JP2003130789A - 金属材料の寿命評価方法 - Google Patents

金属材料の寿命評価方法

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JP2003130789A
JP2003130789A JP2001330693A JP2001330693A JP2003130789A JP 2003130789 A JP2003130789 A JP 2003130789A JP 2001330693 A JP2001330693 A JP 2001330693A JP 2001330693 A JP2001330693 A JP 2001330693A JP 2003130789 A JP2003130789 A JP 2003130789A
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stress
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Toshihide Igari
敏秀 猪狩
Fumiko Kawashima
扶美子 川島
Nobuyoshi Komai
伸好 駒井
Minoru Inada
実 稲田
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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    • G01MEASURING; TESTING
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    • G01N2291/0258Structural degradation, e.g. fatigue of composites, ageing of oils
    • GPHYSICS
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    • G01N2291/00Indexing codes associated with group G01N29/00
    • G01N2291/04Wave modes and trajectories
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  • Testing Resistance To Weather, Investigating Materials By Mechanical Methods (AREA)
  • Investigating And Analyzing Materials By Characteristic Methods (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属材料の損傷を検出するにあたり、殊に熱
膨張率の異なる金属材料の溶接部において不感帯の存在
する表面近傍の損傷を検出可能とすることにより、金属
材料の表面近傍から内部に亘る損傷を検出可能として、
寿命評価を高度化する。 【解決手段】 金属材料の表面及び内部の損傷を検出し
この検出結果に基づき該金属材料の寿命を評価する金属
材料の寿命を評価するにあたり、金属材料の表面の検査
を、該金属材料の表面の組織検査を行って該組織検査の
結果に基づき金属材料の表面における寿命消費量を推定
することにより行い、前記金属材料の内部の検査をタン
デム探傷法により行い、前記金属材料の表面及び内部の
検出結果に基づき前記損傷の進展度合いの算出を行い、
この算出結果に基づき前記金属材料全体の寿命を推定す
ることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、火力発電プラント
や原子力発電プラントの高温耐圧配管等に用いられ、熱
膨張率の異なる金属材料を溶接接合してなる異材継手を
含む金属材料の寿命評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】火力発電プラントや原子力発電プラント
の高温耐圧配管等に用いられる大口径厚肉配管では、配
管の主として溶接部に発生する亀裂等の損傷は、外表面
の検査だけでは検出することができず、またかかる損傷
は複数のボイドが発生、合体を繰り返し複数の微視また
は巨視亀裂に成長するという形態であり、かかる多場所
発生型の損傷の評価法が必要とされている。そこで、前
記損傷の亀裂高さを求める方法として、超音波探傷法を
用いた端部エコー法が提供された。しかしながら、かか
る端部エコー法では、探触子の走査に伴う波形の微妙な
変化から端部エコーを読み取る必要があるために、検査
員の技量に負うところが多く、得られた検査結果に個人
差が表れ易いという問題点を有している。
【0003】かかる問題点を解消し得る金属材料の損傷
評価方法としての金属材料の余寿命を診断する方法とし
て、金属材料の表面から採取したレプリカによる寿命消
費率に基づく方法と、TOFD法(Time of Flight Dif
fraction Technique)で検出された内部の傷を基に破壊
力学によるクリープ亀裂進展解析による方法と、前記T
OFD法で検出された損傷又は材料の使用条件に基づい
て多場所発生型損傷の進展解析を行う方法とを併用して
おり、これらの方法のうち最も適切であると判断された
方法によって推定した寿命を、クリープ損傷を生じた部
位の余寿命としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記レ
プリカによる寿命消費率に基づく方法は金属内部の損傷
を検出できず、また前記TOFD法による検出方法では
金属内部の損傷は検出可能であるが、かかる方法では金
属の表面近傍など不連続界面の近傍が不感帯となるた
め、これらの領域に存在する損傷の検出が困難であり、
殊に熱膨張率の異なる金属材料の溶接部にあっては表面
近傍に熱膨張率の差による目違いが生じ易いことから前
記TOFD法による検出方法は適用できない。という問
題点を有している。
【0005】本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、
金属材料の損傷を検出するにあたり、殊に熱膨張率の異
なる金属材料の溶接部において不感帯の存在する表面近
傍の損傷を検出可能とすることにより、金属材料の表面
近傍から内部に亘る損傷を検出可能として、寿命評価を
高度化することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明はかかる課題を解
決するため、請求項1記載の発明として、金属材料の溶
接部等の、金属材料の表面及び内部の損傷を検出しこの
検出結果に基づき該金属材料の寿命を評価する金属材料
の寿命評価方法において、前記金属材料の表面の検査
を、該金属材料の表面の組織検査を行って該組織検査の
結果に基づき金属材料の表面における寿命消費量を推定
することにより行い、前記金属材料の内部の検査を、該
金属材料の表面に超音波を発信する送信探触子と該超音
波を受信する受信探触子とを設置して前記送信探触子か
ら超音波を発信し損傷部からの反射波を前記受信探触子
で受信することにより前記金属材料の内部の損傷を検出
することにより行い、前記金属材料の表面及び内部の検
出結果に基づき前記損傷の進展シミュレーションを含む
進展度合いの算出を行い、この算出結果に基づき前記金
属材料全体の寿命を推定することを特徴とする金属材料
の寿命評価方法を提案する。
【0007】かかる発明によれば、金属材料の表面の損
傷を検査する際には、レプリカ法等を用いて金属材料の
表面の組織検査を行い、該表面におけるクリープによる
損傷の有無及び金属組織の劣化の有無により、該表面で
の寿命消費量を算出する。また金属材料の内部を検査す
る際には、タンデム探傷法、即ち前記のように、金属材
料の表面に設置した送信探触子から超音波を発信し損傷
部からの反射波を該金属材料の表面に設置した受信探触
子で受信することにより金属材料の内部の損傷を検出す
る。かかるタンデム探傷法によれば、タンデム基準線に
関して線対称に前記送信探触子及び受信探触子を移動さ
せるので、該タンデム基準線を適切に設定することによ
り、TOFDにおける不感帯の存在する不連続界面近傍
である表面近傍の損傷を確実に検出でき、殊に熱膨張率
の異なる金属材料の溶接部の内部における損傷について
もこれを確実に検出できる。
【0008】従ってかかる発明によれば、金属材料表面
の損傷の検査については前記レプリカ法等を用いての該
表面におけるクリープによる損傷の有無及び金属組織の
劣化の有無により該表面での寿命消費量を算出する方法
で表面の損傷を検出し、また金属材料内部の損傷の検査
については前記タンデム探傷法によって不感帯の存在す
る表面近傍を含む内部全域の損傷を検出し、かかる金属
材料の表面及び内部の検出結果に基づき損傷の進展度合
いを算出し、この算出結果に基づき前記金属材料全体の
寿命を推定することにより、同一材料の溶接部は勿論、
熱膨張率の異なる金属材料の溶接部の損傷についても、
表面から内部に亘る全域の損傷を確実に検出することが
可能となって、寿命評価を高度化することができる。
【0009】請求項2記載の発明は請求項1において、
前記金属材料の表面から試料を採取して化学分析を行
い、当該試料中の不純物量を定量し、この不純物量に基
づき前記金属材料の微視損傷の進展速度を推定すること
を特徴とする。
【0010】かかる発明によれば、金属材料の表面から
試料を採取して化学分析を行い、この試料中の不純物の
定量を行う。金属材料中の損傷量を示すファクターの一
つであるボイド個数密度は時間が経つにつれて増加し、
この増加量は不純物の含有量が高ければ高い程多くなる
ので、金属材料中の不純物の定量を行えば、この不純物
の含有量から金属材料中のボイド個数密度の増加量が分
かる。前記ボイド個数密度の増加量は損傷の進展速度と
密接な関係があるので、ボイド個数密度の増加量から損
傷の進展速度を推定することが可能になる。
【0011】請求項3記載の発明は請求項1において、
前記進展度合いの算出は、前記金属材料の材料特性、応
力負荷特性及び現時点での損傷の各データに基づき粒界
モデルを作成し、前記表面の寿命消費量を基に該粒界モ
デルに応力が加わった場合の各粒界の破壊進行過程を算
出することを特徴とする。
【0012】かかる発明によれば、まず、前記金属材料
の材料特性、応力負荷特性及び初期損傷の各データに基
づき粒界モデルを作成し、この粒界モデルに応力負荷が
加わった場合の各粒界の破壊進行特性を、別途得られた
寿命消費量を基に算出する。これにより、金属材料内部
の損傷進行状態を考慮した、金属材料全体の余寿命をよ
り正確に予測することが可能になる。
【0013】請求項4記載の発明は請求項3において、
肉厚内部における損傷分布の前記進展度合いの算出にお
いて、前記金属材料に外部から応力を負荷して前記金属
材料の応力負荷時の微視損傷の進展度合いを前記金属材
料内部の複数の箇所にて算出し、該金属材料内部全体の
損傷の進展状況を推定することを特徴とする。
【0014】かかる発明によれば、金属材料に外部から
応力を負荷することによって、金属材料に応力が負荷さ
れた際における該金属材料内部の微視損傷の進展度合い
を算出する。この算出を金属材料中の肉厚方向の複数箇
所にて行うことにより、金属材料全体における損傷の進
行状況を知ることが可能になる。
【0015】請求項5記載の発明は請求項4において、
前記金属材料中の損傷分布および/または応力分布に基
づき前記金属材料内部の損傷の進展状況を推定すること
を特徴とする。
【0016】かかる発明によれば、金属材料中の損傷分
布および/または応力分布に基づき前記金属材料内部の
損傷の進展状況を推定することにより、損傷分布および
/または応力分布に対応した個々の部位における損傷の
進展状況を推定することが可能であり、その結果、その
部位毎の破断寿命を推定することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示した実施例
を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載され
ている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置など
は特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれ
のみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎな
い。
【0018】図1は本発明の実施例に係る金属材料の寿
命評価方法の全体構成を示すフロー図、図2は金属材料
の寿命評価方法の具体的構成を示すフロー図である。図
3はクリープボイド個数密度とクリープ損傷度(寿命消
費量)との関係を示す線図である。図4は不純物の含有
量をパラメータとした場合のボイド個数密度と経過時間
との関係を示す線図である。図5は微視損傷進展シミュ
レーションを示すフロー図である。図6は微視損傷進展
シミュレーションの粒界破壊抵抗分布モデルを示す模式
図である。図7は微視損傷進展シミュレーションの具体
例を示す模式図である。図8はタンデム探傷法の説明図
である。図9は本発明に係る寿命評価方法が適用される
高温配管の溶接部を示す断面図である。
【0019】本発明が適用される高温配管の溶接部を示
す図9において、11は2.25%Cr鋼あるいは9%
Cr鋼などのフェライト鋼管からなる高温配管であり、
フェライト鋼板12、16が円筒状に曲げ加工され、そ
の長手方向に沿った端面12a、12b同士が溶接金属
13で結合されている。14は該溶接金属13内あるい
は溶接金属13と鋼板12、16の境界である熱影響部
17に発生している検出対象の傷である。また、15は
金属材料表面のレプリカを示す。
【0020】前記溶接金属13の組成は、例えば鋼板1
2、16と同様の2.25%Cr鋼、あるいは9%Cr
鋼あるいは異種材料のインコネルなどからなり、該溶接
金属13や熱影響部17のクリープ損傷の進展速度と大
きく関連する不純物は、例えば、P(リン)、As(ヒ
素)、Sn(スズ)、Sb(アンチモン)である。また
前記溶接金属13あるいは熱影響部17のクリープ損傷
度(寿命消費率)は、図9(b)に示す、鋼板12、1
6及び、溶接金属が2.25%Cr鋼同材の場合の例の
ように周囲の鋼板12、16よりも大きく、これは各部
の不純物分析(化学分析)により得られた不純物Sbの
濃度の大小に略一致している。尚、溶接金属13がイン
コネル系異材溶接の場合も熱影響部17のクリープ損傷
度が大きいことが知られている。
【0021】次に、本発明の実施例に係る金属材料の寿
命評価方法の全体構成のフローを示す図1において、金
属材料の表面損傷の検査は後述するレプリカ法で行い、
この検査結果に基づきMLAS法によって寿命消費量を
推定し、この寿命消費量により金属材料表面の寿命評価
を行う(フロー(A))。金属材料の内部損傷の検査は
後述するタンデム探傷法で行い、この検査結果に基づき
破壊力学パラメータ計算によって損傷の進展を予測し、
該金属材料の余寿命を推定する。この余寿命により金属
材料内部の寿命評価を行う(フロー(B))。金属材料
中の多くの場所で発生する損傷の評価は、前記レプリカ
法による表面損傷の検査と前記タンデム探傷法による内
部損傷の検査とを用いることにより、金属材料全体の寿
命評価を行う(フロー(C))。
【0022】次に図2ないし図8及び図9に基づき、本
発明の実施例に係る金属材料の寿命評価方法の具体的手
順について図9に示す高温配管11を例にとって説明す
る。 (1) レプリカ法による寿命消費量の推定(図2のフ
ロー(A)) (1−1) レプリカの採取 前記高温配管11の表面をプラスチック膜に転写する方
法により、該高温配管11の表面のレプリカ15を採取
する。例えば、前記表面に粗研磨及び細研磨を順次施し
て該表面を鏡面に仕上げ、この鏡面の検査対象部分をエ
ッチングにより選択除去し、このエッチングした部分に
レプリカ用プラスチック膜を押貼し、前記エッチング面
の凹凸をプラスチック膜に転写する。
【0023】(2−2) レプリカの観察及び寿命消費
量の推定 光学顕微鏡を用いてレプリカ15を観察し、クリープ損
傷による空孔(クリープボイド)の有無及びその分布状
態を調査する。ここでは、傷14がクリープ損傷による
ものか否かを大まかに判定する。次いで、走査型電子顕
微鏡(SEM)を用いてクリープボイドの有無及びその
分布状態を精密に観察する。例えば前記クリープボイド
の生成数を計測し、この計測値に基づきクリープボイド
個数密度を求め、図3に示す予め求められた寿命評価線
図(クリープボイド個数密度とクリープ損傷度(寿命消
費量)との関係を示すグラフ)から寿命消費量を推定す
る。
【0024】(2) 化学成分分析による微視損傷の進
展速度の変化量の推定(図2のフロー(B)) (2−1) 不純物の含有量の定量 前記溶接金属13の試料採取領域の表面の酸化皮膜を金
属光沢が得られるまで研削して除去し、この露出した金
属部分をさらに研削して切粉を採取する。次いで、この
切粉を用いて、P、As、Sn、Sbを分析し、不純物
の含有量を定量する。各元素の分析方法は下記のとおり
である。 P:原子吸光法(日本工業規格;JIS G 125
7) As、Sn、Sb:水素化物発生ICP発光分析
【0025】(2―2) 微視損傷の進展速度の変化量
の推定 図4に示すような不純物の含有量をパラメーターとして
ボイド個数密度と経過時間との関係を示すグラフを予め
作成しておき、上記により定量された不純物の含有量を
基に、上記グラフからボイド個数密度の変化量を求め
る。このボイド個数密度の変化量と微視損傷の進展速度
の変化量との間には密接な関係があるので、ボイド個数
密度の変化量が求められれば、微視損傷の進展の速度の
変化量を容易に推定することができる。次いで、これら
の不純物分析結果から、下記の式(1)に基づきクリー
プ脆化係数(CEF)を求める。この値を不純物含有量
を表すパラメータとする。 CEF=P(wt.%)+2.4As(wt.%)+3.6Sn(wt.%) +8.2Sb(wt.%)……(1)
【0026】(3) タンデム探傷法による内部損傷分
布の検出(図2のフロー(C)) タンデム探傷法による金属材料の内部検査要領を示す図
8において、51及び52は被検査対象である鋼板16
の表面に一定間隔で以って設置された超音波を発信する
送信探触子51及び超音波54を発信する受信探触子5
2であり、斜角探触子にて構成される。53は溶接金属
13のルート面、開先面など検査核の対象とする面であ
る探傷断面、55は該探傷断面から探傷面に沿って0.
5スキップ距離の位置に設定された前記鋼板16の表面
に対して鋼板16内部で角度θにて傾斜したタンデム基
準線であり、前記送信探触子51からの超音波54の入
射線(角度θ)及び前記受信探触子52への超音波5
4の反射線(角度θ)が前記タンデム基準線55に関
して前後に対称になるようにして前記2つの線の交軸点
014が前記探傷断面53上に一致するようにしてい
る。
【0027】そして、内部損傷を検査する際には、前記
送信探触子51及び受信探触子52を前記タンデム基準
線55に関して線対称に動かすことにより、該2つの探
触子51、52から超音波を送信したと仮定したときの
中心軸の交点即ち前記交軸点014で傷を捕らえる。従
って、前記タンデム基準線55を適切に設定することに
より、不感帯の存在する不連続界面近傍(表面近傍)の
損傷を確実に検出できる。これにより、溶接により接合
される2つの鋼板12、16の熱膨張率が異なり該熱膨
張率の差により溶接部の表面近傍に目違いが生じ不連続
界面が形成されても、かかる不連続界面の影響を受ける
ことなく内部損傷を確実に検出できる。以上のようなタ
ンデム探傷法による内部損傷の検査結果に基づき、破壊
力学パラメータ計算によって傷の伝播予測を行う。
【0028】(4)微視損傷進展シミュレーションの実
施 次いで、図5に示すフロー図に基づき微視損傷進展シミ
ュレーションを実施する。 (4−1) データ入力(S1) 前記高温配管11の材料特性、初期損傷、その他のデー
タを入力する。これらのデータについては、次の様にし
て修正が加えられる。 a.材料特性の修正(S2) 材料特性に対する不純物の影響を考慮するために、化学
成分分析による不純物の含有量の定量結果に基づき高温
配管11の材料特性を修正する。
【0029】また、前記高温配管11の表面損傷と応力
分布との関係を予めデータベースとしておき、このデー
タベースと該高温配管11の表面損傷、または応力解析
から高温配管11内部の応力分布を推定する(S3)。
また前記タンデム探傷法による高温配管11の内部損傷
検査結果から応力分布を推定する(S4)。次いで、こ
れらの応力分布を基に肉厚内部に材料特性が異なる複数
のモデルを作成(S5)し、これらのモデルに基づき高
温配管11の材料特性を修正する。
【0030】b.初期損傷の修正 高温配管11の表面損傷と肉厚方向損傷分布との関係を
予めデータベースとしておき、このデータベースと高温
配管11の表面損傷、または応力解析から高温配管11
内部の初期損傷分布を推定する(S6)。また前記タン
デム探傷法による高温配管11の内部損傷検査結果から
初期損傷分布を推定する(S7)。次いで、これらの初
期損傷分布を基に初期損傷が異なる複数のモデルを作成
し(S8)、これらのモデルに基づき高温配管11の初
期損傷を修正する。
【0031】(4−2) 微視損傷進展シミュレーショ
ン 図5及び図6に基づき微視損傷進展シミュレーションを
実施する。 a.粒界モデルの作成(S9) 入力された各種データを基に、前記高温配管11の溶接
部における粒界モデルを作成する。この解析モデルで
は、粒界長さL及び粒界の破壊抵抗値Rに適切な確率分
布及び代表値を入力データを基に仮定し、これを基に粒
界モデルを作成する。例えば、L、Rに正規分布を仮定
する場合、Lの平均値Lm、標準偏差Ls、Rの平均R
m、標準偏差Rsを仮定する。
【0032】b.高温配管11への応力負荷及び負荷モ
デルの作成(S10) 前記高温配管11に応力を負荷し、この応力負荷に対応
した高温配管11の負荷モデルを作成する。前記高温配
管11では、応力により内部に亀裂が発生する。かかる
亀裂に隣接する粒界においては、粒界破壊駆動力をDと
すると、損傷の進行速度(dR/dT)は−Dに等しい
(dR/dT=−D)。前記粒界の破壊抵抗値Rが負
(R<0)になると、該粒界が破壊し亀裂が発生する。
この亀裂に隣接する粒界では、粒界破壊駆動力Dは、亀
裂発生駆動力Fと亀裂伝播駆動力Kと粒界に隣接する亀
裂長さCとの積との和に等しい(D=F+C・K)。ま
た亀裂に隣接しない粒界においては、粒界の破壊駆動力
Dは亀裂発生駆動力Fに等しい(D=F)。
【0033】c.亀裂長さ等の調査(S11) 前記高温配管11の負荷モデルを基に、応力により発生
した前記高温配管11内部の微視亀裂の長さ及びその分
布等を調査する。
【0034】d.計算終了の判定(S12) モデル中において、亀裂となった粒界が合体し、巨視亀
裂となったものがモデル全長に渡って連結した時点で計
算を終了する。または、入力値として与えた計算終了条
件(例えば、限界粒界亀裂密度、限界亀裂長さ等)に達
した時点で計算を終了しても良い。
【0035】ここで、計算が終了したと判定された場合
はこの計算を終了し、この計算結果に基づき高温配管1
1内の余寿命を推定する。また、計算が終了していない
と判定された場合は、再度、高温配管11への応力負荷
及び亀裂長さ等の調査を実施し、計算終了の判定を行
い、計算が終了したと判定された場合は、この計算を終
了し、この計算結果に基づき高温配管11の余寿命を推
定する。一方、計算が終了していないと判定された場合
は、再度、高温配管11への応力負荷〜計算終了の判定
を繰り返し実施する。このように、計算が終了したと判
定されるまで、高温配管11への応力負荷〜計算終了の
判定を繰り返し実施し、計算が終了したと判定された時
点で、この計算を終了し、この計算結果に基づき高温配
管11全体の余寿命を推定する。
【0036】ここで、微視損傷進展シミュレーションの
よる具体的な例について、図7に基づき説明する。前記
高温配管11の溶接部界面(HAZ)に図7(a)に示
すような応力分布を有する応力が負荷された場合を考え
る。ここで、溶接部のうち肉厚方向の例えば3点につい
てそれぞれ応力の大きさを調べ、応力σ1〜σとす
る。次いで、高温配管11の溶接部の材料特性を基に、
これらの応力σ1〜σそれぞれについてシミュレーシ
ョンを実施し、図7(b)に示すような応力σ1〜σ
それぞれに対応した負荷モデルを作成する。
【0037】次いで、前記3つの負荷モデルを基に、応
力σ1〜σそれぞれに対応した損傷Dc1〜Dcを計算
し、図7(c)に示すような肉厚方向の損傷分布を時々
刻々と算出する。これにより、図7(d)に示すような
溶接継手全体としての破断までの寿命を推定する。
【0038】以上説明したように、かかる実施例によれ
ば、高温配管11に対して、レプリカ法による寿命消費
量の推定、化学成分分析による微視損傷の進展速度の変
化量の推定、タンデム探傷法による内部損傷分布の検出
をそれぞれ実施し、これらの結果を用いて微視損傷進展
シミュレーションを実施することとしたので、高温配管
11の傷14が、複数の微視的な亀裂が発生と合体を繰
り返しながら成長しているような場合であっても、この
高温配管11の余寿命を容易かつ正確に予測することが
できる。
【0039】
【発明の効果】以上記載のごとく、本発明によれば、金
属材料表面の損傷の検査については前記レプリカ法等を
用いての該表面におけるクリープによる損傷の有無及び
金属組織の劣化の有無により該表面での寿命消費量を算
出する方法で表面の損傷を検出し、また金属材料内部の
損傷の検査については該金属材料の表面に設置した送信
探触子から超音波を発信し損傷部からの反射波を該金属
材料の表面に設置した受信探触子で受信することにより
金属材料の内部の損傷を検出するタンデム探傷法によっ
てTOFD法における不感帯の存在する表面近傍を含む
内部全域の損傷を検出し、かかる金属材料の表面及び内
部の検出結果に基づき損傷の進展度合いを算出すること
により、金属材料全体の寿命を高精度で推定することが
できる。また、金属材料の内部の損傷を前記タンデム探
傷法により検出するので、同一材料の溶接部は勿論、熱
膨張率が異なり溶接部の目違いによって不連続界面を形
成し易い金属材料の溶接部の損傷についてもこれを確実
に検出でき、これにより、金属材料表面から内部に亘る
全域の損傷を確実に検出することが可能となり、寿命評
価を高度化することができる。
【0040】また請求項2記載のように構成すれば、金
属材料の表面から試料を採取して化学分析を行って当該
試料中の不純物量を定量し、この不純物量の定量結果に
基づき前記金属材料の微視損傷の進展の速度の変化量を
推定するので、金属材料の余寿命をより正確に予測する
ことができる。
【0041】請求項3記載のように構成すれば、金属材
料の材料特性、応力負荷特性及び初期損傷の各データに
基づき粒界モデルを作成し、前記寿命消費量を基に該粒
界モデルに応力負荷が加わった場合の各粒界の破壊特性
を算出するので、金属材料の微視損傷の進展度合いを容
易に算出することができ、金属材料の余寿命をより正確
に予測することができる。
【0042】請求項4記載のように構成すれば、金属材
料に外部から応力を負荷して前記金属材料の応力負荷時
の微視損傷の進展度合いを前記金属材料表面及び肉厚内
部の複数の箇所にて算出し、該金属材料内部の損傷の進
展状況を推定するので、金属材料内部における損傷の進
行状況を検知することができる。
【0043】さらに請求項5記載のように構成すれば、
金属材料中の損傷分布および/または応力分布に基づき
前記金属材料内部の損傷の進展状況を推定するので、個
々の部位における損傷の進展状況を推定することがで
き、最終的な金属材料の破断寿命を推定することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る金属材料の寿命評価方
法の全体構成を示すフロー図である。
【図2】 金属材料の寿命評価方法の具体的構成を示す
フロー図である。
【図3】 クリープボイド個数密度とクリープ損傷度
(寿命消費量)との関係を示す線図である。
【図4】 不純物の含有量をパラメータとした場合のボ
イド個数密度と経過時間との関係を示す線図である。
【図5】 微視損傷進展シミュレーションを示すフロー
図である
【図6】 微視損傷進展シミュレーションの粒界破壊抵
抗分布モデルを示す模式図である。
【図7】 微視損傷進展シミュレーションの具体例を示
す模式図である。
【図8】 タンデム探傷法の説明図である。
【図9】 本発明に係る寿命評価方法が適用される高温
配管の溶接部を示す断面図である。
【符号の説明】
11 高温配管 12、16 鋼板 13 溶接金属 14 傷 014 交軸線 15 レプリカ 17 熱影響部 51 送信探触子 52 受信探触子 53 探傷断面 54 超音波 55 タンデム基準線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 駒井 伸好 長崎市深堀町五丁目717番1号 三菱重工 業株式会社長崎研究所内 (72)発明者 稲田 実 長崎市飽の浦町1番1号 三菱重工業株式 会社長崎造船所内 Fターム(参考) 2G047 AA06 AB07 BA03 BB02 BC09 BC11 CA01 DB13 EA10 2G050 AA01 BA10 BA12 CA04 EA01 EA10 EB02 EC05 EC10 2G055 AA03 AA12 BA05 BA07 BA09 BA11 BA14 BA20 CA01 CA05 CA13 CA26 DA08 EA01 EA08 FA01 FA02 FA08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属材料の溶接部等の、金属材料の表面
    及び内部の損傷を検出しこの検出結果に基づき該金属材
    料の寿命を評価する金属材料の寿命評価方法において、
    前記金属材料の表面の検査を、該金属材料の表面の組織
    検査を行って該組織検査の結果に基づき金属材料の表面
    における寿命消費量を推定することにより行い、前記金
    属材料の内部の検査を、該金属材料の表面に超音波を発
    信する送信探触子と該超音波を受信する受信探触子とを
    設置して前記送信探触子から超音波を発信し損傷部から
    の反射波を前記受信探触子で受信することにより前記金
    属材料の内部の損傷を検出することにより行い、前記金
    属材料の表面及び内部の検出結果に基づき前記損傷の進
    展シミュレーションを含む進展度合いの算出を行い、こ
    の算出結果に基づき前記金属材料全体の寿命を推定する
    ことを特徴とする金属材料の寿命評価方法。
  2. 【請求項2】 前記金属材料の表面から試料を採取して
    化学分析を行い、当該試料中の不純物量を定量し、この
    不純物量に基づき前記金属材料の微視損傷の進展速度を
    推定することを特徴とする請求項1記載の金属材料の寿
    命評価方法。
  3. 【請求項3】 前記進展度合いの算出は、前記金属材料
    の材料特性、応力負荷特性及び現時点での損傷の各デー
    タに基づき粒界モデルを作成し、前記表面の寿命消費量
    を基に該粒界モデルに応力が加わった場合の各粒界の破
    壊進行過程を算出することを特徴とする請求項1記載の
    金属材料の寿命評価方法。
  4. 【請求項4】 肉厚内部における損傷分布の前記進展度
    合いの算出において、前記金属材料に外部から応力を負
    荷して前記金属材料の応力負荷時の微視損傷の進展度合
    いを前記金属材料内部の複数の箇所にて算出し、該金属
    材料内部全体の損傷の進展状況を推定することを特徴と
    する請求項3記載の金属材料の寿命評価方法。
  5. 【請求項5】 前記金属材料中の損傷分布および/また
    は応力分布に基づき前記金属材料内部の損傷の進展状況
    を推定することを特徴とする請求項4記載の金属材料の
    寿命評価方法。
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