚鋼板を用いて、部品の強度が必要な部位についてのみ板厚を厚くすることにより、剛性や衝突時の安全性等を確保しつつ、当該部品の軽量化を図ることが可能となる。
差厚鋼板を製造する方法としては、圧延による方法、又は複数枚の板材を重ね合わせて接合する方法等が考えられている。しかしながら、複数枚の板材を接合する方法では、これら複数枚の板材をそれぞれ作製する工程、及びそれらを貼り合わせる工程等、数多くの工程が必要となるため、生産性を増加させることが難しく、製造コストが増加する恐れがある。また、当該方法によって製造された板材では、多大な荷重が負荷された際に、板材が剥離してしまい、高い強度を得られない場合が生じ得る。そこで、信頼性向上、及び生産性向上等の観点から、差厚鋼板を製造する方法としては、圧延により一体的な部材として当該差厚鋼板を製造する方法が注目されている。
圧延により差厚鋼板を製造する方法としては、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、圧下量を変更しながら圧延を行うことにより、長手方向に差厚を有する差厚鋼板を製造する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、ワークロールの圧下位置を短い時間間隔で頻繁に変更することは難しいため、板厚の薄い部分(薄肉部)と板厚の厚い部分(厚肉部)の長手方向の長さを所定の長さ以上短くすることが困難である。また、圧下位置を変更している間にも鋼板は長手方向に送られるため、薄肉部と厚肉部との境界では、階段状に急峻に板厚が変化するのではなく、当該境界には、板厚が徐々に変化する所定の長さを有する領域が形成されることとなる。このように、特許文献1に記載の方法では、薄肉部と厚肉部を短いピッチで形成することが困難である。部品によっては、薄肉部と厚肉部が短ピッチで設けられた差厚鋼板が求められることもあるため、特許文献1に記載の技術では、多様な部品に対応することができない恐れがある。
そこで、圧延によって差厚鋼板を製造する他の方法として、特許文献2、3に記載の方法が提案されている。具体的には、特許文献2、3には、熱間タンデム圧延機の最終スタンドにおいて、胴長方向に径差を有するワークロール(孔型ワークロール)を用いて圧延を行うことにより、板幅方向に差厚を有する差厚鋼板を製造する方法が開示されている。なお、板幅方向に差厚を有する差厚鋼板は、縦縞鋼板とも呼ばれる。また、孔型ワークロールを用いた圧延は、孔型圧延とも呼ばれる。
特開平3−281010号公報 特許第5076707号公報 特開2014−180676号公報
ここで、本発明者らが、特許文献2、3に記載の方法と同様に孔型圧延を行い、その製造された差厚鋼板について詳細に検討を行った結果、差厚鋼板の形状によっては、薄肉部に波打ちが生じ得ることが判明した。しかしながら、特許文献2、3では、このような薄肉部における平坦度不良については言及されていない。つまり、特許文献2、3に記載の方法では、差厚鋼板の形状によっては、高品質な差厚鋼板を製造することが困難となる恐れがあった。ここでは、一例として、鋼板について説明したが、他の金属材料からなる板材についても、板幅方向に板厚分布を有する差厚板材を孔型圧延によって製造する場合には、同様の問題が生じ得る。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、平坦度不良を低減させることにより品質をより向上させることが可能な、新規かつ改良された差厚板材の製造方法、及び差厚板材を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、金属材料からなる板材に対して胴長方向に径差を有する孔型ワークロールを用いた孔型圧延を行うことにより、板幅方向に板厚分布を有する差厚板材を製造する、差厚板材の製造方法であって、前記差厚板材の薄肉部の厚みをt1、前記差厚板材の薄肉部の板幅方向の幅をW1とした場合に、前記薄肉部の厚みt1、及び前記薄肉部の板幅方向の幅W1が、W1/t1≧15を満たし、少なくとも前記薄肉部の一部領域に、前記薄肉部が板厚方向に屈曲されて形成される屈曲部が設けられ、前記屈曲部の断面形状は、1または複数のハット形状が連なった形状であり、ハット形状高さgは、前記薄肉部の厚みt1の2倍以上3倍以下であり、前記屈曲部の投影長に対する前記屈曲部の線長の比は、1.079以上である、差厚板材の製造方法が提供される。
また、当該差厚板材の製造方法においては、前記孔型圧延を行った後に、前記屈曲部を板幅方向に延ばし、薄肉部を略平坦な形状に変形させる工程が行われてもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、板幅方向に板厚分布を有する、金属材料からなる差厚板材であって、前記差厚板材の薄肉部の厚みをt1、前記差厚板材の薄肉部の板幅方向の幅をW1とした場合に、前記薄肉部の厚みt1、及び前記薄肉部の板幅方向の幅W1が、W1/t1≧15を満たし、少なくとも前記薄肉部の一部領域に、前記薄肉部が板厚方向に屈曲されて形成される屈曲部が設けられ、前記屈曲部の断面形状は、1または複数のハット形状が連なった形状であり、ハット形状高さgは、前記薄肉部の厚みt1の2倍以上3倍以下であり、前記屈曲部の投影長に対する前記屈曲部の線長の比は、1.079以上である、差厚板材が提供される。
以上説明したように本発明によれば、差厚板材において、平坦度不良を低減させることにより品質をより向上させることが可能になる。
孔型圧延による差厚鋼板の製造方法について説明するための図である。 差厚鋼板の形状を表すパラメータについて説明するための図である。 薄肉部の平坦度不良と、薄肉部厚t1及び薄肉部幅W1と、の関係を示すグラフ図である。 本実施形態に係る差厚鋼板の板幅方向の断面形状を示す図である。 薄肉部に屈曲部が設けられない差厚鋼板の板幅方向の断面形状を示す図である。 薄肉部に屈曲部が設けられない差厚鋼板の板幅方向の断面形状を示す図である。 薄肉部に屈曲部が設けられた差厚鋼板の板幅方向の断面形状を示す図である。 薄肉部に屈曲部が設けられた差厚鋼板の板幅方向の断面形状を示す図である。 薄肉部に屈曲部が設けられた差厚鋼板の板幅方向の断面形状を示す図である。 薄肉部に屈曲部が設けられた差厚鋼板の板幅方向の断面形状を示す図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、以下では、製造する対象である差厚板材が鋼板である場合を例に挙げて説明を行う。ただし、本発明はかかる例に限定されず、本発明は、他の金属材料の差厚板材の製造にも好適に適用可能である。
(1.本発明に想到した背景)
本発明の一実施形態について詳細に説明するに先立ち、本発明をより明確なものとするために、本発明者らが本発明に想到した背景について説明する。
(1−1.孔型圧延による差厚鋼板(縦縞鋼板)の製造方法について)
上述したように、差厚鋼板の製造方法としては、従来、孔型圧延を行うことにより、板幅方向に板厚差を付与する方法が提案されている。図1は、孔型圧延による差厚鋼板の製造方法について説明するための図である。図1に示すように、当該製造方法では、一対のワークロール101、102(上ワークロール101、下ワークロール102)を用いて鋼板201を圧延する際に、上ワークロール101として、孔型ワークロールが用いられる。孔型ワークロールは、図示するように、その胴長方向に径差を有するロールである。かかる孔型ワークロールを用いて圧延を行うことにより、鋼板201には、その板幅方向に板厚差が付与されることとなる。つまり、板幅方向に厚肉部203と薄肉部205が分布する差厚鋼板201が形成され得る。
なお、図示する例では、上ワークロール101として孔型ワークロールが用いられているが、差厚鋼板の製造方法はかかる例に限定されない。差厚鋼板の製造方法としては、下ワークロール102として孔型ワークロールが用いられてもよいし、上ワークロール101及び下ワークロール102の双方が孔型ワークロールであってもよい。下ワークロール102としてのみ孔型ワークロールが用いられる場合には、厚肉部203及び薄肉部205の凹凸形状が、図示する差厚鋼板201とは逆に、差厚鋼板の下面に形成されることとなる。あるいは、上ワークロール101及び下ワークロール102の双方が孔型ワークロールである場合には、上面及び下面の双方に、厚肉部203及び薄肉部205の凹凸形状が形成されることとなる。また、孔型圧延は、通常、熱間圧延で行われるが、冷間圧延であってもよい。
ここで、図2は、差厚鋼板201の形状を表すパラメータについて説明するための図である。図2では、差厚鋼板201の板幅方向における断面の形状を概略的に示している。本明細書では、図2に示すように、差厚鋼板201の形状を表すパラメータを以下のように定義する。なお、P=W1+W2である。
薄肉部厚t1:薄肉部205の板厚
厚肉部厚t2:厚肉部203の板厚
差厚h:厚肉部203の板厚と薄肉部205の板厚との差厚
薄肉部幅W1:薄肉部205の板幅方向における長さ
厚肉部幅W2:厚肉部203の板幅方向における長さ
厚肉部ピッチP:厚肉部203のピッチ(厚肉部203の板幅方向の中心から、隣り合う厚肉部203の板幅方向の中心までの長さ)
板厚変化部角度θ:板厚変化部(薄肉部205及び厚肉部203と薄肉部205との境界)における水平方向に対する角度
(1−2.薄肉部における平坦度不良についての検討)
ここで、例えば特許文献2に係る技術では、建材用の鋼柱管用の差厚鋼板201の製造を目的としており、当該差厚鋼板201の薄肉部厚t1は9mm〜22mm程度、厚肉部ピッチPは30mm〜40mm程度である。一方、自動車用の部材においては、高い強度と軽量化をともに実現するために、例えば鋼板をハット状に曲げ加工した場合における角部や、鋼板から角型鋼管を形成した場合における稜線(角部)等のみを厚肉化し、その他の部分をより薄くしたいという要望があると考えられる。このような部材を差厚鋼板201で形成しようとする場合には、例えば薄肉部厚t1が約0.8mm〜約4.0mm、及び厚肉部ピッチPが約50mm以上の、薄肉部厚t1がより薄く、厚肉部ピッチPがより長い差厚鋼板201(以下、便宜的に、薄肉長ピッチの差厚鋼板201とも呼称する)を製造する必要が生じる。
そこで、本発明者らは、上述したような孔型圧延を用いて、このような薄肉長ピッチの差厚鋼板201を製造することを試みた。その結果、薄肉長ピッチの差厚鋼板201においては、薄肉部205に波打ち(すなわち、平坦度不良)が発生する場合があることが判明した。かかる平坦度不良は、特許文献2に係る技術で対象としているような、薄肉部厚t1が比較的厚く、厚肉部ピッチPが比較的短い差厚鋼板201ではほとんど発生しておらず、今回、本発明者らが新たに発見した現象である。なお、本明細書において、単に「平坦度不良」と記載した場合には、特に断りがない限り、かかる差厚鋼板201における薄肉部の平坦度不良のことを指すこととする。
本発明者らは、このような平坦度不良が発生する理由及び条件について、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いて解析を行った。当該有限要素法では、3次元の計算モデルを用いて、孔型圧延を行った際の鋼板の変形の様子、並びに孔型圧延を行った際に鋼板に生じる応力及びひずみを解析した。このとき、鋼板は弾塑性体として扱い、孔型ワークロールは剛体として扱った。また、孔型圧延については、熱間圧延で想定される物性値(例えば、材料の変形抵抗、流動応力及びヤング率、並びにロールと材料との間の摩擦抵抗等)を用いて計算を行うことで、当該孔型圧延を熱間圧延として扱った。様々な形状の差厚鋼板に対する孔型圧延を模擬して、鋼板の板厚及び孔型ワークロールの形状を様々に変更しながら、解析を繰り返し行った結果、以下の事実が判明した。
孔型圧延においては、薄肉部205については、圧下率が大きいため、圧延後の差厚鋼板201において長手方向に大きな伸びひずみが生じる。一方、厚肉部203については、圧下率が小さいため、圧延後の差厚鋼板201において長手方向の伸びひずみは小さい。このように、差厚鋼板201では、厚肉部203と薄肉部205との長手方向の伸びひずみの差が大きい。従って、薄肉部205には、長手方向に大きな圧縮応力が生じることとなり、例えば薄肉部厚t1が薄い場合等、薄肉部205の強度が不足する場合には、当該薄肉部205が座屈変形し、平坦度不良が生じるのだと考えられる。
また、薄肉部205における塑性ひずみについて詳細に解析したところ、板幅方向の塑性ひずみについては、厚肉部203との境界近傍においては大きな塑性ひずみが生じており、当該境界から板幅方向に遠ざかるにつれて、当該塑性ひずみの値が小さくなることが分かった。また、薄肉部205における長手方向の塑性ひずみは、厚肉部203との境界から板幅方向に遠ざかるにつれて大きくなっていることが分かった。その結果、厚肉部203と薄肉部205との長手方向の塑性ひずみの差も、当該境界から板幅方向に遠ざかるにつれて大きくなる。
薄肉部205において厚肉部203との境界近傍において板幅方向の塑性ひずみが大きいことは、当該境界近傍において、薄肉部205から厚肉部203へのメタルフローが好適に生じていることを意味している。かかるメタルフローによって厚肉部203にメタルが充満されることにより、厚肉部203と薄肉部205の差厚が形成され得る。
一方、当該境界から板幅方向に遠ざかるにつれて薄肉部205の板幅方向の塑性ひずみが小さくなることは、当該境界から板幅方向に遠ざかるにつれて薄肉部205から厚肉部203へのメタルフローが生じ難くなることを意味している。そのために、薄肉部205における長手方向の塑性ひずみも、当該境界から板幅方向に遠ざかるにつれて大きくなると考えられる。つまり、薄肉部幅W1が大きいほど、薄肉部205において長手方向の塑性ひずみが大きい領域が存在する可能性が高まる。
また、本発明者らによる解析の結果、薄肉部205の板幅方向において、当該薄肉部205から厚肉部203に向かってメタルフローが生じる範囲は、薄肉部厚t1でほぼ決定され、薄肉部幅W1にかかわらず一定であることが分かっている。薄肉部厚t1が薄い場合には、薄肉部205の板幅方向において、厚肉部203に向かってメタルフローが生じる範囲は小さい。つまり、薄肉部厚t1が薄いほど、薄肉部205において長手方向の塑性ひずみが大きい領域が存在する可能性が高まる。
このように、薄肉部幅W1が大きいほど、及び薄肉部厚t1が薄いほど、薄肉部205において、厚肉部203へのメタルフローが生じ難く長手方向の塑性ひずみが大きい領域(すなわち、厚肉部203と薄肉部205との長手方向の伸びひずみの差が大きい領域)が生じやすくなる。従って、薄肉長ピッチの差厚鋼板201においては、平坦度不良が生じやすくなるのだと考えられる。
まとめると、本発明者らによる解析の結果、薄肉長ピッチの差厚鋼板201において薄肉部205に平坦度不良が発生する原因は、圧下率の違いによる厚肉部203と薄肉部205との長手方向の伸びひずみの差によって、当該薄肉部205が座屈変形を起こすことであることが判明した。薄肉部厚t1が小さい場合には、薄肉部205の強度が小さくなること、及び、薄肉部205から厚肉部203へのメタルフローが生じ難くなり厚肉部203と薄肉部205との長手方向の伸びひずみの差が大きくなること等の理由により、座屈変形が生じやすくなり、平坦度不良が生じやすくなる。また、厚肉部ピッチPが大きい場合には、例えば薄肉部幅W1と厚肉部幅W2が同程度であるとすれば、当該薄肉部幅W1も大きくなる。従って、薄肉部205においては、厚肉部203との境界から離れた部位に、厚肉部203との長手方向の伸びひずみの差が大きい領域が存在する可能性が高まり、平坦度不良が生じやすくなる。よって、薄肉長ピッチの差厚鋼板201においては、薄肉部205に平坦度不良が発生しやすくなるのだと考えられる。
上記のように、本発明者らによる解析の結果、薄肉部205の平坦度不良は、薄肉部厚t1が小さく、厚肉部ピッチPが大きい場合(すなわち、薄肉部幅W1が大きい場合)に顕著に生じ得ることが確認された。そこで、本発明者らは、当該平坦度不良の発生有無を、薄肉部厚t1及び薄肉部幅W1をパラメータとして整理し、当該平坦度不良が生じる具体的な条件について検討した。結果を図3に示す。図3は、薄肉部205の平坦度不良と、薄肉部厚t1及び薄肉部幅W1と、の関係を示すグラフ図である。
図3では、横軸に薄肉部幅W1を取り、縦軸に薄肉部厚t1を取り、FEM計算を行った差厚鋼板201の形状に対応する点に、マーカーをプロットしている。白抜きのマーカーは平坦度不良が発生しなかったことを示しており、塗り潰しているマーカーは平坦度不良が発生したことを示している。平坦度不良の発生を判断する基準(例えば急峻度λのしきい値)は製品によって異なるが、ここでは、薄肉部205の急峻度λがλ>2%の場合に平坦度不良が発生していると判断した。なお、図3に示すデータは、いずれも、板厚比t2/t1=2.0であり、W1=W2で厚肉部203と薄肉部205が板幅方向に規則的に並んでいる差厚鋼板201についてFEM計算を行った結果である。
図3を参照すると、平坦度不良の発生有無を示す境界が、直線Tで表されることが分かる。当該直線Tの傾きを具体的に計算したところ、W1/t1=約15であった。また、板厚比t2/t1が異なる差厚鋼板201についても、同様に、薄肉部厚t1及び薄肉部幅W1を変更しながらFEM計算を行い、平坦度不良の発生有無を示す境界について考察したところ、同様の結果が得られた。
このように、本発明者らは、平坦度不良が発生する条件について検討した結果、少なくとも厚肉部203と薄肉部205が板幅方向に所定のピッチで規則的に並んだ差厚鋼板201においては、W1/t1≧約15の場合に、薄肉部205において平坦度不良が顕在化し得るという知見を得た。縦縞鋼板である差厚鋼板201において、平坦度不良が発生する条件については、これまで十分に検討されておらず、上記のように平坦度不良が発生する条件を具体的に数値によって規定することは、今回本発明者らが新たになしえたことである。
上記条件から、平坦度不良を発生させないためには、差厚鋼板201の形状がW1/t1<約15を満たせばよいこととなる。従って、例えば、薄肉部厚t1が2mmであれば、平坦度不良を発生させずに圧延可能な薄肉部幅W1の最大値は30mm程度ということになる。このように、孔型圧延における差厚鋼板の製造の自由度は小さい。つまり、何ら対策を講じなければ、上述したような薄肉長ピッチの差厚鋼板201を、孔型圧延によって、平坦度不良を発生させることなく製造しようとすることは、困難であると言える。
(1−3.平坦度不良に対する対策)
そこで、本発明者らは、W1/t1≧約15を満たすような、平坦度不良が顕在化し得る薄肉長ピッチの差厚鋼板201について、当該平坦度不良を改善し得る対策について検討を行った。
上述したように、薄肉部205における平坦度不良は、厚肉部203と薄肉部205との長手方向の伸びひずみの差によって生じると考えられる。従って、平坦度不良の発生を抑制するためには、当該長手方向の伸びひずみの差をより小さくするように、孔型圧延を行えばよい。そのためには、薄肉部205から厚肉部203へのメタルフローを促進することが有効である。薄肉部205から厚肉部203へのメタルフローが促進されれば、薄肉部205における板幅方向の塑性ひずみが増加するため、当該薄肉部205における長手方向の塑性ひずみは減少することとなり、結果的に、上記長手方向の伸びひずみの差をより小さくすることが可能になる。
薄肉部205から厚肉部203へのメタルフローを促進するためには、具体的には、ワークロールを大径化し、鋼板201とワークロール101、102との接触長さをより長くすることや、鋼板201とワークロール101、102との間の摩擦係数を大きくして鋼板201の伸びを拘束することが、有効な手段となる。しかし、ワークロール101、102を大径化したり、摩擦係数を増大させたりした場合には、圧延荷重が増加することとなる。従って、設備上、平坦度不良の改善代には限界があり、上記の手段は根本的な解決策とはなり得ない。また、上述したように、薄肉部厚t1が薄くなるほど、及び薄肉部幅W1が大きくなるほど、薄肉部205から厚肉部203へのメタルフローは生じ難くなる。従って、メタルフローを促進することにより上記長手方向の伸びひずみの差を小さくする方法には、そもそも限界があると考えられる。
また、平坦度不良の発生を抑制するための他の方法として、同一あるいは形状を変化させた孔型ワークロールで複数パスの孔型圧延を行い、平坦度不良が顕在化しない条件で少しずつ鋼板201に圧下変形を加える方法が考えられる。しかしながら、同じく複数パスの孔型圧延によって製造される形鋼や軌条と比べて、鋼板201のようないわゆる薄板は、薄物であり、かつその板厚差(差厚h)が小さく、寸法精度も厳しい。薄板である差厚鋼板201を複数パスの孔型圧延によって製造する場合には、鋼板201の幅方向への動きを拘束することが難しく、鋼板201の蛇行等による板幅方向の位置ずれや、噛み出しの発生等が予想されるため、安定製造、寸法精度の確保が困難であると考えられる。
以上説明したように、W1/t1≧約15を満たすような、平坦度不良が顕在化し得る薄肉長ピッチの差厚鋼板201については、これまで、その好適な製造方法が確立されていなかったと言える。本発明者らは、このような薄肉長ピッチの差厚鋼板201において、平坦度不良をより低減し得る製造方法について鋭意検討した結果、本発明に想到した。本発明によれば、W1/t1≧約15を満たすような薄肉長ピッチの差厚鋼板201においても、平坦度不良が低減されたより高品質な差厚鋼板201を製造することが可能になる。以下、本発明者らが想到した本発明の好適な一実施形態について、詳細に説明する。
(2.本実施形態に係る差厚鋼板)
本実施形態では、図1を参照して説明した方法と同様に、孔型圧延によって差厚鋼板を製造する。このとき、差厚鋼板の板幅方向における断面の形状を工夫することにより(すなわち、孔型ワークロールの形状を工夫することにより)、薄肉部における平坦度不良の発生を抑制する。
図4を参照して、本実施形態に係る差厚鋼板の形状について説明する。図4は、本実施形態に係る差厚鋼板の板幅方向の断面形状を示す図である。
図4を参照すると、本実施形態に係る差厚鋼板210の板幅方向における断面は、厚肉部203と薄肉部205とが板幅方向に分布するとともに、薄肉部205の一部領域に、当該薄肉部205が板厚方向に屈曲した屈曲部207が存在する形状を有する。つまり、差厚鋼板210は、例えば図1に示すような一般的な差厚鋼板201に対して、その薄肉部205に屈曲部207が設けられた構成を有する。
なお、厚肉部203、薄肉部205及び板厚変化部の形状は、差厚鋼板210の用途に応じて(すなわち、差厚鋼板210によって最終的に製造される部品に応じて)、適宜決定され得る。例えば、板厚変化部角度θは、約30°≦θ<90°程度であり得る。また、図示する例では、板厚変化部の角部は直線によって構成されているが、応力集中を避けるために、当該角部は曲線によって構成されてもよい。
屈曲部207は、薄肉部205が板厚方向に折り曲げられたハット形状209が、1つ又は複数連なって形成されることにより、構成される。図示する例では、2つのハット形状209が連なって形成されることにより、屈曲部207が構成されている。
屈曲部207を有する差厚鋼板210は、上ワークロール及び下ワークロールの両方に、厚肉部203、薄肉部205、及び屈曲部207(すなわち、屈曲部207を構成するハット形状209)を形成し得るような孔型ワークロールを用いて孔型圧延を行うことにより、形成され得る。屈曲部207における板厚は、薄肉部厚t1と略同一であってよい。
なお、本明細書では、屈曲部207の形状について、屈曲部207のハット形状209の下部(幅広の部位)の板幅方向における長さを、ハット形状下部幅d1とも記載する。また、ハット形状209の上部(幅狭の部位)の板幅方向における長さを、ハット形状上部幅d2とも記載する。また、ハット形状209の板厚方向に延伸する部位の水平方向からの傾斜角度をハット形状角度αとも記載する。また、ハット形状209のピッチ、すなわちハット形状209の板幅方向の中心から、隣り合うハット形状209の板幅方向の中心までの長さを、ハット形状ピッチQとも記載する。また、ハット形状209の高さを、ハット形状高さgとも記載する。なお、ハット形状高さgは、薄肉部205の表面からのハット形状209の高さを意味する。
ここで、差厚鋼板210の断面形状は、W1/t1≧約15を満たす。また、差厚鋼板210の薄肉部厚t1は、例えば約0.8mm〜約4.0mmである。従って、差厚鋼板210においては、何ら対策を講じなければ、上述した差厚鋼板201と同様に、薄肉部205に平坦度不良が発生し得る。しかしながら、差厚鋼板210では、屈曲部207が設けられることにより、かかる平坦度不良の発生を抑制することができる。
具体的には、上述したように、薄肉部205における平坦度不良は、厚肉部203と薄肉部205との長手方向の伸びひずみの差によって生じると考えられる。これに対して、本実施形態では、薄肉部205に屈曲部207が設けられることにより、板幅方向の線長がより長くなるため、板幅方向への伸びひずみが促進されることとなり、体積一定則により、薄肉部205における長手方向への伸びひずみが抑制される。従って、厚肉部203と薄肉部205との長手方向の伸びひずみの差が低減される。また、屈曲部207が設けられることにより、薄肉部205における座屈剛性が向上する効果も得られる。このように、屈曲部207を設けることにより、厚肉部203と薄肉部205との長手方向の伸びひずみの差を低減する効果、及び薄肉部205における座屈剛性を向上させる効果が得られるため、W1/t1≧約15を満たす場合であっても、薄肉部205に平坦度不良を発生させることなく、差厚鋼板210を製造することが可能になる。
更に、孔型圧延で屈曲部207を有する差厚鋼板210を形成した後に、例えばプレス等により、当該屈曲部207を板幅方向に延ばす工程が行われてもよい。屈曲部207が略平坦な形状に変形させられることにより、図1に示すような屈曲部207を有しない差厚鋼板であって、薄肉部幅W1がより大きい差厚鋼板を得ることができる。このように屈曲部207を延ばす工程が追加的に行われる場合には、最終的に所望の薄肉部幅W1が得られるように、孔型圧延における屈曲部207の形状が設計され得る。ここで、孔型圧延のみによって薄肉部幅W1が大きい差厚鋼板を製造しようとする場合には、上述したように、薄肉部205に平坦度不良が生じやすくなってしまう。一方、本実施形態のように、孔型圧延で屈曲部207を有する差厚鋼板210を形成した後に、当該屈曲部207を板幅方向に延ばす工程を行うことにより、平坦度不良を顕在化させることなく、薄肉部幅W1がより大きい差厚鋼板を得ることが可能になる。
ここで、図4に示す屈曲部207の形状は、あくまで一例である。例えば、屈曲部207は、1つのハット形状209によって構成されてもよい。あるいは、屈曲部207が複数のハット形状209によって構成される場合であっても、そのハット形状209の数は、図4に示す例に限定されず、適宜決定されてよい。なお、図4に示すもの以外の、屈曲部207の形状の他の例については、下記実施例で説明する。
屈曲部207の形状についての条件、すなわち屈曲部207を形成する条件(例えば、ハット形状下部幅d1、ハット形状上部幅d2、ハット形状角度α、ハット形状高さピッチQ、ハット形状高さg、及び屈曲部207を構成するハット形状209の数等)は、孔型圧延の圧延条件に基づいて、薄肉部205における平坦度不良の発生を抑制し得るように(具体的には、例えば急峻度等の平坦度を示す指標が、製品として問題ない範囲内に収まるように)、適宜決定され得る。例えば、屈曲部207を形成する条件は、薄肉部205の急峻度が略2%以下となるように決定される。この際、上述したように、後に屈曲部207を板幅方向に延ばす工程が追加される場合には、当該工程の後に所望の形状が得られることも更に考慮され得る。ここで、孔型圧延の圧延条件には、入側板厚t0、孔型圧延実行後の狙い値としての差厚鋼板210の形状(薄肉部厚t1、厚肉部厚t2、薄肉部幅W1、厚肉部ピッチP(なお、薄肉部幅W1及び厚肉部ピッチPが定まれば、結果的に厚肉部幅W2も決定される)、及び板厚変化部角度θ)、並びに孔型ワークロールのワークロール径等が含まれ得る。屈曲部207を形成する条件は、例えば、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いた数値解析シミュレーションや、実機を用いた実験等により、適宜決定されてよい。
具体的には、例えば、上述したように、屈曲部207によって薄肉部205における板幅方向への伸びひずみが促進されれば、厚肉部203と薄肉部205との長手方向の伸びひずみの差を低減することができる。薄肉部205における板幅方向への伸びひずみの量を決定する因子としては、板幅方向における屈曲部207の投影長に対する当該屈曲部207の線長の比が挙げられる。従って、かかる板幅方向における屈曲部207の投影長に対する当該屈曲部207の線長の比が、平坦度不良を抑制し得る十分な伸びひずみの量が得られるような所望の値になるように、屈曲部207を形成する条件が決定されてよい。あるいは、薄肉部205の座屈剛性を基準として、当該座屈剛性が、平坦度不良を抑制し得るような所望の値になるように、屈曲部207を形成する条件が決定されてよい。
なお、図示する例では、屈曲部207は、薄肉部205が直線的に折り曲げられることによって形成されているが、本実施形態はかかる例に限定されない。屈曲部207は、薄肉部205が曲線的に折り曲げられることによって形成されてもよい。屈曲部207を曲線状に形成した場合であっても、屈曲部207を含む薄肉部205の板厚方向の中心線の板幅方向における長さが同等であれば、屈曲部207を直線状に形成した場合と同様の、平坦度不良の発生を抑制する効果を得ることができる。
本発明の効果について確認するために、本発明者らが行った数値解析シミュレーションの結果について説明する。当該数値解析シミュレーションでは、上記で説明した本実施形態に係る差厚鋼板210(すなわち、薄肉部205に屈曲部207が設けられた差厚鋼板210)を製造するための孔型圧延を模擬したFEM計算を実行した。そして、孔型圧延実行後の差厚鋼板210について、その薄肉部205における平坦度不良の発生有無を調査した。また、比較のため、図1に示すような薄肉部205に屈曲部207が設けられない差厚鋼板201についても、同様のFEM計算を実行し、薄肉部205における平坦度不良の発生有無を調査した。
本実施例では、互いに形状の異なる複数の差厚鋼板210、201について、FEM計算を行った。FEM計算を行った差厚鋼板の形状を、図5〜図10に示す。図5及び図6は、薄肉部205に屈曲部207が設けられない差厚鋼板201a、201bの板幅方向の断面形状を示す図である。図7〜図10は、薄肉部205に屈曲部207が設けられた差厚鋼板210a〜210cの板幅方向の断面形状を示す図である。なお、図5〜図10では、形状の違いに応じて各差厚鋼板を区別するために、便宜的に異なる符号を付している。符号「201a」及び符号「201b」は、薄肉部205に屈曲部207が設けられない差厚鋼板201であることを示しており、符号「210a」、符号「210b」、符号「210c」及び符号「210d」は、薄肉部205に屈曲部207が設けられた差厚鋼板210であることを示している。
図5〜図10に示す差厚鋼板201a、201b、210a〜210dの形状、及び孔型圧延後における平坦度不良の発生有無を、下記表1〜表6にまとめる。なお、いずれの差厚鋼板201a、201b、210a〜210dについてのFEM計算においても、入側板厚t0はt0=3.56mmとし、ワークロール径はφ600mmとし、圧延温度は850℃とした。
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ここで、差厚鋼板201a、201bは、いずれも屈曲部207が設けられない差厚鋼板であるが、板幅方向の形状(薄肉部幅W1、厚肉部幅W2及び厚肉部ピッチP)が互いに異なり、その他の形状は同様の差厚鋼板である。従って、差厚鋼板201a、201bについての結果を比較することにより、薄肉部幅W1が平坦度不良に与える影響を確認することができる。また、差厚鋼板210a〜210dは、屈曲部207が設けられること以外は、差厚鋼板201bと同様の形状を有する。従って、差厚鋼板201b、210a〜210dについての結果を比較することにより、屈曲部207の有無、及び屈曲部207の形状が平坦度不良に与える影響を確認することができる。以下、順に考察する。
まず、差厚鋼板201a、201bの結果について考察する。孔型圧延実行後における差厚鋼板201a、201bの平坦度について調べた結果、表1及び表2に示すように、差厚鋼板201aでは平坦度不良が発生しなかったが、差厚鋼板201bでは平坦度不良が発生した。これは、差厚鋼板201aでは、薄肉部幅W1が比較的小さいために、W1/t1=12.5であり、上述した平坦度不良が顕在化し得る条件である「W1/t1≧15」を満たさない一方、差厚鋼板201bでは、薄肉部幅W1が比較的大きいために、W1/t1=31.25であり、当該条件「W1/t1≧15」を満たすからであると考えられる。つまり、差厚鋼板201a、201bについての上記結果は、薄肉部幅W1が大きく「W1/t1≧15」を満たす場合には平坦度不良が顕在化し得るという、本発明者らが得た知見が正しいことを示すものである。
次に、差厚鋼板201b、210a〜210dについての結果について考察する。なお、差厚鋼板201b、210a〜210dは、上述したように、屈曲部207が設けられること以外は同様の形状を有するものであるため、いずれも、「W1/t1≧15」を満たす。すなわち、差厚鋼板201b、210a〜210dは、いずれも、屈曲部207が存在しなければ平坦度不良が生じ得る形状を有している。
孔型圧延実行後における差厚鋼板201b、210a〜210dの平坦度について調べた結果、表1、及び表3〜表6に示すように、差厚鋼板201b、210dでは、平坦度不良が発生した。一方、差厚鋼板210a〜210cについては、平坦度不良が発生しなかった。
差厚鋼板201bにおいて平坦度不良が発生し、差厚鋼板210a〜210cにおいて平坦度不良が発生しなかったという上記結果は、薄肉部205に屈曲部207を設けることにより、当該薄肉部205における平坦度不良の発生が確かに抑制され得ることを示している。つまり、当該結果から、屈曲部207によって平坦度不良の発生が抑制され得るという、本発明の効果が確認できた。
一方、差厚鋼板210dでは、屈曲部207を設けたにもかかわらず、平坦度不良が発生した。ここで、図8、図10、表4及び表6に示すように、差厚鋼板210dは、差厚鋼板210bに対して、ハット形状高さgの値が異なるだけで、他の形状は同様の差厚鋼板である。これら2つの差厚鋼板210b、210dについての結果を比較すると、ハット形状高さg=1.6(mm)である差厚鋼板210dについては、平坦度不良が発生した一方、ハット形状高さg=3.2(mm)である差厚鋼板210bについては、平坦度不良が発生しなかったことになる。これは、差厚鋼板210bでは、ハット形状高さgが大きいために、板幅方向における屈曲部207の投影長に対する当該屈曲部207の線長の比が大きくなり、薄肉部205における板幅方向への伸びひずみがより促進されるとともに、薄肉部205における座屈剛性がより増加されるためであると考えられる。
差厚鋼板210b、210dについての結果から、薄肉部205における平坦度不良の発生を抑制するためには、屈曲部207の形状を適切に決定する必要があることが確認できた。具体的には、板幅方向における屈曲部207の投影長に対する当該屈曲部207の線長の比がより大きくなるように、及び/又は薄肉部205における座屈剛性がより大きくなるように、屈曲部207を形成することにより、薄肉部205における平坦度不良の発生を効果的に抑制することが可能になる。
(3.補足)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、差厚鋼板201において平坦度不良が顕在化する条件を「W1/T1≧15」としていたが、当該条件は、薄肉部205における急峻度λがλ>2%のときに平坦度不良が発生していると判断する場合において得られた条件である。平坦度不良が発生していると判断するための急峻度λのしきい値は、製品によって異なるため、本発明が適用され得る製品に応じて、当該しきい値は変更されてよく、それに伴い上記条件も変更され得る。あるいは、急峻度λ以外の他の指標によって平坦度不良の発生が判断され、その結果に応じて上記条件が求められてもよい。
また、上記実施形態では、製造する対象である差厚板材が鋼板である場合を例に挙げて説明を行ったが、本発明はかかる例に限定されない。厚肉部と薄肉部との長手方向の伸びひずみの差によって当該薄肉部に平坦度不良が生じ得るという原理は、鋼以外の金属材料でも同様であるため、本発明は、他の金属材料からなる差厚板材の製造にも好適に適用可能である。ただし、上記実施形態における平坦度不良が顕在化する条件である「W1/T1≧15」は、鋼、及び鋼と同等の縦弾性係数(ヤング率)を有する金属材料において成り立つ条件であり、ヤング率が異なる他の金属材料では、平坦度不良が顕在化する条件は異なる。σ=Eε(σ:応力、ε:ひずみ、E:ヤング率)の関係からも明らかなように、厚肉部と薄肉部との長手方向の伸びひずみの差が同じであっても、それによって生じる長手方向の応力はヤング率によって異なるため、薄肉部における座屈(すなわち、平坦度不良)が顕在化する条件も異なるからである。具体的には、一般的な金属材料(例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ニッケル、及び銅等)では、鋼よりもヤング率が低いため、平坦度不良はより発生しやすくなると考えられ、平坦度不良が顕在化するW1/T1のしきい値は、上記実施形態における「15」よりも小さくなることが予想される。本発明を、鋼、及び鋼と同等のヤング率を有する金属材料以外の金属材料からなる差厚板材に適用する場合には、その金属材料におけるヤング率を考慮して、平坦度不良が顕在化する条件を適宜決定すればよい。
101 上ワークロール
102 下ワークロール
201 差厚鋼板(鋼板)
203 厚肉部
205 薄肉部
207 屈曲部
209 ハット形状
210 差厚鋼板

Claims (3)

  1. 金属材料からなる板材に対して胴長方向に径差を有する孔型ワークロールを用いた孔型圧延を行うことにより、板幅方向に板厚分布を有する差厚板材を製造する、差厚板材の製造方法であって、
    前記差厚板材の薄肉部の厚みをt1、前記差厚板材の薄肉部の板幅方向の幅をW1とした場合に、前記薄肉部の厚みt1、及び前記薄肉部の板幅方向の幅W1が、W1/t1≧15を満たし、
    少なくとも前記薄肉部の一部領域に、前記薄肉部が板厚方向に屈曲されて形成される屈曲部が設けられ
    前記屈曲部の断面形状は、1または複数のハット形状が連なった形状であり、
    ハット形状高さgは、前記薄肉部の厚みt1の2倍以上3倍以下であり、
    前記屈曲部の投影長に対する前記屈曲部の線長の比は、1.079以上である
    差厚板材の製造方法。
  2. 前記孔型圧延を行った後に、前記屈曲部を板幅方向に延ばし、薄肉部を略平坦な形状に変形させる工程が行われる、
    請求項に記載の差厚板材の製造方法。
  3. 板幅方向に板厚分布を有する、金属材料からなる差厚板材であって、
    前記差厚板材の薄肉部の厚みをt1、前記差厚板材の薄肉部の板幅方向の幅をW1とした場合に、前記薄肉部の厚みt1、及び前記薄肉部の板幅方向の幅W1が、W1/t1≧15を満たし、
    少なくとも前記薄肉部の一部領域に、前記薄肉部が板厚方向に屈曲されて形成される屈曲部が設けられ
    前記屈曲部の断面形状は、1または複数のハット形状が連なった形状であり、
    ハット形状高さgは、前記薄肉部の厚みt1の2倍以上3倍以下であり、
    前記屈曲部の投影長に対する前記屈曲部の線長の比は、1.079以上である
    差厚板材。
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