以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における燃料貯蔵システム30が接続された燃料電池システム1の構成を示す構成図である。
燃料電池システム1は、燃料電池スタック2に燃料ガス及び酸化剤ガスを供給して、燃料電池スタック2に接続される負荷に応じて発電する電源システムである。燃料電池システム1は、例えば、車両や、飛行機、船舶などの移動体に搭載される。
本実施形態における燃料電池システム1は、電動モータを備える電動車両に搭載される。燃料電池システム1は、燃料電池スタック2と、燃料給排装置3と、酸化剤給排装置4と、コントローラ5と、通信装置6とを備える。
燃料電池スタック2は、複数枚の燃料電池を積層したものであり、車両を駆動する電動モータなどの負荷によって要求される電力を発電する。燃料電池スタック2を構成する燃料電池は、例えば、固体酸化物型の燃料電池や、固体高分子型の燃料電池などが挙げられる。
燃料給排装置3は、燃料貯蔵システム30と、燃料ガス供給通路31と、燃料調圧弁32と、パージ通路33と、パージ弁34とを備える。
燃料貯蔵システム30は、燃料ガスを供給する外部装置と接続される。燃料ガスとしては例えば水素ガスが挙げられる。本実施形態の外部装置は、車両に水素ガスを供給する水素ステーションである。燃料貯蔵システム30は、水素ステーションから充填ポート310を介して供給される水素ガスを高圧タンクに貯蔵する。燃料貯蔵システム30は、貯蔵した水素ガスを内部装置である燃料電池スタック2に放出する。燃料貯蔵システム30の動作はコントローラ5により制御される。なお、燃料貯蔵システム30の詳細については次図を参照して後述する。
燃料ガス供給通路31は、燃料貯蔵システム30から放出された燃料ガスを燃料電池スタック2に供給するための通路である。燃料ガス供給通路31における一端部が燃料貯蔵システム30に接続され、他端部が燃料電池スタック2の燃料ガス入口孔に接続される。
燃料調圧弁32は、燃料ガス供給通路31に設けられる。燃料調圧弁32は、燃料貯蔵システム30から放出される燃料ガスの圧力を所望の値に調節して燃料電池スタック2に供給する。燃料調圧弁32は、連続的又は段階的に開度を調節可能な電磁弁であり、電池弁の開度はコントローラ5により制御される。
パージ通路33の一端部は、燃料電池スタック2の燃料ガス出口孔に接続され、他端部が酸化剤給排装置4に接続される。
パージ弁34は、パージ通路33に設けられる。パージ弁34は、連続的又は段階的に開度を調節することができる電磁弁であり、電磁弁の開度はコントローラ5により制御される。
酸化剤給排装置4は、燃料電池スタック2に酸化剤ガスを供給するとともに、燃料電池スタック2から流出する酸化剤ガスを大気に排出する。酸化剤ガスとして本実施形態では酸素を含む空気が使用される。酸化剤給排装置4は、酸化剤ガス供給通路41と、コンプレッサ42と、酸化剤ガス排出通路43と、酸化剤調圧弁44とを備える。
酸化剤ガス供給通路41は、外気から吸引した酸化剤ガスを燃料電池スタック2に供給するための通路である。酸化剤ガス供給通路41における一端部は外気と連通する通路に接続され、他端部が燃料電池スタック2の酸化剤ガス入口孔に接続される。
コンプレッサ42は、酸化剤ガス供給通路41に設けられる。本実施形態のコンプレッサ42は、酸化剤ガス供給通路41の一端部から空気を吸引して、その空気を酸化剤ガスとして燃料電池スタック2に供給する。コンプレッサ42のトルクはコントローラ5により制御される。
酸化剤ガス排出通路43は、燃料電池スタック2から排出される酸化剤ガスを大気に排出するための通路である。酸化剤ガス排出通路43における一端部は燃料電池スタック2の酸化剤ガス出口孔に接続され、他端部が開口端に形成される。
酸化剤調圧弁44は、酸化剤ガス排出通路43に設けられる。酸化剤調圧弁44は、燃料電池スタック2のカソード極の圧力を、燃料電池の発電に必要となる所望の値に調節する。酸化剤調圧弁44は、連続的又は段階的に開度を調節可能な電磁弁であり、電池弁の開度はコントローラ5により制御される。
コントローラ5は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
コントローラ5には、燃料貯蔵システム30の作動状態を示す信号や、不図示の各種センサからの信号が入力される。コントローラ5は、各種センサからの入力信号を用いて、燃料電池システム1から排出される水素の濃度が規定値以下に維持されるよう、燃料調圧弁32及びパージ弁34や、コンプレッサ42及び酸化剤調圧弁44などの動作を制御する。
各種センサとしては、例えば、車両に設けられた始動キーのオン/オフの切替え操作に応じて燃料電池システム1の起動要求及び停止要求を検出するキーセンサ51や、充填ポート310の接続状態を検出する開閉センサ52などがある。
キーセンサ51は、ドライバにより始動キーがオンに操作されると、燃料電池システム1の起動処理の実行を指令する起動指令信号をコントローラ5に出力する。
開閉センサ52は、充填ポート310の周囲を覆うカバーが開かれると、充填ポート310が接続可能な状態である旨を示す開信号をコントローラ5に出力する。一方、開閉センサ52は、充填ポート310の周囲を覆うカバーが閉じられると、充填ポート310が接続不能な状態である旨を示す閉信号をコントローラ5に出力する。
通信装置6は、水素ステーションとコントローラ5との間で行われる通信充填処理を実行するための通信装置である。例えば、充填ポート310に水素ステーションの充填ホースが物理的に接続された場合には、通信装置6は、燃料貯蔵システム30の作動状態を示す情報を水素ステーションに送信する。
図2は、本実施形態における燃料貯蔵システム30の構成を示す構成図である。
燃料貯蔵システム30は、充填ポート310と、高圧タンク311及び312と、ガス通路320と、弁装置321及び322と、開閉弁330と、圧力センサ340と、逆止弁352と、温度センサ360とを含む。
充填ポート310は、水素ステーションから供給される水素ガスを高圧タンク311及び312に充填するための充填口(レセプタクル)である。充填ポート310は、水素ステーションからの水素ガスを通すとともにその水素ガスの逆流による大気への放出を阻止する逆止弁351を備える。逆止弁351は第1の逆止弁である。
本実施形態の充填ポート310には、水素ステーションの充填ホースが接続される。例えば、充填ポート310は車両の側面に凹状に形成され、充填ポート310の周囲を覆うカバーが開けられて充填ホースが接続される。充填ポート310のカバーにはその開閉を検出する開閉センサ52が設けられている。
コントローラ5は、開閉センサ52から開信号を受信すると、通信装置6を介して水素ステーションに対し、充填通信処理の受け入れが可能なことを伝達する信号と共に高圧タンク311及び312の温度や圧力などの状態を示すタンク情報を送信する。水素ステーションは、充填通信処理の受入れ可能信号とタンク情報とを受信し、充填ポート310に充填ホースが勘合されると、数十MPa(メガパスカル)程度に圧縮された高圧の水素ガスを、充填ポート310を介して高圧タンク311及び312に供給する。
高圧タンク311及び312は、高圧の水素ガスを貯蔵する容器である。
ガス通路320は、充填ポート310と開閉弁330との間を接続する通路である。ガス通路320は、充填ポート310から供給される水素ガスを高圧タンク311及び312に通し、高圧タンク311及び312の少なくとも一方から放出される水素ガスを開閉弁330から燃料ガス供給通路31に通す。
本実施形態のガス通路320は、充填ポート310と逆止弁352との間を接続する充填通路320Aと、逆止弁352と開閉弁330との間を接続する共用通路320Bとにより構成される。共用通路320Bは、一本の通路であり、逆止弁352から高圧タンク311及び312の双方に水素ガスを充填する充填通路と、高圧タンク311及び312の双方から水素ガスを、開閉弁330を介して放出する放出通路とを兼用する共通の通路である。
弁装置321及び322は、開閉弁330よりも上流に形成されたガス通路320にそれぞれ接続される。弁装置321は、弁装置322よりも上流に設けられている。
弁装置321は、共用通路320Bと高圧タンク311との間に設けられる。弁装置321は、充填ポート310からの水素ガスを高圧タンク311に充填し、充填した水素ガスを高圧タンク311から開閉弁330へ放出する。
弁装置321は、ガス通路320と高圧タンク311との間に並列に設けられた逆止弁321A及び遮断弁321Bを備える。さらに弁装置321は、圧力センサ340とガス通路320との間を連通する圧力検出通路が設けられている。
逆止弁321Aは、充填ポート310からの水素ガスを充填しつつ水素ガスの逆流を阻止する。
遮断弁321Bは、高圧タンク311に充填された水素ガスを、ガス通路320を介して燃料電池システム1に開放又はその水素ガスを遮断する。遮断弁321Bの開閉はコントローラ5により制御される。
弁装置322は、共用通路320Bと高圧タンク312との間に設けられる。弁装置322は、充填ポート310からの水素ガスを高圧タンク312に充填し、充填した水素ガスを高圧タンク312から開閉弁330へ放出する。
弁装置322は、ガス通路320と高圧タンク312との間に並列に設けられた逆止弁322A及び遮断弁322Bを備える。逆止弁322A及び遮断弁322Bは、逆止弁321A及び遮断弁321Bと同一の構成である。
開閉弁330は、遮断弁321B及び322Bを介して高圧タンク311及び312から燃料ガス供給通路31に供給される水素ガスを開放又は遮断する遮断弁である。開閉弁330はコントローラ5により制御される。例えば、開閉弁330は、連続的又は段階的に開度を調節可能な電磁弁により実現され、電磁弁の開度はコントローラ5により制御される。
圧力センサ340は、開閉弁330と逆止弁352との間にある共用通路320Bに設けられる。本実施形態の圧力センサ340は弁装置321に設けられる。圧力センサ340は、ガス通路320の圧力を検出する。圧力センサ340は、検出した圧力の大きさを示す検出信号をコントローラ5に出力する。
逆止弁352は、弁装置321よりも上流のガス通路320に設けられる。例えば、逆止弁352は、高圧タンク311及び312に充填された水素ガスを燃料ガス供給通路31に供給する際に、その水素ガスが充填ポート310へ流出するのを阻止する役割を担う。逆止弁352は第2の逆止弁である。
温度センサ360は、共用通路320Bに設けられる。温度センサ360は、共用通路320Bの内部の温度を検出する。温度センサ360は、検出した温度の大きさを示す検出信号をコントローラ5に出力する。
コントローラ5は、開閉弁330、遮断弁321B、及び遮断弁322Bの開閉をそれぞれ制御する。
例えば、コントローラ5は、キーセンサ51から車両の起動要求を受けると、遮断弁321B及び322Bをそれぞれ開き、その後に開閉弁330を開く。一方、コントローラ5は、キーセンサ51から車両の停止要求を受けると、開閉弁330を閉じ、その後に遮断弁321B及び322Bをそれぞれ閉じる。コントローラ5は、燃料電池システム1への水素ガスの供給を禁止する信号を検出した場合にも、開閉弁330を閉じるとともに遮断弁321B及び322Bを閉じる。
また、コントローラ5は、開閉センサ52から充填ポート310のカバーが開状態である旨を示す開信号を受信すると、遮断弁321B、遮断弁322B、及び開閉弁330をそれぞれ閉じる。これにより、水素ステーションから充填ポート310を介して高圧タンク311及び312に水素ガスを充填することが可能になる。
コントローラ5は、開閉センサ52から閉信号を受信すると、水素充填処理が完了したと判断する。このとき、遮断弁321B、遮断弁322B、及び開閉弁330の各々が閉じられており、ガス通路320には水素ガスが滞留している。
コントローラ5は、開閉弁330を開き、ガス通路320に滞留する水素ガスを放出し、その際に圧力センサ340の検出信号を用いて逆止弁351及び352が故障しているか否かを診断する。
次に、水素ステーションから充填ポート310を介して高圧タンク311及び312に水素ガスが充填された後、コントローラ5が圧力センサ340の検出信号を用いて逆止弁351及び352が故障しているか否かを診断する故障診断処理について説明する。
図3は、コントローラ5による逆止弁351及び352の故障診断処理の一例を説明するタイムチャートである。この例では、逆止弁351及び352が共に水素ガスが逆流することなく正常である。
図3(a)は、遮断弁321B及び322Bの開閉状態を示し、図3(b)は、開閉弁330の開閉状態を示し、図3(c)は、圧力センサ340の検出信号を示す。図3(a)乃至(c)の横軸は互いに共通の時間軸である。
時刻t0よりも前では、水素ステーションから充填ポート310を介して水素ガスが高圧タンク311及び312に充填され、その後、充填ポート310のカバーが閉じられて開閉センサ52から閉信号がコントローラ5に出力される。コントローラ5は、開閉センサ52から閉信号を受信すると、通信充填処理が完了したと判断する。この例では、逆止弁351が正常であるため、ガス通路320から充填ポート310を介して大気に水素ガスが放出されることはないので、逆止弁351から開閉弁330までのガス通路320全体に、水素ガスが滞留する。
時刻t0においてコントローラ5は、逆止弁351及び352の故障診断処理を開始し、図3(a)及び(b)に示すように遮断弁321B及び遮断弁322Bを閉じた状態で開閉弁330を開ける。これにより、逆止弁351から開閉弁330までのガス通路320全体に滞留していた水素ガスは一定流量で放出されるため、図3(c)に示すように、圧力センサ340の検出値は、第1診断期間Td1において基準圧力V0から徐々に第1圧力V1まで低下する。
時刻t1において開閉弁330が開状態に切り替えられた時刻t0からの経過時間が第1診断期間Td1に達するため、コントローラ5は、図3(a)及び(b)に示すように開閉弁330を閉じた状態で遮断弁321B及び322Bの少なくとも一方を開ける。これにより、図3(c)に示すように、圧力センサ340の検出値は第1圧力V1から基準圧力V0まで回復する。この例では、逆止弁352も正常であるため、遮断弁321B及び322Bの少なくとも一方から放出された水素ガスが共用通路320Bに閉じ込められるものの、充填通路320Aへは水素ガスは流れない。
時刻t2において圧力センサ340の検出値が基準圧力V0まで回復したため、コントローラ5は、図3(a)に示すように、遮断弁321B及び322Bの双方を閉じる。これにより、ガス通路320のうち共用通路320Bのみに水素ガスが滞留する。そしてコントローラ5は、図3(a)及び(b)に示すように、再び遮断弁321B及び322Bの双方を閉じた状態で開閉弁330を開ける。このとき、開閉弁330の開度は、水素ガスの放出流量が同等となるよう同一の値に設定される。
ここで、容器に閉じ込められた一定体積Vのガスを一定流量で放出する場合、ボイル・シャルルの法則によれば、ガスの体積Vと容器の圧力低下速度dp/dtとは、次式のとおり表わされる。
上式(1)の右辺の温度Tに関する項(1/T×dT/dt)は、圧力低下速度dp/dtに比べて十分に小さいため、次式のとおり近似することができる。
式(2)に示したように、ガスの体積Vと容器の圧力低下速度dp/dtとは反比例の関係となる。
時刻t0ではガス通路320全体に水素ガスが均一に閉じ込められて滞留するのに対し、時刻t2ではガス通路320の一部である共用通路320Bに主に水素ガスが滞留する。このため、式(2)の関係により、時刻t2においてコントローラ5が開閉弁330を開いて水素ガスをガス通路320から放出すると、圧力センサ340の検出値の低下速度は、時刻t0で開閉弁330から水素ガスを放出した場合に比べて大きくなる。
したがって、図3(c)に示すように圧力センサ340の検出値は、第1診断期間Td1よりも短い時間で、基準圧力V0から第1圧力V1よりも低い第2圧力V2まで低下する。このため、第2診断期間Td2は、故障診断処理に要する時間を短縮するために、第1診断期間Td1よりも短い時間に設定するのが好ましい。
時刻t3においてコントローラ5は、時刻t2からの経過時間が第2診断期間Td2に達したため、図3(b)に示すように開閉弁330を閉じて故障診断処理を終了する。
このように、コントローラ5は、遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開けるガス放出処理を繰り返し実行する。逆止弁351及び352が共に正常である場合は、1回目のガス放出処理と2回目のガス放出処理とでガス通路320に滞留する水素ガスの体積が変わることから、ガス通路320から一定流量で水素ガスを放出したときのガス通路320の圧力低下速度が変化する。このような物理現象を利用することにより、本実施形態のコントローラ5は、逆止弁351及び352の故障の有無を診断する。
図4は、逆止弁351が故障しており逆止弁352が正常であるときの故障診断処理による燃料貯蔵システム30の状態変化を例示するタイムチャートである。
図4(a)は、充填通路320Aの水素ガスの滞留量を模式的に示し、図4(b)は、共用通路320Bの水素ガスの滞留量を模式的に示し、図4(c)は、圧力センサ340の検出値の変化を示す。図4(a)乃至(c)には、逆止弁351及び352が共に正常であるときの状態変化が一点鎖線により重ねて示されている。図4(a)乃至(c)の横軸は、互いに共通の時間軸である。
この例では、逆止弁351が故障しており逆止弁352が正常であるため、充填通路320Aに供給された水素ガスのみが充填ポート310から大気に漏洩する。この結果、図4(a)に示すように、充填通路320Aのガス滞留量は、逆止弁351が正常である場合に比べて減少している。一方、図4(b)に示すように共用通路320Bには、逆止弁352が正常であるため、水素ガスが閉じ込められて滞留している。すなわち、ガス通路320に閉じ込められている水素ガスの体積は、逆止弁351及び352が共に正常である場合に比べて小さくなる。
時刻t10においてコントローラ5は、故障診断処理を開始し、図3(a)及び(b)に示したように遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開ける1回目のガス放出処理を実行する。これにより、共用通路320Bに閉じ込められていた水素ガスが放出されるので、図4(c)に示すように、圧力センサ340の検出値は、一点鎖線に比べて速やかに低下し、第2圧力V2よりも低くなる。
このため、本実施形態のコントローラ5は、第1診断期間Td1において圧力センサ340の検出値の低下速度が所定の第1診断閾値Th1よりも大きくなったか否かを判断する。この例では検出値の低下速度が第1診断閾値Th1よりも大きくなるため、コントローラ5は、逆止弁351が故障していると判定する。
上述の第1診断閾値Th1は、逆止弁351及び352が共に正常である場合における第1診断期間Td1での検出値の低下速度に基づいてあらかじめ定められる。例えば、逆止弁351及び352が共に正常である場合における検出値の低下速度によりも大きく、かつ、逆止弁351が故障しており逆止弁352が正常である場合における検出値の低下速度よりも小さい値に設定される。
時刻t11においてコントローラ5は、図3(a)及び(b)に示したように開閉弁330を閉じた状態で遮断弁321B及び322Bの少なくとも一方を開ける圧力回復処理を実行する。これにより、図4(c)に示すように圧力センサ340の検出値が基準圧力V0まで回復する。この例では、逆止弁352が正常であるため、図4(b)に示すように共用通路320Bに水素ガスが閉じ込められる。
時刻t12においてコントローラ5は、図3(a)及び(b)に示したように遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開ける2回目のガス放出処理を実行する。これにより、図4(c)に示すように、圧力センサ340の検出値は、図3(c)に示した第2診断期間Td2における圧力センサ340の検出値と同じように低下する。
時刻t13においてコントローラ5は、開閉弁330を閉じて故障診断処理を終了する。
このように、本実施形態のコントローラ5は、ガス放出処理を連続して2回実行し、1回目のガス放出処理の実行の際における圧力センサ340の検出値の低下速度を用いて逆止弁351の故障の有無を診断する。
図5は、逆止弁351が正常であり逆止弁352が故障しているときの故障診断処理による燃料貯蔵システム30の状態変化を例示するタイムチャートである。
図5(a)乃至(c)の縦軸は、図4(a)乃至(c)の縦軸と同じであり、図5(a)乃至(c)の横軸は、互いに共通の時間軸である。図5(a)乃至(c)には、逆止弁351及び352が共に正常であるときの状態変化が一点鎖線により重ねて示されている。
この例では、逆止弁351が正常であるため、ガス通路320に閉じ込められた水素ガスは充填ポート310から大気に漏洩しない。このため、図5(a)及び(b)に示すように、充填通路320A及び共用通路320Bの双方に水素ガスが閉じ込められている。
時刻t20においてコントローラ5は、故障診断処理を開始し、図3(a)及び(b)に示したように遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開ける1回目のガス放出処理を実行する。これにより、ガス通路320全体に閉じ込められていた水素ガスが放出されるので、図5(c)に示すように、圧力センサ340の検出値は、逆止弁351及び352が共に正常である場合と同様、第1圧力V1まで緩やかに低下する。
このとき、本実施形態のコントローラ5は、圧力センサ340の検出値の低下速度が第1診断閾値Th1未満であるため、逆止弁351が故障していないと判定する。
時刻t21においてコントローラ5は、図3(a)及び(b)に示したように開閉弁330を閉じた状態で遮断弁321B及び322Bの少なくとも一方を開ける圧力回復処理を実行する。
これにより、遮断弁321B及び322Bの少なくとも一方から共用通路320Bに水素ガスが供給されるので、図5(c)に示すように圧力センサ340の検出値が基準圧力V0まで上昇する。この例では、逆止弁352が故障しているため、図5(a)に示すように、共用通路320Bに供給される水素ガスが充填通路320Aに漏洩し、充填通路320Aに水素ガスが閉じ込められる。このため、ガス通路320全体に水素ガスが滞留している。
時刻t22においてコントローラ5は、図3(a)及び(b)に示したように遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開ける2回目のガス放出処理を実行する。これにより、ガス通路320全体に滞留している水素ガスが放出されるので、図5(c)に示すように、圧力センサ340の検出値は、一点鎖線に比べて緩やかに低下する。
このため、本実施形態のコントローラ5は、第2診断期間Td2において圧力センサ340の検出値の低下速度が所定の第2診断閾値Th2よりも小さくなったか否かを判断する。この例では検出値の低下速度が第2診断閾値Th2よりも小さくなるため、コントローラ5は、逆止弁352が故障していると判定する。
上述の第2診断閾値Th2は、逆止弁351及び352が共に正常である場合における第2診断期間Td2での検出値の低下速度に基づいてあらかじめ定められる。例えば、逆止弁351及び352が共に正常である場合における検出値の低下速度によりも小さく、かつ、逆止弁351が正常であり逆止弁352が故障している場合における検出値の低下速度よりも大きい値に設定される。
時刻t23においてコントローラ5は、開閉弁330を閉じて故障診断処理を終了する。
このように、本実施形態のコントローラ5は、ガス放出処理を連続して2回実行し、2回目のガス放出処理の実行の際における圧力センサ340の検出値の低下速度を求めて逆止弁352の故障の有無を診断する。
なお、図4及び図5に示したように、逆止弁351及び352の一方が故障すると、1回目のガス放出処理と2回目のガス放出処理においてガス通路320に閉じ込められる水素ガスの体積が同等になり、圧力センサ340の検出値の低下速度がほぼ等しくなる。このため、第1診断期間Td1における圧力センサ340の検出値の最大低下速度と、第2診断期間Td2における圧力センサ340の検出値の最大低下速度との差分が0(ゼロ)に対して診断誤差を加えた所定の範囲内に収まる場合には、コントローラ5は、逆止弁351及び逆止弁352のいずれか一方が故障であると判定するようにしてもよい。
次に、本実施形態におけるコントローラ5の動作について説明する。
図6は、本実施形態における燃料貯蔵システム30の診断方法の処理手順例を示すフローチャートである。
まず、コントローラ5は、水素ステーションから充填ポート310及びガス通路320を介して高圧タンク311及び312に水素ガスを充填した旨を示す充填完了信号を取得すると、燃料貯蔵システム30の診断方法の処理手順を開始する。
充填完了信号としては、充填ポート310のカバーが閉じられた時に開閉センサ52から出力される閉信号や、充填ポート310から水素ステーションの充填ホースが外されたことを示す検出信号、車両の起動指令信号などが用いられる。あるいは、コントローラ5が開閉センサ52から開信号を受信した後に圧力センサ340の検出信号が上昇して一定になった場合に充填完了信号を生成するようにしてもよい。
ステップS901においてコントローラ5は、逆止弁351及び352よりも下流の共用通路320Bに設けられた圧力センサ340の検出値を取得する。
ステップS902においてコントローラ5は、遮断弁321B及び322Bを閉じた状態でガス通路320供給された水素ガスを、開閉弁330を第1診断期間Td1だけ開いて開放する。すなわち、コントローラ5は、第1のガス放出処理を実行する。
ステップS903においてコントローラ5は、図4で述べたように、開閉弁330を開状態に切り替えた際に、圧力センサ340の検出値の低下速度が第1診断閾値Th1以下であるか否かを判断する。
ステップS909においてコントローラ5は、圧力センサ340の検出値の低下速度が第1診断閾値Th1を上回る場合には、逆止弁351が故障していると判定する。例えば、コントローラ5は、逆止弁351の故障フラグを「1」に設定する。
ステップS904においてコントローラ5は、圧力センサ340の検出値の低下速度が第1診断閾値Th1以下である場合には、開閉弁330を開状態に切り替えた後の経過時間が第1診断期間Td1に達すると、開閉弁330を閉じ、その状態で遮断弁321B及び322Bを開ける。すなわち、コントローラ5は、圧力回復処理を実行する。これにより、圧力センサ340の検出値が上昇する。
ステップS905においてコントローラ5は、例えば、圧力センサ340の検出値が基準圧力V0まで上昇した場合には、遮断弁321B及び322Bを閉じ、その状態で開閉弁330を第2診断期間Td2だけ開ける。すなわち、コントローラ5は、2回目のガス放出処理を実行する。なお、基準圧力V0は、1回目のガス放出処理が実行される直前のガス通路320の圧力値である。これにより、1回目のガス放出処理と2回目のガス放出処理とが同一の条件になるので、故障診断処理の診断精度を確保することができる。
ステップS906においてコントローラ5は、図5で述べたように、開閉弁330を開状態に切り替えた際に、圧力センサ340の検出値の低下速度が第2診断閾値Th2を上回るか否かを判断する。
図3に示したように、第2診断期間Td2における圧力センサ340の検出値の低下速度は、第1診断期間Td1における圧力センサ340の検出値の低下速度に比べて速くなるため、第2診断閾値Th2は、第1診断閾値Th1よりも大きな値に設定される。
ステップS908においてコントローラ5は、圧力センサ340の検出値の低下速度が第2診断閾値Th2以下である場合には、逆止弁352が故障していると判定する。例えば、コントローラ5は、逆止弁352の故障フラグを「1」に設定する。
ステップS907においてコントローラ5は、圧力センサ340の検出値の低下速度が第2診断閾値Th2を上回る場合には、逆止弁351及び352の双方が故障していない、すなわち正常であると判定する。例えば、コントローラ5は、逆止弁351及び352の故障フラグを共に「0」に設定する。
そして、ステップS907乃至909の処理が終了すると、燃料貯蔵システム30の診断方法についての一連の処理手順が終了する。
このように、本実施形態の診断方法は、遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開けるガス放出処理を2回実行することにより、逆止弁351及び352よりも下流の圧力センサ340を用いて逆止弁351及び352の故障を診断することができる。
本発明の第1実施形態によれば、燃料貯蔵システム30は、外部から供給される燃料ガスを高圧タンク311及び312に貯蔵して、貯蔵した燃料ガスを内部装置である燃料電池スタック2に供給する。この燃料貯蔵システム30は、高圧タンク311及び312に供給される燃料ガスを通し、その燃料ガスが逆流するのを阻止する第1の逆止弁351と、燃料電池スタック2に対して高圧タンク311及び312から流出する燃料ガスを放出又は遮断する開閉弁330とを含む。
そして、燃料貯蔵システム30は、第1の逆止弁351と開閉弁330との間を接続するガス通路320と、ガス通路320と高圧タンク311との間、及びガス通路320と高圧タンク312との間にそれぞれ設けられる弁装置321及び322と、を含む。さらに、燃料貯蔵システム30は、弁装置321及び322よりも上流のガス通路320に設けられる第2の逆止弁352と、第2の逆止弁352と開閉弁330との間のガス通路320の圧力を検出する圧力センサ340と、開閉弁330及び弁装置321の開閉を制御するコントローラ5とを備える。
コントローラ5は、開閉弁330を開いてガス通路320に滞留する燃料ガスを放出する場合に、圧力センサ340により検出される圧力の大きさに基づいて、第1の逆止弁351及び第2の逆止弁352の少なくとも一方が故障しているか否かを診断する。
コントローラ5が開閉弁330を開いてガス通路320に閉じ込められた燃料ガスを放出する場合には、ガス通路320に閉じ込められた燃料ガスの体積の大きさに応じて圧力センサ340の検出値の低下速度が変化する。
例えば、逆止弁351が故障している状態では、高圧タンク311及び312に燃料ガスを充填した後にガス通路320のうち、充填通路320Aから大気に燃料ガスが漏れてしまい、共用通路320Bだけに燃料ガスが閉じ込められる。このため、逆止弁351が正常である場合に比べて、ガス通路320に閉じ込められる燃料ガスの体積は小さくなるので、圧力センサ340の検出値の低下速度が速くなり、逆止弁351の故障を検出することができる。
一方、逆止弁352が故障している状態において高圧タンク311又は312から共用通路320Bに燃料ガスを供給する場合、共用通路320Bの燃料ガスが充填通路320Aに漏れてしまい、ガス通路320全体に燃料ガスが閉じ込められる。このため、逆止弁352が正常である場合に比べて、ガス通路320に閉じ込められる燃料ガスの体積が大きくなるので、圧力センサ340の検出値の低下速度が遅くなり、逆止弁352の故障を検出することができる。
あるいは、逆止弁351及び352が共に故障している場合には、ガス通路320に燃料ガスがほとんど閉じ込められていないため、圧力センサ340の検出値が殆ど変化しない。このため、逆止弁351及び352が共に故障していることを検出することができる。
このように、逆止弁351及び352の少なくとも一方が故障している場合には、ガス通路320に閉じ込められる燃料ガスの体積が変わる。このため、ガス通路320から燃料ガスを放出する際に圧力センサ340の検出値を監視することで、逆止弁351及び352のいずれかの故障の有無を検出することができる。
したがって、コントローラ5は、開閉弁330を開いてガス通路320に滞留する燃料ガスを放出することにより、逆止弁351及び352よりも下流の圧力センサ340を用いて逆止弁351及び352のいずれかの故障を診断することができる。このため、逆止弁351と逆止弁352との間のガス通路320に新に圧力センサを設ける必要がなくなるので、燃料貯蔵システム30の製造コストの増加を低減しつつ、圧力センサ340よりも上流に配置された逆止弁351及び352の故障を診断することができる。
また、本実施形態によれば、コントローラ5は、弁装置321及び322の遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開いてガス通路320に供給された燃料ガスを放出することにより、圧力センサ340を用いて第1の逆止弁351が故障しているか否かを判断する。
このように、ガス通路320に供給された燃料ガスを放出することにより、ガス通路320全体に燃料ガスが閉じ込められていない場合は、圧力センサ340の検出値の低下速度が速くなるので、第1の逆止弁351が故障していると判定することができる。
さらに、本実施形態によれば、コントローラ5は、遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を所定期間である第1診断期間Td1だけ開き、その後コントローラ5は、遮断弁321B及び322Bを開き、再び遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を第2診断期間Td2だけ開くことにより、第1の逆止弁351及び第2の逆止弁352の少なくとも一方が故障しているか否かを判断する。
このように、遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開けるガス放出処理を2回繰り返すことにより、逆止弁351及び352の一方が故障している状態では図4及び図5に示したように圧力センサ340の検出値の変動がほぼ等しくなる。したがって、コントローラ5は、第1診断期間Td1における圧力センサ340の検出値と、第2診断期間Td2における圧力センサ340の検出値との差分が所定の閾値よりも小さい場合には、いずれか一方の逆止弁が故障であると判定することができる。
さらに、コントローラ5は、第1診断期間Td1における圧力センサ340の検出値を用いて逆止弁351の故障を検出することができ、第1診断期間後のガス放出処理における圧力センサ340の検出値を用いて逆止弁352の故障を検出することができる。
このため、コントローラ5は、同一のガス放出処理を2回繰り返すことにより、逆止弁351及び352の少なくとも一方が故障しているか否かを診断することが可能になる。
また、本実施形態によれば、コントローラ5は、圧力センサ340の検出値の低下速度を用いて、逆止弁351及び352の少なくとも一方が故障しているか否かを判断する。圧力センサ340の検出値の低下速度は、式(2)に示したように、ガス通路320に閉じ込められた燃料ガスの体積と相関性が高いため、逆止弁351及び352の故障の有無を精度よく診断することができる。
また、本実施形態によれば、コントローラ5は、逆止弁351及び352を介して高圧タンク311及び312に燃料ガスが充填されたことを検出した場合に、開閉弁330を開いてガス通路320に滞留するガスを放出する。
例えば、コントローラ5は、開閉センサ52の出力信号が開信号から閉信号に切り替えられた場合に、高圧タンク311及び312に燃料ガスが充填されたと判断し、ガス放出処理を繰り返し実行する。これにより、ガス通路320全体に燃料ガスが閉じ込められている状況でガス放出処理が実行されるので、確実に逆止弁351の故障を検出することができる。
なお、本実施形態では2つの逆止弁351及び352の故障診断処理について説明したが、充填通路320Aに3つ以上の逆止弁を設けてガス放出処理を2回実行するようにしてもよい。この場合、コントローラ5は圧力センサ340を用いることにより、充填通路320Aに設けられる逆止弁のうち最上流の逆止弁と最下流の逆止弁の故障の有無を診断することができる。
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態における燃料貯蔵システム30の診断方法の処理手順例を示すフローチャートである。
本実施形態の診断方法は、図6に示したステップS903及びS906の処理に代えてステップS913及びS916を備えている。ここではステップS913及びS916の処理についてのみ説明する。
ステップS913においてコントローラ5は、ステップS902で遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開けた場合に、圧力センサ340の検出値が所定の値まで低下するのに要する低下時間が第3診断閾値Th3を上回るか否かを判断する。
例えば、コントローラ5は、図3(c)に示したように、圧力センサ340の検出値が基準圧力V0から第1圧力V1まで低下する低下時間が、第3診断閾値Th3を上回るか否かを判断する。この例では、第3診断閾値Th3は、図3に示した時刻t0から時刻t1までの時間に基づいて定められる。
そしてコントローラ5は、圧力センサ340の検出値の低下時間が第3診断閾値Th3以下である場合にはステップS909の処理に進み、その低下時間が第3診断閾値Th3を上回る場合には、ステップS904の処理に進む。
また、ステップS916においてコントローラ5は、ステップS905で遮断弁321B及び322Bを閉じた状態で開閉弁330を開けた場合に、圧力センサ340の検出値が特定の値まで低下するのに要する低下時間が第4診断閾値Th4以下であるか否かを判断する。
例えば、コントローラ5は、図3(c)に示したように、圧力センサ340の検出値が基準圧力V0から第2圧力V2までの低下時間が、第4診断閾値Th4以下であるか否かを判断する。この例では、第4診断閾値Th4は、図3に示した時刻t2から時刻t3までの時間に基づいて定められる。第4診断閾値Th4は、第3診断閾値Th3よりも小さい値に設定される。
そしてコントローラ5は、圧力センサ340の検出値の低下時間が第4診断閾値Th4を上回る場合にはステップS908の処理に進み、その低下時間が第4診断閾値Th4以下である場合には、ステップS907の処理に進む。
このように、本発明の第2実施形態によれば、コントローラ5は、圧力センサ340により検出される圧力が所定の値に低下するまでの低下時間に基づいて、少なくとも一方の逆止弁が故障しているか否かを判断する。ここにいう所定の値は、例えば、図3に示した第1診断期間Td1では第1圧力V1に設定され、第2診断期間Td2では第1電圧V1よりも小さい第2圧力V2に設定される。
これにより、第1実施形態と同様、ガス通路320に閉じ込められた燃料ガスの体積が逆止弁351及び352が正常である場合に比べて大き過ぎるのか又は小さ過ぎるのか推定可能になるので、逆止弁351及び352の故障を診断することができる。
(第3実施形態)
なお、第1診断期間Td1及び第2診断期間Td2における圧力センサ340の検出値の低下速度が遅くなるほど、逆止弁351及び352の診断精度が低くなる。例えば、ガス通路320の内部状態に応じて、開閉弁330から放出される水素ガスの放出流量が少なくなり、圧力センサ340の検出値の低下速度が遅くなることがある。そこで、ガス通路320の内部状態に起因する逆止弁351及び352の診断精度の低下を抑制する手法について簡単に説明する。
図8は、本発明の第3実施形態における燃料貯蔵システム30の診断手法の一例を説明する図である。
図8には、ガス通路320中の水素ガスの圧縮率と温度との関係が示されている。図8に示すように、水素ガスの温度が高くなるほど、水素ガスの圧縮率は低くなる。水素ガスの圧縮率が低くなると、開閉弁330の放出流量は少なくなり、第1診断期間Td1及び第2診断期間Td2における圧力センサ340の検出値の低下速度が遅くなる。
この対策として本実施形態では、コントローラ5は、1回目及び2回目のガス放出処理を実行する場合には、温度センサ360からガス通路320の温度を示す検出値を取得する。そしてコントローラ5は、温度センサ360の検出値が大きくなるほど、すなわち、ガス通路320の水素ガスの温度が高くなるほど、開閉弁330の開度を大きくする。
このように、開閉弁330の開度が大きくなるほど、開閉弁330の放出流量が増加するので、第1診断期間Td1及び第2診断期間Td2における圧力センサ340の検出値の低下速度が全体として遅くなるのを抑制することができる。すなわち、逆止弁351及び352の診断精度の低下を抑制することができる。
なお、本実施形態では温度センサ360を用いてガス通路320中の水素ガスの温度を検出したが、これに限られるものではない。例えば、ガス通路320の周囲温度を検出してもよいし、燃料貯蔵システム30やコントローラ5の周辺に設けられた温度センサの検出値をガス通路320中の水素ガスの温度としてみなしてもよい。
図9は、本実施形態における燃料貯蔵システム30の診断手法の他の例を説明する図である。
図9には、ガス通路320における水素ガスの圧縮率とガス通路320の圧力との関係が示されている。図9に示すように、ガス通路320の圧力が低くなるほど、水素ガスの圧縮率は低くなる。水素ガスの圧縮率が低くなると、開閉弁330の放出流量は少なくなり、第1診断期間Td1及び第2診断期間Td2における圧力センサ340の検出値の低下速度が遅くなる。
この対策として本実施形態では、コントローラ5は、1回目及び2回目のガス放出処理を実行する場合には、圧力センサ340の検出値が小さくなるほど、開閉弁330の開度を大きくする。
このように、開閉弁330の開度が大きくなるほど、開閉弁330の放出流量が増加するので、第1診断期間Td1及び第2診断期間Td2における圧力センサ340の検出値の低下速度が全体として遅くなるのを抑制することができる。すなわち、逆止弁351及び352の診断精度の低下を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では圧力センサ340が弁装置321に設けられているが、圧力センサ340は、開閉弁330よりも上流であって逆止弁351及び352よりも下流であればよい。このため、圧力センサ340は、弁装置322に設けられてもよいし、弁装置321と弁装置322との間に設けられてもよい。
また、上記実施形態では燃料貯蔵システム30に2つの高圧タンク311及び312が備えられているが、高圧タンクは1つでもよく、3つ以上であってもよい。全ての高圧タンクを逆止弁352よりも下流のガス通路320に接続した構成であれば、上記実施形態の作用効果を得ることができる。
また、上記実施形態では第1乃至第4診断閾値Th1乃至Th4を用いて逆止弁351及び352の故障を診断したが、逆止弁351及び352が共に正常であるときの共用通路320Bの圧力の低下特性を示す特性マップや近似式をあらかじめ記憶しておき、これらを用いて故障を診断するようにしてもよい。この場合には、逆止弁351及び352の故障を診断する精度をより高めることができる。
また、上記実施形態のコントローラ5は、図3に示したように圧力センサ340の検出値を基準圧力V0に回復させる圧力回復処理を実行したが、基準圧力V0よりも小さい値まで回復させるものであってもよい。このような場合であっても、逆止弁352の故障の有無を診断することができる。
また、上記実施形態では第2診断期間Td2を第1診断期間Td1よりも短くなるように設定したが、第1診断期間Td1と等しく又は長くしてもよい。