本発明は、耐擦傷性を維持しつつ液垂れや液溜り等の発生を抑えて光学性能や外観上見栄えを良好にできる導光部材、導光部材を用いた虚像表示装置、及び導光部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る導光部材は、複数の光学面を有し、映像光を内部に取り込むとともに導光して外部へ射出する導光部材であって、導光した映像光を外部へ射出する光射出側を構成する第1部分と、映像光を内部に取り込む光入射側を構成する第2部分と、第1部分の表面部分と第2部分の表面部分とで異なる膜厚で設けられ、複数の光学面の少なくとも一部を形成するとともに本体部材を保護する保護層とを備える。
上記導光部材では、映像光を外部へ射出する側を構成する第1部分や映像光を内部に取り込む光入射側を構成する第2部分等の各部位に応じて保護層(例えばハードコート層)の膜厚を変化させている。つまり、保護層に膜厚差を設けている。これにより、保護層のうち膜厚の厚い部分において安定した耐擦傷性を維持しつつ、保護層の作製に際して液垂れや液溜り等の発生が抑えられており、光学性能や外観上見栄えが良好なものにすることが可能である。
本発明の具体的な側面では、第1部分は、外部に露出した外観プリズム部として設けられ、外界光と映像光とを重畳して視認させる。この場合、映像光(画像光)を視認させるとともに、観察者に外界像をシースルーで視認又は観察させることができる。
本発明の別の側面では、第1部分は、光射出側において外界光を透過させて透視機能を補助する光透過部に接合する接合部をさらに有する。この場合、接合部において光透過部と接合されることで、導光部材は、光透過部と協働してシースルーを実現させることができる。
本発明のさらに別の側面では、第2部分は、ケース部材により覆われている非外観プリズム部として設けられている。この場合、第2部分については、外観上見栄えや保護層の膜厚確保については、それほど考慮しなくても済むものにできる。
本発明のさらに別の側面では、複数の光学面を形成する保護層の膜厚に関して、第1部分の表面部分における膜厚は、第2部分の表面部分における膜厚よりも厚い。この場合、映像光を外部へ射出する側を構成する第1部分のように、外部に露出する可能性が高く耐擦傷性が重要となる部位については、保護層の膜厚を厚くして十分な硬度を維持させることができる。一方、例えば映像光の入射側を構成する第2部分のように、耐擦傷性はさほど重要ではないが、他の部材との取付等のために段差や穴等を設ける可能性が高い部位については、保護層の膜厚を薄くして液垂れや液溜り等の発生を抑えることができる。
本発明のさらに別の側面では、保護層の膜厚に関して、第1部分のうち複数の光学面を形成する部分の膜厚は、第2部分のうち無機材料で形成される光反射膜の上に成膜される部分の膜厚よりも厚い。この場合、第2部分のうち光反射膜が形成されるような非外観部分よりも第1部分のような外観部分での保護層の膜厚を厚くして耐擦傷性を高めることができる。
本発明のさらに別の側面では、保護層は、第1部分の表面部分から第2部分の表面部分にかかる範囲において、膜厚が変化する所定の大きさ以上の膜厚変化領域を有する。この場合、膜厚変化領域において急激な変化を生じさせることなく部位に応じた所望の膜厚差を設けた高品質な状態の保護層とすることができる。
本発明のさらに別の側面では、保護層において、膜厚変化領域は、第1部分から第2部分にかけての導光方向について7mm以上ある。この場合、膜厚変化領域において急激な変化を生じさせないために十分な範囲を確保できる。
本発明のさらに別の側面では、膜厚変化領域は、複数の光学面間を繋ぐ接合領域を含んだ領域である。この場合、膜厚変化領域における膜厚の変化による光学性能等への影響を抑えることができる。
本発明のさらに別の側面では、膜厚変化領域は、複数の光学面のうち映像光を全反射する全反射面間を繋ぐ接合領域を含んだ領域である。この場合、膜厚の変化が映像光の導光に影響を与えないようにできる。
本発明のさらに別の側面では、膜厚変化領域は、複数箇所に分かれた領域に設けられている。この場合、膜厚が変化する箇所を複数に分けられる。
本発明のさらに別の側面では、第2部分は、他の部材に取りつけるための取付部を有する。この場合、鏡筒部その他の他の部材への取付けが可能となる。
本発明のさらに別の側面では、取付部は、U字構造である。この場合、保護層を形成するに際して、取付部に相当する箇所において液垂れや液溜り等が発生することを抑制できる。
本発明のさらに別の側面では、保護層は、成膜位置によって膜厚が連続的に変化する1層構成である。この場合、1回の成膜処理で保護層が形成されている。
本発明のさらに別の側面では、保護層は、ハードコート材により形成されるハードコート層である。この場合、ハードコート層により十分な耐擦傷性が得られる。
本発明に係る虚像表示装置は、映像光を生じさせる映像素子と、映像素子からの映像光を導く上記いずれかに記載の導光部材とを備える。この場合、上記導光部材を備えることで、耐擦傷性を維持しつつ、光学性能や外観上見栄えが良好なものにできる。
本発明に係る導光部材の製造方法は、複数の光学面を有し、導光した映像光を外部へ射出する光射出側を構成する第1部分と、映像光を内部に取り込む光入射側を構成する第2部分と、第1部分の表面部分と第2部分の表面部分とで異なる膜厚で設けられ、複数の光学面の少なくとも一部となる表面部分を形成するとともに本体部材を保護する保護層とを備える導光部材の製造方法であって、導光部材となるべき基材に、保護層となるべきコート液を塗布し、基材の表面に塗布されたコート液により、第1部分の表面部分と第2部分の表面部分とにおいて膜厚が成膜位置によって異なるように保護層を成膜する。
上記導光部材の製造方法では、映像光を外部へ射出する側を構成する第1部分や映像光を内部に取り込む光入射側を構成する第2部分等の各部位に応じて保護層(例えばハードコート層)の膜厚を変化させている。つまり、保護層に膜厚差を設けている。これにより、保護層のうち膜厚の厚い部分において安定した耐擦傷性を維持できる。また、保護層の作製に際して、膜厚調整により液垂れや液溜り等の発生が抑えることで、作製される導光部材の光学性能や外観上見栄えが良好なものにすることが可能である。
本発明の具体的な側面では、コート液は、ディップ処理によって塗布され、ディップ処理において基材を引き上げる速度を変化させることで、膜厚が成膜位置によって異なるように保護層が成膜される。この場合、ディップ処理によって簡易かつ確実に成膜がなされ、かつ、引き上げる速度の変化によって所望の膜厚調整が可能となる。
本発明の別の側面では、保護層は、膜厚が変化する所定の大きさ以上の膜厚変化領域を複数の領域として有し、当該複数の領域に対応する基材の位置が、ディップ処理で基材を引き上げる際に同じ高さにある。この場合、引き上げる際の速度の変化によって膜厚が変化する箇所を複数に分けられる。
以下、図1等を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る導光部材を備える虚像表示装置について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイ(HMD)であり、この虚像表示装置100を装着した観察者又は使用者に対して虚像による画像光(映像光)を視認させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで視認又は観察させることができる。虚像表示装置100は、第1表示装置100Aと、第2表示装置100Bと、フレーム部102とを備える。特に、本実施形態では、各表示装置100A,100Bにおいて、映像光を導光する導光部材10,10をそれぞれ有するものとなっている。この場合、各導光部材10は、一部が露出して虚像表示装置100の外観形状を構成し、他の一部は、他の部材(外装部材105d)により覆われて見えないものとなっている。
第1表示装置100A及び第2表示装置100Bは、右眼用と左眼用の虚像をそれぞれ形成する部分であり、観察者の眼前を透視可能に覆う第1及び第2光学部材101a,101bと、第1及び第2像形成本体部105a,105bとをそれぞれ備える。第1及び第2像形成本体部105a,105bについては、後述するが、表示装置(映像素子)や投射レンズ等の像形成のための光学系やこれらの光学系を収納する部材等でそれぞれ構成されている。なお、表示装置(映像素子)や投射レンズ等は、カバー状の外装部材(ケース部材)105dにより覆われることで、支持・収納されている。既述のように、各導光部材10の一部も覆われている。第1及び第2光学部材101a,101bは、第1及び第2像形成本体部105a,105bで形成される映像光を導光させるとともに外界光と映像光とを重複して視認させる導光部であり、導光部材を含む導光装置を構成している。以下、第1光学部材101aまたは第2光学部材101bを導光装置20ともする。なお、第1表示装置100A及び第2表示装置100Bは、単独でも虚像表示装置として機能する。
フレーム部102は、平面視でU字状に折れ曲がった細長い部材であり、金属製の一体部品である。ここでは一例として、フレーム部102は、金属製の一体部品であるマグネシウムフレーム(マグネシウム合金)を本体部分102pとして構成されている。また、フレーム部102は、図示のように、第1光学部材101aと第2光学部材101b(一対の導光部である導光装置20)との双方に接続して設けられる肉厚構造の中央部102aと、中央部102aから第1及び第2光学部材101a,101bに沿って延び、さらに、U字状に折れ曲がった箇所を形成する支持体102bとを有している。
中央部102aは、第1及び第2光学部材101a,101bの先端側を挟持することにより、これらの相対的位置を固定し、支持体102bは、U字状に折れ曲がる部分である第1及び第2周辺部102c,102dを形成し、第1及び第2周辺部102c,102dにおいて第1及び第2光学部材101a,101bにそれぞれ接続する。
なお、フレーム部102の左右両端から後方に延びるつる部分であるテンプル104が設けられており、観察者の耳やこめかみ等に当接させ支持するものとして用いることができる。このほか、例えば、中央部102aにおいて、観察者の鼻に当接する鼻パッド部40(図2参照)を有している。
以下、図2及び図3を参照して、虚像表示装置100のうち導光部材10を含む導光装置20による映像光の導光をするための構造等についての一例を概念的に説明する。図2は、第2表示装置100Bの一部を下側から見た図(底面図)であり、図3は、図2に対応した図であり、特に光学系の部分を抽出したものとなっている。なお、映像光の導光を行うための装置は、既述のように、第1表示装置100A及び第2表示装置100B(図1等参照)であるが、第1表示装置100A及び第2表示装置100Bとは、左右対称で同等の構造を有するため、第2表示装置100Bについてのみ説明し、第1表示装置100Aについては説明を省略する。図2及び図3に示すように、第2表示装置100Bは、映像光を形成する画像表示装置80と、鏡筒部に収納される結像用の投射レンズ30と、画像表示装置80及び投射レンズ30を経た映像光を導光する導光装置20(第2光学部材101b)と、を備える。導光装置20は、導光及び透視用の導光部材10と、透視用の光透過部材50とで構成されている。
画像表示装置80は、例えば有機EL等の自発光型の素子で構成される映像素子(映像表示素子)とすることができる。また、画像表示装置80は、例えば透過型の空間光変調装置である映像表示素子(映像素子)のほか、映像表示素子へ照明光を射出するバックライトである照明装置(不図示)や動作を制御する駆動制御部(不図示)を有する構成としてもよい。
投射レンズ30は、構成要素として、例えば入射側光軸AXが延びる方向(光軸方向;z方向)に沿って並ぶ複数(例えば3つ)の光学素子(レンズ)を備える投射光学系であり、これらの光学部品(光学素子あるいはレンズ)が、光学部品保持部材である鏡筒部39(図10参照)によって収納・支持されている。詳細な説明は省略するが、鏡筒部39は、外装部材105dに収納・支持されている。なお、当該光学素子は、例えば非軸対称な非球面(非軸対称非球面)と軸対称な非球面(軸対称非球面)との双方を含む非球面レンズで構成することで、導光装置20を構成する導光部材10の一部と協働して導光部材10の内部に表示像に対応する中間像を形成するものとすることができる。投射レンズ30は、画像表示装置80で形成された映像光を導光装置20に向けて投射し入射させる。
導光装置20は、既述のように、導光及び透視用の導光部材10と、透視用の光透過部材50とで構成されている。また、導光装置20は、表面部分に保護層であるハードコート層27が設けられていることによって本体部材が被覆され、保護されている。これらのうち、導光部材10は、プリズム型の導光装置20の一部であり、一体の部材であるが、光射出側の第1導光部分11と光入射側の第2導光部分12とに分けて捉えることができる。光透過部材50は、導光部材10の透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)、すなわち光透過部であり、導光部材10と一体的に固定され1つの導光装置20となっている。導光装置20は、例えば鏡筒部39等の光学部品保持部材(図8参照)にネジ止めされることにより、投射レンズ30に対して精度よく位置決め固定されている。
導光部材10は、光学的な機能を有する側面として、第1〜第5面S11〜S15を有している。これらのうち、第1面S11と第4面S14とが連続的に隣接し、第3面S13と第5面S15とが連続的に隣接する。また、第1面S11と第3面S13との間に第2面S12が配置されている。第2面S12の表面には、ハーフミラー層が付随して設けられている。このハーフミラー層は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)であり、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成され映像光に対する反射率が適宜設定されている。
光透過部材50は、既述のように導光部材10と一体的に固定され1つの導光装置20となっており、導光部材10の透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)である。光透過部である光透過部材50は、光学的な機能を有する側面として、第1透過面S51と、第2透過面S52と、第3透過面S53とを有する。第2透過面S52は、第1透過面S51と第3透過面S53との間に配置されている。第1透過面S51は、導光部材10の第1面S11を延長した面上にあり、第2透過面S52は、第2面S12に対して接合され一体化されている曲面であり、第3透過面S53は、導光部材10の第3面S13を延長した面上にある。
導光装置20において、導光部材10は、光透過部材50と接着層CCを介して接合されており、導光部材10及び光透過部材50の接合面と、接着層CCとで構成される部分を、接合部CNとする。
ハードコート層27の成膜について詳しくは後述するが、ここでは、一例として、導光部材10及び光透過部材50となるべき基材が接合部CNで接合された上で、接合された基材をディップ処理によってコーティングするものとする(図4参照)。つまり、導光部材10のハードコート層27は、光透過部材50とともに導光装置20全体に成膜位置によって膜厚が変化するように1層構成で設けられている。
導光部材10のうち本体部材10sは、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されており、例えば金型内に熱可塑性樹脂を注入・固化させることにより成形する。なお、本体部材10sの材料としては、例えばシクロオレフィンポリマー等を用いることができる。光透過部材50についても同様であり、本体部材50sは、導光部材10の本体部材10sと同一の材料で形成されている。ハードコート層27は、これらの本体部材10s,50sが接合された状態でコート液を塗布し、成膜することで外層表面として形成される。
以下、図3(または図2)を参照して映像光(ここでは映像光GLとする。)の光路について概略説明する。まず、画像表示装置80で形成された映像光GLは、投射レンズ30により導光装置20に向けて投射される。導光装置20のうち、導光部材10は、投射レンズ30から映像光GLを入射させるとともに第1〜第5面S11〜S15での反射等により観察者の眼EYに向けて導光する。具体的には、投射レンズ30からの映像光GLは、まず、第4面S14に入射して第5面S15で反射され、第4面S14に内側から再度入射して全反射され、第3面S13に入射して全反射され、第1面S11に入射して全反射される。第1面S11で全反射された映像光GLは、第2面S12に入射し、第2面S12に設けたハーフミラー層を部分的に透過しつつも部分的に反射されて第1面S11に再度入射して通過する。第1面S11を通過した映像光GLは、観察者の眼又はその等価位置に略平行光束として入射する。つまり、観察者は、虚像としての映像光により画像を観察することになる。なお、導光部材10における映像光GLの光線束全体の導光方向としては、図示のように導光部材10の延びる方向(あるいは導光装置20において導光部材10と光透過部材50とが並ぶ方向)をもって導光方向DD1とする。
導光装置20は、第3面S13と第1面S11とが互いに略平行な平面(視度略0)となっており、かつ、第3透過面S53と第1透過面S51とが互いに略平行な平面となっていることで、外界光に対して収差等を生じない。さらに、第3透過面S53と第1面S11とが互いに略平行な平面となっていることで、外界光に対して収差等をほとんど生じない。以上により、観察者は、歪みのない外界像を観察することになる、すなわち、シースルーでの視認又は観察ができる。
上記のような構成は、第1表示装置100A(図1等参照)においても同様となっている。これにより、左右の眼にそれぞれ対応した画像をそれぞれ形成することが可能となっている。
以下、図3を参照して、本実施形態に係る導光部材10に関して、さらに詳細に説明する。まず、導光部材10のうち、第1導光部分11は、鼻に近い中央側つまり光射出側に配置され、光学的な機能を有する側面として、第1面S11と、第2面S12と、第3面S13とを有し、第2導光部分12は、鼻から離れた周辺側つまり光入射側に配置され、光学的な機能を有する側面として、第4面S14と、第5面S15とを有する。このうち、第1面S11と第4面S14とが連続的に隣接し、第3面S13と第5面S15とが連続的に隣接する。また、第1面S11と第3面S13との間に第2面S12が配置され、第4面S14と第5面S15とは大きな角度を成して隣接している。さらに、ここでは、対向した配置となっている第1面S11と第3面S13とが互いに略平行な平面形状となっている。一方、光学的な機能を有する他の面、すなわち第2面S12、第4面S14及び第5面S15は、非軸対称な曲面(自由曲面)となっている。なお、導光部材10を構成する複数の面S11〜S15のうち、少なくとも1つが自由曲面にとなっていることにより、映像光の導光を精密に制御しつつ、導光部材10の小型化を可能にしている。
本実施形態においては、図3において破線で領域を示すように、導光部材10のうち、第1導光部分11と第2導光部分12の一部の側、より具体的には、導光部材10によって映像光GLを導光し導光部材10の外部のうち観察者の眼EYがある側へ反射面(面S12)によって折り返して射出する光射出側を構成する部分を第1部分B1とする。第1部分B1は、図2と図3とを対比して分かるように、外部に露出した外観プリズム部となっている。これに対して、導光部材10のうち、第2導光部分12の他の一部の側、すなわち、投射レンズ30を経た映像光GLを導光部材10の内部に取り込む光入射側を構成する第2部分B2とする。第2部分B2は、図2と図3とを対比して分かるように、ケース部材である外装部材105dにより覆われている非外観プリズム部となっている。以上から、例えば、第2導光部分12のうち、一部が外部に露出し残りが外装部材105dに収納されている第4面S14は、一部が第1部分B1に属し、他の一部が第2部分B2に属することになる。第1部分B1のように、外部に露出する可能性が高く耐擦傷性が重要となる部位については、保護層であるハードコート層27の膜厚を厚くして十分な硬度を維持させる必要がある。一方、第2部分B2のように、映像光GLの入射側を構成し外装部材105dに覆われているような箇所は、耐擦傷性はさほど重要ではないが、例えば鏡筒部や外装部材といった他の部材との取付等のために段差や穴等を設けている場合が多い。このような部位については、ハードコート層27の形成に際して液垂れや液溜り等の発生を抑えるためにハードコート層27の膜厚を薄くすることが望ましい。なお、このような箇所については、そもそもハードコートを行わないものとすることも考えられるが、例えば、ハードコードを光入射側の一部に設けない場合、当該一部の箇所とこれにつながる箇所との間にハードコートの有無により大きな段差ができてしまい、映像光の内面の全反射による導光に影響が出てしまう等の可能性がある。また、ハードコートの強度維持等の問題も生じ得る。以上の観点からは、コート対象となる導光部材10或いは導光装置20の外面について全体的にハードコートが施されることが望ましい。そこで、本願では、第1部分B1側から第2部分B2側にかけて、ハードコート層27の膜厚について大きな段差等を生じさせないようにしつつ膜厚差を設けた構造としている(図6参照)。
以下、導光部材10の各光学面について説明する。まず、第1導光部分11において、第1面S11は、映像光GLを第1導光部分11外に射出させる屈折面として機能するとともに、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。第1面S11は、眼EYの正面に配され、平面形状を成している。
第2面S12には、ハーフミラー層15が付随している。このハーフミラー層15は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)である。ハーフミラー層(半透過反射膜)15は、第2面S12の全体ではなく、第2面S12を主にY軸に沿った鉛直方向に関して狭めた部分領域(図示省略)上に形成されている。ハーフミラー層15は、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。
第3面S13は、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。第3面S13は、眼EYの正面に配されるものであり、第1面S11と同様に、平面形状を成しており、かつ、第1面S11と第3面S13とが互いに平行な面であることにより、第1面S11と第3面S13とを通過させて外界光を見たときに、前述のように、視度が0になっている。
第2導光部分12において、第4面S14は、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。第4面S14は、映像光GLを第2導光部分12内に入射させる屈折面としても機能する。すなわち、第4面S14は、外部から導光部材10に映像光GLを入射させる光入射面と、導光部材10の内部において映像光GLを伝搬させる反射面としての機能を兼用している。
第2導光部分12において、第5面S15は、本体部材10sの表面上に無機材料で形成される光反射膜RMを成膜することで形成され、反射面として機能する。なお、光反射膜RMを成膜した後に、ハードコート層27が施される。このため、第5面S15においては、ハードコート層27の形状が映像光GLに影響を与えるものとならない。
以上のように、本実施形態では、導光部材10の内部において、画像表示装置80からの映像光を、既述のように、少なくとも2回の全反射を含む第1面S11から第5面S15までにおける5回の反射によって導光している。これにより、映像光の表示と外界光を視認させるシースルーとを両立させ、かつ、映像光GLの収差の補正を行うことが可能になる。
また、上記各光学面のうち、第2面S12及びを第5面S15除く各面S11,S13,S14及びこれらを繋ぐ領域の面は、ハードコート層27により形成されるものとなっている。ハードコート層27は、導光部材10の複数の光学面のうち少なくとも一部を形成している。
以上のようなシースルー型の構成を有する虚像表示装置100では、光を透過させる露出部分が多くなるため、導光部材10や光透過部材50の表面にシースルーを良好な状態に保つためのハードコート層27を設けることがより重要となる。特に、外部に露出した外観プリズム部である第1部分B1においては、重要である。しかしながら、導光部材10は、複雑な形状を有しており、例えば導光部材10の導光部分の必要箇所に十分な硬度すなわち十分な厚さのハードコート層27を全体にコーティングすることは、必ずしも容易ではない。具体的には、導光装置20の作製に際して、導光部材10や光透過部材50となるべき基材にハードコート層27を成膜する場合に、原料となるコート液が意図しない箇所で液垂れを生じてしまうことや、十分な膜厚が得られない、といったことが生じ得ると考えられる。そこで、本実施形態では、導光部材10(導光装置20)の作製に際して、コート液の塗布量を制御することで、導光部材10となるべき基材の部位に応じて保護層すなわちハードコート層27の膜厚を変化させている。これにより、第1部分B1のように、外部に露出する可能性が高く耐擦傷性が重要となる部位については、ハードコート層27の膜厚を厚くして十分な硬度を維持させる一方、第2部分B2のように、複雑な形状となる可能性が高い部位については、ハードコート層27の膜厚を薄くして液垂れや液溜り等の発生を抑えることができるものとしている。
ここで、上記のような構成の導光部材10(あるいは導光装置20)を実現しようとする場合、ハードコート層27の膜厚を変化させる箇所(以下、膜厚変化領域と呼ぶ。)が問題となる。例えば映像光GLは、基材すなわち本体部材10s,50sからハードコート層27の膜内へと侵入し、ハードコート層27の最表面で反射する。このため、各光学面S13等において所望の全反射を生じさせるように、前提として、ハードコート層27に適用する材料は、本体部材10s,50sとほぼ同じ屈折率のものを使用することが通常である。しかしながら、ハードコート層27の膜厚変化領域では、膜厚の変化に起因して、例えば表面に段差等が生じる。この表面の段差等が、映像光GLが通過する最表面となった場合、映像光GLに乱れを生じさせ、解像度の劣化が生じてしまうおそれがある。このようなことは、極力回避されることが望ましい。以上を踏まえた上で、上記態様において、膜厚変化領域の候補としては、種々の位置が考えられるが、ここでは、例えば図3に示すような領域A1〜A3や領域Y1のような箇所を検討する。なお、例えば光学面のうち第3面S13の一部である領域X1のような映像光GLの光線束が集光するような箇所、すなわち中間像を形成する箇所やこれに近い箇所(結像部)において、ハードコート層27の膜厚を変化させることは、解像度の劣化等につながりやすい。すなわち、領域X1は、膜厚変化領域として好ましくない。
まず、領域A1〜A3,Y1のうち、領域A1は、外部に露出した外観プリズム部である第1部分B1に含まれる領域である。より具体的には、領域A1は、光学面のうち第4面S14の一部であるが領域X1とは異なり、映像光GLの光線束が集光していない非結像部である。領域A1のような箇所では、緩やかな膜厚の変化であれば、それほど映像光GLの結像性能等に影響しないと考えられる。ただし、急峻な変化であると劣化を生じさせる可能性がある。
次に、領域A2,A3は、外部に露出した外観プリズム部である第1部分B1に含まれる領域である。より具体的には、領域A2は、第3面S13と第5面S15とを繋ぐ接合領域を含む領域であって、映像光GLが通過しない領域である。領域A3は、第1面S11と第4面S14とを繋ぐ接合領域を含む領域であって、映像光GLが通過しない領域である。言い換えると、映像光GLを全反射する全反射面としての第1面S11と第4面S14との間を繋ぐ接合領域である。領域A2,A3のような箇所は、映像光GLが反射していない(導光に寄与していない)ため、膜厚の変化があっても問題が生じにくいと考えられる。さらに、外界光についても、眼EYとの位置関係からすると、領域A2,A3は、眼EYの正面方向から大きく外れており、外界光を視認する視界の範囲外かまたはこれに近い範囲であり、外界光に視認においても問題になりにくい箇所であると考えられる。
最後に、領域Y1は、第1部分B1ではなく、非外観プリズム部である第2部分B2に含まれる領域である。より具体的には、領域Y1は、第5面S15に対応する領域である。反射面ではあるものの、反射面を構成する光反射膜RMを成膜した後に、ハードコート層27が施されるため、ハードコート層27の膜厚変化は解像度の劣化等に対して問題にならないと考えられる。
以上の考察から、領域A1〜A3,Y1については、いずれもハードコート層27のうち膜厚変化領域として採用可能であると考えられるが、ここでは、上記検討から最も適していると考えられる領域A2と領域A3とを膜厚変化領域として採用するものとする(以下、膜厚変化領域A2等とする。)。ここで、導光方向DD1についての膜厚変化領域A2,A3の大きさ(幅W2,W3)は、いずれも7mm以上あるものとする。例えば、導光方向DD1の方向に対する膜厚の変化が1μm/5mm程度であれば、膜厚の変化は十分に緩やかなものであり、解像度の劣化等に対してそれほど大きな問題にはならないと考えられる。少なくともある構成例において、1μm/9mm程度であれば、それほど大きな問題にはならないことが分かっている。したがって、導光方向DD1についての膜厚変化領域A2,A3の大きさを7mm以上とすることで、膜厚変化領域A2,A3の両端側での膜厚差を例えば1μm程度以上にできると考えられる。
以下、図4等を参照して、導光部材10を含む導光装置20の作製工程のうち、コート液を塗布してハードコート層27を形成させるディップ処理の工程について、導光装置20の製造の一例として説明する。なお、図4は、製法の過程を示す図であり、光学面等の表面部分が形成される前の状態を示すものであるが、説明の都合上、例えば導光装置20となるべき基材やハードコート層27となるべきコート液等に代えて導光装置20やハードコート層27等をそのまま記載する場合があるものとする。また、図5は、導光装置20(導光装置20となるべき基材)を、コート液を満たした処理槽から引き上げる途中の様子を示す図である。
ここで、図4において、基材BTは、ハードコートがなされることで導光装置20となるべき部材であり、導光部材10となるべき第1基材BX1(本体部材10sに相当)と、光透過部材50となるべき第2基材BX2(本体部材50sに相当)とを接合部CNで接合した部材である。なお、第1基材BX1には、併せて第5面S15の光反射膜RMに相当する光反射膜が形成されているものとする。図示のように、この基材BTを、例えば光入射側にある取付け位置で治具(図示省略)に固定されて吊るした状態とするとともに、コート液CLを満たした処理槽DTを準備する。基材BTは、治具によって固定され吊るされた状態となって、矢印D1に示す方向(重力方向Gに沿った方向)について後述する所定の角度θだけ傾けられた状態を維持して上下に移動することで、ハードコート層27の成膜を施されることになる。なお、矢印D1に示す両方向のうち、重力方向Gに反対向きとなる方向をディップ引き上げ方向DX1、或いは単に引き上げ方向DX1と呼ぶものとする。基材BTは、矢印D1に示す方向について、まず、重力方向Gに引き下げられ、コート液CLの入った処理槽DTに浸された状態となった後に、引き上げ方向すなわち重力方向Gと反対方向に引き上げられ、表面部分にコート液CLが塗布された状態となる(コート液塗布工程)。
上記コート液塗布工程によって基材BTの表面に塗布されたコート液CLは、基材BTの表面上を重力やコート液CLの粘性力、表面張力等に従って流動することで、基材BTの表面部分を覆い、表面を覆ったコート液CLを乾燥させることで、ハードコート層27の成膜がなされる(成膜工程)。
以上の例において、基材BTを処理槽DTから引き上げる速度(引き上げ速度)については、典型的には、処理槽DTの表面(水平面)を基準として矢印D1に示す方向(垂直方向)への変位度で規定することができる。ただし、これはあくまで上記のような構成及び動作とした場合の一例であり、例えば引上げ方向を導光方向DD1に沿うようにした場合に、この方向に沿った変位で引上げ速度を規定する、といったことも可能である。
また、ここで、上記のようなディップ処理を利用したハードコート層27の形成では、処理槽DTから引き上げる速度(引き上げ速度)が遅いと膜厚が薄く、速いと膜厚が厚くなる。引き上げ速度が速い、すなわち膜厚が厚い方が、十分な耐擦傷性を得るためには好ましが、液垂れ等が生じる可能性も高くなる。このため、液だれ等を生じさせたくない場合は、引き上げ速度を遅くして膜厚を薄くする必要がある。そこで、本実施形態では、外部に露出する可能性が高く耐擦傷性が重要となる第1部分B1に相当する箇所を引き上げる際には、引き上げ速度を相対的に速くし、段差や穴等を有して液垂れや液溜り等の発生が懸念される第2部分B2に相当する箇所を引き上げる際には、引き上げ速度を相対的に遅くしている。また、第1部分B1から第2部分B2にかけての部分(本実施例では第1部分B1のうち第2部分B2に近い側の部分)である膜厚変化領域A2,A3において引き上げ速度を変化させている。
より具体的に説明すると、上記コート液塗布工程において、まず、引き上げ速度を変化させる箇所である膜厚変化領域A2,A3について、図4や図5に示すように、高さを揃えている。このため、基材BTは、引き上げに際して、導光方向DD1が重力方向Gに対して所定の角度θだけ傾いた状態となっている。これにより、異なる位置にある膜厚変化領域A2と膜厚変化領域A3とが、重力方向Gに関して同じ高さを保たれ、引き上げ速度の変化に伴い、同時に同等の膜厚変化をさせるものとなっている。言い換えると、複数箇所に分かれた領域である領域A2と領域A3とにおいて同等の膜厚変化が生じる。なお、上記のように基材BTを傾けることなく膜厚変化領域を揃えられる場合には、導光方向DD1が重力方向Gに対して傾かない、すなわち平行になるように設置して引き上げ動作を行うものとしてもよい。
図6は、上記のようにして成膜されたハードコート層27について、第1部分B1と第2部分B2とにおける膜厚の差を概念的に示した図である。ここでは、膜厚変化領域A2,A3の大きさ(幅W2,W3)について、導光方向DD1に7mm以上確保することで(図3等参照)、膜厚変化領域A2,A3における膜厚の変化の度合いを比較的穏やかなものにでき、膜厚変化領域A2,A3の両端で十分な膜厚差を生ぜしめることができる。すなわち、第1部分B1側のうち膜厚変化領域A2,A3よりも先端側(光透過部材50に近い側)でのハードコート層27の膜厚の厚さT1を2〜4mm程度とする一方、第2部分B2側でのハードコート層27の膜厚の厚さT2を1〜2mm程度とする、といったことが可能になる。この際、上記のような厚さT1と厚さT2との差については、第1部分B1及び第2部分B2のうち、光学的機能を有する複数の光学面S11〜S15における膜厚を比較した場合に生じている。例えば、第1部分B1の表面部分である光学面S11、S13における膜厚は、第2部分B2の表面部分のうち少なくとも1つの光学面の形成箇所である光学面S15における膜厚よりも厚いものとすることが考えられる。なお、光学面(第5面)S15は、既述のように、無機材料で形成される光反射膜RMの上に成膜される部分である。また、上記の他、例えばハードコート層27の全体における膜厚の特性として、少なくとも、第1部分B1の表面部分における平均膜厚を第2部分B2の表面部分における平均膜厚よりも厚いものとすることができる。すなわち、誤差等により膜厚に多少の差異があることも考えられる。このようなことがあるとしても、全体の平均としては、第1部分B1での膜厚の方が第2部分B2での膜厚よりも厚くなっていることで、相対的に第1部分B1の耐擦傷性を高めた構造となっていると言える。また、上記のような引き上げ速度の調整により、1回の成膜処理で所望の形状のハードコート層27が形成できる。すなわち、ハードコート層27は、成膜位置によって膜厚が連続的に変化する1層構成となっている。
図7は、上記のような引き上げ速度の変化についていくつかの例を示すためのグラフである。各グラフのうち、上側は、時間に対する引き上げ速度の変化を示している。すなわち、グラフの横軸は、基材の引上げ時間を示し、縦軸は、引き上げ速度を示している。一方、各グラフのうち、下側は、対応する上側のグラフに示す状況において引き上げられた基材の引上げ位置における膜厚を示している。すなわち、グラフの横軸は、基材の引上げ位置を示し、縦軸は、引上げ位置での膜厚を示している。破線で示す範囲が、速度変化が生じているすなわち膜厚変化が生じている箇所に相当することになる。本実施形態の場合、既述のように、第1部分B1では、引き上げ速度を速くし、第2部分B2では、引き上げ速度を遅くしたい。図4等に示す例では、引き上げ方向に関して、第1部分B1が相対的に下側であり、第2部分B2が相対的に上側となっている。すなわち、第2部分B2が先に引き上げられ、第1部分B1が後から引き上げられることになる。このため、図7のグラフの全てにおいて共通して示されるように、引き上げ速度は、最初のうちは遅く、膜厚を変化させる領域で段階的に上がり、最後に速くなっていることが分かる。ここで、膜厚を変化させる領域すなわち膜厚変化領域A2,A3の箇所を処理槽DTから引き上げる際に、例えば図7のうち右側のグラフに示すように、時間に対して比例するように速度を上げるようにするといったことが考えられる。また、図7のうち、中央側のグラフに示すように、滑らかな速度変化にするように速度を上げるといったことも考えられる。連続的に膜厚を変化させるにあたって、以上のように速度を変化させることが理想的であると考えられるが、基材BTを引き上げる引き上げ機構の構成等の関係上、現実的には、例えば図7のうち左側のグラフに示すように、段階的な速度変化のみが可能であることも考えられる。このような場合、膜厚変化領域A2,A3における成膜状態も連続的に段差状になると考えられる(下側のグラフ参照)。このような場合、段差状形状の発生に伴い、干渉縞が発生し、影響を及ぼすといった懸念があるが、本実施形態では、既述のように、膜厚変化領域A2,A3の大きさ(幅W2,W3)を十分に確保することで、膜厚の変化を穏やかなものとし、かかる事態も回避可能としている。
以下、特に、第2部分B2において発生し得る液垂れ等に関して考察する。例えば、図8に示すように、基材BTが重力方向Gに対して略垂直な形状の段差面FFを有する場合、段差面FFの面上の領域AAに集中するようにコート液CLが流れることになり、液垂れ等を生じる原因となる可能性がある。これに対して、本実施形態の場合、段差面FFのような箇所にコート液CLを塗布する際には、引き上げ速度を遅くすることで、液垂れ等の発生を回避している。例えば図9(左側が背面の概念図、右側が側面の概念図)において概念的に示すように、光入射側である第2部分B2が光導光側あるいは光射出側である第1部分B1よりも、縦方向(Y方向)や奥行き方向(Z)方向について小さいような場合、第2部分B2において段差部B2aのような箇所が発生する。上記のように段差部B2aのような箇所の引き上げに際して、引き上げ速度を遅くしておくことができる。
以下、図10を参照して、導光装置20のうち導光部材10が有する他の部材へ取り付けるための取付部の構造について説明する。図10は、一例として、導光装置20の鏡筒部39への組付けについて説明するための図である。この場合、図示のように、導光装置20は、導光部材10において、高さ方向(Y方向)について、投射レンズ30を収納する鏡筒部39に設けられた上側の第1孔K1と下側の第2孔K2との2箇所でネジ止め固定されている。すなわち、導光装置20のうち導光部材10は、第1孔K1及び第2孔K2に対応してU字構造の取付部であるネジ止め部SK1,SK2がそれぞれ形成されている。このような取付部において、上述したような液垂れ等の問題が生じ得る。これに対して、本実施形態では、ハードコート層27の形成に際して、第2部分B2となるべき部分のうち、上記図10に例示するネジ止め部SK1,SK2等の取付部に相当する箇所にコート液CLを塗布において、引き上げ速度を遅くしている。これにより、当該箇所での塗布量を十分少なくすることで液垂れ等の発生が回避される。また、この際、当該箇所がU字構造すなわち閉じていない構造であることで、コート液CLを逃がしやすいものとなっており、液溜りの発生等をさらに抑制できる。
以上のように、本実施形態に係る虚像表示装置100に適用される導光部材10及び導光部材10の製造方法では、ハードコート層27を成膜するに際して、成膜位置すなわち導光部材10となるべき部位に応じてハードコート層27の膜厚を変化させている。より具体的には、上記のようなディップ処理によるハードコート層27の形成においては、コート液CLの塗布に際して引き上げ速度を調整している。これにより、例えば外部に露出する可能性が高く耐擦傷性が重要となる第1部分B1に相当する箇所については、ディップ処理における引き上げ速度を相対的に速めることでハードコート層27の膜厚を厚くして十分な硬度を維持させるような成膜をしている。一方、例えば段差や穴等を有して液垂れや液溜り等の発生が懸念される第2部分B2に相当する箇所については、引き上げ速度を相対的に遅くすることでハードコート層27の膜厚を薄くして液垂れ等の発生を回避している。
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
上記の説明では、画像光と外界光とを重畳させる態様についてのみ説明しているが、例えば重畳させずに画像光のみ観察する態様としたり、画像光のみ観察する態様と外界光のみ観察する態様とを切り替えることができるものとしたりする虚像表示装置において本願発明を適用してもよい。例えば、上記では、導光部材10が光透過部材50と協働して導光装置20を構成するものとしているが、例えば光透過部材50を有しない構造において本願発明を適用するものとしてもよい。また、上記実施形態では、導光装置20が装着者の眼前の全体を覆うような構成となっているが、これに限らず、例えば瞳サイズよりも射出開口が小さい導光光学系を用いる瞳分割方式等の光学系のように、眼前の一部を覆い、覆わない部分も存在する小型の構成としてもよい。また、光入射側や射出側にホログラムを配置したものに適用することも考えられる。
また、上記において、画像表示装置80としては、種々のものを利用可能であり、例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス等からなる映像表示素子に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。
また、上記の説明では、第2面S12のハーフミラー層を例えば金属反射膜や誘電体多層膜としたが、平面又は曲面のホログラム素子に置き換えることができる。また、第5面S15についても、ミラー反射面とする場合のほか、ホログラム素子で構成することも可能である。
上記の説明では、導光部材10等が眼の並ぶ横方向に延びているが、導光部材10を縦方向に延びるように配置することもできる。この場合、導光部材10は、直列的ではなく並列的に平行配置された構造を有することになる。
また、本願発明の技術を、ディスプレイと撮像装置とで構成されるいわゆるビデオシースルーの製品に対応させるものとしてもよい。
また、上記の説明では、一対の表示装置を備える両眼視の虚像表示装置について説明しているが、単一の表示装置とできる。つまり、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像表示装置等を設け、画像を片眼視する構成にしてもよい。
また、上記の例では、膜厚変化領域A2,A3について、膜厚変化領域A2は、第3面S13と第5面S15とを繋ぐ接合領域を含む領域としているが、所望の範囲が得られれば、膜厚変化領域A2は、当該接合領域と等しい、あるいは当該接合領域に含まれるものであってもよい。同様に、膜厚変化領域A3についても、第1面S11と第4面S14とを繋ぐ接合領域と等しい、あるいは当該接合領域に含まれるものであってもよい。なお、上記の例では、膜厚変化領域(候補とした領域も含む)については、第1部分B1(外観部)と第2部分B2(非外観部)との境界に付近の領域としているが、第2部分B2(非外観部)のみに膜厚変化領域を設けるように構成するものとしてもよい。この場合、膜厚変化領域が見えなくなり、特に外観が良くなるとともに外観部の全てを十分に膜厚な領域とすることができる。
また、上記の例では、光透過部材50と導光部材10とを接合部CNにおいて接合した後にハードコートを行っているが、光透過部材50と導光部材10とについてハードコート層をそれぞれ設けた後、接合するものとしてもよい。
また、上記の例では、第5面S15における光反射膜RMについて、無機材料で形成されるものとしているが、無機材料以外で形成されてもよい。また、導光部材10となるべき基材にハードコートを施してから光反射膜RMを設けるものとしてもよい。すなわち、光反射膜RMがハードコートの上に設けられるものとしてもよい。