JP6803787B2 - 溶接継手の破壊再現方法、溶接継手の寿命予測方法、溶接継手の破壊再現装置及び溶接継手の寿命予測装置 - Google Patents

溶接継手の破壊再現方法、溶接継手の寿命予測方法、溶接継手の破壊再現装置及び溶接継手の寿命予測装置 Download PDF

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Description

本発明は、異なる金属同士を接続した溶接継手の破壊再現方法、溶接継手の寿命予測方法、溶接継手の破壊再現装置及び溶接継手の寿命予測装置に関する。
火力発電用のボイラを備える発電設備は、ステンレス鋼、又は高クロム鋼等の高温な環境下で使用可能であるが高コストな配管と、低合金鋼等の高温な環境下では使用不可能であるが低コストな配管とを使用している。このために、前述した発電設備は、異なる金属により構成された配管同士を接続した溶接継手を備える。異なる金属により構成された配管同士を接続した溶接継手は、異なる金属同士の界面における元素の移行による材料の劣化、及び、異なる金属同士の線膨張係数及びヤング率の差などを原因とする内部応力により、寿命が低下することが知られている。
一般的には直径数mmの丸棒試験片を取り出し、高温に加熱して軸力を付与し、溶接継手の寿命を予測する方法が用いられている。異なる金属同士の溶接方法として、特許文献1に記載の溶接方法がある。また、異なる金属により構成された配管同士を接続した溶接継手の寿命を予測する方法として、特許文献2に記載の方法がある。
特開平5−57450号公報 特開2015−188928号公報
従来から用いられてきた溶接継手の寿命を予測する方法は、いずれか一方の配管の母材部が破壊されてしまう。一方、前述した発電設備に用いられる溶接継手は、いずれか一方の配管と配管同士を接続する溶接材との界面が破壊することが知られている。界面において溶接継手が破壊されることは、異なる金属同士の線膨張係数及びヤング率の差などを原因とする内部応力が界面に集中することが原因と推測される。このために、従来から用いられてきた溶接継手の寿命を予測する方法は、溶接継手が破壊される位置が実際に発電設備に用いられる際に溶接継手が破壊される位置と異なるために、溶接継手の寿命の予測精度が低下していることが考えられる。
本発明は上述した課題を解決するものであり、溶接継手の寿命の予測精度の低下を抑制することができる溶接継手の破壊再現方法、溶接継手の寿命予測方法、溶接継手の破壊再現装置及び溶接継手の寿命予測装置を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、第1の発明の溶接継手の破壊再現方法は、第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属により構成された第2の金属部材と、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とを接合した溶接材とを備える溶接継手の破壊再現方法であって、前記溶接継手に前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが互いに離れる方向の軸力を付与した状態で、前記溶接継手を常温よりも高い高温負荷温度まで加熱して所定時間維持する高温負荷ステップと、前記溶接継手を前記高温負荷温度よりも低い冷却温度まで冷ます冷却ステップとを、前記溶接継手が破壊されるまで交互に実施することを特徴とする。
この溶接継手の破壊再現方法は、軸力を付与した状態で高温負荷ステップと冷却ステップとを溶接継手が破壊されるまで交互に実施するので、高温負荷ステップにおける溶接継手内の内部応力が低下するまでに冷却ステップに移行することとなり、高温負荷ステップにおける溶接継手内の内部応力が、破壊されるまで高温負荷ステップを維持する場合よりも低下することを抑制することができる。この結果、溶接継手の破壊再現方法は、いずれか一方の金属部材と溶接材との界面に内部応力を集中させることができ、いずれか一方の金属部材と溶接材との界面で、溶接継手を破壊させることができる。
また、第2の発明の溶接継手の破壊再現方法は、第1の発明において、互いに材料の異なる溶接材を備える複数の溶接継手が破壊されるまでの前記高温負荷温度の累積時間に基づいて、前記溶接材の材料を評価することを特徴とする。
この溶接継手の破壊再現方法は、互いに材料の異なる溶接材を備える複数の溶接継手が破壊されるまでの高温負荷温度の累積時間に基づいて溶接材の材料を評価するので、発電設備に実際に用いられる溶接継手の溶接材の材料を適切なものとすることができる。
第3の発明の溶接継手の寿命予測方法は、第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属により構成された第2の金属部材と、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とを接合した溶接材とを備える溶接継手の寿命予測方法であって、前記溶接継手に前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが互いに離れる方向の軸力を付与した状態で、前記溶接継手を常温よりも高い高温負荷温度まで加熱して所定時間維持する高温負荷ステップと、前記溶接継手を前記高温負荷温度よりも低い冷却温度まで冷ます冷却ステップとを、前記溶接継手が破壊されるまで交互に実施する破壊再現工程と、前記溶接継手が破壊されるまでの前記高温負荷温度の累積時間に基づいて、前記溶接継手の設置される環境下での温度における寿命を算出する寿命算出工程と、を含むことを特徴とする。
この溶接継手の寿命予測方法は、軸力を付与した状態で高温負荷ステップと冷却ステップとを溶接継手が破壊されるまで交互に実施するので、高温負荷ステップにおける溶接継手内の内部応力が低下するまでに冷却ステップに移行することとなり、高温負荷ステップにおける溶接継手内の内部応力が、破壊されるまで高温負荷ステップを維持する場合よりも低下することを抑制することができる。この結果、溶接継手の寿命予測方法は、いずれか一方の金属部材と溶接材との界面に内部応力を集中させることができ、いずれか一方の金属部材と溶接材との界面で、溶接継手を破壊させることができる。また、溶接継手の寿命予測方法は、高温負荷温度の累積時間に基づいて、溶接継手が実際に設置される環境下での寿命を算出する。
また、第4の発明の溶接継手の寿命予測方法は、第3の発明において、前記寿命算出工程は、前記累積時間と前記高温負荷温度とからラーソンミラーパラメータ法を用いて、前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出することを特徴とする。
この溶接継手の寿命予測方法は、ラーソンミラーパラメータ法を用いるので、溶接継手が実際に設置される環境下での寿命を正確に算出することができる。
また、第5の発明の溶接継手の寿命予測方法は、第3の発明において、前記破壊再現工程は、前記高温負荷ステップの前記高温負荷温度を溶接継手毎に異ならせて、複数の溶接継手を破壊し、前記寿命算出工程は、複数の溶接継手の前記累積時間と前記高温負荷温度とから前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出することを特徴とする。
この溶接継手の寿命予測方法は、溶接継手毎に異なる高温負荷温度で高温負荷ステップを実施して複数の溶接継手を破壊した時の累積時間と高温負荷温度とを用いるので、溶接継手が実際に設置される環境下での寿命を正確に算出することができる。
また、第6の発明の溶接継手の寿命予測方法は、第3の発明において、前記破壊再現工程は、前記溶接材と前記金属部材との界面における欠陥の大きさの異なる複数の溶接継手を破壊し、前記寿命算出工程は、複数の溶接継手の前記累積時間に基づいて算出した寿命と前記欠陥の大きさと予測対象の溶接継手の前記欠陥の大きさとから前記予測対象の溶接継手の寿命を算出することを特徴とする。
この溶接継手の寿命予測方法は、溶接継手毎に異なる大きさの欠陥が界面に設けられた複数の溶接継手を破壊した時の累積時間に基づいて算出した寿命と欠陥の大きさとを用いるので、溶接継手の欠陥の大きさに応じた実際に設置される環境下での寿命を正確に算出することができる。
第7の発明の溶接継手の破壊再現装置は、第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属により構成された第2の金属部材と、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とを接合した溶接材とを備える溶接継手の破壊再現装置であって、前記溶接継手に前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが互いに離れる方向の軸力を付与する軸力付与部と、前記溶接継手を加熱する加熱部と、前記溶接継手の温度を測定する温度測定部と、前記溶接継手に前記軸力付与部が所定強さの前記軸力を付与した状態で、前記温度測定部の測定結果に基づいて、前記加熱部を制御して、前記溶接継手を常温よりも高い高温負荷温度まで加熱して所定時間維持する高温負荷ステップと、前記溶接継手を前記高温負荷温度よりも低い冷却温度まで冷ます冷却ステップとを、前記溶接継手が破壊されるまで交互に実施する加熱部制御部と、を備えることを特徴とする。
この溶接継手の破壊再現装置は、軸力を付与した状態で高温負荷ステップと冷却ステップとを溶接継手が破壊されるまで交互に実施するので、高温負荷ステップにおける溶接継手内の内部応力が低下するまでに冷却ステップに移行することとなり、高温負荷ステップにおける溶接継手内の内部応力が、破壊されるまで高温負荷ステップを維持する場合よりも低下することを抑制することができる。この結果、溶接継手の破壊再現装置は、いずれか一方の金属部材と溶接材との界面に内部応力を集中させることができ、いずれか一方の金属部材と溶接材との界面で、溶接継手を破壊させることができる。
また、第8の発明の溶接継手の破壊再現装置は、第7の発明において、互いに材料の異なる溶接材を備える複数の溶接継手が破壊されるまでの前記高温負荷温度の累積時間に基づいて、各溶接継手の溶接材を評価する評価部を備えることを特徴とする。
この溶接継手の破壊再現装置は、互いに材料の異なる溶接材を備える複数の溶接継手が破壊されるまでの高温負荷温度の累積時間に基づいて溶接材の材料を評価するので、発電設備に実際に用いられる溶接継手の溶接材の材料を適切なものとすることができる。
第9の発明の溶接継手の寿命予測装置は、第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属により構成された第2の金属部材と、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とを接合した溶接材とを備える溶接継手の寿命予測装置であって、前記溶接継手に前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが互いに離れる方向の軸力を付与する軸力付与部と、前記溶接継手を加熱する加熱部と、前記溶接継手の温度を測定する温度測定部と、前記溶接継手に前記軸力付与部が所定強さの前記軸力を付与した状態で、前記温度測定部の測定結果に基づいて、前記加熱部を制御して、前記溶接継手を前記溶接継手が設置される環境下での温度よりも高い高温負荷温度まで加熱して所定時間維持する高温負荷ステップと、前記溶接継手を前記高温負荷温度よりも低い冷却温度まで冷ます冷却ステップとを、前記溶接継手が破壊されるまで交互に実施する加熱部制御部と、前記溶接継手が破壊されるまでの前記高温負荷温度の累積時間に基づいて、前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出する寿命算出部と、を備えることを特徴とする。
この溶接継手の寿命予測装置は、軸力を付与した状態で高温負荷ステップと冷却ステップとを溶接継手が破壊されるまで交互に実施するので、高温負荷ステップにおける溶接継手内の内部応力が低下するまでに冷却ステップに移行することとなり、高温負荷ステップにおける溶接継手内の内部応力が、破壊されるまで高温負荷ステップを維持する場合よりも低下することを抑制することができる。この結果、溶接継手の寿命予測方法は、いずれか一方の金属部材と溶接材との界面に内部応力を集中させることができ、いずれか一方の金属部材と溶接材との界面で、溶接継手を破壊させることができる。また、溶接継手の寿命予測装置は、高温負荷温度の累積時間に基づいて、溶接継手が実際に設置される環境下での寿命を算出する。
また、第10の発明の溶接継手の寿命予測装置は、第9の発明において、前記寿命算出部は、前記累積時間と前記高温負荷温度とからラーソンミラーパラメータ法を用いて、前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出することを特徴とする。
この溶接継手の寿命予測装置は、ラーソンミラーパラメータ法を用いるので、溶接継手が実際に設置される環境下での寿命を正確に算出することができる。
また、第11の発明の溶接継手の寿命予測装置は、第9の発明において、前記加熱部制御部は、前記高温負荷ステップの前記高温負荷温度を溶接継手毎に異ならせて、複数の溶接継手を破壊し、前記寿命算出部は、複数の溶接継手の前記累積時間と前記高温負荷温度とから前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出することを特徴とする。
この溶接継手の寿命予測装置は、溶接継手毎に異なる高温負荷温度で高温負荷ステップを実施して複数の溶接継手を破壊した時の累積時間と高温負荷温度とを用いるので、溶接継手が実際に設置される環境下での寿命を正確に算出することができる。
また、第12の発明の溶接継手の寿命予測装置は、第9の発明において、前記溶接材と前記金属部材との界面における欠陥の大きさの測定する欠陥測定部を備え、前記加熱部制御部は、前記溶接材と前記金属部材との界面における欠陥の大きさの異なる複数の溶接継手を破壊し、前記寿命算出部は、複数の溶接継手の前記累積時間に基づいて算出した寿命と前記欠陥の大きさと予測対象の溶接継手の前記欠陥の大きさとから前記予測対象の溶接継手の寿命を算出することを特徴とする。
この溶接継手の寿命予測装置は、溶接継手毎に異なる大きさの欠陥が界面に設けられた複数の溶接継手を破壊した時の累積時間に基づいて算出した寿命と欠陥の大きさとを用いるので、溶接継手の欠陥の大きさに応じた実際に設置される環境下での寿命を正確に算出することができる。
本発明によれば、溶接継手の寿命の予測精度の低下を抑制することができる。
図1は、実施形態1に係る溶接継手の寿命予測装置の概略図である。 図2は、図1に示された溶接継手の寿命予測装置の寿命の予測対象の溶接継手の断面図である。 図3は、図1に示された溶接継手の寿命予測装置の破壊再現工程において溶接継手に付与する温度を示す図である。 図4は、図3に示された高温負荷温度を維持する所定時間の根拠を示す図である。 図5は、実施形態1に係る溶接継手の寿命予測方法の工程図である。 図6は、図5に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程で算出された寿命の一例を示す図である。 図7は、図5に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程で記憶された溶接材の材料毎の累積時間の一例を示す図である。 図8は、実施形態2に係る溶接継手の寿命予測方法の工程図である。 図9は、実施形態2に係る溶接継手の寿命予測装置の破壊再現工程において溶接継手に付与する温度を示す図である。 図10は、図8に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程で算出された寿命の一例を示す図である。 図11は、実施形態3に係る溶接継手の寿命予測装置の概略図である。 図12は、実施形態3に係る溶接継手の寿命予測方法の第1の試験体である溶接継手の界面の断面図である。 図13は、実施形態3に係る溶接継手の寿命予測方法の第2の試験体である溶接継手の界面の断面図である。 図14は、実施形態3に係る溶接継手の寿命予測方法の工程図である。 図15は、図14に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程で算出された予測対象の溶接継手の寿命の一例を示す図である。 図16は、図14に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程内の工程図である。 図17は、実施形態4に係る溶接継手の寿命予測装置の概略図である。
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る溶接継手の寿命予測装置の概略図である。図2は、図1に示された溶接継手の寿命予測装置の寿命の予測対象の溶接継手の断面図である。図3は、図1に示された溶接継手の寿命予測装置の破壊再現工程において溶接継手に付与する温度を示す図である。図4は、図3に示された高温負荷温度を維持する所定時間の根拠を示す図である。
実施形態1に係る溶接継手の寿命予測装置(以下、寿命予測装置と記す)1は、図2に示す溶接継手200を実際に設置された環境下で破壊される状態を再現して、溶接継手200の寿命LT(図6に示す)を予測する装置である。
寿命予測装置1の寿命LTの予測対象である溶接継手200は、火力発電用のボイラを備える発電設備に用いられる。溶接継手200は、図2に示すように、金属により構成された第1の金属部材である第1の配管201と、第1の配管201と異なる金属により構成された第2の金属部材である第2の配管202と、第1の配管201と第2の配管202とを接合した溶接材203とを備える。第1の配管201と第2の配管202とは、ステンレス鋼、低合金鋼、又は高クロム鋼のうちいずれかにより構成される。実施形態1において、第1の配管201は、ステンレス鋼であるSUS347により構成され、第2の配管202は、高クロム鋼であるSTBA28により構成されている。SUS347及びSTBA28は、JIS(日本工業規格)により規定されたものである。
溶接材203は、一旦溶解された後、固化して、第1の配管201と第2の配管202とを接合する。実施形態1において、溶接材203は、ニッケルをベースとし、鉄、クロム、ニオブ、モリブデン等を含んだ金属である。なお、実施形態1において、溶接継手200は、配管201,202同士を接合したものであるが、本発明では、配管201,202に限らず金属により構成された各種の部材同士を接合したものでも良い。
溶接継手200は、発電設備に設置された際に、配管201,202及び溶接材203の線膨張係数及びヤング率の差により内部応力が配管201,202と溶接材203との界面204に集中する。このために、溶接継手200は、発電設備に設置された際に、経年劣化などにより、配管201,202と溶接材203との界面204が破断するなどの破壊が生じることがある。
実施形態1に係る寿命予測装置1は、溶接継手200の界面204を破断させて、溶接継手200を発電設備に設置された際の実際に破壊される状態を再現する破壊再現装置でもあり、溶接継手200が破壊されるまでの寿命LTを予測する装置である。寿命予測装置1は、図1に示すように、第1保持部10と、第2保持部20と、軸力付与部30と、加熱部40と、温度測定部50と、制御装置100とを備える。
第1保持部10は、溶接継手200の第1の配管201を保持する。第2保持部20は、溶接継手200の第2の配管202を保持する。軸力付与部30は、溶接継手200に第1の配管201と第2の配管202とが互いに離れる方向の軸力を付与するものである。実施形態1において、軸力付与部30は、シリンダ31と、シリンダ31から伸縮自在なロッド32とを備えた油圧シリンダである。シリンダ31は、第1保持部10とベース11を介して固定されている。ロッド32は、棒状に形成され、長手方向に沿ってシリンダ31から伸縮する。ロッド32は、溶接継手200の配管201,202と平行に配置され、第2保持部20に固定されている。軸力付与部30は、シリンダ31内に作動油が供給されることにより、ロッド32を伸縮する。軸力付与部30は、シリンダ31内に供給される作動油の圧力が変更されることで、溶接継手200に付与する軸力を変更する。
加熱部40は、溶接継手200を加熱するものである。実施形態1において、加熱部40は、コイル41と、交流電源42とを備える。コイル41は、内側に溶接継手200を通し、溶接継手200と平行に配置されている。また、溶接継手200は、コイル41の中央に配置される。交流電源42は、コイル41に交流電流に流す。加熱部40は、交流電源42からの交流電流をコイル41に流すことで、誘導加熱により溶接継手200を加熱する。
温度測定部50は、溶接継手200の温度を測定するものである。温度測定部50は、少なくとも一つの温度センサ51を備える。温度センサ51は、測温抵抗体、熱電対、又は放射温度計である。温度測定部50は、測定結果を制御装置100に出力する。
また、寿命予測装置1は、第1保持部10と第2保持部20との相対位置を測定する図示しない変位センサを備える。変位センサは、第1保持部10と第2保持部20との相対位置を測定することで、溶接継手200の軸方向の伸縮量を測定する。変位センサは、測定結果を制御装置100に出力する。
制御装置100は、温度測定部50及び変位センサの測定結果に基づいて、軸力付与部30及び加熱部40を制御するコンピュータである。制御装置100は、加熱部制御部101と、寿命算出部102と、評価部103とを備える。加熱部制御部101は、溶接継手200に軸力付与部30が所定強さの軸力を付与した状態で、温度測定部50の測定結果に基づいて、加熱部40を制御する。溶接継手200に軸力付与部30が付与する軸力の所定強さは、溶接継手200が発電設備に設置された環境下での溶接継手200に実際に作用する軸力と同じ強さである。実施形態1において、軸力は、10MPa以上でかつ100MPa以下程度である。
加熱部制御部101は、加熱部40を制御して、図3に示すように、溶接継手200を高温負荷温度TMまで加熱して所定時間t維持する高温負荷ステップST21と、溶接継手200を高温負荷温度TMよりも低い冷却温度TCまで冷ます冷却ステップST23とを溶接継手200が破壊されるまで交互に実施する。高温負荷温度TMは、溶接継手200の破壊を促進するために、発電設備に設置された溶接継手200に作用する温度と同じか高い温度である。なお、図3の横軸は、時間を示し、縦軸は、温度測定部50の測定結果である温度を示す。
なお、溶接継手200を加熱すると、溶接継手200の配管201,202と溶接材203との界面204には、線膨張係数の差等に起因する内部応力が集中する。界面204に集中する内部応力は、図4に示すように、時間の経過とともに、低下する。なお、図4の横軸は、時間を示し、縦軸は、界面に集中する内部応力の強さを示す。
図4に示された内部応力は、高温負荷温度TMを600℃(図4中に四角で示す)とした場合と、高温負荷温度TMを550℃(図4中に菱形で示す)とした場合とのそれぞれにおいて、加熱当初の強さσを以下の式1を用いて算出した。
σ=E(α溶接材−αSTBA28)×ΔT・・・式1
なお、Eは、溶接材203又は第2の配管202を構成するSTBA28のヤング率である。α溶接材は、溶接材203の線膨張係数である。αSTBA28は、第2の配管202を構成するSTBA28の線膨張係数である。ΔTは、常温から600℃又は550℃まで加熱した時の温度差である。また、図4に示された内部応力は、第2の配管202を構成するSTBA28のクリープ速度で低下するものとし、二次クリープ特性をNorton則で与えて算出した。
実施形態1において、高温負荷温度TMと高温負荷温度TMを維持する所定時間tの目安は、例えば界面204に集中する内部応力が、加熱当初の強さσの80%未満にならない値と考えることができる。図4によれば、高温負荷温度TMが、600℃である場合には、所定時間tは、10時間未満にされている。実施形態1において、図3に示すように、高温負荷ステップST21の高温負荷温度TMは、600℃であり、高温負荷温度TMを維持する所定時間tは、10時間が目安となる。また、図中にダイヤ印で示す実機運転温度の応力と同等の応力が維持される時間も目安となる。
また、冷却ステップST23の冷却温度TCは、後の高温負荷ステップST21において界面204に集中する内部応力の強さが加熱当初の強さσと等しくなり、溶接継手200が破壊されるまでの時間が長時間化しない値であるのが望ましい。実施形態1において、冷却温度TCは、加熱部40による溶接継手200の加熱を停止して溶接継手200が1時間程度の自然冷却により冷まされる温度であり、例えば、100℃である。
寿命算出部102は、溶接継手200が破壊されるまでの高温負荷温度TMの累積時間AT(図6に示す)に基づいて、溶接継手200の発電設備に設置される環境下での温度T(図6に示す)における寿命LTを算出する。実施形態1において、寿命算出部102は、高温負荷温度TMの累積時間ATと高温負荷温度TMとからラーソンミラーパラメータ法を用いて、溶接継手200の寿命LTを算出する。
評価部103は、互いに材料の異なる溶接材203を備える複数の溶接継手200が破壊されるまでの高温負荷温度TMの累積時間ATに基づいて、溶接継手200の溶接材203を評価する。評価部103は、溶接継手200の溶接材203を構成する材料と、累積時間ATとを一対一で対応付けて記憶し、累積時間ATに基づいて、各溶接継手200の溶接材203を評価する。
制御装置100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インタフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。制御装置100は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行することにより、寿命予測装置1の軸力付与部30及び加熱部40等の各構成要素を制御する。加熱部制御部101の機能は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行することにより実現される。寿命算出部102及び評価部103の機能は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行して、算出した寿命LT及び累積時間ATを記憶装置に記憶することにより実現される。また、制御装置100は、軸力の値、高温負荷温度TM、冷却温度TC、所定時間t及び溶接材203を構成する材料名を入力するための図示しない入力装置、寿命算出部102が算出した溶接継手200の寿命LT及び評価部103の評価結果を表示する図示しない表示装置を備える。
次に、実施形態1に係る溶接継手の寿命予測方法を説明する。図5は、実施形態1に係る溶接継手の寿命予測方法の工程図である。図6は、図5に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程で算出された寿命の一例を示す図である。図7は、図5に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程で記憶された溶接材の材料毎の累積時間の一例を示す図である。
実施形態1に係る溶接継手の寿命予測方法(以下、寿命予測方法と記す)は、溶接継手200の界面204を破断させて、溶接継手200を発電設備に設置された際の実際に破壊される状態を再現する破壊再現方法でもあり、溶接継手200が破壊されるまでの寿命LTを予測する方法である。寿命予測方法は、図5に示すように、破壊再現工程ST2と、寿命算出工程ST10とを含む。
寿命予測方法では、まず、試験体である溶接継手200を寿命予測装置1に取り付ける(ステップST1)。ステップST1では、溶接継手200の第1の配管201を第1保持部10に保持し、第2の配管202を第2保持部20に保持し、温度測定部50の温度センサ51を溶接継手200に取り付ける。寿命予測方法は、ステップST1の後、破壊再現工程ST2に進む。
破壊再現工程ST2は、溶接継手200に所定強さの軸力を付与した状態で、溶接継手200を高温負荷温度TMまで加熱して所定時間t維持する高温負荷ステップST21と、溶接継手200を冷却温度TCまで冷ます冷却ステップST23とを溶接継手200が破壊されるまで交互に実施する工程である。破壊再現工程ST2では、寿命予測装置1の制御装置100は、軸力付与部30に所定強さの軸力を試験体である溶接継手200に付与させる。
破壊再現工程ST2では、寿命予測装置1の制御装置100の加熱部制御部101は、高温負荷ステップST21を実施し、溶接継手200が破壊されたか否かを判定する(ステップST22)。高温負荷ステップST21では、寿命予測装置1の制御装置100の加熱部制御部101は、温度測定部50の測定結果に基づいて、加熱部40の交流電源42に交流電流をコイル41に供給させる。
実施形態1において、ステップST22では、寿命予測装置1の制御装置100の加熱部制御部101は、変位センサの測定結果に基づいて、溶接継手200が破壊されたか否かを判定する。寿命予測装置1の制御装置100の加熱部制御部101は、配管201,202が互いに所定距離以上離れると、溶接継手200が破壊されたと判定し、配管201,202が互いに所定距離以上離れないと、溶接継手200が破壊されていないと判定する。
寿命予測装置1の制御装置100の加熱部制御部101は、溶接継手200が破壊されていないと判定する(ステップST22:No)と、冷却ステップST23を実施して、高温負荷ステップST21に戻る。なお、冷却ステップST23では、実施形態1において、寿命予測装置1の制御装置100の加熱部制御部101は、加熱部40の交流電源42に交流電流のコイル41への供給を停止させ、温度測定部50の測定結果が冷却温度TCになると、加熱部40の交流電源42に交流電流のコイル41への供給を再開して、高温負荷ステップST21を実施する。寿命予測装置1の制御装置100の加熱部制御部101は、溶接継手200が破壊されたと判定する(ステップST22:Yes)と、寿命算出工程ST10に進む。
寿命算出工程ST10は、溶接継手200が破壊されるまでの高温負荷温度TMの累積時間ATに基づいて、溶接継手200の発電設備に設置される環境下での温度Tにおける寿命LTを算出する工程である。寿命算出工程ST10では、寿命予測装置1の制御装置100の寿命算出部102は、累積時間ATを算出する。実施形態1において、寿命算出部102が算出した累積時間ATは、1000時間である。寿命算出工程ST10では、寿命予測装置1の制御装置100の寿命算出部102は、累積時間ATを高温負荷温度TMである時の溶接継手200の寿命として、ラーソンミラーパラメータ法を用いて、図6に示す温度と寿命との関係R1を求める。寿命予測装置1の制御装置100の寿命算出部102は、図6に示す温度と寿命との関係R1から溶接継手200の発電設備に設置される環境下での温度Tにおける寿命LTを算出する。実施形態1において、寿命算出部102は、発電設備に設置される環境下での温度Tが550℃であるので、溶接継手200の寿命LTを35000時間と算出する。
また、寿命算出工程ST10では、寿命予測装置1の制御装置100の評価部103は、図7に示すように、溶接材203の材料名と累積時間ATとを一対一に対応付けて記憶する。また、寿命算出工程ST10では、寿命予測装置1の制御装置100の評価部103は、複数の溶接材203の材料名と累積時間ATとを対応付けて記憶している場合には、溶接継手200の溶接材203を評価する。
実施形態1に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1は、軸力を付与した状態で高温負荷ステップST21と冷却ステップST23とを溶接継手200が破壊されるまで交互に実施するので、高温負荷ステップST21における溶接継手200内の内部応力が低下するまでに冷却ステップST23に移行することとなり、高温負荷ステップST21における溶接継手200内の内部応力が、破壊されるまで高温負荷ステップST21を維持する場合よりも低下することを抑制することができる。この結果、寿命予測方法及び寿命予測装置1は、いずれか一方の配管201,202と溶接材203との界面204に内部応力を集中させることができ、いずれか一方の配管201,202と溶接材203との界面204で、溶接継手200を破壊させることができる。
また、寿命予測方法及び寿命予測装置1は、高温負荷温度TMの累積時間ATに基づいて、溶接継手200が実際に設置される環境下での寿命LTを算出する。この結果、寿命予測方法及び寿命予測装置1は、溶接継手200の寿命LTの予測精度の低下を抑制することができる。
また、寿命予測方法及び寿命予測装置1は、ラーソンミラーパラメータ法を用いるので、溶接継手200が実際に設置される環境下での寿命LTを正確に算出することができる。また、寿命予測方法及び寿命予測装置1は、互いに材料の異なる溶接材203を備える複数の溶接継手200が破壊されるまでの高温負荷温度TMの累積時間ATに基づいて溶接材203の材料を評価するので、発電設備に実際に用いられる溶接継手200の溶接材203の材料を適切なものとする。
[実施形態2]
次に、図8、図9及び図10を参照して、実施形態2に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明を省略する。図8は、実施形態2に係る溶接継手の寿命予測方法の工程図である。図9は、実施形態2に係る溶接継手の寿命予測装置の破壊再現工程において溶接継手に付与する温度を示す図である。図10は、図8に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程で算出された寿命の一例を示す図である。実施形態2は、寿命予測装置1の構成が実施形態1と同じであるが、寿命予測方法が異なる。
実施形態2に係る寿命予測方法は、図8に示すように、第1の試験体である溶接継手200を寿命予測装置1に取り付け(ステップST1A)、制御装置100の加熱部制御部101が第1の試験体である溶接継手200に実施形態1と同様に破壊再現工程ST2Aを実施した後、寿命算出部102が破壊再現工程ST2Aの高温負荷ステップST21の高温負荷温度TM(以下、符号TM1で記す)の累積時間AT1(図10に示す)を記憶する(ステップST3A)。
その後、寿命予測方法は、第2の試験体である溶接継手200を寿命予測装置1に取り付け(ステップST1B)、制御装置100の加熱部制御部101が第2の試験体である溶接継手200に実施形態1と同様に破壊再現工程ST2Bを実施した後、寿命算出部102が破壊再現工程ST2Bの高温負荷ステップST21の高温負荷温度TM(以下、符号TM2で記す)の累積時間AT2(図10に示す)を記憶する(ステップST3B)。なお、第1の試験体である溶接継手200と、第2の試験体である溶接継手200とは、配管201,202及び溶接材203の構成、材料が互いに同じである。実施形態2に係る寿命予測方法では、加熱部制御部101が、二つの溶接継手200に破壊再現工程ST2A,2Bを実施して破壊するが、本発明では、三つ以上の溶接継手200に破壊再現工程ST2A,2Bを実施して破壊しても良い。
また、実施形態2に係る寿命予測方法の破壊再現工程ST2A,2Bは、高温負荷ステップST21の高温負荷温度TM1,TM2を溶接継手200毎に異ならせる。実施形態2において、寿命予測方法は、第1の試験体に対する破壊再現工程ST2Aの高温負荷ステップST21の高温負荷温度TM1よりも第2の試験体に対する破壊再現工程ST2Bの高温負荷ステップST21の高温負荷温度TM2を高くしている。
実施形態2に係る寿命予測方法は、累積時間AT2を記憶した後(ステップST3B)、寿命算出工程ST10−2を実施する。寿命算出工程ST10−2は、複数の溶接継手200の累積時間AT1,AT2と高温負荷温度TM1,TM2とから溶接継手200の発電設備に設置される環境下での温度Tにおける寿命LTを算出する工程である。
寿命算出工程ST10−2では、寿命予測装置1の制御装置100の寿命算出部102は、各試験体の高温負荷温度TM1,TM2の累積時間AT1,AT2を寿命とし、第1の試験体の累積時間AT1及び高温負荷温度TM1と、第2の試験体の累積時間AT2及び高温負荷温度TM2とから図10に点線で示す高温負荷温度TM1,TM2と、溶接継手200の寿命との関係R2を求める。なお、図10の横軸は、各試験体の高温負荷温度TM1,TM2を示し、縦軸は、溶接継手200の寿命を示す。
寿命算出工程ST10−2では、寿命予測装置1の制御装置100の寿命算出部102は、図10に示す関係R2から溶接継手200の発電設備に設置される環境下での温度Tにおける寿命LTを算出する。
実施形態2に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1は、軸力を付与した状態で高温負荷ステップST21と冷却ステップST23とを溶接継手200が破壊されるまで交互に実施するので、高温負荷ステップST21における溶接継手200内の内部応力が破壊されるまで高温負荷ステップST21を維持する場合よりも低下することを抑制することができる。この結果、寿命予測方法及び寿命予測装置1は、いずれか一方の配管201,202と溶接材203との界面204に内部応力を集中させることができ、いずれか一方の配管201,202と溶接材203との界面204で、溶接継手200を破壊させることができるので、実施形態1と同様に、溶接継手200の寿命LTの予測精度の低下を抑制することができる。
また、実施形態2に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1は、溶接継手200毎に異なる高温負荷温度TM1,TM2で高温負荷ステップST21を実施して複数の溶接継手200を破壊した時の累積時間AT1,AT2と高温負荷温度TM1,TM2とを用いて寿命LTを算出するので、溶接継手200が実際に発電設備に設置される環境下での寿命LTを正確に算出することができる。
[実施形態3]
次に、図11、図12、図13、図14、図15及び図16を参照して、実施形態3に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1−3について説明する。なお、実施形態3では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明を省略する。図11は、実施形態3に係る溶接継手の寿命予測装置の概略図である。図12は、実施形態3に係る溶接継手の寿命予測方法の第1の試験体である溶接継手の界面の断面図である。図13は、実施形態3に係る溶接継手の寿命予測方法の第2の試験体である溶接継手の界面の断面図である。図14は、実施形態3に係る溶接継手の寿命予測方法の工程図である。図15は、図14に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程で算出された予測対象の溶接継手の寿命の一例を示す図である。図16は、図14に示された溶接継手の寿命予測方法の寿命算出工程内の工程図である。
実施形態3に係る寿命予測装置1−3は、図11に示すように、欠陥測定部60を備える。欠陥測定部60は、溶接材203と配管201,202との界面204における図12及び図13に示す欠陥BD1,BD2の大きさL1,L2を測定し、測定結果を制御装置100に出力する。実施形態3において、欠陥BD1,BD2は、界面204に生じる空間(ボイドともいう)である。実施形態3において、欠陥測定部60は、溶接継手200の界面204における欠陥BD1,BD2の大きさL1,L2である欠陥BD1,BD2の溶接継手200の径方向の長さを制御装置100に出力する。なお、実施形態3において、欠陥測定部60は、超音波探傷装置であるが、超音波探傷装置に限定されない。
実施形態3に係る寿命予測方法は、図14に示すように、第1の試験体である溶接継手200を寿命予測装置1に取り付け、欠陥測定部60で第1の試験体である溶接継手200の界面204の欠陥BD1の大きさL1を測定し(ステップST1A)、制御装置100が欠陥BD1の大きさL1を記憶する。制御装置100の加熱部制御部101が第1の試験体である溶接継手200に実施形態1と同様に破壊再現工程ST2Aを実施した後、寿命算出部102が破壊再現工程ST2Aの高温負荷ステップST21の高温負荷温度TMと累積時間ATとに基づいて、実施形態1の寿命算出工程ST10と同様に、溶接継手200の発電設備に設置される環境下での寿命LT1(図15に示す)を算出し、記憶する(ステップST10A)。
その後、実施形態3に係る寿命予測方法は、第2の試験体である溶接継手200を寿命予測装置1に取り付け、欠陥測定部60で第2の試験体である溶接継手200の界面204の欠陥BD2の大きさL2を測定し(ステップST1B)、制御装置100が欠陥BD2の大きさL2を記憶する。制御装置100の加熱部制御部101が第2の試験体である溶接継手200に実施形態1と同様に破壊再現工程ST2Bを実施した後、寿命算出部102が破壊再現工程ST2Bの高温負荷ステップST21の高温負荷温度TMと累積時間ATとに基づいて、実施形態1の寿命算出工程ST10と同様に、溶接継手200の発電設備に設置される環境下での寿命LT2(図15に示す)を算出し、記憶する(ステップST10B)。なお、実施形態3において、ステップST1A及びステップST1Bでは、制御装置100が溶接材203の二つの界面204における欠陥BD1,BD2のうち最大の欠陥BD1,BD2の大きさL1,L2を記憶する。実施形態3に係る寿命予測方法では、加熱部制御部101が、二つの溶接継手200に破壊再現工程ST2A,2Bを実施して破壊するが、本発明では、三つ以上の溶接継手200に破壊再現工程ST2A,2Bを実施して破壊しても良い。
第1の試験体である溶接継手200と、第2の試験体である溶接継手200とは、配管201,202及び溶接材203の構成、材料が互いに同じであるが、界面204における欠陥BD1,BD2の大きさL1,L2が異なる。また、実施形態3において、寿命予測方法は、第1の試験体である溶接継手200の界面204における欠陥BD1の大きさL1よりも第2の試験体である溶接継手200の界面204における欠陥BD2の大きさL2が大きい。
実施形態3に係る寿命予測方法は、第2の試験体である溶接継手200の寿命LT2を算出した後(ステップST10B)、寿命算出工程ST10−3を実施する。寿命算出工程ST10−3は、複数の溶接継手200の累積時間ATに基づいて算出した寿命LT1,LT2と欠陥BD1,BD2の大きさL1,L2と予測対象の溶接継手200の欠陥の大きさL(図15に示す)とから予測対象の溶接継手200の寿命を算出する工程である。
寿命算出工程ST10−3では、寿命予測装置1の制御装置100の寿命算出部102は、第1の試験体の寿命LT1と欠陥BD1の大きさL1と、第2の試験体の寿命LT2と欠陥BD2の大きさL2とから図15に点線で示す欠陥の大きさと溶接継手200の寿命との関係R3を求める(図16中のステップST10−3A)。なお、図15の横軸は、溶接継手200の寿命を示し、縦軸は、各試験体の欠陥BD1,BD2の大きさL1,L2を示す。
寿命算出工程ST10−3では、寿命予測装置1の制御装置100の寿命算出部102は、溶接継手200の定期検査時に予測対象の溶接継手200の界面204における欠陥の大きさLを入力する(ステップST10−3B)と、図15に示す関係R3と予測対象の溶接継手200の界面204における欠陥の大きさLとから溶接継手200の発電設備に設置される環境下での温度Tにおける寿命LTを算出する(ステップST10−3C)。
寿命算出工程ST10−3では、寿命予測装置1の制御装置100の寿命算出部102は、算出した寿命LTが、次回の定期検査まで担保可能であるか否か、即ち、寿命LTが次回の定期検査までの時間よりも長いか否かを判定する(ステップST10−3D)。寿命算出工程ST10−3では、寿命予測装置1の制御装置100の寿命算出部102は、算出した寿命LTが次回の定期検査まで担保可能であると判定する(ステップST10−3D:Yes)と、予測対象の溶接継手200を継続して使用(ステップST10−3E)し、算出した寿命が次回の定期検査まで担保可能ではないと判定する(ステップST10−3D:No)と、予測対象の溶接継手200を新しい溶接継手200に交換する(ステップST10−3F)。
実施形態3に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1−3は、軸力を付与した状態で高温負荷ステップST21と冷却ステップST23とを溶接継手200が破壊されるまで交互に実施するので、高温負荷ステップST21における溶接継手200内の内部応力が破壊されるまで高温負荷ステップST21を維持する場合よりも低下することを抑制することができる。この結果、寿命予測方法及び寿命予測装置1−3は、いずれか一方の配管201,202と溶接材203との界面204に内部応力を集中させることができ、いずれか一方の配管201,202と溶接材203との界面204で、溶接継手200を破壊させることができるので、実施形態1と同様に、溶接継手200の寿命LTの予測精度の低下を抑制することができる。
また、実施形態3に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1−3は、溶接継手200毎に異なる大きさL1,L2の欠陥BD1,BD2が界面204に設けられた複数の溶接継手200を破壊した時の累積時間ATに基づいて算出した寿命LT1,LT2と欠陥BD1,BD2の大きさL1,L2とを用いて予測対象の溶接継手200の寿命LTを算出するので、溶接継手200の欠陥の大きさLに応じた実際に設置される環境下での寿命LTを正確に算出することができる。
なお、実施形態3に係る寿命予測装置1−3は、制御装置100に加え、保持部10,20及び軸力付与部30、加熱部40及び温度測定部50を備えるが、本発明の寿命予測装置1−3は、保持部10,20及び軸力付与部30、加熱部40及び温度測定部50を備えずに、図15に示す関係R3を記憶し、欠陥測定部60の測定結果を入力し、図16のステップST10−3BからステップST10−3Fを実施するコンピュータであっても良い。
[実施形態4]
次に、図17を参照して、実施形態4に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1−4について説明する。なお、実施形態4では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明を省略する。図17は、実施形態4に係る溶接継手の寿命予測装置の概略図である。
実施形態4に係る寿命予測装置1−4は、図17に示すように、冷却ステップST23において、溶接材203を冷却する冷却装置70を備える。実施形態4において、冷却装置70は、気体を溶接材203に吹き付ける装置であるが、水等の液体を吹き付ける装置でも良い。実施形態4に係る寿命予測方法は、冷却ステップST23において、冷却装置70を用いて溶接材203を冷却すること以外、実施形態1の寿命予測方法と同じである。
実施形態4に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1−4は、軸力を付与した状態で高温負荷ステップST21と冷却ステップST23とを溶接継手200が破壊されるまで交互に実施するので、高温負荷ステップST21における溶接継手200内の内部応力が破壊されるまで高温負荷ステップST21を維持する場合よりも低下することを抑制することができる。この結果、寿命予測方法及び寿命予測装置1−4は、いずれか一方の配管201,202と溶接材203との界面204に内部応力を集中させることができ、いずれか一方の配管201,202と溶接材203との界面204で、溶接継手200を破壊させることができるので、実施形態1と同様に、溶接継手200の寿命LTの予測精度の低下を抑制することができる。
また、実施形態4に係る寿命予測方法及び寿命予測装置1−4は、冷却ステップST23において溶接材203を冷却する冷却装置70を備えているので、高温負荷温度TMから冷却温度TCまで冷ますのにかかる所要時間を抑制でき、溶接継手200の寿命LTの予測にかかる所要時間を抑制することができる。
なお、実施形態1から実施形態4において、寿命予測装置1,1−3,1−4は、制御装置100が各構成要素を制御して、破壊再現工程ST2,ST2A,ST2Bにおいて高温負荷ステップST21と冷却ステップST23とを交互に実施し、寿命算出工程ST10,ST10−2,ST10−3において、制御装置100が寿命LTを算出している。しかしながら、本発明の寿命予測方法は、作業員が入力装置を介して寿命予測装置1の各構成要素を制御して、破壊再現工程ST2,ST2A,ST2Bにおいて高温負荷ステップST21と冷却ステップST23とを交互に実施しても良い。また、本発明の寿命予測方法は、寿命算出工程ST10,ST10−2,ST10−3において、作業員が破壊再現工程ST2,ST2A,ST2Bの結果に基づいて、溶接継手200の寿命LTを算出しても良い。
1,1−3,1−4 溶接継手の寿命予測装置(溶接継手の破壊再現装置)
30 軸力付与部
40 加熱部
50 温度測定部
101 加熱部制御部
102 寿命算出部
103 評価部
200 溶接継手
201 第1の配管(第1の金属部材)
202 第2の配管(第2の金属部材)
203 溶接材
AT,AT1,AT2 累積時間
BD1,BD2 欠陥
TM,TM1,TM2 高温負荷温度
TC 冷却温度
t 所定時間
T 設置される環境下での温度
LT 寿命
LT1,LT2 累積時間に基づいて算出した寿命
L,L1,L2 欠陥の大きさ
ST2,ST2A,ST2B 破壊再現工程
ST10,ST10−2,ST10−3 寿命算出工程
ST21 高温負荷ステップ
ST23 冷却ステップ

Claims (12)

  1. 第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属により構成された第2の金属部材と、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とを接合した溶接材とを備える溶接継手の破壊再現方法であって、
    前記溶接継手に前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが互いに離れる方向の軸力を付与した状態で、前記溶接継手を常温よりも高い高温負荷温度まで加熱して所定時間維持する高温負荷ステップと、前記溶接継手を前記高温負荷温度よりも低い冷却温度まで冷ます冷却ステップとを、前記溶接継手が破壊されるまで交互に実施することを特徴とする溶接継手の破壊再現方法。
  2. 互いに材料の異なる溶接材を備える複数の溶接継手が破壊されるまでの前記高温負荷温度の累積時間に基づいて、前記溶接材の材料を評価する請求項1に記載の溶接継手の破壊再現方法。
  3. 第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属により構成された第2の金属部材と、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とを接合した溶接材とを備える溶接継手の寿命予測方法であって、
    前記溶接継手に前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが互いに離れる方向の軸力を付与した状態で、前記溶接継手を常温よりも高い高温負荷温度まで加熱して所定時間維持する高温負荷ステップと、前記溶接継手を前記高温負荷温度よりも低い冷却温度まで冷ます冷却ステップとを、前記溶接継手が破壊されるまで交互に実施する破壊再現工程と、
    前記溶接継手が破壊されるまでの前記高温負荷温度の累積時間に基づいて、前記溶接継手の設置される環境下での温度における寿命を算出する寿命算出工程と、
    を含むことを特徴とする溶接継手の寿命予測方法。
  4. 前記寿命算出工程は、前記累積時間と前記高温負荷温度とからラーソンミラーパラメータ法を用いて、前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出することを特徴とする請求項3に記載の溶接継手の寿命予測方法。
  5. 前記破壊再現工程は、前記高温負荷ステップの前記高温負荷温度を溶接継手毎に異ならせて、複数の溶接継手を破壊し、
    前記寿命算出工程は、複数の溶接継手の前記累積時間と前記高温負荷温度とから前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出することを特徴とする請求項3に記載の溶接継手の寿命予測方法。
  6. 前記破壊再現工程は、前記溶接材と前記金属部材との界面における欠陥の大きさの異なる複数の溶接継手を破壊し、
    前記寿命算出工程は、複数の溶接継手の前記累積時間に基づいて算出した寿命と前記欠陥の大きさと予測対象の溶接継手の前記欠陥の大きさとから前記予測対象の溶接継手の寿命を算出することを特徴とする請求項3に記載の溶接継手の寿命予測方法。
  7. 第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属により構成された第2の金属部材と、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とを接合した溶接材とを備える溶接継手の破壊再現装置であって、
    前記溶接継手に前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが互いに離れる方向の軸力を付与する軸力付与部と、
    前記溶接継手を加熱する加熱部と、
    前記溶接継手の温度を測定する温度測定部と、
    前記溶接継手に前記軸力付与部が所定強さの前記軸力を付与した状態で、前記温度測定部の測定結果に基づいて、前記加熱部を制御して、前記溶接継手を常温よりも高い高温負荷温度まで加熱して所定時間維持する高温負荷ステップと、前記溶接継手を前記高温負荷温度よりも低い冷却温度まで冷ます冷却ステップとを、前記溶接継手が破壊されるまで交互に実施する加熱部制御部と、
    を備えることを特徴とする溶接継手の破壊再現装置。
  8. 互いに材料の異なる溶接材を備える複数の溶接継手が破壊されるまでの前記高温負荷温度の累積時間に基づいて、各溶接継手の溶接材を評価する評価部を備えることを特徴とする請求項7に記載の溶接継手の破壊再現装置。
  9. 第1の金属部材と、前記第1の金属部材と異なる金属により構成された第2の金属部材と、前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とを接合した溶接材とを備える溶接継手の寿命予測装置であって、
    前記溶接継手に前記第1の金属部材と前記第2の金属部材とが互いに離れる方向の軸力を付与する軸力付与部と、
    前記溶接継手を加熱する加熱部と、
    前記溶接継手の温度を測定する温度測定部と、
    前記溶接継手に前記軸力付与部が所定強さの前記軸力を付与した状態で、前記温度測定部の測定結果に基づいて、前記加熱部を制御して、前記溶接継手を前記溶接継手が設置される環境下での温度よりも高い高温負荷温度まで加熱して所定時間維持する高温負荷ステップと、前記溶接継手を前記高温負荷温度よりも低い冷却温度まで冷ます冷却ステップとを、前記溶接継手が破壊されるまで交互に実施する加熱部制御部と、
    前記溶接継手が破壊されるまでの前記高温負荷温度の累積時間に基づいて、前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出する寿命算出部と、
    を備えることを特徴とする溶接継手の寿命予測装置。
  10. 前記寿命算出部は、前記累積時間と前記高温負荷温度とからラーソンミラーパラメータ法を用いて、前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出することを特徴とする請求項9に記載の溶接継手の寿命予測装置。
  11. 前記加熱部制御部は、前記高温負荷ステップの前記高温負荷温度を溶接継手毎に異ならせて、複数の溶接継手を破壊し、
    前記寿命算出部は、複数の溶接継手の前記累積時間と前記高温負荷温度とから前記溶接継手の前記設置される環境下での温度における寿命を算出することを特徴とする請求項9に記載の溶接継手の寿命予測装置。
  12. 前記溶接材と前記金属部材との界面における欠陥の大きさの測定する欠陥測定部を備え、
    前記加熱部制御部は、前記溶接材と前記金属部材との界面における欠陥の大きさの異なる複数の溶接継手を破壊し、
    前記寿命算出部は、複数の溶接継手の前記累積時間に基づいて算出した寿命と前記欠陥の大きさと予測対象の溶接継手の前記欠陥の大きさとから前記予測対象の溶接継手の寿命を算出することを特徴とする請求項9に記載の溶接継手の寿命予測装置。
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