本発明は、光通信システムや光計測システムで用いられる光送信器およびそれを用いた光伝送システムに関する。
従来の光伝送システムでは、光ファイバを伝搬して減衰した信号を再生するために、光信号を電気信号に変換し、ディジタル信号を識別後に光信号を再生する識別再生光中継器が用いられた。識別再生光中継器では、光−電気変換する電子部品の応答速度制限や、消費電力増大の問題があった。そこで、希土類元素を添加した光ファイバに励起光を入射して信号光を光のままで増幅するファイバレーザ増幅器や、半導体レーザ増幅器が登場した。これらレーザ増幅器は、劣化した信号光波形を整形する機能を有していなかった。逆に、不可避的かつランダムに発生する自然放出光が信号成分と全く無関係に混入され、増幅前後で信号光のS/Nが少なくとも3dB低下する。S/N低下は、ディジタル信号伝送時における伝送符号誤り率を上昇させ、伝送品質を低下させる。
レーザ増幅器の限界を打開する手段として、位相感応光増幅器(Phase Sensitive Amplifier:PSA)が検討されている。PSAは、伝送ファイバの分散の影響による劣化した信号光波形や位相信号を整形する機能を有する。信号とは無関係の直交位相をもった自然放出光を抑圧でき、同相の自然放出光も最小限で済む。このために原理的に増幅前後で信号光のS/Nを劣化させず同一に保つことができる。
図5は、従来技術のPSAの基本的な構成を示す図である。PSA100は、光パラメトリック増幅を用いた位相感応光増幅部101と励起光源102と励起光位相制御部103と、第1光分岐部104−1及び第2の光分岐部104−2とを備える。図5に示されるように、PSA100に入力された信号光110は、光分岐部104−1で2分岐されて、一方は位相感応光増幅部101に入射し、他方は励起光源102に入射する。励起光源102から出射した励起光111は、励起光位相制御部103を介して位相が調整され、位相感応光増幅部101に入射する。位相感応光増幅部101は、入力した信号光110及び励起光111に基づいて出力信号光112を出力する。
位相感応光増幅部101は、信号光110の位相および励起光111の位相が一致すると信号光110を増幅し、両者の位相が90度ずれた直交位相関係になると信号光110を減衰する特性を有する。この特性を利用して増幅利得が最大となるように励起光111―信号光110間の位相を一致させると、信号光110と直交位相の自然放出光が発生せず、また同相の成分に関しても信号光のもつ雑音以上に過剰な自然放出光を発生しない。このため、S/N比を劣化させずに信号光110を増幅できる。
信号光110および励起光111の位相同期を達成するために、励起光位相制御部103は、第1の光分岐部104−1で分岐された信号光110の位相と同期するように励起光111の位相を制御する。励起光位相制御部103は、第2の光分岐部104−2で分岐された出力信号光112の一部を狭帯域の検出器で検波し、出力信号光112の増幅利得が最大となるように励起光111の位相を制御する。
上述のパラメトリック増幅を行う非線形光学媒質には、周期分極反転LiNbO3(PPLN)導波路に代表される二次非線形光学材料と、石英ガラスファイバに代表される三次非線形光学材料がある。
図6は、PPLN導波路を用いた従来技術のPSAの構成を示す図である(非特許文献1参照)。図6に示したPSA200は、エルビウム添加ファイバレーザ増幅器(EDFA)201と、第1の二次非線形光学素子202及び第2の二次非線形光学素子204と、第1の光分岐部203−1及び第2の光分岐部203−2と、位相変調器205と、光ファイバ伸長器206と、偏波保持ファイバ207と、光検出器208と、位相同期ループ(PLL)回路209と、を備える。第1の二次非線形光学素子202は、第1の空間光学系211と、第1のPPLN導波路212と、第2の空間光学系213と、第1のダイクロイックミラー214と、を備える。第2の二次非線形光学素子204も、同様の構成を持ち詳細は説明を省略する。
図6のPSA200に入射した信号光250は、光分岐部203−1によって分岐されて、一方は第2の二次非線形光学素子204に入射する。分岐光の他方は励起基本波光251として位相変調器205及び光ファイバ伸長器206を介して、位相制御されてEDFA201に入射する。EDFA201は、入射した励起基本波光251を十分に増幅し、第1の二次非線形光学素子202に入射する。EDFA201により、微弱な励起基本波光251から非線形光学効果を得るのに十分なパワーを得ることができる。第1の二次非線形光学素子202では、入射した励起基本波光251から第2高調波(以下、SH光)252が発生する。発生したSH光252は、偏波保持ファイバ207を介して第2の二次非線形光学素子204に入射する。第2の二次非線形光学素子204では、入射した信号光250およびSH光252によって縮退パラメトリック増幅を行うことで、位相感応光増幅を行い、出力信号光253を出力する。
PSAにおいては、信号光と位相の合った光のみを増幅するために、上述のように信号光の位相と励起光の位相とが一致するか、または、πラジアンだけずれている必要がある。すなわち二次の非線形光学効果を用いる場合は、SH光に相当する波長である励起光の位相φ2ωsと、信号光の位相φωsとが以下の式(1)の関係を満たすことが必要となる。ここで、nは整数とする。
Δφ=1/2(φ2ωs−φωs)=nπ 式(1)
図7は、従来技術の二次非線形光学効果を利用したPSAにおける、入力信号光‐励起光間の位相差Δφと利得との関係を示す図である。横軸の位相差Δφが−π、0、またはπのときに、縦軸の利得(dB)が最大となっていることがわかる。
信号光250と励起基本波光251との間の位相同期のために、まず位相変調器205で微弱なパイロット信号により位相変調を励起基本波光251に施し、出力信号光253の一部を分岐して検出器208で検波する。このパイロット信号成分は、図7に示した位相差Δφが最小となって、位相同期が取れている状態で最小となる。したがって、パイロット信号が最小、つまり増幅出力信号が最大となるようにPLL回路209を用いて、光ファイバ伸長器206にフィードバックを行う。励起基本波光251の位相を光ファイバ伸長器206によって制御して、信号光250と励起基本波光251との間の位相同期を達成できる。
光通信の高速・大容量化の要請の中で、PSAにおいても、以下述べるように対応する変調方式や多重化方式の点でその適用範囲が広がっている。図7に示したように、PPLN導波路を用いた従来のPSAは、直交する位相成分を減衰させる特性を有しているため、通常の強度変調や二値の位相変調を用いる強度変調・直接検波(IMDD:Intensity Modulation-Direct Detection)、2値位相変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)、差動位相偏移変調(DPSK:Differential Phase Shift Keying)等の変調信号の増幅に適用できるものの、さらに多値の変調フォーマットであるQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や8PSK等の変調信号を増幅できない。
非特許文献2及び非特許文献3は、QPSK等の変調信号を位相感応光増幅し、位相再生増幅が可能な構成を開示している。非特許文献2は三次の非線形光学材料である石英ガラスファイバを用いた方法を、非特許文献3は二次の非線形光学材料であるPPLNを用いた方法を開示している。
多値の変調フォーマットでは、信号光からキャリア抽出するためには、変調信号の多値度が上がるほどより多くの非線形過程を用いる必要がある。その場合、信号光からキャリア抽出によって生成した基本波光のS/Nを保つことが難しい。また、非線形過程を複数回用いたキャリア抽出方法の構成では、複数の信号を波長多重したWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号を一括して増幅することができなかった。
非特許文献4は、信号光として主信号光およびその位相共役光からなる対を用い、非縮退パラメトリック増幅により、高次多値変調フォーマットの直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)変調信号やマルチキャリア信号に対する位相感応光増幅器を開示している。
図8は、信号光として主信号光およびその位相共役光からなる対を用いた、従来技術の非縮退パラメトリック増幅によるPSAの構成を示した図である。図8に示したPSA300は、光送信器301および位相感応光増幅器302からなる。光送信器301では、複数の信号光源303からの出力光に対し外部変調器304を用いてデータ変調した後に、合波器305によって波長多重を行う。信号光源303とは別の局部発振光源307から出力される基本波光から、二次非線形光学素子311により第二高調波(SH: Second Harmonic)光を発生させて励起光312とする。その後、二次非線形光学素子306によって、励起光312と波長多重された主信号光313との差周波光を発生させ、この差周波光を主信号光に対する位相共役光とする。位相共役光は、アイドラ光とも呼ばれる。
光送信器301からは、多重化された主信号光313およびその位相共役光からなる複数対を含む信号光群316と、局部発振器307からの基本波光の一部314とを別々に位相感応光増幅器302へ出力する。位相感応光増幅器302では、二次非線形光学素子323によって基本波光314からSH光である励起光329を生成する。さらに二次非線形光学素子324において励起光329と信号光群316との間のパラメトリック増幅過程を用いて位相感応光増幅を行う。
図9は、図8の従来技術の非縮退パラメトリック増幅によるPSAにおいて、各部の光の波長軸上での関係を模式的に説明する図である。いずれの図も横軸は波長を縦軸は光強度を示している。図9の(a)に示すように、光送信器301からは、主信号光313とその位相共役光315との複数の対からなる信号光群316と、基本波光314が出力される。基本励起光314を中心として対称な位置関係にある主信号光と位相共光が1つの対となる。尚、対となる信号光と位相共役光は、厳密には周波数軸上において対称な位置関係にあることに留意されたい。図9の(b)は、位相感応光増幅器302の二次非線形光学素子323により基本波光314からSH光である励起光329を生成する過程(SHG:Second Harmonic Generation)を示している。図9の(c)は、二次非線形光学素子324において励起光329と信号光群316との間のパラメトリック増幅過程(OPA: Optical Parametric Amplification)で得られる増幅された信号光群330を示している。図8では光送信器301から分岐した基本波光314を用いた構成例を示したが、長距離ファイバ伝送後の中継増幅器として用いるためには、信号光から搬送波位相を抽出し、搬送波位相に同期した局部発振光を生成する必要がある。その場合は、非特許文献6に示されているように基本波光をパイロット光として同送する方法がある。また、非特許文献7に示されているような光位相同期(光PLL)を用いて、信号光の搬送波位相と同期した局部発振光源からの出力光を基本波として用いても良い。
近年のデジタルコヒーレント光通信システムにおいては、偏波多重分離(PDM: Polarization Division Multiplexing)技術による偏波多重信号が用いられる。PPLN導波路等の非線形光学媒質は一般に偏波依存性を持つため、従来技術のPSAでは偏波多重信号の増幅を行うことができなかった。これに対し、非特許文献5および非特許文献6は、2つの非線形光学媒質を用いた偏波ダイバシティ構成によって偏波多重信号に対して位相感応光増幅する構成を開示している。
図10は、従来技術の偏波多重信号光を伝送する光伝送システムの概要を示す図である。光伝送システム350は、光送信器351と、光ファイバ伝送路361と、偏波ダイバシティ構成を持つ光増幅装置352からなる。非特許文献5および非特許文献6に開示されている偏波ダイバシティ構成は、図10の光伝送システムの光増幅装置352と同構成である。偏波ダイバシティ構成352では、光ファイバ361を伝送された偏波多重信号は、偏波ビームスプリッタ(PBS)362で分離される。分離した2つの偏波成分に対してそれぞれ非線形光学素子からなる位相感応光増幅器363、364で光増幅を行った後、PBS365で再度合波する。後述するように、偏波多重信号光を伝送する光伝送システムの送信信号であるPDM信号は、直交する偏波間で別々の異なるデータに基づき独立に変調される。PDM信号は、それぞれのデータに対応した光変調信号をPBSで合波することで生成できる。
本発明の光送信器では、信号光、その位相共役光、励起光、パイロット信号などの各信号において、直交する偏波間の位相差を安定化させる構成が提示される。PDM信号を生成する光送信器で、1つの主信号光およびその位相共役光の1対からなるPDM信号に対する構成(実施形態1、2)と、複数の対からなる波長多重化された信号群のPDM信号に対する構成(実施形態3、4)が開示される。2つの直交する偏波に対応し、各々が二次非線形光学素子を含む2つの信号アーム間で、信号光群の相対位相のドリフトを安定化させる。2つの信号アーム間の相対位相は、信号光群と同送するパイロット信号を検出して、信号光群の位相を調整する位相調整機構によって調整される。励起光の位相を調整する位相調整機構や、励起光を生成する基本波光の位相を調整する位相調整機構を採ることもできる。本発明の光送信器は、中継型の偏波ダイバシティ構成を持つ位相感応光増幅器と組み合わせた光伝送システムも提供する。以下、複数の実施形態とともに、本発明の光送信器の詳細な構成および動作を説明する。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る光送信器の構成を示す図である。本実施形態は、主信号光およびその位相共役光の対からなる偏波多重された信号光群を生成するための光送信器の構成を示す。ここで、1つの主信号光およびその位相共役光を対(ペア)と呼ぶ。第1の偏波の第1の対に対して、1つのデータ信号による変調によって、変調された主信号光および位相共役光からなる第1の対が得られる。さらに、第1の偏波に直交する第2の偏波の第2の対に対して、別のデータ信号による変調によって、変調された主信号光および位相共役光からなる第2の対が得られる。第1の偏波の第1の対と、第2の偏波の第2の対が偏波多重化されて、偏波多重信号群が構成される。主信号光の波長および位相共役光の波長の中心位置する波長のパイロット光を重畳し、偏波多重信号光群と同時に送信する。
図1の光送信器400は、信号光源401と、光カプラ402、409と、外部変調器403、404と、2つの差周波発生(DFG:Difference Frequency Generation)用の二次非線形光学素子405、406と、偏光ビームスプリッタ(PBS)407と、局部発振光源408と、EDFA410と、バンドパスフィルタ(BPF)411と、SH光発生(SHG)用の二次非線形光学素子412と、SH光の分波器413と、PZT(チタン酸ジルコニウム酸鉛)圧電素子を用いた光ファイバ伸縮器414〜416と、分波器417〜419と、光検出器421〜423と、偏光子428と、位相同期ループ(PLL)回路425〜427とを備えている。これらのうち、光ファイバ伸縮器と分波器と光検出器と位相同期ループ回路かなる3つのループは、それぞれ位相調整機構を構成している。
光送信器400において、局部発振光源408から出力された連続波光(CW光)は、光カプラ409、402により3つの光に分波され、それぞれ基本波光441、第1のパイロット光442、第2のパイロット光443として用いる。EDFA410は、基本波光441を増幅する。BPF411は、EDFA410によって発生したノイズ光を排除し、増幅された基本波光のみを透過させる。
SH光発生用の二次非線形光学素子412は、PPLN導波路および出力側のダイクロイックミラーを含む。BPF411を透過した基本波光が二次非線形光学素子412に入射すると、PPLN導波路により基本波光の半分の波長(2倍の周波数)のSH光が発生し、ダイクロイックミラーにより基本波光とSH光とが分離される。SH光の分波器413により2分岐された第1のSH光446および第2のSH光447を、それぞれ励起光として、第1の差周波発生差周波発生(DFG)用の二次非線形光学素子405および第2のDFG用の二次非線形光学素子406に入射する。
信号光源401は、局部発振光源408とは波長が異なる連続波光(CW光)を出力し、分波器402により2つの連続波光444、445に分岐される。外部変調器451、452は、2分岐された信号光源のそれぞれの連続波光444、445に対して、送信データ451、452に応じた16QAM変調を施す。信号光源401からの2つの連続波光444、445は、光カプラ402により第1のパイロット光442、第2のパイロット光443とそれぞれ合波されており、DFG用の二次非線形光学素子405、406にそれぞれに入力される。
DFG用の二次非線形光学素子405、406は、それぞれ、入力側のダイクロイックミラーと、PPLN導波路と、出力側のダイクロイックミラーとを含む。外部変調器451から出力された主信号光444および第1のパイロット光442と、二次非線形光学素子412から出力された励起光446とは、DFG用の二次非線形光学素子405のダイクロイックミラーにより合波され、PPLN導波路に入射する。これにより、主信号光444と励起光(2Lo)との差周波光が、DFG用の二次非線形光学素子405内のPPLN導波路において発生する。この差周波光が、主信号光444に対する位相共役光となる。励起光446は、基本波光441(Lo)の2倍の周波数となっており、第1のパイロット光442は縮退位相感応光増幅により増幅される。ダイクロイックミラーは、主信号光444およびその位相共役光の対並びに第1のパイロット光442からなる信号光群と、励起光(2Lo)とを分離し、信号光群448を出力する。
DFG用の二次非線形光学素子406においても、同様の動作によって信号光群449を出力する。すなわち、外部変調器452から出力された主信号光445および第2のパイロット光443と、二次非線形光学素子412から出力された励起光447とは、DFG用の二次非線形光学素子406のダイクロイックミラーにより合波され、PPLN導波路に入射する。これにより、主信号光445と励起光(2Lo)との差周波光が、DFG用の二次非線形光学素子406内のPPLN導波路において発生する。この差周波光が、主信号光445に対する位相共役光となる。励起光447は、基本波光441(Lo)の2倍の周波数となっており、第2のパイロット光443は縮退位相感応光増幅により増幅される。ダイクロイックミラーは、主信号光444およびその位相共役光の対並びに第2のパイロット光443からなる信号光群と、励起光(2Lo)とを分離し、信号光群448を出力する。
縮退位相感応光増幅された2つの信号光群448、449のうち、一方の信号光群449の偏光をλ/2板による偏波回転子429で偏波を回転させる。PBS407によって、偏波回転された信号光群450は信号光群448と偏波多重され、偏波多重信号群453が得られる。本実施形態では、一方の信号光群449の偏波回転のためにλ/2板を用いたが、光ファイバを90度ひねった状態でPBS407と接続するなどの偏波回転方法を用いても良い。偏波多重信号群453は、光送信器400からのPDM出力として光ファイバ伝送路へ送出される。
DFG用の二次非線形光学素子405、406の出力の後には、それぞれその出力の信号光群の一部を分岐する光カプラ417、418が備えられている。パイロット光のみを取り出すBPF423、424を経由して、さらに光検出器420、422によりパイロット光の光強度の変化を検出する。PLL回路425により、ファイバ伸縮器414へフィードバックを行うことで、第1のパイロット光442の出力が最大となるよう、位相感応光増幅前の信号光群の位相調整を行う(第1のフィードバック回路)。同様に、PLL回路427により、ファイバ伸縮器416へフィードバックを行うことで、第2のパイロット光443の出力が最大となるよう、位相感応光増幅前の信号光群の位相調整を行う(第2のフィードバック回路)。
光送信器400は、PBS407の出力の後に、偏波多重信号群453の一部を分岐する光カプラ418と、偏光子428がさらに備えられている。偏光子428は、PBS407による第1のパイロット光および第2のパイロット光を偏波合成後の特定の偏波を有するパイロット光について、ある特定の偏波成分のみを透過させるよう動作する。具体的には、第1のパイロット光が縦偏波(0°)の偏光を有し第2のパイロット光が横偏波(90°)の偏光を有する場合、偏波合成後のパイロット光は45°の偏光を有する。偏光子428の角度を、この45°の成分のみが透過するように調整しておく。第1のパイロット光および第2のパイロット光の相対位相が変動すると、偏波合成されたパイロット光の偏波回転が生じる。このため、偏光子428を透過できる出力光の光量が変化し、光検出器421により出力光の光強度の変化を検出する。PLL回路426によりファイバ伸縮器415へフィードバックを行うことで、光送信器400からのPDM信号453の出力が最大になるよう位相調整を行う(第3のフィードバック回路)。
このように光ファイバ伸縮器414〜416にフィードバックを行い、光送信器400内の温度や振動に起因した、2つの偏波間の信号光、位相共役光、パイロット光および励起光の相対位相のドリフトを光ファイバ伸縮器414〜416により補償する。第1のループおよび第2のループによって、2つの直交した偏波のそれぞれにおける信号光、位相共役光パイロット光および励起光の間の位相同期を行い、第3のループによって、2つの直交した偏波間の相対位相を安定化した状態でPDM信号453を送信できる。このため、光ファイバ伝送後の中継器においても、偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
本実施形態の光送信器では、それぞれの二次非線形光学素子内の非線形光学媒質として、擬似位相整合が可能なPPLN導波路を用いている。まず、Znを添加したLiNbO3上に周期が約17μmの周期的な電極を形成した。次に、電界印加法により上記の電極パターンに応じた分極反転グレーティングをZn:LiNbO3中に形成した。次に、この周期分極反転構造を有するZn:LiNbO3基板をクラッドとなるLiTaO3上に直接接合を行い、500℃で熱処理を行うことにより両基板を強固に接合した。次に、コア層を研磨により5μm程度まで薄膜化し、ドライエッチングプロセスを用いてリッジ型の光導波路を形成した。この導波路はペルチェ素子により温度調整が可能である。導波路の長さを50mmとした。このようにして形成されたPPLN導波路を有する二次非線形光学素子を、1.55μm帯の偏波保持ファイバで光の入出力が可能なモジュール構成とした。本実施形態では、Znを添加したLiNbO3を用いたが、それ以外の非線形材料である、KNbO3、LiTaO3、LiNbxTa1-xO3(0≦x≦1)若しくはKTiOPO4、又はそれらにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有している材料を用いても良い。
以上、本実施形態に示した光送信器の構成では、光送信器内の局部発振光源からの出力をパイロット光として信号光群と同送し、2つの直交する偏波の信号光群を偏波多重した偏波多重信号群453を送信することができる。直交する2つの偏波間の相対位相が安定化されているため、中継器での偏波ダイバシティ構成において、位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
また、本実施形態の光送信器では、信号変調フォーマットとして16QAMを用いた例で説明した。しかしながら変調フォーマットは、IMDD、BPSK、QPSK、64QAM、256QAM、より多値度の高いQAMなど任意のフォーマットに対しても、図1の光送信器とまったく同じ構成で励起光を生成できる。本実施形態によれば、多値の変調フォーマットの変調信号を送信することができる。また、本実施形態では信号光は1波のみであったが、複数の変調信号を波長多重したWDM信号を一括して送信することもできる。
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2に係る光送信器について説明する。本実施形態は、主信号光およびその位相共役光との対からなる偏波多重された信号光群を、パイロット光を同送することなく生成する光送信器の構成を示す。
図2は、本発明の実施形態2に係る光送信器の構成を示すブロック図である。光送信器500は、信号光源501と、偏波回転子502と、偏光ビームスプリッタ(PBS)503と、外部変調器504、505と、差周波発生(DFG)用の二次非線形光学素子506、507と、第2のPBS508と、局部発振光源509と、光カプラ510と、偏波回転子511と、EDFA512と、バンドパスフィルタ(BPF)513と、SH光発生(SHG)用の二次非線形光学素子514と、SH光の分波器515と、PZT(チタン酸ジルコニウム酸鉛)圧電素子を用いた光ファイバ伸縮器520と、分波器516と、偏光子517と、光検出器518と、PLL回路519とを備えている。これらのうち、光ファイバ伸縮器、分波器、光検出器および位相同期ループ回路は、位相調整機構を構成している。
光送信器500において、局部発振光源509から出力された連続波光(CW光)は、光カプラ510により2つの光路に分波され、それぞれ基本波光542、パイロット光543として用いる。EDFA512は、基本波光542を増幅する。BPF513は、EDFA512で発生したノイズ光を排除し、増幅された基本波光のみを透過させる。
SHG用の二次非線形光学素子514は、PPLN導波路と、出力側のダイクロイックミラーとを含む。BPF513を透過した基本波光が二次非線形光学素子514に入射すると、PPLN導波路により基本波光の半分の波長(2倍の周波数)のSH光が発生し、ダイクロイックミラーにより基本波光とSH光とが分離される。SH光の分波器515により2分岐された第1のSH光546および第2のSH光547を、それぞれ励起光として、DFG用の二次非線形光学素子506、507へ入射する。
信号光源501は、局部発振光源509とは波長が異なる連続波光(CW光)を出力し、偏光子502およびPBS503によって、直交する偏波の2つのCW光540、541に分岐される。局部発振光源509からのパイロット光543は、偏光子511を通過させた後、同じPBS503の他方の入力ポートより入力し、直交する偏波の2のパイロット光544、545に分岐させる。これにより、波長の異なる信号光540およびパイロット光544は直交した偏波状態で合波され、外部変調器504へ出力される。同様に、信号光541およびパイロット光545も直交した偏波状態で合波され、外部変調器505へ出力される。外部変調器504、505は、2分岐された信号光源の出力光540、541に対して、それぞれ送信データ551、552に応じた16QAM変調を施す。外部変調器504、505は、一般に偏波依存性を有しており、信号光に対して偏波の直交しているパイロット光544、545に対しては変調が施されない。外部変調器のタイプによっては、パイロット光にも変調が施されるが、本来の信号光への駆動偏波に比べれば変調度は小さく、パイロット光のCW光の成分が残存する。
外部変調器504、505で変調を施された信号光およびCW光のパイロット光は、DFG用の二次非線形光学素子506、507にそれぞれ入力される。DFG用の二次非線形光学素子506、507は、それぞれ、入力側のダイクロイックミラーと、PPLN導波路と、出力側のダイクロイックミラーとを含む。信号光およびパイロット光と、二次非線形光学素子514から出力された励起光546とは、二次非線形光学素子506内のダイクロイックミラーにより合波され、PPLN導波路に入射する。これにより、主信号光540と励起光(2Lo)546との差周波光が、二次非線形光学素子506内のPPLN導波路において発生する。この差周波光が、主信号光540に対する位相共役光となる。一方で、PPLN導波路は一般に偏波依存性を有しており、信号光と偏波の直交しているパイロット光544に対しては相互作用が起こらないため、二次非線形光学素子506内のPPLN導波路中をそのまま透過する。ダイクロイックミラーは、主信号光および位相共役光の対並びにパイロット光と、励起光546とを分離し、信号光群548を出力する。
DFG用の二次非線形光学素子507においても、同様の動作によって信号光群549を出力する。すなわち、信号光およびパイロット光と、二次非線形光学素子514から出力された励起光547とは、二次非線形光学素子507内のダイクロイックミラーにより合波され、PPLN導波路に入射する。これにより、主信号光541と励起光(2Lo)547との差周波光が、二次非線形光学素子507内のPPLN導波路において発生する。この差周波光が、主信号光541に対する位相共役光となる。信号光541と偏波の直交しているパイロット光545に対しては相互作用が起こらないため、二次非線形光学素子507内のPPLN導波路中をそのまま透過する。ダイクロイックミラーは、主信号光および位相共役光の対並びにパイロット光と、励起光547とを分離し、信号光群549を出力する。
2つの信号光群548、549の内、一方の信号光群549の偏光をλ/2板等の偏波回転子522を用いて再度90°偏波回転させる。PBS508によって、信号光群548および偏波回転した信号光群550を偏波多重する。偏波多重された偏波多重信号光群554が生成され、光送信器のPDM出力として、光ファイバに送出される。
前述のように主信号光540とパイロット光544とは偏波が直交している。同様に、主信号光541とパイロット光545とは偏波が直交している。したがって、パイロット光544、545は、主信号光および位相共役光の対を出力したPBS508のポートとは別のポートから合成されたパイロット信号553として出力される。光送信器のPDM出力554にはパイロット信号は含まれておらず、これによって本実施形態の光送信器500はパイロット信号を同送しない構成となる。合成されたパイロット信号553の後には、光検出器516および偏光子517がさらに備えられている。偏光子517は、実施形態1と同様に、第1のパイロット光および第2のパイロット光の位相変動に応じて、偏光子517の透過できる光量を変化させるように動作する。光検出器518によりパイロット信号の光強度の変化を検出する。PLL回路519によりファイバ伸縮器549へフィードバックを行うことによって、光検出器518の検出強度が最大となるように位相調整を行う。
このように一方の信号光群549の経路に配置された光ファイバ伸縮器520にフィードバックを掛けて、温度や振動による光送信器内の2つの偏波間のパイロット光の相対位相のドリフトを、光ファイバ伸縮器549により補償することができる。パイロット光を検出して、偏波多重する信号光群の一方の信号アームの位相を調整することで、2つの直交した偏波間の相対位相を安定化した状態で偏波多重信号を送信できる。光ファイバ伝送後の中継器においても、偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
本実施形態に示した光送信器では、光送信器内の局部発振光源からのパイロット光を同送することなく偏波多重した信号光群を送信することができる。光送信器側において、偏波間の位相が安定化されているため、中継器での偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
本実施形態では、信号変調フォーマットとして16QAMを用いた例を説明した。変調フォーマットは、IMDD、BPSK,QPSK、64QAM,256QAM、より多値度の高いQAMなど、任意のフォーマットに対しても、本実施形態の光送信器とまったく同じ構成で励起光を生成できる。本実施形態の光送信器によれば、多値の変調フォーマットの変調信号を送信することができる。また、本実施形態では信号光は1波のみであったが、複数の変調信号を波長多重したWDM信号を一括して送信することもできる。
[実施形態3]
次に、本発明の実施形態3に係る光送信器について説明する。本実施形態は、位相共役光を生成するための励起光の位相を安定化させることによって、主信号光および位相共役光の複数の対からなる信号光群を偏波多重した偏波多重信号光群に対し、偏波間の位相を安定化させる構成を示す。実施形態1〜2では、主信号およびその位相共役光からなる1対(主信号光―位相共役光対)を送信する光送信器の構成例を示した。実施形態3および次の実施形態4では、波長多重(WDM)された主信号光およびそれぞれの位相共役光からなる複数の対を含む信号光群を、さらに偏波多重した偏波多重信号を送信する光送信器の構成例を示す。
図3は、本発明の実施形態3に係る光送信器の構成を示すブロック図である。光送信器600は、複数の信号光源601と、複数の光カプラ602と、複数の外部変調器603と、波長合波器605、606と、差周波発生(DFG)用の二次非線形光学素子607、608と、偏波回転子609と、偏光ビームスプリッタ(PBS)610と、を備える。光送信器600は、局部発振光源611と、EDFA612と、バンドパスフィルタ(BPF)613と、SH光発生(SHG)用の二次非線形光学素子614と、光分岐615と、PZT圧電素子を用いた光ファイバ伸縮器620と、第二高調波光の光カプラ616と、光検出器617と、PLL回路619とをさらに備えている。これらのうち、光ファイバ伸縮器620、光カプラ616、光検出器618およびPLL回路620は、位相調整機構を構成している。
局部発振光源611から出力された連続波光(CW光)は、基本波光として用いる。EDFA612は、基本波光を増幅する。BPF613は、EDFA612によって発生したノイズ光を排除し、増幅された基本波光のみを透過させる。
SHG用の二次非線形光学素子614は、PPLN導波路と、出力側のダイクロイックミラーとを含む。BPF613を透過した基本波光が二次非線形光学素子614に入射すると、PPLN導波路により基本波光の半分の波長(2倍の周波数)のSH光が発生し、ダイクロイックミラーにより基本波光およびSH光が分離される。SH光は、光カプラ616により2分岐され、一方のSH光を第1の励起光642として、他方のSH光を第2の励起光643として、DFG用の二次非線形光学素子607、608へそれぞれに入射する。
複数の信号光源601は、それぞれ波長異なる連続波光(CW光)を出力し、複数の光カプラ602により光パワーをほぼ半分にして分岐される。複数の外部変調器603により、2分岐された複数の信号光源601からのそれぞれの出力光の一方に対して送信データ650に応じた変調を施す。ここで、送信データ650は簡略化して描いているが、各変調器において、対応するCW光に対して、異なるデータによって独立に変調することができる。波長合波器605によって、複数の外部変調器603の各々から出力された変調光の波長多重化を行い、波長多重された主信号光640が得られる。2分岐された複数の信号光源601からのそれぞれの出力光の他方に対しても、同様に、波長多重された主信号光641が得られる。
波長多重された主信号光640は、DFG用の二次非線形光学素子607に入力される。DFG用の二次非線形光学素子607は、入力側のダイクロイックミラーと、PPLN導波路と、出力側のダイクロイックミラーとを含む。主信号光640および二次非線形光学素子614から出力された励起光642は、ダイクロイックミラーにより合波され、PPLN導波路に入射する。二次非線形光学素子607のPPLN導波路において、主信号光640と励起光642との差周波光が発生する。この差周波光は、主信号光640に対する位相共役光となる。二次非線形光学素子607の出力側のダイクロイックミラーにより、主信号光および各々の位相共役光からなる複数の対(主信号光―位相共役光)からなる信号光群646と、二次非線形光学素子614からの励起光が分離され、励起光644が出力される。
波長多重された主信号光641について、DFG用の二次非線形光学素子608に入力される。主信号光641および二次非線形光学素子614から出力された励起光643は、ダイクロイックミラーにより合波され、PPLN導波路に入射する。二次非線形光学素子608のPPLN導波路において、主信号光641と励起光643との差周波光が発生する。この差周波光は、主信号光641に対する位相共役光となる。二次非線形光学素子606の出力側のダイクロイックミラーにより、主信号光641および各々の位相共役光からなる複数の対(主信号光―位相共役光)を含む信号光群647と、二次非線形光学素子614からの励起光が分離され、励起光645が出力される。
DFG用の二次非線形光学素子607、608から出力された2つの信号光群646、647の内、一方の信号光群647の偏光をλ/2板等の偏波回転子609を用いて偏波回転させる。偏波回転された信号光群648は、PBS610によって、信号光群646と偏波多重される。偏波多重された信号光群は、光送信器600のPDM出力649として光ファイバへ送出される。
DFG用の二次非線形光学素子607、608から分離された励起光644、645は、励起光(SH光)用の光カプラ616により合波される。2つの励起光644、645の位相差に応じて、光カプラ616からの出力は変動し、光検出器618によりその変動を検出する。PLL回路619によりファイバ伸縮器620へフィードバックを行うことで、励起光用の光カプラ616からの出力が最大になるように励起光の位相調整を行う。
このように光ファイバ伸縮器620にフィードバックを行い、温度や振動による、光送信器内の2つの励起光642、643の間の相対位相のドリフトを光ファイバ伸縮器620により補償できる。光送信器側において2つの偏波間の相対位相が安定化されているため、中継器においても、偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
上述のように、図3の本実施形態の光送信器では、パイロット光を同送することなく波長多重化された複数の主信号光(WDM信号)をさらに偏波多重したPDM信号を送信することができる。光送信器内の直交する2つの偏波間の励起光の位相が調整され、光送信器の2つの信号光アーム間で相対位相が安定化されているため、中継器においても、偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
[実施形態4]
最後に本発明の実施形態4に係る光送信器について説明する。本実施形態は、実施形態3のように位相共役光を生成するための励起光の位相を安定化させる代わりに、基本波光の位相を安定化させる構成を提示する。実施形態3と同様に、主信号光および位相共役光の複数の対からなる信号光群を、さらに偏波多重した偏波多重信号光に対し、偏波間の位相を安定化させる構成の光送信器を提示する。
図4は、本発明の実施形態4に係る光送信器の構成を示すブロック図である。図4の光送信器700は、偏波多重光を生成する基本的な構成については図3の実施形態3の光送信器600と概ね同一であって、相違点のみを説明する。図3の光送信器と比較すれば、局部発振光源711から出力された連続波光(CW光)から、第1のDFG用の二次非線形光学素子707および第2のDFG用の二次非線形光学素子708へ供給する励起光742、743の生成方法において相違する。また、分離した励起光に基づいてフィードバックを掛ける、ファイバ伸縮器723の位置も相違する。
図4の光送信器700では、局部発振光源711からのCW光は、光カプラ712によって2つに分岐され、分岐されたCW光をそれぞれ基本波光として用いる。したがって、各CW光に対して、EDFA713、714、BPF715、716を備え、増幅された2つの基本波光はSH光発生(SHG)用の二次非線形光学素子717、718にそれぞれ入射する。SHG用の二次非線形光学素子717、718から、それぞれ、DFG用の二次非線形光学素子707、708へ励起光742、743が供給される。
位相共役光を生成した後でDFG用の二次非線形光学素子707、708から分離された励起光744、745は、SH光用の光カプラ719で合波される。2つの励起光744、745の位相差に応じて、光カプラ716からの出力は変動し、光検出器721によりその変動を検出する。PLL回路722により、光カプラ712出力一方の分岐経路上にあるファイバ伸縮器623へフィードバックを行うことで、励起光用の光カプラ719からの出力が最大になるように2つの偏波間の基本波光で位相調整を行う。すなわち、光ファイバ伸縮器723、光カプラ719、光検出器720およびPLL回路722は、位相調整機構を構成している。
このように光ファイバ伸縮器723にフィードバックを行い、温度変動や振動による、光送信器内の2つの励起光744、745の間の相対位相のドリフトを光ファイバ伸縮器により補償できる。光送信器側において、直交する2つの偏波間の相対位相のドリフトが安定化されているため、中継器での偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
上述のように、図4の本実施形態の光送信器では、パイロット光を同送することなく波長多重化された複数の主信号光(WDM信号)をさらに偏波多重したPDM信号を送信することができる。光送信器内において、直交する2つの偏波間で励起光の位相調整が行われ、光送信器の2つの信号光アーム間で相対位相が安定化されているため、中継器においても偏波ダイバシティ構成の位相感応光増幅器を安定動作させることができる。
上述の実施形態1〜実施形態4で用いた二次非線形光学素子を構成するリッジ導波路の材料は一例にすぎない。すなわち、リッジ導波路は、LiNbO3、KNbO3、LiTaO3、LiNb(x)Ta(1―x)O3(0≦x≦1)、またはKTiOPO4のいずれかの材料から構成されるか、または、当該材料のいずれかにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として加えた材料から構成されても良い。
上述の各実施形態の光送信器と、偏波ダイバシティ構成を持つ位相感応光増幅器とを組み合わせれば、光伝システムを構成できる。例えば、図10や、非特許文献5〜7等に示されたような偏波ダイバシティ構成を有する位相感応光増幅器と組み合わせることができる。すなわち位相感応光増幅器は、実施形態1〜4いずれかの光送信器からの偏波多重光の搬送波位相に同期した基本波光を出力する局部発振光源を備え、偏波多重光の偏波成分を2つに分離し、非線形光学素子によって前記2つの偏波成分をそれぞれ光増幅し、光増幅された2つの偏波成分を再合波する偏波ダイバシティ構成を有するものであれば良い。