JP6796287B2 - モータ制御システム - Google Patents
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Description
図1を参照しつつ、本実施形態に係るモータ制御システムの全体構成の一例について説明する。
図2は、本実施形態におけるサーボアンプ2の制御ブロックを伝達関数形式で表している。なお本実施形態の例では、この図2に示す制御ブロックは、サーボアンプ2が備えるCPU(特に図示せず)により実行されるソフトウェアで実現される。
(k:ばね係数、μ:摩擦係数、m:可動部分の慣性モーメント)
の運動方程式に基づくフィードバック制御が行われているとみなせる。
近年では、機械システムに対する付加価値向上の一環として予防保全がキーワードになりつつある。これまでにも寿命モニタや設置環境モニタ等により予防保全の一助となる情報を上位制御装置3に提示する構成が取られていたが、これらとは別にモータ駆動機構1の経年変化や発振などの機械異常を検出することが要望されている。本実施形態のモータ制御システム100は、この要望を受けてモータ駆動機構1の機械異常を検出するためのものである。
<4−1:機械学習によるデータ異常判定>
一般に人間が波形を観測して正常/異常の判断を行うのは、主として経験によるところが大きい。この経験を数式として表現し、計算機上で行う手法が機械学習である。機械学習による変化検出手法の基本的な考え方は、基準とするデータ群(以下、標本データという)の正規分布を作成し、運用段階で取得したデータ(以下、観測データという)が正規分布から外れているか否かを確認するというものである。
本実施形態では、標本データや観測データを複数種類で取得する場合は、以下のように配列で定義した時系列データDとして取得する。
例えば、同一の駆動機械13を2つのモータ12で駆動するモータ駆動機構(特に図示せず)で、図3に示すように各モータ12それぞれのトルク指令と出力速度を時系列データとして取得した場合(つまり自由度M=変数の種類数=2)には、時系列データDは以下のようになる。ただし、Dの添え字は時刻を示す。
本実施形態では、機械学習による変化検出手法としてホテリングのT2法を適用する。ホテリングのT2法は、複数種類のデータの変化波形を並列に観測する多変数解析の一手法であり、その処理は以下の(工程1)〜(工程6)で行う。
データには正常データと異常データが存在するが、正規分布からどれくらい大きく外れた場合を異常データとするかの指標が誤報率αとなる。例えば、誤報率1%と考えるならα=0.01となる。なお、確率統計論の考え型では、誤報率を0とした場合には全てのデータが正常となってしまうため、原理的に誤報率αを0にはしない。
自由度M、スケール因子s=1として、カイ2乗分布を次式から計算する。なお、自由度Mは、独立した標本データの種類の数(上述した多変数解析における変数の種類の数)を指定するパラメータである。
ただし、Γはガンマ関数を表し、次式で定義される。
正常データである標本データから標本平均μ(文中の表記ではハットを省略、以下同様)と標本共分散行列Σ(文中の表記ではハットを省略、以下同様)を次式から算出する。
ただし、はn番目の種類の標本データである。
上記(工程3)で算出したデータ異常判定しきい値athと、上記(工程5)で算出したマハラノビス距離a(x’)とを比較する。マハラノビス距離a(x’)がデータ異常判定しきい値athを越えている場合(a(x’)>ath)には、上記(工程5)で用いた観測データがデータ異常の状態にあると判定する。
まず比較例として、機械学習を利用せずにデータ異常を判定する方法について説明する。
(事前準備)
1:標本データとして正常なデータを複数取得する。
2:標本データ群から各時刻における正規分布を作成する。
3:各時刻における正規分布に対してデータ異常判定しきい値を設定する。
(データ異常判定)
1:観測データを取得する。
2:取得時刻に対応する正規分布に加える。
3:観測データが正規分布に設定したデータ異常判定しきい値を超えていたら異常と判定する。
(事前準備)
1:標本データとして正常なデータを複数取得する。
2:標本データ群から標本平均μと標本共分散行列Σを計算する。
3:誤報率αとカイ2乗分布からデータ異常判定しきい値athを計算する。
(データ異常判定)
1:観測データを取得する。
2:観測データに対してマハラノビス距離a(x’)を計算する。
3:マハラノビス距離a(x’)がデータ異常判定しきい値athを超えていたらデータ異常と判定する。
上記のデータ異常判定によれば、時系列データを取得した時点におけるデータ上で見た異常状態の有/無(つまり異常/正常)を2値的に判定することができる。しかし、後述する実験結果に示すように1度でもデータ異常が判定されたからといって機械システム全体に機械異常が発生したと判定すべきではない。また、データ異常が複数回発生した際にその発生態様に基づいて機械異常の内容を一次的に推定することが可能である。本実施形態では、経年劣化が進行するに従ってデータ異常の発生頻度が徐々に増加するとの考察に基づき、データ異常の発生頻度が所定値を越えた場合には、モータ駆動機構1に経年劣化の種類の機械異常が発生していると判定する。
上述した経年劣化による機械異常を判定するための具体的な制御フローの一例を、以下に詳細に説明する。まず図5は、データ異常判定に機械学習を利用する場合の上記事前準備に相当する準備処理の制御手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、データ異常がほぼ生じないと確信できるモータ駆動機構1の正常駆動の駆動状態中に、図1中に示すセットアップPC5のCPU(第1演算装置に相当;特に図示せず)が実行する。なお正常駆動としては、例えばモータ駆動機構1が組立製造後に十分な調整が行われた状態でほぼ設計通りに動作すると確信できる状態(初期運用又は試験運用)での駆動が考えられる。
<7−1:時間軸波形に対する適用結果>
本実施形態によるデータ異常判定の手法の妥当性を、実試験で得た時間軸波形に適用して確認する。この実試験は、鉛直方向に可動するボールねじスライダ(特に図示せず)の特定の位置におけるトルク指令と出力速度をそれぞれ時系列標本データとして20回検出し、同じスライダで位置を違えてトルク指令と出力速度を時系列観測データとして検出した。
図7は、出力速度の時系列標本データと時系列観測データをプロットしたグラフを示している。中央の曲線のうち実線のものが時系列標本データであり、他の白抜き破線の曲線が時系列観測データである(以下の各図において同様)。また、下方には、誤報率α=1%とした単変数解析(自由度M=1)でのデータ異常判定結果を、2値的(High/Low)に示すグラフもプロットされている。この実験におけるトレースデータは1000点で構成されているため、データ異常判定は各点ごとに計算している。これは、同じ速度であっても時間が異なればボールねじ上の位置が異なるため、機械システムとしての特性が異なることを考慮している。また、図8は、図7の出力速度の代わりにトルク指令の時系列標本データと時系列観測データとデータ異常の判定結果をプロットしたグラフである。
上記図7〜図16では、いずれも自由度M=1として、出力速度またはトルク指令の個別の信号に対してデータ異常の検出を行った場合を示した。これに対して自由度M=2とした多変数解析での多元的なデータ異常の検出を行う場合には、上記(工程3)で自由度M=2としたデータ異常判定しきい値athを算出し、出力速度とトルク指令の2乗和の平方根にて計算したマハラノビス距離a(x’)と比較すればよい。
上記<7−1>では、時間軸波形(つまり時間領域)に対してデータ異常の検出手法を適用した。以下では、横軸に周波数軸を持つ周波数特性のデータに対して自由度M=1の機械学習による手法を適用する。可動スライダがボールねじの反モータ側で20回の周波数測定を実行し、これを時系列標本データとして取得する。その後、可動スライダがボールねじのモータ側で周波数測定を実行し、時系列観測データとして取得した。つまり、直近所定数の各時系列データを周波数解析し、周波数領域でのデータ異常の判定を行った。
以上説明したように、本実施形態のモータ制御システム100によれば、ステップS25及びステップS110の手順でモータ駆動機構1の駆動中におけるモータ12の入出力に関する時系列データを取得する。また、モータ制御システム100は、ステップS5、ステップS10、ステップS15、ステップS40、ステップS115、及びステップS120の手順で時系列データのデータ異常を判定する。また、モータ制御システム100は、ステップS135の手順で、データ異常と判定された時系列データの取得態様に基づいて、モータ駆動機構1の機械異常を判定する。つまり、電動モータ駆動のモーション系機械制御に対して予兆診断を適用するに当たり、データ異常と機械異常を区別し、データ異常の発生態様(データ異常とされた時系列データの取得態様)に基づいて機械異常を判定する。この結果、微小なデータ異常の変化にとらわれず、機械システム全体の機械異常についてより有効で詳細かつ明確な判定が行える。また、モータ駆動機構1の機械異常の有無を判定することは、その時点の当該モータ駆動機構1の機械正常を判定することと同等とみなせる。例えば、上記ステップ135の判定が満たされず(No)、モータ駆動機構1が機械異常にないと判定された場合には、当該モータ駆動機構1が機械正常(異常な状態でなく正常な状態)であると判定されたとみなせる。このように機械正常を判定できる本実施形態のモータ制御システム1では、例えば大量生産されたモータ駆動機構1を個別に駆動制御して機械正常を判定することで、それぞれ設計通りの性能や機能を有するかの同一性を試験することができる。または、オーバーホールしたモータ駆動機構1の性能や機能が許容範囲内にあるかの健全性も検証できる。または、異なる2つのモータ駆動機構1の一方から取得した標本データと、他方から取得した観測データとを用いて他方の機械正常を判定することで、それら2つのモータ駆動機構1の間の性能や機能の類似性を検証することもできる。
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、トルク指令や出力速度(出力位置)以外のデータを時系列データとして取得し、データ異常を判定することも有用である。例えば、上記図2に対応する図23に示すように、外乱オブザーバ27の出力を時系列データとして取得しデータ異常を判定してもよい。図示する例の外乱オブザーバ27は、トルク指令と出力速度に基づいてモータ12に付加される外乱を推定し出力している。これにより、正常駆動と観測駆動を異なる駆動動作で行う場合において、加速度の影響を排除した適切な時系列データを取得できる。
2 サーボアンプ
3 上位制御装置
4 オペレータ
5 セットアップPC
11 エンコーダ
12 モータ
13 駆動機械
21 減算器
22 位置制御部
23 減算器
24 速度制御部
25 電流制御部
26 速度変換部
27 外乱オブザーバ
100 モータ制御システム
Claims (3)
- モータ駆動機構を駆動するモータを駆動制御するモータ制御システムであって、
所定のデータ異常判定しきい値と、モータ駆動時における時系列検出データに基づいて算出したマハラノビス距離と、の比較に基づいてデータ異常を判定するデータ異常判定部と、
前記データ異常の発生頻度に基づいて前記モータ駆動機構の経年劣化を判定する機械劣化判定部と、
前記機械劣化判定部が前記経年劣化の発生を検出した場合、前記経年劣化の発生を報知、及び前記モータの駆動制御を停止するモータ停止部と、
を有し、
前記機械劣化判定部は、
前記モータ駆動機構の観測駆動を行う度にデータ異常と判定された時系列検出データの取得頻度を算出して履歴を記録し、過去直近の前記観測駆動間の前記取得頻度を比較して前記取得頻度が増加傾向にあると判断した場合においても、経年劣化が発生したと判定する
ことを特徴とするモータ制御システム。 - 前記データ異常判定部は、
時間領域でデータ異常を判定することを特徴とする請求項1記載のモータ制御システム。 - 前記データ異常判定部は、
周波数領域でデータ異常を判定することを特徴とする請求項1記載のモータ制御システム。
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