JP6802086B2 - 耐力壁およびその施工方法 - Google Patents
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[1]
土台と、該土台に間隔をあけて立てられた左右一対の柱と、該一対の柱上部で該一対の柱間に横架させた梁とで囲まれる矩形状の開口に面材が取り付けられてなる、木造軸組建築物の耐力壁であって、
前記面材は、前記梁に釘またはビスにより固定された補強部分と、該補強部分の下側に該補強部分と一体的に配され、前記開口を塞ぐように、前記土台、前記梁及び前記一対の柱に釘により固定された構面部分とを有し、前記補強部分と前記構面部分との間に、割れ誘発目地として溝が設けられていることを特徴とする、耐力壁。
[2]
前記溝の幅が3mm以下である、[1]に記載の耐力壁。
[3]
前記面材は室外側に取り付けられる、[1]または[2]に記載の耐力壁。
[4]
前記溝の深さが、前記面材厚みの1/3以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の耐力壁。
[5]
前記補強部分を固定する釘またはビスの本数は、前記構面部分を前記柱に固定する釘の本数よりも多い、[1]〜[4]のいずれかに記載の耐力壁。
[6]
前記補強部分は、さらに接着剤により前記梁に固定されている、[1]〜[5]のいずれかに記載の耐力壁。
[7]
前記一対の柱の間に、該柱と略平行に設けられた1本又は複数本の間柱を有し、前記構面部分は、該間柱に釘により固定されている、[1]〜[6]のいずれかに記載の耐力壁。
[8]
土台と、該土台に間隔をあけて立てられた左右一対の柱と、該一対の柱上部で該一対の柱間に横架させた梁とで囲まれる矩形状の開口に面材を取り付ける、木造軸組建築物の耐力壁の施工方法であって、
前記面材の補強部分と構面部分との間に面材割れ誘発目地として溝加工を施す工程と、
前記補強部分を前記梁に少なくとも釘またはビスにより固定する工程と、
前記開口を塞ぐように、前記構面部分を前記土台、前記梁及び前記一対の柱に釘により固定する工程と、を有することを特徴とする、耐力壁の施工方法。
図1は、本発明の耐力壁の一構成例を模式的に示す図である。図1(a)は平面図、図1(b)は側面図、図1(c)は、梁の近傍を拡大して示す図である。
本発明の耐力壁1は、土台2と、土台2に間隔をあけて立てられた左右一対の柱3,4と、一対の柱3,4の上部で一対の柱3,4間に横架させた梁5とで囲まれる矩形状の開口6(図2参照)に面材10が取り付けられてなる、木造軸組建築物の耐力壁であって、
面材10は、一枚の面材を、梁5の表面のみにそれぞれ少なくとも釘またはビス21により固定された補強部分11と、開口6を塞ぐように、土台2、梁5及び左右一対の柱3,4に釘20により固定された、構面部分12との間に面材割れ誘発目地として溝13を設けて区分していることを特徴とする。
本発明では、大壁方式による耐力壁1において、面材10を、梁5の表面まで貼り伸ばし、構面部分12と補強部分11とを、割れ誘発目地の溝13を介して区分し、補強部分11を、構面部分12より多くの釘20、少なくとも釘又はビス21で固定する。
面材10は、縦方向の上端が梁5の上端よりも下げた位置(上層にも耐力壁を配置する場合は上層の面材を梁5に釘で固定する為、例えば梁5の天端から30mm下げる)とし、梁5の下端から30mm上げた位置に割れ誘発目地(溝13)を有し、その周囲が梁5の室外側面に多数の釘またはビス21で固定されている。
また、割れ誘発目地(溝13)の深さは、面材10の厚みの1/3以上であることが好ましい。溝13の深さを、面材10の厚みの1/3以上とすることにより、金物耐力以下で面材が割れる。1/3未満では割れ誘発目地で面材に亀裂が入りづらい。
まず図2に示すように、水平力を受けた柱3,4は水平力を受けた方向に傾き、梁は水平移動する。
上述したように、従来の耐力壁では、柱が傾くことにより面材も回転する(図9参照)。地震等により正負交番の繰り返しの水平力を受けると、面材も反転を繰り返し、面材と釘の接合部の緩みを増大させ、耐力壁としての機能が低下してしまう。
一方、柱3,4に釘で固定された構面部分12は、柱3,4の傾きが大きくなることで面内で回転するが、補強部分11は回転しない梁5にのみ多数の釘で固定されている為、一定量回転すると割れ誘発目地としての溝13に亀裂が入り、面材10が補強部分11と補強部分12にと完全に分離され補強部分11の釘のせん断耐力が構面部分12に直接伝わらなくなる為、耐力壁1の変位増加に伴う耐力上昇が止まる。図3中、囲みAに示すように、面材10が分離した後も、構面部分12が補強部分11の小口に接触することにより回転が抑えられる。これにより構面部分12と釘20の接合部の緩みが抑制され、耐力壁1としての機能を維持することができる。すなわち、本発明の耐力壁1は、従来の耐力壁に比べて早期にせん断耐力を向上することができ、壁の最大耐力を接合部の許容耐力以下に抑えることで靱性の高い理想的な破壊形式となる。
面材の補強部分11と構面部分12との間に面材割れ誘発目地として溝加工を施す工程と
前記補強部分11を前記梁5に少なくとも釘またはビス21により固定する工程と、
前記開口6を塞ぐように、前記構面部分12を前記土台2、前記梁5及び前記一対の柱3,4に釘20により固定する工程と、により施工される。
先に面材を打ち付けた後に、溝加工をしても構わない。
実施例として、図1に示したような本発明の耐力壁と、比較例として、図8および特願2016‐134940号に示したような従来の耐力壁について、鉛直構面の面内せん断試験を行い、せん断変位とせん断力との関係について測定し評価した。
面内せん断試験は「木造軸組工法住宅の許容応力度設計2008年版」および「木造耐力壁及びその倍率の試験・評価業務方法書」における試験体の設置方法(図4)に準拠して行った。
本試験で行った面内せん断試験における試験体の設置方法を図5に示す。
試験体の構成:柱、土台、間柱及び梁の軸組並びに面材を想定した部材で構成する。
試験体の寸法:幅 柱芯〜柱芯の寸法で1,82m、高さ 土台下端〜梁上端の寸法で2.77m
梁の断面寸法は105×240mm、柱及び土台の断面寸法は105×105mm、継手間柱の断面寸法は45×90mm
木材の樹種:梁に赤松集成、柱に杉集成、土台に米ヒバ集成、間柱は米松
面材の種類:構造用合板12mm
試験体数:3体以上
試験体は柱脚固定式により設置し、柱頭・柱脚の仕口は以下のとおりとした。
(株)カネシン製 プレセッターSU PZ−HDP20で緊結した(短ほぞ差し十N90釘2本打ち、引き寄せ金物締めと同等)。
初期の段階では、水平力を受けると実施例、比較例とも構面材を固定している釘のせん断耐力で水平力を負担し、せん断変位の増加に比例して、耐力壁のせん断耐力も増加していく。
層間変形角1/150radまでの比較例(図7)では、比較例2では、材と構面材との間に隙間があるため、補強効果発揮までにブランクがあり、せん断変位が18mm(層間変形角1/150rad)を過ぎたところで、初めて補強効果が発揮されている。これに対し、本発明では変位発生開始から補強効果が発揮されていることがわかる。
破壊までの比較例(図6)では、本発明はせん断変位が75mmを超えるとせん断変位に対するせん断耐力が徐々に低下している。これは、せん断変位が増えるにつれて構面部分が回転を始め、面材が割れ誘発目地で亀裂が入り、補強部分と構面部分に分かれ、補強部分に打たれた多数の釘のせん断耐力が直接構面部分に伝わらなくなり、構面部分の釘の接合部の緩みが発生し始めているためと考えられる。
例えば上述した説明では、面材を柱及び横架材の室外側に取り付けた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、面材を室内側に取り付けた場合であっても適用可能である。
2 土台
3,4 柱
5 梁
6 開口
8 間柱
10 面材
11 補強部分
12 構面部分
13 溝(割れ誘発目地)
20 釘
21 釘又はビス
Claims (10)
- 土台と、該土台に間隔をあけて立てられた左右一対の柱と、該一対の柱上部で該一対の柱間に横架させた梁とで囲まれる矩形状の開口に面材が取り付けられてなる、木造軸組建築物の耐力壁であって、
前記面材は、前記梁に釘またはビスにより固定された補強部分と、該補強部分の下側に該補強部分と一体的に配され、前記開口を塞ぐように、前記土台、前記梁及び前記一対の柱に釘により固定された構面部分とを有し、
前記補強部分と前記構面部分との間に、割れ誘発目地として溝が設けられており、
前記溝の幅が3mm以下であることを特徴とする、耐力壁。 - 前記面材は室外側に取り付けられる、請求項1に記載の耐力壁。
- 前記溝の深さが、前記面材厚みの1/3以上である、請求項1または2に記載の耐力壁。
- 前記補強部分は、さらに接着剤により前記梁に固定されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐力壁。
- 前記一対の柱の間に、該柱と略平行に設けられた1本又は複数本の間柱を有し、前記構面部分は、該間柱に釘により固定されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐力壁。
- 土台と、該土台に間隔をあけて立てられた左右一対の柱と、該一対の柱上部で該一対の柱間に横架させた梁とで囲まれる矩形状の開口に面材が取り付けられてなる、木造軸組建築物の耐力壁であって、
前記面材は、前記梁に釘またはビスにより固定された補強部分と、該補強部分の下側に該補強部分と一体的に配され、前記開口を塞ぐように、前記土台、前記梁及び前記一対の柱に釘により固定された構面部分とを有し、
前記補強部分と前記構面部分との間に、割れ誘発目地として溝が設けられており、
前記補強部分を固定する釘またはビスの本数は、前記構面部分を前記柱に固定する釘の本数よりも多いことを特徴とする、耐力壁。 - 前記面材は室外側に取り付けられる、請求項6に記載の耐力壁。
- 前記溝の深さが、前記面材厚みの1/3以上である、請求項6または7に記載の耐力壁。
- 前記補強部分は、さらに接着剤により前記梁に固定されている、請求項6〜8のいずれか一項に記載の耐力壁。
- 前記一対の柱の間に、該柱と略平行に設けられた1本又は複数本の間柱を有し、前記構面部分は、該間柱に釘により固定されている、請求項6〜9のいずれか一項に記載の耐力壁。
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