JP6801322B2 - 柱梁接合部の設計方法 - Google Patents
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この非特許文献1には、梁の材端部における主筋の降伏よりもカットオフ筋先端位置の主筋の降伏を先行させないために、カットオフ筋の定着長(長さarp)は、カットオフ筋が計算上不要となる検定断面を越えて有効せい以上延長することが記載されている。このカットオフ筋の定着長について、以下、図21を用いて説明する。
Maup=0.9・σy・(D1P・at1p+D2p・at2p)
この式において、σyは、梁主筋(鉄)の降伏強度、D1Pは梁主筋71の有効せい、at1pは梁主筋71の総断面積、D2pはカットオフ筋72の有効せい、at2pはカットオフ筋72の総断面積である。
Mbup=0.9・σy・D1P・at1p
従って、従来のカットオフ筋の定着長(長さarp)は、以下の2式を満足する値である。
Mbup=Mp(x)
(ただし、この式においては、x=(arp−Dp))
かつM0p=Maup
Qup=2・Maup/Lp
ここで、Lpは内法スパンである。
図23を用いて、カットオフ筋92の先端に定着部材94を設け、この定着部材94の位置において降伏する場合の構成について説明する。図23(b)には、カットオフ筋92の先端に定着部材94を設けた柱梁接合部65の模式図を示しており、図23(a)は、この柱梁接合部65の梁90に地震時に加わる外力による曲げモーメント分布Mp(x)を示している。この柱梁接合部65においては、梁90の端部が柱80に接合している。梁90は、鉄筋コンクリート梁であって、梁主筋91、カットオフ筋92及び図示しないせん断補強筋等を埋設したコンクリート95によって構成されている。梁主筋91は、梁90の全長に渡って埋設されていた通し筋である。カットオフ筋92は、先端が梁90の途中に位置して梁90に埋設されたカットオフ筋であって、梁主筋91よりも梁90の中立面側に配置されている。そして、カットオフ筋92の先端には、定着部材94が固定されている。
なお、開口を梁の柱際に寄せて配置しても、所定の変形性能を確保するための柱梁接合部の鉄筋コンクリート構造が検討されている(例えば、特許文献3参照。)。
図1に示すように、本実施形態の柱梁接合部15は、梁20の端部が柱30に接合されている。この柱30は、鉄筋コンクリートで構成されている。
梁20の補強筋22は、先端が梁20の途中に位置して梁20に埋設された補強筋であって、梁主筋21よりも梁20の中立面(中心面)側に配置された2段目鉄筋である。この補強筋22は、柱の接合端部(仕口面)から長さarの長さを有している。この補強筋22の長さarは、梁20の梁せいDの半分以上であって、従来のカットオフ筋の定着長より短くする。ここで、非特許文献1の鉄筋コンクリート構造計算規準(RC規準)によれば、カットオフ筋の定着長は、検定断面から有効せいより長くした長さである。本実施形態の補強筋22の長さarの決定方法の詳細は、後述する。
また、梁20の柱際(柱際とは端のこと)から貫通孔27の中心までの距離Lcが梁せいD以下であり、次の条件(A)と条件(B)のどちらか一方又は両方を満足することが好ましい。
条件(B):梁20の柱際から貫通孔27までのへりあき長さLeが梁せいDの1/3、より好ましくは1/4以下である。ここで、へりあき長さLeは、貫通孔27の柱際側の縁から柱際までの距離である。特に、へりあき長さLeが短いほど良く(例えば、へりあき長さLeが20〜50mmである。)、貫通孔27の縁が柱際に接することとしてもよい。
次に、図2を用いて、柱梁接合部15の設計方法について説明する。図2(a)は、梁の長さ方向における曲げモーメント分布、(b)は柱梁接合部15の正面図、(c)は通し筋である梁主筋21の応力分布、(d)は補強筋22の応力分布を示す。
次に、図3を用いて、本実施形態の柱梁接合部における終局曲げ耐力Mau、Mbuについて説明する。
また、図3(b)に示すように、3B−3B断面において、梁主筋21の終局曲げ耐力Mbuは、式(3)により算出される。
次に、図4を用いて、補強筋である補強筋22の長さの下限値(D/2)について説明する。
次に、図5を用いて、上述した柱梁接合部15の設計方法の実現方法について説明する。
次に、図6を用いて、本実施形態の柱梁接合部15においても、従来のカットオフ筋と同等な保有水平耐力Qu1を有していることについて説明する。
この場合、図6(b)に示すように、補強筋22の先端間の距離L1は、内法スパンL0から両端の補強筋22の長さarを減算した値になる。従って、保有水平耐力Qu1の算出に用いる終局曲げ耐力は小さくなる(Maup→Mbu)が、算出に用いる距離も小さくなる(Lp→L1)。このため、一般的な従来のカットオフ筋を用いて材端部に塑性ヒンジを形成させる構成と同等な保有水平耐力Qu1を得ることができる。
次に、上述した柱梁接合部の構造を具体化した試験体(ケース「C1」〜「C4」)を用いた実験について説明する。
まず、図7及び図8を用いて、試験体を実験した実験装置を説明する。
図7に示すように、本実施形態の実験では、実験装置として二軸試験装置40を用いる。この二軸試験装置40は、台41上に、1対の軸力用アクチュエータ42を、間隔をおいて配置する。更に、これら軸力用アクチュエータ42の上に、L字部材43の長辺部を配置し、L字部材43の垂下した短辺部に、水平用アクチュエータ44を取り付ける。そして、これら軸力用アクチュエータ42の間に、建物の骨組みの一部分を抜き出した十字型部分架構50を設置する。
図8(b)に示すように、柱部51の上部には柱頭クレビス52が設けられ、柱部51の下部には柱脚クレビス53が設けられている。この柱脚クレビス53は、台41に対して、回転の動きのみ許容するピン支持53aによって支持されている。
試験体である梁20の縮尺は、実大の約1/2とした。各試験体には、柱の近傍に開口が設けられている。この開口の開口径は、梁せいDの1/4とした。
また、実験におけるコンクリートの設計規準強度は、柱がFc60、梁がFc36である。更に、梁主筋21及び補強筋22は、異形鉄筋D19のSD490を用いた。
図9には、梁20の試験体(ケース「C1」〜「C4」)の諸元値を示している。いずれの試験体(ケース)においても、定着部材を設けておらず、コンクリート強度、梁断面形状、梁の鉄筋構造は同じである。
また、図20には、比較例として、カットオフ筋の先端に定着板を設けた従来技術の試験体(ケース「C5」)における実験結果による梁せん断力と層間変形角との関係を表示している。図20から明らかなように、カットオフ筋の先端に定着板を設けたケース「C5」の試験体は、定着板部分に損傷が集中し、R=1/25以降において急激に梁せん断力が低下した。一方、図16〜図19から明らかなように、ケース「C1」〜「C4」の試験体においては、すなわち本実施形態における梁20を具体化した試験体では、層間変形角Rが大きくなっても、梁せん断力が急激に低下することがなく、変形性能の向上を図ることができる。また、材端部に開口を設けた構造において、開口補強金物を用いなくても、変形性能を確保でき、優れた構造性能を確保できる。
(1)本実施形態においては、梁20は、梁20の全長に渡って埋設される通し筋である梁主筋21と、先端が梁20の途中に位置して梁20に埋設された補強筋22とを備える。補強筋22の長さarを、従来のカットオフ筋の定着に必要な定着長よりも短く、梁20の梁せいDの1/2以上に設定する。これにより、補強筋22を定着させずに付着すべりを生じさせて、柱30の仕口面における降伏応力と補強筋22先端における降伏応力をほぼ同じにすることができる。この結果、柱の仕口面〜補強筋先端の間の広範囲において降伏領域が確保できる。従って、この降伏領域全体を同時期に降伏させることにより、定着部材を設けずに施工性を維持しながら、十分な耐力と変形性能とを実現することができる。
・上記実施形態においては、補強筋22の直径d2、本数N2、有効せいD2の決定処理において用いる補強筋22の付着強度fbuを、上述した式(6)を用いて算出した。補強筋22の付着強度fbuは、他の設計指針によって算出してもよい。
更に、梁20の外力による曲げモーメントに対する終局曲げ耐力の上限値は、曲げ上限強度に限られず、例えば曲げ信頼強度を用いてもよく、梁20の仕口面から補強筋22の先端において、同時期に降伏する降伏領域となるように設計できればよい。
Claims (2)
- 梁主筋と補強筋とを埋設し、柱と接合されるコンクリート製の梁の柱梁接合部の設計方法であって、
前記補強筋は、直線定着させて先端を前記梁の途中に位置させ、
前記補強筋の先端には、前記梁を構成するコンクリートとの定着力を上げる定着部材を設けず、
前記梁に加わる想定荷重から、前記梁における曲げモーメント分布を算出し、
算出した前記曲げモーメント分布を用いて、前記柱の仕口面及び前記補強筋の先端において、同時期に降伏するように、前記補強筋の長さを決定することを特徴とする柱梁接合部の設計方法。 - 前記梁主筋及び前記補強筋を含む梁の終局曲げ耐力が、前記曲げモーメント分布から算出される前記柱の仕口面における第1曲げモーメント以上で、前記第1曲げモーメントに対する上限強度以下となり、
前記梁主筋を含む梁の終局曲げ耐力が、前記曲げモーメント分布から算出される前記補強筋の先端における第2曲げモーメント以上で、前記第2曲げモーメントに対する上限強度以下となるように、前記補強筋の長さを決定することを特徴とする請求項1に記載の柱梁接合部の設計方法。
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