JP6796505B2 - 高圧水素の膨張タービン・コンプレッサ式充填システム - Google Patents
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Description
したがって、水素ステーションにおいて、水素自動車の燃料となる水素ガスを、水素ガス供給源から水素自動車の燃料タンクに充填する際に、水素ガスを充填する経路に設けられている膨張弁等の部分で水素ガスの温度が上昇する。
一例として、水素ガスを、供給源のタンク圧である70MPa(G)、30℃から一段で膨張させたときの、各2次圧における自己温度変化の一例を図1に示す。
この水素ステーションは、水素ガスを受け入れる圧縮機ユニットからなる圧縮機設備1と、圧縮機設備1から送られてきた水素ガスを蓄圧する蓄圧器ユニットからなる水素蓄圧設備2と、水素蓄圧設備2からの水素ガスを水素自動車の燃料タンク6に充填するための経路に設けられた膨張弁3及び水素ガスプレクーラ4と、プレクーラ4を介して水素ガスの冷却を行う水素プレクールシステム5とを備え、さらに、水素プレクールシステム5には、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器、アキュムレータ等からなる冷凍機設備7と、ブラインタンク、1次ブラインポンプ、2次ポンプ等からなるブライン回路8を備えるようにしている。
そして、この水素ステーションは、オンサイト型、オフサイト型の水素ステーションの両者とも、受け入れた水素は圧縮機設備1で中間圧(図例では40MPa(G))や高圧(図例では82MPa(G))まで圧縮され、それぞれの圧力で水素蓄圧設備2の蓄圧ユニット内にて圧縮ガスの形で保持される。
これらの水素ガスを、需要側である車載の燃料タンク6へ充填するには、膨張弁3を介しての膨張により行われるが、その際に水素ガス自身の温度上昇を伴うため、外部設備である水素プレクールシステム5により−40℃まで冷却される。
現状の技術では、この水素プレクールシステム5は、フロン冷媒等の通常の冷凍機設備7と、−40℃近辺で動作するブライン回路8とを組み合わせて構成されているため、構成が複雑であり、また、冷凍機用冷媒圧縮機、1次ブラインポンプ、2次ブラインポンプ等の多くの回転機器も必要になる。
1)外部独立した水素プレクールシステムはそれ自体が外部電力で稼働するシステムである。一般的な水素ステーション(300Nm3/h)で約40kWとなっており、水素プレクールシステムの運用自体が運転コストを上昇させる。
2)冷凍機の冷媒にフロン(代替えフロン)を使用するため法的な扱いを受け、このプレクーラ設備自体が高圧ガス保安法の冷凍保安則にかかり、設備や運用において制約を受ける。
3)フロンやブラインをステーション内に保有することは、フロンやブラインの外部漏洩に対する環境事故の予防対策が必要になる。
4)水素プレクールシステムが、冷凍回路とブライン回路の2段構成で複雑であることや、冷媒圧縮機やブラインポンプ等の回転機が複数存在するため、多くの保守管理役務が生じる。
5)ブラインを介したシステムのため、運転起動から定常状態になるまで時間を要する。このため、充填作業のかなり前から水素プレクールシステムを事前起動、系内を定常状態にしておく必要がある。
6)水素ステーション自体の設置スペースを小型化する際に、水素プレクールシステムの専有スペースがその制約となる。
7)現状の−40℃という温度では、さらなる水素の急速充填に制限が出てくる。将来において、さらに充填時間を短くするためには、現状の−40℃よりも低い温度に予冷が必要となる可能性もある。
8)膨張機において発生するエネルギを取り出し、有効利用する手段を別途設ける必要がある。
より具体的には、膨張タービン・コンプレッサは、回転体のロータ軸の一方側に膨張作用を行うインペラを、他方側に、膨張により得られた回転エネルギを消費する圧縮作用を行うインペラを、それぞれ備えて構成することができる。
さらに、供給される水素ガスを用いた動圧式ガス軸受方式の軸受を備えて構成することができる。
そして、膨張タービン部分に膨張タービン・コンプレッサを組み込むプロセスを備えること、すなわち、回転軸の一方側に膨張用インペラ、他方側に圧縮用インペラを有する膨張タービン・コンプレッサを用いることにより、膨張機において発生するエネルギを取り出し、有効利用する手段を別途設ける必要がなく、さらに、膨張タービン側にて得られた回転エネルギを利用してコンプレッサ側にて水素ガスの圧力を上昇させて、膨張タービン入口へ導かれるようにすることによって、コンプレッサで昇圧された分、膨張タービンの膨張比が大きくなり、より多くの熱落差(=寒冷発生量)を得るようにすることができる。
ところで、このプロセスに使用する膨張機、すなわち、タービンは、現在の標準的な水素充填所(水素ステーション)に見合う容量で設計した場合、非常に小型で高速な回転体となることが避けられない。仮に5kgの高圧水素ガスを約3分で充填するシステムの場合、膨張タービンの直径は8〜12mm、最大の膨張比時に相当する回転数は120万回転/分に相当する。
そこで、本発明の高圧水素の膨張タービン・コンプレッサ式充填システムにおいては、具体的には、回転体のロータ軸の一方側に膨張作用を行うインペラ(タービン)を、他方側に、膨張により得られた回転エネルギを消費する圧縮作用を行うインペラ(コンプレッサ)を、それぞれ備えて構成する。
タービンによる水素ガスの膨張により取り出されたエネルギは、タービン回転体の高速回転という形で運動エネルギとして取り出されるが、この高速回転を実現するため、膨張タービン・コンプレッサには、供給される水素ガスを用いた動圧式ガス軸受方式の軸受を採用する。
このため、回転エネルギとして取り出された「仕事」は、軸受による摩擦損失(軸損失)が極めて小さい値に抑制されたものとすることができる。
タービンで得られた回転エネルギからこの軸損失を差し引いた量のエネルギがコンプレッサ側にてプロセスガスを遠心昇圧することで消費され、回転がバランスする。
すなわち、タービンにより取り出された回転エネルギ(タービン動力)は、回転軸の反対側に設けられ、同じ回転数で駆動されるコンプレッサにて、プロセスガスの昇圧することで消費される。
この動圧式ガス軸受方式の軸受で、本発明のような小型で高速な回転体の軸受を構成することで、超高速回転の実現と、非常に少ない軸損失の実現を担保することができる。
このようにして、動力回収を発電回収や、外部へ取り出しての回収を行わず、タービン・コンプレッサとしてクローズしたシステムとすることができ、構成が簡易で、現地工事費用を低減できる。
コンプレッサ側で昇圧されたプロセスガスは、熱力学的な圧縮により圧力上昇と温度上昇を伴う。温度の上昇は、必要に応じて、冷却器(空冷又は水冷のアフタークーラ)を設けることにより、例えば、約20℃近辺に冷却され、熱として外部に捨てられる。圧力上昇は、その分タービン入口における圧力上昇に帰結するため、タービンでの膨張比をさらに高め、結果として寒冷発生量を増大させる効果を奏する。
本発明において、タービンで取り出した動力を、発電機等で電力に変換せずに、タービン・コンプレッサを採用しプロセス内部で利用するとした技術的な理由は、あまりに小型高速回転の機器は、発電機自体が小型かつ高周波となり成立しないことがあり、また、プロセスガスが水素の関係上、防爆の観点からの優位性が挙げられる。
この膨張タービン・コンプレッサは、供給される水素ガスを用いた動圧式ガス軸受方式の軸受(ラジアル及びスラスト両方向の支承を行う軸受)を備えて構成することができる。
冷却器12の冷熱源12aには、水冷方式のものやチラーユニット方式のものを好適に用いることができる。
また、図示は省略するが、同様の冷却器を、コンプレッサ11b側の入口部に設けることができる。この場合、膨張タービン11a側の入口部に設けた冷却器12は省略することもできる。
これにより、水素ガスの温度降下を補助することができる。
この場合、充填初期においては、元圧と燃料タンク6の内圧の差が大きいことから、膨張タービン11aでの膨張比及びコンプレッサ11bによる膨張比が比較的大きく取れるため、より多くの寒冷を発生することができる。
充填が進むにつれて燃料タンク6の内圧は上昇していき、膨張タービン・コンプレッサ11による発生寒冷は小さくなっていくが、最終的に85℃以下で充填を終えることができる。
これにより、膨張タービン・コンプレッサ11のタービン効率をそれぞれの膨張比率で最大の領域にて運転を行い、寒冷発生量に余裕を持たせるようにしたり、容易に設備流量を増加させることができ、大きなプレクール冷却器なしに、大型の燃料電池バスやトラックの充填設備を構成することが可能である。
課題1)については、膨張タービン・コンプレッサ自体の稼働には外部電力を必要としないため、従来の水素プレクールシステムの運転コスト(電気代)に対して、ほとんど電力は必要としない。
課題2)については、冷媒が存在しないので、別個には冷凍則にかからないシステムとなる。水素ステーション全体の高圧ガス保安法のなかで対処することができる。
課題3)については、フロン冷媒やブライン自体が存在しないので、環境事故に対するリスクはなくなる。
課題4)については、かなりシンプルなシステム構成となるため、運転コストのみならず保守コストも大幅に低減できる。
課題5)については、膨張タービン・コンプレッサの起動と同時に温度降下状態が作れるため、系内の時定数が非常に小さい。事前起動の時間はわずかになる。
課題6)については、膨張タービン・コンプレッサのコールドボックスのみでよいので大幅な省スペース化が図れる。従来のものに対して体積比率で10%程度になる。
課題7)については、膨張タービン・コンプレッサを複数台組み合わせたり、最適な流量の膨張タービン・コンプレッサを用いることにより、容易に設備流量を増加させることができ、大きなプレクール冷却器なしに、大型の燃料電池バスやトラックの充填設備を構成することが可能である。
課題8)については、膨張タービン・コンプレッサを用いることにより、膨張機において発生するエネルギを取り出し、有効利用する手段を別途設ける必要がなく、さらに、膨張タービン側にて得られた回転エネルギを利用してコンプレッサ側にて水素ガスの圧力を上昇させて、膨張タービン入口へ導かれるようにすることによって、コンプレッサで昇圧された分、膨張タービンの膨張比が大きくなり、より多くの熱落差(=寒冷発生量)を得るようにすることができる。
2 水素蓄圧設備
3 膨張弁
4 プレクーラ
5 水素プレクールシステム
6 燃料タンク(タンク)
7 冷凍機設備
8 ブライン回路
9 水素ガス源ライン
10 水素プレクールシステム
11 膨張タービン・コンプレッサ
11a 膨張タービン
11b コンプレッサ
12 冷却器
12a 冷熱源
13 水素ガス供給ユニット
Claims (6)
- 高圧に蓄圧された水素ガスをタンクへ加圧充填する際に、膨張タービンを用いて水素ガスのエンタルピ降下を行う充填システムにおいて、膨張タービン部分にコンプレッサを備え、高圧に蓄圧された水素ガスを、コンプレッサに供給し、該コンプレッサで圧縮した後、膨張タービンに供給し、膨張タービンで膨張させた後、タンクへ加圧充填するようにした膨張タービン・コンプレッサを組み込むプロセスを備え、該膨張タービン・コンプレッサのコンプレッサと膨張タービンとを接続するラインの膨張タービン側入口部に冷却器を設けたことを特徴とする高圧水素の膨張タービン・コンプレッサ式充填システム。
- 膨張タービン・コンプレッサが、回転体のロータ軸の一方側に膨張作用を行うインペラを、他方側に、膨張により得られた回転エネルギを消費する圧縮作用を行うインペラを、それぞれ備えて構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の高圧水素の膨張タービン・コンプレッサ式充填システム。
- 膨張タービン・コンプレッサが、供給される水素ガスを用いた動圧式ガス軸受方式の軸受を備えて構成されてなることを特徴とする請求項2に記載の高圧水素の膨張タービン・コンプレッサ式充填システム。
- 膨張タービン・コンプレッサを1台で構成したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の高圧水素の膨張タービン・コンプレッサ式充填システム。
- 膨張タービン・コンプレッサを複数台、直列に配置して構成したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の高圧水素の膨張タービン・コンプレッサ式充填システム。
- 膨張タービン・コンプレッサのコンプレッサ側入口部に冷却器を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の高圧水素の膨張タービン・コンプレッサ式充填システム。
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