JP6799860B2 - 生体適用光照射デバイス、生体適用光照射デバイスの使用方法、生体適用光照射デバイスの封止体、生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法、生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法、セット、皮膚疾患治療装置および美容施術装置 - Google Patents

生体適用光照射デバイス、生体適用光照射デバイスの使用方法、生体適用光照射デバイスの封止体、生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法、生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法、セット、皮膚疾患治療装置および美容施術装置 Download PDF

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Description

本発明は、生体適用光照射デバイス、その生体適用光照射デバイスの使用方法、生体適用光照射デバイスの封止体、生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法、生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法、セット、皮膚疾患治療装置および美容施術装置に関する。詳しくは、曲面の多い生体に簡単に適用することができ、使い捨てのデバイスに使用可能で安価であり、かつ、高温高湿の環境下で長期保存した場合の光照射特性の劣化を抑制できる生体適用光照射デバイスの封止体、この生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法、この生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法、この生体適用光照射デバイスの封止体と電源とを有するセットに関する。さらには、光照射対象に適用した状態で、生体適用光照射デバイスが発光していることを外部から目視により確認することができる生体適用光照射デバイス、その生体適用光照射デバイスの使用方法、その生体適用光照射デバイスを備えた皮膚疾患治療装置および美容施術装置に関する。
広くさまざまな疾患を治療するために、光を用いることができる。疾患を治療するために光が単独で用いられる場合、この治療を光線療法と呼ぶ。光を調剤とともに用いる場合、この治療を光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)と呼ぶ。これらの療法を用いてさまざまな皮膚疾患および内部疾患を治療できる。
また、美容分野においても、ニキビや不要なシミ、皺などに光線を照射することにより取り除く方法が知られている。
このような光線治療は病院や美容施設において、大型の光照射用の機器を用いて実施されることが一般的であった。このような大型の光照射用の機器は、病院や美容施設であっても多数設置されていなかった。そのため、交通事情や施設および機器の混雑の影響などにより、光照射を希望する患者や使用者は希望するタイミングで簡単に光照射をすることはできず、著しく不便であった。また、自宅や外出先で医療技術者や美容技術者の助けなしで簡単に光照射をしたいという、使用者の根源的な要望を満たせるものではなかった。
これに対し、近年、使い捨て可能な光線療法用の治療機器が知られている(特許文献1〜3参照)。特許文献1には有機半導体を光源とした使い捨て可能な携帯用機器が記載されている。特許文献1には、ガラス基板上に形成された発光層を有する有機EL素子を使用した携帯用機器が記載されている。特許文献2には、使い捨てのスキンケア装置として、患者の皮膚の表面に光を伝達できる発光医療器具が記載されている。特許文献3には、有機発光装置を光源として用いて、皮膚への薬事的または美容的有効成分の浸透および作用を増強させる装置が記載されている。
特許文献1:特許第4651281号
特許文献2:特表2013−532503号公報
特許文献3:特表2013−532497号公報
非特許文献1:KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT VOL.11(2014) pp.83−87
非特許文献2:British Journal of Dermatology, 2009年, 161巻, p.170
これらの文献に記載の使い捨て可能な光線療法用の治療機器を使いやすくするためには、曲面の多い(凹凸が大きい)生体の例えば皮膚に絆創膏のように簡単に貼り付けできて、かつ治療効果を損なわないようにする必要がある。そのため、生体に直接発光部を貼付け、かつ、皮膚に均一に光が照射できるような、フレキシブルな光照射デバイスが望まれていた。
ここで、有機半導体を用いた発光素子は発光層をフレキシブルにすることができ、基板としてフレキシブル基板を用いれば光照射デバイス全体をフレキシブルできるため、使い捨て可能な光線療法用の治療機器に応用すれば曲面の多い生体に簡単に適用することができると予想された。
しかしながら、プラスチック基板などのフレキシブル基板は、有機半導体を用いた発光素子の基板として従来使われているガラス基板に比べると、水蒸気透過率が非常に大きい。本発明者らがフレキシブル基板の上に有機半導体を用いた発光素子を形成した使い捨ての生体適用光照射デバイスを製造したところ、高温高湿の環境下で長期保存した場合に光照射特性が劣化するという新規課題が生じることがわかった。上述のとおり、使い捨ての光照射デバイスは、希望するタイミングで簡単に光照射をしたり、自宅や外出先で医療技術者や美容技術者の助けなしで簡単に光照射をしたりしたいという、使用者の要望を満たすためのものである。そのため、使い捨ての光照射デバイスは使用者の自宅などの専用の保存設備がない場所で長期保存される必要があり、大型の光照射用の機器では生じない課題が生じる。
上記の新規課題やこの新規課題を解決する手段は従来知られていなかった。
特許文献1には、有機EL素子の基板としてガラスの代わりにポリエステル膜を用いることにより、可撓性の機器とすることについて記載がある。特許文献1では可撓性の機器とする場合、ポリエステル膜である基板のバリア性が劣っていることに着目している。そして、ポリエステル基板を用いる態様として、インジウムスズ酸化物(ITO)で被覆したポリエステルとして使用することが記載されている。またITOで被覆したポリエステルであってもバリア性が劣るため、ITOで被覆したポリエステルを用いた可撓性の機器は、乾燥窒素などの不活性雰囲気内で保管される必要があることが記載されている。しかしながら、特許文献1には、具体的な有機EL素子を不活性雰囲気内で保管する方法は記載されていなかった。また、安価に不活性雰囲気を提供することは現実的に難しいため、使い捨て可能な携帯用の光線療法用の治療機器を使用するまで不活性雰囲気に保管することは患者や使用者にとって難しく、不便であった。
特許文献2には、高分子材料から作られるエラストマー材料などの柔軟性のある材料をフレーム(基材)として用いた発光医療器具を患者の曲面部に適応させて、患者の皮膚に均一に光を提供することが記載されている。しかしながら、特許文献2には使い捨てのスキンケア装置の保存方法に関する記載がなく、柔軟性のある材料を基材に用いた場合の保存性についても特に記載はなかった。
特許文献3の図2には発光装置のカプセル化としてUV硬化性樹脂やPENキャップを使用してUV露光することが記載されている。これらの構成では、UV硬化性樹脂は固く硬化されるため、特許文献3はフレキシブルな有機発光装置を提供することを意図するものではなかった。また、特許文献3の図3に記載の装置では、パッキング層や保護ホイルを設けることが記載されているが、これらは通常の有機発光装置の構成であった。そのため、特許文献3には、フレキシブルな有機発光装置を長期保存することは何ら記載されていなかった。
一方、使い捨て可能な生体適用光照射デバイス以外の、使用者が長期使用する可能性がある有機発光装置を用いた光照射デバイスとして、照明やディスプレイが知られている(非特許文献1および2参照)。有機発光装置を用いた照明やディスプレイでは、プラスチック基板とデバイスの陽極との間に、耐湿性を確保するために水分や酸素透過性が小さい無機物の薄膜、およびフレキシブル性が損なわれないための有機物の薄膜を重ねて、バリア層付き基板を作製する方法が知られている。例えば、非特許文献1では、PENフィルム上に無機層/有機層を積層させることによりバリア性とフレキシブル性を両立させたOLED(有機発光ダイオード)照明用のバリアフィルムが記載されている。しかしながら、非特許文献1に記載の対策を施すと、光照射デバイス全体の柔軟性が失われ、曲面の多い生体のあらゆる場所に適用することは困難であった。さらに無機物と有機物の薄膜を重ねる方法ではバリア性能的には十分なものが得られたとしても、基板のコストの大幅な上昇を招き、使い捨てのデバイスに使用することは困難であった。
以上に記載したとおり、従来の特許文献1〜3および非特許文献1、2に記載された技術を用いて、実用的な生体適用光照射デバイスを実現することは不可能であった。
また、これまで提案されている有機半導体を用いた光照射デバイス、特に有機EL素子を用いた光照射デバイスは、不透明な封止膜で発光素子が覆われているため、使用者が、光照射デバイスが発光していることを視認することが困難であった。このため、特に、自宅で用いるような携帯型の光照射デバイスである場合には、使用者が発光していることを確認できないことに不安を覚えたり、発光していない光照射デバイスを使い続けたりする問題が生じていた。
この問題に対処するために、封止膜の一部に光透過用の孔を空けることが考え得る。しかし、発光素子に用いる有機半導体または量子ドットは、水蒸気や酸素に弱いため、孔を通過する水蒸気や酸素で劣化するという別の問題が生じてしまう。また、電極を透明化したり封止膜の一部をバリア能が高い透明材料で構成したり、封止膜全体を半透明材料で構成したりすることも考え得るが、発光性能を十分に高めることが難しいこと、さらに材料・プロセスが複雑になるため極めて高価であることから、実用的ではない。これらのことを考慮すると、安価な金属封止膜などの不透明封止膜を使用しつつ、光照射デバイスを適用した状態で発光の確認を可能にする構成の開発が重要課題になるものの、こうしたう課題を解決する手段はこれまでに見いだされていない。また、金属封止膜を用いると金属の持つ高い熱伝導性のために光照射デバイスの発光時に放出される熱を系外に放出することによって、皮膚に密着した発光体の温度を低く抑えることができる。これは、低温やけど等を起こさないためには非常に重要なことである。
本発明が解決しようとする課題は、曲面の多い生体に簡単に適用することができ、使い捨てのデバイスに使用可能で安価であり、かつ、高温高湿の環境下で長期保存した場合の光照射特性の劣化を抑制できる生体適用光照射デバイスの封止体を提供することである。また、本発明が解決しようとするもう1つの課題は、光照射対象に適用した状態で、生体適用光照射デバイスが発光していることを外部から目視により確認することができ、また、小型軽量化が可能であるとともに、安価で実用性の高い生体適用光照射デバイスを提供することである。
本発明者らは、使い捨て可能な生体適用光照射デバイスの用途を詳細に検討した結果、使用者が実際に使用するときだけ発光させれば良く、また発光させる時間は数時間であることに着目するに至った。そして、安価なプラスチック基板などのバリア層を設けていないフレキシブル基板を用いて有機半導体を用いた発光素子を検討した結果、外気にさらす時間を限定すれば水蒸気透過率が大きいフレキシブル基板でも使用可能であることを見出した。このような着目と発想は照明やディスプレイの分野では生じえない斬新な発想であり、有機半導体を用いた発光素子の基板に水蒸気透過率が大きい(バリア層を設けていない)フレキシブル基板を使用して、実際に数時間も治療用途等に十分に使用可能な光照射特性で光照射できたことは大きなブレークスルーであった。
さらに本発明者らは、種々検討を重ねた結果、金属層を有する保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを保管することで、有機半導体を用いた発光素子の基板にバリア層を設けていないフレキシブル基板を使用した場合に不活性雰囲気でなくとも高温高湿の環境下で長期保存に耐えられることを見出した。すなわち、水蒸気透過率が大きいフレキシブル基板を用いて有機半導体を有する生体適用光照射デバイスを製造した場合であっても、高温高湿の環境下で長期保存できることがわかった。金属層を有する保護袋は、アルミ防湿袋などとして安価に入手可能であるため、この方法は現実的に実施可能な方法である。特許文献1を読んだ当業者が安価に不活性雰囲気を提供することは現実的に難しいと諦めてしまう中、アルミ防湿袋などを用いればその内部を不活性雰囲気にせずに高温高湿の環境下で長期保存できるとの着想と実施化も、大きなブレークスルーであった。
また、さらに本発明者らは、もう1つの課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、発光素子から放射された光のうち、光照射対象に照射されずに端面側(面内方向)に伝搬した漏れ光を外部から視認しうる構成とすることにより、この光を指標として発光素子が発光しているか否かを確認できることも見出した。
上記課題を解決するための具体的な手段である本発明と、本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
[1] 保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを有する生体適用光照射デバイスの封止体であって、
生体適用光照射デバイスが基板と発光素子とを有し、
基板がフレキシブル基板であり、
発光素子が有機半導体または量子ドットを含み、
保護袋が金属層を有する、生体適用光照射デバイスの封止体。
[2] [1]に記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、発光素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、基板の水蒸気透過率が1×10−2g/m/day以下であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、基板が熱可塑性樹脂を主成分として含むことが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、基板の厚みが20〜200μmであることが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、基板がポリエステルフィルムであることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、基板の一方の表面側のみに発光素子を有することが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、発光素子が形成されていない側の基板の表面の少なくとも一部に粘着材を有することが好ましい。
[9] [8]に記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、粘着材の表面にさらに保護フィルムを有することが好ましい。
[10] [8]または[9]に記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、粘着材を介して生体の皮膚に固定できることが好ましい。
[11] [1]〜[10]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、保護袋の水蒸気透過率が1×10−6g/m/day以下であることが好ましい。
[12] [1]〜[11]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、保護袋の金属層がアルミニウム層であることが好ましい。
[13] [1]〜[12]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、保護袋がさらに絶縁層を有することが好ましい。
[14] [1]〜[13]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、保護袋がアルミ防湿袋であることが好ましい。
[15] [1]〜[14]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、生体適用光照射デバイスが携帯用であることが好ましい。
[16] [1]〜[15]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、保護袋の内部に、さらに乾燥剤を有することが好ましい。
[17] [1]〜[16]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、発光素子の照射強度が3〜80mW/cmであることが好ましい。
[18] [1]〜[17]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、生体適用光照射デバイスの発光時の温度が45℃未満であることが好ましい。
[19] [1]〜[18]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、基板の一方の表面側のみに発光素子を有し、
発光素子の基板とは反対側の表面および発光素子の側面が金属膜で封止されたことが好ましい。
[20] [19]に記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、基板の側面が、金属膜によって封止されていないことが好ましい。
[21] [1]〜[20]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、発光素子が電極に挟まれた発光層を有し、
基板と発光層の間に位置する電極と、基板との間にさらに金属層を有することが好ましい。
[22] [1]〜[21]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、生体適用光照射デバイスから発光された光が生体の皮膚に照射されることが好ましい。
[23] [1]〜[22]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体は、生体適用光照射デバイスが医療用途または美容用途であることが好ましい。
[24] 保護袋に生体適用光照射デバイスを封止する封止工程を含み、
生体適用光照射デバイスが基板と発光素子とを有し、
基板がフレキシブル基板であり、
発光素子が有機半導体または量子ドットを含み、
保護袋が金属層を有する、生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法。
[25] [24]に記載の生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法は、封止工程を相対湿度30%以下の雰囲気で行うことが好ましい。
[26] [24]または[25]に記載の生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法は、封止工程を真空脱気しながら行うことが好ましい。
[27] [24]〜[26]のいずれか一つに記載の生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法は、保護袋の内部にさらに乾燥剤を入れた後に封止工程を行うことが好ましい。
[28] 保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを有する生体適用光照射デバイスの封止体を用いる生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法であって、
保護袋から取り出した生体適用光照射デバイスを生体に装着して発光部を発光させ、
生体適用光照射デバイスが基板と発光素子とを有し、
基板がフレキシブル基板であり、
発光素子が有機半導体または量子ドットを含み、
保護袋が金属層を有する、生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法。
[29] [28]に記載の生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法は、発光素子が形成されていない側の基板の表面の少なくとも一部に粘着材を有し、
粘着材によって生体適用光照射デバイスを生体の皮膚に固定することが好ましい。
[30] [28]または[29]に記載の生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法は、発光素子が電源と接続され、
電源から電気を供給して発光素子を発光させることが好ましい。
[31] 電源と、保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを有する生体適用光照射デバイスの封止体とを有するセットであって、
生体適用光照射デバイスが基板と発光素子とを有し、
基板がフレキシブル基板であり、
発光素子が有機半導体または量子ドットを含み、
保護袋が金属層を有する、セット。
[32] プラスチックシートと、プラスチックシート表面の一部に設けられた発光体層と、発光体層全体を前記プラスチックシートとの間に封止する金属封止膜とを有する、治療用又は美容用の生体適用光照射デバイスであって、
プラスチックシートは、発光体層が設けられている発光体形成面とは反対側の面を、被着体に向けて適用する被着体適用面とするものであり、
発光体層は有機半導体または量子ドットを含んでおり、
プラスチックシートの発光体形成面には前記金属封止膜で被覆されていない非被覆領域が存在しており、
プラスチックシートの被着体適用面全体を被着体に密着させた状態で発光体層から発光させたときに、プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できることを特徴とする、治療用又は美容用の生体適用光照射デバイス。
[33] [32]に記載の生体適用光照射デバイスは、非被覆領域またはその近傍が光っていることを視認できることが好ましい。
[34] [32]または[33]に記載の生体適用光照射デバイスは、非被覆領域が、発光層が形成されている領域を示すように形成されていることが好ましい。
[35] [32]〜[34]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスは、非被覆領域の形状が、発光体形成面の周縁に沿った枠状であることが好ましい。
[36] [35]に記載の生体適用光照射デバイスは、非被覆領域が、周縁に沿って帯状に形成された部分を有することが好ましい。
[37] [35]または[36]に記載の生体適用光照射デバイスは、非被覆領域が、周縁に沿って円弧状に形成された部分を有することが好ましい。
[38] [32]〜[37]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスは、プラスチックシートの端面が、金属封止膜で被覆されていない領域を有することが好ましい。
[39] [38]に記載の生体適用光照射デバイスは、プラスチックシートの端面全体が、金属封止膜で被覆されていないことが好ましい。
[40] [32]〜[39]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスは、プラスチックシートの発光体層の発光波長における屈折率が、1.5〜1.8であることが好ましい。
[41] 発[32]〜[40]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスは、光体層が、エレクトロルミネッセンスにより発光するものであることが好ましい。
[42] [32]〜[40]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスは、発光体層が、発光性有機材料と電解質を混合することを特徴とした電気化学発光セルにより発光するものであることが好ましい。
[43] [32]〜[42]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスは、金属封止膜の熱伝導率が100W/mK以上であることが好ましい。
[44] [32]〜[43]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスは、金属封止膜が乾燥剤を含むことが好ましい。
[45] [32]〜[44]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスは、発光層から発光させたときに、非被覆領域における光の輝度が1cd/m以上になることが好ましい。
[46] [32]〜[45]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスは、被着体が生体の皮膚であることが好ましい。
[47] [32]〜[46]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスの使用方法であって、
生体適用光照射デバイスの被着体適用面全体を被着体に密着または接近させた後、発光体層から発光させて被着体に光を照射する際、生体適用光照射デバイスのプラスチックシートの少なくとも一部が光っているか否かを目視により識別することにより、被着体に光が照射されているか否かを確認することを特徴とする、生体適用光照射デバイスの使用方法。
[48] [47]に記載の生体適用光照射デバイスの使用方法は、生体適用光照射デバイスの被着体適用面全体を被着体に密着させることが好ましい。
[49] [32]〜[46]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスを有することを特徴とする、皮膚疾患治療装置。
[50] [32]〜[46]のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスを有することを特徴とする、美容施術装置。
[51] 有機半導体または量子ドットを含む発光素子とフレキシブル基板とを有していて、やけど防止機構を備えることを特徴とする、生体適用光照射デバイス。
[52] [51]に記載の生体適用光照射デバイスは、生体適用光照射デバイスが、発光素子を駆動させる定電流回路を備えており、やけど防止機構が定電流回路の電圧が特定値以下になったときに出力を低減する機構であることが好ましい。
[53] [51]に記載の生体適用光照射デバイスは、生体適用光照射デバイスが、発光素子を駆動させる定電圧回路を備えており、やけど防止機構が発光素子を流れる電流が特定値以上になったときに出力を低減する機構であることが好ましい。
[54] [51]に記載の生体適用光照射デバイスは、生体適用光照射デバイスを生体に貼着するための粘着領域を有しており、やけど防止機構が特定の温度以上において粘着領域の粘着力が低下して生体からデバイスを脱落させる機構であることが好ましい。
本発明によれば、曲面の多い生体に簡単に適用することができ、使い捨てのデバイスに使用可能で安価であり、かつ、高温高湿の環境下で長期保存した場合の光照射特性の劣化を抑制できる生体適用光照射デバイスの封止体を提供できる。
また、本発明によれば、光照射対象に適用した状態で、生体適用光照射デバイスが発光していることを外部から目視により確認することができ、また、小型軽量化が可能であるとともに、安価で実用性の高い治療用又は美容用の生体適用光照射デバイスを実現しうる。
本発明の生体適用光照射デバイスの一例を示す概略断面図である。 本発明の生体適用光照射デバイスのEL型発光体層の一例を示す概略断面図である。 本発明の生体適用光照射デバイスの電気化学発光セル(LEC:light emitting chemical cells)型発光体層の他の例を示す概略断面図である。 本発明の生体適用光照射デバイスが備える発光体層および金属封止膜のパターンの具体例を示す模式図である。 本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスの構造の一例の概略図である。 本発明の生体適用光照射デバイスの封止体の一例の概略図である。 やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイスの駆動回路の一例を示すブロック図である。 やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイスの駆動回路の他の例を示すブロック図である。 生体適用光照射デバイスの使用態様の一例の概略図である。 実施例3で作製した生体適用光照射デバイスの発光素子の発光スペクトルである。 実施例5で測定した生体適用光照射デバイスの電流密度−電圧特性を示すグラフである。 実施例5で測定した生体適用光照射デバイスの電流密度の温度依存性を示すグラフである。
以下、本発明について説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において「主材料」というとき、特記のない限り、そのものを構成する材料のうち最も含有率が大きい材料のことを意味する。
<<生体適用光照射デバイス(プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス)>>
本発明の生体適用光照射デバイスは、プラスチックシートと、プラスチックシート表面の一部に設けられた発光体層と、発光体層全体をプラスチックシートとの間に封止する金属封止膜とを有する。ここで、プラスチックシートは、発光体層が設けられている発光体形成面とは反対側の面を、被着体に向けて適用する被着体適用面とするものである。発光体層は有機半導体または量子ドットを含んでおり、金属封止膜は、発光体層を覆い、且つ、プラスチックシートの発光体形成面に金属封止膜で被覆されていない非被覆領域が形成されるように部分的に設けられている。そして、この生体適用光照射デバイスは、プラスチックシートの被着体適用面全体を被着体に密着させた状態で発光体層から発光させたときに、プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できることを特徴とする。
本発明の生体適用光照射デバイスを使用するには、そのプラスチックシートの被着体適用面を被着体に接触または近接させて発光体層から発光させる。被着体は、生体の表面を構成する組織であればよく、最も好ましいのは生体の皮膚である。よって、「被着体適用面」は、「生体適用面」と言い換えることができる。
この生体適用光照射デバイスでは、こうして発光体層から発光させると、発光体層からの光の一部はプラスチックシートを透過して被着体に照射され、被着体に対して治療又は美容の効果を奏する。一方、発光体層からの光の他の一部は、生体適用光照射デバイスを構成する各層同士の屈折率差やプラスチックシートと空気との屈折率差、金属封止膜の界面での全反射により、これら各部の界面で反射しつつ端面側に伝搬する。ここで、本発明の生体適用光照射デバイスでは、プラスチックシートの発光体形成面に金属封止膜で被覆されていない非被覆領域が存在していることにより、端面側に伝搬する光のうち、プラスチックシート内を伝搬する光の散乱光が非被覆領域を通して放出されると考えられ、非被覆領域やその近傍が光っている様子を視認することができる。このため、生体適用光照射デバイスを使用する使用者は、被着体適用面全体を被着体に密着させた状態で使用しても、目視によりプラスチックシートが光って見えるときは発光体層が発光し、プラスチックシートが光って見えないときは発光体層が発光していないと識別することができる。よって、使用者が、発光していることを確認できないことに不安を覚えたり、発光していない生体適用光照射デバイスを使い続けたりする問題を回避することができる。また、粘着テープで光照射部を皮膚に貼り付ける際に、位置合わせのガイドとして有用である。この場合は、皮膚に装着する前に発光させることで正確に位置を特定できる。
また、この生体適用光照射デバイスでは、発光体層全体をプラスチックシートと金属封止膜により封止しているため、外部の水蒸気や酸素が発光体層に接触することを効果的に阻止することができる。このため、発光体層の経時的な特性劣化を抑制することができる。また、金属封止膜は、バリア能が高い透明樹脂材料や半透明材料を用いる封止膜に比べて遥かに安価である。このため、これを封止膜として用いることにより、生体適用光照射デバイスの製造コストの低減に有利になる。さらに、金属封止膜は熱伝導性が高いため、生体適用光照射デバイスの内部で生じた熱を、該金属封止膜を介して容易に放熱することができる。これにより、この生体適用光照射デバイスは、発光体層が発光している間、常に低温に保持され、生体適用光照射デバイスの適用により被着体が火傷等を負うことを回避することができる。
さらに、この生体適用光照射デバイスは、透明基板としてプラスチックシートを用い、発光体層に有機半導体または量子ドットを用いているため、ガラス基板やバルクの無機半導体を用いるものに比べて、大きさや形状の自由度が高く、曲面で形成されている皮膚に容易に密着させることができる。併せて軽量小型化が可能である。
本発明の生体適用光照射デバイスの一例を図1に示す。ただし、本発明の生体適用光照射デバイスの構成は、図1に示す具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
図1において、1はプラスチックシート、2は発光体層、3は金属封止膜、4は被着体をそれぞれ表す。また、図1に示す生体適用光照射デバイスは、付加的な構成として光取り出し向上フィルム5と粘着テープ6を有している。光取り出し向上フィルム5は被着体適用面の中央領域と被着体の間に配され、粘着テープ6は光取り出し向上フィルム5の周囲に配され、被着体適用面に貼り付けられている。
以下において、本発明の光照射体が備える各部の構成について詳述する。なお、以下の説明では、発光体層から発光させたときに、生体適用光照射デバイスから被着体に照射される光を「照射用の光」といい、プラスチックシートの少なくとも一部において視認できる光を「視認用の光」ということがある。
[プラスチックシート]
プラスチックシートは、光照射体を構成する発光体層および金属封止膜を支持する支持体としての機能を有し、さらに、その発光体形成面とは反対側の面が、被着体に向けて適用される被着体適用面を構成する。生体適用光照射デバイスを適用する際、プラスチックシートの被着体適用面は、被着体に接触させてもよいし、被着体に接触させず、微小距離を空けて近接させてもよい。
プラスチックシートは、発光体層の発光波長における屈折率が1.5〜1.8であることが好ましく、1.6〜1.8であることがより好ましい。上記範囲の屈折率を有するプラスチックシートは、透過率と反射率のバランスがよく、発光体層が放射した光を効率よく透過させて被着体に入射させることができると同時に、発光体層が放射した光の一部を界面で反射させ、その内部を通じて端面側(面内方向)に伝搬することができる。これにより、被着体において治療または美容の効果が高く得られるとともに、プラスチックシートの一部が光っている様子も明確に視認することができ、発光体層が発光しているか否かを容易に識別することができる。
ここで、本発明におけるプラスチックシートの屈折率とは、アッベの屈折率計による方法(JIS D542−1950)により測定されるナトリウムのD線(589.3nm)における屈折率のことをいう。
プラスチックシートの材料は、特に制限されないが、屈折率が上記の範囲であり、且つ、耐熱性および寸法安定性に優れるものであることが好ましい。プラスチックシートの材料の好ましい例として、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリエーテル系樹脂等を挙げることができ、中でも、耐熱性、透明性、寸法安定性に優れることから、ポリエチレンナフタレート(PEN)を好適に用いることができる。また、シーエムシー出版、田畑三郎監修の「透明導電性フィルム」、シーエムシー出版、澤田豊監修の「透明導電膜の新展開 IV」に記載のプラスチック材料、特表2014−515360号公報に記載のプラスチック材料もプラスチックシートの材料として好ましく用いることができる。
プラスチックシートの厚さは、特に限定されないが、10〜500μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましく、25〜125μmであることがさらに好ましい。これにより、比較的薄く軽量でありながら、強度にも優れたプラスチックシートを得ることができる。また、本発明のプラスチックシートには数100μm以下の厚みを有する曲面に曲げられるガラスシートと積層されていても良い。
ここで、本明細書中においてプラスチックシート、および後述する各層の厚さはJIS7130に規定された方法(接触式および非接触式で多くの製品が販売されている)により測定される厚さである。
プラスチックシートの平面視での形状は、生体適用光照射デバイスの用途に応じて適宜選択することができ、真円状、長円状、楕円形状の他、三角形、四角形、五角形等の多角形状、星形状、不定形等のいずれでもよい。また、プラスチックシートが角部を有する場合、その角部は丸みを帯びていてもよい。
プラスチックシートの平面視での寸法も、生体適用光照射デバイスの用途に応じて適宜選択することができる。例えば、生体適用光照射デバイスを携帯型で用いる場合には、長軸方向の長さは5〜100mmであることが好ましく、10〜50mmであることがより好ましく、10〜30mmであることがさらに好ましい。
これらの生体適用光照射デバイスは、水蒸気透過率が10×10−6g/m/day以下の金属製(例えばアルミニウムを主体とした材料からなる)の防湿袋に入れることが好ましく、常温での長期保存に耐えうることができる。これにより、生体適用光照射デバイスは、バッグ等に入れて持ち運び易く、且つ、被着体適用面の面積が十分に広く、被着体適用面を被着体に安定して接触させることができるものになる。
プラスチックシートは、単層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。また、多層構成のプラスチックシートは、プラスチック材料を主材料とする層を複数積層した構成であってもよいし、プラスチック材料を主材料とする層(以下、「プラスチック層」という)と無機材料を主材料とする層(以下、「無機材料層」という)を交互に積層した複合構成であってもよい。ここで、複合構成の場合、応力緩和の観点から、プラスチック層と無機材料層は、それぞれ2層以上が交互に繰り返し積層されていることが好ましい。また、複合構成における各無機材料層の厚さは、プラスチック層のうち最も薄い層の厚さの1/10000〜1/100であることが好ましく、1/5000〜1/200であることがより好ましく、1/1000〜1/500であることがさらに好ましい。無機材料層の具体例として、SiO、Si−N、SiONからなるSi系無機材料層等を挙げることができる。これらのSi系無機材料層は防湿性に優れ、生体適用光照射デバイスに水分に対する高いバリア性を付与することができる。
[発光体層]
発光体層は、光を生じて放射する層であり、プラスチックシート表面の一部に設けられている。発光体層から放射された光の一部は、プラスチックシートを透過して被着体に照射される。発光体層から放射された光の他の一部は、生体適用光照射デバイスを構成する各層の界面を反射して端面側に伝搬される。本発明の生体適用光照射デバイスでは、この端面側に伝搬する光の散乱光が金属封止膜の非被覆領域から放出されると考えられ、非被覆領域やその近傍が光っていることを視認できる。
発光体層が発光する光は、蛍光、遅延蛍光および燐光のいずれであってもよく、このうち2種類以上の光が混在していてもよい。また、発光体層が放射する光の波長は、生体適用光照射デバイスの使用目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、生体適用光照射デバイスを皮膚ガン治療に用いる場合、一般的には、5−アミノレブリン酸(5-ALA)またはその類縁体を光照射の前に患部に塗布し2〜3時間程度放置後、5-ALAがポルフィリン誘導体(プロトポルフィリンIX:PpIX)に体内で転化したあと、当該ポルフィリンの吸収波長にて生体適用光照射デバイスを発光させ、励起状態を作り出して一重項酸素によって当該ポルフィリンを分解させることが必要である(非特許文献3、4)。当該ポルフィリン誘導体(PpIX)は420nm,510nm,540nm,580nm,630nmに吸収を持つ化合物である(非特許文献5)。これらの吸収波長に合致する発光波長であればどの波長でも有効に作用する。ただし、青色等の短波長の光は皮膚表面近くにしか光が到達せず、630nm等の赤色発光であれば皮膚から数mmは浸透すると言われており、皮膚ガン治療としては皮膚の内部まで浸透する長波側の光を用いることが有効である。ただし、初期の非悪性の皮膚ガンに対しては、青色、緑色でも十分に機能する。また、ニキビ治療やシミ治療の場合には青色光が有効に作用する。更に不眠症やうつ病の治療には白色光、褥瘡治療、組織修復促進には、500〜600nmの光が有効である。
(非特許文献3)International Immunopharmacology 11 (2011) 358-365
(非特許文献4)Cancer, 1997年、第79巻、No.12, p2284
(非特許文献5)Oncologinst, 2006, Vol.1, p1034
また、本発明の生体適用光照射デバイスでは、発光体層は有機半導体または量子ドットを含み、それらが発光体層における発光や光の放射に寄与する。有機半導体または量子ドットは、バルクの無機半導体に比べて、成膜したときの寸法や形状の自由度が大きいため、これらを発光体層の材料に用いることにより、生体適用光照射デバイスの小型軽量化に有利になる。本発明では、有機半導体を採用することがより好ましい。発光体層の発光のメカニズムは、特に限定されないが、エレクトロルミネッセンス(EL:ElectroLuminescence)や電気化学発光セル(LEC)によるものであることが好ましい。これにより、発光体層に印加する電圧の制御により、生体適用光照射デバイスのONとOFFの切り替え、被着体における照射光量の制御、照射間隔の設定等を精密かつ容易に再現性よく行うことができる。
[EL型発光体層]
以下において、まずEL型発光体層について説明する。
EL型発光体層は、正負の両電極より発光材料にキャリア(正孔と電子)を注入し、キャリアの再結合エネルギーにより生成した励起状態の発光材料が放射失活することにより発光するものである。このEL型発光体層は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に設けられた発光層を有する。このうち、陽極がプラスチックシート側になるように配されてもよいし、陰極がプラスチックシート側になるように配されてもよいが、陽極がプラスチックシート側になるように配されることが好ましい。また、陽極と陰極の間には、発光層のみが設けられていてもよいし、発光層の他に1層以上の有機層が設けられていてもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的なEL型発光体層の構造例を図2に示す。図2において、11は陽極、12は正孔注入層、13は正孔輸送層、14は発光層、15は電子輸送層、16は陰極を表わす。
以下、EL型発光体層の各部材および各層について説明する。
(陽極)
発光体層における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウム錫酸化物(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は100Ω□以下が好ましく、20Ω□以下がより好ましく、5Ω□以下が特に好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
ここで、特に、発光体層を、その陽極がプラスチックシート側になるように配する場合には、陽極の設計は次のことを考慮して行うことが好ましい。
一般に、プラスチックシート表面に、インジウム錫酸化物膜等の透明導電膜を蒸着やスパッタリング法等の気相成長法により形成する場合、プラスチックシートはガラス基板に比べて耐熱性が低いため、通常、基板温度を比較的低く設定して成膜を行う。このため、成膜された透明導電膜は、結晶性が低く、電気抵抗が高くなる傾向がある。よって、本発明でプラスチックシート表面に設ける透明導電膜は、ガラス基板表面に成膜する場合よりも厚く成膜するか、導電性透明材料と、これよりも導電性が高い材料(高導電性材料)を組み合わせて陽極を形成することが好ましい。透明導電性材料と高導電性材料を組み合わせる方法としては、例えばプラスチックシート表面に銀や銅の金属(高導電性材料)をメッシュ状に形成した後、その上を覆うようにインジウム錫酸化物等の導電性透明材料を成膜して陽極を形成する方法、あるいはメッシュ状に形成した金属にPEDT:PSS等の導電性高分子を塗布して陽極を形成する方法等を挙げることができる。ここで、金属で形成するメッシュのピッチや線幅は、目的とする輝度と生体適用光照射デバイスの寸法によって決まる適正な電気抵抗に応じて適宜選択することができ、通常は、ピッチが100〜500μm程度、線幅が1〜20μmであるのが適当である。
メッシュ状に導電材料を形成して電極の抵抗を下げる方法は有効であるが、陽極表面に凹凸が生じるため、その凹凸を埋めて平坦化する手法をさらに採用することが望ましい。このために、例えば塗布型のホール注入層を設けたり、高導電性の有機材料を厚く設けて凹凸を減らしたりする方法を用いることができる。
メッシュ電極を用いずに陽極のシート抵抗を10Ω□以下、好ましくは5Ω以下、特に好ましくは3Ω□以下にすることが、陽極の抵抗による電圧ドロップを避けるために好ましく、最も効果的である。このような電極として、透過型の金属薄膜を陽極に用いることが望ましい。一般に金属は光を透過させないが、20nm以下の超薄膜にすることで光を透過させることができる。最適な厚みはシート抵抗と透過率との関係で探すことができるが、一般に厚みは10nm以下にすることが好ましい。ここでいう金属薄膜には、Ag、Al、Cu、Auを用いることができるが、Agを用いるのが安定性やプロセスの容易さの点で好ましい。
これら金属を陽極に用いた場合、隣接する有機材料として用いるホール注入層、ホール輸送層との仕事関数が大きくずれているとホール注入性が低下するという問題が生じる。何故ならば、Agの仕事関数は4.3eV程度、Alは4.2eV程度、Cuは4.6eV程度で一般的なホール注入材料の5.0〜5.2eVとのずれがあり、その分、スムーズなホール注入が起こりにくいためである。この点を考慮して、金属薄膜の上面にはITOやIZO等の導電性の高い酸化物導電体を積層することが好ましい。
また、インジウム錫酸化物等の無機導電膜をプラスチックシートの表面に形成する場合、密着性を改善するための接着層をプラスチックシート表面に設け、その上に導電膜を形成することが好ましい。接着層としては、SiOx,SiN,SiON, Al等の金属酸化物類等を挙げることができるがこれに限定されない。
プラスチックシートに透明導電膜が形成された電極基板の市販品としては、フレクリア(TDK社製)、PECFシリーズ(ペクセル・テクノロジーズ社製)、酸化インジウムスズコートPET(シグマアルドリッチ社製639303−1EA,5EA等)、カーボンナノチューブコーティングフィルムやナノ銀をコーティングしたフィルム(東レ社製等)あるいは、グラフェンを導電膜とした銀ナノロッド等があり、これらをプラスチックシートと陽極の積層構造として使用してもよい。
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、発光体層の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する発光体層を作製することができる。
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。本発明では、発光材料として有機半導体または量子ドットを使用する。これらの好ましい範囲と具体例については後述する。本発明の生体適用光照射デバイスが高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明のEL型発光体層において、発光は発光層に含まれる発光材料から生じる。この発光は蛍光発光、遅延蛍光発光および燐光発光のいずれであってもよく、このうち2種類以上の発光が生じていてもよい。また、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
以下において、発光材料として用いることができる有機半導体の具体例を例示する。ただし、本発明において発光材料として用いる有機半導体はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。その他、非特許文献6に記載の発光材料を用いることもできる。
(非特許文献6)Organic Light-emitting Materials ans Devices, Edited by Heng Meng, Tayer & Francis, New York.
高分子発光材料としては、ポリフェニルビニレン(PPV)、ポリフルオレン(PF)を基本骨格としたものを挙げることができる。高分子発光材料の共重合体の構造を変えることにより、青、緑、赤等種々の発光色を実現することができる。また、これら基本骨格のポリマーに、配位子をデンドリマー型に改良した燐光発光型ドーパントを混合すると、エネルギー移動が起こり燐光発光型の高分子発光材料を得ることができる。代表的な基本骨格の材料を下記に示すが、トリフェニルアミン誘導体との共重合体などを含めて公知の高分子型有機EL材料を用いることができる。またこれらの分子量等に制限はない。
これらの高分子型有機EL材料は、昇華しないため種々の有機溶媒に溶解させた後に、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等種々の公知のプロセスを用いて、薄膜を形成することが可能である。
次に、発光材料として用いることができる量子ドットについて説明する。
量子ドットとしては、半導体のナノメートルサイズの微粒子(半導体ナノ結晶)であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる発光材料であれば特に限定されない。具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIIIV族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体等を含有する半導体結晶の他、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物が挙げられる。或いは、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag、Cuのような希土類金属のカチオン又は遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることができる。中でも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS,CdSe,CdTe、InGaP等の半導体結晶が好適である。
量子ドットは、1種の半導体化合物からなるものであっても、2種以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、該コアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。コアシェル型の量子ドットとしては、励起子が、コアに閉じ込められるように、シェルを構成する半導体化合物として、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドットの発光効率を高めることができる。このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、GaP/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、GaInP/ZnSe、GaInP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、GaInP/ZnSTe、GaInP/ZnSSe等が挙げられる。
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長領域にわたって、その発光波長を調節することができる。一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5〜20nmの範囲であることが好ましく、特に1〜10nmの範囲であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
また、量子ドットの形状は特に限定されず、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、量子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状であると仮定したときの値とすることができる。量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。また、量子ドットの結晶構造、また粒径については、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、UV−Vis吸収スペクトルによって、量子ドットの粒径、表面に関する情報を得ることもできる。
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
EL型発光体層を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
以下に、EL型発光体層に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R1〜R10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。nは3〜5の整数を表す。
発光層のホスト材料として用いることができる好ましい化合物として、例えば特開2015−129240号公報の段落[0055]〜[0059]に記載される化合物を挙げることができる。正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物として、例えば特開2015−129240号公報の段落[0061]に記載される化合物を挙げることができる。正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物として、例えば特開2015−129240号公報の段落[0063]〜[0068]に記載される化合物を挙げることができる。電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物として、例えば特開2015−129240号公報の段落[0070]に記載される化合物を挙げることができる。正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物として、例えば特開2015−129240号公報の段落[0072]に記載される化合物を挙げることができる。電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物として、例えば特開2015−129240号公報の段落[0074]〜[0076]に記載される化合物を挙げることができる。電子注入材料として用いることができる好ましい化合物として、例えば特開2015−129240号公報の段落[0078]に記載される化合物を挙げることができる。さらに添加可能な材料として安定化材料を挙げることができる。安定化材料として用いることができる好ましい化合物として、例えば特開2015−129240号公報の段落[0080]に記載される化合物を挙げることができる。この段落で引用する特開2015−129240号公報の各段落の記載は、本明細書の一部としてここに引用する。
以上のEL型発光体層を構成する各層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
[LEC型発光体層]
次に、LEC型発光体層について説明する。
LEC型発光体層は、発光層が発光性有機半導体材料と電解質の混合物を電極でサンドイッチした単純な構造からなるデバイスである。当該デバイスに電圧を印加すると電極と有機材料層の界面でイオンが移動し、陰極と陽極界面でpin接合が自動的に形成され、キャリアバランスが自動的に最適化され、低電圧で動作するという特徴を有する。具体的なLEC型発光体層の構造例を図3に示す。図3において、21は陽極、22は発光層、23は陰極を表わす。
陽極および陰極の構成についての説明は、上記のEL型発光体層の対応する説明を参照することができるが電子とホールの注入の効率は電極の仕事関数には無関係に選択することができる。
LEC型発光体層の発光層は、高分子半導体材料と電解質を含む(非特許文献7)。高分子半導体材料には、いわゆるドーピング材料を用いて燐光発光等を行うことができ、有機半導体または量子ドットを含む。量子ドットの説明と好ましい範囲については、上記のEL型発光体層において用いる量子ドットの説明と好ましい範囲を参照することができる。
(非特許文献7 Nature Communications, DOI: 10.1038/ncomm2002)
発光材料として用いうる有機半導体としては、現状では高分子型蛍光材料に限られているが、原理的には、燐光発光材料をドーピングすることおよび低分子型蛍光または燐光材料を用いることが可能である。また、イオン液体としては、特許文献や非特許文献で公知のものが広く用いられる。
発光体層の厚さは、EL型またはLEC型のいずれであるかによって異なるが、生体適用光照射デバイスの駆動電圧を下げるためには2μm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。また、照射用の光および視認用の光を十分な強度で得る点から、EL型の発光体層の厚さは10〜500nmであることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましく、20〜150nmであることがさらに好ましい。またLEC型の発光体層の厚さは200nm〜2μmであることが好ましい。
(発光体層のパターン)
発光体層は、プラスチックシート表面の一部に設けられている。
本明細書ではプラスチックシート表面のうち、発光体層が設けられている側の表面を「発光体形成面」といい、発光体形成面のうち発光体層が設けられている領域を「発光体層形成領域」といい、発光体層が設けられていない領域を「発光体層非形成領域」という。この生体適用光照射デバイスでは、発光体層から発光させたとき、被着体適用面の発光体層形成領域に対応する領域から被着体に向けて光が放射される。ここで、被着体適用面の発光体層形成領域に対応する領域とは、プラスチックシートの被着体適用面のうち、発光体層を基板に正射影して得られる領域であり、後述の封止体用光照射デバイスの「発光部」に相当する。
発光体形成面における発光体層形成領域の位置、形状および寸法は特に限定されないが、発光体層形成領域は発光体形成面の周縁付近を除いた領域であることが好ましい。この場合、照射用の光は被着体適用面の周縁付近を除いた領域、すなわち中央領域から放射される。一方、被着体適用面は、周縁付近よりも中央領域の方が被着体に密着性よく適用できるため、照射用の光が被着体適用面の中央領域から放射されることにより、この照射用の光を均一かつ効率よく被着体に照射することができる。
発光体形成面における発光体層形成領域の周縁からの距離(発光体層非形成領域の幅)は、最短距離で0.5〜50mmmmであることが好ましく、1〜20mmであることがより好ましく、1〜10mmであることがさらに好ましい。
発光体層形成領域の形状(発光体層のパターン)は特に限定されないが、広い面積を確保し易いことから、発光体形成面の形状の相似形、または発光体形成面と同種の形状であることが好ましい。なお、同種の形状とは、真円状と長円状と楕円形状、角数が等しい多角形状同士等である。角数が等しい多角形同士は、いずれか一方の角部が丸みを帯びていても同種の形状または相似形であることとする。また、発光体形成領域は、連続的な形状である必要はなく、ストライプ状や格子状、ドット状等であってもよい。
図4に、発光体層形成領域の具体的なパターン例を示す。図4(a)〜(d)において、最も外側の枠で囲まれた領域は発光体形成面1aを表し、最も内側の枠で囲まれた領域は発光体層形成領域2aを表し、中間の枠で囲まれた領域は金属封止膜3の被覆領域を表し、最も外側の枠と中間の枠の間の領域は金属封止膜3の非被覆領域1nを表す。そして、図4(a)、(b)、(d)は発光体層形成領域2aの形状が発光体形成面1aの形状の相似形である場合、図4(c)は発光体層形成領域2aの形状が発光体形成面1aの形状と同種の形状である場合をそれぞれ示す。
[金属封止膜]
金属封止膜は、発光体層全体をプラスチックシートとの間に封止するものであり、プラスチックシートの発光体形成面の上に、発光体層を覆い、且つ、発光体形成面に金属封止膜で被覆されてない非被覆領域が形成されるように部分的に設けられている。本発明の生体適用光照射デバイスでは、このように発光体形成面に金属封止膜で被覆されていない非被覆領域が存在することにより、発光体層から発光させた際、プラスチックシート内を伝搬する光の散乱光が非被覆領域において外部に放出され、その非被覆領域やその近傍が光っていることを視認することができる。金属封止膜で被覆されていない領域であって、金属封止膜の端面とプラスチックシートの端面が同一平面内にある場合は、界面で反射しつつ端面側に伝搬した光がプラスチックシート端面から放出され、プラスチックシートと空気との屈折率差により弱く視認できることもある。金属封止膜を構成する材料は、バリア性および反射率が高い金属材料であればよく、さらに熱伝導率が高い金属材料であることがより好ましい。具体的には、金属封止膜の熱伝導率は100W/mK以上であることが好ましく、200W/mK以上であることがより好ましい。本明細書中において金属封止膜の熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により測定される値である。
好ましい金属封止膜の材料として、ステンレス、アルミニウム、タングステン、銅等が挙げられる。これらの金属材料を封止膜として用いることにより有機EL発光体を高輝度で光らせた場合に発生する熱放出が効率よく高輝度で光らせた場合も生体適用光照射デバイスの表面温度の上昇が小さく、肌に密着する機器として用いることができる。望ましい表面温度は、低温やけどを生じない温度で長時間キープできることが好ましく、具体的には43℃以下である。低温やけどは44℃においては4〜10時間で発生すると言われている。種々の環境要因を考えると照射具を発光させた時の発熱はできるだけ小さくすることが望ましく金属封止膜による放熱処置は重要である。
これらの金属封止膜は、有機EL発光体の上面、特に陰極と陽極に挟まれた発光エリアを覆うように形成することが重要である。金属封止膜は導電性を示すため、電極の上部にそのまま形成するとショートしてしまうため、金属封止膜の有機EL素子に接着する側には接着性を有しかつ絶縁性の樹脂層を形成することが望ましい、これら樹脂層には、樹脂接着端面から水分、酸素が入ることを遮断するために乾燥剤を含むことが望ましい。さらに接着面と反対側の大気にさらされる側には、薄いポリマーをコーティングして金属封止膜のそりを改善する方法があり、例えばWO201010/6853A1、WO2011/01648A1等に記載がある。また、金属封止膜に設ける接着層の厚みは、水や酸素の浸入を抑えるためには薄いほど好ましいが、0.5〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
金属封止膜の厚さは、特に限定されないが、10〜500μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましい。これにより、生体適用光照射デバイスの薄型軽量化を図りつつ、金属封止膜による、水分や酸素等に対するバリア性を十分に享受することができる。
(金属封止膜の非被覆領域のパターン)
金属封止膜は、プラスチックシートの発光体形成面の上に、発光体を覆い、且つ、発光体形成面に金属封止膜で被覆されていない非被覆領域が形成されるように部分的に設けられている。
発光体形成面における非被覆領域の位置、形状および寸法は、非被覆領域が発光体層形成領域に重ならない限り、特に限定されるものではないが、発光体形成面の周縁に沿って非被覆領域が形成されていることが好ましい。これにより、発光体層形成領域を被着体適用面の中央領域に対応する領域に確保し易く、被着体への光の照射を均一かつ効率よく行うことができる。
非被覆領域の形状(パターン)は、視認のし易さや、意匠性等を考慮して適宜選択することができるが、視認のし易さを重視した形状の例として、発光体形成面の周縁全体に沿った枠状を挙げることができる。また、発光体形成面が多角形状である場合、非被覆領域の形状は、発光体形成面の周縁の一部に沿った帯状またはカギ状等であってもよい。また、発光体形成面が真円状または楕円形状である場合の非被覆領域の形状は、発光体形成面の周縁の一部に沿った円弧状等であってもよく、発光体形成面が長円状である場合の非被覆領域の形状は、発光体形成面の周縁の一部に沿った円弧状または帯状等であってもよい。非被覆領域がこれらの形状である場合、非被覆領域は発光体形成面の周縁と重なっていてもよいし、周縁から離間していてもよいが、周縁と重なっていることが好ましい。
非被覆領域は、連続的な形状である必要はなく、ストライプ状やドット状等であってもよい。
図4に、非被覆領域の具体的なパターン例を示す。図4(a)〜(d)において、最も外側の枠と中間の枠の間の領域が非被覆領域1nを表し、図4(a)、(c)、(d)は非被覆領域1nの形状が枠状である場合、図4(c)は非被覆領域1nの形状が帯状である場合をそれぞれ示す。
上記のように、本発明の生体適用光照射デバイスでは、発光体層から発光させたとき、この非被覆領域またはその近傍が光っていることを視認できる。光っていることの視認のし易さの点から、発光体層から発光させたときの非被覆領域における光の輝度は1cd/m以上であることが好ましく、10cd/m以上であることが好ましい。
本明細書中において非被覆領域の光の輝度は、輝度計(ドプコンテクノハウス製、BM−9A)を用いて測定される値である。
また、金属封止膜は、プラスチックシートの端面を被覆していないことが好ましい。発光体層から放射された光のうち、生体適用光照射デバイスを構成する各層の界面間を伝搬する光は、プラスチックシートの端面側に向かう指向性を有する。よって、プラスチックシートの端面が露出していることにより、この伝搬する光を端面から効率よく取り出すことができ、端面が強く光っている様子を視認することができる。これにより、生体適用光照射デバイスを使用する使用者は、発光体層が発光しているか否かをより明確に識別することができる。この場合、プラスチックシートの端面は、一部が金属封止膜から露出していてもよいし、全部が金属封止膜から露出していてもよいが、端面の全部が金属封止膜から露出していることが好ましい。
非被覆領域は、発光体層形成領域を示すように形成されていてもよい。発光体層形成領域は、金属封止膜の上からは正確に認識することができない場合が多い。このため、生体適用光照射デバイスを所望の位置に密着させることが容易ではないことも考えられる。このような場合、非被覆領域が発光体層形成領域を示すような位置に形成されていれば、生体適用光照射デバイスを所望の位置に容易に密着させることができる。金属封止膜と非被覆領域が、互いのコントラストの差や色の違いにより視覚的に区別できる場合は、発光体層から発光させない状態でも所望の位置に生体適用光照射デバイスを密着させることができる。一方、金属封止膜と非被覆領域が視覚的に区別しづらい場合は、発光体層から発光させた状態で密着を行えば、非被覆領域が発光体層形成領域を示すように光って見えるために、所望の位置に生体適用光照射デバイスを密着させることができる。
発光体層形成領域を示すように形成する非被覆領域は、発光体層が形成されている領域を金属封止膜側から人が視覚的に認識できるような態様になっていれば、その詳細は特に制限されない。例えば、発光体層形成領域の周縁から特定の距離以上離れた領域を非被覆領域にすれば、金属封止膜側から発光体層形成領域を視覚的に認識できる。ここでいう特定の距離は、例えば3mm以上、5mm以上、10mm以上、20mm以上にしたり、50mm以下、30mm以下にしたりすることが可能である。このとき、発光体層形成領域の周縁から特定の距離以上離れた領域をすべて非被覆領域としてもよいし、特定の幅(例えば1mm以上、3mm以上、5mm以上にしたり、20mm以下、10mm以下にしたりすることが可能である)だけを非被覆領域としてもよい。後者の場合は、発光体層形成領域を縁どりするような形で非被覆領域を形成してもよい。また、別の態様として、発光体層形成領域が矩形である場合は、その矩形の四隅を示すように非被覆領域を形成してもよい。例えば、非被覆領域を矢印の形にして四隅を示すようにしたりすることが可能である。非被覆領域の形状は特に限定されず、真円状、長円状、楕円形状の他、三角形、四角形、五角形等の多角形状、星形状、不定形状、ストライプ状、格子状、ドット状等のいずれでもよい。また、非被覆領域の形状が角部を有する形状である場合、その角部は丸みを帯びていてもよい。
[粘着材層]
本発明の生体適用光照射デバイスは、必要に応じて、被着体適用面の少なくとも一部に粘着テープが貼り付けられていてもよい。粘着テープは、粘着材層と、粘着材層の一方の側に積層された剥離シートを有し、粘着材層の他方の側が被着体適用面に貼り付けられる。この粘着テープは、生体適用光照射デバイスを使用する際、剥離シートが剥離され、露出した粘着材層の表面が被着体に貼着される。これにより、生体適用光照射デバイスを被着体に一時的に固定し、被着体に対して安定に光を照射することができる。
粘着材層に用いる粘着材としては、例えばスリーエム社製の片面、両面テープを用いることができる。特にシリコーン型粘着剤を用いると貼り直しの際に有利である。
被着体適用面における粘着テープの貼着箇所は、特に限定されないが、発光体層非形成領域に対応する領域の範囲内であることが好ましい。これにより、被着体適用面から放射される光を、粘着材層の影響を与えずに、効率よく被着体に照射することができる。
また、粘着テープの寸法は、被着体適用面の面積によっても異なるが、生体適用光照射デバイスを被着体に安定に固定する点から、幅が1〜20mm、好ましくは2〜10mmであることが好ましいが、光照射器具の形状によって幅広の部分と幅狭の部分があっても良い。
[光取り出し向上フィルム]
本発明の生体適用光照射デバイスは、必要に応じて、光取り出し向上フィルムを有していてもよい。光取り出し向上フィルムは、被着体適用面からの光の取り出し効率を向上させる機能を有し、被着体適用面の中央領域と被着体との間に配される。
この光取り出し向上フィルムとしては、プラスチックフィルムに種々の形状(例えば半球や多角錐形状)の加工を施したもの等を用いることができる。
また、本発明の生体適用光照射デバイスには、必要に応じて、その被着体適用面に光化学療法剤層を設けてもよい。光化学療法剤層の説明と好ましい範囲については、「封止体用生体適用光照射デバイス」の「光化学療法剤層」の欄を参照することができる。
<<生体適用光照射デバイスの使用方法>>
本発明の生体適用光照射デバイスを使用するには、被着体適用面に被着体を接触または接近させた後、発光体層の陽極と陰極に電圧を印加して発光体層から発光させる。これにより、被着体適用面から照射用の光が放射されると同時に、プラスチックシートの少なくとも一部が光る。被着体適用面からの照射用の光により、被着体において光による治療または美容の効果を得ることができる。また、この際、プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認して発光体層が発光していることを確認するようにする。これにより、生体適用光照射デバイスが発光していないのでなはいかと不安を覚えたり、発光していない生体適用光照射デバイスを使い続けたりする問題を解消することができる。
ここで、本発明の生体適用光照射デバイスは、被着体適用面を被着体に接触して使用することが好ましい。これにより、被着体に対して安定かつ均一に光を照射することができる。ここで、このような使用態様の場合、従来の生体適用光照射デバイスでは、生体適用光照射デバイスが発光しているか否かが確認できない問題があった。これに対して、本発明の生体適用光照射デバイスでは、このような使用態様で使用しても、発光体層から発光させたときにプラスチックシートの少なくとも一部が光るため、生体適用光照射デバイスが発光していることを容易に確認することができる。すなわち、本発明の生体適用光照射デバイスは、被着体適用面を被着体に接触して使用する場合に、特に顕著な効果を得ることができる。
<<生体適用光照射デバイスの封止体>>
次に、本発明の生体適用光照射デバイスの封止体について説明する。
本発明の生体適用光照射デバイスの封止体は、保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを有する生体適用光照射デバイスの封止体であって、
生体適用光照射デバイスが基板と発光素子とを有し、
基板がフレキシブル基板であり、
発光素子が有機半導体または量子ドットを含み、
保護袋が金属層を有する。
この生体適用光照射デバイスの封止体は、生体適用光照射デバイスの基板がフレキシブル基板であることにより、その生体適用光照射デバイスを曲面の多い生体に簡単に適用することができる。また、生体適用光照射デバイスを保護袋の内部に有することにより、高温高湿の環境下で長期保存した場合の生体適用光照射デバイスの光照射特性の劣化を抑制することができる。そのため、生体適用光照射デバイスのフレキシブル基板として水蒸気透過率がある程度高い基板も用いることができるため、生体適用光照射デバイスを使い捨てが可能な安価な物品として構成することができる。通常は、フレキシブル基板として水蒸気透過率が1×10−6g/m/day以下であるものを採用するのが一般的であるが、本発明の封止体にする場合は水蒸気透過率が1×10−2〜1×10−6g/m/dayや、1×10−2〜1×10−4g/m/dayであるフレキシブル基板も採用することが可能である。一般的なフレキシブル基板に採用されているプラスチックの水蒸気透過率は5〜21g/m/day程度であるため、水蒸気透過率を下げるために通常は無機物(例えばSiO、SiN、SiON)を積層する等の方法が採用されている。無機層は、厚くすれば水蒸気透過率を十分に下げることができるが、屈曲したときにひび割れが生じやすくなるという問題がある。このため、無機層を薄くして有機層(例えばポリマー)と積層することによりひび割れ防止を図ること等が行われているが、煩雑でコストが上昇するという欠点がある。本発明の封止体にする場合は、比較的薄い無機層を形成したフレキシブル基板であっても採用することが可能であるため、このような問題を回避することができる。本発明の封止体にする場合は、例えば無機層の厚さが200nm以下であって、有機層を有さないフレキシブル基板を採用することが可能である。
以下、本発明の生体適用光照射デバイスの封止体の好ましい態様について説明する。なお、以下の説明では、上記の「プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス」の「生体適用光照射デバイス」と区別するため、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスを「封止体用光照射デバイス」と言うことがある。ただし、「封止体用光照射デバイス」として、上記の「プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス」を用いてもよい。
<生体適用光照射デバイス(封止体用光照射デバイス)>
本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、基板と発光素子とを有し、基板がフレキシブル基板であり、発光素子が有機半導体または量子ドットを含む。好ましくは有機半導体を含む場合である。この生体適用光照射デバイスは、金属層を有する保護袋の内部に収容されている。この封止体が有する生体適用光照射デバイスは、上記の「プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス」であってもよいが、これに限定されるものではなく、有機半導体または量子ドットを含む発光素子とフレキシブル基板を有する生体適用光照射デバイスがいずれも採用可能である。
本発明の生体適用光照射デバイスの封止体は、生体適用光照射デバイスを1個のみ有していても、複数有していてもよい。本発明では、生体適用光照射デバイスが1個ずつ保護袋に入れられていることが、使用者が単独で1か所のみに使用する場合であっても、取出し後の劣化を抑制できるため好ましい。
<生体適用光照射デバイス(封止体用光照射デバイス)の構成>
本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスの構成の一例として、発光素子に有機EL素子を用いたものを図5に示す。
図5において、202は基板、217は発光素子をそれぞれ表す。ここで、以下の説明では、基板202の発光素子217が設けられている側の面を「発光素子形成面」と言い、基板202の発光素子形成面とは反対側の面を「生体適用面」と言う。図5に示す生体適用光照射デバイスは、この生体適用面を生体に向けて該生体に適用されるものである。また、この生体適用光照射デバイスでは、発光素子が層状をなしており、発光素子217の発光層207が面光源になっている。ここで、基板202の生体適用面のうち、発光層207を基板に正射影して得られる領域を「発光部218」と言う。
また、図5に示す生体適用光照射デバイスは、付加的な構成として、金属層203、金属封止膜212、フィル材210、封止用接着剤211、光取り出し向上フィルム216および粘着材層201を有している。金属層203は、基板202と発光素子217の間に介在している。金属封止膜212は、フィル材210および封止用接着剤211とともに、発光素子217全体を基板202との間に封止するように配されている。光取り出し向上フィルム216は、基板202の生体適用面に、発光部218と一致するように配されており、接着剤層201は、発光部218の周囲に配されている。
以下において、生体適用光照射デバイスの各部材および各層について説明する。
[基板]
本発明に用いられる生体適用光照射デバイスは、基板を有し、基板がフレキシブル基板である。
本発明では、基板の水蒸気透過率が1×10−2g/m/day以下であることが好ましい。水蒸気透過率がある程度高い基板を用いた場合であっても、本発明の生体適用光照射デバイスの封止体によれば高温高湿の環境下で長期保存した場合の光照射特性の劣化を抑制できる。また、水蒸気透過率がある程度高い基板を用いることができるため、本発明の生体適用光照射デバイスの封止体は使い捨てのデバイスに使用可能で安価である。
本発明では、基板が熱可塑性樹脂を主成分として含むことが好ましい。ここで、この封止体が有する生体適用光照射デバイスの基板における「主成分」とは、基板の全体の質量の50質量%以上を占める成分のことを言う。基板が熱可塑性樹脂を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。また、基板は、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。基板は、単層であることが好ましい。基板は、無機膜を主成分とする層などの熱可塑性樹脂を主成分としない層を有さないことが、使い捨てのデバイスに使用可能で安価とするために好ましい。そのため、バリア層などが形成されていないフレキシブル基板を用いることが好ましい。
基板の主成分である熱可塑性樹脂としては、制限はない。基板の主成分として用いられる熱可塑性樹脂の例としては、ポリエステルなどを挙げることができる。
本発明では、基板がポリエステルフィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムまたはポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムであることがより好ましく、PENフィルムであることが特に好ましい。水蒸気透過率は、PETフィルムで約21g/m/day、PENフィルムで約6.7g/m/dayである。
本発明では、これらのフィルム上に無機層(例えばSiO、SiN、SiON)を形成することにより水蒸気透過率を1×10−2g/m/day以下にしたフレキシブル基板を採用することが好ましい。無機層の厚さは200nmにすることが、ひび割れ防止の観点から好ましい。また、有機層を形成することは必ずしも必要とされない。
なお、本発明は、基板が硬化性樹脂成分を含むことを排除するものではない。基板に硬化性樹脂を用いる場合は、フレキシブル性を完全に失わない程度に、硬化を制御することや、基板中の含有量を制御することが好ましい。
生体適用光照射デバイスを生体に適用して使用した場合に生体からの生体適用光照射デバイスの剥がれを抑制する観点から、基板の厚みを薄くすることが好ましい。本発明では、基板の厚みが20〜200μmであることが好ましく、20μm〜125μmであることがより好ましく、20μm〜80μmであることが特に好ましい。フィルム基板の厚みが薄くなるとフィルムの剛性を小さくでき、その結果、曲面の多い生体(例えば生体の皮膚)への追随性が良好となり、使用中に剥がれにくくなる。
本発明では、生体適用光照射デバイスから効率的に光照射するために、後述の粘着材層による生体への粘着領域の幅を小さくして、発光面を広くとることが好ましい。このように粘着領域の幅を小さくする場合には皮膚への接着性が低下するという課題が生じる。基板の厚みを薄くすることにより、この課題を解決することができる。
本発明では、生体適用光照射デバイスを生体(例えば皮膚)に密着させ、発光させている間は皮膚の表面温度が、低温やけどが発生しない範囲で上昇することとなる。本発明者は、皮膚の表面温度が上昇することにより、皮膚への接着性が低下するという新規課題も見出した。この新規課題は、特に剛性が大きい基板を用いた場合に発生する。この新規課題は、皮膚に発光面を密着させる生体適用光照射デバイスを検討する中で見出されたものであり、従来知られておらず、当業者が容易に類推できる課題ではなかった。基板の厚みを薄くすることにより、この新規課題も解決することができる。
[発光素子]
発光素子は有機半導体または量子ドットを含む。発光素子の形態は特に限定されないが、外形形状が層状をなしていることが好ましい。以下の説明では、外形形状が層状をなす発光素子を「発光体層」と言うことがある。
発光素子としては、制限はない。有機半導体を含む発光素子の例としては、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機発光ダイオード:OLEDとも言う)、ポリマー発光ダイオード(PLED)、有機発光電気化学セル(OLEC)、無機材料からなる量子ドットなどを挙げることができる。
本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、その発光素子が、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子であることが好ましく、層状の有機EL素子、すなわち、EL型発光体層であることがより好ましい。
EL型発光体層の層構成については、上記の「プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス」における[EL型発光体層]の項の記載を参照することができる。図5に示す生体適用光照射デバイスの発光素子217はEL型発光体層であり、図5において、204は陽極、205は正孔注入層、206はインターレイヤー(正孔輸送層であってもよい)、207は発光層、208は電子注入層、209は陰極を表す。所望により、発光層207と電子注入層208の間に、電子輸送層や正孔阻止層を設けてもよい。
以下、EL型発光体層の各部材および各層について説明する。
(電極)
発光素子は陽極および陰極として作用する電極を一般的に含む。陽極および陰極の説明と好ましい範囲、その構成材料については、上記の「プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス」の「陽極」、「陰極」の欄を参照することができる。中でも、陽極および陰極の材料には、ITO、銀、アルミニウムなどを用いることが好ましく、特に基板側になる電極の材料には、透明導電材料を用いることが好ましい。また、陽極の材料としてはITOが好ましく、陰極の材料としてはアルミニウムが好ましい。仕事関数が5.0eV程度のITOの陽極の方が、仕事関数が4.3eV程度の銀の陽極よりも正孔注入層に正孔を効率よく注入することができ、駆動電圧を低くできる観点から好ましい。
また、本発明ではフレキシブル基板を用いるため、特に、陽極および陰極のうち基板側になる電極は、抵抗ができるだけ小さくなるように、透明導電膜として形成することが好ましい。一般に、透明導電膜に用いられるITOはスパッタによって製膜される。ここで、フレキシブル基板に樹脂基板を用いる場合、樹脂基板は一般に耐熱性が低いため、ガラス基板にITO電極を形成する場合のように、高温でスパッタされたITOをアニールして結晶化を高めることが難しい。そのため、フレキシブル基板上に形成されたITO電極は通常よりも結晶性が低く、抵抗が高くなる傾向がある。これに対して、例えば銀薄膜などの仕事関数が低い金属の膜の上部に、仕事関数が5.0eV程度のITOの陽極を設けると、金属の抵抗が低いことにより、正孔注入効率の向上を図ることができるとともに、電圧を印加して発光させるときの電圧供給元から離れるに従う電圧ドロップが大きくなりにくく、発光ムラが生じにくくなる。特に1000cd/m以上の高輝度で発光させた場合に顕著に発光ムラが生じにくくなる。発光ムラを生じにくくすることで、生体適用光照射デバイスの温度ムラを顕著に抑制でき、生体適用光照射デバイスのショートを回避できる。また、発光ムラを生じにくくすることで、本発明の生体適用光照射デバイスを皮膚に直接密着させて用いる場合に、低温やけども回避できる。なお、この電極の抵抗を低減する金属の膜は、後述する防水層としての金属層の機能を兼ねていてもよい。
また、基板側の電極は、ストライプ状あるいはメッシュ状の金属層とITOの透明導電膜を組み合わせたものであってもよい。具体的には、フレキシブル基板の上に、スパッタ法等によりITOを全面的に形成し、その上に、銀等の金属でストライプ状あるいはメッシュ状の金属層を形成して抵抗を下げてもよいし、フレキシブル基板の上に、銀等の金属でストライプ状あるいはメッシュ状の金属層を形成し、その上に、スパッタ法等によりITOを全面的に形成し、抵抗を下げてもよい。ここで、ITOのかわりに、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))のような導電性高分子を塗布して透明導電膜を形成することも可能である。
その他、銀ナノワイヤを導電材料とした基板、同じく銀ナノ粒子、銅のナノ粒子を用いた基板、高導電性有機半導体材料を用いた基板等、公知のものを用い、その上にITOの透明導電膜を形成することで、電極の抵抗を下げるようにしてもよい。
(発光層)
発光層の説明と好ましい範囲、その構成材料については、上記の「プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス」の「発光層」の欄を参照することができる。発光材料は、適用する生体の疾患の状況に応じて選択することができ、例えば、皮膚ガンやニキビ等の皮膚疾患には400〜500nm程度の青色光が効果的な場合がある。そのため、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスを、こうした皮膚疾患の治療に用いる場合には、400〜500nmに発光極大を有する発光材料を用いることが好ましい。また、光化学療法剤を併用する場合には、体内で生成するポルフィリン誘導体の吸収である500〜700nmに発光極大を有する発光材料を用いることが好ましい。また、生体内においては、ヘモグロビンおよび水が大きな吸収を有する波長域の光は体内に浸透しづらい。よって、体外から光照射して体内により深く浸透させるには、600nm以上の長波長域に発光極大を有する発光材料を用いることが好ましく、生体組織内に存在する水による吸収を避けるには、1200nm程度までの範囲に発光極大を有する発光材料を用いることが好ましい。
発光層の材料は、高分子化合物であっても低分子化合物であってもよい。また、低分子化合物は、塗布型の低分子化合物であってもよいし、真空蒸着できる低分子化合物であってもよい。高分子化合物として、例えば、住友化学社製の高分子系の赤色燐光発光材料を挙げることができる。塗布型の低分子化合物としては、1,3−bis(carbazol−9−yl)benzene(mCP)を挙げることができる。mCPはドーパントとしての赤色燐光材料(Bis(2−benzo[b]thiophene−2−yl−pyridine)(acetylacetonate)iridium(III),(Ir(btp)(acac)))等と組み合わせて用いることができる。真空蒸着できる低分子化合物としては後述の構造のCBPを挙げることができる。CBPはドーパントとしての後述の構造のIr(ppy)等と組み合わせて用いることができる。
(その他の構成)
EL型発光体層が有してもよいこの他の有機層、すなわち、注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起阻止層、正孔輸送層、電子輸送層の説明と好ましい範囲、構成材料については、上記の「プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス」の各層についての記載を参照することができる。
[金属層]
本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスでは、発光素子が電極に挟まれた発光層を有し、基板と発光層の間に位置する電極(基板側の電極)と、基板との間にさらに金属層を有することが好ましい。これは以下の理由による。
すなわち、PEN基板などのフレキシブル基板を用いる生体適用光照射デバイスは、発光時間を数時間とする場合であっても、その劣化を抑制する構成とすることが好ましい。PEN基板などのフレキシブル基板を用いる場合、もともと製造時に基板に含まれる水分が有機EL素子に拡散して有機EL素子の劣化を引き起こす可能性が考えられるからである。基板と発光層の間に位置する電極と、基板との間にさらに金属層を有することにより、金属層が発光層への水分の侵入を防止する防水層として機能し、こうした有機EL素子の劣化を抑制することができる。
また、生体適用光照射デバイスを生体の皮膚に装着して発光させた場合、生体の皮膚は汗をかく。そのため、フレキシブル基板を用いる場合(特に125μm以下の薄いフレキシブル基板を用いる場合や、バリア層を有しないPEN基板を用いる場合)には、基板と発光層の間に位置する電極と、基板との間にさらに金属層を有する構成が、基板に元々含まれていた水分ともに汗に由来する水分も効果的に遮蔽され、有機半導体層、量子ドット層や陰極に対する水分の悪影響を最小限にできるためにより好ましい。
基板の上に積層される金属層(基板側の電極と基板との間に配される金属層)としては、銀またはアルミニウムの膜が好ましく使用される。金属層の基板との密着力を上げるためには、下地にクロム等の別種の金属を用いることも可能である。さらに銀やアルミニウムの酸化を防止するために、銀やアルミニウムと他の金属を組み合わせた合金を用いることもできる。
金属層は金属薄膜であることが好ましく、厚みが3nm〜20nmであることがより好ましい。
[金属封止膜]
金属封止膜は、必要に応じて設けられるものである。金属封止膜は、発光素子を保護するとともに、発光素子で発生した熱を外部に放熱する放熱板としても機能する。図5に示す生体適用光照射デバイスでは、発光素子217の上面および側面がフィル材210で覆われており、このフィル材210を覆うように金属封止膜212が設けられ、さらに、この金属封止膜212の下端部と基板202の表面との間が封止用接着剤211で封止されている。
本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、例えば図5に示すように、基板202の一方の表面側のみに発光素子217を有し、発光素子217の基板202とは反対側の表面および発光素子217の側面が金属封止膜211で封止されていることが、その生体適用光照射デバイスを適用している生体の低温やけどを回避する観点から好ましい。
ここで、低温やけどは、接触部で44℃、3〜4時間以上で受傷すると言われている(独立行政法人 製品評価技術基盤機構からのプレスリリース 平成21年11月26日 http://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2009fy/091126.html)。このため生体適用光照射デバイスの発光中には接触する皮膚の温度を44℃未満に保つことが好ましく、43℃未満に保つことがより好ましく、42℃未満に保つことが特に好ましい。生体適用光照射デバイスの使用時間が3時間よりも短い場合にも、生体適用光照射デバイスの発光中には接触する皮膚の温度を45℃未満に保つことが好ましい。
特許第4651281号では光の照射強度は低いほうが良いとされ、照射強度は1〜10mW/cmとの記載がある。しかしながら、照射強度が弱いということは長時間光を当て続けることが必要とされ、使用者にとっては光照射デバイスを長く装着することを強いられる点で負担が大きかった。さらに特許第4651281号の図1に示されているように皮膚に貼り付けるテープが光照射デバイス全体を覆うように作られていると、光照射デバイスから発生した熱がこもって、人体に当たる部分の発熱が大きくなり、低温やけどを生じるリスクがあった。特許第4651281号で照射強度が低いことは、低温やけどを生じるリスクを避けるためであると予想される。
これに対し、本発明の好ましい態様では上記のとおりに金属封止膜による封止をすることで、フレキシブル基板を用いた完全なフレキシブル性を有する生体適用光照射デバイスにおいて照射強度を3mW/cm以上、特に10mW/cm以上にしても皮膚の表面温度を44℃未満にすることができる。具体的には、生体適用光照射デバイスの皮膚と接触する反対側に、アルミホイル等の金属膜からなる封止膜を設けることにより、照射強度が3〜80mW/cm、特に10〜50mW/cmで発光させても発光部の温度は44℃以下に保つことができるため、低温やけどを回避して心配なく使用でき、また皮膚装着時間も短縮できることが可能となる。
なお、金属封止膜に用いる金属膜は、金属単体からなる金属膜に限定されず、効率的に熱放射をできれば金属以外の成分を含んでいてもよい。また、金属膜の代わりに効率的に熱放射をできる材料で代用してもよい。
一方、本発明では、基板の側面は金属封止膜で封止されていないことが、生体適用光照射デバイスを安価に製造する観点から好ましい。本発明の生体適用光照射デバイスの封止体によれば、フレキシブル基板の側面が封止されていない場合であっても、高温高湿の環境下で長期保存した場合の光照射特性の劣化を抑制できる。
金属封止膜と基板の間を封止する封止用接着剤としては、特に制限はないが、水および酸素遮断性の大きな接着剤を選択して用いることが好ましい。そのような接着剤の市販品として、例えば、水および酸素遮断性の高いUV(Ultraviolet)硬化性エポキシ樹脂(スリーボンド社製 TB3124M)や、双葉電子工業社製のOleDry−F(オーレドライエフ)(商品名)、モレスコ社製のモイスチャーカット(商品名)等を挙げることができる。また、味の素ファインテクノ社製の防湿剤を混入した封止フィルムも好ましく使用できる。
[粘着材層]
本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、必要に応じて、基板の生体適用面の少なくとも一部に粘着材層が設けられていることが好ましい。ここで、粘着材層とは、基板の生体適用面に粘着材を付与することにより形成される層である。以下の説明では、生体適用面のうち粘着材層が設けられている領域を「粘着領域」」と言うことがある。基板の生体適用面に粘着材層を設けることにより、生体適用光照射デバイスの生体への装着、固定を簡単に行うことができる。
本発明では、生体適用光照射デバイスを、粘着材層を介して生体の皮膚に固定できることが好ましい。ここで、生体適用光照射デバイスの発光部から放射された光を患部に直接照射する場合、放射された光が患部にもれなく照射されることが好ましい。そのため、粘着材層は、生体適用光照射デバイスの基板の生体適用面のうち、発光部の周囲のみに設けることが好ましい。粘着材層を生体適用面の発光部の周囲に設ける場合、その粘着領域の幅は1〜10mmであることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましく、1〜3mmであることが好ましい。市販の粘着テープを用いてこのような粘着領域を形成する場合、粘着テープが発光部を覆わないように粘着テープの中央部を切り抜くことが好ましい。粘着テープとしては、通常の市販の粘着テープの他に、シリコーン型粘着剤を用いた粘着テープを用いることができる。シリコーン型粘着剤を用いた粘着テープは貼り直し易くいため、本発明の生体適用光照射デバイスに特に好ましく用いられる。
[光取り出し向上フィルム]
本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、必要に応じて、基板202の生体適用面に光取り出し向上フィルムを有していてもよい。これにより、生体への光照射効率を高めることができる。光取り出し向上フィルムは、生体適用面の少なくとも発光部に配されていればよく、発光部と一致する領域に配されていることが好ましい。
[光化学療法剤層]
本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、必要に応じて、基板202の生体適用面に光化学療法剤層を設けておくことが好ましい。光化学療法剤層は、化学療法剤からなる層であり、例えば、光化学療法剤を生体適用面に塗布すること等により設けることができる。これにより、患者は使用前に自ら光化学療法剤を患部に塗布する行為を不要にすることができる。光化学療法剤層は、生体適用面の少なくとも発光部に配されていればよく、発光部と一致する領域に配されていることが好ましい。光化学療法剤としては、特に限定されないが、5−アミノレブリン酸(5−ALAとも言う)を有効成分とするもの等を挙げることができる。5−アミノレブリン酸は、ガン細胞に集積してプロトポルフィリンIXに代謝されることが研究されており、これが光感受性物質として作用する。5−アミノレブリン酸以外にも公知の種々の光増感剤を用いることができる。具体的にはA.P.Castaneら、Photodiagnosis Photodyn Ther., 2004,vol.1 p279; R. Bonnell, Chem. Soc. Rev., 1995, v. 24, p19; J.C.Kennedyら、Photochemistry and Photobiology B:Biology, 1992, v.14, p275に記載されている。しかしながら、本発明で用いることができる光化学療法剤は、これらに限定されるものではない。
[保護フィルム]
生体適用光照射デバイスの生体適用面に、上記の粘着材層や光化学療法剤層を設ける場合には、必要に応じて、粘着材層や光化学療法剤層の上に保護フィルムを積層することが好ましい。この場合、使用者は、生体適用光照射デバイスを使用する前に保護フィルムを剥がして粘着材層や光化学療法剤層の表面を露出させ、その表面を患部に貼り付けることで治療を行うことができる。すなわち、別に光化学療法剤のクリームを患部に塗布することなく簡単に光線力学的療法による治療を始めることができる。
<生体適用光照射デバイスの製造方法>
生体適用光照射デバイスの製造方法としては、特に制限はない。有機半導体である発光素子に含まれる有機層は、塗布や蒸着により形成することができる。また、発光素子に含まれる電極などの金属層やその他の無機層についても、塗布や蒸着により形成することができる。特に、有機EL素子の製造方法として、一般に知られている真空蒸着法、インクジェット法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法等公知の方法を用いることができる。塗布方法としては、スピンコートなどの公知の方法を挙げることができる。蒸着方法としては、真空蒸着などを用いることができる。その他、スパッタリングなどにより各層を形成してもよい。塗布や蒸着により各層を積層する場合、各層の間に特に接着層などを設ける必要はない。
また、発光素子は、以上の多層の有機半導体構造に限定されない。電子および正孔が結合して発光層で励起状態を生じ、発光層が光を放射することができれば特に制限はない。
配線取出し用パッドや封止用の金属膜を設ける場合には、封止用接着剤を用いて部材どうしを接着することが好ましい。
粘着材を発光部の周囲にのみ製造する方法としては特に制限はなく、公知の方法で所望の形状に切り取ればよい。
生体適用光照射デバイスは、不活性雰囲気で製造する必要もない。不活性雰囲気で製造する場合よりも、空気雰囲気で製造した方が、安価に製造できる。
<保護袋>
本発明の生体適用光照射デバイスの封止体は、保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを有し、保護袋が金属層を有する。このような構成により、生体適用光照射デバイスが外気から遮断されることが好ましい。
このような構成により、フレキシブル基板の上に形成した有機半導体または量子ドットを含む発光素子は、特別なバリアフィルムを形成したフレキシブル基板を用いなくとも高温高湿の環境下で長期保存した場合の光照射特性の劣化を抑制できる。
保護袋に入れずに大気中に放置した生体適用光照射デバイスは、フレキシブル基板を通して水分や酸素が有機半導体または量子ドットを含む発光素子に侵入し、欠陥を生じさせる。このような欠陥は、生体適用光照射デバイスを発光させる場合にいわゆるダークスポットの発生を起こし、生体適用光照射デバイスは非発光部が大きくなる。そのような生体適用光照射デバイスは、単に発光面積が小さくなるだけではなく、発光素子のごく一部に電流が集中し、高温になってすぐに発光素子が破壊される。このような発光素子になった生体適用光照射デバイスを生体に適用しても、当然ながら積算照射量が不十分となり、期待した治療効果や美容効果が得られなくなる。
保護袋が有する金属層としては特に制限はない。例えば、アルミニウム層、アルミニウム合金層(銅、マグネシウム、マンガン、シリコン、亜鉛等)などを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
本発明では、保護袋の金属層がアルミニウム層であることが好ましい。
具体的には、本発明では、保護袋がアルミ防湿袋であることが好ましい。また絶縁性を付与するために金属層が高分子等の絶縁材料でコーティングされていることが好ましく帯電防止層を設けていることが好ましい。
アルミ防湿袋としては市販品を用いてもよい。例えば、Richmond technology, INC社製や、株式会社マルアイ、エーティーワイ株式会社製の防湿袋等が市販されている。これらの中でもRichmond technology, INC社製のもの(特にML−131 T−1)を保護袋として用いることが好ましい。
本発明では、保護袋の水蒸気透過率が1×10−4g/m/day以下であることが好ましく、1×10−5g/m/day以下であることがより好ましく、1×10−6g/m/day以下であることが特に好ましい。
さらに保護袋は、米軍規格であるMIL(Military Specifications and Military Standards)の規格に適合していることが好ましい。MILの規格に適合している場合、ピンホールが少なく、また外部から保護袋を突き刺されても穴が開きにくく、保護袋の内部に封止された生体適用光照射デバイスの劣化を抑制することができる。
本発明では、保護袋がさらに絶縁層を有することが、保護袋の内部で生体適用光照射デバイスが意図せずショートすることを回避する観点から好ましい。絶縁層は金属層の上にコーティングされていることが好ましい。
本発明の生体適用光照射デバイスの封止体は、保護袋の内部に、さらに乾燥剤を有することが好ましい。保護袋の内部における乾燥剤305の位置は、図6に示した位置に限定されない。
フレキシブル基板上に形成された生体適用光照射デバイスを製造する場合、製造時に基板が吸収した水分が有機半導体または量子ドットに欠陥を生じさせることがある。保護袋の内部に、さらに乾燥剤を有することにより、製造時に基板が吸収した水分が有機半導体または量子ドットに欠陥を生じることを抑制することができる。すなわち、保護袋の外部からの水分を遮断することに加えて、内部からの水分による劣化も抑制することで、より長期的な保存性を確保できる。
このような乾燥剤は、シリカゲル、ゼオライト等の公知の吸湿剤が使用できる。
保護袋は、図6における生体適用光照射デバイス取り出し用切断部304を、使用者が判別できるように示してあることが好ましい。例えば、生体適用光照射デバイス取り出し用切断部304に直線や文字を描いておいてもよい。また、生体適用光照射デバイス取り出し用切断部304の一部に重なるように、保護袋の封止性能を損なわない位置(例えば端部)に切り欠けを入れておいてもよい。
本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスを使用する際、使用者は使用前に保護袋を破いて、照射した部位(例えば患部)に生体適用光照射デバイスを貼り付けることが好ましい。保護袋を破く場合、保護袋の図6における生体適用光照射デバイス取り出し用切断部304を破くことが好ましい。
生体適用光照射デバイスを保護袋から取り出した後、電源と接続し、スイッチをONにすることにより治療を始めることができる。生体適用光照射デバイスと電源との接続については、後述の「生体適用光照射デバイスの使用態様」の欄を参照することができる。
<<生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法>>
本発明の生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法は、保護袋に生体適用光照射デバイスを封止する封止工程を含み、
生体適用光照射デバイスが基板と発光素子とを有し、
基板がフレキシブル基板であり、
発光素子が有機半導体または量子ドットを含み、
保護袋が金属層を有する。
[封止工程]
保護袋に生体適用光照射デバイスを封止する封止工程としては、特に制限はない。
本発明の生体適用光照射デバイスの封止体の製造方法は、封止工程を相対湿度30%以下の雰囲気で行うことが好ましく、相対湿度20%以下の雰囲気で行うことがより好ましく、相対湿度10%以下の雰囲気で行うことが特に好ましい。フレキシブル基板上に形成された生体適用光照射デバイスを製造する場合、製造時に基板が吸収した水分が有機半導体または量子ドットに欠陥を生じさせることがある。封止工程を相対湿度の低い雰囲気で行うことにより、製造時に基板が吸収した水分が有機半導体または量子ドットに欠陥を生じることを抑制することができる。
封止工程は、不活性雰囲気で封止する必要もない。不活性雰囲気で封止する場合よりも、空気雰囲気で封止した方が、安価に封止できる。封止工程を真空脱気しながら行うことが好ましい。
封止工程では、図6に示したように生体適用光照射デバイス302が保護袋301に入れられた後、ヒートシールなどにより封止部303を封止されることが好ましい。保護袋の内部にさらに乾燥剤を入れた後に封止工程を行うことが好ましい。
<<生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法>>
本発明の生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法は、保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを有する生体適用光照射デバイスの封止体を用いる生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法であって、
保護袋から取り出した生体適用光照射デバイスを生体に装着して発光部を発光させ、
生体適用光照射デバイスが基板と発光素子とを有し、
基板がフレキシブル基板であり、
発光素子が有機半導体または量子ドットを含み、
保護袋が金属層を有する。
本発明の生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法は、発光素子が電源と接続され、電源から電気を供給して発光素子を発光させることが好ましい。
本発明の生体適用光照射デバイスの封止体の使用方法は、発光素子が形成されていない側の基板の表面の少なくとも一部に粘着材を有し、粘着材によって生体適用光照射デバイスを生体の皮膚に固定することが好ましい。
その他の使用方法の詳細については、後述の「生体適用光照射デバイスの封止体の使用態様」の説明を参照することができる。
<<生体適用光照射デバイスの作動と制御>>
次に、本発明の生体適用光照射デバイス(プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス)と本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスの作動と制御について説明する。
本発明の生体適用光照射デバイス、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、基本的に絶縁体である有機化合物の薄膜から構成されているコンデンサともみなせる。従って、最初に電圧を印加するとコンデンサとしての充電が行われるため、状況によっては過大電流による絶縁破壊やショートが発生する危険性を回避する方策を講ずることが好ましい。そのための方策の一つとして、段階的に電圧を上げたり下げたりする方法がある。例えば、特開2012−82121号公報に記載されている態様を本発明の生体適用光照射デバイスにも採用することができる。
有機ELは、電極から注入されたホールと電子が発光層中で再結合することによって発光するメカニズムであるため、流れる電流によって明るさが変化する。すなわち電流駆動方式といえるため、照明やディスプレイの用途では定電流回路を用いる場合がほとんどであるが、本生体適用光照射デバイスの場合は定電圧駆動を行うこともできる。定電圧駆動の場合は、長時間駆動を継続すると有機EL発光部の抵抗が一般に徐々に大きくなり、駆動電流が減少してくる傾向がある。しかし、本発明の生体適用光照射デバイスを1回限りの使用に限定したいわゆる使い捨ての生体適用光照射デバイスとして使用する場合は、それほど長時間の発光寿命が必要でないため、さほど大きな問題とはならない。一方、本発明の生体適用光照射デバイスでは、パルス駆動を行って発熱を抑えることも可能である。また、逆バイアスを駆動開始時に行ったり、パルス駆動時に正バイアスと逆バイアスを組合せて駆動したりすることも可能である。本発明では、使用態様や使用目的に応じて、これらの駆動方式を適宜選択して採用することが可能である。
本発明の生体適用光照射デバイスは、所望の時間帯に発光するように制御することも可能である。例えば、5−ALAのように患者に適用した後に別の物質に転化するまで時間をおいた後に光照射が必要とされる場合がある。このような場合は、本発明の生体適用光照射デバイスにタイマー機能を備えつけておき、所望の時間が経過した後に発光するようにしておくことができる。このような制御は、制御プログラムにより行うことが好ましい。例えば、5−ALAを適用した場合は、適用から2〜3時間後に発光が開始するように制御することが好ましい。また、本発明の生体適用光照射デバイスおよび本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、所望の時間が経過した後に発光を停止するように制御することもできる。例えば、発光による治療が完了した後に、再使用を防ぐ意味で、一度使用した生体適用光照射デバイスを再び使えないようにする制御プログラムや回路を組んでおくことができる。
本発明の生体適用光照射デバイスおよび本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは携帯用とすることができる。携帯用とするには、電源部と光照射部が一体となっている装置とするか、電流を流すためのケーブルで両者を接続することが好ましい。これらには簡単に接続できるソケットが設けられていて、ユーザーが簡単に光照射部を接続したり、取り外したりすることができるようになっていることが好ましい。
さらに、万が一にも過電流が流れた場合、生体適用光照射デバイスは極めて高温になる危険性があることから、定格電流を超えた場合には直ちに回路が切れるような仕組みを有しているのが望ましい。これらは過電流遮断器を組み込むことで防止できる。また、温度センサやデバイス温度の指標となる特性値を検知する検知回路を内蔵し、発熱が過度に起こった場合に電力が遮断されるやけど防止機構等を組み込むことも有用である。このやけど防止機構を有する生体適用光照射デバイスについて、以下で説明する。
<<やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイス>>
次に、やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイス(本発明の生体適用光照射デバイス)について説明する。本発明の生体適用光照射デバイスは、有機半導体または量子ドットを含む発光素子とフレキシブル基板とを有していて、さらに、やけど防止機構を備えることを特徴とする。
有機半導体または量子ドットを含む発光素子およびフレキシブル基板の説明と好ましい範囲、構成材料の具体例については、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスの対応する記載を参照することができる。ただし、この生体適用光照射デバイスは、保護袋の内部に収容されてもよいし、保護袋の内部に収容されなくてもよい。
やけど防止機構は、生体適用光照射デバイスが生体にやけどを生じさせる程度の高温になる前に、生体適用光照射デバイスからの光照射を遮断または減弱させる機構である。以下において、やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイスの実施形態について説明する。なお、以下の説明では「生体にやけどを生じさせる程度の高温」を「やけど発生温度」と言う。
<やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイスの第1実施形態>
第1実施形態の生体適用光照射デバイスは、発光素子を駆動させる定電流回路と、定電流回路の電圧が特定値以下になったときに出力を低減するやけど防止機構を備えている。このやけど防止機構でやけどが防止される原理は以下の通りである。
すなわち、発光素子が有機半導体または量子ドットを含む生体適用光照射デバイスでは、定電流駆動時のデバイス温度と駆動電圧の間に、デバイス温度が高くなるに従って駆動電圧が低くなるという、一定の相関関係が見られる。従って、定電流回路の電圧が特定値以下であるということは、デバイス温度が特定温度以上であることを意味する。よって、上記の相関関係において、デバイス温度がやけど発生温度未満であるときの駆動電圧を特定値として、定電流回路の電圧がその特定値以下になったときに出力を低減するようにすれば、デバイス温度がやけど発生温度以上になることを未然に防ぐことができ、これにより、生体のやけどを確実に防止することが可能である。
ここで、出力低減の指標とする「特定値」は、デバイス温度と駆動電圧の相関関係において、デバイス温度が55℃以下であるときの駆動電圧であることが好ましく、デバイス温度が45℃以下であるときの駆動電圧であることが好ましく、デバイス温度が40℃以下であるときの駆動電圧であることがさらに好ましい。このデバイス温度と駆動電圧の相関関係は、例えば生体適用光照射デバイスを恒温槽内に放置して該デバイスを一定の温度に調整した後、その生体適用光照射デバイスを実際の使用条件で定電流駆動させて定電流回路の電圧を測定するという操作を、やけど発生温度付近で温度毎に複数行うことによって求めることができる。
また、定電流回路の電圧が特定値以下になったときの出力の低減は、発光素子に供給する電流の大きさを低減するものであってもよいし、発光素子への電流の供給を遮断するものであってもよい。
図7に、第1実施形態の生体適用光照射デバイスが備える駆動回路の一例を示す。
図7において、401は発光素子、402は電圧源、403は定電流駆動回路(定電流回路)、404は比較器、405は定電流駆動遮断回路を表す。この駆動回路では、電圧源402および定電流駆動回路403の動作により駆動回路内に定電流が供給される。また、比較器404および定電流駆動遮断回路405はやけど防止機構を構成し、比較器404には予め基準電圧が入力されている。基準電圧は、上記の定電流回路の電圧の「特定値」(出力低減の指標とする「特定値」)である。
この駆動回路では、定電流駆動回路403から供給される電流により発光素子401が駆動されるとともに、その定電流駆動回路403の電圧が比較器404に入力される。比較器404は、入力された電圧と基準電圧を比較し、入力された電圧が基準電圧以下になったときに定電流駆動遮断回路405を動作させる。定電流駆動遮断回路504の動作により、定電流駆動回路403からの電圧の供給が遮断され、発光素子401に駆動が停止する。
以上の機構により、図7の駆動回路を有する生体適用光照射デバイスでは、定電流駆動回路403の電圧が特定値以下になると発光素子401の駆動が停止し、生体適用光照射デバイスがやけど発生温度以上になることが未然に防止される。これにより、それを適用している生体のやけどを確実に防止することができる。
<やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイスの第2実施形態>
第2実施形態の生体適用光照射デバイスは、発光素子を駆動させる定電圧回路と、発光素子を流れる電流が特定値以上になったときに出力を低減するやけど防止機構を備えている。このやけど防止機構でやけどが防止される原理は以下の通りである。
すなわち、発光素子が有機半導体または量子ドットを含む生体適用光照射デバイスでは、定電圧駆動時のデバイス温度と駆動電流の間に、デバイス温度が高くなるに従って駆動電流が大きくなるという、一定の相関関係が見られる。従って、発光素子を流れる電流が特定値以上であるということは、デバイス温度が特定温度以上であることを意味する。よって、上記の相関関係において、デバイス温度がやけど発生温度未満であるときの電流を特定値として、発光素子を流れる電流がその特定値以上になったときに出力を低減するようにすれば、デバイスがやけど発生温度以上になることを未然に防ぐことができ、これにより、生体のやけどを確実に防止することが可能である。
ここで、出力低減の指標とする「特定値」は、デバイス温度と駆動電流の相関関係において、デバイス温度が55℃以下であるときの駆動電流であることが好ましく、デバイス温度が45℃以下であるときの駆動電流であることがより好ましく、デバイス温度が40℃以下であるときの駆動電流であることがさらに好ましい。このデバイス温度と駆動電流の関係は、例えば生体適用光照射デバイスを恒温槽内に放置して該デバイスを一定の温度に調整した後、その生体適用光照射デバイスを実際の使用条件で定電圧駆動させて定電流回路の電流を測定するという操作を、やけど発生温度付近で温度毎に複数行うことにより求めることができる。
また、発光素子を流れる電流が特定値以上になったときの出力の低減は、発光素子に印加する電圧の大きさを低減するものであってもよいし、発光素子への電圧の印加を遮断するものであってもよい。
図8に、第2実施形態の生体適用光照射デバイスが備える駆動回路の一例を示す。
図8において、401は発光素子、402は電圧源、406は定電圧駆動回路(定電圧回路)、407は電流検知/電圧変換回路、408は比較器、409は定電圧駆動遮断回路を表す。この駆動回路では、電圧源402と定電圧駆動回路406の動作により発光素子に401に定電圧が印加される。また、電流検知/電圧変換回路407、比較器408および定電圧駆動遮断回路409はやけど防止機構を構成し、比較器408には予め基準電圧が入力されている。基準電圧は、上記の定電圧回路における電流の「特定値」(出力低減の指標とする「特定値」)である。
この駆動回路では、定電圧駆動回路406から印加される電圧により発光素子401が駆動されるとともに、その発光素子402を流れる電流が電流検知/電圧変換回路407にて検知される。電流検知/電圧変換回路407は、検知した電流を電圧に変換して比較器408に出力する。比較器408は、入力された電圧と基準電圧を比較し、入力された電圧が基準電圧以上になったときに定電圧駆動遮断回路409を動作させる。定電圧駆動遮断回路409の動作により、定電圧駆動回路406からの電圧の印加が遮断され、発光素子401に駆動が停止する。
以上の機構により、図8の駆動回路を有する生体適用光照射デバイスでは、発光素子401を流れる電流が特定値以上になると発光素子401の駆動が停止して、生体適用光照射デバイスがやけど発生温度以上になることが未然に防止される。これにより、それを適用している生体のやけどを確実に防止することができる。
<やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイスの第3実施形態>
第3実施形態の生体適用光照射デバイスは、生体適用光照射デバイスを生体に貼着するための粘着領域を有しており、特定の温度以上において粘着領域の粘着力が低下して生体からデバイスを脱落させるやけど防止機構を備えている。
このやけど防止機構によれば、特定の温度以上において生体適用光照射デバイスが生体から脱落するため、特定の温度よりも高い温度の生体適用光照射デバイスが生体に密着した状態で保持されることがない。よって、その粘着力が低下し始める「特定の温度」がやけど発生温度未満である粘着領域を設ければ、生体適用光照射デバイスがやけど発生温度以上になる前に、該デバイスを生体から脱落させることができ、これにより、生体のやけどを確実に防止することができる。
ここで、粘着領域の粘着力が低下する特定の温度は、55℃以下であることが好ましく、50℃であることがより好ましく、45℃であることがさらに好ましい。
粘着領域は、生体適用光照射デバイスの生体適用面に、特定の温度以上で粘着力が低下する感温性粘着材を付与するか、特定の温度以上で粘着力が低下する感温性粘着テープを生体適用面に貼り付けることで形成することができる。そのような感温性粘着テープとして、ニッタ株式会社製の両面粘着テープ(インテリマーテープ、ウオームオフタイプ型番WS5130C02)や特開2000−351946号公報に記載された感温性粘着テープを挙げることができる。
<<生体適用光照射デバイスの使用態様>>
次に、本発明の生体適用光照射デバイス(プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス、やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイス)、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスの使用態様について説明する。なお、この項では、本発明の生体適用光照射デバイスと本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスを総称して「生体適用生光照射デバイス」と言い、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスのみを言うときは、「封止体用光照射デバイス」と言う。
生体適用光照射デバイスの使用態様の一例の概略図を図9に示した。図9に示した生体適用光照射デバイス101は、生体適用光照射デバイスの配線215(基板から伸びるリード線)によって中間コネクタ102に接続される。中間コネクタ102から電源103へは電源の配線104(リード線)が伸びて接続される。
例えば、図5に示す封止体用光照射デバイスが、生体適用光照射デバイス101として電源103に接続される場合、その陽極204に金属層201を介して配線取出し用パッド213を接続し、その配線取出し用パッド213に、導電接着剤214を介して配線215を接続する。なお、図5には、陽極204に接続された配線取出し用パッド213のみが描いているが、生体適用光照射デバイスには、この配線取り出し用パッド213とともに、陰極209に接続された配線取出しパッドも設けることが好ましい。
また、図1に示す生体適用光照射デバイスも、図5に示すのと同様の接続構造により陽極11、21を導電215に接続することができる。また、この生体適用光照射デバイスにも、陽極に接続された配線取出し用パッドを設けるとともに、陰極16、23に接続された配線取出し用パッドを設けることが好ましい。
生体適用光照射デバイスの配線215としては、FPC(Flexible printed circuits)や、通常の導線を挙げることができるが、FPCを用いることが好ましい。FPCは、配線取出しパッドに導電接着剤を塗布し、該FPCを熱圧着することにより接続することができる。また、導電は、ハンダづけにより配線取り出しパッドに接続することができる。配線の接続は、以上の方法に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。
本発明に用いられる生体適用光照射デバイスは、図5に示した使用態様に限定されるものではない。その他の態様として、例えば、中間コネクタ102を用いずに、生体適用光照射デバイス101と電源103とが、生体適用光照射デバイスの配線215のみ、または、電源の配線104のみで直接接続されていてもよい。生体適用光照射デバイス101と電源103とが直接接続されている場合は、保護袋に生体適用光照射デバイスに電源が接続された状態で封止され、セットになっていてもよい。ただし、生体適用光照射デバイス101と電源103は分離可能であることが好ましい。そのため、中間コネクタ102を用いない場合は、生体適用光照射デバイスにコネクタ部(不図示)を設け、電源の配線104をコネクタ部に接続することがより好ましい。
電源103は、生体適用光照射デバイス101に電力を供給する。本発明では、生体適用光照射デバイスが携帯用であることが好ましく、携帯用に用いるために電源103には繰り返し充電が可能な2次電池(不図示)が内蔵されていることが好ましい。電源には、昇圧回路、タイマー等(不図示)が形成されていることが好ましく、発光時間、輝度等の種々の制御を行うことが好ましい。また、電源には、生体適用光照射デバイスが短絡した時に大電流が流れて発光素子が加熱し、使用者がヤケドをすることが無いよう、過電流保護回路(不図示)を有していることが好ましい。有機半導体または量子ドットは、携帯型の低電圧電源によって容易に給電することができる。また、有機半導体素子の電流−電圧特性の温度変化を利用して、素子の温度を検出し、素子の加熱防止センサーとして用いることが可能である。なお、生体適用光照射デバイスは全てを内蔵したポータブル・ユニットであってもよく、内蔵の電源を含んでもよい。
このような構成により、使用者が自由に動き回ることができる状態で、生体適用光照射デバイスを使用できる。生体適用光照射デバイスは、使用者の都合のよいときに取外すことができ、自宅または職場などの外出先での使用を行うことができる。これにより、大きな利便性を使用者にもたらす。また、光線治療を希望する外来患者または入院患者が病院に来ることを回避することにより、社会的に経済的なメリットもある。生体適用光照射デバイスは取り扱いが簡単であり、医療や美容の専門家による立会いなしで使用されてもよい。
また、本発明では、生体適用光照射デバイスが医療用途または美容用途であることが好ましい。医療用途または美容用途に用いられる場合は電源103にはディスプレイ106が設けられていることが好ましい。ディスプレイにより、使用者による治療時間のセット、2次電池の充電状況の確認、発光時間経過の確認、発光を途中で中断する場合の一時停止の確認等の機能が設けられることが好ましい。
<<生体適用光照射デバイスが適用される生体、適用方法>>
次に、本発明の生体適用光照射デバイス(プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス、やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイス)、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスが適用される生体、適用方法について説明する。
生体適用光照射デバイスが適用される生体としては、人間のほか、動物を挙げることができる。動物としては、哺乳類などを挙げることができる。
また、生体適用光照射デバイスから発光された光は、生体のどの部位に照射されてもよい。例えば、足、肩、腕、手、頭、顔面、腹部、背中などに照射することができる。皮膚にかぎらず脳腫瘍等の疾患に対して照射することもできる。本発明では、生体適用光照射デバイスから発光された光が生体の皮膚に照射されることが好ましい。さらに、生体適用光照射デバイスから発光された光が生体の特定の患部の皮膚や、患部の近傍の皮膚に照射されることがより好ましい。
生体適用光照射デバイス101は、通常、発光部218を有する。生体適用光照射デバイス101には、生体に装着するための粘着材201が、発光部218の周囲に形成されていることが好ましい。本発明に用いられる生体適用光照射デバイスは、図9に示した使用態様に限定されるものではなく、生体に装着するための粘着材201を設けずに、生体適用光照射デバイス101の上部からデバイスの周囲または全体をサージカルテープのような粘着材で覆って生体に装着されてもよい。
生体適用光照射デバイスは、生体のどの部位に装着してもよい。足、肩、腕、手、頭、顔面、腹部、背中などに装着することができる。
生体適用光照射デバイスは生体の装着部位に応じた形状にすることができる。例えば、生体適用光照射デバイスは、腕の周囲を1周する形状や、腕時計のように手首の周囲を1周する形状とすることができる。また、生体適用光照射デバイスは、湿布のように広い面積を覆うフレキシブルな膜としてもよい。生体適用光照射デバイスは、線状の傷跡やシワなどに装着する場合は、細長い線状の形状とすることが好ましい。また、生体適用光照射デバイスを心臓や肺などの臓器に適用する場合は、臓器の形状にあわせた形状にしてもよい。その他、生体適用光照射デバイスは円形、楕円形、正方形、長方形等があるが、これらにとらわれず患部の形状に応じて自由な形状に加工することが出来る。
また、本発明に用いられる生体適用光照射デバイスはフレキシブルであるため、任意の生体の形状にあわせて、使用者が湾曲させて使用することができる。
生体適用光照射デバイスの発光時の温度が45℃未満であることが、低温やけどを回避する観点から好ましく、44℃未満であることがより好ましく、42℃未満であることが特に好ましい。
<<生体適用光照射デバイスの用途>>
本発明の本発明の生体適用光照射デバイス(プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス、やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイス)、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、生体の治療や美容のために効果的に用いることができる。
本発明の生体適用光照射デバイス、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスを使用することにより、皮膚疾患などを自宅で容易に治療できる薄型かつ軽量、安価な治療手段を得ることができる。
治療可能な疾患としては、皮膚疾患や、内部疾患などを挙げることができる。例えば、悪性前段階の疾患、悪性疾患、および炎症性の皮膚疾患を挙げることができる。悪性前段階の皮膚疾患の例には、ボーエン(Bowen’s)病、日光性角化症、ヒ素性角化症、ページェット(Paget’s)病、および放射性皮膚炎が含まれる。悪性疾患には、基底細胞癌、扁平上皮癌、二次転移、皮膚T細胞性リンパ腫のあらゆる種類が含まれる。炎症性の皮膚疾患には、皮膚炎および乾癬のあらゆる種類が含まれる。その他、治療可能な疾患の例には、原発性および転移性の腫瘍に加え、炎症性疾患、たとえば結合組織の疾患、あらゆる種類の関節炎、炎症性腸管疾患が含まれる。その他、特表2013―513555号公報に記載の疾患も挙げることができる。光線療法によって以上の疾患を治療できるメカニズムは知られている(例えば、CANCER June 15, 1997 / Volume 79 / Number 12, p2282参照)。本発明に用いられる生体適用光照射デバイスから照射される光で、これらの疾患を治療できる。
光線力学的療法(PDT)では、治療されるべき体の領域に光化学療法剤(photopharmaceutical)として公知の感光性の療法用剤を外用または内用として与え、その領域を適切な周波数および強度の光に露出して、光化学療法剤を活性化させる。現在、さまざまな光化学療法剤を入手できる(例えば特許第4651281号の[0002]参照)。
その他の使用態様としては、癌(例えば皮膚癌)、にきび、しわ、創傷治癒、老化防止、およびポスト皮膚レーザー療法(例えば化粧用)、不眠症やうつ病などの治療目的や美容目的での使用を挙げることができる。
また、本発明の生体適用光照射デバイス、本発明の封止体が有する生体適用光照射デバイスは、それ単独で医療用途または美容用途に用いられる他、皮膚疾患治療装置や美容施術装置において、治療または美容施術の対象に光を照射する光照射部としても効果的に用いることができる。
この生体適用光照射デバイスを有する皮膚疾患治療装置が特に効果を奏する皮膚疾患として、日光角化症、ボーエン病、表在基底細胞癌、皮膚疾患の他に切除したガン細胞等の確認、ニキビの改善、不眠症の改善、うつ病の改善、ジュクソウの改善、外傷の早期回復、また光を用いると耐性菌が生じないことから黄色ブドウ球菌による感染の防止等を挙げることができる。
また、この生体適用光照射デバイスを有する美容施術装置は、特に皮膚の美容のために効果的に用いることができる。本発明の生体適用光照射デバイスが特に効果を奏する美容の目的として、シミやシワの緩和、皮膚の弾力性改善、ほくろ除去等を挙げることができる。
<<生体適用光照射デバイスを保存する方法>>
本発明は、生体適用光照射デバイスを保存する方法も提供できる。生体適用光照射デバイスを保存する方法では、保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを封止することが好ましい。
生体適用光照射デバイスを保存する方法は、生体適用光照射デバイスが保護袋の外部の気体と接触しないことが好ましい。
生体適用光照射デバイスを保存する方法は、空気環境下に生体適用光照射デバイスの封止体を保存することが好ましい。また、本発明の生体適用光照射デバイスの封止体は、高温高湿の環境下で長期保存でき、例えば、60℃、相対湿度90%の条件下に2週間放置した場合の光照射特性の劣化を抑制できる。当然ながら、上記の例よりも穏やかな温度や湿度条件下で放置した場合は、より光照射特性の劣化を抑制できる。
さらに、本発明の生体適用光照射デバイスの封止体は、高温高湿の環境下で長期保存できるため、不活性雰囲気(例えば、窒素やアルゴンなど)で保存する必要もない。例えば、空気中などの水や酸素が含まれる活性雰囲気で長期保存した場合にも光照射特性の劣化を抑制できる。不活性雰囲気で保存する場合よりも、空気雰囲気で保存した方が、安価に保存できる。
また、上述のとおり保護袋の内部にさらに乾燥剤を入れることも好ましい。
<<セット>>
次に本発明のセットについて説明する。
本発明のセットは、電源と、保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを有する生体適用光照射デバイスの封止体とを有するセットであって、
生体適用光照射デバイスが基板と発光素子とを有し、
基板がフレキシブル基板であり、
発光素子が有機半導体または量子ドットを含み、
保護袋が金属層を有する。
生体適用光照射デバイスおよび保護袋の説明と好ましい範囲、構成材料の具体例については、上記の封止体用光照射デバイスの対応する記載を参照することができる。この生体適用光照射デバイスは、本発明の生体適用光照射デバイス(プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイス、やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイス)であってもよい。
本発明のセットは、電源と、保護袋の内部に生体適用光照射デバイスを有する生体適用光照射デバイスの封止体とを有するため、使用者が保護袋から生体適用光照射デバイスを取出した後にすぐに電源と接続して使用することができ、利便性が高い。
本発明のセットを使用後は生体適用光照射デバイスのみ廃棄すればよい。すなわち、光照射後は、患部に貼り付けた生体適用光照射デバイスを剥がし、電源と接続されていた配線(コード)をはずして、そのまま生体適用光照射デバイスのみを廃棄することができる。
また、本発明のセットは、セットに含まれる生体適用光照射デバイスの封止体のみを、別途入手した本発明の生体適用光照射デバイスの封止体に取り換えることによって、セットに含まれる電源を繰り返し使用することが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。「重量部」および「重量%」は、「質量部」および「質量%」と同義である。
また、発光特性の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR−3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
[1]封止体およびセットの作製と評価
[実施例1]
<生体適用光照射デバイスの作製>
以下の手順にて、有機EL素子を有する生体適用光照射デバイスを作製した。実施例1で製造される生体適用光照射デバイスの概略図を図5に示した。
なお、実施例1で製造される生体適用光照射デバイスは、基板202と発光層207の間に位置する電極(陽極204)と、基板202との間にさらに金属層203を有するものである。
(金属層の形成)
フレキシブル基板として、40mm角の大きさの厚み80μmのポリエチレンナフタレート(PEN)を主成分として含むPENフィルムを用いた。用いたPENフィルムの水蒸気透過率は1×10−6g/m/day以下であった。
基板202上に、15nmの厚みの連続膜である銀薄膜を30mm×30mmにスパッタリングして、金属層203を形成した。得られた金属層の波長630nmにおける透過率は約40%であった。
(発光素子の形成)
陽極204、ホール注入層205、インターレイヤー206、発光層207、電子注入層208および陰極209からなる発光素子を、以下の手順で形成した。なお、形成した発光素子は、有機半導体を含む発光素子(有機EL素子)である。
金属層203の上に、インジウムスズ酸化物(ITO)を20nmの厚みでスパッタリングして陽極204を形成した。
窒素雰囲気に調整されたグローブボックス中で、陽極204の上に日産化学製エルソースをスピンコートし、150℃にて10分間ベークしてホール注入層205を形成した。
引き続き窒素雰囲気に調整されたグローブボックス中で、ホール注入層205の上にキシレンに溶解させた住友化学製の熱架橋型高分子材料を20nmスピンコートし、160℃でベークしてインターレイヤー206を形成した。
インターレイヤー206の上にキシレンに溶解させた住友化学製の高分子系の赤色燐光発光材料を70nmの厚みになるように同様に塗布し、160℃でベークして発光層207を形成した。
その後、発光層207を形成した積層体を真空蒸着機に投入し、発光層207の上にフッ化リチウム1nmを蒸着して電子注入層208を形成した。
続けて、真空蒸着機の中で、電子注入層208の上に、アルミニウムを120nm蒸着して陰極209を形成した。
このようにして形成される生体適用光照射デバイスは、基板の一方の表面側のみに発光素子を有することとなる。
(発光素子の封止)
得られた有機EL素子を真空蒸着機からグローブボックスに移し、フィル材210として絶縁性の接着剤(ダイセル社製CELVENUS)を用いて、発光部(有機EL素子)全体にディスペンサーで塗布した。
更に有機EL素子の周囲に封止用接着剤211として水および酸素遮断性の高いUV(Ultraviolet)硬化性エポキシ樹脂(スリーボンド社製TB3124M)を塗布し、金属膜212として厚み0.1mmの絶縁性アルミ箔でカバーした。金属膜212の裏面からUV照射するとともに150℃で加熱して、封止用接着剤211を硬化させた。このようにして形成される生体適用光照射デバイスは、基板202の側面は金属膜212(金属封止膜)によって封止されていない。
得られた有機EL素子の発光部218は30mm×30mmであった。
(配線取出し部の形成)
更に、銀ペーストを陽極と陰極の所望の位置に塗布し、配線取出し用パッド213を形成した。
図5では陽極204のみに配線取出し用パッド213が接続された態様が描かれているが、陰極209からも同様に配線取出し用パッド(不図示)を設けた。
配線取出しパッドに導電接着剤214を塗布し、FPC(Flexible printed circuits)である生体適用光照射デバイスの配線215を熱圧着して接続した。
(粘着材の形成)
次に、発光素子217が形成されていない側の基板202の表面に、3M社の両面粘着テープを貼り付け、皮膚との接着用の粘着材201を形成した。
この粘着材201は発光素子217の発光面に重ならないように中央部を切り抜き、発光素子217の周囲約10mm幅に貼り付けた。
その後、粘着材201の表面にさらに保護フィルム(不図示)を貼り合わせた。
<保護袋の内部への生体適用光照射デバイスの封止>
保護袋として、アルミ防湿袋(Richmond technology, INC社製、商品名ML−131 T−1)を準備した。用いたアルミ防湿袋は、アルミニウム層と、その上にコーティングされた絶縁層とを有していた。用いたアルミ防湿袋の水蒸気透過率は1×10−6g/m/day以下であった。
図6に示した態様で、保護袋の内部への生体適用光照射デバイスの封止を行った。相対湿度30%以下の雰囲気で、保護袋301の内部に、作製した生体適用光照射デバイス302と、乾燥剤305(アップテックジャパン社製、商品名ドライフレックス)を入れた。その後、ヒートシールすることにより、封止部303を封止し、生体適用光照射デバイスが保護袋の外部の気体と接触しないようにした。このようにして、実施例1の生体適用光照射デバイスの封止体を作製した。
<評価>
作製した生体適用光照射デバイスを、作製直後(保護袋に封止する前)に特性を評価した結果、6.5Vで15,000cd/mの輝度が得られた。
一方、実施例1の生体適用光照射デバイスの封止体を空気環境下において60℃、相対湿度90%の条件下に2週間放置後、室温に戻した。その後、保護袋から生体適用光照射デバイスを取り出して、評価用サンプルとした。
評価用サンプルの特性を評価した結果、6.5Vで15,000cd/mの輝度が得られた。このときの評価用サンプルの発光素子の照射強度は30mW/cmであった。
この状態を維持したまま、評価用サンプルである生体適用光照射デバイスは10時間発光を継続することができた。
以上より、本発明によれば、曲面の多い生体に簡単に適用することができ、使い捨てのデバイスに使用可能で安価であり、かつ、高温高湿の環境下で長期保存した場合の光照射特性の劣化を抑制できる生体適用光照射デバイスの封止体を提供できることがわかった。
[比較例1]
実施例1で作製した生体適用光照射デバイスを、保護袋に入れずに空気環境下において60℃、相対湿度90%の条件下に2週間放置後、室温に戻して、比較例1の評価用サンプルを調製した。
比較例1の評価用サンプルの特性を実施例1と同様に評価した結果、比較例1の評価用サンプルは発光素子の発光面のごく一部が僅かに発光しただけであった。
[実施例2]
発光層207の材料として、キシレンに溶解した1,3−bis(carbazol−9−yl)benzene(mCP)に対し、ドーパントとして用いる赤色燐光材料(Bis(2−benzo[b]thiophene−2−yl−pyridine)(acetylacetonate)iridium(III),(Ir(btp)(acac)))をmCPの5質量%添加した、塗布型低分子化合物溶液を調製した。
実施例1において、発光層207、電子注入層208および陰極209を以下の方法で形成した以外は実施例1と同様にして、生体適用光照射デバイスを形成した。具体的には、発光層207を上記の塗布型低分子化合物溶液スピンコートし、膜厚が30nmになるように調整して製膜した。引き続き、電子輸送材料としてTris(8−quinolononate)aluminum(Alq3)を20nm真空蒸着し、電子注入層208を形成した。その後、フッ化リチウムを1nm蒸着しアルミニウムを蒸着して陰極209とした。
得られた生体適用光照射デバイスを用いた以外は実施例1と同様にして生体適用光照射デバイスの封止体を形成し、実施例2の生体適用光照射デバイスの封止体とした。
また、実施例1と同様にして実施例2の生体適用光照射デバイスの封止体を用いて、実施例2の評価用サンプルを作製した。
実施例2の評価用サンプルの特性を評価した結果、実施例2の評価用サンプルは実施例1と同様の傾向であった。
[実施例3]
実施例1において、陽極204、ホール注入層205、インターレイヤー206、発光層207、電子注入層208および陰極209の形成の代わりに、真空チャンバー内で以下の層構成の有機EL素子を真空蒸着で形成した以外は実施例1と同様にして、生体適用光照射デバイスを形成した。具体的には、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、フッ化リチウム、アルミの順に真空チャンバー内で真空蒸着し、ITO/HAT−CN/α−NPD/CBP:Ir(ppy) 6%/BAlq/Alq3/LiF/ALの層構成とした。
実施例3で作製した生体適用光照射デバイスの発光スペクトルを図10に示す。図10より、実施例3で作製した生体適用光照射デバイスは、500〜700nmの帯域に発光素子の最大発光波長を有することがわかった。
得られた生体適用光照射デバイスを用いた以外は実施例1と同様にして生体適用光照射デバイスの封止体を形成し、実施例3の生体適用光照射デバイスの封止体とした。
また、実施例1と同様にして実施例3の生体適用光照射デバイスの封止体を用いて、実施例3の評価用サンプルを作製した。
実施例3の評価用サンプルの特性を評価した結果、実施例3の評価用サンプルは実施例1と同様の傾向であった。
[実施例4]
<電源と生体適用光照射デバイスの封止体とを有するセット>
実施例1の生体適用光照射デバイスの封止体と、実施例1で作製した生体適用光照射デバイスを駆動可能な電源とのセットを準備した。このセットを実施例4のセットとした。実施例4のセットは、図9に示した態様で、中間コネクタ102を介して電源103と生体適用光照射デバイス101を接続することができる。
実施例4のセットを、空気環境下において60℃、相対湿度90%の条件下に2週間放置後、室温に戻した。その後、アルミ保護バッグに保存した生体適用光照射デバイス(有機EL素子)を取出し、電源と生体適用光照射デバイスとを接続コードを介して接続し、治療用サンプルとした。
<生体適用光照射デバイスの封止体の使用>
(治療)
人体の皮膚の患部に5−アミノレブリン酸(5−ALA)クリーム(市販品)を塗布し、2時間放置した。
その後、治療用サンプルである生体適用光照射デバイスの粘着材の保護フィルムを外して、粘着材を患部に接着した。生体適用光照射デバイスの基板として用いたPENフィルムは柔軟なフレキシブル基板であるために、人体の皮膚の形状に沿って生体適用光照射デバイスを密着させて固定することができた。
治療用サンプルである生体適用光照射デバイスの電源のスイッチ(図9には不図示)をONにして、発光素子に電圧を7V印加した。この場合、治療用サンプルである生体適用光照射デバイスの輝度は5,000cd/mを示した。
この場合の評価用サンプルの発光素子の照射強度は13mW/cmであった。
この状態を維持したまま、治療用サンプルである生体適用光照射デバイスは3時間発光を継続することができた。
以上より、本発明によれば、曲面の多い生体に簡単に適用することができ、使い捨てのデバイスに使用可能で安価であり、かつ、高温高湿の環境下で長期保存した場合の光照射特性の劣化を抑制できる、生体適用光照射デバイスの封止体を含むセットを提供できることがわかった。また、このようなセットは携帯可能であり、使用者(例えば皮膚ガン等の患者)が自宅や外出などに容易に携帯して治療や美容の用途に供することができる。また、本発明によれば、直接皮膚に生体適用光照射デバイスの発光部を貼付けて、皮膚に均一に光が照射でき、照射強度が高くて短時間で所望の積算照射量を得られるため、使用者の負担も低減できる。
さらに、この状態で治療用サンプルである生体適用光照射デバイスから発光された光を生体の皮膚に照射することができた。この場合の生体適用光照射デバイスの発光時の温度は37℃であり、また光照射先の生体の皮膚の温度は37℃であった。すなわち、生体適用光照射デバイスの発光時の温度、および光照射先の生体の皮膚の温度が44℃未満であるため、本発明によれば低温やけども回避できることがわかった。
[2]やけど防止機構の有効性の検討
[実施例5]
(定電流駆動の場合のやけど防止機構)
実施例1と同様にして作製した生体適用光照射デバイスについて、室温22℃下、75mA/cmの電流密度で定電流駆動を行ったところ、電圧は8Vであった。また、この生体適用光照射デバイスを40℃に保った恒温槽内に放置し、同様の条件で定電流駆動を行ったところ、電圧は7.0Vであり、生体適用光照射デバイスの表面温度は50℃であった。このことから、この生体適用光照射デバイスは、図7に示すやけど防止機構を有する回路を組み込んで、比較器に基準電圧として7Vを入力することにより、生体適用光照射デバイスの温度が40℃になったところで発光素子への電流供給を遮断でき、やけどの発生を確実に防止し得ることがわかった。
(定電圧駆動の場合のやけど防止機構)
実施例1と同様にして作製した生体適用光照射デバイスの電流密度−電圧特性を図11に示し、電流密度のデバイス温度依存性を図12に示す。
図11の電流密度−電圧特性は、20℃、30℃、40℃または50℃に調整した恒温槽内に生体適用光照射デバイスを最低1時間放置した後、2〜9Vのいずれかの電圧で定電圧駆動することにより測定した。また、図12の電流密度のデバイス温度依存性は、図11で用いたデータを、温度を横軸に、電流密度を縦軸にして、駆動電圧毎にプロットしたものである。図12からわかるように、この生体適用光照射デバイスの電流密度は明確な温度依存性を示し、例えば8Vで定電圧駆動した場合、生体適用光照射デバイスの温度が30℃では82mA/cm、40℃では100mA/cmの電流が流れるが、温度が50℃になると115mA/cmの電流が流れる。有機半導体を用いたデバイスでは、温度上昇に伴って、有機半導体におけるホールと電子の移動度が大きくなるため、これを反映して電流密度も温度依存性を示すと考えられる。このことから、この生体適用光照射デバイスは、図8に示すやけど防止機構を有する回路を組み込んで、100mA/cmに対応する電圧を比較器に基準電圧として入力することにより、生体適用光照射デバイスの温度が40℃になったところで発光素子への電圧印加を遮断でき、やけどの発生を確実に防止し得ることがわかった。
通常用いられる過電流保護回路は、温度を感知することはできないため、ヤケドの危険を防止するためには万全とはいえない。しかし、上記のように、駆動電圧や駆動電流の温度依存性を用いて設定した電圧値や電流値を指標にするやけど防止機構は、デバイスの温度を間接的に感知して、高温になった場合に回路を切断することができることから、肌に密着させる医療用デバイスの安全対策として極めて効果が高い。
また、この生体適用光照射デバイスでは、自己発熱をモニターすることも可能であり、医療用デバイスのみならず、広い範囲での温度センサとして活用することが可能である。また、駆動電圧や駆動電流から温度を検知し得るため、熱電対等の別の温度検知手段を設ける必要がなく、デバイス構成を簡易化できるというメリットがある。
(感温性粘着テープを用いたやけど防止機構)
3M社の両面粘着テープの代わりに、ニッタ株式会社製の両面粘着テープ(インテリマーテープ、ウオームオフタイプ型番WS5130C02)を常温で生体適用面に貼り付けたこと以外は、実施例1と同様にして生体適用光照射デバイスを作製した。
作製した生体適用光照射デバイスを55℃に加熱したところ、粘着テープの接着力が急に低下して粘着テープが生体適用面から簡単に剥がれ落ちた。また、この生体適用光照射デバイスに貼り付けた粘着テープを肌に密着させ、ドライヤーで外部から熱を加えると、およそ50℃を超えたあたりで粘着テープの粘着力が急に低下し、デバイスを手で触れただけで容易に剥がれ落ちた。
このことから、こうした感温性粘着テープもやけど防止機構として有効であることがわかった。
生体適用光照射デバイスで使用される通常の粘着テープは、基本的に生体適用光照射デバイスの温度(発熱)によって接着力が大きく変化しないが、本実施例で使用したような感温性粘着テープでは、一定の温度を超えると接着力が急激に低下して生体適用光照射デバイスを生体から脱落させることができる。こうした感温性粘着テープを用いるやけど防止機構も、安全対策として高い効果を得ることができる。
[3]プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できる生体適用光照射デバイスの作製と評価
[実施例6]EL型の発光体層を有する生体適用光照射デバイスの作製と評価
本実施例では、ポリエチレン基板の上に、図4(a)に示すパターンで発光体層および金属封止膜を形成した。
まず、30mm角の陽極付きポリエチレン基板を粘着テープでガラス支持体に貼り付け、複合基板を形成した。ここで、陽極は、膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる透明導電膜(ITO陽極)である。この複合基板の陽極の上に、塗布型ホール注入材料(日産化学社製)を30nmの厚さにスピンコートし、窒素雰囲気下、100℃で30分間ベークすることによりホール注入層を形成した。このホール注入層の上に、ポリフルオレン系熱架橋型インターレイヤーを20nmの厚さで形成し、窒素雰囲気下、100℃で30分間ベークした。次に、このインターレイヤーの上に、高分子型赤色燐光材料を50nmの厚さにスピンコートし、窒素雰囲気下、100℃で30分間ベークすることにより発光層(赤色燐光発光層:ピーク波長630nm)を形成した。その後、真空度を1x10−4Paに設定した真空蒸着法により、Baを5nmの厚さに蒸着し、その上に、Alを100nmの厚さに蒸着することにより陰極(Al陰極)を形成した。以上の工程により、ポリエチレン基板上に、6層構成のEL型発光体層(ITO陽極/ホール注入層/インターレイヤー/赤色燐光発光層/Ba層/Al陰極)を形成した。
次に、上記の工程で作製したガラス支持体とポリエチレン基板と発光体層からなる積層体を、窒素雰囲気としたグローブボックス内に搬入し、発光体層を覆うように、有機EL用封止樹脂(商品名TB3124、スリーボンド社製)を塗布した。続いて、Alを主体とした金属薄膜を、ポリエチレン基板の発光体形成面の上に、発光体層の表面(上面および端面)を覆い、且つ、ポリエチレン基板の周縁から1mmの領域を被覆しないように設けて金属封止膜を形成した。その後、ポリエチレン基板からガラス支持体を剥離し、その剥離側に幅が5mmの剥離シート付き粘着テープを貼り付けた。
以上の工程により、生体適用光照射デバイスを作製した。
[比較例2]
金属封止膜を形成する代わりに、内側部分をくり抜いて乾燥剤シートを貼付したカバーガラスを用意し、このカバーガラスのガラス部分を有機EL用封止樹脂の発光体層に対応する領域に貼り合せた。この工程以外は、実施例6と同様にして生体適用光照射デバイスを作製した。
[比較例3]
金属封止膜を、発光体層の全面とポリエチレン基板の全面(発光体層の上面および端面、ポリエチレン基板の発光体層非形成領域および端面)を覆うように形成したこと以外は、実施例6と同様にして生体適用光照射デバイスを作製した。
(評価)
実施例6および各比較例で作製した生体適用光照射デバイスの被着体適用面全体を被着体に密着させ、この状態で発光体層から発光させた。その結果、実施例6の生体適用光照射デバイスでは、ポリエチレン基板の周縁から1mmの領域および端面が光っていることを明瞭に視認することができた。また、比較例2の生体適用光照射デバイスは、発光体層の発光により全体が光っている様子が確認された。これに対して、比較例3の生体適用光照射デバイスは、発光体層から発光させても、外部からは、その発光に由来する光を視認することができなかった。
次に、実施例6および各比較例で作製した生体適用光照射デバイスについて、10,000cd/mの輝度で発光させ発光の中心部の温度を放射温度計(チノー製)で評価した。その結果、実施例6および比較例3の生体適用光照射デバイスは温度が38℃であった。一方、比較例2は42℃であった。なお、発光部の温度は電圧を印加して10分程度放置し温度が一定となった時点で評価をした。このように、発光が外部から確認することができ、かつ発光部表面の温度が低温やけどを起こさない程度の温度にとどまっているのは実施例6の生体適用光照射デバイスだけであった。
[実施例7]
次に、実施例6と同様な生体適用光照射デバイスを、高分子型赤色燐光発光材料の代わりに高分子型青色蛍光材料(ピーク波長460nm)を用いて作製し、同様な評価を行った。20,000cd/mの輝度で発光させ中心部の温度を測定したところ、37℃であった。また基板周辺部からの発光も十分確認された。
1 プラスチックシート
1a 発光体形成面
1b 被着体適用面
1n 非被覆領域
2 発光体層
2a 発光体層形成領域
3 金属封止膜
4 被着体
5 光取り出し向上フィルム
6 粘着テープ
11、21 陽極
12 正孔注入層
13 正孔輸送層
14、22 発光層
15 電子輸送層
16、23 陰極
101 生体適用光照射デバイス
102 中間コネクタ
103 電源
104 電源の配線
105 ディスプレイ
201 粘着材
202 基板
203 金属層
204 陽極
205 ホール注入層
206 インターレイヤー
207 発光層
208 電子注入層
209 陰極
210 フィル材
211 封止用接着剤
212 金属膜
213 配線取出し用パッド
214 導電接着剤
215 生体適用光照射デバイスの配線
216 光取り出し向上フィルム
217 発光素子
218 発光部
301 保護袋
302 生体適用光照射デバイス
303 封止部
304 生体適用光照射デバイス取り出し用切断部
305 乾燥剤
401 発光素子
402 電圧源
403 定電流駆動回路(定電流回路)
404、408 比較器
405 定電流駆動遮断回路
406 定電圧駆動回路(定電圧回路)
407 電流検知/電圧変換回路
409 定電圧駆動遮断回路

Claims (6)

  1. プラスチックシートと、前記プラスチックシート表面の一部に設けられた発光体層と、前記発光体層全体を前記プラスチックシートとの間に封止する金属封止膜とを有する、治療用又は美容用の生体適用光照射デバイスであって、
    前記プラスチックシートは、前記発光体層が設けられている発光体形成面とは反対側の面を、被着体に向けて適用する被着体適用面とするものであり、
    前記発光体層は有機半導体または量子ドットを含んでおり、
    前記プラスチックシートの発光体形成面には前記金属封止膜で被覆されていない非被覆領域が存在しており、
    前記プラスチックシートの被着体適用面全体を被着体に密着させた状態で前記発光体層から発光させたときに、前記プラスチックシートの少なくとも一部が光っていることを視認できることを特徴とする、治療用又は美容用の生体適用光照射デバイス。
  2. 前記生体適用光照射デバイスがその内部に電源を含まない、請求項に記載の生体適用光照射デバイス
  3. 使い捨ての使用態様で使用するための、請求項1または2に記載の生体適用光照射デバイス
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスを有することを特徴とする、皮膚疾患治療装置。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体適用光照射デバイスを有することを特徴とする、美容施術装置。
  6. 有機半導体または量子ドットを含む発光素子とフレキシブル基板とを有していて、やけど防止機構を備える生体適用光照射デバイスであって、
    前記生体適用光照射デバイスを生体に貼着するための粘着領域を有しており、前記やけど防止機構が特定の温度以上において前記粘着領域の粘着力が低下して生体からデバイスを脱落させる機構である、生体適用光照射デバイス。
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