本発明は、外界光と映像光とを重ねて表示させるシースルー機能を持ちながら、ゴースト光の発生を抑制できる虚像表示装置を提供することを目的とする。
本発明に係る虚像表示装置は、映像光と外界光とを同時に視認させる虚像表示装置であって、映像光を生じさせる映像素子と、複数面を有し、当該複数面での反射及び透過により映像素子からの映像光を導光させる導光部材とを備え、導光部材は、映像素子からの映像光として観察者に到達させるべき有効光束成分を導光させる有効光束導光部と、有効光束導光部の周辺に形成される、周辺領域形成部とを有する。
上記虚像表示装置では、映像光を導光させる導光部材において、有効光束導光部の周りに周辺領域形成部が設けられていることで、例えば有効光束導光部の境界部分のような意図しない反射や散乱によって不要光が発生しやすい箇所が形成されないようにすることができる。また、例えば導光部材によって有効光束導光部や周辺領域形成部を設ける場合、当該導光部材のうち導光に寄与しない側面形成部分のような不要光を発生させるおそれのある箇所を有効光束導光部から離隔することができる。つまり、周辺領域形成部が介在することで不要光に起因するゴースト光の発生を低減できる。これにより、映像光と外界光とを同時に視認させるという状況下においても、不要光に起因してゴースト光が発生させる可能性を低減することが可能になり、良好な映像光を視認させるとともに、外界像の認識も良好なものにできる。
本発明の具体的な側面では、導光部材は、映像素子からの映像光を導光させるとともに、外界光を通過させるプリズム型の部材である。この場合、導光部材としてのプリズムが光透過性を有し、映像光の導光のみならず外界光を通過させることでシースルーを実現できる。また、この場合、当該プリズムにおいて、有効光束導光部及び周辺領域形成部を形成して、シースルーを実現しつつプリズム内で不要光に起因するゴースト光が発生することを回避するとともに、有効な成分を確実に伝搬させることができる。
本発明の別の側面では、周辺領域形成部は、入射した不要光を通過させて観察者によって視認可能な範囲から外れる方向へ導く。この場合、周辺領域形成部があることで不要光を排除するスペースを確保できる。
本発明のさらに別の側面では、有効光束導光部は、映像光を導光させる有効光束導光面を有し、周辺領域形成部は、有効光束導光面を広げるように設けられた拡張面を有する。この場合、周辺領域形成部が有効光束導光面から広がって形成される拡張面を有することによって導光部材に入射する不要光を、観察者が視認可能である視野の範囲から外れる方向へ導くことができる。
本発明のさらに別の側面では、周辺領域形成部において、拡張面は、有効光束導光面から周辺に連続して延びる連続面である。
本発明のさらに別の側面では、周辺領域形成部は、拡張面として、有効光束導光面を導光方向に沿って広がる面を含んでいる。
本発明のさらに別の側面では、導光部材を構成する面のうち、拡張面の粗さは、有効光束導光面の粗さよりも大きい。この場合、例えば拡張面の粗さを有効光束導光面の粗さほど厳しくすることを要しないことで、導光部材を成形するための金型作製を比較的容易にでき、延いては虚像表示装置の作製が容易となる。
本発明のさらに別の側面では、導光部材は、複数面の一部であって映像光の導光に寄与しない側面領域を形成する側面形成部分を有し、周辺領域形成部は、有効光束導光部と側面形成部分との間に介在するように形成される。この場合、周辺領域形成部が介在することで、不要光を発生させやすい側面形成部分を、有効光束導光部から離隔することができる。
本発明のさらに別の側面では、導光部材において、側面形成部分の側面領域は、光沢面で構成される。この場合、側面領域において光が拡散されることを抑制して、ゴーストの発生を低減できる。
本発明のさらに別の側面では、導光部材において、側面形成部分の側面領域を含む表面は、ハードコートにより平滑化されて形成される。この場合、ハードコートにより比較的簡易でありながら高精度に導光部材の表面全体を平滑化することができる。
本発明のさらに別の側面では、導光部材の表面の粗さは、断面曲線の最大谷深さPvが50μm以下であり、中心線平均粗さRaが5μm以下である。この場合、不要光成分を、反射面において拡散することなく反射させることができ、ゴースト光の発生を低減できる。
本発明のさらに別の側面では、導光部材は、3面以上の非軸対称な曲面を含むとともに、有効光束導光部において、映像光を導く光学系の一部として内部に中間像を形成させる。この場合、光学系全体を小型で軽量なものにしつつ、広画角で明るい高性能の表示を実現することができる。
本発明のさらに別の側面では、周辺領域形成部は、少なくとも有効光束導光部のうち中間像を形成させる部分の周りに設けられる。この場合、周辺領域形成部のうち有効光束が密な状態になりやすい中間像の前後に位置する部分において外乱光等の不要光成分を近づけないようにすることで、不要光成分が有効光束に影響してゴーストとなることを抑制できる。
本発明のさらに別の側面では、導光部材において、複数面のうち第1面と第3面とを通過させて外界を視認したときに、視度が略0になっており、第1面と第3面とは、観察側に対し凹面形状を成しており、映像素子からの映像光は、第3面で全反射され、第1面で全反射され、第2面で反射された後、第1面を透過して、観察側に到達する。この場合、視度が略0とすることで、外界光を歪みのない良好な状態で視認でき、また、凹面形状を成すことで、観察者の顔に沿う形となっており、重心も顔に近く、デザイン的にも優れたものとできる。
本発明のさらに別の側面では、導光部材は、第1面の光入射側に隣接して配置され、内部に入射した映像光を第3面へ導く第4面と、第3面の光入射側に隣接して配置され、内部に入射した映像光を第4面へ導く第5面と、映像素子からの映像光を入射させて第5面へ導く第6面とを有し、第4面は、第6面から導光方向に凸状に延びる反射面であり、第5面で反射した光を全反射により導光部内部に全反射する面であり、周辺領域形成部は、第4面の周辺に設けられている。
本発明のさらに別の側面では、導光部材において、複数面のうち装置の表側を形成する面が裏側を形成する面よりも広い。この場合、観察者の顔に合せやすい形状となる。
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る第1実施形態の虚像表示装置について詳細に説明する。
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す本実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像に対応する画像光を視認させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで視認又は観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う透視部材101と、透視部材101を支持するフレーム102と、フレーム102の左右両端のカバー部から後方のつる部分(テンプル)にかけての部分に付加された第1及び第2内蔵装置部105a,105bとを備える。ここで、透視部材101は、観察者の眼前を覆う肉厚で湾曲した光学部材(透過アイカバー)であり、第1光学部分103aと第2光学部分103bとに分かれている。図面上で左側の第1光学部分103aと第1内蔵装置部105aとを組み合わせた第1表示装置100Aは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2光学部分103bと第2内蔵装置部105bとを組み合わせた第2表示装置100Bは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)、2(B)等に示すように、第1表示装置100Aは、投射透視装置70と、画像表示装置80とを備える。このうち、投射透視装置70は、プリズム型の部材である導光部材10と、光透過部材50と、結像用の投射レンズ30とを備える。導光部材10と光透過部材50とは接合によって一体化され、例えば導光部材10の上面10eとフレーム61の下面61eとが接するようにフレーム61の下側にしっかりと固定されている。より具体的には、導光部材10には、フレーム61への取付けを可能にする取付部10gが形成されており、フレーム61から取付部10gに対応して延びている取付部61gに例えばネジ止めされている。投射レンズ30は、これを収納する鏡筒62を介して導光部材10の端部において、例えば嵌めこみ式で固定されている。また、投射レンズ30は、フレーム61の下側にしっかりと固定されている。投射透視装置70のうち導光部材10と光透過部材50とが連結(接合)されることで、導光装置20が構成される。導光装置20は、図1における第1光学部分103aに相当する。また、投射透視装置70の投射レンズ30と、画像表示装置80とは、図1における第1内蔵装置部105aに相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
投射透視装置70のうち、プリズム型の部材である導光部材10は、平面視において顔面に沿うように湾曲した円弧状の部材であり、鼻に近い中央側の第1プリズム部分11と、鼻から離れた周辺側の第2プリズム部分12とに分けて考えることができる。第1プリズム部分11は、光射出側に配置され、光学的な機能を有する側面として、第1面S11と、第2面S12と、第3面S13とを有し、第2プリズム部分12は、光入射側に配置され、光学的な機能を有する側面として、第4面S14と、第5面S15と、第6面S16とを有する。このうち、第1面S11と第4面S14とが隣接し、第3面S13と第5面S15とが隣接し、第1面S11と第3面S13との間に第2面S12が配置され、第4面S14と第5面S15との間に第6面S16が配置されている。導光部材10は、以上のような光学的な機能を有する非軸対称な曲面を含む各面S11〜S16のうち少なくとも1つの面において、これらを延長して設けられる拡張面ES1,ES2等を有している。詳しくは後述するが、ここでは一例として図2(B)に示すように、第4面S14から延長して設けられる拡張面ES1,ES2が壁面部WP1,WP2によって形成されている。また、導光部材10は、第1〜第6面S11〜S16に隣接するとともに互いに対向する第1の側面10eと第2の側面10fとを有する。なお、これらの側面10e,10fは、各面S11〜S16と異なり、導光に際して光学的な機能を有しない面である。
導光部材10において、第1面S11は、Z軸に平行な射出側光軸AXOを中心軸又は基準軸とする自由曲面であり、第2面S12は、XZ面に平行な基準面SRに含まれZ軸に対して傾斜した光軸AX1を中心軸又は基準軸とする自由曲面であり、第3面S13は、射出側光軸AXOを中心軸又は基準軸とする自由曲面である。第4面S14は、XZ面に平行な基準面SRに含まれZ軸に対して傾斜した一対の光軸AX3,AX4の2等分線を中心軸又は基準軸とする自由曲面であり、第5面S15は、XZ面に平行な基準面SRに含まれZ軸に対して傾斜した一対の光軸AX4,AX5の2等分線を中心軸又は基準軸とする自由曲面であり、第6面S16は、XZ面に平行な基準面SRに含まれZ軸に対して傾斜した光軸AX4を中心軸又は基準軸とする自由曲面である。なお、以上の第1〜第6面S11〜S16は、水平(又は横)に延びXZ面に平行で光軸AX1〜AX4等が通る基準面SRを挟んで、鉛直(又は縦)のY軸方向に関して対称な形状を有している。
導光部材(プリズム)10は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されており、例えば型内に熱可塑性樹脂を注入・固化させることにより、成形する。導光部材10の本体部分10sは、一体形成品とされているが、第1プリズム部分11と第2プリズム部分12とに分けて考えることができる。第1プリズム部分11は、映像光GLの導波及び射出を可能にするとともに、外界光HLの透視を可能にする。第2プリズム部分12は、映像光GLの入射及び導波を可能にする。
第1プリズム部分11において、第1面S11は、映像光GLを第1プリズム部分11外に射出させる屈折面として機能するとともに、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。第1面S11は、眼EYの正面に配されるものであり、観察者に対し凹面形状を成している。なお、第1面S11は、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止する目的で、本体部分10sをハードコート層で被覆することもできる。このハードコート層は、本体部分10sの下地面上に樹脂等からなるコート剤をディップ処理やスプレーコート処理によって成膜することによって形成される。
第2面S12は、ハーフミラー層15を有している。このハーフミラー層15は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)である。ハーフミラー層(半透過反射膜)15は、第2面S12の全体ではなく、その部分領域PA上に形成されている。つまり、ハーフミラー層15は、第2面S12が広がる全体領域QAを主に鉛直方向に関して狭めた部分領域PA上に形成されている。より詳細には、この部分領域PAは、鉛直のY軸方向に関する中央側に配置されており、水平の基準面SRに沿った方向に関して略全体に配置されている。ハーフミラー層15は、本体部分10sの下地面のうち部分領域PA上に、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層15の映像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光HLの観察を容易にする観点で、想定される映像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層15の映像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、映像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
第3面S13は、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能する。なお、第3面S13は、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止する目的で、本体部分10sをハードコート層で被覆することもできる。第3面S13は、眼EYの正面に配されるものであり、第1面S11と同様に観察者に対し凹面形状を成しており、第1面S11と第3面S13とを通過させて外界光HLを見たときに、視度が略0になっている。
第2プリズム部分12において、第4面S14及び第5面S15は、映像光GLを内面側で全反射させる全反射面として機能し、或いはミラー層17で被覆されて反射面として機能する。第4面S14は、後述する映像光GLの光入射面である第6面S16から導光方向に凸状に延びる反射面となっている。なお、第4面S14及び第5面S15を全反射面として機能させる場合、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止する目的で、本体部分10sをハードコート層で被覆することもできる。
第6面S16は、映像光GLを第2プリズム部分12内に入射させる屈折面として機能する。なお、第6面S16は、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止する目的で、本体部分10sをハードコート層で被覆することもできるが、さらに反射防止によってゴーストを抑制する目的で、本体部分10sを多層膜で被覆することもできる。
光透過部材50は、導光部材10と一体的に固定されている。光透過部材50は、導光部材(プリズム)10の透視機能を補助する部材(補助プリズム)であり、光学的な機能を有する側面として、第1透過面S51と、第2透過面S52と、第3透過面S53とを有する。ここで、第1透過面S51と第3透過面S53との間に第2透過面S52が配置されている。第1透過面S51は、導光部材10の第1面S11を延長した曲面上にあり、第2透過面S52は、当該第2面S12に対して接着剤CCによって接合され一体化されている曲面であり、第3透過面S53は、導光部材10の第3面S13を延長した曲面上にある。このうち第2透過面S52と導光部材10の第2面S42とは、接合によって一体化するため、略同じ曲率の形状を有する。
光透過部材(補助プリズム)50は、可視域で高い光透過性を示し、導光部材(プリズム)10の本体部分10sと略同一の屈折率を有する樹脂材料で形成されている。光透過部材50は、例えば熱可塑性樹脂の成形によって形成される。
投射レンズ30は、鏡筒62内に保持され、画像表示装置80は、鏡筒62の一端に固定されている。導光部材10の第2プリズム部分12は、投射レンズ30を保持する鏡筒62に連結され、投射レンズ30及び画像表示装置80を間接的に支持している。導光部材10の周辺には、図2(A)において破線で示すように、導光部材10に外光が入射することを防止する追加の遮光部BPを設けることができる。遮光部BPは、例えば遮光性の塗装や光散乱層で構成することができ、投射レンズ30から導光部材10への映像光の入射に際して不要光成分を予め除去することができる。ただし、遮光部BPは、映像光のうち必要光である有効光束の通過を妨げたり、意図しない反射をして新たな不要光成分を形成させたりすることのない範囲で設けられているものとする。なお、図示の遮光部BPの形成位置は一例であり、このほかの場所に適宜設けることも可能である。
投射レンズ30は、入射側光軸AXIに沿って例えば3つのレンズ31,32,33を有している。各レンズ31,32,33は、軸対称なレンズであり、少なくとも1つ以上が非球面を有するものとなっている。投射レンズ30は、画像表示装置80から射出された映像光GLを再結像させるために導光部材10の第6面S16を介して導光部材10内に入射させる。つまり、投射レンズ30は、映像表示素子82の像面(表示位置)OI上の各点から射出された映像光又は画像光を導光部材10内に再結像させるためのリレー光学系である。なお、導光部材10の各面は、投射レンズ30と協働することでリレー光学系の一部として機能する。
画像表示装置80は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置81と、透過型の空間光変調装置である映像表示素子82と、照明装置81及び映像表示素子82の動作を制御する駆動制御部84とを有する。
画像表示装置80の照明装置81は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源81aと、光源81aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部81bとを有する。映像表示素子82は、例えば液晶表示デバイスで形成される映像素子であり、照明装置81からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部84は、光源駆動回路84aと、液晶駆動回路84bとを備える。光源駆動回路84aは、照明装置81の光源81aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路84bは、映像表示素子(映像素子)82に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、液晶駆動回路84bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。
〔C.映像光等の光路〕
以下、虚像表示装置100における映像光GL等の光路について説明する。
映像表示素子(映像素子)82から射出された映像光GLは、投射レンズ30によって収束されつつ、導光部材10に設けた比較的強い正の屈折力を有する第6面S16に入射する。
導光部材10の第6面S16を通過した映像光GLは、収束しつつ進み、第2プリズム部分12を通過する際に、比較的弱い正の屈折力を有する第5面S15で反射され、比較的弱い負の屈折力を有する第4面S14で反射される。
第2プリズム部分12の第4面S14で反射された映像光GLは、第1プリズム部分11において、比較的弱い正の屈折力を有する第3面S13に入射して全反射され、比較的弱い負の屈折力を有する第1面S11に入射して全反射される。なお、映像光GLは、第3面S13を通過する前後において、導光部材10中に中間像を形成する。この中間像の像面IIは、映像表示素子82の像面(表示位置)OIに対応するものであるが、第3面S13で折り返されたものとなっている。
第1面S11で全反射された映像光GLは、第2面S12に入射するが、特にハーフミラー層15に入射した映像光GLは、このハーフミラー層15を部分的に透過しつつも部分的に反射されて第1面S11に再度入射して通過する。なお、ハーフミラー層15は、ここで反射される映像光GLに対して比較的強い正の屈折力を有するものとして作用する。また、第1面S11は、これを通過する映像光GLに対して負の屈折力を有するものとして作用する。
第1面S11を通過した映像光GLは、観察者の眼EYの瞳に略平行光束として入射する。つまり、観察者は、虚像としての映像光GLにより、映像表示素子82上に形成された画像を観察することになる。
一方、外界光HLのうち、導光部材10の第2面S12よりも+X側に入射するものは、第1プリズム部分11の第3面S13と第1面S11とを通過するが、この際、正負の屈折力が相殺されるとともに収差が補正される。つまり、観察者は、導光部材10越しに歪みの少ない外界像を観察することになる。同様に、外界光HLのうち、導光部材10の第2面S12よりも−X側に入射するもの、つまり、光透過部材50に入射したものは、これに設けた第3透過面S53と第1透過面S51とを通過する際に、正負の屈折力が相殺されるとともに収差が補正される。つまり、観察者は、光透過部材50越しに歪みの少ない外界像を観察することになる。さらに、外界光HLのうち、導光部材10の第2面S12に対応する光透過部材50に入射するものは、第3透過面S53と第1面S11とを通過する際に、正負の屈折力が相殺されるとともに収差が補正される。つまり、観察者は、光透過部材50越しに歪みの少ない外界像を観察することになる。なお、導光部材10の第2面S12と光透過部材50の第2透過面S52とは、略同一の曲面形状をともに有し、略同一の屈折率をともに有し、両者の隙間が略同一の屈折率の接着層(接着剤)CCで充填されている。つまり、導光部材10の第2面S12や光透過部材50の第2透過面S52は、外界光HLに対して屈折面として作用しない。
ただし、ハーフミラー層15に入射した外界光HLは、このハーフミラー層15を部分的に透過しつつも部分的に反射されるので、ハーフミラー層15に対応する方向からの外界光HLは、ハーフミラー層15の透過率に弱められる。その一方で、ハーフミラー層15に対応する方向からは、映像光GLが入射するので、観察者は、ハーフミラー層15の方向に映像表示素子82上に形成された画像とともに外界像を観察することになる。
導光部材10内で伝搬されて第2面S12に入射した映像光GLのうち、ハーフミラー層15で反射されなかったものは、光透過部材50内に入射するが、例えば光透過部材50のうちフレーム61側の周辺部等に反射防止部を設ける(不図示)ことによって導光部材10に戻ることが防止される。つまり、第2面S12を通過した映像光GLが光路上に戻されて迷光となることが防止される。また、光透過部材50側から入射してハーフミラー層15で反射された外界光HLは、光透過部材50に戻されるが、光透過部材50に設けた上記の反射防止部によって導光部材10に射出されることが防止される。つまり、ハーフミラー層15で反射された外界光HLが光路上に戻されて迷光となることが防止される。
しかしながら、虚像表示装置100のようなシースルー機能を有するものの場合、上記のように、映像光GLのみならず外界光HLにも起因して迷光が発生する可能性があり、迷光の成分によってゴースト光が発生する可能性が高いため、ゴースト対策がより重要となる。例えば図2(A)に示す遮光部BPによる映像光のうちの不要光成分の除去や光透過部材50の反射防止部による反射光の防止のみでは、迷光発生の防止が不十分である場合がある。特に、上記のような眼鏡の形態に近づけかつ装置の小型化を図るという状況下では、例えば製品誤差等による僅かな光路のズレ等がゴースト光発生の要因となることもある。これに対して本実施形態では、導光部材10において、有効光束が導光される有効光束導光部DPの周りに周辺領域形成部EPを設けることで、意図しない反射や散乱によって不要光が発生することを抑制してゴースト光の発生を回避している。
以下、図2(B)等を参照して、導光部材10における有効光束導光部DPに対して周辺領域形成部EPを形成すべき位置等について説明する。まず、有効光束導光部DPとは、導光部材10のうち、映像光GL(図2(A)参照)の有効成分、すなわち観察者の眼EYに到達させるべき成分が通過する部分(範囲)を意味する。これに対して、周辺領域形成部EPとは、導光部材10のうち、有効光束導光部DPの周りを形成する部分を意味し、例えば、図2(B)では、第4面S14棟の周囲に形成される壁面部WP1,WP2等が相当する。有効光束導光部DPは、第1面S11等のように映像光GLの導光に寄与し光学的な機能を有する面を含む。これに対して、周辺領域形成部EPは、第1面S11等の光学機能面を延長して設けられる拡張面を含み、例えば、図2(B)に示す一例では、周辺領域形成部EPの一部である壁面部WP1,WP2によって有効光束導光部DPの一部である第4面S14の拡張面ES1,ES2が形成されている。言い換えると、周辺領域形成部EPの一部である壁面部WP1,WP2によって、第4面S14を延長するように設けられた拡張面ES1,ES2が第4面S14の上下方向(図中Y方向)に広がるようにそれぞれ形成されているものとする。この拡張面ES1,ES2は、有効光束導光面DP1である第4面S14に滑らかに繋がって延びる面として存在している、言い換えると、拡張面ES1,ES2が第4面S14から周辺に連続して延びる連続面であることで、例えば映像光GLの第4面S14への入射において第4面S14の範囲外からの光を通過させ有効光束導光部DPから離隔し、観察者によって視認可能な範囲から外れる方向へ導くものとなっている。以上のような有効光束導光部DPの周りに壁となる壁面部WP1,WP2が形成されていることで、映像光GLの有効光束の通過領域である第4面S14の周辺において意図しない光の反射や散乱が生じてゴースト光の発生を抑制している。
ここで、図3(A)は、本体部分の正面図における有効光束が通過する範囲すなわち有効光束導光部DPの様子について一例を示す図である。なお、図3(B)は、図3(A)のA−A断面を模式的に示す図である。図3(A)に示すように、有効光束導光部DPは、導光部材10のうち、映像光GLの有効成分の光束全体によって形成される範囲を言う。言い換えると、映像光GLを構成する光束線全体によって形成される包絡線(包絡面)が有効光束導光部DPと周辺領域形成部EPとの境界となっている。有効光束導光部DPのうち、中間像が形成される部分やその周辺の部分である領域MAのあたりでは、映像光GLの有効光束の通過範囲すなわち有効光束導光部DPの形状がくびれて狭まっている。このことを利用して、導光部材10において、この領域MAの辺りに形成される周辺領域形成部EPを小さくして、虚像表示装置100全体としてのデザイン性の向上や装置の小型化を図ることが可能であるとも考えられる。しかしながら、この領域MAは、映像光の中間像が形成される部分であるところ、有効光束の成分が集光しているところである。従って、この近辺において例えば導光部材10に傷等が発生すると、その傷によって画像に与えられる影響は非常に大きなものとなる。同様に、ゴーストの発生に関してもこの近辺に起因するものである場合、非常に目立つものとなりやすい。これに対して、本実施形態では、特に領域MAの周辺すなわち中間像が形成される前後の部分において周辺領域形成部EPを十分に大きく有することで、ゴーストの発生を抑制できるものとしている。
特に、図3(A)等に示すように、導光部材10に対して、有効光束の光束線全体として、広がったり、収束したりが複数回起こる多面体プリズムの導光系のような有効光束導光部DPの形状が複雑なものとなる場合において、迷光の発生を防ぎ、十分なゴースト対策を行うためには、導光部材10に対する光束の入射位置や射出位置だけでなく、中間的な位置においても十分な光路の確保が必要となる。このため、本実施形態では、特にゴースト発生の生じる可能性が高い部分であり有効光束導光部DPのうち中間像が形成される部分の近傍部分に隣接して周辺領域形成部EPを設けている。つまり、導光部材10は、周辺領域形成部EPのうち中間像の前後に位置する部分において拡張面ES1等を十分な大きさで有している。これにより、有効光束導光部DPのうち中間像を形成する部分やその近傍で意図しない不要光が、その後の面で、反射/透過して目に入射することを抑制し、目立ちやすいゴースト光の発生を回避している。
なお、上記実施形態の場合、投射レンズ30等によって導光部材10の内部に中間像が形成されるとともに、第3面S13、第1面S11、及び第2面S12の順に2面以上で全反射された映像光GLが、第1面S11を透過して観察者の眼EYに到達するので、導光部材10を薄型にして光学系全体を小型で軽量なものにしつつ、広画角で明るい高性能の表示を実現することができる。また、外界光HLについては、例えば第1面S11と第3面S13とを通過させて観察することができ、その際の視度を略0とするので、シースルーで外界光HLを観察する際の外界光HLのデフォーカスや歪みを低減できる。また、導光部材10の形状が、観察者の顔に沿う形となっており、重心も顔に近く、デザイン的にも優れたものとできる。
また、図3(B)に示すように、導光部材10において、虚像表示装置のうち装着時に観察者から見て外側となる表側を形成する面HSが裏側を形成する面TSよりも広くなっている。このような形状となっていることによっても、観察者の顔に合せやすい形状となりデザイン的にも優れたものにできる。
以下、本実施形態に係る虚像表示装置における不要光の処理について説明する。上記では、映像光の光束が密になる中間像を形成する部分の近傍におけるゴースト対策について説明したが、ゴースト発生は、このような箇所に限られず、例えば導光部材の側面形成部分といった映像光の有効光束成分の導光には寄与しない部分においても発生し得る。このような導光には寄与しない部分では、映像光のうち不要な成分や外界光の成分が反射や散乱をことでゴーストを発生させる要因になる場合があると考えられる。本実施形態では、導光部材の側面形成部分等において意図しない反射や散乱をしても観察者の眼に到達させずゴーストとして認識されないものとしている。
図4(A)は、図3(B)に対応する図であり、本実施形態の虚像表示装置100による不要光の処理について説明するための模式的な図である。なお、図4(B)及び4(C)は、比較例の図である。図4(A)等は、導光部材10の断面形状を台形状で示している点においては、図3(B)と共通するが、導光部材10における種々の箇所での断面の様子を模式的に示す図であり、各部を必ずしも正確に示すものではない点においては、図3(B)と異なる。まず、図4(A)において、導光部材10のうち、有効光束導光部DPは、断面視において台形状であり中心側に形成されるものとして示し、有効光束導光部DPの周辺側に形成される周辺領域形成部EPは、断面視において三角形状であるものとして示している。また、台形状で示される各面のうち眼EYに対向する面について、有効光束導光部DPの表面を有効光束の導光に寄与する有効光束導光面DP1の範囲を双方向矢印で示すものとする。有効光束導光面DP1を延長させた面であり、周辺領域形成部EPの表面である面を、先と同様に拡張面ES1,ES2とする。以上の図4(A)に示す有効光束導光面DP1や拡張面ES1,ES2は、図3(B)の場合と同様に、第4面S14や第4面S14を延長して設けられる拡張面を示すものと捉えることもできるが、図4(A)ではこれに限らず、他の面、例えば有効光束導光面DP1を第1面S11とし、拡張面ES1,ES2を第1面S11延長して設けられる拡張面を示すものと捉えることもできる。ただし、既述のように、図4(A)における有効光束導光面DP1や拡張面ES1,ES2は、模式的に示すものであり、図3(B)のように眼EYの直近に配置されていない場合を示すこともあり、図3(B)と異なり眼EYの直近に配置される面を示すこともあり、有効光束導光部DPを構成する種々の面を示すものである。いずれの場合であっても、最終的に不要光を眼EYに到達させない構造となっていることが重要である。
また、図4(A)において、拡張面ES1,ES2に交差する面であり、映像光GLの導光に寄与しない面を側面(側面領域)SS1,SS2とする。さらに、側面SS1,SS2等の側面領域を含む部分を側面形成部分SPとする。図示の場合、周辺領域形成部EPは、有効光束導光部DPと側面形成部分SPとの間に介在するように形成されるものとなっている。
側面形成部分SPの表面である側面SS1,SS2は、導光部材10を構成する複数面の一部であるが、例えば、図2(B)における第1の側面10eや第2の側面10f等に相当する。ただし、側面SS1,SS2も側面10e,10fに限らず、導光部材10を構成する面であり映像光GLの導光に寄与しない種々の面を示すものである。
以下、図4(A)に示す導光部材10における不要光の処理について説明する。映像光や外界光に起因する成分のうち視認されない不要光の成分として、例えば不要光成分EE1のように拡張面ES1と側面SS1との境界部分EG1を通る成分は、境界部分EG1において、拡散して拡散光DL1を生じさせる。これは、境界部分EG1が例えば微小な曲面部分を有する領域であること等による。このような拡散光DL1の成分が仮に、観察者の眼EYに到達するとゴースト光として認識されることになる。これに対して、本実施形態では、拡張面ES1を十分に形成させることで、拡散光DL1が眼EYに届かないようになっている。また、不要光の成分として、例えば不要光成分EE2のように側面SS2において反射するものも考えられる。特に、図示の場合のように側面SS2に対して非常に浅い角度で入射する成分の場合、その大半が反射することになるため、仮にこのような反射光RL1が眼EYに到達すると、ゴーストとして認識されやすいものになる。本実施形態では、十分な大きさの周辺領域形成部EPを有効光束導光部DPと側面形成部分SPとの間に介在するように設けていることで、反射光RL1のようなゴースト光となり得る成分が眼EYに届かないようになっている。
これに対して、図4(B)に示す比較例の場合のように、周辺領域形成部EPを設けないすなわち周辺領域形成部EPや、これにより形成される拡張面ES1等が存在しないものとすると、不要光成分EE1のように有効光束導光面DP1と側面SS1との境界部分EG1を通る成分が、境界部分EG1において拡散した場合に、拡散光DL1がゴースト光として視認される可能性がある。また、不要光成分EE2のように側面に対して浅い角度で入射し反射した成分である反射光RL1も図4(A)の周辺領域形成部EPのような緩衝となる部分がないことで眼EYに到達してしまう可能性がある。また、図4(C)に示す別の比較例の場合のように、遮光部材BBを設けることで、図中に例示する外界からの不要光成分EE1,EE2のように適切に遮光される成分も存在するが、不要光成分EE3のように、外界からの成分が遮光部材BBの側面において反射されてゴーストの発生原因となる反射光RL2を生じさせる可能性がある。また、図示を省略するが、設ける場所によっては遮光部材BBが映像光の有効光束の一部を遮光してしまう場合も生じ得る。特に、シースルーの場合、映像光のみならず外界光も通過させる必要があるが、遮光部材BBが外界光を遮蔽してしまう可能性が考えられる。
なお、以上の比較例におけるゴーストの発生状態については、例えば図5(A)に示すように、視認されるべき映像範囲SC1の外側の範囲であって視認可能な範囲に三日月状に形成されるゴースト像GSが発生するものがある。また、ゴースト像GSの出現の仕方については、常に視認される場合のほか、図5(B)に示すように、観察者の眼EYが映像範囲SC1の中心に向いている正面視の状態においては、ゴースト像GSが視認されていなくても、図5(C)に示すように、図5(B)の状態から視線を変えることでゴースト像GSが視認されるという場合がある。特に、シースルーの場合、観察者は、外界を見る等のために視線を動かすことが考えられるため、このような事態が生じやすい。これに対して、本実施形態では、必要に応じて十分な大きさ、形状の周辺領域形成部EPを形成しておくことで、反射や拡散による不要光が発生する場合であっても、これらの成分が観察者の眼EYに届かないようにすることができる。さらに、観察者の眼EYの姿勢が変わった場合も考慮してこのような場合であっても、ゴーストを発生させない状態を維持できる。なお、以上のような周辺領域形成部EPの形成について、別の見方として、図4(A)において一部拡大図に示すように、有効光束導光面DP1及び拡張面ES2(ES1)に対する側面SS2(SS1)の角度を変える(面を起こす)ことで、周辺領域形成部EPを形成させているものとしてもよい。つまり、仮に周辺領域形成部EPが無いとした場合の仮想面XXの有効光束導光面DP1に対する角度βを大きくして角度αとするように側面SS2(SS1)を形成させることでゴーストの発生を抑制していると捉えることもできる。
以上のように、本実施形態の虚像表示装置100では、映像光を導光させる導光部材10において、映像光の有効光束を通過させるべき領域である有効光束導光部DPの外側に延長された周辺領域形成部EPが設けられていることで、例えば導光部材10の側面形成部分SPといった箇所においてが意図しない反射や散乱によって生じた成分に起因してゴースト光を発生させる可能性があっても、有効光束導光部DPから側面形成部分SPを離隔することができる。これにより、映像光と外界光とを同時に視認させるといったゴースト光が発生しやすい状況下においても、適切にゴースト対策を行うことが可能になり、良好な映像光を視認させるとともに、外界像の認識も良好なものにできる。従って、意図しない反射や散乱が生じても、有効光束導光面DP1から離隔された位置に発生することになるので、有効光束導光面DP1側に入ってゴースト光となることなく排除される。
以下、変形例の虚像表示装置について説明する。図6(A)は、変形例の虚像表示装置について説明するための模式的な図である。なお、図6(B)は、比較例の図である。本変形例では、導光部材10において、図4(A)と同様の構成であって、さらに、側面形成部分SPの側面SS1,SS2が光沢面になっている。より具体的には、側面SS1,SS2を、他の表面である第1面S11等と同様に、ハードコート層で被覆することもできる。側面SS1,SS2がハードコートにより平滑化されて形成されることにより、表面の粗さを、断面曲線の最大谷深さPvが50μm以下であり、中心線平均粗さRaが5μm以下とすることができる。この場合、例えば不要光成分EE1は、側面SS1において拡散することなく反射される。このため、例えば、図示において外界光である不要光成分EE1は、側面SS1において反射されて発生した反射光RL3が眼EYに到達することはない。なお、この場合、矢印AA1に示すように、観察者が側面SS1側に視線を向けたとしても、不要光成分EE1によってゴースト等が認識されることはなく、暗く見えることになる。また、例えば、不要光成分EE2は、側面SS2において反射され反射光RL4を発生させるが、拡散しないので、周辺領域形成部EPを十分な大きさで設けることで、反射光RL4が眼EYに到達することが無いようにすることが可能である。これに対して図6(B)に示す比較例のように、側面SS1,SS2が例えばシボ加工等された面であると、不要光成分EE1や不要光成分EE2が側面SS1,SS2に入射した後、ある程度の広がりを持って拡散した成分DLLが生じ、この成分が眼EYに到達することでゴースト光として認識される可能がある。
本変形例では、ハードコート等によって、映像光を導光させる有効光束導光面DP1等の面のみならず側面SS1,SS2についても平滑化された面としておくことにより、光の拡散を抑制することで、ゴーストの発生を低減している。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であるため、全体及び各部の説明を省略する。
図7(A)は、本実施形態に係る虚像表示装置200の本体部分の平面図における有効光束が通過する範囲すなわち有効光束導光部DPの様子について一例を示す図である。また、図7(B)は、本体部分の正面図における有効光束の様子を示す図である。
本実施形態では、中間像を形成する部分の近傍である領域MAのあたりにおいても、導光部材10にくびれた部分を形成することなく略一定の厚さを維持した形状としている点において、第1実施形態の場合(図2(B)又は図3(A)参照)と異なっている。本実施形態の場合も、有効光束導光部DPの外側に延長された部分として周辺領域形成部EPを有することで、適切にゴースト対策を行うことが可能になり、良好な映像光を視認させるとともに、外界像の認識も良好なものにできる。
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態等に係る虚像表示装置100の変形例であるため、全体及び各部の説明を省略する。
図8(A)は、本実施形態に係る虚像表示装置の導光部材10を裏側すなわち観察者側から見た様子を示す図であり、8(B)は、導光部材10を平面視した図である。なお、図9は、図8の導光部材10を用いた虚像表示装置における光路についての一例を示す図である。図8等に示すように、本実施形態では、周辺領域形成部EPが上下方向すなわちY方向についてのみならず、左右方向すなわちX方向についても設けられている点において、上記各実施形態と異なっている。以下、周辺領域形成部EP等についてより具体的に説明する。まず、図8(A)において、斜線で示す領域の部分が、有効光束導光部DPの有効光束導光面DP1、すなわち、第1面S11や第4面S14等であり、この周囲に周辺領域形成部EPの拡張面が形成されている。ここでは、特に、有効光束導光面DP1の一部である第4面S14の周囲において周辺領域形成部EPが有する拡張面について示している。具体的には、周辺領域形成部EPは、第4面S14をY方向について連続するように延長(拡張)して設けた連続面である拡張面ES1,ES2を有し、さらに、導光方向に沿ったX方向(図示の場合、−X側)について連続するように延長(拡張)して設けた連続面である拡張面ESkを有している。つまり、導光方向に垂直なY方向のみならずX方向についても拡張面が十分な大きさで設けられている。これにより、導光部材10での映像光の導光において、X方向やY方向、或いはこれらの双方の方向の成分を含む種々の方向について発生し得る不要光成分の処理が可能となっている。
なお、図において、導光部材10の根元側に設けられた連結部CPは、導光部材10を投射レンズ30(図2(A)参照)との間での嵌合せを利用した係止によって姿勢のアライメントを可能にする嵌合部である。また、リブ60は、導光部材10をフレーム61(図2(B)参照)に沿って取り付けるための部分である。
本実施形態の場合も、周辺領域形成部EPが十分な大きさで設けられていることで、適切にゴースト対策を行うことが可能になり、良好な映像光を視認させるとともに、外界像の認識も良好なものにできる。特に、本実施形態の場合、種々の方向から発生する不要光成分の処理が可能となる。なお、以上の説明では、有効光束導光面DP1として第4面S14を対象とし、第4面S14について延長した拡張面ESkが−X側について延長されて設けられるものとしているが、有効光束導光面DP1が第4面S14以外の拡張面として設けられる場合も考えられ、また、延長される方向についても−X方向に限らず、+X方向に延長される場合もある。
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記において、導光部材10を構成する面のうち、拡張面ES1等の粗さを、有効光束導光面の粗さよりも大きいものとすることができる。一般に、有効光束導光面DP1は、より高い面精度(例えば、断面曲線の最大谷深さPv10um以下)が要求される。これに対して、有効範囲外にある拡張面については、不要光の処理が適切に行えれば相対的に面精度が低くても構わない(例えば、Pv50um以下)。この場合、拡張面の粗さを有効光束導光面の粗さほど厳しくすることを要しないことで、例えば導光部材10の本体部分10sを成形するための金型作製を比較的容易にできる。
上記の説明では、ハーフミラー層(半透過反射膜)15が横長の矩形領域に形成されるとしたが、ハーフミラー層15の輪郭は用途その他の使用に応じて適宜変更することができる。また、ハーフミラー層15の透過率や反射率も用途その他に応じて変更することができる。
上記の説明では、映像表示素子82における表示輝度の分布を特に調整していないが、位置によって輝度差が生じる場合等においては、表示輝度の分布を不均等に調整することができる。
上記の説明では、画像表示装置80として、透過型の液晶表示デバイス等からなる映像表示素子82を用いているが、画像表示装置80としては、透過型の液晶表示デバイス等からなる映像表示素子82に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス等からなる映像表示素子82に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置80として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。
上記実施形態では、透過型の液晶表示デバイス等からなる画像表示装置80を用いているが、これに代えて走査型の画像表示装置を用いることもできる。
上記の説明では、一対の表示装置100A,100Bを備える虚像表示装置100について説明しているが、単一の表示装置とできる。つまり、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ投射透視装置70及び画像表示装置80を設けるのではなく、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ投射透視装置70及び画像表示装置80を設け、画像を片眼視する構成にしてもよい。
上記の説明では、一対の表示装置100A,100BのX方向の間隔について説明していないが、両表示装置100A,100Bの間隔は固定に限らず、機械機構等によって間隔の調整が可能である。つまり、両表示装置100A,100BのX方向の間隔は、着用者の眼幅等に応じて調整することができる。
上記の説明では、ハーフミラー層15が単なる半透過性の膜(例えば金属反射膜や誘電体多層膜)であるとしたが、ハーフミラー層15は、平面又は曲面のホログラム素子に置き換えることができる。
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
上記の説明では、導光部材10の第1面S11及び第3面S13において、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により映像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明の虚像表示装置100における全反射については、第1面S11又は第3面S13上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、上記第1面S11又は第3面S13の全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1面S11又は第3面S13の全体又は一部がコートされていてもよい。
上記の説明では、導光部材10等が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材10を縦方向に延びるように配置することもできる。この場合、光学部材110は、直列的ではなく並列的に平行配置された構造を有することになる。