JP6231245B1 - 高圧水素の膨張タービン式充填システム - Google Patents
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Abstract
Description
したがって、水素ステーションにおいて、水素自動車の燃料となる水素ガスを、水素ガス供給源から水素自動車の燃料タンクに充填する際に、水素ガスを充填する経路に設けられている膨張弁等の部分で水素ガスの温度が上昇する。
一例として、水素ガスを、供給源のタンク圧である70MPa(G)、30℃から一段で膨張させたときの、各2次圧における自己温度変化の一例を図1に示す。
この水素ステーションは、水素ガスを受け入れる圧縮機ユニットからなる圧縮機設備1と、圧縮機設備1から送られてきた水素ガスを蓄圧する蓄圧器ユニットからなる水素蓄圧設備2と、水素蓄圧設備2からの水素ガスを水素自動車の燃料タンク6に充填するための経路に設けられた膨張弁3及び水素ガスプレクーラ4と、この水素ガスプレクーラ4を介して水素ガスの冷却を行う水素プレクールシステム5とを備え、さらに、水素プレクールシステム5には、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器、アキュムレータ等からなる冷凍機設備7と、ブラインタンク、1次ブラインポンプ、2次ポンプ等からなるブライン回路8を備えるようにしている。
そして、この水素ステーションは、オンサイト型、オフサイト型の水素ステーションの両者とも、受け入れた水素は圧縮機設備1で中間圧(図例では40MPa(G))や高圧(図例では82MPa(G))まで圧縮され、それぞれの圧力で水素蓄圧設備2の蓄圧ユニット内にて圧縮ガスの形で保持される。
これらの水素ガスを、需要側である車載の燃料タンク6へ充填するには、膨張弁3を介しての膨張により行われるが、その際に水素ガス自身の温度上昇を伴うため、外部設備である水素プレクールシステム5により−40℃まで冷却される。
現状の技術では、この水素プレクールシステム5は、フロン冷媒等の通常の冷凍機設備7と、−40℃近辺で動作するブライン回路8とを組み合わせて構成されているため、構成が複雑であり、また、冷凍機用冷媒圧縮機、1次ブラインポンプ、2次ブラインポンプ等の多くの回転機器も必要になる。
1)外部独立した水素プレクールシステムはそれ自体が外部電力で稼働するシステムである。一般的な水素ステーション(300Nm3/h)で約40kWとなっており、水素プレクールシステムの運用自体が運転コストを上昇させる。
2)冷凍機の冷媒にフロン(代替えフロン)を使用するため法的な扱いを受け、このプレクーラ設備自体が高圧ガス保安法の冷凍保安則にかかり、設備や運用において制約を受ける。
3)フロンやブラインをステーション内に保有することは、フロンやブラインの外部漏洩に対する環境事故の予防対策が必要になる。
4)水素プレクールシステムが、冷凍回路とブライン回路の2段構成で複雑であることや、冷媒圧縮機やブラインポンプ等の回転機が複数存在するため、多くの保守管理役務が生じる。
5)ブラインを介したシステムのため、運転起動から定常状態になるまで時間を要する。このため、充填作業のかなり前から水素プレクールシステムを事前起動、系内を定常状態にしておく必要がある。
6)水素ステーション自体の設置スペースを小型化する際に、水素プレクールシステムの専有スペースがその制約となる。
7)現状の−40℃という温度では、さらなる水素の急速充填に制限が出てくる。将来において、さらに充填時間を短くするためには、現状の−40℃よりも低い温度に予冷が必要となる可能性もある。
なお、図3に示す例は、膨張タービン11に、タービン11aとコンプレッサ11bとを同軸に配したタービン・コンプレッサを用いたものであるが、膨張タービンのみで構成することもできる。
すなわち、図5の典型的なタービン出口(=充填タンク入口)温度の計算事例に示すように(「Tin[新方式]」は、高圧水素の膨張タービン式充填システム10における膨張タービン11の出口温度(=充填タンク入口温度)の挙動例を示す。)、充填の初期段階においては、膨張タービン11の膨張比が高いために、短時間ではあるものの−70℃近くまで水素ガスの温度が降下する領域が生じる。
このように、水素ガスの温度が−40℃よりも降下する時間帯があるため、水素ガス供給ユニット13の構成部材、例えば、充填ホースのシール材を−70℃対応のものにする必要があり、設備コストの上昇につながるという問題があった(課題8)。
そして、膨張タービンの出口に蓄冷器を設けることにより、膨張タービンの膨張比が高い充填の初期段階における水素ガスの温度降下の度合いを緩和、平滑化して、水素ガス供給ユニットの構成部材に汎用の部材を用いることを可能にし、設備コストが上昇することを防止することができる。
冷却器12の冷熱源12aには、水冷方式のものやチラーユニット方式のものを好適に用いることができる。
また、図示は省略するが、同様の冷却器を、コンプレッサ11b側の入口部に設けることができる。この場合、タービン11a側の入口部に設けた冷却器12は省略することもできる。
これにより、水素ガスの温度降下を補助することができる。
この場合、充填初期においては、元圧と燃料タンク6の内圧の差が大きいことから、タービン11aでの膨張比及びコンプレッサ11bによる膨張比が比較的大きく取れるため、より多くの寒冷を発生することができる。
充填が進むにつれて燃料タンク6の内圧は上昇していき、膨張タービン11による発生寒冷は小さくなっていくが、最終的に85℃以下で充填を終えることができる。
蓄冷器14は、図7に示すように、膨張タービン11の出口に接続された配管に対して接続継手15を介して、着脱可能に組み込むようにする。
蓄冷体14c1〜14c3には、特に限定されるものではないが、図8(a)に示すように、銅、ステンレススチール等のハニカム構造の金属を用いた金属ハニカム式蓄冷体14c1、図8(b)に示すように、銅、ステンレススチール等のリボンたわし状の金属を用いた金属(リボンたわし状)充填式蓄冷体14c2、図8(c)に示すように、イソプロピルアルコールのビーズやジェル(所定の目的温度で固化熱の形で熱を出し入れするビーズやジェルで構成された低温蓄冷体をいう。例えば、「PlusICE」(商品名)(Phase Change Material Products Limited製。)を用いたアルコールビーズ(ジェル)内臓式蓄冷体14c3を好適に用いることができる。
水素吸蔵合金を用いた場合には、蓄冷体としての効果に加えて、低温で水素吸蔵、高温で水素放出の特性が加わるため、膨張タービン11の運転の初期においては、温度が低く、かつ、圧力が低いことから水素の放出が行われる。これにより、水素をより効率的に充填することができる。
また、膨張タービン11の運転の終盤においては、温度は比較的高くなり、かつ、圧力が増すため、水素の吸蔵が行われる。これにより、充填完了時の配管内部のガス放出を低減できることになるため、蓄冷効果による温度緩和の実現のみならず、さらに効率的な水素充填を実現できる。
課題1)については、膨張タービン自体の稼働には外部電力を必要としないため、従来の水素プレクールシステムの運転コスト(電気代)に対して、ほとんど電力は必要としない。
課題2)については、冷媒が存在しないので、別個には冷凍則にかからないシステムとなる。水素ステーション全体の高圧ガス保安法のなかで対処することができる。
課題3)については、フロン冷媒やブライン自体が存在しないので、環境事故に対するリスクはなくなる。
課題4)については、かなりシンプルなシステム構成となるため、運転コストのみならず保守コストも大幅に低減できる。
課題5)については、膨張タービンの起動と同時に温度降下状態が作れるため、系内の時定数が非常に小さい。事前起動の時間はわずかになる。
課題6)については、膨張タービンのコールドボックスのみでよいので大幅な省スペース化が図れる。従来のものに対して体積比率で10%程度になる。
課題7)については、膨張タービンを複数台組み合わせたり、最適な流量の膨張タービンを用いることにより、容易に設備流量を増加させることができ、大きなプレクール冷却器なしに、大型の燃料電池バスやトラックの充填設備を構成することが可能である。
課題8)については、膨張タービンの出口に蓄冷器を設けることにより、膨張タービンの膨張比が高い充填の初期段階における水素ガスの温度降下の度合いを緩和、平滑化して、水素ガス供給ユニットの構成部材に汎用の部材を用いることを可能にし、設備コストが上昇することを防止することが可能になる。
さらに、膨張タービンにタービン・コンプレッサを用いることにより、膨張機において発生するエネルギを取り出し、有効利用する手段を別途設ける必要がなく、さらに、膨張タービン側にて得られた回転エネルギを利用してコンプレッサ側にて水素ガスの圧力を上昇させて、タービン入口へ導かれるようにすることによって、コンプレッサで昇圧された分、タービンの膨張比が大きくなり、より多くの熱落差(=寒冷発生量)を得るようにすることができる。
2 水素蓄圧設備
3 膨張弁
4 水素ガスプレクーラ
5 水素プレクールシステム
6 燃料タンク(タンク)
7 冷凍機設備
8 ブライン回路
9 水素ガス源ライン
10 高圧水素の膨張タービン式充填システム
11 膨張タービン(タービン・コンプレッサ)
11a タービン
11b コンプレッサ
12 冷却器
12a 冷熱源
13 水素ガス供給ユニット
14 蓄冷器
14a 耐圧容器
14b 断熱構造
14c1〜14c3 蓄冷体
15 接続継手
Claims (2)
- 高圧に蓄圧された水素ガスをタンクへ加圧充填する際に、膨張タービンを用いて水素ガスのエンタルピ降下を行う充填システムにおいて、前記膨張タービンに、タービン・コンプレッサを用い、該膨張タービンの出口に接続された配管に、耐圧容器の内部に蓄冷体を保持して構成した蓄冷器を設けたことを特徴とする高圧水素の膨張タービン式充填システム。
- 前記蓄冷体に、リボンたわし状の金属を用いたことを特徴とする請求項1に記載の高圧水素の膨張タービン式充填システム。
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