JP6793781B2 - 車両用の画像表示機能付きミラー - Google Patents

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Description

本発明は、車両用の画像表示機能付きミラーに関する。
車両用のミラーに車載カメラで撮像された画像などの画像の表示も可能とした車両用画像表示機能付きミラーについては、例えば、特許文献1に記載がある。特許文献1で開示される車両用画像表示機能付きミラーでは、車両用ミラーのハウジングの内部に液晶表示装置を設け、車両用ミラーの前面に設けられたハーフミラーを介して画像を表示することにより、ミラーでの画像表示を実現している。
特開2014−201146号公報 特開2011−45427号公報
ハーフミラーは、可視光の透過率が通常30%〜70%程度であり、ハーフミラーを設けた構成では画像がハーフミラーを有していないものよりも暗くなってしまうという問題が潜在的にある。これに対し、インテリア、化粧用、防犯用、安全用の鏡に適用される情報表示機能付鏡に関する開示する特許文献2においては、ハーフミラーとして反射偏光板を利用して光のロスをなくすことが可能であることが記載されている。しかし、本発明者らが反射偏光板を利用して画像表示機能付きミラーを構成し車両に用いたところミラー反射像に明暗ムラや色ムラ(虹色など)が生じた。
本発明は、明るい画像表示が可能であるとともに、ムラのないミラー反射像の観察が可能な車両用の画像表示機能付きミラーの提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意検討し、ミラー反射像の上記のムラが、車両のリアガラス越しの外部風景を観測した場合に確認できることを見出し、この知見に基づいて、さらに検討を重ねて、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[10]を提供するものである。
[1]車両用の画像表示機能付きミラーであって、ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、上記ハーフミラーはnλ/4位相差膜および反射層を含み、nは1、3、5または7であり、上記画像表示機能付きミラーにおいて、上記nλ/4位相差膜、上記反射層、および上記画像表示装置がこの順に配置されており、上記反射層は直線偏光反射層または円偏光反射層である、画像表示機能付きミラー。
[2]nが1または3である[1]に記載の画像表示機能付きミラー。
[3]上記反射層が円偏光反射層である[1]または[2]に記載の画像表示機能付きミラー。
[4]上記円偏光反射層がコレステリック液晶層を含む[3]に記載の画像表示機能付きミラー。
[5]上記円偏光反射層が3層以上のコレステリック液晶層を含む[4]に記載の画像表示機能付きミラー。
[6]1/4波長板を含み、上記ハーフミラーが、上記nλ/4位相差膜、上記円偏光反射層、上記1/4波長板をこの順に含む[4]または[5]に記載の画像表示機能付きミラー。
[7]上記円偏光反射層と上記1/4波長板とが互いに直接接している[6]に記載の画像表示機能付きミラー。
[8]上記ハーフミラーが前面板を含み、上記前面板、上記nλ/4位相差膜および上記反射層をこの順に含む[1]〜[7]のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。
[9]上記ハーフミラーが前面板を含み、上記前面板が2枚のガラス板と上記2枚のガラス板の間の中間層とを含む合わせガラスであり、上記中間層が上記nλ/4位相差膜を含む[1]〜[7]のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。
[10]上記ハーフミラーが2枚のガラス板と上記2枚のガラス板の間の中間層とを含む合わせガラスであり、上記中間層が上記nλ/4位相差膜と上記反射層とを含む[1]〜[7]のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。
本発明により、明るい画像表示が可能であるとともに、ムラのないミラー反射像の観察が可能な車両用の画像表示機能付きミラーが提供される。本発明の画像表示機能付きミラーを車両のインナーミラーとして用いた場合、リアガラス越しの外部風景を、ムラのないミラー反射像として観察することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。 本明細書において、例えば、「45°」、「平行」、「垂直」あるいは「直交」等の角度は、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
本明細書において、円偏光につき「選択的」というときは、右円偏光成分または左円偏光成分のいずれかの光量が、他方の円偏光成分よりも多いことを意味する。具体的には「選択的」というとき、光の円偏光度は、0.3以上であることが好ましく、0.6以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。実質的に1.0であることがさらに好ましい。
ここで、円偏光度とは、光の右円偏光成分の強度をIR、左円偏光成分の強度をILとしたとき、|IR−IL|/(IR+IL)で表される値である。
本明細書において、円偏光につき「センス」というときは、右円偏光であるか、または左円偏光であるかを意味する。円偏光のセンスは、光が手前に向かって進んでくるように眺めた場合に電場ベクトルの先端が時間の増加に従って時計回りに回る場合が右円偏光であり、反時計回りに回る場合が左円偏光であるとして定義される。
本明細書においては、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向について「センス」との用語を用いることもある。コレステリック液晶による選択反射は、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向(センス)が右の場合は右円偏光を反射し、左円偏光を透過し、センスが左の場合は左円偏光を反射し、右円偏光を透過する。
可視光線は電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380nm〜780nmの波長域の光を示す。赤外線(赤外光)は可視光線より長く電波より短い波長域電磁波である。赤外線のうち、近赤外光とは780nm〜2500nmの波長域の電磁波である。
本明細書において、画像表示機能付きミラーについて「画像」というときは、画像表示装置の画像表示部で画像が表示されているときに前面側から視認して観察できる像を意味する。また、本明細書において、画像表示機能付きミラーについて「ミラー反射像」というときは、画像表示装置の画像表示部で画像が表示されていないとき、前面側から視認して観察できる像を意味する。
本明細書において、正面位相差は、Axometrix社製のAxoScanを用いて測定した値である。本明細書において、正面位相差をReと示すこともある。正面位相差の測定波長は特に言及のないときは550nmとする。正面位相差はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)においてコレステリック液晶層の選択反射の中心波長などの可視光波長域内の波長の光をフィルム法線方向に入射させて測定した値を用いることもできる。測定波長の選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
本明細書において、車両とは、電車、自動車等を意味する。車両としては特にリアガラスを有する自動車が好ましい。
<<<車両用の画像表示機能付きミラー>>>
車両用の画像表示機能付きミラーは、車両のルームミラー(インナーミラー)として用いることができる。車両用画像表示機能付きミラーは、ルームミラーとしての使用のため、フレーム、ハウジング、車両本体に取り付けるための支持アーム等を有していてもよい。あるいは、車両用の画像表示機能付きミラーはルームミラーへの組み込み用に成形されたものであってもよい。上記の形状の車両用の画像表示機能付きミラーにおいては、通常使用時に上下左右となる方向が特定できる。
車両用の画像表示機能付きミラーは、板状またはフィルム状であればよく、曲面を有していてもよい。車両用画像表示機能付きミラーの前面は平坦であってもよく、湾曲していてもよい。湾曲させて、凸曲面を前面側とすることにより、広角的に後方視野等を視認できるワイドミラーとすることも可能である。このような湾曲した前面は湾曲したハーフミラーを用いて作製することができる。
湾曲は、上下方向、左右方向、または上下方向および左右方向にあればよい。また、湾曲は、曲率半径が500〜3000mmであればよい。1000〜2500mmであることがより好ましい。曲率半径は、断面で湾曲部分の外接円を仮定した場合の、この外接円の半径である。
本発明の画像表示機能付きミラーは、画像表示装置およびハーフミラーを含む。
画像表示機能付きミラーにおいて、画像表示装置とハーフミラーとの間には、空気層が存在してもよく、または接着層が存在していてもよい。
本明細書においては、画像表示装置に対してハーフミラー側の表面を前面ということがある。
本明細書において、「車両用の画像表示機能付きミラー」を、単に単に「画像表示機能付きミラー」ということがある。
<<画像表示装置>>
画像表示装置としては、特に限定されない。画像表示装置は直線偏光を出射して(発光して)画像を形成する画像表示装置であることが好ましく、液晶表示装置であることがより好ましい。
液晶表示装置は透過型であっても反射型であってもよく、特に、透過型であることが好ましい。液晶表示装置は、IPS(In Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching) モード、VA(Vertical Alignment)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モードなどのいずれの液晶表示装置であってもよい。画像表示装置は電源オフ時において、波長380〜780nmの可視光平均反射率が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。電源オフ時に画像表示機能付きミラーをミラーとして機能させるためである。画像表示装置の電源オフ時の可視光の反射は画像表示装置の構成部材(反射偏光板やバックライトユニットなど)に由来するものであればよい。
なお、可視光平均反射率は、分光光度計にて反射スペクトルを測定し、JIS A5759に記載の可視光計算方法に基づき算出した数値を意味し、分光光度計としては、例えば日本分光(株)製分光光度計「V−670」を用いることができる。
画像表示装置の画像表示部に示される画像は、静止画であっても動画であっても、単なる文字情報であってもよい。また白黒などのモノカラー表示であってもよく、マルチカラー表示であってもよく、フルカラー表示であってもよい。画像表示装置の画像表示部に示される画像の好ましい例としては、車載用のカメラで撮影された像が挙げられる。この像は動画であることが好ましい。
画像表示装置は、例えば、白表示時の発光スペクトルにおいて赤色光の発光ピーク波長λRと、緑色光の発光ピーク波長λGと、青色光の発光ピーク波長λBとを示していればよい。このような発光ピーク波長を有することによりフルカラーの画像表示が可能である。λRは580〜700nmの範囲、好ましくは610〜680nmの範囲のいずれかの波長であればよい。λGは500〜580の範囲、好ましくは510〜550nmの範囲のいずれかの波長であればよい。λBは400〜500nmの範囲、好ましくは440〜480nmの範囲のいずれかの波長であればよい。
<<ハーフミラー>>
ハーフミラーは、板状またはフィルム状であればよく、曲面を有していてもよい。ハーフミラーは平坦であってもよく、湾曲していてもよい。湾曲したハーフミラーは湾曲した前面板を用いて作製することができる。
ハーフミラーは反射層およびnλ/4位相差膜を含む。反射層とnλ/4位相差膜とは、互いに同じ主表面の面積で積層されていることが好ましい。なお、本明細書において、「主表面」とは、板状またはフィルム状の部材の表面(おもて面または裏面)をいう。
ハーフミラーは、前面板または接着層などの他の層を含んでいてもよい。ハーフミラーが前面板を含む場合、前面板、nλ/4位相差膜、および反射層がこの順であることが好ましい。ハーフミラーが前面板を含む場合、前面板の主表面の面積は反射層の主表面の面積より大きくてもよく、同じであってもよく、小さくてもよい。前面板主表面の一部に反射層が接着されており、その他の部位に金属箔などの他の種類の反射層が接着または形成されていてもよい。このような構成でミラーの一部での画像表示が可能である。一方、前面板主表面の全面に反射層が接着されていてもよい。また、画像表示機能付きミラーにおいては、画像表示装置の画像表示部と同面積の主表面のハーフミラーを用いてもよく、画像表示装置の画像表示部よりも大きいまたは小さい主表面の面積を有するハーフミラーを用いてもよい。これらの関係を選択することにより、ミラーの全面に対する画像表示部表面の割合や位置を調整することができる。
さらにハーフミラーは、合わせガラスとなっていてもよく、合わせガラスの中間層にnλ/4位相差膜、またはnλ/4位相差膜および反射層が含まれていてもよい。
ハーフミラーの膜厚は特に限定されないが、100μm〜20mmであることが好ましく、200μm〜15mmであることがより好ましく、300μm〜10mmであることがさらに好ましい。
<nλ/4位相差膜>
ハーフミラーは、nλ/4位相差膜を含む。nλ/4位相差膜は、λ/4位相差膜であるかまたは、(mλ±λ/4)位相差膜(mは自然数)であって、反射する光の位相を実質的に±λ/4ずらす機能を有する。作製の容易性や機能の観点から、nは1、3、5または7であればよい。すなわち、nλ/4位相差膜はλ/4位相差膜、3λ/4位相差膜、5λ/4位相差膜、または7λ/4位相差膜であればよい。具体的には、λ/4位相差膜は波長550nmでの正面位相差が138nm±10nm、好ましくは138nm±5nmである位相差膜であればよく、3λ/4位相差膜は波長550nmでの正面位相差が413nm±10nm、好ましくは413nm±5nmである位相差膜であればよく、5λ/4位相差膜は波長550nmでの正面位相差が688nm±10nm、好ましくは688nm±5nmである位相差膜であればよく、7λ/4位相差膜は波長550nmでの正面位相差が963nm±10nm、好ましくは963nm±5nmである位相差膜であればよい。nλ/4位相差膜は、λ/4位相差膜、3λ/4位相差膜、または5λ/4位相差膜であることが好ましく、λ/4位相差膜または3λ/4位相差膜であることがより好ましく、λ/4位相差膜であることが最も好ましい。
本明細書において、「nλ/4位相差膜」と後述の「1/4波長板」とは配置位置や使用目的の観点から区別して用いられるが、nλ/4位相差膜がλ/4位相差膜であるとき、「nλ/4位相差膜」と「1/4波長板」とは同じものであってもよい。
車両の窓ガラス、特にリアガラスに用いられる強化ガラス(例えば、合わせガラスの構成ではない強化ガラス)は複屈折性分布を有することが知られている。強化ガラスは、一般に、フロート板ガラスを軟化点付近の700℃まで加熱した後、ガラス表面に空気を吹き付けて急冷して作製される。この処理によってガラス表面の温度が先に下がり収縮して固まる一方、ガラス内部は表面に比べて温度が下がるのが遅く、収縮するのも遅れるため、内部に応力分布が生じ、複屈折性のないフロート板ガラスを用いた場合であっても強化ガラスに複屈折分布が発生する。
そのため、特に上述のように作製した強化ガラスが使用されている車両のリアガラスなどを通過して画像表示機能付きミラー前面に入射する光によるミラー反射像には上述のムラが生じると考えられる。すなわち、太陽光は太陽と観察者の位置関係によって偏光成分がp偏光またはs偏光のどちらかに偏って含まれている。また水面、アスファルトやガラス等の表面で反射した光ではs偏光の割合が多い。自然界にはこのような偏光が存在し、偏光を含む光がリアガラスを透過するとリアガラスの複屈折の偏り分布によって透過光に偏光分布が発生する。これらの光が車両用ミラーの直線偏光反射層または円偏光反射層で反射されると、入射光の偏光状態の違いによって反射率が異なり、明暗ムラが視認されてしまう。本発明の画像表示機能付きミラーにおいては、所定の大きさの位相差を有するnλ/4位相差膜の利用によって、場所によって偏光状態の異なる入射光の位相を反射光の強度の差が生じにくい領域にずらすことで、ムラを軽減することが可能となったと推定される。
なお、本明細書において、p偏光は光の入射面に平行な方向に振動する偏光を意味し、s偏光は光の入射面に垂直な方向に振動する偏光を意味する。入射面は反射面(地面など)に垂直で入射光線と反射光線を含む面を意味する。
画像表示機能付きミラーにおいて、nλ/4位相差膜は、nλ/4位相差膜、反射層、および画像表示装置がこの順になるように設けられていればよい。ハーフミラーが前面板を有する場合は、前面板、nλ/4位相差膜、反射層、および画像表示装置がこの順になっていればよい。前面板がnλ/4位相差膜を兼ねていてもよい。
nλ/4位相差膜としては、後述の1/4波長板と同じものを用いることができるほか、同様の材料を用いて膜厚等を調整することにより、3/4λ位相差膜、5/4λ位相差膜、または7/4λ位相差膜を形成して用いることができる。nλ/4位相差膜としては、特に、重合性液晶化合物、高分子液晶化合物を配列させて固定して形成したものが好ましい。
なお、nλ/4位相差膜を車両のリアガラスに設けることにより、上述のミラー反射像のムラを解消することも可能である。このとき、画像表示機能付きミラーはnλ/4位相差膜を含んでいなくてもよい。
<反射層>
反射層としては、半透過半反射層として機能できる反射層を用いればよい。すなわち、反射層は、画像表示時には、画像表示装置からの出射光を透過させることにより、画像表示機能付きミラーの前面に画像が表示されるように機能し、一方で、画像非表示時には、反射層は、前面方向からの入射光の少なくとも一部を反射するとともに、画像表示装置からの反射光を透過させ、画像表示機能付きミラーの前面がミラーとなるように機能するものであればよい。
反射層としては、偏光反射層が用いられる。偏光反射層は、直線偏光反射層または円偏光反射層であればよい。
[直線偏光反射層]
直線偏光反射層としては、例えば(i)多層構造の直線偏光反射板、(ii)複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子、(iii)ワイヤーグリッド型偏光子、(iv)偏光プリズム、(v)散乱異方性型偏光板などが挙げられる。
(i)多層構造の直線偏光反射板としては、互いに屈折率の異なる誘電体薄膜を複数層積層してなるものが挙げられる。波長選択反射膜とするためには、高屈折率の誘電体薄膜と低屈折率の誘電体薄膜とを交互に複数層積層することが好ましいが、2種以上に限定されず、それ以上の種類であってもよい。積層数は、2層〜20層が好ましく、2層〜12層がより好ましく、4層〜10層が更に好ましく、6層〜8層が特に好ましい。積層数が20層を超えると、多層蒸着により生産効率性が低下し、本発明の目的及び効果を達成できなくなることがある。
誘電体薄膜の積層順については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、隣接する膜の屈折率が高い場合にはそれより低い屈折率の膜を最初に積層する。その逆に隣接する層の屈折率が低い場合にはそれより高い屈折率の膜を最初に積層する。屈折率が高いか低いかの境目は1.8である。なお、屈折率が高いか低いかは絶対的なものではなく、高屈折率の材料の中でも、相対的に屈折率の大きいものと小さいものとが存在してもよく、これらを交互に使用してもよい。
高屈折率の誘電体薄膜の材料としては、例えば、Sb23、Sb23、Bi23、CeO2、CeF3、HfO2、La23、Nd23、Pr611、Sc23、SiO、Ta25、TiO2、TlCl、Y23、ZnSe、ZnS、ZrO2、などが挙げられる。これらの中でも、Bi23、CeO2、CeF3、HfO2、SiO、Ta25、TiO2、Y23、ZnSe、ZnS、ZrO2が好ましく、これらの中でも、SiO、Ta25、TiO2、Y23、ZnSe、ZnS、ZrO2が特に好ましい。
低屈折率の誘電体薄膜の材料としては、例えば、Al23、BiF3、CaF2、LaF3、PbCl2、PbF2、LiF、MgF2、MgO、NdF3、SiO2、Si23、NaF、ThO2、ThF4、などが挙げられる。これらの中でも、Al23、BiF3、CaF2、MgF2、MgO、SiO2、Si23が好ましく、Al23、CaF2、MgF2、MgO、SiO2、Si23が特に好ましい。
なお、誘電体薄膜の材料においては、原子比についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、成膜時に雰囲気ガス濃度を変えることにより、原子比を調整することができる。
誘電体薄膜の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオンプレーティング、イオンビーム等の真空蒸着法、スパッタリング等の物理的気相成長法(PVD法)、化学的気相成長法(CVD法)、などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法、スパッタリング法が好ましく、スパッタリング法が特に好ましい。
スパッタリング法としては、成膜レートの高いDCスパッタリング法が好ましい。なお、DCスパッタリング法においては、導電性が高い材料を用いることが好ましい。
また、スパッタリング法により多層成膜する方法としては、例えば、(1)1つのチャンバで複数のターゲットから交互又は順番に成膜する1チャンバ法、(2)複数のチャンバで連続的に成膜するマルチチャンバ法とがある。これらの中でも、生産性及び材料コンタミネーションを防ぐ観点から、マルチチャンバ法が特に好ましい。
誘電体薄膜の膜厚としては、光学波長オーダーで、λ/16〜λの膜厚が好ましく、λ/8〜3λ/4がより好ましく、λ/6〜3λ/8がより好ましい。
誘電体蒸着層中を伝播する光は、誘電体薄膜毎に光の一部が多重反射し、それらの反射光が干渉して誘電体薄膜の厚みと光に対する膜の屈折率との積で決まる波長の光のみが選択的に透過される。また、誘電体蒸着層の中心透過波長は入射光に対して角度依存性を有しており、入射光を変化させると透過波長を変えることができる。
(ii)複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子としては、例えば特表平9−506837号公報などに記載されたものを用いることができる。具体的には、屈折率関係を得るために選ばれた条件下で加工すると、広く様々な材料を用いて、偏光子を形成できる。一般に、第一の材料の一つが、選ばれた方向において、第二の材料とは異なる屈折率を有することが必要である。この屈折率の違いは、フィルムの形成中、又はフィルムの形成後の延伸、押出成形、或いはコーティングを含む様々な方法で達成できる。更に、2つの材料が同時押出することができるように、類似のレオロジー特性(例えば、溶融粘度)を有することが好ましい。
複屈折の異なる薄膜を積層した偏光子としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、DBEF(登録商標)(3M社製)などが挙げられる。
(iii)ワイヤーグリッド型偏光子は、金属細線の複屈折によって、偏光の一方を透過し、他方を反射させる偏光子である。
ワイヤーグリッド偏光子は、金属ワイヤーを周期的に配列したもので、テラヘルツ波帯域で主に偏光子として用いられる。ワイヤーグリッドが偏光子として機能するためには,ワイヤー間隔が入射電磁波の波長よりも十分小さいことが必要となる。
ワイヤーグリッド偏光子では、金属ワイヤーが等間隔に配列されている。金属ワイヤーの長手方向と平行な偏光方向の偏光成分はワイヤーグリッド偏光子において反射され、垂直な偏光方向の偏光成分はワイヤーグリッド偏光子を透過する。
ワイヤーグリッド型偏光子としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、エドモンドオプティクス社製のワイヤーグリッド偏光フィルタ50×50、NT46−636などが挙げられる。
直線偏光反射層を用いることにより、nλ/4位相差膜との組み合わせで、前面側からの入射光を円偏光として反射させ、画像表示装置からの入射光を円偏光として透過させることができる。そのため、直線偏光反射層を用いた画像表示機能付きミラーでは、偏光サングラスを介しても、画像表示機能付きミラーの方向に依存せずに、表示画像およびミラー反射像の観察を行うことができる。
[円偏光反射層]
円偏光反射層としては、コレステリック液晶層を含む円偏光反射層(以下、「コレステリック円偏光反射層」ということがある。)を用いることが好ましい。
(コレステリック液晶層)
コレステリック円偏光反射層はコレステリック液晶層を少なくとも1層含む。コレステリック円偏光反射層に含まれるコレステリック液晶層は可視光領域で選択反射を示すものであればよい。
円偏光反射層は2層以上のコレステリック液晶層を含んでいてもよく、配向層などの他の層を含んでいてもよい。円偏光反射層はコレステリック液晶層のみからなることが好ましい。また、円偏光反射層が複数のコレステリック液晶層を含むときは、それらは隣接するコレステリック液晶層と直接接していることが好ましい。円偏光反射層は、3層、4層など、3層以上のコレステリック液晶層を含んでいることが好ましい。
コレステリック円偏光反射層の膜厚は、好ましくは2.0μm〜300μmの範囲、より好ましくは8.0〜200μmの範囲であればよい。
本明細書において、コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相を固定した層を意味する。コレステリック液晶層を単に液晶層ということもある。
コレステリック液晶相は、特定の波長域において右円偏光または左円偏光のいずれか一方のセンスの円偏光を選択的に反射させるとともに他方のセンスの円偏光を選択的に透過する円偏光選択反射を示すことが知られている。本明細書において、円偏光選択反射を単に選択反射ということもある。
円偏光選択反射性を示すコレステリック液晶相を固定した層を含むフィルムとして、重合性液晶化合物を含む組成物から形成されたフィルムは従来から数多く知られており、コレステリック液晶層については、それらの従来技術を参照することができる。
コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている層であればよく、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した層であればよい。なお、コレステリック液晶層においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、層中の液晶化合物はもはや液晶性を示していなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
コレステリック液晶層の選択反射の中心波長λは、コレステリック相における螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック液晶層の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。なお、コレステリック液晶層の選択反射中心波長と半値幅は下記のように求めることができる。
分光光度計UV3150(島津製作所)を用いて光反射層の透過スペクトル(コレステリック液晶層の法線方向から測定したもの)を測定すると、選択反射領域に透過率の低下ピークがみられる。この最も大きいピーク高さの1/2の高さの透過率となる2つの波長のうち、短波側の波長の値をλ1(nm)、長波側の波長の値をλ2(nm)とすると、選択反射の中心波長と半値幅は下記式で表すことができる。
選択反射中心波長=(λ1+λ2)/2
半値幅=(λ2−λ1)
上記のように求められる、コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶層の法線方向から測定した円偏光反射スペクトルの反射ピークの重心位置にある波長と通常一致する。なお、本明細書において、選択反射の中心波長はコレステリック液晶層の法線方向から測定した時の中心波長を意味する。
上記λ=n×Pの式から分かるように、螺旋構造のピッチを調節することによって、選択反射の中心波長を調整できる。n値とP値を調節して、所望の波長の光に対して右円偏光または左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させるために、中心波長λを調節することができる。
コレステリック液晶層に対して斜めに光が入射する場合は、選択反射の中心波長は短波長側にシフトする。そのため、画像表示のために必要とされる選択反射の波長に対して、上記のλ=n×Pの式に従って計算されるλが長波長となるようにn×Pを調整することが好ましい。屈折率n2のコレステリック液晶層中でコレステリック液晶層の法線方向(コレステリック液晶層の螺旋軸方向)に対して光線がθ2の角度で通過するときの選択反射の中心波長をλdとするとき、λdは以下の式で表される。
λd=n2×P×cosθ2
上記を考慮して、円偏光反射層に含まれるコレステリック液晶層の選択反射の中心波長を設計することにより、画像の斜めからの視認性の低下を防止することができる。また、画像の斜めからの視認性を意図的に低下させることもできる。これは例えばスマートフォンやパーソナルコンピューターにおいて、覗き見を防止することができるため有用である。また、上記の選択反射の性質ににより、本発明の画像表示機能付きミラーは、斜め方向から見た、画像およびミラー反射像に、色味が出てしまうことがある。円偏光反射層に赤外光領域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層を含ませることによって、このような色味を防止することも可能である。この場合の赤外光領域の選択反射の中心波長は具体的には、780〜900nm、好ましくは780〜850nmにあればよい。
赤外光領域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層を設ける場合は、可視光領域に選択反射の中心波長をそれぞれ有するコレステリック液晶層すべてに対し、最も画像表示装置側にあることが好ましい。
コレステリック液晶相のピッチは重合性液晶化合物とともに用いるキラル剤の種類、またはその添加濃度に依存するため、これらを調整することによって所望のピッチを得ることができる。なお、螺旋のセンスやピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載の方法を用いることができる。
本発明の画像表示機能付きミラーにおいて、円偏光反射層は、赤色光の波長域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層と、緑色光の波長域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層と、青色光の波長域に選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層とを含むことが好ましい。反射層は、例えば、400nm〜500nmに選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層、500nm〜580nmに選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層、および580nm〜700nmに選択反射の中心波長を有するコレステリック液晶層を含むことが好ましい。
また、円偏光反射層が複数のコレステリック液晶層を含むときは、より画像表示装置に近いコレステリック液晶層がより長い選択反射の中心波長を有していることが好ましい。このような構成により、画像における斜め色味を抑えることができる。
特に、1/4波長板を含まないコレステリック円偏光反射層を利用した画像表示機能付きミラーにおいて、各コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長は、画像表示装置の発光のピークの波長と5nm以上異なるようにすることが好ましい。この差異は、10nm以上とすることもより好ましい。選択反射の中心波長と画像表示装置の画像表示のための発光ピークの波長をずらすことにより、画像表示のための光がコレステリック液晶層で反射されず、表示画像を明るくすることができる。画像表示装置の発光のピークの波長は画像表示装置の白表示時の発光スペクトルで確認できる。ピーク波長は上記発光スペクトルの可視光領域におけるピーク波長であればよく、例えば、画像表示装置の上述の赤色光の発光ピーク波長λR、緑色光の発光ピーク波長λG、および青色光の発光ピーク波長λBからなる群から選択されるいずれか1つ以上であればよい。コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長は、画像表示装置の上述の赤色光の発光ピーク波長λR、緑色光の発光ピーク波長λG、および青色光の発光ピーク波長λBのいずれとも5nm以上、好ましくは10nm以上異なっていることが好ましい。円偏光反射層が複数のコレステリック液晶層を含む場合は、すべてのコレステリック液晶層の選択反射の中心波長を、画像表示装置の発光する光のピークの波長と5nm以上、好ましくは10nm以上異なるようにすればよい。例えば、画像表示装置が白表示時の発光スペクトルにおいて赤色光の発光ピーク波長λRと、緑色光の発光ピーク波長λGと、青色光の発光ピーク波長λBとを示すフルカラー表示の表示装置である場合、コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長がいずれも、λR、λG、およびλBのいずれとも5nm以上、好ましくは10nm以上異なるようにすればよい。
使用するコレステリック液晶層の選択反射の中心波長を、画像表示装置の発光波長域、および円偏光反射層の使用態様に応じて調整することにより光利用効率良く明るい画像を表示することができる。円偏光反射層の使用態様としては、特に円偏光反射層への光の入射角、画像観察方向などが挙げられる。
各コレステリック液晶層としては、螺旋のセンスが右または左のいずれかであるコレステリック液晶層が用いられる。コレステリック液晶層の反射円偏光のセンスは螺旋のセンスに一致する。複数のコレステリック液晶層の螺旋のセンスは全て同じであっても、異なるものが含まれていてもよい。すなわち、右または左のいずれか一方のセンスのコレステリック液晶層を含んでいてもよく、右および左の双方のセンスのコレステリック液晶層を含んでいてもよい。ただし、1/4波長板を含む画像表示機能付きミラーにおいては、複数のコレステリック液晶層の螺旋のセンスは全て同じであることが好ましい。そのときの螺旋のセンスは、各コレステリック液晶層として、画像表示装置から出射して1/4波長板を透過して得られているセンスの円偏光のセンスに応じて決定すればよい。具体的には、画像表示装置から出射して1/4波長板を透過して得られているセンスの円偏光を透過する螺旋のセンスを有するコレステリック液晶層を用いればよい。
選択反射を示す選択反射帯の半値幅Δλ(nm)は、Δλが液晶化合物の複屈折Δnと上記ピッチPに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。そのため、選択反射帯の幅の制御は、Δnを調整して行うことができる。Δnの調整は重合性液晶化合物の種類やその混合比率を調整したり、配向固定時の温度を制御したりすることで行うことができる。
選択反射の中心波長が同一の1種のコレステリック液晶層の形成のために、周期Pが同じで、同じ螺旋のセンスのコレステリック液晶層を複数積層してもよい。周期Pが同じで、同じ螺旋のセンスのコレステリック液晶層を積層することによっては、特定の波長で円偏光選択性を高くすることができる。
(1/4波長板)
コレステリック円偏光反射層を用いた画像表示機能付きミラーは、さらに1/4波長板を含んでいてもよい。
画像表示装置とコレステリック円偏光反射層との間に1/4波長板を含むことによっては、特に、直線偏光により画像表示している画像表示装置からの光を円偏光に変換してコレステリック円偏光反射層に入射させることが可能となる。そのため、円偏光反射層において反射されて画像表示装置側に戻る光を大幅に減らすことができ、明るい画像の表示が可能となる。また、1/4波長板の利用によりコレステリック円偏光反射層において画像表示装置側に反射するセンスの円偏光を生じさせない構成が可能であるため、画像表示装置およびハーフミラーの間の多重反射による画像表示品質の低下が生じにくい。
すなわち、例えば、コレステリック円偏光反射層に含まれるコレステリック液晶層の選択反射の中心波長が、画像表示装置の白表示時の発光スペクトルにおける青色光の発光ピーク波長と略同一(例えば差異が5nm未満)であったとしても、円偏光反射層において画像表示側に反射するセンスの円偏光を生じさせることなく、画像表示装置の出射光を前面側に透過させることができる。
コレステリック円偏光反射層と組み合わせて用いられる1/4波長板は画像表示装置に接着した際に、画像が最も明るくなるように、角度調整されていることが好ましい。すなわち、特に直線偏光により画像表示している画像表示装置に対し、上記直線偏光を最もよく透過させるように上記直線偏光の偏光方向(透過軸)と1/4波長板の遅相軸との関係が調整されていることが好ましい。例えば、一層型の1/4波長板の場合、上記透過軸と遅相軸とは45°の角度をなしていることが好ましい。直線偏光により画像表示している画像表示装置から出射した光は1/4波長板を透過後、右または左のいずれかのセンスの円偏光となっている。円偏光反射層は、上記のセンスの円偏光を透過する捩れ方向を有するコレステリック液晶層で構成されていればよい。
1/4波長板は可視光領域において1/4波長板として機能する位相差層であればよい。1/4波長板の例としては、一層型の1/4波長板、1/4波長板と1/2波長位相差板とを積層した広帯域1/4波長板などが挙げられる。
前者の1/4波長板の正面位相差は 画像表示装置の発光波長の1/4の長さであればよい。それゆえに例えば画像表示装置の発光波長が450nm、530nm、640nmの場合は、450nmの波長で112.5nm±10nm、好ましくは、112.5nm±5nm、より好ましくは112.5nm、530nmの波長で132.5nm±10nm、好ましくは、132.5nm±5nm、より好ましくは132.5nm、640nmの波長で160nm±10nm、好ましくは、160nm±5nm、より好ましくは160nmの位相差であるような逆分散性の位相差層が1/4波長板として最も好ましいが、位相差の波長分散性の小さい位相差板や順分散性の位相差板も用いることができる。なお、逆分散性とは長波長になるほど位相差の絶対値が大きくなる性質を意味し、順分散性とは短波長になるほど位相差の絶対値が大きくなる性質を意味する。
積層型の1/4波長板は、1/4波長板と1/2波長位相差板とをその遅相軸を60°の角度で貼り合わせ、1/2波長位相差板側を直線偏光の入射側に配置して、且つ1/2波長位相差板の遅相軸を入射直線偏光の偏光面に対して15°、または75°に交差して使用するもので、位相差の逆分散性が良好なため好適に用いることができる。
λ/4波長板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、石英板、延伸されたポリカーボネートフィルム、延伸されたノルボルネン系ポリマーフィルム、炭酸ストロンチウムのような複屈折を有する無機粒子を含有して配向させた透明フィルム、支持体上に無機誘電体を斜め蒸着した薄膜などが挙げられる。
λ/4波長板としては、例えば、(1)特開平5−27118号公報、及び特開平5−27119号公報に記載された、レターデーションが大きい複屈折性フィルムと、レターデーションが小さい複屈折性フィルムとを、それらの光軸が直交するように積層させた位相差板、(2)特開平10−68816号公報に記載された、特定波長においてλ/4波長となっているポリマーフィルムと、それと同一材料からなり同じ波長においてλ/2波長となっているポリマーフィルムとを積層させて、広い波長領域でλ/4波長が得られる位相差板、(2)特開平10−90521号公報に記載された、二枚のポリマーフィルムを積層することにより広い波長領域でλ/4波長を達成できる位相差板、(3)国際公開第00/26705号パンフレットに記載された変性ポリカーボネートフィルムを用いた広い波長領域でλ/4波長を達成できる位相差板、(4)国際公開第00/65384号パンフレットに記載されたセルロースアセテートフィルムを用いた広い波長領域でλ/4波長を達成できる位相差板、などが挙げられる。
λ/4波長板としては、市販品を用いることもでき、市販品としては、例えば、ピュアエース(登録商標) WR(帝人株式会社製ポリカーボネートフィルム)などが挙げられる。
1/4波長板は、重合性液晶化合物、高分子液晶化合物を配列させて固定して形成してもよい。例えば、1/4波長板は、仮支持体、配向膜、または前面板表面に液晶組成物を塗布し、そこで液晶組成物中の重合性液晶化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して、形成することができる。液晶組成物または製法について、詳細は後述する。1/4波長板は、高分子液晶化合物を含む組成物を、仮支持体、配向膜、または前面板表面に液晶組成物を塗布して液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって配向を固定化して得られる層であってもよい。
λ/4波長板はコレステリック円偏光反射層と、接着層により接着されていてもよく、直接接していてもよいが、後者が好ましい。
(コレステリック液晶層ならびに液晶組成物から形成される1/4波長板およびnλ/4位相差膜の作製方法)
以下、コレステリック液晶層および液晶組成物から形成されるnλ/4位相差膜および1/4波長板の作製材料および作製方法について説明する。
上記1/4波長板およびnλ/4位相差膜の形成に用いる材料としては、重合性液晶化合物を含む液晶組成物などが挙げられる。上記コレステリック液晶層の形成に用いる材料としては、さらにキラル剤(光学活性化合物)とを含む液晶組成物などが挙げられる。必要に応じてさらに界面活性剤や重合開始剤などと混合して溶剤などに溶解した上記液晶組成物を、仮支持体、支持体、配向膜、nλ/4位相差膜、下層となるコレステリック液晶層、1/4波長板などに塗布し、配向熟成後、液晶組成物の硬化により固定化してコレステリック液晶層または1/4波長板を形成することができる。
−重合性液晶化合物−
重合性液晶化合物としては、棒状液晶化合物を用いればよい。
棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586、WO95/24455、WO97/00600号公報、WO98/23580、WO98/52905、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、80〜99.9質量%であることが好ましく、85〜99.5質量%であることがより好ましく、90〜99質量%であることが特に好ましい。
−キラル剤:光学活性化合物−
コレステリック液晶層の形成に用いる材料はキラル剤を含んでいることが好ましい。キラル剤はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル化合物は、化合物によって誘起する螺旋のセンスまたは螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、イソマンニド誘導体を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、重合性液晶化合物量の0.01モル%〜200モル%が好ましく、1モル%〜30モル%がより好ましい。
−重合開始剤−
液晶組成物は、重合開始剤を含有していることが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがさらに好ましい。
−架橋剤−
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、3質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が、3質量%以上であることにより、架橋密度向上の効果を得ることができる。また、20質量%以下とすることにより、形成される層の安定性を維持することができる。
−配向制御剤−
液晶組成物中には、安定的にまたは迅速にプレーナー配向とするために寄与する配向制御剤を添加してもよい。配向制御剤の例としては特開2007−272185号公報の段落〔0018〕〜〔0043〕等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、特開2012−203237号公報の段落〔0031〕〜〔0034〕等に記載の式(I)〜(IV)で表される化合物などが挙げられる。
なお、配向制御剤としては1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶組成物中における、配向制御剤の添加量は、重合性液晶化合物の全質量に対して0.01質量%〜10質量%が好ましく、0.01質量%〜5質量%がより好ましく、0.02質量%〜1質量%が特に好ましい。
−その他の添加剤−
その他、液晶組成物は、塗膜の表面張力を調整し膜厚を均一にするための界面活性剤、および重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
−溶媒−
液晶組成物の調製に使用する溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましく用いられる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、エーテル類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が特に好ましい。
−塗布、配向、重合−
仮支持体、配向膜、nλ/4位相差膜、1/4波長板、下層となるコレステリック液晶層などへの液晶組成物の塗布方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ワイヤーバーコーティング法、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法などが挙げられる。また、別途支持体上に塗設した液晶組成物を転写することによっても実施できる。塗布した液晶組成物を加熱することにより、液晶分子を配向させる。コレステリック液晶層形成の際はコレステリック配向させればよく、nλ/4位相差膜、1/4波長板形成の際は、ネマチック配向させることが好ましい。コレステリック配向の際、加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。この配向処理により、重合性液晶化合物が、フィルム面に対して実質的に垂直な方向に螺旋軸を有するように捩れ配向している光学薄膜が得られる。ネマチック配向の際、加熱温度は、50℃〜120℃が好ましく、60℃〜100℃がより好ましい。
配向させた液晶化合物は、更に重合させ、液晶組成物を硬化することができる。重合は、熱重合、光照射による光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2が好ましく、100mJ/cm2〜1,500mJ/cm2がより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射紫外線波長は350nm〜430nmが好ましい。重合反応率は安定性の観点から、高いことが好ましく70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。重合反応率は、重合性の官能基の消費割合をIR吸収スペクトルを用いて測定することにより、決定することができる。
個々のコレステリック液晶層の厚みは、上記特性を示す範囲であれば、特に限定はされないが、好ましくは1.0μm以上150μm以下の範囲、より好ましくは4.0μm以上、100μm以下の範囲であればよい。また、液晶組成物から形成される1/4波長板の厚みは、特に限定はされないが、好ましくは0.2〜10μm、より好ましくは0.5〜2μmであればよい。
−仮支持体、支持体、配向層−
液晶組成物は、仮支持体または仮支持体表面に形成された配向層の表面に塗布され層形成されてもよい。仮支持体または仮支持体および配向層は、層形成後に剥離されればよい。
また、特にnλ/4位相差膜形成の際は支持体を用いてもよい。支持体は層形成後に剥離しなくてよい。仮支持体および支持体の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロース誘導体、シリコーン、またはガラス板などが挙げられる。仮支持体は、例えば、円偏光反射層をnλ/4位相差膜または支持体に接着後、剥離されるものであればよい。仮支持体は、円偏光反射層をnλ/4位相差膜または支持体に接着後、さらに、円偏光反射層が画像表示装置に接着されるまで、保護フィルムとして機能していてもよい。
配向層は、ポリマーなどの有機化合物(ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、変性ポリアミドなどの樹脂)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、またはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。更に、電場の付与、磁場の付与または光照射により、配向機能が生じる配向層を用いてもよい。
特にポリマーからなる配向層は、ラビング処理を行ったうえでラビング処理面に液晶組成物を塗布することが好ましい。ラビング処理は、ポリマー層の表面を、紙、布で一定方向に、擦ることにより実施することができる。
配向層を設けずに仮支持体表面、または仮支持体をラビング処理した表面に、液晶組成物を塗布してもよい。
配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
−重合性液晶化合物から形成される層の積層膜−
複数のコレステリック液晶層からなる積層膜、および1/4波長板と複数のコレステリック液晶層とからなる積層膜の形成の際は、それぞれ、1/4波長板または先のコレステリック液晶層の表面に直接、重合性液晶化合物等を含む液晶組成物を塗布し、配向および固定の工程を繰り返してもよく、別に用意した1/4波長板、コレステリック液晶層、またはそれらの積層体を接着剤等を用いて積層してもよいが、前者が好ましい。通常0.5〜10μmの膜厚で設けられる接着層を用いると、接着層の厚みムラに由来する干渉ムラが観測されることがあるため、接着層を用いないで積層されることが好ましいからである。また、コレステリック液晶層の積層膜においては、先に形成されたコレステリック液晶層の表面に直接接するように次のコレステリック液晶層を形成することにより、先に形成したコレステリック液晶層の空気界面側の液晶分子の配向方位と、その上に形成するコレステリック液晶層の下側の液晶分子の配向方位が一致し、コレステリック液晶層の積層体の偏光特性が良好となるからである。
また、nλ/4位相差膜も反射層と積層膜を構成していてもよく、形成の際は、nλ/4位相差膜の表面に直接、重合性液晶化合物等を含む液晶組成物を塗布し、配向および固定の工程を繰り返してもよく、別に用意したnλ/4位相差膜と反射層と接着剤等を用いて積層してもよい。
<前面板>
本発明の画像表示機能付きミラーは、前面板を有していてもよい。
前面板は平坦であってもよく、湾曲していてもよい。
前面板はnλ/4位相差膜と直接接していてもよく、接着層等により直接接着されていてもよい。接着層等により直接接着されていることが好ましい。
前面板は特に限定されない。前面板としては、通常のミラーの作製に用いられるガラス板やプラスチックフィルムを用いることができる。前面板は可視光領域で透明であることが好ましい。ここで可視光領域で透明とは、可視光領域における光線透過率が、80%以上、好ましくは85%以上であることをいう。透明の尺度として用いられる光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法で求めた光線透過率とする。光線透過率は、JIS A5759に記載された方法で求めた光線透過率とする。すなわち分光光度計にて、各波長 380 nm〜780 nm の透過率を測定し,CIE 昼光 D65の分光分布,CIE 明順応標準比視感度の波長分布及び波長間隔から得られる重価係数を乗じて加重平均することによって可視光線透過率を求める。
また、前面板は複屈折が小さいことが好ましい。例えば、正面位相差が20nm以下であればよく、10nm未満であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。上記のプラスチックフィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロース誘導体、シリコーンなどが挙げられる。
湾曲した前面板は、射出成形などのプラスチック加工法により作製することができる。射出成形においては、例えば、原料プラスチックペレットを熱で溶融し、金型内に射出した後、冷却固化することにより、樹脂製品を得ることができる。
前面板の膜厚としては、100μm〜10mm程度であればよく、好ましくは200μm〜5mmであり、より好ましくは500μm〜2mmであり、さらに好ましくは500μm〜1000μmである。
前面板はnλ/4位相差膜を兼ねていてもよい。すなわち、前面板が、nλ/4位相差膜であってもよい。具体的には、nλ/4の位相差を有するプラスチック板等が前面板であってもよく、または中間層にnλ/4位相差膜を含む合わせガラスが前面板となっていてもよい。
(中間層にnλ/4位相差膜を含む合わせガラス)
合わせガラスは、2枚のガラス板およびその間の中間層を含む。合わせガラスは、一般的には、合わせガラス用の中間膜シートを2枚のガラス板に挟んだ後、加熱処理と加圧処理(ゴムローラーによる処理等)とを数回繰り返し、最後にオートクレーブ等を利用して加圧条件下での加熱処理を行う方法により製造することができる。ガラス板の厚みについては特に制限はないが、0.5mm〜5mm程度であればよく、1mm〜3mmが好ましく、2.0〜2.3mmがより好ましい。
中間層にnλ/4位相差膜を含む合わせガラスは、nλ/4位相差膜をガラス板表面に形成したあと通常の合わせガラス作製工程を経て形成されていてもよい。このとき、nλ/4位相差膜は例えばガラス板に接着剤で貼合されていればよい。
また、中間層にnλ/4位相差膜を含む合わせガラスは、nλ/4位相差膜を含む合わせガラス用積層中間膜シートを中間膜シートとして用いて、上記の加熱処理と加圧処理とが行われて形成されていてもよい。nλ/4位相差膜を含む合わせガラス用積層中間膜シートは、nλ/4位相差膜を公知の中間膜シートの表面に貼合して形成することができる。または、nλ/4位相差膜を2枚の公知の中間膜シートに挟んで形成することもできる。2枚の中間膜シートは同一であってもよく異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
中間膜シートとしては、たとえば、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン−酢酸ビニル共重合体および塩素含有樹脂の群から選ばれる樹脂を含む樹脂膜を用いることができる。上記樹脂は、中間膜シートの主成分であることが好ましい。なお、主成分であるとは、中間膜シートの50質量%以上の割合を占める成分のことをいう。上記の樹脂のうち、ポリビニルブチラールまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましく、ポリビニルブチラールがより好ましい。樹脂は、合成樹脂であることが好ましい。
ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒドによりアセタール化して得ることができる。上記ポリビニルブチラールのアセタール化度の好ましい下限は40%、好ましい上限は85%であり、より好ましい下限は60%、より好ましい上限は75%である。
上記ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度80〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は3000である。200未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下することがあり、3000を超えると、樹脂膜の成形性が悪くなり、しかも樹脂膜の剛性が大きくなり過ぎ、加工性が悪くなることがある。より好ましい下限は500、より好ましい上限は2000である。
nλ/4位相差膜と中間膜シートとの貼合には、公知の貼合方法を用いることができるが、ラミネート処理を用いることが好ましい。nλ/4位相差膜と中間膜シートとが加工後に剥離してしまわないように、ラミネート処理を実施する場合には、ある程度の加熱及び加圧条件下にて実施することが好ましい。
ラミネートを安定的に行なうには、中間膜シートの接着する側の膜面温度が50〜130℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
ラミネート時には加圧することが好ましい。加圧条件は、2.0kg/cm2(0.196MPa)未満であることが好ましく、0.5〜1.8kg/cm2(0.049〜0.176MPa)の範囲であることがより好ましく、0.5〜1.5kg/cm2(0.049〜0.147MPa)の範囲であることがさらに好ましい。
<接着層>
本発明の画像表示機能付きミラーは、反射層およびnλ/4位相差膜、nλ/4位相差膜および前面板、画像表示装置および反射層、1/4波長板および直線偏光反射板、その他、各層の接着のための接着層を含んでいてもよい。接着層は接着剤から形成されるものであればよい。
接着剤としては硬化方式の観点からホットメルトタイプ、熱硬化タイプ、光硬化タイプ、反応硬化タイプ、硬化の不要な感圧接着タイプがあり、それぞれ素材としてアクリレート系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、ポリオレフィン系、変性オレフィン系、ポリプロピレン系、エチレンビニルアルコール系、塩化ビニル系、クロロプレンゴム系、シアノアクリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスチレン系、ポリビニルブチラール系などの化合物を使用することができる。作業性、生産性の観点から、硬化方式として光硬化タイプが好ましく、光学的な透明性、耐熱性の観点から、素材はアクリレート系、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系などを使用することが好ましい。
<ハーフミラーの作製方法>
ハーフミラーは、用いる反射層の製造方法に従った手順で作製すればよい。前面板を有するハーフミラーは、前面板上でnλ/4位相差膜および反射層を形成して、作製してもよく、または、別途作製したnλ/4位相差膜と反射層とを接着することにより作製してもよい。例えば仮支持体上に形成されたコレステリック円偏光反射層もしくは1/4波長板およびコレステリック円偏光反射層をnλ/4位相差膜に転写することにより作製してもよい。例えば、仮支持体上でコレステリック液晶層またはコレステリック液晶層の積層体を形成して、コレステリック円偏光反射層を形成し、この円偏光反射層の面でnλ/4位相差膜と接着させ、その後必要に応じて仮支持体を剥離しハーフミラーを得ることができる。または、仮支持体上で1/4波長板とコレステリック液晶層とを順次形成して、1/4波長板とコレステリック円偏光反射層との積層体を形成し、このコレステリック液晶層(円偏光反射層)の面でnλ/4位相差膜と接着させて、その後必要に応じて仮支持体を剥離してハーフミラーを得ることができる。
中間層にnλ/4位相差膜および反射層を含む合わせガラスのハーフミラーは、中間層にnλ/4位相差膜を含む合わせガラスと同様に製造することができる。例えば、nλ/4位相差膜および反射層をガラス板表面に形成したあと通常の合わせガラス作製工程を経て製造してもよく、nλ/4位相差膜および反射層を含む合わせガラス用積層中間膜シートを中間膜シートとして用いて製造してもよい。nλ/4位相差膜および反射層を含む合わせガラス用積層中間膜シートは、nλ/4位相差膜および反射層を公知の中間膜シートの表面に貼合して形成することができる。または、nλ/4位相差膜および反射層を2枚の公知の中間膜シートに挟んで形成することもできる。合わせガラスのハーフミラーにおいて、nλ/4位相差膜および反射層は互いに直接接していても、接着層を介して接着されていてもよい。
<<<画像表示機能付きミラーの製造方法>>>
本発明の画像表示機能付きミラーは、ハーフミラーを、nλ/4位相差膜に対して反射層側が画像表示装置の画像表示部表面側となるように配置して作製される。ハーフミラーが前面板を有する場合は、画像表示装置、反射層、nλ/4位相差膜および前面板がこの順となるように配置する。その後、必要に応じて、画像表示装置とハーフミラーとを一体化するとよい。
画像表示装置とハーフミラーとの一体化は、外枠または蝶番での連結や、接着により行えばよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
<塗布液の用意>
(1)λ/4波長板および位相差板用として塗布液1を、また、コレステリック液晶層形成用として塗布液2、塗布液3、塗布液4を下記表1に示す組成で調製した。
化合物2は特開2005−99248号公報に記載の方法で製造した。
<コレステリック円偏光反射層の作製>
(1)仮支持体(280mm×85mm)は東洋紡株式会社製PETフィルム(コスモシャインA4100、厚み:100μm)を使用し、ラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf(0.98N)、回転数:1000rpm、搬送速度:10m/min、回数:1往復)を施した。
(2)塗布液1をワイヤーバーを用いてPETフィルムのラビングした表面に塗布後、乾燥させて30℃のホットプレート上に置き、フュージョンUVシステムズ株式会社製無電極ランプ「Dバルブ」(60mW/cm2)にて、6秒間UV照射し、液晶相を固定して、膜厚0.8μmの1/4波長板を得た。得られた層の表面に塗布液2をワイヤーバーを用いてに塗布後、乾燥させて30℃のホットプレート上に置き、フュージョンUVシステムズ株式会社製無電極ランプ「Dバルブ」(60mW/cm2)にて6秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、膜厚3.5μmのコレステリック液晶層を得た。さらに塗布液3および塗布液4をこの順で用いて同様の工程を繰り返し、1/4波長板と3層のコレステリック液晶層の積層体A(塗布液3の層:3.0μm、塗布液4の層:2.7μm)を得た。積層体Aの透過スペクトルを分光光度計(日本分光株式会社製、V−670)で測定したところ、630nm、540nm、450nmに反射ピークを有する透過スペクトルが得られた。
<反射型直線偏光板の作製>
特表平9−506837号公報の記載に準拠して、PENとナフタレート70/テレフタレート30のコポリエステル(coPEN)を、ジオールとしてエチレングリコールを用いて、標準ポリエステル樹脂合成釜において合成した。PENとcoPENの単層フィルムを押出成型した後、約150℃において、延伸比5:1で延伸した。配向軸に関するPENの屈折率は、約1.88、横断軸に関する屈折率は、1.64、coPENフィルムの屈折率は、約1.64となることを確認した。
次に、標準押出ダイを供給した50スロット供給ブロックを用いて同時押出すことにより、PENとcoPENの交互の層の厚さを下記の表2に示す膜厚で形成した。上記を繰返すことにより、表2(2)〜(5)を順に形成し、計250層を積層した。その後、延伸したフィルムを、エアーオーブン内において、約230℃で30秒間熱硬化し、積層体Bを得た。
<位相差板の作製>
仮支持体として東洋紡株式会社製PETフィルム(コスモシャインA4100、厚み:100μm)を使用し、ラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf(0.98N)、回転数:1000rpm、搬送速度:10m/min、回数:1往復)を施した。
塗布液1をワイヤーバーを用いてPETフィルムのラビングした表面に塗布後、乾燥させて30℃のホットプレート上に置き、フュージョンUVシステムズ株式会社製無電極ランプ「Dバルブ」(60mW/cm2)にて、6秒間UV照射し、液晶相を固定した。パナック株式会社製の粘着シート(PDS−1)を使ってアクリル板(厚み:0.3mm)に貼りあわせた後、仮支持体を剥離して位相差板Aを得た。膜厚を以下表3に示すように変更した以外は同様にして、位相差板B〜Dを得た。得られた位相差板の、正面位相差をAxometrix社製のAxoScanを用いて測定した。結果を表3に示す。
<ハーフミラーの作製>
[実施例1]
位相差板Aの液晶面を厚さ1.8mmのガラス板にパナック株式会社製の粘着シート(PDS-1)を使って貼りあわせた。
次に、積層体Aのコレステリック液晶層表面に東亜合成株式会社製の接着剤LCR0631をワイヤーバーで塗布した後、ラミネーターを使って、位相差板Aのアクリル板の面に貼り合わせた。この時、積層体Aにある1/4波長板の遅相軸と、位相差板Aの遅相軸が90°の角度になるように配置した。さらにワイヤーバーの番手と、ラミネーターのニップロール圧を調整し、接着層の厚さを2μmに調整した。その後、50℃のホットプレート上に置き、フュージョンUVシステムズ株式会社製無電極ランプ「Dバルブ」(60mW/cm2)にて30秒間UVを照射して接着させたのち、PETフィルムを剥離し、実施例1のハーフミラーを得た。
[実施例2]
位相差板Aの代わりに位相差板Cを使用した以外は実施例1と同様の手順で実施例2のハーフミラーを得た。
[実施例3]
積層体Aの代わりに積層体Bを使用し、位相差板Aの遅相軸が積層体Bの透過軸に対して45°傾くように貼り合わせた以外は実施例1と同様の手順で実施例3のハーフミラーを得た。
[実施例4]
位相差板Aの代わりに位相差板Cを使用した以外は実施例3と同様と同様の手順で実施例4のハーフミラーを得た。
[比較例1]
位相差板Aを使用しない以外は実施例1と同様の手順で比較例1のハーフミラーを得た。
[比較例2]
位相差板Aの代わりに位相差板Bを使用した以外は実施例1と同様の手順で比較例2のハーフミラーを得た。
[比較例3]
位相差板Aの代わりに位相差板Dを使用した以外は実施例1と同様の手順で比較例3のハーフミラーを得た。
[比較例4]
位相差板Aを使用しない以外は実施例3と同様の手順で比較例4のハーフミラーを得た。
[比較例5]
位相差板Aの代わりに位相差板Bを使用した以外は実施例3と同様の手順で比較例5のハーフミラーを得た。
<画像表示機能付きミラーの作製>
画像表示装置(iPad(登録商標)Retina)の画像表示部表面に、ガラス板、位相差板、反射層、画像表示装置がこの順になるように、上記で作製したハーフミラーを接着し画像表示機能付きミラーを作製した。このとき、積層体Aを用いた実施例および比較例においては、反射層にある1/4波長板の遅相軸が、画像表示装置の透過軸(LCDの発光の偏光方向)に対して45度傾けた角度になるように配置した。
<評価方法>
車両(車種:ホンダ製2002年式ステップワゴン)のインナーミラーの位置に上記作製した画像表示機能付きミラーをガラス板が最も運転席側(観察者側)になる配置で取り付けた。車両のリアガラスからインナーミラーの位置に太陽光が入射している状態で運転席の観察者から確認できる画像表示機能付きミラーの画像およびミラー反射像を、以下の基準で評価した。結果を表4に示す。
[画像]
A:歪みのない明るい画像
B:歪みや明暗ムラのある画像、あるいは全体的に暗い画像
[ミラー反射像のムラ(リアガラス複屈折由来)]
A:斜線状の光の明暗ムラは、ほぼ視認されない
B:斜線状の光の明暗ムラが視認できる
表4に示す結果より、nλ/4位相差膜を用いた実施例1〜4ではミラー反射像のリアガラスの複屈折由来のムラは視認しにくくなっていることがわかる。

Claims (10)

  1. 車両のルームミラーである画像表示機能付きミラーであって、
    ハーフミラーおよび画像表示装置を含み、
    前記画像表示装置は直線偏光を出射して画像を形成し、
    前記ハーフミラーはnλ/4位相差膜および反射層を含み、
    nは1、3、5または7であり
    前記画像表示機能付きミラーにおいて、前記nλ/4位相差膜、前記反射層、および前記画像表示装置がこの順に配置されており、
    前記反射層は直線偏光反射層または円偏光反射層である、画像表示機能付きミラー。
  2. nが1または3である請求項1に記載の画像表示機能付きミラー。
  3. 前記反射層が円偏光反射層である請求項1または2に記載の画像表示機能付きミラー。
  4. 前記円偏光反射層がコレステリック液晶層を含む請求項3に記載の画像表示機能付きミラー。
  5. 前記円偏光反射層が3層以上のコレステリック液晶層を含む請求項4に記載の画像表示機能付きミラー。
  6. 1/4波長板を含み、
    前記ハーフミラーが、前記nλ/4位相差膜、前記円偏光反射層、前記1/4波長板をこの順に含む請求項4または5に記載の画像表示機能付きミラー。
  7. 前記円偏光反射層と前記1/4波長板とが互いに直接接している請求項6に記載の画像表示機能付きミラー。
  8. 前記ハーフミラーが前面板を含み、
    前記前面板、前記nλ/4位相差膜および前記反射層をこの順に含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。
  9. 前記ハーフミラーが前面板を含み、
    前記前面板が2枚のガラス板と前記2枚のガラス板の間の中間層とを含む合わせガラスであり、
    前記中間層が前記nλ/4位相差膜を含む
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。
  10. 前記ハーフミラーが2枚のガラス板と前記2枚のガラス板の間の中間層とを含む合わせガラスであり、
    前記中間層が前記nλ/4位相差膜と前記反射層とを含む
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像表示機能付きミラー。
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