JP6794126B2 - 試料の破砕方法および破砕処理装置 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1〜4には、生体試料が収容された筒状の容器内に棒状部材を挿入し、棒状部材をその軸心周りに回転させて、棒状部材の先端部で生体試料を破砕・攪拌する方法および装置が開示されている(特許文献1〜4)。
本発明は、試料を過熱することなく、また効率的に試料を破砕する試料の破砕方法およびその方法を用いるための破砕処理装置を提供することを目的としている。
本発明の「試料」は、DNA又はRNA等の核酸やタンパク質を解析するための試料である。ここでの解析とは、核酸やタンパク質の検出だけを目的とするものも含む。
本発明の試料の破砕方法は、試料が過熱されることを防止でき、破砕された試料中の解析対象物質の変性を防止できる。
本発明の試料の破砕方法であって、前記試料と溶液とを容器内に収容して試料を破砕してもよい。
この場合、溶液の蒸発を防止できる。
この場合、回転を停止させることにより、破砕部材と試料、容器および/又は溶液との間の摩擦熱の発生を停止させることができる。また破砕部材を試料から離すことにより、破砕部材から試料への熱の伝達を停止させることができ、かつ、破砕部材を大気に露出してより効率的に放熱することができる。さらに停止工程後、再度破砕工程に移った際、破砕部材と試料との当接部位が変わるため、破砕効率が向上する。
本発明の試料の破砕方法は、このような破砕部材および容器を用いても試料および/または溶液の過熱を防止できる。また、停止工程において破砕部材の先端部を試料から離し、破砕工程において破砕部材の先端部を試料に再度当接させることで、先端部と試料の当接位置を変えることができ、より効率的に破砕することができる。
本発明の試料の破砕方法は、核酸又はタンパク質の解析用試料を破砕するのに好ましく用いられる。
本発明の破砕処理装置は、試料が過熱されて解析対象物質を変性させることなく、試料を破砕することができる。
本発明の破砕処理装置であって、前記停止工程が前記破砕部材の回転を停止させる工程および/又は前記破砕部材を前記試料から離す工程であるものが好ましい。
回転を停止させることにより、試料および/又は溶液の加熱を停止・放熱させることができる。また破砕部材を試料および/又は溶液から離すことにより、破砕部材から試料への熱の伝達を停止させることができ、かつ、破砕部材および試料を大気に露出して放熱することができる。さらに破砕部材を試料等から離す停止工程後に破砕工程とする際、破砕部材と試料との当接部位が変わるため、破砕効率が向上する。
このような破砕処理装置であって、水平方向に伸びる主回転軸と、前記主回転軸と異軸に設けられた複数の前記回転軸と、前記主回転軸の回転を前記回転軸の回転に伝達する伝達部とを備えたものが好ましい。
この場合、複数の試料を同時に破砕することができる。また、各試料の破砕条件を一律にすることができる。
本発明の破砕処理装置は、核酸又はタンパク質の解析用試料を破砕するために好ましく用いられる。
そして、本実施形態の試料の破砕方法は、前記先端部を回転させて前記試料を破砕する破砕工程と、前記試料の破砕を停止する停止工程とを交互に行う方法である。
なお、試料の破砕方法は、試料のみを容器内に収容して行ってもよいが、試料と溶液とを容器内に収容して行うのが好ましい。
本発明において試料は、核酸又はタンパク質の解析に用いるものであれば特に限定されない。具体的には、体毛、皮膚、生検材料、手術材料、豚肉、牛肉、鶏肉、鶏卵、加工食品、乾燥肉、生肉等が挙げられる。また、培養培地、土壌、口腔粘膜の採取に用いた綿棒、血液、だ液等であってもよい。具体的な解析方法としては、生化学検査として通常用いられるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いたDNAの解析、逆転写反応とPCRを組み合わせたRNA、特にRNAウイルスの解析、イムノクロマト法によるタンパク質の解析等がある。なお、解析結果は、例えば核酸やタンパク質を解析することにより食品に含まれる肉の動物種を判定するような解析作業や土壌中の菌、細菌、ウィルスを解析するような作業に用いられる。
試料としては、10mm立方以下のものを破砕するのに適している。また、容器の容積は、50mL以下のものが適している。
溶液としては、緩衝液、生理食塩水、精製水などが挙げられる。溶液は、検査内容に応じて適宜選択される。
また加工工程(破砕工程+停止工程)の所要時間は、2.5秒〜12分、特に15秒〜5分、さらには、30秒〜2分とするのが好ましい。しかし、本実施形態は上記所要時間に限定されるものではなく、試料に応じて適宜選択することができる。
試料の破砕工程は、試料を収容した容器内に破砕部材を挿入し、破砕部材をその軸心周りに回転させて、破砕部材の先端で試料を破砕・攪拌する工程である。このとき、破砕部材の先端部が破砕部材を試料に押圧しながら所定の時間、回転させる。
破砕部材の回転数は、100〜1000rpm、特に、200〜500rpmとするのが好ましい。破砕部材の回転は、連続的に回転数を上げ下げしてもよく、一定の回転数としてもよい。しかし、本実施形態は上記回転数に限定されるものではなく、採取する試料に応じて適宜選択することができる。
一回の破砕工程の所要時間は、1秒〜30秒、特に、3秒〜15秒とするのが好ましい。しかし、本実施形態は上記時間に限定されるものではなく、採用する破砕器具、試料に応じて適宜選択することができる。
停止工程の時間としては、0.5秒〜10秒、特に、1秒〜8秒とするのが好ましい。しかし、本実施形態は上記時間に限定されるものではなく、採用する破砕器具、試料に応じて適宜選択することができる。
停止工程としては、破砕部材の回転を停止するだけでもよく、また破砕部材の回転を停止させずに破砕部材の先端部を試料から離すだけでもよい。ただし、破砕部材の回転を停止させずに破砕部材の先端部を試料から離す場合、先端部を試料又は溶液から離したとき、試料又は溶液が容器の外部に飛び散らないようにするのが好ましい。例えば、図2eの破砕器具10aの破線は停止工程時の様子を示す。この破線に示すように、停止工程時に先端部11bが容器外に露出しないよう設計するのが好ましい。この場合、試料の飛び散りおよびコンタミネーションを一層防止できる。
図2aの破砕器具10は、棒状の破砕部材11と、その破砕部材を挿入する筒状の容器12とを備えている。
本体11aは、フランジ部11cより上方の上部11a1と、フランジ部11cより下方の下部11a2とからなっている。上部11a1は、上部11a1を保持して軸心周りに回転させやすいように多角形状としている(図2c参照)。下部11a2は、円柱状となっている。
先端部11bは、側面11b1および下面11b2が粗面加工された円錐台となっている。先端部11bでつぶすようにして試料を破砕する。
フランジ部11cは、本体11aから半径方向外側に延びている。フランジ部11cと本体11aとの間には、リブ11c1が複数等間隔で形成されている。フランジ部11cは、破砕部材11を容器12に挿入したとき、実質的に容器12の開口を閉じる(図2a参照)。
破砕部材11の材質としては、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
胴部12aの内面には、半径方向内側に延びる係止段部12a1が形成されている。この係止段部12a1は、破砕部材11のフランジ部11cと係止する。この係止段部12a1は、破砕部材11のフランジ部11cと係止したとき、破砕部材11の先端部11bの下面11b2と容器12の底部12bの底面12b2とが当接する位置に設けられている。しかし、試料の大きさに応じて下面11b2と底面12b2との間に若干隙間があるように設けられてもよい。
底部12bは、内面が傾斜した側面12b1および底面12b2とからなる逆円錐台状となっている。側面12b1の角度は、破砕部材11の先端部11bの側面11b1と実質的に同じとなっている。また、側面12b1も粗面加工されていてもよい。
蓋部12cの下面には、胴部12aの上端開口と嵌合する内筒部12c1が設けられている。また蓋部12cは、胴部12aの上端と連結したヒンジ13と連結している。蓋部12cによって胴部12aの上端開口を閉じることにより、試料又は破砕試料液を保管するとき、または、次の装置まで運ぶときのコンタミネーションを防止できる。また破砕試料液を収容したまま遠心分離機にかけるとき、破砕試料液が飛び散ることを防止する。
容器12の材質としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂が挙げられる。特に、透光性を有するものが好ましい。
また破砕部材11のリブ11c1が容器12の蓋の働きをするため、破砕工程におけるコンタミネーションを防止することができる。
破砕処理装置20は、枠体21と、その枠体に取り付けられるモータ22と、そのモータ22に連結された回転軸23と、上下動自在に設けられる容器保持部24と、モータ22の回転および容器保持部の上下動を制御する制御部25とを備えている。そして、回転軸23に破砕器具10の破砕部材11が連結され、容器保持部24に破砕器具10の容器12が取り付けられて使用される。なお、破砕器具は着脱可能に取り付けられていてもよく、使い捨てであってもよい。
主回転軸31には、複数の回転軸23を挟む位置に主回転軸31の回転を支持する主ベアリング31aが設けられている。主ベアリング31aは支持桟21cに支持されている。
伝達部32としては、ねじれの位置にある主回転軸31(入力)の回転力を回転軸23(出力)に伝達するマイタギヤが用いられている。しかし、特に、マイタギヤに限定されるものではなく、ベベルギヤやウォームギヤであってもよい。
アクチュエータ24aとしては、エアシリンダー、油圧シリンダーあるいは電動アクチュエータ等が用いられる。このアクチュエータ24aは、高さを変えられるように台座21bに固定されている。
保持台24bの上面には、容器12を保持できるように複数の保持孔24b1が形成されている。保持孔24b1は、容器12を締まり嵌めする寸法となっている。しかし、保持孔24b1に挿入される容器12が破砕工程時に回転しないように構成されていれば、保持孔24b1の形状は特に限定されない。
破砕処理装置20では、破砕部材11の回転を停止し、かつ、その先端部11bを試料から離しているが、回転を停止するだけ、あるいは、先端部11bを試料から離すだけとしてもよい。しかし、回転させながら先端部11bを試料から離す場合、例えば、図2eの破砕器具10aのように、先端部11bを試料から離したとき、試料が外部に飛び散らないようにすることが好ましい。
1.試料破砕液の調製
試料から試料破砕液を調製する。
1−1.試料の破砕
試料を1.5mLチューブに入れ、そこに必要量のTEバッファーを加える。本破砕処理装置とバイオマッシャーII(ニッピ社製)を用いて試料を破砕する。
1−2.試料破砕液の遠心
卓上遠心分離機を用いて、9000rpmで3分間の遠心作業を行い、夾雑物を沈殿させる。
2−1.PCR反応液の調製
1の工程で得た試料破砕液を用いて核酸の増幅反応を行う。PCR反応液は0.2mLチューブに下記表の通りに調製する。試料破砕液は上清1μLを増幅反応に用いる。サンプル増幅試薬としてQIAGEN Multiplex PCR Mix(QIAGEN社製)を用いる。
PCRにはVeriti(登録商標)サーマルサイクラ―(Thermo Fisher Scientific社製)を用いる。サーマルサイクル反応(95℃で9分後、94℃で30秒、66℃で30秒、72℃で30秒を33サイクル、その後72℃で5分後、4℃に下げる)を行う。
検出用のストリップを用いて、核酸クロマトグラフィーによるハイブリダイゼーション反応によって検出を行う。ストリップはTBA社製のものを使用した(図6)。
3−1.ハイブリダイゼーション用の反応液の調製
2の工程で得られた増幅核酸を、核酸クロマトグラフィーを用いて検出する。反応液は下記表の通りに調製した。TEバッファー、展開液(藤倉化成社製)、ラテックスビーズ(藤倉化成社製)を用いる。1サンプルにおける反応液の組成は下記の通りである。
上記の3−1の工程で得た混合反応液に核酸クロマトグラフィーストリップを挿入し、40分間静置する。標的の核酸があればストリップ上に青いラインとして現れるので、標的核酸の増幅可否を目視で判定する。
本破砕処理装置を用いてハンバーグを破砕し、ハンバーグ中に含まれる肉種の判定を行った。加工工程は、破砕工程5秒、停止工程5秒を5セット(インターバルあり)と破砕工程のみを連続25秒(インターバルなし)の2式用意して実験を行った。
上記評価実験方法の手順の通りに核酸の検出を行った。ハンバーグは0.5cm角程度とした。このハンバーグの原材料名には牛肉、豚肉、乾燥卵が記載されている。また、Nはネガティブコントロールである。
結果を図7に示す。インターバルの有無に関わらずウシとブタがはっきりと検出された。しかし、ウシはインターバルありの方がラインが濃い。また、ニワトリのラインはインターバルなしだとほぼラインは見えないが、インターバルありだとラインは目視できることから、インターバルありの方が破砕効率が良いと考えられる。
ヒトの毛髪を本破砕処理装置を用いて破砕した。加工工程は、破砕工程5秒、停止工程5秒を5セット後試料を目視で確認し、再度5セット(インターバルあり)と、破砕工程のみを連続25秒後試料を目視で確認し、再度連続25秒(インターバルなし)の2式用意して実験を行った。
結果を図8に示す。インターバルありでは目視で毛髪を視認できない程度まで破砕されているが、インターバルなしではまだ繊維状の毛髪が残っている。このことより、インターバルありの方がより良い破砕効率を得られると考えられる。さらに、インターバルなしの方が摩擦により緩衝液が蒸発し、インターバルありより液量が減少している。
10a 破砕器具
11 破砕部材
11a 本体
11a1 上部
11a2 下部
11b 先端部
11b1 側面
11b2 下面
11c フランジ部
11c1 リブ
12 容器
12a 胴部
12a1 係止段部
12b 底部
12b1 側面
12b2 底面
12c 蓋部
12c1 内筒部
13 ヒンジ
20 破砕処理装置
21 枠体
21a 支柱
21b 台座
21c 支持桟
22 モータ
23 回転軸
23a ベアリング
24 容器保持部
24a アクチュエータ
24b 保持台
24b1 保持孔
25 制御部
31 主回転軸
31a 主ベアリング
32 伝達部
35 スイッチ
36 位置確認センサー
37 モータ用タイマー
38 放熱用タイマー
39 カウンター
Claims (8)
- 試料と溶液とが収容された有底筒状の容器内において、破砕部材により容器内の試料を破砕する破砕方法であって、
前記容器に挿入された前記破砕部材を回転させて、大気圧下で前記破砕部材と前記容器との間で前記試料をつぶすようにして破砕する破砕工程と、
前記破砕部材の回転を停止させ、かつ前記破砕部材を前記溶液から離して、前記試料の破砕を停止するとともに前記破砕部材から前記溶液への熱伝達を停止させる停止工程とを交互に行う、
試料の破砕方法。 - 前記破砕部材が、棒状の本体と、前記本体の先端に設けられた前記先端部と、前記本体の中部に設けられ、前記本体から半径方向外側に延びて、前記容器に挿入したときに前記容器の開口を閉じるフランジ部とを有し、
前記停止工程において前記破砕部材の前記フランジ部より先端側を前記容器の外部に露出しない、
請求項1記載の試料の破砕方法。 - 前記停止工程において、前記破砕部材を前記容器から抜いて、前記破砕部材の先端部を大気に露出する、
請求項1記載の試料の破砕方法。 - 前記破砕部材の先端部が、側面が粗面加工された円錐台状体であり、
前記容器の下部内側面が、前記先端部の側面と当接するように傾斜しており、前記下部内側面が粗面加工されており、
前記破砕工程は、前記破砕部材の先端部の下面と前記容器の底部の底面とが当接するか、間に隙間がある状態で、前記破砕部材を回転させて前記試料を破砕する工程である、
請求項1から3いずれか記載の試料の破砕方法。 - 前記試料が、核酸又はタンパク質の解析用試料である、
請求項1から4いずれか記載の試料の破砕方法。 - 試料を破砕するための破砕処理装置であって、
試料と溶液とを収容する有底筒状の容器を保持する容器保持部と、
前記容器保持部との相対位置が変動し、軸心周りに回転する回転軸と、
前記回転軸に連結され、前記容器に挿入・抜去自在な破砕部材と、
前記回転軸の回転および前記回転軸と前記容器保持部との相対位置の変動を制御することにより、前記容器に挿入された前記破砕部材を回転させて、大気圧下で、前記破砕部材と前記容器との間で前記試料をつぶすようにして破砕する破砕工程と、前記破砕部材の回転を停止させ、かつ前記破砕部材を前記溶液から離して当該破砕工程を停止するとともに前記破砕部材から前記溶液への熱伝達を停止させる停止工程とを交互に行わせる制御部と、
を備えた破砕処理装置。 - 水平方向に伸びる主回転軸と、
前記主回転軸と異軸に設けられた複数の前記回転軸と、
前記主回転軸の回転を前記回転軸の回転に伝達する伝達部とを備えた、
請求項6記載の破砕処理装置。 - 前記試料が、核酸又はタンパク質の解析用試料である、
請求項6または7記載の破砕処理装置。
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