以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1ないし図6は、本発明の第1の実施例によるアクチュエータユニットおよびこれを備えた安全スイッチを示している。図1、図3は安全スイッチの正面概略図、図4ないし図6はアクチュエータユニットの一部切欠き側面概略図、図2は図1のII-II線断面図である。説明の便宜上、図2を除く各図において図左右方向を前後方向と呼称し、図1、図3の各図上下方向および図4、図5、図6の各図紙面垂直方向を上下方向と呼称することにする。
図1および図3に示すように、安全スイッチ1は、工作機械や産業用ロボット等の産業用機械が設置された危険区域の出入り口において、可動扉Dに配置されるアクチュエータユニット2と、壁(または固定扉)Wに配置されるスイッチ本体(スイッチ)3とを備えており、アクチュエータユニット2に設けられたアクチュエータ20が前後方向に移動してスイッチ本体3に対して抜き差しされる(作用する)ことにより、スイッチ本体3の内部においてスイッチの出力状態が切り替わるようになっている。なお、ここで、「出力状態」と表現したのは、有接点出力のみならず、トランジスタ出力のような無接点出力も含める趣旨である。
アクチュエータユニット2は、図4ないし図6に示すように、可動扉Dの表面Daに固定される固定ベース2Aと、固定ベース2Aに前後方向スライド自在に設けられたスライドベース2Bとを有している。
固定ベース2Aは、図2に示すように、可動扉Dの表面Daの上に配置され、表面Daにねじ止め固定される下板2A1と、下板2A1の上に固定されるとともに、逆T字状の溝2Aaを有する上板2A2とから構成されている。溝2Aaは、固定ベース2Aを前後方向(つまり図2紙面垂直方向)に挿通しており、固定ベース2Aの前端2Afおよび後端2Arに開口している(図3参照)。
スライドベース2Bの下部は、図2に示すように、固定ベース2Aの溝2Aaと相補的な形状を有しかつ溝2Aaに前後方向スライド自在に係合する基部2Baを有している。基部2Baには、ハンドル21の下部が固定されている。ハンドル21は、前後方向に延びる側面視コ字状の部材であって、作業者の手指が挿入される開口部21aを有している(図4ないし図6参照)。この構成により、作業者がハンドル21を把持して前後方向に力を加えることにより、可動扉Dが開閉し、またスライドベース2Bが固定ベース2Aに対して前後方向にスライド移動するようになっている。
スライドベース2B上においてハンドル21の前方には、錠前22が取り付けられている(図2を除く各図参照)。錠前22には、キー22aが抜き差しされるようになっている(各図においては、キー22aが挿入された状態が示されている)。キー22aは、後述するロック状態においてのみ、錠前22から抜き取ることができるようになっている。アクチュエータ20は、スライドベース2Bに取り付けられている。スライドベース2Bの移動により、アクチュエータ20は、スイッチ本体3に接近してその先端がスイッチ本体3の内部に挿入される接近位置(図1)と、スイッチ本体3から離れた離反位置(図3)とをとり得るようになっている。可動扉Dの閉塞時には、アクチュエータ20は接近位置に配置されており、可動扉Dの開放時には、アクチュエータ20は離反位置に配置されている。
スライドベース2Bの前端2Bfは、接近位置においては、固定ベース2Aの前端2Afと略面一に配置され(図1参照)、離反位置においては、固定ベース2Aの前端2Afよりも後方に移動している(図3参照)。また、スライドベース2Bの後端2Brは、接近位置においては、固定ベース2Aの後端2Arよりも前方に配置され(図1参照)、離反位置においては、固定ベース2Aの後端2Arの若干前方に配置されている。この離反位置において、スライドベース2Bの後端2Brは、固定ベース2Aに固定されたストッパ26に当接している(図3参照)。
スライドベース2Bの前部は、図1、図3および図4に示すように、前後方向に延びる閂部材23を有している。一方、壁Wにおいてスイッチ本体3の上方には、閂部材23を抜き差し可能に受け入れる閂受け部30が設けられている。閂受け部30には、閂部材23が挿通する貫通孔30aが形成されている。閂部材23は、アクチュエータ20の接近位置においては、閂受け部30の貫通孔30aを挿通しており(図1参照)、アクチュエータ20の離反位置においては、閂受け部30から離れている(図3参照)。また、閂部材23の先端には、たとえば南京錠(図示せず)をかけるためのパドロックホール23aが形成されている。
次に、アクチュエータユニット2のロック機構について説明する。
図3ないし図6に示すように、固定ベース2Aの内部の上下端側には、各々前後方向に延びる一対のロック部材27、27’が設けられている(図4ないし図6では一方のロック部材27のみが現れている)。各ロック部材27、27’はそれぞれの後端側を連結する連結バー271によって互いに連結されており、図3の紙面垂直方向から見て全体として略H字状をしている。錠前22は、連結バー271の長手方向略中央部に対向配置されている。
各ロック部材27、27’は、固定ベース2Aの底部に配置されかつ各ロック部材27、27’の略中央部をそれぞれ支持する支点28、28’を有しており、各支点28、28’を通る水平面内でそれぞれ揺動可能になっている。各支点28、28’は、錠前22の軸部(操作部)22b(図6)の前後方向位置よりも前方に配置されている。なお、軸部22bの先端には、傾斜面を有するロック作用部材22dが一体に設けられている。各ロック部材27、27’の後端は、コイルばねのような弾性変形可能な弾性部材29、29’で弾性支持されている。各ロック部材27、27’の前端は、固定ベース2Aの上部側に突出する凸部27A、27A’を有しており、各凸部27A、27A’には係合面27a、27a’が形成されている。また、固定ベース2Aの上部において、ロック部材27、27’の各凸部27A、27A’と対向する部分には、開孔2Aa1、2Aa1’が貫通形成されている(図1参照)。各凸部27A、27A’は、対応する各開孔2Aa1、2Aa1’に臨んでいる。
各ロック部材27、27’は、支点28、28’の回りを揺動することによって、図1、図4および図5に示すように、各凸部27A、27A’が開孔2Aa1、2Aa1’から内方に沈んだロック解除位置と、図3および図6に示すように、各凸部27A、27A’が開孔2Aa1、2Aa1’から突出して各係合面27a、27a’がスライドベース2Bの前側面2Bf1と係合し、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して前後方向移動不能に固定するロック位置とをとり得るようになっている。
アクチュエータ20がスイッチ本体3に接近した接近位置(図1、図4)においては、および、アクチュエータ20がスイッチ本体3から離れた離反位置に配置されかつスライドベース2Bがロックされていない状態(図5)においては、各ロック部材27、27’は、各々の後端に当接する各弾性部材29、29’からの弾性反発力を受けて、各支点28、28’の回りを回動しており、各凸部27A、27A’が開孔2Aa1、2Aa1’から内方に沈んだ位置に配置されている。このとき、図5に示すように、各ロック部材27、27’の後端側を連結する連結バー271と錠前22の底部22cとの間には、間隙eが形成されている。このように、錠前22およびロック作用部材22d(図6)は、ロック部材27、27’および--連結バー271と一体ではなく、これらと別体に設けられている。
アクチュエータ20がスイッチ本体3から離れた離反位置に配置されかつスライドベース2Bがロックされた状態(図3、図6)においては、錠前22のロック作用部材22dの先端の傾斜面が各ロック部材27、27’の連結バー271に当接して押付力を作用させており、各ロック部材27、27’が各支点28、28’の回りを回動してロック位置に移動している。これにより、ロック部材27、27’の各凸部27A、27A’が開孔2Aa1、2Aa1’から突出して、突出部27A、27A’の各係合面27a、27a’がスライドベース2Bの前側面2Bf1に当接している。このようにして、スライドベース2Bが固定ベース2Aに対してロックされている。なお、錠前22のロック作用部材22dの先端の傾斜面の角度は、好ましくは、各ロック部材27、27’がロック位置におかれているときの連結バー271に面接触するように設定されるが、先端に形成される面は、平面に限らず凸状円弧面等でもよい。
次に、本実施例の作用効果について説明する。
可動扉Dの閉塞状態(図1)においては、上述したように、可動扉D側のアクチュエータユニット2のスライドベース2Bが固定ベース2Aに対して前方にスライド移動しており、アクチュエータ20が壁W側のスイッチ本体3に接近した接近位置に配置されてスイッチ本体3の内部に挿入されるとともに、閂部材23が閂受け部30に挿入されている。このとき、図4に示すように、ロック部材27(27’)の後端には、弾性部材29(29’)からの弾性反発力が作用していて、ロック部材27(27’)は支点28(28’)の回りを回動してロック解除位置に移動しており、このとき、ロック部材27(27’)の前端の各凸部27A(27A’)は、固定ベース2Aの上部の開孔2Aa1(2Aa1’)から内方に沈んだ位置に配置されている。
この状態から、可動扉Dを開放するには、作業者がハンドル21の上部を把持して、ハンドル21を後方(つまり図1右方)に移動させる。このとき、ハンドル21の下部はスライドベース2Bに固定されているので、スライドベース2Bのスライド移動によりハンドル21はスムーズに後方に移動する。スライドベース2Bのスライド移動により、アクチュエータ20がスイッチ本体3から抜かれるとともに、閂部材23が閂受け部30から抜かれる。そして、スライドベース2Bの後端2Brがストッパ26に当接してスライドベース2Bが停止したとき(図3参照)、アクチュエータ20がスイッチ本体3から離れた離反位置に配置される。
この離反位置において、錠前22は、各ロック部材27、27’を連結する連結バー271の上方に配置されており(図3参照)、連結バー271と錠前22の底部22cとの間には間隙eが形成されている(図5参照)。
この状態から、キー22aを操作することにより、図6に示すように、錠前22のロック作用部材22dを間隙e内に突出させて、その先端の傾斜面を各ロック部材27、27’の連結バー271に当接させる。すると、連結バー271が支点28、28’の回りを回動することで、各ロック部材27、27’が支点28、28’の回りを回動してそれぞれロック位置に移動する。このとき、ロック部材27、27’の後端の各弾性部材29、29’が弾性圧縮変形して縮退する一方、ロック部材27、27’の前端の各凸部27A、27A’は固定ベース2Aの開孔2Aa1、2Aa1’から突出して、凸部27A、27A’の各係合面27a、27a’がスライドベース2Bの前側面2Bf1に当接する。このようにして、スライドベース2Bが固定ベース2Aに対してロックされる。
このロック状態(図6)においては、作業者等の人の体がハンドル21に当たることにおり可動扉Dが閉められようとしたり、屋外からの風の影響等で可動扉Dが閉まろうとした場合であっても、スライドベース2Bはロック状態を維持したままなので、アクチュエータ20がスイッチ本体3側に突出することはなく、これにより、アクチュエータ20がスイッチ本体3の外側面と衝突したり、人と干渉したりするのを回避でき、その結果、部品の損傷や破損を防止でき、人体に危険が及ぶのを回避できる。また、アクチュエータ20が接近位置に移動しないので、スイッチ本体3内部の出力状態が切り替わることもなく、人の安全を確保できる。
さらに、ロック状態(図6)においては、作業者が危険区域内に入る際にキー22aを抜いて危険区域内に持ち込むようにすれば、他の作業者が不注意で可動扉Dを閉めようとしてハンドル21を把持してスライドベース2Bをスライド移動させようとしても、このとき、錠前22のロック作用部材22dがロック部材27、27’の連結バー271に当接した状態が維持されて、各ロック部材27、27’がロック位置に維持されるので、スライドベース2Bのロック状態は解除されない。このように、ロック状態はキー操作により実現されるので、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して確実にロックできる。
また、このロック状態(図6)においては、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して無理に移動させようとする大きな力が作用したとき、この力は、スライドベース2Bの前側面2Bf1からロック部材27、27’の凸部27A、27A’の各係合面27a、27a’に作用し、ロック部材27、27’を支点28、28’の回りに回動させようとして、ロック部材27、27’の連結バー271が錠前22のロック作用部材22dに押付力を作用させることになる。
ところが、この場合には、ロック部材27、27’および連結バー271が錠前22のロック作用部材22dと一体物ではなく別体に設けられているので、ロック部材27、27’および連結バー271の弾性変形や各部材間のわずかなクリアランス等によって、当該押付力を低減できる。これにより、ロック作用部材22dおよび錠前22、ひいてはスライドベース2Aのロック機構全体の破損を防止できる。なお、万一、いずれかの部品が破損した場合でも、ロック部材27、27’および連結バー271が錠前22のロック作用部材22dと別体に設けられていることで、部品の交換やメンテナンス作業が容易になる。
次に、可動扉Dを閉塞する際には、ロック状態(図6)からキー22aを操作することにより、錠前22のロック作用部材22dを縮退させる。ロック作用部材22dがロック部材27、27’の連結バー271から離れると、ロック部材27、27’の後端に作用する弾性部材29、29’からの弾性反発力により、ロック部材27、27’が支点28、28’の回りを回動して、ロック部材27、27’の前端の各凸部27A、27A’が固定ベース2Aの上部の開孔2Aa1、2Aa1’から内方に沈んだ位置に配置される(図5参照)。これにより、スライドベース2Bのロック状態が解除される。
この状態から、作業者がハンドル21の上部を把持した状態で、ハンドル21を前方(つまり図5左方)に移動させると、スライドベース2Bが前方にスライド移動して、アクチュエータ20および閂部材23がスイッチ本体3側に突出する(図4参照)。そして、可動扉Dが閉塞してアクチュエータ20が壁W側のスイッチ本体3に接近した接近位置に配置されると、アクチュエータ20がスイッチ本体3の内部に挿入されてスイッチ本体3内部の出力状態が切り替わるとともに、閂部材23が閂受け部30に挿入される。
このように本実施例によれば、ロック状態のスライドベース2Bを固定ベース2Aに対して無理に移動させようとする大きな力は、ロック部材27、27’を介してロック作用部材22dに作用するが、このとき、ロック部材27、27’がロック作用部材22dと別体に設けられているので、ロック作用部材22dに作用する力を低減でき、その結果、ロック作用部材22dひいてはロック機構全体の破損を防止できる。
<第2の実施例>
図7ないし図9は、本発明の第2の実施例によるアクチュエータユニットを示している。各図はアクチュエータユニットの正面概略図である。各図中、前記第1の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。また、前記第1の実施例と同様に、各図左右方向を前後方向と呼称し、各図上下方向を上下方向と呼称することにする。
前記第1の実施例では、揺動可能なロック部材27、27’および進退可能なロック作用部材22dからロック機構が構成された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。図7ないし図9に示すように、本実施例によるロック機構は、回動可能なロック部材27および回動可能なレバー(ロック作用部材)22dから構成されている。
図7および図8に示すように、スライドベース2Bの基部には、ロック部材27が配置されている。ロック部材27はたとえばディスク状の部材であって、軸芯Oの回りを回動可能に設けられており、互いに直交する方向に延びる一対のアーム27A、27Bを有している。図7、図8に示すロック解除時には、アーム27Aは前後方向に延びており、アーム27Bはこれと直交する上下方向に延びている。図示していないが、ロック部材27にはねじりコイルばねが装着されており、その弾性反発力により、ロック部材27は、アーム27Aが前後方向に配向されかつアーム27Bが上下方向に配向される向きに常時付勢されている。
固定ベース2Aの後端側には、錠前22が設けられている。錠前22にはレバー(ロック作用部材)22dが取り付けられており、錠前22に挿入されたキー22aを操作することにより、錠前22の内部に配設された軸部(操作部)(図示せず)を介して、レバー22dが前後方向に配向する前後方向位置およびこれと直交する上下方向位置の間において90°の範囲で回動するようになっている。レバー22dは、図8に示すアクチュエータ20の離反位置において、ロック部材27のアーム27Bと対向する位置に取り付けられている。また、錠前22の近傍には、前後方向に延びる弾性部材24が配設されており、弾性部材24の前端にはキャップ部材24Aが取り付けられている。図7に示すように、アクチュエータ20がスイッチ本体に接近した接近位置において、キャップ部材24Aは前後方向位置のレバー22dと対向しており、この状態においては、作業者がキー22aを操作して錠前22のレバー22dを前後方向位置から上下方向位置に回動させようとしても、レバー22dがキャップ部材24Aに干渉するので、レバー22dを回動させることができない。
次に、本実施例の作用効果について説明する。
可動扉の閉塞状態においては、前記第1の実施例と同様に、アクチュエータユニット2のスライドベース2Bが固定ベース2Aに対して前方にスライド移動しており、アクチュエータ20がスイッチ本体に接近した接近位置に配置されている(図7参照)。この状態から可動扉を開放する際には、作業者がハンドル21の上部を把持して、ハンドル21を後方(図7右方)に移動させることで、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して後方にスライド移動させ、アクチュエータ20をスイッチ本体から離れた離反位置に移動させる。
この離反位置においては、スライドベース2Bの後端2Brが固定ベース2Aのストッパ26に当接しており、スライドベース2Bとともに移動したロック部材27のアーム27Bが固定ベース2A側の錠前22のレバー22dと対向している(図8参照)。また、このとき、ロック部材27のアーム27Bはキャップ部材24Aに当接して弾性部材24を縮退させている。
この状態から、錠前22に挿入されたキー22aを操作することにより、錠前22のレバー22dを前後方向位置(図8)から上下方向位置(図9)に回動させる。すると、回動するレバー22dがロック部材27のアーム27Bに作用して、ロック部材27をねじりコイルばね(図示せず)の弾性反発力に抗して軸芯Oの回りに回動させ、アーム27Bを上下方向位置から前後方向位置に回動させる(図9参照)。ロック部材27の回動により、図9に示すように、アーム27Aがストッパ26に当接する。このとき、ロック部材27のアーム27Bが元の上下方向位置に戻る方向へのロック部材27の回動は、アーム27Bに錠前22のレバー22dが当接していることにより規制される。これにより、スライドベース2Bが固定ベース2Aに対して前後方向移動不能にロックされることになる。また、このとき、レバー22dは弾性部材24をさらに縮退させており、レバー22dには、ねじりコイルばねの弾性反発力に加えて弾性部材24からの弾性反発力も作用している。
このロック状態(図9)においては、作業者等の人の体がハンドル21に当たることにより可動扉が閉められようとしたり、屋外からの風の影響等で可動扉が閉まろうとした場合であっても、スライドベース2Bはロック状態を維持したままなので、アクチュエータ20がスイッチ本体側に突出することはなく、これにより、アクチュエータ20がスイッチ本体の外側面と衝突したり、人と干渉したりするのを回避でき、その結果、部品の損傷や破損を防止でき、人体に危険が及ぶのを回避できる。また、アクチュエータ20が接近位置に移動しないので、スイッチ本体内部の出力状態が切り替わることもなく、人の安全を確保できる。
さらに、ロック状態(図9)においては、作業者が危険区域内に入る際にキー22aを抜いて危険区域内に持ち込むようにすれば、他の作業者が不注意で可動扉を閉めようとしてハンドル21を把持してスライドベース2Bをスライド移動させようとしても、このとき、ロック部材27のアーム27Bに錠前22のレバー22dが当接した状態が維持されて、ロック部材27がロック位置に維持されるので、スライドベース2Bのロック状態は解除されない。このように、ロック状態はキー操作により実現されるので、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して確実にロックできる。
また、このロック状態(図9)においては、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して無理に移動させようとする大きな力が作用したとき、この力は、アーム27A、ロック部材27のディスク状部およびアーム27Bを介して、錠前22のレバー22dに回動方向の押付力を作用させることになる。
ところが、この場合には、ロック部材27が錠前22のレバー22dと一体物ではなく別体に設けられているので、アーム27A、27Bの弾性変形や各部材間のわずかなクリアランス等によって、当該押付力を低減できる。これにより、レバー22dおよび錠前22、ひいてはスライドベース2Aのロック機構全体の破損を防止できる。なお、万一、いずれかの部品が破損した場合でも、ロック部材27が錠前22のレバー22dと別体に設けられていることで、部品の交換やメンテナンス作業が容易になる。
次に、可動扉Dを閉塞する際には、ロック状態(図9)からキー22aを操作することにより、錠前22のレバー22dを上下方向位置(図9)から前後方向位置(図8)に回動させる。レバー22dがロック部材27のアーム27Bから離れる側に回動すると、ロック部材27に作用するねじりコイルばね(図示せず)の弾性反発力により、ロック部材27が軸芯Oの回りを回動して、アーム27Bが上下方向位置に配置され、アーム27Aが前後方向位置に配置される(図8参照)。これにより、スライドベース2Bのロック状態が解除される。
この状態から、作業者がハンドル21の上部を把持した状態で、ハンドル21を前方(つまり図8左方)に移動させると、スライドベース2Bが前方にスライド移動して、アクチュエータ20および閂部材23がスイッチ本体側に突出する。そして、可動扉が閉塞してアクチュエータ20が壁側のスイッチ本体に接近した接近位置に配置されると、アクチュエータ20がスイッチ本体の内部に挿入されてスイッチ本体内部の出力状態が切り替わるとともに、閂部材23が閂受け部に挿入される。
このように本実施例によれば、ロック状態のスライドベース2Bを固定ベース2Aに対して無理に移動させようとする大きな力は、アーム27A、27Bおよびロック部材27のディスク状部を介してレバー22dに作用するが、このとき、アーム27A、27Bおよびロック部材27のディスク状部がレバー22dと別体に設けられているので、レバー22dに作用する力を低減でき、その結果、レバー22dひいてはロック機構全体の破損を防止できる。
以上、本発明に好適な実施例について説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、本発明には種々の変形例が含まれる。以下に変形例のいくつかの例を挙げておく。
〔第1の変形例〕
前記第1の実施例では、ロック部材27、27’を固定ベース2A側に設け、ロック作用部材22dをスライドベース2B側に設けた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。これとは逆に、ロック部材27、27’をスライドベース2B側に設け、ロック作用部材22dを固定ベース2A側に設けるようにしてもよい。
同様に、前記第2の実施例では、ロック部材27をスライドベース2B側に設け、ロック作用部材としてのレバー22dを固定ベース2A側に設けた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。これとは逆に、ロック部材27を固定ベース2A側に設け、ロック作用部材としてのレバー22dをスライドベース2B側に設けるようにしてもよい。
〔第2の変形例〕
前記第1、第2の実施例および前記第1の変形例では、ロック部材またはロック作用部材のいずれか一方が固定ベース2A側に設けられ、残りの他方がスライドベース2B側に設けられた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。ロック部材およびロック作用部材の双方を固定ベース2A側に設けるようにしてもよく、あるいは、これとは逆に、ロック部材およびロック作用部材の双方をスライドベース2B側に設けるようにしてもよい。
〔第3の変形例〕
前記第1の実施例では、ロック部材27、27’がいずれも揺動可能な部材から構成され、前記第2の実施例では、ロック部材27が回動可能な部材から構成された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
図10ないし図13は、本発明の第3の変形例を示している。図10、図11はアクチュエータユニットを前面側から見た内部構造概略図、図12は図10のXII矢視図、図13は図11のXIII矢視図である。これらの図において、前記第1、第2の実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。また、図10、図11の各図紙面垂直方向および図12、図13の各図左右方向を前後方向と呼称し、図10、図11の各図左右方向および図12、図13の各図紙面垂直方向を上下方向と呼称することにする。
図10および図11に示すように、固定ベース2A内には、上下方向に延びる軸部(操作部)22bが配設されている。軸部22bの一端は錠前22に連結されており、錠前に挿入されたキー22aを操作することにより、軸部22bは90°の範囲内で回動可能になっている。軸部22bには、軸上に所定の間隔を隔てて配置された一対のカム部(ロック作用部材)22dが設けられている。各カム部22dは、図10に示す状態でスライドベース2B側への突出量が最小になっており(図12参照)、図11に示す状態でスライドベース2B側への突出量が最大になっている(図13参照)。
固定ベース2A内において、各カム部22dにそれぞれ対応する位置には、一対のロック部材27が設けられている。各ロック部材27はそれぞれ大径部27bを有しており、各大径部27bは、対応する各カム部22dに当接している。各ロック部材27の外周にはコイルばね25がそれぞれ装着されている。各コイルばね25の一端は固定ベース2Aの内壁面に、他端は大径部27bの段差部にそれぞれ圧接しており、各コイルばね25の弾性反発力の作用により、各ロック部材27は、対応する各カム部22dの側に常時付勢されている。また、固定ベース2Aの内壁面において各ロック部材27と対向する位置には、一対の開孔2Aa1が貫通形成されている。各開孔2Aa1は、対応する各ロック部材27の小径部の先端が通過し得る大きさになっている。
次に、本変形例の作用効果について説明する。
可動扉の開閉は、前記第1、第2の実施例と同様に、作業者がハンドル21を把持し、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して前後方向にスライドさせることにより行う。これにより、アクチュエータ20が接近位置および離反位置に配置される。スライドベース2Bのスライド移動の際には、図10に示すように、各ロック部材27の先端が固定ベース2Aの対応する各開孔2Aa1から沈んだ位置に配置されており(図12参照)、これにより、スライドベース2Bのスライド移動はスムーズに行われる。
アクチュエータ20の離反位置において、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対してロックする際には、図10に示すように錠前22にキー22aが挿入された状態から、作業者がキー22aを90°回転操作する。すると、図11に示すように、軸部22bの回転により各カム部22dが90°回転し(図13参照)、それにともなって、各カム部22dが、対応する各ロック部材27の各大径部27bをコイルばね25のばね力に抗して押し上げる。その結果、各ロック部材27の先端が、固定ベース2Bの対応する各開孔2Aa1から突出する(図13参照)。このとき、各ロック部材27の先端は、スライドベース2Bの前側面2Bf1に当接する。これにより、スライドベース2Bが固定ベース2Aに対して前後方向移動不能にロックされることになる。
このロック状態(図11、図13)においては、前記第1、第2の実施例と同様に、何らかの外的要因で可動扉が閉められようとした場合でも、スライドベース2Bがロック状態を維持するので、アクチュエータ20がスイッチ本体の外側面と衝突したり、人と干渉したりするのを回避でき、その結果、部品の損傷や破損を防止でき、人体に危険が及ぶのを回避できる。また、アクチュエータ20が接近位置に移動しないので、スイッチ本体内部の出力状態が切り替わることもなく、人の安全を確保できる。
さらに、ロック状態(図11、図13)においては、作業者が危険区域内に入る際にキー22aを抜いて危険区域内に持ち込むようにすれば、他の作業者が不注意で可動扉を閉めようとしてハンドル21を把持してスライドベース2Bをスライド移動させようとした場合でも、各ロック部材27の先端が固定ベース2Bの各開孔2Aa1から突出した状態が維持されるので、スライドベース2Bのロック状態は解除されない。このように、ロック状態はキー操作により実現されるので、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して確実にロックできる。
また、ロック状態(図11、図13)においては、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して無理に移動させようとする大きな力が作用したとき、この力はロック部材27に作用し、ロック部材27からカム部22dに作用しようとするが、このとき、ロック部材27がカム部22d、軸部22bおよび錠前22と一体物ではなく別体に設けられており、しかも、当該力はロック部材27からカム部22dに対してカム面の接線方向に作用することで(図13中の矢印f参照)カム部22dには作用しないので、軸部22bや錠前22にも作用しない。これにより、カム部22d、軸部22bおよび錠前22、ひいてはスライドベース2Aのロック機構全体の破損を防止できる。なお、万一、いずれかの部品が破損した場合でも、ロック部材27がカム部22d、軸部22bおよび錠前22と別体に設けられていることで、部品の交換やメンテナンス作業が容易になる。
次に、可動扉を閉塞する際には、ロック状態(図11、図13)からキー22aを90°回転操作することにより、軸部22bとともに各カム部22dを90°回転させる。すると、図10、図12に示すように、各コイルばね25の弾性反発力の作用により、各ロック部材27が移動して、その先端が固定ベース2Bの各開孔2Aa1から内方に沈み込む。これにより、スライドベース2Bのロック状態が解除される。
この状態から、作業者がハンドル21の上部を把持した状態で、ハンドル21を前方(つまり図10紙面手前側、図12左側)に移動させると、スライドベース2Bが前方にスライド移動して、アクチュエータ20および閂部材23がスイッチ本体側に突出する。そして、可動扉が閉塞してアクチュエータ20が壁側のスイッチ本体に接近した接近位置に配置されると、アクチュエータ20がスイッチ本体の内部に挿入されてスイッチ本体内部の出力状態が切り替わるとともに、閂部材23が閂受け部に挿入される。
このように本変形例によれば、ロック状態のスライドベース2Bを固定ベース2Aに対して無理に移動させようとする大きな力は、ロック部材27に作用しても、ロック部材27からカム部22d、軸部22bおよび錠前22には作用しないので、カム部22d、軸部22bおよび錠前22、ひいてはスライドベース2Aのロック機構全体の破損を防止できる。また、本変形例は、ロック部材およびロック作用部材の双方が固定ベース2A側に設けられた例を示しており、第2の変形例にも該当している。
〔第4の変形例〕
図14および図15は本発明の第4の変形例を示しており、図14は前記第3の変形例の図12に相当し、図15は前記第3の変形例の図13に相当している。これらの図において、前記第3の変形例と同一符号は同一または相当部分を示している。
図14および図15に示すように、固定ベース2A内には、上下方向(各図紙面垂直方向)に延びる軸部(操作部)22bが配設されている。前記第3の変形例と同様に、軸部22bの一端は錠前(図示せず)に連結されており、錠前に挿入されたキー(図示せず)を操作することにより、軸部22bは90°の範囲内で回動可能になっている。軸部22bには、前記第3の変形例と同様に、軸上に所定の間隔を隔てて配置された一対のカム部(ロック作用部材)22dが設けられている。各カム部22dは、図14に示す状態でスライドベース2B側への突出量が最小になっており、図15に示す状態でスライドベース2B側への突出量が最大になっている。各カム部22dのカム面の最大突出部位には、ロック部材27がそれぞれ設けられている。各ロック部材27は、対応する各カム部22dに対して出没可能に設けられており、各カム部22dの内部に収容されたばね25の弾性反発力により突出側に常時付勢されている。各開孔2Aa1は、対応する各ロック部材27およびカム部22dの最大突出部位が通過し得る大きさになっている。
次に、本変形例の作用効果について説明する。
前記第3の変形例と同様に、可動扉の開閉時においてスライドベース2Bのスライド移動の際には、図14に示すように、各ロック部材27が固定ベース2Aの対応する各開孔2Aa1から沈んだ位置に配置されており、これにより、スライドベース2Bのスライド移動はスムーズに行われる。
アクチュエータ20の離反位置において、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対してロックする際には、作業者が錠前のキーを90°回転操作して軸部22bを回転させることにより、各カム部22dを90°回転させる(図15参照)。すると、各ロック部材27が固定ベース2Bの対応する各開孔2Aa1から突出して(図15参照)、各ロック部材27がスライドベース2Bの前側面2Bf1に当接する。これにより、スライドベース2Bが固定ベース2Aに対して前後方向移動不能にロックされることになる。
このロック状態(図15)においては、前記第3の変形例と同様に、何らかの外的要因で可動扉が閉められようとした場合でも、スライドベース2Bがロック状態を維持するので、アクチュエータ20がスイッチ本体の外側面と衝突したり、人と干渉したりするのを回避でき、その結果、部品の損傷や破損を防止でき、人体に危険が及ぶのを回避できる。また、アクチュエータ20が接近位置に移動しないので、スイッチ本体内部の出力状態が切り替わることもなく、人の安全を確保できる。
さらに、ロック状態(図15)においては、作業者が危険区域内に入る際にキーを抜いて危険区域内に持ち込むようにすれば、他の作業者が不注意で可動扉を閉めようとしてスライドベース2Bをスライド移動させようとした場合でも、各ロック部材27が固定ベース2Bの各開孔2Aa1から突出した状態が維持されるので、スライドベース2Bのロック状態は解除されない。このように、ロック状態はキー操作により実現されるので、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して確実にロックできる。
また、ロック状態(図15)においては、スライドベース2Bを固定ベース2Aに対して無理に移動させようとする大きな力が作用したとき、この力はロック部材27に作用し、ロック部材27からカム部22dを介して軸部22bに捩り力を作用させる。このとき、ロック部材27がカム部22d、軸部22bおよび錠前と一体物ではなく別体に設けられるとともに、ばね25を介してカム部22dに弾性支持されているので、ロック部材27からカム部22dを介して軸部22bに作用する捩り力を低減できる。これにより、カム部22dおよび錠前、ひいてはスライドベース2Aのロック機構全体の破損を防止できる。なお、万一、いずれかの部品が破損した場合でも、ロック部材27がカム部22d、軸部22bおよび錠前と別体に設けられていることで、部品の交換やメンテナンス作業が容易になる。
次に、可動扉を閉塞する際には、ロック状態(図15)からキーを90°回転操作することにより、軸部22bとともに各カム部22dを90°回転させる。すると、図14に示すように、各ロック部材27が回転移動して固定ベース2Bの各開孔2Aa1から内方に沈み込む。これにより、スライドベース2Bのロック状態が解除される。
この状態から、作業者がスライドベース2Bを前方にスライド移動させることで、アクチュエータ20および閂部材がスイッチ本体側に突出する。そして、可動扉が閉塞してアクチュエータ20が壁側のスイッチ本体に接近した接近位置に配置されると、アクチュエータ20がスイッチ本体の内部に挿入されてスイッチ本体内部の出力状態が切り替わるとともに、閂部材が閂受け部に挿入される。
このように本変形例によれば、ロック状態のスライドベース2Bを固定ベース2Aに対して無理に移動させようとする大きな力は、ロック部材27に作用するが、このとき、カム部22dおよび軸部22bがロック部材27と別体に設けられているので、カム部22dおよび軸部22bに作用する力を低減でき、カム部22d、軸部22bおよび錠前、ひいてはスライドベース2Aのロック機構全体の破損を防止できる。また、本変形例は、ロック部材およびロック作用部材の双方が固定ベース2A側に設けられた例を示しており、前記第2の変形例にも該当している。
〔第5の変形例〕
本発明におけるロック作用部材および操作部は、一体に構成されていても、また別体に構成されていてもいずれでもよい。
〔第6の変形例〕
前記第1および第2の実施例では、キー22aの操作によりロック状態を実現するようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。キー22aのようなメカニカルキーの代わりとして、着脱可能なプラグを用いたり、RFIDカードのような非接触カード、または磁気や光等を利用した非接触キーを用いたりすることにより、外部からロック部材を操作するようにしてもよい。
〔第7の変形例〕
前記第1および第2の実施例では、アクチュエータ20がスイッチ本体3に挿入されてスイッチ本体3の内部の部品に機械的に接触することでスイッチ本体3の内部の出力状態が切り替わるようにした例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。
本発明は、アクチュエータ20がスイッチ本体3の内部の部品に機械的に接触して作用する接触安全スイッチのみならず、たとえば、アクチュエータ20に磁石や光源、RFID(Radio Frequency Identification)を取り付けることで磁気や光、無線通信によりスイッチ本体3の内部の接点に対して非接触で作用する非接触安全スイッチにも同様に適用できる。
〔第8の変形例〕
前記第1および第2の実施例では、本発明による安全スイッチ1が、可動扉Dと壁(または固定扉)Wとの組合せに適用された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。本発明は、可動扉同士の組合せにも適用可能であり、またスライド扉に限らず、回動扉にも適用可能である。
〔他の適用例〕
前記各実施例および前記各変形例では、本発明によるアクチュエータユニットが安全スイッチに適用された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。本発明は、安全スイッチの他にリミットスイッチ等のスイッチにも適用可能である。